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特開2023-12459共沈によるサブミクロン範囲内の非晶質固体分散物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012459
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】共沈によるサブミクロン範囲内の非晶質固体分散物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20230118BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/32
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022160657
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2020124188の分割
【原出願日】2015-07-31
(31)【優先権主張番号】107846
(32)【優先日】2014-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(71)【出願人】
【識別番号】514246691
【氏名又は名称】ホビオネ インターナショナル エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】マルシオ テムテム
(72)【発明者】
【氏名】ルベン ペレイラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン ヴィンセンテ
(72)【発明者】
【氏名】フィリペ ガスペル
(72)【発明者】
【氏名】イリス デュアルテ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医薬としての使用のための微粒子非晶質固体分散物の製造方法を提供する。
【解決手段】微粒子形態の非晶質固体分散物の製造方法は、(i)少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を使用して調製され、安定剤が、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤である工程、(ii)マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒を含む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、(iii)蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又は任意のこれらの組合わせを用いて粉末形態の該非晶質粒子を単離し、約0.1g/ml~約1.0g/mlの範囲内のバルク密度を有する非晶質粒子を形成する工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶
液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を使用して調製される、前記工程、並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒を含
む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び前記少なくとも1つの安定剤を含
む溶液を合わせて第一の流れを形成し、その後前記第二溶媒と混合する、請求項1記載の
方法。
【請求項3】
前記第二溶媒が、前記医薬活性成分及び前記安定剤の両方に対する貧溶媒である、請求
項2記載の方法。
【請求項4】
前記安定剤を含む溶液を、前記第二溶媒と合わせて、第二の流れを形成する、請求項1
記載の方法。
【請求項5】
前記第二の流れが前記医薬活性化合物に対する貧溶媒を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記医薬活性化合物を含む溶液が、第一の流れを形成する、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 第一溶媒を使用した、少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び第二溶媒
を使用した、少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって;該第二溶媒が
該医薬活性化合物に対する貧溶媒である、前記工程;並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該溶液を混合し、共沈により非晶質粒
子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法。
【請求項8】
粉末形態の前記非晶質粒子を分離する単離工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか1
項記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質粒子が、蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又はこれらの任意の組合わせにより
単離される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記非晶質粒子が、サブミクロン範囲内の粒度を有するナノ粒子である、請求項1~9の
いずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記粒度が約50 nm~約10 μmの範囲内である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記粒度が約50 nm~約1 μmの範囲内、又は50 nm~約500 nmの範囲内にある、請求項1
1記載の方法。
【請求項13】
前記安定剤が、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤である
、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー及び/又は界面活性剤が、前記分散物の約0.001~90%(w/w)の範囲内の
量で存在する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが:セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンオキシド
、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール
、酢酸ビニルポリマー、オリゴ糖、多糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピ
ロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタレート、コハク酸セルロース、酢酸
フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン
オキシド、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、メタクリル酸/アク
リル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースサクシネート、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ジメチルア
ミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシア
ルキルメタクリレート)、ゼラチン、酢酸ビニル及びクロトン酸のコポリマー、部分加水
分解ポリビニルアセテート、カラギーナン、ガラクトマンナン、高粘度ゴム又はキサンタ
ンガム、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は非イオン性界
面活性剤を含む、請求項13又は14記載の方法。
【請求項17】
前記アニオン性界面活性剤が:ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシ
ル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート、アルギン酸ナトリウム、
ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセ
ロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びそれ
らの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリコ
コール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、及びこれらの塩、デオキシコール
酸ナトリウム、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記カチオン性界面活性剤が:第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)、
臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシ
ルカルニチン塩酸塩、又はハロゲン化アルキルピンジニウム、及びこれらの組合わせを含
む群から選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記非イオン性界面活性剤が:ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン
エステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリ
ールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポ
リマー(ポロキソマー)、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロー
ス、ポリビニルアルコール、グリセリルエステル、及びポリビニルピロリドン、及びこれ
らの組合わせを含む群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
前記第一溶媒が、各溶液について同じでも、異なっていてもよい、請求項1~19のいず
れか1項記載の方法。
【請求項21】
前記第一溶媒及び/又は前記第二溶媒が、溶媒混合物を含む、請求項1~20のいずれか1
項記載の方法。
【請求項22】
前記第一及び第二溶媒が、同じでも、異なっていてもよい、請求項1~21のいずれか1項
記載の方法。
【請求項23】
前記第一及び/又は第二溶媒が:水、アセトン、塩化メチル、ジメチルホルムアミド、
メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジメチルアセト
アミド、乳酸、イソプロパノール、3-ペンタノール、n-プロパノール、グリセロール、ブ
チレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド
、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコ
ールエステル、ポリエチレングリコールソルビタン、ポリエチレングリコールモノアルキ
ルエーテル、ポリプロピレングリコール、アルギン酸ポリプロピレン、ブタンジオール、
及びこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記貧溶媒が水溶液を含む、請求項1~23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記水溶液が脱イオン水である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記貧溶媒に、pH調整剤を加えることをさらに含む、請求項1~25のいずれか1項記載の
方法。
【請求項27】
前記pH調整剤が:水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液、又はクエン酸塩、酢酸塩、
乳酸塩、メグルミン、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、請求項26記載の方
法。
【請求項28】
前記医薬活性化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤である、請求項1~27のいずれか1項記
載の方法。
【請求項29】
前記チロシンキナーゼ阻害剤が:アキシチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチ
ニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニ
ブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、及び
これらの組合わせを含む群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記医薬活性化合物がニロチニブである、請求項1~29のいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記医薬活性化合物が、前記分散物の約0.1~約95%(w/w)の範囲内の量で存在する、
請求項1~30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記医薬活性化合物の溶解プロファイルを向上させるため、可塑化化合物が加えられる
、請求項1~31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
前記マイクロ流体化又はマイクロ反応が、少なくとも1つのマイクロ流体反応技術(MRT
)又はマイクロリアクタを用いて達成される、請求項1~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記MRT及び前記マイクロリアクタが、反応チャンバを備える、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記反応チャンバが1以上のチャネルを備え、該チャネルの各々が約10ミクロン~約400
ミクロンの範囲内の直径を有する、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記チャネルの直径が約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内である、請求項35記載の
方法。
【請求項37】
前記MRT又は前記マイクロリアクタが直列に、又は並列に配置される、請求項31~36の
いずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記MRT又は前記マイクロリアクタが連続流リアクタである、請求項33~37のいずれか1
項記載の方法。
【請求項39】
前記溶液を前記反応チャンバへと連続的にポンプを用いて供給し、該チャンバ内で該溶
