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特開2023-12463ワクチンベクターとしての三セグメントピチンデウイルス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012463
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】ワクチンベクターとしての三セグメントピチンデウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/86 20060101AFI20230118BHJP
   C12N 15/40 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 7/02 20060101ALI20230118BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 39/245 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230118BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230118BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/40
C12N5/10
C12N7/01
C12N7/02
C12N15/11 Z
A61K39/12
A61K39/25
A61K39/245
A61K39/00 H
A61P31/04
A61P31/06
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/22
A61P37/08
A61P37/04
A61P35/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K49/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161464
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2019513483の分割
【原出願日】2017-05-17
(31)【優先権主張番号】62/338,400
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518408763
【氏名又は名称】ユニベルシタト バーゼル
(71)【出願人】
【識別番号】518408774
【氏名又は名称】ホオキパ バイオテック ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ウェルディ ボニーラ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル デビッド ピンスチェワー
(72)【発明者】
【氏名】クラウス オルリンジャー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】対象となる外来遺伝子を発現する組換えマイナス鎖RNAウイルスを提供する。
【解決手段】本願は、そのゲノム中にそのオープンリーディングフレーム(「ORF」)の再配列を有するピチンデウイルスに関する。特に、本明細書に記載されるのは、改変ピチンデウイルスゲノムセグメントであって、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、ウイルスORFを該ORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作されている。また、本明細書に記載されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグメント、又は2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。本明細書に記載されるピチンデウイルスは、ワクチン及び/又は疾患の治療、及び/又は免疫療法における使用に好適であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピチンデウイルスゲノムセグメントであって、該ゲノムセグメントは、ウイルスオープ
ンリーディングフレーム(「ORF」)を該ORFの野生型位置以外の位置に担持するように操
作されており、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、以下のもの:
(i) 核タンパク質(「NP」)をコードするORFが、ピチンデウイルスの5’非翻訳領域(「
UTR」)の制御下にあるSセグメント;
(ii) マトリックスタンパク質Z(「Zタンパク質」)をコードするOFRが、ピチンデウイ
ルスの5'UTRの制御下にあるSセグメント;
(iii) RNA依存性RNAポリメラーゼL(「Lタンパク質」)をコードするORFが、ピチンデウ
イルスの5'UTRの制御下にあるSセグメント;
(iv) ウイルス糖タンパク質(「GP」)をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの
制御下にあるSセグメント;
(v) Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグ
メント;
(vi) Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグ
メント;
(vii) GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(viii) NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント

(ix) Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグ
メント;
(x) GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
(xi) NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
及び
(xii) Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセ
グメント
からなる群から選択される、ピチンデウイルスゲノムセグメント。
【請求項2】
前記ピチンデウイルスの3'UTRが、前記ピチンデウイルスSセグメント又は前記ピチンデ
ウイルスLセグメントの3'UTRであり、かつ前記ピチンデウイルスの5'UTRが、前記ピチン
デウイルスSセグメント又は前記ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRである、請求項1記
載のピチンデウイルスゲノムセグメント。
【請求項3】
請求項1記載のピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNA。
【請求項4】
請求項3記載のcDNAを含むDNA発現ベクター。
【請求項5】
請求項1記載のピチンデウイルスゲノムセグメント、請求項3記載のcDNA、又は請求項4
記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項6】
ピチンデウイルス粒子がSセグメント及びLセグメントを含むように、請求項1記載のピ
チンデウイルスゲノムセグメント及び第2のピチンデウイルスゲノムセグメントを含むピ
チンデウイルス粒子。
【請求項7】
前記ピチンデウイルス粒子が、感染性及び複製可能である、請求項6記載のピチンデウ
イルス粒子。
【請求項8】
前記ピチンデウイルス粒子が、弱毒化されている、請求項6記載のピチンデウイルス粒
子。
【請求項9】
前記ピチンデウイルス粒子が、感染性であるが、非相補細胞においてさらなる感染性子
孫を生成できない、請求項6記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項10】
GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORFの少なくとも1つが、除
去されているか、又は機能的に不活化されている、請求項9記載のピチンデウイルス粒子
【請求項11】
GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORFの少なくとも1つが、除
去されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられている、請求
項9記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項12】
GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのOFRのうち1つのみが、除去
されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられている、請求項9
記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項13】
前記GPをコードするORFが、除去されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異種O
RFで置き換えられている、請求項9記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項14】
前記NPをコードするORFが、除去されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異種O
RFで置き換えられている、請求項9記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項15】
前記Zタンパク質をコードするORFが、除去されており、ピチンデウイルス以外の生物か
らの異種ORFで置き換えられている、請求項9記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項16】
前記Lタンパク質をコードするORFが、除去されており、ピチンデウイルス以外の生物か
らの異種ORFで置き換えられている、請求項9記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項17】
前記異種ORFが、レポータータンパク質をコードする、請求項11~16のいずれか1項記載
のピチンデウイルス粒子。
【請求項18】
前記異種ORFが、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原をコードする、請
求項11~16のいずれか1項記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項19】
抗原をコードする前記異種ORFが、ヒト免疫不全ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、
水痘帯状疱疹(varizella zoster)ウイルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗
原、腫瘍関連抗原、及び腫瘍特異的抗原(腫瘍ネオ抗原及び腫瘍ネオエピトープなど)から
選択される、請求項18記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項20】
前記ピチンデウイルス粒子の増殖又は感染力が、ピチンデウイルス以外の生物からの前
記異種ORFによって影響されない、請求項11~18のいずれか1項記載のピチンデウイルス粒
子。
【請求項21】
請求項1記載のピチンデウイルスゲノムセグメントを生成する方法であって、前記方法
が、請求項3記載のcDNAを転写することを含む方法。
【請求項22】
請求項6記載のピチンデウイルス粒子を作製する方法であって、前記方法が:
(i)宿主細胞に請求項3記載のcDNAをトランスフェクトすること;
(ii)該宿主細胞に、第2のピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを含むプラスミド
をトランスフェクトすること;
(iii)該宿主細胞を、ウイルス形成に好適な条件下に維持すること;及び
(iv)該ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む方法。
【請求項23】
前記Lセグメント及び前記Sセグメントの転写が、二方向性プロモーターを使用して行わ
れる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、宿主細胞にピチンデウイルスポリメラーゼをコードする1以上の核酸をト
ランスフェクトすることをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記ピチンデウイルスポリメラーゼが前記Lタンパク質である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、前記宿主細胞に前記NPタンパク質をコードする1以上の核酸をトランスフ
ェクトすることをさらに含む、請求項22又は24記載の方法。
【請求項27】
前記Lセグメント及び前記Sセグメントの転写が、それぞれ:
(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある、請求項22記載の方法。
【請求項28】
請求項6~19のいずれか1項記載のピチンデウイルス粒子及び医薬として許容し得る担体
を含むワクチン。
【請求項29】
請求項6~19のいずれか1項記載のピチンデウイルス粒子及び医薬として許容し得る担体
を含む医薬組成物。
【請求項30】
前記ピチンデウイルスゲノムセグメント又はピチンデウイルス粒子が、株Munchique Co
An4763単離株P18、又はP2株に由来する、請求項1記載のピチンデウイルスゲノムセグメン
ト又は請求項6記載のピチンデウイルス粒子。
【請求項31】
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子であ
って、前記三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖が、I型インターフェロン受容体、I
I型インターフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子1(RAG1)を欠き、かつ104 PFU の前記
三セグメントピチンデウイルス粒子に感染しているマウスにおける70日の持続感染後に、
複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない、三セグメントピチンデウイルス粒子
【請求項32】
2つの別々のセグメントの代わりに、一方のみに2つのピチンデウイルスのORFを結合し
ている前記2つのSセグメントのセグメント間の組換えが、ウイルスプロモーター活性を抑
制する、請求項31記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項33】
2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子であ
って、前記三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖が、I型インターフェロン受容体、I
I型インターフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子1(RAG1)を欠き、かつ104 PFUの前記
三セグメントピチンデウイルス粒子に感染しているマウスにおける70日の持続感染後に、
複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない、三セグメントピチンデウイルス粒子
【請求項34】
2つの別々のセグメントの代わりに、一方のみに2つのピチンデウイルスORFを結合して
いる前記2つのLセグメントのセグメント間の組換えが、ウイルスプロモーター活性を抑制
する、請求項33記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項35】
前記2つのSセグメントの1つが:
(i)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメント;
(ii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3’UTRの制御下にあるSセグメント;
(v)LをコードするORFが、ピチンデウイルスの3’UTRの制御下にあるSセグメント;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3’UTRの制御下にあるSセグメ
ント;
からなる群から選択される、請求項31記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項36】
前記2つのLセグメントが:
(i)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(ii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
(v)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメン

からなる群から選択される、請求項33記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項37】
前記ピチンデウイルスの3'UTRが、前記ピチンデウイルスSセグメント又は前記ピチンデ
ウイルスLセグメントの3'UTRであり、かつ前記ピチンデウイルスの5'UTRが、前記ピチン
デウイルスSセグメント又は前記ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRである、請求項35
又は36記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項38】
前記2つのSセグメントが、(i)ピチンデウイルス以外の生物からの1つ又は2つの異種ORF
;又は(ii)1つ又は2つの重複ピチンデウイルスORF;又は(iii)1つのピチンデウイルス以
外の生物からの異種ORF及び1つの重複ピチンデウイルスORFを含む、請求項31記載の三セ
グメントピチンデウイルス粒子。
【請求項39】
前記2つのLセグメントが、(i)ピチンデウイルス以外の生物からの1つ又は2つの異種ORF
;又は(ii)2つの重複ピチンデウイルスORF;又は(iii)1つのピチンデウイルス以外の生物
からの異種ORF及び1つの重複ピチンデウイルスORFを含む、請求項33記載の三セグメント
ピチンデウイルス粒子。
【請求項40】
前記異種ORFが、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原をコードする、請
求項38又は39記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項41】
前記抗原をコードする異種ORFが、ヒト免疫不全ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、
水痘帯状疱疹(varizella zoster)ウイルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗
原、腫瘍関連抗原、及び腫瘍特異的抗原(腫瘍ネオ抗原及び腫瘍ネオエピトープなど)から
選択される、請求項40記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項42】
少なくとも1つの異種ORFが蛍光タンパク質をコードする、請求項38又は39記載の三セグ
メントピチンデウイルス粒子。
【請求項43】
前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質又は赤色蛍光タンパク質である、請求項42記
載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項44】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が、4つ全てのピチンデウイルスORFを含み、該
三セグメントピチンデウイルス粒子が、感染性及び複製可能である、請求項31~41のいず
れか1項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項45】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が、前記4つのピチンデウイルスORFの1以上を
欠き、該三セグメントピチンデウイルス粒子が、感染性であるが、非相補細胞においてさ
らなる感染性子孫を生成できない、請求項31~43のいずれか1項記載の三セグメントピチ
ンデウイルス粒子。
【請求項46】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が、前記4つのピチンデウイルスORFsの1つを欠
き、該三セグメントピチンデウイルス粒子が、感染性であるが、非相補細胞においてさら
なる感染性子孫を生成できない、請求項31~43のいずれか1項記載の三セグメントピチン
デウイルス粒子。
【請求項47】
前記ピチンデウイルスがGP ORFを欠く、請求項44又は45記載の三セグメントピチンデウ
イルス粒子。
【請求項48】
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子であ
って、第1のSセグメントが、GPをコードするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位
置に及び第1の対象の遺伝子をコードするORFをピチンデウイルス5'UTRの制御下の位置に
担持するように操作されており、かつ第2のSセグメントが、NPをコードするORFをピチン
デウイルスの3'UTRの制御下の位置に及び第2の対象の遺伝子をコードするORFをピチンデ
ウイルス5'UTRの制御下の位置に担持するように操作されている、三セグメントピチンデ
ウイルス粒子。
【請求項49】
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子であ
って、第1のSセグメントが、GPをコードするORFをピチンデウイルスの5'UTRの制御下の位
置に及び第1の対象の遺伝子をコードするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位置
に担持するように操作されており、かつ第2のSセグメントが、NPをコードするORFをピチ
ンデウイルスの5'UTRの制御下の位置に及び第2の対象の遺伝子をコードするORFをピチン
デウイルスの3'UTRの制御下の位置に担持するように操作されている、三セグメントピチ
ンデウイルス粒子。
【請求項50】
前記対象の遺伝子が、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原をコードする
、請求項48又は49記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項51】
前記対象の遺伝子が、ヒト免疫不全ウイルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、水痘帯状疱
疹(varizella zoster)ウイルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗原、腫瘍関
連抗原、及び腫瘍特異的抗原(腫瘍ネオ抗原及び腫瘍ネオエピトープなど)から選択される
抗原をコードする、請求項50記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項52】
少なくとも1つの対象の遺伝子が蛍光タンパク質をコードする、請求項48又は49記載の
三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項53】
前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質又は赤色蛍光タンパク質である、請求項52記
載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項54】
請求項31、33、35、36、48又は49のいずれか1項記載の三セグメントピチンデウイルス
粒子ゲノムのcDNA。
【請求項55】
請求項54記載のcDNAを含むDNA発現ベクター。
【請求項56】
請求項31又は33記載の三セグメントピチンデウイルス粒子、請求項54記載のcDNA、又は
請求項55記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項57】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が弱毒化されている、請求項31~49のいずれか
1項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項58】
請求項31記載の三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法であって、前記方法
が:
(i)前記Lセグメント及び2つのSセグメントの1以上のcDNAを宿主細胞にトランスフェクト
すること;
(ii)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;及び
(iii)ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む方法。
【請求項59】
請求項33記載の三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法であって、前記方法
が:
(i)2つのLセグメント及び1つのSセグメントの1以上のcDNAを宿主細胞にトランスフェクト
すること;
(ii)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;及び
(iii)ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む方法。
【請求項60】
1つのLセグメント及び2つのSセグメントの転写が、二方向性プロモーターを使用して行
われる、請求項58記載の方法。
【請求項61】
2つのLセグメント及び1つのSセグメントの転写が、二方向性プロモーターを使用して行
われる、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記方法が、ピチンデウイルスポリメラーゼをコードする1以上の核酸を前記宿主細胞
にトランスフェクトすることをさらに含む、請求項58又は59記載の方法。
【請求項63】
前記ピチンデウイルスポリメラーゼが前記Lタンパク質である、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前記方法が、前記NPタンパク質をコードする1以上の核酸を前記宿主細胞にトランスフ
ェクトすることをさらに含む、請求項58、59、60又は61記載の方法。
【請求項65】
前記Lセグメント及び前記2つのSセグメントの転写が、それぞれ:
(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある、請求項58記載の方法。
【請求項66】
2つのLセグメント及び前記Sセグメントの転写が、それぞれ:
(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある、請求項59記載の方法。
【請求項67】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が、前記二セグメントピチンデウイルス粒子と
同じトロピズムを有する、請求項31~49のいずれか1項記載の三セグメントピチンデウイ
ルス粒子。
【請求項68】
前記三セグメントピチンデウイルス粒子が複製欠損である、請求項31~49のいずれか1
項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【請求項69】
請求項31~49、67又は68のいずれか1項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子及び
医薬として許容し得る担体を含むワクチン。
【請求項70】
請求項31~49、67又は68のいずれか1項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子及び
医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物。
【請求項71】
前記ピチンデウイルスが、株Munchique CoAn4763単離株P18、又はP2株である、請求項3
1~49、67又は68のいずれか1項記載の三セグメントピチンデウイルス粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年5月18日に出願された米国仮出願第62/338,400号からの優先権の恩典を
主張するものであり、それらの全体の内容は、引用により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
本願は、2017年5月16日に作成され、61,423バイトのサイズを有し、「Sequence_Listin
g_13194-020-228.TXT」と題されたテキストファイルとして、本願と共に提出された配列
表を、引用により組み込む。
【0003】
1. 序論
本願は、そのゲノム内にそのオープンリーディングフレーム(「ORF」)の再配列を有
するピチンデウイルスに関する。特に、本明細書に提供されるのは、改変されたピチンデ
ウイルスゲノムセグメントであって、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、ウイルス
ORFを、そのORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作されている。また、本明細
書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグメント、又は2つのLセグメント及
び1つのSセグメントを含む、三セグメントピチンデウイルス粒子である。本明細書で記載
されるピチンデウイルスは、本明細書に記載されるピチンデウイルスは、ワクチン及び/
又は疾患の治療のため及び/又は免疫療法で使用するために好適であり得る。
【背景技術】
【0004】
2. 背景
2.1 ピチンデウイルスの一般的背景及びゲノム構成
ピチンデウイルスは、コロンビアでOryzomys albigularis (コメネズミ)から単離され
たアレナウイルスである (McLayらの文献、2014, Journal of General Virology, 95: 1
-15において検討された)。ピチンデウイルスは、非病原性であり、一般にヒトに疾患を引
き起こすことは知られていない。血清学的証拠は、現地人集団においてさえも血清有病率
が非常に低いことを示唆する (Trapidoらの文献、1971, Am J Trop Med Hyg, 20: 631-6
41)。アレナウイルス科(Arenaviridae)は、ラッサ熱ウイルス(LASV)及びリンパ球性脈
絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のような旧世界(OW)アレナウイルス、及びピチンデウイルス及び
フニンウイルスのような新世界(NW)アレナウイルスの、2つの群に分類される(Buchmeier
らの文献、 2001, 「アレナウイルス科:ウイルス及びその複製」(Arenaviridae: The
Viruses and Their Replication), Fields Virology Vol 2, 1635-1668)。アレナウイル
スはエンベロープRNAウイルスである。そのゲノムは、ネガティブセンスの一本鎖RNAの2
つのセグメントからなる(図1A)。(McLayらの文献、2014, Journal of General Virology,
95: 1-15)。各セグメントは、反対方向に2つのウイルス遺伝子をコードしている。短い
セグメント(Sセグメント)は、ウイルス糖タンパク質(GP)及び核タンパク質(NP)をコ
ードしている。長いセグメント(Lセグメント)は、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp; L
タンパク質)及びマトリックスタンパク質Z(タンパク質Z)、RINGフィンガータンパク質
を発現する。各セグメント上の2つの遺伝子は、非コード遺伝子間領域(IGR)によって隔
てられており、5'及び3'非翻訳領域(UTR)が隣接している。IGRは、安定なヘアピン構造
を形成し、ウイルスmRNA転写の構造依存的終結に関与することが示されている(Pinschewe
rらの文献、 2005, J Virol 79(7): 4519-4526)。UTRの末端ヌクレオチドは、高度の相
補性を示し、二次構造の形成をもたらす。これらのパンハンドル構造は、転写及び複製の
ためのウイルスプロモーターとして機能することが知られており、部位特異的突然変異誘
発によるそれらの分析は、マイナーな配列変化でさえ許容されない配列依存性及び構造依
存性を明らかにした(Perez及びde la Torreの文献、 2003, Virol 77(2): 1184-1194)。
【0005】
2.2 逆遺伝学的システム
ピチンデウイルスのようなマイナス鎖ウイルスの単離及び精製されたRNAは、mRNAとし
て直接機能することができない、すなわち、細胞に導入された場合に、翻訳され得ない。
その結果、ウイルスRNAでの細胞のトランスフェクションは、感染性ウイルス粒子の生成
をもたらさない。培養された許容細胞においてcDNAからマイナス鎖RNAウイルスの感染性
ウイルス粒子を作製するために、ウイルスRNAセグメント(複数可)は、転写及び複製に
必要な最小限の因子でトランス補完されなければならない。数年前に公開されたミニゲノ
ムシステムの助けを借りて、ウイルス粒子の転写、複製及び形成に関与するウイルスのシ
ス作用エレメント及びトランス作用因子は、最終的に分析することができた(Leeらの文献
、 2000, J Virol 74(8): 3470-3477; Leeらの文献、 2002, J Virol 76(12): 6393-6
397; Perez及びde la Torreの文献、 2003, J Virol 77(2): 1184-1194; Pinschewer
らの文献、 2003, J Virol 77(6): 3882-3887; Pinschewerらの文献、 2005, J Virol
79(7): 4519-4526)。このような逆遺伝学システムは、ピチンデウイルスレスキューを成
功裡に実証するために開発されてきた(例えば、Liangらの文献、 2009, Ann N Y Acad Sc
i, 1171: E65-E74; Lanらの文献、 2009, Journal of Virology, 83 (13): 6357-6362
を参照されたい)。
【0006】
2.3 対象の遺伝子を発現する組換えピチンデ
対象となる外来遺伝子を発現する組換えマイナス鎖RNAウイルスの作製が、長い間追求
されてきた。他のウイルスについて様々な戦略が公表されている(Garcia-Sastreらの文献
、 1994, J Virol 68(10): 6254-6261; Percy らの文献、 1994, J Virol 68(7): 448
6-4492; Flick及びHobomの文献、 1999, Virology 262(1): 93-103; Machadoらの文献
、 2003, Virology 313(1): 235-249)。生ピチンデウイルスベースのベクターが公表さ
れている(Dhanwani らの文献、 2015, Journal of Virology 90:2551-2560;国際特許出
願公開番号WO 2016/048949)。三セグメントのピチンデウイルスが公表されている(Dhanwa
ni らの文献、 2015, Journal of Virology 90:2551-2560;国際特許出願公開番号WO 20
16/048949)。Dhanwani によって2015年に公表された三セグメントウイルスにおいて、NP
とGPの両方は、Sセグメント内でそれぞれの天然位置に保持されるため、隣接UTRの中のそ
れらの天然のプロモーター下で発現された。
【0007】
2.4 複製欠損アレナウイルス
感染性アレナウイルス粒子は、感染細胞中でその遺伝物質を増幅及び発現する能力を有
するゲノムを含有するが、遺伝子操作されていない正常細胞ではさらなる子孫を生成する
ことができないように操作することはできる(すなわち、感染性複製欠損アレナウイルス
粒子)ことが示された(国際公開番号WO 2009/083210 A1及び国際公開番号WO 2014/140301
A1)。
【発明の概要】
【0008】
3. 発明の概要
本願は、そのゲノム内にそのORFの再配列を有するピチンデウイルスに関する。特に、
本願は、ピチンデウイルスORFを、その野生型位置以外の位置に担持するように操作され
ているピチンデウイルスゲノムセグメントに関する。本願は、複製可能二セグメントピチ
ンデウイルス粒子に組換えしない、1つのLセグメント及び2つのSセグメント、又は2つのL
セグメント及び1つのSセグメントを含む、三セグメントピチンデウイルス粒子をも提供す
る。本願は、該三セグメントピチンデウイルス粒子を、遺伝的安定性が改善され、持続的
な導入遺伝子発現を確実にするように操作することができることを実証する。
【0009】
ある実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性である、す
なわち、宿主細胞に侵入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入することができる。
あるより具体的な実施態様において、本明細書に提供されるウイルスベクターは、感染性
である、すなわち、宿主細胞に侵入するか、又は宿主細胞にその遺伝物質を注入し、その
後、宿主細胞でその遺伝情報を増幅させ、それを発現させることができる。ある実施態様
において、該ウイルスベクターは、感染した細胞でその遺伝情報を増幅させ、それを発現
させる能力を有するゲノムを含有するが、正常の、遺伝子操作されていない細胞ではさら
なる感染性子孫粒子を生成することができないように操作された感染性複製欠損ピチンデ
ウイルスのウイルスベクターである。ある実施態様において、該感染性ピチンデウイルス
のウイルスベクターは、複製可能であり、遺伝子操作されていない正常細胞でさらなる感
染性子孫粒子を生成することができる。あるより具体的な実施態様において、そのような
複製可能ウイルスベクターは、該複製可能ウイルスベクターが由来する野生型ウイルスに
比べて弱毒化される。
3.1 非天然オープンリーディングフレーム
したがって、一つの態様において、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルスゲノ
ムセグメントである。ある実施態様において、該ゲノムセグメントは、ウイルスORFをそ
のORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作される。いくつかの実施態様におい
て、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、
(i)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメント;
(ii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメント;
(v)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
(vii)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(viii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(ix)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメン
ト;
(x)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
(xi)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;及び
(xii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメ
ント;
からなる群から選択される。
【0010】
いくつかの実施態様において、該ピチンデウイルスの3'UTRは、ピチンデウイルスSセグ
メント又はピチンデウイルスLセグメントの3'UTRである。ある実施態様において、該ピチ
ンデウイルスの5'UTRは、ピチンデウイルスSセグメント又はピチンデウイルスLセグメン
トの5'UTRである。
【0011】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に提供されるピチンデウイルスゲノムセグ
メントの単離されたcDNAである。また、本明細書に提供されるのは、該ピチンデウイルス
ゲノムセグメントのcDNAを含むDNA発現ベクターである。
【0012】
また、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルスゲノムセグメント、ピチンデウイ
ルスゲノムセグメントのcDNA、又はピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを含むベク
ターを含む、宿主細胞である。
【0013】
また、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルス粒子がSセグメント及びLセグメン
トを含むように、該ピチンデウイルスゲノムセグメント及び第2のピチンデウイルスゲノ
ムセグメントを含むピチンデウイルス粒子である。
【0014】
ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は、感染性であり、複製可能である。
いくつかの実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は弱毒化されている。他の実施態
様において、該ピチンデウイルス粒子は、感染性であるが、非相補細胞においてさらなる
感染性子孫を生成できない。
【0015】
ある実施態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORF
の少なくとも1つは、除去されているか、又は機能的に不活性化されている。
【0016】
ある実施態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORF
の少なくとも1つは、除去されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFと置き
換えられている。他の実施態様において、GP、NP、Zタンパク質及びLタンパク質をコード
する4つのORFのうちの1つのみが除去されており、ピチンデウイルス以外の生物からの異
種ORFと置き換えられている。より具体的な実施態様において、GPをコードするORFは、除
去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFと置き換えられている。他の実施態
様において、NPをコードするORFは、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種O
RFと置き換えられている。いくつかの実施態様において、Zタンパク質をコードするORFは
、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFと置き換えられている。他の実
施態様において、Lタンパク質をコードするORFは、除去され、ピチンデウイルス以外の生
物からの異種ORFと置き換えられている。
【0017】
ある実施態様において、異種ORFは、レポータータンパク質をコードする。いくつかの
