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特開2023-124651半導体レーザ素子およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124651
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】半導体レーザ素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20230830BHJP
   H01S 5/24 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H01S5/22
H01S5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028541
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 政治
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AB62
5F173AB63
5F173AB64
5F173AB65
5F173AB73
5F173AF32
5F173AH02
5F173AH06
5F173AH22
5F173AP05
(57)【要約】
【課題】FFPにおける干渉縞の発生を抑制した半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】半導体レーザ素子100は、レーザ共振器140を半導体基板110に直交する方向から平面視したときに、出射領域A1を有する。レーザ共振器140の出射端面S1を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線2が、出射領域A1における上部クラッド層126内に収まっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面発光型の半導体レーザ素子であって、
半導体基板上に形成される下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を含み、前記上部クラッド層にリッジ部が形成されてなるレーザ共振器を備え、
前記レーザ共振器を前記半導体基板に直交する方向から平面視したときに、前記レーザ共振器は、出射端面側に出射領域を有し、
前記レーザ共振器の前記出射端面を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線が、前記出射領域における前記上部クラッド層の内側に収まっていることを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記半導体レーザ素子を前記半導体基板に直交する方向から平面視したときに、前記リッジ部の幅は、前記出射領域の境界において広がっていることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
前記リッジ部の少なくとも側面は、絶縁層で覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記出射端面を正面視したときに、前記出射領域における前記リッジ部の断面形状は矩形であり、
前記リッジ部の幅が、前記ビームプロファイルの横方向の1/e幅より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記リッジ部の幅が前記ビームプロファイルの横方向の1/e幅の3倍より大きいことを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記出射端面を正面視したときに、前記出射領域における前記リッジ部の上端の幅は下端の幅より狭いことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記出射端面を正面視したときに、前記出射領域における前記リッジ部の断面形状は、第1幅を有する下側矩形部分と、前記第1幅より狭い第2幅を有し前記下側矩形部分の上に隣接する上側矩形部分と、を有し、
前記第1幅が、前記ビームプロファイルの横方向の1/e幅より大きいことを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記第1幅が、前記ビームプロファイルの横方向の1/e幅の3倍より大きいことを特徴とする請求項7に記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記出射端面を正面視したときに、前記出射領域における前記リッジ部の断面形状は、前記上端から前記下端に向かって傾斜していることを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記絶縁層は、SiO、SiN、SiON、Al、AlN、AlON、Ta、ZrOからなる群から選択されるひとつを含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記活性層は、In,Ga,Al,As,P,Nからなる群から選択されるひとつまたは複数の材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記半導体レーザ素子を前記半導体基板に直交する方向から平面視したときに、前記レーザ共振器は、前記出射領域と隣接する利得領域を有し、