液を混合し、反応させる(連続流反応)、請求項33~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で、前記医薬
活性化合物及び前記安定剤を含む該第一の流れを、該医薬活性化合物及び該安定剤に対す
る前記貧溶媒を含む該第二の流れと合わせ;かつ該流れ中の成分が反応して共沈により非
晶質粒子の懸濁液を形成するように、前記反応チャンバ中の前記1以上のチャネルへ送達
する、請求項31~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
前記第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で、前記医薬
活性化合物を含む該第一の流れを、前記安定剤、及び該医薬活性化合物に対する前記貧溶
媒を含む該第二の流れと合わせ、かつ該流れ中の成分が反応して共沈により非晶質粒子の
懸濁液を形成するように、前記反応チャンバ中の前記1以上のチャネルへ送達する、請求
項33~39のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記圧力が約345 bar(34.5 MPa)~約3500 bar(350 MPa)の範囲内にある、請求項40
又は41記載の方法。
【請求項43】
前記MRT及び/又はマイクロリアクタ内部での相互作用後に、合わせられた流れを冷却し
、又はクエンチすることをさらに含む、請求項33~42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
5~95%(w/w)の前記医薬活性成分、及び95~5%(w/w)の前記安定剤を含む、請求項
1~43のいずれか1項記載の方法により得られる微粒子非晶質固体分散物。
【請求項45】
前記安定剤が、少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのポリマーを含む
、請求項44記載の微粒子非晶質固体分散物。
【請求項46】
前記微粒子が約50 nm~約10 μmの範囲内の粒度を有するナノ粒子を含む、請求項44又
は45記載の微粒子非晶質固体分散物。
【請求項47】
前記粒度が約50 nm~約1 μmの範囲内; 又は50 nm~約500 nmの範囲内である、請求項4
6記載の微粒子非晶質固体分散物。
【請求項48】
前記微粒子が約0.1 g/ml~約1.0 g/mlの範囲内のバルク密度を有する、請求項44記載の
微粒子非晶質固体分散物。
【請求項49】
請求項44~48のいずれか1項記載の微粒子非晶質固体分散物を含む、医薬組成物。
【請求項50】
医薬としての使用のための、請求項44~48のいずれか1項記載の微粒子非晶質固体分散
物を含む医薬組成物。
【請求項51】
医薬活性化合物の生物学的利用能の増加における使用のための、請求項44~48のいずれ
か1項記載の微粒子非晶質固体分散物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 発明の分野)
本発明は、画定された反応チャンバ又はマイクロチャネルの中で分子の接触/相互作用
を促進する装置(以下マイクロ反応技術(MRT)と呼ぶ)内で、溶媒によって制御される
共沈を実施することによる、非晶質固体分散物の生産方法に関する。詳細には、本発明は
サブミクロン範囲の粒度を有する、微粒子形態の医薬活性化合物(API)の非晶質固体分
散物の生産方法、該方法によって得られる非晶質固体分散物、及びこれらの使用に関する
。該方法は医薬分野において、詳細には活性医薬成分、薬物生産物中間体、又は薬物生産
物の処理において適用することができる。本明細書に記載の方法は、連続的製造に適合し
、単一工程による固体分散物の合成及び粒子工学を可能にする。さらに、本発明の方法に
従って生産された非晶質微粒子は、粒度及び粒子密度の観点で有利な特性を提示する。
【背景技術】
【0002】
(2. 発明の背景)
開発下の活性医薬物質のうち最大で90%のものは、水溶性に乏しく、通常低い生物学的
利用能をもたらす。これを克服し、新規化学物質を医薬薬物生産物へと首尾よく転換する
ことを促進するため、様々な工学技術及び製剤化アプローチ:粒子設計及び粒度低下技術
、自己乳化型薬物送達系、シクロデキストリン複合体、非晶質固体分散物、塩形態、並び
に共結晶形態が開発されてきた。様々な選択肢の中でも、安定化された非晶質固体分散物
の使用は、ますます普及するプラットフォームとなっており、多数の薬物が上市されてい
る。非晶質固体分散物は少なくとも2つの成分、一般に安定剤(例えば、ポリマー)及び
薬物を含む。他の製剤化戦略との比較における非晶質固体分散物の特有の利点は、吸収の
場でいったん該薬物が溶解し始めると、過飽和状態が得られる、すなわち、該薬物の濃度
がその固有の溶解度を相当に上回る値に達することである。溶解動力学を向上させること
(開発可能性分類体系(Developability Classification System, DCS)、又は生物医薬
分類体系(Biopharmaceutics Classification System, BCS)に従ってクラスIIa化合物に
適用可能である)により、及び/又は溶液中の活性化合物の最大濃度を増加させること(D
CSクラスIIb化合物に適用可能である)により、生物学的利用能の増強を達成することが
できる。溶解動力学が生物学的利用能を達成するのに重要である場合、該非晶質固体分散
物の特性、すなわち粒度は、薬物生産物の溶解プロファイルにおいて重要な役割を果たし
得る。
【0003】
種々の方法が、固体分散物の製造に関する文献において報告されている(例えば、噴霧
乾燥、凍結乾燥、ホットメルト押出成形)が、該粒度をサブミクロン範囲に制御しながら
、同時に固体分散物微粒子の非晶質性を維持することを、可能にする技術における最新技
術は、不足している。噴霧乾燥された粒子は典型的に中空であり、低い密度、及び2~120
ミクロンの範囲内の粒度を有するのに対して、ホットメルト押出成形で得られる押出品は
高密度の非常に粗目の粒子又はペレットであり、微細物質を得るために追加の下流処理(
例えば、ミル粉砕)を要求する。
【0004】
本発明の目的の一つは、マイクロ反応又はマイクロ流体化を使用して、活性成分、賦形
剤、例えば安定剤、及び溶媒/貧溶媒系を含む流れの間で分子の接触又は相互作用を促進
する代替の共沈プロセスを提供すること、並びに高密度のサブミクロン範囲の非晶質固体
分散物を得ることである。
【0005】
無機化合物の適用の分野において、Filipa Castroらのマイクロ反応技術(博士論文、
「ヒドロキシアパタイトナノ粒子の生産プロセスの強化(Process Intensification for
the Production of Hydroxyapatite Nanoparticles)」, Univ. Minho, 2013)を適用し
て、ヒドロキシアパタイトナノ粒子の生産及び特性が改善された。撹拌槽のような従来の
アプローチと比較して、Filipa Castroらは、熱及び物質移動を増強する、表面対体積比
の増加に起因する利点を観察した。
【0006】
医薬化合物の適用の分野において、最新技術には、薬物単独粒子の処理及び/又は結晶
性物質の処理における数例の類似のアプローチが含まれる。US 8,367,004 B2は、サブミ
クロン範囲の粒度を有する結晶又は多形の生産方法を開示している。Hany Aliらの文献(
Iranian Journal of Pharmaceutical Research, 13 (3), 2014, 785-795)には、ブデソ
ニドのナノ結晶を生産するためのボトムアップ技術が記載されている。Hong Zhaoらの文
献(Ind. Eng. Chem. Res., 46 (24), 2007, 8229-8235)には、サブミクロン領域の活性
医薬成分の薬物単独結晶粒子の生産方法が記載された。また、中国特許CN201337903YAで
は、非晶質薬物単独微粒子生産物、セフロキシムアキセチルの生産に関する新たな設定の
詳細が開示された。先に記載の参考文献はマイクロ流体化又はマイクロ反応、及びその利
益について深い洞察を提供するが、驚くべきことに非晶質固体分散物の共沈の評価は、最
新技術において全く行なわれていない。
【0007】
用語「マイクロ反応」は、マイクロリアクタ、マイクロミキサ、マイクロチャネル、又
はマイクロ流体場内に含まれる、任意の他の構成要素の中での物理反応及び/又は化学反
応に関与する技術に関する。
【0008】
用語「マイクロ流体化」は、マイクロ流体反応技術(MRT)を指し、これは装置のよう
な装置設備(hardware)及びプロセスの両方を包含する。MRTを用いて、ナノ粒子を生産
し、かつ/又は単相及び多相反応物流の間の拡散限界を最小化することにより、化学反応
速度を迅速化させることができる。該技術は高い剪断力、メソ混合範囲及びマイクロ混合
範囲における激しく均質な混合を提供し、かつナノメートル規模の渦及び生産物を生成す
る固定形状を介した連続的な流体処理に関与する。
【0009】
用語「非晶質固体分散物」は、マトリックス中で非晶質状態の、少なくとも1つの薬物
の分散物として定義される。該マトリックスはポリマー、界面活性剤(surfactants)、
又はこれらの混合物を含むことができる。また、本発明の範囲において、この用語は活性
成分及び該マトリックスの両方を含む非晶質ナノ粒子の形態の、共沈物を記載するのに使
用される。
【0010】
医薬非晶質固体分散物の例では、成分、溶媒及び/又は貧溶媒系の選択、各成分それぞ
れの濃度、並びに混合条件は、沈殿した粒子の組成物が意図する製剤に相当するような方
法で、全成分の同時沈殿又は共沈にきわめて重要となる。本明細書で開示される方法は、
医薬非晶質固体分散物の生産の困難に対処するだけでなく、そのようなサブミクロン範囲
の微粒子系の制御にも対処する。従って、一般にBCSクラスII化合物と呼ばれる溶解速度
及び/又は溶解度の両方が限定された医薬化合物に取り組むことは、妥当である。
【0011】
また、溶媒により制御される共沈を通じたサブミクロン粒子の生産の分野において、最
新技術には、いくつかの意義深い例がある。US 7,0375,28 B2は、酸性化された冷水を貧
溶媒として、かつ腸溶性ポリマーを分散剤として使用する、溶媒により制御された沈殿を
通じて共沈した粒子が得られるプロセスを開示する。共沈の工程に続いて、該特許には0.
4 μm~2.0 μmの範囲の粒度を得るための高エネルギー工程の実施が記載されている。し
かしながら、この方法を通じた共沈粒子の生産は、非晶質、結晶、又は半結晶となり得る
物質の固体状態に対する制御を可能とはしない。さらに、共沈工程に続く第3の工程の使
用は、粒子を高エネルギー条件に付することにより、粒度が安定化することを示唆してい
る。US 7,037,528 B2のもう1つの制限は、製剤中で界面活性剤を使用することが必須であ
ることを原因とする。本発明はこれらの全ての制限に対処する。
【0012】
WO 2013105894A1には、2つの流れを混合し、混合物をノズルを介して噴霧し、かつ乾燥
させることによる非晶質混成ナノ粒子を生産する製造方法が記載されている。この方法は
微粒化の前に物質を沈殿させるために、流れの1つにおいて超臨界流体を使用し、噴霧器
から乾燥された粒子を収集する。この方法はサブミクロン範囲の粒度を有する非晶質固体
分散物を生産するのに適しているが、典型的には二酸化炭素である該超臨界流体への化合
物の溶解度により制約され、超臨界流体が混ざった高圧高温のガスによる供給物の処理と
いう難題を付け加え、この難題は商業的製造に関する深刻な障害となる。
【0013】
従って、本発明の発明者らは、非晶質固体分散物、詳細にはサブミクロン範囲内のもの
を生産する方法を提供することのニーズを認識している。このことは、単一の製造工程に
おいて、少なくとも50nmまで低下させた安定した大きさで医薬非晶質固体分散物粒子の生
産を可能とする、本発明の方法により達成される。該方法はマイクロ反応又はマイクロ流
体化を使用して、高密度のサブミクロン範囲の非晶質固体分散物を得るために、活性成分
を含む流れの間の分子の接触又は相互作用を促進する。また、この技術は連続処理に適応
可能であり、商業規模まで容易に大規模化可能である。さらに、該成分は溶媒系及び/又
は貧溶媒系のいずれかに溶解することができるため、それらの溶解度の制約は、最小化さ
れる。
【発明の概要】
【0014】
(3. 発明の概要)
本発明の一態様に従って、微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶
液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を使用して調製される、前記工程、並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒を含
む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法が提
供される。
【0015】
好ましくは、該少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び該少なくとも1つの安
定剤を含む溶液を合わせて第一の流れを形成し、その後該第二溶媒と混合する。ここで、
該第二溶媒は、該医薬活性成分及び該安定剤の両方に対する貧溶媒とすることができる。
好ましくは、該安定剤を含む溶液を、該第二溶媒と合わせて、第二の流れを形成する。こ
こで、該第二の流れは該医薬活性化合物に対する貧溶媒を含む。
【0016】
本発明の別の態様に従って、微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 第一溶媒を使用した、少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び第二溶媒
を使用した、少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって;該第二溶媒が
該医薬活性化合物に対する貧溶媒である、前記工程;並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該溶液を混合し、共沈により非晶質粒
子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法が提供される。
【0017】
該方法は、好ましくは粉末形態で該非晶質粒子を分離する単離工程を含む。
【0018】
本発明の別の態様に従って、本発明の方法によって得られる微粒子非晶質固体分散物が
提供され、該分散物は5~95%(w/w)の該医薬活性化合物及び95~5%(w/w)の該安定剤
を含む。該安定剤は、好ましくは少なくとも1つの界面活性剤及び/又はポリマーである。
【0019】
本発明の別の態様に従って、本明細書に記載される通りの微粒子非晶質固体分散物を含
む、医薬組成物が提供される。
【0020】
本発明の別の態様に従って、医薬としての使用のための微粒子非晶質固体分散物を含む
、医薬組成物が提供される。
【0021】
本発明の別の態様に従って、医薬活性化合物の生物学的利用能の増加における使用のた
めの、微粒子非晶質固体分散物が提供される。
【0022】
本発明の先に記載の及び他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明、及び添付す
