(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124659
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】魚釣り用リール、魚釣り用リールの改造方法、魚釣り用リールの改造キット
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
A01K89/015 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028561
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】515078291
【氏名又は名称】株式会社ワイズクラフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】平本 靖雄
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108EC03
(57)【要約】
【課題】本発明は、操作性が向上された新規な魚釣り用リール、操作性能を向上させる魚釣り用リールの改造方法並びに魚釣り用リールの改造キットを提供することを目的とする。
【解決手段】 両軸受型の魚釣り用リール1における釣り糸が巻き回されるスプール2の回転軸となるスプール軸21に取り付けられた玉軸受3の内径を前記スプール軸21の外径より大きくし、前記スプール軸21と前記玉軸受3との隙間をスペーサ4にて埋める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両軸受型の魚釣り用リールであって、
釣り糸が巻き回されるスプールと、
前記スプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられた玉軸受と、
を具備してなり、
前記玉軸受の内径が前記スプール軸の外径より大きくなされ、
前記スプール軸と前記玉軸受との隙間を埋めるスペーサが設けられてなることを特徴とする魚釣り用リール。
【請求項2】
請求項1に記載の魚釣り用リールにおいて、
一のスペーサに対し複数個の玉軸受が外嵌されてなる魚釣り用リール。
【請求項3】
両軸受型の魚釣り用リールの改造方法であって、
釣り糸が巻き回されるスプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられている純正玉軸受を取り外す脱軸受工程と、
前記純正玉軸受が取り付けられていた位置にスペーサを取り付けることによって前記スプール軸の軸径を部分的に拡大する拡径工程と、
前記スペーサの外径に相当する内径を有し、且つ、前記純正玉軸受の外径に相当する外径を有する玉軸受を前記スペーサに外嵌させる外嵌工程と、
を実行することを特徴とする魚釣り用リールの改造方法。
【請求項4】
両軸受型の魚釣り用リールの改造キットであって、
釣り糸が巻き回されるスプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられて前記スプール軸の軸径を部分的に拡大するスペーサと、
前記スペーサの外径に相当する内径を有する玉軸受と、
を具備してなることを特徴とする魚釣り用リールの改造キット。
【請求項5】
請求項4に記載の魚釣り用リールの改造キットにおいて、
前記スペーサに、前記玉軸受の抜け止めとなるフランジが設けられてなる魚釣り用リールの改造キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受型の魚釣り用リール、両軸受型の魚釣り用リールの改造方法、及び、両軸受型の魚釣り用リールの改造キットに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り竿(ロッド)に取り付けられる魚釣り用リールは、釣り糸を巻き取るための釣り道具である。前記魚釣り用リールは、その構造の違いによって、両軸受型、スピニング型、又は、スピンキャスト型などに種別される。
【0003】
このうち両軸受型の魚釣り用リールは、釣り糸を巻き回すためのスプールの回転軸となるスプール軸の両端を左右のケーシングに内蔵された玉軸受(ボールベアリング)にて軸受けする構造を有している。この種の魚釣り用リールは、前記スプールを回転させながら前記スプール軸に対して釣り糸を直角方向に巻き取る仕組みとなされているため、他の構造のリールと比較して巻き上げ力が強いという利点を有する。
【0004】
その一方で、釣り糸の繰り出しは前記スプールの回転抵抗に逆らいながら行われるため、比較的軽い仕掛けを遠投することが困難であった。
【0005】
この点につき、下記特許文献1に記載の発明(魚釣り用リール)では、玉軸受の外径を小さくすることによって、軸受内部での回転時における摩擦抵抗を軽減し、もってスプールの回転性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即ち、前記特許文献1に記載された発明では、スプールの回転抵抗を下げることによって軽い仕掛けでも遠投可能としている。
【0008】
しかしながら、スプールの回転抵抗が下がれば慣性モーメントが増加することになり、遠投の後半時点においてスプールの回転速度が釣り糸の繰り出し速度より勝り、釣り糸が過剰に繰り出されるバックラッシュ現象が起きやすくなる。
