(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124586
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】電力特性算出装置及び電力特性算出方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230830BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230830BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028448
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 晴樹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064CB08
5G064DA01
5G066AA09
5G066AE03
5G066HB06
(57)【要約】
【課題】負荷特性を精度よく算出すること。
【解決手段】電力特性算出装置は、負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する第1の取得部と、前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する。算出した負荷特性と分散電源の力率とを用いることで、潮流データ計測値を負荷値と分散電源出力に分離できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する第1の取得部と、
前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する
ことを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力特性算出装置であって、
前記分散電源の出力を求める時点について前記潮流データ計測値を取得する第2の取得部と、
前記算出部により算出された前記負荷特性と前記分散電源の力率とを用い、前記第2の取得部により取得された前記潮流データ計測値から前記分散電源の出力を分離する分離部と、をさらに備え、
前記算出部は、前記分散電源の出力を求める時点の近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する
ことを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力特性算出装置であって、
前記算出部は、前記第1の取得部により取得された複数の潮流データ計測値に含まれる複数の有効電力と無効電力とから近似直線を求め、当該近似直線の傾きを前記負荷特性として算出することを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電力特性算出装置であって、
前記算出部は、前記第1の取得部により取得された複数の潮流データ計測値に含まれる複数の有効電力と無効電力とから近似直線を求め、当該近似直線の傾きによって示される力率を前記負荷特性として算出し、
前記分離部は、第2の取得部により取得された前記潮流データ計測値を、前記分散電源の力率と前記負荷特性である力率とに基づいて分離することで、前記分散電源の出力と前記負荷の負荷値を求めることを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電力特性算出装置であって、
前記算出部は、前記分散電源の出力の変動が所定値内に収まる時間の範囲で複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出することを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電力特性算出装置であって、
前記算出部は、現時点近傍の複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出し、現時点における前記負荷特性を算出することを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電力特性算出装置であって、
前記算出部は、蓄積された過去の潮流データ計測値のうち、指定された時点近傍の複数の潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出し、前記指定された時点における前記負荷特性を算出することを特徴とする電力特性算出装置。
【請求項8】
電力特性算出装置が、
負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する取得ステップと、
前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出ステップと、を含み、
前記算出ステップは、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する
ことを特徴とする電力特性算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力特性算出装置及び電力特性算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電(PV)等の分散電源が系統連系される以前は、潮流データ計測値は負荷の値に等しかった。一方、分散電源の連系が進んだ系統では、潮流データ計測値は負荷と分散電源出力が合計された値に等しい。