る図面を考慮することにより、より容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
(4. 図面の簡単な説明)
これらの図面は本発明の実施態様の一部の特定の態様を示したものであり、本発明を制
限し、又は定義するために使用されるべきではない。
【0024】
図1】本発明のプロセスの図式的表現を示す。
図2】10重量%及び40重量%の薬物負荷のイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L100共沈物に対応するXRPDパターンを示す(それぞれA1及びA2のスペクトル)。
図3】濾過により単離し、加えて棚型乾燥器オーブン中で乾燥させた(B1)、及び噴霧乾燥により単離した(B2)、10重量%のシンナリジン:Eudragit(登録商標)L100共沈物に対応するXRPDパターンを示す。
図4】噴霧乾燥により単離した10重量%シンナリジン:Eudragit(登録商標)L100共沈生産物に対応するa) 1000×、b) 3000×、c) 10,000×、及びb) 30,000×倍率のSEM顕微鏡写真を示す。
図5】10重量%及び40重量%の薬物負荷のニロチニブ:Eudragit(登録商標)L100共沈物(それぞれC1及びC2のスペクトル)に対応するXRPDパターンを示す。
図6】40重量%ニロチニブ:Eudragit(登録商標)L100ナノ非晶質製剤(A)、40重量%ニロチニブ:Eudragit(登録商標)L100マイクロ非晶質製剤(B)、及び結晶状態のニロチニブ(C)の、240分間にわたって取得された粉末溶解プロファイルを示す。
図7】共沈後(A)、及び噴霧乾燥による単離後(B)の20重量%カルバマゼピン:Eudragit(登録商標)L100に対応するXRPDディフラクトグラムを示す。
図8】20重量%カルバマゼピン:Eudragit(登録商標)L100共沈生産物に対応するa) 1500×、b) 3000×、c) 10,000×、及びd) 40,000×倍率のSEM顕微鏡写真を示す。
図9】20重量%カルバマゼピン:Eudragit(登録商標)L100噴霧乾燥生産物に対応するa) 500×、b) 1000×、c) 5,000×、及びd) 20,000×倍率のSEM顕微鏡写真を示す。
図10】本発明の範囲内で生産された物質(ナノ非晶質―A)、及び噴霧乾燥により生産された物質(マイクロ非晶質―B)の粉末のインビトロでの溶解プロファイルを示す。
図11】20重量%カルバマゼピン:Eudragit(登録商標)L100ナノ非晶質(A)、マイクロ非晶質(B)、及び結晶状態のモデルカルバマゼピン(C)を有する製剤の、180分間にわたって取得された薬物動態学的プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(5. 発明の詳細な説明)
本発明は、少なくとも1つの医薬活性化合物及び少なくとも1つの安定剤を含み、サブミ
クロン範囲の粒度を有する微粒子形態の非晶質固体分散物を生産するための方法を提供す
る。
【0026】
図1に示すように、製造プロセスは、3つの段階に分けることができる:
段階(i)―2つの溶媒(第一溶媒及び第二溶媒)を選択する。該溶媒は対象となる活性医薬
化合物が一方の溶媒中で部分的に可溶性であり(以降単に「溶媒」と呼ぶこととする)、
他方の溶媒中では実質的に不溶性である(以降単に「貧溶媒」と呼ぶこととする)ように
選択される。好ましい態様において、医薬活性化合物(複数可)及び安定剤(すなわち、
ポリマー(複数可)及び/又は界面活性剤(複数可))は該第一溶媒に溶解し、又は部分
的に溶解し、該第二溶媒は該医薬活性化合物(複数可)及び該安定剤の両方に対する貧溶
媒を含む。好ましい態様において、該医薬活性化合物(複数可)は該第一溶媒に溶解し、
又は部分的に溶解し、該第二溶媒は該医薬活性化合物(複数可)に対する貧溶媒である。
好ましい態様において、該安定剤(すなわち、界面活性剤、ポリマー)は該第二溶媒に溶
解し、又は部分的に溶解し、該第二溶媒は該医薬活性化合物(複数可)に対する貧溶媒で
ある。本明細書では、用語「貧溶媒」は、前記物質/化合物(複数可)が実質的により低
い溶解度を示す溶媒を記載するのに使用する。2以上の物質/化合物(複数可)が一般的な
貧溶媒に混合されると、該物質はそれに溶解するのではなく、該貧溶媒中で沈殿し、好ま
しくは異なる物質でできた複合体粒子を形成する。
【0027】
好ましくは、本明細書では用語「貧溶媒」は溶媒又は溶媒混合物を記載するのに使用さ
れ、ここで前記物質は、溶媒と比較して実質的により低い溶解度を示す。好ましくは、用
語「貧溶媒」は、前記物質が完全に不溶性である溶媒を指すのに使用される。
【0028】
好ましくは、用語「溶媒」は、本明細書において溶媒又は溶媒の混合物を記載するのに
使用され、ここで前記物質は最大50容量/溶質1 gの比率の溶解度を示す。用語「容量/g」
は溶質1グラム当たりの溶媒のミリリットル数を指す尺度である。
【0029】
当業者であれば、特定の化合物に対する溶媒として、及び別の化合物に対する貧溶媒と
して使用することのできる溶媒を選択することができるであろう。
【0030】
好ましくは、用語「可溶性である」は、1部の溶質を溶解させるのに10~30部の溶媒が
必要となることを意味する。
【0031】
好ましくは、用語「実質的により低い溶解度」は、1部の溶質を溶解させるのに100~10
00部の溶媒が必要となることを意味する。
【0032】
好ましくは、用語「実質的に不溶性である」は、1部の溶質を溶解させるのに1000~10,
000部の溶媒が必要となることを意味する;かつ用語「不溶性である」は、1部の溶質を溶
解させるのに10,000部超の溶媒が必要となることを意味する。
【0033】
用語「溶媒」部(複数可)及び「溶質」部(複数可)は、溶質1グラム当たりのミリリ
ットルで表した適切な溶媒の容量を指す。
【0034】
段階(i)では、少なくとも1つの溶媒/貧溶媒系中で共沈物を形成することのできる、1以
上の医薬活性化合物及び1以上の安定剤(すなわち、ポリマー(複数可)及び/又は界面活
性剤(複数可))の溶液を含む第一の流れ(1)を調製する。好ましくは、1以上の医薬活性
化合物の溶液、及び1以上の安定剤(すなわち、ポリマー(複数可)及び/又は界面活性剤
(複数可))の溶液は、別個に調製され、その後に合わせて該第一の流れを形成する。該
医薬活性化合物及び該安定剤に対する貧溶媒を含む第二溶媒を含む第二の流れ(2)を調
製する。
【0035】
好ましい一態様において、1以上の安定剤の溶液を該第二溶媒と合わせて該第二の流れ
を形成し、又は該安定剤を該第二溶媒に直接加えて該第二の流れを形成させることができ
る。この場合、該第二溶媒は該安定剤の溶媒として、かつ該第一の流れ中に存在する該医
薬活性化合物(複数可)の貧溶媒として作用することができる。
【0036】
好ましくは、該溶液(複数可)中に存在する該医薬活性化合物の該安定剤に対する比率
は、約95~5(% w/w)から約5~95(% w/w)の範囲内である。
【0037】
段階(ii)―該第一の流れ(1)及び該第二の流れ(2)をマイクロ流体化又はマイクロ反応を
実施するための装置(3)内で、制御された条件下で混合する。マイクロ流体化を実施する
ための装置は、好ましくは画定された反応チャンバ又はマイクロチャネル内部での高度に
有効な分子の接触/相互作用を促進し、2つの流れ中の物質の共沈による非晶質ナノ粒子の
懸濁液(4)を形成するマイクロリアクタ又はマイクロ流体反応技術(MRT)機器、又は任意
の類似した機器である。好ましくは、該反応チャンバは十分に画定された直径及び大きさ
の1以上のチャネルを含む。好ましくは、該チャネルの直径は約10ミクロン~約400ミクロ
ンの範囲内である。より好ましくは、該直径は約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内で
ある。1以上の装置、例えばマイクロリアクタ(複数可)又はMRTは、直列又は並列に使用
することができる。該装置中で進行される(carried)プロセスは、好ましくは連続的プ
ロセスである。
【0038】
好ましくは、該溶液を該反応チャンバへと連続的にポンプを用いて供給し、該チャンバ
内で該溶液を混合し、反応させる(連続流反応)。
【0039】
該第一及び第二の流れを、好ましくは個別に制御された異なる速度で1以上の増圧ポン
プへと供給し、その結果該第一及び第二の流れの間の相互作用を実質的に制御し、その後
該流れをマイクロ流体化又はマイクロ反応のための装置(3)へと供給する。好ましくは、
全体の流速、すなわち活性物質(複数可)、賦形剤(安定剤)、溶媒、及び貧溶媒を含む
2つの流れの流速を、少なくとも1つの増圧ポンプを使用することにより制御する。全体の
流速は、最大50 kg/時とすることができる。
【0040】
好ましくは、蠕動ポンプを2つの流れ、すなわち該溶媒及び貧溶媒の流れの少なくとも1
つの流速を制御するために使用することができる。両方の流れの流速を個別に制御するこ
とができ、従って各流れの流速は約0~50 kg/時の範囲内とすることができる。
【0041】
続いて、該第一及び第二の流れを1以上の増圧ポンプを用いて合わせた流れに上昇した
圧力で加圧し、該装置に送達すると、該第一及び第二の流れの成分は、該装置内でナノ/
マイクロ規模レベルで相互作用する。好ましくは、このプロセスの圧力は、これに限定は
されないが、約345 bar(34.5 MPa)~約3500 bar(350 MPa)の範囲内である。
【0042】
混合比率、プロセスの圧力、及び固体濃度の選択を最適化して、所望の粒度を達成する
べきである。好ましくは、貧溶媒比率に対する該溶媒の混合比率は、これに限定はされな
いが、約1:2~1:50の範囲内である。好ましくは、溶媒混合物中の該固体濃度は、これに
限定はされないが、約1~30% w/wの範囲内である。
【0043】
溶媒/貧溶媒系のような共沈条件及び混合条件は、好ましくは生産される固体の非晶質
性、粒度、及び形態を決定する。貧溶媒に対する溶媒の比率は、使用される該溶媒及び該
物質の特性、例えば該溶媒の過飽和容量及び該物質の沈殿速度に依存する。好ましくは、
該貧溶媒の比率は該溶媒の比率の2~30倍で変化する。
【0044】
好ましくは、該溶媒系及び貧溶媒系の温度制御は、該物質の過飽和容量及び沈殿速度の
両方を操作するために使用される。好ましくは、成分を伴う該溶媒系及び/又は貧溶媒系
の温度は、これに限定はされないが、-10℃~50℃の範囲内である。
【0045】
段階(iii)―本発明の方法は、得られた活性薬物及び安定剤を含む固体分散物から溶媒
を除去することにより、粉末形態(6)の非晶質ナノ粒子を分離するための任意の単離工程(
5)を含む。該溶媒は、当業者に公知の任意の適当な技術により除去してよい。好ましくは
、該溶媒を除去する工程は、蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又は任意のこれらの組合わせ
を含む。また、得られた非晶質固体分散物粒子の形態は、単離プロセスのパラメータの間
に制御することができる。例えば、該非晶質固体分散物粒子の形態、例えば集塊のレベル
、凝集物の多孔性、及び粉末のバルク密度を、好ましくは噴霧乾燥プロセスにおいて使用
される微粒化、及び/又は最終生産物中の過剰な残存溶媒を除去するための温度での乾燥
プロセスによって制御することができる。
【0046】
本発明の方法には、少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの
安定剤を含む溶液の調製が含まれる。好ましくは、該医薬活性化合物及び該安定剤の両方
を含む溶液が調製される。
【0047】
該医薬活性化合物及び該安定剤は、少なくとも1つの溶媒及び/又は貧溶媒系において非
晶質共沈物を形成することができる。溶液(単数又は複数)を続いてマイクロ流体化又は
マイクロ反応により第二溶媒と混合して、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る。該第二
溶媒は、該医薬活性化合物及び/又は該安定剤に対する少なくとも1つの貧溶媒を含む。非
晶質粒子は公知の様式で粉末形態で単離することができる。該非晶質粒子は粒度がサブミ
クロン範囲であるナノ粒子である。本発明の文脈における用語「サブミクロン範囲」とは
、数nm~1 mm未満の範囲内の粒度を指す。
【0048】
非晶質ナノ粒子の粒度は、約50 nm~約10 μmの範囲内; 好ましくは約50 nm~約1 μm
の範囲内;及びより好ましくは約50 nm~約500 nmの範囲内とすることができる。
【0049】
好ましい一態様において、該方法は:
(i) 第一溶媒を使用した、少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び第二溶媒
を使用した、少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって;該第二溶媒が
該医薬活性化合物に対する貧溶媒である、前記工程;並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該溶液を混合し、共沈により非晶質粒
子の懸濁液を得る工程、を含む。
【0050】
好ましい一態様において、該方法は:
(i) 第一溶媒を使用した、少なくとも1つの医薬活性化合物及び少なくとも1つの安定剤
を含む溶液を調製する工程;並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該医薬活性化合物及び該安定剤に対す
る少なくとも1つの貧溶媒を含む第二溶媒と、該溶液を混合し、共沈により非晶質粒子の
懸濁液を得る工程、を含む。
【0051】
好ましい一態様において、該方法は:
(i) 少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶
液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を用いて調製される、前記工程、並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を該医薬活性化合物及び該安
定剤に対する少なくとも1つの貧溶媒を含む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の
懸濁液を得る工程、を含む。好ましくは、該溶液は合わせられて単一の流れを形成し、そ
の後該第二溶媒と混合される。
【0052】
好ましくは、該少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液及び該少なくとも1つの安定
剤を含む溶液を合わせて第一の流れを形成し、その後マイクロ流体化又はマイクロ反応を
用いて該第二溶媒と混合する。好ましくは、該第二溶媒は、該医薬活性成分及び該安定剤
の両方に対する貧溶媒である。
【0053】
好ましくは、該安定剤を含む溶液は、該第二溶媒と合わせられて第二の流れを形成する
。該第二の流れは、該医薬活性化合物に対する貧溶媒を含むことができる。この場合、該
医薬活性化合物を含む溶液は、第一の流れを形成する。
【0054】
本発明の方法において使用される安定剤は、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なく
とも1つの界面活性剤を含み得る。該ポリマー及び/又は界面活性剤は、固体分散物の約0.
