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特開2023-124618無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124618
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/12 20090101AFI20230830BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20230830BHJP
【FI】
H04W48/12
H04W48/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028494
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堤 直崇
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067JJ31
(57)【要約】
【課題】 省電力で動作する無線通信装置が、接続中のネットワークに障害が発生した場合でも迅速に他のネットワークに切り替えて通信を継続させる。
【解決手段】 本発明は、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に関する。そして、本発明の無線通信装置は、無線送信部と、無線受信部と、無線送信部及び無線受信部を制御して無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信待機するように無線受信部を制御し、間欠受信待機中に通信制御手段が第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、通信制御手段の接続先を第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる切替制御手段とを有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置において、
無線信号を送出する無線送信部と、
無線信号を受信する無線受信部と、
前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、
前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる切替制御手段と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記切替制御手段は、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した後、所定の切替後接続期間が経過すると、前記通信制御手段の接続先を前記第1の無線通信ネットワークシステムに切戻させることを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
それぞれの前記無線通信ネットワークシステムは、少なくともLoRa標準に対応していることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、
前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、
前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる切替制御手段と
して機能させることを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項5】
無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置が行う無線通信方法において、
通信制御手段及び切替制御手段を有し、
前記通信制御手段は、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行い、
前記切替制御手段は、前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法に関し、例えば、低消費電力で広いエリアの無線通信を必要とする装置に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、低消費電力で広いエリアをカバーする無線通信方式として、LoRa(Long Range Wide Area Network)(登録商標)が存在する(非特許文献1)。
【0003】
従来の非特許文献1に示すLoRaを適用した通信システムでは、無線通信を行う子機(以下、「無線子機」とも呼ぶ)が、ゲートウェイ(基地局)及びネットワークサーバを介して上位装置(例えば、アプリケーションサーバ)と通信可能な構成となっている。
【0004】
非特許文献1に示すLoRa無線プロトコルでは、無線子機がLoRa無線通信ネットワークに参加する手順が規定されている。無線子機とネットワークサーバは、同手順に従って共通鍵AppKey(Application key)を基にAppSKey(Application session key)を生成し、同じ暗号鍵(共通鍵)を使用することで暗号化通信を行うことができる。
【0005】
