(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124713
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
A61B8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028654
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】桑名 勇治
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大広
(72)【発明者】
【氏名】長崎 祐也
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 章哲
(72)【発明者】
【氏名】芝沼 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 篤司
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE10
4C601EE19
4C601GA01
4C601GB18
4C601GB50
(57)【要約】
【課題】被検体接触部の温度上昇を抑制することである。
【解決手段】実施形態に係る超音波プローブは、超音波の送受信側に被検体と接触する被検体接触面を介して、前記被検体に前記超音波を送受信する超音波振動子を有する被検体接触部と、 前記被検体接触部が達する温度より高い相転移温度を有する第1蓄熱潜熱剤と、前記被検体接触部と前記第1蓄熱潜熱剤との間を熱的に接続し、前記被検体接触部と第1蓄熱潜熱剤との間で熱交換可能な熱交換素子と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受信側に被検体と接触する被検体接触面を介して、前記被検体に前記超音波を送受信する超音波振動子を有する被検体接触部と、
前記被検体接触部が達する温度より高い相転移温度を有する第1蓄熱潜熱剤と、
前記被検体接触部と前記第1蓄熱潜熱剤との間を熱的に接続し、前記被検体接触部と第1蓄熱潜熱剤との間で熱交換可能な熱交換素子と、
を備える超音波プローブ。
【請求項2】
前記超音波振動子に電気的に接続される電子部品を更に備え、
前記電子部品は、前記第1蓄熱潜熱剤に熱的に接続される、請求項1に記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記電子部品及び/又は前記熱交換素子に電力を供給するバッテリを更に備える、請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記被検体接触部と、前記電子部品とは第1筐体に収容され、
前記第1蓄熱潜熱剤と、前記熱交換素子と、前記バッテリとは第2筐体に収容され、
前記第2筐体は、前記第1筐体に着脱可能に取り付けられる、請求項3に記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記第2筐体が前記第1筐体に着脱可能に取り付けられる際に、前記第2筐体は、前記第1筐体に対して、熱的に及び電気的に接続される、請求項4に記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記バッテリが充電される際に、前記第1蓄熱潜熱剤は冷却される、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項7】
前記被検体接触部と前記第1蓄熱潜熱剤とを、前記熱交換素子を介して熱的に接続する第1熱伝導体と、
前記電子部品と、前記第1蓄熱潜熱剤とを熱的に接続する第2熱伝導体とを、更に備える請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項8】
前記第1蓄熱潜熱剤の相転移温度は、50~65℃である、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項9】
前記被検体接触部に熱的に接続され、前記第1蓄熱潜熱剤より低い相転移温度を有する第2蓄熱潜熱剤を更に備える、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項10】
前記第2蓄熱潜熱剤の相転移温度は、43℃以下である請求項9に記載の超音波プローブ。
【請求項11】
前記被検体接触部の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサが検出した温度に基づいて、前記熱交換素子を制御して、前記被検体接触部の温度を制御する温度制御部と、を備える請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項12】
前記温度センサにより検出した温度が所定の温度以下の場合に、前記温度制御部は、前記被検体接触部を加温する、請求項11に記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記熱交換素子に流す電流のON/OFF及び/又は電流の極性を切り替える切替部を更に備える、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記熱交換素子は、ペルチェ素子である、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の超音波プローブと、
前記超音波プローブから受信した受信信号に基づいて、超音波画像データを生成する画像生成部を備える装置本体と、
を備える、超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療分野において、超音波プローブを用いて発生させた超音波を利用して、被検体内の検査を行う超音波診断装置が広く用いられている。この超音波診断装置は、被検体内の検査を行うために、超音波を送受信する超音波振動子を有する超音波プローブの被検体接触部を被検体に接触させる必要がある。このため、超音波診断装置は、被検体接触部の温度が所定の温度以上にならないように、被検体接触部の温度が制限温度に近づくと、超音波診断装置の動作を制限するように構成されている。
【0003】
近年、超音波プローブには、例えば、超音波を送受信させる超音波振動子を切り換えるための半導体スイッチなどの電子部品や、超音波プローブが受信した被検体からの反射波である受信信号を処理するための電子部品などが内蔵されることがある。しかしながら、超音波プローブに電子部品が内蔵される場合、超音波プローブの使用により、超音波プローブに内蔵された電子部品が発熱するため、被検体接触部の温度上昇が促進されることとなる。したがって、電子部品を内蔵した超音波プローブは、被検体接触部の温度を制限温度以下に保つことが難しくなる可能性がある。また、超音波プローブの使用により、超音波振動子が発熱し、被検体接触部の温度上昇が促進することもある。このため、超音波プローブは、被検体接触部の温度を制限温度以下に保つことがより難しくなる。
【0004】
この被検体接触部の温度を制限温度以下に保つために、制限温度以下の相転移温度を有する蓄熱潜熱剤を超音波プローブに収容し、この被検体接触部の熱を蓄熱潜熱剤に吸熱させることがある。しかし、被検体接触部の制限温度は、超音波プローブに内蔵された電子部品が発熱した際に発生する温度に対して小さいため、制限温度以下の相転移温度を有する蓄熱潜熱剤では、超音波プローブに内蔵された電子部品が発熱した際の被検体接触部の温度上昇に対して、被検体接触部の温度を制限温度以下に保つことが困難である。したがって、超音波プローブにおいて、被検体接触部の温度上昇を抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、被検体接触部の温度上昇を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記の課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波プローブは、超音波の送受信側に被検体と接触する被検体接触面を介して、前記被検体に前記超音波を送受信する超音波振動子を有する被検体接触部と、 前記被検体接触部が達する温度より高い相転移温度を有する第1蓄熱潜熱剤と、前記被検体接触部と前記第1蓄熱潜熱剤との間を熱的に接続し、前記被検体接触部と第1蓄熱潜熱剤との間で熱交換可能な熱交換素子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る超音波診断装置の外観を示す模式図。
【