001~90%(w/w)の範囲内の量で存在し得る。該界面活性剤は、好ましくは:アニオン性
界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組合わせを含
む群から選択される。
【0055】
好ましくは、該第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で
、該医薬活性化合物及び該安定剤を含む該第一の流れを、該医薬活性化合物及び該安定剤
に対する該貧溶媒を含む該第二の流れと合わせ;該流れ中の成分がマイクロ及び/又はナ
ノ規模で反応して共沈により非晶質ナノ粒子の懸濁液を形成するように、該反応チャンバ
中の該1以上のチャネルへ送達する。
【0056】
好ましくは、該第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で
、該医薬活性化合物を含む該第一の流れを、該安定剤、及び医薬活性化合物に対する該貧
溶媒を含む該第二の流れと合わせ、かつ該流れ中の成分がマイクロ及び/又はナノ規模で
反応して共沈により非晶質ナノ粒子の懸濁液を形成するように、該反応チャンバ中の該1
以上のチャネルへ送達する。
【0057】
本発明の方法は、MRT又はマイクロリアクタ内部の相互作用の後に、合わせられた流れ
を冷却し、クエンチする工程をさらに含み得る。
【0058】
また、本発明は5~95%(w/w)の医薬活性成分、及び95~5%(w/w)の、好ましくは界
面活性剤及び/又はポリマーである安定剤を含む、微粒子非晶質固体分散物に関する。該
微粒子は約50 nm~約10 μmの範囲内、好ましくは約50 nm~約10 μmの範囲内、より好ま
しくは50 nm~約500 nmの範囲内の粒度を有することができる。
【0059】
好ましくは、該固体分散物の微粒子は、約0.1 g/ml~1.0 g/mlの範囲内のバルク密度を
有する。
【0060】
本発明のプロセスにおける使用のための有機化合物は、溶媒ごとに溶解度が減少する任
意の有機化学物質である。この有機化合物は、好ましくは1以上の医薬活性化合物である
。好ましい医薬活性化合物の例には、これら以外を排すものではないが、可溶性の乏しい
活性化合物、安定性の乏しい熱不安定性化合物、又は小さな粒度及び高い密度を要求する
薬物生産物を挙げることができる。
【0061】
好ましい態様において、「低い溶解度」、「可溶性の乏しい」、及び「水溶性の乏しい
」化合物の定義は、生物医薬分類体系(BCS)の定義に対応する。BCSによると、化合物は
溶解度(米国薬局方に従う)及び腸透過性に関して4つのクラスに区分することができる
。クラスI化合物は高い透過性及び高い溶解度を有し、クラスII化合物は高い透過性及び
低い溶解度を有し、クラスIII化合物は低い透過性及び高い溶解度により特徴づけられ、
並びにクラスIV化合物は低い透過性及び低い溶解度を有する。可溶性の乏しい化合物はク
ラスII及びクラスIVに相当する。
【0062】
可溶性の乏しい化合物の例には、これらに限定はされないが:イントラコナゾール(in
traconazole)のような抗真菌薬又は関連薬物、例えばフルオコナゾール(fluoconazole
)、テルコナゾール、ケトコナゾール、及びサペルコナゾール; 抗感染症薬、例えばグリ
セオフルビン及び関連化合物(例えば、グリセオベルジン(griseoverdin)); 抗マラリ
ア薬(例えば、アトバコン); アファチニブ、アキシチニブ、ボスチニブ、セツキシマブ
、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ホスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチ
ニブ、イマチニブ、ゼムラセニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、又はニロ
チニブのようなタンパク質キナーゼ阻害剤; 免疫系調節薬(例えば、シクロスポリン);
心血管薬(例えば、ジゴキシン及びスピロノラクトン); イブプロフェン; ステロール又
はステロイド; ダナゾール、アシクロビル、ダプソン、インジナビル、ニフェジピン、ニ
トロフランション(nitrofurantion)、フェンチトイン(phentytoin)、リトナビル、サ
キナビル、スルファメトキサゾール、バルプロ酸、トリメトプリン(trimethoprin)、ア
セタゾラミド、アザチオプリン、イオパノ酸、ナリジクス酸、ネビラピン、プラジカンテ
ル、リファンピシン、アルベンダゾール、アミトルプチリン(amitrptyline)、アーテメ
ータ、ルメファントリン、クロロプロマジン(chloropromazine)、シプロフロキサシン
、クロファジミン、エファビレンツ、イオピナビル(iopinavir)、葉酸、グリベンクラ
ミド、ハロペリドール、イベルメクチン、メベンダゾール、ニクロサミド、ピランテル、
ピリメタミン、レチノールビタミン、スルファジアジン、スルファサラジン、トリクラベ
ンダゾール、及びシンナリジンを含む群からの薬物がある。
【0063】
好ましい可溶性の乏しい化合物の群の詳細な列挙には、これらに限定はされないが、AC
E阻害剤、下垂体前葉(adenohypophoseal)ホルモン、アドレナリン作動性神経細胞遮断
薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質ステロイドの生合成の阻害剤、α-アドレナリンアゴ
ニスト、α-アドレナリンアンタゴニスト、選択的α2-アドレナリンアゴニスト、鎮痛剤
、解熱剤及び抗炎症薬、アンドロゲン、麻酔薬、抗依存性薬物、抗アンドロゲン剤、抗不
整脈薬、抗喘息薬、抗コリン薬、抗コリンエステラーゼ薬、抗凝血薬、抗糖尿病薬、止痢
薬、抗利尿薬、制吐薬及び腸管運動促進薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン剤、抗真菌薬
、降圧薬、抗菌薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗悪性腫瘍薬、抗寄生虫薬、抗パーキ
ンソン病薬、抗血小板薬、抗黄体ホルモン薬、抗甲状腺薬、鎮咳薬、抗ウイルス薬、抗う
つ薬、アザスピロデカンジオン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ベンゾチアジア
ジド、β-アドレナリンアゴニスト、β-アドレナリンアンタゴニスト、選択的β1-アドレ
ナリンアンタゴニスト、選択的β2-アドレナリンアゴニスト、胆汁酸塩、体液の容量及び
組成に作用する薬剤、ブチロフェノン、石灰化に作用する薬剤、カルシウムチャネル遮断
薬、心血管薬、カテコールアミン及び交感神経刺激薬、コリンアゴニスト、コリンエステ
ラーゼ再賦活薬、皮膚科薬、ジフェニルブチルピペリジン、利尿薬、麦角アルカロイド、
エストロゲン、神経節遮断薬、神経節刺激薬、ヒダントイン、胃酸性度の制御及び消化管
潰瘍の治療のための薬剤、造血性薬剤、ヒスタミン、ヒスタミンアンタゴニスト、5-ヒド
ロキシトリプタミンアンタゴニスト、高リポタンパク血症の治療のための薬物、睡眠薬及
び鎮静薬、免疫抑制剤、下剤、メチルキサンチン、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、神経
筋遮断薬、有機硝酸塩、オピオイド鎮痛剤及びアンタゴニスト、膵臓酵素、フェノチアジ
ン、プロゲスチン、プロスタグランジン、精神障害の治療のための薬剤、レチノイド、ナ
トリウムチャネル遮断薬、痙縮及び急性筋攣縮のための薬剤、スクシンイミド、チオキサ
ンチン、血栓溶解薬、甲状腺薬、三環系抗うつ薬、有機化合物の尿細管輸送の阻害剤、子
宮運動性に作用する薬物、血管拡張薬、ビタミンなどの単独のものの群、又はこれらを組
合わせたものの群の活性薬剤又は生物活性化合物がある。
【0064】
好ましくは、該医薬活性化合物はチロシンキナーゼ阻害剤である。例えば、これは:ア
キシチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラ
パチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、
スニチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、及びこれらの組合わせを含む群から選択す
ることができる。
【0065】
該医薬活性化合物の好ましい例には、これらに限定はされないが、イトラコナゾール、
シンナリジン、ニロチニブ、カルバマゼピン、又はこれらの組合わせがある。
【0066】
好ましくは、該医薬活性化合物は、ニロチニブである。
【0067】
該医薬活性化合物は、該分散物の約0.1~約95%(w/w)の範囲内の量で存在し得る。
【0068】
本発明に従って、該方法において使用される溶媒は、好ましくは対象とする1以上の有
機化合物、好ましくは医薬活性化合物が、少なくとも部分的に可溶性である溶媒又は溶媒
の混合物である。また好ましくは、該溶媒又は溶媒の混合物は、安定剤(ポリマー/界面
活性剤)のような賦形剤が少なくとも部分的に可溶性である溶媒である。該溶媒は、好ま
しくはアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤である
1以上の表面改質剤(界面活性剤)とともに提供することができる。界面活性剤は、2つの
液体の間、又は液体及び固体の間の表面張力(又は界面張力)を低下させる化合物である
。また、界面活性剤は洗浄剤、湿潤剤、乳化剤、起泡剤、及び/又は分散剤として作用す
ることもできる。
【0069】
そのような溶媒の例には、これらに限定はされないが:水、アセトン、塩化メチル、ジ
メチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(ethanoldimethy
l sulfoxide)、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、乳酸、イソプロパノール
、3-ペンタノール、n-プロパノール、グリセロール、ブチレングリコール、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオ
キサン、ポリエチレングリコール(1,4-dioxanepolyethylene glycol)、ポリエチレング
リコールエステル、ポリエチレングリコールソルビタン、ポリエチレングリコールモノア
ルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、アルギン酸ポリプロピレン、ブタンジオー
ル、又はこれらの混合物がある。
【0070】
本発明による貧溶媒は、該溶媒及び存在する物質と混和性であるか、又は混和性ではな
く、混合に際し低い溶解度又は完全な不溶性を示し得る。好ましい貧溶媒は、これら以外
を排するものではないが、それに混合される1以上の表面改質剤、例えばアニオン性界面
活性剤、カチオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤とともに提供され得る水溶液
である。好ましくは、該水溶液は脱イオン水を含む。
【0071】
また好ましくは、少なくとも1つの界面活性剤は、安定剤として使用することもできる
。該界面活性剤は、これら以外を排すものではないが、アニオン性界面活性剤、カチオン
性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はこれらの組合わせである。
【0072】
適当なアニオン性界面活性剤には、これらに限定はされないが、ラウリン酸カリウム、
ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフ
ェート、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ホスファチジ
ルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリ
ン、ホスファチジン酸及びこれらの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール
酸及び他の胆汁酸(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコー
ル酸、グリコデオキシコール酸)、及びこれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウ
ムなど)、又はこれらの組合わせがある。
【0073】
適当なカチオン性界面活性剤には、これらに限定はされないが、第四級アンモニウム化
合物、例えば塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリル
ジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩(hydrochiorides)、又はハロ
ゲン化アルキルピンジニウム(pyndinium)がある。
【0074】
適当な非イオン性界面活性剤には、これらに限定はされないが、ポリオキシエチレン脂
肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチ
レン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレ
ングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコー
ル、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチ
レン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキソマー)、ポラキサミン(polaxamines)
、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、ポリビニルアルコール、グリセリル
エステル、及びポリビニルピロリドン、又はこれらの組合わせがある。
【0075】
好ましくは、pH調整剤を、該貧溶媒溶液に加えることができる。pH調整剤の例には、こ
れらに限定はされないが、水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液又はクエン酸塩、酢酸
塩、乳酸塩、メグルミンなどがある。
【0076】
また好ましくは、少なくとも1つのポリマーは、非晶質形態の安定化のために使用する
ことができる。本発明の製剤における使用のために適当なポリマーには、これらに限定は
されないが、セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリ
アクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、酢酸
ビニルポリマー、オリゴ糖、多糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリド
ン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、セルロースフタレート、コハク酸セルロース、酢酸フタル
酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメ
チルセルロースアセテートサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシ
ド、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸
エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピル
メチルセルロースサクシネート、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ジメチルアミノエ
チルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキル
メタクリレート)、ゼラチン、ゼラチン、酢酸ビニル及びクロトン酸のコポリマー、部分
加水分解ポリビニルアセテート、カラギーナン、ガラクトマンナン、高粘度ゴム又はキサ
ンタンガム、又はこれらの組合わせがある。
【0077】
また、該活性化合物及び該安定剤に加え、混合物は製剤の性能を向上させるために追加
の薬剤を含むことができる。これらには、これら以外を排すものではないが、可塑性付与
作用を有する化合物、又は活性物質の溶解プロファイルを向上させる特性を有する化合物
を含むことができる。
【0078】
本発明の方法により得られる粒子は、医薬組成物へと製剤化することができる。本明細
書に記載の方法を通じて合成される、非晶質固体分散物の投与のための医薬形態の例には
、固体剤形、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ペレット、又は散剤を挙げることができ
る。得られる組成物は、これら以外を排すものではないが、過飽和、溶解速度の改善、制
御放出、又は味マスキングを含む増強された性能を有し得る。
【0079】
本発明は一般に、微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
溶媒中で非晶質共沈物を形成することができる少なくとも1つの活性医薬成分及び安定
剤を含む溶液を調製すること;
マイクロリアクタを用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒と混合し、非晶質ナノ粒
子の懸濁液を共沈により得ること、を含み、任意に粉末形態の粒子を分離するための単離
工程を含み得る、前記方法に関する。該マイクロリアクタ中での該溶液及び該貧溶媒の相
互作用は、ナノ懸濁液の非晶質性を定義するのに有効である。該マイクロリアクタ内での
混合は、マイクロ流体化及びキャビテーションを用いて促進される。好ましくは、該溶液
及び該貧溶媒の混合は高圧で実施する。
【0080】
先行技術において公知の非晶質固体分散物を生産する従来の方法と比較して、本発明の
方法は、いくつかの利点を示す。非晶質固体分散物を生産するための従来の方法、例えば
噴霧乾燥及びホットメルト押出成形は、揮発性有機溶媒中での低い溶解度を有し、かつ/
又は高い融点を有する化合物の製造に適していない。本発明の方法は、高い処理温度を用
いることを回避しながら、広範囲の溶媒/貧溶媒系を使用することができる。混合エネル
ギー、溶媒/貧溶媒比、温度、滞留時間、組成、及び濃度のような処理及び製剤化の条件
を操作して、所望の粒子特性、例えば、粉末密度、粒度、表面積及び溶解速度を達成する
ことができる。本発明の方法により得られる懸濁粒子は、一貫して非晶質固体状態にある
。また、本発明の方法により生産される微粒子非晶質固体分散物はサブミクロン範囲にあ
り、安定で、高い密度を有する。
【0081】
さらに、本発明の方法により得られる非晶質固体分散物は、安定な微粒子形態をとり、
その後の安定化工程を回避する。
【0082】
本発明の方法により得られるナノ粒子の粒度は、サブミクロン範囲であり、その後の固
体状態の変化をもたらし得る高エネルギー処理、例えばミル粉砕、高剪断混合を回避する
【0083】
また、本発明において粒子の単離は粉末特性を維持しながら実施することができる。ま
た、該粒子の単離を実施して、粉末特性を調整する/向上させることができる。もう1つの
利点は、このプロセスが、連続処理に適応することができ、容易に大規模化できることで
ある。
【0084】
また、本発明は、本発明による微粒子非晶質固体分散物を含む、医薬組成物に関する。
【0085】
また、本発明は、医薬としての使用のための本発明による、微粒子非晶質固体分散物を
含む、医薬組成物に関する。
【0086】
また、本発明は、医薬活性化合物の生物学的利用能の増加における使用のための、微粒
子非晶質固体分散物に関する。
【実施例0087】
本発明の実践方法を示唆することのみを意図し、本発明の範囲を限定する役割は担わな
い適当な実施例を、以下に記載する:
【0088】
(実施例1)
イトラコナゾール(BCS/DCSクラスIIb, Tm/Tg ~1.32, Log P 4.4)及び1:1メタクリル
酸-メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L100, Evonik Rohm GmbH社, D
armstadt, Germany)の2つの別個の溶液を調製した。重量比10:90(総質量2 g)及び40:6
0(総質量1 g)の両方の成分を容量比1:1のエタノール/アセトンの独立した混合物中に溶
解させた。溶媒の総容量は100 mLであり、従ってそれぞれ、該溶液のうちの1つの固体濃
度は~2.5重量%とし、一方もう1つの固体濃度は~1.3重量%とした。貧溶媒として、該
溶媒の量の10倍に相当する量の脱イオン水を使用した。該水のpHを塩酸溶液(37%)を用
いて2.10に調整し、その温度を5 ± 2℃へと低下させた。
【0089】
共沈物を、75 μm直径の反応チャネルを有するチャンバ、後続する200 μm直径の反応
チャネルを有するチャンバを含む、PureNano(商標)マイクロ流体反応技術(モデルMRT
CR5)を使用して生産した。蠕動ポンプを溶媒及び貧溶媒の1:10の比を維持するように設
定した。増圧ポンプを、およそ20 kPsi(138 MPa)の圧力を負荷するように設定した。
【0090】
共沈処理の後、得られた懸濁液を真空を使用して濾過し、湿ったケーキを棚型乾燥器オ
ーブン中約70℃の温度で~48時間乾燥させた。乾燥処理の最後に、粉末を固体状態分析の
ための、すなわち結晶性物質の潜在的な存在を評価するための、X線粉末回折(XRPD)に
より分析した。
【0091】
図2は10重量%及び40重量%の薬物負荷のイトラコナゾール:Eudragit(登録商標)L10
0共沈物に対応するXRPDパターンを示す(それぞれA1及びA2のスペクトル)。XRPD実験はD
8 Advance Bruker AXS Theta-2Theta回折計で、銅放射源(Cu Kalpha2, 波長 = 1.5406
Å)、電圧40 kV、及びフィラメント放出35 mAとして実施した。試料を3~70°の2θ間隔
にわたって、ステップサイズ0.017°、及びステップ時間50秒として測定した。
【0092】
両方の製剤は、非晶質形態に特徴的なハローを示した。純粋な結晶性イトラコナゾール
のXRPDプロファイルの特性ピークは、直前に調製した生産物において観察されなかった。
これらの結果は、本発明に記載の方法を使用した場合、イトラコナゾールの非晶質化に成
功したことを示唆していた。さらに、安定化も付与するポリマーの存在のために、最大40
重量%の薬物負荷の非晶質製剤を生産することができた。
【0093】
(実施例2)
シンナリジン(BCSクラスII, Tm/Tg ~1.40, Log P ~5.77)及び1:1メタクリル酸-メ
タクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L100, Evonik Rohm GmbH社, Darmst
adt, Germany)の溶液を調製した。重量比10:90(総質量2グラム)の両方の成分を、容量
比1:1のエタノール/アセトン混合物中に溶解した。溶媒の総容量は100 mLであり、従って
溶液中の固体濃度は~2.5重量%であった。貧溶媒として、該溶媒の量の10倍に相当する
量の脱イオン水を使用した。該水のpHを塩酸(37%)を用いて2.10に調整し、その温度を
5 ± 2℃へと低下させた。単離の工程が最終的な薬物の固体状態及び物理的安定性に影響
を及ぼさないことを示すために、該溶液のさらなる処理は、共沈処理の後、結果として得
た懸濁液が二等分に分割された―懸濁液の一方の部分を濾過して棚型乾燥器オーブン中で
乾燥させ(実施例1と同じ条件)、他方、第二の部分を二流体ノズルを備えた実験室規模
噴霧乾燥器(Buchi社, model B-290)において乾燥させたことを除いて、実施例1に適用
された手順と同じとした。噴霧乾燥ユニットは、オープンサイクルモードで作動させた(
すなわち、乾燥ガスの再循環を伴わずに)。懸濁液を該ノズルに供給する前に、該噴霧乾
燥ユニットを窒素で安定化させ、安定な入口温度(T_入 = 141℃)及び出口温度(T_出
= 80℃)を確保した。安定化の後、該懸濁液を蠕動ポンプを用いて該ノズルに供給し(F
_供給 = 0.44 kg/時)ノズルの先端で微粒化した(F_微粒 = 1.4 kg/時)。続いて、液
滴を噴霧乾燥チャンバ中で並流窒素流(F_乾燥 = 35 kg/時)により乾燥させた。乾燥粒
子を含む流れをサイクロン内へと方向づけ、底部で収集した。処理の最後に、両方の生産
物をXRPDで分析し(実施例1と同じ実験方法)、噴霧乾燥した懸濁物のみ走査型電子顕微
鏡(SEM)により分析した。
【0094】
図3は、濾過により単離し、加えて棚型乾燥器オーブン中で乾燥させた(B1)、及び噴
霧乾燥により単離した(B2)、10重量%のシンナリジン:Eudragit(登録商標)L100共沈
物に対応するXRPDパターンを示す。両方のXRPDパターンに顕著な差異は観察されなかった
。実施例1における場合と同様、両方の生産物は非晶質形態に特徴的なハローを示し、純
粋な結晶性シンナリジンのXRPDプロファイルの特性ピークは観察されなかった。これらの
結果は、(1) 本発明に記載の方法を適用して、様々な物理化学的特性を有する様々な治療
分子の非晶質分散物/非晶質溶液を生産することができること、及び(2) 製剤中の薬物の
固体状態が、選択された単離プロセスに依存しないことを示唆していた。懸濁液の噴霧乾
