(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012474
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】不活性化UL18および/またはUL8を有する新しいEHV
(51)【国際特許分類】
C12N 15/869 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
C12N15/869 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022164602
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020550179の分割
【原出願日】2019-03-19
(31)【優先権主張番号】18162630.0
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】コクントラ ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン ジャナ エム
(72)【発明者】
【氏名】マンデル ロバート バリー
(72)【発明者】
【氏名】ペルツ ルカ エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーン エリック マーティン
(57)【要約】
【課題】複製欠損EHVを産生する方法、EHVベクター骨格に導入遺伝子を挿入する方法およびEHVベクター骨格から導入遺伝子を発現する方法の提供。
【解決手段】本発明は、(ベクター)ワクチンの分野、特にUL18および/またはUL8が不活性化した新規のEHVに関する。本発明は、目的の遺伝子、特に抗原コード配列の発現に好適な関連する発現カセットおよびベクターにさらに関する。本発明のウイルスベクターは、免疫原性組成物またはワクチンの産生に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UL18および/またはUL8の不活性化を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
【請求項2】
UL18および/またはUL8の不活性化が、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である、請求項1に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項3】
少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドがUL18内で欠損、置換または逆位を生じている、請求項1または2に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項4】
少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドがUL8内で欠損、置換または逆位を生じている、請求項1~3のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項5】
配列番号1に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL18内で欠損、置換、または逆位を生じている、請求項1~4のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項6】
配列番号2に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL8内で欠損、置換、または逆位を生じている、請求項1~5のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項7】
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもよい目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号5およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号9およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、
(iii)配列番号6およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号10およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域
を含む発現カセットを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項8】
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもよい目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号11およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、ならびに
(iii)配列番号12およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域
を含む発現カセットを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項9】
UL18への発現カセットの挿入が、RacH(配列番号1)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL18内のおよそ945bp部分の欠損によって特徴づけられる、請求項7に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項10】
UL8への発現カセットの挿入が、RacH(配列番号2)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL8内のおよそ2256bp部分の欠損によって特徴づけられる、請求項8に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項11】
(i)配列番号5および配列番号9からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに(ii)配列番号6および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項12】
(i)配列番号11からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、および(ii)配列番号12からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項13】
複製欠損が、複製率が少なくとも90%低減されていることを意味する、請求項1~12のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項14】
依然として感染性である、請求項1~13のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項15】
挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入された、少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項16】
前記抗原コード配列が、ブタ、ウシもしくは家禽などの食物生産動物またはネコ、ウマもしくはイヌなどの伴侶動物に感染する病原体に関し、好ましくは、抗原コード配列が、限定はされないが、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である、請求項7~15のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項17】
EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9からなる群から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクター。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の複製欠損EHVベクターを培養するためのEHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現する細胞株。
【請求項19】
EHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を含む発現カセットを含むプラスミドを含む細胞株であって、UL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現している細胞株。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか1項に記載の1つまたは複数のEHVベクターを含む免疫原性組成物。
【請求項21】
請求項20に記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む、対象を免疫する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、37 C.F.R. 1.821~1.825に従って配列表を含有する。本出願に付随する配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
A.技術分野
本発明は、(ベクター)ワクチンの分野、特にEHVにおけるUL18および/またはUL8の不活性化に関する。本発明は、UL18および/またはUL8が不活性化した複製欠損EHVにさらに関する。本発明は、目的の遺伝子、特に抗原コード配列の発現に好適な関連する発現カセットおよびベクターにさらに関する。本発明のウイルスベクターは、免疫原性組成物またはワクチンの産生に有用である。
【背景技術】
【0002】
B.関連技術の背景および説明
ウマの病原体、ウマアルファヘルペスウイルス1型(ウマ流産ウイルス、EHV-1)は、ヘルペスウイルス目の、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス亜科のバリセロウイルス属に属する。およそ150,000塩基対の二本鎖DNAゲノムを有する大きなエンベロープウイルスである。バリセロウイルス亜属の他の重要なメンバーは、ヒトアルファヘルペスウイルス3型(水痘帯状疱疹ウイルス)、ブタアルファヘルペスウイルス1型(仮性狂犬病ウイルス)、ウシアルファヘルペスウイルス1型(感染性気管支炎ウイルス)、およびウマアルファヘルペスウイルス4型(ウマ鼻肺炎ウイルス、EHV-4)(Virus Taxonomy: 2015 Release EC 47, London, UK, July 2015; Email ratification 2016 (MSL #30))。EHV-1およびEHV-4は風土性であり、世界中のウマに影響を及ぼす。EHV-4は、上気道に、大抵は軽度の感染を引き起こすが、EHV-1は、株および宿主の免疫状態によって呼吸器症状から流産および致死性の脳脊髄障害の範囲の疾患を含む全身感染を引き起こし得る。EHV-1に対して使用許諾を得た2つの改変生ワクチン(MLV)がアメリカおよびヨーロッパで現在入手可能であり、それぞれRhinomune(登録商標)(Boehringer Ingelheim)およびPrevaccinol(登録商標)(MSD)である。両方とも、弱毒化のためにブタ上皮細胞において256回継代された、古典的に弱毒化したEHV-1 RacH株を含有する(Ma et al. 2013)。弱毒化のメカニズムは、分子レベルで調査されてきた。Osterrieder et al. (1996)は、RacHがorf67(IR6)の2つのゲノムコピーを欠如し、1つのコピーの回復が毒性を回復させるのに十分であったことを示した。さらに、免疫抑制ウイルスタンパク質をコードするorf1(UL56)のコード配列の90%より多くを除去する1283bpの欠損を持つ。他の変異もまた、弱毒化に影響するが、これまでのところ詳細には調査されていない。これら全てのことから、RacHは非常に安全なワクチン株である。ワクチン接種動物における継代による毒性への復帰は、仮に可能だとしてもその可能性が極めて低いからである。
【0003】
ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ワクチン株RacH:pRacHおよびpRacH-SEの全ゲノムを持つ大腸菌(E.coli)の細菌人工染色体(BAC)の2つのバリアントは、ベクターワクチン開発のプラットフォームとして公知である。BAC pRacH-SEはpRacH、元々はKlaus Osterriede,FU Berlinの研究室でクローニングされたBACをもとに作製された。pRacHは、糖タンパク質II(gpII;Wellington et al., 1996)をコードするorf71(US5)が欠損している。その場所に、BACベクター配列およびGFP発現カセットが導入された。pRacHから未改変EHV-1 RacHをレスキューするため、ウイルス複製の間に、BACベクター配列部分およびGFP発現カセットが相同組換えによってorf71(US5)によって置き換えられ、元々のRacHゲノムが回復されるように、それは、全orf71(US5)プラス隣接領域を含有するプラスミドとコトランスフェクトされなければならなかった。BACベクター配列/GFP発現カセットが細胞培養でのトランスフェクション時に自己切断可能(SE)になるように、pRacHは本発明において改変された(Tischer et al., 2007)。この改善されたBACはpRacH-SEと名付けられた。pRacHおよびpRacH-SEは、pRacH-SEがorf71(US5)修復ウイルスのレスキューを著しく促進する点が違うのみで、両方ともベクターワクチン開発のためのプラットフォームとなり得る。
【0004】
EHV-1 RacHベースのベクターワクチンは、ブタ、ウシ、およびイヌを含むいくつかの哺乳動物種で免疫性を引き出すことができることが示された(Rosas et al. 2007, Rosas et al. 2008, Trapp et al. 2005, Said et al. 2013)。病原体の抗原タンパク質をコードする遺伝子は、組換えEHV-1 RacHによって発現され得る。EHV-1-RacHゲノムは、大腸菌においてそのBAC形態で操作し、通常導入遺伝子発現カセットを挿入することによってさらなるタンパク質を発現するように調製することができる(Tischer et al., 2010)。培養した許容細胞においてpRacH-SE DNAをトランスフェクションすると、EHV-1複製が細胞の転写因子によって開始される。ウイルスDNAポリメラーゼの活性は、全てのBACベクター関連配列の欠損およびEHV-1 RacHゲノムのその元々の状態への回復をもたらす。感染性ウイルスが生成され、それはRacHと区別がつかない。
pRacH-SEが、例えば導入遺伝子発現カセットの挿入によって、大腸菌中で操作される場合、許容細胞へのトランスフェクション後に再構築されたウイルスは改変を保持し、さらなる遺伝子を発現するであろう。組換えEHV-1 RacHはベクターワクチンとして使用することができる。
【0005】
野生型EHV-1株は、それらのゲノムの長いユニーク断片の一端にorf1(UL56)、orf2、およびorf3と呼ばれる3つのオープンリーディングフレーム(orf)を保持する(配列座標 1298-3614;
図1)。Orf1(UL56)およびorf3は、DNAの1つの鎖に連続して配置されているが、orf2は相補鎖にコードされている。ワクチン株RacHは、orf1および2に影響を及ぼす領域内に1283bpの欠損があり、これは、これらの遺伝子はウイルス複製に必須ではないことを示している。このため、その部位は導入遺伝子挿入部位となる。この挿入部位はORF1/3(UL56)と呼ばれる。
【0006】
しかしながら、ORF1/3(UL56)挿入部位に挿入され得る導入遺伝子のサイズおよび数は、通常制限される。したがって、EHVベクターの能力を増強するため、EHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHベクターに導入遺伝子を挿入する、およびEHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHベクターから導入遺伝子を発現する、新しいおよび代わりの方法の満たされていない要求がある。
複製欠損EHVベクターワクチンには利点があり得る。そのような複製欠損EHVベクターワクチンは、宿主動物内で複製できず、ある動物から別の動物に拡散せず、したがって、安全性または制御の目的のためには有利である。
