(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124556
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電気掃除機及び電気掃除機システム
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20230830BHJP
A47L 9/04 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A47L9/28 L
A47L9/04 A
A47L9/28 Z
A47L9/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028377
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 彬夫
(72)【発明者】
【氏名】吉野 知也
(72)【発明者】
【氏名】関野 雄介
【テーマコード(参考)】
3B057
3B061
【Fターム(参考)】
3B057DA04
3B057DE02
3B057DE06
3B061AD04
(57)【要約】
【課題】ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を行うことが可能な電気掃除機および電気掃除機システムを提供する。
【解決手段】回転ブラシ用電動機401を有する吸口体と、回転ブラシ用電動機401の負荷電流を検知するDC電流検出回路9と、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4Aと、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4Bと、を備える。閾値調整制御部4Bは、ユーザの選択または回転ブラシ用電動機401の負荷電流の検出結果をもとに、運転モードの切替時の閾値を調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、
前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部と、
前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部と、
前記運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部と、
を備えることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記閾値調整制御部は、ユーザの選択をもとに、前記運転モードの切替時の閾値を調整することを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記ユーザの選択は、ユーザの性別、身長、年齢を含むことを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記ユーザの選択は、ユーザの感度を含むことを特徴とする請求項2に記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記閾値調整制御部は、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流の検出結果をもとに、前記運転モードの切替時の閾値を調整することを特徴とする請求項1に記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記吸口体を木床または畳において周期的に前後させたときの振幅値と、前記吸口体を絨毯において周期的に前後させたときの振幅値と、に基づいて前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検出することを特徴とする請求項5に記載の電気掃除機。
【請求項7】
電気掃除機と、前記電気掃除機と通信可能なサーバと、を備える電気掃除機システムであって、
前記電気掃除機は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部を備え、
前記サーバは、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部と、前記運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部と、を備えることを特徴とする電気掃除機システム。
【請求項8】
電気掃除機と、前記電気掃除機と通信可能なサーバと、を備える電気掃除機システムであって、
前記電気掃除機は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部と、を備え、
前記サーバは、前記運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部を備えることを特徴とする電気掃除機システム。
【請求項9】
電気掃除機と、前記電気掃除機と通信可能なサーバと、を備える電気掃除機システムであって、
前記電気掃除機は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部と、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部を備え、
前記サーバは、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部を備えることを特徴とする電気掃除機システム。
【請求項10】
前記閾値調整制御部は、ユーザの選択をもとに、前記運転モードの切替時の閾値を調整することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の電気掃除機システム。
【請求項11】
前記ユーザの選択は、ユーザの性別、身長、年齢を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気掃除機システム。
【請求項12】
前記ユーザの選択は、ユーザの感度を含むことを特徴とする請求項10に記載の電気掃除機システム。
【請求項13】
前記閾値調整制御部は、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流の検出結果をもとに、前記運転モードの切替時の閾値を調整することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の電気掃除機システム。
【請求項14】