燥は粒子を分離する単純な方法として機能し、従って製剤中の薬物の固体状態及び物理的
安定性に影響を及ぼさない。図4a~4dは噴霧乾燥により単離した10重量%シンナリジン:
Eudragit(登録商標)L100共沈生産物に対応するそれぞれ1000×、3000×、10,000×、及
び30,000×倍率のSEM顕微鏡写真を示す。高倍率での粒子表面の観察(図4c及び4d)から
、集塊が個々の粒子からなり、それらの大部分が約100 nmの直径を有していたことが明ら
かとなった。
【0095】
(実施例3)
ニロチニブ(BCSクラスIV, Tm/Tg ~1,28, cLog P ~4.8)及び1:1メタクリル酸-メタ
クリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L100, Evonik Rohm GmbH社, Darmstad
t, Germany)の2つの別個の溶液を調製した。重量比10:90(総質量2 g)及び40:60(総質
量1 g)の両方の成分を純粋なエタノールの独立した溶液に溶解させた(溶媒の総容量は1
00 mLであり、従ってそれぞれ、該溶液のうちの1つの固体濃度は~2.5重量%とし、一方
もう1つの固体濃度は~1.3重量%とした)。貧溶媒として、該溶媒の量の10倍に相当する
量の脱イオン水を使用した。該水のpHを塩酸(37%)を用いて2.10に調整し、その温度を
5 ± 2℃へと低下させた。該溶液のさらなる処理は、実施例1及び実施例2に適用した手順
と同一であり、それに続いて真空濾過及び単純な乾燥工程を行った。またプロセスの最後
に、結果として得た生産物を先の実施例に記載の実験方法に従ってXRPDにより特性評価し
た。
【0096】
図5は10重量%及び40重量%の薬物負荷のニロチニブ:Eudragit(登録商標)L100共沈
物(それぞれC1及びC2のスペクトル)に対応するXRPDパターンを示す。実施例1及び実施
例2と同様に、両方の製剤は非晶質形態に特徴的なハローを示し、純粋な結晶性ニロチニ
ブのXRPDプロファイルの特性ピークは、直前に調製した生産物において観察されなかった
【0097】
(実施例4)
また、40重量%ニロチニブ及び60重量% Eudragit(登録商標)L100を用いた実験は、
先に記載の条件に従い行なった。共沈物は実施例2に記載のプロセスの条件を使用した噴
霧乾燥により単離した―生産された粉末は、その粒子がサブミクロン規模であることから
、以降ナノ非晶質と名付けることとする。
【0098】
比較の目的で、同じニロチニブベースの製剤を、噴霧乾燥による従来のアプローチを使
用して生産した―生産された粉末は、その粒子がミクロン規模であることから、以降マイ
クロ非晶質と名付けることとする。実験条件は実施例2に提示される条件と同様とした。
【0099】
両方の粉末を、それらのインビトロでの溶解プロファイルの観点で比較した。また、結
晶状態の溶解プロファイルを評価した。粉末の溶解プロファイルは、USP II型装置(DIS
6000, Copley Scientific社, Nottingham, UK)を使用して、900 mLのFaSSIF bioreleven
t媒体(pH 6.5)(biorelevant社, Croydon, UK)中、100 rpmのパドル回転数で、37 ±
0.5℃の恒温浴を用いて取得した。溶解実験を、非沈降(non-sink)条件下で研究下の標
的薬物ニロチニブ200 mgの負荷により実施した。試料のアリコート(15 mL)を、溶解媒
体を交換することなく様々な時点(15、30、60、120、及び240分)で採取した。該アリコ
ートをすぐに0.45 μmのフィルタ(0.45 μmの親水性ポリプロピレン(GHP)膜を備えたA
crodisc(登録商標)25mmシリンジフィルタ)を使用して濾過し、4.5 mLの濾液を続いて0
.5 mLのエタノールで希釈した。全ての事例で、該濾液は定量化前の視認による検査の際
に完全に透明であった。該媒体中のニロチニブの量の決定は、Beerの法則を使用し、Hita
chi社のU-2000ダブルビーム紫外/可視分光光度計(Hitachi社, Tokyo, Japan)を用いて2
65 nmで実施した。
【0100】
インビトロの溶解の結果の分析の前に、メスシリンダを使用した密度測定を実施し、ナ
ノ非晶質粉末のバルク密度及びタップ密度の値の両方が、マイクロ非晶質粉末に対し得ら
れた値の約2倍であった(すなわち、それぞれバルク密度については0.432 g/mL対0.215 g
/mL、及びタップ密度については0.480 g/mL対0.239 g/mL)ことが観察された。
【0101】
噴霧乾燥は、低密度及び乏しい流動性を示す中空粒子の生産で知られている。反対に、
本発明の範囲の下で生産される粉末は、中実/緻密(solid/compact)であり、高いバルク
密度及び良好な流動性を有し、下流の処理、すなわち、打錠、カプセル充填に理想的であ
った。
【0102】
図6は、40重量%ニロチニブ: Eudragit(登録商標)L100ナノ非晶質製剤(A)、40重量
%ニロチニブ: Eudragit(登録商標)L100マイクロ非晶質製剤(B)、及び結晶状態のニ
ロチニブ(C)の、240分間にわたって取得された粉末溶解プロファイルを示す。期待され
た通り、ナノ非晶質製剤及びマイクロ非晶質製剤は、結晶参照生産物に対してより高い溶
解速度を示した。
【0103】
ナノ非晶質対マイクロ非晶質を比較する場合、15分の時点で、前者の製剤が後者と比較
して有意に高い過飽和レベルに到達することが観察された。溶媒制御沈殿プロセスにより
生産されたナノ粒子の高い表面積のために、溶解速度の増加は非晶質マイクロ固体分散物
と比較した場合、より高い過飽和レベルの創造に有利となる。
【0104】
(実施例5)
カルバマゼピン(BCS/DCSクラスIIa, Tm/Tg ~1,4, Log P ~2,6)及び1:1メタクリル
酸-メタクリル酸メチルコポリマー(Eudragit(登録商標)L100, Evonik Rohm GmbH社, D
armstadt, Germany)の溶液を調製した。重量比20:80の両成分(総質量は3グラム)は、
純粋なメタノール中に溶解した(溶媒の総容量は44 mLとし、従って溶液中の固体濃度は8
重量%とした。)。貧溶媒として、溶媒の量の10倍に相当する量の脱イオン水を使用した
。該水のpHを塩酸(37%)を用いて2.10に調整し、その温度を5 ± 2℃へと低下させた。
該溶液のさらなる処理は、先の実施例において適用された実験手順と同一であり、それに
続いて粒子を単離するための噴霧乾燥工程を行った。噴霧乾燥ユニットは、オープンサイ
クルモードで作動させた(すなわち、乾燥ガスの再循環を伴わずに)。懸濁液をノズルに
供給する前に、該噴霧乾燥ユニットを窒素で安定化させ、安定な入口温度(T_入 = ~15
6℃)及び出口温度(T_出 = ~80℃)を確保した。安定化の後、該懸濁液を蠕動ポンプ
を用いて該ノズルに供給し(F_供給 = 0.81 kg/時)ノズルの先端で微粒化した(微粒化
用窒素、F_微粒 = 1.4 kg/時)。続いて、液滴を噴霧乾燥チャンバ中で並流窒素流(F_
乾燥 = 40 kg/時)により乾燥させた。乾燥粒子を含む流れをサイクロン内へと方向づけ
、底部で収集した。処理の最後に、生産された物質をXRPD及びSEMで特性評価した。非晶
質含有量を図7Aで確認する。先の実験と同様に、製剤は非晶質形態に特徴的なハローを示
し、カルバマゼピンの結晶性の徴候は観察されなかった。図8は様々な倍率でのSEM顕微鏡
写真を示す。実施例2における粒子と同様に、集塊粒子及び球形粒子が取得された。しか
しながら、粒度数分布(particle size number distribution)の観点では、約100 nmで
あった実施例2と比較して、より大きい粒度を有する粒子が、より多くの数だけ観察され
た。
【0105】
本発明で開示された方法により生産された、非晶質ナノ複合体粒子のインビトロでの性
能を評価するため、粉末溶解実験を実行した。
【0106】
比較の目的で、20重量%カルバマゼピン:Eudragit(登録商標)L100を有する製剤を、
噴霧乾燥による従来のアプローチに従って生産した。プロセス条件は一定に維持した。同
様のXRPDディフラクトグラムを、図7Bに提示するように得た。実施例4と同様に、噴霧乾
燥により生産された非晶質固体分散物の典型的な粒度は、ミクロンの大きさの範囲に限定
されていた(図9)。
【0107】
図10は本発明の範囲内で生産された物質(ナノ非晶質―A)、及び噴霧乾燥により生産さ
れた物質(マイクロ非晶質―B)についての、粉末インビトロ溶解プロファイルを提示す
る。50分の時点での破線はpHシフトに対応する。
【0108】
粉末溶解プロファイルは、微量遠心分離pHシフト溶解法を使用して得た。実験は37℃の
温度の水浴において2 mLの微量遠心チューブ中で実施した。模擬的な胃相は0.9 mL 0.01N
HCl (pH = 2)からなり、模擬的な腸相は、別の容量の0.9 mL FaSSIF biorelevent媒
体(pH = 6.5)(biorelevant社, Croydon, UK)からなっていた。合わせたpH値は、pH
試験紙を使用して確認した(pH 6~6.5)。両方の媒体は脱気し、使用前に37℃に予め加
温した。溶解実験は、非沈降条件下で研究下の標的薬物カルバマゼピン850 μgの負荷に
より実施した。これは胃相及び腸相におけるカルバマゼピンの平衡濃度のそれぞれおよそ
5倍及び2倍に相当する。試料のアリコートを、溶解媒体を交換することなく様々な時点(
10、20、35、60、90、150、及び180分)で採取した。pHシフトは50分の時点で生じた。試
料採取のための試験チューブの準備は、水浴からより最近のものを取り出すこと、及びHi
mac微量遠心機CT15RE(Hitachi Koki社)を使用して13,000 rpmで1分間遠心分離すること
からなっていた。続いて、25 μLの上清をアリコート化したが、10 μLだけは低容量挿入
物(150 μL)を備えるHPLCバイアル中でメタノール中に15倍に希釈した。残る溶液を、
沈殿物の完全な再分散が観察されるまで、数秒間ボルテックスに付した。該試験チューブ
を水浴中に戻し、次の時点まで置いた。媒体中に溶解させたカルバマゼピンの量は、Wate
rs光ダイオードアレイ検出器(モデル2996)を備えたHPLCシステム(モデル2695)を使用
して実施した。使用したカラムはZorbax(登録商標)XDB-C18(4.6 mm×150 mm, 3.5 μm
)とし、移動相は60:40% v/vのそれぞれメタノール及び水とした。注入容量を10 μLとし
、流速を1 mL/分で一定に維持した。UV吸収は285 nmで測定した。カラム温度を25℃に維
持した。クロマトグラフを収集し、Empower Version 2.0を使用して積分した。試料中の
薬物量を、標準の単一点注入に対して測定した。
【0109】
先の例と同様に、本発明の範囲内で生産された非晶質ナノ粒子の高い表面積のために、
溶解速度は噴霧乾燥により生産されたマイクロ非晶質と比較して最大化された。
【0110】
DCSクラスIIa薬物の吸収及び生物学的利用能における相乗効果(ナノ+非晶質)を理解
するため、ナノ非晶質製剤及びマイクロ非晶質製剤を用いた薬物動態学的研究を、マウス
において実施した。
【0111】
成体CD1雌性マウス(22~24 g)をCharles River社(Barcelona, Spain)から購入した
。動物に標準的な実験室飼料及び水を自由に与えた。全ての動物実験は地域の動物倫理委
員会の承認を得て、ポルトガル法D.R. n° 31/92, D.R. 153 I-A 67/92、及び全ての準ず
る法律に従って実施した。投薬の日に、動物をおよそ6時間絶食させた後、実験を開始し
た。この期間は、マウスの胃を空にするのに十分であると考えられた(Lab Anim. 2013,
47(4), 225-40)。マウスに経口胃管栄養法により各製剤を等量投薬し、7.4 mg/kg体重の
カルバマゼピンを与えた(n = 3)。ビヒクルは酸性化した水(0.01N HCl, pH~2)とし
、懸濁液の濃度を、懸濁液0.35 mL中に適切な用量を含むように調整した。マウスの胃の
許容量はおよそ0.4 mLであるため、0.35 mLが胃の許容量に過剰負荷させずに、かつ/又は
食道への逆流を回避する理想的な経口投与容量であると考えられた(J Pharm Pharmacol.
2008, 60(1), 63-70)。懸濁液調製及び投薬実施の間の時間間隔は、約30秒とした。投
薬後、マウスを水に対する自由なアクセスを伴う拘束ケージ中に保った。血液試料(~1
mLアリコート)を投与から2、5、10、15、30、45、60、120、及び180分後に眼窩静脈叢(
