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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124590
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 23/08 20060101AFI20230830BHJP
   B43K 23/12 20060101ALI20230830BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B43K23/08 130
B43K23/12
B43K3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028454
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正史
(57)【要約】
【課題】軸筒とキャップとの着脱を繰り返したとしても嵌合力が維持され、且つ、軸筒とキャップとのぐらつきを長期に渡って抑えることができる筆記具を提供する。
【解決手段】筆記具1は軸筒2と、キャップ7とを備える。キャップ7の内面には、第1内向突起71と、第2内向突起72と、第3内向突起73と、がそれぞれ軸方向に異なる位置に設けられている。軸筒2の前側にキャップ7を装着した際は、第1内向突起71と軸筒2とが嵌合し、且つ、第2内向突起72と軸筒2とが近接または接触し、且つ、第3内向突起73と軸筒2とが非接触状態となる。軸筒2の後側にキャップ7を装着した際は、第1内向突起71及び第2内向突起72と軸筒2とが非接触状態となり、且つ、第3内向突起73と軸筒2とが嵌合する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、一端が開口した筒状のキャップとを備える筆記具であって、前記軸筒の一端にはペン先が設けられ、前記キャップは前記軸筒の両端に着脱可能であり、前記キャップの内面には、第1内向突起と、第2内向突起と、第3内向突起と、がそれぞれ軸方向に異なる位置に設けられており、
前記軸筒の前記ペン先側の端部に前記キャップを装着した際は、前記第1内向突起と前記軸筒とが嵌合し、且つ、前記第2内向突起と前記軸筒とが近接または接触し、且つ、前記第3内向突起と前記軸筒とが非接触状態となり、
前記軸筒の前記ペン先と反対側の端部に前記キャップを装着した際は、前記第1内向突起及び前記第2内向突起と前記軸筒とが非接触状態となり、且つ、前記第3内向突起と前記軸筒とが嵌合することを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記軸筒の前記ペン先側の外面には、前記第1内向突起を乗り越えて前記第1内向突起と嵌合する外向突起と、前記第2内向突起と近接または接触する支持部とが設けられ、
前記軸筒の前記ペン先と反対側の外面には、前記第3内向突起と圧接して嵌合する環状平滑面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記支持部が前記軸筒の環状で平滑な外面からなり、前記第2内向突起が、円周状に等間隔に配置された複数個の突起群であることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起が、前記キャップの開口端側より軸方向前方に第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起の順に配置されており、且つ、前記第1内向突起の内接円径が前記第2内向突起の内接円径より大きく、前記第2内向突起の内接円径が前記第3内向突起の内接円径より大きいことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の筆記具。
【請求項5】
前記キャップの内面に、前記軸筒の前記ペン先と反対側の端部に前記キャップを装着した際に前記軸筒の端部と当接する係止部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の両端に着脱可能なキャップを備える筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸体4の両端にキャップ8を着脱可能な筆記具において、キャップ8の開口端部に形成した嵌合用の第1の突部8bの奥側に、前記第1の突部8bの内接円径と略等しいかもしくはより小さい内接円径を有する第2の突部8dを形成したことにより、軸体4にキャップ8を着脱する際のぐらつきが少ない筆記具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-192888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸体4の前方にキャップ8を装着した際は、第1の突部8bが全周リブ2aを乗り越えてキャップ8と軸体4とが嵌合する。軸体4の後方にキャップ8を装着した際は、第1の突部8bと軸体4の後部とが嵌合し、第2の突部8dと軸体4の外周面とが当接乃至接触する。