【0003】
潮流データ計測値を負荷値と分散電源出力に分離するため、特許第6385292号公報(特許文献1)に記載の技術がある。この公報には、「配電線において計測された電圧,電流,及び力率が用いられて有効電力と無効電力とが算出されると共に所定の時間間隔だけ前の有効電力と無効電力との差分である有効電力変動及び無効電力変動が算出され、これら有効電力変動と無効電力変動とに基づいて算出される潮流の皮相電力変動及び潮流変動ベクトル角並びに予め設定された前記配電線における負荷変動の力率の値及び前記配電線に連系している分散型電源から出力される電力の力率の値が用いられて前記所定の時間間隔における前記分散型電源の発電出力変動が算定され、当該分散型電源の発電出力変動から前記分散型電源の発電出力が推定される」という記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、分散電源から発電出力が供給されていない若しくは殆ど供給されていない状態で計測を行って負荷特性(負荷変動の力率)を求め、この負荷特性を他の状態でも使用している。例えば、夜間や雨天時に求めた負荷特性を、日中や晴天時にも使用する。このように、従来の技術では、潮流データ計測値を負荷値と分散電源出力に分離する場合に、分離の時点とは異なる時点の負荷特性を用いるため、精度が悪化する可能性がある。
そこで、分散電源の出力の有無に関わらず、所望の時点の負荷特性を精度よく算出することが課題となっている。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、負荷特性を精度よく算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の電力特性算出装置の一つは、負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する第1の取得部と、前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出部と、を備え、前記算出部は、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出することを特徴とする。
また、代表的な本発明の電力特性算出方法の一つは、電力特性算出装置が、負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する取得ステップと、前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出ステップと、を含み、前記算出ステップは、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、負荷特性を精度よく算出することができる。上記以外の課題、構成、および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ローカル系統の一例を示す図である。(その1)
【
図2】ローカル系統の一例を示す図である。(その2)
【
図3】ローカル系統の一例を示す図である。(その3)
【
図4】潮流データの計測値と負荷値と分散電源出力値との時間変化の一例を示す図である。
【
図5】電力特性算出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図6】電力特性算出装置の機能的な構成の一例を示す図である。
【
図7】負荷値と分散電源出力値とを分離する方法の一例を示す図である。
【
図10】潮流データの計測値と負荷値と分散電源出力値との一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
なお、実施例を説明する図において、同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0012】
また、以下の説明では、情報の一例として「xxxデータ」といった表現を用いる場合があるが、情報のデータ構造はどのようなものでもよい。すなわち、情報がデータ構造に依存しないことを示すために、「xxxデータ」を「xxxテーブル」と言うことができる。さらに、「xxxデータ」を単に「xxx」と言うこともある。そして、以下の説明において、各情報の構成は一例であり、情報を分割して保持したり、結合して保持しても良い。
【実施例0013】
まず、負荷と分散電源と潮流データ計測値との関係について説明する。
図1は、負荷が連系されたローカル系統の一例(ローカル系統100)を示す図である。
図1では、分散電源が連係されていないため、負荷の合計と潮流データ計測値とが一致する。具体的には、ローカル系統100では、潮流データの計測値が200MWであり、100MW使われる負荷が2箇所に連系されているイメージを示している。
【0014】
図2は、負荷と分散電源とが連系されたローカル系統の一例(ローカル系統200)を示す図である。ローカル系統200では、潮流データの計測値が50MWであり、100MW使われる負荷が2箇所に連系され、50MWを出力する分散電源が3箇所に連系されているイメージを示している。
【0015】
負荷と分散電源とが連系されたローカル系統200では、負荷値と分散電源出力値とが合計された値である潮流データの計測値しか直接的に知ることができない。このため、ローカル系統200では、負荷値と分散電源出力値とのそれぞれの値を精度よく推定することは難しい。