【0009】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、操作性が向上された新規な魚釣り用リール、操作性を向上させる魚釣り用リールの改造方法並びに魚釣り用リールの改造キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するための本発明の魚釣り用リールは、両軸受型の魚釣り用リールであって、釣り糸が巻き回されるスプールと、前記スプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられた玉軸受と、を具備してなり、前記玉軸受の内径が前記スプール軸の外径より大きくなされ、前記スプール軸と前記玉軸受との隙間を埋めるスペーサが設けられてなることを特徴とする(以下、「本発明リール」と称する。)。
【0011】
前記本発明リールにおいては、一のスペーサに対し複数個の玉軸受が外嵌されてなるものが好ましい態様となる。
【0012】
前記技術的課題を解決するための本発明の魚釣り用リールの改造方法は、両軸受型の魚釣り用リールの改造方法であって、釣り糸が巻き回されるスプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられている純正玉軸受を取り外す脱軸受工程と、前記純正玉軸受が取り付けられていた位置にスペーサを取り付けることによって前記スプール軸の軸径を部分的に拡大する拡径工程と、前記スペーサの外径に相当する内径を有し、且つ、前記純正玉軸受の外径に相当する外径を有する玉軸受を前記スペーサに外嵌させる外嵌工程と、を実行することを特徴とする(以下、「本発明改造方法」と称する。)。
【0013】
前記技術的課題を解決するための本発明の魚釣り用リールの改造キットは、両軸受型の魚釣り用リールの改造キットであって、釣り糸が巻き回されるスプールの回転軸となるスプール軸に取り付けられて前記スプール軸の軸径を部分的に拡大するスペーサと、前記スペーサの外径に相当する内径を有する玉軸受と、を具備してなることを特徴とする(以下、「本発明改造キット」と称する。)。
【0014】
前記本発明改造キットにおいては、前記スペーサに、前記玉軸受の抜け止めとなるフランジが設けられてなるものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、魚釣り用リールの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、本発明リールの一実施形態を示す斜視図であり、
図1(b)は、前記本発明リールのスプールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記本発明リールに取り付けられたスペーサを示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明改造方法の実行を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、スプール軸に純正玉軸受を取り付けた状態を示す断面図であり、
図4(b)は、スプール軸に前記スペーサと玉軸受を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態に係る本発明リールのスプールを示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、スペーサの他の実施形態を示す斜視図であり、
図6(b)は、スプール軸に前記スペーサと玉軸受を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<本発明リール1>
図1に、本発明リール1を示す。前記本発明リール1は両軸受型の魚釣り用リールであり、「スプール(2)」と、「玉軸受(3)」と、「スペーサ(4)」と、を具備する。
【0019】
‐スプール2‐
前記スプール2は、前記本発明リール1における釣り糸を巻き回すためのパーツであり、前記本発明リール1のハンドル11を回せばスプール軸21を回転中心として回転する仕組みとなされている。本実施形態において前記スプール軸21の外径は3mmとなされている。
【0020】
‐玉軸受3‐
前記玉軸受3は、前記スプール軸21に取り付けられて前記スプール2の回転時における摩擦を軽減するための機械要素である。本実施形態においては前記玉軸受3として、市販のボールベアリング(DDL‐1060ZZ:外径10mm、内径6mm)を用いた。
【0021】
‐スペーサ4‐
前記スペーサ4は、前記スプール軸21と前記玉軸受3との隙間を埋める役割を担う。即ち、前記本発明リール1においては前記玉軸受3の内径が前記スプール軸21の外径より大きくなされているため、前記スプール軸21に前記玉軸受3を直接取り付けると、前記スプール軸21の外周回りと前記玉軸受3の内周回りとの間に環状の隙間が生じる。本実施形態においては前記スペーサ4として、
図2に示す円筒状(内径3mm、外径6mm)のスペーサ本体41と、前記スペーサ本体41の一端に設けられたフランジ(外径6.5mm)42とを具備してなる樹脂成型品を用いた。
【0022】
<本発明改造方法、本発明改造キット10>
図3に、本発明改造方法を示す。前記本発明リール1は、市販の魚釣り用リール100に対し、前記本発明改造方法を実行することによって構築したものである。前記本発明改造方法では、「脱軸受工程」と、「拡径工程」と、「外嵌工程」と、を実行する。なお、本実施形態においては前記本発明改造方法を実行するにあたり、スペーサ4と、玉軸受3と、を具備してなる本発明改造キット10を用いた。
【0023】
‐脱軸受工程‐
前記脱軸受工程では、釣り糸が巻き回されるスプール2の回転軸となるスプール軸21に取り付けられている純正玉軸受30を取り外す。実際には、市販の魚釣り用リール100から前記スプール2を取り外し(