【0005】
即ち、特許文献1に開示された筆記具では、軸体4の前方にキャップ8を装着した場合及び、軸体4の後方にキャップ8を装着した場合の何れの場合においても、第1の突部8bと軸体4とが嵌合しているため、軸体4の前後にキャップ8を着脱することで第1の突部8bの摩耗し、第1の突部8bと軸体4との嵌合力が低下するおそれがある。
【0006】
また、軸体4の前方にキャップ8を装着した場合においても第2の突部8dと軸体4とが接触するおそれがある。そのような場合、軸体4の前方にキャップ8を装着した場合及び、軸体4の後方にキャップ8を装着した場合の何れの場合においても、第2の突部8dと軸体4とが嵌合しているため、軸体4の前後にキャップ8を着脱することで第2の突部8dが摩耗し、第2の突部8dが軸体4とキャップ8とのぐらつきを抑えることができなくなるおそれがある。
【0007】
さらに、第1の凸部8bがキャップ8の開口端部に形成されているため、軸体4の後方にキャップ8を装着した場合には第1の突部8bと後軸3の軸方向中央付近とが嵌合し、後軸3の外面を傷つけるおそれがある。後軸3の軸方向中央付近に傷が付くと、傷が目立ってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためのものであって、軸筒の両端に着脱可能なキャップを備える筆記具において、軸筒とキャップとの着脱を繰り返したとしても軸筒とキャップとの嵌合力が維持され、且つ、軸筒にキャップを装着した際の軸筒とキャップとのぐらつきを長期に渡って抑えることができる筆記具を提供することを目的とする。尚、本発明では、筆記具において「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。キャップにおいて「後」とは開口端側を指し、「前」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の第1の発明の筆記具は、軸筒と、一端が開口した筒状のキャップとを備える筆記具であって、前記軸筒の一端にはペン先が設けられ、前記キャップは前記軸筒の両端に着脱可能であり、前記キャップの内面には、第1内向突起と、第2内向突起と、第3内向突起と、がそれぞれ軸方向に異なる位置に設けられており、
前記軸筒の前記ペン先側の端部に前記キャップを装着した際は、前記第1内向突起と前記軸筒とが嵌合し、且つ、前記第2内向突起と前記軸筒とが近接または接触し、且つ、前記第3内向突起と前記軸筒とが非接触状態となり、
前記軸筒の前記ペン先と反対側の端部に前記キャップを装着した際は、前記第1内向突起及び前記第2内向突起と前記軸筒とが非接触状態となり、且つ、前記第3内向突起と前記軸筒とが嵌合することを特徴とする。
【0010】
本願の第1の発明は、前記構成により、軸筒の前側にキャップを装着した際に第1内向突起と第2内向突起の2箇所でキャップが支持されるため、軸筒とキャップとの間のぐらつきを抑えることができる。さらに、軸筒の前側にキャップを装着した際には第3内向突起と軸筒とが干渉せず、軸筒の後側にキャップを装着した際には第1内向突起及び第2内向突起と軸筒とが干渉しないため、第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起の摩耗が抑えられ、軸筒とキャップとの嵌合力を維持することができる。さらに、軸筒とキャップとの間のぐらつきを長期に渡って抑えることができる。
【0011】
本願の第2の発明の筆記具は、前記第1の発明において、前記軸筒の前記ペン先側の外面には、前記第1内向突起を乗り越えて前記第1内向突起と嵌合する外向突起と、前記第2内向突起と近接または接触する支持部とが設けられ、
前記軸筒の前記ペン先と反対側の外面には、前記第3内向突起と圧接して嵌合する環状平滑面が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本願の第2の発明は、前記構成により、キャップを軸筒の前側に確実に装着することができる。また、キャップを軸筒の前側に装着した際の、キャップの軸筒に対するぐらつきを確実に抑えることができる。さらに、キャップを軸筒の後側に確実に装着することができる。
【0013】
本願の第3の発明の筆記具は、前記第1または第2の何れかの発明において、前記支持部が前記軸筒の環状で平滑な外面からなり、前記第2内向突起が、円周状に等間隔に配置された複数個の突起群であることを特徴とする。
【0014】
本願の第3の発明は、前記構成により、支持部の外径及び第2内向突起の高さの径方向のばらつきを吸収することができる。さらに、軸筒の外面が平滑であるため、筆記具を握った際の把持感、及びデザインを損なうことがない。