Barnard et al 1997 (Virology; 237, 97-106)は、ヘルペス単純ウイルスI型のUL8のいくつかの変異体が複製のいくらかの阻害を示すことを記載している。さらに、Muylaert et al 2012 (Journal of Biological Chemistry; VOL. 287, NO. 40, pp. 33142-33152)は、DNA合成が欠損したヘルペス単純ウイルスI型のUL8のいくつかの変異体を記載している。さらに、いくつかの変異がEHVに導入され、相当する変異がEHV-1 UL8に導入された場合、類似の表現型が観察された。
【0007】
中国特許出願公開第105641692号は、ヘルペス単純ウイルスI型(HSV-1)のUL18の完全な欠損(ノックアウト)を記載している。しかしながら、中国特許出願公開第105641692号は、前記HSV-1 UL18ノックアウトは約80%までプラーク形成阻害率が低減されたが、複製は完全には消失しなかったことを記載している。さらに、中国特許出願公開第105535959号は、HSV-1 UL18ノックアウトの表現型も研究しており、複製および感染が著しく低く、感染がほぼ観察されなかったことを記載している。したがって、複製に関し、中国特許出願公開第105535959号は、中国特許出願公開第105641692号と類似の表現型(複製の低減だが、完全な消失ではない)を記載している。さらに、中国特許出願公開第105535959号は、HSV-1 UL18ノックアウトの感染がほぼないことを記載しており、これはベクターワクチン(例えば、組換えEHVワクチン)の場合は問題である。ベクターワクチンは十分な免疫応答を提供するために宿主細胞に感染しなければならないからである。特に、感染細胞における感染性および導入遺伝子発現は、外来抗原を発現するベクターワクチンが有効であるために必須である。したがって、複製欠損(だが、感染性)EHVベクターシステムの満たされていない要求がある。
【発明の概要】
【0008】
EHVベクターの能力を増強するため、本発明は、複製欠損EHVを産生する方法、EHVベクター骨格に導入遺伝子を挿入する方法およびEHVベクター骨格から導入遺伝子を発現する方法を提供する。
【0009】
本発明は、UL18および/またはUL8の不活性化、ならびにEHVベクターに導入遺伝子配列を挿入する、およびEHVベクターからトランスジェニックタンパク質を発現するために使用され得る新しい、代わりの導入遺伝子挿入部位UL18および/またはUL8を含む複製欠損EHVに関する。
UL8および/またはUL18の不活性化は、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である。
本発明は、本発明の複製欠損EHVベクターを含む哺乳動物宿主細胞にさらに関する。
本発明は、本発明の複製欠損EHVベクターを培養するためのEHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現する細胞株にさらに関する。
本発明は、EHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を含む発現カセットを含むプラスミドを含む細胞株であって、UL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現している細胞株にさらに関する。
本発明は、本発明に記載の不活性化UL18および/またはUL8を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生するための方法にさらに関する。
【0010】
本発明は、
a)野生型EHVまたは弱毒化EHVを提供するステップ;
b)ステップa)のEHVのUL18および/またはUL8を不活性化するステップならびに完全UL18および/またはUL8またはUL18および/またはUL8の機能性部分を持たないEHVクローンを選択するステップ;
c)UL18および/またはUL8またはその機能性部分を発現する補完細胞株を提供するステップ;
d)ステップb)からのEHVをステップc)からの補完細胞株と培養することによって複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を得るステップ
を含む、複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生する方法にさらに関する。
本発明は、本発明の1つまたは複数のEHVベクターを含む免疫原性組成物にさらに関する。
本発明は、そのような対象に本発明の免疫原性組成物を投与するステップを含む、対象を免疫するための方法にさらに関する。
本発明は、必要とする対象において病原体によって引き起こされる臨床徴候を処置または防止する方法であって、治療有効量の本発明の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法にさらに関する。
したがって、上記の技術的問題の解決策は請求項に特徴づけられる記載および実施形態によって達成され、その異なる態様内の本発明は請求項に従って実施される。
【0011】
これらの特徴は、UL18および/またはUL8の不活性化によって複製欠損であるEHVに基づく組換えベクターワクチンの作製を可能にする。さらに、抗原は、前記EHVベクターに挿入され得る。別の挿入部位ORF1/3(UL56)および/またはUS4(ORF70)からの少なくとも1つの抗原、または類似の効率で並行して少なくとも2つの異なる抗原が、ORF1/3(UL56)および/またはUS4(ORF70)から発現され得る。さらに、新しく記載されたUL18および/またはUL8挿入部位からの少なくとも1つの抗原、または新しく記載されたUL18および/またはUL8から類似の効率で並行して少なくとも2つの異なる抗原が発現され得る。さらに、新しく記載されたUL18および/またはUL8挿入部位と前記他の挿入部位ORF1/3(UL56)および/またはUS4(ORF70)の両方からの抗原が発現され得る。複製欠損EHVベクターワクチンは、安全性または制御の目的のためには有利である。さらに、ワクチン標的が2つまたはそれ以上の異なる病原体/抗原からなる場合、ORF1/3(UL56)および/またはUS4(ORF70)のような確立された挿入部位と並行する新しいUL18および/またはUL8挿入部位の適用は、グッズの費用を著しく削減でき、1つの抗原成分のみを発現するベクターよりもはっきりとした利点となる。
以下の図は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図の1つまたは複数を本明細書で提示されている特定の実施形態の詳細な説明と組合せて参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】発現プラスミド、pCEP-ORF43(CO)のプラスミドマップを示す図である。このベクターは、CMVプロモーターによってコドン最適化EHV-1 ORF43遺伝子を発現し、安定した細胞株の1つを生成するために使用された。
【
図2】発現プラスミド、pCEP-ORF54(CO)のプラスミドマップを示す図である。このベクターは、CMVプロモーターによってコドン最適化EHV-1 ORF54遺伝子を発現し、安定した細胞株の1つを生成するために使用された。
【
図3】ORF42-ORF45領域を拡大したEHV-1 BAC DNAのORF43部位へのmCMV由来RFPのクローニングの概略図である。U
L=長いユニーク断片U
S=短いユニーク断片IR=内部逆方向反復TR=末端逆方向反復orf=オープンリーディングフレームbp=塩基対
【
図4】ORF42-ORF45領域を拡大したEHV-1 BAC DNAのORF43部位へのRFPのクローニングの概略図である。U
L=長いユニーク断片U
S=短いユニーク断片IR=内部逆方向反復TR=末端逆方向反復orf=オープンリーディングフレームbp=塩基対
【
図5】ORF43領域へのRFPのクローニングのために使用される改変RED組換えを示す図である。上のパネル:プラスミドは正確な縮尺ではない。I-CeuI制限エンドヌクレアーゼによって消化されたSceI/Kanプラスミド。EHV-/RacH BAC DNAを持つGS183細胞に形質転換されたSceI/Kan断片(ORF43配列に隣接する)。ORF43がSceI/Kanによって置き換えられたEHV-1/RacHクローンを選択するため、クロラムフェニコールおよびカナマイシン選択が使用された。中間のクローンはEHV-1/SceI-Kanと名付けられた。下のパネル:プラスミドは正確な縮尺ではない。RFP(ORF43配列に隣接する)g-block DNAは、EHV-1/SceI-Kanを持つGS1783細胞に形質転換され、アラビノースとインキュベートされ、クロラムフェニコール/アラビノースによって選択された。EHV-1/Sce-KanクローンのORF43でRFP DNAはSceI/Kan断片を置き換え、EHV-1-43-RFPを生成する。
【
図6】ORF53-ORF55領域を拡大したEHV-1 BAC DNAのEHV-1 ORF54部位へのmCMV-RFP-pAのクローニングの概略図である。U
L=長いユニーク断片U
S=短いユニーク断片IR=内部逆方向反復TR=末端逆方向反復orf=オープンリーディングフレームbp=塩基対
【
図7】EHV-1/RacHウイルスを感染させたST(上のパネル)、ST-43-CO(中央のパネル)およびST-54-CO細胞が類似のCPEを示す図である。感染細胞はGFPを発現するが(右のパネル)、RFPは発現しない(データは示さない)。
【
図8】ST(上のパネル)およびST-43-CO(下のパネル)およびrEHV-1-43-RFPウイルスを示す図である。感染細胞はGFP(中央のパネル)およびRFP(右のパネル)を発現するが、ウイルスは拡散し、rEHV-1-43-RFPウイルスが感染したST-43-CO細胞においてのみCPEが観察された。
【
図9】ST(上のパネル)およびST-43-CO(下のパネル)およびrEHV-1-43-mCMV-RFPウイルスを示す図である。感染細胞はGFP(中央のパネル)およびRFP(右のパネル)を発現するが、ウイルスは拡散し、rEHV-1-43-mCMV-RFPウイルスが感染したST-43-CO細胞においてのみCPEが観察された。
【
図10】ST(上のパネル)およびST-54-CO(下のパネル)およびrEHV-1-54-mCMV-RFPウイルスを示す図である。感染細胞はGFP(中央のパネル)およびRFP(右のパネル)を発現するが、ウイルスは拡散し、rEHV-1-54-mCMV-RFPウイルスが感染したST-54-CO細胞においてのみCPEが観察された。
【
図11】トランスファーベクターpU70-p455-71K71のプラスミドマップを示す図である。
【
図12】EHV-1 RacHのORF70への発現カセットp455-H3-71の挿入のためのトランスファープラスミドのプラスミドマップを示す図である。
【
図13】orf70挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3のゲノムの概略図である。orf69:orf70の挿入部位の上流のオープンリーディングフレーム番号69;p455:本明細書に記載の新しいプロモーター、例えば実施例1を参照;H3:導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニン;71pA:新しいポリアデニル化配列;Δorf70:構造ウイルス糖タンパク質II(gpII)をコードするorf71のプロモーターを含有するorf70の残りの部分。
【
図14】間接免疫蛍光法:rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3を感染させたVERO細胞の、間接免疫蛍光法を示す図である。感染後24時間の細胞は、エタノールによって固定され、風乾された。一次抗体としてH3に対する市販のモノクローナル抗体および二次抗体としてFITCコンジュゲートしたウサギ抗マウスIgGを使用して、H3は組換えEHV-1 RacHSE-70-p455-H3を感染させた細胞において蛍光顕微鏡によって示された。
【
図15】チャレンジの前、ならびにチャレンジの1、2、および3日後の群の平均体温を示すグラフである。エラーバー、標準偏差。試験日当たり左から右へ:陰性対照群(neg.ctrl.)、チャレンジ対照群(chall.ctrl.)、RacH-SE-70-p455-H3で1回ワクチン接種した動物(1×EHV-1)、RacH-SE-70-p455-H3で2回ワクチン接種した動物(2×EHV-1)、または不活性化ブタIAVワクチンで2回ワクチン接種した動物(2×死菌)。
【
図16】チャレンジ後1および3日の群の平均肺スコアを示すグラフである。エラーバー、標準偏差。陰性対照群(neg.ctrl.)、チャレンジ対照群(chall.ctrl.)、RacH-SE-70-p455-H3で1回ワクチン接種した動物(1×EHV-1)、RacH-SE-70-p455-H3で2回ワクチン接種した動物(2×EHV-1)、または不活性化ブタIAVワクチンで2回ワクチン接種した動物(2×死菌)。
【
図17A】ウイルス力価:チャレンジ後ワクチン接種されたまたはワクチン接種されていないブタの肺試料のウイルス負荷量を示すグラフである。Inact=市販の不活性化ワクチン。EHV=rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3
【
図17B】ウイルス力価:チャレンジ後ワクチン接種されたまたはワクチン接種されていないブタの肺試料のウイルス負荷量を示すグラフである。Inact=市販の不活性化ワクチン。EHV=rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3
【
図18】チャレンジの日に回収されたブタIAV H3チャレンジ株R452-14に対する動物血清の血清中和(SN)価の逆数を示すグラフである。20、検出限界。陰性対照群(neg.ctrl.)、チャレンジ対照群(chall.ctrl.)、RacH-SE-70-p455-H3で1回ワクチン接種した動物(1×EHV-1)、RacH-SE-70-p455-H3で2回ワクチン接種した動物(2×EHV-1)、または不活性化ブタIAVワクチンで2回ワクチン接種した動物(2×死菌)。
【
図19】rEHV-1-ΔORF43-HAウイルスを感染させたST-43-CO(上のパネル)および非補完ST細胞(下のパネル)によるIFAアッセイを示す図である。感染細胞はEHV-1(左のパネル)およびHAタンパク質(右のパネル)を発現するが、ウイルスは拡散し、rEHV-1-ΔORF43-HAウイルスを感染させたST-43-CO細胞においてのみCPEが観察された。
【
図20】対照およびrEHV-1-ΔORF43-HAウイルスワクチン接種したブタ(各群5匹のブタ)からの血清によるHIアッセイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、先行技術につきものの問題を解決し、当技術の状態の明らかな進歩を提供する。
【0014】
本発明は、ウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えばEHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9、より具体的には、ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的には、UL18および/またはUL8の不活性化を含むRacH株にさらに関する。
一般に、本発明は、複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター、好ましくは、UL18および/またはUL8の不活性化を含むRacH株を提供する。
有利なことには、本明細書に記載のEHVベクターは複製欠損表現型である。そのような複製欠損EHVベクターワクチンは宿主動物内で複製せず、ある動物から別の動物に拡散せず、したがって、安全性または制御の目的のためには有利である。
本発明のベクターの一態様では、UL18が不活性化される。
本発明のベクターの別の態様では、UL8が不活性化される。
本発明のベクターの別の態様では、UL18およびUL8が不活性化される。
不活性化UL18およびUL8
本発明のベクターの別の態様では、UL18の不活性化は、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である。
本発明のベクターの別の態様では、UL8の不活性化は、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である。
本発明のベクターの別の態様では、UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)が不活性化される。
本発明のベクターの別の態様では、UL18の開始コドン(ATG)の前記不活性化は、欠損、置換、逆位または挿入である。
本発明のベクターの別の態様では、UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)が不活性化される。
