(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124711
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】把持装置及び把持装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230830BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028652
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000104630
【氏名又は名称】キヤノンプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(72)【発明者】
【氏名】松山 和樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU04
3C707HS27
3C707KS34
3C707KV01
3C707KX08
3C707LV10
(57)【要約】
【課題】把持部に開口部を設けることなく把持力を検出可能であると共に、把持対象物の変形率が変化した場合でも把持力を正確に制御可能な把持装置を提供すること。
【解決手段】把持装置は、把持対象物を把持した場合に弾性変形する第1の弾性変形部を備え、レールに沿って直線摺動する第1のガイドブロックに接続された第1の把持部材と、第1の弾性変形部に接触しない位置で第1のガイドブロックに取り付けられた第1の支持部材と、第1の支持部材に取り付けられた第1の変位検出基板と、第1の変位検出基板に対向する位置で第1の把持部材に取り付けられた第1の変位検出スケールとからなり、第1の弾性変形部の第1の弾性変位量を取得する第1の変位検出部と、第1の弾性変位量に基づく第1の把持力を取得する第1の取得部と、回転力を発生させる駆動部と、第1の把持力に基づいて駆動部を制御する制御部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持対象物を把持した場合に弾性変形する第1の弾性変形部を備え、レールに沿って直線摺動する第1のガイドブロックに接続された第1の把持部材と、
前記第1の弾性変形部に接触しない位置で前記第1のガイドブロックに取り付けられた第1の支持部材と、
前記第1の支持部材に取り付けられた第1の変位検出基板と、前記第1の変位検出基板に対向する位置で前記第1の把持部材に取り付けられた第1の変位検出スケールとからなり、前記第1の弾性変形部の第1の弾性変位量を取得する第1の変位検出部と、
前記第1の弾性変位量に基づく第1の把持力を取得する第1の取得部と、
回転力を発生させる駆動部と、
前記第1の把持力に基づいて前記駆動部を制御する制御部とを有することを特徴とする把持装置。
【請求項2】
前記駆動部は、モータと、前記モータの回転角度を検出する回転角度検出部とを備え、
前記制御部は、前記モータを制御するモータ制御信号を生成する制御回路部と、前記モータ制御信号を用いて前記モータの駆動を制御する駆動回路部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記第1の弾性変形部の弾性変位量と把持力との関係に関する第1の情報を記憶する第1の記憶部を更に有し、
前記第1の取得部は、前記第1の情報を用いて前記第1の把持力を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1の変位検出基板は、光学式エンコーダセンサを備え、
前記第1の変位検出スケールは、フィルム状の基材と該基材の上に形成された光反射膜とを備える光学式反射スケールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の把持装置。
【請求項5】
前記把持対象物を把持した場合に弾性変形する第2の弾性変形部を備え、前記レールに沿って直線摺動する第2のガイドブロックに接続される第2の把持部材と、
前記第2の弾性変形部に接触しない位置で前記第2のガイドブロックに取り付けられた第2の支持部材と、
前記第1の支持部材に取り付けられた第2の変位検出基板と、前記第2の変位検出基板に対向する位置で前記第2の把持部材に取り付けられた第2の変位検出スケールとからなり、前記第2の弾性変形部の第2の弾性変位量を取得する第2の変位検出部とを更に有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記第2の弾性変形部の弾性変位量と把持力との関係に関する第2の情報を記憶する第2の記憶部と、