図2】第1実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る超音波診断装置の内部構成を説明する説明図。
【
図4】第1実施形態に係る超音波プローブを冷却する際の超音波プローブ10の熱の流れを説明する説明図。
【
図5】第1実施形態に係る超音波プローブで実行される温度制御処理の内容を説明するフローチャート図。
【
図6】第2実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成の一例を示すブロック図。
【
図7】第2実施形態に係る被検体接触部を加温する際の超音波プローブの熱の流れを説明する説明図。
【
図8】第2実施形態に係る超音波プローブで実行される温度制御処理の内容を説明するフローチャート図。
【
図9】第3実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成の一例を示すブロック図。
【
図10】第3実施形態に係る超音波プローブの内部構成を説明する説明図。
【
図11】第3実施形態に係る超音波プローブの第1筐体の内部構成を説明する説明図。
【
図12】第3実施形態に係る超音波プローブの第2筐体の内部構成を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、超音波プローブ及び超音波診断装置の実施形態について説明する。なお、以下の説明において実質的に同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る超音波診断装置の外観を示す模式図である。
図1に示すように本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とを備えて構成されている。なお、
図1に示す例では、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とは、装置本体30と別体として構成されているが、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とは一体として構成されていてもよい。装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とが一体として構成されている例としては、例えば、タブレット端末やワークステーションなどの情報処理装置である。
【0011】
超音波プローブ10は、装置本体30に接続され、被検体に対して超音波を送信するとともに、当該送信した超音波に基づく被検体内で反射された反射波信号を受信するデバイスである。この超音波プローブ10は、例えば、被検体内の2次元領域を走査する1Dアレイプローブや、被検体内の3次元領域を走査するメカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブなどである。
図1では、超音波プローブ10は、無線通信により、装置本体30に接続される例を図示しているが、超音波プローブ10は、ケーブルなどを介した有線通信により、装置本体30に接続される構成であってもよい。なお、以下の説明では、超音波プローブ10は、無線通信により、装置本体30に接続される構成として、本実施形態の詳細を説明する。
【0012】
装置本体30は、超音波プローブ10から受信した受信信号に基づいて、超音波画像を生成する装置である。
図1に示す例では、本実施形態に係る装置本体30には、超音波プローブ10と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とが接続されている。
【0013】
ディスプレイ50は、各種超音波画像や各種設定などを表示する表示装置である。例えばディスプレイ50は、装置本体30により生成された超音波画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。本実施形態においては、ディスプレイ50は、例えば、液晶ディスプレイや、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等によって構成される。
【0014】
入力インターフェース70は、種々の設定等を行うための入力装置であり、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチモニタ、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。入力インターフェース70は、後述する装置本体30の処理回路に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換し、装置本体30の処理回路へと出力する。なお、本明細書において入力インターフェース70は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を装置本体30の処理回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース70の例に含まれる。
【0015】
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を説明する。
図2は、第1実施形態に係る超音波診断装置1の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3は、第1実施形態に係る超音波診断装置1の内部構成を説明する説明図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とを備えて構成されている。また、本実施形態に係る超音波プローブ10は、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105と、熱交換素子107と、バッテリ109と、切替スイッチ111と、通信回路113と、温度センサ115と、第1蓄熱潜熱剤117と、電子部品119と、第1熱伝導体121と、第2熱伝導体123とを備える。そして、本実施形態に係る超音波プローブ10において、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105と、熱交換素子107と、バッテリ109と、切替スイッチ111と、通信回路113と、温度センサ115と、第1蓄熱潜熱剤117と、電子部品119と、第1熱伝導体121と、第2熱伝導体123とは、1の筐体に収容されて構成されている。さらに、本実施形態に係る装置本体30は、処理回路301と、記憶回路303と、通信回路305とを備える。
【0016】
以下では、まず、超音波プローブ10における、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105と、熱交換素子107と、バッテリ109と、切替スイッチ111と、通信回路113と、温度センサ115と、第1蓄熱潜熱剤117と、電子部品119と、第1熱伝導体121と、第2熱伝導体123とついて説明する。
【0017】
被検体接触部101は、例えば、超音波の送受信側に被検体Pと接触する被検体接触面Sを介して、被検体Pに超音波を送受信する超音波振動子と、整合層と、バッキング材とを有している。また、被検体接触部101は、第1熱伝導体121により、熱交換素子107を介して、第1蓄熱潜熱剤117と熱的に接続されている。
【0018】
超音波振動子は、例えば、圧電セラミックにより作製された圧電振動子である。超音波振動子は、被検体接触部101の先端に複数配列されて設けられており、送受信回路103から供給される駆動信号に基づいて超音波を送信し、被検体P内からの反射波を受信して電気信号に変換する。整合層は、超音波振動子の超音波の送受信側に設けられ、超音波を被検体Pに効率よく伝播させるための中間層である。バッキング材は、超音波振動子から後方への超音波の伝播を防止する。
【0019】
送受信回路103は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性を制御するプロセッサであり、送信回路及び受信回路を有する。なお、
図2においては、超音波プローブ10に送受信回路103が設けられる場合の例を示したが、送受信回路103は、装置本体30に設けられてもよく、超音波プローブ10と装置本体30の両方に設けられてもよい。
【0020】