また、従来のLoRaを適用した通信システムとして特許文献1に記載のシステムが存在する。特許文献1に記載の通信システムでは、1つの無線子機から接続可能なネットワークサーバが複数存在する。そして、特許文献1に記載の通信システムでは、LoRaに対応する無線子機が、一定周期で接続中のネットワークサーバに対して死活監視(死活監視用のパケット送信)を実施し、設定されたパラメータより基準値(例えば、電波の受信強度)が下回った場合に接続するネットワークサーバを切り替える処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-190720号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「LoRaWAN(TM)Specificationv1.1」、LoRaAlliance(TM)、[2022年1月28日検索],[Online]、INTERNET、<URL: https://lora-alliance.org/resource_hub/lorawan-specification-v1-1/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された無線子機では、複数のネットワークサーバを切り換えて接続することが可能であり、一定周期で各ネットワークへの死活監視を実施することで最適なネットワーク(最も電波受信強度の高いネットワーク)へ接続出来る点で有効であった。しかしながら、特許文献1に記載された無線子機では、第1ネットワークから第2ネットワークへ切り替えるタイミングにおいて、指定された一定周期のタイミングを待たないと切り替えることが出来ないという課題があった。例えば、無線子機において、死活監視のインターバルが24時間である場合を想定する。この場合、無線子機が第1のネットワークに接続中に第1のネットワークの基地局に障害が発生して接続不可となると、当該無線子機は次の死活監視のタイミングとなるまでの間(最大24時間)どのネットワークにも接続できていない状態となってしまうことになる。
【0009】
以上のような問題に鑑みて、省電力で動作する無線通信装置(例えば、無線子機)が、接続中のネットワークに障害が発生した場合でも迅速に他のネットワークに切り替えて通信を継続させることができる無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明は、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置において、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部と、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる切替制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置に搭載されたコンピュータを、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行う通信制御手段と、前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせる切替制御手段として機能させることを特徴とする。
【0012】
第3の本発明は、無線信号を送出する無線送信部と、無線信号を受信する無線受信部とを有し、複数の無線通信ネットワークシステムに接続可能な無線通信装置が行う無線通信方法において、通信制御手段及び切替制御手段を有し、記通信制御手段は、前記無線送信部及び前記無線受信部を制御して前記無線通信ネットワークシステムに接続して通信する通信制御を行い、前記切替制御手段は、前記通信制御手段が第1の無線通信ネットワークシステムに接続中又は接続試行中に、間欠的に第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信可能な状態で待機する間欠受信待機を継続するように前記無線受信部を制御し、前記間欠受信待機中に前記通信制御手段が前記第2の無線通信ネットワークシステムからの制御信号を受信した場合、前記通信制御手段の接続先を前記第2の無線通信ネットワークシステムに切り替えさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、省電力で動作する無線通信装置が、接続中のネットワークに障害が発生した場合でも迅速に他のネットワークに切り替えて通信を継続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る無線子機の機能的構成について示したブロック図である。
図2】実施形態に係る通信システムの全体構成の例について示したブロック図である。
図3】実施形態に係る無線子機の動作について状態遷移図の形式で示した図である。
図4】実施形態に係る通信システムの動作(無線子機の動作を含む)について示したシーケンス図(その1)である。
図5】実施形態に係る通信システムの動作(無線子機の動作を含む)について示したシーケンス図(その2)である。
図6】実施形態に係る通信システムの動作(無線子機の動作を含む)について示したシーケンス図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による無線通信装置、無線通信プログラム、及び無線通信方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0016】
(A-1)実施形態の構成
図2は、実施形態に係る通信システムの全体構成の例について示したブロック図である。
【0017】
図2に示す通信システム1には、アプリケーションサーバ10、複数のネットワークサーバ20、複数の基地局としてのゲートウェイ30、及び無線通信装置としての無線子機40が配置されている。
【0018】