前記第2の情報を用いて第2の弾性変位量に基づく第2の把持力を取得する第2の取得部とを更に有することを特徴とする請求項5に記載の把持装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1の弾性変位量の絶対値と前記第2の弾性変位量の絶対値とが一致しない場合、把持エラーに関する情報を通知することを特徴とする請求項5又は6に記載の把持装置。
【請求項8】
前記第2の変位検出基板は、光学式エンコーダセンサを備え、
前記第2の変位検出スケールは、フィルム状の基材と該基材の上に形成された光反射膜とを備える光学式反射スケールであることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載の把持装置。
【請求項9】
把持対象物を把持した場合に弾性変形する弾性変形部を備える把持部材と、回転力を発生させる駆動部とを備える把持装置の制御方法であって、
目標把持力を決定するステップと、
前記目標把持力、及び前記把持装置の把持力と電流値との関係に関する情報を用いて前記駆動部に供給する電流を決定するステップと、
前記把持対象物を把持するために、前記駆動部に電流を供給するステップと、
前記弾性変形部の第1の弾性変位量を取得するステップと、
前記第1の弾性変位量、及び前記弾性変形部の弾性変位量と把持力との関係に関する情報を用いて現在の把持力を取得するステップと、
前記目標把持力と前記現在の把持力とが一致しない場合、前記駆動部に供給する電流を変更するステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
把持対象物を把持した場合に弾性変形する第1の弾性変形部を備える第1の把持部材と、前記把持対象物を把持した場合に弾性変形する第2の弾性変形部を備える第2の把持部材と、回転力を発生させる駆動部とを備える把持装置の制御方法であって、
目標把持力を決定するステップと、
前記目標把持力、及び前記第1の把持装置の把持力と電流値との関係に関する情報を用いて前記駆動部に供給する電流を決定するステップと、
前記把持対象物を把持するために、前記駆動部に電流を供給するステップと、
前記第1の弾性変形部の第1の弾性変位量及び前記第2の弾性変形部の第2の弾性変位量を取得するステップと、
前記第1の弾性変位量の絶対値と前記第2の弾性変位量の絶対値とが一致しない場合、把持に関するエラーを示す情報を通知するステップとを有することを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光学式の位置検出センサと反射パターンによって把持部材のたわみ量を計測し、把持力を検出する構成が開示されている。また、特許文献2には、実測した把持対象物の変形率に基づいて、把持力を制御する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-34733号公報
【特許文献2】特開2018-69381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、把持部材に位置検出センサを内蔵するための開口部と該開口部の内部に反射パターンを設ける必要がある。また、特許文献2の構成では、把持対象物の変形率が変化すると、把持力を正確に制御することができない。
【0005】
本発明は、把持部材に開口部を設けることなく把持力を検出可能であると共に、把持対象物の変形率が変化した場合でも把持力を正確に制御可能な把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての把持装置は、把持対象物を把持した場合に弾性変形する第1の弾性変形部を備え、レールに沿って直線摺動する第1のガイドブロックに接続された第1の把持部材と、第1の弾性変形部に接触しない位置で第1のガイドブロックに取り付けられた第1の支持部材と、第1の支持部材に取り付けられた第1の変位検出基板と、第1の変位検出基板に対向する位置で第1の把持部材に取り付けられた第1の変位検出スケールとからなり、第1の弾性変形部の第1の弾性変位量を取得する第1の変位検出部と、第1の弾性変位量に基づく第1の把持力を取得する第1の取得部と、回転力を発生させる駆動部と、第1の把持力に基づいて駆動部を制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、把持部に開口部を設けることなく把持力を検出可能であると共に、把持対象物の変形率が変化した場合でも把持力を正確に制御可能な把持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、実施例1の把持装置の構成図である。(b)は、把持部材を示す図である。
