(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124732
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230830BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028705
(22)【出願日】2022-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521425652
【氏名又は名称】株式会社ゼロボード
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】草野 吉雅
(72)【発明者】
【氏名】戸田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】青木 哲平
(72)【発明者】
【氏名】渡慶次 道隆
(72)【発明者】
【氏名】本間 真
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】希望の電力調達を容易にする技術を提供することができるようにする。
【解決手段】情報処理装置は、発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、発電設備に関連する情報、発電設備の所有権の持分に関連する情報、及び持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、販売処理部による取引が成立した場合に、第1のトークンを、所有権の持分に応じて取引における購入者に移転させるトークン移転部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電設備の所有権の持分に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記所有権の持分に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項2】
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記前記発電設備が所定の時間帯において発電する積算の電力を予測する発電予測取得部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電予測部によって予測される電力に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記発電予測部によって予測される電力に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項3】
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電設備によって発電される単位電力あたりの二酸化炭素排出量に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記発電予測部によって予測される電力に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項4】
前記販売処理部は、過去の実績に基づく予測精度に関する情報を用いることにより、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる、請求項1から3のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1トークンに応じた発電電力を、前記時間帯において、予め定められた需要設備に自己託送する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記販売処理部は、自己託送を行う設備として予め定められた需要設備の契約容量を超えた電力の入札を拒否する、請求項1から5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記販売処理部は、前記発電設備から発電される電力を取り扱う契約をしている電力小売事業者と、前記電力の需要者の施設に電力を供給する契約をしている電力小売事業者とが同じ場合にのみ取引を成立させる、請求項1から6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
自己託送を行う設備として予め定められた需要設備の契約容量に関連する情報を外部か
ら入手する通信インタフェースを備える、請求項1から7のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記自己託送が実行される日の前日までに前記自己託送の計画を作成し、当該計画を所定の機関に提出する、請求項1から8のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記自己託送する事業者と前記需要設備の所有者との間において前記自己託送に必要な契約を電子契約で実施する、請求項1から9のいずれかに記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事業者が自身の所有する発電設備を用いて発電した電力を、送配電ネットワークを介して他の場所にある当該事業者の設備に送電する自己託送が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電設備の所有には、通常は多額の初期投資を必要し、所有のハードルが高い。
【0005】
本開示の目的は、上記課題を解決するために、希望の電力調達を容易にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る情報処理装置は、
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電設備の所有権の持分に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記所有権の持分に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える。
【0007】
また、一実施形態に係る情報処理装置は、
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記前記発電設備が所定の時間帯において発電する積算の電力を予測する発電予測取得部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電予測部によって予測される電力に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記発電予測部によって予測される電力に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える。
【0008】
また、一実施形態に係る情報処理装置は、
発電設備の所有権の持分を表す第1のトークンを所定のデータベースにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備に関連する情報、前記発電設備によって発電される単位電力あたりの二酸化炭素排出量に関連する情報、及び前記持分に応じた価格に関連する情報に基づいて、前記発電設備によって発電される電力の取引を実行させる販売処理部と、
前記販売処理部による前記取引が成立した場合に、前記第1のトークンを、前記発電予測部によって予測される電力に応じて前記取引における購入者に移転させるトークン移転部と、
を備える。
【0009】
その他本願が開示する課題、及び、その解決方法については、本開示の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、希望の電力調達を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】従来の太陽光パネルの共同所有形態を説明する図である。
【
図3】発電設備13の共同所有形態を説明する図である。
【
図4】発電電力量の分配について説明する図である。
【
図5】電力調達システムにおける取引の概要を示す図である。
【
図6】電力調達システムの全体構成例を示す図である。
【
図7】管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。
【
図8】管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図9】本実施形態の電力調達システムにおける送電処理の流れを示す図である。
【
図10】本実施形態の電力調達システムにおける発電設備の持分の流通の流れを示す図である。
【
図11】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図12】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図13】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図14】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図15】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図16】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図17】本実施形態の電力調達システムにおける取引画面の例を示す図である。
【
図18】本実施形態の電力調達システムにおけるトークン購入の例を示す図である。
【
図19】本実施形態の電力調達システムにおける請求の例を示す図である。
【
図20】本実施形態の電力調達システムにおける送電処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の電力調達システムの実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態の電力調達システムでは、発電設備を証券トークン(セキュリティトークン:Security Token)により小口化して区分所有可能にする。これにより、本実施形態の電力調達システムは、発電設備保有の初期投資を抑制し得る。本実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備とは、例えば太陽光パネルを想定してよい。しかしながら、本実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備は、太陽光パネルに限らず、火力発電設備であってもよいし、蓄電池等であってもよい。本開示において、証券トークン(セキュリティトークン)を、「ST」とも記す。また、本実施形態の電力調達システムは、利用時のみSTを保有する高頻度売買を可能とするマーケットプレイスを実現する。これにより、例えば、発電設備の遊休状態を解消するとともに、発電設備のセカンダリー市場での値付けを行い、流動性を確保することで、発電設備の価値向上も実現することができる。電力
の需要者は、発電設備を区分所有することにより、自己託送制度を利用して電力需要設備に区分所有している発電設備からの送電を行うことができる。
【0014】
自家発電設備は、通常ある事業者又は個人などが単体で保有するのが一般的である。本実施形態では、1つの発電設備を複数の需要家(需要者)が共同保有し得るモデルを採用する。
【0015】