前記利得領域における前記リッジ部は、レーザ光が横シングルモードを有するように設計されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記出射領域と隣接して、前記レーザ共振器に直交する方向に延在する遮光溝が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記出射領域の中に、前記レーザ共振器に直交する方向に延在する遮光溝が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項15】
端面発光型の半導体レーザ素子であって、
半導体基板上に形成される下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を含み、前記上部クラッド層にリッジ部が形成されてなるレーザ共振器を備え、
前記レーザ共振器を前記半導体基板に直交する方向から平面視したときに、前記レーザ共振器は、出射端面側の出射領域と、出射領域と隣接する利得領域を有し、
前記リッジ部の幅は、前記利得領域と前記出射領域の境界においてステップ状に広がっており、前記出射領域における前記リッジ部の幅は、前記利得領域における前記リッジ部の最大幅の3倍より大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項16】
端面発光型の半導体レーザ素子の製造方法であって、
半導体基板上に、下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を形成するステップと、
前記半導体レーザ素子の出射端面を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線が、レーザ共振器の出射領域において前記上部クラッド層に収まるように前記上部クラッド層にリッジ加工を施すステップと、
前記リッジ加工により前記上部クラッド層に形成されたリッジ部の少なくとも側面を覆う絶縁層を形成するステップと、
を備えることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザポインタ用光源として半導体レーザ(LD)が利用されている。特に、ポインター用光源には、赤や赤外LDが多く用いられており、青や緑のLDも用いられるようになっている。近年、更にポインターの光点をはっきりと視認したり、センサやカメラによって認識したいとの要望が高まっている。
【0003】
半導体レーザ素子としては、光ピックアップ装置等に用いられる半導体レーザにおいて、p型クラッド層にリッジを設けた構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-080867号公報
【特許文献2】特開2008-187068号公報
【特許文献3】特開2000-133877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、半導体レーザを照射した先のレーザの像であるファーフィールドパターン(FFP、遠視野像)を観察したところ、ビーム周辺、具体的にはビームの横側に干渉縞が発生し、指示したいポイントに十分フォーカスした状態で照射できないという問題を認識した。
【0006】
本発明者は、この問題を検証した結果、その原因が、半導体レーザ素子の絶縁層(SiO膜)に由来するものであることを認識するに至った。すなわち、半導体レーザ素子のリッジ部の側面とp型クラッド層の表面にはSiO膜が設けられている。レーザ光がリッジ近傍で、SiOの絶縁層に染み出すと、SiO膜で干渉を起こし、それがFFPにおいて干渉縞を発生させる。絶縁層の材料はSiOに限らず、絶縁性を有し、光が透過、反射するような他の酸化物、窒化物、酸窒化物等の材料でも同様の問題は生じうる。なお、この認識を当業者の一般的な知見と捉えてはならず、本発明者が独自に認識したものである。
【0007】
本開示のある態様はかかる状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、FFPにおける干渉縞の発生を抑制した半導体レーザの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様は、端面発光型の半導体レーザ素子に関する。半導体レーザ素子は、半導体基板上に形成される下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を含み、前記上部クラッド層にリッジ部が形成されてなるレーザ共振器を備える。レーザ共振器を半導体基板に直交する方向から平面視したときに、レーザ共振器は、出射端面側に出射領域を有する。レーザ共振器の出射端面を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線が、出射領域において上部クラッド層の内側に収まっている。
【0009】
