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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124686
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】モータ装置及び電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20230830BHJP
   H02K 1/12 20060101ALI20230830BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20230830BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
H02K1/18 D
H02K1/12 A
H02K3/34 B
H02K5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028609
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 孝太
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
5H605
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601BB09
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD25
5H601DD31
5H601DD47
5H601EE18
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA32
5H601GB32
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD07
5H601GD19
5H601JJ04
5H601JJ05
5H601JJ06
5H601KK08
5H601KK17
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604DB01
5H604PB03
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC01
5H605GG04
(57)【要約】
【課題】ヨークコアを構成する積層された鋼板が、ヨークコアから剥がれて脱落するのを抑制しやすいモータ装置及び電動工具を提供する。
【解決手段】モータ装置は、軸線320回りに回転するロータ3と、ロータ3の回りに位置するステータ2と、脱落抑制部8と、を備える。ステータ2は、ティースコア4と、ティースコア4が内部に嵌め込まれる環状をしたヨークコア5と、を有する。ヨークコア5は、複数の鋼板50が軸線320方向に積層されたものである。脱落抑制部8は、ヨークコア5の軸線320方向の両側に位置して、鋼板が脱落するのを抑制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転するロータと、
前記ロータの回りに位置するステータと、
脱落抑制部と、を備え、
前記ステータは、
ティースコアと、
前記ティースコアが内部に嵌め込まれる環状をしたヨークコアと、を有し、
前記ヨークコアは、複数の鋼板が前記軸線方向に積層されたものであり、
前記脱落抑制部は、前記ヨークコアの前記軸線方向の両側に位置して、前記鋼板が脱落するのを抑制する
モータ装置。
【請求項2】
前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングを更に備え、
前記ハウジングは、前記ヨークコアの前記軸線方向の両側のうちの少なくとも一方の側の前記脱落抑制部を有する
請求項1記載のモータ装置。
【請求項3】
前記ステータに設けられるインシュレータを更に備え、
前記インシュレータは、前記ヨークコアの前記軸線方向の両側のうちの少なくとも一方の側の前記脱落抑制部を有する
請求項1又は2に記載のモータ装置。
【請求項4】
脱落抑制部材を更に備え、
前記脱落抑制部材は、
前記ヨークコアの前記軸線方向の両側にそれぞれ位置する前記脱落抑制部と、前記両側に位置する前記脱落抑制部を連結する連結部と、を有する
請求項1記載のモータ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のモータ装置を備える、