送信回路は、パルス発生器、送信遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波振動子に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信遅延回路は、超音波振動子から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な超音波振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサ回路は、レートパルスにもとづくタイミングで、超音波振動子に駆動パルスを印加する。送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、超音波振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
【0021】
受信回路は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波振動子が受信した反射波信号を受け、この反射波信号に対して各種処理を行なって受信信号(エコー信号)を生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって受信信号を生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0022】
処理回路105は、例えば、超音波プローブ10の全体的な制御を行う制御回路である。本実施形態に係る処理回路105は、送受信回路103を制御したり、被検体接触部101の温度を制御したりする。
【0023】
このため、本実施形態に係る処理回路105は、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052とを有する。プローブ制御機能1051は、本実施形態におけるプローブ制御部に相当し、温度制御機能1052は、本実施形態における温度制御部に相当している。
【0024】
図2に示す実施形態では、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052とにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で装置本体30の記憶回路303に格納されている。処理回路105はプログラムを装置本体30の記憶回路303から読み出し、実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路105は、
図2の処理回路105内に示された各機能を有することとなる。なお、
図2においては単一の処理回路105にて、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052とが実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路105を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものとしても構わない。また、超音波プローブ10が記憶回路を備え、超音波プローブ10の記憶回路に各処理機能を格納するようにしてもよい。
【0025】
プローブ制御機能1051は、超音波プローブ10による超音波送受信などの基本動作を制御する機能である。例えば、処理回路105は、装置本体30からの指示に基づいて、プローブ制御機能1051により、超音波プローブ10の各部及び各回路を制御する。
【0026】
温度制御機能1052は、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の温度を制御する機能である。具体的には、本実施形態に係る温度制御機能1052は、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えて、被検体接触部101の温度を制御する。なお、温度制御機能1052は、切替スイッチ111を制御して、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えることにより、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の温度を制御するようにしてもよい。
【0027】
熱交換素子107は、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間で熱交換可能な素子である。この熱交換素子107の一方の面は、第1熱伝導体121を介して、被検体接触部101に接続され、この熱交換素子107の他方の面は、第1熱伝導体121を介して、第1蓄熱潜熱剤117に接続されている。すなわち、熱交換素子107は、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間を熱的に接続している。
【0028】
この熱交換素子107は、例えば、ペルチェ素子である。ペルチェ素子は、2つの金属または半導体を電気的に直列に接合して直流電流を流すことで、一方の面の熱を他方の面に移動するというペルチェ効果を利用した素子である。すなわち、他方の面に熱が移動する一方の面は吸熱面となり、一方の面から熱が移動される他方の面は排熱面となる。また、ペルチェ素子は、供給する電流値に応じて一方の面から吸熱量を調整することができる。さらに、ペルチェ素子は、ペルチェ素子に供給する電流の極性を逆にすることで、吸熱面と排熱面とを反対に形成することができる。なお、熱交換素子107は、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間で熱交換可能な他の素子であってもよい。
【0029】
バッテリ109は、超音波プローブ10の各構成要素に電力を供給する、例えば、リチウムイオン電池、或いはニッケル水素電池等の充電式電池である。バッテリ109は、例えば、電子部品119や、熱交換素子107などに電力を供給する。バッテリ109は、超音波プローブ10がACアダプタを介して取得した電力により充電されてもよく、超音波プローブ10から取り外されて充電されてもよい。なお、バッテリ109は、充電式電池に替えて、充電式でない電池を用いることとしてもよい。
【0030】
切替スイッチ111は、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えるためのスイッチである。具体的には、切替スイッチ111は、温度制御機能1052の制御の下、バッテリ109から熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えるための半導体スイッチ等の電気的なスイッチなどである。なお、切替スイッチ111は、電気的なスイッチに限られず、機械的なスイッチであってもよい。また、切替スイッチ111は、温度制御機能1052に制御されることとしたが、操作者の操作により、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えるようにしてもよい。この切替スイッチ111は、本実施形態における切替部に相当している。
【0031】
通信回路113は、無線通信用の種々のプロトコルを実装し、無線通信により、装置本体30との通信を実現する。本実施形態に係る通信回路113は、例えば、送受信回路103の受信回路が生成した受信信号を、無線通信により、装置本体30に送信する。なお、本実施形態における
図1の例では、超音波プローブ10と装置本体30とは、無線通信により通信を行っているが、超音波プローブ10と装置本体30との通信は、無線通信に限られない。例えば、超音波プローブ10と装置本体30との通信が有線通信で行われる場合、通信回路113は有線通信用の種々のプロトコルを実装し、ケーブルなどを介した有線通信により、超音波プローブ10と装置本体30との通信を実現してもよい。
【0032】
温度センサ115は、被検体接触部101の温度を検出する、例えば、熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、IC温度センサ等のセンサである。温度センサ115は、被検体接触部101の温度を検出して、検出した被検体接触部101の温度を処理回路105へと出力する。
【0033】
第1蓄熱潜熱剤117は、所定の相転移温度より高い温度になると固体から液体に相転移するとともに潜熱を吸熱(蓄熱)し、所定の相転移温度より低い温度になると液体から固体に相転移するとともに潜熱を排熱(放熱)する材料である。この第1蓄熱潜熱剤117は、例えば、ロウやパラフィンなどの有機物系の材料や、硫酸ナトリウム10水塩や酢酸ナトリウム3水塩などの無機水和塩系の材料、ウッドメタルやガリウムなどの低融点金属系の材料などからなる。
【0034】