従来型の大型発電設備(太陽光に限らず火力及び風力なども)は初期投資に費用が掛かり、一事業者での保有は負担が大きい。また、発電設備によっては日中のピークカットに利用するのみで、稼働していない時間も多く、稼働率を上げたいというニーズがある。あるいは、短時間の出力調整が難しい発電設備の場合、需要設備が稼働していないタイミングでは発電電力量が過剰となり、経済性の成り立たない価格であっても他社に売電するしか選択肢が無いなどの課題を持つ。経済性を向上させるにも、例えば設備の区分所有権を売却し、購入者が自己託送制度を利用可能とすることでより流動性を高める仕組みは存在しない。また、共同保有を実際に行うとしても、所有区分を物理的に切り分け、各区分にメータを設置し発電電力量を計測できる太陽光発電設備ぐらいしか適用可能な発電設備は存在せず、実施したとしてもメータの複数設置などで経済性が悪化することが予想される。また、仮に大型の太陽光発電設備を物理的に分割して保有した場合、場所によって日射量の違い、パネルの劣化の違いがあるため、同一面積のパネルを保有していたとしても計測地点によって発電電力量が違い、不公平が生じていた。また、このように物理的に切り分ける方式は、それ以外の発電設備(火力、水力、風力、地熱、バイオマス、原子力、その他発電方法及び蓄電池)に広げることが困難であった。そもそも、太陽光パネルの場合は保有にかかる形態がパネル単位と物理的に切り分けできるものの、他の発電設備はこのような物理的な切り分けが困難であった。
【0016】
そこで、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備を物理的にではなく仮想的に分割し、その分割した区分を例えばブロックチェーンのSTにより表章し、分割した単位での所有権を発電設備の利用者が保有できるようにした。これにより、高額な発電設備を少額で一部保有することが可能となり、また仮想的に分割するため、分割に物理的な制約がある太陽光発電以外の発電設備でも分割での保有を可能としている。
【0017】
また、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備の発電電力量を計測し、一定の時間帯(30分毎など)毎に保有した割合に応じ電力量(kWh)を自己託送の形で供給するようにしている。
【0018】
また、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備を保有している割合を電子的に記録することができる。これにより、本実施形態の電力調達システムは、売買容易性を高めることができる。したがって、本実施形態の電力調達システムは、所有権及びそれに紐づく電力量(kWh)のオフテイク権を売買できるプラットフォームを用意することにより、資産の流動性を高めることが期待できる。また、本実施形態の電力調達システムは、既存の設備も当該プラットフォームに載せることにより、設備の稼働率を向上させることを可能にする。
【0019】
本実施形態の電力調達システムでは、上述のオフテイク権は、例えばユーティリティトークン(Utility Token)により表章されるものとしてよい。ここで、ユーティリティトークンとは、ある資産又は価値から生まれる二次的な資産又は価値を表すトークンをいう。例えば、ユーティリティトークンとは、セキュリティトークンから生み出される価値を表すトークンしてもよい。また、ユーティリティトークンとは、例えば、トークンそれ自体は金銭的価値をもたず、具体的な他のアセットと交換することにより初めて資産性が生まれる種類のトークンとしてもよい。本実施形態の電力調達システムにおいては、ユーテ
ィリティトークンを用いることにより、発電電力量に対応するオフテイク権と、取引時に用いる電力量との関係を示すことができる。本開示において、ユーティリティトークンを、「UT」とも記す。また、本開示において、ST(セキュリティトークン)及びUT(ユーティリティトークン)の少なくとも一方を、単に「トークン」と記すことがある。
【0020】
太陽光発電の資産を共有保有したり、また当該資産を用いて電力の自己託送を行ったりする際には、発電量を資産の持分に応じて適正に分配することが必要と想定される。ここで、持分を証明する手段、及び、保有者に紐づく発電量を記録する手段として、非改ざん性が高いとされるブロックチェーンのシステムを利用することが有効と考えられる。例えば、本実施形態の電力調達システムにおいて、STの保有分に応じてUTを移動させるスマートコントラクトを構築してよい。ここで、スマートコントラクトとは、契約の自動化、又は契約のスムーズな検証、執行、実行、交渉を意図したコンピュータプロトコルをいう。例えば、スマートコントラクトとは、ブロックチェーンにおいて動作するアプリケーションに実装されるものとしてもよい。スマートコントラクトには、第三者を介さずに信用が担保されたトランザクションを処理できるという特徴がある。本実施形態の電力調達システムにより、直接金融を活用したファイナンス(Security Token Offering:STO)の実現のみならず、その出資者(例えば太陽光パネル保有者)の権利保護(発電量の適切な分配)及び流動性確保(資産の譲渡容易性)の両立が可能になる。
【0021】
例えば、太陽光パネルなどの発電設備に共同出資した者は、それぞれが出資した分に相当するSTを保有することができる。例えば、太陽光パネルなどの発電設備の全体が40STに相当するものとする。この場合、当該発電設備のうち50%に出資した者Aは、当該出資分に応じて、20STを保有するものとしてよい。また、例えば、当該発電設備のうち12.5%に出資した者Bは、当該出資分に応じて、5STを保有するものとしてよい。さらに、例えば、当該発電設備のうち37.5%に出資した者Cは、当該出資分に応じて、15STを保有するものとしてよい。以下、上述した20ST、5ST、15STなどのように、セキュリティトークン(ST)をトークンの単位として記すことがある。
【0022】
一方、前述の発電設備は、例えば、所定の一日における30分の間に、80kWhの発電を行う予定であるとする。この場合、上述の者Aは、80kWhの50%を受ける権利として、例えば40UTを保有するものとしてよい。また、例えば、上述の者Bは、80kWhの12.5%を受ける権利として、例えば10UTを保有するものとしてよい。また、例えば、上述の者Cは、80kWhの37.5%を受ける権利として、例えば30UTを保有するものとしてよい。このように、STの持分に応じて、UTが配分されるようにしてよい。以下、上述した40UT、10UT、30UTなどのように、ユーティリティトークン(UT)をトークンの単位として記すことがある。
【0023】
ブロックチェーンの証券トークンであるSTを採用することにより、ウォレット間におけるSTの授受により取引が完了する。このため、資産の売却が容易になることにより、セカンダリマーケットの創出が期待される。また、(獲得予定の)電力量を表章するトークンであるUTを採用することにより、発電量の適切な分配及び出力抑制などに対応することができるのみならず、託送料金の整合性を確認することもできる。
【0024】
このようにして、本実施形態の電力調達システムによれば、トークンの分割により、少額からの初期投資で発電設備を所有することができる。
【0025】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、高頻度のトークン売買プラットフォームを実現するために、発電設備を利用しない時間帯のみ売却するような運用を行うことができる。これにより、硬直的な傾向にあった発電設備の保有形態に売却、あるいは一時的な売却という選択が追加されることで資産の投資活発化が期待される。よって、資産の流
動性を確保及び資産価値を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、実際の発電設備を物理的に分けるのではなく(太陽光パネル以外はそもそも物理的に分けることが困難である。)、トークンによる仮想的に区分した所有権(ST)と、電力(kWh)のオフテイク権(UT)とを組み合わせる仕組みを実現することができる。したがって、共同で保有できる発電設備に制限がなく、火力、水力、風力、地熱、バイオマス、原子力、その他発電方法すべて及び蓄電池に適用が可能である。
【0027】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、例えば、工場などで特定の季節、時間帯しか利用されていない発電設備などについても、利用していない時間について一時的な売却を行うこともできる。したがって、電力負荷が非稼働な時間帯が存在しても、発電設備を常時稼働させながら収益を享受することができる。これにより設備の稼働率向上が見込まれ、付随効果として、例えば日本国のような国家全体における発電にかかるオペレーションコスト低減、及び/又は発電設備を持つ経済性が向上する(ピークカットなど短期的な電力調達を必要とする需要家も、需要の大小を問わず利用できるため、通常の電力会社への売電よりも高値で売れる可能性がある)。
【0028】
また、発電設備を仮想的に分割保有することで、各パネルの劣化及び/又は日射量の違いによる発電電力量の違いによる所有者間の不公平さが発生しなくなる。これにより、例えば従来のコミュニティソーラーのように、太陽光パネル間での発電電力量のブレ(差)による不公平をなくすことができる。
【0029】
<電力調達の概要>
図1は、一実施形態における電力調達の概要を説明する図である。需要者10(企業A)は、需要設備11を有しており、需要設備11で利用するための電力を調達するにあたり、マーケットプレイス12から発電設備13を仮想的に分割した区分131を調達する。ここで、区分131は、上述したSTOによる仮想保有区分としてよい。発電設備13により発電された電力は、発電設備13の持分(ST)に応じて分割されて、自己託送により発電設備13から需要設備11に供給される。実際には送電事業者により送電されるところ、仮想的に発電設備13からの発電電力量の一部が需要設備11に送電されたと看做されることになる。自己託送とは、自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を一般送配電事業者が維持し運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用発電設備を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般送配電事業者が提供するサービスのことをいう。このようにして、自己託送による電力供給を行うことができる。マーケットプレイス12の存在により、発電設備13(の区分)の流動性が確保されている。このため、需要者10は、必要なときに必要な割合の持分を取得して、自家発電設備13からの自己託送を行うことが可能となる。すなわち、本実施形態においては、利用時のみ発電設備13を保有するとともに、利用時のみ電力量を調達することができる。
【0030】
図2は、参考までに、従来の太陽光パネルの共同所有形態を説明する図である。従来、太陽光パネルを共同所有しようとする場合、区分所有者は、発電設備13(太陽光パネル)を物理的に分割した単位(例えば1/3など)で所有するというのが実態であった。この場合、例えば1つの発電設備13に対し、物理的な区分131ごとにスマートメータ14をそれぞれ設置して、それぞれの区分131の発電電力量を管理するようにしていた。
【0031】
図3は、本実施形態に係る発電設備13の共同所有形態を説明する図である。すなわち、
図3は、太陽光パネルを利用してSTOを行う場合の例を説明する図である。本実施形態において、発電設備13そのものは、例えば、従来のコミュニティソーラーに用いられ
るのと同様の太陽光パネルなどとしてもよい。
