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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124677
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】侵入抑制装置、侵入抑制プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
A01M23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028595
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 勝也
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA57
2B121DA58
2B121DA62
2B121DA63
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】侵入対象が、当該侵入対象の侵入を阻止したい領域に近づいたときに、確実に、侵入対象を予め定めた誘導先へ誘導して、侵入を抑制する。
【解決手段】誘導部群14に属する複数の誘導部12を、第1領域20と第2領域22との間に設定した第3領域24にメッシュ状に配列し、監視装置18からの撮影画像の解析等によって、第1領域20から第3領域24へ侵入してくる害獣を、時系列で発信する音波により、効率よく第1領域20から遠ざけ、かつ第2領域22へ誘導するようにした。このため、誘導部12の構造上の特性により、指向性の無い同心円状に効果を発信する場合においても、期待する方向へ確実に害獣を逃がすことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入対象の侵入を阻止したい第1領域と、前記侵入対象の最終誘導先である第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に設定された第3領域と、が設けられ、前記第3領域へ侵入した前記侵入対象の前記第1領域への侵入を抑制するための侵入抑制装置であって、
前記第3領域における、前記侵入対象の存在を監視する監視装置と、
前記第3領域に分散して設置され、前記侵入対象を前記第2領域へ誘導するための仕掛けを発出する複数の誘導部と、
前記監視装置で前記侵入対象が前記第3領域に侵入したことを検知した場合に、当該侵入対象の位置を特定し、特定した位置と前記第1領域との関係に基づいて、前記複数の誘導部における仕掛けの発出を制御する制御部と、
を有する侵入抑制装置。
【請求項2】
前記第1領域への侵入の抑制が、前記第2領域から前記第3領域へ侵入した前記侵入対象である、請求項1記載の侵入抑制装置。
【請求項3】
前記制御部が、
前記監視装置で前記侵入対象が前記第3領域に侵入したことを最初に検知したとき、当該侵入対象を前記第1領域から遠ざけるのに最適な前記誘導部を選択し、最先に仕掛けを発出する、請求項1又は請求項2記載の侵入抑制装置。
【請求項4】
前記制御部が、
前記監視装置で前記侵入対象が前記第3領域に進入したことを最初に検知したとき、当該侵入対象を前記第1領域から遠ざけるのに最適な前記誘導部を選択し、最先に仕掛けを発出すると共に、
前記侵入対象が移動することで変化する位置に応じて、前記誘導部を順次選択し、時系列で仕掛けを発出させていく、請求項1又は請求項2記載の侵入抑制装置。
【請求項5】
前記誘導部が、前記第3領域内で規則性を持って配列されており、
前記制御部が、前記侵入対象を最初に検知した位置から前記第2領域までの誘導路を事前に特定し、特定した前記誘導路に基づいて前記誘導部を選択すると共に、選択した前記誘導部を時系列に連動させて発出させる、請求項1から請求項3の何れか1項記載の侵入抑制装置。
【請求項6】
特定した前記誘導路と実際の前記侵入対象の移動軌跡との差分に応じて、以降の誘導路を補正する、請求項5記載の侵入抑制装置。
【請求項7】
前記監視装置が、少なくとも前記侵入対象の存在の有無及び位置を、直接的又は間接的に取得可能な検出デバイスである、請求項1~請求項6の何れか1項記載の侵入抑制装置。
【請求項8】