図3に示すように、第1蓄熱潜熱剤117は、熱交換素子107を介して、被検体接触部101と熱的に接続されている。第1蓄熱潜熱剤117は、例えば、処理回路105や切替スイッチ111により、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の熱を吸熱する。また、第1蓄熱潜熱剤117は、電子部品119と熱的に接続され、電子部品119の熱を吸熱する。さらになお、第1蓄熱潜熱剤117は、例えば、熱伝導の高い筐体に収容されている。
【0035】
この第1蓄熱潜熱剤117は、例えば、バッテリ109が充電式電池の場合であって、バッテリ109が充電される際に、冷却される。また、バッテリ109が充電される際に第1蓄熱潜熱剤117が冷却されるとき、超音波プローブ10は、熱交換素子107を制御して、第1蓄熱潜熱剤117の熱を熱交換素子107により吸熱し、吸熱した第1蓄熱潜熱剤117の熱を外部に排熱することで、第1蓄熱潜熱剤117を急速に冷却するようにしてもよい。
【0036】
また、第1蓄熱潜熱剤117の相転移温度は、被検体接触部101が達する温度より高い温度であり、例えば、被検体接触部101の制限温度である。この被検体接触部101の制限温度は、例えば、40℃や43℃である。このため、第1蓄熱潜熱剤117の相転移温度は、例えば、43℃以上70℃以下の温度であり、より好ましくは、50℃以上65℃以下の温度である。仮に、第1蓄熱潜熱剤117が50℃未満の相転移温度である場合、電子部品119の発熱による動作温度が60℃であるため、電子部品119の熱を吸熱することにより、第1蓄熱潜熱剤117がすぐに相転移してしまう可能性があり、被検体接触部101の温度を制限温度以下に保つことが困難となる可能性がある。また、仮に、第1蓄熱潜熱剤117が65℃より高い相転移温度である場合、電子部品119の発熱による動作温度が60℃であるため、電子部品119が発熱しても第1蓄熱潜熱剤117の相転移が行われない可能性があり、超音波プローブ10の内部が温度上昇することにより、熱交換素子107により被検体接触部101を吸熱した場合でも、被検体接触部101の温度を制限温度以下に保つことが困難となる可能性がある。このため、本実施形態に係る超音波診断装置1の第1蓄熱潜熱剤117は、好ましくは、相転移温度が50℃以上65℃以下の温度のものを用いる。なお、超音波プローブ10を使用する際の周囲環境や第1蓄熱潜熱剤117の材料の特性によっては、第1蓄熱潜熱剤117が50℃未満の相転移温度であっても、第1蓄熱潜熱剤117がすぐに相転移しない可能性があり、第1蓄熱潜熱剤117が65℃より高い相転移温度であっても、第1蓄熱潜熱剤117の相転移が行われる可能性がある。このため、本実施形態に係る超音波診断装置1の第1蓄熱潜熱剤117は、相転移温度が43℃以上70℃以下の温度のものを用いてもよい。
【0037】
電子部品119は、超音波プローブ10に内蔵されている回路などを構成する電気的な部品である。電子部品119は、例えば、送受信回路103や、処理回路105、通信回路113等を構成し、超音波振動子に電気的に接続されるされる部品である。電子部品119は、第2熱伝導体123を介して、第1蓄熱潜熱剤117に熱的に接続されている。なお、電子部品119は、送受信回路103や、処理回路105、通信回路113等を構成する全ての部品を含まなくてもよい。すなわち、電子部品119は、送受信回路103や、処理回路105、通信回路113等を構成する一部の部品により構成されてもよく、送受信回路103や、処理回路105、通信回路113以外の他の部品を含んでいてもよい。
【0038】
第1熱伝導体121は、熱伝導率の高い、アルミニウムや銅などの金属又はグラファイトなどからなる伝熱部材である。また、第1熱伝導体121は、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117とを、熱交換素子107を介して熱的に接続している。
【0039】
第2熱伝導体123は、第1熱伝導体121と同様に、熱伝導率の高い、アルミニウムや銅などの金属又はグラファイトなどからなる伝熱部材である。また、第2熱伝導体123は、電子部品119と第1蓄熱潜熱剤117とを熱的に接続している。
【0040】
次に、装置本体30における、処理回路301と、記憶回路303と、通信回路305とについて説明する。
【0041】
処理回路301は、超音波診断装置1の全体的な制御を行う制御回路である。また、処理回路301は各種の演算を行う演算回路であり、例えば、CPUやGPU等のプロセッサにより構成される。本実施形態に係る処理回路301は、例えば、通信回路305を介して受信した受信信号に基づいて、超音波画像データを生成したり、生成した超音波画像データをディスプレイ50に表示させたりする。
【0042】
このため、本実施形態に係る処理回路301は、Bモード処理機能3011と、ドプラ処理機能3012と、画像生成機能3013と、表示制御機能3014とを有する。Bモード処理機能3011は、本実施形態におけるBモード制御部に相当し、ドプラ処理機能3012は、本実施形態におけるドプラ処理部に相当し、画像生成機能3013は、本実施形態における画像生成部に相当し、表示制御機能3014は、本実施形態における表示制御部に相当している。
【0043】
図2に示す実施形態では、Bモード処理機能3011と、ドプラ処理機能3012と、画像生成機能3013と、表示制御機能3014とにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路303に格納されている。処理回路301はプログラムを記憶回路303から読み出し、実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路301は、
図2の処理回路301内に示された各機能を有することとなる。なお、
図2においては単一の処理回路301にて、Bモード処理機能3011と、ドプラ処理機能3012と、画像生成機能3013と、表示制御機能3014とが実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路301を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものとしても構わない。
【0044】
Bモード処理機能3011は、超音波プローブ10から受信した受信信号に基づき、Bモードデータを生成する機能である。処理回路301は、Bモード処理機能3011により、例えば、超音波プローブ10から受信した受信信号に対して包絡線検波処理、および対数圧縮処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモードデータを生成する。
【0045】
ドプラ処理機能3012は、超音波プローブ10から受信した受信信号に基づき、血流の速度、血流の分散、血流のパワー等のドプラデータを生成する機能である。ドプラ処理機能3012は、超音波プローブ10から受信した受信信号を周波数解析することで、スキャン領域に設定されるROI(Region Of Interest: 関心領域)内にある移動体のドプラ効果に基づく血流情報を抽出したドプラデータを生成する。
【0046】
画像生成機能3013は、超音波プローブ10から受信した受信信号に基づいて、超音波画像データを生成する機能である。具体的には、画像生成機能3013は、Bモード処理機能3011により生成されたBモードデータ、及び/又はドプラ処理機能3012により生成されたドプラデータに基づき、各種超音波画像データを生成する機能である。例えば、画像生成機能3013は、Bモード処理機能3011により生成されたBモードデータから、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。また、例えば、画像生成機能3013は、ドプラ処理機能3012により生成されたドプラデータから、移動体の平均速度画像、分散画像、パワー画像、または、これらの組み合わせ画像としてのドプラ画像データを生成する。
【0047】
表示制御機能3014は、画像生成機能3013により生成された各種超音波画像データをディスプレイ50に表示させる機能である。具体的には、例えば、表示制御機能3014は、画像生成機能3013により生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、又はこれらの両方を含む超音波画像データのディスプレイ50における表示を制御する。
【0048】
記憶回路303は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。本実施形態においては、例えば、記憶回路303は、超音波プローブ10や装置本体30に含まれる回路で実行されるプログラムを記憶する。
【0049】