本発明のベクターの別の態様では、UL8の開始コドン(ATG)の前記不活性化は、欠損、置換、逆位または挿入である。
【0015】
不活性化UL18
本発明のベクターの別の態様では、UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)の5’末端から少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている。
【0016】
本発明のベクターの別の態様では、UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)のA、T、またはGから少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている。
【0017】
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドがUL18内で欠損、置換または逆位を生じている。
本発明のベクターの別の態様では、配列番号1に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL18内で欠損、置換、または逆位を生じている。
【0018】
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチドがUL18内に挿入されている。
【0019】
不活性化UL8
本発明のベクターの別の態様では、UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)の5’末端から少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている。
【0020】
本発明のベクターの別の態様では、UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)のA、T、またはGから少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている。
【0021】
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドがUL8内で欠損、置換または逆位を生じている。
本発明のベクターの別の態様では、配列番号2に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL8内で欠損、置換、または逆位を生じている。
【0022】
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチドがUL8内に挿入されている。
【0023】
発現カセット
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号5およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号9およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに
(iii)配列番号6およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号10およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域
を含む発現カセットを含む。
【0024】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号5およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号9およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに
(iii)配列番号6およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号10およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域
を含む発現カセットを含む。
【0025】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号11およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、ならびに
(iii)配列番号12およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域
を含む発現カセットを含む。
【0026】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号11およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、ならびに
(iii)配列番号12およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域
を含む発現カセットを含む。
本発明のベクターの別の態様では、発現カセットの挿入がUL18および/またはUL8を不活性化する。
【0027】
UL18への発現カセットの挿入による欠損
本発明のベクターの別の態様では、UL18への発現カセットの挿入は、RacH(配列番号1)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL18内のおよそ945bp部分の欠損によって特徴づけられる。
UL8への発現カセットの挿入による欠損
本発明のベクターの別の態様では、UL8への発現カセットの挿入は、RacH(配列番号2)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL8内のおよそ2256bp部分の欠損によって特徴づけられる。
【0028】
UL18の隣接領域
本発明のベクターの別の態様では、EHVは、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、およびこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVは、(i)配列番号5および配列番号9からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに(ii)配列番号6および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域を含む。
【0029】
UL8の隣接領域
本発明のベクターの別の態様では、EHVは、配列番号11および配列番号12、ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVは、(i)配列番号11からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、および(ii)配列番号12からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域を含む。
【0030】
本発明は、ウイルスベクターゲノムにおける特定の標的部位への、好ましくはEHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターのUL18および/またはUL8部位への相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記参照)のための隣接領域を含むプラスミドにさらに関する。
組換えEHV
本発明のベクターの別の態様では、前記EHVベクターは非天然型および/または組換えEHVである。
複製欠損の機能定義
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が少なくとも90%低減されていることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が少なくとも95%低減されていることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が少なくとも99%低減されていることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が少なくとも99.5%低減されていることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が少なくとも99.75%低減されていることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損は複製率が完全に消失していることを意味する。
本発明のベクターの別の態様では、複製率はTCID50アッセイによって測定される。
本発明のベクターの別の態様では、複製欠損EHVベクターは依然として感染性である。
【0031】
有利なことには、本明細書に記載のEHVベクターは複製欠損表現型であるが、依然として感染性である。感染性は、十分な免疫応答を提供するためにウイルスワクチンが宿主細胞に感染しなければならないため必要である。特に、感染性は外来抗原を発現するウイルスベクターワクチンに必要である。
【0032】
本発明のベクターの別の態様では、EHVは依然として感染性であり、感染した真核細胞株において複製できるが、補完細胞株においてのみ複製可能ウイルスとしてパッケージされ得る。有利なことに、ウイルスDNAおよびウイルスタンパク質は宿主において依然として産生され、したがって、本発明の複製欠損EHVは依然として免疫応答および/または保護免疫を誘導する。有利なことに、本発明のデータは、本発明の複製欠損EHVウイルスにおいてタンパク質発現(マーカータンパク質発現)が依然として起こることを示す。
【0033】
UL56またはUS4への挿入
本発明のベクターのさらに特定の態様では、前記EHVベクターは、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列をさらに含む。一態様では、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、例えばIRES/2aペプチドを介して、同じ挿入部位UL18および/またはUL8に挿入されている。別の態様では、前記ベクターまたは発現カセットは、別の挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入されている、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL18および/またはUL8の不活性化、ならびにUL56および/またはUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL18の不活性化、およびUL56に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(一価のワクチン)。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL18の不活性化、およびUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(一価のワクチン)。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL8の不活性化、およびUL56に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(一価のワクチン)。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL8の不活性化、およびUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(一価のワクチン)。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL18の不活性化、ならびにUL56およびUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(二価のワクチン)。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターはUL8の不活性化、ならびにUL56およびUS4に挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む(二価のワクチン)。
【0034】
本発明は、ウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えばEHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9、より具体的には、ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的には、UL18および/またはUL8に挿入された目的の第1のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは抗原コード配列、ならびに少なくとも1つのさらなる挿入部位、好ましくはUL56(ORF1/3)および/またはUS4(ORF70)に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは別の抗原コード配列を含むRacH株にさらに関する。本発明の前記EHVベクターの特定の態様では、少なくとも2つの目的の遺伝子は、制御配列、好ましくはプロモーター配列に作動可能に連結される。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、2つまたはそれ以上の挿入部位に挿入された、2つまたはそれ以上の目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む。
【0035】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56および/またはUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18および/またはUL8の不活性化を含む。
【0036】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18の不活性化を含む。
【0037】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18の不活性化を含む。
【0038】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18の不活性化を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL8の不活性化を含む。
【0039】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL8の不活性化を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL8の不活性化を含む。
【0040】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18およびUL8の不活性化を含む。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18およびUL8の不活性化を含む。
【0041】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、挿入された少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、および少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列(または同じものを含む発現カセット)、およびUL56およびUS4に挿入された少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を挿入することによるUL18およびUL8の不活性化を含む。
US4(ORF70)
本発明のベクターの別の態様では、US4への挿入は、US4における部分欠損、トランケーション、置換、改変等によって特徴づけられ、ここでUS5は機能性を維持する。
【0042】
本発明のベクターの別の態様では、US4への挿入は、RacH(配列番号24)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUS4内のおよそ801bp部分の欠損によって特徴づけられる。
本発明のベクターの特定の態様では、US4(ORF70)への挿入は、US4(ORF70)における部分欠損、トランケーション、置換、改変等によって特徴づけられるが、US5(ORF71)は機能性を維持する。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号22ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む。
【0043】