通信システム1に設置する各装置の数は限定されないものであるが、説明を簡易とするために、この実施形態の通信システム1では、少なくとも図2に示すように1つのアプリケーションサーバ10、2つのネットワークサーバ20(20-1、20-2)、2つのゲートウェイ30(30-1、30-2)、1つの無線子機40が配置されているものとして説明する。なお、本明細書では、ネットワークサーバ20-1、20-2をそれぞれ「NWS1」、「NWS2」という符号で表す場合があるものとする。また、本明細書では、ゲートウェイ30-1、30-2をそれぞれ「GW1」、「GW2」という符号で表す場合があるものとする。
【0019】
なお、この実施形態では、原則として、通信システム1を構成する各装置は、LoRaAlliance(登録商標)が定める標準仕様に従った通信を行う構成となっている。すなわち、本明細書において、通信システム1を構成する各装置は、以下に特に説明のない処理(動作)については、LoRaAllianceが定める仕様に基づく処理(動作)を行うものとして説明する。なお、以下では、「LoRa標準」という場合は、LoRaAllianceが定める仕様を指すものとする。
【0020】
この実施形態では、ネットワークサーバ20とゲートウェイ30を含む構成により1つの無線通信ネットワークシステム(無線通信ネットワーク)が形成されているものとする。つまり、図2に示す通信システム1では、ネットワークサーバ20-1とゲートウェイ30-1により構成される無線通信ネットワークシステム(以下、「第1の無線通信ネットワークシステム」又は「第1の無線通信ネットワーク」とも呼ぶ)と、ネットワークサーバ20-2とゲートウェイ30-2により構成される無線通信ネットワークシステム(以下、「第2の無線通信ネットワークシステム」又は「第2の無線通信ネットワーク」とも呼ぶ)が配置されていることになる。なお、通信システム1に配置される無線通信ネットワークシステムの数は限定されないものであり、3つ以上配置していてもよい。
【0021】
無線子機40は、自身に搭載又は接続される各種センサーの検出情報や、自身に接続される電気機器などから収集した情報等を、通信システム1の上位(アプリケーションサーバ10側)に送信するものである。無線子機40はゲートウェイ30と無線により接続される。以下では、無線子機40とゲートウェイ30との間の無線通信の区間を「LoRa無線区間」と呼ぶものとする。
【0022】
ゲートウェイ30は、無線子機40から無線にて受信した各種情報をネットワークサーバ20側へ中継する。ゲートウェイ30とネットワークサーバ20との接続構成は限定されないものであるが、例えば、有線(例えば、種々のLANケーブル等)で接続する構成としてもよいし、無線(例えば、種々の無線LAN等)で接続する構成としてもよい。
【0023】
ネットワークサーバ20は、ゲートウェイ30から受信した無線子機40からの各種データを、アプリケーションサーバ10へ中継する。ネットワークサーバ20及びアプリケーションサーバ10間の接続は、上記同様に有線又は無線でも良く、接続に用いる規格、方式も限定されない。また、ネットワークサーバ20は、無線子機40の識別子の管理や、通信の暗号化等を行う。
【0024】
アプリケーションサーバ10は、ネットワークサーバ20から受信した無線子機40からの各種情報に基づいて任意の処理を実行するものである。例えば、アプリケーションサーバ10は、無線子機40から送信されたデータを蓄積して処理する。
【0025】
次に、無線子機40の機能的構成について図1を用いて説明する。
【0026】
図1に示す通り、無線子機40は、システムデータ記憶部41、動作記憶部42、切替要求検知機能部43、タイマ制御部44、MAC制御部45、無線送信部46、無線受信部47、及びLoRa無線アンテナ48を有している。
【0027】
無線子機40は、ソフトウェアにより実現可能な構成要素(例えば、切替要求検知機能部43、タイマ制御部44、及びMAC制御部45を含む要素)については、例えば、図示しないコンピュータにプログラム(実施形態に係る無線通信プログラムを含む)をインストールすることにより実現するようにしてもよい。上記のコンピュータは、例えば、プロセッサ、一次メモリ(揮発性メモリ)、二次メモリ(不揮発性メモリ)等により構成される。この実施形態では、動作記憶部42が上記の二次メモリ(例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ)に相当し、動作記憶部42が上記の一次メモリ(例えば、DRAM等の揮発性メモリ)に相当するものとして説明するが、この実施形態の無線子機40を構成するコンピュータは上記の構成に限定されず種々の構成を適用することができる。
【0028】
システムデータ記憶部41には、無線子機40を動作させる上で使用するシステムデータ(例えば、種々のパラメータや鍵情報等を含む)等が格納される。
【0029】
図1に示すように、システムデータ記憶部41には、ネットワークサーバ20-1、20-2のそれぞれと暗号通信するための鍵情報としてAppKeyのデータが保持される。以下では、ネットワークサーバ20-1に接続するためのAppKeyを「AppKey1」と表し、ネットワークサーバ20-2に接続するためのAppKeyを「AppKey2」と表す。また、図1に示すように、システムデータ記憶部41には、現在接続中/接続試行中のネットワークサーバ20とは異なるネットワークサーバ20からの制御信号(詳細については後述)を受信可能な状態で待機(以下、「受信待機」と呼ぶ)する間隔(時間)のパラメータとして、「受信待機間隔t1」が保持される。さらに、図1に示すように、システムデータ記憶部41には、接続先が第1のネットワークサーバ20-1から第2のネットワークサーバ20-2への接続に切り替わった後、第2のネットワークサーバ20-2への接続を切断して第1のネットワークサーバ20-1への接続に切戻すまでの時間(以下、「切替後接続期間」とも呼ぶ)として、「切替後セッション時間Ts」が保持される。