本開示の別の態様は、端面発光型の半導体レーザ素子の製造方法に関する。製造方法は、半導体基板上に下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を形成するステップと、半導体レーザ素子の出射端面を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線が、出射領域における上部クラッド層に収まるように上部クラッド層にリッジ加工を施すステップと、リッジ加工により上部クラッド層に形成されたリッジ部の少なくとも側面を覆う絶縁層を形成するステップと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示のある態様によれば、FFPにおける干渉縞の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図2図1の半導体レーザ素子の平面図である。
図3図3(a)は、図2の半導体レーザ素子のA-A’線断面図であり、図3(b)は、図2の半導体レーザ素子のB-B’線断面図である。
図4】ビームスポット径の変化を模式的に示す図である。
図5図5(a)~(e)は、半導体レーザ素子の製造方法を説明する図である。
図6】変形例1.1に係る半導体レーザ素子の平面図である。
図7】実施形態2に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図8図7の半導体レーザ素子の出射端面から見た正面図である。
図9】実施形態3に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図10図9の半導体レーザ素子の出射端面から見た正面図である。
図11】実施形態4に係る半導体レーザ素子の斜視図である。
図12図11の半導体レーザ素子の平面図である。
図13】変形例4.1に係る半導体レーザ素子100Daの平面図である。
図14】実施形態5に係る半導体レーザ素子の出射端面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、または、実施形態の基本的な理解を目的としている。同概要は、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0014】
(実施形態の概要)
一実施形態に係る半導体レーザ素子は、端面発光型の半導体レーザ素子であって、半導体基板上に形成される下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を含み、上部クラッド層にリッジ部が形成されてなるレーザ共振器を備える。レーザ共振器を半導体基板に直交する方向から平面視したときに、レーザ共振器は、出射端面側に出射領域を有する。レーザ共振器の出射端面を正面視したときに、レーザ光のビームプロファイルに関して、強度がピークの1/eである仮想線が、出射領域において上部クラッド層の内側に収まっている。
【0015】
この構成では、ビーム径に対して十分に大きな断面を有するように、リッジ部が、出射端面の近傍において幅方向に拡大して形成される。1/eビーム幅内には、全光強度の95%が含まれるため、上部クラッド層から漏れる光は、全光強度の5%より小さくなる。したがって出射領域においてレーザ光が上部クラッド層から側方に漏れる光を抑制できる。その結果、上部クラッド層の側方から出射されるビームを抑制でき、FFPにおける干渉縞の発生を抑制できる。
【0016】
一実施形態において、半導体レーザ素子を半導体基板に直交する方向から平面視したときに、リッジ部の幅は、出射領域の境界において広がっていてもよく、その形状はたとえばステップ形状をとることができる。この構成により、出射領域内におけるビームの広がりを抑制できる。
【0017】
一実施形態において、リッジ部の少なくとも側面は、絶縁層で覆われていてもよい。上部クラッド層のリッジ部の側面が絶縁層で覆われている場合には、絶縁層に漏れた光が、絶縁層の端面から出射されることとなる。上記構成によれば、絶縁層に漏れる光を抑制できるため、FFPにおける干渉縞の発生を抑制できる。
【0018】
一実施形態において、レーザ共振器の出射端面を正面視したときに、レーザ共振器の出射領域におけるリッジ部の断面形状は矩形であり、リッジ部の幅が、ビームプロファイルの横方向の1/e幅より大きくてもよい。
【0019】
一実施形態において、リッジ部の幅がビームプロファイルの横方向の1/e幅の3倍より大きくてもよい。1/eビーム幅の3倍の範囲内には、全光強度の99.97%が含まれるため、上部クラッド層から漏れる光は、全光強度の0.03%より小さくなる。これにより、FFPの干渉縞をさらに抑制できる。
【0020】
一実施形態において、リッジ部の幅がビームプロファイルの横方向の1/e幅の4倍より大きくてもよい。この場合、上部クラッド層から漏れる光は、全光強度の0.02%より小さくなる。一実施形態において、リッジ部の幅がビームプロファイルの横方向の1/e幅の5倍より大きくてもよい。この場合、上部クラッド層から漏れる光は、全光強度の0.01%より小さくなる。実用的には3倍で十分であるが、よりシャープなFFPを得たい場合には、出射領域の矩形の上部クラッド層の幅を、1/e幅の4倍、好ましくは5倍よりも広く設計するとよい。
【0021】
一実施形態において、レーザ共振器の出射端面を正面視したときに、出射領域におけるリッジ部の上端の幅は下端の幅より狭くてもよい。
【0022】