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、(i)配列番号17、配列番号19、および配列番号21からなる群から選択される少なくとも1つの左US4隣接領域、ならびに(ii)配列番号18、配列番号20、および配列番号22からなる群から選択される少なくとも1つの右US4隣接領域を含む。
ヌクレオチド配列および病原体
本発明のベクターの別の態様では、目的の前記ヌクレオチド配列は組換えおよび/または異種性および/または外来性である
本発明のベクターの別の態様では、前記抗原コード配列は、ブタ、ウシもしくは家禽などの食物生産動物またはネコ、ウマもしくはイヌなどの伴侶動物に感染する病原体に関する。
【0044】
本発明のベクターの別の態様では、抗原コード配列は、限定はされないが、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である。
【0045】
本発明のベクターまたは発現カセットの特定の態様では、前記抗原コード配列はブタに感染する病原体に関する。さらなる特定の態様では、前記病原体は、ブタA型インフルエンザウイルス(IAV)である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、ヘマグルチニン(HA)抗原であり、特に前記ヘマグルチニン抗原はA型インフルエンザウイルスに由来する。例えば、A型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/116114/2010(H1N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))、および/またはA型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/4675/2003(H1N2))である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、配列番号14によってコードされる配列を含むまたはからなる。別の特定の態様では、前記抗原は、配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を含むまたはからなる。
制御配列およびプロモーター
本発明のベクターの別の態様では、目的の遺伝子は、制御配列、好ましくはプロモーター配列に作動可能に連結される。
【0046】
本発明のベクターの別の態様では、目的の配列または遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列は、限定はされないが、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、ポリメラーゼIIプロモーター、機能的断片からなる群から選択される。
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列は、MCMVまたはその機能的断片またはそれらの相補性ヌクレオチド配列である。
本発明のベクターの別の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列は、UL8またはUL18の内在性プロモーターである。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9からなる群から選択される。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、EHV-1、好ましくは、RacHである。
【0047】
本発明は:
a.UL18および/またはUL8に挿入された目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列、
b.制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結されてもよい前記目的の第1のヌクレオチド配列、
c.(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結されてもよい前記目的の第1のヌクレオチド配列
を含む本発明に記載のEHVベクターにさらに関する。
【0048】
特定の態様では、EHVベクターは、
a.第2の挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4への、目的の第2のヌクレオチド配列、好ましくは目的の第2の遺伝子、例えば抗原コード配列
b.制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結されてもよい前記目的の第2のヌクレオチド配列、
c.制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結されてもよい前記目的の第2のヌクレオチド配列
をさらに含む。
【0049】
本発明は、
a.不活性化UL18および/またはUL8;
b.UL56および/またはUS4に挿入された目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列
c.制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結されてもよい前記目的の第1のヌクレオチド配列、
d.(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結されてもよい前記目的の第1のヌクレオチド配列
を含む本発明に記載のEHVベクターにさらに関する。
宿主細胞
さらに、本発明は、本明細書に記載の複製欠損EHVベクターを含むことを特徴とする哺乳動物宿主細胞を提供する。
本発明は、本発明に記載のベクターを含むことを特徴とする哺乳動物宿主細胞にも関する。
【0050】
本発明は、
a.本発明に記載のベクターを、本発明に記載の哺乳動物宿主細胞に感染させるステップ、
b.感染細胞を好適な条件下で培養するステップ
によって特徴づけられ、
c.前記宿主細胞を回収するステップ
によって特徴づけられていてもよい、宿主細胞を調製する方法にさらに関する。
本発明は、免疫原性組成物またはワクチンの製造のための、本発明に記載のベクターまたは本発明に記載の哺乳動物宿主細胞の使用にさらに関する。
補完細胞株
さらに、本発明は、本明細書に記載の複製欠損EHVベクターを培養するためのEHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現する細胞株を提供する。
さらに、本発明は、EHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を含む発現カセットを含むプラスミドを含む細胞株であって、UL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現している細胞株を提供する。
【0051】
本発明の細胞株の別の態様では、細胞株は、限定はされないが、Vero細胞、RK-13(ウサギ腎臓)、ST(ブタ睾丸)、MDCK(メイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞)、MDBK(メイディン・ダービー・ウシ腎臓細胞)およびウマ真皮細胞(NBL-6)の群から選択される。
本発明の細胞株の別の態様では、細胞株はST細胞株である。
産生方法
さらに、本発明は、本明細書に記載の不活性化UL18および/またはUL8を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生する方法を提供する。
【0052】
さらに、本発明は:
a)野生型EHVまたは弱毒化EHVを提供するステップ;
b)ステップa)のEHVのUL18および/またはUL8を不活性化するステップならびに完全UL18および/またはUL8またはUL18および/またはUL8の機能性部分を持たないEHVクローンを選択するステップ;
c)UL18および/またはUL8またはその機能性部分を発現する補完細胞株を提供するステップ;
d)ステップb)からのEHVをステップc)からの補完細胞株と培養することによって複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を得るステップ
を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生する方法を提供する。
【0053】
本発明は、
a.目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列をUL18および/またはUL8に挿入するステップ
を含み、
b.前記目的の第1のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結するステップ、
を含み、
c.前記目的の第1のヌクレオチド配列を、(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結するステップ
を含んでもよい、本発明に記載のベクターを産生する方法にさらに関する。
【0054】
特定の態様では、方法は、
a.目的の第2のヌクレオチド配列、好ましくは目的の第2の遺伝子、例えば抗原コード配列を第2の挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入するステップ
を含み、
b.前記目的の第2のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結するステップ、
c.前記目的の第2のヌクレオチド配列を、制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結するステップ
をさらに含んでもよい。
【0055】
本発明は:
a.EHVのUL18および/またはUL8を不活性化するステップ;
b.目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列をUL56および/またはUS4に挿入するステップ
を含み、
c.前記目的の第1のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列と作動可能に連結するステップ、
d.前記目的の第1のヌクレオチド配列を、(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pAまたはBGHpAと作動可能に連結するステップ
を含んでもよい、本発明に記載のベクターを産生する方法にさらに関する。
【0056】
本発明は、
a.本発明に記載のベクターを、本発明に記載の補完細胞株に感染させるステップ、
b.感染細胞を好適な条件下で培養するステップ、
c.感染細胞培養を回収するステップ
を含み、
d.ステップc)の回収した感染細胞培養を精製するステップ
e.前記回収した感染細胞培養を薬学的に許容される担体と混合するステップ
を含んでもよい、感染と関連するまたは感染によって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率または重症度を低減するための免疫原性組成物またはワクチンの調製の方法にさらに関する。
ワクチン
さらに、本発明は、本明細書に記載の1つまたは複数のEHVベクターを含む免疫原性組成物を提供する。
本発明の免疫原性組成物の別の態様では、前記免疫原性組成物は薬学的に許容される担体をさらに含む。
本発明の免疫原性組成物の別の態様では、前記免疫原性組成物はワクチンである。
【0057】
したがって、本発明は、
a.本発明に記載のベクター、および/または
b.例えばウイルス、改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)等の本発明に記載のベクターによって発現されるポリペプチド
を含み、
c.薬学的または獣医学的に許容される担体または賦形剤
を含んでもよく、
好ましくは前記担体が、経口、皮内、筋肉内または鼻腔内適用に好適であり、
好ましくは前記免疫原性組成物がウイルスを含む、
免疫原性組成物にさらに関する。特定の態様では、前記ウイルスは感染性ウイルスである。
【0058】
本発明は、
a.本発明に記載のベクター、および/または
b.例えば改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)等の、本発明に記載のベクターによって発現されるポリペプチド、および
c.薬学的にまたは獣医学的に許容される担体または賦形剤を含み、好ましくは前記担体が経口、皮内、筋肉内、または鼻腔内適用に好適であり、
d.前記ワクチンがアジュバントをさらに含んでもよい、
ワクチンまたは医薬組成物にさらに関する。
処置および使用の方法
さらに、本発明は、本明細書に記載の免疫原性組成物をそのような対象に投与するステップを含む、対象を免疫する方法を提供する。
さらに、本発明は、必要とする対象において病原体によって引き起こされる臨床徴候を処置または防止する方法であって、本明細書に記載の治療有効量の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。
本発明は、前記免疫原性組成物をそのような対象に投与するステップを含む、対象を免疫するための方法で使用するための本明細書に記載の免疫原性組成物を提供する。
本発明は、必要とする対象において病原体によって引き起こされる臨床徴候を処置または防止する方法であって、治療有効量の前記免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法で使用するための本明細書に記載の免疫原性組成物を提供する。
本発明の方法または使用の別の態様では、前記対象は、ブタ、ウシ、家禽、ネコ、ウマおよびイヌからなるリストから選択される。
本発明の方法または使用の別の態様では、免疫原性組成物は1回投与される。
本発明の方法または使用の別の態様では、免疫原性組成物は2回またはそれ以上の投与で投与される。
【0059】
本発明は、
a)前記動物にワクチンを投与することができるディスペンサー;および
b)本発明に記載の免疫原性組成物またはワクチン
を含み、
c)指示リーフレット
を含んでもよい、動物において病原体と関連する疾患に対して、動物、好ましくはブタもしくはウシなどの食物生産動物またはネコ、ウマもしくはイヌなどの伴侶動物にワクチン接種するための、および/または動物において病原体と関連するまたは病原体によって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率または重症度を低減するためのキットにも関する。
本発明は、本発明に記載のベクターからなり、トランスフェクション試薬および指示リーフレットからなっていてもよいキットにさらに関する。
【0060】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、出願時に本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。用語の意味および範囲は、明らかであるはずであるが、あらゆる潜在的な多義性がある場合には、本明細書で提供した定義は、任意の辞書の定義または外部の定義よりも優先される。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。本明細書では、特に言及しない限り、「または(or)」の使用は「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」など他の形態の使用は限定されない。本明細書で参照した全ての特許および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
本発明の実施は、他に示さない限り、当技術分野の範囲内である、ウイルス学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、タンパク質化学、および免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は文献で完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vols. I and II (D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R. K. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL press, 1986);Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the series, Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Protein purification methods - a practical approach (E.L.V. Harris and S. Angal, eds., IRL Press at Oxford University Press);およびHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照。