【0016】
図3は、負荷と分散電源とが連系されたローカル系統の一例(ローカル系統300)を示す図である。ローカル系統300では、系統事故による分散電源の脱落前は、潮流データの計測値が50MWであり、100MW使う負荷が2箇所に連系され、50MW出力する分散電源が3箇所に連系されている。系統事故によって3箇所の分散電源が脱落した後は、潮流データの計測値が200MWになる。
【0017】
図4は、
図3のローカル系統300における潮流データの計測値と、負荷値と、分散電源出力値との時間変化の一例を示す図である。
図4に示す分散電源は、太陽光発電である。このため、日の出までの分散電源の出力は無視できる程度に小さい。結果として、日の出までの潮流データ計測値は、負荷値に一致する。日の出の後は、分散電源の出力が徐々に大きくなる。そして、潮流データ計測値は、分散電源の出力の分だけ負荷値から乖離して小さくなる。
【0018】
その後、系統事故が発生すると、分散電源の出力が失われ、潮流データ計測値は負荷値まで急激に上昇する。
このように、分散電源の脱落時には、潮流データ計測値の急激な上昇が発生する。このため、負荷値と分散電源出力が正確に把握できていないと、系統事故が生じたときの潮流データの挙動が予測できず、過負荷や電圧違反を起こす原因となる。
【0019】
潮流データ計測値から負荷値と分散電源出力を把握するには、負荷の力率を含む負荷特性を精度良く求めることが重要である。特に、分散電源の出力の有無に関わらず、任意の時点の負荷特性を求めることができれば、負荷値と分散電源出力の時間的な推移をデータ化することができ、時刻、天候、季節、故障の発生など、各種の状況下における負荷や分散電源の状態を高精度に分析し、予測することが可能となる。
【0020】
すなわち、系統発生時における潮流データ計測値の挙動予測に限らず、次に例示するような様々な用途で使用することができる。
「日没により太陽光発電の出力が減少した後に必要な電力を正確に予測する。」
「天候の悪化により太陽光発電の出力が減少した後に必要な電力を正確に予測する。」
「過去(昨日、一昨日等)の負荷値をもとに、未来(明日、明後日等)の負荷値を予測して必要な電力量を決める。」
「過去(昨日、一昨日等)の分散電源出力値をもとに、未来(明日、明後日等)の分散電源出力値を予測して必要な電力量を決める。」
【0021】
そこで、実施例1に開示する電力特性算出装置510は、分散電源の出力がある状況下でも負荷特性を算出可能としている。詳細については後述するが、電力特性算出装置510は、分散電源出力の変動が十分に小さい時間範囲内で、潮流データ計測値を複数時点に渡って取得し、潮流データ計測値の変動が負荷値の変動に由来するものとして負荷の力率を求めるのである。
【0022】
図5は、電力系統500に通信可能に接続された電力特性算出装置510のハードウェア構成の一例を示す図である。なお、実施例1では、電力系統500の構成要素の一部として、電力特性算出装置510が存在する例を説明する。
【0023】
電力系統500は、複数の発電機521~524および負荷531,532,534~536が、ノード541~546(母線)、変圧器551~554およびブランチ561~565(送電線路)等を介して相互に連系されたシステムである。
【0024】
発電機521~524は、集中型電源の一例であり、例えば、火力発電機、水力発電機または原子力発電機である。ノード541~546には、電力系統500の保護、制御および監視のための各種の計測器が設置されている。また、各ノード541~544には、蓄電池571~574および再生可能エネルギー発電機581~584が接続されている。なお、蓄電池571~574および再生可能エネルギー発電機581~584は、分散電源の一例である。再生可能エネルギー発電機581~584は、例えば、太陽光発電機、太陽熱発電機または風力発電機である。
【0025】
電力特性算出装置510は、例えば、計算機システムである。電力特性算出装置510は、通信ネットワーク501を介して電力系統500に接続されていて、電力系統500の計測情報等にアクセスすることができる。より具体的には、電力特性算出装置510は、出力部511、入力部512、通信部513、プロセッサ514、メモリ515および記憶装置516を備える。出力部511、入力部512、通信部513、プロセッサ514、メモリ515および記憶装置516は、バス517を介して接続されている。
【0026】
出力部511は、電力特性算出装置510で扱われるパラメータおよび電力特性算出装置510での処理結果等を出力する。出力部511は、ディスプレイ装置であってもよいし、ディスプレイ装置とともにプリンタ装置または音声出力装置等を用いてもよい。
【0027】
入力部512は、電力特性算出装置510を動作させるための各種条件等を入力する。入力部512としては、キーボード、マウス等を使用できる他、タッチパネルと音声指示装置との少なくとも1つを備えるようにしてもよい。
【0028】
通信部513は、通信ネットワーク501に接続するための回路および通信プロトコルを備える。通信ネットワーク501は、インターネット等のWAN(Wide Area Network)であってもよいし、WiFiまたはイーサネット(登録商標)等のLAN(Local Area Network)であってもよいし、WANとLANとが混在していてもよい。
【0029】