前記吸口体を木床または畳において周期的に前後させたときの振幅値と、前記吸口体を絨毯において周期的に前後させたときの振幅値と、に基づいて前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検出することを特徴とする請求項13に記載の電気掃除機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ブラシ用電動機を内置する吸口体を備えた電気掃除機及び電気掃除機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じて運転モードが自動的に切り替わる自動切替制御装置を備えた電気掃除機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この自動切替では、回転ブラシ用電動機の負荷電流を電流検知回路で検知して、この負荷電流に応じて床面状態を判定し、電動送風機の運転モードを切り替える。しかし、負荷電流はユーザの床面状態やユーザの押しつけ力、持ち手の高さなどの要因により変化するのに対し、床面状態を判定する負荷電流の閾値は全ユーザ共通であり、ユーザによっては正しく判定できないという課題がある。
【0005】
本発明は、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を行うことが可能な電気掃除機および電気掃除機システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明の電気掃除機は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部と、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御部と、前記運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の電気掃除機システムは、電気掃除機と、前記電気掃除機と通信可能なサーバと、を備える電気掃除機システムであって、前記電気掃除機は、回転ブラシ用電動機を有する吸口体と、前記回転ブラシ用電動機の負荷電流を検知する検知部を備え、前記サーバは、前記回転ブラシ用電動機の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御部と、前記運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を行うことが可能な電気掃除機及び電気掃除機システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電気掃除機をスティック状態にて充電台に収納した状態を示す斜視図である。
【
図2】電気掃除機の身長の相違による使用例を示す図である。
【
図6】ユーザ情報の相違による吸口電流の差を示すグラフである。
【
図7A】ユーザ情報による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図7B】ユーザ情報による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図8】感度による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図9A】床面測定による閾値調整の処理を示すローチャートである。
【
図9B】床面測定による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図10】吸口電流のグラフと電気掃除機の状態と床面判定結果を示す図である。
【
図11A】電気掃除機100の処理のフローチャートである。
【
図11B】電気掃除機100の処理のフローチャートである。
【
図12】床面による吸口電流の差を示すグラフである。
【
図13】絨毯における操作力による吸口電流の差を示すグラフである。
【
図14】木床における操作力による吸口電流の差を示すグラフである。
【
図15】電池電圧と最大吸口電流の閾値との関係を示すグラフである。
【
図16A】負荷電流による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図16B】負荷電流による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
【
図17】本実施形態の電掃掃除機システムを示す構成図である。
【
図18】閾値調整する際の携帯端末の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電気掃除機100をスティック状態にて充電台70aに収納した状態を示す斜視図である。
【0011】
電気掃除機100は、ハンディ状態、スティック状態など各種の使用状態に変更して掃除を行うことができるものである。電気掃除機100が収納される充電台70aは、電気掃除機100をスティック状態で収納するものであり、ベース部材71と3つのスタンド部材72とホルダ部材73を備えて構成されている。
【0012】
掃除機本体1は、ハンドル部12と操作スイッチ13を前方に向けるようにホルダ部材73の上に設置されている。ホルダ部材73には電気掃除機100に装着されている蓄電池3を充電するためのACアダプタの出力プラグが取り付けられるようになっており、電気掃除機100を充電台70aにセットすると、出力プラグが電気掃除機100の入力ジャックに接続されて、充電できるようになっている。
【0013】
更に、ホルダ部材73は延長管300が有する係合部と係合する保持部(凹部)を有する。これによって、
図1に示すように、延長管300をコンパクトに収納することができる。このようにすることで充電台70a自体には一切電気部品を設けることなく構成することができ、コストを抑える事や生産性の向上を図ることができる。また、スタンド部材72の有無で電気的な接続の変化が無いため、製品の信頼性を確保することができる。
【0014】
図2は、身長の相違による電気掃除機100の使用例を示す図である。
図2に示す第1使用例は、電気掃除機100に気密保持部材90を装着したまま、延長管300および標準吸口400を接続してスティック状態にし、ユーザが電気掃除機100を前方に突き出して床面を掃除する場合である。この場合、ユーザは、ハンドル部12を把持しながら、電気掃除機100と標準吸口400を周期的に前後に動かして掃除を行うことができる。この標準吸口400は、電動式の回転ブラシと回転ブラシ用電動機401(
図3参照)とを有する吸口体である。
【0015】
ハンドル部12の前部には操作スイッチ13が設けられている。
