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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124675
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】アーム型助力装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 19/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
B66F19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028589
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】下山 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 慶和
(57)【要約】
【課題】荷役物を運搬するときの操作力を低減できるアーム型助力装置を提供すること。
【解決手段】アーム型助力装置11は、第1支持部22及び第2支持部23を有する第1アーム31と、基台12に第1支持部22を回転可能に支持する第1回転支持部21と、を有する。アーム型助力装置11は、第2支持部23に固定される固定支持部41と、固定支持部41に固定された軸受44と、を有する。アーム型助力装置11は、軸受44によって固定支持部41に支持される第2アーム51を有する。第2アーム51は、軸受44によって水平方向に直線移動可能なシャフト52を有する。アーム型助力装置11は、第2アーム51におけるシャフト52の前端に支持される第2回転支持部61と、第2回転支持部61によって回転可能に支持される操作部71を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
第1支持部を軸線方向の第1端部に有するとともに、平行四辺形リンクによって前記第1支持部と平行に上下方向へ揺動可能な第2支持部を前記軸線方向の第2端部に有する第1アームであって、アクチュエータによる助力機構を内蔵する前記第1アームと、
第1鉛直軸を回転中心とする第1回転支持部であって、前記第1支持部を前記基台に回転可能に支持する前記第1回転支持部と、
前記第2支持部に固定され、水平な上面を有する固定支持部と、
前記固定支持部の前記上面に固定された軸受と、
前記軸受によって前記固定支持部に支持される第2アームであって、前記軸受によって水平方向へ直線移動可能なシャフトを有する第2アームと、
前記第2アームにおける前記シャフトの前端に支持され、第2鉛直軸を回転中心とする第2回転支持部と、
前記第2回転支持部によって回転可能に支持される操作部と、を有するアーム型助力装置。
【請求項2】
前記軸受は重力方向に複数並設され、
前記第2アームは、前記シャフトを複数本有するとともに、複数本の前記シャフトの各々は前記軸受によって前記固定支持部に支持されており、複数本の前記シャフトは平行に重力方向に並設されている請求項1に記載のアーム型助力装置。
【請求項3】
前記第1回転支持部、前記第2回転支持部及び前記第2アームの各々はブレーキ機構を備える請求項1又は請求項2に記載のアーム型助力装置。
【請求項4】
前記第2アームが備える前記ブレーキ機構は、制動軸と、軸制動部と、を有し、前記制動軸は前記シャフトと平行に水平方向に延びており、かつ前記軸制動部によって支持されており、前記制動軸は、前記シャフトと一体に前記水平方向に直線移動可能である請求項3に記載のアーム型助力装置。
【請求項5】
前記第2アームは、前記シャフトを複数本有するとともに、複数本の前記シャフトは平行に重力方向に並設され、前記軸制動部は、重力方向に並設された前記シャフトの間に配置されている請求項4に記載のアーム型助力装置。
【請求項6】
前記第2アームは前端に軸挿通部材を有し、前記軸挿通部材には、重力方向に長手が延びる揺動孔が形成されており、前記制動軸の前端は、前記揺動孔に挿通されている請求項4又は請求項5に記載のアーム型助力装置。
【請求項7】
前記制動軸は、前記シャフトに比して細径である請求項4~請求項6のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【請求項8】
前記第2アームは、前記シャフトの前端に設けられる揺動支持部と、前記揺動支持部に対し前後方向に揺動可能に支持される揺動部材と、を有し、前記第2回転支持部は、前記揺動部材に支持されており、
前記アーム型助力装置は、前記揺動部材の前後方向への揺動角度を規制する揺動規制部を有する請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【請求項9】
前記軸受は、前記固定支持部の前記上面に沿って固定位置を調節可能である請求項1~請求項8のうちいずれか一項に記載のアーム型助力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム型助力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーム型助力装置は、比較的重い部品や荷などの荷役物を、ある固定位置から別の固定位置まで運搬する、所謂パレタイジングの際に使用される。例えば、特許文献1には、アーム型助力装置の一例としての荷役物運搬機が開示されている。
【0003】
図14に示すように、荷役物運搬機100は、台座101と、旋回台102と、本体部103と、第1アーム104と、第2アーム105と、ブラケット106と、旋回台107と、アタッチメント108と、操作レバー109と、旋回台110と、を有する。
【0004】
旋回台102は、台座101の上面に設けられている。本体部103は、旋回台102に支持されている。旋回台102は、本体部103を旋回可能とする。第1アーム104は、本体部103に上下方向へ揺動可能に支持されている。ブラケット106は、第1アーム104の先端に設けられている。旋回台107は、ブラケット106の下端に設けられている。第2アーム105は、旋回台107に支持されている。旋回台107は、第2アーム105を旋回可能とする。
【0005】