実施態様において、異種ORFは、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原をコ
ードする。他の実施態様において、抗原をコードする異種ORFは、ヒト免疫不全ウイルス
抗原、C型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎表面抗原、水痘帯状疱疹(varizella zoster)ウイ
ルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗原、腫瘍関連抗原、及び(腫瘍ネオ抗原
及び腫瘍ネオエピトープのような)腫瘍特異的抗原から選択される。
【0018】
ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子の増殖又は感染性は、ピチンデウイルス
以外の生物からの異種ORFによって影響されない。
【0019】
また、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルスゲノムセグメントを生成する方法
である。ある実施態様において、該方法は、ピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを
転写することを含む。
【0020】
また、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルス粒子を生成する方法である。ある
実施態様において、該ピチンデウイルス粒子を生成する方法は、
(i)ピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを、宿主細胞にトランスフェクトするこ
と;
(ii)第2のピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを含むプラスミドを、該宿主細胞
にトランスフェクトすること;
(iii)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;及び
(iv)ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む。
【0021】
ある実施態様において、Lセグメント及びSセグメントの転写は、二方向性プロモーター
を使用して行われる。
【0022】
ある実施態様において、該方法は、ピチンデウイルスポリメラーゼをコードする1以上
の核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることをさらに含む。さらにより具体的な実施態
様において、該ポリメラーゼはLタンパク質である。他の実施態様において、該方法は、N
Pをコードする1以上の核酸を該宿主細胞にトランスフェクトすることをさらに含む。
【0023】
ある実施態様において、Lセグメント、及びSセグメントの転写は、それぞれ、
(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。
【0024】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルス粒子を含むワク
チンであって、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORFの少なくと
も1つは、除去されているか、又は機能的に不活化されている; 又はGP、NP、Zタンパク
質、及びLタンパク質をコードする少なくとも1つのORFは、除去され、ピチンデウイルス
以外の別の生物からの異種ORFで置き換えられている;又はGP、NP、Zタンパク質、及びL
タンパク質をコードする4つのORFのうちの1つのみは、除去され、ピチンデウイルス以外
の別の生物からの異種ORFで置き換えられている。より具体的な実施態様において、該ワ
クチンは、医薬として許容し得る担体をさらに含む。
【0025】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルス粒子を含む医薬
組成物であって、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORFの少なく
とも1つは、除去されているか、又は機能的に不活化されている; 又はGP、NP、Zタンパ
ク質、及びLタンパク質をコードする少なくとも1つのORFは、除去され、ピチンデウイル
ス以外の別の生物からの異種ORFで置き換えられている;又はGP、NP、Zタンパク質、及び
Lタンパク質をコードする4つのORFのうちの1つのみは、除去され、ピチンデウイルス以外
の生物からの異種ORFで置き換えられている。より具体的な実施態様において、該医薬と
して許容し得る担体は、医薬として許容し得る担体をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメント又はピチンデウイ
ルス粒子は、高病原性長期継代株 Munchique CoAn4763 単離株P18又は短期継代P2株に由
来するか、又はTrapido及び共同研究者によって記載されたいくつかの単離株のいずれか
に由来する(Trapidoらの文献、1971, Am J Trop Med Hyg, 20: 631-641)。
【0027】
3.2 三セグメントピチンデウイルス
一つの態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグメ
ントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。いくつかの実施態様において、該
三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖は、I型インターフェロン受容体、II型インタ
ーフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子1(RAG1)を欠き、104 PFUの三セグメントピチン
デウイルス粒子を感染させたマウスにおける持続感染の70日後に、複製可能二セグメント
ウイルス粒子をもたらさない。ある実施態様において、2つの別々のセグメントの代わり
に、一方のみに2つのピチンデウイルスのORFを結合している2つのSセグメントのセグメン
ト間の組換えは、ウイルスプロモーター活性を抑制する。
【0028】
別の態様において、本明細書に提供されるのは、2つのLセグメント及び1つのSセグメン
トを含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、該三セグメ
ントピチンデウイルス粒子の増殖は、I型インターフェロン受容体、II型インターフェロ
ン受容体及び組換え活性化遺伝子1(RAG1)を欠き、104 PFUの三セグメントピチンデウイル
ス粒子を感染させたマウスにおける持続感染の70日後に、複製可能二セグメントウイルス
粒子をもたらさない。ある実施態様において、2つの別々のセグメントの代わりに、一方
のみに2つのピチンデウイルスのORFを結合している2つのLセグメントのセグメント間の組
換えは、ウイルスプロモーター活性を抑制する。
【0029】
ある実施態様において、2つのSセグメントのうちの1つは:
(i)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメント;
(ii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるSセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメント;
(v)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるSセグメン
ト;
からなる群から選択される。
【0030】
ある実施態様において、2つのLセグメントのうちの1つは:
(i)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(ii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
(v)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメン
ト;
からなる群から選択される。
【0031】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子の3'UTRは、ピチンデウ
イルスSセグメント又はピチンデウイルスLセグメントの3'UTRである。他の実施態様にお
いて、該三セグメントピチンデウイルス粒子の5'UTRは、ピチンデウイルスSセグメント又
はピチンデウイルスLセグメントの5'UTRである。
【0032】
ある実施態様において、2つのSセグメントは、(i)ピチンデウイルス以外の生物からの1
つ又は2つの異種ORF;又は(ii)1つ又は2つの重複ピチンデウイルスORF;又は(iii)ピチ
ンデウイルス以外の生物からの1つの異種ORF及び1つの重複ピチンデウイルスORFを含む
【0033】
ある実施態様において、2つのLセグメントは、(i)ピチンデウイルス以外の生物からの
1つ又は2つの異種ORF;又は(ii)1つ又は2つの重複ピチンデウイルスORF;又は(iii)
ピチンデウイルス以外の生物からの1つの異種ORF及び1つの重複ピチンデウイルスORFを
含む。
【0034】
ある実施態様において、異種ORFは、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗
原をコードする。他の実施態様において、抗原をコードする異種ORFは、ヒト免疫不全ウ
イルス抗原、C型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎表面抗原、水痘帯状疱疹(varizella zoster
)ウイルス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗原、腫瘍関連抗原、及び(腫瘍ネ
オ抗原及び腫瘍ネオエピトープのような) 腫瘍特異的抗原から選択される。
【0035】
ある実施態様において、少なくとも1つの異種ORFは、蛍光タンパク質をコードする。他
の実施態様において、該蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は赤色蛍光タン
パク質(RFP)である。
【0036】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、4つ全てのピチンデ
ウイルスORFを含む。いくつかの実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒
子は、感染性であり、複製可能である。
【0037】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、4つのピチンデウイ
ルスORFの1以上を欠いている。他の実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス
粒子は、感染性であるが、非相補細胞でさらなる感染性子孫を生成することができない。
【0038】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、4つのピチンデウイ
ルスORFの1つを欠いており、ここで、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、感染性で
あるが、非相補細胞でさらなる感染性子孫を生成することができない。
【0039】
いくつかの実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、GP ORFを欠い
ている。
【0040】
さらなる態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグ
メントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、第1の
Sセグメントは、GPをコードするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位置に及び対
象の第1の遺伝子をコードするORFをピチンデウイルスの5'UTRの制御下の位置に担持する
ように操作されている。いくつかの実施態様において、第2のSセグメントは、NPをコー
ドするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位置に及び対象の第2の遺伝子をコード
するORFをピチンデウイルスの5'UTRの制御下の位置に担持するように操作されている。
【0041】
さらに別の態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセ
グメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、第1
のSセグメントは、GPをコードするORFをピチンデウイルスの5'UTRの制御下の位置に及び
対象の第1の遺伝子をコードするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位置に担持す
るように操作されている。いくつかの実施態様において、第2のSセグメントは、NPをコ
ードするORFをピチンデウイルスの5'UTRの制御下の位置に及び対象の第2の遺伝子をコー
ドするORFをピチンデウイルスの3'UTRの制御下の位置に担持するように操作されている。
【0042】
ある実施態様において、対象の遺伝子は、感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来す
る抗原をコードする。他の実施態様において、対象の遺伝子は、ヒト免疫不全ウイルス抗
原、C型肝炎ウイルス抗原、B型肝炎表面抗原、水痘帯状疱疹(varizella zoster)ウイル
ス抗原、サイトメガロウイルス抗原、結核菌抗原、腫瘍関連抗原、及び (腫瘍ネオ抗原及
び腫瘍ネオエピトープのような) 腫瘍特異的抗原から選択される抗原をコードする。さら
に別の実施態様において、 少なくとも1つの対象の遺伝子は、蛍光タンパク質をコードす
る。具体的な実施態様において、該蛍光タンパク質は、GFP又はRFPである。
【0043】
また、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子のゲノムの単離
されたcDNAである。また、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒
子のゲノムのcDNAを含むDNA発現ベクターである。また、本明細書に提供されるのは、三
セグメントピチンデウイルスのcDNAを個別に又は全体として含む1以上のDNA発現ベクター
である。
【0044】
また、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子、三セグメント
ピチンデウイルス粒子のゲノムのcDNA、又は三セグメントピチンデウイルス粒子のゲノム
のcDNAを含むベクターを含む、宿主細胞である。
【0045】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は弱毒化されている。
【0046】
また、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法
である。ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子を作製する方法は、
(i)1つのLセグメント及び2つのSセグメントの1以上のcDNAを宿主細胞にトランスフェク
トすること;
(ii)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;及び
(iii)ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む。
【0047】
また、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法
である。ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法は

(i)2つのLセグメント及び1つのSセグメントの1以上のcDNAを宿主細胞にトランスフェク
トすること;
(ii)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;及び
(iii)ピチンデウイルス粒子を収集すること
を含む。
【0048】
ある実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントの転写は、二方向性プ
ロモーターを使用して行われる。いくつかの実施態様において、2つのLセグメント及び1
つのSセグメントの転写は、二方向性プロモーターを使用して行われる。
【0049】
ある実施態様において、該方法は、ピチンデウイルスポリメラーゼをコードする1以上
の核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることをさらに含む。さらにより具体的な実施態
様において、該ポリメラーゼはLタンパク質である。他の実施態様において、該方法は、N
Pタンパク質をコードする1以上の核酸を宿主細胞にトランスフェクトすることをさらに含
む。
【0050】
ある実施態様において、1つのLセグメント、及び2つのSセグメントの転写は、それぞれ

(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。
【0051】
ある実施態様において、2つのLセグメント、及び1つのSセグメントの転写は、それぞれ

(i)RNAポリメラーゼIプロモーター;
(ii)RNAポリメラーゼIIプロモーター;及び
(iii)T7プロモーター
からなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。
【0052】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、二セグメントピチン
デウイルス粒子と同じトロピズムを有する。他の実施態様において、該三セグメントピチ
ンデウイルス粒子は複製欠損である。
【0053】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒
子及び医薬として許容し得る担体を含むワクチンである。
【0054】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒
子及び医薬として許容し得る担体を含む医薬組成物である。
【0055】
いくつかの実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメント又はピチンデウイル
ス粒子は、高病原性長期継代株Munchique CoAn4763 単離株P18、又は短期継代P2株に由来
するか、又はTrapido及び共同研究者によって記載されたいくつかの単離株のいずれかに
由来する(Trapidoらの文献、 1971, Am J Trop Med Hyg, 20: 631-641)。
3.3 慣例及び略語
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0056】
4. 図面の簡単な説明
図1図1A-1D: 二セグメント及び三セグメントピチンデウイルスのゲノム構成の概略図。野生型ピチンデウイルスの二セグメントゲノムは、GP及びNPをコードする1つのSセグメント並びにZタンパク質及びLタンパク質をコードする1つのLセグメントからなる。両方のセグメントには、それぞれ5'UTR及び3'UTRが隣接している。(図1A)その天然ゲノムセグメントS(配列番号16)及びL(配列番号2)を有するcDNA由来野生型ピチンデウイルスであるrPICwt ピチンデウイルスゲノムの概略説明。これはそれぞれのcDNAのBsmBI及びBbsI部位を抑制するために導入されたサイレント突然変異によって改変されたものである。(図1B-1D)組換え三セグメントピチンデウイルス(r3PIC)のゲノムは、1つのLセグメント及び2つのSセグメントからなり、該Sセグメントの各々に対象の遺伝子(ここではGFP/sP1AGM融合タンパク質)を挿入するべき1つの位置を有する。(図1B)人為的な構成を有する三セグメントピチンデウイルスベクターゲノムの概略説明。重複Sセグメントのうちの1つにおいて、糖タンパク質(GP)ORFは天然Sセグメントの核タンパク質(NP)ORFの代わりに、すなわち、3'UTR及びIGRの間に位置する。(図1C)r3PIC-GFPartは、その天然の位置にある全てのウイルス遺伝子からなるが、ただしGP ORFは人為的に3'UTRに並置され、3'UTRの制御下で発現される(S-GP/GFPart;配列番号13)。(図1D)三セグメントピチンデウイルスベースのsP1AGM発現r3PIC-sP1AGMartベクターゲノムの概略説明。
【0057】
図2図2: 三セグメントr3PIC-GFPartは、その二セグメント野生型親ウイルスと比較して弱毒化された。感染多重度(moi)0.01で感染させたBHK-21細胞における示されたウイルスの増殖動態学 (野生型ピチンデウイルス:黒の四角; r3PIC-GFPart:黒の円)。感染後の示した時点で上清を採取し、フォーカス形成アッセイによってウイルス力価を決定した。
【0058】
図3図3図2及び図4に記載された実験のために使用されたプラスミドの発現カセットの概略説明。
【0059】
図4図4: r3PIC-GFPartを用いた、細胞におけるcDNAからの感染性のGFP発現ウイルスの再構成。GFP発現の蛍光像は、Sセグメントミニゲノム:pC-PIC-L-Bsm、pC-PIC-NP-Bbs、pol-I-PIC-miniS-GFP;Lセグメントミニゲノム:pC-PIC-L-Bsm、pC-PIC-NP-Bbs、pol-I-PIC-L-GFP-Bsm;r3PIC-GFPart:pC-PIC-L-Bsm、pC-PIC-NP-Bbs、pol-I-PIC-L、pol-I-PIC-NP-GFP、pol-I-PIC-GP-GFP;rPICwt:pC-PIC-L-Bsm、pC-PIC-NP-Bbs、pol-I-PIC-L、pol-I-PIC-Sの組み合わせのプラスミドでのBHK-21細胞のトランスフェクション後48時間又は168時間に捕捉された。
【0060】
図5図5A-5B: 三セグメントピチンデウイルスベースのウイルスベクターは高度に免疫原性である。BALB/cマウスを10e5 FFUのr3PIC-sP1AGMartで静脈内感染させた。対照のマウスは免疫しなかった。8日後、末梢血中のP1A特異的CD8+T細胞の頻度を、MHCクラスI四量体染色によって決定した。例示的なFACSプロット(図5A)及び末梢血中のCD8+T細胞内の四量体結合細胞の頻度(図5B)を示す。Bのシンボルは個々のマウスを表す。
【0061】
図6図6: それぞれ5’及び3'UTRプロモーターの制御下で、すなわち、人為的重複SセグメントS-GP/GFPnat(配列番号15)及びS-NP/GFP(PIC-NP-GFPとしても知られる; 配列番号11)の文脈においてそれぞれの「天然」位置で、その糖タンパク質(GP)及び核タンパク質(NP)遺伝子を発現するように設計された三セグメントピチンデウイルスベクターゲノムの概略説明。該ゲノムは、1つのLセグメント及び2つのSセグメントからなり、該Sセグメントの各々に対象の遺伝子(ここではGFPタンパク質)を挿入すべき1つの位置を有する。
【0062】
図7図7: 三セグメントr3PIC-GFPnat及びr3PIC-GFPartの初期の継代は、その二セグメント野生型親ウイルスと比較して弱毒化された。感染多重度(moi)0.01で感染させた、培養中のBHK-21細胞における示されたウイルスの増殖動態。感染48時間後に上清を採取し、フォーカス形成アッセイによってウイルス力価を決定した。シンボルは、個々の平行細胞培養ウェルの力価を示す;エラーバーは平均+/-SDを表示する。
【0063】
図8図8: 安定に弱毒化されたr3PIC-GFPartと異なり、r3PIC-GFPnatはマウスの持続感染中にrPICwtの範囲の力価に到達した。AGRマウス(I型及びII型インターフェロン受容体並びにRAG1を三重欠損しているマウス)を、図に示すとおりに10e5 FFUのウイルスで静脈内感染させた(野生型ピチンデウイルス-rPICwt:灰色の三角;r3PIC-GFPart:黒の円; r3PIC-GFPnat:白の四角)。血液を7、14、21、28、35、42、56、77、98、120及び147日目に集め、ピチンデウイルス核タンパク質(NP FFU)を検出するフォーカス形成アッセイにおいてウイルス感染性を決定した。
【0064】
図9図9: 安定に弱毒化されたr3PIC-GFPartと異なり、r3PIC-GFPnatはマウスの持続感染中にrPICwtの範囲の力価に到達した。AGRマウス(I型及びII型インターフェロン受容体並びにRAG1を三重欠損しているマウス)を、図に示すとおりに10e5 FFUのウイルスで静脈内感染させた(野生型ピチンデウイルス-rPICwt:灰色の三角;r3PIC-GFPart:黒の円;r3PIC-GFPnat:白の四角)。血液を7、14、21、28、35、42、56、77、98、120及び147日目に集め、r3PIC-GFPnat及びr3PIC-GFPart(GFP FFU)のウイルスGFP導入遺伝子を検出するフォーカス形成アッセイにおいてウイルス感染性を決定した。
【0065】
図10図10: 人為的なゲノムを有する三セグメントピチンデウイルスベースのウイルスベクターは、高度に免疫原性である。AGRマウス(I型及びII型インターフェロン受容体並びにRAG1を三重欠損しているマウス)を図に示したとおりに10e5 FFUのウイルスで静脈内感染させた(r3PIC-GFPart:黒の円;r3PIC-GFPnat:白の四角)。血液を7、14、21、28、35、42、56、77、98、120及び147日目に集め、図9及び図10に提示するとおりにフォーカス形成アッセイによってウイルス感染性を決定した。得られた値を使用して各動物及び時点についてのNP:GFP FFU比を計算した。
【0066】
図11図11: r3PIC-GFPart感染後147日に集めたマウス血清中のウイルスは、細胞培養において直接継代した場合には弱毒化された増殖を示したが、r3PIC-GFPnat感染マウスから増殖させたウイルスは、rPICwtに匹敵する力価に到達した。BHK-21細胞での感染後147日に集めた血清を継代し、48時間後にNP FFUアッセイによってウイルス感染性を決定した。シンボルは、個々のマウス血清由来ウイルスの力価を示す;エラーバーは平均+/-SDを表示する。
【0067】
図12図12: r3PIC-GFPart感染後147日に集めたマウス血清から単離し増やしたウイルスは、細胞培養において直接継代した場合には弱毒化された増殖を示したが、r3PIC-GFPnat感染マウスから単離し増やしたウイルスは、rPICwtに匹敵する力価に到達した。BHK-21細胞は、感染後147日に集め、予め48時間継代した血清から得られたウイルスで標準化(standardized)感染多重度=0.01で感染させた。ウイルス力価は、48時間後に決定した。シンボルは、個々のマウス血清由来ウイルスの力価を示す;エラーバーは平均+/-SDを表示する。
【0068】
図13図13: r3PIC-GFPartは、マウスにおける147日間の持続感染期間中に2つのSセグメントを組換えしなかったが、NP配列及びGP配列の両方を含有するSセグメントRNA種は、147日間r3PIC-GFPnatに持続感染したマウスの血清中に検出された。RT-PCRは、ウイルス感染後147日に集めた血清試料に行い、プライマーは、rPICwtゲノムテンプレート上の357塩基対のPCRアンプリコンを生じると予測されるように、それぞれピチンデウイルスNP及びGPに結合するよう設計され、ピチンデウイルスSセグメントの遺伝子間領域(IGR)にわたるプライマーを使用した。各レーンは、図8~10に示す実験における個々のマウスからのRT-PCR生成物を表す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
発明の詳細な説明
4.1 非天然位置にオープンリーディングフレームを有するピチンデウイルス
本明細書に提供されるのは、そのORFの再配列を有するピチンデウイルスである。ある
実施態様において、このようなピチンデウイルスは複製可能であり、感染性である。この
ようなピチンデウイルスのゲノム配列は本明細書に提供される。一つの態様において、本
明細書に提供されるのは、ピチンデウイルスゲノムセグメントであり、ここで、該ピチン
デウイルスゲノムセグメントは、ピチンデウイルスORFを、それぞれの遺伝子がピチンデ
ウイルス株Munchique CoAn4763単離株P18(7.配列表の配列番号1及び2を参照されたい)の
ような野生から単離されたウイルスで見出されている該ORFの位置(「野生型位置」と本
明細書で呼ぶ)以外の位置(すなわち、非天然位置)に担持するように改変されている。
【0070】
野生型ピチンデウイルスゲノムセグメント及びORFは、当技術分野で公知である。特に
、該ピチンデウイルスゲノムは、Sセグメント及びLセグメントからなる。該Sセグメント
は、GP及びNPをコードするORFを担持する。該Lセグメントは、Lタンパク質及びZタンパク
質をコードする。両方のセグメントは、それぞれ5'UTR及び3'UTRに隣接する(図1Aを参照
されたい)。説明的な野生型ピチンデウイルスゲノムセグメントは、配列番号1及び配列番
号2に提供される。
【0071】
ある実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメントは、2以上のピチンデウイ
ルスORFを野生型位置以外の位置に担持するように操作することができる。他の実施態様
において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、2つのピチンデウイルスORF、又は3
つのピチンデウイルスORF、又は4つのピチンデウイルスORFを野生型位置以外の位置に担
持するように操作することができる。
【0072】
ある実施態様において、本明細書に提供されるピチンデウイルスゲノムセグメントは、
(i)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデウイルスS
セグメント;
(ii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスSセグメント;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスSセグメント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウイルスS
セグメント;
(v)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウ
イルスSセグメント;
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスSセグメント;
(vii)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデウイルスL
セグメント;
(viii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデウイルス
Lセグメント;
(ix)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスLセグメント;
(x)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウイルスLセ
グメント;
(xi)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウイルスL
セグメント;及び
(xii)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスLセグメント;
であり得る。
【0073】
ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントの非
天然位置にあるORFは、ピチンデウイルスの3'UTR又はピチンデウイルスの5'UTRの制御下
に置くことができる。より具体的な実施態様において、該ピチンデウイルスの3’UTRは、
ピチンデウイルスSセグメントの3'UTRである。別の具体的な実施態様において、該ピチン
デウイルスの3'UTRは、ピチンデウイルスLセグメントの3'UTRである。より具体的な実施
態様において、該ピチンデウイルスの5'UTRは、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRで
ある。他の具体的な実施態様において、5'UTRは、Lセグメントの5'UTRである。
【0074】
他の実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントの非
天然位置にあるORFは、アレナウイルスの保存された末端配列エレメントの制御下に置く
ことができる(5'-及び3'-末端19~21ヌクレオチド領域)(例えば、Perez及びde la Torre
の文献、 2003, J Virol. 77(2): 1184-1194を参照されたい)。
【0075】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントの非天然位置にあるORF
は、5'UTRのプロモーターエレメントの制御下に置くことができる(例えば、Albarinoらの
文献、 2011, J Virol., 85(8):4020-4を参照されたい)。別の実施態様において、該ピ
チンデウイルスゲノムセグメントの非天然位置にあるORFは、3'UTRのプロモーターエレメ
ントの制御下に置くことができる(例えば、Albarinoらの文献、 2011, J Virol., 85(8)
:4020-4を参照されたい)。より具体的な実施態様において、5'UTRのプロモーターエレメ
ントは、Sセグメント又はLセグメントの5'UTRプロモーターエレメントである。別の具体
的な実施態様において、3'UTRのプロモーターエレメントは、Sセグメント又はLセグメン
トの3'UTRプロモーターエレメントである。
【0076】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントの非天然位置にあるORF
は、切断型ピチンデウイルスの3'UTR又は切断型ピチンデウイルスの5'UTRの制御下に置く
ことができる(例えば、Perez及び de la Torreの文献、 2003, J Virol. 77(2): 1184-
1194; Albarinoらの文献、2011, J Virol., 85(8):4020-4を参照されたい)。より具体
的な実施態様において、該切断型3'UTRは、ピチンデウイルスSセグメント又はLセグメン
トの3'UTRである。より具体的な実施態様において、該切断型5'UTRは、ピチンデウイルス
Sセグメント又はLセグメントの5'UTRである。
【0077】
また、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルス粒子がSセグメント及びLセグメン
トを含むように、そのORFの野生型位置以外の位置にORFを担持するように操作された第1
のゲノムセグメント及び第2のピチンデウイルスゲノムセグメントを含むピチンデウイル
ス粒子である。具体的な実施態様において、該ORFの野生型位置以外の位置にあるORFは、
ピチンデウイルスORFのうちの1つである。
【0078】
ある具体的な実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は、全4つのピチンデウイル
スORFの完全な相補体を含むことができる。具体的な実施態様において、該第2のピチンデ
ウイルスゲノムセグメントは、そのORFの野生型位置以外の位置にORFを担持するように操
作されている。別の具体的な実施態様において、該第2のピチンデウイルスゲノムセグメ
ントは、野生型ゲノムセグメントであり得る(すなわち、ORFをセグメント上で野生型位置
に含む)。
【0079】
ある実施態様において、該第1のピチンデウイルスゲノムセグメントはLセグメントであ
り、該第2のピチンデウイルスゲノムセグメントはSセグメントである。他の実施態様にお
いて、該第1のピチンデウイルスゲノムセグメントはSセグメントであり、該第2のピチン
デウイルスゲノムセグメントはLセグメントである。
【0080】
そのORFの野生型位置以外の位置にORFを有するゲノムセグメント及び第2のゲノムセグ
メントを含むピチンデウイルス粒子の非限定的な例を表1に示す。
表1
ピチンデウイルス粒子
*位置1は、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRの制御下にある;位置2は、ピチンデ
ウイルスSセグメントの3'UTRの制御下にある;位置3は、ピチンデウイルスLセグメントの
5'UTRの制御下にある;位置4は、ピチンデウイルスLセグメントの3'UTRの制御下にある。
【表2】
【0081】
また、本明細書に提供されるのは、ORFをそのORFの野生型位置以外の位置に担持するよ
うに操作されているピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAである。より具体的な実施
態様において、本明細書に提供されるのは、表1記載のピチンデウイルスゲノムのcDNA又
はcDNAセットである。
【0082】
ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントをコ
ードする核酸は、本明細書で開示される核酸配列に少なくともある種の配列同一性を有す
ることができる。したがって、いくつかの態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメ
ントをコードする核酸は、配列番号によって本明細書に開示される核酸配列又は配列番号
によって本明細書に開示される核酸配列にハイブリダイズする核酸配列に対し、少なくと
も80%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも91%同一性、
少なくとも92%同一性、少なくとも93%同一性、少なくとも94%同一性、少なくとも95%
同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性、又は少
なくとも99%同一性の核酸配列を有するか、又はそれと同一である。ハイブリダイゼーシ
ョン条件は、本明細書に記載されるもののような当業者に周知の高度にストリンジェント
、中程度にストリンジェント、又は低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件
を含む。同様に、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントを作製するの
に使用され得る核酸は、配列番号によって本明細書に開示される核酸又は配列番号によっ
て本明細書に開示される核酸配列にハイブリダイズする核酸に対し、あるパーセントの配
列同一性を有し得る。例えば、ピチンデウイルスゲノムセグメントを作製するために使用
される核酸は、本明細書に記載される核酸配列に対し、少なくとも80%同一性、少なくと
も85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも91%同一性、少なくとも92%同一性、
少なくとも93%同一性、少なくとも94%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%
同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性又は少なくとも99%同一性を有す
るか、又はそれと同一であることができる。
【0083】
配列同一性(相同性又は類似性としても知られる)は、2つの核酸分子間又は2つのポリペ
プチド間の配列類似性を指す。同一性は、各配列における位置を比較することによって決
定することができ、各配列は比較のために整列させてもよい。比較される配列における位
置が同じ塩基又はアミノ酸によって占められている場合、それらの分子はその位置で同一
である。配列間の同一性の程度は、該配列によって共有されるマッチング又は相同位置の
数の関数である。配列同一性のパーセントを決定するための2つの配列のアラインメント
は、例えばAusubelらの文献、「分子生物学の現在のプロトコル(Current Protocols in
Molecular Biology)」, John Wiley and Sons, Baltimore, MD (1999)に記載されたもの
のような当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して行うことができる。好ま
しくは、アラインメントにはデフォルトパラメーターが使用される。使用することができ
る当技術分野で周知の1つのアラインメントプログラムはデフォルトパラメーターに設定
されたBLASTである。特に、プログラムは、デフォルトパラメーターとして、遺伝コード
=標準;フィルター=なし;ストランド=両方;カットオフ=60;期待=10;マトリック
ス=BLOSUM62;記載=50配列;選別順=HIGH SCORE;データベース=非重複、GenBank +
EMBL + DDBJ + PDB + GenBank CDS 翻訳 + SwissProtein + SPupdate + PIRを使用する、
BLASTN及びBLASTPである。これらのプログラムの詳細は、the National Center for Biot
echnology Informationで見つけることができる。
【0084】
ストリンジェントハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドが
安定な条件を指す。当業者には公知のように、ハイブリダイズしたポリヌクレオチドの安
定性は、ハイブリッドの融解温度(Tm)に反映される。一般に、ハイブリダイズしたポリヌ
クレオチドの安定性は、塩濃度、例えばナトリウムイオン濃度、及び温度の関数である。
ハイブリダイゼーション反応は、より低いストリンジェンシーの条件下で行い、その後、
種々の、より高いストリンジェンシーの洗浄を行うことができる。ハイブリダイゼーショ
ンストリンジェンシーの参照は、このような洗浄条件に関する。高度にストリンジェント
なハイブリダイゼーションは、例えば0.018M NaCl中、65℃で安定なハイブリダイズした
ポリヌクレオチドを形成する核酸配列のみのハイブリダイゼーションが許容される条件を
含み、 例えば、ハイブリッドが0.018M NaCl中、65℃で安定でなければ、それは本明細書
において企図される高ストリンジェンシー条件下で安定ではないことになる。高ストリン
ジェンシー条件は、例えば、50%ホルムアミド、5×Denhart溶液、5×SSPE、0.2% SDS中
、42℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1×SSPE、及び0.1% SDS中、65℃での
洗浄によって提供され得る。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件以外
のハイブリダイゼーション条件もまた、本明細書に開示される核酸配列を記載するために
使用され得る。例えば、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーションという語句
は、50%ホルムアミド、5×Denhart溶液、5×SSPE、0.2% SDS中、42℃でのハイブリダイ
ゼーションと、その後の0.2×SSPE、0.2% SDS中、42℃での洗浄と同等の条件を指す。低
ストリンジェンシーハイブリダイゼーションという語句は、10%ホルムアミド、5×Denha
rt溶液、6×SSPE、0.2% SDS中、22℃でのハイブリダイゼーションと、その後の1×SSPE
、 0.2% SDS中、37℃での洗浄と同等の条件を指す。Denhart溶液は、1% Ficoll、1%ポ
リビニルピロリドン、及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する。20×SSPE(塩化ナト
リウム、リン酸ナトリウム、エチレンジアミド四酢酸(EDTA))は、3M 塩化ナトリウム、0.