【0015】
本願の第4の発明は、前記第1乃至第3の何れかの発明において、前記第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起が、前記キャップの開口端側より軸方向前方に第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起の順に配置されており、且つ、前記第1内向突起の内接円径が前記第2内向突起の内接円径より大きく、前記第2内向突起の内接円径が前記第3内向突起の内接円径より大きいことを特徴とする。
【0016】
本願の第4の発明の筆記具は、前記構成により、軸筒の前側にキャップを装着する際に第1内向突起と嵌合する外向突起の軸方向の位置の寸法管理が容易となる。さらに、軸筒の後側にキャップを装着する際は、キャップの最も奥側に配置された第3内向突起と軸筒とが嵌合することにより、軸筒をキャップの最も奥まで挿入することができ、軸筒とキャップとを合わせた全長を短く抑えることができる。
【0017】
また、第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起の内接円径が異なるため、第1内向突起、第2内向突起及び第3内向突起が常に同時に軸筒に嵌合することを避けることができる。尚、内接円径とは内向突起の最小の内接円の直径を指す。
【0018】
本願の第5の発明は、前記第1乃至第4の発明において、前記キャップの内面に、前記軸筒の前記ペン先と反対側の端部に前記キャップを装着した際に前記軸筒の端部と当接する係止部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本願の第5の発明の筆記具は、前記構成により、軸筒の後側にキャップを装着した際に、係止部と軸筒の端部とが当接するため、キャップが過度に奥まで嵌め込まれることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、軸筒の両端に着脱可能なキャップを備える筆記具において、軸筒とキャップとの着脱を繰り返したとしても軸筒とキャップとの嵌合力が維持され、且つ、軸筒にキャップを装着した際の軸筒とキャップとのぐらつきを長期に渡って抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】キャップを軸筒の前側に装着した状態の筆記具を示す側面図である。
図2】軸筒を示す側面図である。
図3】キャップを示す拡大縦断面図である。
図4】キャップの底面図である。
図5】(A)は図3中のA―A断面矢視図、(B)は図3中のB―B断面矢視図である。
図6図1の縦断面図である。
図7】(C)は図6中のC部拡大図、(D)は図6中のD部拡大図である。
図8】キャップを軸筒の後側に装着した状態の筆記具を示す側面図である。
図9図8の縦断面図である。
図10】(E)は図9中のE部拡大図、(F)は図9中のF部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1乃至図10に本発明の実施の形態を示す。本実施の形態の筆記具1は、軸筒2と、軸筒2内に収容される筆記体6と、軸筒2の両端に着脱可能なキャップ7と、を備える。本実施の形態では、キャップ7を軸筒2の前側に装着した状態で、筆記具1の軸方向の全長は139mmである。
【0024】
・軸筒
図2に軸筒2を示す。軸筒2は、円筒状の前軸3と、前軸3の後端部に連結される円筒状の後軸4と、後軸4の後端に設けられる尾栓5とからなる。
【0025】
前軸3は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。前軸3の外面には、弾性材料からなる把持部31を備える。把持部31は、2色成形または前軸3の外面に装着して設けられる。前軸3の前方には先口部32が設けられている。先口部32の外径は前方に向かうにつれて小さくなっている。先口部32の前端は開口されている。前軸3の後方には鍔部33が設けられている。鍔部33の外径は鍔部33より前方の前軸3の外径より大きい。鍔部33の前方には案内部34が設けられている。案内部34の外径は前方から後方に向かって大きくなっている。案内部34の後端の外径はキャップ7の後端の内径と略同一、または僅かに小さく設定されている。
【0026】
前軸3の外面には外向突起35が設けられている。外向突起35は円周状に等間隔に配置された複数個(実施の形態では4個)の突起群である。外向突起35は4個以上設けられていてもよい。図6及び図7(D)に示すように、軸筒2の前側にキャップ7を装着した際は、外向突起35と第1内向突起71とが嵌合する。その後、キャップ7の後端面と鍔部33の前端面とが当接する。キャップ7を軸筒2に装着する上で、鍔部33と外向突起35との間の軸方向の寸法関係は重要である。外向突起35が把持部31より後方に設けられていることにより、鍔部33と外向突起35との距離が近くなり、外向突起35の軸方向位置の寸法管理が容易となる。