【0062】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定のDNA、ポリペプチド配列またはプロセスのパラメーターに限定されず、当然変化し得るものと理解される。本明細書で使用する用語は、単に本発明の特定の実施形態を記載する目的のためであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が特に明確に規定しない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「抗原(an antigen)」という言及は2つまたはそれ以上の抗原の混合物を含み、「賦形剤(an excipient)」という言及は2つまたはそれ以上の賦形剤の混合物を含むなどである。
【0063】
分子生物学定義
用語「ベクター」は、当技術分野で公知のように、遺伝材料を宿主細胞に伝達するために使用されるポリヌクレオチド構築物、典型的にはプラスミドまたは細菌人工染色体を指す。ベクターは、例えば、細菌、ウイルス、ファージ、細菌人工染色体、コスミド、またはプラスミドであってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、DNAまたはRNAのいずれかから構成されるまたはDNAまたはRNAのいずれかを含有することができる。いくつかの実施形態では、ベクターはDNAから構成される。いくつかの実施形態では、ベクターは感染性ウイルスである。そのようなウイルスベクターは、細胞培養でも宿主動物でもウイルスベクターの複製に機能を持たない外来遺伝子を有するように操作されたウイルスゲノムを含有する。本開示の特定の態様に従って、ベクターは、遺伝材料の単なる伝達、宿主細胞または生物のトランスフェクションのため、ワクチン、例えばDNAワクチンとしての使用のため、または遺伝子発現目的のためなど、様々な態様のために使用され得る。遺伝子発現は、遺伝子と呼ばれる特定のポリヌクレオチド配列によって導かれるように細胞におけるタンパク質の生合成を記載する用語である。特定の態様では、ベクターは、適切な環境に存在する場合に、ベクターが有する1つまたは複数の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を導くことができるベクターである「発現ベクター」であってよい。
【0064】
ベクターおよび発現のためにベクター(または組換え体)を作製および/または使用する方法は、特に、米国特許第4,603,112号、第4,769,330号、第5,174,993号、第5,505,941号、第5,338,683号、第5,494,807号、第4,722,848号、第5,942,235号、第5,364,773号、第5,762,938号、第5,770,212号、第5,942,235号、第382,425号、PCT国際公開第94/16716号、国際公開第96/39491号、国際公開第95/30018号、Paoletti, "Applications of pox virus vectors to vaccination: An update, "PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996;Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996;Smith et al., U.S. Pat. No. 4,745,051(recombinant baculovirus);Richardson, C. D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovirus Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.);Smith et al., "Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector", Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165;Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, "Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol. 4, No. 3, p. 406;EPA0370573;米国特許出願第920,197号、1986年10月16日出願;欧州特許出願公開第265785号;米国特許第4,769,331号(組換えヘルペスウイルス);Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 93:11307-11312, October 1996;Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors," PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996;Robertson et al., "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes", PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996;Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996;Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991;米国特許第5,591,439号、第5,552,143号;国際公開第98/00166号;両方とも1996年7月3日に出願された、許可された米国特許出願第08/675,556号、および第08/675,566号(組換えアデノウイルス);Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993;Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990;Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 42434;PCT WO91/11525;Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561, Science, 259: 1745-49, 1993;およびMcClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease", PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996;および米国特許第5,591,639号、第5,589,466号、および第5,580,859号、ならびに国際公開第90/11092号、国際公開第93/19183号、国際公開第94/21797号、国際公開第95/11307号、国際公開第95/20660号;Tang et al., Nature, and Furth et al., Analytical Biochemistry, relating to DNA expression vectorsに開示の方法によるまたは類似してよい。また、国際公開第98/33510号;Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998 (lentiviral expression system);Sanford et al.,米国特許第4,945,050号;Fischbachet al. (Intracel);国際公開第90/01543号;Robinson et al., Seminars in Immunology vol. 9, pp. 271-283 (1997), (DNA vector systems);Szoka et al.,米国特許第4,394,448号(生細胞にDNAを挿入する方法);McCormick et al.,米国特許第5,677,178号 (細胞変性ウイルスの使用);および米国特許第5,928,913号(遺伝子送達のためのベクター);ならびに本明細書で引用した他の文献も参照。
【0065】
用語「ウイルスベクター」は宿主細胞にそれが入り込むと特定の生物活性、例えばベクターによって運ばれた導入遺伝子の発現をもたらすように、組換えDNA技術によって操作された遺伝子改変ウイルスを記載する。特定の態様では、導入遺伝子は抗原である。ウイルスベクターは標的細胞、組織、または生物において複製可能であってもなくてもよい。
【0066】
ウイルスベクターの生成は、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. (1989)) or K. Maramorosch and H. Koprowski (Methods in Virology Volume VIII, Academic Press Inc. London, UK (2014))に記載されるように、限定はされないが、制限エンドヌクレアーゼによる消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、DNAシーケンシング、細胞培養へのトランスフェクションの標準的な技術を含む、当技術分野で周知の好適な遺伝子工学技術を使用して達成され得る。
ウイルスベクターは、任意の公知の生物のゲノムからの配列を組み込むことができる。配列は、それらの自然な形態に組み込まれることができ、または任意の方法で改変され、所望の活性を得ることができる。例えば、配列は、挿入、欠損または置換を含むことができる。
【0067】
ウイルスベクターは2つまたはそれ以上の目的のタンパク質のコード領域を含むことができる。例えば、ウイルスベクターは、目的の第1のタンパク質のコード領域および目的の第2のタンパク質のコード領域を含むことができる。目的の第1のタンパク質および目的の第2のタンパク質は同じまたは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、目的の第3または第4のタンパク質のコード領域を含むことができる。目的の第3および第4のタンパク質は同じまたは異なっていてもよい。1つのウイルスベクターによってコードされる目的の2つまたはそれ以上のタンパク質の全長は異なり得る。例えば、2つまたはそれ以上のタンパク質の全長は、少なくとも約200アミノ酸であってよい。少なくとも約250アミノ酸、少なくとも約300アミノ酸、少なくとも約350アミノ酸、少なくとも約400アミノ酸、少なくとも約450アミノ酸、少なくとも約500アミノ酸、少なくとも約550アミノ酸、少なくとも約600アミノ酸、少なくとも約650アミノ酸、少なくとも約700アミノ酸、少なくとも約750アミノ酸、少なくとも約800アミノ酸、またはそれ以上。
好ましいウイルスベクターは、EHV-1またはEHV-4またはPrV(仮性狂犬病ウイルス)またはBHV-1(ウシヘルペスウイルス1)のような他のバリセロウイルス由来などのヘルペスウイルスベクターを含む。
【0068】
本開示の特定の態様に従って、用語「ウイルスベクター」または代わりに「ウイルス構築物」は、EHV-1、EHV-4などのヘルペスウイルス科から選択されるウイルス由来の組換えウイルス構築物を指す。好ましいウイルスベクターは、EHV-1またはEHV-4に由来するなどのヘルペスウイルスベクターを含む。
用語「ウイルスベクター」および「ウイルス構築物」は交換可能に使用することができる。
用語「構築物」は、本明細書で使用する場合、人工的に生成されたプラスミド、BAC、または組換えウイルスなどの組換え核酸を指す。
【0069】
用語「プラスミド」は、細菌宿主細胞内の細菌染色体とは独立して複製する細胞質のDNAを指す。本発明の特定の態様では、用語「プラスミド」および/または「トランスファープラスミド」は、例えばウイルスベクターへの挿入のための発現カセットの構築に有用な組換えDNA技術のエレメントを指す。別の特定の態様では、用語「プラスミド」は、DNAワクチン接種目的のために有用なプラスミドを特定するために使用され得る。
本明細書で使用される場合、用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能であり任意の核酸を指す。
【0070】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「RNA配列」または「DNA配列」は、本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよびその断片および部分、ならびにゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNAを指し、それらは一本鎖または二本鎖であってよく、センスまたはアンチセンス鎖を表してよい。配列は、非コード配列、コード配列、または両方の混合であってよい。本発明の核酸配列は、当業者に周知の標準的な技術を使用して調製され得る。
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、5つの生物学的に生じる塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基から構成される核酸も特別に含む。
【0071】
用語「制御核酸」、「制御エレメント」および「発現調節エレメント」は交換可能に使用され、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現に影響し得る核酸分子を指す。これらの用語は、プロモーター、プロモーター配列、RNAポリメラーゼと転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメント、上流エレメント、エンハンサーおよび応答エレメントを含む、転写を促進または制御する全てのエレメントに広く使用され、全てのエレメントをカバーする。原核生物における例示的な制御エレメントは、プロモーター、オペレーターシーケンスおよびリボソーム結合部位を含む。真核細胞において使用される制御エレメントは、限定はされないが、転写および翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル、配列内リボソーム進入部位(IRES)、ピコルナウイルス2A配列等を含むことができ、コード配列の発現および/または宿主細胞におけるコードポリペプチドの産生を提供および/または制御する。
【0072】
「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、IRESの5’の遺伝子に非依存的に翻訳開始を機能的に促進し、動物細胞において2つのシストロン(オープンリーディングフレーム)が単一の転写物から翻訳されるようにする配列を記載する。IRESは、そのすぐ下流のオープンリーディングフレームの翻訳のための非依存的なリボソーム進入部位を提供する。ポリシストロニックであり得る、すなわちmRNAから順に翻訳されるいくつかの異なるポリペプチドをコードする細菌mRNAとは異なり、動物細胞のほとんどのmRNAは、モノシストロニックであり1つのポリペプチドのみの合成のためにコードする。真核細胞におけるポリシストロニック転写により、翻訳は翻訳開始部位の最も5’側から開始され、最初の終止コドンで終結され、転写物はリボソームから放出され、mRNAにおいて最初にコードされたポリペプチドのみの翻訳をもたらす。真核細胞では、転写物の第2のまたは続くオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたIRESを有するポリシストロニック転写は、その下流のオープンリーディングフレームの連続的な翻訳を可能にし、同じ転写物によってコードされた2つまたはそれ以上のポリペプチドを産生する。IRESは様々な長さであってよく、例えば、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、ピコルナウイルス(例えば、口蹄疫ウイルス、FMDVまたはポリオウイルス(PV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)など、様々な起源由来であってよい。ベクター構築物における様々なIRES配列およびそれらの使用が記載され、当技術分野で周知されている。下流のコード配列は、下流の遺伝子の発現にネガティブに影響しないであろう任意の距離でIRESの3’端に作動可能に連結されている。IRESと下流の遺伝子の始まりの間の最適なまたは許容的な距離は、距離を変化させ、距離の関数として発現を測定することによって容易に決定することができる。
【0073】
用語「2a」または「2aペプチド」は、リボソームスキッピングとして定義されたプロセスによって、翻訳の際にタンパク質間の切断を媒介することができるリンカーとして機能する短いオリゴペプチド配列を意味し、2aおよび「2a様」と記載される。そのような2aおよび「2a様」配列(ピコナウイルス科および他のウイルスまたは細胞配列に由来する)は、複数の遺伝子配列を単一の遺伝子に鎖状につなぐために使用され、同じ細胞内でのそれらの共発現を確実にすることができる(Luke and Ryan, 2013参照)。