2M リン酸ナトリウム、及び0.025 M (EDTA)を含有する。他の好適な低、中及び高ストリ
ンジェンシーハイブリダイゼーション緩衝液及び条件は、当業者に周知であり、例えば、
Sambrook及び Russellの文献、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Clon
ing: A laboratory Manual)」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory N.Y. (2001)
;及びAusubelらの文献、「分子生物学の現在のプロトコール(Current Protocols in Mo
lecular Biology)」、John Wiley及びSons, Baltimore, MD (1999)に記載されている。
【0085】
ある実施態様において、ORFをそのORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作さ
れたピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAは、DNA発現ベクターの一部であるか、又
はDNA発現ベクターに組み込まれている。具体的な実施態様において、ORFをそのORFの野
生型位置以外の位置に担持するように操作されたピチンデウイルスゲノムセグメントのcD
NAは、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントの生成を促進するDNA発
現ベクターの一部であるか、又はそのDNA発現ベクターに組み込まれている。別の実施態
様において、本明細書に記載されるcDNAは、プラスミドに組み込むことができる。cDNA又
は核酸及び発現系のより詳細な説明は、第4.5.1節に提供されている。cDNAの生成のため
の技術は、分子生物学並びにDNAの操作及び生成の日常的な従来技術である。当業者に公
知の任意のクローニング技術を使用することができる。そのような技術は周知であり、当
業者は、Sambrook及びRussellの文献、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecula
r Cloning: A laboratory Manual)」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory N.Y. (2
001)などの実験室マニュアルで利用可能である。
【0086】
ある実施態様において、ORFをそのORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作さ
れているピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAは、(例えば、トランスフェクトされ
た)宿主細胞に導入される。かくして、本明細書に提供されるいくつかの実施態様におい
て、ORFをその野生型位置以外の位置に担持するように操作されているピチンデウイルス
ゲノムセグメントのcDNA(すなわち、ゲノムセグメントのcDNA)を含む宿主細胞である。他
の実施態様において、本明細書に記載されるcDNAは、DNA発現ベクターの一部であるか、
又はDNA発現ベクターに組み込み、宿主細胞に導入することができる。かくして、いくつ
かの実施態様において、本明細書に提供されるのは、ベクターに組み込まれている、本明
細書に記載されるcDNAを含む宿主細胞である。他の実施態様において、本明細書に記載さ
れるピチンデウイルスゲノムセグメントは、宿主細胞に導入される。
【0087】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、ピチンデウイルスゲノムセグメン
トを生成する方法であって、該方法は、該ピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを転
写することを含む。ある実施態様において、ウイルスポリメラーゼタンパク質は、インビ
トロ又はインビボでのピチンデウイルスゲノムセグメントの転写中に存在し得る。
【0088】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントの転写は、二方向性プロ
モーターを使用して行われる。他の実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメ
ントの転写は、二方向性発現カセットを使用して行われる(例えば、Ortiz-Rianoらの文献
、 2013, J Gen Virol., 94(Pt 6): 1175-1188を参照されたい)。より具体的な実施態様
において、該二方向性発現カセットは、それぞれ、挿入されるピチンデウイルスゲノムセ
グメントの2つの末端へ両側から読むポリメラーゼI及びポリメラーゼIIプロモーターの両
方を含む。さらにより具体的な実施態様において、pol-I及びpol-IIプロモーターを有す
る二方向性発現カセットは、両側からLセグメント及びSセグメントへ読む。
【0089】
他の実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントのcD
NAの転写はプロモーターを含む。プロモーターの具体例としては、RNAポリメラーゼIプロ
モーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T7プロ
モーター、SP6プロモーター又はT3プロモーターが挙げられる。
【0090】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントを生成する方法は、ピチ
ンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを宿主細胞に導入することをさらに含むことができ
る。ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントを生成する方法は、ピ
チンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを、ピチンデウイルスゲノムセグメントの生成の
ための他の全ての成分を発現する宿主細胞に導入すること;及び該宿主細胞の上清からピ
チンデウイルスゲノムセグメントを精製することをさらに含むことができる。このような
方法は、当業者に周知である。
【0091】
本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される核酸、ベクター、及び組成物に感染
した細胞株、培養物及び細胞を培養する方法である。本明細書に記載される核酸、ベクタ
ー系及び細胞株のより詳細な説明は、第4.5節に提供されている。
【0092】
ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子は、感染性で複製
可能なピチンデウイルス粒子をもたらす。具体的な実施態様において、本明細書に記載さ
れるピチンデウイルス粒子は弱毒化される。特定の実施態様において、該ピチンデウイル
ス粒子は、ウイルスが、依然として少なくとも部分的に広がることができ、インビボで複
製できるが、不顕レベルの非病原性感染をもたらす低いウイルス負荷しか発生させること
ができないように弱毒化される。そのような弱毒化ウイルスは、免疫原性組成物として使
用することができる。本明細書に提供されるのは、第4.7節に記載される、非天然位置に
あるORFを有するピチンデウイルスを含む免疫原性組成物である。
【0093】
4.1.1 非天然位置にオープンリーディングフレームを有する複製欠損ピチンデウイルス
粒子
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)ORFが該ORFの野生型位置以外
の位置にある;かつ(ii)得られるウイルスがさらなる感染性子孫ウイルス粒子を生成する
ことができないように、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードするORFが除去
されているか又は機能的に不活化されたピチンデウイルス粒子である。1以上のORFが欠失
した又は機能的に不活化された遺伝子改変ゲノムを含むピチンデウイルス粒子は、相補細
胞(すなわち、欠失した又は機能的に不活化されたピチンデウイルスORFを発現する細胞)
で生成することができる。得られるピチンデウイルス粒子の遺伝物質は、宿主細胞の感染
時に宿主細胞に移され、その中で該遺伝物質は発現及び増幅されることができる。さらに
、本明細書に記載される遺伝子改変ピチンデウイルス粒子のゲノムは、ピチンデウイルス
粒子以外の生物からの異種ORFをコードすることができる。
【0094】
ある実施態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORF
の少なくとも1つは、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えら
れる。別の実施態様において、GP、NP、Zタンパク質及びLタンパク質をコードする少なく
とも1つのORF、少なくとも2つのORF、少なくとも3つのORF、又は少なくとも4つのORFは、
除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。具体的な実施
態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORFのうち1つ
のみが、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。より
具体的な実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメントのGPをコードするORFが
除去される。別の具体的な実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメントのNPを
コードするORFが除去される。より具体的な実施態様において、ピチンデウイルスゲノム
セグメントのZタンパク質をコードするORFが除去される。さらに別の具体的な実施態様に
おいて、Lタンパク質をコードするORFが除去される。
【0095】
かくして、ある実施態様において、本明細書に提供されるピチンデウイルス粒子は、(i
)非天然位置にORFを担持するように操作され;(ii)GP、NP、Zタンパク質、又はLタンパク
質をコードするORFが除去され;(iii)除去されるORFが、ピチンデウイルス以外の生物か
らの異種ORFで置き換えられているゲノムセグメントを含む。
【0096】
ある実施態様において、該異種ORFは、8~100ヌクレオチド長、15~100ヌクレオチド長
、25~100ヌクレオチド長、50~200ヌクレオチド長、50~400ヌクレオチド長、200~500
ヌクレオチド長、又は400~600ヌクレオチド長、500~800ヌクレオチド長である。他の実
施態様において、該異種ORFは、750~900ヌクレオチド長、800~100ヌクレオチド長、850
~1000ヌクレオチド長、900~1200ヌクレオチド長、1000~1200ヌクレオチド長、1000~1
500ヌクレオチド又は10~1500ヌクレオチド長、1500~2000ヌクレオチド長、1700~2000
ヌクレオチド長、2000~2300ヌクレオチド長、2200~2500ヌクレオチド長、2500~3000ヌ
クレオチド長、3000~3200ヌクレオチド長、3000~3500ヌクレオチド長、3200~3600ヌク
レオチド長、3300~3800ヌクレオチド長、4000ヌクレオチド長~4400ヌクレオチド長、42
00~4700ヌクレオチド長、4800~5000ヌクレオチド長、5000~5200ヌクレオチド長、5200
~5500ヌクレオチド長、5500~5800ヌクレオチド長、5800~6000ヌクレオチド長、6000~
6400ヌクレオチド長、6200~6800ヌクレオチド長、6600~7000ヌクレオチド長、7000~72
00ヌクレオチド長、7200~7500ヌクレオチド長、又は7500ヌクレオチド長である。いくつ
かの実施態様において、該異種ORFは、5~10アミノ酸長、10~25アミノ酸長、25~50アミ
ノ酸長、50~100アミノ酸長、100~150アミノ酸長、150~200アミノ酸長、200~250アミ
ノ酸長、250~300アミノ酸長、300~400アミノ酸長、400~500アミノ酸長、500~750アミ
ノ酸長、750~1000アミノ酸長、1000~1250アミノ酸長、1250~1500アミノ酸長、1500~1
750アミノ酸長、1750~2000アミノ酸長、2000~2500アミノ酸長、又は2500以上のアミノ
酸長であるペプチド又はポリペプチドをコードする。いくつかの実施態様において、該異
種ORFは、2500アミノ酸長を超えないポリペプチドをコードする。具体的な実施態様にお
いて、該異種ORFは、終止コドンを含まない。ある実施態様において、該異種ORFは、コド
ン最適化されている。ある実施態様において、ヌクレオチド組成、ヌクレオチド対組成又
はその両方を最適化することができる。そのような最適化のための技術は、当技術分野で
公知であり、異種ORFを最適化するために適用することができる。
【0097】
ピチンデウイルス以外の生物からの任意の異種ORFを、ピチンデウイルスゲノムセグメ
ントに含有させることができる。ある実施態様において、該異種ORFは、レポータータン
パク質をコードする。レポータータンパク質のより詳細な説明は第4.3節において記載さ
れる。別の実施態様において、該異種ORFは、感染性病原体の抗原又は免疫応答を誘発す
ることができる任意の疾患に関連する抗原をコードする。具体的な実施態様において、該
抗原は、感染性生物、腫瘍(すなわち、癌)、又はアレルゲンに由来する。異種ORFに関す
るより詳細な説明は、第4.3節に記載される。
【0098】
ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子の増殖及び感染性は、ピチンデウイルス
以外の生物からの異種ORFによって影響されない。
【0099】
当業者に公知の技術は、野生型位置以外の位置にピチンデウイルスORFを担持するよう
に操作されたピチンデウイルスゲノムセグメントを含むピチンデウイルス粒子を生成する
ために使用されてよい。例えば、逆遺伝学技術を使用して、そのようなピチンデウイルス
粒子を作製してよい。他の実施態様において、該複製欠損ピチンデウイルス粒子(すなわ
ち、野生型位置以外の位置にピチンデウイルスORFを担持するように操作されたピチンデ
ウイルスゲノムセグメントであって、GP、NP、Zタンパク質、Lタンパク質をコードするOR
Fが欠失している)は、相補細胞で生成することができる。
【0100】
ある実施態様において、本願は、ワクチンとしての使用に好適な本明細書に記載される
ピチンデウイルス粒子、及び例えば感染又は癌のための、ワクチン接種及び治療又は防止
におけるそのようなピチンデウイルス粒子を使用する方法に関する。本明細書に記載され
るピチンデウイルス粒子を使用する方法のより詳細な説明は、第4.6節に提供されている
【0101】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される1以上のcDN
Aを、1以上の容器に含むキットである。具体的な実施態様において、キットは、1又は2以
上の容器に、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメント又はピチンデウイ
ルス粒子を含む。該キットは、ピチンデウイルスゲノムセグメント又はピチンデウイルス
粒子のレスキューに好適な宿主細胞、宿主細胞にプラスミドcDNAをトランスフェクトする
のに好適な試薬、ヘルパーウイルス、ウイルスタンパク質をコードするプラスミド及び/
又は改変ピチンデウイルスゲノムセグメント若しくはピチンデウイルス粒子又はそれらの
cDNAに特異的な1以上のプライマーのうちの1以上をさらに含んでもよい。
【0102】
ある実施態様において、本願は、医薬組成物として使用するのに好適な本明細書に記載
されるピチンデウイルス粒子、及び感染及び癌のワクチン接種及び治療又は予防における
そのようなピチンデウイルス粒子を使用する方法に関する。本明細書に記載されるピチン
デウイルス粒子を使用する方法のより詳細な説明は、第4.7節に提供されている。
【0103】
4.2 三セグメントピチンデウイルス粒子
本明細書に提供されるのは、そのORFの再配列を有する三セグメントピチンデウイルス
粒子である。一態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのS
セグメント又は2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイ
ルス粒子である。ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、複製
可能な二セグメントピチンデウイルス粒子に組み換えされない。より具体的には、ある実
施態様において、ゲノムセグメントの2つ(例えば、それぞれ、2つのSセグメント又は2つ
のLセグメント)は、2つの親セグメントと置き換えられることができる単一のウイルスセ
グメントを生成するように組み換えることができない。具体的な実施態様において、該三
セグメントピチンデウイルス粒子は、ORFをそのORFの野生型位置以外の位置に含む。さら
に別の具体的な実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、4つ全ての
ピチンデウイルスORFを含む。かくして、ある実施態様において、該三セグメントピチン
デウイルス粒子は、複製可能であり、感染性である。他の実施態様において、該三セグメ
ントピチンデウイルス粒子は、4つのピチンデウイルスORFのうちの1つを欠いている。か
くして、ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、感染性である
が、非相補細胞でさらなる感染性子孫を生成することができない。
【0104】
ある実施態様において、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子のGP
、NP、Zタンパク質、又はLタンパク質をコードするORFは、ピチンデウイルスの3'UTR又は
ピチンデウイルスの5'UTRの制御下に置くことができる。より具体的な実施態様において
、該三セグメントピチンデウイルスの3'UTRは、ピチンデウイルスSセグメント(複数可)の
3'UTRである。別の具体的な実施態様において、該三セグメントピチンデウイルスの3'UTR
は、三セグメントピチンデウイルスLセグメント(複数可)の3'UTRである。より具体的な実
施態様において、該三セグメントピチンデウイルスの5'UTRは、ピチンデウイルスSセグメ
ント(複数可)の5'UTRである。他の具体的な実施態様において、該5'UTRは、Lセグメント(
複数可)の5'UTRである。
【0105】
他の実施態様において、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子のGP
、NP、Zタンパク質、又はLタンパク質をコードするORFは、アレナウイルスの保存された
末端配列エレメント(5'及び3'末端の19~21ヌクレオチド領域)の制御下に置くことができ
る(例えば、Perez 及び de la Torreの文献、 2003, J Virol. 77(2):1184-1194を参照
されたい)。
【0106】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子のGP、NP、Zタンパク質
又はLタンパク質をコードするORFは、5'UTRのプロモーターエレメントの制御下に置くこ
とができる(例えば、Albarinoらの文献、 2011, J Virol., 85(8):4020-4を参照された
い)。別の実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子のGP、NP、Zタンパク
質、Lタンパク質をコードするORFは、3'UTRのプロモーターエレメントの制御下に置くこ
とができる(例えば、Albarinoらの文献、 2011, J Virol., 85(8):4020-4を参照された
い)。より具体的な実施態様において、5'UTRのプロモーターエレメントは、Sセグメント(
複数可)又はLセグメント(複数可)の5'UTRプロモーターエレメントである。別の具体的な
実施態様において、3'UTRのプロモーターエレメントは、Sセグメント(複数可)又はLセグ
メント(複数可)の3'UTRプロモーターエレメントである。
【0107】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子のGP、NP、Zタンパク質
又はLタンパク質をコードするORFは、切断型ピチンデウイルスの3'UTR又は切断型ピチン
デウイルスの5'UTRの制御下に置くことができる(例えば、Perez及びde la Torreの文献、
2003, J Virol., 77(2):1184-1194; Albarinoらの文献、 2011, J Virol., 85(8):40
20-4を参照されたい)。より具体的な実施態様において、該切断型3'UTRは、該ピチンデウ
イルスSセグメント又はLセグメントの3'UTRである。より具体的な実施態様において、該
切断型5'UTRは、該ピチンデウイルスSセグメント(複数可)又はLセグメント(複数可)の5'U
TRである。
【0108】
また、本明細書に提供されるのは、該三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAである
。より具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、表2又は表3に記載される
三セグメントピチンデウイルス粒子をコードするDNAヌクレオチド配列又はDNAヌクレオチ
ド配列のセットである。
【0109】
ある実施態様において、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルスゲノムセ
グメントをコードする核酸は、本明細書に開示される核酸配列に少なくともある種の配列
同一性を有することができる。したがって、いくつかの態様において、三セグメントピチ
ンデウイルスゲノムセグメントをコードする核酸は、配列番号によって本明細書に開示さ
れる核酸配列又は配列番号によって本明細書に開示される核酸配列にハイブリダイズする
核酸配列に対し、少なくとも80%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性
、少なくとも91%同一性、少なくとも92%同一性、少なくとも93%同一性、少なくとも94
%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少な
くとも98%同一性、又は少なくとも99%同一性の核酸配列を有するか、又はそれと同一で
ある。ハイブリダイゼーション条件は、本明細書に記載されるような、当業者に周知の高
度にストリンジェント、中程度にストリンジェント、又は低ストリンジェンシーのハイブ
リダイゼーション条件を含むことができる。同様に、本明細書に記載される三セグメント
ピチンデウイルスゲノムセグメントを作製するのに使用し得る核酸は、配列番号によって
本明細書に開示される核酸配列又は配列番号によって本明細書に開示される核酸配列にハ
イブリダイズする核酸配列に対し、あるパーセントの配列同一性を有することができる。
例えば、三セグメントピチンデウイルスゲノムセグメントを作製するのに使用される核酸
は、本明細書に記載される核酸配列に対して、少なくとも80%同一性、少なくとも85%同
一性、少なくとも90%同一性、少なくとも91%同一性、少なくとも92%同一性、少なくと
も93%同一性、少なくとも94%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、
少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性又は少なくとも99%同一性を有するか、又
はそれと同一であることができる。
【0110】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルスゲノムをコードする核酸は、
1以上のDNA発現ベクターの一部であるか又は1以上のDNA発現ベクターに組み込まれている
。具体的な実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子のゲノムをコードす
る核酸は、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子の生成を促進する1
以上のDNA発現ベクターの一部であるか又は1以上のDNA発現ベクターに組み込まれている
。別の実施態様において、本明細書に記載されるcDNAは、プラスミドに組み込むことがで
きる。cDNA及び発現系のより詳細な説明は、第4.5.1節に提供されている。cDNA生成のた
めの技術は、分子生物学並びにDNAの操作及び生成の日常的な従来技術である。当業者に
公知の任意のクローニング技術を使用することができる。そのような技術は周知であり、
当業者は、Sambrook及びRussellの文献、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molec
ular Cloning: A laboratory Manual)」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory N.Y.
(2001)などの実験室マニュアルで利用可能である。
【0111】
ある実施態様において、三セグメントピチンデウイルスのcDNAは、(例えば、トランス
フェクトされた)宿主細胞に導入される。かくして、いくつかの実施態様において、本明
細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNA(すなわち、三セグメ
ントピチンデウイルス粒子のゲノムセグメントのcDNA)を含む宿主細胞である。他の実施
態様において、本明細書に記載されるcDNAは、DNA発現ベクターの一部であるか、又はDNA
発現ベクターに組み込み、宿主細胞に導入することができる。かくして、いくつかの実施
態様において、本明細書に提供されるのは、ベクターに組み込まれる、本明細書に記載さ
れるcDNAを含む宿主細胞である。他の実施態様において、本明細書に記載される三セグメ
ントピチンデウイルスゲノムセグメント(すなわち、Lセグメント及び/又はSセグメント又
は複数のそれらのセグメント)は、宿主細胞に導入される。
【0112】
ある実施態様において、本明細書に記載されるのは、該三セグメントピチンデウイルス
粒子を生成する方法であって、該三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAを転写するこ
とを含む、前記方法である。ある実施態様において、ウイルスポリメラーゼタンパク質は
、インビトロ又はインビボで該三セグメントピチンデウイルス粒子の転写中に存在するこ
とができる。ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントの転写は、二
方向性プロモーターを使用して行われる。
【0113】
他の実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントの転写は、二方向性発現
カセットを使用して行われる(例えば、Ortiz-Rianoらの文献、 2013, J Gen Virol., 94(
Pt 6):1175-1188を参照されたい)。より具体的な実施態様において、該二方向性発現カ
セットは、それぞれ、挿入されるピチンデウイルスゲノムセグメントの2つの末端へ両側
から読むポリメラーゼI及びポリメラーゼIIプロモーターの両方を含む。
【0114】
他の実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルスゲノムセグメントのcD
NAの転写は、プロモーターを含む。プロモーターの具体例としては、RNAポリメラーゼIプ
ロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、T7プ
ロモーター、SP6プロモーター、又はT3プロモーターが挙げられる。
【0115】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子を生成する方法は、さら
に、該三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAを宿主細胞に導入することを含むことが
できる。ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子を生成する方法は
、さらに、該三セグメントピチンデウイルス粒子の生成のための全ての他の成分を発現す
る宿主細胞に、該三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAを導入すること、及び該宿主
細胞の上清から該三セグメントピチンデウイルス粒子を精製することを含むことができる
。そのような方法は、当業者に周知である。
【0116】
本明細書に提供されるのは、本明細書に提供される核酸、ベクター、及び組成物に感染
した細胞株、培養物及び細胞を培養する方法である。本明細書に記載される核酸、ベクタ
ー系及び細胞株のより詳細な説明は、第4.5節に提供されている。
【0117】
ある実施態様において、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子は、
感染性で複製可能なピチンデウイルス粒子をもたらす。具体的な実施態様において、本明
細書に記載されるピチンデウイルス粒子は弱毒化される。特定の実施態様において、該三
セグメントピチンデウイルス粒子は、ウイルスが、依然として少なくとも部分的に複製可
能であり、インビボで複製できるが、不顕レベルの非病原性感染をもたらす低いウイルス
負荷しか発生させることができないように弱毒化される。そのような弱毒化ウイルスは、
免疫原性組成物として使用することができる。
【0118】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、該二セグメントピチ
ンデウイルス粒子と同じトロピズムを有する。
【0119】
また、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される1以上のcDNAを、1以上の容器
に含むキットである。具体的な実施態様において、キットは、1又は2以上の容器に、本明
細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子を含む。該キットは、該三セグメン
トピチンデウイルス粒子のレスキューに好適な宿主細胞、宿主細胞にプラスミドcDNAをト
ランスフェクトするのに好適な試薬、ヘルパーウイルス、ウイルスタンパク質をコードす
るプラスミド及び/又は改変ピチンデウイルスゲノムセグメント若しくはピチンデウイル
ス粒子又はそれらをコードする核酸に特異的な1以上のオリゴヌクレオチドプライマーの1
以上をさらに含んでいてもよい。
【0120】
また、本明細書に提供されるのは、第4.6節及び第4.7節に記載される三セグメントピチ
ンデウイルス粒子を含む免疫原性組成物である。
【0121】
4.2.1 1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒

一態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグメント
を含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、1つのLセグメ
ント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖は、複製可能
二セグメントウイルス粒子をもたらさない。具体的な実施態様において、1つのLセグメン
ト及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖は、I型インタ
ーフェロン受容体、II型インターフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子(RAG1)を欠き、
104 PFUの三セグメントピチンデウイルス粒子(第4.8.13節参照)に感染させたマウスにお
ける持続感染の少なくとも10日、少なくとも20日、少なくとも30日、少なくとも40日、少
なくとも50日、少なくとも60日、少なくとも70日、少なくとも80日、少なくとも90日、又
は少なくとも100日後に、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない。他の実施
態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイ
ルス粒子の増殖は、少なくとも10継代、少なくとも20継代、少なくとも30継代、少なくと
も40継代、又は少なくとも50継代後に、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさな
い。
【0122】
ある実施態様において、2つの別々のセグメントの代わりに1つのセグメント上に2つの
アレナウイルスORFを結合している、本明細書に提供される三セグメントピチンデウイル
ス粒子の2つのSセグメントのセグメント間の組換えは、非機能的なプロモーター(すなわ
ち、構造:5'UTR----5'UTR又は3'UTR----3'UTRのゲノムセグメント)をもたらし、その中
で、ゲノムの一端を形成する各UTRは、同一ゲノムの他端の逆方向反復配列である。
【0123】
ある実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子は、ピチンデウイルスORFを該ORFの野生型位置以外の位置に担持する
ように操作されている。他の実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメント
を含む三セグメントピチンデウイルス粒子は、2つのピチンデウイルスORF、又は3つのピ
チンデウイルスORF、又は4つのピチンデウイルスORF、又は5つのピチンデウイルスORF、
又は6つのピチンデウイルスORFを、野生型位置以外の位置に担持するように操作されてい
る。具体的な実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメ
ントピチンデウイルス粒子は、4つ全てのピチンデウイルスORFの完全相補体を含む。かく
して、いくつかの実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、感染性複
製可能三セグメントピチンデウイルス粒子である。具体的な実施態様において、該三セグ
メントピチンデウイルス粒子の2つのSセグメントは、それらのORFのうちの1つをその野生
型位置以外の位置に担持するように操作されている。より具体的な実施態様において、該
2つのSセグメントは、SセグメントのORFの完全相補体を含む。ある具体的な実施態様にお
いて、該Lセグメントは、野生型位置以外の位置にORFを担持するように操作されているか
、又は該Lセグメントは、野生型ゲノムセグメントであり得る。
【0124】
ある実施態様において、2つのSセグメントのうちの1つは:
(i)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデウ
イルスSセグメント;
(ii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスSセグメント;
(iii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるピチンデウイルスS
セグメント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウイルスS
セグメント;
(v)LをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデウイルスSセ
グメント;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるピチンデ
ウイルスSセグメント;
であり得る。
【0125】
ある実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子は、重複ORF(すなわち、2つの野生型SセグメントのORF、例えば、GP
又はNP)を含むことができる。具体的な実施態様において、1つのLセグメント及び2つのS
セグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子は、1つの重複ORF(例えば、(GP、GP
))又は2つの重複ORF(例えば、(GP、GP)及び(NP、NP))を含むことができる。
【0126】
以下の表2Aは、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウ
イルス粒子のゲノム構成を示し、該三セグメントピチンデウイルスゲノム中の2つのSセグ
メントのセグメント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさず、ア
レナウイルスプロモーター活性を抑制する(すなわち、得られる組換えSセグメントは、3'
UTR及び5'UTRの代わりに、2つの3'UTRから構成されている)。
表2A
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子
位置1は、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRの制御下にある;位置2は、ピチンデウ
イルスSセグメントの3’UTRの制御下にある;位置3は、ピチンデウイルスSセグメントの5
'UTRの制御下にある;位置4は、ピチンデウイルスSセグメントの3'UTRの制御下にある;
位置5は、ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRの制御下にある;位置6は、ピチンデウイ
ルスLセグメントの3'UTRの制御下にある。
*ORFは、異種ORFが挿入されていることを示す。
【表3】
【0127】
ある実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント又は
LセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント
又はLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスLセグメ
ントのIGRであり得る。具体的な実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデ
ウイルスSセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセ
グメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスLセグメントのI
GRであり得る。ある実施態様において、他の組み合わせも可能である。例えば、三セグメ
ントピチンデウイルス粒子は、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含み、該三セグ
メントピチンデウイルスゲノム中の2つのSセグメントのセグメント間の組換えは、複製可
能二セグメントウイルス粒子をもたらさず、アレナウイルスプロモーター活性を抑制する
(すなわち、得られる組換えSセグメントは、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの5'UTRで構
成されている)。
【0128】
ある実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子中のSセグメント及びLセグメントのセグメント間の組換えは、2つの
別々のセグメントの代わりに、1つのみのセグメント上に2つのウイルス遺伝子を有する機
能的セグメントを復元する。他の実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメ
ントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子中のSセグメント及びLセグメントのセグメ
ント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない。
【0129】
以下の表2Bは、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウ
イルス粒子のゲノム構成を示し、該三セグメントピチンデウイルスゲノム中のSセグメン
ト及びLセグメントのセグメント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をも
たらさず、アレナウイルスプロモーター活性を抑制する(すなわち、得られる組換えSセグ
メントは、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの3'UTRから構成されている)。
表2B
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子
位置1は、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRの制御下にある;位置2は、ピチンデウ
イルスSセグメントの3'UTRの制御下にある;位置3は、ピチンデウイルスSセグメントの5'
UTRの制御下にある;位置4は、ピチンデウイルスSセグメントの3'UTRの制御下にある;位
置5は、ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRの制御下にある;位置6は、ピチンデウイル
スLセグメントの3'UTRの制御下にある。
*ORFは、異種ORFが挿入されていることを示す。
【表4】
【0130】
ある実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント又は
LセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント
又はLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスLセグメ
ントのIGRであり得る。具体的な実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデ
ウイルスSセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセ
グメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスLセグメントのI
GRであり得る。ある実施態様において、他の組み合わせも可能である。例えば、三セグメ
ントピチンデウイルス粒子は、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含み、該三セグ
メントピチンデウイルスゲノム中の2つのSセグメントのセグメント間の組換えは、複製可
能二セグメントウイルス粒子をもたらさず、アレナウイルスプロモーター活性を抑制する
(すなわち、得られる組換えSセグメントは、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの5'UTRで構
成されている)。
【0131】
ある実施態様において、当業者は、表2A又は2Bに示され、かつ本明細書に記載される構
成でピチンデウイルスゲノムを構築し、次いで、第4.8節に記載されるアッセイを使用し
て、該三セグメントピチンデウイルス粒子が遺伝的に安定であるかどうか、すなわち、本
明細書で論じられる複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさないかどうかを決定し
得る。
【0132】
4.2.2 2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒

一態様において、本明細書に提供されるのは、2つのLセグメント及び1つのSセグメント
を含む三セグメントピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、2つのLセグメ
ント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖は、複製可能
二セグメントウイルス粒子をもたらさない。具体的な実施態様において、2つのLセグメン
ト及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子の増殖は、I型インタ
ーフェロン受容体、II型インターフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子(RAG1)を欠き、
104 PFUの三セグメントピチンデウイルス粒子(第4.8.13節参照)に感染させたマウスにお
ける少なくとも10日、少なくとも20日、少なくとも30日、少なくとも40日、又は少なくと
も50日、少なくとも60日、少なくとも70日、少なくとも80日、少なくとも90日、少なくと
も100日の持続後に、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない。他の実施態様
において、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス
粒子の増殖は、少なくとも10継代、20継代、30継代、40継代、又は50継代後に複製可能二
セグメントウイルス粒子をもたらさない。
【0133】
ある実施態様において、2つの別々のセグメントの代わりに、1つのセグメント上に2つ
のピチンデウイルスORFを結合している、本明細書に提供される三セグメントピチンデウ
イルス粒子の2つのLセグメントのセグメント間の組換えは、非機能的なプロモーター(す
なわち、構造:5'UTR----5'UTR又は3'UTR----3'UTRのゲノムセグメント)をもたらし、そ
の中で、ゲノムの一端を形成する各UTRは、同一ゲノムの他端の逆方向反復配列である。
【0134】
ある実施態様において、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子は、ピチンデウイルスORFを該ORFの野生型位置以外の位置に担持する
ように操作されている。他の実施態様において、2つのLセグメント及び1つのSセグメント
を含む三セグメントピチンデウイルス粒子は、2つのピチンデウイルスORF、又は3つのピ
チンデウイルスORF、又は4つのピチンデウイルスORF、又は5つのピチンデウイルスORF、
又は6つのピチンデウイルスORFを、野生型位置以外の位置に担持するように操作されてい
る。具体的な実施態様において、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメ
ントピチンデウイルス粒子は、4つ全てのピチンデウイルスORFの完全相補体を含む。かく
して、いくつかの実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、感染性複
製可能三セグメントピチンデウイルス粒子である。具体的な実施態様において、該三セグ
メントピチンデウイルス粒子の2つのLセグメントは、それらのORFのうちの1つをその野生
型位置以外の位置に担持するように操作されている。より具体的な実施態様において、該
2つのLセグメントは、LセグメントのORFの完全相補体を含む。ある具体的な実施態様にお
いて、該Sセグメントは、それらのORFのうちの1つをその野生型位置以外の位置に担持す
るように操作されているか、又は該Sセグメントは、野生型ゲノムセグメントであり得る
【0135】
ある実施態様において、2つのLセグメントのうちの1つは:
(i)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(ii)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメント;
(iii)Lタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの5'UTRの制御下にあるLセグメ
ント;
(iv)GPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;
(v)NPをコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメント;及び
(vi)Zタンパク質をコードするORFが、ピチンデウイルスの3'UTRの制御下にあるLセグメン
ト;
であり得る。
【0136】
ある実施態様において、1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子は、重複ORF(すなわち、2つの野生型LセグメントのORF、例えば、Zタ
ンパク質又はLタンパク質)を含むことができる。具体的な実施態様において、2つのLセグ
メント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子は、1つの重複ORF
(例えば、(Zタンパク質、Zタンパク質))又は2つの重複ORF(例えば、(Zタンパク質、Zタン
パク質)及び(Lタンパク質、Lタンパク質))を含むことができる。
【0137】
以下の表3は、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウ
イルス粒子のゲノム構成を示し、該三セグメントピチンデウイルスゲノム中の2つのLセグ
メントのセグメント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさず、ア
レナウイルスプロモーター活性を抑制する(すなわち、推定される得られる組換えLセグメ
ントは、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの3'UTR又は2つの5'UTRから構成されているだろ
う)。表3に基づいて、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの5'UTRから構成されているピチン
デウイルス粒子を作製するために、同様の組み合わせを予測することができる。
表3
2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子
*位置1は、ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRの制御下にある;位置2は、ピチンデ
ウイルスLセグメントの3'UTRの制御下にある;位置3は、ピチンデウイルスLセグメントの
5'UTRの制御下にある;位置4は、ピチンデウイルスLセグメントの3'UTRの制御下にある;
位置5は、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRの制御下にある;位置6は、ピチンデウイ
ルスSセグメントの3'UTRの制御下にある。
*ORFは、異種ORFが挿入されていることを示す。
【表5】
【0138】
ある実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント又は
LセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント
又はLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメ
ント又はLセグメントのIGRであり得る。具体的な実施態様において、位置1と位置2の間の
IGRは、ピチンデウイルスLセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチ
ンデウイルスLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイル
スSセグメントのIGRであり得る。ある実施態様において、他の組み合わせも可能である。
【0139】
ある実施態様において、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピ
チンデウイルス粒子からのLセグメント及びSセグメントのセグメント間の組換えは、2つ
の別々のセグメントの代わりに、1つのみのセグメント上に2つのウイルス遺伝子を有する
機能的セグメントを復元する。他の実施態様において、2つのLセグメント及び1つのSセグ
メントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子中のLセグメント及びSセグメントのセグ
メント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさない。
【0140】
以下の表3Bは、2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウ
イルス粒子のゲノム構成を示し、該三セグメントピチンデウイルスゲノム中のLセグメン
ト及びSセグメントのセグメント間の組換えは、複製可能二セグメントウイルス粒子をも
たらさず、アレナウイルスプロモーター活性を抑制する(すなわち、得られる組換えSセグ
メントは、3'UTR及び5'UTRの代わりに、2つの3'UTRから構成されている)。
表3B
2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルス粒子
*位置1は、ピチンデウイルスLセグメントの5'UTRの制御下にある;位置2は、ピチンデ
ウイルスLセグメントの3'UTRの制御下にある;位置3は、ピチンデウイルスLセグメントの
5'UTRの制御下にある;位置4は、ピチンデウイルスLセグメントの3'UTRの制御下にある;
位置5は、ピチンデウイルスSセグメントの5'UTRの制御下にある;位置6は、ピチンデウイ
ルスSセグメントの3'UTRの制御下にある。
*ORFは、異種ORFが挿入されていることを示す。
【表6】
【0141】
ある実施態様において、位置1と位置2の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント又は
LセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメント
又はLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイルスSセグメ
ント又はLセグメントのIGRであり得る。具体的な実施態様において、位置1と位置2の間の
IGRは、ピチンデウイルスLセグメントのIGRであり得る;位置2と位置3の間のIGRは、ピチ
ンデウイルスLセグメントのIGRであり得る;位置5と位置6の間のIGRは、ピチンデウイル
スSセグメントのIGRであり得る。ある実施態様において、他の組み合わせも可能である。
【0142】
ある実施態様において、当業者は、表3A又は3Bに示され、本明細書に記載される構成で
ピチンデウイルスゲノムを構築し、次いで、第4.8節に記載されるアッセイを使用して、
三セグメントピチンデウイルス粒子が遺伝的に安定であるかどうか、すなわち、本明細書
で論じられる複製可能二セグメントウイルス粒子をもたらさないかどうかを決定し得る。
【0143】
4.2.3 複製欠損三セグメントピチンデウイルス粒子
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、(i)ORFが該ORFの野生型位置以外
の位置にある;かつ(ii)得られるウイルスがさらなる感染性子孫ウイルス粒子を生成する
ことができない(すなわち、複製欠損である)ように、GP、NP、Zタンパク質、又はLタンパ
ク質をコードするORFが除去されているか、又は機能的に不活化されている、三セグメン
トピチンデウイルス粒子である。ある実施態様において、該第3のピチンデウイルスセグ
メントはSセグメントであり得る。他の実施態様において、該第3のピチンデウイルスセグ
メントはLセグメントであり得る。より具体的な実施態様において、該第3のピチンデウイ
ルスセグメントは、ORFをその野生型位置以外の位置に担持するように操作することがで
きるか、又は該第3のピチンデウイルスセグメントは、野生型ピチンデウイルスゲノムセ
グメントであり得る。さらにより具体的な実施態様において、該第3のピチンデウイルス
セグメントは、GP、NP、Zタンパク質、又はLタンパク質をコードするピチンデウイルスOR
Fを欠く。
【0144】
ある実施態様において、三セグメントゲノムセグメントは、S又はLセグメントハイブリ
ッド(すなわち、SセグメントとLセグメントの組み合わせであり得るゲノムセグメント)で
あり得る。他の実施態様において、該ハイブリッドセグメントは、LセグメントのIGRを含
むSセグメントである。別の実施態様において、該ハイブリッドセグメントは、Sセグメン
トのIGRを含むLセグメントである。他の実施態様において、該ハイブリッドセグメントは
、LセグメントのIGRを有するSセグメントのUTRである。別の実施態様において、該ハイブ
リッドセグメントは、SセグメントのIGRを有するLセグメントのUTRである。具体的な実施
態様において、該ハイブリッドセグメントは、LセグメントのIGRを有するSセグメントの5
'UTRであるか、又はLセグメントのIGRを有するSセグメントの3'UTRである。他の具体的な
実施態様において、該ハイブリッドセグメントは、SセグメントのIGRを有するLセグメン
トの5'UTR又はSセグメントのIGRを有するLセグメントの3'UTRである。
【0145】
1以上のORFが欠失しているか、又は機能的に不活化されている遺伝子改変ゲノムを含む
三セグメントピチンデウイルス粒子は、相補細胞(すなわち、欠失しているか、又は機能
的に不活化されているピチンデウイルスORFを発現する細胞)で生成することができる。得
られるピチンデウイルス粒子の遺伝物質は、宿主細胞の感染時に宿主細胞に移ることがで
き、その中で該遺伝物質は発現及び増幅されることができる。さらに、本明細書に記載さ
れる遺伝子改変ピチンデウイルス粒子のゲノムは、ピチンデウイルス粒子以外の生物から
の異種ORFをコードすることができる。
【0146】
ある実施態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする4つのORF
のうちの少なくとも1つは、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き
換えられる。別の実施態様において、GP、NP、Zタンパク質及びLタンパク質をコードする
少なくとも1つのORF、少なくとも2つのORF、少なくとも3つのORF、又は少なくとも4つのO
RFは、除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられることがで
きる。具体的な実施態様において、GP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードする
4つのORFの1つのみが除去され、ピチンデウイルス粒子以外の生物からの異種ORFで置き換
えられる。より具体的な実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントのGPを
コードするORFは除去される。別の具体的な実施態様において、該ピチンデウイルスゲノ
ムセグメントのNPをコードするORFは除去される。より具体的な実施態様において、該ピ
チンデウイルスゲノムセグメントのZタンパク質をコードするORFは除去される。さらに別
の具体的な実施態様において、Lタンパク質をコードするORFは除去される。
【0147】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、1つのLセグメント及び2つのSセグ
メントを含み、その中で、(i)ORFが該ORFの野生型位置以外の位置にある;かつ(ii)得ら
れるウイルスが複製欠損で、感染性ではないように、GP又はNPをコードするORFが除去さ
れているか、又は機能的に不活化されている三セグメントピチンデウイルス粒子である。
具体的な実施態様において、1つのORFは除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異
種ORFで置き換えられる。別の具体的な実施態様において、2つのORFは除去され、ピチン
デウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。他の具体的な実施態様において
、3つのORFは除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。
具体的な実施態様において、GPをコードするORFは除去され、ピチンデウイルス以外の生
物からの異種ORFで置き換えられる。他の具体的な実施態様において、NPをコードするORF
は除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。さらにより
具体的な実施態様において、NPをコードするORF及びGPをコードするORFは、除去され、ピ
チンデウイルス粒子以外の生物からの1つ又は2つの異種ORFで置き換えられる。かくして
、ある実施態様において、三セグメントピチンデウイルス粒子は、(i)1つのLセグメント
及び2つのSセグメント;(ii)そのORFの野生型位置以外の位置にあるORF;(iii)ピチンデ
ウイルス以外の生物からの1以上の異種ORFを含む。
【0148】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、2つのLセグメント及び1つのSセグ
メントを含み、その中で、(i)ORFが該ORFの野生型位置以外の位置にある;かつ(ii)得ら
れるウイルスが複製欠損で、感染性ではないように、Zタンパク質及び/又はLタンパク質
をコードするORFが除去されているか、又は機能的に不活化されている三セグメントピチ
ンデウイルス粒子である。具体的な実施態様において、1つのORFは除去され、ピチンデウ
イルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。別の具体的な実施態様において、2つ
のORFは除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。具体的
な実施態様において、Zタンパク質をコードするORFは除去され、ピチンデウイルス以外の
生物からの異種ORFで置き換えられる。他の具体的な実施態様において、Lタンパク質をコ
ードするORFは除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORFで置き換えられる。
さらにより具体的な実施態様において、Zタンパク質をコードするORF及びLタンパク質を
コードするORFは除去され、ピチンデウイルス粒子以外の生物からの異種ORFで置き換えら
れる。かくして、ある実施態様において、三セグメントピチンデウイルス粒子は、(i)2つ
のLセグメント及び1つのSセグメント;(ii)そのORFの野生型位置以外の位置にあるORF;(
iii)ピチンデウイルス以外の生物からの1以上の異種ORFを含む。
【0149】
かくして、ある実施態様において、本明細書に提供される三セグメントピチンデウイル
ス粒子は、i) ORFを非天然位置に担持するように操作されている;ii)GP、NP、Zタンパク
質、又はLタンパク質をコードするORFが除去されている);iii)該除去されているORFはピ
チンデウイルス以外の生物からの1以上の異種ORF で置き換えられている、三セグメント
ピチンデウイルス粒子(すなわち、1つのLセグメント及び2つのSセグメント、又は2つのL
セグメント及び1つのSセグメント)を含む。
【0150】
ある実施態様において、該異種ORFは、8~100ヌクレオチド長、15~100ヌクレオチド長
、25~100ヌクレオチド長、50~200ヌクレオチド長、50~400ヌクレオチド長、200~500
ヌクレオチド長、又は400~600ヌクレオチド長、500~800ヌクレオチド長である。他の実
施態様において、該異種ORFは、750~900ヌクレオチド長、800~100ヌクレオチド長、850
~1000ヌクレオチド長、900~1200ヌクレオチド長、1000~1200ヌクレオチド長、1000~1
500ヌクレオチド又は10~1500ヌクレオチド長、1500~2000ヌクレオチド長、1700~2000
ヌクレオチド長、2000~2300ヌクレオチド長、2200~2500ヌクレオチド長、2500~3000ヌ
クレオチド長、3000~3200ヌクレオチド長、3000~3500ヌクレオチド長、3200~3600ヌク
レオチド長、3300~3800ヌクレオチド長、4000ヌクレオチド長~4400ヌクレオチド長、42
00~4700ヌクレオチド長、4800~5000ヌクレオチド長、5000~5200ヌクレオチド長、5200
~5500ヌクレオチド長、5500~5800ヌクレオチド長、5800~6000ヌクレオチド長、6000~
6400ヌクレオチド長、6200~6800ヌクレオチド長、6600~7000ヌクレオチド長、7000~72
00ヌクレオチド長、7200~7500ヌクレオチド長、又は7500ヌクレオチド長である。いくつ
かの実施態様において、該異種ORFは、5~10アミノ酸長、10~25アミノ酸長、25~50アミ
ノ酸長、50~100アミノ酸長、100~150アミノ酸長、150~200アミノ酸長、200~250アミ
ノ酸長、250~300アミノ酸長、300~400アミノ酸長、400~500アミノ酸長、500~750アミ
ノ酸長、750~1000アミノ酸長、1000~1250アミノ酸長、1250~1500アミノ酸長、1500~1
750アミノ酸長、1750~2000アミノ酸長、2000~2500アミノ酸長、又は2500以上のアミノ
酸長であるペプチド又はポリペプチドをコードする。いくつかの実施態様において、該異
種ORFは、2500アミノ酸長を超えないポリペプチドをコードする。具体的な実施態様にお
いて、該異種ORFは、終止コドンを含有しない。ある実施態様において、該異種ORFはコド
ン最適化されている。ある実施態様において、ヌクレオチド組成、ヌクレオチド対組成又
はその両方を最適化することができる。そのような最適化のための技術は、当技術分野で
公知であり、異種ORFを最適化するために適用することができる。
【0151】
ピチンデウイルス以外の生物からの任意の異種ORFを、三セグメントピチンデウイルス
粒子に含有させることができる。一実施態様において、該異種ORFは、レポータータンパ
ク質をコードする。レポータータンパク質のより詳細な説明は、第4.3節に記載される。
別の実施態様において、該異種ORFは、感染性病原体の抗原、又は任意の疾患と関連し、
免疫応答を誘発することができる抗原をコードする。具体的な実施態様において、該抗原
は、感染性生物、腫瘍(すなわち、癌)、又はアレルゲンに由来する。異種ORFに関するよ
り詳細な説明は、第4.3節に記載される。
【0152】
ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子の増殖及び感染性は、該ピチンデウイル
ス以外の生物からの異種ORFによって影響されない。
【0153】
当業者に公知の技術を使用して、ピチンデウイルスORFをその野生型位置以外の位置に
担持するように操作されたピチンデウイルスゲノムセグメントを含むピチンデウイルス粒
子を生成することができる。例えば、逆遺伝学技術を使用して、そのようなピチンデウイ
ルス粒子を生成することができる。他の実施態様において、該複製欠損ピチンデウイルス
粒子(すなわち、GP、NP、Zタンパク質、Lタンパク質をコードするORFが欠失している、ピ
チンデウイルスORFを野生型位置以外の位置に担持するように操作されたピチンデウイル
スゲノムセグメント)は、相補細胞で生成することができる。
【0154】
ある実施態様において、本願は、ワクチンとしての使用に好適な本明細書に記載される
ピチンデウイルス粒子、及び例えば感染及び癌のワクチン接種及び治療又は防止において
そのようなピチンデウイルス粒子を使用する方法に関する。本明細書に記載されるピチン
デウイルス粒子を使用する方法のより詳細な説明は、第4.6節に提供される。
【0155】
ある実施態様において、本願は、医薬組成物としての使用に好適な本明細書に記載され
るピチンデウイルス粒子、及び例えば感染又は癌のワクチン接種及び治療又は防止におい
てそのようなピチンデウイルス粒子を使用する方法に関する。本明細書に記載されるピチ
ンデウイルス粒子を使用する方法のより詳細な説明は、第4.6節に提供される。
【0156】
4.3 異種ORFを発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子
ある実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメント、及びそれぞれのピチンデ
ウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、異種ORFを含むことができる。
他の実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメント及びそれぞれのピチンデウイ
ルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、対象の遺伝子を含むことができる。
より具体的な実施態様において、該異種ORF又は対象の遺伝子は抗原をコードする。より
具体的な実施態様において、該異種ORF又は対象の遺伝子は、レポータータンパク質又は
蛍光タンパク質をコードする。
【0157】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該ピチンデウイルス粒
子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、1以上の異種ORF又は1以上の対象の遺伝
子を含むことができる。他の実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメント、
該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、少なくとも1つの
異種ORF、少なくとも2つの異種ORF、少なくとも3つの異種ORF、又はそれより多い異種ORF
を含むことができる。他の実施態様において、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメン
トピチンデウイルス粒子は、少なくとも1つの対象の遺伝子、少なくとも2つの対象の遺伝
子、少なくとも3つの対象の遺伝子、又はそれより多い対象の遺伝子を含む。
【0158】
多様な抗原を、本願のピチンデウイルスゲノムセグメント、ピチンデウイルス粒子又は
三セグメントピチンデウイルス粒子によって発現させることができる。一実施態様におい
て、該異種ORFは、感染性病原体の抗原又は免疫応答を誘発することができる任意の疾患
と関連する抗原をコードする。ある実施態様において、該異種ORFは、ウイルス、細菌、
菌類、寄生生物に由来する抗原をコードすることができ、又は、腫瘍又は腫瘍関連疾患(
すなわち、癌)、自己免疫疾患、変性疾患、遺伝性疾患、物質依存性、肥満、又はアレル
ギー性疾患において発現させることができる。
【0159】
いくつかの実施態様において、該異種ORFはウイルス抗原をコードする。ウイルス抗原
の非限定的な例としては、アデノウイルス科(例えば、マストアデノウイルス及びトリア
デノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペス
ウイルス2型、単純ヘルペスウイルス5型、単純ヘルペスウイルス6型、エプスタイン-バ
ーウイルス、HHV6-HHV8及びサイトメガロウイルス)、レビウイルス科(例えば、レビウイ
ルス、バクテリオファージMS2、アロレビウイルス(allolevirus))、ポックスウイルス科(
例えば、コードポックスウイルス亜科、パラポックスウイルス、トリポックスウイルス、
カプリポックスウイルス、ウサギポックスウイルス、ブタポックスウイルス、モルシポッ
クスウイルス、及びエントモポックスウイルス亜科)、パポバウイルス科(例えば、ポリオ
ーマウイルス及びパピローマウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、パラミクソウイ
ルス、パラインフルエンザウイルス1型、モビリウイルス(例えば、麻疹ウイルス)、ルブ
ラウイルス(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス)、ニューモウイルス亜科(例えば、ニュー
モウイルス、ヒトRSウイルス)、ヒトRSウイルス及びメタニューモウイルス(例えば、トリ
ニューモウイルス及びヒトメタニューモウイルス)、ピコルナウイルス科(例えば、エンテ
ロウイルス、ライノウイルス、へパトウイルス(例えば、ヒトA型肝炎ウイルス)、カルジ
オウイルス、及びアフトウイルス)、レオウイルス科(例えば、オルトレオウイルス、オル
ビウイルス、ロタウイルス、サイポウイルス、フィジウイルス、ファイトレオウイルス、
及びオリザウイルス)、レトロウイルス科(例えば、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動
物C型レトロウイルス、トリC型レトロウイルス、D型レトロウイルス群、BLV-HTLVレトロ
ウイルス、レンチウイルス(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1及びHIV-2(例えば、HIV
gp160)、スプーマウイルス)、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス、デングウイ
ルス、 ウエストナイルウイルス)、ヘパドナウイルス科(例えば、B型肝炎ウイルス)、ト
ガウイルス科(例えば、アルファウイルス(例えば、シンドビスウイルス)及びルビウイル
ス(例えば、風疹ウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、ベシクロウイルス、リッサウイ
ルス、エフェメロウイルス、サイトラブドウイルス、及びヌクレオラブドウイルス)、ア
レナウイルス科(例えば、アレナウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、イッピイウ
イルス、及びラッサウイルス)、及びコロナウイルス科(例えば、コロナウイルス及びトロ
ウイルス)からの抗原が挙げられる。具体的な実施態様において、該ウイルス抗原は、HIV
gp120、gp41、HIV Nef、RSV F糖タンパク質、RSV G糖タンパク質、HTLV tax、単純ヘル
ペスウイルス糖タンパク質(例えば、gB、gC、gD、及びgE)又はB型肝炎表面抗原、C型肝炎
ウイルスEタンパク質又はコロナウイルススパイクタンパク質である。一実施態様におい
て、該ウイルス抗原はHIV抗原ではない。
【0160】
他の実施態様において、該異種ORFは、細菌抗原(例えば、細菌外被タンパク質)をコー
ドする。他の実施態様において、該異種ORFは、寄生生物抗原(例えば、原生動物抗原)を
コードする。さらに他の実施態様において、異種ヌクレオチド配列は菌類抗原をコードす
る。
【0161】
細菌抗原の非限定的な例としては、アクアスピリラム科、アゾスピリラム科、アゾトバ
クター科、バクテロイデス科、バルトネラ属、ブデロビブリオ科、カンピロバクター属、
クラミジア属(例えば、クラミジア肺炎菌)、クロストリジウム属、腸内細菌科(例えば、
シトロバクター属、エドワジエラ属、エンテロバクター・エロゲネス、エンヴィニア属、
大腸菌、ハフニア属、クレブシエラ属、モルガネラ属、プロテウス・ブルガリス、プロビ
デンシア属、サルモネラ属、霊菌、及びフレキシネル赤痢菌)、ガードネレラ科、インフ
ルエンザ菌、ハロバクテリウム科、ヘリコバクター科、レジオネラ科、リステリア属、メ
チロコッカス科、マイコバクテリア(例えば、結核菌)、ナイセリア科、海洋らせん菌科、
パスツレラ科、肺炎球菌属、シュードモナス属、リゾビウム科、スピリラム科、スピロソ
ーマ科、ブドウ球菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び化膿性ブドウ球菌)、連
鎖球菌(例えば、ストレプトコッカス・エンテリティディス、連鎖球菌科、及び肺炎連鎖
球菌)、バンピロビブル・ヘリコバクター科、エルシニア科、炭疽菌及びバンピロビブリ
オ科の細菌からの抗原が挙げられる。
【0162】
寄生生物抗原の非限定的な例としては、アメーバ、マラリア寄生生物、プラスモジウム
属、クルーズトリパノソーマのような寄生生物からの抗原が挙げられる。菌類抗原の非限
定的な例としては、ユミケカビ属(例えば、アブシジア・コリムビフェラ及びアブシジア
・ラモサ)、アスペルギルス属、(例えば、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・
フミガタス、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・ニガー、及びアスペルギ
ルス・テレウス)、バシジオボラス・ラナラム、ブラストミセス・デルマティティディス
、カンジダ属(例えば、鵞口瘡カンジダ、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・ケーン、カ
ンジダ・クルセイ、カンジダ・パラプローシス、カンジダ・プソイドトロピカリス、カン
ジダ・クイレモンディイ、カンジダ・ルゴサ、カンジダ・ステラトイデア、及びカンジダ
・トロピカリス)、コクシジオイデス・イミチス、コニディオボラス属、クリプトコッカ
ス・ネオフォルムス、クスダマカビ属、皮膚糸状菌、ヒストプラズマ・カプスラーツム、
ミクロスポルムギプセウム、ムコール・プシルス、南アメリカ分芽菌、シュードアレシェ
リア・ボイディイ、リノスポリジウム・セーベリ、ニューモシスチス・カリニ、クモノス
カビ属(例えば、リゾプス・アリズス、リゾプス・オリーゼ、及びリゾプス・ミクロスポ
ラス)、サッカロミケス属、スポロトリックス・シェンキイ、接合菌、及び接合菌類、子
嚢菌類、担子菌類、不完全菌類、及び卵菌類のような綱の菌類からの抗原が挙げられる。
【0163】
いくつかの実施態様において、異種ORFは、腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原をコードする。
いくつかの実施態様において、該腫瘍抗原又は腫瘍関連抗原としては、急性リンパ芽球性
白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、小児副腎皮質癌、エイズ関連癌、カポジ肉腫、
肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫瘍/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、
肝外(胆管細胞癌)、膀胱癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳癌、脳腫
瘍、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫/悪性神経膠腫脳腫瘍、上衣腫、髄芽腫、テント上原
始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、
バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、カルチノイド胃腸腫瘍、原発不明癌、中枢神経
系リンパ腫、原発性、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫/悪性神経膠腫脳腫瘍、子宮頸癌、
小児癌、慢性気管支炎、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、
結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、繊維形成性小円形細胞腫瘍、肺気腫、子宮内膜癌、上衣腫
、食道癌、ユーイングファミリー腫瘍におけるユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺
外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃(胃)癌、カルチノ
イド胃腸腫瘍、消化管間質腫瘍、胚細胞腫瘍:頭蓋外、性腺外、又は卵巣妊娠性絨毛腫瘍
、脳幹神経膠腫、神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児視経路及び視床下部、胃カルチノ
イド、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、
下咽頭癌、視床下部及び視経路膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、カポジ肉
腫、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、急性リンパ性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、急
性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、
肝臓癌(原発性)、肺癌、非小細胞、小細胞、エイズ関連リンパ腫、バーキットリンパ腫
、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、原発中枢神