【0030】
動作記憶部42には、少なくとも接続するネットワークサーバ20の共有鍵AppKeyの情報となる「AppKey値」等が保持される。
【0031】
切替要求検知機能部43は、無線子機40が接続する無線通信ネットワークの切替に関する制御処理機能を担っている。この実施形態において、切替要求検知機能部43は、接続先の無線通信ネットワーク(ネットワークサーバ20)に対応するAppKey(AppKey1又はAppKey2)をシステムデータ記憶部41から取得して動作記憶部42のAppKey値に設定することで、無線子機40が接続する無線通信ネットワークの切替制御を行う。
【0032】
タイマ制御部44は、タイマ機能を担っており、切替要求検知機能部43から設定された時間を計時が経過した場合に、切替要求検知機能部43へタイムアウトの通知を行う。
【0033】
MAC制御部45は、無線送信部46及び無線受信部47を制御して無線通信ネットワークシステムと無線通信する機能(直接的にはゲートウェイ30と無線通信する機能)を担っている。さらに、MAC制御部45は、動作記憶部42のAppKey値に設定された鍵情報を使用して、無線子機40の参加シーケンスを実施し、生成した暗号鍵を使用して無線子機40及びネットワークサーバ20間をセキュアに通信(暗号通信)する制御を行う。
【0034】
ここで、MAC制御部45は、基本的には、LoRa標準に規定されたメディアアクセスコントール(MAC)の機能を実現するものであるが、一部の通信についてはLoRa標準プロトコルからはずれた動作(例えば、後述する受信待機処理や起動信号に基づくネットワークサーバ20の切替処理等)を可能とすることで本発明の無線通信装置が実現されている。
【0035】
また、ここで、MAC制御部45は、LoRa標準において省電力で動作するクラスA又はクラスBを基本として無線通信の制御(無線送信部46及び無線受信部47の制御)を行うものとして説明する。LoRa標準においてクラスCのデバイスは常にサーバとの間で双方向通信可能であるが、クラスA、Bのデバイスは省電力動作のために限られた期間でのみサーバからのデータ受信が可能となっている。しかしながら、無線子機40のMAC制御部45に、従来のLoRa標準のクラスA、Bの制御をそのまま適用すると、上記の「発明が解決しようとする課題」に記載したように、接続するネットワークサーバ20の切替時間(例えば、ネットワークサーバ20-1で障害が発生してネットワークサーバ20-2に切り替えるまでの時間)が長くなる傾向になる(例えば、24時間程度)。そのため、この実施形態の無線子機40(MAC制御部45)では、LoRa標準に仕様(構成)を追加(例えば、後述する受信待機処理や起動信号に基づくネットワークサーバ20の切替処理等を追加)することで、省電力動作を維持しつつ、接続するネットワークサーバ20の切替時間を短縮(例えば、通信不可となる時間を短縮)する。
【0036】
無線送信部46は、LoRa無線アンテナ48を用いて無線信号を送信する機能を担っている。無線送信部46は、例えば、MAC制御部45から指示されたデータを、LoRa変調方式に従って無線変調を行い、無線信号を送信する。
【0037】
無線受信部47は、LoRa無線アンテナ48を用いて無線信号を受信する機能を担っている。無線受信部47は、例えば、受信した電波を、LoRa変調方式に従って復調を行い、データとしてMAC制御部45に供給する。
【0038】
LoRa無線アンテナ48は、LoRa無線区間(無線子機40)との電波送受信を行うためのアンテナである。
【0039】
以上のように、無線子機40では、MAC制御部45が、無線送信部46及び無線受信部47を制御して無線通信ネットワークシステムと無線通信するための通信制御を行う通信制御手段として機能する。また、無線子機40では、切替要求検知機能部43及びタイマ制御部44により、接続する無線通信ネットワークシステムの切替(受信待機処理を含む)を制御する切替制御手段として機能する。
【0040】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態における通信システム1(無線子機40を含む)の動作(この実施形態の無線通信方法を含む)について説明する。
【0041】
図3は、無線子機40の動作のうちネットワークサーバ20(無線通信ネットワーク)への接続動作を状態遷移図の形式で示した図である。
【0042】
図3の状態遷移図では、無線子機40は状態X1~状態X3のいずれかの状態に遷移するものとして図示している。
【0043】
図3において、状態X1は、無線子機40が起動した初期状態を表している。また、図3において、状態X2は、無線子機40がネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続試行中又は接続中の状態を表している。さらに、図3において、状態X3は、無線子機40がネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続試行中又は接続中の状態を表している。
[状態X1から状態X2に遷移する際の動作]
無線子機40は起動すると、まず状態X1(初期状態)に遷移する。状態X1となると、無線子機40では、初期設定(ステップS1)が実行され、初期設定後に状態X2に移行する。このとき、無線子機40は、初期設定処理として、少なくともシステムデータ記憶部41に保存されたAppKey1を動作記憶部42のAppKey値に設定する処理を行う。
[状態X2における動作]
