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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124666
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】雨水排水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20230830BHJP
   E04D 13/068 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
E04D13/08 301B
E04D13/068 503Z
E04D13/068 504B
E04D13/068 504J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028570
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 舞
(57)【要約】
【課題】下屋よりも上方の屋根からの雨水と下屋の軒樋からの雨水とを効率よく排水でき、かつ、施工の作業性及び意匠性を向上できる雨水排水構造を提供する。
【解決手段】雨水排水構造は、下屋を備える建物に設置され、下屋の軒先に取り付けられた軒樋と、下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上側竪樋と、軒樋の貫通孔に取り付けられ、軒樋の雨水を下方に排出し、サイフォン現象を誘発するドレン40とを含む。ドレンの上側ドレン部材は、軒樋の底板の上面に取付けられる上フランジと、貫通孔を貫通する上側筒部と、上フランジの上面の周方向複数位置に立設される羽根部と、羽根部に支持され、上側竪樋を接続する上側竪樋接続部とを有する。ドレンの下側ドレン部材は、下フランジの下側に設けられ、内側に上側筒部が挿入される下側筒部を有する。上側竪樋接続部の下端は、上フランジの上面より高い位置にある。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下屋を備える建物に設置され、前記下屋よりも上方の屋根からの雨水と、前記下屋からの雨水とを排水する雨水排水構造であって、
前記下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔を有する軒樋と、
前記下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上側竪樋と、
前記貫通孔に取り付けられ、前記軒樋の雨水を下方に排出し、サイフォン現象を誘発するドレンと、を備え、
前記ドレンは、上側ドレン部材と、下側ドレン部材とを有し、
前記上側ドレン部材は、前記軒樋の底板の上面に取付けられる上フランジと、前記上フランジの径方向内側端から径方向内側に向かうに従って下方に延設され、前記貫通孔を貫通する上側筒部と、前記上フランジの上面の周方向複数位置に立設される羽根部と、前記羽根部に支持され、前記上側竪樋を接続する上側竪樋接続部と、を有し、
前記下側ドレン部材は、前記軒樋の前記底板の下面に取付けられる下フランジと、前記下フランジの下側に設けられ、内側に前記上側筒部が挿入される下側筒部と、を有し、
前記下側筒部は、雨水を下方に排出する下側竪樋が接続され、
前記上側竪樋接続部の下端は、前記上フランジの上面より高い位置にある、
雨水排水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の雨水排水構造において、
前記上側竪樋接続部の内径は、前記下側筒部の内径より小さい、雨水排水構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の雨水排水構造において、
前記上側竪樋の下端は、前記上フランジの上面より高い位置にある、雨水排水構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の雨水排水構造において、