図3の例では、発電設備13には1つのスマートメータ14のみが設置される。この1つのスマートメータ14によって、発電設備13の全体による発電電力量が計測される。ここで、発電設備13についてSTにより100トークンが発行されたものとする。発電設備13は、A社、B社、C社、及びD社の4社により共有されており、持分がそれぞれ60%、10%、20%、10%であるものとする。この場合、A社は60トークン、B社は10トークン、C社は20トークン、D社は10トークンを保有し、持分割合を証することができる(ST)。この割合に応じて、発電設備13が発電した電力量(スマートメータ14により計測される。)も分割されて(UT)、各社に自己託送されたものと看做される。このように、本実施形態において、STの割合に応じて設備を保有することができ、当該設備から発生する電力量(kWh)のオフテイク権(UT)を保有することができる。ここで、別の時間帯においては、A社は30トークンを売却し、B社は30トークンを追加購入し、C社は10トークンを売却し、E社が10トークンを購入したとする。この場合にも、このトークンの保有割合に応じて、発電設備13の発電電力量は仮想的に分割されて(UT)各社に自己託送されたものと看做すことができる。このように、測定される単位時間(時間帯)において電力量の売買を可能とすることで、市場において流動性を創出することができる。なお、電力量は、所定時間(例えば、30分とすることができる。)の長さの時間帯ごとに計測されて配分されるようにすることができる。なお、時間帯の長さは、市場により異なる任意の長さとして設定することもできる。
【0032】
図4は、発電電力量の分配について説明する図である。
図4の例では、発電設備13からの発電電力量の時間的な推移が曲線141により示されている。12:00(から30分の時間帯)には発電設備13が30kWhの発電を行い、A社が100トークン中の60トークン、B社が100トークン中の10トークンを保有していたとする。この場合、A社が調達した電力量は30kWh×60/100=18kWhとなり、B社が調達した電力量は30kW×10/100=3kWhとなる。同様に、18:00に発電設備13が20kWhの発電を行い、その時間帯においてA社が30トークン、B社が40トークン保有していたとする。この場合、A社の調達した電力量は20kWh×30/100=6kWh、B社の調達した電力量は20kWh×40/100=8kWhになる。
【0033】
図5は、本実施形態の電力調達システムにおける取引の概要を示す図である。マーケットプレイス12(取引プラットフォーム(取引PF))では、設備提供者15(設備の保有者にもなり得る)により発電設備13の情報が登録されるとともに、トークンが発行される(資産登録)。そして、トークンの売却者となる需要者10が、売却したい条件を登録する。さらに、トークンの購入者となる需要者10が、購入したい発電設備13の発電タイプ(太陽光又は風力など)、電力量、価格、時間帯、及び/又は地域などの条件(条件の優劣なども設定可能である。)を設定する。このようにして、マーケットプレイス12において、発電設備13の区分131のマッチング121が行われる。マッチングは、現在以降の30分毎(現在の電力計測の単位時間であり、単位時間が変わった場合は新たな規定単位時間に基づくものとする)の各スロットにおいて行われる(売買の予約)。そして、実際の日付が当該スロットの時間になった際に、発電設備13の区分131の所有権すなわちST(及びオフテイク権すなわちUT)が、売却者から購入者に移転される。この移転に伴って、区分131の持分割合に応じた量のトークンが、購入者の需要者10のウォレットに移転する。これにより、所有権(及びオフテイク権)の移転が証明されることになる。
【0034】
また、マーケットプレイス12は、発電電力量(予測値及び/又は実績値)並びにトークンの保有割合(ST)に応じた電力(kWh)のオフテイク量(UT)を自動計算することができる。これとともに、マーケットプレイス12は、発電電力量を記録し(発電予測及び実績)、電力広域的運営推進機関(OCCTO)、及び/又はトークンの保有者に
対するレポートを作成することができる(レポート作成)。
【0035】
マーケットプレイス12からの情報は、API(Application Programming Interface)により取得可能である。例えば、OCCTOのシステム(広域機関システム16)は、APIを介して計画値などのレポートを取得可能である。このデータ連携により、自己託送の規制により義務付けられている通知データ及び/又は報告データの作成などの連携を自動化することができる。また、小売事業者17も、需要者10と同様に、マーケットプレイス12においてトークンの売買を行うことができる。これにより、小売事業者17は、顧客向けのメニューとして、トークンを活用した電力調達を提供し、小売事業者自身の電力調達手段としても活用することができる。また、このようにして、トークンを活用した自己託送による電力調達を提供してもよい。APIを用いることにより、小売事業者17の利用しているシステムとも連携することができる。また、電力需給のサービス提供会社18も、需要者10と同様に、マーケットプレイス12においてトークンの売買を行うことができる。これにより、電力需給のサービス提供会社18は、例えば、ピークカットなど顧客の電力サービスメニューの一環として、トークン売買を活用することができる。上述したAPIは、電力需給のサービス会社18が利用しているシステムとも連携が可能である。
【0036】
<システムの概要>
図6は、電力調達システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の電力調達システムは、管理サーバ2を含んで構成される。管理サーバ2は、通信ネットワーク3を介してユーザ端末1と通信可能に接続される。通信ネットワーク3は、例えばインターネットであり、公衆電話回線網、携帯電話回線網、無線通信路、又はイーサネット(登録商標)などにより構築されてよい。管理サーバ2はまた、ブロックチェーンネットワーク(以下、ブロックチェーン4という。)に接続されている。ブロックチェーン4は、複数のコンピュータ(ノード)により構成され、分散台帳を管理する。
【0037】
ユーザ端末1は、需要者10が操作するコンピュータであり、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、又はパーソナルコンピュータなどとすることができる。ここで、広域機関システム16も、ユーザ端末1に含まれるものとしてもよい。また、小売事業者17、及び/又は小売事業者サービス提供会社18のシステムも、ユーザ端末1に含まれるものとしてもよい。需要者10(OCCTO、小売事業者17、又は電力需給のサービス提供会社18)は、ユーザ端末1により管理サーバ2にアクセスすることができる。
【0038】
管理サーバ2は、マーケットプレイス12を実現するコンピュータである。管理サーバ2は、例えばワークステーション又はパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0039】
ブロックチェーン4は、情報を記録するデータベース技術に基づくものとしてよい。本実施形態において、ブロックチェーン4は、一般的なブロックチェーンと同様に、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖(チェーン)のように連結してデータを保管するものとしてよい。ブロックチェーンの各々のブロックには、直前のブロックの内容を表すハッシュ値と呼ばれるデータが書き込まれる。仮にデータを改ざんした場合、それによって導き出されるハッシュ値も異なるようになる。このため、それ以降のすべてのブロックのハッシュ値を変更する必要がある。しかしながら、それは極めて困難であるため、ブロックチェーンによって管理されるデータの改ざんは難しいとされている。ブロックチェーンは、同じデータを複数の場所に分散して管理する。このため、ブロックチェーンは、分散型台帳とも呼ばれる。ブロックチェーンは汎用的に利用可能であり、現在では契
約及び取引などを自動化するスマートコントラクトなどの他、いくつもの応用などが考案されている。
【0040】
本実施形態の電力調達システムにおいて、ブロックチェーン4は、上述した一般的なブロックチェーンと同様の技術に基づくものとしてよい。しかしながら、一実施形態において、ブロックチェーン4は、一般的なブロックチェーンのような技術に代えて、データベース技術に基づくものを採用してもよい。
【0041】
<管理サーバ2>
図7は、管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、図示された構成の一部を省略してもよいし、図示された構成以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、及び出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータ及び/又はプログラムを記憶する。記憶装置203は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、又はフラッシュメモリなどとしてよい。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースである。通信インタフェース204は、例えば、イーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタ又はRS232Cコネクタなどとしてよい。入力装置205は、データを入力する際に用いられる装置である。入力装置205は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタン、又はマイクロフォンなどとしてよい。
【0042】
入力装置205は、後述する管理サーバ2が備える各機能部に対する指令の入力を受け付ける。出力装置206は、データを出力する際に用いられる装置である。出力装置206は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、又はスピーカなどとしてよい。後述する管理サーバ2が備える各機能部は、CPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現されてよい。CPU201は、入力装置205に入力された指令であって、後述する管理サーバ2が備える各機能部に対する指令を解釈するようにしてもよい。CPU201は、出力装置206に表示させる情報を作成し、出力装置206に表示させる指令を出力装置206に出すように、出力装置206を制御するようにしてもよい。また、管理サーバ2が備える各記憶部は、メモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現されてよい。
【0043】
入力装置205及び出力装置206は、それぞれ単数であってもよいし、複数であってもよい。また、入力装置205及び出力装置206は、例えばタッチパネルのように一体の装置になっていてもよい。さらに、管理サーバ2は、入力装置205及び出力装置206を含む例として説明したが、これに限られるものではなく、例えば、管理サーバ2は、入力装置205及び出力装置206を含まなくてもよい。また、管理サーバ2は、入力装置205及び出力装置206を含みつつ、外部にも入力装置205及び出力装置206が存在してもよい。入力装置205及び出力装置206が管理サーバ2の外部にある場合、管理サーバ2は、通信インタフェース204を介して、外部の入力装置205及び出力装置206と各種の指令や情報のやり取りを行ってよい。具体的には、後述する管理サーバ2が備える各機能部に対する指令を、外部の入力装置205が受け付けてよい。この場合、管理サーバ2は、この指令を、通信インタフェース204を介して受け取るようにしてもよい。このようにして受け取った指令を、CPU201が解釈するようにしてもよい。また、CPU201は、外部の出力装置206に出力させる情報を作成し、外部の出力装置206に出力させる指令を、通信インタフェース204を介して外部の出力装置206に送信するようにしてもよい。