アタッチメント108は旋回台110に支持されている。旋回台110は、アタッチメント108を旋回可能とする。操作レバー109は、アタッチメント108に設けられている。作業者が操作レバー109を操作すると、作業者は、荷役物運搬機100によって荷役物を3次元に運搬できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6681649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
荷役物運搬機100を一例とするアーム型助力装置は、荷役物を運搬するときに要する操作力の低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するためのアーム型助力装置は、基台と、第1支持部を軸線方向の第1端部に有するとともに、平行四辺形リンクによって前記第1支持部と平行に上下方向へ揺動可能な第2支持部を前記軸線方向の第2端部に有する第1アームであって、アクチュエータによる助力機構を内蔵する前記第1アームと、第1鉛直軸を回転中心とする第1回転支持部であって、前記第1支持部を前記基台に回転可能に支持する前記第1回転支持部と、前記第2支持部に固定され、水平な上面を有する固定支持部と、前記固定支持部の前記上面に固定された軸受と、前記軸受によって前記固定支持部に支持される第2アームであって、前記軸受によって水平方向へ直線移動可能なシャフトを有する第2アームと、前記第2アームにおける前記シャフトの前端に支持され、第2鉛直軸を回転中心とする第2回転支持部と、前記第2回転支持部によって回転可能に支持される操作部と、を有することを要旨とする。
【0009】
アーム型助力装置について、前記軸受は重力方向に複数並設され、前記第2アームは、前記シャフトを複数本有するとともに、複数本の前記シャフトの各々は前記軸受によって前記固定支持部に支持されており、複数本の前記シャフトは平行に重力方向に並設されていてもよい。
【0010】
アーム型助力装置について、前記第1回転支持部、前記第2回転支持部及び前記第2アームの各々はブレーキ機構を備えていてもよい。
アーム型助力装置について、前記第2アームが備える前記ブレーキ機構は、制動軸と、軸制動部と、を有し、前記制動軸は前記シャフトと平行に水平方向に延びており、かつ前記軸制動部によって支持されており、前記制動軸は、前記シャフトと一体に前記水平方向に直線移動可能であってもよい。
【0011】
アーム型助力装置について、前記第2アームは、前記シャフトを複数本有するとともに、複数本の前記シャフトは平行に重力方向に並設され、前記軸制動部は、重力方向に並設された前記シャフトの間に配置されていてもよい。
【0012】
アーム型助力装置について、前記第2アームは前端に軸挿通部材を有し、前記軸挿通部材には、重力方向に長手が延びる揺動孔が形成されており、前記制動軸の前端は、前記揺動孔に挿通されていてもよい。
【0013】
アーム型助力装置について、前記制動軸は、前記シャフトに比して細径であってもよい。
アーム型助力装置について、前記第2アームは、前記シャフトの前端に設けられる揺動支持部と、前記揺動支持部に対し前後方向に揺動可能に支持される揺動部材と、を有し、前記第2回転支持部は、前記揺動部材に支持されており、前記アーム型助力装置は、前記揺動部材の前後方向への揺動角度を規制する揺動規制部を有していてもよい。
【0014】
アーム型助力装置について、前記軸受は、前記固定支持部の前記上面に沿って固定位置を調節可能であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、荷役物を運搬するときの操作力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】アーム型助力装置を示す側面図である。
図2】アーム型助力装置の使用例を示す斜視図である。
図3】第1アームの構成要素を示す分解斜視図である。
図4】平行四辺形リンクを示す模式図である。
図5】平行四辺形リンクを示す模式図である。
図6】第2アーム周辺を示す斜視図である。
図7】第2アーム周辺を示す斜視図である。
図8】揺動規制部周辺を示す斜視図である。
図9】揺動規制部周辺を示す側面図である。
図10】比較例の操作力を説明するための図である。
図11】実施形態のアーム型助力装置の操作力を説明するための図である。
図12】別例のアーム型助力装置を示す部分斜視図である。
図13】別例のアーム型助力装置を示す部分側面図である。
図14】背景技術を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、アーム型助力装置を具体化した一実施形態を図1図11にしたがって説明する。
<アーム型助力装置の全体>
図1に示すように、アーム型助力装置11は、基台12と、基台12に支持された第1回転支持部21と、第1回転支持部21に支持された第1アーム31と、を有する。また、アーム型助力装置11は、第1アーム31に支持された固定支持部41と、固定支持部41に支持された第2アーム51と、第2アーム51に支持された第2回転支持部61と、を有する。加えて、アーム型助力装置11は、第2回転支持部61に支持された操作部71を有する。アーム型助力装置11は、エア供給源14と、制御装置15と、を有する。
【0018】
<エア供給源及び制御装置>
エア供給源14は、圧縮されたエアをアーム型助力装置11に供給する。以下の説明において、圧縮されたエアを単に「エア」と記載する。制御装置15は、図示しない空圧機器の制御や、エアの圧力調整などを行う。制御装置15は、アーム型助力装置11によって吊り下げられた荷役物の重量をバランスするために、アーム型助力装置11に供給すべきエアの圧力などを算出する。
【0019】
<基台>
基台12は、柱状である。なお、基台12は柱でなくてもよい。例えば、基台12は、高さの低い台であってもよい。基台12の形状は任意である。
【0020】
<第1回転支持部>
第1回転支持部21は、基台12の上端に固定されている。第1回転支持部21は、第1アーム31を回転可能に支持する。第1回転支持部21は、当該第1回転支持部21の回転を規制する第1ブレーキ機構161を有する。第1回転支持部21は、第1鉛直軸Z1を回転中心として回転する。
【0021】
<第1ブレーキ機構>