前記上側竪樋の下端は、前記上フランジの上面より低い位置にある、雨水排水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、下屋を備える建物において雨水を排水する雨水排水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の屋根の軒先に取り付けられた軒樋に流れ落ちた雨水を集水して竪樋に送り、竪樋を通って下側から排出することが行われる。このとき竪樋での排水処理量を高くするために、サイフォン現象により大量の雨水を効率よく排水することが考えられる。
【0003】
特許文献1には、底面に貫通孔を有する軒樋と、貫通孔を貫通した排水部材の下側の筒部に接続された竪樋とを備える雨水排水構造が記載されている。この雨水排水構造の排水部材は、上端に配置された板状の蓋部材と、筒部を有する装着筒と、装着筒のフランジ上面と蓋部材の下面とを連結する複数の縦リブとを有し、サイフォン現象を起こすとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6279795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サイフォン現象を利用して大量の雨水を効率よく排水する雨水排水構造を、下屋を有する建物に取り付けて、下屋の軒先に取り付けた下屋軒樋から雨水を効率よく排水することが考えられる。また、このとき、下屋よりも上方の屋根、例えば大屋根側から排水管を下ろし、下屋軒樋の中に雨水を排水することも考えられる。しかしながら、この構成では、排水管からの排水が下屋軒樋の底面に当たって水跳ねが生じる可能性がある。このために、下屋軒樋の一部に上からの排水管を貫通させると共に、軒樋の排水管貫通位置とは別の位置にドレンを接続し、ドレンに接続した枝管の下流側端を排水管の軒樋より下側に接続することが考えられる。これにより、排水管の上側から流れた雨水と、下屋軒樋からの雨水とが、排水管の下側で合流した後、排出される。
【0006】
しかしながら、このこうせいでは、上からの排水管を軒樋に貫通させると共に、軒樋の排水管貫通位置とは別の位置にドレン接続用の貫通孔を形成し、軒樋からの雨水が排水管に流れるように、枝管を排水管に接続して雨水排水構造を形成する必要がある。このような雨水排水構造は、施工の手間がかなりかかるので、施工の作業性が悪い。また、枝管を排水管に接続した排水構造は意匠性が悪いという問題もある。
【0007】
そこで、本開示の目的は、下屋よりも上方の屋根からの雨水と下屋の軒樋からの雨水とを効率よく排水でき、かつ、施工の作業性及び意匠性を向上できる雨水排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る雨水排水構造は、下屋を備える建物に設置され、下屋よりも上方の屋根からの雨水と、下屋からの雨水とを排水する雨水排水構造であって、下屋の軒先に取り付けられ、貫通孔を有する軒樋と、下屋よりも上方の屋根からの雨水を流下させる上側竪樋と、貫通孔に取り付けられ、軒樋の雨水を下方に排出し、サイフォン現象を誘発するドレンと、を備え、ドレンは、上側ドレン部材と、下側ドレン部材とを有し、上側ドレン部材は、軒樋の底板の上面に取付けられる上フランジと、上フランジの径方向内側端から径方向内側に向かうに従って下方に延設され、貫通孔を貫通する上側筒部と、上フランジの上面の周方向複数位置に立設される羽根部と、羽根部に支持され、上側竪樋を接続する上側竪樋接続部と、を有し、下側ドレン部材は、軒樋の底板の下面に取付けられる下フランジと、下フランジの下側に設けられ、内側に上側筒部が挿入される下側筒部と、を有し、下側筒部は、雨水を下方に排出する下側竪樋が接続され、上側竪樋接続部の下端は、上フランジの上面より高い位置にある、雨水排水構造である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様の雨水排水構造によれば、下屋の軒先の軒樋からの雨水を、ドレンを通じて下側竪樋に排出できると共に、下屋より上方の屋根からの雨水を上側竪樋からドレンを通じて下側竪樋に排出できる。