電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はモータ装置及び電動工具に関し、より詳細には、ステータコアとロータとを備えるモータ装置及びこのモータ装置を備える電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータコアとロータとを有するモータを備えた電動工具が開示されている。ステータコアは、中央コア(ティースコア)と、外筒部(ヨークコア)とを有している。外筒部は、複数の鋼板を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板は、磁性材料により形成されており、例えば、ケイ素鋼板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/161989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のモータにあっては、電動工具を使用することによる振動により、外筒部の鋼板が剥がれて脱落するおそれがあった。
【0005】
本開示は、ヨークコアを構成する積層された鋼板が、ヨークコアから剥がれて脱落するのを抑制しやすいモータ装置及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るモータ装置は、軸線回りに回転するロータと、前記ロータの回りに位置するステータと、脱落抑制部と、を備える。前記ステータは、ティースコアと、前記ティースコアが内部に嵌め込まれる環状をしたヨークコアと、を有する。前記ヨークコアは、複数の鋼板が前記軸線方向に積層されたものである。前記脱落抑制部は、前記ヨークコアの前記軸線方向の両側に位置して、前記鋼板が脱落するのを抑制する。
【0007】
本開示の一態様に係る電動工具は、前記モータ装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のモータ装置及び電動工具は、ヨークコアを構成する積層された鋼板が、ヨークコアから剥がれて脱落するのを抑制しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一実施形態に係るモータ装置の要部の分解図である。
図2図2は、同上のモータ装置を備える電動工具の概略図である。
図3図3は、同上のモータ装置の断面図である。
図4図4は、同上のモータ装置(ベース及びハウジングを除く)の分解図である。
図5図5は、同上のモータのハウジングの要部斜視図である。
図6図6は、第二実施形態に係るモータ装置の脱落抑制部材の斜視図である。
図7図7は、同上のモータ装置(回路基板及びベースを除く)を他端側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る電動工具と、この電動工具に備えられるモータ装置とについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態のうちの限られた実施形態に過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(1)第1実施形態
(1.1)電動工具
図1図2に示すように、電動工具10は、モータ1と、ハウジング11と、脱落抑制部8と、を備えている。図2に示すように、電動工具10は、電源101と、駆動伝達部102と、出力部103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御回路107とを更に備えている。電動工具10は、先端工具105をモータ1の駆動力で駆動する工具である。
【0012】
モータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。モータ1は、例えばブラシレスモータである。電源101は、モータ1を駆動する電流を供給する直流電源である。電源101は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。駆動伝達部102は、モータ1の出力(駆動力)を調整して出力部103に出力する。出力部103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される部分である。チャック104は、出力部103に固定されており、先端工具105が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具105(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。
【0013】
トリガボリューム106は、モータ1の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム106を引く操作により、モータ1のオンオフが切替可能である。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量で、出力部103の回転速度、つまりモータ1の回転速度が調整可能である。制御回路107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、モータ1を回転又は停止させ、また、モータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104に取り付けられる。そして、トリガボリューム106への操作によってモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