第1ブレーキ機構161は、回転ロックディスク161aと、図示しないロック装置と、を有する。回転ロックディスク161aは、第1アーム31と一体回転する。第1ブレーキ機構161のロック装置は、所定圧力以上のエアの供給によって回転ロックディスク161aから離間する。すると、第1ブレーキ機構161は非制動状態となる。第1ブレーキ機構161の非制動状態は、第1回転支持部21による第1アーム31の回転を許容する。
【0022】
第1ブレーキ機構161のロック装置は、所定圧力未満では、図示しない付勢部材によって回転ロックディスク161aに向けて付勢される。すると、ロック装置は、回転ロックディスク161aを挟持する。これにより、第1ブレーキ機構161は制動状態となる。第1ブレーキ機構161の制動状態は、第1回転支持部21による第1アーム31の回転を禁止する。
【0023】
<第1アーム>
図3及び図4に示すように、第1アーム31は、中空状のアーム本体32と、アーム本体32の軸線方向の第1端に連結された第1軸支部材33と、アーム本体32の軸線方向の第2端に連結された第2軸支部材34と、第2部材46と、を有する。また、第1アーム31は、第1軸支部材33に連結された第1支持部22と、第2軸支部材34に連結された第2支持部23と、を有する。さらに、第1アーム31は、助力機構としての駆動エアシリンダ91を内蔵する。
【0024】
<アーム本体>
アーム本体32は、駆動エアシリンダ91のシリンダチューブ91aと、2枚の第1カバー部材95と、1枚の第2カバー部材96と、を有する。
【0025】
アーム本体32の主体は、駆動エアシリンダ91のシリンダチューブ91aである。2枚の第1カバー部材95は、シリンダチューブ91aの外面に固定されている。2枚の第1カバー部材95は、シリンダチューブ91aの径方向に対向する。第2カバー部材96は、2枚の第1カバー部材95の上端の間に固定されている。
【0026】
<第1軸支部材及び第2軸支部材>
第1軸支部材33は、シリンダチューブ91aの第1端に固定されている。第2軸支部材34は、シリンダチューブ91aの第2端に固定されている。したがって、第1アーム31は、第1軸支部材33によって形成された第1端部35を軸線方向の第1端に備える。また、第1アーム31は、第2軸支部材34によって形成された第2端部36を軸線方向の第2端に備える。アーム本体32と、第1軸支部材33と、第2軸支部材34と、は第1部材45を構成する。
【0027】
<第1支持部及び第2支持部>
図1及び図2に示すように、第1支持部22は、第1回転支持部21に支持されている。第1支持部22は、第1回転支持部21によって回転可能である。第1支持部22は、基台12の軸線に沿う第1鉛直軸Z1を回転中心として回転する。つまり、第1回転支持部21は、第1鉛直軸Z1を回転中心とするとともに、第1支持部22を基台12に回転可能に支持する。第1回転支持部21と、第1支持部22の回転範囲は360度未満である。第1支持部22の回転範囲は、本実施形態では300度である。
【0028】
図3に示すように、第1支持部22は、円盤状の基板22aと、基板22aから上方へ立設された一対の第1軸支部22bを有する。一対の第1軸支部22bは間隔を空けて対向している。
【0029】
第1支持部22と対をなす第2支持部23は、円盤状の支持板23aと、支持板23aから下方へ立設された板状の第2軸支部23bを有する。支持板23aには、複数の雌ねじ23cが形成されている。
【0030】
第1端部35は、第1支持部22の一対の第1軸支部22bの間に配置されている。第1軸支部22b及び第1軸支部材33には第1水平軸H1が挿通されている。したがって、第1アーム31は、第1支持部22を軸線方向の第1端部35に有する。アーム本体32は、第1水平軸H1を揺動中心として、第1支持部22に対し上下方向へ揺動可能に支持されている。したがって、第1アーム31は、上下方向へ揺動可能である。
【0031】
第2端部36は、第2支持部23の第2軸支部23bに配置されている。第2軸支部23bには第2水平軸H2が挿通されている。したがって、第1アーム31は、軸線方向の第2端部36に第2支持部23を有する。アーム本体32は、第2水平軸H2を揺動中心として、第2支持部23に対し上下方向へ揺動可能に支持されている。
【0032】
<第2部材>
第2部材46は、2枚の第1カバー部材95の下端の間に配置されている。第2部材46は、角棒形状である。図4に示すように、第2部材46の第1端部47は、第3水平軸H3を介して第1支持部22に対し上下方向へ揺動可能に支持されている。第2部材46の第2端部48は、第4水平軸H4を介して第2支持部23に対し上下方向へ揺動可能に支持されている。
【0033】
<アクチュエータ>
図4及び図5に示すように、アクチュエータ90は、駆動エアシリンダ91の作動ロッド92と、リンク部材93と、連結体94と、を有している。作動ロッド92は、第1アーム31の軸線方向に移動する。リンク部材93の第1端部は、第3水平軸H3によって第1支持部22に揺動可能に支持されている。リンク部材93は、作動ロッド92に対して傾斜している。連結体94は、作動ロッド92及びリンク部材93の第2端部に連結されている。
【0034】
駆動エアシリンダ91のシリンダチューブ91a内には、ピストン91bが移動自在に収容されている。ピストン91bには作動ロッド92が連結されている。ピストン91bは、作動ロッド92の移動に伴って第1アーム31の軸線方向に移動する。
【0035】
<平行四辺形リンク>
平行四辺形リンクは、第1部材45と、第1支持部22と、第2支持部23と、第2部材46とから構成されている。駆動エアシリンダ91の作動ロッド92の移動に伴い、第1支持部22に対して第1部材45及び第2部材46が上下方向へ揺動すると、第2支持部23が上下方向へ平行移動する。
【0036】
このとき、第2支持部23の上面は、水平に維持される。第1部材45及び第2部材46は、平行四辺形の長辺を構成し、第1支持部22及び第2支持部23は、平行四辺形の短辺を構成する。したがって、第1アーム31は、第1支持部22を第1端部35に有するとともに、平行四辺形リンクによって第1支持部22と平行に上下方向へ揺動可能な第2支持部23を第2端部36に有する。
【0037】
<固定支持部>
図1及び図3に示すように、固定支持部41は、第2支持部23の支持板23aに固定されている。固定支持部41は、固定台42と、2つの軸受44と、を有する。
【0038】