このとき、上側竪樋の下端内側が上側筒部の内側に対向できるので、上側竪樋から排出された雨水の軒樋での水跳ねを抑制できる。また、ドレンはサイフォン現象を誘発する。これにより、上側竪樋からの雨水と軒樋からの雨水とがドレンで合流することで下側竪樋より上流側で雨水が満水状態になりやすいことと相まって、サイフォン現象を利用して、下側竪樋に大量の雨水を効率よく排水できる。さらに、下屋より上方の屋根からの雨水の排水のために、ドレンを貫通させる貫通孔とは別の位置に別の貫通孔を軒樋に形成する必要がない。これにより、施工作業の作業性を向上できる。さらに、軒樋に接続された枝管を排水管の軒樋より下側に接続する必要がないので、意匠性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の雨水排水構造が設置された建物の一部を示す概略斜視図である。
図2図1のA部における拡大断面図である。
図3図2に設けられたドレンの正面図である。
図4図3のドレンを上から見た図である。
図5図4のB-B断面図である。
図6】実施形態の別例の雨水排水構造において、図5に対応する図である。
図7】実施形態の別例の雨水排水構造において、図2に対応する図である。
図8図7を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る雨水排水構造の実施形態を説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。以下で説明する形状、配置、個数、材料等は、説明のための例示であって、雨水排水構造の仕様により適宜変更することができる。以下では全ての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。
【0012】
図1図5を用いて実施形態を説明する。図1は、実施形態の雨水排水構造1が設置された建物100の一部を示す概略斜視図である。雨水排水構造1が設けられた建物100は、図示しない玄関扉や、1階の窓の上側で、壁面101から突出するように設けられた下屋102を備える。下屋102の上面は、前端である軒先に向かって低くなるように上下方向に対し傾斜している。
【0013】
雨水排水構造1は、下屋102の軒先に設けられた下屋軒樋10と、壁面101付近に壁面101に沿って上下方向に配置された上側竪樋18及び下側竪樋20と、上側竪樋18及び下側竪樋20の間で下屋軒樋10の貫通孔に取り付けられたドレン40(図2)とを含んで構成される。上側竪樋18は、下屋102よりも上方の屋根である大屋根103の軒先に設けられた上軒樋104からの雨水106が、呼び樋105を介して導入され、その雨水を流下させて下側に排水する。図1では、斜格子部分により雨水106を示している。なお、下屋102よりも上方の屋根は、大屋根103に限定せず、階上の下屋や、バルコニー機能付きの屋根等の大屋根以外の屋根としてもよい。また、本例では、上軒樋104が建物100の左右方向に沿って延び、下屋軒樋10が左右方向に対し直交する前後方向に沿って延びている。
【0014】
下屋軒樋10は、例えば樹脂により形成され、第1壁11及び第2壁12(図2)の下端が底板13で連結された断面溝形状であり前後方向に延びている。下屋軒樋10は、例えば建物100に取り付けられた吊具(図示せず)により吊り下げ支持されて、下屋102の軒先に取り付けられ、下屋102から流れ落ちる雨水106を受けるように配置される。下屋軒樋10は、上面が開口すると共に、左右方向両端が塞がれる。下屋軒樋10は、下屋102の先端部に右側に延びるように固定されたブラケットで固定されてもよい。下屋軒樋10の底板13の後端部には、後述のドレン40(図2)を介して下側竪樋20に接続するための貫通孔14(図2)が形成されている。
【0015】
上側竪樋18及び下側竪樋20は、それぞれ壁面101の上下方向の複数位置に固定されて上側竪樋18または下側竪樋20の上下方向複数位置を嵌合固定する複数の固定部材によって壁面101付近に固定される。上側竪樋18及び下側竪樋20は、雨水を下方に排出する。
【0016】