前記誘導部が、予め特定した前記侵入対象が嫌がる所定周波数かつ所定音圧の音波を、仕掛けとして発出する、請求項1~請求項7の何れか1項記載の侵入抑制装置。
【請求項9】
コンピュータを、
請求項1~請求項8の何れか1項記載の前記侵入抑制装置の前記制御部として動作させる、
侵入抑制プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、侵入抑制装置、侵入抑制プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、イノシシやシカ、カラスなどの害獣に対する追い払いの仕組みとして、超音波やガス、可視光、音などを発出して追い払う様々な誘導装置が存在する。
【0003】
特許文献1には、害獣及び不審者を含むターゲットに対し低コストで効果的な威嚇を可能にすることが記載されている。
【0004】
より具体的には、ガス放出ユニットを、筐体内で、誘引物質を含むガスおよび威嚇物質を含むガスを超音波噴霧器により発生させて滞留させ、しかる後上記滞留したガスを送風ファンにより筐体外へ短時間に強制的に放出するように構成する。また制御ユニットにおいて、赤外線カメラから出力された画像データからターゲットとなる動物が検出された場合に、ターゲットの方位および距離を求める。そして、ターゲットまでの距離に応じて誘引物質と威嚇物質のいずれかを選択し、選択された物質を含むガスをガス放出ユニット1に発生させ、放出させるように制御する。
【0005】
すなわち、特許文献1では、ターゲットを検出してガスを放出し、単体の追払装置を動作させてガスを噴出、当該装置を中心として同心円状に追い払い効果が広がり害獣を追い払うことができる。
【0006】
なお、特許文献1では、ターゲットの検知後、追払装置を連動させ一斉に追い払う方法についても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-74734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術1では、設置者が期待する方向へ確実に追い払うことが難しい。場合によっては行ってほしくない方向への誘導を促してしまう場合が生じる。
【0009】
すなわち、図5の実線Xの軌跡で害獣が現れた場合は、装置の効果により期待する方向(森)へ逃がすことができるが、点線Yのように害獣が追払装置の側面や背面に回り込んだ場合、本来避けたい方向(畑や民家、学校など)へわざわざ誘導し、逆効果となる事象が実際に発生している。
【0010】
本発明は上記事実を考慮し、侵入対象が、当該侵入対象の侵入を阻止したい領域に近づいたときに、確実に、侵入対象を予め定めた誘導先へ誘導して、侵入を抑制することができる侵入抑制装置、侵入抑制プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る侵入抑制装置は、侵入対象の侵入を阻止したい第1領域と、前記侵入対象の最終誘導先である第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に設定された第3領域と、が設けられ、前記第3領域へ侵入した前記侵入対象の前記第1領域への侵入を抑制するための侵入抑制装置であって、前記第3領域における、前記侵入対象の存在を監視する監視装置と、前記第3領域に分散して設置され、前記侵入対象を前記第2領域へ誘導するための仕掛けを発出する複数の誘導部と、前記監視装置で前記侵入対象が前記第3領域に侵入したことを検知した場合に、当該侵入対象の位置を特定し、特定した位置と前記第1領域との関係に基づいて、前記複数の誘導部における仕掛けの発出を制御する制御部と、を有している。
【0012】
本発明に係る侵入抑制プログラムは、コンピュータを、前記侵入抑制装置の前記制御部として動作させる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、侵入対象が、当該侵入対象の侵入を阻止したい領域に近づいたときに、確実に、侵入対象を予め定めた誘導先へ誘導して、侵入を抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る侵入抑制装置の概略構成図である。
図2図1で示した侵入抑制装置を設置場所に配置した場合の平面図である。