【0027】
前軸3の外面には支持部36が設けられている。実施の形態では支持部36の外径は8.6mmである。支持部36は環状で平滑な外面を有する。支持部36の外径は略一定である。支持部36の外径は一定であってもよい。環状平滑面43の外径は後方から前方に向かって変化していてもよい。図7(C)に示すように、キャップ7を軸筒2の前側に装着した際は、支持部36と第2内向突起72とが近接する。キャップ7を軸筒2の前側に装着した際は、支持部36と第2内向突起72とが接触していてもよい。支持部36は把持部31より前方に設けられていることにより、キャップ7を支えている第1内向突起71と第2内向突起72との間の距離を大きく確保することができる。距離の離れた外向突起35と支持部36の2点でキャップ7が支えられるため、キャップ7のぐらつきをより効果的に抑えることができる。支持部36は先口部32より後方に設けられていることにより、支持部36の外径を大きく確保することができる。支持部36の外径を大きく確保することにより、第2内向突起72の内接円径を大きく設定することができ、キャップ7を軸筒2の後側に装着した際でも、第2内向突起72が軸筒2に接触しないように設定することができる。
【0028】
後軸4は、円筒状の合成樹脂(例えば、ポリカーボネート樹脂)の成形体からなる。後軸4は前軸3の後方に螺合により装着されている。後軸4は前軸3に固着されていればよく、圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって前軸3に設けられていてもよい。後軸4の後端には段部41が設けられている。後軸4の後端部内面には、内向突起42が一体に形成される。
【0029】
後軸4の外面の後端には環状平滑面43が設けられている。環状平滑面43は環状で平滑な外面を有する。環状平滑面43の外径は後方から前方に向かって大きくなっている。環状平滑面43の外径は一定であってもよい。図9及び図10(F)に示すように、キャップ7を軸筒2の後側に装着した際は、環状平滑面43と第3内向突起73とが圧接して嵌合する。環状平滑面43が後軸4の後端に設けられていることにより、後軸4と第3内向突起73とが嵌合して後軸4が傷ついても、傷が大きく目立つことがない。また、後軸4の外面に、転写印刷等の装飾を施す場合は、環状平滑面43を避けて装飾することにより、キャップ7を軸筒2の後側に装着した場合でも装飾部分が傷つくことがない。
【0030】
図10(E)に示すように、キャップ7を軸筒2の後側に装着した状態で、第1内向突起71の径方向内方の後軸4の外径は、第1内向突起71の内接円径より小さく設定される。同様に、図10(F)に示すように、第2内向突起72の径方向内方の後軸4の外径は、第2内向突起72の内接円径より小さく設定される。前記構成により、キャップ7を軸筒2の後側に装着した際に、軸筒2の外面が第1内向突起71及び第2内向突起72によって傷つくことがない。
【0031】
実施の形態では、後軸4の外径は前方に向かうにつれて徐々に大きくなっている。キャップ7を軸筒2の後側に装着した状態で、第1内向突起71及び第2内向突起72と接触しない形状であれば、後軸4の形状はどのような形状であってもよい。
【0032】
尾栓5は外向突起51を備えている。外向突起51が内向突起42を乗り越えて嵌合することにより、尾栓5が後軸4に結合される。尾栓5は後軸4に結合されていればよく、圧入、係合、螺合、嵌合、接着、2色成形等によって後軸4に設けられていてもよい。インキ64が熱変色性インキである場合、尾栓5は摩擦熱によって熱変色性インキの筆跡を消去する摩擦体であってもよい。
【0033】
外面に露出している部分の尾栓5の外接円径は後軸4の後端の外径より小さい。尾栓5が後軸4に取り付けられた状態で、段部41の一部が外面に露出する。
【0034】
・キャップ
図3にキャップ7を示す。キャップ7は円筒体からなる。図1及び図8に示すように、キャップ7は軸筒2の両端に着脱可能である。キャップ7を構成する円筒体の内径は鍔部33より前方の前軸3の外径より大きく、且つ、鍔部33の外径より小さい。キャップ7の内面には、後側から前方に順に第1内向突起71、第2内向突起72、第3内向突起73、係止部74が設けられている。キャップ7の前端には頭冠75が設けられている。
【0035】
第1内向突起71は環状突起である。第1内向突起71は、キャップ7の開口端付近の内面に設けられている。第1内向突起71の内接円径は外向突起35の外接円径より僅かに小さく、前軸3の外径より大きく設定されている。図6及び図7(D)に示すように、軸筒2の前側にキャップ7を装着する際は、第1内向突起71が外向突起35を乗り越えることにより第1内向突起71と外向突起35とが嵌合し、キャップ7が軸筒2に装着される。