通信回路305は、ネットワークの形態に応じた種々の情報通信用プロトコルを実装する。通信回路305は、この各種プロトコルに従って、ネットワークを介して他の装置との通信を実現する。例えば、本実施形態に係る通信回路305は、超音波プローブ10の送受信回路103の受信回路が生成した受信信号を受信したり、超音波プローブ10に超音波プローブ10の制御プログラムを送信したり、装置本体30が生成した超音波画像などを他の装置に送信したりする。
【0050】
次に、
図3及び
図4を参照して、第1実施形態に係る被検体接触部101を冷却する際の超音波プローブ10の熱の流れを説明する。
図4は、第1実施形態に係る超音波プローブ10を冷却する際の超音波プローブ10の熱の流れを説明する説明図である。
図4に示す例では、点線は電力の供給や電流の流れる方向示す。また、実線は熱の流れる方向を示し、実線の太さは、熱が流れる量を示している。
【0051】
図4に示すように、超音波プローブ10は、超音波プローブ10の使用が開始されると、点線aに示すように、バッテリ109から電子部品119に電力Pbeを供給する。また、超音波プローブ10は、点線bに示すように、処理回路105及び/又は切替スイッチ111により、被検体接触部101が冷却されるように、熱交換素子107に電流Pbpを流す。そして、このバッテリ109から電子部品119に供給された電力Pbeは、電子部品119により熱に変換される。そして、電子部品119により変換された多くの熱Petは、実線cに示すように、第2熱伝導体123を介して、第1蓄熱潜熱剤117に熱伝導され、第1蓄熱潜熱剤117は、電子部品119により変換された多くの熱Petを蓄熱する。
【0052】
一方、
図4に示すように、電子部品119により変換された一部の熱Pekは、実線dに示すように、被検体接触部101に伝熱される。このとき、熱交換素子107には、被検体接触部101が冷却されるように電流Pbpが流れている。そのため、被検体接触部101の熱Pkpは、実線eに示すように、第1熱伝導体121を介して、熱交換素子107に吸熱される。この被検体接触部101に伝熱される電子部品119により変換された一部の熱Pekの熱量が、熱交換素子107に吸熱される被検体接触部101の熱Pkpの熱量と同じとなることにより、被検体接触部101の温度Tkは変化しない。すなわち、被検体接触部101は、熱交換素子107により、冷却されることとなる。そして、実線fに示すように、被検体接触部101から吸熱した熱Pkpに熱交換素子107の発熱による熱を加えた熱Pptが第1蓄熱潜熱剤117に排熱され、第1蓄熱潜熱剤117は、被検体接触部101から吸熱した熱Pkpに熱交換素子107の発熱による熱を加えた熱Pptを蓄熱する。このように、超音波プローブ10に収容される第1蓄熱潜熱剤117の相転移温度を被検体接触部101の制限温度より高くしても、超音波プローブ10は、熱交換素子107により、被検体接触部101を冷却することができる。
【0053】
図5は、本実施形態に係る超音波プローブ10で実行される温度制御処理の内容を説明するフローチャート図である。この温度制御処理では、超音波プローブ10は、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の温度を制御する。例えば、この温度制御処理は、超音波プローブ10の使用が開始される場合に実行される処理である。
【0054】
図5に示すように、まず、超音波プローブ10は、被検体接触部101の温度を検出する(ステップS11)。この被検体接触部101の温度を検出する処理は、処理回路105における温度制御機能1052により実現される。具体的には、超音波プローブ10は、温度センサ115により、被検体接触部101の温度を検出する。
【0055】
次に、
図5に示すように、超音波プローブ10は、被検体接触部101の温度が所定の温度以上であるか否かを判定する(ステップS13)。この所定の温度以上であるか否かを判定する処理は、処理回路105における温度制御機能1052により実現される。具体的には、超音波プローブ10は、ステップS11において、温度センサ115により検出した被検体接触部101の温度が所定の温度以上であるか否かを判定する。
【0056】
そして、ステップS13において、被検体接触部101の温度が所定の温度以上であると判定された場合(ステップS13:Yes)、超音波プローブ10は、被検体接触部101を冷却する(ステップS15)。この被検体接触部101を冷却する処理は、処理回路105における温度制御機能1052により実現される。具体的には、超音波プローブ10は、熱交換素子107を制御して、第1熱伝導体121を介して、熱交換素子107により被検体接触部101の熱を吸熱する。そして、超音波プローブ10は、熱交換素子107により吸熱した被検体接触部101の熱を、第1熱伝導体121を介して、第1蓄熱潜熱剤117に排熱する。これにより、超音波プローブ10は、被検体接触部101を冷却する。
【0057】
より具体的には、例えば、熱交換素子107がペルチェ素子である場合、超音波プローブ10は、ペルチェ素子に電流を流し、被検体接触部101に接続されたペルチェ素子の面を吸熱面とし、第1蓄熱潜熱剤117に接続されたペルチェ素子の面を排熱面とする。そして、超音波プローブ10は、第1熱伝導体121を介して、ペルチェ素子により、被検体接触部101の熱を吸熱し、ペルチェ素子により吸熱した被検体接触部101の熱を、第1蓄熱潜熱剤117に排熱する。これにより、超音波プローブ10は、被検体接触部101を冷却する。
【0058】
一方、ステップS13において、被検体接触部101の温度が所定の温度より低い場合(ステップS13:No)、超音波プローブ10は、被検体接触部101を冷却しない(ステップS17)。この被検体接触部101を冷却しない処理は、処理回路105における温度制御機能1052により実現される。具体的には、ステップS15における被検体接触部101の冷却が行われている場合、超音波プローブ10は、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の冷却を停止する。一方、ステップS15における被検体接触部101の冷却が行われていない場合、超音波プローブ10は、冷却していない状態を維持する。
【0059】
この
図5に示す本実施形態に係る温度制御処理は、操作者が、超音波プローブ10を使用している間、繰り返し実行され、操作者が超音波プローブ10の使用を終了したとき、終了する。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10によれば、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117とを熱的に接続し、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間で熱交換可能な熱交換素子107を備えることで、被検体接触部101が達する温度より高い相転移温度を有する第1蓄熱潜熱剤117を備えた場合でも、被検体接触部101を冷却することができる。すなわち、本実施形態においては、電子部品119が発熱し、被検体接触部101に電子部品119の熱が伝熱したとしても、熱交換素子107により、被検体接触部101の熱を吸熱して、被検体接触部101を冷却しつつ、吸熱した被検体接触部101の熱を第1蓄熱潜熱剤117に排熱することができるため、被検体Pと接触する箇所の温度を制限温度以下に保つことができる。すなわち、被検体接触部101の温度上昇を抑制することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10においては、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間で熱交換可能な熱交換素子107を備え、被検体接触部101の温度が所定の温度以上の場合には、熱交換素子107により、被検体接触部101を冷却することとしたが、被検体接触部101は冷却のみが行われるとは限られない。そこで、第2実施形態においては、被検体接触部101を冷却するだけでなく、被検体接触部101の温度が所定の温度以下の場合に、被検体接触部101を加温することも可能な超音波診断装置1の超音波プローブ10を説明する。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。なお、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成は、
図1と同等であるので、説明を省略する。
【0062】
次に、
図3及び