一実施形態において、出射端面を正面視したときに、出射領域におけるリッジ部の断面形状は、第1幅を有する下側矩形部分と、第1幅より狭い第2幅を有し下側矩形部分の上に隣接する上側矩形部分と、を有してもよい。第1幅が、ビームプロファイルの横方向の1/e幅より大きくてもよい。レーザ共振器は、縦方向に関しては、コア層をクラッド層で挟んだ導波路構造を有しているため、縦方向のビームの広がりは、横方向の広がりに比べて小さい。したがって、リッジ部の立ち上がりである下側矩形部分の幅(第1幅)を広げることにより、横方向の光の漏れを抑制できる。
【0023】
一実施形態において、第1幅は、ビームプロファイルの横方向の1/e幅の3倍より大きくてもよい。第1幅は、ビームプロファイルの横方向の1/e幅の4倍より大きくてもよいし、5倍より大きくてもよい。
【0024】
一実施形態において、レーザ共振器の出射端面を正面視したときに、出射領域における上部クラッド層は、上端から下端に向かって傾斜していてもよい。この傾斜は、ウェットエッチの等方性を利用して形成することができる。
【0025】
一実施形態において、一実施形態において、絶縁層は、SiO、SiN、SiON、Al、AlN、AlON、Ta、ZrOからなる群から選択されるひとつを含んでもよい。
【0026】
一実施形態において、活性層は、In,Ga,Al,As,P,Nからなる群から選択されるひとつまたは複数の材料を含んでもよい。
【0027】
一実施形態において、半導体レーザ素子を半導体基板に直交する方向から平面視したときに、レーザ共振器は、出射領域と隣接する利得領域を有してもよい。レーザ共振器の利得領域における上部クラッド層は、レーザ光が横シングルモードを有するように設計されてもよい。
【0028】
一実施形態において、半導体レーザ素子は、出射領域と隣接して、または、出射領域内に、レーザ共振器に直交する方向に延在する遮光溝が形成されてもよい。
【0029】
一実施形態に係る端面発光型の半導体レーザ素子は、半導体基板上に形成される下部クラッド層、活性層、上部クラッド層の積層構造を含み、前記上部クラッド層にリッジ部が形成されてなるレーザ共振器を備える。レーザ共振器を半導体基板に直交する方向から平面視したときに、レーザ共振器は、出射端面側の出射領域と、出射領域と隣接する利得領域を有する。上部クラッド層のリッジ部の幅は、利得領域と出射領域の境界においてステップ状に広がっており、出射領域の幅は、利得領域の最大幅の3倍より大きい。
【0030】
(実施形態)
以下、好適な実施の形態をもとにして、図面を参照しながら、本開示について説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示の本質的なものであるとは限らない。
【0031】
図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0032】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体レーザ素子100Aの斜視図である。半導体レーザ素子100Aは端面発光型であり、出射端面S1からレーザ光(ビーム)を放射する。半導体レーザ素子100Aの出射端面S1と反射端面S2の間にはレーザ共振器140が形成されている。S1、S2はそれぞれ、前端面、後端面とも称される。
【0033】
レーザ共振器140は、半導体基板110に形成される。レーザ共振器140は、n型クラッド層である下部クラッド層122、活性層である発光層124、p型クラッド層である上部クラッド層126、p型コンタクト層128の積層構造(多層成長層)120を有する。上部クラッド層126には、電流狭窄のためにリッジ加工が施されており、リッジ部150を有する。リッジ部150の少なくとも側面は、図示しない絶縁膜で覆われているが、図1では省略している。またレーザ共振器140の動作には電極が必要であるが、電極については公知技術を用いて適切な箇所に形成すればよいため、図示を省略する。
【0034】
図中、レーザ共振器140の幅方向をx軸、半導体基板110と垂直な方向をy軸、レーザ共振器140の長さ方向、つまりレーザ光の導波方向をz軸ととる。本明細書において、レーザ共振器140を平面視するとは、レーザ共振器140を半導体基板110に直交する方向から平面視すること、つまりy軸に沿ってレーザ共振器140を見ることをいう。またレーザ共振器140の出射端面S1を正面視するとは、z軸に沿ってレーザ共振器140を見ることをいう。
【0035】
レーザ共振器140を平面視したときに、レーザ共振器140は、z軸方向に隣接する複数の領域A1~A3を含む。出射端面S1を含む領域A1を出射領域と称する。出射領域A1と隣接する領域A2を、利得領域と称する。反射端面S2側の領域A3を、反射領域と称する。出射領域A1、利得領域A2、反射端領域A3それぞれの上部クラッド層126のリッジ部150_1,150_2,150_3の幅w,w,wが異なっている。具体的には、出射領域A1のリッジ部150_1の幅wは、利得領域A2の幅wよりも十分に広げられている。
【0036】
なお、反射端領域A3のリッジ部150_3の幅wをリッジ部150_1の幅wと等しくすることにより、半導体レーザ素子100Aをウェハから切り出す際のダイシングライン(劈開面)がずれた場合においても、レーザ共振器の連続性を維持できる。
【0037】
利得領域A2におけるリッジ部150_2の形状に応じて、レーザ光の水平横モードが決まる。リッジ部150_2は、その内部を導波するレーザ光が水平横シングルモードを有するように設計される。たとえば、リッジ部150_2の幅wは2μm程度とすることができ、その長さは一例として1500μm程度とすることができる。