図3】本実施の形態に係る侵入抑制装置による害獣誘導制御の流れを示すフローチャートである。
図4図3のフローチャートによる誘導制御を実行した場合の一連の流れを時系列に示した遷移図である。
図5】従来の害獣の侵入時に、害獣を逃がした方向へ誘導するための装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(侵入抑制装置10の構成)
図1は、本実施の形態に係る侵入抑制装置10の概略構成図である。
【0016】
侵入抑制装置10は、複数の誘導部12で構成される誘導部群14を備えている。なお、誘導部12の実際の設置例は、図2を用いて後述する。
【0017】
誘導部群14の各誘導部12は、それぞれ制御部16に接続されている。
【0018】
誘導部12は、制御部16から出力される指示信号を受信する受信機能と、当該指示信号の受信に基づいて、侵入対象として、例えば、害獣が嫌がる仕掛けを発出して誘導する誘導機能を備えている。なお、以下では、侵入対象を害獣として説明する。
【0019】
各誘導部12と制御部16との配線接続形態は、特に限定するものではなく、従来通り個々に接続(信号線の独立した接続)してもよいし、有線LAN(Local Area Network)で接続してもよい。無線LANを用いれば配線の煩雑が解消される。また、無線接続の場合、設置距離(制御部16と各誘導部12との相対位置関係)に応じて、近距離間データ通信技術等を用いてもよい。
【0020】
また、誘導部12の誘導機能による仕掛けの発出は、誘導する害獣によって様々な発出デバイスを設けることができる。例えば、特定ガスの放出、音波(可聴波、超音波を問わず)の発信等、であるが、基本的には、誘導部12を中心として、同心円状に、波状に拡散するように発出することを基本としている。なお、指向性を持つ発出を否定するものではない。
【0021】
なお、以下では、仕掛けの発出として、音波の発信を例にとり説明する。本実施の形態の侵入抑制装置10は、設置するあたり、害獣-音波(音圧)テーブルを予め準備しておき、侵入抑制装置10を設置して侵入抑制する害獣が特定した時点で、害獣種に応じた音波(音圧)を発信させるようにすればよい。例えば、害獣がイノシシの場合、周波数が20000Hz、音圧が80dBの音波が有効であることがわかっている。
【0022】
また、後述する監視装置18で撮影した画像から害獣を特定し、害獣-音波(音圧)テーブルを用いて、出力する音波(及び音圧)を調整する機能を設けてもよい。
【0023】
ここで、誘導部群14に属する各誘導部12は、制御部16からの指示信号に基づき、連携して動作し得るグループであり、誘導部群14の中で、各誘導部12の配置形態が定められるようになっている。言い換えれば、本実施の形態では、制御部16が、単一の誘導部群14を制御する構成を記載しているが、制御部16が、複数の誘導部群14をそれぞれ制御する構成としてもよい。複数の誘導部群14が存在する状況としては、第1領域(学校等)を中心として、四方八方から侵入対象が侵入する可能性がある場合に、第1領域(学校等)の周囲を複数の第3領域に区画し、それぞれの第3領域に誘導部群14を配置し、各誘導部群14を単一の制御部16で制御する等である。なお、周囲とは平面的ではなく、鳥類を侵入対象として、上空や、鳥類が群がる特定の樹木の周囲に向けて仕掛けを発出する誘導部群14も含む。
【0024】
制御部16には、監視装置18が接続されている。監視装置18は、例えば、カメラであり、制御部16による画像解析機能との連携で、撮影範囲における害獣の存在の有無、及び存在時の位置を特定する。
【0025】
監視装置18がカメラの場合、より詳しくは、制御部16では、カメラで撮影された画像のピクセルデータにおいて、害獣の撮影座標領域(奥行により占有する領域が異なる)を特定し、予め定めたピクセルデータ-位置情報テーブルに基づいて、害獣の位置を特定する。すなわち、一例として、画像の左上から右方向に向けて10ピクセル、下方向に向けて100ピクセルの位置が特定された場合は、ピクセルデータ-位置情報テーブルにより、害獣の位置を、カメラの設置位置から、光軸方向に直線で10m,画像中心から右横に50cmであると特定する。
【0026】
なお、ピクセルデータ-位置情報テーブルに代えて、監視装置18と共にライダーセンサ(図示省略)を併設してもよい。この場合、監視装置18で害獣の存在を認識したタイミングで、ライダーセンサからの信号で、監視装置18からの相対的な物理的距離を特定することができる。