図3に示すように、固定台42は、板状である。固定台42は、水平な上面42bと、複数の貫通孔42aを有する。複数の貫通孔42aの各々は、上面42bに開口する。複数の貫通孔42aは、等間隔おきに環状に配置されている。貫通孔42aには、図示しないボルトを挿通できる。貫通孔42aに挿通されたボルトは、第2支持部23の雌ねじ23cに螺合される。この螺合によって、固定台42は第2支持部23の上面に固定されている。
【0039】
<軸受>
図6及び図7に示すように、2つの軸受44は、固定支持部41における固定台42の上面42bに固定されている。2つの軸受44は、所謂リニアブッシュである。2つの軸受44の各々は、直方体状のボディ44aと、ボディ44aに内蔵された図示しないボールと、を有する。2つの軸受44は、重力方向に並設されている。2つの軸受44のうち、下側に位置する軸受44は、固定台42の上面42bに固定されている。もう1つの軸受44は、固定台42に固定された軸受44の上面に固定されている。ボディ44aの中心軸線は、水平に延びる。2つのボディ44aの中心軸線は平行である。また、2つの軸受44の軸線方向の両端面の各々は、面一である。
【0040】
<第2アーム>
第2アーム51は、2本のシャフト52と、第1シャフト連結部材53と、第2シャフト連結部材54と、を有する。また、第2アーム51は、第2ブレーキ機構162と、揺動支持部56と、揺動部材59と、揺動規制部80と、を有していてもよい。
【0041】
<シャフト>
2本のシャフト52は、同じ直径の丸シャフトである。2本のシャフト52は、重力方向に並設されている。2本のシャフト52のうち、下側に位置するシャフト52は、2つの軸受44のうち、下側に位置する軸受44によって固定台42に支持されている。もう1本のシャフト52は、上側に位置する軸受44によって固定台42に支持されている。これにより、第2アーム51は、軸受44によって固定支持部41に支持されている。重力方向にアーム型助力装置11を見た上面視では、第1アーム31と第2アーム51とは、一直線状に配置されている。
【0042】
2本のシャフト52の中心軸線は水平に延びる。また、2本のシャフト52の中心軸線は平行である。2本のシャフト52は、軸受44によって平行かつ重力方向に並設されている。2本のシャフト52は、水平方向へ直線移動可能に支持されている。したがって、第2アーム51は、固定支持部41によって支持されるとともに、軸受44によって水平方向へ直線移動可能である。
【0043】
図5に示すように、第1アーム31の軸線方向への水平長さを「L1」とする。第2アーム51の軸線方向への長さを「L2」とする。軸受44からの第2アーム51の突出長さを「L3」とする。第2アーム51の軸線方向への軸受44の長さを「L4」とする。また、後述する荷保持部79によってアーム型助力装置11の先端に荷役物が保持されている場合の荷重を「W」とする。
【0044】
この場合、第2アーム51を支持する軸受44には、以下の式1のモーメントが作用する。
モーメント=L3×W…式1
軸受44に作用するモーメントは、軸受44からの第2アーム51の突出長さ「L3」が長くなるほど大きくなる。また、軸受44からの第2アーム51の突出長さ「L3」が長くなるほど、第2アーム51の撓み量も大きくなる。
【0045】
また、軸受44には、以下の式2の力が作用する。
力=W×L3/L4…式2
軸受44の長さ「L4」は一定であるため、軸受44に作用する力は、軸受44からの第2アーム51の突出長さ「L3」が長くなるほど大きくなる。第2アーム51の撓み量は、第2アーム51の軸の断面二次モーメントを大きくするほど小さくなる。第2アーム51は、同じ直径の2本のシャフト52を有している。同じ直径の2本のシャフト52を水平方向に配置すると、同じ直径のシャフト52を1本だけ有する場合と比べて、断面二次モーメントが2倍になっている。同じ直径の2本のシャフト52を重力方向に配置すると、断面二次モーメントは2倍以上になるとともに、2本のシャフト52間の距離が離れるほど大きくなる。このため、第2アーム51の撓み量は、シャフト52を1本とする場合と比べて小さくなる。
【0046】
<第1シャフト連結部材及び第2シャフト連結部材>
図6及び図7に示すように、第1シャフト連結部材53は、2本のシャフト52の後端同士を連結する。第2シャフト連結部材54は、2本のシャフト52の前端同士を連結する。第1シャフト連結部材53及び第2シャフト連結部材54は、2本のシャフト52の平行を維持する。
【0047】
第2シャフト連結部材54は、上端面に固定された軸挿通部材55を有する。第2アーム51は、軸挿通部材55を有すると言える。軸挿通部材55は、直交する2枚の板部を有するL状である。軸挿通部材55の2枚の板部の一方は、第2シャフト連結部材54の上端面に固定されている。軸挿通部材55の2枚の板部のうちの他方は、第2シャフト連結部材54の上端面から上方に延出する。軸挿通部材55の2枚の板部のうちの他方には、揺動孔55aが形成されている。揺動孔55aは、重力方向に長手の延びる長孔である。
【0048】
<第2ブレーキ機構>
第2ブレーキ機構162は、第2アーム51の直線移動を規制可能である。
第2ブレーキ機構162は、制動軸162aと、軸制動部162bと、を有する。第2ブレーキ機構162は、一対の軸支部162cを有してもよい。一対の軸支部162cは、2つの軸受44のうちの重力方向の上側に位置する軸受44のボディ44aに取り付けられている。一対の軸支部162cは、ボディ44aの軸線方向の両端に取り付けられている。軸制動部162bは、2つの軸受44のうちの重力方向の上側に位置する軸受44のボディ44aの上面に取り付けられている。つまり、軸制動部162bは、重力方向に軸受44と並設されている。
【0049】
制動軸162aは、シャフト52と平行に水平方向に延びるとともに、軸制動部162b及び一対の軸支部162cによって支持されている。制動軸162aは、シャフト52と一体に水平方向に直線移動可能である。
【0050】
制動軸162aの後端は自由端である。制動軸162aの前端は、揺動孔55aに挿通されている。制動軸162aは、揺動孔55aの長手方向へ撓み可能である。なお、制動軸162aは、シャフト52に比して細径の丸棒状である。
【0051】