図3(a)参照)、前記スプール軸21に取り付けられている前記純正玉軸受30を取り外す(
図3(b)参照)。なお、前記純正玉軸受30は、市販の魚釣り用リール100に元から備えられていた純正の玉軸受を意味する。本実施形態において取り外された前記純正玉軸受30は、内径3mm、外径10mmの寸法を有するものであった。
【0024】
‐拡径工程‐
前記拡径工程では、前記純正玉軸受30が取り付けられていた位置にスペーサ4を取り付けることによって前記スプール軸21の軸径を部分的に拡大する。本実施形態においては、前記本発明改造キット10に付帯のスペーサ(
図2参照)4を用いて前記拡径工程を実行した。前記拡径工程の実行により、前記スプール軸21における前記スペーサ4が取り付けられた部分の軸径は3mmから6mmに拡大する。
【0025】
‐外嵌工程‐
前記外嵌工程では、前記スペーサ4の外径に相当する内径を有し、且つ、前記純正玉軸受30の外径に相当する外径を有する玉軸受3を前記スペーサに外嵌させる。本実施形態においては、前記本発明改造キット10に付帯の玉軸受(外径10mm、内径6mm)3を用いて前記外嵌工程を実行した。
【0026】
前記各工程の実行後、前記スプール2を元の位置に戻せば、前記本発明リール1が構築される。
図4(a)に示すように、市販の魚釣り用リール100ではスプール軸21に直接的に純正玉軸受30が取り付けられていたが、
図4(b)に示すように、前記本発明リール1では前記スプール軸21と前記玉軸受3との隙間を埋めるようにして前記スペーサ4が設けられた構造となる。
【0027】
即ち、前記本発明リール1では、前記スプール軸21に取り付けられた前記玉軸受3の内径(φ1:6mm)が前記純正玉軸受30の内径(φ0:3mm)より大きくなる。又、前記玉軸受3のボール寸法が前記純正玉軸受30のボール寸法より小さくなるため、前記玉軸受3の回転時における摩擦抵抗が軽減される。その結果、前記本発明リール1におけるスプール2の回転抵抗は市販の魚釣り用リール100より小さくなる。
【0028】
その一方で、前記玉軸受3は前記スプール軸21の軸径より大きい前記スペーサ4の周囲を回転することになるため、前記スプール2の慣性モーメントは市販の魚釣り用リール100より小さくなる。
【0029】
即ち、前記本発明リール1における前記スプール2には、市販の魚釣り用リール100と比較して、より軽い力によって回転を開始する一方で、回転が停止するまでの時間が短いといった特性が付与される。
【0030】
これより前記本発明リール1は、比較的軽い仕掛けを投げることが容易である上にバックラッシュが発現し難くいといった操作性が向上されたものとなる。
【0031】
ところで、本実施形態における前記本発明リール1では、前記玉軸受3として、外径10mm、内径6mmのものを用いているが、前記玉軸受3は、外嵌させるスペーサ4の外径に相当する内径を有するものであればその寸法は特に限定されない。
【0032】
又、本実施形態における前記本発明リール1では、前記スプール軸21の両軸それぞれに対し、前記スペーサ4を介して前記玉軸受3を取り付けているが、前記スプール軸21の左右いずれかの軸(片軸)に対してのみ前記スペーサ4を介した前記玉軸受3の取り付けを行っても良い。
【0033】
更に、本実施形態における前記本発明リール1では、一のスペーサ4に対し一の玉軸受3を外嵌させているが、
図5に示すように、一のスペーサ4に対し複数個の玉軸受3を外嵌させても良い。このように一のスペーサ4に対し複数個の玉軸受3を外嵌させると、定格荷重が増加するため耐久性が向上する。
【0034】
加えて、本実施形態における前記本発明リール1では、前記スペーサ4として、円筒状(内径3mm、外径6mm)のスペーサ本体41と、前記スペーサ本体41の一端に設けられたフランジ(外径6.5mm)42とを具備してなる樹脂成型品を用いているが(
図2参照)、前記スペーサ4は、前記スプール軸21と前記玉軸受3との隙間を埋め得るものであればその形状や寸法、或いは素材について特に限定されない。
【0035】
前記スペーサ4のその他の形態としては、
図6に示すようなスペーサ本体41の他端側に括れ部43が設けられてなり、玉軸受3を外嵌させた後に留め金44を前記括れ部43に嵌め、もって前記玉軸受3の抜け止めを図るものなどを挙げることができる。
【0036】
なお、本実施形態における前記本発明改造方法では、市販の魚釣り用リール100から前記スプール2を取り外した後、前記スプール軸21に取り付けられている前記純正玉軸受30を取り外しているが、市販の魚釣り用リール100には、前記純正玉軸受30が左右のケーシングに内蔵されている構造のものもあり、この場合、前記スプール2の取り外しに応じて前記純正玉軸受30が前記ケーシング内に残存することになる。従って、前記脱軸受工程の実行後、前記ケーシング内に存存している前記純正玉軸受30を取り外す必要が生じる。
【0037】
又、本実施形態における前記本発明改造方法では、前記拡径工程の実行後に前記外嵌工程を実行しているが、前記拡径工程の前に前記外嵌工程を実行しても良いし、前記拡径工程と前記外嵌工程とを同時に実行しても良い。
【0038】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、魚釣り用リールの操作性を向上する手段として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
1 本発明リール(魚釣り用リール)
2 スプール
21 スプール軸
3 玉軸受
30 純正玉軸受
4 スペーサ
10 本発明改造キット
100 市販の魚釣り用リール