【0044】
図8は、管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ2は、資産登録部211、トークン発行部212、需要量入力部213、売却量入力部214、マッチング処理部215を備える。また、管理サーバ2は、販売処理部216、トークン移転部217、発電予測取得部218、発電実績取得部219、レポート作成部220、API処理部221、及び資産情報記憶部231を備える。
【0045】
資産情報記憶部231は、発電設備13のそれぞれについて、発電設備13に関する情報(以下、資産情報という。)を記憶する。資産情報には、例えば、発電設備13の種類、出力、及び/又は設置場所などを含めることができる。
【0046】
資産登録部211は、資産情報を資産情報記憶部231に登録する。資産登録部211は、設備提供者15のユーザ端末1から資産情報を受信し、受信した資産情報を資産情報記憶部231に書き込むことができる。また、資産登録部211は、発電設備13の所有者(当初は設備提供者15)に関する情報(以下、所有者情報)を登録することもできる。本実施形態では、所有者情報は、ブロックチェーン4の台帳に管理するものとしてよい。資産登録部211は、所有者情報を登録するためのトランザクションを、ブロックチェーン4に発行することができる。
【0047】
トークン発行部212は、発電設備13を裏付けとした、発電設備13の所有権及びオフテイク権を表すトークン(ST及びUT)を、ブロックチェーン4において発行させる。トークンの発行は、一般的なSTOに採用されている技術を用いることができるため、より詳細な説明は省略する。トークン発行部212は、任意の数のトークンを発行することができる。
図3及び
図4の例では、1つの発電設備13について100トークン発行するものとした。しかしながら、トークン発行部212は、10トークン又は2000トークンなど、任意の数のトークンを発行してもよい。発行されたトークンは、発電設備13の所有者(設備提供者15)のウォレットに入れられる。
【0048】
需要量入力部213は、発電設備13から調達したい電力の需要量の入力を、需要者10から受け付ける。需要量入力部213は、例えば、発電設備13の区分133を取得するための購入リクエストに需要量を設定した情報を、需要者10のユーザ端末1から受信することができる。需要量入力部213は、需要量とともに発電設備についての条件の指定を受け付けるようにしてもよい。購入リクエストには、発電設備13の発電タイプ(太陽光発電若しくは風力発電など)、需要量(調達したい電力量)、及び/又は時間帯などが指定され得る。購入リクエストには、個別の発電設備13を特定する情報、特定の発電所を特定する情報、及び/又は、発電設備13が配置されている地域などの指定を設定するようにしてもよい。さらに、購入リクエストには、発電設備13の発電予測値の情報、及び/又は、自己託送する先の情報などの指定を設定するようにしてもよい。また、購入リクエストには、購入したい金額を指し値として設定するようにしてもよい。また、購入リクエストにおいて、複数の条件を設定して、条件の優先度を設定するようにしてもよい。
【0049】
売却量入力部214は、トークンを売却したい売却者(設備提供者15又は需要者10)から、売却したいトークンの指定を受け付ける。売却量入力部214は、例えば、売却者のユーザ端末1から売却リクエストを受信することができる。売却リクエストには、売却対象となるトークンと、その売却価格とを設定することができる。売却価格は、最低価格を設定することができる。売却価格には、最低価格から最高価格までの範囲を指定することもできる。
【0050】
マッチング処理部215は、売却リクエストと、購入リクエストとをマッチングさせることができる。マッチング処理部215は、購入リクエストに指定された条件にマッチす
る資産情報を検索することができる。また、マッチング処理部215は、マッチした資産情報が示す発電設備13を裏付けとしたトークンの売却リクエストを特定することができる。さらに、マッチング処理部215は、特定した売却リクエストに係るトークンを、当該購入者に割り当てることができる。マッチング処理部215は、例えば、購入リクエストを受信した順に、受信した購入リクエストの条件に応じて、売却リクエストを割り当てることができる。また、マッチング処理部215は、一定期間に受信した購入リクエストと売却リクエストとをまとめて割当てを行うようにすることもできる。マッチング処理部215は、例えば、株式市場における販売処理と同様のマッチング処理を行うようにすることができる。
【0051】
販売処理部216は、トークンの需要者10への販売に係る処理を行う。販売処理部216は、トークンの購入者からの支払を受け付けて、売却者に支払う処理を行うことができる。販売処理部216は、購入者が支払った金額から手数料を減じて、売却者に対して支払を行うようにしてもよい。
【0052】
トークン移転部217は、販売される発電設備13の持分に応じた量のトークンを、需要者のウォレットに移転させる。トークンの移転は、実際の日時が各スロット(例えば30分毎)の日時に到達した際に、ブロックチェーン上のプログラムによって自動で実施されてよい。トークン移転部217は、販売されたトークンを売却者のウォレットから購入者のウォレットに移転させるためのトランザクションを、ブロックチェーン4に発行することができる。これにより、トークン移転部217は、需要者10の需要量に応じた量のトークンを、需要者のウォレットに移転させることができる。
【0053】
発電予測取得部218は、発電設備13による発電電力量の予測値を取得する。発電予測取得部218は、自ら発電電力量の予測を行ってもよいし、発電電力量の予測を行った外部のコンピュータから予測値を取得するようにしてもよい。発電予測取得部218は、例えば、太陽光発電に係る発電設備13について、日射量の予測を行うことができる。また、発電予測取得部218は、例えば、天候、日射量、温度、及び/又は湿度などの過去の各種条件の実績を示すデータなどから、発電設備13による発電電力量の予測値を算出してもよい。さらに、発電予測取得部218は、今後の出力抑制及び/又は天気予報を考慮して、発電設備13による発電電力量の予測値を算出してもよい。ここで、出力抑制とは、電力会社等が太陽光発電等の発電設備からの電力系統への供給を制限することをいう。例えば、出力抑制とは、1日前の正午までの出力抑制としてもよいし、当日に計画変更が可能としてもよい。また、発電予測取得部218は、発電設備13による発電電力量を、出力制御の対象となる電源であるか否かに応じて変更してもよい。また、発電予測取得部218は、発電設備13による発電電力量を、出力抑制の対象になり易い地域か否かに応じて変更してもよい。発電予測取得部218は、発電設備13の所有者又は提供者15のユーザ端末1から、発電電力量の予測値を受信するようにしてもよい。
【0054】
発電実績取得部219は、発電設備13に設けられているスマートメータ14から、発電設備13により発電された発電電力量の実績値を取得することができる。
【0055】
レポート作成部220は、発電計画に関するレポートを出力することができる。レポート作成部220は、発電設備13の発電電力量の予測値を、需要者10のウォレットに保有されているトークンの量と将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークン量の合計トークン量(以下、保有予定トークン量)に応じて分割する。そして、レポート作成部220は、このようにして分割した発電電力量の予測値を、需要者10毎に発電計画に含めることができる。また、レポート作成部220は、発電実績に関するレポートを出力することができる。レポート作成部220は、スマートメータ14から取得した実績値を、需要者10の保有予定トークン量に応じて案分する。そして、レポート作成部220
は、案分した発電電力量(分割発電実績値)を、発電実績に含めることができる。レポート作成部220は、発電実績に、発電計画において予測した予測値を含めるようにしてもよい。
【0056】
レポート作成部220は、発電設備13の設備提供者15、購入者、及び/又は売却者に向けて、自身の保有する発電設備13に関する情報(資産情報)を閲覧することのできるGUI(閲覧画面)を提供することができる。閲覧画面には、発電電力量の予測値、発電設備13の保有割合、及び/又は発電設備13の基本情報などを含めることができる。
【0057】
レポート作成部220は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)向けの計画書を作成することができる。レポート作成部220はまた、広域基幹システム16に対して計画書を自動提出することができる。レポート作成部220は、資産情報、発電電力量の予測値、及び/又はスマートメータ14から取得した発電電力量の実績値などに基づいて、発電設備13の保有者又は運営者が系統連携する際に求められる情報を記載した帳票を作成することができる。
【0058】
API処理部221は、管理サーバ2の外部装置に対してAPIを提供することができる。APIは、例えば、REST(REpresentational State Transfer)などとすることができる。API処理部221は、外部装置からのリクエストに応じて、管理サーバ2及びブロックチェーン4で管理されている情報から必要な情報を抽出して、APIを提供することができる。APIを用いることにより、管理サーバ2は、広域機関システム16とデータ連携を行うことができる。API処理部221は、小売事業者及び/又は一般送配電事業者向けに提出すべき書類について、管理サーバ2及びブロックチェーン4で管理されているデータをもとに、追加で帳票を作成若しくはシステム連携を行うことができる。また、APIを介して、小売事業者及び/又は需要家向けサービスを提供する会社が、自身のシステムを介して売買条件を連携及び取引できる仕組みを提供することができる。
【0059】
<動作>
図9は、本実施形態の電力調達システムにおける送電処理の流れを示す図である。
【0060】
管理サーバ2は、発電設備13の資産情報を受け付けて、当該資産情報を資産情報記憶部231に記録(登録)する(S301)。資産情報には、発電設備13の種類、出力、及び/又は設置場所などが含まれ得る。ステップS301において、発電設備の資産情報は、例えば設備所有者によって登録されてよい。また、発電設備の資産情報が登録される際に、なりすましによる登録を困難にする策を設けてもよい。例えば、発電設備13の資産情報に応じたトークンを、小売り事業者がいったん買い取るようにしてもよい。
【0061】