無線子機40では、状態X1から状態X2となると、MAC制御部45により、ネットワークサーバ20-1(NWS1)への参加シーケンス処理(LoRa標準プロトコルにおけるJoinシーケンス処理)を試みる処理(以下、「接続試行処理」とも呼ぶ)が行われる。このとき、MAC制御部45は、ゲートウェイ30-1(GW1)を経由してJoinRequestの信号(ネットワークへの参加を要求する信号)をネットワークサーバ20-1(NWS1)宛に送信することで、ネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続試行処理を行う。
【0044】
MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20-1(NWS1)から応答(JoinAccept信号)があり、Joinシーケンスが成功すると(ステップS2の処理が実行されると)、無線子機40(MAC制御部45)では、ネットワークサーバ20-1(NWS1)を介してアプリケーションサーバ10(APS)との通信が開始されることになる。
【0045】
一方、MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20-1(NWS1)から応答(JoinAccept信号)が無い場合は、Joinシーケンスが失敗(中断)ということになる。この場合、MAC制御部45は、任意の周期で接続試行処理(JoinRequest信号の送信)を繰り返す。
【0046】
また、無線子機40は、状態X2となると、上記のネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続に並行して、間欠的にネットワークサーバ20-2(NWS2)からの接続先の切替を促すための制御信号(以下、「起動信号」とも呼ぶ)を受信可能な状態で待機(受信待機)する処理を間欠的に行う(ステップS3)。以下では、無線子機40が間欠的に受信待機状態となることを「間欠受信待機」とも呼ぶものとする。起動信号の詳細については後述する。
【0047】
無線子機40では、状態X2となると、切替要求検知機能部43が、システムデータ記憶部41に設定された受信待機間隔t1を取得してタイマ制御部44に設定する。そして、タイマ制御部44は受信待機間隔t1が経過するとタイムアウトを切替要求検知機能部43に通知する。切替要求検知機能部43は、タイマ制御部44のタイムアウトを契機に、MAC制御部45を介して無線受信部47に受信要求を通知して受信待機期間t2の間、受信待機させると共に、当該受信待機の間における起動信号の受信の有無を確認する。このとき、切替要求検知機能部43は、起動信号が受信されていない場合には、再度タイマ制御部44に受信待機間隔t1を設定して、タイムアウト後に無線受信部47を受信待機状態とさせる処理(つまり間欠受信待機処理)を継続する。
【0048】
以上のように、無線子機40では、状態X2となると、上記のネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続(接続できない場合は接続試行処理の繰返し処理)を継続しつつ、上記の間欠受信待機処理も継続する。
[状態X2から状態X3に遷移する際の動作]
状態X2において、切替要求検知機能部43により、上記の受信待機処理中にネットワークサーバ20-2(NWS2)から起動信号の受信が検知されると(ステップS4)、無線子機40は状態X3に遷移する。状態X2から状態X3に移行する際、切替要求検知機能部43は、上記のネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続(もしくは接続試行処理の繰返し処理)、及び上記の間欠受信待機処理を停止する。また、状態X2から状態X3に移行する際、無線子機40では、システムデータ記憶部41に保存されたネットワークサーバ20-2(NWS2)へ接続する為のAppKey2が動作記憶部42のAppKey値へ設定される。さらに、状態X2から状態X3に移行する際、無線子機40では、ネットワークサーバ20-2(NWS2)へ切替後のセッション時間(接続時間)を監視するため、タイマ制御部44に切替後セッション時間Tsがセットされ、タイマ制御部44の計時が開始される。
【0049】
切替後セッション時間Tsの値については限定されないものであるが、例えば、Ts=1時間~24時間程度を設定するようにしてもよい。
[状態X3における動作]
無線子機40では、状態X3となり、AppKey2が動作記憶部42のAppKey値に設定されると、MAC制御部45により、ネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続試行処理が行われる。このとき、MAC制御部45は、ゲートウェイ30-2(GW2)を経由してJoinRequestの信号(ネットワークへの参加を要求する信号)をネットワークサーバ20-2(NWS2)宛に送信することで、ネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続試行処理を行う。MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20-2(NWS2)から応答(JoinAccept信号)があり、Joinシーケンスが成功すると(ステップS5の処理が実行されると)、無線子機40(MAC制御部45)では、ネットワークサーバ20-2(NWS2)を介してアプリケーションサーバ10(APS)との通信が開始されることになる。一方、MAC制御部45のJoinRequest信号に対して、ネットワークサーバ20-2(NWS2)から応答(JoinAccept信号)が無い場合は、Joinシーケンスが失敗(中断)ということになる。この場合、MAC制御部45は、任意の周期で接続試行処理(JoinRequest信号の送信)を繰り返すことで、ネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続を試みる。