図6に基づき、第2実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を説明する。なお、本実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10の内部構成は、上述した第1実施形態の
図3と同等であるため、説明を省略する。
図6は、第2実施形態に係る超音波診断装置の電気的な構成の一例を示すブロック図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。
図3及び
図6に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とを備えて構成されている。なお、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70との構成は、第1実施形態と同等であるため、説明を省略する。
【0063】
また、
図3及び
図6に示すように、本実施形態に係る超音波プローブ10は、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105aと、熱交換素子107と、バッテリ109と、切替スイッチ111aと、通信回路113と、温度センサ115と、第1蓄熱潜熱剤117と、電子部品119と、第1熱伝導体121と、第2熱伝導体123とを備える。そして、本実施形態に係る超音波プローブ10において、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105aと、熱交換素子107と、バッテリ109と、切替スイッチ111aと、通信回路113と、温度センサ115と、第1蓄熱潜熱剤117と、電子部品119と、第1熱伝導体121と、第2熱伝導体123とは、1の筐体に収容されて構成されている。なお、第2実施形態に係る処理回路105aと、切替スイッチ111a以外の超音波プローブ10の構成は、上述した第1実施形態と同等であるので、説明を省略する。
【0064】
処理回路105aは、例えば、超音波プローブ10の全体的な制御を行う制御回路である。本実施形態に係る処理回路105aは、送受信回路103を制御したり、被検体接触部101の温度を制御したりする。
【0065】
このため、本実施形態に係る処理回路105aは、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052aとを有する。プローブ制御機能1051は、本実施形態におけるプローブ制御部に相当し、温度制御機能1052aは、本実施形態における温度制御部に相当している。
【0066】
図6に示す実施形態では、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052aとにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で装置本体30の記憶回路303に格納されている。処理回路105aはプログラムを装置本体30の記憶回路303から読み出し、実行することで、各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路105aは、
図2の処理回路105a内に示された各機能を有することとなる。なお、
図6においては単一の処理回路105aにて、プローブ制御機能1051と、温度制御機能1052aとが実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路105を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものとしても構わない。なお、第2実施形態に係るプローブ制御機能1051は、上述した第1実施形態と同等であるので、説明を省略する。
【0067】
温度制御機能1052aは、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107を制御する機能である。具体的には、本実施形態に係る温度制御機能1052aは、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えたり、熱交換素子107に流す電流の極性を切り替えたりする。
【0068】
切替スイッチ111aは、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えたり、熱交換素子107に流す電流の極性を切り替えたりするためのスイッチである。具体的には、切替スイッチ111aは、温度制御機能1052aの制御の下、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えたり、熱交換素子107に流す電流の極性を切り替えたりするための半導体スイッチ等の電気的なスイッチなどである。なお、切替スイッチ111aは、電気的なスイッチに限られず、機械的なスイッチであってもよい。また、切替スイッチ111は、温度制御機能1052aに制御されることとしたが、操作者の操作により、熱交換素子107に流す電流のON/OFFを切り替えたり、熱交換素子107に流す電流の極性を切り替えたりするようにしてもよい。この切替スイッチ111aは、本実施形態における切替部に相当している。
【0069】
次に、
図3、
図4、及び、
図7を参照して、被検体接触部101を冷却する際の超音波プローブ10の熱の流れ、及び被検体接触部101を加温する際の超音波プローブ10の熱の流れを説明する。
図7は、第2実施形態に係る被検体接触部101を加温する際の超音波プローブ10の熱の流れを説明する説明図である。
図7に示す例では、点線は電力の供給や電流の流れる方向示す。また、実線は熱の流れる方向を示し、実線の太さは、熱が流れる量を示している。なお、被検体接触部101を冷却する際の超音波プローブ10の熱の流れは、上述した第1実施形態と同等であるので説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、超音波プローブ10は、超音波プローブ10の使用が開始されると、点線aに示すように、バッテリ109から電子部品119に電力Pbeを供給する。また、超音波プローブ10は、点線bに示すように、処理回路105a及び/又は切替スイッチ111aに基づいて、被検体接触部101が加温されるように、熱交換素子107に電流Pbpを流す。そして、このバッテリ109から電子部品119に供給された電力Pbeは、電子部品119により熱に変換される。電子部品119により変換された多くの熱Petは、実線cに示すように、第2熱伝導体123を介して、第1蓄熱潜熱剤117に熱伝導され、第1蓄熱潜熱剤117は、電子部品119により変換された多くの熱Petを蓄熱する。
【0071】
一方、
図7に示すように、電子部品119により変換された一部の熱Pekは、実線dに示すように、被検体接触部101に伝熱される。このとき、熱交換素子107には、被検体接触部101が加温されるように、電流Pbpが流れている。そのため、第1蓄熱潜熱剤117の熱Pkpは、実線gに示すように、第1熱伝導体121を介して、熱交換素子107に吸熱される。そして、実線hに示すように、第1蓄熱潜熱剤117から吸熱した熱Pptに熱交換素子107の発熱による熱を加えた熱Pkpが被検体接触部101に排熱される。このため、被検体接触部101には、この被検体接触部101に伝熱される電子部品119により変換された一部の熱Pekと、熱交換素子107に吸熱される第1蓄熱潜熱剤117の熱Pptとが伝熱され、被検体接触部101の温度Tkは上昇する。そして、被検体Pには、被検体接触部101との接触する箇所において、被検体接触部101から伝熱される熱Pkdが与えられる。したがって、超音波プローブ10は、被検体接触部101を加温することができる。
【0072】
図8は、本実施形態に係る超音波プローブ10で実行される温度制御処理の内容を説明するフローチャート図であり、上述した第1実施形態における
図5に対応する図である。この温度制御処理では、超音波プローブ10は、温度センサ115が検出した被検体接触部101の温度に基づいて、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の温度を制御する。例えば、この温度制御処理は、超音波プローブ10の使用が開始される場合に実行される処理である。なお、
図8に示すステップS11の処理は上述した第1実施形態における
図5と同等であるため、説明を省略する。
【0073】
次に、