掃除機本体1の前下部には、ダストケース2が装着され、掃除機本体1の後下部には、蓄電池3が装着されている。ダストケース2と蓄電池3は、掃除機本体1に着脱可能である。ダストケース2と蓄電池3に挟まれるようにモータケース部11が配置され、排気口16が開口している。
【0016】
図3は、電気掃除機100のシステム構成図である。
電気掃除機100は、蓄電池3と、制御部4(運転制御部4A、閾値調整制御部4B)と、回転ブラシ用電動機401と、電動送風機5と、LED(Light Emitting Diode)6と、サーミスタ7と、充電基板8と、DC電流検出回路9と、操作スイッチ13、入力部14とを含んで構成される。これら構成のうち、回転ブラシ用電動機401は、標準吸口400に設けられている。
【0017】
制御部4は、マイクロコンピュータであり、この電気掃除機100を統括制御するものである。制御部4は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替わる運転制御を行い、かつ運転モード切替時または/および吸口持ち上げ状態から床面接地状態に遷移してから所定時間は負荷電流の判定をマスクする。また、制御部4は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4A(運転制御手段)と、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4B(閾値調整制御手段)と、を備えている。ちなみに、「判定をマスクする」とは、例えば、「判定を中止する」や「判定の結果を制御に反映しないようにする」といった意味である。
【0018】
回転ブラシ用電動機401は、標準吸口400(吸口体)に設けられており、吸口体の回転ブラシを回転させるモータである。回転ブラシ用電動機401には、蓄電池3の出力電圧が印加される。制御部4は、PWM(Pulse Width Modulation)信号をこの回転ブラシ用電動機401に出力して駆動させ、この回転ブラシ用電動機401から吸口電流信号の入力を受け付ける。吸口電流信号は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態を反映する負荷電流である。制御部4は、回転ブラシ用電動機401の負荷電流のデューティが異常ならば、この負荷電流のデータを判定から除外する。
【0019】
蓄電池3は、この電気掃除機100に電力を供給して、かつ回転ブラシ用電動機401に出力電圧を印加する電源である。制御部4は、蓄電池3に過放電防止電流を流し、蓄電池3から電源電圧信号の入力を受け付け、マイコン間通信によって蓄電池3の充電を制御する。制御部4は、蓄電池3の出力電圧の変動が所定値を超えたならば、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の判定をマスクする。
【0020】
サーミスタ7は、この電気掃除機100の不図示の基板の温度を検知する。制御部4は、サーミスタ7から基板温度信号の入力を受け付ける。
【0021】
充電基板8は、蓄電池3の充電を行う基板である。制御部4は、充電基板8に充電管理FET駆動信号を出力し、充電器接続信号と充電終了信号と充電電圧信号の入力を受け付ける。
【0022】
DC電流検出回路9は、回転ブラシ用電動機401に流れる負荷電流を検出する検知部である。制御部4は、モータ位相信号と直流電流1,2の入力を受け付ける。
【0023】
電動送風機5は、吸引力を発生するためのファンとそのモータである。制御部4は、6相のPWM信号を出力して、この電動送風機5を駆動させる。
【0024】
LED6は、蓄電池3の充電状態を示す電池表示131(
図4参照)と、フィルターの目詰まりを示すフィルターお手入れ表示132(
図4参照)である。制御部4は、LED6にON/OFF信号を出力する。
【0025】
操作スイッチ13は、この電気掃除機100を操作するためのスイッチであり、後記する
図4で説明する。制御部4は、操作スイッチ13からアナログ信号の入力を受け付ける。
【0026】
入力部14は、ユーザの選択を設定するものであり、使用者(ユーザ)の性別、身長、年齢のユーザ情報(ユーザの選択)を入力する。この入力部14は、例えばタッチ操作可能な液晶パネルによって構成され、ユーザの選択の設定を呼び出して、性別、身長、年齢を入力できるようになっている。制御部4(閾値調整制御部4B)は、入力された性別、身長、年齢の信号を受け付け、閾値調整に利用する。なお、入力部14を掃除機本体1に設けずに、電気掃除機と通信可能な携帯端末にダウンロードしたアプリケーションを呼び出して、性別、身長、年齢などのユーザ情報を入力できるようにしてもよい。
【0027】
図4は、操作スイッチ13の外観図である。
操作スイッチ13は、切ボタン135、標準/強ボタン134、自動ボタン133、フィルターお手入れ表示132と、電池表示131とを有する。
【0028】
切ボタン135は、回転ブラシ用電動機401の運転停止するスイッチである。
【0029】
標準/強ボタン134は、掃除機本体1の電動送風機5の運転モードを切り替える手動スイッチである。停止モードや自動モードにて標準/強ボタン134が押されると、電気掃除機100は、手動モードの標準運転(低速)に運転モードを切り替える。手動モードの標準運転(低速)にて標準/強ボタン134が押されると、電気掃除機100は、強運転(高速)に運転モードを切り替える。
【0030】
自動ボタン133は、掃除機本体1の電動送風機5の運転モードの切り替えを自動に設定するスイッチである。停止モードや手動モードにて自動ボタン133が押されると、電気掃除機100は、自動モードに運転モードを切り替える。自動モードにて更に自動ボタン133を押すと、電気掃除機100は、自動モードの設定を解除して手動モードの標準運転に運転モードを切り替える。
【0031】
停止モードは、標準/強ボタン134や自動ボタン133による設定を解除したり、回転ブラシ用電動機401がロックした場合に利用される。
【0032】
フィルターお手入れ表示132は、この電気掃除機100のフィルターが目詰まりして手入れが必要な場合に点灯するLEDである。電池表示131は、この電気掃除機100の蓄電池3の充電が必要な場合に点灯するLEDである。
【0033】
図5は、電気掃除機100の状態遷移図である。
図6は、ユーザ情報の相違による吸口電流の差を示すグラフである。電気掃除機100のソフトウエアプログラムの内容を
図5に示す状態遷移図と
図4の操作スイッチ13を引用して述べる。
電源オフ状態から電源投入により、停止モードM10になる。停止モードM10にて、操作スイッチ13の標準/強ボタン134が押されると、手動モードM20が選ばれる。つまり、
図4の標準/強ボタン134は、手動スイッチに相当する。そして、停止モードM10にて、自動ボタン133が押されると、自動モードM30が選ばれる。