制動軸162aは、軸制動部162bを貫通している。軸制動部162bは、図示しないピストンと、クランパと、付勢バネと、を内蔵する。クランパは、制動軸162aを囲む筒状である。ピストンは、クランパを拡径又は縮径させる。付勢バネは、クランパから離れる方向にピストンを付勢する。
【0052】
軸制動部162bへの所定圧力以上のエアの供給により、ピストンは、付勢バネの付勢力に抗してクランパに向かって移動する。すると、クランパが拡径して制動軸162aから離間する。その結果、第2ブレーキ機構162は非制動状態となる。第2ブレーキ機構162の非制動状態は、制動軸162aの直線移動を許容する。このため、第2アーム51の直線移動は許容される。
【0053】
一方、軸制動部162bが所定圧力未満のとき、ピストンは、付勢バネによってクランパから離間する方向に移動する。すると、クランパは、縮径して制動軸162aをクランプする。その結果、第2ブレーキ機構162は制動状態となる。第2ブレーキ機構162の制動状態は、制動軸162aの直線移動を禁止する。このため、第2アーム51の直線移動は禁止される。
【0054】
<揺動支持部>
図8及び図9に示すように、揺動支持部56は、第2シャフト連結部材54の前端に設けられている。したがって、揺動支持部56は、第2アーム51の前端に設けられている。揺動支持部56は、軸支部材57と、揺動軸58とを有する。
【0055】
軸支部材57は、四角板状である。軸支部材57は、第2シャフト連結部材54の前端から前方へ突出する。揺動軸58は、軸支部材57を板厚方向に貫通する。揺動軸58の軸線は、水平方向へ延びる。揺動軸58は、軸支部材57によって回転可能に支持されている。揺動軸58の第1端部は、軸支部材57の板厚方向の1つの面から突出する。揺動軸58の第2端部は、軸支部材57の板厚方向のもう1つの面から突出する。
【0056】
2つの揺動部材59の各々は、連結部59aと、分岐部59bと、を有している。連結部59aは、四角板状の部分である。分岐部59bは、連結部59aよりも下側の部分である。分岐部59bは、連結部59aの下端から二股に分岐している。
【0057】
1つの揺動部材59の連結部59aは、揺動軸58の第1端部に固定されている。もう1つの揺動部材59の連結部59aは、揺動軸58の第2端部に固定されている。2つの揺動部材59は、揺動軸58と一体に揺動する。したがって、第2アーム51は、揺動支持部56に対し前後方向に揺動可能に支持される揺動部材59を有する。
【0058】
揺動部材59には連結板60が固定されている。連結板60は、2つの揺動部材59の分岐部59bの下端面に固定されている。したがって、連結板60は、揺動部材59と一体に前後方向へ揺動可能である。
【0059】
<揺動規制部>
揺動規制部80は、2つのブラケット81と、2つの規制凸部82と、を有する。2つのブラケット81は、軸支部材57の板厚方向の1つの面に固定されている。2つのブラケット81は、連結部59aを挟む位置に配置されている。
【0060】
ブラケット81は、直交する2枚の板部を有するL状である。ブラケット81の2枚の板部の一方は、軸支部材57に固定されている。ブラケット81の2枚の板部のうちの他方は、延出片81aとして軸支部材57に対し直交する。
【0061】
1つの規制凸部82は、1つの延出片81aに取り付けられるとともに、もう1つの規制凸部82は、もう1つの延出片81aに取り付けられている。2つの規制凸部82の各々は、規制ボルト83と、規制ボルト83に螺合されたナット84とを有する。規制ボルト83は、頭部を分岐部59bに向けた状態で、ナット84によって延出片81aに締結されている。ナット84に対する規制ボルト83の螺合量を調節することによって、延出片81aから分岐部59bに向けた規制ボルト83の突出量を調節できる。
【0062】
重力方向に沿った規制ボルト83の頭部と分岐部59bとの間には、僅かな隙間が形成されている。この僅かな隙間は、揺動部材59の前後方向への揺動を許容する。そして、規制ボルト83の突出量を調節して、規制ボルト83の頭部と分岐部59bとの隙間の大きさを調節することにより、揺動部材59の前後方向への揺動角度を規制できる。したがって、アーム型助力装置11は、揺動部材59の揺動角度を規制する揺動規制部80を有する。
【0063】
<第2回転支持部>
第2回転支持部61は、連結板60の下面に固定されている。上記のように、連結板60は、揺動部材59に固定されている。また、揺動部材59は、揺動支持部56によって支持されている。そして、揺動支持部56は、第2シャフト連結部材54を介してシャフト52の前端に連結されている。したがって、第2回転支持部61は、第2アーム51におけるシャフト52の前端に支持されていると言える。
【0064】
連結板60は、揺動部材59の下端面に固定されている。したがって、第2回転支持部61は、連結板60を介して2つの揺動部材59に支持されている。上記のように、連結板60は、揺動部材59と一体に前後方向へ揺動可能である。したがって、連結板60に固定された第2回転支持部61は、揺動部材59と一体に前後方向へ揺動可能である。
【0065】
図1に示すように、第2回転支持部61の下方には操作部71が支持されている。第2回転支持部61は、連結板60の下において第2鉛直軸Z2を回転中心とする。第2回転支持部61は、第1回転支持部21と同じ構造である。第2回転支持部61の回転範囲は360度未満である。第2回転支持部61の回転範囲は、本実施形態では300度である。
【0066】
第2回転支持部61は、第3ブレーキ機構163を有する。第3ブレーキ機構163は、第1ブレーキ機構161と同じ構成であるため、第1ブレーキ機構161と同じように、回転ロックディスク161aと、図示しないロック装置と、を有する。第3ブレーキ機構163の機能は、第1ブレーキ機構161と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0067】
第3ブレーキ機構163のロック装置は、所定圧力以上のエアの供給によって回転ロックディスク161aから離間する。すると、第3ブレーキ機構163は非制動状態となる。第3ブレーキ機構163の非制動状態は、第2回転支持部61による操作部71の回転を許容する。
【0068】