[状態X3から状態X2に遷移する際の動作]
無線子機40は、状態X3において、タイマ制御部44のタイムアウトが発生(切替後セッション時間Tsが経過;ステップS6の処理が発生)すると、状態X2に遷移する。
【0050】
状態X3から状態X2に移行する際、切替要求検知機能部43は、上記のネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続(もしくは接続試行処理の繰返し処理)を停止する。また、状態X2から状態X3に移行する際、無線子機40では、システムデータ記憶部41に保存されたネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続する為のAppKey1が動作記憶部42のAppKey値へ設定される。
【0051】
これにより、無線子機40は、状態X2に遷移するので、再びネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続を試行することになる。
【0052】
以上のように、無線子機40では、図3に示す状態遷移図のように動作することで、接続先のネットワークサーバ20の切替処理を行う。
【0053】
次に、上記の間欠受信待機と起動信号の詳細について説明する。
【0054】
上記の通り、切替要求検知機能部43は、状態X2の間、受信待機間隔t1の時間待機してから受信待機期間t2の間だけ無線受信部47を信号受信可能(少なくとも起動信号を受信可能)な状態で待機させる処理を繰り返すことになる。t1とt2に設定する値については限定されないものであるが、例えば、t1=1秒~10秒程度、t2=3ミリ秒~5ミリ秒程度を設定するようにしてもよい。
【0055】
ここでは、少なくともゲートウェイ30-2については、上記の起動信号を送信可能な構成となっているものとする。ゲートウェイ30-2が起動信号を送信するトリガ(タイミング)については限定されないものである。例えば、ゲートウェイ30-2は、図示しないオペレータ(例えば、ネットワーク管理者や保守担当者)が使用する端末(以下、「オペレータ端末」と呼ぶ)からの通知(例えば、コマンドラインやGUIを用いた種々の操作手段をトリガとする通知)に基づいて、無線子機40に起動信号を送信可能な構成としてもよい。
【0056】
起動信号は、LoRa標準プロトコルのフレームを用いることができる信号であるが、起動信号自体は、LoRa標準プロトコルには定義されていない本発明独自の信号であり、ゲートウェイ30から無線子機40に送信される信号(フレーム)であるものとする。
【0057】
起動信号は、他の信号(例えば、LoRa標準におけるビーコン信号等)と区別可能な構成である必要がある。例えば、起動信号としては、ヘッダ(例えば、MACフレームでユーザが任意に変更可能なヘッダ部分)又はペイロード(例えば、MACフレームのペイロード)に、起動信号であることを示す任意のデータ(フラグ)が設定されたフレームを適用することで、他の制御信号(例えば、ゲートウェイ30からの他のビーコン信号等)と識別ができる。
【0058】
上記の通り、無線子機40は、LoRa標準のうちクラスB又はCで動作するため、基本的にはLoRa標準で定められた期間でしかフレームを受信することができない。しかしながら、この実施形態の無線子機40では、LoRa標準とは異なり、状態X2の間は間欠受信待機処理を繰り返すため、ネットワークサーバ20-1(NWS1)に接続済/接続試行中であっても、間欠受信待機のタイミングに起動信号が到来すれば、その送信元(ここではゲートウェイ30-2)からの起動信号を受信して、ネットワークサーバ20-2への接続切替が可能となる。具体的には、無線子機40(無線受信部47及びMAC制御部45)では、受信待機中に起動信号のプリアンブル(物理フレームの先頭に配置されているプリアンブル)が到来すれば、当該起動信号のフレーム全体を受信することができる。例えば、ゲートウェイ30-1が送信する起動信号において、プリアンブルの期間を長くする(例えば、1秒以上とする)ことで、より確実に起動信号を無線子機40に受信させることができることになる。言い換えると、無線子機40では、受信待機間隔t1を上記の起動信号のプリアンブルよりも短くすることで、より確実に起動信号を無線子機40に受信させることができることになる。なお、ゲートウェイ30-2から起動信号を送信する回数や間隔は限定されないものである。例えば、ゲートウェイ30-2から所定の間隔で複数回起動信号を送信させることで、より確実に起動信号を無線子機40に受信させることができることになる。
【0059】
次に、図3の状態遷移図に従って動作する無線子機40が、接続先のネットワークサーバ20を切り替える際の具体的なシナリオの例について図4図6を用いて説明する。
【0060】
図4は、無線子機40が接続先のネットワークサーバ20を切り替える際の第1のシナリオについて示したシーケンス図である。
【0061】
無線子機40は起動後、状態X1から、初期設定の後、状態X2に遷移する。無線子機40は、状態X2に遷移するとネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続を試行し、ここでは接続が成功したものとする(S101~S103)