ドレン40は、下屋軒樋10の底板13に設けられた貫通孔14(図4)に取り付けられると共に、貫通孔14から下側に突出した部分に、下側竪樋20の上端部が接続される。これにより、ドレン40は、下屋軒樋10の雨水を下側竪樋20に排出する。
【0017】
図2は、図1のA部における拡大断面図である。図3は、図2に設けられたドレン40の正面図である。図4は、ドレン40を上から見た図である。図5は、図4のB-B断面図である。ドレン40は、例えば樹脂により形成され、上側ドレン部材41と下側ドレン部材61とを有する。
【0018】
上側ドレン部材41は、下屋軒樋10の底板13の上面に設置され、上フランジ42と、上側筒部50とを有する。上フランジ42は、後述のように下側ドレン部材61の下フランジ62とで底板13を挟むことで底板13の上面に取り付けられる。上側筒部50は、上フランジ42の径方向内側端から径方向内側に向かうにしたがって下方に延設される、すなわち内周面が上部の断面円弧形の曲面部51を有し滑らかに下がっており、下側が略円筒状となっている。上側筒部50は、貫通孔14を貫通する。なお、上側筒部の上部内周面に断面直線のテーパ面が設けられ、上側筒部が、上フランジ42の径方向内側端から径方向内側に向かうにしたがって下方に延設される構成としてもよい。上側筒部50の上部外周面には、上部内周面の形状に合わせて、断面円弧形の曲面部52や断面直線のテーパ面を設けることができる。
【0019】
上側筒部50の曲面部51,52より下側の外周面には、下側ドレン部材61とネジ結合するための雄ネジ53が形成される。上側ドレン部材41は、硬質塩化ビニル樹脂や、ポリカーボネート、ABS等の樹脂の射出成型によって形成される。上側ドレン部材41は、鋳鉄等の金属製であってもよい。
【0020】
さらに、上側ドレン部材41は、大雨時等、下屋軒樋10に大量に雨水が流入した場合において、サイフォン現象を誘発する、雨水の高排水機能を有する。このために、上側ドレン部材41は、上フランジ42の上面及び曲面部51の内周面の周方向の略等間隔複数位置、具体的には5個所位置に立設された羽根部54と、複数の羽根部54の径方向内側端に連結されることで、上側筒部50と同軸となるように支持された円筒形状の上側竪樋接続部58とを含んで構成される。
【0021】
上側竪樋接続部58の下端59は、上フランジ42の上面より高い位置にある。これにより、図2のように上側ドレン部材41を横方向一方側から見た状態で、上側竪樋接続部58の下端59と上フランジ42の上面との間には、横方向に貫通する空間Sが形成される。上側竪樋接続部58の内側には、上側竪樋18の下端が嵌合固定されることで、上側竪樋接続部58に上側竪樋18が接続される。このとき、上側竪樋18の下端19は、上フランジ42の上面より高い位置であって、上側竪樋接続部58の下端59と同じ位置か、それより高い位置にある。これにより、本例では、下屋軒樋10内の雨水がドレン40で排水されるときに、上側竪樋18から流下した雨水と合流しやすくなる。
【0022】
複数の羽根部54は、上フランジ42の外周部の上端から曲面部51の下端部の内周端にわたるように、上側筒部50の上端の周方向複数位置に連結された板状であり、径方向に延びている。各羽根部54の径方向外側端は、上側筒部50の中心軸と略平行な平面、または下端に向かって径方向外側にわずかに傾斜したテーパ面としている。各羽根部54の周方向両側面は、平面である。複数の羽根部54の枚数は、5枚であるが、5枚以外の奇数枚としてもよい。
【0023】
各羽根部54の上端の径方向外側には、上側に突出する矩形板状の突出部55が形成される。上側ドレン部材41において、上フランジ42の上側面より上側で、複数の羽根部54で仕切られる部分が、下屋軒樋10に流入した雨水を上側ドレン部材41に導入するための流入口44となる。複数の羽根部54は、流入口44から流入した雨水を整流する機能を有する。このため、雨水は複数の羽根部54で整流されて流れるので、サイフォン現象が誘発される。
【0024】