orbital sinus)から採取した。血液試料を遠心分離し、血清試料をアッセイまで冷蔵保
存した。血清中のカルバマゼピン濃度をIMMULITE 2000(登録商標)XPi免疫アッセイシス
テム(Siemens Healthcare Diagnostics社)を使用してアッセイした。このシステムは化
学発光及び免疫アッセイ反応を組合わせるものである。このアッセイは、後に試料中の薬
物に直接コンジュゲートされる、アルカリホスファターゼ(ALP)によって触媒される基
質の脱リン酸化によって生成する光の測定に基づく。従って、この反応で生成される光は
試料中の薬物量に比例する。
【0112】
180分間にわたり取得された薬物動態学的プロファイルを、図11においてナノ非晶質(A
)、マイクロ非晶質(B)、及び結晶状態のカルバマゼピン(C)について提示する。破線
は免疫アッセイ法の定量限界(LOQ)に相当し、1.25 mg/Lである。従って、この方法のLO
Qを下回るカルバマゼピンの量を伴う血清試料を、液-液抽出法により処理し、HPLCを使用
してアッセイした。血清のアリコートを2 mL微量遠心チューブに移した。続いて、比率1:
4 v/vのメタノールを各チューブに加えて、ボルテックスで5分間混合した。水溶性タンパ
ク質の沈殿により、白濁した溶液が形成された。続いて、試料を2,000 rpmで5分間遠心分
離した。上清を抽出し、低容量挿入物(150 μL)を備えるHPLCバイアルに直接移した。
各試料を先に記載のHPLC条件を使用して分析した。図11の一点短鎖線は、抽出処理につい
て60%の収率が考えられると仮定した場合の、血清試料中で得られるカルバマゼピン濃度
の最大値に相当する。この平均収率値は、陽性試料、すなわち免疫アッセイ法のLOQを上
回っていた試料に対して抽出法を適用することにより決定した。マイクロ非晶質製剤又は
結晶薬物と比較した場合に、本発明の範囲に従って生産されたナノ非晶質系で、マウスに
おける増強された生物学的利用能が観察された。
【0113】
観察された相違は、製剤間の粒度の差で説明できる。ナノ非晶質粒子の高い表面積は、
胃腸液に曝露された時に非常に速い溶解速度をもたらし、ひいては溶液中のより多くの量
のカルバマゼピンに寄与した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を使用して調製され、該安定剤が、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤である、前記工程、及び
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒を含む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、
(iii) 蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又は任意のこれらの組合わせを用いて粉末形態の該非晶質粒子を単離し、約0.1g/ml~約1.0g/mlの範囲内のバルク密度を有する非晶質粒子を形成する工程を含み、
該第二溶媒が、該医薬活性化合物及び該安定剤の両方に対する貧溶媒であり、
該溶液が、合わせられた流れにおいて約345 bar(34.5 MPa)~3500 bar(350 MPa)の範囲の圧力で加圧され、かつマイクロリアクタに送達され、
工程(ii)と工程(iii)の各々が、別個の装置でおこなわれる、前記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び前記少なくとも1つの安定剤を含む溶液を合わせて第一の流れを形成し、その後、前記第二溶媒と混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記安定剤を含む溶液を、前記第二溶媒と合わせて、第二の流れを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記医薬活性化合物を含む溶液が、第一の流れを形成する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 第一溶媒を使用した少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び第二溶媒を使用した少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程;
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該溶液を混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、及び
(iii) 蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又は任意のこれらの組合わせを用いて粉末形態の該非晶質粒子を単離し、約0.1g/ml~約1.0g/mlの範囲内のバルク密度を有する非晶質粒子を形成する工程を含み、
該安定剤が、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤であり、
該第二溶媒が、該医薬活性化合物及び該安定剤の両方に対する貧溶媒であり、
該溶液が、合わせられた流れにおいて約345 bar(34.5 MPa)~3500 bar(350 MPa)の範囲の圧力で加圧され、かつマイクロリアクタに送達され、
工程(ii)と工程(iii)の各々が、別個の装置でおこなわれる、前記方法。
【請求項6】
前記非晶質粒子が、サブミクロン範囲内の粒度を有するナノ粒子であり、該粒度が約50 nm~約10 μmの範囲内、又は約50 nm~約1 μmの範囲内、又は50 nm~約500 nmの範囲内にある、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
下記の特徴の少なくとも1つを更に含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法:
(i) 前記ポリマー及び/又は界面活性剤が、前記分散物の約0.001~90%(w/w)の範囲内の量で存在する、及び
(ii) 前記ポリマーが:セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルポリマー、オリゴ糖、多糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタレート、コハク酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ゼラチン、酢酸ビニル及びクロトン酸のコポリマー、部分加水分解ポリビニルアセテート、カラギーナン、ガラクトマンナン、高粘度ゴム又はキサンタンガム、及びこれらの組合わせを含む群から選択される。
【請求項8】
前記界面活性剤が、
ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート、アルギン酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びそれらの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、及びこれらの塩、デオキシコール酸ナトリウム、並びにこれらの組合わせを含む群から選択されるアニオン性界面活性剤、又は
第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチン塩酸塩、又はハロゲン化アルキルピンジニウム、及びこれらの組合わせを含む群から選択されるカチオン性界面活性剤、又は
ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキソマー)、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、ポリビニルアルコール、グリセリルエステル、及びポリビニルピロリドン、並びにこれらの組合わせを含む群から選択される非イオン性界面活性剤
を含む、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
下記の特徴の少なくとも1つを更に含む、請求項1~8のいずれか1項記載の方法:
(i) 前記第一溶媒が、各溶液について同じであるか、又は異なっている、
(ii) 前記第一溶媒及び/又は前記第二溶媒が、溶媒混合物を含む、及び
(iii) 前記第一及び第二溶媒が、同じであるか又は異なっている。
【請求項10】
前記第一及び/又は第二溶媒が:水、アセトン、塩化メチル、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、乳酸、イソプロパノール、3-ペンタノール、n-プロパノール、グリセロール、ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコールソルビタン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、アルギン酸ポリプロピレン、ブタンジオール、及びこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記貧溶媒が水溶液を含み、該水溶液が脱イオン水である、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記貧溶媒に、pH調整剤を加えることをさらに含み、該pH調整剤が:水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液、又はクエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メグルミン、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記医薬活性化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤であり、該チロシンキナーゼ阻害剤が:アキシチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記医薬活性化合物が、前記分散物の約0.1~約95%(w/w)の範囲内の量で存在する、請求項1~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記医薬活性化合物の溶解プロファイルを向上させるため、可塑化化合物が加えられる、請求項1~14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロ流体化又はマイクロ反応が、少なくとも1つのマイクロ流体反応技術(MRT)又はマイクロリアクタを用いて達成され、該MRT及びマイクロリアクタが、反応チャンバを備える、請求項1~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
下記の特徴の少なくとも1つを更に含む、請求項16記載の方法:
(i) 前記反応チャンバが1以上のチャネルを備え、該チャネルの各々が約10ミクロン~約400ミクロンの範囲内の直径を有するか、又は該チャネルの直径が約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内である、
(ii) 前記MRT又はマイクロリアクタが直列に、又は並列に配置される、及び
(iii) 前記MRT又はマイクロリアクタが連続流リアクタである。
【請求項18】
下記の特徴の少なくとも1つを更に含む、請求項16又は17記載の方法:
(i) 前記溶液を前記反応チャンバへと連続的にポンプを用いて供給し、該チャンバ内で該溶液を混合し、反応させる(連続流反応)、及び
(ii) 前記MRT及び/又はマイクロリアクタ内部での相互作用後に、前記合わせられた流れを冷却し、又はクエンチすること。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
観察された相違は、製剤間の粒度の差で説明できる。ナノ非晶質粒子の高い表面積は、
胃腸液に曝露された時に非常に速い溶解速度をもたらし、ひいては溶液中のより多くの量
のカルバマゼピンに寄与した。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び少なくとも1つの安定剤を含む溶
液を調製する工程であって、各溶液が第一溶媒を使用して調製される、前記工程、並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて、該溶液を少なくとも1つの貧溶媒を含
む第二溶媒と混合し、共沈により非晶質粒子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法。
(構成2)