【0014】
なお、実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0015】
(1.2)モータ
次に、図1等を参照して、モータ1の構成を説明する。モータ1は、ステータ2と、ロータ3とを備えている。ロータ3は、出力軸32を有している。ステータ2は、ステータコア20と、ステータ配線21と、を有している。ロータ3は、ステータ2に対して、出力軸32の回転中心となる軸線320回りに回転する。すなわち、ステータコア20に巻かれた複数(図1では9つ)のコイル線22から発生する磁束により、ロータ3を回転させる電磁気力が発生する。モータ1は、ロータ3の回転力(駆動力)を出力軸32から駆動伝達部102(図2参照)へ伝達する。
【0016】
ステータコア20は、ティースコア4と、ヨークコア5とを有している。ヨークコア5は、ティースコア4に取り付けられる。ティースコア4は、円筒状の内筒部41と、複数(図1では9つ)のティース42とを有している。内筒部41の内側には、ロータ3が配置されている。複数のティース42の各々は、胴部421と、2つの先端片422とを含む。胴部421は、内筒部41から内筒部41の径方向において外向きに突出している。本実施形態では、内筒部41には、周方向に間隔をあけて複数(図1では9つ)の胴部421が形成されている。
【0017】
2つの先端片422は、胴部421の先端側の部位から、胴部421の突出方向と交差する方向に延びている。胴部421には、後述するインシュレータ6(図3参照)を介してコイル線22が巻かれる。
【0018】
2つの先端片422は、コイル線22が胴部421から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部421の先端側にコイル線22が移動しようとする場合に、コイル線22が2つの先端片422に引っ掛かることで、コイル線22の脱落を抑制できる。
【0019】
ロータ3は、円筒状のロータコア30と、複数(図1では6つ)の永久磁石31と、出力軸32と、を有している。出力軸32は、ロータコア30の内側に保持されている。永久磁石31は多角形状(六角形状)に配置されている。
【0020】
次に、ステータコア20の構成の詳細について説明する。図3図4に示すように、ステータコア20のティースコア4は、複数の鋼板40を含む。ティースコア4は、複数の鋼板40を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板40は、磁性材料により形成されている。各鋼板40は、例えば、ケイ素鋼板である。複数の鋼板40は、かしめることにより積層されている。本実施形態では、複数の鋼板40は、厚さ方向に重ね合わせられた状態で、部分的に厚さ方向に力を加えることで変形させ、隣接する鋼板40に食い込ませるようにして、隣接する鋼板40が互いに分離しないようになっている。
【0021】
図1に示すように、内筒部41の形状は、円筒状であり、その中心軸線は、出力軸32の軸線320と一致している(図3図4参照)。複数の鋼板40の厚さ方向は、軸線320方向と一致している。内筒部41は、周方向において連続している。言い換えると、内筒部41は、周方向において途切れることなくつながっている。
【0022】
複数のティース42の胴部421の形状は、直方体状である。胴部421は、内筒部41から内筒部41の径方向において外向きに突出している。複数のティース42の胴部421は、内筒部41の周方向において等間隔に設けられている。
【0023】
2つの先端片422は、胴部421の先端側の部位から、胴部421の突出方向と交差する方向に延びている。より詳細には、2つの先端片422は、胴部421の先端側の部位において、内筒部41の周方向の両側に設けられている。そして、2つの先端片422は、内筒部41の周方向に延びている。
【0024】
図3図7に示すように、ステータ配線21は、胴部421に巻かれるコイル線22と、複数の胴部421に巻かれるコイル線22同士を電気的に接続する渡り配線23と、を有する。
【0025】
図1に示すように、コイル線22は、9つのティース42に対応して9つ備えられている。各コイル線22及び渡り配線23を構成する電線は、例えば、エナメル線である。この巻線は、線状の導体と、導体を覆う絶縁被覆と、を有している。ステータ配線21は、一本の電線により構成されている。
【0026】
ステータコア20は、ティースコア4を覆うインシュレータ6を更に備えている。インシュレータ6は、例えば、合成樹脂を材料として形成されている。インシュレータ6は、電気絶縁性を有している。インシュレータ6は、複数のティース42の少なくとも一部を覆っている。
【0027】