一方、下側ドレン部材61は、下屋軒樋10の底板13の下面に接し、後述のように上フランジ42と底板13を挟むことで底板13の下面に取り付けられる下フランジ62と、下フランジの下側に設けられた下側筒部70とを有する。下側筒部70は、内側に上側筒部50が挿入され、下側が略円筒状となっている。本例の場合、下側筒部70の上端部には、下方に向かうにしたがって直径が小さくなる傾斜筒部71が形成される。傾斜筒部71の内周面は、断面直線状のテーパ面であり、傾斜筒部71の外周面は、断面円弧形の曲面である。
【0025】
下側筒部70の内周面には、上側ドレン部材41の雄ネジ53と螺合するための雌ネジ72が形成される。雌ネジ72は、下側筒部70の周方向に分かれて間欠的に形成されているが、全体で連続した形状としてもよい。
【0026】
下側ドレン部材61は、下側竪樋20の上端に形成された大径筒部21の内側に下側筒部70が嵌合されることで、下側竪樋20の上端部に接続される。下側ドレン部材61も上側ドレン部材41と同様に、硬質塩化ビニル樹脂等の樹脂の射出成型によって形成される。下側ドレン部材61は、鋳鉄等の金属製であってもよい。なお、下側竪樋20の下端が地中に埋設された排水管に接続され、下側竪樋20内を流下した雨水が排水管に排水される構成としてもよい。
【0027】
さらに、上側竪樋接続部58の内径d1(図5)は、下側筒部70の内径d2(図5
より小さい。これにより、上側竪樋接続部58に接続された上側竪樋18の下端内側が、上側筒部50の内側に対向しやすい。
【0028】
上記のドレン40を含む雨水排水構造1を組み立てる方法を説明する。まず、下屋軒樋10の底板13において上側ドレン部材41を取り付ける位置に、貫通孔14を形成しておく。次に、貫通孔14に上側から上側ドレン部材41の上側筒部50を挿入して下側に突出させ、上フランジ42を底板13の上面の貫通孔14周縁部に係止する。このとき、上フランジ42の下面と底板13の上面との間には接着剤を塗布して水封を図る。例えば、上フランジ42の下面に予め接着剤を塗布した状態で、底板13の上面に上フランジ42を載せる。
【0029】
そして、下屋軒樋10の貫通孔14から下側に突出させた上側筒部50の外周側に、下側ドレン部材61をネジ結合で固定し、上側ドレン部材41の上フランジ42と、下側ドレン部材61の下フランジ62とで下屋軒樋10の底板13を上下両側から挟んで固定する。その後、下側ドレン部材61の下側筒部70に下側竪樋20の上端を接続すると共に、上側ドレン部材41の上側竪樋接続部58に上側竪樋18の下端を接続する。
【0030】
このような雨水排水構造1によれば、下屋102に降った雨水106が下屋軒樋10に流入して、図2図4図5に示すように、上側ドレン部材41の流入口44から流入し、上側筒部50の内側を通って、下側竪樋20に導入される。また、大屋根103に降った雨水106が、上軒樋104から上側竪樋18に導入され、上側竪樋18を通った後、その下端から上側筒部50の内側を通って下側竪樋20に導入される。これにより、大屋根103からの雨水と、下屋102からの雨水とが上側筒部50の内側で合流する。下側竪樋20を流れる雨水が所定流量以上になると、下側竪樋20を流下した雨水がサイフォン現象によって、下側竪樋20から下側に勢い良く排水される。
【0031】
具体的には、下側竪樋20を流れる雨水が所定流量以上になることで、下側竪樋20の一部に雨水が詰まった栓を形成しやすくなる。そして、この栓の部分で高低差による負圧が生じて雨水を下側に引っ張る力が大きくなり、勢いよく雨水を流下させるサイフォン現象が発生する。上記のドレン40によれば、複数の羽根部54によって雨水を整流する効果を高くできるので雨水が流入口44に流入するときに、渦の発生を抑制できる。これにより渦によって空気が下側竪樋20に吸い込まれることを抑制できるので、より優れたサイフォン性能を発揮でき、排水性を高くできる。また、上側竪樋18からの雨水と下屋軒樋10からの雨水とが上側筒部50の内側で合流するので、上側筒部50内の満水状態を実現しやすくなる。また、流入口44では、周方向に隣り合う羽根部54により、貫通孔14の内側に入り込む異物が制限される。これにより、その異物で貫通孔14が詰まることを防止できる。
【0032】