【0074】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」または「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼの結合を許容し、遺伝子の転写を導くヌクレオチド配列を意味する。典型的には、プロモーターは、遺伝子の5’非コード領域、遺伝子の転写開始部位の近位に位置する。転写の開始に機能するプロモーター内の配列エレメントは、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴づけられることが多い。プロモーターの例としては、限定はされないが、細菌、酵母、植物、ウイルス、および哺乳動物(ウマ、ブタ、ウシおよびヒトを含む)などの動物、トリまたは昆虫由来のプロモーターが挙げられる。プロモーターは、誘導性、抑圧可能、および/または構成的であり得る。誘導性プロモーターは、温度の変化など、培養条件のいくつかの変化に応じてそれらの調節下でDNAからの転写のレベルの増加を開始する(Ptashne, 2014)。当業者に周知のプロモーターの例は、例えば、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、ポリメラーゼIIプロモーターである。
【0075】
用語「エンハンサー」は、cis位置にあるポリヌクレオチド配列を意味し、プロモーターの活性に作用し、したがって、このプロモーターに機能的に結合した遺伝子またはコード配列の転写を刺激する。プロモーターとは異なり、エンハンサーの効果は位置および方向に非依存的であり、したがってそれらは、イントロン内またはコード領域内でさえも転写ユニットの前または後に位置することができる。エンハンサーは、転写ユニットのすぐ近くとプロモーターからかなり距離のある位置の両方に位置し得る。プロモーターと物理的および機能的なオーバーラップを有することもできる。当業者は、様々な起源由来の(およびGenBankなどのデータバンクに寄託された、例えばSV40エンハンサー、CMVエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー)多くのエンハンサーを把握しており、それらは非依存的なエレメントまたはポリヌクレオチド配列内にクローニングされたエレメントとして利用可能である(例えば、ATCCに寄託され、または市販され、および個々の起源)。多くのプロモーター配列はまた、頻繁に使用されるCMVプロモーターなどのエンハンサー配列も含有する。ヒトCMVエンハンサーは、これまでに同定された最も強いエンハンサーの1つである。誘導性エンハンサーの1つの例は、メタロチオネインエンハンサーであり、グルココルチコイドまたは重金属によって刺激され得る。
【0076】
用語「相補的ヌクレオチド配列」は、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドの2対の鎖の1つの鎖を記載する。相補的な鎖のヌクレオチド配列は、各アデノシンはチミン(またはRNAの場合はウラシル)、各グアニンはシトシン、逆もまた同様になるように、その対の鎖のヌクレオチド配列を写す。例えば、5’-GCATAC-3’の相補的ヌクレオチド配列は3’-CGTATG-5’、またはRNAの場合は3’-CGUAUG-5’である。
【0077】
用語「遺伝子」、「目的の遺伝子」は、本明細書で使用する場合、同じ意味を有し、目的の産物をコードする任意の長さのポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、コード配列の前(5’非コードまたは非翻訳配列)および後(3’非コードまたは非翻訳配列)に制御配列をさらに含んでよい。選択された配列は全長またはトランケート、融合、またはタグ化遺伝子であってよく、cDNA、ゲノムDNA、またはDNA断片であってよい。ポリペプチドまたはRNAをコードするゲノムDNAは、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)からスプライシングされ、したがって、同じポリペプチドまたはRNAをコードするcDNAには存在しない、非コード領域(すなわち、イントロン)を含み得ることが通常理解される。それは、天然配列、すなわち自然発生的な形態であってよく、または変異され、または異なる起源由来の配列を含んでもよく、そうでなければ所望のように改変されてもよい。これらの改変は、選択された宿主細胞またはタグ付けにおけるコドン利用を最適化するコドン最適化を含む。さらに、それらは、例えば(潜在性の)スプライスドナー、アクセプター部位および枝分かれ点、ポリアデニル化シグナル、TATAボックス、chi部位、リボソーム進入部位、繰り返し配列、二次構造(例えば、ステムループ)、転写因子または他の制御因子の結合部位、制限酵素部位等のcis作用性部位の除去または付加を含み、限定はされないが、わずかな例を挙げることができる。選択された配列は、分泌、細胞質、核、膜結合または細胞表面ポリペプチドをコードすることができる。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「目的のヌクレオチド配列」は、それが必ずしも遺伝子を含まないが、遺伝子または他の遺伝情報のエレメントまたは部分、例えばori(複製オリジン)を含み得るため、目的の遺伝子よりも、より一般的な用語である。目的のヌクレオチド配列は、それがコード配列を含むかどうかに非依存的な任意のDNAまたはRNA配列であり得る。
「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、翻訳開始シグナルまたはATGもしくはAUGなどの開始コドン、および終止コドンを含み、ポリペプチド配列に潜在的に翻訳され得る、DNAまたはRNAのいずれかの核酸配列の長さを指す。
用語「UL(長いユニーク)」は、EHVゲノム、好ましくはEHV-1ゲノムの長いユニーク断片を記載する略語である。
用語「US(短いユニーク)」は、EHV-1ゲノム、好ましくはEHV-1ゲノムの短いユニーク断片を記載する略語である。
用語「転写」は、細胞でのmRNAの生合成を記載する。
【0079】
用語「発現」は、本明細書で使用する場合、宿主細胞内での核酸配列の転写および/または翻訳を指す。本発明の特定の態様に従って、用語「発現」は、宿主細胞内での異種および/または外来性核酸配列の転写および/または翻訳を指す。宿主細胞における所望の産物の発現レベルは、細胞に存在する相当するRNAまたはmRNAの量、または選択された配列によってコードされる所望のポリペプチドの量のいずれかに基づいて決定され得る。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNAプロテクション、細胞内RNAのin situハイブリダイゼーションによって、またはRTqPCR(逆転写後の定量的PCR)によって定量され得る。選択された配列から発現されたタンパク質は、様々な方法、例えばELISAによって、ウェスタンブロットによって、ラジオイムノアッセイによって、免疫沈降によって、タンパク質の生物活性のアッセイによって、またはタンパク質の免疫染色後のFACS解析によって定量され得る。
【0080】
用語「発現カセット」または「転写ユニット」または「発現ユニット」は、転写される1つまたは複数の遺伝子を含有するベクター、構築物またはポリヌクレオチド配列内の領域を定義し、転写される遺伝子をコードするヌクレオチド配列ならびに発現カセット内に含有される制御エレメントを含有するポリヌクレオチド配列が、互いに作動可能に連結されている。それらは、プロモーターから転写され、転写は、少なくとも1つのポリアデニル化シグナルによって終結される。1つの特定の態様では、それらは1つの単一のプロモーターから転写される。結果として、異なる遺伝子は少なくとも転写的に連結されている。1つより多くのタンパク質または産物は転写され、各転写ユニット(マルチシストロン転写ユニット)から発現される。各転写ユニットは、ユニット内に含有される任意の選択された配列の転写および翻訳に必要な制御エレメントを含むであろう。各転写ユニットは、同じまたは異なる制御エレメントを含有し得る。例えば、各転写ユニットは、同じターミネーターを含有してもよく、IRESエレメントまたはイントロンは、転写ユニット内での遺伝子の機能的な連結に使用され得る。ベクターまたはポリヌクレオチド配列は1つより多くの転写ユニットを含有し得る。
【0081】
用語「発現増加」、「力価または生産性増加」または「発現または生産性改善」により、好適な対照との比較、例えば、cDNAによってコードされるタンパク質対イントロン含有遺伝子によってコードされるタンパク質による、宿主細胞に導入された異種および/または外来性配列、例えば治療タンパク質をコードする遺伝子の発現、合成または分泌の増加を意味する。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍または5倍増加した場合、力価または生産性増加がある。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍または少なくとも1.5倍または少なくとも2倍または少なくとも3倍増加した場合も、力価または生産性増加がある。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍~5倍、好ましくは1.5倍~5倍、より好ましくは2倍~5倍、特に好ましくは3倍~5倍増加した場合も、特別な力価または生産性増加がある。「発現増加」は、そのうえ、より多くの細胞が目的の遺伝子/配列を実際に発現することを意味し得る。例えば、発現増加は、本発明の新しいプロモーターが、他のプロモーターと比較して、ウイルス複製サイクル中により長い期間活性であることを意味し得る。
【0082】
発現、力価または生産性増加は、本発明に記載の異種ベクターを使用することによって得ることができる。これは、追加の選択可能マーカーとして、1つまたは複数の蛍光タンパク質(例えばGFP)または細胞表面マーカーを含有する組換え宿主細胞のFACSアシスト選択などの他の手法と組合せることができる。発現増加を得る他の方法、および使用することができる異なる方法の組合せも、例えばクロマチン構造(例えば、LCR、UCOE、EASE、アイソレーター、S/MARs、STARエレメント)の操作のためのcis活性エレメントの使用、(人工)転写因子の使用、内在性または異種および/または外来性遺伝子発現を上方制御するための天然または合成剤による細胞の処置、mRNAまたはタンパク質の安定性(半減期)の改善、mRNA翻訳の開始の改善、エピソーム性プラスミドの使用による遺伝子用量の増加(複製オリジンとしてウイルス配列の使用に基づく、例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、EBV、またはBPV)、DNAコンカテマーに基づく増幅促進配列またはin vitro増幅システムの使用に基づく。
用語「得られた」は、好ましくは沈殿、カラム等を使用する当業者に公知の単離および/または精製ステップを含み得る。
【0083】
「発現増加」を測定するためのアッセイは、LC-MS/MSベースのタンパク質測定、例えば、多重反応モニタリング(MRM);抗体ベースの検出方法、例えば、ウェスタンブロット、ドットブロット、または免疫拡散法、およびフローサイトメトリー;ならびに赤血球凝集反応アッセイによる生物活性の測定である。
「プロモーター活性」は、それぞれのプロモーターの調節下で転写されるmRNAの定量によって間接的に測定される。mRNAは、内因性の標準と比較して、RTqPCRによって定量される。
【0084】
用語「ウイルス力価」は、ウイルス調製物の容積当たりの感染ユニットの測定である。ウイルス力価は、生物学的手順のエンドポイントであり、並行して行った試験の特定の割合で効果を示す希釈率として定義される(Reed and Muench, 1938)。特に、1ミリリットル当たりの組織培養感染量50(TCID50/ml)は、その希釈率で並行して接種された細胞培養の数の50%が感染する、ウイルス調製物の希釈率を与える。
「転写制御エレメント」は、通常、発現される遺伝子配列の上流のプロモーター、転写開始および終結部位、およびポリアデニル化シグナルを含む。
用語「転写開始部位」は、転写一次産物、すなわちmRNA前駆体に組み込まれる最初の核酸に相当する構築物の核酸を指す。転写開始部位は、プロモーター配列とオーバーラップしてよい。
【0085】
「終結シグナル」または「ターミネーター」または「ポリアデニル化シグナル」または「ポリA」または転写終結部位」または「転写終結エレメント」は、真核生物のmRNAの3’端の特異的部位での切断、および切断された3’端での約100~200アデニンヌクレオチド(ポリAテイル)の配列の転写後組込みを引き起こし、したがって、RNAポリメラーゼに転写を終結させるシグナル配列である。ポリアデニル化シグナルは切断部位および下流に位置する配列の約10~30ヌクレオチド上流に配列AATAAAを含む。tk ポリA、SV40後期および初期ポリA、BGH ポリA(例えば、米国特許第5,122,458号に記載)またはハムスター増殖ホルモンポリA(国際公開第2010010107号)など、様々なポリアデニル化エレメントが公知である。
【0086】
「翻訳制御エレメント」は、発現される各個々のポリペプチドに翻訳開始部位(AUG)、終止コドンおよびポリAシグナルを含む。配列内リボソーム進入部位(IRES)は、いくつかの構築物に含まれてよい。発現を最適化するため、発現される核酸配列の5’-および/または3’-非翻訳領域を除去、付加、または変更し、転写または翻訳のいずれかのレベルで、発現を干渉または減少させ得る、任意の潜在的に余分で不適切な代わりの翻訳開始コドンまたは他の配列を除外することが得策であり得る。コンセンサスリボソーム結合部位(Kozak配列)は開始コドンのすぐ上流に挿入され、翻訳、したがって発現を増強することができる。このリボソーム結合部位周辺の増加A/U含量は、さらにリボソーム結合により効果的である。
【0087】
定義により、宿主細胞に挿入された全てのポリヌクレオチド配列または全ての遺伝子およびそれによりコードされるそれぞれのタンパク質またはRNAは、異なる(ウイルス)種に由来する場合、宿主細胞に対して、「外来性」、「外来性配列」、「外来性遺伝子」、「外来性コード配列」と呼ばれる。したがって、EHV-4ベースのプロモーターは、EHV-1ウイルスベクターを考慮して外来性である。抗原など目的の配列または遺伝子に関して本明細書で使用する場合、用語「外来性」は、目的の前記配列または遺伝子、特に前記抗原はその天然種の背景の外で発現されることを意味する。したがって、ブタIAV由来のHA抗原は、EHV-1ベクターに関して外来性の抗原の1つの例である。EHV-1以外の異なる病原体に由来する任意の配列は、したがって、本発明の特定の態様に記載の目的の外来配列もしくは遺伝子または抗原である。
【0088】
定義により、宿主細胞に挿入された全てのポリヌクレオチド配列または全ての遺伝子およびそれによりコードされるそれぞれのタンパク質またはRNAは、宿主細胞に対して、「異種、「異種配列」、「異種遺伝子」、「異種コード配列」、「導入遺伝子」または「異種タンパク質」と呼ばれる。これは、導入される配列または導入される遺伝子が、宿主細胞の内在性配列または内在性遺伝子と同一である場合でさえも適用する。例えば、異なる部位で、またはEHV-4野生型ウイルスにおいてよりも改変形態でEHV-4ウイルスベクターに導入されるEHV-4プロモーター配列は、定義により、異種配列である。抗原など目的の配列または遺伝子に関して本明細書で使用する場合、用語「異種」は、目的の前記配列または遺伝子、特に前記抗原は、その天然亜種の背景の外で発現されることを意味する。したがって、抗原、例えばEHV-1を除く任意のウマアルファヘルペスウイルス、例えばEHV-3、EHV-8由来の抗原など、目的の任意の非EHV-1特異的配列または遺伝子は、したがって、目的の異種配列もしくは遺伝子または本発明の特定の態様に記載の抗原である。
用語「非天然型」は、この文脈において天然には生じない抗原などの目的の任意の配列または遺伝子、例えば異なる種由来の抗原などの目的のハイブリッド配列もしくは配列もしくは遺伝子、または人工的な変異、挿入、欠損等により天然の産物ではない、抗原などの目的の配列もしくは遺伝子を意味する。
【0089】
用語「組換え」は、本発明の明細書を通して、用語「非天然型」、「異種」および「外来性」と交換可能に使用される。したがって、「組換え」タンパク質は、異種または外来性ポリヌクレオチド配列のいずれかから発現されるタンパク質である。ウイルスに関して使用される場合、用語組換えは、ウイルスゲノムの人工的な操作によって産生されるウイルスを意味する。外来性抗原コード配列など、異種または外来性配列を含むウイルスは、組換えウイルスである。用語組換えウイルスおよび用語非天然型ウイルスは、交換可能に使用される。