図3図4に示すように、インシュレータ6は、第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62の二つの部材により構成される。第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62は、軸線320方向に並んでいる。第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62は、軸線320方向から複数のティース42を嵌め込み可能な形状に形成されている。すなわち、第1インシュレータ61は、ティースコア4に取り付けられて、軸線320方向の一端側(図3における左側であり、以下、単に左側とする)から複数のティース42を覆い、第2インシュレータ62は、軸線320方向の他端側(図3における右側であり、以下、単に右側とする)から複数のティース42を覆っている。第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62は、軸線320方向から見て内筒部41と重なる筒体63と、複数のティース42を覆う複数(図4では9つ)のティース被覆部64とを有している。筒体63は、内筒部41と同心の円筒状に形成されており、その中心軸線は、出力軸32の軸線320と一致している。各ティース被覆部64は、筒体63から筒体63の径方向において外向きに突出している。
【0028】
図3に示すように、第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62がティースコア4に取り付けられて、複数のティース42の少なくとも一部を覆った状態で、コイル線22は、第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62が構成するインシュレータ6を介して胴部421に巻かれている。ここで、コイル線22は、胴部421と、この胴部421と隣り合う2つの胴部421それぞれとの間のスロット(空洞)を通るように胴部421に巻かれている。
【0029】
第1インシュレータ61及び第2インシュレータ62がティースコア4に取り付けられた状態で、各ティース42のうち、内筒部41側とは反対側の先端は、インシュレータ6に覆われておらず、ヨークコア5に接している。
【0030】
第1インシュレータ61のティース被覆部64は、第1インシュレータ61の筒体63の左側の部分から右側へと延びている。また、第2インシュレータ62のティース被覆部64は、第2インシュレータ62の筒体63の右側の部分から左側へと延びているが、第1インシュレータ61のティース被覆部64までには至っていない。すなわち、第1インシュレータ61のティース被覆部64と第2インシュレータ62のティース被覆部64とは接触しておらず、これらの間に隙間65が形成され、この部分においてティース42は露出している。しかしながら、コイル線22は、第1インシュレータ61のティース被覆部64と第2インシュレータ62のティース被覆部64の対向方向に延びるように巻かれてこの隙間65を跨るため、コイル線22はティース42に接触しない。
【0031】
なお、モータ1の設計変更等によりティースコア4を構成する鋼板40の個数が変更された場合等には、ティースコア4の厚さが変わるが、ティースコア4の厚さの変更に伴って第1インシュレータ61と第2インシュレータ62との間の距離が変わる。第1インシュレータ61のティース被覆部64と第2インシュレータ62のティース被覆部64とが接触して、これらの間に隙間が形成されないように構成してももちろんよい。
【0032】
図3図4に示すように、ヨークコア5は、複数の鋼板50を含む。ヨークコア5は、複数の鋼板50を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板50は、磁性材料により形成されている。各鋼板50は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0033】
図1に示すように、ヨークコア5の形状は、円筒状であり、その中心軸線は、出力軸32の軸線320と一致している。ヨークコア5は、複数のティース42に取り付けられ複数のティース42を囲んでいる。
【0034】
ヨークコア5は、複数(9つ)の嵌合部51を有している。つまり、ヨークコア5は、ティース42と同数の嵌合部51を有している。複数の嵌合部51の各々は、ヨークコア5の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部51は、複数のティース42と一対一で対応している。複数の嵌合部51の各々と、複数のティース42のうちこの嵌合部51に対応するティース42とは、少なくとも一方が内筒部41の径方向に移動することで嵌まり合う。これにより、ヨークコア5が複数のティース42に取り付けられる。
【0035】
各嵌合部51には、ティース42のうち2つの先端片422を含む部位が嵌め込まれる。そのため、ヨークコア5の周方向における各嵌合部51の長さは、胴部421から突出した2つの先端片422のうち一方の先端片422の突出先端と、他方の先端片422の突出先端との間の長さと等しい。なお、本明細書において「等しい」とは、複数の値が互いに完全に一致する場合に限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっている場合をも含む。例えば、3%以内、5%以内、又は10%以内の誤差がある場合をも含む。