プロセッサ514は、コンピュータプログラムを実行し、記憶装置516に記憶されている各種のDB518(記憶部の一例)内のデータの検索、処理結果の表示指示、電力系統500の負荷周波数制御に関する処理等を行う。プロセッサ514は、CPU(Central Processing Unit)であってもよいし、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ514は、シングルコアロセッサであってもよいし、マルチコアロセッサであってもよい。プロセッサ514は、処理の一部または全部を行うハードウェア回路(例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))を備えていてもよい。プロセッサ514は、ニューラルネットワークを備えていてもよい。プロセッサ514は、1つまたは複数の半導体チップとして構成してもよいし、計算サーバのようなコンピュータ装置として構成してもよい。プログラムの実行は、複数のプロセッサ、コンピュータ等に分担させてもよい。また、プロセッサ514は、通信ネットワーク501を介してクラウドコンピュータ等に負荷周波数制御プログラムの全部または一部の実行を指示し、その実行結果を受け取るようにしてもよい。
【0030】
メモリ515は、例えば、RAM(Random Access Memory)として構成され、コンピュータプログラムおよび計算結果データを記憶したり、各処理に必要なワークエリアをプロセッサ514に提供したりする。
【0031】
記憶装置516は、大容量の記憶容量を有する記憶デバイスであり、例えば、ハードディスク装置、SSD(Solid State Drive)等である。記憶装置516は、各種プログラムの実行ファイルやプログラムの実行に用いられるデータを保持できる。記憶装置516は、DB518として、負荷特性DB518-1、分散電源出力特性DB518-2、負荷値DB518-3、分散電源出力値DB518-4等を保持することができる。また、記憶装置516は、電力特性算出プログラムを保持することができる。電力特性算出プログラムは、電力特性算出装置510にインストール可能なソフトウェアであってもよいし、電力特性算出装置510にファームウェアとして組み込まれていてもよい。
【0032】
負荷特性DB518-1には、負荷特性の情報が格納されている。負荷特性の情報は、負荷の力率を含む。負荷特性DB518-1に格納される負荷特性は、電力特性算出装置510が算出したものであり、ブランチごとに区別して格納される。
【0033】
分散電源出力特性DB518-2には、分散電源出力特性の情報が格納されている。分散電源出力特性の情報は、分散電源の力率を含む。分散電源出力特性DB518-2に格納される分散電源出力特性は、予め規定された値である。例えば、普及拡大が想定されている太陽光発電設備(複数直流入力の発電設備含む)については、現時点において標準的な力率値が95%と規定されている。これは、太陽光発電の導入拡大に伴い発生する配電線への逆潮流による電圧上昇問題への対策として、PCSの力率一定制御の有効性が示されたこと等によるものであり、系統内の分散電源は、この規定に従って運用される。
【0034】
負荷値DB518-3には、負荷値が格納されている。分散電源出力値DB518-4には、分散電源出力値が格納されている。負荷値や分散電源出力値は、電力特性算出装置510が算出したものであり、ブランチごとに区別して格納される。また、時刻、天候、季節、故障の発生など、負荷や分散電源出力値に関係する状況を対応付けて格納してもよい。
【0035】
また、
図5では、電力特性算出装置510が、負荷特性DB518-1、分散電源出力特性DB518-2、負荷値DB518-3、分散電源出力値DB518-4を保持する例を示したが、負荷特性DB518-1、分散電源出力特性DB518-2、負荷値DB518-3、分散電源出力値DB518-4の少なくとも1つをクラウドサーバに保持させるようにしてもよい。
【0036】
図6は、電力特性算出装置510の機能的な構成の一例を示す図である。なお、以下の説明では、「○○部は」と動作主体を記した場合、
図5のプロセッサ514がプログラムである○○部を読み出し、DRAM(Dynamic Random Access Memory)にロードした上で○○部の機能を実現するものとする。
【0037】
図6において、電力特性算出装置510は、取得部(過去)610、算出部620、取得部(分離断面)630、分離部640、負荷特性DB518-1、分散電源出力特性DB518-2、負荷値DB518-3、および分散電源出力値DB518-4を備える。
【0038】
取得部(過去)610は、負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する第1の取得部である。取得部(過去)610は、各ブランチ561~565における潮流データの計測値を取得する。例えば、取得部(過去)610は、電力系統500の計測器から各ブランチ561~565の有効電力と無効電力とを取得し、取得した有効電力と無効電力とを算出部620に出力する。取得部(過去)610が取得する潮流データ計測値は、リアルタイムに計測されたデータであってもよいし、所定のデータベースに蓄積された過去のデータであってもよい。
【0039】
算出部620は、短周期の潮流データの計測値を一定の計測時間において入力し、取得した有効電力と無効電力との関係より負荷特性を算出し、算出した負荷特性を負荷特性DB518-1に出力する。
【0040】