第3ブレーキ機構163のロック装置は、所定圧力未満では、図示しない付勢部材によって回転ロックディスク161aに向けて付勢される。すると、ロック装置は、回転ロックディスク161aを挟持する。これにより、第3ブレーキ機構163は制動状態となる。第3ブレーキ機構163の制動状態は、第2回転支持部61による操作部71の回転を禁止する。
【0069】
<操作部>
操作部71は、第2回転支持部61の下方に支持されている。第2回転支持部61は、第2鉛直軸Z2を回転中心として回転可能である。この第2回転支持部61に操作部71が一体化されているため、操作部71は、第2鉛直軸Z2を回転中心として回転可能である。なお、操作部71には、荷保持部79が一体化されている。このため、荷保持部79も第2鉛直軸Z2を回転中心として回転可能である。
【0070】
操作部71には荷重センサ72が内蔵されている。荷重センサ72は、荷保持部79に吊下げ保持された荷役物を含めた荷重Wを検出する。荷重センサ72は検出値に関する信号を、アーム型助力装置11の制御装置15に出力する。操作部71には検出スイッチ73が内蔵されている。検出スイッチ73は、制御装置15に信号接続されている。検出スイッチ73は、操作部71が操作されることを検出すると、オンされるとともにオン信号を制御装置15に出力する。
【0071】
操作部71には操作ハンドル74が一対設けられている。上記した検出スイッチ73は、作業者が操作ハンドル74を把持した操作状態になると、操作部71が操作されることを検出し、オンされる。一方、作業者が操作ハンドル74を把持していない非操作状態では、オフされている。
【0072】
<ケーブルベア(登録商標)>
図6及び図7に示すように、アーム型助力装置11は、ケーブルベア78を有していてもよい。ケーブルベア78は、長四角筒状の2つのケース78aと、フレキシブル部78bと、を有する。2つのケース78aは、2つの軸受44よりも側方に配置されている。1つのケース78aの第1端は、第1ブラケット78cによって第2シャフト連結部材54の上端に連結されている。1つのケース78aの第2端は、フレキシブル部78bの第1端に連結されている。フレキシブル部78bの第2端は、もう1つのケース78aの第1端に連結されている。もう1つのケース78aの第2端は、第2ブラケット78dによって固定台42に固定されている。ケーブルベア78の内部には、各種配線及びエア配管が収容されている。各種配線は、制御装置15と荷重センサ72や検出スイッチ73とを接続する。エア配管は、エア供給源14と、駆動エアシリンダ91、第1ブレーキ機構161や第3ブレーキ機構163とを接続する。
【0073】
<アーム型助力装置の操作>
アーム型助力装置11において、図示しない電源の投入と同時に、荷重センサ72の検出値が制御装置15に入力される。制御装置15は、第1アーム31の駆動エアシリンダ91がバランスするためのバランス圧力を算出するとともに圧力制御を開始する。
【0074】
作業者が操作ハンドル74を把持して操作部71の操作状態となると、検出スイッチ73がオンされる。制御装置15は検出スイッチ73からのオン信号を受信する。制御装置15は、検出スイッチ73からのオン信号を受信すると、エア供給源14から操作エアを供給させる。駆動エアシリンダ91には、バランス圧力が供給される。駆動エアシリンダ91はバランス状態となる。同時に第1~第3ブレーキ機構161~163にも操作エアが供給される。すると、第1~第3ブレーキ機構161~163の制動状態は解除されると同時に非制動状態とされる。その結果、アーム型助力装置11の上下動、直線移動及び回転が可能になるとともに、荷役物の運搬が可能になる。
【0075】
操作部71の上下動に伴い、駆動エアシリンダ91のピストン室の容積が変化する。制御装置15は、荷重センサ72の検出値に基づいてバランス圧力を算出する。第1アーム31の平行四辺形リンクを介した力がバランスされるように、制御装置15はバランス圧力を駆動エアシリンダ91に供給する。このため、アーム型助力装置11のバランス圧力が制御される。バランスされている状態が維持されることにより、作業者は小さい操作力で操作部71を操作できる。
【0076】
操作部71の非操作状態では、制御装置15は、荷重をバランスさせる制御を常に維持する。制御装置15は、駆動エアシリンダ91へのエアの流入・排出を阻止する。これにより、アーム型助力装置11の上下動が抑制される。つまり、駆動エアシリンダ91は、圧力制御の及ばない状態となる。この状態では、駆動エアシリンダ91の圧力は、操作部71の操作に抗する力として働くため、操作部71の位置が維持される。
【0077】
<アーム型助力装置の作用>
図10に比較例のアーム型助力装置200の上面視を模式的に記載する。
比較例のアーム型助力装置200は、第1回転支持部21と、第1アーム31と、第2アーム51と、第2回転支持部201と、操作部71と、を有する。比較例のアーム型助力装置200では、第2回転支持部201は、実施形態の第2回転支持部61と異なり、第2アーム51を回転可能に支持している。第2アーム51は、第2鉛直軸Z2を中心に回転する。したがって、比較例のアーム型助力装置200は、実施形態のアーム型助力装置11と比べて、回転可能な箇所が1箇所多い。
【0078】
比較例のアーム型助力装置200の操作部71を操作力Fで操作した場合、操作力Fの方向と、第1アーム31の軸線方向との間に形成される角度を「α」とする。操作力Fの方向と、第2アーム51の軸線方向との間に形成される角度を「β」とする。なお、上述したように、第1アーム31の軸線方向への水平長さを「L1」とする。第2アーム51の軸線方向への長さを「L2」とする。
【0079】
第1鉛直軸Z1を回転中心として第1アーム31を回転させるのに必要な操作トルクを「T1」とする。操作トルクT1は、以下の式3によって表される。
T1=L1×F×cosβ×sin(α+β)…式3
操作力Fで操作部71を操作したときの操作トルクT1は、角度「β」が90°又は270°のときと、角度「α+β」が0°又は180°のとき「0」となる。
【0080】
第2鉛直軸Z2を回転中心として第2アーム51を回転させるのに必要な操作トルクを「T2」とする。操作トルクT2は、以下の式4によって表される。
T2=L2×F×sinβ…式4
操作力Fで操作部71を操作したときの操作トルクT2は、角度「β」が0°又は180°のとき「0」となる。
【0081】