【0036】
ティースコア4にインシュレータ6が装着されコイル線22が巻かれた状態で、ヨークコア5は、例えば、焼嵌めにより複数のティース42に取り付けられる。すなわち、ヨークコア5を加熱して径方向に膨張させた状態で、ヨークコア5の内側にティースコア4を配置する。これにより、ヨークコア5の内面は、複数のティース42との間に僅かに隙間を空けて内筒部41の径方向における複数のティース42の先端に対向する。その後、ヨークコア5の温度が低下してヨークコア5が収縮すると、ヨークコア5の内面が複数のティース42の先端に接する。つまり、ヨークコア5の収縮に伴って複数の嵌合部51がヨークコア5の径方向内向きに移動することにより、複数の嵌合部51と複数のティース42とが嵌まり合う。ヨークコア5は、複数のティース42に対してヨークコア5の径方向内向きの接圧を加えている。
【0037】
図3図4に示すように、ステータ2は、回路基板7を有する。回路基板7は、ステータ配線21に電流を供給する。回路基板7は、実装される電気部品と、電気部品と電気的に接続され、かつ、渡り配線23が電気的に接続されるモータ端子71と、を有する。モータ端子71は三個設けられており、各モータ端子71は、三相交流のU相、V相及びW相にそれぞれ対応している。第2インシュレータ62の回路基板7が設けられる側と反対側の面に沿って、回路基板7とは別の基板72が設けられている。
【0038】
次に、ロータ3の構成の詳細について説明する。図3に示すように、ロータ3のロータコア30は、複数の鋼板301を含む。ロータコア30は、複数の鋼板301を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板301は、磁性材料により形成されている。各鋼板301は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0039】
ロータコア30は、ステータコア20の内筒部41と同心の円筒状に形成されており、その中心軸線は、出力軸32の軸線320と一致している。軸線320方向において、ロータコア30の両端の位置は、ステータコア20の両端の位置とほぼ揃っている。なお、ロータコア30の両端の位置とステータコア20の両端の位置とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。例えば、ロータコア30の厚さの3%以内、5%以内又は10%以内のずれがあってもよい。
【0040】
ロータコア30の内側には、出力軸32が保持されている。ロータコア30は、複数(図1では6つ)の磁石収容部302を含んでいる。複数の磁石収容部302は、複数の永久磁石31を収容する。複数の磁石収容部302の各々は、ロータコア30を軸線320方向に貫通する貫通孔である。複数の永久磁石31の各々は、接着剤を付着させた状態で磁石収容部302に挿入されることで、磁石収容部302に保持されている。なお、複数の永久磁石31の各々は、接着剤を用いることなく、ロータコア30との間の磁気吸着力により磁石収容部302に保持されていてもよい。
【0041】
複数の磁石収容部302は、ロータコア30の周方向において等間隔に設けられている。これにより、複数の永久磁石31がロータコア30の周方向において等間隔に配置されている。また、複数の永久磁石31の各々の長手方向は、ロータコア30の周方向に沿っている。各永久磁石31は、例えば、ネオジム磁石である。
【0042】
図3に示すように、モータ1は、ベース35、第1ベアリング33及び第2ベアリング34を更に備えている。ベース35は、ロータコア30に取り付けられて、ロータコア30、出力軸32及び第1ベアリング33の内輪と一体的に回転する。第1ベアリング33は、ロータコア30の左側に配置され、その内輪は、出力軸32の左側の部分に取り付けられる。第2ベアリング34は、ロータコア30の右側に配置される。第2ベアリング34の内輪は、出力軸32の右側の部分に取り付けられて出力軸32と一体的に回転し、第2ベアリング34の外輪は、第2インシュレータ62に取り付けられる。
【0043】
図1に示すように、モータ1の製造工程では、ステータ2のティースコア4とヨークコア5とが分離された状態で、ティースコア4の複数のティース42の胴部421に、インシュレータ6を介してコイル線22が巻かれる。その後、複数のティース42にヨークコア5が取り付けられる。
【0044】
コイル線22は、例えば、各ティース42の先端側に配置した器具を用いてティース42に巻かれる。複数のティース42は、内筒部41から径方向において外向きに突出しているので、複数のティース42が内向きに突出している場合と比較して、各ティース42の先端側のスペースを広くすることができる。そのため、各ティース42にコイル線22を容易に巻くことができ、場合によっては、コイル線22の占積率を増加させることが可能である。
【0045】