経系、マクログロブリン血症、ワルデンストレーム、男性の乳癌、骨/骨肉腫の悪性線維
性組織球腫、髄芽腫、黒色腫、眼内眼、メルケル細胞癌、中皮腫、成人悪性、中皮腫、原
発不明転移性扁平上皮頸部癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細
胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、
慢性、骨髄性白血病、成人急性、骨髄性白血病、小児急性、骨髄腫、多発性(骨髄の癌)
、骨髄増殖性疾患、慢性、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、
乏突起神経膠腫、口腔癌、口腔咽頭、骨肉腫/骨悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵
巣癌(間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵島細胞、副鼻腔及
び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体神経膠腫、松果体胚細胞腫
、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨
髄腫、胸膜胚芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)
、腎盂及び尿管、移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、小児、唾液腺癌、肉腫、ユー
イングファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌
(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁
平上皮癌-皮膚癌(非黒色腫)参照、原発不明扁平上皮頸部癌、転移性、胃癌、テント上原
始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、皮膚-菌状息肉腫及びセザリー症候群参照、精巣
癌、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の小児移行上皮癌、妊娠性絨毛
腫瘍、原発不明、成人の原発部位不明の癌、小児、尿管及び腎盂癌、移行上皮癌、尿道癌
、子宮癌、子宮内膜子宮肉腫、気管支腫瘍、中枢神経系胎児性腫瘍;小児脊索腫、大腸癌
、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、ランゲルハンス細胞組織球症、急性リンパ芽球性白血病、急性
骨髄性白血病(成人/小児)、小細胞肺癌、髄上皮腫、口腔癌、乳頭腫症、中間分化の松果
体実質腫瘍、下垂体腫瘍、第15染色体上のNUT遺伝子が関与する気道癌、脊髄腫瘍、胸腺
腫、甲状腺癌、膣癌;外陰癌、及びウィルムス腫瘍を含む腫瘍関連疾患からの抗原が挙げ
られる。
【0164】
腫瘍又は腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、アディポフィリン、AIM-2、ALDH1A1、
BCLX (L)、BING-4、CALCA、CD45、CPSF、サイクリンD1、DKK1、ENAH (hMena)、EpCAM、Ep
hA3、EZH2、FGF5、グリピカン-3、G250 /MN/CAIX、HER-2/neu、IDO1、IGF2B3、IL13Rα2
、腸カルボキシルエステラーゼ、α-フェトプロテイン、カリクレイン4、KIF20A、レング
シン(Lengsin)、M-CSF、MCSP、mdm-2、モロエ(Meloe)、MMP-2、MMP-7、MUC1、MUC5AC、p5
3、PAX5、PBF、PRAME、PSMA、RAGE-1、RGS5、RhoC、RNF43、RU2AS、セセルニン(secernin
)1、SOX10、STEAP1、サバイビン(survivinn)、テロメラーゼ、VEGF、又はWT1、EGF-R、CE
A、CD52、gp100タンパク質、MELANA/MART1、NY-ESO-1、p53 MAGE1、MAGE3及びCDK4、α-
アクチニン-4、ARTC1、BCR-ABL融合タンパク質(b3a2)、B-RAF、CASP-5、CASP-8、β-カテ
ニン、Cdc27、CDK4、CDKN2A、CLPP、COA-1、dek-can融合タンパク質、EFTUD2、伸長因子2
、ETV6-AML1融合タンパク質、FLT3-ITD、FN1、GPNMB、LDLR-フコシルトランスフェラーゼ
AS融合タンパク質、NFYC、OGT、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PRDX5、PTPRK、K-ras
、N-ras、RBAF600、SIRT2、SNRPD1、SYT-SSX1又は-SSX2融合タンパク質、TGF-βRII、ト
リオースリン酸イソメラーゼ、レングシン(Lengsin)、M-CSF、MCSP、又はmdm-2が挙げら
れる。
【0165】
いくつかの実施態様において、該異種ORFは呼吸器病原体抗原をコードする。具体的な
実施態様において、該呼吸器病原体は、RSV、コロナウイルス、ヒトメタニューモウイル
ス、パラインフルエンザウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、アデノウイルス、
ライノウイルス、又はPRRSVのようなウイルスである。呼吸器ウイルス抗原の非限定的な
例としては、RSウイルスF、G及びM2タンパク質、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群
(SARS)、HuCoV)スパイクタンパク質(S)、ヒトメタニューモウイルス融合タンパク質、
パラインフルエンザウイルス融合タンパク質及び赤血球凝集素タンパク質(F、HN)、ヘン
ドラウイルス (HeV)及びニパウイルス(NiV)付着糖タンパク質(G及びF)、アデノウイルス
キャプシドタンパク質、ライノウイルスタンパク質、及びPRRSV野生型又は改変GP5及びM
タンパク質が挙げられる。
【0166】
具体的な実施態様において、該呼吸器病原体は、炭疽菌、結核菌、百日咳菌、肺炎連鎖
球菌、ペスト菌、黄色ブドウ球菌、野兎病菌、レジオネラ・ニューモフィラ、クラミジア
肺炎菌、緑膿菌、髄膜炎菌、及びインフルエンザ菌のような細菌である。呼吸器細菌抗原
の非限定的な例としては、炭疽菌防御抗原PA、結核菌マイコバクテリア抗原85A及びヒー
トショックタンパク質(Hsp65)、百日咳菌百日咳トキソイド(PT)及び線維状赤血球凝集素(
FHA)、肺炎球菌ソルターゼA及び表面アドヘシンA(PsaA)、ペスト菌F1及びVサブユニット
、及び黄色ブドウ球菌、野兎病菌、レジオネラ・ニューモフィラ、クラミジア肺炎菌、緑
膿菌、髄膜炎菌、及びインフルエンザ菌からのタンパク質が挙げられる。
【0167】
いくつかの実施態様において、該異種ORFはT細胞エピトープをコードする。他の実施態
様において、該異種ORFは、サイトカイン又は成長因子をコードする。
【0168】
他の実施態様において、該異種ORFは、自己免疫疾患において発現される抗原をコード
する。より具体的な実施態様において、該自己免疫疾患は、I型糖尿病、多発性硬化症、
関節リウマチ、エリテマトーデス、及び乾癬であり得る。自己免疫疾患抗原の非限定的な
例としては、Ro60、dsDNA、又はRNPが挙げられる。
【0169】
他の実施態様において、ORFは、アレルギー性疾患において発現される抗原をコードす
る。より具体的な実施態様において、該アレルギー性疾患は、季節性及び通年性鼻結膜炎
、 喘息、及び湿疹を含み得るが、これらに限定されない。アレルギー抗原の非限定的な
例としては、Bet v 1及びFel d 1が挙げられる。
【0170】
他の実施態様において、ピチンデウイルスゲノムセグメント、ピチンデウイルス粒子又
は三セグメントピチンデウイルス粒子は、レポータータンパク質をさらに含む。該レポー
タータンパク質は、本明細書に記載される抗原と同時に発現させることができる。理想的
には、発現は、通常光又は他の波長の光で見える。ある実施態様において、レポータータ
ンパク質によって生み出される効果の強度は、ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピ
チンデウイルス粒子を直接測定及び監視するために使用することができる。
【0171】
レポーター遺伝子は、当業者によって容易に認識されるであろう。ある実施態様におい
て、該ピチンデウイルス粒子は蛍光タンパク質である。他の実施態様において、該レポー
ター遺伝子はGFPである。GFPは、紫外線又は青などに曝される場合、明るい緑色光を発す
る。
【0172】
レポータータンパク質の非限定的な例としては、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェ
ニコールアセチルトランスフェラーゼ、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ルシフ
ェラーゼ又はRFPのような、しかしそれらだけではない、種々の酵素が挙げられる。
【0173】
ある実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該
ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、ワクチン接種のため
のベクターとしての使用のために望ましい特性を有する(例えば、第4.6節を参照されたい
)。別の実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該
ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、宿主(例えば、マウ
ス、ウサギ、ヤギ、ロバ、ヒト)において免疫応答を誘導することができる。他の実施態
様において、本明細書に記載される異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメ
ント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、自然免疫応
答を誘導する。他の実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセ
グメント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、適応免
疫応答を誘導する。より具体的な実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイ
ルスゲノムセグメント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒
子は、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方。
【0174】
別の実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該
ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、T細胞応答を誘導す
る。さらにより具体的な実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノ
ムセグメント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、CD
8+T細胞応答を誘導する。他の実施態様において、外来の対象の遺伝子を担持するピチン
デウイルス粒子は、高頻度及び高機能性の強力なCD8+T細胞応答を誘導する。他の実施態
様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現する該ピチンデウイル
スゲノムセグメント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子
は、相当する外来の対象の遺伝子の1つ又は複数のエピトープに対して特異的なCD8+T細胞
を誘導する。
【0175】
ある実施態様において、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該
ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、Tヘルパー1の分化、
CD4+T細胞のメモリー形成を誘導することができ、及び/又は耐久性のある抗体応答を誘発
することができる。これらの抗体は、腫瘍細胞に対して中和し、オプソニン化し、毒性で
あることができ、又は他の好都合な生物学的特徴を有することができる。他の実施態様に
おいて、異種ORFを発現する該ピチンデウイルスゲノムセグメント、該ピチンデウイルス
粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子は、樹状細胞に対する強いトロピズムを有
し、感染に際してそれらを活性化する。このことは、抗原提示細胞による抗原の提示を増
強する。
【0176】
ある実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現する該ピ
チンデウイルスゲノムセグメント、該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデ
ウイルス粒子は、ピチンデウイルスに対する低い又は検出不能な中和抗体力価と、それぞ
れの外来導入遺伝子に対する高い保護中和抗体応答とを誘導する。いくつかの実施態様に
おいて、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現する粒子又は三セグメント
ピチンデウイルス粒子を形成するピチンデウイルス骨格は、ピチンデウイルス骨格成分に
対する免疫の誘導について低い能力を有する。
【0177】
4.4 ピチンデウイルス粒子及び三セグメントピチンデウイルス粒子の作製
一般に、ピチンデウイルス粒子は、別のアレナウイルスであるLCMVについて記載された
標準逆遺伝学技術によって組換えにより生成することができる(Flatz らの文献、 2006,
Proc Natl Acad Sci USA 103:4663-4668; Sanchez らの文献、 2006, Virology 350:3
70; Ortiz-Riano らの文献、 2013, J Gen Virol. 94:1175-88を参照されたい。それ
らは参照により本明細書に取り込まれる)。本明細書に提供されるピチンデウイルス粒子
を作製するために、これらの技術は以下に記載されるように適用することができる。ウイ
ルスのゲノムは、それぞれ第4.1節及び第4.2節に記載されるように改変することができる
【0178】
4.4.1 非天然位置オープンリーディングフレーム
ウイルスORFをそのORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作されているゲノム
セグメントを含むピチンデウイルス粒子の作製は、当業者に公知の任意の逆遺伝学技術に
よって、組換えにより生成することができる。
【0179】
(i)感染性複製可能ピチンデウイルス粒子
ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子を作製する方法は、(i)第1のピチンデウ
イルスゲノムセグメントのcDNAを宿主細胞にトランスフェクトすること;(ii)第2のピチ
ンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを宿主細胞にトランスフェクトすること;(iii)ピ
チンデウイルスの最小限のトランス作用因子NP及びLを発現するプラスミドを宿主細胞に
トランスフェクトすること;(iv)ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持するこ
と;及び(v)ピチンデウイルス粒子を収集することを含む。あるより具体的な実施態様にお
いて、該cDNAはプラスミドに含まれている。
【0180】
cDNAから作製すると、ピチンデウイルス粒子(すなわち、感染性で、複製可能)は増やす
ことができる。ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は、本明細書に記載され
るウイルスの使用を可能にする力価まで、ウイルスが増殖するのを可能にする任意の宿主
細胞で増やすことができる。一実施態様において、該宿主細胞は、相当する野生型につい
て決定される力価に匹敵する力価まで、ピチンデウイルス粒子が増殖するのを可能にする
【0181】
ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は、宿主細胞で増やしてよい。使用す
ることができる宿主細胞の具体例としては、BHK-21、HEK 293、VERO又はその他が挙げら
れる。具体的な実施態様において、該ピチンデウイルス粒子は、細胞株で増やしてよい。
【0182】
ある実施態様において、該宿主細胞は、培養で維持され、1以上のプラスミド(複数可)
をトランスフェクトされる。該プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞における発現に好適
な、例えばポリメラーゼIのプロモーター及びターミネーターからなる1以上の発現カセッ
トの制御下で作製されるピチンデウイルスゲノムセグメント(複数可)を発現する。
【0183】
ピチンデウイルス粒子の作製に使用することができるプラスミドは、i)Sゲノムセグメ
ント、例えば、pol-I Sをコードするプラスミド、ii)Lゲノムセグメント、例えば、pol-I
Lをコードするプラスミドを含むことができる。ある実施態様において、ウイルスのL及
びSセグメントの細胞内合成を導くピチンデウイルスポリメラーゼをコードするプラスミ
ドは、トランスフェクション混合物に組み込むことができる。例えば、Lタンパク質をコ
ードするプラスミド及び/又はNPをコードするプラスミド(それぞれpC-L及びpC-NP)は存在
することができる。Lタンパク質及びNPは、ウイルスRNAの転写及び複製に必要な最小限の
トランス作用因子である。或いは、NP及びLタンパク質と一緒の、ウイルスのL及びSセグ
メントの細胞内合成は、それぞれ、両側から2つの別々のプラスミドのL及びSセグメント
のcDNAへ読むpol-I及びpol-IIプロモーターを有する発現カセットを使用して行うことが
できる。
【0184】
ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントは、プロモーターの制御
下にある。通常、RNAポリメラーゼI駆動性発現カセット、RNAポリメラーゼII駆動性カセ
ット又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ駆動性カセットを使用することができる
。ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントをコードするプラスミド
(複数可)は同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は、1個のプラス
ミドからプロモーターによって転写することができる。プロモーターの具体例としては、
RNAポリメラーゼIプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター、RNAポリメラーゼIII
プロモーター、T7プロモーター、SP6プロモーター又はT3プロモーターが挙げられる。
【0185】
さらに、該プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞での遺伝子発現に好適な発現カセット
、例えば、上記のようなポリメラーゼII発現カセットの制御下にある哺乳動物選択マーカ
ー、例えば、ピューロマイシン耐性を特徴とすることができるか、又はウイルス遺伝子転
写物(複数可)の後ろに、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位などの内部リボソー
ム進入部位があり、その後ろに、哺乳動物耐性マーカーがある。大腸菌内での生成のため
に、該プラスミドはさらに、アンピシリン耐性カセットなどの細菌選択マーカーを特徴と
する。
【0186】
プラスミド(複数可)での宿主細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム、リポ
ソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの一般的に使用される戦略の
いずれかを使用して行うことができる。数日後、適切な選択薬剤、例えば、ピューロマイ
シンを漸増濃度で添加する。生存クローンを単離し、標準的な手順に従ってサブクローニ
ングし、対象となるウイルスタンパク質(複数可)に対する抗体とともにウェスタンブロッ
ト法又はフローサイトメトリー法を使用して高発現クローンを同定する。
【0187】
本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子の回収のために、以下の手順が想定される
。第1日目:上記のように、通常、M6ウェルプレート中で80%コンフルエントの細胞に、
プラスミドの混合物をトランスフェクトする。このために、リン酸カルシウム、リポソー
ムベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの任意の一般的に使用される戦略
を利用することができる。
【0188】
3~5日後:培養上清(ピチンデウイルスベクター調製物)を収集し、分注し、使用前にピ
チンデウイルスベクターが保存されるべき長さに応じて、4℃、-20℃、又は-80℃で保存
する。該ピチンデウイルスベクター調製物の感染力価を、イムノフォーカスアッセイによ
り評価する。或いは、トランスフェクトした細胞及び上清を、トランスフェクション後3
~5日目に大きな容器(例えば、T75組織培養フラスコ)で継代することができ、培養上清を
継代後5日までに収集する。
【0189】
本願はさらに、ゲノムセグメントをコードするプラスミドが、異種ORFを組み込むよう
に改変される異種ORFの発現に関する。該異種ORFは、制限酵素を使用してプラスミドに組
み込むことができる。
【0190】
(ii)感染性複製欠損ピチンデウイルス粒子
感染性複製欠損ピチンデウイルス粒子は、上記のようにレスキューすることができる。
しかし、cDNAから作製されると、本明細書に提供される感染性複製欠損ピチンデウイルス
は、相補細胞で増殖させることができる。相補細胞は、そのゲノムの改変により、複製欠
損ピチンデウイルスから排除された機能性を提供する細胞である(例えば、GPタンパク質
をコードするORFが欠失しているか又は機能的に不活化されている場合、相補細胞がGPタ
ンパク質を提供する)。
【0191】
ピチンデウイルスベクター中のORFのうちの1以上が除去されているか又は機能的に不活
化されている(ここでは、糖タンパク質GPの欠失を例に取る)ため、ピチンデウイルスベク
ターを、欠失したウイルス遺伝子(複数可)、例えば、本例では、GPをトランスに提供する
細胞で作製し、増やすことができる。以後、C細胞と呼ぶそのような相補細胞株は、BHK-2
1、HEK 293、VERO、又はその他などの細胞株に、対象となるウイルス遺伝子(複数可)の発
現のための1以上のプラスミド(複数可)(C-プラスミドと呼ばれる相補性プラスミド)をト
ランスフェクトすることにより作製される。C-プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞での
発現に好適な1以上の発現カセット、例えば、ポリアデニル化シグナルを有するEF1αプロ
モーターなどの哺乳動物ポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、作製されるピチンデウ
イルスベクターで欠失しているウイルス遺伝子(複数可)を発現する。さらに、相補性プラ
スミドは、哺乳動物細胞での遺伝子発現に好適な発現カセット、例えば、上記のようなポ
リメラーゼII発現カセットの制御下にある、哺乳動物選択マーカー、例えば、ピューロマ
イシン耐性を特徴とするか、又はウイルス遺伝子転写物(複数可)の後ろに、脳心筋炎ウイ
ルスの内部リボソーム進入部位などの内部リボソーム進入部位があり、その後ろに、哺乳
動物耐性マーカーがある。大腸菌内での生成のために、該プラスミドはさらに、アンピシ
リン耐性カセットなどの細菌選択マーカーを特徴とする。
【0192】
使用することができる細胞、例えば、BHK-21、HEK 293、MC57G又はその他を、培養下で
保持し、リン酸カルシウム、リポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーション
などの一般に使用される戦略のいずれかを使用して、相補性プラスミド(複数可)をトラン
スフェクトする。数日後、好適な選択薬剤、例えば、ピューロマイシンを漸増濃度で添加
する。生存しているクローンを単離し、標準的な手順に従ってサブクローニングし、対象
となるウイルスタンパク質(複数可)に対する抗体とともにウェスタンブロット法又はフロ
ーサイトメトリー法を使用して高発現C細胞クローンを同定する。安定にトランスフェク
トされたC細胞の使用の代替法として、正常細胞の一過性トランスフェクションは、C細胞
を使用する以下の工程の各々において、失われたウイルス遺伝子(複数可)を補足すること
ができる。さらに、ヘルパーウイルスを使用して、失われた機能性をトランスに提供する
ことができる。
【0193】
プラスミドは、2つのタイプのもの:i)ピチンデウイルスの最小限のトランス作用因子
をC細胞で細胞内発現させるためのTF-プラスミドと呼ばれる2つのプラスミド、例えば、
本例でのピチンデウイルスのNP及びLタンパク質に由来するもの;及びii)ピチンデウイル
スベクターゲノムセグメント、例えば、設計された改変を有するセグメントをC細胞で細
胞内発現させるためのGS-プラスミドと呼ばれるプラスミドであり得る。TF-プラスミドは
、それぞれのピチンデウイルスベクターのNP及びLタンパク質を、哺乳動物細胞でのタン
パク質発現に好適な発現カセット、通常、例えば、CMV又はEF1αプロモーターなどの哺乳
動物ポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、これらのうちのどちらか一方をポリアデニ
ル化シグナルと優先的に組み合わせて発現する。GS-プラスミドは、該ベクターの小さい(
S)ゲノムセグメント及び大きい(L)ゲノムセグメントを発現する。通常、ポリメラーゼI駆
動性発現カセット又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ(T7-)駆動性発現カセットを
使用することができ、後者は、一次転写物のプロセシングのための3'末端リボザイムを優
先的に伴い、正確な末端を生じさせる。T7ベースのシステムを使用する場合、C細胞でのT
7の発現が、TF-プラスミドと類似した形で構築され、T7を提供するさらなる発現プラスミ
ドをリカバリープロセスに含めることによってもたらされなければならないか、又はC細
胞が、安定な様式でT7をさらに発現するように構築される。ある実施態様において、TFプ
ラスミドとGSプラスミドは同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は
、T7、polI、及びpolIIプロモーターによって1つのプラスミドから転写され得る。
【0194】
該ピチンデウイルスベクターの回収のために、以下の手順を使用することができる。第
1日目:M6ウェルプレートで通常80%コンフルエントのC細胞に、2つのTF-プラスミドと2
つのGS-プラスミドの混合物をトランスフェクトする。ある実施態様において、TF及びGS
プラスミドは同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は、T7、polI、
及びpolIIプロモーターによって1つのプラスミドから転写され得る。このために、リン酸
カルシウム、リポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの一般に使
用される戦略のいずれかを利用することができる。
【0195】
3~5日後:培養上清(ピチンデウイルスベクター調製物)を収集し、分注し、使用前にピ
チンデウイルスベクターが保存されるべき長さに応じて、4℃、-20℃、又は-80℃で保存
する。その後、該ピチンデウイルスベクター調製物の感染力価をC細胞に対するイムノフ
ォーカスアッセイにより評価する。或いは、トランスフェクトした細胞及び上清を、トラ
ンスフェクション後3~5日目に大きな容器(例えば、T75組織培養フラスコ)に継代し、培
養上清を継代後5日までに収集してもよい。
【0196】
本発明は、さらに、抗原を発現する感染性複製欠損ピチンデウイルスが感染した細胞培
養物における抗原の発現に関する。培養細胞における抗原の発現に使用する場合、以下の
2つの手順を使用することができる:
【0197】
i)対象となる細胞型に、本明細書に記載されるピチンデウイルスベクター調製物を、1
以上、例えば、2、3、又は4の感染多重度(MOI)で感染させると、感染後短時間で既に全て
の細胞で抗原が生成される。
【0198】
ii)或いは、より低いMOIを使用することができ、個々の細胞クローンをそのウイルス駆
動性抗原発現レベルについて選択することができる。その後、ピチンデウイルスベクター
の細胞非溶解性のために、個々のクローンを無限に増やすことができる。その手法に関係
なく、その後、抗原を、生成される抗原の特性に応じて、培養上清又は細胞自体のどちら
かから回収(及び精製)することができる。しかし、本発明は、これら2つの戦略に限定さ
れるものではなく、感染性複製欠損ピチンデウイルスをベクターとして使用して抗原の発
現を駆動する他の方法を考慮してよい。
【0199】
4.4.2 三セグメントピチンデウイルス粒子の作製
引用により本明細書中に組み込まれる、例えば、Emonetらの文献、 2008, PNAS, 106(9
):3473-3478; Popkinらの文献、 2011, J. Virol., 85 (15):7928-7932;Dhanwaniら
の文献、2015,Journal of Virology, doi:10.1128/JVI.02705-15により記載されるように
、三セグメントピチンデウイルス粒子は、当技術分野で公知の逆遺伝学的技術により組換
えによって生成することができる。本明細書に提供される三セグメントピチンデウイルス
粒子の作製は、第4.2節に記載されているとおりに改変することができる。
【0200】
(i)感染性複製可能三セグメントピチンデウイルス粒子
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子を作製する方法は、(i)1
つのLセグメント及び2つのSセグメント又は2つのLセグメント及び1つのSセグメントのcDN
Aを宿主細胞にトランスフェクトすること;(ii)該ピチンデウイルスの最小限のトランス
作用因子のNP及びLを発現するプラスミドを宿主細胞にトランスフェクトすること;(iii)
ウイルス形成に好適な条件下で該宿主細胞を維持すること;並びに(iv)ピチンデウイルス
粒子を収集することを含む。
【0201】
cDNAから作製すると、該三セグメントピチンデウイルス粒子(すなわち、感染性で、複
製可能)は増殖させることができる。ある実施態様において、三セグメントピチンデウイ
ルス粒子は、本明細書に記載されるとおりに、ウイルスの使用を可能にする力価まで、ウ
イルスが増殖するのを可能にする任意の宿主細胞で増殖させることができる。一実施態様
において、該宿主細胞は、対応する野生型について決定される力価に匹敵する力価まで、
三セグメントピチンデウイルス粒子が増殖するのを可能にする。
【0202】
ある実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、宿主細胞で増殖させ
てよい。使用することができる宿主細胞の具体例としては、BHK-21、HEK 293、又はその
他を含む。具体的な実施態様において、該三セグメントピチンデウイルス粒子は、細胞株
で増殖させてよい。
【0203】
ある実施態様において、該宿主細胞は、培養で維持され、1以上のプラスミド(複数可)
をトランスフェクトされる。該プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞における発現に好適
な、例えば、ポリメラーゼIのプロモーター及びターミネーターからなる1以上の発現カセ
ットの制御下で、作製されるピチンデウイルスゲノムセグメント(複数可)を発現する。
【0204】
具体的な実施態様において、該宿主細胞は、培養で維持され、1以上のプラスミド(複数
可)をトランスフェクトされる。該プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞における発現に
好適な、例えば、ポリメラーゼIのプロモーター及びターミネーターからなる1以上の発現
カセットの制御下で、作製されるウイルス遺伝子(複数可)を発現する。
【0205】
1つのLセグメント及び2つのSセグメントを含む三セグメントピチンデウイルスの作製に
使用することができるプラスミドは、i)Sゲノムセグメント、例えばpol-I-PIC-Sを、それ
ぞれコードする2つのプラスミド、ii)Lゲノムセグメント、例えばpol-I-PIC-Lをコードす
るプラスミドを含むことができる。2つのLセグメント及び1つのSセグメントを含む三セグ
メントピチンデウイルスに必要なプラスミドは、i)Lゲノムセグメント、例えばpol-I-PIC
-Lを、それぞれコードする2つのプラスミド、ii)Sゲノムセグメント、例えばpol-I-PIC-S
をコードするプラスミドである。
【0206】
ある実施態様において、ウイルスL及びSセグメントの細胞内合成を導くピチンデウイル
スポリメラーゼをコードするプラスミドを、トランスフェクション混合物に組み込むこと
ができる。例えば、Lタンパク質をコードするプラスミド及びNPをコードするプラスミド(
それぞれpC-PIC-L及びpC-PIC-NP)。Lタンパク質及びNPは、ウイルスRNAの転写及び複製に
必要な最小限のトランス作用因子である。或いは、NP及びLタンパク質と一緒の、ウイル
スのL及びSセグメントの細胞内合成は、それぞれ、両側から2つの別々のプラスミドのL及
びSセグメントのcDNAへ読むpol-I及びpol-IIプロモーターを有する発現カセットを使用し
て行うことができる。
【0207】
さらに、該プラスミド(複数可)は、哺乳動物細胞における遺伝子発現に好適な発現カセ
ット、例えば、上記のポリメラーゼII発現カセットの制御下の、哺乳動物選択マーカー、
例えば、ピューロマイシン耐性を特徴とするか、又はウイルス遺伝子転写物(複数可)の後
ろに、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位などの内部リボソーム進入部位があり
、その後ろに、哺乳動物耐性マーカーがある。大腸菌内での生成のために、該プラスミド
はさらに、アンピシリン耐性カセットなどの細菌選択マーカーを特徴とする。
【0208】
プラスミド(複数可)でのBHK-21細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム、リ
ポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの一般に使用される戦略の
いずれかを使用して行うことができる。数日後、好適な選択薬剤、例えば、ピューロマイ
シンを漸増濃度で添加する。生存しているクローンを単離し、標準的な手順に従ってサブ
クローニングし、対象となるウイルスタンパク質(複数可)に対する抗体とともにウェスタ
ンブロット法又はフローサイトメトリー法を使用して高発現クローンを同定する。
【0209】
通常、RNAポリメラーゼI駆動性発現カセット、RNAポリメラーゼII駆動性カセット又はT
7バクテリオファージRNAポリメラーゼ駆動性カセットを使用することができ、後者は、一
次転写物のプロセシングのための3'末端リボザイムを優先的に伴い、正確な末端を生じさ
せる。ある実施態様において、該ピチンデウイルスゲノムセグメントをコードするプラス
ミドは同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は、T7、polI、及びpo
lIIプロモーターによって1つのプラスミドから転写され得る。
【0210】
該ピチンデウイルス、該三セグメントピチンデウイルスベクターの回収のために、以下
の手順が想定される。第1日目:上記のように、M6ウェルプレートで通常80%コンフルエ
ントの細胞に、プラスミドの混合物をトランスフェクトする。このために、リン酸カルシ
ウム、リポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの一般に使用され
る戦略のいずれかを利用することができる。
【0211】
3~5日後:培養上清(ピチンデウイルスベクター調製物)を収集し、分注し、使用前にピ
チンデウイルスベクターが保存されるべき長さに応じて、4℃、-20℃、又は-80℃で保存
する。該ピチンデウイルスベクター調製物の感染力価をイムノフォーカスアッセイにより
評価する。或いは、トランスフェクション後3~5日目に、トランスフェクトした細胞及び
上清をより大きな容器(例えば、T75組織培養フラスコ)に継代し、継代後5日までに培養上
清を収集してもよい。
【0212】
本願は、異種ORF及び/又は対象の遺伝子の発現であって、該ゲノムセグメントをコード
するプラスミドが、異種ORF及び/又は対象の遺伝子を取り込むように改変されているもの
にさらに関する。該異種ORF及び/又は対象の遺伝子は、制限酵素を使用して該プラスミド
中に取り込ませることができる。
【0213】
(ii)感染性複製欠損三セグメントピチンデウイルス粒子
感染性複製欠損三セグメントピチンデウイルス粒子を、上記のようにレスキューするこ
とができる。しかし、cDNAから作製されると、本明細書に提供される感染性複製欠損ピチ
ンデウイルスは、相補細胞で増殖させることができる。相補細胞は、そのゲノムの改変に
より、複製欠損ピチンデウイルスから排除された機能性を提供する細胞である(例えば、G
Pタンパク質をコードするORFが欠失しているか又は機能的に不活化されている場合、相補
細胞がGPタンパク質を提供する)。
【0214】
ピチンデウイルスベクターにおける1以上の該ORFの除去又は機能的不活化(ここでは糖
タンパク質GPを例に取る)のために、ピチンデウイルスベクターは、欠失したウイルス遺
伝子(複数可)、例えば、本例ではGPをトランスに提供する細胞で作製し、増やすことがで
きる。以後、C細胞と呼ぶそのような相補細胞株は、BHK-21、HEK 293、VERO、又はその他
などの哺乳動物細胞株(ここでは、BHK-21を例に取る)に、対象となるウイルス遺伝子(複
数可)の発現のための1以上のプラスミド遺伝子(複数可)(C-プラスミドと呼ばれる相補性
プラスミド)をトランスフェクトすることにより作製される。C-プラスミド(複数可)は、
哺乳動物細胞での発現に好適な1以上の発現カセット、例えば、ポリアデニル化シグナル
を有するCMV又はEF1αプロモーターなどの哺乳動物ポリメラーゼIIプロモーターの制御下
で、作製されるピチンデウイルスベクターで欠失しているウイルス遺伝子(複数可)を発現
する。さらに、相補性プラスミドは、哺乳動物細胞での遺伝子発現に好適な発現カセット
、例えば、上記のようなポリメラーゼII発現カセットの制御下にある、哺乳動物選択マー
カー、例えば、ピューロマイシン耐性を特徴とするか、又はウイルス遺伝子転写物(複数
可)の後ろに、脳心筋炎ウイルスの内部リボソーム進入部位などの内部リボソーム進入部
位があり、その後ろに、哺乳動物耐性マーカーがある。大腸菌内での生成のために、該プ
ラスミドはさらに、アンピシリン耐性カセットなどの細菌選択マーカーを特徴とする。
【0215】
使用することができる細胞、例えば、BHK-21、HEK 293、MC57G又はその他を、培養下で
保持し、リン酸カルシウム、リポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーション
などの一般に使用される戦略のいずれかを使用して、相補性プラスミド(複数可)をトラン
スフェクトする。数日後、好適な選択薬剤、例えば、ピューロマイシンを漸増濃度で添加
する。生存しているクローンを単離し、標準的な手順に従ってサブクローニングし、対象
となるウイルスタンパク質(複数可)に対する抗体を用いたウェスタンブロット法又はフロ
ーサイトメトリー法を使用して高発現C細胞クローンを同定する。安定にトランスフェク
トされたC細胞の使用の代替法として、正常細胞の一過性トランスフェクションは、C細胞
を使用する以下の工程の各々において、失われたウイルス遺伝子(複数可)を補足すること
ができる。さらに、ヘルパーウイルスを使用して、失われた機能性をトランスに提供する