【
図4】(a)は、実施例1の変位検出スケールの反射パターン部の説明図である。(b)は、変位検出スケールの断面図である。(c)は、変位検出スケールの貼り付け方法の説明図である。
【
図5】(a)は、実施例1の変位検出スケールと変位検出センサとの位置関係を示す斜視図である。(b)は、実施例1の変位検出スケールと変位検出センサの側面図である。
【
図6】実施例1の把持装置で把持対象物を把持した状態を示す図である。
【
図7】実施例1の変位検出基板のブロック図である。
【
図9】実施例1の把持装置における把持力と弾性変形部のたわみ量のデータを取得するための構成を示す図である。
【
図10】実施例1の把持装置における把持力と弾性変形部のたわみ量のデータを取得する方法を示すフローチャートである。
【
図11】実施例1の記憶部に記憶される把持力とたわみ量のデータテーブルの一例を示す図である。
【
図12】実施例1の把持装置における目標把持力で把持対象物を把持する方法を示すフローチャートである。
【
図15】実施例2の把持装置における目標把持力で把持対象物を把持する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例0010】
図1(a)は、本実施例の把持装置1の構成図である。モータユニット(駆動部)10は、モータ101と回転角度検出部102とを備え、回転力を発生させる。モータユニット10は、モータアタッチメント13を介してケース14の上部に取り付けられ、ケーブル31を介して制御基板(制御部)30に電気的に接続されている。回転角度検出部102は、モータシャフトの回転角度を検出可能なセンサ(例えば、エンコーダ)である。ベースプレート15は、ケース14の下部に取り付けられている。リニアガイド16は、レール161、スライダーブロック(第1のガイドブロック)162A、及びスライダーブロック(第2のガイドブロック)162Bを備え、ベースプレート15の下部に取り付けられている。スライダーブロック162A,162Bは、レール161に沿って直線摺動する。アタッチメント部材17Aは、スライダーブロック162Aに取り付けられている。アタッチメント部材17Bは、スライダーブロック162Bに取り付けられている。把持部材(第1の把持部材)18Aは、アタッチメント部材17Aの下部に取り付けられている。把持部材(第2の把持部材)18Bは、アタッチメント部材17Bの下部に取り付けられている。
【0011】
図1(b)は、把持部材18A,18Bを示す図である。把持部材18Aは、土台部18Aaと弾性変形部(第1の弾性変形部)18Abと把持接触部18Acとを備える。把持部材18Bは、土台部18Baと弾性変形部(第2の弾性変形部)18Bbと把持接触部18Bcとを備える。土台部18Aaは、スライダーブロック162Aに固定される。土台部18Baは、第2のスライダーブロック162Bに固定される。土台部18Aaがスライダーブロック162Aに固定された状態で把持接触部18AcにX軸方向のプラス側の力を加えることで、弾性変形部18AbはX軸方向のプラス側に変形する。土台部18Baが第2のスライダーブロック162Bに固定された状態で把持接触部18BcにX軸方向のマイナス側の力を加えることで、弾性変形部18AbはX軸方向のマイナス側に変形する。弾性変形部18Ab,18Bbの材質は、弾性変形するものであればよく、把持力に応じて決定すればよい。
【0012】
図2は、把持装置1の分解図であり、変位検出部2A周辺の構成を示している。支持部材(第1の支持部材)21Aは、弾性変形部18Abに接触しない位置で土台部18Aaに取り付けられている。変位検出部(第1の変位検出部)2Aは、変位検出基板(第1の変位検出基板)20と変位検出スケール(第1の変位検出スケール)22とからなる。変位検出基板20は、基板202と基板202に実装される変位検出センサ(例えば、光学式エンコーダセンサ)201とを備え、支持部材21Aの支柱21Aa,21Abの先端に取り付けられている。変位検出スケール22は、中空円柱状のカラー23に貼り付けられる。変位検出スケール22は、弾性変形部18Abに設けられたネジ穴18Adとボルト24を介して、変位検出基板20に対向する位置で把持部材18Aに取り付けられる。