図4の自動ボタン133は、自動スイッチに相当する。さらに、停止モードM10にて、自動ボタン133と標準/強ボタン134が同時に押されると、調整モードM40が選ばれる。
【0034】
手動モードM20または自動モードM30にて、
図4の切ボタン135が押されると、停止モードM10が選ばれる。
【0035】
手動モードM20では、最初は標準モードM21に移り、その後に強モードM22と標準モードM21に相互に切り替わる。標準モードM21とは、電動送風機5が低速で回転する標準運転のモードである。強モードM22とは、回転ブラシ用電動機401が高速で回転する強運転のモードである。
【0036】
手動モードM20における運転モードの切り替えは、各モードへの移行条件が成立して、かつ標準/強ボタン134の押下で行われる。手動モードM20から停止モードM10への移行は、切ボタン135の押下または停止移行条件の成立によって行われる。手動モードM20から自動モードM30への移行は、自動ボタン133の押下によって行われる。
【0037】
自動モードM30では、最初は標準モードM31に移り、その後に強モードM32と標準モードM31に相互に切り替わる。標準モードM31とは、電動送風機5が低速で回転する標準運転のモードである。強モードM32とは電動送風機5が高速で回転する強運転のモードである。
【0038】
自動モードM30における運転モードの切り替えは、各モードへの移行条件が成立し、かつ床面判定の結果によって行われる。自動モードM30から停止モードM10への移行は、切ボタン135の押下または停止移行条件の成立によって行われる。自動モードM30から手動モードM20への移行は、標準/強ボタン134の押下によって行われる。
【0039】
床面判定の結果は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に依存する。DC電流検出回路9(検知手段)によって検知される吸口電流(負荷電流)によって、回転ブラシ用電動機401の負荷状態が判定される。具体的にいうと、強運転(高速)の運転モードでの運転中に、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅が所定閾値を超えているか、または負荷電流の最大値が所定値を超えているならば、強運転(高速)の運転モードを維持する。強運転(高速)の運転モードでの運転中に、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅が所定の閾値以下ならば、標準運転(低速)の運転モードに移る。
【0040】
標準運転(低速)の運転モードでの運転中に、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅が所定閾値を超えたか、または回転ブラシ用電動機401の負荷電流の最大値が所定値を超えているならば、強運転(高速)の運転モードに移る。
これにより電気掃除機100にて、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0041】
ところで、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅は、ユーザの使い方や環境に影響を受ける。ユーザの持ち手の高さ(床面からの高さ)が高い場合は、標準吸口400に電気掃除機100(掃除機本体1)の重さがかかることにより回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅W1,W2は大きくなり(
図6上図参照)、持ち手の高さが低い場合は、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅W1,W2は小さくなる(
図6下図参照)。また、ユーザの押しつけ力が大きい場合は回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅W1,W2は大きくなり(
図6上図参照)、ユーザの押しつけ力が小さい場合は回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅W1,W2は小さくなる(
図6下図参照)。また、ユーザが掃除を行う床面の状態により木床や絨毯の摩擦抵抗は異なる。
【0042】
上記要因を考慮し、運転モード(標準モードから強モード、強モードから標準モード)を切り替える際の閾値を調整することで、各ユーザに適した床面判定を行うことができる。本発明の具体例として、
図7A,7Bを参照して説明する。
図7A及び
図7Bは、ユーザ情報としてユーザの性別、身長、年齢による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
図7Aに示すように、制御部4(閾値調整制御部4B)は、入力部14(
図3参照)によって入力された性別を判定し(ステップS10)、男性であればステップS11の処理に進み、閾値の調整量を増やし、女性であればステップS12の処理に進み、閾値の調整量を減らす。このように、男性は床面に対する押しつけ力が強く、女性は押しつけ力が弱い傾向があるため、男性の場合は調整量を増やし、女性の場合は調整量を減らす。
【0043】
制御部4(閾値調整制御部4B)は、入力部14によって入力された身長を判定し(ステップS13)、身長が150cm未満の場合には、閾値の調整量を減らす(ステップS14)。また、制御部4は、入力された身長が150cm以上160cm未満の場合にも、閾値の調整量を減らす(ステップS15)。なお、ステップS14の調整量は、ステップS15の調整量よりも減らす量を多くする。また、制御部4は、入力された身長が160cm以上170cm未満の場合には、閾値の調整量を変えない(ステップS16)。また、制御部4は、入力された身長が170cm以上180cm未満の場合には、閾値の調整量を増やす(ステップS17)。また、制御部4は、入力された身長が180cm以上の場合にも、閾値の調整量を増やす(ステップS18)。なお、ステップS18の調整量は、ステップS17の調整量よりも増やす量を多くする。このように、持ち手の高さは身長に比例するため、高身長な人は調整量を増やし、低身長の人は調整量を減らす。つまり、持ち手の高さが高いということは、
図2において二点鎖線で示すように、掃除機本体1の角度θ1が、
図2に実線で示す持ち手の高さが低い人の場合の角度θ2よりも大きくなる。持ち手の高さが高くなると、床面に対する吸口体の押しつけ力F1が大きくなる。逆に、持ち手の高さが低くなると押しつけ力F1が小さくなる。なお、
図7Aに示す身長による区分けは一例であって本実施形態に限定されるものではない。