ことができる。
【0216】
2つのタイプのプラスミド:i)本例では、例えば、ピチンデウイルスのNP及びLタンパク
質に由来する、ピチンデウイルスの最小限のトランス作用因子をC細胞で細胞内発現させ
るためのTF-プラスミドと呼ばれる2つのプラスミド;並びにii)ピチンデウイルスベクタ
ーゲノムセグメント、例えば、設計された改変を有するセグメントをC細胞で細胞内発現
させるためのGS-プラスミドと呼ばれるプラスミドを使用することができる。TF-プラスミ
ドは、それぞれのピチンデウイルスベクターのNP及びLタンパク質を、哺乳動物細胞での
タンパク質発現に好適な発現カセット、通常、例えば、CMV又はEF1αプロモーターなどの
哺乳動物ポリメラーゼIIプロモーターの制御下で、これらのうちのどちらか一方をポリア
デニル化シグナルと優先的に組み合わせて発現する。GS-プラスミドは、該ベクターの小
さい(S)ゲノムセグメント及び大きい(L)ゲノムセグメントを発現する。通常、ポリメラー
ゼI駆動性発現カセット又はT7バクテリオファージRNAポリメラーゼ(T7-)駆動性発現カセ
ットを使用することができ、後者は、一次転写物のプロセシングのための3'末端リボザイ
ムを優先的に伴い、正確な末端を生じさせる。T7ベースのシステムを使用する場合、C細
胞でのT7の発現が、TF-プラスミドと類似した形で構築され、T7を提供するさらなる発現
プラスミドをリカバリープロセスに含めることによってもたらされなければならないか、
又はC細胞が、安定な様式でT7をさらに発現するように構築される。ある実施態様におい
て、TFプラスミドとGSプラスミドは同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作
用因子は、T7、polI、及びpolIIプロモーターによって1つのプラスミドから転写され得る
【0217】
該ピチンデウイルスベクターの回収のために、以下の手順を使用することができる。第
1日目:M6ウェルプレートで通常80%コンフルエントのC細胞に、2つのTF-プラスミドと2
つのGS-プラスミドの混合物をトランスフェクトする。ある実施態様において、TF及びGS
プラスミドは同じであり得、すなわち、ゲノム配列及びトランス作用因子は、T7、polI、
及びpolIIプロモーターによって1つのプラスミドから転写され得る。このために、リン酸
カルシウム、リポソームベースのプロトコル又はエレクトロポレーションなどの一般に使
用される戦略のいずれかを利用することができる。
【0218】
3~5日後:培養上清(ピチンデウイルスベクター調製物)を収集し、分注し、使用前にピ
チンデウイルスベクターが保存されるべき長さに応じて、4℃、-20℃、又は-80℃で保存
する。その後、該ピチンデウイルスベクター調製物の感染力価をC細胞に対するイムノフ
ォーカスアッセイにより評価する。或いは、トランスフェクトした細胞及び上清を、トラ
ンスフェクション後3~5日目に大きな容器(例えば、T75組織培養フラスコ)に継代し、培
養上清を継代後5日までに収集してもよい。
【0219】
本発明は、細胞培養物が抗原を発現する感染性複製欠損三セグメントピチンデウイルス
でトランスフェクトされる、細胞培養物中の抗原の発現にさらに関する。培養細胞におけ
るCMV抗原の発現に使用される場合、以下の2つの手順が使用され得る:
【0220】
i)対象となる細胞型に、本明細書に記載されるピチンデウイルスベクター調製物を、1
以上、例えば、2、3、又は4の感染多重度(MOI)で感染させると、感染後短時間で既に全て
の細胞で該抗原が生成される。
【0221】
ii)或いは、より低いMOIを使用することができ、個々の細胞クローンを、ウイルス駆動
性抗原発現レベルについて選択することができる。その後、ピチンデウイルスベクターの
細胞非溶解性のために、個々のクローンを無限に増やすことができる。その手法に関係な
く、その後、該抗原を、生成される該抗原の特性に応じて、培養上清又は細胞自体のどち
らかから回収(及び精製)することができる。しかし、本発明は、これら2つの戦略に限定
されるものではなく、感染性複製欠損ピチンデウイルスをベクターとして使用してCMV抗
原の発現を駆動する他の方法を考慮してよい。
【0222】
4.5 核酸、ベクター系及び細胞株
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、それぞれ第4.1節及び第4.2節に記
載されるピチンデウイルスゲノムセグメント又は三セグメントピチンデウイルス粒子を含
む又はそれからなるcDNAである。
【0223】
4.5.1 非天然位置オープンリーディングフレーム
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、第4.1節に記載されるピチンデウイ
ルスゲノムセグメントをコードする核酸である。より具体的な実施態様において、本明細
書に提供されるのは、表1に記載されるDNAヌクレオチド配列又はDNAヌクレオチド配列の
セットである。そのような核酸を含む宿主細胞はまた、第4.1節に提供されている。
【0224】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、ORFを該ORFの野生型位置以外
の位置に担持するように操作されたピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAであって、
該ピチンデウイルスゲノムセグメントは第4.1節に記載される異種ORFをコードする、cDNA
である。
【0225】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、ORFを該ORFの野生型位置以外の位置
に担持するように操作されたピチンデウイルスゲノムセグメントをコードするDNA発現ベ
クター系である。具体的には、本明細書に提供されるのは、1以上のベクターが、本明細
書に記載されるピチンデウイルス粒子の2つのピチンデウイルスゲノムセグメント、すな
わち、Lセグメント及びSセグメントをコードするDNA発現ベクター系である。そのような
ベクター系は、(1以上の別々のDNA分子)をコードすることができる。
【0226】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、ORFをその野生型位置以外の位置
に担持するように操作されたピチンデウイルスSセグメントのcDNAであり、DNA発現系の一
部であるか、DNA発現系に組込まれる。他の実施態様において、ORFをその野生型位置以外
の位置に担持するように操作されたピチンデウイルスLセグメントのcDNA は、DNA発現系
の一部であるか、DNA発現系に組込まれる。ある実施態様において、(i)ORFを、その野生
型位置以外の位置に担持するように操作されており;及び(ii)GP、NP、Zタンパク質、又
はLタンパク質をコードするORFが除去され、ピチンデウイルス以外の生物からの異種ORF
で置き換えられている、ピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAである。
【0227】
ある実施態様において、本明細書に提供されるcDNAは、ピチンデウイルスの特定の株に
由来することができる。ピチンデウイルスの株は、Munchique CoAn4763 単離株P18及びそ
れらの派性物、P2及びそれらの派生物を含み、又は、Trapido及び共同研究者によって記
載されたいくつかの単離株の任意のものに由来する(Trapidoらの文献、1971, Am J Trop
Med Hyg, 20: 631-641)。具体的な実施態様において、該cDNAは、ピチンデウイルスMunc
hique CoAn4763単離株P18株に由来する。
【0228】
ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子又は三セグメント
ピチンデウイルス粒子をコードするように作製されたベクターは、ピチンデウイルスの特
定の株に基づくことができる。ピチンデウイルスの株は、Munchique CoAn4763単離株P18
及びそれらの派生物、P2及びそれらの派生物を含み、又はTrapido及び共同研究者によっ
て記載されたいくつかの単離株の任意のものに由来する(Trapidoらの文献、1971, Am J T
rop Med Hyg, 20: 631-641)。ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウ
イルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、ピチンデウイルスMunchique CoAn
4763単離株P18株に基づいてもよい。ピチンデウイルス株Munchique CoAn4763単離株P18の
Sセグメントの配列は、配列番号1として掲載される。ある実施態様において、ピチンデウ
イルス株Munchique CoAn4763単離株P18のSセグメントの配列は、配列番号1に記載される
配列である。ピチンデウイルスのLセグメントの配列は配列番号2として掲載される。
【0229】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、この節の上記のcDNA又はベクター
系を含む細胞である。そのような細胞由来の細胞株、そのような細胞を含む培養物、感染
したそのような細胞を培養する方法も、本明細書に提供される。ある実施態様において、
本明細書に提供されるのは、ORFを該ORFの野生型位置以外の位置に担持するように操作さ
れているピチンデウイルスゲノムセグメントのcDNAを含む細胞である。いくつかの実施態
様において、該細胞は、Sセグメント及び/又はLセグメントを含む。
【0230】
4.5.2 三セグメントピチンデウイルス粒子
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、第4.2節に記載される三セグメント
ピチンデウイルス粒子をコードする核酸である。より具体的な実施態様において、本明細
書に提供されるのは、例えば、表2又は表3に記載されるDNAヌクレオチド配列又はDNAヌク
レオチド配列のセットである。そのような核酸を含む宿主細胞も、第4.2節に提供されて
いる。
【0231】
具体的な実施態様において、本明細書に提供されるのは、ORFを該ORFの野生型位置以外
の位置に担持するように操作されている三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAからな
るcDNAである。他の実施態様において、(i)ピチンデウイルスORFを該ORFの野生型位置
以外の位置に担持するように操作されており:(ii)該三セグメントピチンデウイルス粒
子は、第4.2節に記載される異種ORFをコードする、三セグメントピチンデウイルス粒子の
cDNAである。
【0232】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される三セグメント
ピチンデウイルス粒子を一緒にコードするDNA発現ベクター系である。具体的には、本明
細書に提供されるのは、1以上のベクターが3つのピチンデウイルスゲノムセグメント、す
なわち、本明細書に記載される三セグメントピチンデウイルス粒子の1つのLセグメント及
び2つのSセグメント又は2つのLセグメント及び1つのSセグメントをコードするDNA発現ベ
クター系である。そのようなベクター系は、(1以上の別々のDNA分子)をコードすることが
できる。
【0233】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、ORFをその野生型位置以外の位置
に担持するように操作されており、かつDNA発現系の一部であるか、DNA発現系に組込まれ
るピチンデウイルスSセグメント(複数可)のcDNAである。他の実施態様において、ORFをそ
の野生型位置以外の位置に担持するように操作されたピチンデウイルスLセグメント(複数
可)のcDNAは、DNA発現系の一部であるか、DNA発現系に組込まれる。ある実施態様におい
て、(i)その野生型位置以外の位置に担持するように操作されており;及び(ii)GP、ORF、
NP、Zタンパク質、又はLタンパク質をコードするORFが除去され、ピチンデウイルス以外
の生物からの異種ORFで置き換えられている三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAで
ある。
【0234】
ある実施態様において、本明細書に提供されるcDNAは、ピチンデウイルスの特定の株に
由来することができる。ピチンデウイルスの株は、Munchique CoAn4763 単離株P18及びそ
れらの派性物、P2及びそれらの派生物を含み、又は、Trapido及び共同研究者によって記
載されたいくつかの単離株の任意のものに由来する(Trapidoらの文献、1971, Am J Trop
Med Hyg, 20: 631-641)。具体的な実施態様において、該cDNAは、ピチンデウイルスMunc
hique CoAn4763単離株P18株に由来する。
【0235】
ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子又は三セグメント
ピチンデウイルス粒子をコードするように作製されたベクターは、ピチンデウイルスの特
定の株に基づくことができる。ピチンデウイルスの株は、Munchique CoAn4763単離株P18
及びそれらの派生物、P2及びそれらの派生物を含み、又はTrapido及び共同研究者によっ
て記載されたいくつかの単離株の任意のものに由来する(Trapidoらの文献、1971, Am J T
rop Med Hyg, 20: 631-641)。ある実施態様において、本明細書に記載されるピチンデウ
イルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、ピチンデウイルスMunchique CoAn
4763単離株P18株に基づいてもよい。ピチンデウイルス株Munchique CoAn4763単離株P18の
Sセグメントの配列は、配列番号1として掲載される。ある実施態様において、ピチンデウ
イルス株Munchique CoAn4763単離株P18のSセグメントの配列は、配列番号1に記載される
配列である。ピチンデウイルスのLセグメントの配列は配列番号2として掲載される。
【0236】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、この節の上記のcDNA又はベクター
系を含む細胞である。そのような細胞に由来する細胞株、そのような細胞を含む培養物、
及び感染したそのような細胞を培養する方法も本明細書に提供される。ある実施態様にお
いて、本明細書に提供されるのは、三セグメントピチンデウイルス粒子のcDNAを含む細胞
である。いくつかの実施態様において、該細胞は、Sセグメント及び/又はLセグメントを
含む。
【0237】
4.6 使用方法
ワクチンは、ポリオウイルスに関するもの及び麻疹などの感染症を予防及び/又は治療
するのに成功してきた。しかし、癌及び慢性感染を含む確立された慢性疾患の状況での治
療免疫は、あまり成功していない。ピチンデウイルス粒子及び/又は三セグメントピチン
デウイルス粒子を作製する能力は、新たな新規のワクチン戦略を表す。
【0238】
一実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象における感染及び/又は癌を治
療する方法であって、本明細書に提供される1以上のタイプのピチンデウイルス粒子若し
くは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物を該対象に投与することを含む、
前記方法である。具体的な実施態様において、本明細書に記載される感染及び/又は癌を
治療する方法は、本明細書に記載される治療有効量の1以上のピチンデウイルス粒子若し
くは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物を、それを必要とする対象に投与
することを含む。該対象は、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、モルモット、限定
されないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムスター、ロバなどの家
畜動物などの哺乳動物であり得る。具体的な実施態様において、該対象はヒトである。該
ヒト対象は、男性でも女性でも成人でも子供でも老人(65以上)でもよく、複数の疾患を
有する者(すなわち、多重罹患(polymorbid)対象)でもよい。ある実施態様において、
対象は、その疾患が、化学療法、放射線療法、手術、及び/又は生物薬での治療後に進行
した者である。
【0239】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、対象において感染性生物、腫瘍、
又はアレルゲンに由来する抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、感染性生物、
腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメ
ントピチンデウイルス粒子又はその組成物を該対象に投与することを含む、前記方法であ
る。
【0240】
別の実施態様において、本明細書に提供される感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由
来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子
、又はその組成物が投与される対象は、感染、癌の発症又はアレルギーを有し、それらを
起こしやすい、又はそのリスクに曝されているか、又は前癌組織病変を呈する。別の具体
的な実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又
はその組成物が投与される対象は、感染、癌、前癌組織病変、又はアレルギーに感染して
いるか、起こし易いか、そのリスクに曝されているか、又はそう診断されている。
【0241】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由
来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子
又はその組成物を投与される対象は、中でも特に肺系、中枢神経系、リンパ系、胃腸管系
、又は循環系の感染、癌、前癌組織病変、又はアレルギーに罹患しているか、罹り易いか
、又はそのリスクに曝されている。具体的な実施態様において、本明細書に記載される感
染性生物、腫瘍、又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しく
は三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物を投与される対象は、脳、肝臓、肺
、眼、耳、腸、食道、子宮、上咽頭、又は唾液腺を含むがそれらに限定されない、身体の
1以上の器官の感染、癌、又はアレルギーを患っているか、起こし易いか、又はそのリス
クに曝されている。
【0242】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌、又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又
はその組成物を投与される対象は、熱、寝汗、疲労、不調、不安、のどの痛み、腺の腫れ
、関節痛、筋肉痛、食欲不振、体重減少、下痢、胃腸潰瘍、胃腸出血、息切れ、肺炎、口
腔潰瘍、視力の問題、肝炎、黄疸、脳炎、発作、昏睡、掻痒症、紅斑、色素増加症、リン
パ節の変化、又は聴力喪失を含むがそれらに限定されない症状を罹患する対象である。
【0243】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌、又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はそ
の組成物は、感染、癌、又はアレルギーを患っているか、起こしやすいか、又はそのリス
クに曝されている任意の年齢群の対象に投与される。具体的な実施態様において、本明細
書に提供される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイル
ス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子、又はその組成物は、免疫不全の対象
、妊娠している対象、臓器若しくは骨髄移植を受けている対象、免疫抑制薬を服用してい
る対象、血液透析を受けている対象、癌を有する対象、又は感染、癌、又はアレルギーを
患っているか、起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている対象に投与される。より
具体的な実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又
はその組成物は、感染、癌、又はアレルギーを患っているか、起こしやすいか、又はその
リスクに曝されている0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、又
は17歳の子供である対象に投与される。さらに別の具体的な実施態様において、本明細書
に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス
粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、感染、癌、又はアレ
ルギーを患っているか、起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている乳児である対象
に投与される。さらに別の具体的な実施態様において、本明細書に記載される感染性生物
、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメン
トピチンデウイルス粒子又はその組成物は、感染、癌、又はアレルギーを患っているか、
起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、又は12ヶ月の乳児である対象に投与される。さらに別の具体的な実施態様において、本
明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウ
イルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、感染、癌、又
はアレルギーを患っているか、起こしやすいか、又はそのリスクに曝されている高齢対象
に投与される。より具体的な実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又
はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチ
ンデウイルス粒子又はその組成物は、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76
、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、又は90歳のシニア対象である
対象に投与される。
【0244】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、播種性感染、癌、又はアレルギーのリスクが高い対象に投与される。具体
的な実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する
抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はそ
の組成物は、新生児の、したがって未熟な免疫系を有する、新生児期の対象に投与される
【0245】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、休眠性感染、癌、又はアレルギーを有する対象に投与される。具体的な実
施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を
発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成
物は、免疫系の不全の際に再活性化し得る休眠性感染、休眠性癌、又は休眠性アレルギー
を有する対象に投与される。かくして、本明細書に提供されるのは、感染、癌、又はアレ
ルギーの再活性化を防止する方法である。
【0246】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、再発性感染、癌、又はアレルギーを有する対象に投与される。
【0247】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、感染、癌、又はアレルギーについての遺伝的素因を有する対象に投与され
る。別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又
はその組成物は、対象に投与される。別の実施態様において、感染性生物、癌又はアレル
ゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス
粒子は、リスク要因を有する対象に投与される。例示的なリスク要因としては、加齢、タ
バコ、太陽への露出、放射線被曝、化学物質曝露、家族の病歴、アルコール、貧しい食生
活、運動不足、又は太り過ぎが挙げられる。
【0248】
別の実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子の投与は、症候性感染、癌、又
はアレルギーを低減する。別の実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子の投与
は、無症候性感染、癌、又はアレルギーを低減する。
【0249】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物に由来する抗原を発現するピ
チンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、イン
フルエンザウイルス、伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス、ロタウイルス、伝染性気管支
炎ウイルス、伝染性喉頭気管炎ウイルス、トリ貧血ウイルス、マレック病ウイルス、トリ
白血病ウイルス、トリアデノウイルス、 又はトリニューモウイルス、 SARS原因ウイルス
、 ヒトRSウイルス、 ヒト免疫不全ウイルス、 A型肝炎ウイルス、 B型肝炎ウイルス、C
型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパウイルス、
ヒトパラインフルエンザ3型ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、 エボラ
ウイルス、マールブルグウイルス、ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、デング
ウイルス、ハンタウイルス、リフトバレー熱ウイルス、 ラッサ熱ウイルス、単純ヘルペ
スウイルス及び黄熱病ウイルスの1以上の株に感染した対象又は動物に投与される。
【0250】
別の実施態様において、本明細書に記載される癌に由来する抗原を発現するピチンデウ
イルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、1以上のタイ
プの癌を患う対象に投与される。他の実施態様において、本明細書に記載されるワクチン
での治療に感受性である任意のタイプの癌が、標的となり得る。より具体的な実施態様に
おいて、本明細書に記載される癌に由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しく
は三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、例えば、黒色腫、前立腺癌、乳
癌、肺癌、神経芽細胞腫、肝細胞癌、子宮頚癌、及び胃癌、バーキットリンパ腫;非ホジ
キンリンパ腫;ホジキンリンパ腫; 鼻咽頭癌(鼻の後ろののどの上部の癌)、白血病、粘
膜関連リンパ組織リンパ腫を患う対象に投与される。
【0251】
別の実施態様において、本明細書に記載されるアレルゲンに由来する抗原を発現するピ
チンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、1以上の
アレルギーを患う対象に投与される。より具体的な実施態様において、本明細書に記載さ
れるアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチン
デウイルス粒子 又はその組成物は、例えば、季節性アレルギー、通年性アレルギー、鼻
結膜炎、喘息、湿疹、食物アレルギーを患う対象に投与される。
【0252】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物の対象への投与は、感染、癌、又はアレルゲンに対する細胞媒介性免疫(CMI)
を付与する。理論に束縛されるものではないが、別の実施態様において、本明細書に記載
される感染性生物、癌、アレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若し
くは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、宿主(例えば、マクロファー
ジ、樹状細胞、又はB細胞)に感染し、主要組織適合性抗原(MHC)クラスI及びII上での
抗原の直接提示のために、宿主の抗原提示細胞(APC)において、対象となる抗原を発現
する。別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌、アレルゲンに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又
はその組成物の対象への投与は、感染、癌、又はアレルギーを治療又は防止するために、
多機能(plurifunctional) 細胞溶解性ならびにIFN-γ及びTNF-α共産生性CMV特異的CD4+
及びCD8+T細胞応答を高度に誘導する。
【0253】
別の実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物の投与は、
個体が感染、癌、アレルギーを発症するリスクを、そのような治療の非存在下で感染、癌
、アレルギーを発症するリスクと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少な
くとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約
50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又
はそれ以上低減する。
【0254】
別の実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物の投与は、
感染、癌、又はアレルギーの症状を、そのような治療の非存在下での感染、癌、アレル
ギーの症状の顕在化と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25
%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少な
くとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又はそれ以上
低減する。
【0255】
ある実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、好ましくは、複数回の注射
で(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、40
、45、又は50回の注射)又は連続注入によって(例えば、ポンプを使用して)、複数の部
位(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、又は14の部位)に投与される
。ある実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、6ヶ月の期間、12ヶ月の期
間、24ヶ月の期間、又は48ヶ月の期間にわたって、2回以上の別々の注射で投与される。
ある実施態様において、感染性生物、癌、又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、選択された日に最初の用量
を、最初の投与後の少なくとも2ヶ月の時点で第2の用量を、及び最初の投与後6ヶ月の時
点で第3の用量で投与される。
【0256】
一例において、皮膚の注射は、局所皮膚反応の程度を低減するために、複数の身体部位
に行われる。所与のワクチン接種日に、患者に、割り当てられた総用量の細胞を、1つの
シリンジから3~5回の別々の用量(例えば、少なくとも0.4 ml、0.2 ml、又は0.1 ml)の
皮内注射に分けて、それぞれを、肢において最も近くに隣接した注射部位から少なくとも
約5 cm(例えば、少なくとも4.5、5、6、7、8、又は9 cm)間隔をとった針刺入部位で与
える。その後のワクチン接種日に、該注射部位は、時計回り又は反時計回りで異なる四肢
に回転される。
【0257】
別の実施態様において、新生児の、従って未熟な免疫系を有する対象へのCMV抗原を発
現する感染性複製欠損ピチンデウイルス又はその組成物は、そのような治療の非存在下で
の感染、癌、又はアレルギーに対するCMI応答を少なくとも約10%、少なくとも約20%、
少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくと
も約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%
、又はそれ以上上回る、感染、癌、又はアレルギーに対する細胞媒介性免疫(CMI)応答を
誘導する。
【0258】
ある実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子の対象へ
の投与は、最低限でも少なくとも4週間の間、検出可能な抗体力価を誘導する。別の実施
態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発
現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子の対象への投与は、
該抗体力価を少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、
少なくとも500%、又は少なくとも1000%増大する。
【0259】
ある実施態様において、一次抗原曝露は、感染免疫ヒト対象からの平均対照血清の少な
くとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、
少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的、(中和性)及び最小抗体力価を誘発す
る。より具体的な実施態様において、免疫後少なくとも4週間以内に、該一次中和性幾何
平均抗体力価は、少なくとも1:50、少なくとも1:100、少なくとも1:200、又は少なく
とも1:1000のピーク値まで増大する。別の実施態様において、本明細書に記載される感
染性生物、癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セ
グメントピチンデウイルス粒子での免疫は、該ワクチンの単回投与の後、又は2以上の逐
次免疫の後、免疫後少なくとも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも
6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なく
とも5年の間残る、高力価の抗体を生成する。
【0260】
さらに別の実施態様において、二次抗原曝露は、少なくとも100%、少なくとも200%、
少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%抗体力価
を増大する。別の実施態様において、二次抗原曝露は、感染免疫ヒト対象からの平均対照
血清の少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なく
とも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的、(中和性)及び最小抗体力
価を誘発する。より具体的な実施態様において、免疫後少なくとも4週間以内に、該二次
中和性幾何平均抗体力価は、少なくとも1:50、少なくとも1:100、少なくとも1:200、
又は少なくとも1:1000のピーク値まで増大する。別の実施態様において、本明細書に記
載される感染性生物、癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒
子又は三セグメントピチンデウイルス粒子での二次免疫は、免疫後少なくとも4週間、少
なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも2
年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5の間年残る、高力価の抗体を生成
する。
【0261】
さらに別の実施態様において、第3の追加免疫は、少なくとも100%、少なくとも200%
、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%、抗体
力価を増大する。別の実施態様において、該追加免疫は、感染免疫ヒト対象からの平均対
照血清の少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少な
くとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的、(中和性)及び最小抗体
力価を誘発する。より具体的な実施態様において、該第3の追加免疫は、感染免疫ヒト対
象からの平均対照血清の少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくと
も300%、少なくとも400%、少なくとも500%、又は少なくとも1000%の機能的、(中和性
)及び最小抗体力価を誘発する。別の実施態様において、第3の追加免疫は、免疫後少なく
とも4週間、少なくとも8週間、少なくとも12週間、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月
、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、又は少なくとも5年の間、抗体力価を
延長させる。
【0262】
ある実施態様において、感染性生物、癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピ
チンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、T細胞非依存性又はT細胞
依存性応答を誘発する。他の実施態様において、感染性生物、癌、又はアレルギーに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子はT細
胞応答を誘発する。他の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌、又は
アレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウ
イルス粒子は、Tヘルパー応答を誘発する。別の実施態様において、本明細書に記載され
る感染性生物、癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は
三セグメントピチンデウイルス粒子は、Th1適応性(Th1-orientated)応答又はTh2適応性
(Th2-orientated)応答を誘発する。
【0263】
より具体的な実施態様において、該Th1適応性応答は、IgG1に対するIgG2抗体の優勢に
よって示される。他の実施態様において、IgG2:IgG1の比は、1:1より大きく、2:1より
大きく、3:1より大きく、又は4:1より大きい。別の実施態様において、本明細書に記載
される、感染性生物、癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒
子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA又はIg
E抗体の優勢によって示される。
【0264】
いくつかの実施態様において、CMV抗原又はその断片を発現する感染性複製欠損ピチン
デウイルスは、CD8+T細胞応答を誘発する。別の実施態様において、感染性生物、癌、又
はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデ
ウイルス粒子は、抗体との組み合わせで又は抗体と組み合わせずに、CD4+及びCD8+T細胞
応答の両方を誘発する。
【0265】
ある実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、癌、又はアレルギーに由来
する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、高
力価の中和抗体を誘発する。別の実施態様において、本明細書に記載される感染性生物、
癌、又はアレルギーに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピ
チンデウイルス粒子は、個別のタンパク質複合体成分の発現より高力価の中和抗体を誘発
する。
【0266】
別の実施態様において、感染性生物、癌、又はアレルギーに由来する1、2、3、4、5又
はそれ以上の抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒
子は、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する1つの抗原を発現するピチンデウイルス
粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子よりも高力価の中和抗体を誘発する。
【0267】
ある実施態様において、該方法は、該ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデ
ウイルス粒子及び少なくとも1つの追加の治療法の共投与をさらに含む。ある実施態様に
おいて、共投与は同時である。別の実施態様において、該ピチンデウイルス粒子又は三セ
グメントピチンデウイルス粒子は、該追加の治療法の投与前に投与される。他の実施態様
において、該ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、該追加の
治療法の投与後に投与される。ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子又は三セグ
メントピチンデウイルス粒子及び該追加の治療法の投与は、約1時間、約2時間、約3時間
、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、又は
約12時間である。ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチ
ンデウイルス粒子及び前記追加の治療法の投与の間の間隔は、約1日、約1週間、約2週間
、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、約10週間、約11
週間、約12週間である。ある実施態様において、該ピチンデウイルス粒子又は三セグメン
トピチンデウイルス粒子及び該追加の治療法の投与の間の間隔は、約1ヶ月、約2ヶ月、約
3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、又は約6ヶ月である。
【0268】
ある実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチ
ンデウイルス粒子又はその組成物の投与は、患者血液試料、又は血清試料に検出される抗
体の数を低減する。ある実施態様において、感染性生物、癌又はアレルゲンに由来する抗
原を発現するピチンデウイルス粒子、その組成物の投与は、尿、唾液、血液、涙液、精液
、剥離細胞試料、又は乳汁に検出される感染性生物、癌、又はアレルギーの量を低減する
【0269】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染生物、癌、又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、レポータータンパク質をさらに含んでもよい。本明細書に記載される感染
生物、癌、又はアレルゲンに由来する抗原及びレポータータンパク質を発現するピチンデ
ウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は組成物は、感染、癌、又は
アレルギーを治療及び/又は防止するために対象に投与される。さらに別の具体的な実施
態様において、該レポータータンパク質は、遺伝子発現、タンパク質局在、及びワクチン
送達を、インビボ、インシチュ及びリアルタイムで監視するために使用することができる
【0270】
別の実施態様において、本明細書に記載される感染生物、癌、又はアレルゲンに由来す
る抗原を発現するピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子、又は組
成物は、蛍光タンパク質をさらに含んでもよい。より具体的な実施態様において、本明細
書に記載される感染生物、癌、又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイル
ス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子及びレポータータンパク質、又は組成物は
、感染、癌、又はアレルギーを治療及び/又は防止するために対象に投与される。さらに
別の具体的な実施態様において、該蛍光タンパク質は、該レポータータンパク質であるこ
とができ、遺伝子発現、タンパク質局在、及びワクチン送達を、インビボ、インシチュ及
びリアルタイムで監視するために使用することができる。
【0271】
感染性生物、癌、アレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子若しくは
三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物の投与によって対象において誘導され
る、感染、癌、又はアレルギーに対するCMI応答機能の変化は、フローサイトメトリー(例
えば、Perfetto S.P.らの文献、2004, Nat Rev Immun., 4(8):648-55を参照されたい)、
リンパ球増殖アッセイ(例えば、Bonilla F.A.らの文献、2008, Ann Allergy Asthma Immu
nol, 101:101-4;及びHicks M.J. らの文献、1983, Am J Clin Pathol., 80:159-63を
参照されたい)、Tリンパ球のサイトカイン測定の活性化後の表面マーカー発現変化の決定
を含むリンパ球活性化を測定するためのアッセイ(例えば、Caruso A.らの文献、Cytometr
y.1997;27:71-6を参照されたい)、ELISPOTアッセイ(例えば、Czerkinsky C.C.らの文献
、1983, J Immunol Methods, 65:109-121;及びHutchings P.R.らの文献、1989, J Immu
nol Methods, 120:1-8を参照されたい)、又はナチュラルキラー細胞の細胞傷害性アッセ
イ(例えば、Bonilla F.A.らの文献、2006, Ann Allergy Asthma Immunol., 94(5 Suppl 1
):S1-63を参照されたい)を含むが、これらに限定されない当業者に公知の任意のアッセ
イによって測定することができる。
【0272】
癌患者の治療の成功は、予想される生存期間の延長、抗腫瘍免疫応答の誘導、又は癌の
特定の特性の改善として評価することができる。改善される可能性のある癌の特徴の例と
しては、腫瘍の大きさ(例えば、T0、Tは、又はT1-4である)、転移の状態(例えば、M0
、M1)、観察可能な腫瘍の数、リンパ節病変(例えば、N0、N1-4、Nx)、グレード(すな
わち、グレード1、2、3、又は4)、ステージ(例えば、0、I、II、III、又はIV)、細胞
上若しくは体液中のあるマーカー(例えば、AFP、B2M、β-HCG、BTA、CA 15-3、CA 27.29
、CA 125、CA 72.4、CA 19-9、カルシトニン、CEA、クロモグラニンA、EGFR、ホルモン受
容体、HER2、HCG、免疫グロブリン、NSE、NMP22、PSA、PAP、PSMA、S-100、TA-90、及び
サイログロブリン)の存在又は濃度、及び/又は関連する病状(例えば、腹水若しくは浮
腫)又は症状(例えば、悪液質、発熱、食欲不振、又は疼痛)が挙げられる。改善は、パ
ーセントによって測定可能な場合に、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、7
0、80、又は90%(例えば、腫瘍の生存、又は体積又は直線寸法)であり得る。
【0273】
別の実施態様において、本明細書に記載されるのは、本明細書に記載される感染性生物
、癌又はアレルゲンに由来する抗原を発現するピチンデウイルス粒子の使用の方法であっ
て、そのGP、NP、Zタンパク質、及びLタンパク質をコードするORFのうちの少なくとも1つ
が、感染性をコードするヌクレオチド配列、感染性生物、癌、アレルゲンに由来する抗原
又はそれらの抗原性断片をコードするヌクレオチド配列で置き換えられている粒子の使用
の方法である。
【0274】
4.7 組成物、投与、及び投与量
本願は、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイル
ス粒子を含むワクチン、免疫原性組成物(例えば、ワクチン製剤)、及び医薬組成物にさら
にまた関する。そのようなワクチン、免疫原性組成物及び医薬組成物は、当技術分野の標
準的な手順に従って製剤化することができる。
【0275】
本明細書に記載される方法及び適用の好適な改変及び適合は自明であり得、範囲の範囲
又はその任意の実施態様から逸脱することなく為し得ることは、関連技術分野の当業者に
は容易に明らかであろう。
【0276】
別の実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるピチンデウ
イルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子を含む組成物である。そのような組成
物は、疾患を治療及び防止する方法において使用することができる。具体的な実施態様に
おいて、本明細書に記載される組成物は、感染している、又は感染し易い対象の治療にお
いて使用される。他の実施態様において、本明細書に記載される組成物は、癌又は腫瘍形
成に罹り易い又はその特徴的な症状を呈している対象、又は癌を有すると診断される対象
の治療において使用される。別の具体的な実施態様において、本明細書に提供される免疫
原性組成物を使用して、該組成物が投与される宿主に免疫応答を誘導することができる。
本明細書に記載される免疫原性組成物は、ワクチンとして使用することができ、それに応
じて、医薬組成物として製剤化することができる。具体的な実施態様において、本明細書
に記載される免疫原性組成物は、対象(例えば、ヒト対象)の感染又は癌の防止に使用さ
れる。他の実施態様において、該ワクチン、免疫原性組成物又は医薬組成物は、動物及び
/又はヒトへの投与に適している。
【0277】
ある実施態様において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載されるピチンデウ
イルスベクターを含む免疫原性組成物である。ある実施態様において、そのような免疫原
性組成物はさらに、医薬として許容し得る賦形剤を含む。ある実施態様において、そのよ
うな免疫原性組成物はさらに、アジュバントを含む。本明細書に記載される組成物と組み
合わせて投与するためのアジュバントは、前記組成物の投与前、投与と同時、又は投与後
に投与することができる。いくつかの実施態様において、「アジュバント」という用語は
、本明細書に記載される組成物と組み合わせて又は本明細書に記載される組成物の一部と
して投与したときに、ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子、及
び最も重要な、それが運搬する(vectorises)遺伝子生成物に対する免疫応答を高める、
増強する、及び/又はブーストするが、該化合物が単独で投与された場合には、ピチンデ
ウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子、及び後者によって運搬される(ve
ctorised)遺伝子生成物に対する免疫応答をもたらさない化合物を指す。いくつかの実施
態様において、該アジュバントは、ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイ
ルス粒子、及び後者によって運搬される(vectorised)遺伝子生成物に対する免疫応答を
もたらし、アレルギー又は他の有害反応を生じさせない。アジュバントは、例えば、リン
パ球動員、B及び/又はT細胞の刺激、並びにマクロファージ又は樹状細胞の刺激を含むい
くつかのメカニズムによって免疫応答を増強することができる。本発明のワクチン組成物
又は免疫原性組成物が、アジュバントを含むか又は1種以上のアジュバントと一緒に投与
される場合、使用することができるアジュバントとしては、無機塩アジュバント又は無機
塩ゲルアジュバント、粒子状アジュバント、微粒子状アジュバント、粘膜アジュバント、
及び免疫刺激アジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。アジュバントの例と
しては、アルミニウム塩(ミョウバン)(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウ
ム、及び硫酸アルミニウム)、3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)(GB 2220211を
参照されたい)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポ
リソルベート80(Tween 80; ICL Americas社)、イミダゾピリジン化合物(国際公開番号WO
2007/109812として公開された国際出願PCT/US2007/064857を参照されたい)、イミダゾキ
ノキサリン化合物(国際公開番号WO2007/109813として公開された国際出願PCT/US2007/064
858を参照されたい)、及びQS21などのサポニン(Kensilらの文献、「ワクチンデザイン:
サブユニット及びアジュバントアプローチ(Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant
Approach)」、 (Powell&Newman編集、Plenum Press、NY、1995);米国特許第5,057,540
号を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様におい
て、該アジュバントは、フロイントアジュバント(完全又は不完全)である。他のアジュバ
ントは、必要に応じてモノホスホリルリピドAなどの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油
型エマルジョン(スクアレン又はピーナッツ油など)である(Stouteらの文献、 N.Engl.J.M
ed.336、86-91(1997) を参照されたい)。
【0278】
該組成物は、単独で、又は医薬として許容し得る担体と共に、本明細書に記載されるピ
チンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子を含む。ピチンデウイルス粒
子又は三セグメントピチンデウイルス粒子の懸濁液又は分散液、とりわけ等張水性懸濁液
若しくは分散液を使用することができる。該医薬組成物は、滅菌することができ、かつ/
又は賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤並びに/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧
を調節するための塩類及び/若しくは緩衝剤を含んでよく、それ自体既知の方法で、例え
ば、従来の分散及び懸濁プロセスによって調製される。ある実施態様において、そのよう
な分散液又は懸濁液は、粘度調節剤を含んでよい。該懸濁液又は分散液は、約2℃~8℃の
温度に保たれるか、又は優先的には、長期保存については、凍結した後、使用直前に解凍
してよく、或いは保存のために凍結乾燥してもよい。注射については、ワクチン又は免疫
原性製剤は、水溶液中で、好ましくは、ハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理食塩緩衝
液などの生理学的に適合性のある緩衝液で製剤化してよい。該溶液は、懸濁剤、安定化剤
及び/又は分散剤などの処方剤を含有してよい。
【0279】
ある実施態様において、本明細書に記載される組成物はさらに、防腐剤、例えば、水銀
誘導体のチメロサールを含む。具体的な実施態様において、本明細書に記載される医薬組
成物は、0.001%~0.01%のチメロサールを含む。他の実施態様において、本明細書に記
載される医薬組成物は、防腐剤を含まない。
【0280】
該医薬組成物は、約103~約1011フォーカス形成単位のピチンデウイルス粒子又は三セ
グメントピチンデウイルス粒子を含む。
【0281】
一実施態様において、該医薬組成物の投与は非経口投与である。非経口投与は、静脈内
又は皮下投与であることができる。したがって、非経口投与のための単位用量形態は、例
えば、アンプル又はバイアルであり、例えば、約103~1010 フォーカス形成単位又は105
~1015 物理粒子のピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子を含有
するバイアルである。ある実施態様において、「10eX」という用語は、10のX乗を意味す
る。
【0282】
別の実施態様において、本明細書に提供されるワクチン組成物又は免疫原性組成物は、
限定されないが、経口、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、局所、皮下、経皮、鼻腔内及び
吸入経路を含む経路により、並びにスカリフィケーション(例えば、二股針を使用して、
皮膚の最上層から傷を付けること)により、対象に投与される。具体的には、皮下、筋肉
内又は静脈内経路を使用することができる。
【0283】
鼻腔内への又は吸入による投与のために、本発明による使用のための調製物は、好適な
噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテト
ラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適なガスを使用して、加圧パック又はネブラ
イザーからエアロゾルスプレー提示の形態で好都合に送達され得る。加圧エアロゾルの場
合には、投薬量単位は、定量を送達するためのバルブを提供することにより決定してよい
。吸入器又は注入器で使用するための、例えばゼラチンの、カプセル及びカートリッジは
、化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基剤の粉末混合物を含めて製剤化し
てよい。
【0284】
活性成分の投薬量は、ワクチン接種の種類によって、並びに対象及びその年齢、体重、
個々の状態、個々の薬物動態データ、及び投与様式によって決まる。ある実施態様におい
て、最適投薬範囲を同定するのを助けるために、インビトロアッセイが用いられる。有効
用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導いた用量応答曲線から外挿してもよい。
【0285】
ある実施態様において、ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子
を含むワクチン、免疫原性組成物、又は医薬組成物は、生ワクチンとして使用することが
できる。生ピチンデウイルス粒子の例示的な用量は、用量あたり10~100 PFU、又はそれ
以上の生ウイルスで変化し得る。いくつかの実施態様において、ピチンデウイルス粒子又
は三セグメントピチンデウイルス粒子の好適な投薬量は、102、5×102、103、5×103、10
4、5×104、105、5×105、106、5×106、107、5×107、108、5×108、1×109、5×109、1
×1010、5×1010、1×1011、5×1011又は1012 pfuであり、必要な頻度で間隔をあけて1回
、2回、3回又はそれ以上対象に投与することができる。別の実施態様において、生ピチン
デウイルスは、0.2mLの用量が106.5~107.5蛍光フォーカス単位の生ピチンデウイルス粒
子を含有するように製剤化される。別の実施態様において、不活化ワクチンは、それが約
15μg~約100μg、約15μg~約75μg、約15μg~約50μg、又は約15μg~約30μgのピチ
ンデウイルスを含有するように製剤化される。
【0286】
ある実施態様において、小児への投与について、2用量の、本明細書に記載されるピチ
ンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又はその組成物は、少なく
とも1ヶ月空けて、小児に投与される。具体的な実施態様において、成人への投与につい
て、単回用量の、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチ
ンデウイルス粒子又はその組成物が与えられる。別の実施態様において、2用量の、本明
細書に記載されるピチンデウイルス粒子若しくは三セグメントピチンデウイルス粒子又は
その組成物は、少なくとも1ヶ月空けて、成人に投与される。別の実施態様において、幼
い小児(6ヶ月~9歳)は、本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子若しくは三セグメ
ントピチンデウイルス粒子又はその組成物を、1ヶ月空けた2用量で初めて投与されてもよ
い。特定の実施態様において、ワクチン接種の最初の年に1用量のみを受けた小児は、次
の年に2用量を受けるべきである。いくつかの実施態様において、4週間空けて投与される
2用量は、本明細書に記載される免疫原性組成物を初めて投与される2~8歳の小児につい
ては好ましい。ある実施態様において、6~35ヶ月齢の小児については、3歳より上の対象
について好ましい可能性のある0.5 mlとは対照的に、半用量(0.25 ml)が好ましい可能性
がある。
【0287】
ある実施態様において、該組成物は、ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデ
ウイルス粒子の治療的有効量を含む単回用量で患者に投与することができる。いくつかの
実施態様において、該ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子は、
それぞれ治療的有効量の、治療的有効量のピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチン
デウイルス粒子を含む単回用量で、及び1以上の医薬組成物で、患者に投与することがで
きる。
【0288】
ある実施態様において、該組成物は、単回用量として患者に投与され、続いて、3~6週
間後に第2の用量で投与される。これらの実施態様によれば、ブースター接種は、第2の接
種後6~12ヶ月の間隔で対象に投与することができる。ある実施態様において、ブースタ
ー接種は、異なるピチンデウイルス又はその組成物を利用してもよい。いくつかの実施態
様において、本明細書に記載される同じ組成物の投与は、反復してもよく、少なくとも1
日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヶ月、75日、3ヶ月、又は少なくと
も6ヶ月間隔ててもよい。
【0289】
また、本明細書に提供されるのは、活性成分としてピチンデウイルス粒子又は三セグメ
ントピチンデウイルス粒子を含む医薬製剤の形態のワクチンの製造のためのプロセス並び
に該ピチンデウイルス粒子又は該三セグメントピチンデウイルス粒子の使用である。本願
の医薬組成物は、それ自体既知の方法で、例えば、従来の混合及び/又は分散のプロセス
によって調製される。
【0290】
4.8 アッセイ
4.8.1 ピチンデウイルス検出アッセイ
当業者は、当技術分野で公知の技術を使用して、本明細書に記載されるピチンデウイル
スゲノムセグメント又は三セグメントピチンデウイルス粒子を検出することができる。例
えば、RT-PCRをピチンデウイルスに特異的なプライマーと共に使用して、ORFを該ORFの野
生型位置以外の位置に担持するように操作されているピチンデウイルスゲノムセグメント
、又は三セグメントピチンデウイルス粒子を検出及び定量することができる。ウェスタン
ブロット、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、免疫細胞化学、又はFACSと組み合
わせた免疫細胞化学を用いて、ピチンデウイルスゲノムセグメント又は三セグメントピチ
ンデウイルス粒子の遺伝子産物を定量することができる。
【0291】
4.8.2 感染性を測定するためのアッセイ
当業者に公知の任意のアッセイをピチンデウイルスベクター調製物の感染力を測定する
ために使用することができる。例えば、ウイルス/ベクター力価の決定は、「フォーカス
形成単位アッセイ」(FFUアッセイ)により行うことができる。簡潔に述べると、相補細胞
、例えば、MC57細胞をプレーティングし、ウイルス/ベクター試料の異なる希釈物を接種
する。インキュベーション期間の後、細胞に単層を形成させ、ウイルスを細胞に付着させ
るために、単層をメチルセルロースで覆う。プレートをさらにインキュベートすると、も
との感染した細胞はウイルス子孫を放出する。メチルセルロースが重層されるため、新し
いウイルスの拡散は、隣接する細胞に制限される。結果として、各々の感染性粒子は、フ
ォーカスと呼ばれる感染した細胞の円形のゾーンをもたらす。そのようなフォーカスを、
ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子が発現するピチンデウイル
スNP又は別のタンパク質に対する抗体及びHRPベースの呈色反応を使用して見えるように
し、それにより、数えられるようにすることができる。ウイルス/ベクターの力価は、1ミ
リリットル当たりのフォーカス形成単位(FFU/mL)で計算することができる。
【0292】
4.8.3 ピチンデウイルス粒子の増殖
本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子の増殖は、当技術分野で公知の又は本明細
書に記載される任意の方法により評価することができる(例えば、細胞培養)。ウイルス
増殖は、細胞培養物(例えば、BHK-21細胞)に、本明細書に記載されるピチンデウイルス
粒子の連続希釈物を接種することによって決定することができる。指定された時間ウイル
スをインキュベーションした後、ウイルスを、標準的な方法を使用して単離する。
【0293】
4.8.4 血清ELISA
動物(例えば、マウス、モルモット)のワクチン接種時の液性免疫応答の決定は、抗原特
異的血清ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により行うことができる。簡潔に述べると、
プレートを抗原(例えば、組換えタンパク質)でコーティングし、抗体の非特異的結合を避
けるためにブロッキングし、血清の連続希釈物と共にインキュベートする。インキュベー
ション後、結合した血清-抗体を、例えば、酵素が結合した(全IgG又はIgGサブクラスを検
出する)抗種(例えば、マウス、モルモット)特異的抗体及びその後の呈色反応を使用して
検出することができる。抗体力価を、例えば、終点幾何平均力価として決定することがで
きる。
【0294】
4.8.5 誘導された抗体の中和活性を測定するためのアッセイ
血清中の中和抗体の決定は、ATCCからのARPE-19細胞とGFPタグ化ウイルスとを使用する
以下の細胞アッセイを使用して行う。さらに、外因性補体の源としての補足血清(例えば
、モルモット血清)を使用する。このアッセイは、中和に使用する1日又は2日前に、384ウ
ェルプレートに6.5×103細胞/ウェル(50μl/ウェル)を播種することにより開始する。中
和は、細胞を含まない96ウェル滅菌組織培養プレートで、37℃で1時間行う。中和インキ
ュベーション工程の後、混合物を細胞に添加し、プレートリーダーによるGFP検出のため
に、さらに4日間インキュベートする。陽性の中和ヒト血清を各々のプレートでアッセイ
陽性対照として使用して、全ての結果の信頼性を確認する。4パラメータロジスティック
曲線フィッティングを使用して、力価(EC50)を決定する。追加の検査として、ウェルを蛍
光顕微鏡で確認する。
【0295】
4.8.6 プラーク減少アッセイ
簡潔に述べると、ピチンデウイルスについてのプラーク減少(中和)アッセイを、緑色蛍
光タンパク質がタグ付けされている複製可能又は複製欠損ピチンデウイルスを使用して行
い、5%ウサギ血清を外因性補体の源として使用することができ、プラークを蛍光顕微鏡
観察により数えることができる。中和力価は、対照(免疫前)血清試料における希釈と比較
して、プラークの50%、75%、90%又は95%減少をもたらす血清の最大希釈と定義するこ
とができる。
【0296】
qPCR: ピチンデウイルスRNAゲノムを、製造元によって提供されるプロトコルに従っ
て、QIAamp Viral RNAミニキット(QIAGEN)を使用して単離する。ピチンデウイルスRNAゲ
ノム相当物を、SuperScript(登録商標) III Platinum(登録商標) One-Step qRT-PCRキッ
ト(Invitrogen)並びにピチンデNPコード領域又はピチンデウイルス粒子若しくは三セグメ
ントピチンデウイルス粒子の別のゲノムストレッチの一部に特異的なプライマー及びプロ
ーブ(FAMレポーター及びNFQ-MGBクエンチャー)を使用してStepOnePlusリアルタイムPCRシ
ステム(Applied Biosystems)で実施される定量的PCRにより検出する。反応の温度プロフ
ァイルは: 60℃で30分、95℃で2分の後、95℃で15秒、56℃で30秒の45サイクルであり得
る。RNAを、試料の結果と、プライマー及びプローブ結合部位を含むピチンデウイルス粒
子又は三セグメントピチンデウイルス粒子のNPコード配列又は別のゲノムストレッチの断
片に対応する、分光光学的に定量されたインビトロ転写RNA断片のlog10希釈系列から作成
された標準曲線との比較により、定量することができる。
【0297】
4.8.7 ウェスタンブロッティング
組織培養フラスコ中又は懸濁液で増殖させた感染細胞を、示された感染後の時点でRIPA
緩衝液(Thermo Scientific)を使用して溶解させるか、又は細胞溶解なしでそのまま使用
する。試料を還元剤及びNuPage LDS試料緩衝液(NOVEX)と共に99℃に10分間加熱し、室温
に冷却した後、電気泳動のために4~12%SDS-ゲルに充填する。タンパク質を、Invitroge
ns iBlot Gel転写装置を使用して膜上にブロッティングし、ポンソー染色により可視化す
る。最後に、調製物を、対象となるタンパク質に対する一次抗体及びアルカリホスファタ
ーゼコンジュゲート二次抗体でプロービングし、その後、1-Step NBT/BCIP溶液(INVITROG
EN)で染色する。
【0298】
4.8.8 抗原特異的CD8+T細胞増殖の検出のためのMHC-ペプチドマルチマー染色アッセイ
当業者に公知の任意のアッセイを使用して、抗原特異的CD8+T細胞応答を試験すること
ができる。例えば、MHC-ペプチド四量体染色アッセイを使用することができる(例えば、A
ltman J.D.らの文献、 Science 1996; 274:94-96;及びMurali-Krishna K.らの文献、
Immunity 1998;8:177-187を参照されたい)。簡潔に述べると、このアッセイは、以下の
工程を含み、四量体アッセイを使用して、抗原特異的T細胞の存在を検出する。T細胞がそ
れに対して特異的なペプチドを検出するために、T細胞は、ペプチドと(通常、蛍光標識さ
れている)定義した抗原特異性及びMHCハプロタイプのT細胞用の特別仕様のMHC分子の四量
体の両方を認識しなければならない。その後、四量体を、蛍光標識を介してフローサイト
メトリーにより検出する。
【0299】
4.8.9 抗原特異的CD4+T細胞増殖の検出のためのELISPOTアッセイ
当業者に公知の任意のアッセイを使用して、抗原特異的CD4+T細胞応答を試験すること
ができる。例えば、ELISPOTアッセイを使用することができる(例えば、Czerkinsky C.C.
らの文献、 J Immunol Methods. 1983; 65:109-121;及びHutchings P.R.らの文献、 J
Immunol Methods. 1989; 120:1-8を参照されたい)。簡潔に述べると、このアッセイは
、以下の工程を含む:免疫スポットプレートを抗サイトカイン抗体でコーティングする。
細胞を免疫スポットプレート中でインキュベートする。細胞はサイトカインを分泌し、そ
の後、洗い落とされる。その後、プレートを第2のビオチン化抗サイトカイン抗体でコー
ティングし、アビジン-HRPシステムで可視化する。
【0300】
4.8.10 CD8+及びCD4+T細胞応答の機能性の検出のための細胞内サイトカインアッセイ
当業者に公知の任意のアッセイを使用して、CD8+及びCD4+T細胞応答の機能性を試験す
ることができる。例えば、フローサイトメトリーと組み合わせた細胞内サイトカインアッ
セイを使用することができる(例えば、Suni M.A.らの文献、 J Immunol Methods. 1998;
212:89-98; Nomura L.E.らの文献、 Cytometry 2000; 40:60-68;及びGhanekar S.A
.らの文献、 Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology. 2001; 8:628-63を参
照されたい)。簡潔に述べると、このアッセイは、以下の工程を含む:特異的ペプチド又
はタンパク質による細胞の活性化、タンパク質輸送の阻害(例えば、ブレフェルジンA)を
加えて、サイトカインを細胞内に保持する。インキュベーションの定義した期間後、典型
的には5時間後に、洗浄工程が続き、他の細胞マーカーに対する抗体を細胞に添加するこ
とができる。その後、細胞を固定し、透過処理する。蛍光色素結合抗サイトカイン抗体を
添加し、細胞をフローサイトメトリーにより解析することができる。
【0301】
4.8.11 ウイルスベクターの複製欠損を確認するためのアッセイ
感染性でかつ複製可能なウイルス粒子の濃度を決定する当業者に公知の任意のアッセイ
も使用して、試料中の複製欠損ウイルス粒子を測定することができる。例えば、非相補細
胞を使用するFFUアッセイをこの目的で使用することができる。
【0302】
さらに、プラークベースのアッセイは、ウイルス試料中のプラーク形成単位(PFU)に関
してウイルス濃度を決定するために使用される標準的な方法である。具体的には、非相補
宿主細胞のコンフルエントな単層に様々な希釈のウイルスを感染させ、寒天などの半固形
培地で覆って、ウイルス感染が無制限に拡大するのを防ぐ。ウイルスが感染し、固定され
た細胞単層内の細胞でそれ自体を複製し、周囲の細胞に広がるのに成功すると、ウイルス
プラークが形成される(例えば、Kaufmann、S.H.; Kabelitz、D.の文献(2002)、「微生物
学の方法(Methods in Microbiology)」 第32巻:「感染の免疫学(Immunology of Infecti
on)」、Academic Press. ISBN 0-12-521532-0を参照されたい)。プラーク形成は、解析さ
れているウイルスによって、2~14日間かかることがある。プラークを全体的に手作業で
計数し、その結果を、プレートを調製するために使用した希釈係数と組み合わせて使用し
て、試料単位容量当たりのプラーク形成単位の数(PFU/mL)を計算する。PFU/mLの結果は、
試料中の感染性複製可能粒子の数を表す。C細胞を使用する場合、同一のアッセイを用い
て、複製欠損ピチンデウイルス粒子又は三セグメントピチンデウイルス粒子を滴定するこ
とができる。
【0303】
4.8.12 ウイルス抗原の発現についてのアッセイ
当業者に公知の任意のアッセイを、ウイルス抗原の発現を測定するために使用すること
ができる。例えば、FFUアッセイを実施することができる。検出のために、それぞれのウ
イルス抗原に対するモノクローナル又はポリクローナル抗体調製物(複数可)を使用する(
導入遺伝子特異的FFU)。
【0304】
4.8.13 動物モデル
本明細書に記載されるピチンデウイルス粒子の組換え及び感染力を調べるために、イン
ビボ動物モデルを使用することができる。ある実施態様において、三セグメントピチンデ
ウイルス粒子の組換え及び感染力を調べるために使用することができる動物モデルは、マ
ウス、モルモット、ウサギ、及びサルを含む。好ましい実施態様において、ピチンデウイ
ルスの組換え及び感染力を調べるために使用することができる動物モデルは、マウスを含
む。より具体的な実施態様において、マウスを、ピチンデウイルス粒子の組換え及び感染
力を調べるために使用することができ、このマウスは、I型インターフェロン受容体、II
型インターフェロン受容体及び組換え活性化遺伝子1(RAG1)の3つを欠損している。
【0305】
ある実施態様において、動物モデルを用いて、ピチンデウイルスの感染力及び導入遺伝
子の安定性を決定することができる。いくつかの実施態様において、ウイルスRNAは、動
物モデルの血清から単離することができる。技術は、容易に当業者によって知られている
。ウイルスRNAを逆転写することができ、ピチンデウイルスORFを担持するcDNAを、遺伝子
特異的プライマーを用いてPCR増幅することができる。フローサイトメトリーも用いて、
ピチンデウイルスの感染力及び導入遺伝子の安定性を調べることができる。
【0306】
5. 実施例
これらの実施例は、ピチンデウイルスベースのベクター技術を、(1)ウイルスORFを該OR
Fの野生型位置以外の位置に有するピチンデウイルスゲノムセグメント、及び(2)複製可能
二セグメントウイルス粒子をもたらさない三セグメントピチンデウイルス粒子を成功裡に
開発するために使用することができることを実証する。
【0307】
5.1 材料及び方法
5.1.1 細胞
BHK-21細胞を、10%熱非働化ウシ胎児血清(FCS; Biochrom)、10 mM HEPES (Gibco)、1
mM ピルビン酸ナトリウム(Gibco)及び1×リン酸トリプトースブロス(tryptose phospha
te broth)を補充した高グルコースDulbecco's Eagle培地(DMEM Sigma)中で培養した。細
胞は、加湿した5% CO2インキュベーター中で37 ℃で培養した。293-T細胞は、 10%熱非
働化ウシ胎児血清(FCS)を補充したDulbecco's Eagle培地 (DMEM、Glutamax含有; Sigma)
中で培養した。
【0308】
5.1.2 導入遺伝子
(1) 緑色蛍光タンパク質(GFP)は、シームレスクローニングのために隣接するBsmBI部位
を有するGFP-Bsm (配列番号9)として合成した。(2) i)水疱性口内炎ウイルス糖タンパク
質(VSVG)シグナルペプチド、ii)マウスP815マスト細胞腫腫瘍細胞株のP1A抗原、iii) GSG
リンカー、iv)エンテロウイルス 2Aペプチド、及びv)マウスGM-CSFからなる融合タンパ
ク質。この融合タンパク質は、sP1AGMと呼ぶ。我々は、それを、シームレスクローニング
のためにsP1AGM-Bsm (配列番号10)として隣接するBsmBI部位を設けて合成した。(3) 野生
型ピチンデウイルスSセグメント発現プラスミド(BbsI部位のないSセグメント) (配列番号
8)を再構成するための、シームレスクローニングのために隣接するBsmBI部位を有するピ
チンデウイルスGP。
【0309】
5.1.3 プラスミド
我々は、非コード突然変異を導入してBsmBI制限部位を欠失させた、ピチンデウイルス
株Munchique CoAn4763単離株P18(Genbank アクセッション番号EF529747.1)のL ORFの改変
cDNAを合成した。好適に隣接するBsmBI並びにEcoRI及びNheI制限部位を有するこの合成OR
F(LΔBsmBI;配列番号3)を、ポリメラーゼII (pol-II)発現ベクター pCAGGS中に導入し、
真核細胞でのピチンデ Lタンパク質の発現のためのpC-PIC-L-Bsm (図3)を生じた。
【0310】
我々は、L ORFを欠失させ、両側に隣接するBsmBI部位を有するGFP ORFで置換した、ピ
チンデウイルス株Munchique CoAn4763単離株P18 (Genbank アクセッション番号EF529747.