【0038】
利得領域A2内であって、出射領域A1に近い領域には、リッジ部150を避けてx軸方向に伸びる遮光溝160が形成されている。
【0039】
図1には、レーザ共振器140の出射端面S1を正面視したときの、レーザ光のビームプロファイルが模式的に示される。具体的にはビームプロファイルの強度がピークの1/eである仮想線2が示されている。仮想線2の最大幅は、1/e幅と称され、ガウシアンビームのスポット径である。出射端面S1におけるスポット径を、出射スポット径φと称する。出射端面S1におけるレーザ光のビームプロファイルをNFP(ニアフィールドパターン)ともいう。
【0040】
本実施形態において、レーザ共振器140の出射領域A1におけるリッジ部150の幅wは、仮想線2の発光層124より上側が、出射領域A1における上部クラッド層126に収まるように、言い換えると仮想線2の上半分が上部クラッド層126からはみ出さないように定められる。具体的には、出射領域A1におけるリッジ部150_1の幅wが、出射スポット径φよりも大きい。
【0041】
本実施形態では、レーザ共振器140の出射端面S1を正面視したときに、レーザ共振器140の出射領域A1における上部クラッド層126のリッジ部150_1の断面形状は矩形である。したがってリッジ部150_1の幅wは、矩形の幅である。
【0042】
好ましくは、矩形のリッジ部150_1の幅wは、出射ビーム径φの3倍より大きい。より好ましくは、矩形のリッジ部150_1の幅wは、出射ビーム径φの4倍より大きくするとよく、さらには5倍より大きくするとよい。
【0043】
図2は、図1の半導体レーザ素子100Aの平面図である。半導体レーザ素子100Aを平面視したときに、リッジ部150の幅は、出射領域A1と利得領域A2の境界においてステップ状に広がっている。
【0044】
図3(a)は、図2の半導体レーザ素子100AのA-A’線断面図であり、図3(b)は、図2の半導体レーザ素子100AのB-B’線断面図である。上部クラッド層126のリッジ部150_1,150_2の側面は、絶縁膜134によって覆われている。
【0045】
図3(a)では上部クラッド層126のリッジ部150_2の上側にp型コンタクト層128が形成されている。一方、図3(b)を参照すると、出射領域A1において、上部クラッド層126のリッジ部150_1の上側にはp型コンタクト層128が形成されず、絶縁膜134が形成されている。つまり、出射領域A1は電流非注入領域とされ、ゲインを有しない。
【0046】
なお本開示はこれに限定されず、出射領域A1においても、利得領域A2と同様に、リッジ部150_1の上側にp型コンタクト層128を形成し、その上に絶縁膜134を形成してもよい。
【0047】
図3(b)の下段には、レーザ光のx軸方向の光強度分布が示される。断面図には、1/e幅に相当する等高線が仮想線3として示されている。仮想線3のx方向の幅は、ガウシアンビームのx軸方向のスポット径φと把握でき、仮想線3のy方向の高さはガウシアンビームのy軸方向のスポット径dと把握できる。
【0048】
図4は、ビームスポット径dの変化を模式的に示す図である。図4には、半導体レーザ素子100Aを上から平面視した様子が示されている。利得領域A2内におけるスポット径dは、リッジ部150_2の幅wに応じて定まる。レーザ光は、利得領域A2から出射領域A1に入射した後、出射端面S1に向かって導波するにしたがい広がっていく。スポット径dは、利得領域A2に近いほど小さく、出射端面S1に近づくほど大きくなる。出射端面S1におけるスポット径dは、図1に示す出射スポット径φである。
【0049】
上述のように、出射端面S1において、リッジ部150_1の幅wは出射スポット径φよりも大きい(φ<w)。出射領域A1内において、d≦φが成り立つから、出射領域A1内では、常にd<wが成り立つこととなる。つまりレーザ光の大部分は、出射領域A1において上部クラッド層126から絶縁膜134に漏れ出すことなく、導波する。
【0050】
この構成では、出射ビーム径φに対して十分に大きな断面を有するように、出射領域A1におけるリッジ部150_1が、幅方向(x軸方向)に広く形成される。1/eビーム幅内には、全光強度の95%が含まれるため、上部クラッド層126から絶縁膜134に漏れる光は、全光強度の5%より小さくなる。したがって出射領域A1においてレーザ光が上部クラッド層126から側方の絶縁膜134に漏れる光を抑制できる。これにより、上部クラッド層126の側方から出射されるビームを抑制でき、FFPにおける干渉縞の発生を抑制できる。
【0051】
レーザ光の光強度分布に関して、1/eビーム幅の3倍の範囲内には、全光強度の99.97%が含まれる。したがって、矩形のリッジ部150_1の幅wを、出射スポット径φの3倍以上とした場合、上部クラッド層126から漏れる光は、全光強度の0.03%より小さくなる。これにより、FFPの干渉縞をさらに抑制できる。
【0052】