次に、管理サーバ2は、発電設備13を裏付けとしたトークンを発行(STO)する(S302)。ステップS302において、管理サーバ2は、任意の数のトークンを発行してよい。しかしながら、発行されるトークンの上限又は基準などの指標が設定されることにより、取引がし易くなることも想定される。そこで、例えば、1つの発電設備13あたり100トークンを付与するようにして、このように付与される量が、その設備の保有割合を表すものとしてもよい。この場合、トークンに対応する電力量は別途計算されることにより表示されるようにしてもよい。また、発電設備13が発電する電力量あたりのトークン数が発行されるようにしてもよい。特に、複数の発電施設をまたぐ電力量で取引したい場合は、発電する電力量あたりのトークン数が発行されるようにしてもよい。例えば、予め定められた単位出力(kWh)あたりに付与するトークン数に発電設備の能力である最大出力kWhを掛け合わせた値を、発電設備に発行するトークン数として決めてもよい。例えば、1kWhあたり1STを発行すると定められている場合であって、発電設備の最大出力が150kWhである場合には、150トークンを発行すると決めてもよい。こ
の場合、発行されるトークンが、発電設備13の持分の割合とずれることも想定される。この持分のずれに対しては、別途手当を付与してもよい。前述の場合において、最大出力は、一定の条件下で使用した出力の最大値である定格出力であってもよい。
【0062】
発電設備13の持分は、取引完了した電力量が決定された後に定まるようにしてもよい。発電設備13が発電する電力量は、発電の期間又は時間のような過去の実績によって変化するようにしてもよい。この場合、発電設備13が発電する電力量の変化に応じて、トークンの量も変化するようにしてもよい。また、将来取得可能な電力量を現在の価値に換算して、トークンの取引を可能にしてもよい。例えば、取得可能な電力量が現在から先の将来になるほど、割り引かれた料金になるように換算してもよい。
【0063】
トークンの発行後、管理サーバ2は、発電設備13の区分所有者の希望者を募ることができる。電力の需要者10は、トークンを保有することで、発電設備13の区分所有権(STにより表章される)とその発電設備13から発生する電力量(kWh)のオフテイク権(UTにより表章される)とを持つことになる。
【0064】
管理サーバ2は、トークンの保有者(最初は設備提供者15)の所有者情報を、ブロックチェーン4の台帳に記録(登録)することができる(S303)。管理サーバ2は、発電設備13が発電した電力量を、スマートメータ14などの計測機器から取得して、30分値など一定の基準の時間(測定時間は任意に設定することができる。)での発電電力量(kWh)を集計することができる(S304)。管理サーバ2は、トークンの保有量(将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークンを含む)に応じて区分所有者に発電電力量を割り当て(S305)、自己託送の形で電力供給させることができる(S306)。
【0065】
S306において行う自己託送による電力供給は、自己託送の計画を作成した後に例えばOCCTOなどに報告した後で行うようにしてもよい。例えば、管理サーバ2は、マッチング処理部215によるマッチングが完了した後に、自己託送の計画値を自動計算してOCCTOなどに自動送信してもよい。また、S306において、管理サーバ2は、自己託送の計画値に適合する発電量のみを供給可能にしてもよい。
【0066】
発電設備13から調達したい電力の需要量は、電力が要求される時間帯によって、必要となる発電設備13の発電容量は異なることも想定される。需要量入力部213は、発電設備13の区分133を取得するための購入リクエストに需要量を設定した情報を、需要者10のユーザ端末1から受信することができる。このため、その購入リクエストに時間帯を指定する情報も含めてもよいし、その時間帯において発電する電力の予測量を含めてもよい。
【0067】
管理サーバ2は、ユーザが保有しているトークンを売買可能にする取引プラットフォームを提供する。また、管理サーバ2は、発電の前日(前日市場)以前から発電者が許す限りの前期間での売買を可能とする取引プラットフォームを提供する。
【0068】
図10は、本実施形態の電力調達システムにおける発電設備の持分の流通の流れを示す図である。
【0069】
管理サーバ2は、ST(将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークンを含む)の保有割合に応じて、需要者10の発電電力量(kWh)のオフテイク量(UTにより表章されてよい)を算出する(S321)。管理サーバ2は、条件を設定した購入リクエストを、購入者から受け付ける(S322)。上述したように、購入リクエストには、発電タイプ(太陽光又は風力など)、電力量、価格、時間帯、及び/又は地域、並びに条
件の優劣などを設定することができる。条件にはこれ以外にも、株式の取引プラットフォームの条件に類似した内容(指値、逆指値、又は一定価格になった場合の条件付き売買など)を設定することができる。
【0070】
管理サーバ2は、売却リクエストを受け付ける(S323)。次に、管理サーバ2は、購入リクエストに設定された条件に基づいて、売却リクエストにより指定されているトークンを購入リクエストにマッチングさせる(S324)。ステップS324において行われるマッチングの処理を、「マッチング処理」とも記す。
【0071】
マッチング処理では、購入者及び売却者に関し、条件設定を電力の取引実態に合わせる形できめ細かくマッチングを行うことができる。例えば、販売価格を定めずに(若しくは価格にレンジを持たせるか成り行きにして)、指定した条件(太陽光など)に該当する発電設備13から一定の電力量(kWh)に達するまで販売又は売却を実行し続けることができる。また、購入リクエストに地域を指定し、指定された地域に設置されている1つ又は複数の発電設備13から、一定の電力量(kWh)又は購入価格の合計値が一定額に達するまで買い続けるようにすることもできる。また、購入価格のみを指定して、電力量(kWh)の指定をせずに購入又は販売し続けるようにすることもできる。また、購入リクエストに時間帯のみを指定して、指定された時間帯内であれば一定の電力量(kWh)に達するまで販売又は売却し続けるようにすることができる。さらに、条件を設定しなくてもよく、また、条件に優先度をつけるようにしてもよい。
【0072】
ステップS324において行われるマッチング処理において、所定の取引情報を表示する取引画面を表示するようにしてもよい。この場合、取引画面は、出力装置206などに表示されるようにしてよい。例えば、マッチング処理において、発電設備が出力抑制の対象となる設備か否かを表示してもよい。また、マッチング処理が行われる際に、発電設備による発電量が表示される代わりに、発電設備による発電量の予測値が表示されるようにしてもよい。さらに、マッチング処理において、例えば発電設備による発電量の予測の信頼度の指標などを表示してもよい。さらに、マッチング処理において、発電設備13における取引対象期間内の最低出力容量の保証の有無、及び/又は、具体的な最低出力容量の値(kWh)を表示してもよい。また、マッチング処理において、保証された最低電力容量の値を実際に下回ってしまった場合の具体的な補償内容を表示してもよい。
【0073】
また、マッチング処理時の発電設備による発電量の予測値と実績値とがずれる場合、当該ずれに応じた対応策を講じてもよい。また、このようなずれが生じた場合に、そのようなずれについてフィードバックを行うことにより、予測精度を向上させたり、信頼度の指標を下げたりしてもよい。
【0074】
マッチング処理の後、売買に失敗した場合(S325:NO)、管理サーバ2は、売却者からのトークンは移転させない(したがって、所有権及びオフテイク権は移転させない)。この場合、当該発電設備13からの電力は、卸電力取引所に販売するようにしてよい(S326)。また、この場合、卸売市場ではなく、相対取引で小売事業者に販売するようにしてもよい。
【0075】
以下、本実施形態におけるマッチング処理について、さらに説明する。ここで、本実施形態におけるマッチング処理とは、例えば
図10に示すステップS324において実行される処理としてよい。
【0076】
上述のように、管理サーバ2のマッチング処理部215は、通常の株式市場における販売処理と同様のマッチング処理を行うようにしてよい。マッチング処理部215は、売却リクエストと、購入リクエストとをマッチングさせる際に、例えば、(現状の)電力量及
び/又は持分の割合(トークン)、並びに価格などの観点からマッチングを行ってよい。具体的には、マッチング処理部215は、例えば以下のような観点からマッチングを行ってよい。
(1)発電設備13の持分の割合(トークン)及び価格
すなわち、発電設備13の持分の割合(トークン)と、その価格とをそれぞれ表示して取引を行ってよい。
(2)発電設備13による発電の電力量及び価格
すなわち、発電設備13によって発電される電力の電力量と、その価格とをそれぞれ表示して取引を行ってよい。
【0077】
上記(2)に示す観点は、例えば、(a)発電設備13による発電電力の予測値と、(b)予測の精度(過去の正解率など)と、(c)単位電力量あたりの料金と、の積に基づいて求めてもよい。特に、上記(b)予測の精度(過去の正解率など)については、現在の時点で確定した情報ではないため、将来の予測値として表示しながら取引を行うものとしてもよい。
【0078】
また、上記(a)発電設備13による発電電力の予測値、及び上記予測の精度(過去の正解率など)について、種々の要因から定められるものとしてもよい。例えば、発電設備13の発電設備としての価値を管理サーバ2が評価することにより、当該価値に基づいて取引が行われるようにしてもよい。また、管理サーバ2は、各種の評価を、取引の際に出力装置206に表示してもよい。発電設備13の発電設備としての価値も、種々の観点から評価してよい。例えば、発電設備13の発電設備としての価値は、どの程度の期間、及び/又は、どの程度の出力が予測されるかという観点から評価されてもよい。
【0079】
また、例えば、発電設備13の発電設備としての価値は、発電する電力(kWh)以外の観点から評価されてもよい。具体的には、発電設備13の発電設備としての価値は、例えば、発電設備が完成するまでのCO2の排出量に基づいて評価されてもよい。また、発電設備13の発電設備としての価値は、例えば、発電設備13が発電する電力1kWあたりのCO2の排出量に基づいて評価されてもよい。さらに、発電設備13の発電設備としての価値は、例えば、発電設備が廃棄されるまでのCO2の排出量に基づいて評価されてもよい。また、発電設備13の発電設備としての価値は、マッチングの際の判断基準などとして、例えば比較対象とともに出力装置206等に表示されるようにしたり、ランク分けされて表示されるようにしてもよい。
【0080】
さらに、発電設備13の発電設備としての価値は、種々のリスクの観点から評価されてもよい。例えば、発電設備13の発電設備としての価値は、発電設備が設置される地域の自然災害の頻度及び/又は度合いの傾向などから評価されてもよい。また、発電設備13の発電設備としての価値は、発電設備が設置される地域の治安及び/又は政治的安定度などから評価されてもよい。
【0081】
また、発電設備13の発電設備としての価値は、電力を発電した地域において消費する度合い、いわゆる地産地消の度合いに基づいて評価されてもよい。電力は、発電した場所と消費する場所が近い方が、電線などのインフラに対する負荷を低減させ得る。また、消費地から近い場所で発電される電力は、電力を消費する側の者に安心感を提供し得る。
【0082】
さらに、発電設備13の発電設備としての価値は、発電設備の過去の出力レポート、発電設備の寿命、及び/又は発電設備の劣化予測などの観点から評価されてもよい。また、発電設備13の発電設備としての価値は、例えば発電設備の設置場所に盛り土が使用されていないなど、環境への負荷の度合いから評価されてもよい。また、発電設備13の発電設備としての価値は、再生可能エネルギーのクリーン度の観点から、発電設備13の適法