【0044】
図7Bに示すように、制御部4(閾値調整制御部4B)は、入力部14によって入力された年齢を判定し(ステップS19)、年齢が20歳未満の場合には、閾値の調整量を増やす(ステップS20)。また、制御部4は、入力された年齢が20歳以上30歳未満の場合にも、閾値の調整量を増やす(ステップS21)。なお、ステップS20の調整量は、ステップS21の調整量よりも増やす量を多くする。また、制御部4は、入力された年齢が30歳以上40歳未満の場合には、閾値の調整量を変えない(ステップS22)。また、制御部4は、入力された年齢が40歳以上50歳未満の場合には、閾値の調整量を減らす(ステップS23)。また、制御部4は、入力された年齢が50歳以上の場合にも、閾値の調整量を減らす(ステップS24)。なお、ステップS24の調整量は、ステップS23の調整量よりも減らす量を多くする。このように、年齢が低い若者は吸口体の床面に対する押しつけ力が強く、年齢が高い年配の方は吸口体の床面に対する押しつけ力が弱くなる傾向にあるため、若者の方は調整量を増やし、年配の方は調整量を減らす。なお、
図7Bに示す年齢による区分けは一例であって本実施形態に限定されるものではない。
【0045】
そして、制御部4は、初期の閾値(振幅値)に、性別に基づく調整量と、身長に基づく調整量と、年齢に基づく調整量を加算して新たな閾値(振幅値)となるように閾値調整を行う(ステップS25)。
【0046】
例えば、調整量を減らして閾値(振幅値)が低くなった場合、運転モードが標準運転から強運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を「30」とし、強運転から標準運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を「20」としたとする。例えば押し付け力が弱いユーザの場合、木床で運転しているときには振幅が例えば10となり、そこから絨毯に変わると絨毯で運転しているときには振幅が例えば40となる。このとき閾値(振幅値)30を超えるので、標準運転から強運転に切り替わる。逆に、強運転しているときに木床の運転に移ると、振幅が下がって振幅が10になり、閾値(振幅値)20を下回ることになるので強運転から標準運転に戻る。また、調整量を増やして閾値(振幅値)が高くなった場合、運転モードが標準運転から強運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を「40」とし、強運転から標準運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を「30」とする。例えば押し付け力が強いユーザの場合、木床で運転しているときには振幅(振幅値)が例えば20となり、そこから絨毯に変わると絨毯で運転しているときには振幅が例えば50となる。このとき閾値(振幅値)40を超えるので、標準運転から強運転に切り替わる。逆に、強運転しているときに木床の運転に移ると、振幅が下がって振幅が20になり、閾値30を下回ることになるので強運転から標準運転に戻る。
【0047】
なお、閾値を調整する手段として、
図7A及び
図7Bにおいて説明したように、ユーザの性別、身長、年齢を入力するのではなく、運転モードの移り易さ(切り替わり易さ)を入力してもよい。
図8は、感度による閾値調整の処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、制御部4(閾値調整制御部4B)は、ユーザが入力部14(
図3参照)によって入力した感度を判定し(ステップS30)、感度「1」の場合には、閾値の調整量を増やす(ステップS31)。また、制御部4は、入力された感度が「2」の場合にも、閾値の調整量を増やす。なお、ステップS31の調整量は、ステップS32の調整量よりも増やす量を多くする。また、制御部4は、入力された感度が「3」の場合には、閾値の調整量を変えない。また、制御部4は、入力された感度が「4」の場合には、閾値の調整量を減らす。また、制御部4は、入力された感度が「5」の場合にも、閾値の調整量を減らす。なお、ステップS35の調整量は、ステップS34の調整量よりも減らす量を多くする。そして、制御部4は、初期の閾値(振幅値)に、感度に基づく調整量を加算して新たな閾値(振幅値)となるように閾値調整を行う(ステップS36)。つまり、ユーザに感度を複数段階提示し、選択された感度に基づき閾値を調整する。感度を高くしたい場合(感度「1」、「2」)は、調整量を増やすことで標準⇔強に移行しづらくなる。また、感度を低くしたい場合(感度「4」、「5」)は、調整量を減らすことで標準⇔強に移行しやすくなる。
【0048】
そこで、
図6上図に示すように、ユーザの選択として、男性、高身長、若者が選択された場合には、標準運転での負荷電流(吸口電流)が大きくなり(振幅W1が大きくなり)、また強運転での負荷電流(吸口電流)が大きくなる(振幅W2が大きくなる)。また、
図6下図に示すように、ユーザの選択として、女性、低身長、高齢者が設定された場合には、標準運転での負荷電流(吸口電流)が小さくなり(振幅W1が小さくなり)、また強運転での負荷電流(吸口電流)が小さくなる(振幅W2が小さくなる)。このようなことから、男性、高身長、若者が選択された場合には、標準運転から強運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を例えば40になるように調整し、強運転から標準運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を例えば30になるように調整する。また、女性、低身長、高齢者が選択された場合には、標準運転から強運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を例えば30になるように調整し、強運転から標準運転に切り替わるときの閾値(振幅値)を例えば20になるように調整する。
【0049】
図9A及び
図9Bは、床面測定による閾値調整の処理のフローチャートである。
ユーザの使用環境において、標準モードにおいて木床での運転と強モードにおいて絨毯での運転をしてもらい、それぞれの振幅値から閾値を算出する。