同様に、レーザ光の光強度分布に関して、1/eビーム幅の4倍の範囲内には、全光強度の99.98%が含まれる。したがって、矩形のリッジ部150_1の幅wを、出射スポット径φの4倍以上とした場合、上部クラッド層126から漏れる光は、全光強度の0.02%より小さくなる。1/eビーム幅の5倍の範囲内には、全光強度の99.99%が含まれる。したがって、矩形のリッジ部150_1の幅wを、出射スポット径φの5倍以上とした場合、上部クラッド層126から漏れる光は、全光強度の0.01%より小さくなる。したがって矩形のリッジ部150_1の幅wを大きくするほど、側面への漏れ光を抑制できる。実用的には3倍で十分であるが、よりシャープなFFPを得たい場合には、1/e幅の4倍、好ましくは5倍よりも、出射領域の矩形の上部クラッド層の幅を広く設計するとよい。なお、端面発光型の半導体レーザにおいて、出射端におけるビーム形状(スポット径)は一般的に積層方向であるy軸方向よりエピ成長させた面方向であるx軸方向の方が大きい。また、y軸方向のスポット径dの大きさは、クラッド層126の厚みに比べて十分に小さい。
【0053】
ここまでは、出射領域A1のリッジ部150_1の幅wと出射スポット径φの関係に着目して、半導体レーザ素子100Aの構成を説明したが、出射領域A1のリッジ部150_1の幅wと利得領域A2のリッジ部150_2の幅wの関係から、半導体レーザ素子100Aの特徴を説明することもできる。
【0054】
出射スポット径φは、利得領域A2のリッジ部150_2の幅w2に大きく依存している。しかし、本開示の構成のように出射領域A1の幅wが広い場合、利得領域A2で規制された幅wよりも広がる方向に光は進むこととなる。つまり、出射領域A1の共振器方向の長さが長いほど、出射スポット径φは、リッジ部150_2の幅wより大きくなる。一方で、出射領域A1の共振器方向の長さが長いと、半導体レーザ素子としては非利得領域が長くなり発光効率が悪くなる。本開示では、出射領域A1の共振器方向の長さから見積もられる出射スポット径φは、幅wの2倍以下であり、大きくても3倍を超えることはない。言い換えると、w>w×3となるように、リッジ部150_1,150_2を設計することで、出射領域A1におけるレーザ光の横方向の漏れを抑制することができるといえる。
【0055】
つまり、k(k≧3)をパラメータとして、w>w×kとしてリッジ部150_1,150_2を設計すれば、出射領域A1におけるレーザ光の横方向への漏れをさらに抑制することができる。kは、4、5、…10と大きくするほど、干渉縞の発生を抑制できる。
【0056】
なお、出射領域A1のリッジ部150_1の幅wは、実施形態2~実施形態4の場合には、wとして考えればよい。
【0057】
続いて半導体レーザ素子100Aの製造方法を説明する。図5(a)~(e)は、半導体レーザ素子100Aの製造方法を説明する図である。ここでは図2のB-B’線断面図(出射領域側)に着目して、半導体レーザ素子100Aの製造方法を説明する。
【0058】
図5(a)を参照する。半導体基板110はたとえばn-GaAs基板である。半導体基板110の上面(表面)に、MOCVD(有機金属気相化学成長)法により、多層成長層120を形成する。多層成長層120は下部クラッド層122、発光層124、上部クラッド層126、p型コンタクト層128を含む。
【0059】
下部クラッド層122は、たとえば厚さ2.0μmのAlGaInPあるいはAlGaAsからなるn型クラッド層である。
【0060】
発光層124は、量子井戸構造を有する活性層である。活性層はたとえば、バリア層および井戸層を含み、In,Ga,Al,As,P,Nからなる群から選択されるひとつまたは複数の材料を含んで構成される。バリア層は、たとえば厚さ6nmのAlGaInPからなる4層構造としてもよい。井戸層は、たとえば厚さ5nmのGaInP層の3層構造としてもよい。なお、活性層は、(Al)GaInPや(Al)GaAsからなる単層構造であってもよい。また、活性層は、GaN、InGaN、AlGaN等の窒化物半導体でもよい。
【0061】
上部クラッド層126は、たとえば厚さ2.0μmのAlGaInPあるいはAlGaAsからなるp型クラッド層である。
【0062】
p型コンタクト層128は、たとえば厚さ0.5μmのGaAsである。
【0063】
図5(b)を参照する。多層成長層120の上に、CVD(化学気相成長)法によって、熱酸化膜(SiO膜)129を形成する。そして熱酸化膜129をフォトレジスト工程によりパターニングし、エッチング用マスクを形成する。エッチング用マスクは、リッジ部150の形状を規定する。出射領域A1において、エッチング用マスクの幅、言い換えるとリッジ部150_1の幅wはたとえば100μm程度とすることができる。利得領域A2におけるエッチング用マスクの幅、言い換えるとリッジ部150_2の幅wは、たとえば2μm程度であり、w≒w×50となっている。エッチング用マスクの出射領域A1の共振器方向の長さは、たとえば10μmである。
【0064】
図5(c)を参照する。HCl系のエッチャントを用いた化学エッチング、あるいはドライエッチングプロセスにより、熱酸化膜129をエッチング用マスクとして、p型コンタクト層128から上部クラッド層126の途中の深さまでエッチングする。ドライエッチングの場合、表面のダメージ層を除去するために、p型コンタクト層128の表面をHを含むエッチャントによりエッチング後、マスクである熱酸化膜129をHF系のエッチャントで除去する。これによりリッジ加工が施され、リッジ部150_1が形成される。リッジ部150_1の幅wはたとえば100μmである。
【0065】
図5(d)を参照する。出射領域A1以外の部分を覆うマスク(不図示)を形成し、エッチングによって出射領域A1のp型コンタクト層128が除去される。なお、利得領域A2との絶縁性が確保されている場合は、出射領域A1のp型コンタクト層128は残してもよい。