また、無線子機40は、状態X2に遷移すると、間欠受信待機を継続することで、起動信号の受信を間欠的(定期的)に試みることになる(S104)
ここで、無線子機40がネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続中に、その経路上のゲートウェイ30-1(GW1)で故障(例えば、電源系の故障)が発生して動作を停止したものとする(S105)。
【0062】
その後、図示しないオペレータ(例えば、ゲートウェイ30-1の障害を認識したオペレータ)の操作に基づき、ゲートウェイ30-2(GW2)から無線子機40に対して起動信号が送信され(S106)、間欠受信を繰り返している無線子機40で受信されたものとする。これにより、無線子機40は、状態X2から状態X3に遷移することになる。
【0063】
無線子機40は、状態X3に遷移すると、タイマ制御部44に切替後セッション時間Tsをセットしてネットワークサーバ20-2と接続を継続する時間(セッション時間)の監視を開始する。
【0064】
また、無線子機40は、状態X3に遷移すると、ネットワークサーバ20-2(NWS2)へ接続の切替を試行して成功したものとする。これにより、無線子機40は、ゲートウェイ30-2及びネットワークサーバ20-2を経由してアプリケーションサーバ10と接続することができることになる(S107~S110)。
【0065】
そして、その後、ゲートウェイ30-1が障害から回復して復旧したものとする(S111)
さらに、その後、タイマ制御部44がタイムアウト(切替後セッション時間Tsが経過)すると、無線子機40は、状態X3から状態X2に遷移する。状態X2に遷移すると、無線子機40は、ネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続の切替(切戻し)を試行して成功したものとする。これにより、無線子機40は、ゲートウェイ30-1及びネットワークサーバ20-1を経由してアプリケーションサーバ10と接続することができることになる(S112~S114)。
【0066】
第1のシナリオに関する動作は以上の通りである。
【0067】
図5は、無線子機40が接続先のネットワークサーバ20を切り替える際の第2のシナリオについて示したシーケンス図である。
【0068】
第2のシナリオでは、無線子機40の起動前にゲートウェイ30-1(GW1)で障害が発生しているものとする(S201)。
【0069】
無線子機40は起動後、状態X1から、初期設定の後、状態X2に遷移する。無線子機40は、状態X2に遷移するとネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続を試行するが、ここでは、ゲートウェイ30-1(GW1)で障害が発生しているため接続は失敗し、継続的にネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続試行(JoinRequestの送信)を繰り返すことになる(S202)。
【0070】
無線子機40は、ネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続試行を繰り返す間、並行して、間欠受信待機を繰返し行い起動信号の受信を試みる(S203)。
【0071】
その後、図示しないオペレータ(例えば、ゲートウェイ30-1の障害を認識したオペレータ)の操作に基づき、ゲートウェイ30-2(GW2)から無線子機40に対して起動信号が送信され(S204)、間欠受信を繰り返している無線子機40で受信されたものとする。これにより、無線子機40は、状態X2から状態X3に遷移することになる。
【0072】
なお、ここでは、無線子機40が状態X3に遷移した後(起動信号を受信した後)、ゲートウェイ30-1の障害が回復して復旧したものとする(S205)。
【0073】
無線子機40は、状態X3に遷移すると、タイマ制御部44に切替後セッション時間Tsをセットしてネットワークサーバ20-2と接続を継続する時間(セッション時間)の監視を開始する。また、無線子機40は、状態X3に遷移すると、ネットワークサーバ20-2(NWS2)へ接続の切替を試行して成功したものとする。これにより、無線子機40は、ゲートウェイ30-2及びネットワークサーバ20-2を経由してアプリケーションサーバ10と接続することができることになる(S206~S209)。
【0074】
さらに、その後、タイマ制御部44がタイムアウト(切替後セッション時間Tsが経過)すると、無線子機40は、状態X3から状態X2に遷移する。状態X2に遷移すると、無線子機40は、ネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続の切替(切戻し)を試行して成功したものとする。これにより、無線子機40は、ゲートウェイ30-1及びネットワークサーバ20-1を経由してアプリケーションサーバ10と接続することができることになる(S210~S212)。
【0075】
第2のシナリオに関する動作は以上の通りである。
【0076】
図6は、無線子機40が接続先のネットワークサーバ20を切り替える際の第3のシナリオについて示したシーケンス図である。
【0077】
無線子機40は起動後、状態X1から、初期設定の後、状態X2に遷移する。無線子機40は、状態X2に遷移するとネットワークサーバ20-1(NWS3)へ接続を試行し、ここでは接続が成功したものとする(S301~S303)
また、無線子機40は、状態X2に遷移すると、間欠受信待機を継続する(S304)
ここで、無線子機40がネットワークサーバ20-1(NWS3)へ接続中に、その経路上のゲートウェイ30-1(GW1)で故障(例えば、電源系の故障)が発生して動作を停止したものとする(S305)。