上記の雨水排水構造1によれば、下屋102の軒先の下屋軒樋10からの雨水を、ドレン40を通じて下側竪樋20に排出できると共に、下屋102より上方の屋根からの雨水を上側竪樋18からドレン40を通じて下側竪樋20に排出できる。このとき、上側竪樋18の下端内側が上側筒部50の内側に対向できるので、上側竪樋18から排出された雨水の下屋軒樋10での水跳ねを抑制できる。また、ドレン40はサイフォン現象を誘発する。これにより、上側竪樋18からの雨水と下屋軒樋10からの雨水とがドレン40で合流することで下側竪樋20より上流側で雨水が満水状態になりやすいことと相まって、サイフォン現象を利用して、下側竪樋20に大量の雨水を効率よく排水できる。さらに、下屋102より上方の屋根からの雨水の排水のために、ドレン40を貫通させる貫通孔14とは別の位置に別の貫通孔を下屋軒樋10に形成する必要がない。これにより、施工作業の作業性を向上できる。さらに、下屋軒樋に接続された枝管を排水管の下屋軒樋より下側に接続する必要がないので、意匠性を向上できる。
【0033】
また、上側筒部50は、上側に、上フランジ42の径方向内側端から径方向内側に向かうに従って下方に延設された曲面部51を有するので、上フランジ42の上側を流れた雨水を、よりスムーズに上側筒部50の下側に導入しやすくなる。
【0034】
図6は、実施形態の別例の雨水排水構造において、図5に対応する図である。本例の構成では、上側竪樋18の下端が上側竪樋接続部58の内側に固定された状態で、上側竪樋18の下端19は、上フランジ42の上面より低い位置であって、上側筒部50の円筒部の内側位置にある。これより、本例の構成では、下屋軒樋10からの雨水と上側竪樋18からの雨水とが図1図5の構成に比べてより下流側で合流されるが、上側竪樋18からの雨水の流量が多い場合に、より効果的に上側筒部50内に上側竪樋18からの雨水を導入しやすくなる。これにより、上側竪樋18を流れる雨水の予定排水量が所定流量以上である場合に図6の構成を選択し、上側竪樋18を流れる雨水の予定排水量が所定流量未満である場合に図5の構成を選択してもよい。本例において、その他の構成及び作用は、図1図5の構成と同様である。
【0035】
図7は、実施形態の別例の雨水排水構造において、図2に対応する図である。図8は、図7を上から見た図である。図7図8では、ドレン40aを構成する上側ドレン部材80を斜格子で示し、下側ドレン部材90を粗い砂地部で示し、上側竪樋18を細かい砂地部で示している。本例の構成では、ドレン40aにおいて、上側ドレン部材80の羽根部54の数を4とし、周方向の略等間隔位置に4つの羽根部54が設けられている。
【0036】
さらに、下側ドレン部材90の下側筒部91の上端の下フランジ92と接続する部分には曲面部は形成されず、下側筒部91が単なる円筒状となっている。下側竪樋20は、下フランジ92の下面に突き当てられた状態で、下側筒部91に嵌合固定されている。このような構成によっても、図1図5の構成と同様に、下屋よりも上方の屋根からの雨水と下屋軒樋10からの雨水とを効率よく排水でき、かつ、施工の作業性及び意匠性を向上できるという効果を得られる。
【0037】
なお、上記の各例では、大屋根103からの雨水を上軒樋104から呼び樋105を介して上側竪樋18に導入しているが、上軒樋を下屋軒樋10と同じ壁面に沿って配置する等により、上軒樋から呼び樋を介さずに上側竪樋18に雨水を導入する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 雨水排水構造、10 下屋軒樋、11 第1壁、12 第2壁、13 底板、14貫通孔、18 上側竪樋、19 下端、20 下側竪樋、21 大径筒部、40,40a ドレン、41 上側ドレン部材、42 上フランジ、44 流入口、50 上側筒部、51,52 曲面部、53 雄ネジ、54 羽根部、55 突出部、58 上側竪樋接続部、59 下端、61 下側ドレン部材、62 下フランジ、70 下側筒部、71 傾斜筒部、72 雌ネジ、80 上側ドレン部材、90 下側ドレン部材、100 建物、101 壁面、102 下屋、103 大屋根、104 上軒樋、105 呼び樋、106 雨水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8