【0066】
図5(e)を参照する。続いて、SiO、SiN、SiON、Al、AlN、AlON、Ta、ZrOからなる群から選択されるひとつを含む絶縁膜134が形成される。その後、電極が形成される。
【0067】
以上が半導体レーザ素子100Aの製造方法である。
【0068】
実施形態1に関連する変形例を説明する。
【0069】
(変形例1.1)
図6は、変形例1.1に係る半導体レーザ素子100Aaの平面図である。図2では、遮光溝160が、出射領域A1を避けて形成されていたが、この変形例では、遮光溝160は、出射領域A1内に形成されてもよい。
【0070】
(変形例1.2)
遮光溝160は省略してもよい。
【0071】
(変形例1.3)
図2において、リッジ部150_1の幅wは、チップ(半導体基板110)の幅と等しくてもよい。この場合、反射端領域A3のリッジ部150_3の幅wも、チップの幅と等しくするとよい。
【0072】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る半導体レーザ素子100Bの斜視図である。実施形態2では、実施形態1と比べて出射領域A1におけるリッジ部150_1の断面形状が異なっている。
【0073】
図8は、図7の半導体レーザ素子100Bの出射端面S1から見た正面図である。実施形態2では、出射端面S1を正面視したときに、出射領域A1におけるリッジ部150_1の上端の幅wは下端の幅wより狭くなっている。
【0074】
具体的には実施形態2では、出射端面S1を正面視したときに、出射領域A1におけるリッジ部150_1の断面形状は、下側矩形部分152と上側矩形部分154を含んでいる。下側矩形部分152の幅wは、上側矩形部分154の幅wよりも広くなっている。上側矩形部分154の幅wは、利得領域A2におけるリッジ部150_2の幅wと等しい。
【0075】
実施形態2においても、実施形態1と同様に、仮想線2の発光層124より上側が、出射領域A1におけるリッジ部150_1に収まるように、リッジ部150_1の幅が拡張されている。具体的には、出射領域A1における下側矩形部分152の幅wが、出射スポット径φ(1/e幅)よりも大きい。
【0076】
好ましくは、w>3×φであり、wを大きくするほど、側面に漏れるレーザ光を低減できる。さらにw>4×φ、w>5×φと広げていくと、光の漏れをさらに低減できる。
【0077】
実施形態2に係る半導体レーザ素子100Bの製造方法は、基本的には、実施形態1に係る半導体レーザ素子100Aの製造方法と同様であり、リッジ部150_1を2段階でエッチングするように修正すればよい。
【0078】
実施形態2に関連する変形例を説明する。
【0079】
(変形例2.1)
図7の半導体レーザ素子100Bに、遮光溝160を追加してもよい。この場合において、遮光溝160は、図2と同様に、出射領域A1を避けて形成されてもよい。
【0080】
(変形例2.2)
図7において、出射領域A1は電流非注入領域であり、p型コンタクト層128は利得領域A2のみに形成され、出射領域A1にはp型コンタクト層128は形成されていなくてもよい。この場合、図8において、リッジ部150_1の上側矩形部分154の上側のp型コンタクト層128はエッチングにより除去される。
【0081】
(実施形態3)
図9は、実施形態3に係る半導体レーザ素子100Cの斜視図である。実施形態3では、実施形態2と同様に、出射端面S1を正面視したときに、出射領域A1におけるリッジ部150_1の上端の幅wは下端の幅wより狭くなっているが、実施形態2とはリッジ部150_1の断面形状が異なっている。
【0082】
図10は、図9の半導体レーザ素子100Cの出射端面S1から見た正面図である。実施形態3では、出射端面S1を正面視したときに、出射領域A1におけるリッジ部150_1の断面形状は、上端から下端に向かって傾斜(テーパー)している。上端の幅wは、利得領域A2におけるリッジ部150_2の幅wと等しい。リッジ部150_1の裾は緩やかに伸びていてもよい。あるいはリッジ部150_1の裾は直線的に伸びていてもよく、したがってリッジ部150_1の断面形状は台形であってもよい。
【0083】
実施形態3においても、仮想線2の発光層124より上側が、出射領域A1におけるリッジ部150_1に収まるように、リッジ部150_1の幅が拡張されている。具体的には、リッジ部150_1の下端の幅(裾の幅)wが、出射スポット径φ(1/e幅)よりも大きい。好ましくは、w>3×φであり、wを大きくするほど、側面に漏れるレーザ光を低減できる。さらにw>4×φ、w>5×φと広げていくと、光の漏れをさらに低減できる。
【0084】
リッジ部150_1の断面形状、すなわち上端の幅wおよび高さ、言い換えると傾斜の程度は、リッジ部150_1の傾斜部分が仮想線2と交差しないように定めればよい。
【0085】
実施形態3に係る半導体レーザ素子100Cの製造方法は、基本的には、実施形態1に係る半導体レーザ素子100Aの製造方法と同様である。リッジ部150_1の斜面は、ウェットエッチの等方性を利用して形成することができる。
【0086】
実施形態3に関連する変形例を説明する。
【0087】
(変形例3.1)
図9の半導体レーザ素子100Cに、遮光溝160を追加してもよい。この場合において、遮光溝160は、図2と同様に、出射領域A1を避けて形成されてもよい。