【0013】
以下、把持装置1の把持動作のメカ機構について説明する。
図3は、把持装置1の断面斜視図であり、把持装置1の内部構造を示している。ピニオン11は、モータ101に接続されているモータシャフト1011の先端に取り付けられている。ピニオン11の両側には、ラック12A,12Bが接続されている。ラック12Aは、アタッチメント部材17Aを介してスライダーブロック162Aに接続され、レール161に沿ってX軸方向へ移動する。ラック12Bは、アタッチメント部材17Bを介してスライダーブロック162Bに接続され、レール161に沿ってX軸方向へ移動する。
【0014】
制御基板30は、モータシャフト1011の回転方向と回転速度を制御する。以降、回転方向の説明では、モータシャフト1011の側から見てCW方向を時計回り方向、CCW方向を反時計回り方向とする。モータシャフト1011をCCW方向へ回転させた場合、ラック12AはX軸方向のマイナス側に移動し、ラック12BはX軸方向のプラス側に移動する。したがって、ラック12Aにスライダーブロック162Aとアタッチメント部材17Aを介して接続される把持部材18Aは、X軸方向のマイナス側に移動する。また、ラック12Bにスライダーブロック162Bとアタッチメント部材17Bを介して接続される把持部材18Bは、X軸方向のプラス側に移動する。すなわち、モータシャフト1011がCCW方向へ回転すると把持部材18A,18Bが近づくので把持対象物を把持する動作となる。一方、モータシャフト1011がCW方向へ回転すると把持部材18Aと把持部材18Bが離れるので把持対象物を放す動作となる。
【0015】
以下、弾性変形部18Abのたわみ量(弾性変位量)を検出する原理について説明する。
図4(a)は、変位検出スケール22の反射パターン部22Bの説明図である。反射パターン部22Bには、128μmピッチで非反射部の上に64μm幅の反射部22Ba,22Bb,22Bc・・・22Bix,22Biy,22Bizが形成されている。なお、ピッチと反射パターン幅は、他の値であってもよい。
【0016】
図4(b)は、変位検出スケール22の断面図である。フィルム状の基材である透明基板22Aの片面には、光反射膜である反射パターン部22Bが形成されている。すなわち、本実施例では、変位検出スケール22は光学式反射スケールである。透明基板22Aの反射パターン部22Bが形成されている側の面には、遮光性基材22Ccと粘着剤22Ca,22Cbとを備える両面テープ22Cが貼りつけられている。透明基板22Aの材質は、光透過性と可撓性を持つものであれば特に限定されず、例えばポリカーネート(PC)樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂であってもよい。また、透明基板22Aの厚みは、湾曲面に貼り付けることを容易とするために0.05mm以下であることが望ましい。反射パターン部22Bは、透明基板22Aにアルミニウムを蒸着させて得られる蒸着膜を所定のパターンにエッチングすることで形成される。遮光性基材22Ccの材質は、光遮光性と可撓性を持つものであれば特に限定されず、例えば黒色のポリエステル樹脂であってもよい。粘着剤22Ca,22Cbは、透明基板22A、反射パターン部22B、及びカラー23に接着可能な樹脂層であればよく、例えばアクリル系樹脂を主成分とする粘着剤であってもよい。また、両面テープ22Cの厚みは、湾曲面に貼り付けることを容易とするために0.05mm以下であることが望ましい。
【0017】
図4(c)は、変位検出スケール22の貼り付け方法の説明図である。変位検出スケール22は可撓性を有するため、粘着剤22Cbの面をカラー23の曲面に沿って貼り付けることができる。
【0018】
図5(a)は、変位検出スケール22と変位検出センサ201との位置関係を示す斜視図である。変位検出センサ201は、基板201A、透明部材201B、受光素子201C、及び発光素子201Dを備える。受光素子201Cと発光素子201Dは、基板201Aに実装され、透明部材201Bで覆われている。カラー23に貼り付けられた変位検出スケール22は、受光素子201Cと発光素子201Dとの間に配置されている。