したがって、用語「異種ベクター」は、異種または外来性ポリヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。用語「組換えベクター」は、異種または組換えポリヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。
【0090】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結される」は、制御エレメントと遺伝子またはそのコード領域の間の接続を記載するために使用される。典型的には、遺伝子発現は、1つまたは複数の制御エレメント、例えば、限定はされないが、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的制御エレメント、およびエンハンサーの調節下に置かれる。遺伝子またはコード領域は、制御エレメントと「作動可能に連結される(operably linked to)」または「作動可能に連結される(operatively linked to)」または「作動可能に関連する(operably associated with)」と言われ、遺伝子またはコード領域が制御エレメントによって調節または影響されることを意味する。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。
さらに、本明細書の範囲内で、用語「機能的連結」、「機能的に連結された」または「作動可能に連結された」は、2つまたはそれ以上の核酸配列または配列エレメントが、それらが意図した方法で機能するように配置されることを意味する。例えば、cis位置で連結された遺伝子配列の転写を調節または調整することができる場合、ポロモーター/エンハンサーまたはターミネーターは、コード遺伝子配列に機能的に連結される。通常、必ずしもそうではないが、機能的に連結されたDNA配列は隣接し、2つのポリペプチドコード領域を合わせる必要がある場合または分泌シグナルペプチドの場合、隣接し、リーディングフレームである。しかしながら、作動可能に連結されたプロモーターは、通常、上流に位置し、作動可能に連結されたターミネーターは、通常、コード配列の下流に位置するが、必ずしもそれと隣接していない。エンハンサーは、それらがコード配列の転写を増加する限り、必ずしも隣接していない。このため、それらはコード配列の上流に位置することも、下流に位置することもあり、いくらか距離を隔てていることもある。ポリアデニル化部位は、コード配列を通ってポリアデニル化シグナルまで転写が進行するようにコード配列の3’端に位置する場合、コード配列に作動可能に連結される。連結は、例えば、好適な制限部位もしくは平滑末端でのライゲーションにより、または融合PCR法を使用することにより、当技術分野で公知の組換え方法によって達成される。合成オリゴヌクレオチドリンカーまたはアダプターは、好適な制限部位が存在しない場合、従来の実行と一致して使用され得る。
【0091】
したがって、プロモーター配列の、用語「機能的断片」または「機能的誘導体」は、断片または誘導体が依然としてプロモーター活性が有効であることを意味する。プロモーター活性を評価する方法の機能アッセイは当業者に周知である(Bustin 2000, Nolan et al. 2006)。そのような機能アッセイの例示的な実施形態としては、例えば、プロモーター動態実験が挙げられる。プロモーターまたはその断片がレポーター導入遺伝子の転写を導く発現カセットを有するベクターウイルスを感染させた細胞は、異なる時間インキュベートされる。全RNAは、感染後の異なる時間で回収された試料から調製される。DNAseI消化によるコンタミネートしたDNAの破壊後、RNAは逆転写される。RNA調製物からのコンタミネートしたDNAの除去の成功を実証するため、1つの複製試料が逆転写酵素(RT)の添加によって処理され、2つ目の複製はRTの添加無しで処理される。生じるcDNAは精製され、従来のPCRの鋳型として使用される。RTの添加によって処理された試料のみがPCR産物を産生するはずである。これらのcDNAは、次いで、レポーター導入遺伝子のプライマーによるqPCRに、ウイルスベクターの必須遺伝子(内部標準遺伝子)のプライマーによるものと並行して使用することができ、その転写は、感染および複製の効率のための内部標準を提供する。レポーターのqPCR値は、内部標準遺伝子のqPCR値を使用して、異なる構築物および感染後の時間の間でノーマライズされる。これは、異なるプロモーターおよびその断片のプロモーター活性の解釈を可能にする。
【0092】
「配列相同性」は、本明細書で使用する場合、2つの配列の関連性を決定する方法を指す。配列相同性を決定するため、2つまたはそれ以上の配列が最適にアラインされ、必要であればギャップが導入される。しかしながら、「配列同一性」とは対照的に、配列相同性を決定する場合には、保存的なアミノ酸置換は一致としてカウントされる。
【0093】
言い換えると、参照配列と95%の配列相同性を有する比較できるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを得るため、85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の参照配列のアミノ酸残基またはヌクレオチドが一致しなければならず、別のアミノ酸またはヌクレオチドとの保存的な置換を含まなければならない。代わりに、参照配列における、保存的な置換を含まない、全アミノ酸残基またはヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までのアミノ酸またはヌクレオチドの数が、参照配列に挿入され得る。好ましくは、相同配列は、少なくとも50、さらにより好ましくは100、さらにより好ましくは250、さらにより好ましくは500ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0094】
当技術分野で公知のように、「配列同一性」は、2つまたはそれ以上のポリペプチド配列または2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち、参照配列と、参照配列と比較される所与の配列の間の関係を指す。配列同一性は、配列が最適にアラインされた後に所与の配列を参照配列と比較することによって決定され、そのような配列のストリング間の一致により決定されるように、最も高い程度の配列類似性を産生する。そのようなアライメントにより、配列同一性は、位置ごとに確認され、例えば配列は、その位置で、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一である場合、特定の位置で「同一」である。そのような位置同一性の総数は、次いで参照配列のヌクレオチドまたは残基の総数によって割られ、%配列同一性を与える。配列同一性は、限定はされないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York (1988), Biocomputing:Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York (1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991);およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載のものを含む公知の方法によって容易に算出することができ、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。配列同一性を決定する好ましい方法は、試験した配列間で最大の一致を与えるように設計される。配列同一性を決定する方法は、所与の配列間の配列同一性を決定する一般的に利用可能なコンピュータープログラムでコード化される。そのようなプログラムの例としては、限定はされないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)が挙げられる。BLASTXプログラムはNCBIおよび他の供給元から公的に利用可能である(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894, Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)、その教示は参照により本明細書に組み込まれる)。これらのプログラムは、所与の配列と参照配列の間に最高レベルの配列同一性を産生するため、デフォルトのギャップ重み付けを使用して配列を最適にアラインする。例として、参照ヌクレオチド配列に対して、例えば、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%「配列同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、所与のポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100ヌクレオチド当たり15まで、好ましくは10まで、さらにより好ましくは5までの点変異を含み得ることを除いて、所与のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることが意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにおいて、参照配列のヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までが欠損または別のヌクレオチドによって置換され、参照配列の総ヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までのヌクレオチドの数が参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端位置またはそれらの末端位置間のどこでも起こることがあり、参照配列、または参照配列内の1つまたは複数の隣接基のいずれかのヌクレオチド中で個々に分散される。同様に、参照アミノ酸配列に対して、例えば、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%配列同一性を有する所与のアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、所与のポリペプチド配列が、参照アミノ酸配列のそれぞれ100アミノ酸当たり15まで、好ましくは10、9、8、7、6まで、さらにより好ましくは5、4、3、2、1までのアミノ酸変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドの所与のアミノ酸配列が参照配列と同一であることが意図される。言い換えると、参照アミノ酸配列と、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%配列同一性を有する所与のポリペプチド配列を得るため、参照配列のアミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%までが欠損または別のアミノ酸と置換され、参照配列のアミノ酸残基の総数の15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%までのアミノ酸の数が参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置、またはそれらの末端位置間のどこでも起こることがあり、参照配列または参照配列内の1つまたは複数の隣接基のいずれかの残基中で個々に分散される。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。しかしながら、配列同一性を決定する場合、保存的置換は一致として含まれない。
【0095】
用語「配列同一性」または「パーセント同一性」は、本明細書において交換可能に使用される。本発明の目的のため、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するため、配列は最適な比較目的のためにアラインされることが本明細書において規定される(例えば、ギャップが、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸または核酸の配列に導入され得る)。相当するアミノ酸またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸またはヌクレオチド残基が、次いで比較される。第1の配列の位置が、第2の配列の相当する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチド残基によって占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一な位置の数/位置の総数(すなわちオーバーラップする位置)×100)。好ましくは、2つの配列は同じ長さである。
配列比較は、比較される2つの配列の全長にわたって、または2つの配列の断片にわたって行われ得る。典型的には、比較は、比較される2つの配列の全長にわたって行われる。しかしながら、配列同一性は、例えば、20、50、100またはそれ以上の隣接するアミノ酸残基の領域にわたって行われ得る。
【0096】
当業者は、2つの配列間の相同性を決定するために、いくつかの異なるコンピュータープログラムが利用可能であることを知っている。例えば、配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数値計算用アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸または核酸配列間のパーセント同一性は、Blosum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付けならびに1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けのいずれかを使用して、Accelrys GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに組み込まれるNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))アルゴリズムを使用して決定される。当業者は、これら全ての異なるパラメーターがわずかに異なる結果をもたらすが、2つの配列の全体的なパーセンテージ同一性は、異なるアルゴリズムを使用する場合著しくは変更されないことを認識する。
【0097】
本発明のタンパク質配列または核酸配列は、「問い合わせ配列」としてさらに使用され、公共のデータベースに対して検索を実施し、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定する。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTNおよびBLASTPプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTタンパク質検索はBLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施され、本発明のタンパク質分子に相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るため、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402に記載されるように、Gapped BLASTが利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばBLASTPおよびBLASTN)のデフォルトのパラメーターが使用され得る。国立バイオテクノロジー情報センターのホームページを参照。
【0098】
EHV-1およびEHV-4/組換えベクター技術の定義
用語「ウマ(equid)」または「ウマ(equine)」または「ウマ(equin)」は、ウマ、ロバ、およびシマウマを含み、好ましくはウマである、ウマ科を意味するまたはウマ科に属する。さらに、用語「ウマ(equid)」または「ウマ(equine)」または「ウマ(equin)」は、ウマ科のメンバーのハイブリッドも包含する(例えば、ラバ、ケツテイ等)。
「ヘルペスウイルス」または「ヘルペスウイルスベクター」は、ヘルペスウイルス目のヘルペスウイルス科の種を指す。
【0099】
用語「ウマヘルペスウイルスベクター」または「ウマヘルペスウイルス」または「EHV」は、ウマに感染するヘルペスウイルス科のメンバーを意味する。これまでのところ、8つの異なる種のウマヘルペスウイルスが同定され、5つはアルファヘルペスウイルス亜科(EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9)に属し、3つはガンマヘルペスウイルス科に属する。(Virus Taxonomy: 2015 Release EC 47, London, UK, July 2015; Email ratification 2016 (MSL #30))。