性などの度合いとして評価されてもよい。さらに、発電設備13の発電設備としての価値は、例えば環境負荷の低減の観点など、一例としてSDGs(Sustainable Development Goals)に掲げられた項目のような観点から評価されてもよい。なお、上記のいずれの評価も、予め定められた基準をもとに特定された数値で表される評価を含んでもよい。例えば、1つずつの段階による5段階の基準として、数字が増えるごとに高い評価を示すことを基準としてもよい。具体的には、1(悪い)、2(やや悪い)、3(普通)、4(やや良い)、5(良い)などのようにして段階的な基準を定義し、それぞれの発電設備13の価値を示す数値が評価に含まれてもよい。
【0083】
次に、
図9のステップS306において行われる自己託送について、さらに説明する。
【0084】
本実施形態の電力調達システムにおいて、自己託送に必要な条件が反映されるようにしてもよい。例えば、本実施形態の電力調達システムにおいて、自己の扱う需要量(最大の受電電力)を超えて取引(入札)できないようにしてもよい。このようにすれば、消費可能な量を超えるような自己託送は回避されるため、例えばペナルティが課されるような事態を防ぐことができる。このような策を実現するために、本実施形態の電力調達システムは、自己託送する先の契約容量(最大の受電電力)を自動的に取得してもよい。
【0085】
本実施形態の電力調達システムにおいて取引が行われる際に、自己の扱う需要量を超える電力は落札できないようにしてもよい。例えば、本実施形態の電力調達システムにおいて提供される取引プラットフォーム12は、需要者の契約電力容量に関連する情報を、電力事業者(小売電気事業者)などの外部サーバから取得してよい。また、OCCTOの外部サーバが需要者の契約電力容量に関連する情報を管理する場合は、OCCTOの外部サーバから当該情報を取得するようにしてもよい。このような需要者の契約電力容量に関連する情報は、例えば取引における入札の参加前まで、又は、落札の前までに取得されるようにしてもよい。また、このような需要者の契約電力容量に関連する情報は、需要者の識別情報及び/又は認証情報を用いることにより取得可能にしてもよい。さらに、このような需要者の契約電力容量に関連する情報は、APIを用いることにより取得可能にしてもよい。
【0086】
さらに、本実施形態の電力調達システムにおいて取引が行われる際に、需要者の契約電力容量に関連する情報の他にも各種データを取得してもよい。例えば、取引プラットフォーム12は、過去の30分の時間帯ごとの消費電力に関するデータを取得してもよい。また、取引プラットフォーム12は、前日のデータ、又は、所定の時間若しくは期間(平日、週、月、又は年など)の平均値、最低値、又は最高値などのデータを取得してもよい。
【0087】
また、取引に参加する需要者は、予め外部サーバなどの運営側に、電力事業者と契約している契約容量(最大受電電力)を示す情報を、所定の証明書と共に提出(送信)するようにしてもよい。ここで、契約容量とは、落札後に電力を自己託送する需要家施設における最大受電電力を示すものである。また、取引プラットフォーム12は、提出(送信)された契約容量を示す情報を、外部サーバなどから自動で取得してよい。この時、需要者の識別情報及び認証情報が用いられるようにしてもよい。このような識別情報及び認証情報の少なくとも一方は、例えば外部サーバから需要者に発行されるようにしてもよい。需要者は、少なくともこの識別情報及び認証情報を、取引時に取引プラットフォーム12に入力することで、取引に参加することができる。取引プラットフォーム12は、この識別情報及び認証情報を用いることにより、取引に参加しようとしている需要者の契約容量を示す情報を、外部サーバから取得することができる。これにより、取引プラットフォーム12は、需要者が自己託送先の需要家施設における最大受電電力を超えた電力量に対応するような落札を制限することができる。取引プラットフォーム12において、管理サーバ2は、この識別情報及び認証情報を、提出(送信)された契約容量を示す情報などと関連付
けて、記憶装置203などに記憶してよい。
【0088】
次に、上述したような取引の際に表示可能な画面の例について、さらに説明する。
【0089】
取引プラットフォーム12において取引を行う際に、例えば
図11乃至
図14に示すような画面を需要者、施設所有者、又は管理サーバ2の運営者等の出力装置206などに表示してもよい。具体的には、CPU201が画面に関する情報を作成し、管理サーバ2が出力装置206等に向けてこの画面に関する情報に基づいた画面を表示する指令を出すことで実現される。
図11乃至
図14において、左側に選択画面を示し、右側に確認画面を示す。ここで、取引プラットフォーム12は、購入したいST、UT、及び/又は発電設備13が選択される際に、各種条件の入力に応じて検索を行うことができる検索機能を有してもよい。また、取引プラットフォーム12は、検索によって該当したST、UT、及び/又は発電設備13を、選択画面に示すようにしてもよい。各種条件の入力や、取引に関する情報や指示の入力は入力装置205が受け付ける。
【0090】
図11は、取引の金額が決まっていて、STを取引する場合に出力装置206に表示し得る画面を示す。このような画面を表示することにより、需要者は、
図11の左側に示す選択画面において、発電設備13の空き状況、すなわちSTを購入可能なスロットを確認することができる。
図11の左側に示す選択画面において、塗りつぶされたスロットは空きがないことを示し、塗りつぶされていないスロットは空きがあることを示すものとしてよい。
図11の左側に示す選択画面において、需要者によって空いているスロットが選択されると、
図11の右側に示す確認画面に遷移してよい。
図11の右側に示す確認画面において、需要者は、取引に関連する情報を、取引の確定前に確認することができる。
図11の右側に示す確認画面において、需要者による確定ボタンに対する入力が検出されると、
図11の右側の確認画面に示すような内容の取引を確定することができる。
【0091】
図11に示す画面において、トークンのみを示すと、発電容量(kW)の取得量について需要者に誤解を与え得るような場合、取得トークン及び当該取得トークンに応じた容量(kW)を表示してもよい。また、
図11の左側に示す選択画面において、需要者による選択入力が行われる前に、当該需要者に需要者ID及び認証情報の入力を求めてログインを要求するようにしてもよい。この場合、取引プラットフォーム12において、需要者IDと託送先ID(託送先の情報を含む)が関連付けて記憶されるようにしてもよい。
【0092】
図12は、取引の金額が決まっていて、UTを取引する場合に出力装置206に表示し得る画面を示す。このような画面を表示することにより、需要者は、
図12の左側に示す選択画面において、発電設備13の発電予測値、すなわちUTを購入可能なスロットを確認することができる。
図12の左側の選択画面に示すように、電力取引の時間の単位は、特に限定されないが、例えば30分間とすることができる。
図12の左側に示す選択画面において、塗りつぶされたスロットは空きがないことを示し、塗りつぶされていないスロットは空きがあることを示すものとしてよい。また、
図12の左側に示す選択画面において、取引対象外のスロットとして、選択できないスロットを含ませてもよい。
図12の左側に示す選択画面において、需要者によって空いているスロットが選択されると、
図12の右側に示す確認画面に遷移してよい。
図12の右側に示す確認画面において、需要者は、取引に関連する情報を、取引の確定前に確認することができる。
図12の右側に示す確認画面において、需要者による確定ボタンに対する入力が検出されると、
図12の右側の確認画面に示すような内容の取引を確定することができる。
【0093】
図12の左側に示す選択画面において、需要者による選択入力が行われる前に、当該需要者に需要者ID及び認証情報の入力を求めてログインを要求するようにしてもよい。この場合、取引プラットフォーム12において、需要者IDと託送先ID(託送先の情報を
含む)が関連付けて記憶されるようにしてもよい。また、取引プラットフォーム12において、需要者ID及び認証情報を用いることにより、例えば電力事業者(小売電気事業者)又はOCCTOの外部サーバから契約容量(最大受電電力)を取得しておき、その容量を超えるような取引を制限してもよい。例えば、取引プラットフォーム12は、取引の制限として、その容量を超えた場合に入札を禁止する、入札可能なものだけを表示する、入札が可能なものと不可のものをそれぞれ区別して表示する、又は可能なものだけ選択可能する、などとしてよい。また、取引プラットフォーム12は、取引の制限として、入札は許可しても、落札できないようにしてもよい。さらに、取引プラットフォーム12は、取引の制限として、その容量を超えた場合に入札が行われた場合には、入札を確定する前に、警告画面及び/又は警告表示などを行うようにしてもよい。
【0094】
取引プラットフォーム12は、入札後に予め定められた入札可能な時間が経過した後、それまでに最高額を入札した需要者に落札させてよい。また、取引プラットフォーム12は、落札した内容を示す画面を表示してもよい。
【0095】
図13は、取引の金額が決まっていて、UTを長期で取引する場合に出力装置206に表示し得る画面を示す。このような画面を表示することにより、需要者は、
図13の左側に示す選択画面において、発電設備13の発電予測値、すなわちUTを購入可能な施設を確認することができる。
図13の左側の選択画面に示すように、需要者は、例えば施設名AAAの発電設備、及び例えば施設名BBBの発電設備のうち、少なくとも一方を選択することができる。
図13の左側の選択画面に示すように、例えば施設名AAAの発電設備が選択されている場合、当該選択を示すために、表示項目が太い枠線で囲まれる又は表示項目の色が変更されるなど、他と区別可能に表示されるようにしてもよい。
図13の左側に示す選択画面において、需要者によって項目が選択されると、
図13の右側に示す確認画面に遷移してよい。
図13の右側に示す確認画面において、需要者は、取引に関連する情報を、取引の確定前に確認することができる。
図13の右側に示す確認画面において、需要者による確定ボタンに対する入力が検出されると、
図13の右側の確認画面に示すような内容の取引を確定することができる。
【0096】
図14は、取引の金額が入札により決定されて、UTを長期で取引する場合に出力装置206に表示し得る画面を示す。このような画面を表示することにより、需要者は、
図14の左側に示す選択画面において、発電設備13の発電予測値、すなわちUTを購入可能な施設を確認することができる。
図14の左側の選択画面に示すように、需要者は、例えば施設名AAAの発電設備、及び例えば施設名BBBの発電設備のうち、少なくとも一方を選択することができる。また、
図14の左側の選択画面に示す施設名AAAの発電設備においては、入札により取引金額が決定される。すなわち、この時点ではまだ取引金額が決定されていないため、
図14の左側の選択画面に示す施設名AAAの発電設備において、金額が表示されていない。
図14の左側の選択画面に示すように、例えば施設名AAAの発電設備が選択されている場合、当該選択を示すために、表示項目が太い枠線で囲まれる又は表示項目の色が変更されるなど、他と区別可能に表示されるようにしてもよい。
図14の左側に示す選択画面において、需要者によって項目が選択されると、
図14の右側に示す確認画面に遷移してよい。
図14の右側に示す確認画面において、需要者は、取引に関連する情報を取引の確定前に確認することができるとともに、選択された発電設備の入札金額を入力することができる。