【0019】
図5(b)は、変位検出スケール22と変位検出センサ201の側面図である。Z軸方向において、受光部201Caの受光面から変位検出スケール22の端面までの距離Z1と発光部201Daの発光面から変位検出スケール22の端面までの距離Z2が等しくなるように、各部品が配置されている。また、Y軸方向において、受光部201Caの中心からカラー23の中心までの距離Y1と発光部201Daの中心からカラー23の中心までの距離Y2の距離が等しくなるように、各部品が配置されている。ここで、「等しい」とは、厳密に等しい場合だけでなく、実質的に等しい(略等しい)場合も含んでいる。本実施例では、距離Z1,Z2の差分及び距離Y1,Y2の差分が十分に小さくなるように構成されている。したがって、発光部201Daから射出され反射パターン部22Bに入射するまでの光路長(入射光路長)と反射パターン部22Bで反射され受光部201Caに入射される光路長(反射光路長)は等しくなる。また、
図4(a)に示されるように、反射パターン部22Bには128μmピッチで64μm幅の反射部が形成されている。発光部201Daから射出された光が反射パターン部22Bで反射して受光部201Caに入射する場合、受光部201Caには反射パターン部22Bに形成されている反射部の2倍である256μmピッチの明暗パターンの反射光が入射する。
【0020】
変位検出スケール22と変位検出センサ201のX軸方向の相対位置が変化した場合、受光部201Caに入射する256μmピッチの明暗パターンの反射光も移動する。変位検出センサ201が反射光の移動を検出することで、90度位相差のA相B相の正弦波信号を生成することができる。また、A相B相の正弦波信号を電気的に内挿することで変位検出スケール22と変位検出センサ201の相対位置の変位量を検出することができる。
【0021】
図6は、把持装置1で把持対象物60を把持した状態を示す図である。変位検出センサ201は支持部材21Aの先端に取り付けられており、変位検出スケール22は把持部材18Aの先端に取り付けられている。把持部材18A,18Bで把持対象物60を把持すると弾性変形部18AaがX軸方向のマイナス側に変形し、変位検出スケール22と変位検出センサ201の相対位置が変化する。すなわち、弾性変形部18Abのたわみ量は、変位検出センサ201と変位検出スケール22を用いて検出可能である。
【0022】
以下、把持力を取得する構成について説明する。
図7は、変位検出基板20のブロック図である。変位検出基板20は、変位検出センサ201、演算部(第1の取得部)203、記憶部204、及び通信部205を備える。通信部205と制御基板30は、ケーブル32を介して電気的に接続されている。演算部203は、例えばMCU(Micro Controller Unit)等であり、変位検出センサ201から出力される信号を電気的に内挿し、弾性変形部18Abのたわみ量を取得可能である。記憶部204は、ROM等の記憶デバイスにより構成され、弾性変形部18Abのたわみ量と把持力との関係に関する情報(第1の情報)を記憶している。把持力は、演算部203で取得された弾性変形部18Abのたわみ量と記憶部204に記憶されている情報を演算部203で照合することで取得可能である。通信部205は、例えば差動ラインドライバICであり、制御基板30と演算部203がシリアル通信するために使用される。演算部203は、制御基板30から指令信号に基づいて、制御基板30に把持力等のデータを送信することができる。
【0023】
図8は、制御基板30のブロック図である。制御基板30は、通信部302、制御回路部303、駆動回路部304、及び記憶部305を備える。通信部302は、例えばラインドライバICであり、ケーブル31で回転角度検出部102と、ケーブル32で変位検出基板20と、ケーブル33でロボット制御装置50と電気的に接続され、各接続先と通信するために使用される。制御回路部303は、例えばMCU等であり、ロボット制御装置50からの制御指令を基に、回転角度検出部102から得られたモータシャフト1011の回転角度情報を用いてモータ101の回転速度、回転方向、及び回転トルクに関する制御値を決定する。また、制御回路部303は、モータ101を制御するためのモータ制御信号を生成する。更に、制御回路部303は、変位検出基板20に把持力リクエスト信号を送ることで、把持部材18Aで発生している把持力の値を取得可能である。駆動回路部304は、例えばモータドライバICであり、制御回路部303からのモータ制御信号を用いて決定した電流値と電流方向等を用いてモータ101を駆動する。記憶部305は、例えばROMであり、モータ101のトルク-電流特性から取得される把持力とモータ電流値の関係に関する情報等を記憶している。