本開示においては、モータ1と後述する脱落抑制部8(本実施形態ではハウジング11)を含む構成をモータ装置とする。
【0046】
(1.3)ハウジング
図3及び図5に示すように、ハウジング11は、ロータ3及びステータ2を収容する。本実施形態では、ハウジング11は、第1インシュレータ61側に位置してモータ1の第1ベアリング33を押さえる第1壁部12と、第2インシュレータ62側に位置してモータ1の第2ベアリング34を押さえる第2壁部13と、ヨークコア5の外周に位置してヨークコア5の外周面を押さえる第3壁部14と、を有する。モータ1は、第1壁部12、第2壁部13及び第3壁部14に囲まれて収容される。
【0047】
ハウジング11は、電動工具10の外殻を構成するケースであってもよいし、電動工具10の外殻を構成するケースに収容される別のケースであってもよい。
【0048】
(1.4)脱落抑制部
脱落抑制部8は、ヨークコア5の軸線320方向の両側に位置して、鋼板50が脱落するのを抑制する。本実施形態では、ハウジング11の第3壁部14の軸線320に沿う方向のうちの第1ベアリング33側の端部が軸線320に向けて延びて、第1ベアリング33側の鋼板50の脱落を抑制する第1脱落抑制部81が構成される。第1脱落抑制部81は、第1ベアリング33側の端に位置する鋼板50を直接押さえて、この鋼板50が剥がれるのを抑制している。
【0049】
また、第1脱落抑制部81は、鋼板50を直接押さえず、一枚の鋼板50の厚み分よりも小さい距離をあけて、第1ベアリング33側の端に位置する鋼板50と対向するようにしてもよい。このようにすることで、第1ベアリング33側の端に位置する鋼板50が隣接する鋼板50から剥がれても、第1脱落抑制部81により脱落してしまうことが抑制される。
【0050】
また、第2インシュレータ62の径外方向の端部により、第2ベアリング34側の鋼板50の脱落を抑制する第2脱落抑制部82が構成される。第2脱落抑制部82は、第2ベアリング34側の端に位置する鋼板50を直接押さえて、この鋼板50が剥がれるのを抑制している。また、第2脱落抑制部82は、第1脱落抑制部81と同様に、鋼板50を直接押さえず、一枚の鋼板50の厚み分よりも小さい距離をあけて、第1ベアリング33側の端に位置する鋼板50と対向するようにしてもよい。
【0051】
脱落抑制部8により、軸線320方向の端部の鋼板50がヨークコア5から剥がれて脱落することが抑制される。特に、脱落抑制部8が軸線320方向の端部の鋼板50を直接押さえる場合には、軸線320方向の端部の鋼板50がヨークコア5から剥がれることが抑制される。
【0052】
(2)第2実施形態
以下、第2実施形態に係るモータ1及び電動工具10について、図6を参照して説明する。なお、第2実施形態に係るモータ1及び電動工具10は、第1実施形態に係るモータ1及び電動工具10と大部分において同じであるため、重複する説明については省略する。
【0053】
第1実施形態では、脱落抑制部8は、ハウジング11とインシュレータ6とにより構成されていたのに対して、第2実施形態では、脱落抑制部材80により構成される。
【0054】
脱落抑制部材80は、ヨークコア5の軸線320方向の両側にそれぞれ位置する脱落抑制部8、8と、両側に位置する脱落抑制部8、8を連結する連結部84と、を有する。脱落抑制部材80は、リング部材83と、リング部材83から突出する連結部84と、を有する。
【0055】
リング部材83は、ヨークコア5と同様の環状をしたもので、周方向に均等に間隔をあけて、三個の連結部84が中心軸線に沿う方向に突出している。三個の連結部84の先端部にはそれぞれ引掛部が形成されており、この引掛部により、第1ベアリング33側の鋼板50の脱落を抑制する第1脱落抑制部81が構成される。また、リング部材83により、第2ベアリング34側の鋼板50の脱落を抑制する第2脱落抑制部82が構成される。
【0056】
脱落抑制部材80、図7に示すように、モータ1の第2ベアリング34側より、連結部84をティース42の胴部421の間の空間15を通して、ヨークコア5の第1ベアリング33側の鋼板50に第2脱落抑制部82を引掛ける。
【0057】
第2実施形態においても、第1脱落抑制部81及び第2脱落抑制部82は、軸線320方向の端に位置する鋼板50を直接押さえて、この鋼板50が剥がれるのを抑制している。なお、第1脱落抑制部81及び第2脱落抑制部82は、鋼板50を直接押さえず、一枚の鋼板50の厚み分よりも小さい距離をあけて、軸線320方向の端に位置する鋼板50と対向するようにしてもよい。
【0058】
(3)変形例
次に、第1実施形態及び第2実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0059】
ロータ3の構成は、任意に変更が可能である。例えば、複数の永久磁石31は、多角形状に配置されていることに限定されず、スポーク状に配置されていてもよい。
【0060】
永久磁石31の個数は、6つに限定されず、2つ以上であればよい。
【0061】
ロータ3は、永久磁石31ではなく電磁石を有してもよい。
【0062】