前記少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び前記少なくとも1つの安定剤を含
む溶液を合わせて第一の流れを形成し、その後前記第二溶媒と混合する、構成1記載の方
法。
(構成3)
前記第二溶媒が、前記医薬活性成分及び前記安定剤の両方に対する貧溶媒である、構成
2記載の方法。
(構成4)
前記安定剤を含む溶液を、前記第二溶媒と合わせて、第二の流れを形成する、構成1記
載の方法。
(構成5)
前記第二の流れが前記医薬活性化合物に対する貧溶媒を含む、構成4記載の方法。
(構成6)
前記医薬活性化合物を含む溶液が、第一の流れを形成する、構成4又は5記載の方法。
(構成7)
微粒子形態の非晶質固体分散物を製造する方法であって:
(i) 第一溶媒を使用した、少なくとも1つの医薬活性化合物を含む溶液、及び第二溶媒
を使用した、少なくとも1つの安定剤を含む溶液を調製する工程であって;該第二溶媒が
該医薬活性化合物に対する貧溶媒である、前記工程;並びに
(ii) マイクロ流体化又はマイクロ反応を用いて該溶液を混合し、共沈により非晶質粒
子の懸濁液を得る工程、を含む、前記方法。
(構成8)
粉末形態の前記非晶質粒子を分離する単離工程をさらに含む、構成1~7のいずれか1項
記載の方法。
(構成9)
前記非晶質粒子が、蒸留、乾燥、噴霧乾燥、濾過、又はこれらの任意の組合わせにより
単離される、構成8記載の方法。
(構成10)
前記非晶質粒子が、サブミクロン範囲内の粒度を有するナノ粒子である、構成1~9のい
ずれか1項記載の方法。
(構成11)
前記粒度が約50 nm~約10 μmの範囲内である、構成10記載の方法。
(構成12)
前記粒度が約50 nm~約1 μmの範囲内、又は50 nm~約500 nmの範囲内にある、構成11
記載の方法。
(構成13)
前記安定剤が、少なくとも1つのポリマー及び/又は少なくとも1つの界面活性剤である
、構成1~12のいずれか1項記載の方法。
(構成14)
前記ポリマー及び/又は界面活性剤が、前記分散物の約0.001~90%(w/w)の範囲内の
量で存在する、構成13記載の方法。
(構成15)
前記ポリマーが:セルロースエステル、セルロースエーテル、ポリアルキレンオキシド
、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール
、酢酸ビニルポリマー、オリゴ糖、多糖、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピ
ロリドン、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースフタレート、コハク酸セルロース、酢酸
フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン
オキシド、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、メタクリル酸/アク
リル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロースサクシネート、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2-ジメチルア
ミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシア
ルキルメタクリレート)、ゼラチン、酢酸ビニル及びクロトン酸のコポリマー、部分加水
分解ポリビニルアセテート、カラギーナン、ガラクトマンナン、高粘度ゴム又はキサンタ
ンガム、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、構成13又は14記載の方法。
(構成16)
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、又は非イオン性界
面活性剤を含む、構成13又は14記載の方法。
(構成17)
前記アニオン性界面活性剤が:ラウリン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシ
ル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート、アルギン酸ナトリウム、
ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセ
ロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びそれ
らの塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸、デオキシコール酸、グリコ
コール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、及びこれらの塩、デオキシコール
酸ナトリウム、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、構成16記載の方法。
(構成18)
前記カチオン性界面活性剤が:第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)、
臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシ
ルカルニチン塩酸塩、又はハロゲン化アルキルピンジニウム、及びこれらの組合わせを含
む群から選択される、構成16記載の方法。
(構成19)
前記非イオン性界面活性剤が:ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン
エステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリ
ールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポ
リマー(ポロキソマー)、ポラキサミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒ
ドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロー
ス、ポリビニルアルコール、グリセリルエステル、及びポリビニルピロリドン、及びこれ
らの組合わせを含む群から選択される、構成15記載の方法。
(構成20)
前記第一溶媒が、各溶液について同じでも、異なっていてもよい、構成1~19のいずれ
か1項記載の方法。
(構成21)
前記第一溶媒及び/又は前記第二溶媒が、溶媒混合物を含む、構成1~20のいずれか1項
記載の方法。
(構成22)
前記第一及び第二溶媒が、同じでも、異なっていてもよい、構成1~21のいずれか1項記
載の方法。
(構成23)
前記第一及び/又は第二溶媒が:水、アセトン、塩化メチル、ジメチルホルムアミド、
メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、ジメチルアセト
アミド、乳酸、イソプロパノール、3-ペンタノール、n-プロパノール、グリセロール、ブ
チレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド
、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコ
ールエステル、ポリエチレングリコールソルビタン、ポリエチレングリコールモノアルキ
ルエーテル、ポリプロピレングリコール、アルギン酸ポリプロピレン、ブタンジオール、
及びこれらの混合物を含む群から選択される、構成1~22のいずれか1項記載の方法。
(構成24)
前記貧溶媒が水溶液を含む、構成1~23のいずれか1項記載の方法。
(構成25)
前記水溶液が脱イオン水である、構成24記載の方法。
(構成26)
前記貧溶媒に、pH調整剤を加えることをさらに含む、構成1~25のいずれか1項記載の方
法。
(構成27)
前記pH調整剤が:水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液、又はクエン酸塩、酢酸塩、
乳酸塩、メグルミン、及びこれらの組合わせを含む群から選択される、構成26記載の方法

(構成28)
前記医薬活性化合物が、チロシンキナーゼ阻害剤である、構成1~27のいずれか1項記載
の方法。
(構成29)
前記チロシンキナーゼ阻害剤が:アキシチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチ
ニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニ
ブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、及び
これらの組合わせを含む群から選択される、構成28記載の方法。
(構成30)
前記医薬活性化合物がニロチニブである、構成1~29のいずれか1項記載の方法。
(構成31)
前記医薬活性化合物が、前記分散物の約0.1~約95%(w/w)の範囲内の量で存在する、
構成1~30のいずれか1項記載の方法。
(構成32)
前記医薬活性化合物の溶解プロファイルを向上させるため、可塑化化合物が加えられる
、構成1~31のいずれか1項記載の方法。
(構成33)
前記マイクロ流体化又はマイクロ反応が、少なくとも1つのマイクロ流体反応技術(MRT
)又はマイクロリアクタを用いて達成される、構成1~32のいずれか1項記載の方法。
(構成34)
前記MRT及び前記マイクロリアクタが、反応チャンバを備える、構成33記載の方法。
(構成35)
前記反応チャンバが1以上のチャネルを備え、該チャネルの各々が約10ミクロン~約400
ミクロンの範囲内の直径を有する、構成34記載の方法。
(構成36)
前記チャネルの直径が約50ミクロン~約200ミクロンの範囲内である、構成35記載の方
法。
(構成37)
前記MRT又は前記マイクロリアクタが直列に、又は並列に配置される、構成31~36のい
ずれか1項記載の方法。
(構成38)
前記MRT又は前記マイクロリアクタが連続流リアクタである、構成33~37のいずれか1項
記載の方法。
(構成39)
前記溶液を前記反応チャンバへと連続的にポンプを用いて供給し、該チャンバ内で該溶
液を混合し、反応させる(連続流反応)、構成33~38のいずれか1項記載の方法。
(構成40)
前記第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で、前記医薬
活性化合物及び前記安定剤を含む該第一の流れを、該医薬活性化合物及び該安定剤に対す
る前記貧溶媒を含む該第二の流れと合わせ;かつ該流れ中の成分が反応して共沈により非
晶質粒子の懸濁液を形成するように、前記反応チャンバ中の前記1以上のチャネルへ送達
する、構成31~39のいずれか1項記載の方法。
(構成41)
前記第一の流れと第二の流れの成分の相互作用をもたらすのに十分な圧力で、前記医薬
活性化合物を含む該第一の流れを、前記安定剤、及び該医薬活性化合物に対する前記貧溶
媒を含む該第二の流れと合わせ、かつ該流れ中の成分が反応して共沈により非晶質粒子の
懸濁液を形成するように、前記反応チャンバ中の前記1以上のチャネルへ送達する、構成3
3~39のいずれか1項記載の方法。
(構成42)
前記圧力が約345 bar(34.5 MPa)~約3500 bar(350 MPa)の範囲内にある、構成40又
は41記載の方法。
(構成43)
前記MRT及び/又はマイクロリアクタ内部での相互作用後に、合わせられた流れを冷却し
、又はクエンチすることをさらに含む、構成33~42のいずれか1項記載の方法。
(構成44)
5~95%(w/w)の前記医薬活性成分、及び95~5%(w/w)の前記安定剤を含む、構成1
~43のいずれか1項記載の方法により得られる微粒子非晶質固体分散物。
(構成45)
前記安定剤が、少なくとも1つの界面活性剤及び/又は少なくとも1つのポリマーを含む
、構成44記載の微粒子非晶質固体分散物。
(構成46)
前記微粒子が約50 nm~約10 μmの範囲内の粒度を有するナノ粒子を含む、構成44又は4
5記載の微粒子非晶質固体分散物。
(構成47)
前記粒度が約50 nm~約1 μmの範囲内; 又は50 nm~約500 nmの範囲内である、構成46
記載の微粒子非晶質固体分散物。
(構成48)
前記微粒子が約0.1 g/ml~約1.0 g/mlの範囲内のバルク密度を有する、構成44記載の微
粒子非晶質固体分散物。
(構成49)
構成44~48のいずれか1項記載の微粒子非晶質固体分散物を含む、医薬組成物。
(構成50)
医薬としての使用のための、構成44~48のいずれか1項記載の微粒子非晶質固体分散物
を含む医薬組成物。
(構成51)
医薬活性化合物の生物学的利用能の増加における使用のための、構成44~48のいずれか
1項記載の微粒子非晶質固体分散物。

【外国語明細書】