図8に示すように、超音波プローブ10は、被検体接触部101の温度が第1の温度以上であるか否かを判定する(ステップS21)。この被検体接触部101の温度が第1の温度以上であるか否かを判定する処理は、処理回路105aにおける温度制御機能1052aにより実現される。具体的には、超音波プローブ10は、ステップS11において、温度センサ115により検出した被検体接触部101の温度が第1の温度以上であるか否かを判定する。そして、ステップS21において、被検体接触部101の温度が第1の温度以上であると判定された場合(ステップS21:Yes)、超音波プローブ10は、被検体接触部101を冷却する(ステップS15)。このステップS15の処理は、上述した第1実施形態における
図5の温度制御処理におけるステップS15と同等であるため、説明を省略する。
【0074】
一方、ステップS21において、被検体接触部101の温度が第1の温度以上でないと判定された場合(ステップS21:No)、超音波プローブ10は、被検体接触部101の温度が第2の温度以下であるか否かを判定する(ステップS23)。この被検体接触部101の温度が第2の温度以下であるか否かを判定する処理は、処理回路105aにおける温度制御機能1052aにより実現される。具体的には、ステップS11において、温度センサ115により検出した被検体接触部101の温度が第2の温度以下であるか否かを判定する。なお、第2の温度は、本実施形態における所定の温度に相当している。
【0075】
そして、ステップS23において、被検体接触部101の温度が第2の温度以下であると判定された場合(ステップS23:Yes)、超音波プローブ10は、被検体接触部101を加温する(ステップS25)。この被検体接触部101を加温する処理は、処理回路105aにおける温度制御機能1052aにより実現される。具体的には、超音波プローブ10は、熱交換素子107を制御して、第1熱伝導体121を介して、熱交換素子107により第1蓄熱潜熱剤117の熱を吸熱する。そして、超音波プローブ10は熱交換素子107により吸熱した第1蓄熱潜熱剤117の熱を、第1熱伝導体121を介して、被検体接触部101に排熱する。これにより、超音波プローブ10は、被検体接触部101を加温する。
【0076】
より具体的には、例えば、熱交換素子107がペルチェ素子である場合、超音波プローブ10は、被検体接触部101に接続されたペルチェ素子の面を排熱面とし、第1蓄熱潜熱剤117に接続されたペルチェ素子の面を吸熱面とするように、ペルチェ素子に電流を流す。そして、超音波プローブ10は、第1熱伝導体121を介して、ペルチェ素子により、第1蓄熱潜熱剤117の熱を吸熱し、ペルチェ素子により吸熱した第1蓄熱潜熱剤117の熱を、被検体接触部101に排熱する。これにより、超音波プローブ10は、被検体接触部101を加温する。
【0077】
一方、ステップS23において、被検体接触部101の温度が第2温度以下でないと判定された場合(ステップS23:No)、超音波プローブ10は、被検体接触部101の加温及び冷却を行わない(ステップS27)。この被検体接触部101の加温及び冷却を行わない処理は、処理回路105aにおける温度制御機能1052aにより実現される。具体的には、ステップS15における被検体接触部101の冷却、又は、ステップS25における被検体接触部101の加温が行われている場合、超音波プローブ10は、温度制御機能1052又は切替スイッチ111により、被検体接触部101の冷却、又は、加温を停止する。一方、ステップS15における被検体接触部101の冷却、及び、ステップS25における被検体接触部101の加温が行われていない場合、超音波プローブ10は、被検体接触部101の冷却、及び、加温を行われていない状態を維持する。
【0078】
この
図8に示す本実施形態に係る温度制御処理は、操作者が、超音波プローブ10を使用している間、繰り返し実行され、操作者が超音波プローブ10の使用を終了したとき、終了する。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10によれば、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117とを熱的に接続し、被検体接触部101と第1蓄熱潜熱剤117との間で熱交換可能な熱交換素子107を備え、熱交換素子107を制御して、被検体接触部101の冷却及び加温することができるため、被検体接触部101の温度を一定に保つことができる。すなわち、本実施形態においては、被検体接触部101の温度が第1の温度以上であった場合に、被検体接触部101の温度を冷却することが出来、被検体接触部101の温度が第2の温度以下であった場合、被検体接触部101の温度を加温することができるため、被検体Pと接触する箇所の温度上昇を抑制しつつ、被検体Pが快適と感じる被検体接触部101の温度を保つことができる。
【0080】
〔第3実施形態〕
上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、第1蓄熱潜熱剤117と、バッテリ109とは、第1蓄熱潜熱剤117及びバッテリ109以外の構成要素と同じ筐体内に収容されて構成されていたが、必ずしも第1蓄熱潜熱剤117と、バッテリ109とは、第1蓄熱潜熱剤117及びバッテリ109以外の構成要素と1の筐体内に収容されてなくてもよい。そこで、第3実施形態では、第1蓄熱潜熱剤117と、バッテリ109とは、第1蓄熱潜熱剤117及びバッテリ109以外の構成要素と異なる筐体に収容されるようにする。以下、上述した第1実施形態に基づいて、第1実施形態と異なる部分を説明する。なお、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成は、
図1と同等であるので、説明を省略する。
【0081】
次に、
図9乃至
図12を参照して、本実施形態に係る超音波診断装置1の構成の一例を説明する。
図9は第3実施形態に係る超音波診断装置1の電気的な構成の一例を示すブロック図であり、上述した第1実施形態における
図2に対応する図である。また、
図10は、第3実施形態に係る超音波プローブ10の内部構成を説明する説明図であり、上述した第1実施形態における
図3に対応する図である。
図11は、第3実施形態に係る超音波プローブ10の第1筐体の内部構成を説明する説明図である。また、
図11(a)は、超音波プローブ10の第1筐体11の内部構成を正面から見た説明図であり、
図11(b)は、超音波プローブ10の第1筐体を側面から見た図である。
図12は、第3実施形態に係る超音波プローブ10の第2筐体の内部構成を説明する説明図である。また、
図12(a)は、超音波プローブ10の第2筐体の内部構成を正面から見た説明図であり、
図12(b)は、超音波プローブ10の第2筐体を側面から見た図である。
【0082】
図9乃至
図12に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ10と、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70とを備えて構成されている。なお、装置本体30と、ディスプレイ50と、入力インターフェース70との構成は、第1実施形態と同等であるため、説明を省略する。本実施形態に係る超音波プローブ10は、第1筐体11と、第2筐体13とを備えて構成されている。
【0083】
第1筐体11は、少なくとも、被検体接触部101と、電子部品119とを収容する筐体である。また、第2筐体13は、少なくとも、熱交換素子107と、バッテリ109と、第1蓄熱潜熱剤117とを収容する筐体である。この第2筐体13は、第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けることが出来る。また、第2筐体13が第1筐体11に着脱可能に取り付けられる際に、第2筐体13は、第1筐体11に対して、熱的及び電気的に接続される。
【0084】
本実施形態に係る第1筐体11は、例えば、被検体接触部101と、送受信回路103と、処理回路105と、切替スイッチ111と、通信回路113と、温度センサ115と、電子部品119と、第1筐体側第1熱伝導体121aと、第1筐体側第2熱伝導体123aと、第2蓄熱潜熱剤125と、第1筐体側電極127とを収容する。また、本実施形態に係る第2筐体13は、例えば、熱交換素子107と、バッテリ109と、第1蓄熱潜熱剤117と、第2筐体側第1熱伝導体121bと、第2筐体側第2熱伝導体123bと、第2筐体側電極129とを収容する。なお、第1筐体側第1熱伝導体121aと、第1筐体側第2熱伝導体123aと、第2蓄熱潜熱剤125と、第1筐体側電極127と、第2筐体側第1熱伝導体121bと、第2筐体側第2熱伝導体123bと、第2筐体側電極129以外の超音波プローブ10の構成は、上述した第1実施形態と同等であるので、説明を省略する。
【0085】