図14の右側に示す確認画面において、需要者によって入札金額が入力された上で、入札ボタンに対する入力が検出されると、
図14の右側の確認画面に示すような内容の取引(入札)を確定することができる。
【0097】
図14の右側に示す確認画面において入札ボタンに対する入力が検出されると、例えば
図15の左側に示す入札後画面に遷移してもよい。
図15の左側の入札後画面においては、確定された入札金額とともに、入札された取引に関する各種情報が出力装置206に表
示されてもよい。また、
図15の左側の入札後画面に示すように、
図14において入札したユーザが現在の最高額の入札者である旨の情報などが表示されてもよい。
【0098】
図15の左側の入札後画面が表示された状況において、例えば他の入札者によってさらに高額の入札が行われた場合、
図15の左側に示す入札に対する落札は行われないようにしてもよい。この場合、落札は完了しないため、例えば
図14の右側に示す確認画面に戻ることにより、さらに高額の入札を行うことができるようにしてもよい。
【0099】
一方、
図15の左側の入札後画面が表示されて、取引期間が終了したら、例えば
図15の右側に示すような落札画面を表示してもよい。
図15の右側に示す落札画面においては、取引期間の終了に伴って、当該落札金額によって落札した旨の情報が表示されてよい。また、
図15の右側に示す落札画面において、落札ボタンに対する入力が検出されると、
図15の右側の落札画面に示すような内容の入札に対する落札が確定されるようにしてもよい。
【0100】
図11の左側に示す選択画面においては、取引を行う場面として、空きがあるスロット及び空きがないスロットを示した。一方、設備所有者の入力画面として、例えば
図16に示す選択画面のように、取引対象のスロット、取引対象外のスロット、及び落札済みのスロットを表示してもよい。
図16に示すように、例えば、取引対象外として示されるスロットのいずれかが選択されると、当該スロットの色彩などの表示態様を変化させて、当該スロットが選択されたことを示すようにしてもよい。その後、
図16に示すような確定ボタンに対する入力に基づいて、前記スロットが取引対象を示すように、例えば色彩を変更するなど表示態様を変化させてよい。このような動作の前提として、設備所有者は、当該設備所有者のID及び認証情報の入力を求めてログインを要求するようにしてもよい。この場合、例えば、
図8に示した資産情報記憶部231は、設備所有者IDと、施設名AAA及び/又は発電容量などの情報帆を関連付けて記憶してもよい。
【0101】
また、
図12の左側に示す選択画面においては、取引を行う場面として、空きがあるスロット、空きがないスロット、及び取引対象外のスロットを示した。一方、設備所有者の入力画面として、例えば
図17に示す選択画面のように、取引対象のスロット、取引対象外のスロット、及び落札済みのスロットを表示してもよい。
図17に示すように、例えば、取引対象外として示されるスロットのいずれかが選択されると、当該スロットの色彩などの表示態様を変化させて、当該スロットが選択されたことを示すようにしてもよい。その後、
図17に示すような確定ボタンに対する入力に基づいて、前記スロットが取引対象を示すように、例えば色彩を変更するなど表示態様を変化させてよい。このような動作の前提として、設備所有者は、当該設備所有者のID及び認証情報の入力を求めてログインを要求するようにしてもよい。この場合、例えば、
図8に示した資産情報記憶部231は、設備所有者IDと、施設名AAA及び/又は発電容量などの情報帆を関連付けて記憶してもよい。
【0102】
設備所有者のIDの登録及び発行は、例えば以下のようにして実行してよい。上述のように、取引に参加する需要者は、予め外部サーバなどの運営側に、電力事業者と契約している契約容量(最大受電電力)を示す情報を、所定の証明書と共に提出(送信)するようにしてよい。同様に、取引に参加する発電設備の所有者は、予め外部サーバなどの運営側に、取引の対象となる設備に関する情報を、所定の証明書と共に提出(送信)するようにしてもよい。ここで、所定の証明書は、例えば、設備所有者が法人である場合の登記簿謄本、設備の発注契約書、設備の購入を証明する領収証、及び/又は、第三者機関による設備の証明書などとしてもよい。
【0103】
このようにして提出された情報は、以下説明する設備所有者の識別情報又は認証情報と
関連付けて、資産情報記憶部231に記憶されてよい。設備所有者の識別情報及び認証情報の少なくとも一方は、例えば外部サーバから設備所有者に発行されるようにしてもよい。設備所有者は、少なくともこの識別情報及び認証情報を、取引時に取引プラットフォーム12に入力することで、取引に参加することができる。取引プラットフォーム12は、この入力された識別情報及び認証情報を用いることにより、取引に参加しようとしている設備所有者の設備に関する情報を、資産情報記憶部231から取得し、取引する場合等に表示し得る画面に表示させることができる。
【0104】
図12及び
図17に示すような時間帯1~18は、任意の時間を設定してよい。例えば、1つの時間帯の単位を30分として、1日を1~48の時間帯として表示してもよい。
【0105】
また、例えば取引プラットフォームにおいて、スマートコントラクトによって電力小売業者のスイッチングを行ってもよい。APIを用いることで必要なデータを取得することができるため、取引システム側で電力小売業者のスイッチングを行ってもよい。
【0106】
本実施形態の電力調達システムは、上述したマッチング処理が完了した後、取引に関する情報に基づいて、自己託送の計画の情報を自動的に作成してもよい。本実施形態の電力調達システムは、このようにして作成された自己託送の計画の情報を、取引を行った需要者の情報と共に、上述したマッチング処理が完了した後に、例えばOCCTOなどに送信してよい。OCCTOなどに送信する計画の情報は、例えば、計画の送付元の情報、計画の送付先の情報、計画の電力量、計画の時間帯、及び/又は、発電設備の発電予測値など、各種の情報を含んでよい。このようにすれば、自己託送の計画を作成し、関係各所に報告してから、自己託送を行うことができる。
【0107】
さらに、本実施形態の電力調達システムは、需要者の施設へ電力を供給する契約をしている電力小売事業者と、自己託送に必要な契約を、スマートコントラクト等によって自動的に締結するようにしてもよい。また、本実施形態の電力調達システムにおいて、管理サーバ2は、販売処理部216による取引が成立した場合、自己託送が実行される日の前日までに、自己託送の計画を作成し、その計画を例えばOCCTOのような所定の機関に提出してもよい。
【0108】
次に、本実施形態に係る電力調達システムにおける自己託送契約の例について、以下の2つの場合について、さらに説明する。
【0109】
(1)電力小売事業者が同じ場合
【0110】
電力小売事業者が同じ場合とは、発電設備から発電される電力を取り扱う契約をしている電力小売事業者と、需要者の施設への電力を供給する契約をしている電力小売事業者とが同じ場合としてよい。このような場合、本実施形態に係る電力調達システムは、電力小売事業者と、マッチング処理に係る自己託送の契約を、スマートコントラクト等によって自動的に締結してよい。
【0111】
(2)電力小売事業者が異なる場合
【0112】
電力小売事業者が同じ場合とは、発電設備から発電される電力を取り扱う契約をしている電力小売事業者と、需要者の施設への電力を供給する契約をしている電力小売事業者とが異なる場合としてよい。このような場合、本実施形態に係る電力調達システムは、それぞれの電力小売事業者とマッチング処理に係る自己託送の契約をスマートコントラクト等によって自動的に締結してよい。
【0113】
これらの場合、本実施形態の電力調達システムは、上述のマッチング処理とともに、自己託送の契約を締結するようにしてもよい。また、本実施形態の電力調達システムは、発電設備から発電される電力を取り扱う契約をしている電力小売事業者と、需要者の施設への電力を供給する契約をしている電力小売事業者とが同じ場合にのみマッチングを完了するような策を講じてもよい。
【0114】
この場合の電力小売事業者と契約している者とは、契約者が所有している設備や施設での電力の提供又は供給をする契約をしている者である。例えば、電力調達システムは、同一の電力小売事業者と契約している複数の需要者と発電設備の所有者との間でのみ取引を行うようにしてもよい。電力調達システム発電設備を所有者が契約している電力小売事業者と異なる電力小売り事業者と契約している需要者が取引への参加を禁止するようにしてもよい。
【0115】
次に、本実施形態の電力調達システムにおいてトークンを購入する態様について、さらに具体的に説明する。
【0116】
図18は、本実施形態の電力調達システムにおけるトークン購入の例を示す図である。
図18においては、例えば、発電設備の所有者が電力小売事業者である場合として説明する。
【0117】
上述した実施形態においては、発電設備の所有者が、取引PFに発電設備の情報を登録することにより施設所有者として取引に参加する例について説明した。一実施形態に係る電力調達システムにおいては、小売事業者が太陽光パネル等の発電設備の施設所有者として取引に参加してもよい。このような場合、前述以外の構成は、上述した実施形態と同様としてよい。
【0118】
例えば、小売事業者自身が、発電設備の施設所有者として取引に参加することにより、取引に参加する者に対しての信頼性を高めることができる。すなわち、取引PFを用いた取引において、需要者は、発電設備のセキュリティトークン又はユーティリティトークンを落札することにより、これらのトークンに係る電力を受け取る権利を取得することになる。しかしながら、既に電力を供給している小売事業者であれば、電力の供給に関しての実績があるため、落札したトークンに係る電力を受け取れないのではないかという需要者の不安を減らすことができる。
【0119】
一実施形態においては、例えば、予め発電設備を備えている小売事業者が取引に参加してもよい。また、一実施形態においては、例えば、小売事業者が複数の需要者からなる需要者グループから資金を集め、太陽光パネル等の発電設備を購入して所定の土地に設置することにより発電可能な状態にしてもよい。このような取引は、上述した実施形態と同様に行われるものとしてよい。落札した需要者は、施設所有者である小売事業者から落札したトークンに応じて、電力の提供を受けることになる。
【0120】
一方、
図18に示すように、需要者グループから資金を集め、太陽光パネル13等の発電設備を購入した場合、上述した実施形態のような取引を行わずに、電力調達システムが所定量のトークンをこの需要家グループに発行又は付与するようにしてもよい。この場合、需要家に加えて、小売事業者19も資金を出資するようにしてもよい。これにより、需要家グループは、このトークンに対応した分の電力を、施設所有者である小売事業者19から供給されることになる。
【0121】
また、一実施形態に係る電力調達システムは、需要家グループ内におけるそれぞれの需
要家である需要者に、それぞれ対応する電力の供給を受けられるように、トークンを発行又は付与するようにしてもよい。その場合のトークンは、需要家それぞれで均等になるようにしてもよいし、提供した資金に応じて割り振るようにしてもよい。
【0122】
図18において、小売事業者19は、例えば太陽光パネルの保有者としてよい。小売事業者19は、需要家グループから収集した資金を用いて、太陽光パネルを直接購入してもよい。また、
図18に示すように、小売事業者19は、太陽光パネルを仮想区分化するとともに、その所有権は引き続き小売りしてもよい。
【0123】