図9Aに示すように、制御部4(閾値調整制御部4B)は、ユーザが木床(または畳)の測定開始を選択した場合(ステップS40、Yes)、電気掃除機100の標準吸口400(吸口体)を木床上に周期的に前後させ、10秒間以上、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅を測定し、最大値を算出する(ステップS41)。このとき、振幅値が有効範囲でなかった場合(ステップS42、No)、測定をやり直す。次に、ユーザが絨毯の測定開始を選択した場合(ステップ43、Yes)、電気掃除機100の標準吸口400(吸口体)を絨毯上に周期的に前後させ、10秒間以上、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅を測定し、最大値を算出する(ステップS44)。このとき、振幅値が有効範囲でなかった場合(ステップS45、No)、測定をやり直す。
【0050】
図9Bに示すように、制御部4は、木床と絨毯の振幅最大値(ステップS41、S44)から、閾値を算出する(ステップS46)。このとき、閾値が有効でない場合(ステップS47、No)、測定をやり直し、閾値が有効である場合(ステップS47、Yes)、閾値を調整(変更)する(ステップS48)。
【0051】
図10は、吸口電流のグラフと電気掃除機の状態と床面判定結果を示す図である。
図10のグラフの縦軸は吸口電流(回転ブラシ用電動機401の負荷電流)を示し、グラフの横軸は時間を示している。その下側には、電気掃除機100の状態と床面判定結果が表示されている。I
thは、持上判定閾値である。時刻T1以前には、電気掃除機100の標準吸口400は床面に接地しておらず、浮いている状態である。このときの吸口電流は持上判定閾値I
th未満であり、床面判定は無効となっている。
【0052】
時刻T1に、電気掃除機100の標準吸口400は床面に接地する。時刻T1にて吸口電流は、持上判定閾値Ithを超えて跳ね上がる。その後、吸口電流は次第に減少する。この時刻T1から時刻T2までの間、床面判定は無効となっている。
【0053】
時刻T2から時刻T3までの間は、吸口が接地している状態である。時刻T2から時刻T3までの間、吸口電流は持上判定閾値Ith以上の値を維持しており、床面判定は有効である。時刻T3以降は、電気掃除機100の標準吸口400は床面に接地しておらず、浮いている状態である。このときの吸口電流は持上判定閾値Ith未満であり、床面判定は無効となっている。
【0054】
電気掃除機100は、時刻T1のようなイレギュラーな回転ブラシ用電動機401の負荷電流の変化による床面の誤判定を排除し、きちんと床面に接地された状態で床面判定を開始するようにした。これにより、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0055】
次に、本実施の形態に係る電気掃除機100の動作について説明する。
図11Aと
図11Bは、電気掃除機100の処理のフローチャートである。
図11Aに示すように、制御部4は、床面判定状態の初期値を木床判定として処理を開始する。制御部4は、吸口電流が持上判定閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS50)。制御部4は、吸口電流が持上判定閾値よりも小さいならば(S50、Yes)、状態を更新して電流無効に設定し(ステップS51)、ステップS53に進む。
【0056】
制御部4は、吸口電流が持上判定閾値以上ならば(S50、No)、状態を更新して電流有効に設定して(ステップS52)、ステップS53に進む。これにより制御部4は、持上判定閾値未満のデータが含まれる吸口電流データを除外することができる。
【0057】
ステップS53にて、制御部4は、状態が電流無効であるか否かを判定する。制御部4は、状態が電流無効ならば(ステップS53、Yes)、マスク用タイマを再設定して(ステップS54)、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。標準吸口400の接地による突入電流は所定時間で収束するため、この所定時間をマスク用タイマでカウントする。制御部4は、状態が電流有効ならば(ステップS53、No)、ステップS55に進む。
【0058】
ステップS55にて、制御部4は、状態が電流有効かつマスク用タイマがカウント中であるか否かを判定する。制御部4は、状態が電流有効かつマスク用タイマがカウント中ならば(ステップS55、Yes)、特に処理を行わずマスク用タイマのカウントのみを行い(ステップS56)、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。これにより、状態が電流無効から電流有効に切り替わった直後の標準吸口400の接地時インパクトにより吸口電流が跳ね上がる影響をマスクして、ユーザに違和感を与えないように床面を判定できる。制御部4は、マスク用タイマがカウントアップしたならば(ステップS55、No)、ステップS57に進む。
【0059】
ステップS57にて、制御部4は、吸口電流のデューティが正常であるか否かを判定する。制御部4は、吸口電流のデューティが異常ならば(ステップS57、No)、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。これにより、標準吸口400の接地による突入電流が発生している間、データの蓄積をしないようにしている。
【0060】
制御部4は、吸口電流のデューティが正常ならば(ステップS57、Yes)、ステップS58に進み、吸口電流確定値と電池電圧値を保存する。これにより、制御部4は、過去の吸口電流の確定値と電池電圧値のデータを保存することができる。
【0061】
ステップS59にて、制御部4は、所定数のデータがあるか否かを判定する。制御部4は、所定数のデータが無いならば(ステップS59、No)、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。制御部4は、所定数のデータが有るならば(ステップS59、Yes)、ステップS60に進む。
【0062】
図11Bに示すように、ステップS60にて、制御部4は、所定数の吸口電流データの最大値を除いた上位2データの平均値を最大値とし、所定数の吸口電流データの最小値を除いた下位2データの平均値を最小値とする。そして制御部4は、電池電圧値が乖離しているか否かを判定する(ステップS61)。制御部4は、電池電圧値が乖離しているならば(ステップS61、Yes)、振幅値を前回値とし(ステップS63)、電池電圧値が乖離していないならば(ステップS61、No)、吸口電流の最大値から最小値を減算して振幅値を算出する(ステップS62)。
【0063】
ステップS61の判定で、電池電圧値の乖離時の回転ブラシ用電動機401の負荷電流変化による床面の誤判定を排除し、所定時間が経過してから床面判定を再開する。これにより、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0064】