【0036】
第1内向突起71と外向突起35とは環状突起と円周状に等間隔に配置された複数個の突起群の組合せであればよく、外向突起35が環状突起、第1内向突起71が円周状に等間隔に配置された複数個の突起群であってもよい。第1内向突起71または外向突起35の片方が円周状に等間隔に配置された複数個の突起群であることにより、突起の高さの径方向のばらつきを吸収することができる。
【0037】
図10(E)に示すように、軸筒2の後側にキャップ7を装着した際には、第1内向突起71と軸筒2とが接触しない。この構成により、第1内向突起71の摩耗が抑えられ、軸筒2と第1内向突起71との間の寸法関係が維持される。その結果、軸筒2とキャップ7との嵌合力を長期に渡って維持することができる。
【0038】
図3及び図4に示すように、第2内向突起72は円周状に等間隔に配置された複数個(実施の形態では4個)の突起群である。第2内向突起72は4個以上設けられていてもよい。第2内向突起72の横断面の形状は図5(B)に示す通りである。第2内向突起72の内接円径は支持部36の外径と略同一、または僅かに大きく設定されている。第2内向突起72の内接円径は第1内向突起71の内接円径より小さい。第2内向突起72の内接円径は8.7mmである。第2内向突起72の内接円径は軸方向に一定であることにより、キャップ7及び軸筒2の軸方向の寸法にバラツキが生じても、確実に第2内向突起72と支持部36とが近接または接触させることができる。図6及び図7(C)に示すように、軸筒2の前側にキャップ7を装着した際には、第2内向突起72が支持部36の径方向外方に位置し、第2内向突起72と支持部36とが近接または接触する。キャップ7が軸筒2に対して、第1内向突起71と第2内向突起72の2点によって支持されることにより、キャップ7の軸筒2に対するぐらつきが抑えられる。
【0039】
図10(F)に示すように、軸筒2の後側にキャップ7を装着した際には、第2内向突起72と軸筒2とが接触しない。この構成により、第2内向突起72の摩耗が抑えられ、軸筒2と第2内向突起72との間の寸法関係が維持される。その結果、軸筒2とキャップ7との間のぐらつきを長期に渡って抑えることができる。
【0040】
図3及び図4に示すように、第3内向突起73は円周状に等間隔に配置された複数個(実施の形態では4個)の突起群である。第3内向突起73は4個以上設けられていてもよい。第3内向突起73の横断面の形状は図5(A)に示す通りである。第3内向突起73の内接円径は環状平滑面43の外径より僅かに小さく設定されている。第3内向突起73の内接円径は第2内向突起の内接円径より小さい。図9及び図10(F)に示すように、キャップ7を軸筒2の後側に装着する際は、環状平滑面43と第3内向突起73とが圧接して嵌合することにより、キャップ7が軸筒2に装着される。
【0041】
図7(C)に示すように、軸筒2の前側にキャップ7を装着した際には、第3内向突起73と軸筒2とが接触しない。この構成により、第3内向突起73の摩耗が抑えられ、軸筒2と第3内向突起73との間の寸法関係が維持される。その結果、軸筒2とキャップ7との嵌合力を長期に渡って維持することができる。
【0042】
図7(C)に示すように、軸筒2の前側にキャップ7を装着した際には、第3内向突起73は先口部32の径方向外方に位置している。この構成により、第3内向突起73と先口部32との間に比較的大きな隙間ができ、第3内向突起73の内接円径が第1内向突起71及び第2内向突起72の内接円径より小さくても、第3内向突起73と軸筒2とが干渉することがない。
【0043】
キャップ7には、弾性材料からなるペン先シール部材が設けられていてもよい。前記ペン先シール部材は、ペン先61に密接してインキ64の蒸発を防ぐ。前記ペン先シール部材がペン先61に密接することにより、軸筒2に対するキャップ7のぐらつきもより一層抑えることができる。
【0044】
・係止部
係止部74は円周状に等間隔に配置された複数個(実施の形態では8個)の縦リブ群である。係止部74の後端は軸方向に垂直な平面を備える。係止部74の後端の内接円径は第3内向突起73の内接円径より小さい。また、係止部74の内接円径は尾栓5の外接円径より大きく、且つ、段部41の外径より小さい。この構成により、図9及び図10(F)に示すように軸筒2の後側にキャップ7を装着した際に、段部41と係止部74とが当接するため、キャップ7を過度に奥まで嵌め込んでしまうことがない。また、係止部74と尾栓5とが干渉しないため、尾栓5が傷つくことがない。
【0045】
実施の形態では後軸4の外径が後方から前方に向かうにつれて大きくなるため、キャップ7が過度に奥まで嵌め込まれると、後軸4と第1内向突起71及び第2内向突起72とが接触するおそれがある。しかし、先に係止部74と段部41とが当接するため、後軸4と第1内向突起71及び第2内向突起72とが接触することがない。