操作トルクT1,T2が「0」になることは、操作力Fで操作部71を操作しても、アーム型助力装置200の姿勢を制御できないことである。比較例のアーム型助力装置200は、姿勢制御できない姿勢が複数存在する。このため、アーム型助力装置200によって荷役物を直線状に移動させる場合、操作力Fを移動方向に一致させると、アーム型助力装置200は、動作できなくなる位置に位置する。したがって、比較例のアーム型助力装置200は、動作できなくなる位置が複数存在することになる。
【0082】
図11に実施形態のアーム型助力装置11を模式的に記載する。
実施形態のアーム型助力装置11の操作部71を操作力Fで操作した場合、操作力Fの方向と、第1アーム31の軸線方向との間に形成される角度を「α」とする。操作力Fの方向と、第2アーム51の軸線方向との間に形成される角度を「β」とする。第1アーム31に対して第2アーム51は回転しないため、角度「β」は角度「α」と等しい。なお、上述したように、第1アーム31の軸線方向への水平長さを「L1」とする。第2アーム51の軸線方向への長さを「L2」とする。また、第1アーム31からの第2アーム51の突出長さを「L3」とする。
【0083】
第1鉛直軸Z1を回転中心として、第1アーム31とともに第2アーム51を回転させるのに必要な操作トルクを「T12」とする。
操作トルク「T12」は、以下の式5によって表される。
【0084】
T12=(L1+L3)×F×sinβ…式5
操作力Fで操作部71を操作したときの操作トルクT12は、角度「β」が0°又は180°のとき「0」となる。操作トルクT12が「0」になることは、操作力Fで操作部71を操作しても、アーム型助力装置11の姿勢を制御できないことである。実施形態のアーム型助力装置11は、姿勢制御できない姿勢が1つだけ存在する。このため、アーム型助力装置11によって荷役物を直線状に移動させる場合、操作力Fを移動方向に一致させると、アーム型助力装置11は、動作できなくなるが、その位置は1つだけである。
【0085】
また、アーム型助力装置11は、第1アーム31と第2アーム51が直線状に一体化されているため、比較例のアーム型助力装置200と比べて、アーム全体の長さ「L1+L3」が長くなる。このため、操作トルクT12は、操作トルクT1,T2よりも大きくなる。したがって、アーム型助力装置11は、比較例のアーム型助力装置200に比べて操作力Fを低減できる。
【0086】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1アーム31は、第1回転支持部21によって回転可能に基台12に支持される。また、操作部71は、第2回転支持部61によって回転可能に第2アーム51に支持される。そして、第2アーム51は、固定支持部41によって第1アーム31に対して回転不能に支持される。作業者がアーム型助力装置11の操作部71を操作した際、アーム型助力装置11には、第1アーム31と第2アーム51とを一体として第1回転支持部21回りに回転させるための操作トルクと、操作部71を回転させるための操作トルクとが必要である。その一方で、アーム型助力装置11は、第1アーム31と第2アーム51との間を回転させるための操作トルクは必要ない。
【0087】
第1アーム31と第2アーム51との間も回転可能な場合を比較例とする。比較例と比べると、アーム型助力装置11は、第1回転支持部21回りでの回転に対して操作トルクが効果的に作用するため、その操作力を小さくできる。その結果として、荷役物を運搬するときの操作力を低減できる。
【0088】
アーム型助力装置11は、第1アーム31に対して第2アーム51が固定されている。このため、アーム型助力装置11は、第1アーム31に対して第2アーム51を回転させずに荷役物を運搬できる。つまり、操作部71の操作力は、第2アーム51を回転させずに第1アーム31に直接伝わる。
【0089】
例えば、第2アーム51と第1アーム31との間も回転する場合と比べると、操作部71の操作力は、第1アーム31に伝わりやすい。第2アーム51を第1アーム31に対して回転させるための角度が大きくなるほど、操作力は第2アーム51に伝わりにくくなるため、第2アーム51が回転しない場合は、操作力を小さくできる。その結果として、作業者は、操作部71の操作によって第1アーム31を適切、かつ小さな操作力で操作できる。したがって、アーム型助力装置11は、操作部71を操作するために必要な回転量を小さくできるため、荷役物の運搬に必要な操作力を低減できる。
【0090】
特に、荷役物をある地点から、別の地点まで短い距離で直線的に運搬したい場合、第2アーム51の回転がないため、運搬が容易となるとともに、運搬時間を短縮できる。
さらに、第2アーム51は、第1アーム31に対して回転しないため、第1アーム31と第2アーム51とで形成される屈曲部が発生しない。このため、屈曲部が周囲に干渉することも無い。
【0091】
(2)第2アーム51は、シャフト52を2本有する。2本のシャフト52は、重力方向に並設されるとともに、重力方向に並設された軸受44に挿通されている。第2アーム51がシャフト52を1本だけ有する場合、及び2本のシャフト52が水平方向に並設される場合と比べると、第2アーム51の重力方向への剛性が向上する。このため、第2アーム51がシャフト52を1本だけ有する場合、及び2本のシャフト52が水平方向に並設される場合と比べると、第2アーム51の質量を低下させながらも、重力方向へのシャフト52の撓み量を小さくできる。その結果、シャフト52が直線移動するときに軸受44との間に発生する抵抗を低減させることができるため、荷役物を運搬するときの操作力をより一層小さくできる。
【0092】
(3)アーム型助力装置11を停止するとき、第1~第3ブレーキ機構161~163を作動させる。すると、慣性による第1回転支持部21の回転、第2回転支持部61の回転、及びシャフト52の直線移動のそれぞれを抑制できる。ブレーキ機構を備えない場合と比べると、操作部71による操作を停止したとき、アーム型助力装置11の動きが止まるまでの時間を短縮できるとともに、所望する位置に操作部71を位置させることができる。
【0093】
(4)第2アーム51は、第2ブレーキ機構162を備える。第2ブレーキ機構162の軸制動部162bは、重力方向に軸受44と並設されている。このため、軸受44及び軸制動部162bによって、第2アーム51の剛性が高められている。その結果、第2アーム51を直線移動させる際の撓み量を小さくできる。