ロータコア30の軸線320方向から見たロータコア30の形状は、完全な円形に限定されず、例えば、円状又は楕円状であって、円周上に突起及び窪みが設けられた形状であってもよい。
【0063】
モータ1は、電動工具10に備えられることに限定されない。モータ1は、例えば、電動自転車又は電動アシスト自転車に備えられてもよい。
【0064】
モータ1は、ロータ3に取り付けられた調整部を更に有していてもよい。調整部の形状は、例えば、円筒状の重りであって、調整部は、ロータ3の出力軸32に取り付けられる。調整部の一部を削り調整部の重さ及び重心を変えることで、ロータ3の重量バランスを調整することができる。あるいは、ロータコア30の一部を削ることで、ロータ3の重量バランスを調整してもよい。あるいは、ロータ3に付着させる接着剤の位置と量とを調整することで、ロータ3の重量バランスを調整してもよい。
【0065】
複数の鋼板40及び複数の鋼板301の各々は、各部分がつながった1つの部材であることが好ましい。これにより、各鋼板40(又は301)が複数の部材からなる場合と比較して、モータ1の部品点数を削減できる。
【0066】
複数の鋼板50は、かしめ以外の方法により積層されてもよい。例えば、隣接する鋼板50同士を接着材により接着してもよい。この場合でも、電動工具10を使用することによる振動により、鋼板50が剥がれるおそれがある。
【0067】
複数の鋼板40及び複数の鋼板301も、鋼板50と同様の方法で積層されてもよい。
【0068】
ステータ配線21は、一本の電線ではなく、複数本の電線により構成されてもよい。
【0069】
第1実施形態においては、ハウジング11が第1脱落抑制部81を有し、かつ、インシュレータ6が第2脱落抑制部82を有していたが、ハウジング11が第2脱落抑制部82を有し、かつ、インシュレータ6が第1脱落抑制部81を有してもよい。また、ハウジング11が第1脱落抑制部81及び第2脱落抑制部82を有してもよいし、インシュレータ6が第1脱落抑制部81及び第2脱落抑制部82を有してもよい。
【0070】
(4)まとめ
以上、述べた実施形態およびその変形例から明らかなように、第1の態様のモータ装置は、軸線320回りに回転するロータ3と、ロータ3の回りに位置するステータ2と、脱落抑制部8と、を備える。ステータ2は、ティースコア4と、ティースコア4が内部に嵌め込まれる環状をしたヨークコア5と、を有する。ヨークコア5は、複数の鋼板50が軸線320方向に積層されたものである。脱落抑制部8は、ヨークコア5の軸線320方向の両側に位置して、鋼板が脱落するのを抑制する。
【0071】
第1の態様によれば、脱落抑制部8により、軸線320方向の端部の鋼板50がヨークコア5から剥がれて脱落することが抑制される。
【0072】
第2の態様は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様のモータ装置は、ロータ3及びステータ2を収容するハウジング11を更に備える。ハウジング11は、ヨークコア5の軸線320方向の両側のうちの少なくとも一方の側の脱落抑制部8を有する。
【0073】
第2の態様によれば、ロータ3及びステータ2を収容するハウジング11を利用して脱落抑制部8を構成することができる。
【0074】
第3の態様は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様のモータ装置は、ステータ2に設けられるインシュレータ6を更に備える。インシュレータ6は、ヨークコア5の軸線320方向の両側のうちの少なくとも一方の側の脱落抑制部8を有する。
【0075】
第3の態様によれば、ステータ2に設けられるインシュレータ6を利用して脱落抑制部8を構成することができる。
【0076】
第4の態様は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様のモータ装置は、脱落抑制部材80を更に備える。脱落抑制部材80は、ヨークコア5の軸線320方向の両側にそれぞれ位置する脱落抑制部8と、両側に位置する脱落抑制部8を連結する連結部と、を有する。
【0077】
第4の態様によれば、脱落抑制部材80により、既存の部材によらずに独立して脱落抑制部8を構成することができる。
【0078】
第5の態様は、第1~4のいずれかの態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様の電動工具10は、第1~4のいずれかの態様のモータ装置を備える。
【0079】
第5の態様によれば、電動工具10のモータ装置において、脱落抑制部8により、軸線320方向の端部の鋼板50がヨークコア5から剥がれて脱落することが抑制される。
【符号の説明】
【0080】
1 モータ
10 電動工具
11 ハウジング
2 ステータ
3 ロータ
320 軸線
4 ティースコア
5 ヨークコア
50 鋼板
6 インシュレータ
8 脱落抑制部
80 脱落抑制部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7