【0078】
その後、図示しないオペレータ(例えば、ゲートウェイ30-1の障害を認識したオペレータ)の操作に基づき、ゲートウェイ30-2(GW2)から無線子機40に対して起動信号が送信され(S306)、間欠受信を繰り返している無線子機40で受信されたものとする。これにより、無線子機40は、状態X2から状態X3に遷移することになる。
【0079】
無線子機40は、状態X3に遷移すると、タイマ制御部44に切替後セッション時間Tsをセットしてネットワークサーバ20-2と接続を継続する時間(セッション時間)の監視を開始する)。また、無線子機40は、状態X3に遷移すると、ネットワークサーバ20-2(NWS2)へ接続を試行するが、ここではネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続が失敗した(JoinRequestに対する応答がなかった)ものとする。そうすると、無線子機40は、継続的にネットワークサーバ20-2(NWS2)への接続試行(JoinRequestの送信)を繰り返すことになる(S307、S308)。
【0080】
さらに、その後、タイマ制御部44がタイムアウト(切替後セッション時間Tsが経過)すると、無線子機40は、状態X3から状態X2に遷移する。
【0081】
状態X2に遷移すると、無線子機40は、ネットワークサーバ20-1(NWS1)へ接続の切替(切戻し)を試行するが、ゲートウェイ30-1は故障から復旧していないため、継続的にネットワークサーバ20-1(NWS1)への接続試行(JoinRequestの送信)しつつ間欠受信待機を継続することになる(S309、S310)。
【0082】
第3のシナリオに関する動作は以上の通りである。
【0083】
(A-3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0084】
この実施形態の無線子機40は、ネットワークサーバ20-1に優先的に接続し、ネットワークサーバ20-1に接続中であっても、並行して間欠受信待機を継続することでネットワークサーバ20-2への切替の契機となる起動信号を受けることが可能となる。また、この実施形態の無線子機40では、接続先をネットワークサーバ20-2へ切り替えた場合でも、切替後セッション時間Tsが経過したことを契機にネットワークサーバ20-1へ切戻す。
【0085】
これにより、この実施形態の無線子機40では、接続可能な無線通信ネットワークシステムが複数存在する環境において、優先的に接続する無線通信ネットワークシステムに障害が発生(例えば、ゲートウェイ30の故障や接続不安定な状況が発生)しても、任意のタイミング(例えば、オペレータの操作によるタイミング)で、迅速に接続する無線通信ネットワークシステムを切り替えることができる。
【0086】
また、これにより、この実施形態の無線子機40では、第1の無線通信ネットワークシステム(ネットワークサーバ20-1)と接続中(接続中と認識している間も含む)又は接続試行中であっても、接続中/接続試行中でない他の無線通信ネットワークシステムからの起動信号を受信可能な状態で受信待機する処理を間欠的に行うことで、従来技術の死活監視のように消費電力の大きい信号送信を伴わずに迅速な接続先切替を実現している。特に、無線通信においては信号受信よりも信号送信に必要な電力が非常に大きいため、無線子機40において、信号送信を省略しつつ迅速な接続先切替を実現できることの省電力効果を非常に大きい。
【0087】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0088】
(B-1)上記の実施形態では、本発明の無線通信装置を、LoRa無線通信ネットワークシステムに接続する無線子機に適用する例について説明したが、他のLPWA(Low Power Wide Area)の広域無線通信ネットワークシステムの無線子機に適用するようにしてもよい。
【0089】
(B-2)上記の実施形態では、説明を簡易とするために無線子機40は、2つの無線通信ネットワークシステムに接続可能な構成として図示したが、3つ以上の無線通信ネットワークシステムに接続可能な構成としてもよい。この場合、無線子機40のシステムデータ記憶部41では、それぞれの無線通信ネットワークシステム(ネットワークサーバ20)に対応するAppKeyが保持されている必要がある。
【0090】
また、上記の実施形態では、説明を簡易とするために、通信システム1に存在する無線通信ネットワークシステムは当初から固定的に配置されているが、運用中に新たな無線通信ネットワークシステムを追加するようにしてもよい。その場合は、この場合、無線子機40のシステムデータ記憶部41では、予め追加される可能性のある無線通信ネットワークシステム(ネットワークサーバ20)に対応するAppKeyが保持されている必要がある。これにより、例えば、通信システム1の運用中に、障害が発生したゲートウェイ30の近くに、可搬式のゲートウェイ30(別の無線通信ネットワークシステムを構成するゲートウェイ30)を配置することで、無線子機40の通信を継続させることができる。
【符号の説明】
【0091】
1…通信システム、10…アプリケーションサーバ、20、20-1、20-2…ネットワークサーバ、30…ゲートウェイ、30、30-1、30-2…ゲートウェイ、40…無線子機、41…システムデータ記憶部、42…動作記憶部、43…切替要求検知機能部、44…タイマ制御部、45…MAC制御部、46…無線送信部、47…無線受信部、48…LoRa無線アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6