【0094】
(5)第2アーム51は軸挿通部材55を有する。この軸挿通部材55には、重力方向に長手が延びる揺動孔55aが形成されるとともに、制動軸162aの前端は揺動孔55aに挿通されている。これによれば、揺動孔55aによって、制動軸162aは重力方向へ撓み可能となる。
【0095】
(6)第2ブレーキ機構162において、制動軸162aは、軸制動部162bに支持されるとともに、一対の軸支部162cによって支持されている。制動軸162a及び一対の軸支部162cにより、制動軸162aの撓みに起因する摺動抵抗を低減できるため、操作力を低減できる。
【0096】
(7)制動軸162aは、シャフト52に比して細径である。例えば、制動軸162aの径が、シャフト52の径と同じ場合と比べると、第2アーム51が備える第2ブレーキ機構162を軽量化できる。その結果、第2アーム51の操作性を高めることができる。
【0097】
(8)第2アーム51は、シャフト52の前端に設けられる揺動支持部56と、揺動支持部56に対し前後方向に揺動可能に支持される揺動部材59と、を有する。第2回転支持部61は、揺動部材59に固定されている。そして、揺動規制部80は、揺動部材59の前後方向への揺動角度を規制する。これによれば、第2アーム51の重力方向の撓みに対してのみ、操作部71の揺動に関して必要最低限の自由度を持たせることができる。その結果として、操作部71を水平に維持できるため、操作部71によって保持される荷役物の水平を保つことができるとともに、荷役物のイナーシャによる操作部71の振れを抑制できる。
【0098】
(9)軸受44は、固定台42の上面42bに固定されている。また、軸受44は、固定台42の上面42bに沿って固定位置を調節可能である。これによれば、重力方向にアーム型助力装置11を見た上面視で、第1アーム31と第2アーム51とを一直線状に配置する以外にも、第1アーム31に対して第2アーム51を傾斜させた状態にできる。このようにすることで、障害物を回避した荷役物の搬送が可能となる。
【0099】
(10)アーム型助力装置11は、ケーブルベア78を備える。このケーブルベア78の内部には、各種配線及びエア配管が収容されている。このため、ケーブルベア78によって各種配線及びエア配管を保護できる。そして、第2アーム51の直線移動に追従してケース78aが直線移動するとともに、フレキシブル部78bが変位する。このため、第2アーム51の直線移動に追従して各種配線及びエア配管が変位してもケーブルベア78によって各種配線及びエア配管を保護できる。
【0100】
(11)ケーブルベア78のケース78aは、上側のシャフト52の真上ではなく、側方に配置されている。ケース78aが、上側のシャフト52の真上に配置される場合と比べて、ケース78aの高さを低くできる。
【0101】
(12)揺動規制部80は、規制凸部82を有する。規制凸部82は、ナット84に対する規制ボルト83の螺合量を調節することによって、延出片81aから分岐部59bに向けた規制ボルト83の突出量を調節できる。そして、規制ボルト83の突出量を調節して、規制ボルト83の頭部と分岐部59bとの隙間の大きさを調節することにより、揺動部材59の前後方向への揺動角度を規制できる。その結果として、揺動規制部80によって規制する揺動部材59の揺動角度を調節できる。
【0102】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図12に示すように、第2ブレーキ機構162の制動軸162aは、第2アーム51の2本のシャフト52のうちの一方によって構成されてもよい。この場合、軸制動部162bは、制動軸162aとして機能する一方のシャフト52を支持する軸受44に設置してもよい。
【0103】
図13に示すように、第2ブレーキ機構162の制動軸162aは、重力方向に並設された2本のシャフト52の間に配置されてもよい。
2本のシャフト52を重力方向に並設するにあたり、第2アーム51の撓み量は、2本のシャフト52の重力方向への距離を大きくするほど小さくできる。また、軸制動部162bは、2本のシャフト52の間に配置されているため、軸制動部162bによって第2アーム51の剛性を高めることができる。
【0104】
さらに、上側のシャフト52の上側に制動軸162aを配置する場合、軸制動部162bも上側のシャフト52から上へ突出する。しかし、軸制動部162bは、2本のシャフト52の間に配置されるため、第2アーム51の重力方向への寸法増加を抑えることができる。
【0105】
○ 揺動部材59は、軸支部材57に対し揺動不能に支持されていてもよい。この場合、揺動部材59に固定された第2回転支持部61は前後方向へ揺動不能となる。その場合、揺動規制部80は無くてもよい。
【0106】
○ 制動軸162aの径は、シャフト52の径と同じでもよいし、太くてもよい。
○ 第2アーム51の前端の軸挿通部材55は無くてもよい。この場合、揺動孔55aも無いため、制動軸162aの前端は自由端としてもよいし、別部材に固定されていてもよい。
【0107】
○ アーム型助力装置11は、第1~第3ブレーキ機構161~163を備えていなくてもよい。
第1回転支持部21の回転を禁止できれば、第1ブレーキ機構161の構成は変更してもよい。シャフト52の直線移動を禁止できれば、第2ブレーキ機構162の構成は変更してもよい。操作部71の回転を禁止できれば、第3ブレーキ機構163の構成は変更してもよい。
【0108】
○ シャフト52は、水平方向に並設されていてもよい。この場合、軸受44は、固定台42の上面42bに水平方向に並べて配置される。
○ 第2アーム51のシャフト52は1本でもよいし、3本でもよい。
【符号の説明】
【0109】
11…アーム型助力装置、12…基台、21…第1回転支持部、22…第1支持部、23…第2支持部、31…第1アーム、35…第1端部、36…第2端部、41…固定支持部、44…軸受、51…第2アーム、52…シャフト、55…軸挿通部材、55a…揺動孔、56…揺動支持部、59…揺動部材、61…第2回転支持部、71…操作部、80…揺動規制部、90…アクチュエータ、161…第1ブレーキ機構、162…第2ブレーキ機構、162a…制動軸、162b…軸制動部、163…第3ブレーキ機構。
図1
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