【0088】
(変形例3.2)
図9において、出射領域A1は電流非注入領域であり、p型コンタクト層128は利得領域A2のみに形成され、出射領域A1にはp型コンタクト層128は形成されていなくてもよい。この場合、図10において、リッジ部150_1の上側のp型コンタクト層128はエッチングにより除去される。
【0089】
(実施形態4)
図11は、実施形態4に係る半導体レーザ素子100Dの斜視図である。なお、図11に示した実施形態4の出射端面S1から見た正面図は、図3(b)で示した正面図と同様の形状となる。また、図12は、図11の半導体レーザ素子100Dの平面図である。実施形態1~3では、利得領域A2のリッジ部150_2の幅が一定であったが、実施形態4では、平面視したときに、リッジ部150_2がテーパーしている。利得領域A2は、ストレート部A2aと、テーパー部A2bを含む。ストレート部A2aの幅wは一定であり、テーパー部A2bでは、幅がwからwに向かって増大していく。リッジ部150_1と隣接して遮光溝160が形成されてもよい。
【0090】
実施形態4においても、実施形態1~3と同様の効果を得ることができる。
【0091】
実施形態4に関連する変形例を説明する。
【0092】
(変形例4.1)
図13は、変形例4.1に係る半導体レーザ素子100Daの平面図である。この半導体レーザ素子100Daでは、図12の半導体レーザ素子100Dと比べて、遮光溝160の形成箇所が異なる。具体的には図6と同様に、遮光溝160は、出射領域A1内に、リッジ部150_1と重なるように形成されている。
【0093】
(変形例4.2)
図11において、出射領域A1は電流非注入領域であり、p型コンタクト層128は利得領域A2のみに形成され、出射領域A1にはp型コンタクト層128は形成されていなくてもよい。この場合、リッジ部150_1の上側のp型コンタクト層128はエッチングにより除去され、その正面図は、図3(b)と同様となる。
【0094】
(変形例4.3)
利得領域A2の形状は、図12に示すものに限定されない。たとえばストレート部A2aを省略して、利得領域A2全体をテーパー部A2bとしてもよい。また、出射領域A1はテーパー部A2bをテーパーが広がる方向に単純に延長した形であってもよい。
【0095】
(実施形態5)
図14は、実施形態5に係る半導体レーザ素子100Eの出射端面S1から見た正面図である。
【0096】
実施形態5では、出射領域A1におけるリッジ部150_1の断面形状は、台形部分156と矩形部分158を含む。台形部分156は、上端から下端に向かって傾斜(テーパー)している。台形部分156の斜面(裾)は、緩やかに変化していてもよい。上端の幅wは、利得領域A2におけるリッジ部150_2の幅wと等しい。
【0097】
リッジ部150_1の台形部分156の断面形状、すなわち上端の幅wおよび高さ、言い換えると傾斜の程度は、台形部分156の傾斜部分が仮想線2と交差しないように定めればよい。
【0098】
最後に、全体に関連する変形例を説明する。
【0099】
(変形例1)
実施形態1~4では、リッジ部150の側面が絶縁膜134によって覆われる場合を説明したがその限りでない。絶縁膜134が存在しない場合であっても、リッジ部150と隣接して、空隙や金属膜、その他の材料が存在する場合に、リッジ部150から漏れた光が、リッジ部150と隣接する領域から放射され、干渉縞を形成する可能性がある。したがって、出射領域A1においてリッジ部150_1の幅を広げる技術は、絶縁膜134の有無にかかわらず適用することができる。
【0100】
(変形例2)
出射領域A1におけるリッジ部150_1の断面形状は、実施形態で説明したものに限定されず、ピークの1/eの強度を示す仮想線が、上部クラッド層126の内側に収まるような形状に広がっていればよい。
【0101】
(変形例3)
上部クラッド層126には、リッジ部150と隣接して、バンク部を形成してもよい。バンク部は、リッジ部150を保護する等の目的で、リッジ部150の両側面のそれぞれに共振器方向全長に亘って形成される。また、バンク部の高さは、リッジ部150の高さと同じ高さ(y方向における厚み)とすることができる。
【0102】
(変形例5)
半導体レーザ素子100の用途は、レーザポインタには限定されず、レベラや測距儀、センサ、プロジェクタ用の光源などにも使用可能である。
【0103】
半導体レーザ素子100の出射光を集光して利用する場合、ビームプロファイルが悪いと、最小スポット径が大きくなってしまう。本実施形態によれば、半導体レーザ素子100の出射光を集光した場合の最小スポット径を小さくすることも可能であり、したがって光ディスクのピックアップなどにも適用できる。
【0104】
実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0105】
100 半導体レーザ素子
S1 出射端面
S2 反射端面
110 半導体基板
120 多層成長層
122 下部クラッド層
124 発光層
126 上部クラッド層
128 p型コンタクト層
134 絶縁膜
140 レーザ共振器
150 リッジ部
152 下側矩形部分
154 上側矩形部分
156 台形部分
158 矩形部分
160 遮光溝
A1 出射領域
A2 利得領域
A3 反射端領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14