標準吸口400を長時間持ち上げ状態にして接地した直後など、所定数のデータの中で電池電圧値が乖離している場合は、正しく床面を判定できない可能性がある。そのため、制御部4は、電流振幅値を更新しないことにより床面判定状態を更新させない。これにより、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0065】
ステップS64にて、制御部4は、木床判定中かつ振幅値が閾値を超えたか否かを判定する。制御部4は、木床判定中かつ振幅値が閾値を超えたならば(ステップS64、Yes)、床を絨毯と判定して(ステップS65)、マスク用タイマを再設定する(ステップS66)。そして制御部4は、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。制御部4は、木床判定中でないか、または振幅値が閾値を超えていないならば(ステップS64、No)、ステップS67に進む。
【0066】
ステップS67にて、制御部4は、絨毯判定中かつ振幅値が絨毯の閾値未満かつ最大電流が最大電流の閾値以下かを判定する。制御部4は、絨毯判定中かつ振幅値が絨毯の閾値未満かつ最大電流が最大電流の閾値以下ならば(ステップS67、Yes)、床を木床と判定して(ステップS68)、マスク用タイマを再設定する(ステップS69)。そして制御部4は、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。
【0067】
運転モード切替に伴うイレギュラーな回転ブラシ用電動機401の負荷電流の変化による床面の誤判定を排除し、運転モード切替後に所定時間が経過してから床面判定を開始するようにした。これにより、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0068】
制御部4は、絨毯判定中でないか、振幅値が絨毯の閾値を超えたか、最大電流が最大電流の閾値を超えたならば(ステップS67、No)、次の周期まで待ったのち(ステップS70)、ステップS50に戻る。
【0069】
木床や畳において標準吸口400の押しつけ力が強いとき、床面判定が床面と絨毯とを頻繁に切り替わり、ユーザに違和感を与える可能性がある。ユーザが木床や畳にて標準吸口400を強く押し付けているとき、吸口電流の振幅はさほど変わらないが、最大電流値が上がる。よって、現在の床面判定状態が絨毯にて、標準吸口400の押しつけ力が強いとき、吸口電流の絶対値が閾値以上となるので、床面判定を絨毯のまま維持する。
【0070】
図12は、床面による吸口電流の差を示すグラフである。
図12のグラフは、縦軸に吸口電流、横軸に時間を示す。
時刻T11にて、この電気掃除機100の電源がオンする。時刻T12から時刻T13までの間、ユーザは、電気掃除機100の吸口を木床上に周期的に前後させる。このとき回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W1であり、このとき標準判定される。つまり床面判定は木床となる。
時刻T13以降、ユーザは、電気掃除機100の吸口を絨毯上に周期的に前後させる。回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W2であり、このとき強判定される。つまり床面判定は絨毯となる。
【0071】
ここに示す標準判定、強判定は、吸口体を前後に往復移動させて回転ブラシ用電動機401に流れる負荷電流の測定値に基づくものである。回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅W1が小さいときは標準判定であり、振幅W2が大きいときは強判定となる。回転ブラシ用電動機401の負荷電流の周期は、吸口体の前後移動を速度に変えることで多少変化する。
【0072】
床が畳やフローリングでは、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅が小さく標準判定になる。逆に目の深い絨毯などでは、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅が大きく強判定になる。
【0073】
このようにDC電流検出回路9が検知する回転ブラシ用電動機401の負荷電流を見ることにより、回転ブラシ用電動機401に対する負荷状態(掃除する床面の種類/状況)を判定できる。この判定を基に、負荷状態に応じた回転ブラシ用電動機401の運転が実行されるようなソフトウエアプログラムが、
図3に示す制御部4に格納されている。
【0074】
図13は、絨毯における操作力による吸口電流の差を示すグラフである。
図13のグラフは、縦軸に吸口電流、横軸に時間を示す。
時刻T21にて、この電気掃除機100の電源がオンする。時刻T22から時刻T23までの間、ユーザは、電気掃除機100の吸口を絨毯上に周期的に前後させる。回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W3であり、このとき強判定される。時刻T23以降、ユーザは、電気掃除機100を絨毯に強く押し付けて周期的に前後させる。このとき回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W4であり、強判定される。
【0075】
床面が絨毯の場合、操作力が弱めから強めに変化したとき、電流絶対値は上昇して、振幅値(偏差)も同等以上となる。このとき、常に強判定が可能である。
【0076】
図14は、木床における操作力による吸口電流の差を示すグラフである。
図14のグラフは、縦軸に吸口電流、横軸に時間を示す。
時刻T31にて、この電気掃除機100の電源がオンする。時刻T32から時刻T33までの間、ユーザは、電気掃除機100の吸口を木床上に周期的に前後させる。回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W5であり、このとき標準判定される。時刻T33以降、ユーザは、電気掃除機100を木床に強く押し付けて周期的に前後させる。これにより時刻T33の直後に一瞬だけ振幅W6が大きくなり、強判定される。
【0077】
時刻T33以降の回転ブラシ用電動機401の負荷電流は、振幅W7であり小さい。このとき、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の振幅だけで判定すると、再び標準判定されることとなり、ユーザからは動作が不安定に見える。このとき、回転ブラシ用電動機401の負荷電流は閾値Ioを超えるので、継続して強判定する。このように、電流最大値が閾値Ioを超えるときに、標準判定しないように制御している。よって、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を操作することができる。