【0027】
監視装置18は、画像解析又はライダーセンサとの併用により、害獣の位置を特定できれば、赤外線センサ(サーモカメラを含む)であってもよい。
【0028】
制御部16では、誘導部群14の各誘導部12の配置が予め認識されており、監視装置18で撮影した画像(害獣の位置)に基づいて、各誘導部12への指示信号の出力タイミングが制御されるようになっている。
【0029】
(侵入抑制装置10の設置例)
図2は、図1で示した侵入抑制装置10を、設置場所に配置した場合の、設置場所の平面図である。
【0030】
図2に示される如く、1つのグループを構成する誘導部群14は、9個の誘導部12を備えている。
【0031】
図2では、害獣の侵入を阻止したい第1領域20を学校の校庭や民家の畑等とし、害獣の追い払い先である第2領域22を山林とすると共に、第1領域20と第2領域22との間に害獣の誘導を促す第3領域24を設定している。なお、第1領域20と第2領域22との間は、例えば、壁や柵等によって、直接害獣が侵入できないようにすることが好ましい。
【0032】
なお、第2領域22は、害獣の追い払い先領域であると共に、害獣が生息する領域でもあり、図2は、この第2領域22から、例えば、食料を求めて第1領域20である畑等に侵入することが予測される状況である。
【0033】
そこで、本実施の形態では、害獣が、第2領域22から第1領域20に直接侵入することがないように第3領域24を設定し、第3領域24に、同一グループの誘導装置群14に属する9個の誘導部12を、それぞれの間隔が、ほぼ一定となるように、メッシュ状(3×3のマトリクス状)に配列している。
【0034】
一方、監視装置18(ここでは、カメラ)は、L字型とされた第1領域20(学校の校庭や民家の畑等)の内側角部に隣接する第2領域22に、第1領域20の当該内側角部を背にして配置されている。これにより、監視装置18の撮影範囲は、第2領域22のほとんどを確保することができる(図2の一点鎖線AL、ARの視野範囲参照)。
【0035】
制御部16は、特に設置場所の限定はないが、第1領域20に設置することが好ましい。また、複数存在する誘導部12の何れかに、制御部16としての機能を併せ持たせるようにしてもよい。
【0036】
制御部16では、図2において、監視装置18で撮影した画像の解析により、第2領域22から害獣が第3領域24に侵入したことを認識し、かつ害獣の位置を特定すると、特定した位置(場所)を起点として、行ってはいけない方向(第1領域20)において、第1領域20に最も近い位置に設置している誘導部12を選択し、この選択した誘導部12から害獣に近い誘導部12に対して、順番に仕掛けの発出を指示する。本例では便宜上超音波の発信で追い払っている。
【0037】
以下に、本実施の形態の作用を、図3のフローチャートに従い説明する。
【0038】
ステップ100では、監視装置18で撮影した画像の解析を実行し、次いで、ステップ102へ移行して、第3領域24で害獣を検出したか否かを判断する。第3領域24は、誘導実行領域である。
【0039】
ステップ102で否定判定された場合は、誘導する害獣が存在しないと判断し、ステップ100へ戻り、上記工程を繰り返す。
【0040】
また、ステップ102で肯定判定されると、第3領域24に誘導する害獣が存在する、すなわち、第1領域20から第3領域24へ害獣が移動してきたと判断し、ステップ104へ移行して、画像解析によって、害獣の位置を特定する。
【0041】
次のステップ106では、害獣の追跡により、害獣が、事前設定位置の何れかに到達したか否かを判断する。
【0042】
このステップ106で否定判定された場合は、ステップ104へ戻り、害獣の追跡を継続する。また、ステップ106で肯定判定された場合は、ステップ108へ移行して、第1領域20から遠ざける誘導部(号機)を選択する。より具体的には、ステップ106において、害獣が事前設置位置に到達すると、この到達位置を起点として、行ってはいけない方向(第1領域20)において、第1領域20に最も近い位置に設置している誘導部12を選択する。次のステップ110へ移行して、選択した誘導部(号機)への指示信号を出力により、音波を発信し、ステップ112へ移行する。第1領域20は、害獣の侵入を阻止したい領域である。