第1筐体側第1熱伝導体121aは、第1熱伝導体121を構成する、第1筐体11に収容された伝熱部材である。第1筐体側第1熱伝導体121aは、被検体接触部101に接続される。また、第1筐体側第1熱伝導体121aは、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第2筐体側第1熱伝導体121bに熱的に接続されることにより、第2筐体側第1熱伝導体121b及び熱交換素子107を介して、第1蓄熱潜熱剤117と熱的に接続される。
【0086】
第1筐体側第2熱伝導体123aは、第2熱伝導体123を構成する、第1筐体11に収容された伝熱部材である。第1筐体側第2熱伝導体123aは、電子部品119に接続される。また、第1筐体側第2熱伝導体123aは、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第2筐体側第2熱伝導体123bに熱的に接続されることにより、第2筐体側第2熱伝導体123bを介して、第1蓄熱潜熱剤117と熱的に接続される。
【0087】
第2蓄熱潜熱剤125は、第1蓄熱潜熱剤117と同様に、所定の相転移温度より高い温度になると固体から液体に相転移するとともに潜熱を吸熱(蓄熱)し、所定の相転移温度より低い温度になると液体から固体に相転移するとともに潜熱を排熱(放熱)する材料である。この第2蓄熱潜熱剤125は、例えば、ロウやパラフィンなどの有機物系の材料や、硫酸ナトリウム10水塩や酢酸ナトリウム3水塩などの無機水和塩系の材料、ウッドメタルやガリウムなどの低融点金属系の材料などからなる。また、第2蓄熱潜熱剤125は、
図9に示すように、第1筐体側第1熱伝導体121aを介して、被検体接触部101と熱的に接続され、被検体接触部101の熱を吸熱する。なお、第2蓄熱潜熱剤125は、第1筐体側第1熱伝導体121aを介さずに、被検体接触部101と熱的に接続してもよい。
【0088】
第2蓄熱潜熱剤125の相転移温度は、第1蓄熱潜熱剤117より低い相転移温度であり、例えば、43℃以下の温度であり、好ましくは、38℃乃至43℃のいずれかの温度である。仮に、第2蓄熱潜熱剤125が38℃未満の場合、被検体Pの体温などにより、蓄熱潜熱剤がすぐに相転移してしまい、被検体接触部101の温度を制限温度以下に保つことが困難となる可能性がある。また、仮に、第2蓄熱潜熱剤125が43℃より高い場合、被検体接触部101が43℃より高い温度に達する可能性があり、被検体接触部101の温度を制限温度以下に保つことが困難となる可能性がある。
【0089】
第1筐体側電極127は、第1筐体11に収容された電極であり、電子部品119と電気的に接続されている。第1筐体側電極127は、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第2筐体側電極129と電気的に接続されることにより、第2筐体側電極129を介して、バッテリ109と電気的に接続される。なお、
図11(b)に示すように、第1筐体側電極127は、3つの電極により構成されているが、第1筐体側電極127の電極の数はこれに限られない。すなわち、第1筐体側電極127の電極の数は任意であり、2つ以下の電極により構成されてもよく、4つ以上の電極により構成されてもよい。
【0090】
第2筐体側第1熱伝導体121bは、第2筐体13に収容された第1熱伝導体121を構成する部材である。第2筐体側第1熱伝導体121bは、熱交換素子107を介して、第1蓄熱潜熱剤117に熱的に接続される。また、第2筐体側第1熱伝導体121bは、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第1筐体側第1熱伝導体121aに熱的に接続され、第2筐体側第1熱伝導体121bは、第1筐体側第1熱伝導体121aを介して、被検体接触部101と熱的に接続される。
【0091】
第2筐体側第2熱伝導体123bは、第2熱伝導体123を構成する、第2筐体13に設けられた部材である。第2筐体側第2熱伝導体123bは、第1蓄熱潜熱剤117に熱的に接続される。また、第2筐体側第2熱伝導体123bは、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第1筐体側第2熱伝導体123aに熱的に接続されることにより、第1筐体側第2熱伝導体123aを介して、電子部品119と熱的に接続される。
【0092】
第2筐体側電極129は、第2筐体13に収容された電極であり、熱交換素子107やバッテリ109等と電気的に接続されている。第2筐体側電極129は、第2筐体13が第1筐体11に対して、着脱可能に取り付けられる際に、第1筐体側電極127と電気的に接続されることにより、第1筐体側電極127を介して、電子部品119に電気的に接続される。なお、
図12(b)に示すように、第2筐体側電極129は、3つの電極により構成されているが、第2筐体側電極129の電極の数はこれに限られない。すなわち、第2筐体側電極129の電極の数は任意であり、2つ以下の電極により構成されてもよく、4つ以上の電極により構成されてもよい。
【0093】
以上のように、本実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10によれば、被検体接触部101と、電子部品119とは、第1筐体11に収容され、熱交換素子107と、バッテリ109と、第1蓄熱潜熱剤117とは、第2筐体13に収容され、第2筐体13は、第1筐体11に対して着脱可能に取り付けることが出来る。このため、第1筐体に取り付けられている第1蓄熱潜熱剤117が蓄熱することが出来なくなった場合に、第2筐体13を第1筐体11から取り外し、第1蓄熱潜熱剤117が冷却済み、かつ、バッテリ109が充電済みの他の第2筐体13に第1筐体11を取り付けることにより、操作者は、超音波プローブ10を継続して使用することが出来る。
【0094】
なお、上述した第3実施形態の説明は、第1実施形態に適用した場合の説明であるが、本実施形態は、第2実施形態に対しても適用可能なことは明らかである。
【0095】
〔第1乃至第3実施形態の変形例〕
上述した第1乃至第3実施形態に係る超音波診断装置1の超音波プローブ10において、第1蓄熱潜熱剤117及び第2蓄熱潜熱剤125は、有機物系の材料や、無機水和塩系の材料、低融点金属系の材料などに限られず、他の材料を用いてもよい。すなわち、第1蓄熱潜熱剤117及び第2蓄熱潜熱剤125に用いる材料は任意であり、例えば、固体相転移材料(電子相転移蓄熱材料)を用いてもよい。この固体相転移材料とは、所定の相転移温度より高い温度になると、結晶構造の異なる第1固相から第2固相へ相転移するとともに潜熱を吸熱し、所定の相転移温度より低い温度になると第2固相から第1固相に相転移するとともに潜熱を排熱する材料である。
【0096】
上述した第1乃至第3実施形態に係る超音波診断装置1において、超音波プローブ10と、装置本体30とは、無線通信により接続されていたが、超音波プローブ10と、装置本体30とは、ケーブルを介した有線通信により接続されてもよい。
【0097】
なお、上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することにより機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成して構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、プロセッサは、プロセッサ単一の回路として構成されている場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて、1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その機能を実現するようにしてもよい。
【0098】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置及び方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置及び方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0099】
1…超音波診断装置、10…超音波プローブ、30…装置本体、50…ディスプレイ、70…入力インターフェース、101…被検体接触部、103…送受信回路、105、301…処理回路、107…熱交換素子、109…バッテリ、111…切替スイッチ、113、305…通信回路、115…温度センサ、117…第1蓄熱潜熱剤、119…電子部品、121…第1熱伝導体、123…第2熱伝導体、303…記憶回路