取得部(分離断面)630は、分散電源の出力を求める時点について潮流データ計測値を取得する第2の取得部である。分散電源の出力を求める時点、すなわち、負荷値と分散電源出力値とを分離する時間断面を、便宜上、分離断面という。取得部(分離断面)630は、各ブランチ561~565における潮流データの計測値を取得する。例えば、取得部(分離断面)630は、分離断面において、電力系統500の計測器から各ブランチ561~565の有効電力と無効電力とを取得し、取得した有効電力と無効電力とを分離部640に出力する。取得部(分離断面)630が取得する潮流データ計測値は、リアルタイムに計測されたデータであってもよいし、所定のデータベースに蓄積された過去のデータであってもよい。
【0041】
分離部640は、負荷特性DB518-1に格納された負荷特性と、分散電源出力特性DB518-2に格納された分散電源出力特性と、取得部(分離断面)630により取得された潮流データの計測値とを入力し、潮流データの計測値を負荷値と分散電源出力値とに分離する。分離部640は、分離した負荷値を負荷値DB518-3に出力し、分離した分散電源出力値を分散電源出力値DB518-4に出力する。
【0042】
図7は、分離部640において、負荷値と分散電源出力値とを分離する方法の一例を示す図である。
図7に示したイメージ710は、負荷特性と分散電源出力特性とを示す。イメージ710は、横軸(x軸)を有効電力、縦軸(y軸)を無効電力とした場合の、負荷特性DB518-1に格納された負荷特性の式(y=ax+b)と、分散電源出力特性DB518-2に格納された分散電源出力特性の式(y=cx+d)とを示している。なお、分散電源出力特性については、傾き(力率)が既知である前提であるため、cは既知であるが、dは未知である。
【0043】
イメージ720は、電力特性算出装置510が取得した潮流データの計測値を、負荷特性と分散電源出力特性とに基づいて、負荷値と分散電源出力値とに分離する処理を示している。潮流データの計測値(x1,y1)は、負荷値と分散電源出力値の合計である。そこで、傾きaの直線上に所在する負荷値(x2,y2)と、傾きcの直線上に所在する分散電力出力値(x3,y3)とが、x1=x2+x3、y1=y2+y3を満たすよう負荷値(x2,y2)及び分散電力出力値(x3,y3)を求める。
【0044】
図8は、電力特性算出装置510が負荷値と分散電源出力値とを分離する処理(分離処理)の一例を示す図である。電力特性算出装置510は、ステップS811~ステップS812では分散電源出力値が「0」である日等のデータを用いずに負荷特性を取得し、ステップS821では分散電源出力特性を取得し、ステップS831では潮流データの計測値を取得し、ステップS841では潮流データの計測値を負荷値と分散電源出力値とに分離する。
【0045】
ステップS811は、電力特性算出装置510の取得部(過去)610が、負荷特性を取得するために、潮流データの計測値の有効電力と無効電力とを取得する取得ステップである。潮流データ計測値について、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0046】
図9は、有効電力のデータと無効電力のデータとを含む潮流データの計測値の一例を示す図である。潮流データの計測値は、短周期で取得されている。
【0047】
図10は、潮流データの計測値と負荷値と分散電源出力値との一例を示す図である。数時間のオーダーで見た場合、潮流データ計測値には、分散電源出力値に応じた変動がある。しかし、ローカル系統の規模の場合、数分オーダーの短時間を切り出してみれば、分散電源出力値は大きく変動しない。その一方、負荷値は数分のオーダーでみたとしても変動が存在する。このことに着目すると、短時間における潮流データの計測値の変動は、負荷値の変動に等しいと仮定できる。
【0048】
なお、短周期とは、電力系統500の計測器が取得できる周期であり、例えば、数十ミリ秒から十数秒間程度の周期のことを示す。また、短時間とは、一定の計測時間であり、分散電源出力値の変動が一定以下となる時間範囲のことを示し、例えば数十秒間から数分程度である。ただし、短周期および短時間(計測時間)は、計測器の性能、データを取得するエリアの規模によって値が異なるため、上記に記載した周期および時間は、あくまで一例に過ぎない。
【0049】
短周期および計測時間の少なくとも1つについては、手動で設定しても自動で決定してよいものとする。また、天候、時間帯毎の分散電源出力値の統計データを用いて、短周期および計測時間の少なくとも1つを決定してよいものとする。
【0050】
図8に戻り、ステップS812は、電力特性算出装置510の算出部620が、ステップS811で取得した有効電力および無効電力から近似直線を求めることで負荷特性を算出する算出ステップである。
図11は、有効電力および無効電力を示す点がプロットされ、これらの点の近似直線1100が求められたときの図である。
【0051】
ステップS821では、電力特性算出装置510の分離部640は、分散電源出力特性(各一般送配電会社毎に定めた指定力率等)を取得する。
【0052】
ステップS831では、電力特性算出装置510の取得部(分離断面)630は、分離断面での潮流データの計測値の有効電力と無効電力とを取得する。
【0053】
ステップS841では、電力特性算出装置510の分離部640は、分離断面における、ステップS812で算出した負荷特性と、ステップS821で取得した分散電源特性と、ステップS831で取得した潮流データの計測値とを用いて、負荷値と分散電源出力値とを求める。