1)の改変Lセグメント(PIC-L-GFP-Bsm;配列番号4)を合成した。この合成cDNAを、マウス
ポリメラーゼI(pol-I)発現カセット(Pinschewer らの文献、 J Virol. 2003 Mar;77(6)
:3882-7)に導入し、pol-I-PIC-L-GFP-Bsm (図3)を生じた。
【0311】
我々は、PIC-L-BsmをBsmBIで消化し、該BsmBI変異 L ORFを、同様に消化したpol-I-PIC
-L-GFP-Bsm骨格中に挿入して、それによりGFP ORFをL ORFで置き換え、クローニング目的
のための全ての制限部位が除去されたピチンデウイルスLセグメントcDNAをシームレスに
再構成した。得られたpol-I-PIC-L プラスミド(図3)は、真核細胞中での全長ピチンデウ
イルスLセグメント(PIC-L-seg;配列番号2)の細胞内発現のために設計された。
【0312】
我々は、PIC-miniS-GFP(配列番号5)と呼ばれ、GP ORFが2つのBsmBI制限部位で置き換え
られ、かつNP ORFが2つの隣接するBbsI制限部位を有するGFPで置き換えられた、ピチンデ
ウイルス株Munchique CoAn4763単離株P18 (Genbank アクセッション番号EF529746.1)の改
変SセグメントcDNAを合成した。この合成cDNAを、マウスポリメラーゼI(pol-I)発現カセ
ット(Pinschewerらの文献、J Virol. 2003 Mar;77(6):3882-7)に導入し、pol-I-PIC-mi
niS-GFP(図3)を生じた。
【0313】
我々は、非コード突然変異を導入して両BbsI制限部位を欠失させた、ピチンデウイルス
株Munchique CoAn4763単離株P18 (Genbank アクセッション番号EF529747.1)のNP ORFの改
変cDNAを合成した。好適に隣接するBbsI並びにEcoRI及びNheI制限部位を有するこの合成O
RF(NPΔBbsI;配列番号6)をポリメラーゼII(pol-II)発現ベクターpCAGGSに導入し、真核
細胞中でのピチンデNPタンパク質の発現のためのpC-PIC-NP-Bbs (図3)を生じた。
【0314】
我々は、NPΔBbsIをBbsIで消化し、該BbsI変異NP ORFを、同様に消化したpol-I-PIC-mi
niS-GFP骨格に挿入して、それによりGFP ORFをNP ORFで置き換え、クローニング目的のた
めの全ての制限部位が除去されたピチンデウイルスSセグメントcDNAの3'UTR-NP-IGR部分
をシームレスに再構成した。pol-Iの制御下でPIC-NP-Bsm (配列番号7)を発現する、得ら
れたpol-I-PIC-NP-Bsmプラスミド(図3)は、得られる組換えピチンデウイルスSセグメント
の真核細胞における発現のために、BsmBI部位をシームレスに置き換えることにより、5'U
TR及びIGRの間に挿入されるべき対象の導入遺伝子を受け入れるために設計された。
【0315】
我々は、非コード突然変異を導入して両BbsI制限部位を欠失させたピチンデウイルス株
Munchique CoAn4763単離株P18(Genbank アクセッション番号EF529747.1)のGP ORFの改変c
DNAを合成した。NPΔBbsIと同じように、この合成ORFをpol-I-PIC-miniS-GFP骨格に導入
し、それによりGFP ORFをGP ORFで置き換え、クローニング目的のための全ての制限部位
が除去されたピチンデウイルスSセグメントcDNAの3'UTR-GP-IGR部分をシームレスに再構
成した。PIC-GP-Bsm (配列番号8)を発現する得られたpol-I-PIC-GP-Bsmプラスミド(図3)
は、組換えピチンデウイルスSセグメントの真核細胞における発現のために、BsmBI部位を
シームレスに置き換えることにより、5'UTR及びIGRの間に導入されるべき対象の導入遺伝
子を受け入れるために設計された。
【0316】
我々は、次に、pol-I-PIC-NP-Bsm中に、以下の遺伝子及び導入遺伝子:全て隣接BsmBI
部位を有する、1. GFP、2. sP1AGM、及び3. ピチンデGP、を挿入した。得られるプラスミ
ドは、pol-I-PIC-NP-GFP(PIC-NP-GFPを発現、S-NP/GFPとしても知られる;配列番号11)及
びpol-I-PIC-NP-sP1AGM (PIC-NP-sP1AGMを発現;配列番号12)及びpol-I-PIC-S (PIC-Sを
発現、配列番号1)と命名した。同じように、我々は、GFP又はsP1AGMのどちらかをpol-I-P
IC-GP-Bsmに挿入し、pol-I-PIC-GP-GFP(PIC-GP-GFPを発現、S-GP/GFPartとしても知られ
る;配列番号13)及びpol-I-PIC-GP-sP1AGM (PIC-GP-sP1AGMを発現;配列番号14)を生じた
【0317】
5.1.4 細胞のDNAトランスフェクション及び組換えウイルスのレスキュー
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの糖タンパク質を発現するように安定にトランスフェク
トされたBHK-21細胞(BHK-GP細胞、Flatz らの文献 Nat Med. 2010 Mar;16(3):339-45)
を、6ウェルプレートに5×105 細胞/ウェルの密度で播種し、24時間後に、製造元によっ
て提供される指示書に従ってリポフェクタミン(約3μl/μg DNA; Invitrogen)を使用し
て異なる量のDNAでトランスフェクトした。プラスミドDNAからの組換え二セグメントウイ
ルスの全体としてのレスキューのために、2つの最小ウイルストランス作用因子であるNP
及びLを、pol-II駆動性プラスミド(0.8 μg pC-PIC-NP-Bbs, 1.4 μg pC-PIC-L-Bsm)から
送達し、1μgのpol-I-PIC-L及び0.8 μgのpol-I-PIC-Sで共トランスフェクトした。1つの
Lセグメント及び2つのSセグメントからなる三セグメントr3PICのレスキューの場合、0.8
μgの両pol-I駆動性Sセグメントを、トランスフェクションミックス中に含有させた。ト
ランスフェクション72時間後、細胞及び上清を、75 cm2 組織培養フラスコに移し、さら
に48~96時間後に上清を収集した。ウイルス感染力を、フォーカス形成アッセイにおいて
決定し、該ウイルスを、さらなる増幅のために正常BHK-21細胞で48継代した(48時間で感
染多重度=0.01)。このように得られたウイルスストックのウイルス力価を、フォーカス
形成アッセイによって再度決定した。
【0318】
5.1.5 ウイルス及びウイルスの増殖動態
野生型及び組換えウイルスのストックは、0.01の感染多重度(moi)でBHK-21又は293-T細
胞のいずれかを感染させることによって生成し、上清を感染後48時間に収集した。ウイル
スの増殖曲線は、インビトロでT75細胞培養フラスコのフォーマットで行った。BHK021細
胞は、5×106細胞/フラスコの密度で播種し、24時間後に、該細胞を5 mlの0.01のmoiのウ
イルス接種物と一緒に90分間ロッカープレート上で37℃及び5% CO2でインキュベートす
ることによって感染させた。新鮮培地を添加し、細胞を37℃ / 5% CO2でインキュベート
した。所与の時点で(通常24、48、72時間)上清を採取し、フォーカス形成アッセイによ
ってウイルス力価を分析した。
【0319】
5.1.6 フォーカス形成アッセイ
次に、ピチンデウイルスの力価をフォーカス形成アッセイによって決定した。別途述べ
ていない場合、293-T細胞又は3T3細胞をフォーカス形成アッセイのために使用した。細胞
を、3×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、MEM/2%FCS中で調製したウ
イルスの3.17倍の連続希釈液100 μlと混合した。37 ℃で2~4時間インキュベーション後
、1ウェル当たり80μlの粘性培地(2%メチルセルロース、2× 補充DMEM中)を添加し、ウ
イルス粒子が確実に近隣の細胞のみに拡散するようにした。37 ℃で48時間後、該上清を
はじきとり(flicked off)、100 μlのメタノールを室温で20分間添加することにより細
胞を固定した(以降の全ての工程は室温で行う)。細胞を、100 μl/ウェルのBSS/ 1% Tri
ton X-100 (Merck Millipore)で20分間透過処理し、続いてPBS/ 5% FCSで60分間ブロッ
クした。抗NP染色のために、ラット抗ピチンデNPモノクローナル抗体を一次染色抗体とし
て使用し、PBS/ 2.5% FCS中で60分間希釈した。プレートを水道水で3回洗浄し、二次HRP
-ヤギ抗ラットIgGをPBS/2.5% FCS中、1:100の希釈率で添加して、1時間インキュベート
した。該プレートを再び水道水で3回洗浄した。呈色反応(0.5 g/l DAB (Sigma D-5637),
0.5 g/l 硫酸ニッケルアンモニウム、PBS/ 0.015% H2O2中)を添加し、反応を10分後に水
道水で停止した。染色されたフォーカスを計数し、最終力価を希釈率に従って計算した。
【0320】
5.1.7 マウス
BALB/cマウスは、Charles River Laboratoriesから購入し、実験のために特定病原体除
去(SPF)条件下で収容した。全ての動物実験は、the University of Baselで動物保護に関
するスイス法に準拠してそれぞれの責任ある州当局の許可を得て行った。マウスの感染は
、マウス1匹当たり1×105 FFUの用量で静脈内で行った。
【0321】
5.1.8 フローサイトメトリー
血液は、抗CD8a及び抗B220抗体との組み合わせで、免疫優勢P1A由来H-2Ld-制限エピト
ープ
【化1】
を搭載したMHCクラスI四量体で染色し、エピトープ特異的CD8+T細胞頻度を、BD LSRForte
ssa フローサイトメーターで決定して、該データをFlowJoソフトフェア(Tree Star, Ashl
and, OR)を使用して処理した。
【0322】
5.1.9 統計学的解析
統計学的有意性は、Graphpad Prismソフトウェア(version 6.0d)を用いて両側独立t検
定によって決定した。
【0323】
5.2 結果
5.2.1 人為的なゲノム構成を有する三セグメントピチンデウイルスベースのベクターの
設計
野生型ピチンデウイルスのゲノムは、2つのネガティブ極性の一本鎖RNAセグメント(1つ
のLセグメント、1つのSセグメント)からなる(図1A)。我々は、5’非翻訳領域(5'UTR)及び
重複Sセグメントの遺伝子間領域(IGR)の間に選択した導入遺伝子のシームレスな挿入を可
能にするカセット系に基づいて、人為的なゲノム構成を有する複製可能三セグメントピチ
ンデウイルスベクター(r3PIC-art、 図1B、 1C及び1D)のためのポリメラーゼ-I/II駆動性
cDNAレスキュー系を設計した。導入遺伝子挿入の際に完全に除去され、かくして得られる
組換えウイルスにはないBsmBI部位を使用する、アレナウイルスSセグメント中への導入遺
伝子のシームレス挿入(すなわち、分子クローニングに由来する残存ヌクレオチドストレ
ッチがなく、かくして付加的な制限酵素認識部位がない)のための分子クローニング戦略
は、Pinschewerらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Jun 24;100(13):7895-90
0 によって、支持する図4に詳細に記載されている。BbsI酵素は、Flickらの文献、 J Vir
ol. 2001 Feb;75(4):1643-55に概説されているように、シームレスクローニングのた
めに同じように使用された。これらのピチンデウイルスベースのr3PIC-art ゲノムは、人
為的重複Sセグメントを伴う野生型ピチンデウイルスLセグメントからなっており、3'UTR
の制御下に、すなわち、3'UTR及びIGRの間に、核タンパク質(NP)又は糖タンパク質(GP)の
いずれかを担持するように設計された。これは、各Sセグメント中に導入遺伝子の挿入の
ための1つの位置を残し、すなわち、各1つの導入遺伝子は、それぞれ、2つのSセグメント
の各々の5'UTR及びIGRの間に挿入され得た。
【0324】
5.2.2 人為的なゲノム構成を有する三セグメント組換えウイルスベクターからレスキュ
ーされた感染性GFP発現ウイルス
三セグメント組換えピチンデウイルスを作製するために、我々は、第5.1.3節に記載し
たとおりの複数のプラスミドを合成した。我々は、以下の組み合わせのプラスミド:
(A)Sセグメント ミニゲノム: pC-PIC-L-Bsm、 pC-PIC-NP-Bbs、 pol-I-PIC-miniS-GFP

(B)Lセグメント ミニゲノム: pC-PIC-L-Bsm、 pC-PIC-NP-Bbs、 pol-I-PIC-L-GFP-Bsm

(C)r3PIC-GFPart: pC-PIC-L-Bsm、 pC-PIC-NP-Bbs、 pol-I-PIC-L、 pol-I-PIC-NP-GF
P、 pol-I-PIC-GP-GFP;
(D)rPICwt: pC-PIC-L-Bsm、 pC-PIC-NP-Bbs、 pol-I-PIC-L、 pol-I-PIC-S
を用いてBHK-21細胞をトランスフェクトした。
【0325】
我々は、S及びLセグメントミニゲノムのトランスフェクション48時間後に、GFP 発現を
見出し(図4、上記で概略を示したプラスミド組み合わせA及びB)、遺伝子発現において活
性であるリボ核タンパク質(RNPs)としての機能的ピチンデウイルスS及びLセグメントアナ
ログの細胞内再構成を考証した。同じように、r3PIC-GFPart の作製を目的としたトラン
スフェクション Cは、トランスフェクション48時間後にGFP陽性細胞を立証したが、一方
、rPICwt を作製するためのプラスミド組み合わせDは、予測されたとおり、緑色蛍光を立
証しなかった。トランスフェクション168時間後、GFP陽性細胞は、S及びLセグメント ミ
ニゲノムトランスフェクションにおいては大部分が消滅していたが、r3PIC-GFPartを有す
る細胞においては豊富にあり、感染性のGFP発現ウイルスがcDNAから再構成され、細胞培
養中に拡散したことが示された。
【0326】
5.2.3 組換え三セグメントウイルスは野生型ピチンデウイルスより低い力価に増殖する
rPICwt及びr3PIC-GFPartを用いて得られたウイルスで比較増殖曲線を行なった(図2)。
第5.2.2節のトランスフェクションC及びDからの上清を集め、BHK-21細胞中で並行して継
代した(感染多重度=0.01、図2)。両ウイルスについて、ピーク感染力には48時間後に到
達したが、r3PIC-GFPartの方は実質的にrPICwtの方より低かった。これは、三セグメント
r3PIC-GFPartが、その二セグメント野生型親ウイルスと比較して弱毒化されることを示し
た。
【0327】
5.2.4 sP1AGMを発現する組換えr3PICは迅速、強力、かつ多機能なP1A特異的CD8+T細胞応
答を誘導する。
ワクチン接種目的のためのr3PICartベクター送達技術の利用性を試験するために、我々
は、r3PIC-GFPart(図1C)と類似するゲノム構成を有するr3PIC-sP1AGMartワクチンベクタ
ー(図1D)を作製した。我々は、r3PIC-GFPartについて上記で概略を示したものと類似する
手順により、しかしプラスミドpol-I-PIC-NP-GFP及びpol-I-PIC-GP-GFPの代わりにそれぞ
れpol-I-PIC-NP-sP1AGM及びpol-I-PIC-GP-sP1AGMを使用して、sP1AGMを発現するウイルス
(r3PIC-sP1AGMart)を創出した。我々は、BALB/cマウスを、静脈内10e5 フォーカス形成単
位(FFU)のr3PIC-sP1AGMartを用いて静脈内免疫し、8日後、免疫優勢P1A由来H-2Ld制限エ
ピトープ
【化2】
に対するCD8+T細胞応答を、MHCクラスI四量体を使用するフローサイトメトリーによって
測定した。r3PIC-sP1AGMartで免疫したマウスは、P1A35-43特異的CD8T細胞の非常に大き
な集団を末梢血中に現し、それは免疫していないマウスの血液には存在しなかった(図5A
及び5B)。これらの観察は、r3PIC-artベースのウイルスベクターが高度に免疫原性であり
、免疫療法及びワクチン接種のための有望なツールであることを実証した。
【0328】
5.2.5 cDNAからのレスキュー後の初期の継代で試験した場合、それぞれの天然の位置に
ある糖タンパク質及び核タンパク質遺伝子を発現するように設計された組換え三セグメン
トウイルス、及び3’非翻訳領域(UTR)プロモーターの制御下でその糖タンパク質を発現す
るように人為的に設計された組換え三セグメントウイルスの両方が、野生型ピチンデウイ
ルスよりも低い力価に増殖する。
我々は、それぞれ5’及び3'UTRプロモーターの制御下で、すなわち、S-GP/GFPnat(配列
番号15)及びS-NP/GFP (PIC-NP-GFPとしても知られる;配列番号11)からなる人為的重複S
セグメントの文脈においてそのそれぞれの「天然」位置にある、その糖タンパク質(GP)及
び核タンパク質(NP)遺伝子を発現する、三セグメントピチンデウイルスを作製した(図6)
。このr3PIC-GFPnatウイルスは、三セグメントr3PIC-GFPartウイルスについて上記で概略
を示したものと類似の手順によって創出した。r3PIC-GFPnat は、図6に模式的に概略を示
したようにGFPを発現した。培養においてBHK-21細胞で増殖させた場合(感染多重度=0.01
、48時間で収集)、r3PIC-GFPnatは、実質的にrPICwtより低い力価、r3PIC-GFPartについ
て観察されたのと同様に低い力価に到達した(図7;シンボルは個々の平行細胞培養ウェル
についての力価を示す;エラーバーは平均+/-SDを表示する)。これは、三セグメントr3PI
C-GFPnatがその二セグメント野生型親ウイルスと比較して弱毒化されることを示した。
【0329】
5.2.6 免疫欠損マウスの持続感染中に、人為的なゲノム構成を有する組換え三セグメン
トウイルス(r3PIC-GFPart )は、トランスジェニックGFP発現を維持し、野生型ピチンデウ
イルス(rPICwt)より一貫して低い血中ウイルス力価を保つが、一方、その糖タンパク質及
び核タンパク質遺伝子をそのそれぞれの天然位置で発現するように設計された三セグメン
トウイルス(r3PIC-GFPnat)は、結局はGFP発現を喪失し、rPICwtに感染した動物と同等の
血中ウイルス耐荷量に到達する。
我々は、I型及びII型インターフェロン受容体並びにRAG1の三重欠損マウス(AGRマウス
;Grobらの文献、 1999, 「弱毒化仮性狂犬病ウイルス感染の全身性汎発の制御における
マウスにおける個々のインターフェロン系及び特異的免疫の役割(Role of the individu
al interferon systems and specific immunity in mice in controlling systemic diss
emination of attenuated pseudorabies virus infection)」、J Virol, 4748-54)を、
第0日に、10e5フォーカス形成単位(「FFU」)のr3PIC-GFPart、r3PIC-GFPnat、又はrPICwt
ウイルスのいずれか1つで静脈内(i.v.)感染させた。我々は、第7、14、21、28、35、42、
56、77、98、120及び147日に血液を集め、FFUアッセイによってウイルス感染力を決定し
た。これらのアッセイにおいて、我々は、ピチンデウイルス核タンパク質(NP FFU;図8)
又はr3PIC-GFPnat及びr3PIC-GFPartのウイルスGFP導入遺伝子(GFP FFU;図9)を検出した
。これらの値から、我々は、各動物及び各時点についてNP:GFP FFU比を計算した(図10)
【0330】
感染後の最初の21日間の間、r3PIC-GFPnat及びr3PIC-GFPart の総感染力(NP FFUアッセ
イによって決定されるもの)は、AGRマウスの血液中に同様のレベルで存続し、rPICwt感染
対照におけるよりもおよそ10倍低かった(図8)。しかし、第28日以降、r3PIC-GFPnat 感染
力は、NP FFUアッセイによって決定されるとおり、rPICwtと区別できないレベルに到達し
た。反対に、r3PIC-GFPart NP FFU力価は、147日間の観察期間を通じて、rPICwt のもの
よりも、およそ10倍低いレベルにとどまった(図8)。
【0331】
総ウイルス感染力を決定するためにウイルス構造タンパク質NPを検出することに加えて
(図8)、我々は、r3PIC-GFPnat-及びr3PIC-GFPart-感染AGRマウスの血液中で感染力を発現
するGFPを発現する導入遺伝子を評価するためにFFUアッセイを行なった(GFP FFU、図9)。
NP FFU力価(図8)と著しく対照的に、r3PIC-GFPnat-感染AGRマウスにおけるGFP FFU力価は
、第28日から先は降下し、第120日から先は検出不能であった(図9)。これは、r3PIC-GFPa
rt-感染マウスの血液におけるほとんど一定のGFP FFU力価とは対照的であった(図9)。「N
P:GFP FFU比」を計算することによって(図10)、我々は、r3PIC-GFPart-感染マウスにお
いて、事実上全ての感染力(NP FFU)が、GFP導入遺伝子をも発現したことを決定した。こ
れは、147日の観察期間を通じて1の範囲の「NP:GFP FFU比」において裏付けられた(図10
)。著しい対照において、r3PIC-GFPnat-感染マウスの血液における「NP:GFP FFU比」も
、1周辺で開始したが、第28日から先は、数百及びそれ以上に到達した(図10)。これは、
第28日及びそれ以降にr3PIC-GFPnat-感染マウスの血液中を循環しているビリオンの集団
内で、100のうち1以下のみが、まだGFP導入遺伝子を発現したこと、及びGFP発現感染力は
、結局検出可能なレベル未満に降下したことを示した。したがって、r3PIC-GFPartは、AG
Rマウスにおける147日間の持続感染を通じて、GFP導入遺伝子発現を維持した。
【0332】
5.2.7 r3PIC-GFPart-感染マウスの血清から回収されたウイルスは、r3PICwt-感染動物か
ら単離されたウイルスと同様の力価に到達したr3PIC-GFPnat-感染動物からのものと比較
して弱毒化されたまま維持された
持続感染AGRマウスの血清中に循環するウイルスの増殖特性を評価するために、我々は
、BHK-21細胞の感染後147日に集めたウイルス血症の血清を継代し、48時間後にNP FFUア
ッセイによってウイルス感染力を決定した。r3PIC-GFPnat-感染マウスの血清から増殖し
たウイルスは、rPICwtウイルス感染動物からのものと同様又はそれより高いIFF力価に到
達した(図11;シンボルは個々のマウス血清由来ウイルスの力価を示す;エラーバーは平
均+/-SDを表示する)。反対に、r3PIC-GFPart-感染マウスからの血清の継代後に得られた
ウイルス力価は、前述した群のいずれのものより実質的に低かった(図11)。
【0333】
48時間の間継代された、これらのウイルスから、我々は、細胞培養増殖のさらなる解析
のために各群から4つを無作為に選んだ。図11に提示した実験 (血清からの感染力の直接
継代) とは異なって、この実験(図12)は、インプット感染力について正規化されており、
それによって培養において到達したウイルス力価の評価における潜在的交絡要因としての
インプット感染力の異なる量を除外した。したがって、我々は、BHK-21細胞を、標準化し
た感染多重度=0.01で感染させ、48時間後にウイルス力価を決定した(図12;シンボルは
個々のマウス血清由来ウイルスからの力価を示す;エラーバーは平均+/-SDを表示する)。
血清からの直接エクスビボ継代後に見出された力価における差異と同じように、r3PIC-GF
Pnat-由来ウイルスは、rPICwt-由来ウイルスのものと少なくとも同等の力価に到達した。
反対に、インビボ継代されたr3PIC-GFPart に由来するウイルスが到達した力価は、前述
した2つの群のものより実質的に低かった。
【0334】
これは、r3PIC-GFPnat-感染動物の血清から回収したウイルスは、もう弱毒化されてい
なかったが、r3PIC-GFPart-感染マウスの血液に循環しているウイルスはrPICwt-由来ウイ
ルスと比較して明らかにまだ弱毒化されていたことを示唆した。したがって、AGRマウス
における実験を通じてrPICwtウイルス血症より低いr3PIC-GFPartウイルス血症(第5.2.6節
を参照されたい)、及びまた、細胞培養において血液から再増幅された場合のrPICwt力価
より低いr3PIC-GFPart力価から判定して、r3PIC-GFPart は、マウスにおけるインビボ複
製の147日間の期間を通じてその弱毒化を維持した。
【0335】
5.2.8 r3PIC-GFPnatと異なって、人為的なゲノム構成を有する組換え三セグメントウイ
ルス(r3PIC-GFPart)は、その2つのSセグメントを組換えせず、その導入遺伝子を維持した
我々は、AGRマウスにおける持続感染の経過において、r3PIC-GFPnat が、その2つのSセ
グメントを組換えして単一RNAセグメント上にNP及びGP遺伝子を再結合し、それによってG
FP導入遺伝子を排除してしまったか否かを決定したかった。この可能性を試験するために
、我々は、ウイルス感染後147日に各動物から集めた血清試料からウイルスRNAを抽出した
。我々は、それぞれピチンデウイルスNP及びGPに結合するように設計され、かつ、それら
がrPICwtゲノムテンプレート上の357塩基対のPCR アンプリコンを生じると予測されるよ
うにピチンデウイルスSセグメントの遺伝子間領域(「IGR」)にわたるプライマーを使用し
て、RT-PCRを行った。このようなアンプリコンは、実際、rPICwt又はr3PIC-GFPnatのいず
れかに感染させた動物からのウイルスRNAを使用した場合に得られたが、r3PIC-GFPart
染マウスの血液からのウイルスRNAを使用する場合は得られなかった(図13;各レーンは図
8~10に示す実験における1匹の個々のマウスからのRT-PCR生成物を表す)。
【0336】
総合すると、これらのデータは、AGRマウスの持続感染の経過において、r3PIC-GFPnat
はその2つのSセグメント(S-GP/GFPnat、S-NP/GFP)を組換えし、NP及びGPオープンリーデ
ィングフレームをRNAの1つの単一セグメントに再結合することを示す。それによって、そ
れは、GFP導入遺伝子の発現を喪失し、血液からの収集の際及び細胞培養における再拡大
において見られるように細胞培養において、及びウイルス血症のレベルにおいて明白なよ
うにマウスにおいて、その増殖能をrPICwtの増殖能まで高めた。反対に、r3PIC-GFPart
、NP及びGP遺伝子にわたるRT-PCR アンプリコンの欠如において明白なように、その2つの
Sセグメントを組換えしなかった。
【0337】
6.等価物
本明細書に開示されるウイルス、核酸、方法、宿主細胞、及び組成物は、本明細書に記
載される特定の実施態様によって範囲を限定されるべきではない。実際、記載されるもの
に加えて、ウイルス、核酸、方法、宿主細胞、及び組成物の様々な改変は、前述の説明及
び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の
範囲内に入ることが意図される。
【0338】
様々な刊行物、特許及び特許出願が本明細書に引用されており、これらの開示は、その
全体が引用により組み込まれる。
【0339】
様々な刊行物、特許及び特許出願が本明細書に引用されており、これらの開示は、その
全体が引用により組み込まれる。
7.配列表
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023012463000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-11-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【外国語明細書】