【0046】
軸筒2の前側にキャップ7を装着した際には、係止部74は先口部32もしくは先口部32より前方における前軸3の径方向外方に位置している。この構成により、係止部74と先口部32との間に比較的大きな隙間ができ、係止部74の内接円径が第1内向突起71、第2内向突起72及び第3内向突起73の内接円径より小さくても、係止部74と軸筒2とが干渉することがない。
【0047】
・筆記体
図6に筆記体6を示す。筆記体6はペン先61と、インキ収容管62と、筆記体尾栓63と、インキ収容管62内に収容されたインキ64とからなる。
【0048】
筆記体6はペン先61を備える。ペン先61は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーからなる構成のいずれであってもよい。ペン先61はインキ収容管62の前端開口部に取り付けられている。また、インキ収容管62の後端開口部に、インキ収容管62と外部とが通気可能な通気孔を備えた筆記体尾栓63が取り付けられる。ペン先61の内部には、前端のボールを前方に押圧するスプリングが収容される。前記スプリングは、圧縮コイルスプリングの前端部にロッド部を備えた構成であり、前記ロッド部の前端がボール後面に接触している。非筆記時、前記スプリングの前方付勢によりボールがボールペンチップ前端の内向きの前端縁部内面に密接され、ペン先61の前端からのインキ64の漏出及びインキ64の蒸発を防止できる。
【0049】
・摩擦体
摩擦体を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部14を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。
【0050】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、インキ64は、可逆熱変色性インキであってもよい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。可逆熱変色性インキによる筆跡は前記摩擦体による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0051】
本実施の形態の筆記具1は、軸筒2と、一端が開口した筒状のキャップ7とを備える筆記具であって、軸筒2の一端にはペン先61が設けられ、キャップ7は軸筒2の両端に着脱可能であり、キャップ7の内面には、第1内向突起71と、第2内向突起72と、第3内向突起73と、がそれぞれ軸方向に異なる位置に設けられており、
軸筒2のペン先61側の端部にキャップ7を装着した際は、第1内向突起71と軸筒2とが嵌合し、且つ、第2内向突起72と軸筒2とが近接または接触し、且つ、第3内向突起73と軸筒2とが非接触状態となり、
軸筒2のペン先61と反対側の端部にキャップ7を装着した際は、第1内向突起71及び第2内向突起72と軸筒2とが非接触状態となり、且つ、第3内向突起73と軸筒2とが嵌合することを特徴とする。
【0052】
本実施の形態の筆記具1は、軸筒2のペン先61側の外面には、第1内向突起71を乗り越えて第1内向突起71と嵌合する外向突起35と、第2内向突起72と近接または接触する支持部36とが設けられ、
軸筒2のペン先61と反対側の外面には、第3内向突起73と圧接して嵌合する環状平滑面43とが設けられていることを特徴とする。
【0053】
本実施の形態の筆記具1は、支持部36が軸筒2の環状で平滑な外面からなり、第2内向突起72が、円周状に等間隔に配置された複数個の突起群であることを特徴とする。
【0054】
本実施の形態の筆記具1は、第1内向突起71、第2内向突起72及び第3内向突起73が、キャップ7の開口端側より軸方向前方に第1内向突起71、第2内向突起72及び第3内向突起73の順に配置されており、且つ、第1内向突起71の内接円径が第2内向突起72の内接円径より大きく、第2内向突起72の内接円径が第3内向突起73の内接円径より大きいことを特徴とする。
【0055】
本実施の形態の筆記具1は、キャップ7の内面に、軸筒2のペン先61と反対側の端部にキャップ7を装着した際に軸筒2の端部と当接する係止部74が設けられていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0056】
1 筆記具
2 軸筒
3 前軸
31 把持部
32 先口部
33 鍔部
34 案内部
35 外向突起
36 支持部
4 後軸
41 段部
42 内向突起
43 環状平滑面
5 尾栓
51 外向突起
6 筆記体
61 ペン先
62 インキ収容管
63 筆記体尾栓
64 インキ
7 キャップ
71 第1内向突起
72 第2内向突起
73 第3内向突起
74 係止部
75 頭冠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10