【0054】
なお、負荷特性の算出と、負荷値および分散電源出力値の分離との少なくとも1つは、所定の時間間隔で行われてもよいし、予め指定された時間に行われてもよいし、ユーザ操作に応じて行われてもよいし、その他のタイミングで行われてもよい。
【0055】
本実施の形態によれば、
図12に示すように、電力特性算出装置510によって負荷特性を都度算出することで、真値に近い負荷特性が得られる。したがって、負荷特性を都度算出可能な本発明を適応した上述した実施の形態においては、潮流データの計測値から、精度よく負荷値と分散電源出力値とを分離できる。
【0056】
上述してきたように、実施例に開示した電力特性算出装置510は、負荷と分散電源とが連係するブランチについて複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を取得する第1の取得部610と、前記潮流データ計測値に含まれる有効電力と無効電力との関係に基づいて、所定の時点における前記負荷の負荷特性を算出する算出部620と、を備える。そして、前記算出部620は、前記所定の時点近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する。
かかる構成及び動作によれば、電力特性算出装置510は、分散電源の出力の有無に関わらず、任意の時点の負荷特性を算出可能である。
このため、負荷特性を精度よく算出することができる。
【0057】
また、電力特性算出装置510は、前記分散電源の出力を求める時点について前記潮流データ計測値を取得する第2の取得部630と、前記算出部620により算出された前記負荷特性と前記分散電源の力率とを用い、前記第2の取得部により取得された前記潮流データ計測値から前記分散電源の出力を分離する分離部640と、をさらに備える。そして、前記算出部620は、前記分散電源の出力を求める時点の近傍の複数の有効電力と無効電力の関係に基づいて、前記負荷特性を算出する。
かかる構成及び動作によれば、電力特性算出装置510は、分散電源の出力を求める時点の負荷特性を算出することができるので、分散電源の出力を精度よく求めることができる。
【0058】
また、前記算出部620は、前記第1の取得部610により取得された複数の潮流データ計測値に含まれる複数の有効電力と無効電力とから近似直線を求め、当該近似直線の傾きを前記負荷特性として算出する。
このため、潮流データ計測値の変動を負荷値の変動と見做して負荷特性を算出することができる。
【0059】
また、前記算出部620は、前記第1の取得部610により取得された複数の潮流データ計測値に含まれる複数の有効電力と無効電力とから近似直線を求め、当該近似直線の傾きによって示される力率を前記負荷特性として算出し、前記分離部640は、第2の取得部630により取得された前記潮流データ計測値を、前記分散電源の力率と前記負荷特性である力率とに基づいて分離することで、前記分散電源の出力と前記負荷の負荷値を求める。
このため、潮流データ計測値の変動を負荷値の変動と見做して分散電源の出力と負荷値を求めることができる。
【0060】
また、前記算出部620は、前記分散電源の出力の変動が所定値内に収まる時間の範囲で複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出する。
このため、分散電源の出力がある時点についても、分散電源の出力の影響を排除して負荷特性を算出することができる。
【0061】
また、前記算出部620は、現時点近傍の複数時点に渡って計測された潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出し、現時点における前記負荷特性を算出することを特徴とする。
このため、電力特性算出装置510は、分散電源の出力と負荷値をリアルタイムで把握することができる。
【0062】
また、前記算出部620は、蓄積された過去の潮流データ計測値のうち、指定された時点近傍の複数の潮流データ計測値を用いて前記負荷特性を算出し、前記指定された時点における前記負荷特性を算出する。
このため、電力特性算出装置510は、過去の任意の時点の分散電源の出力と負荷値を求めることができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除または置換をすることが可能である。
【0064】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態に記載の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は、本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等が用いられる。
【0065】
また、本実施の形態に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラムまたはスクリプト言語で実装できる。
【0066】
さらに、実施の形態に記載の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段またはCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0067】
上述の実施の形態において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。