例えば、需要家グループの出資に対応付けられた発電設備に対して、電力調達システムがセキュリティトークンとして100トークンを発行した場合、電力調達システムは、全出資額の2%を、出資した需要家に2トークンを与えてよい。例えば発電設備の1日当たりの最大出力が100kWhである場合、2トークンを与えられた需要家は、1日当たり2kwの電力を、施設所有者である小売事業者19から供給されることになる。ここで、この需要家は、この2トークンを保有している限り、半永久的に、1日当たり2kwの電力を、施設所有者である小売事業者19から供給されることとしてよい。ただし、この1日当たり2kwは、実績値又は理論値である。このため、供給される電力は、現実的には、発電設備の劣化や故障に伴い、低下することがある。
【0124】
また、
図18において、太陽光パネルの購入のための資金を出していない需要家グループであっても、小売事業者19、資金を提供した需要家グループ、又は資金を提供した需要家グループに属する需要家からトークンを購入可能にしてもよい。このようにしてトークンが購入された場合、小売事業者19から電力の供給を受けられるようにしてもよい。例えば、
図18に示すように、資金を提供していない家庭Xである需要家が、資金の一部を提供した小売事業者19から資金の全体の2%分にあたる2トークンを購入したとする。この場合、上述と同様の思想に基づいて、この需要家は小売事業者19から1日あたり2kW相当の半永久的なトークンを購入したものとしてよい。
【0125】
また、資金を提供していない需要家グループが、資金の一部を提供した小売事業者19からトークンを購入した場合、需要家グループに対して、小売事業者19から購入したトークンに対応した分の電力が供給可能となる。この場合、電力調達システムは、需要家グループに対してトークンを与えるように管理してもよい。また、電力調達システムが介在せずに需要家グループと小売事業者19とが所定のトークンに対応した所定量の電力の供給契約を結ぶことにより、小売事業者19を経由して、需要家グループが、疑似的にトークンを保有するようにしてもよい。
【0126】
このように、電力小売事業者が直接取引対象者になることにより、取引対象の発電設備が実在すること、及び/又は、取引時に表示される設備に関する情報に対する信頼性を高めることができる。
【0127】
図19は、本実施形態の電力調達システムにおける金銭の請求の例を示す図である。
図19においても、例えば、発電設備の所有者が電力小売事業者である場合として説明する。
【0128】
上述した実施形態においては、発電設備の所有者が、取引PFに発電設備の情報を登録することにより施設所有者として取引に参加する例を説明した。一実施形態に係る電力調達システムにおいては、小売事業者が太陽光パネル等の発電設備の施設所有者として取引に参加してもよい。このような場合、前述以外の構成は、上述した実施形態と同様としてよい。
【0129】
例えば、小売事業者自身が、発電設備の施設所有者として取引に参加することにより、
図18に示した場合と同様に、取引に参加する者に対しての信頼性を高めることができる。
【0130】
一実施形態において、
図19に示すように、小売事業者19が毎月10,000kWhの電力を発電する発電設備の施設所有者である場合の例について説明する。この場合、小売事業者19は、一実施形態に係る電力調達システムに、この発電設備の資産情報として、資産登録を行うことにより、施設所有者として取引PFに参加可能となるようにしてよい。
【0131】
この場合、一実施形態に係る電力調達システムは、セキュリティトークンとして、例えば100トークンを発行するようにしてよい。家庭Xである需要者が電力調達システムの取引PFから2トークンを落札した場合、この需要者は、毎月10,000kWhの電力の2%に相当する、1か月あたり200kWhの電力量を、小売事業者19から供給される権利を得ることになる。ここで、取引に参加した需要者が小売事業者19と電力供給の契約を結んでいる場合に、家庭Xでの1か月あがりの電力利用料が例えば450kWhであるとする。この場合、取引によって獲得された200kWh分の電力を供給される権利と相殺することにより、例えば、450kWhから200kWhを差し引いた250kWh分の電力が利用されたこととしてもよい。
【0132】
この場合、
図19に示す家庭Xに対して、250kWh分の電力の利用料金が、小売事業者19から請求されるようにしてよい。このように、請求する電力量として、小売事業者19から購入することになる買電の電力量から、取引によって獲得したトークンに対応した発電電力量が差し引かれるようにすることを、「ネットメータリング」という。
【0133】
このように、需要者(家庭X)が取引を完了し、1か月で10,000kWhの発電設備の2%のトークンを取得した場合、取引した小売業者によって、毎月請求される電力量から2%(200kWh)分の電力量が差し引かれるようにしてもよい。
【0134】
図20は、一実施形態に係る電力調達システムのネットメータリングによる電力供給の動作を説明するフローチャートである。
【0135】
図20に示す動作において、ステップS301~ステップS305の動作は、
図9に示した動作と同様に行ってよい。
【0136】
図20に示すように、ステップS305においてトークンの保有者に応じて区分保有者に発電量が割り当てられたら、管理サーバ2は、上述のようなネットメータリングによって電力を供給してよい(S401)。
【0137】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本開示にはその等価物も含まれる。
【0138】
例えば、本実施形態では、ブロックチェーン4が発行するトークンを利用して発電設備13の所有権及びオフテイク権の所在を管理するものとした。しかしながら、一実施形態において、上述のような所在の管理は、必ずしもブロックチェーンの技術を用いてしなくてもよい。例えば、所定のデータベースに所有権及びオフテイク権を管理するようにし、データベースの管理者(管理サーバ2の運営者)が内容の真性を保証するようにしてもよい。すなわち、一実施形態において、所定のデータベースにトークンを発行(記録)するようにしてもよい。
【0139】
また、本実施形態では、発電設備13の所有者に関する所有者情報は、ブロックチェーン4の台帳に管理するものとした。しかしながら、管理サーバ2が、所有者情報を記憶する所有者情報記憶部を備えるようにしてもよい。
【0140】
また、一実施形態の電力調達システムは、取引の際の手数料を徴収したり、自己託送時の手数料を徴収したりしてもよい。
【0141】
また、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電する電力量の予測は、時間帯ごとに異なるようにしてもよい。さらに、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電する電力量の予測が外れた場合には、例えば外れた程度に応じてペナルティが課されるなどの策を講じてもよい。また、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電する電力の予測値として、本来の予測値を示す代わりに、例えば安全のため所定の割合を示した上で取引を行うようにしてもよい。例えば、発電する電力の予測値が本来は1000kWhである場合に、あえて900kWhなどと示すことにより、取引を行うようにしてもよい。
【0142】
一実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備13は、太陽光発電をする太陽光パネル(太陽電池)のみならず、例えば蓄電池(電気自動車(Electric Vehicle:EV)を含む)としてもよい。また、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備13が蓄電池を含む場合、当該蓄電池を電力のバッファとして機能するようにしてもよい。
【0143】
また、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備13が発電した電力に余剰が生じた場合、当該余剰分は送配電業者側が買電するようにしてもよい。また、一実施形態の電力調達システムにおいて、発電設備13が発電した電力に不足が生じた場合、買電した側(発電側)がペナルティを支払うようにしてもよい。
【0144】
さらに、一実施形態の電力調達システムにおいて、投資の回収期間に応じて将来得られる予定の電力量等を、現在の価値に反映させて割引く仕組みを構築してもよい。
【0145】
<開示事項>
なお、本開示には、以下のような構成も含まれる。
[項目1]
発電設備を裏付けとした、前記発電設備の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーンにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備から調達したい電力の需要量を需要者から受け付ける需要量入力部と、
前記トークンの前記需要者への販売に係る処理を行う販売処理部と、
前記需要量に応じた量の前記トークンを前記需要者のウォレットに移転させるトークン移転部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目2]
項目1に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備による発電電力量の予測値を取得する発電予測取得部と、
前記需要者ごとに、前記需要者の保有予定トークン量に応じて前記発電電力量の予測値を分割して出力する発電計画出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目3]
項目1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備に設けられているスマートメータから前記発電設備により発電された発電電力量の実績値を取得する発電実績取得部と、
前記実績値を保有予定トークン量に応じて分割した分割発電実績値及び前記予測値を出
力する発電実績出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目4]
項目1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記需要量入力部は、前記需要量とともに前記発電設備についての条件の指定を受け付け、
前記情報処理装置は、
複数の前記発電設備のそれぞれについて、前記発電設備に関する資産情報を記憶する資産情報記憶部と、
前記条件にマッチする前記資産情報を検索するマッチング処理部と、
をさらに備え、
前記トークン移転部は、マッチした前記資産情報に対応する前記発電設備のウォレットから、前記需要者のウォレットから前記需要量に応じた量の前記トークンを移転させること、
を特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0146】
1 ユーザ端末
2 管理サーバ
3 通信ネットワーク
4 ブロックチェーン
10 需要者
11 需要設備
12 マーケットプレイス
13 発電設備
14 スマートメータ
15 設備提供者
16 広域機関システム
17 小売事業者
18 サービス提供会社
131 区分
211 資産登録部
212 トークン発行部
213 需要量入力部
214 売却量入力部
215 マッチング処理部
216 販売処理部
217 トークン移転部
218 発電予測取得部
219 発電実績取得部
220 レポート作成部
221 API処理部
231 資産情報記憶部