【0043】
ステップ112では、解析画像に基づき、害獣の移動軌跡を取得し、ステップ114へ移行して、第2領域22への追い払いが成功したか否かを判断する。第2領域22は、害獣の誘導先である。
【0044】
ステップ114で否定判定された場合は、害獣は依然として第3領域24に存在すると判断し、ステップ116へ移行して移動軌跡に基づき、次に音波を発信する誘導部12(号機)を選択し、ステップ118へ移行する。
【0045】
ステップ118では、ステップ116で選択した誘導部12(号機)への指示信号を出力により、音波を発信し、ステップ114へ移行し、ステップ114で肯定判定されるまで、上記工程を繰り返す。
【0046】
ステップ114で肯定判定、害獣を第3領域24から、第1領域20に追い払った(追い払いに成功した)と判断し、ステップ120へ移行して、侵入抑制装置10のリセット処理を実行し、ステップ100へ戻る。
【0047】
図4は、図2の状況下での平面図であり、図3のフローチャートによる誘導制御を実践した場合を時系列に示した遷移図である。
【0048】
なお、各誘導部12は、それぞれ、1号機、2号機、・・・9号機として識別し、図4では、それぞれ、丸付き数字で表記する。
【0049】
図4(A)に示される如く、害獣(図4では、現在位置を実線星印26で示す。なお、点線星印は、現在位置前後を示す。)が、第3領域24の上部から害獣が出現し、そのまま下に降りず、図4の矢印Aの軌跡で左へ移動、その後下へ移動して第3領域24へ侵入しながら、1号機を回り込むように移動する。
【0050】
監視装置18では、ライダーセンサで距離を測る、又は画像のピクセルを数えて相対で距離を割り出すことで、害獣の位置を特定する(ここの例では、2号機と3号機の中間辺り)。制御部16は、特定した害獣の位置から測定距離の周囲にある誘導部12を特定する(1回目)。
【0051】
なお、上記のようなライダーセンサ等による害獣の位置を特定する手段(以下、「害獣位置センサ特定型」という)に代えて、監視装置18は、害獣を検知(サーモカメラで周囲との著しい温度差で検知、又は、画像識別で害獣の外形を認識)し、事前に設定したポイント(ここの例では、2号機と3号機の中間辺り)まで移動するのを待ち、制御部16は、当該ポイントに基づき、測定距離の周囲にある誘導部12を特定する手段を用いてもよい(以下「特定ポイント待ち伏せ型」という)。
【0052】
ここで、「害獣位置センサ特定型」及び「特定ポイント待ち伏せ型」の何れの手段を用いてもよいが、「害獣位置センサ特定型」の方が、害獣を特定する位置が限定されず、汎用性がある。「害獣位置センサ特定型」を適用した場合、害獣と誘導部の距離が離れすぎている等のときに、特定の場所まで害獣がくるのを待って誘導部12を作動させる、という動作をする場合がある。
【0053】
このケースでは害獣を誘導する方向に対して害獣から反対方向に位置し、かつ第1領域20に最も近い誘導部が3号機であるため、この3号機を選択する。
【0054】
図4(B)に示される如く、制御部16は、3号機に対して指示信号を出力する。これにより、3号機は、音波を発信する。この音波により、害獣は驚いて、続いて、1号機と2号機の間あたりへ逃げる(図4の矢印B参照)。
【0055】
次に、監視装置18で害獣の位置を特定し(2回目)、制御部16は、害獣を誘導する方向に対して害獣から反対方向に位置し、第1領域に一番近い誘導部が2号機であることを特定する。
【0056】
図4(C)に示される如く、制御部16は、2号機に指示信号を出力し、2号機は音波を発信する。この音波により、害獣は驚いて、続いて、4号機の右側へ逃げる(図4の矢印C参照)。
【0057】
次に、監視装置18で害獣の位置を特定し(3回目)、制御部16は、害獣を誘導する方向に対して害獣から反対方向に位置し、第1領域に一番近い誘導部が5号機であることを特定する。
【0058】
図4(D)に示される如く、制御部16は、5号機に対して指示信号を出力する。これにより、5号機は、音波を発信する。この音波により、害獣は驚いて、続いて、第1領域20である、上部の山林へ逃げる(図4の矢印D参照)。
【0059】
最後に、監視装置18で害獣の位置を特定し(4回目)、制御部16は、害獣を誘導する方向に対して害獣から反対方向に位置し、第1領域に一番近い誘導部が4号機であることを特定する。