【0078】
図15は、電池電圧と最大吸口電流との関係を示すグラフである。
図15のグラフの縦軸は、最大吸口電流であり、横軸は電池電圧である。
領域501のプロットは、操作力が所定値よりも大きいときの最大吸口電流と電池電圧の組み合わせである。領域500のプロットは、操作力が所定値以下のときの最大吸口電流と電池電圧の組み合わせである。領域500と領域501を分ける最大吸口電流の閾値は、所定の一次関数で示される直線であり、例えばy=αx+βで表現される。
【0079】
図16A及び
図16Bは、電気掃除機100の処理のフローチャートである。
ユーザの使用環境において、木床において標準運転を維持したいときの押しつけ力と、強運転を維持したいときの押しつけ力でユーザに運転してもらい、強運転を維持する閾値Ioを算出する。
図16Aに示すように、制御部4(閾値調整制御部4B)は、標準運転の押しつけ力(吸口体を木床に押しつけたときの力)での測定を開始した場合(ステップS80、Yes)、回転ブラシ用電動機401の負荷電流値を測定する(ステップS81)。このとき、電流値が有効でなかった場合(ステップS82、No)、測定をやり直す。次に、強運転の押しつけ力での測定を開始した場合(ステップS83、Yes)、回転ブラシ用電動機401の負荷電流値を測定する(ステップS84)。このとき、負荷電流値が有効でなかった場合(ステップS85、No)、測定をやり直す。
【0080】
図16Bに示すように、制御部4は、閾値Ioを算出する(ステップS86)。このとき、閾値が有効でない場合(ステップS87、No)、測定をやり直し、閾値が有効である場合(ステップS87、Yes)、閾値を調整する(ステップS88)。制御部4(運転制御部4A)は、ステップS88の閾値調整に基づいて
図14に示す吸口電流の閾値Ioを設定する。
【0081】
以上のような本実施形態の電気掃除機100は、回転ブラシ用電動機401を有する標準吸口400と、回転ブラシ用電動機401の負荷電流を検知するDC電流検出回路9と、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4Aと、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4Bと、を備える。これによれば、ユーザが違和感なく床面判定による自動運転を行うことが可能になる。
【0082】
また、本実施形態において、閾値調整制御部4Bは、ユーザの選択(性別、身長、年齢、感度)をもとに運転モードの切替時の閾値(振幅値)を調整することができる。また、閾値調整制御部4Bは、回転ブラシ用電動機401の負荷電流の検出結果をもとに、運転モードの切替時の閾値(電流値I0)を調整することができる。
【0083】
図17は、本実施形態の電気掃除機システムを示す構成図である。
図18は、閾値調整する際の携帯端末の表示例を示す図である。なお、電気掃除機100と同様の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図17に示すように、電気掃除機システム1000Aは、電気掃除機100と、この電気掃除機100と通信可能なサーバ600と、を備えて構成されている。電気掃除機100は、ネットワーク700を介してサーバ600と接続されている。
【0084】
電気掃除機100は、回転ブラシ用電動機401を有する標準吸口400(吸口体)と、回転ブラシ用電動機401の負荷電流を検知する検知部(DC電流検出回路9)を備えている。
【0085】
サーバ600は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4Aと、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4Bと、を備えている。
【0086】
なお、入力部14を掃除機本体1に設けずに、電気掃除機100と通信可能な携帯端末200にダウンロードしたアプリケーションを呼び出して、性別、身長、年齢などのユーザ情報を入力できるようにしてもよい。例えば、性別を入力する場合には、
図18において符号200aで示すように、男性か女性のいずれかを選択する画面が表示される。また、身長を入力する場合には、
図18において符号200bに示すように、数値を入力する画面が表示される。また、年齢を入力する場合には、
図18において符号200cに示すように、年齢の数値を入力する画面が表示される。また、感度を入力する場合には、
図18において符号200dに示すように、1~5の感度を選択する画面が表示される。
【0087】
閾値調整制御部4Bは、
図7A、
図7B、
図8、
図9A、
図9Bに示す処理によって閾値(振幅値)を調整し、運転制御部4Aが運転モードの切り替えを行う。また、閾値調整制御部4Bは、
図16A、
図16Bに示す処理によって閾値Ioを調整し、運転制御部4Aが運転モードの切り替えを行う。
【0088】
なお、本実施形態の電気掃除機システムは、前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、電気掃除機100は、回転ブラシ用電動機401を有する標準吸口400(吸口体)と、回転ブラシ用電動機401の負荷電流を検知する検知部(DC電流検出回路9)と、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4Aと、を備えるようにし、サーバ600は、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4Bと、を備えるようにしてもよい。
【0089】
また、電気掃除機100は、回転ブラシ用電動機401を有する標準吸口400(吸口体)と、回転ブラシ用電動機401の負荷電流を検知する検知部(DC電流検出回路9)と、運転モードの切替時の閾値を調整する閾値調整制御部4Bと、を備えるようにし、サーバ600は、回転ブラシ用電動機401の負荷状態に応じた運転モードに自動的に切り替える運転制御部4Aと、を備えるようにしてもよい。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0091】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0092】
1 掃除機本体
4 制御部
4A 運転制御部
4B 閾値調整制御部
5 電動送風機
9 DC電流検出回路(検知部)
14 入力部
100 電気掃除機
200 携帯端末
400 標準吸口(吸口体)
401 回転ブラシ用電動機
600 サーバ
700 ネットワーク
1000A,1000B 電気掃除機システム