【0024】
図9は、把持装置1における把持力と弾性変形部18Abのたわみ量のデータを取得するための構成を示す図である。把持装置1、ロボット制御装置50、ロードセル40、及びロードセルアンプ41からなる構成により、把持力とたわみ量のデータが取得される。ロボット制御装置50と制御基板30は、ケーブル33を介して電気的に接続されている。ロードセル40とロードセルアンプ41は、ケーブル34を介して電気的に接続されている。
【0025】
図10は、
図9の構成を用いて把持装置1における把持力と弾性変形部18Abのたわみ量のデータを取得する方法を示すフローチャートである。ステップS1では、目標把持力が決定される。ステップS2では、制御回路部303は、目標把持力、及び記憶部305に記憶されている把持力とモータ電流値との関係に関する情報からモータ101に供給する電流値を決定する。ステップS3では、駆動回路部304は、モータ101に電流を供給することで、把持部材18A,18Bでロードセル40を把持する。ステップS4では、制御回路部303は、ロードセルアンプ41に表示される把持力を取得する。ステップS5では、制御回路部303は、ステップS4で取得された把持力が目標把持力と一致しているかどうかを判定する。目標把持力と一致していると判定された場合、ステップS7に進み、そうでないと判定された場合、ステップS6に進む。ステップS6では、制御回路部303は、モータ101に供給する電流値を調整する。ステップS7では、制御回路部303は、ロボット制御装置50からの指令に基づいて、変位検出基板20で取得された弾性変形部18Abのたわみ量を取得する。ステップS8では、記憶部204は、ステップS4で取得される把持力とステップS7で取得される弾性変形部18Abのたわみ量を記憶する。
図11は、記憶部204に記憶されている把持力とたわみ量のデータテーブルの一例を示す図である。
【0026】
図12は、把持装置1における目標把持力で把持対象物60を把持する方法を示すフローチャートである。ステップS11では、目標把持力が決定される。ステップS12では、制御回路部303は、目標把持力、及び記憶部305に記憶されている把持力とモータ101の電流値との関係に関する情報からモータ101に供給する電流値を決定する。ステップS13では、駆動回路部304は、モータ101に電流を供給することで、把持部材18A,18Bで把持対象物60を把持する。ステップS14では、制御回路部303は、変位検出基板20で取得された弾性変形部18Abのたわみ量を取得する。ステップS15では、制御回路部303は、記憶部204に記憶されている把持力とたわみ量のデータから現在の把持力を取得する。ステップS16では、制御回路部303は、現在の把持力が目標把持力と一致しているかどうかを判定する。ここで、「一致」しているとは、厳密に一致している場合だけでなく、実質的に一致(略一致)している場合も含んでいる。目標把持力と一致していると判定された場合、本フローを終了し、そうでないと判定された場合、ステップS17に進む。ステップS17では、制御回路部303は、モータ101に供給する電流値を調整し、駆動回路部304は、調整後の電流値を用いてモータ101を駆動する。
【0027】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、把持部材18Aの先端に取り付けられた変位検出スケール22と支持部材21Aの先端に取り付けられた変位検出基板20によって弾性変形部18Abのたわみ量が検出される。検出されたたわみ量を記憶部204に記憶されている把持力とたわみ量とのデータと照合することで、把持力を取得可能である。また、取得された把持力に基づいて、制御回路部303がモータ101に供給する電流を調整することで、把持力を制御可能である。
以上説明したように、本実施例の構成によれば、実施例1の効果に加えて、弾性変形部18Ab,18Bbのたわみ量の釣り合いを判定することで把持の成功と失敗の判別を行うことができる。