【0060】
ここで、図4(E)に示される如く、所謂「ダメ押し」で、4号機に指示信号を出力する。これにより、4号機は音波を発信する。この音波により、害獣は、第1領域20よりもさらに山林の奥へ消えてゆく(図4の矢印E参照)。すなわち、誘導による追い払いが完了する。
【0061】
以上説明したように本実施の形態によれば、誘導部群14に属する複数の誘導部12を、第1領域20と第2領域22との間に設定した第3領域24にメッシュ状に配列し、監視装置18からの撮影画像の解析等によって、第1領域20から第3領域24へ侵入してくる害獣を、時系列で発信する音波により、効率よく第1領域20から遠ざけ、かつ第2領域22へ誘導するようにした。
【0062】
このため、誘導部12の構造上の特性により、指向性の無い同心円状に効果を発信する場合においても、期待する方向へ確実に害獣を逃がすことができる。
【0063】
すなわち、本実施の形態に係る侵入抑制装置10は、害獣(侵入者)の確保が目的ではなく、侵入してほしくない領域(第1領域20)への侵入を回避することが目的である。このため、本実施の形態に係る侵入抑制装置10において、時系列で誘導部12を作動することは、害獣(侵入者)が安全な方向(捕まりたくない方向)へ逃げる習性を利用した、従来にはない、効果的かつ効率的な追い払いが可能となる。
【0064】
仮に、害獣が予期せぬ方向へ移動しても、監視装置18で距離(位置)を再特定し、手前から奥へと、所謂「波状攻撃」するため、確実に効果的な、害獣の誘導が可能となる。
【0065】
なお、本実施の形態では、監視装置18を固定配置したが、監視装置18(監視装置18)は固定である必要はなく、例えば、ドローン等に監視装置18を取り付けて、第3領域24の中を移動しながら空撮するようにしてもよい。この場合、単一のドローンでもよいが、複数のドローンを適用し、常に、第2領域22の全てを、何れかのドローンで撮影するように、自律分散技術(例えば、ボロノイ制御技術等)を用いることで、例えば、複数の害獣の侵入に対して、それぞれの害獣に特化した追跡が可能となる。
【0066】
また、本実施の形態では、監視装置18で害獣の存在を認識し、かつ位置を特定した時点で、最適な誘導部12を選択することを繰り返す、所謂リアルタイムな動作制御を行っているが、例えば、最初に害獣の位置を特定した時点で、誘導する経路を設定し、設定した経路に沿って害獣が移動するための、誘導部12の動作順序を予め決定するようにしてもよい。これにより、制御部16の制御負担を軽減することができる。さらに、害獣が予め設定した経路から逸脱した場合は、誘導部12の動作順序を補正すればよい。なお、作動させる条件を満たす誘導部12が複数ある場合は、複数の誘導部12を同時に作動させても構わない。
【0067】
本発明の利用形態としては、侵入対象を害獣とし、山際に設置された民家、農家、畑、学校を守る形で説明したが、これら地方の場所以外に、線路、道路など害獣の侵入が大きなトラブルにつながる場所でも利用できる。
【0068】
害獣は、イノシシやシカなど山林から人里へ降りてくる動物を想定して説明しているが、侵入対象としては、都心におけるカラスやムクドリ等の鳥類に分類される害獣被害にも利用できる。
【0069】
さらに、侵入対象は、本実施の形態で示した害獣に限らず、住宅に無断で侵入する侵入者であってもよい。すなわち、侵入を阻止したい第1領域が住宅であり、侵入者の誘導先である第2領域が敷地外であり、誘導する領域である第3領域が敷地内(例えば、庭やエントランス等)であり、住宅の敷地内に侵入する侵入者を、住宅内まで侵入させることなく、敷地外へ追い払うことが可能である。
【0070】
なお、本実施の形態では、誘導部12における仕掛けの手段として、音波を適用したが、音波(聴覚)以外に、視覚、触覚、嗅覚、及び味覚等、侵入対象に想定通りの移動を促す(誘導する)機能があれば、他の五感を用いた仕掛けであってもよい。また、複数の感覚の仕掛けを併用してもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 侵入抑制装置
12 誘導部
14 誘導部群
16 制御部
18 監視装置
20 第1領域
22 第2領域
24 第3領域
図1
図2
図3
図4
図5