【0100】
用語「EHV-1」は、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス属のバリセロウイルス亜属のメンバー、ウマアルファヘルペスウイルス1型を意味する。EHV-1の非限定的な参照配列は、例えば野生型EHV-1株ab4(Genbank受入番号AY665713.1)またはRacH(Hubert 1996)。
用語EHV-4は、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス属のバリセロウイルス亜属のメンバー、ウマアルファヘルペスウイルス4型を意味する。
用語「UL18に挿入された」または「ORF43に挿入された」は、ウマアルファヘルペスウイルス1型オープンリーディングフレーム43(UL18)をコードする位置で、ゲノムDNAにDNA断片が挿入されたことを意味する。本発明の特定の態様では、言及される挿入は、ORF43(UL18)の完全な欠損(945bp)をもたらした。
用語「UL8に挿入された」または「ORF54に挿入された」は、ウマアルファヘルペスウイルス1型オープンリーディングフレーム54(UL8)をコードする位置で、ゲノムDNAにDNA断片が挿入されたことを意味する。本発明の特定の態様では、言及される挿入は、ORF54(UL8)の(2256bp)の欠損をもたらした。
【0101】
用語「ORF70に挿入された」または「US4に挿入された」は、ウマアルファヘルペスウイルス1型オープンリーディングフレーム70(US4)をコードする位置で、ゲノムDNAにDNA断片が挿入されたことを意味する。本発明の特定の態様では、言及される挿入は、ORF70(US4)の5’の801塩基対の欠損をもたらし、3’端の残りの423bpは無傷なままで残すが、orf70(US4)遺伝子産物糖タンパク質Gの発現を無くす。EHV-1を含むいくつかのアルファヘルペスウイルスの糖タンパク質Gは、感染細胞から分泌され、炎症促進性サイトカインの結合によって免疫調節性タンパク質として機能することが示された。ウイルスベクターでのその発現が無くなると、無傷な糖タンパク質Gを発現する野生型EHV-1と比較した場合、ウイルス感染の免疫原性を増大させるはずである。
【0102】
用語「ORF1/3に挿入された」または「UL56に挿入された」は、ワクチン株EHV-1 RacHの弱毒化手順中の継代での偶発的な欠損によって、ORF1の90%および全ORF2を含む1283bpの断片が欠失する位置で、ウイルスゲノムにDNA断片が挿入されたことを意味する。この挿入部位は、この位置からの導入遺伝子の発現がウイルスの複製と干渉する可能性が極端に少ないと予測されたため、選択された。
【0103】
用語「不活性化」は、UL8(ORF54)および/またはUL18(ORF43)内の変異を指す。用語変異は、前記コードタンパク質の変更をもたらすウイルスDNAをコードする前記タンパク質における改変を含む。用語変異は、限定はされないが、置換(1つまたはいくつかのヌクレオチド/塩基対の置き換え)、欠損(1つ、いくつかまたは全てのヌクレオチド/塩基対の除去)、および/または挿入(1つまたはいくつかのヌクレオチド/塩基対の付加)を指す。したがって、用語変異は、限定はされないが、点変異(単一ヌクレオチドバリアント)または例えばコード(および/または非コード)ヌクレオチド/塩基対の部分が欠損される(部分欠損)または全てのコード(および/または非コード)ヌクレオチド/塩基対が欠損される(完全欠損)、置換および/または付加コード(および/または非コード)ヌクレオチド/塩基対が挿入される大きな変異を含む変異を含む。用語変異は、コードヌクレオチド/塩基対内の変異、非コードヌクレオチド/塩基対内、例えば制御ヌクレオチド/塩基対内の変異、およびコードヌクレオチド/塩基対と非コードヌクレオチド/塩基対の両方の内の変異を含むと理解される。さらに、用語変異は、ヌクレオチド/塩基対(コードおよび/または非コード)の逆位、例えば部分もしくは全てのコードヌクレオチド/塩基対の逆位、または部分もしくは全ての非コードヌクレオチド/塩基対の逆位、またはそれらの組合せも含む。さらに、用語変異は、ヌクレオチド/塩基対(コードおよび/または非コード)の再配置、例えば部分もしくは全てのコードヌクレオチド/塩基対の再配置、または部分もしくは全ての非コードヌクレオチド/塩基対の再配置、またはそれらの組合せも含む。本明細書で使用する場合、変異は、単一変異またはいくつかの変異であってよく、したがって、使用される用語「変異」は単一変異といくつかの変異の両方に関することが多い。前記変異は、コード配列の変更により改変された発現されるタンパク質をもたらすことができる。しかしながら、用語変異は当業者に周知であり、当業者は、難しい説明なく変異を作製することができる。
【0104】
さらに、用語「不活性化」は、UL18および/またはUL8 RNAおよび/またはタンパク質の発現減少(または除去)を包含する。発現減少は、RNA転写の減少ならびにタンパク質発現の減少の両方を包含すると理解される。好ましくは、UL18および/またはUL8 RNAおよび/またはタンパク質の発現は、野生型EHVウイルスまたは補完細胞株で培養された本発明のEHVウイルスの発現と比較した場合、RNAおよび/またはタンパク質によって5~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、90~95%、95~99%またはそれ以上低減されている。より好ましくは、UL18および/またはUL8 RNAおよび/またはタンパク質の発現は、野生型EHVウイルスまたは補完細胞株で培養された本発明のEHVウイルスの発現と比較した場合、RNAおよび/またはタンパク質によって50~100%、60~100%、70~100%、80~100%、または90~100%低減されている。さらにより好ましくは、UL18および/またはUL8 RNAおよび/またはタンパク質の発現は、野生型EHVウイルスまたは補完細胞株で培養された本発明のEHVウイルスの発現と比較した場合、RNAおよび/またはタンパク質によって80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%本発明のEHVにおいて低減されている。
【0105】
用語「完全または部分欠損、置換または逆位」は、完全または部分欠損、完全または部分置換、および完全または部分逆位を包含する。用語「完全」は、全ORF(UL)が、ORF(UL)の開始コドンから停止コドンまで影響されることを意味する。好ましくは、UL18および/またはUL8は、完全欠損、置換または逆位である。しかしながら、用語「部分」は、全ORF(UL)の部分のみが影響されることを意味する。好ましくは、UL18および/またはUL8は、部分欠損、置換または逆位である。
【0106】
用語「開始コドンの5’末端から」は、5’末端でのORF(UL)の欠損、置換または逆位を指す。本明細書で使用される場合、用語は、前記欠損、置換または逆位がORFの開始コドンに影響する(を含む)と理解される。したがって、ORFの3’末端の部分は保持されるが、ORFの5’末端領域の部分は欠損される。しかしながら、5’末端からの前記欠損、置換または逆位は、相当するタンパク質内の1つまたは複数のアミノ酸の欠損、または野生型のタンパク質とは異なるコード領域をもたらすORFのフレームシフトをもたらし得る。しかしながら、5’末端における前記欠損、置換または逆位は、開始コドンがトランケートされる場合、全くタンパク質の発現をもたらさないことがある。
【0107】
本明細書で使用する場合、用語「開始コドンのA、TまたはGから」は、前記欠損、置換または逆位がAまたはTまたはGで始まり得ると理解される。欠損がAで始まる場合、Aが欠損される。しかしながら、Aからの欠損が2つまたはそれ以上のヌクレオチドの欠損を含む場合、Tも同様に欠損される。さらに、Aからの欠損が3つまたはそれ以上のヌクレオチドの欠損を含む場合、A、TおよびGが欠損される。しかしながら、欠損がTで始まる場合、Tが欠損されるが、ATGのAは依然として維持されると理解される。さらに、欠損がGで始まる場合、Gが欠損されるが、ATGのAおよびTは依然として維持される。
本明細書で使用する場合、用語「UL18内」または「UL8内」は、ヌクレオチドの前記欠損、置換または逆位が前記ORF(UL)内のどこでも生じ得ると理解される。したがって、ヌクレオチドの前記欠損、置換または逆位は、UL8(ORF54)および/またはUL18(ORF43)の5’末端のみ、UL8(ORF54)および/またはUL18(ORF43)の3’末端のみ、または前記ORF(UL)のヌクレオチドの残りまたはこれらの組合せに影響し得る。
【0108】
用語「複製欠損」は、当業者に周知である。一般に、用語は、ウイルスが宿主(例えば哺乳動物細胞または細胞株)において複製が低減したことを意味する。好ましくは、複製は、少なくとも90%、好ましくは95%、好ましくは97.5%、さらにより好ましくは99.5%、さらにより好ましくは99.75%、および最も好ましくは100%低減されている。複製が100%低減されている場合、複製は完全に消失している。好ましくは、複製は、同じ種の非複製欠損ウイルスと比較される。好ましくは、複製は、補完細胞または細胞株で培養された複製欠損ウイルスの複製と比較される。好ましくは、本発明の複製欠損EHVは依然として感染性であり、複製するが、補完細胞または細胞株においてのみ複製可能ウイルスとしてパッケージされ得る。好ましくは、ウイルスDNAおよびウイルスタンパク質は宿主において依然として産生され、したがって、本発明の複製欠損EHVは免疫応答および/または保護免疫を依然として誘導する。
用語「補完細胞株」または「補完細胞」は、当業者に周知である。本発明の文脈において、補完細胞株は、細胞がEHV(好ましくはEHV-1)のUL8および/またはUL18(またはそれらの機能性部分)を発現する細胞株である。複製欠損EHVベクターがUL8および/またはUL18の不活性化を含む場合、複製欠損EHVは宿主細胞(例えば哺乳動物細胞または細胞株)における複製ではないが、UL8および/またはUL18を発現する相当する補完細胞株における複製である。
【0109】
用語「TCID50」は、当業者に周知である。一般に、このエンドポイント希釈アッセイは、感染した宿主の50%を死滅させる、または接種した組織培養細胞の50%に細胞変性効果を産生するのに必要なウイルスの量を定量する。TCID50を測定するアッセイは、Spearman-Karber法またはReed-Muench法(Reed and Muench, 1938)など、当業者に周知である。
用語「感染性」は、宿主または宿主細胞へのウイルスの導入を意味する。
ワクチンの定義
「免疫原性または免疫学的組成物」は、組成物に対する細胞または抗体媒介性免疫応答の宿主での免疫学的応答を引き出す少なくとも1つの抗原、またはその免疫原性部分を含む物質の組成物を指す。
【0110】
本明細書で使用する用語「抗原」は、当技術分野で周知であり、免疫原性、すなわち免疫原である物質、ならびに免疫学的不応性、または免疫不応答、すなわち外来物質に対する体の防御機構による反応の欠如を誘導する物質を含む。本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、エピトープを含有するまたは含む、全長タンパク質ならびにそのペプチド断片を意味することが意図される。
用語「食物生産動物」は、例えば、ブタ、ウシ、家禽、魚等、ヒトによる消費のために使用される動物を意味し、好ましくは、食物生産動物はブタおよびウシを意味し、最も好ましくはブタである。
【0111】
本明細書で使用する場合、「免疫原性組成物」は、例えば、本明細書に記載のように免疫学的応答を引き出すウイルス表面タンパク質など、ポリペプチドまたはタンパク質を指し得る。用語「免疫原性断片」または「免疫原性部分」は、1つまたは複数のエピトープを含み、したがって、本明細書に記載の免疫学的応答を引き出すタンパク質またはポリペプチドの断片またはトランケートおよび/または置換形態を指す。一般に、そのようなトランケートおよび/または置換形態、または断片は、全長タンパク質からの少なくとも6個の隣接するアミノ酸を含む。そのような断片は、当技術分野で周知のいくつかのエピトープマッピング技術を使用して同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jersey参照。例えば、線状エピトープは、タンパク質分子の部分に相当する多数のペプチドを固体支持体上で同時合成し、ペプチドが依然として支持体に結合しているうちに、ペプチドを抗体と反応させることによって決定され得る。そのような技術は公知であり、当技術分野で記載されている。例えば、米国特許第4,708,871号;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002;およびGeysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23:709-715参照。同様に、構造エピトープは、例えば、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴によるなどアミノ酸の空間的な構造を決定することにより容易に同定される。上記のEpitope Mapping Protocolsを参照。合成抗原も、例えばポリエピトープ、隣接エピトープ、および他の組換えまたは合成由来の抗原の定義内に含まれる。例えば、Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777-2781;Bergmann et al. (1996), J. Immunol. 157:3242-3249;Suhrbier, A. (1997), Immunol. and Cell Biol. 75:402-408;およびGardner et al., (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998参照。(その教示および内容は全て本明細書に参照により組み込まれる。)
用語「免疫化」は、免疫させる食物産生動物への免疫原性組成物の投与による能動免疫化に関し、それにより、そのような免疫原性組成物に含まれる抗原に対する免疫応答を引き起こす。
【0112】
用語「必要とする(in need)」または「必要とする(of need)」は、本明細書で使用する場合、投与/処置が健康または臨床徴候へのブーストまたは改善、または本発明に従って免疫原性組成物を受ける動物の健康への任意の他の正の薬効と関連することを意味する。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン」は、動物の免疫学的応答を誘導する少なくとも1つの免疫学的活性成分、および可能だが必ずではない活性成分の免疫学的活性を増強する1つまたは複数のさらなる成分を含む医薬組成物を指す。ワクチンは、医薬組成物に典型的なさらなる成分をさらに含み得る。区別すると、ワクチンの免疫学的活性成分は、いわゆる改変生ワクチン(MLV)でのその元々の形態または弱毒化粒子のいずれかの完全なウイルス粒子、またはいわゆる死菌ワクチン(KV)での適切な方法によって不活性化された粒子を含み得る。別の形態では、ワクチンの免疫学的活性成分は、生物の適切なエレメント(サブユニットワクチン)を含んでよく、これらのエレメントは、粒子全体を破壊すること、またはそのような粒子を含有する増殖培地のいずれか、および任意選択により所望の構造を産生する続く精製ステップによって、または例えば細菌、昆虫、哺乳動物、もしくは他の種に基づく好適なシステムの使用による適切な操作を含む合成プロセスによって、さらに任意選択により続く単離および精製手順、または好適な医薬組成物(ポリヌクレオチドワクチン接種)を使用する遺伝材料の直接組込みによるワクチンを必要とする動物における合成プロセスの誘導によって生成される。ワクチンは、1つのまたは同時に1つより多くの上記のエレメントを含み得る。本発明の特定の態様内で使用される場合、「ワクチン」は生ワクチンまたは生ウイルスを指し、組換えワクチンとも呼ばれる。本発明の別の特定の態様では、「ワクチン」は、ウイルス様粒子(VLP)を含む不活性化または死菌ウイルスを指す。したがって、ワクチンは、サブユニットワクチンまたは死菌(KV)または不活性化ワクチンであってよい。
【0114】
用語「感染多重度(M.O.I.)」は、どのくらいのウイルス調製物の感染単位、例えばTCID50が、細胞当たり使用され培養細胞に感染するかを記載する。例えば、0.01のM.O.I.は、1つの感染ユニットが接種される培養容器中100個の細胞全てを意味する。
用語「DNAワクチン接種」または「ポリヌクレオチドワクチン接種」は、好適な医薬組成物を使用する遺伝材料の直接接種を意味する。
【0115】
不活性化の様々な物理的および化学的方法が当技術分野で公知である。用語「不活性化」は、照射(紫外線(UV)、X線、電子ビームまたはガンマ照射)、加熱、または化学的に処置され、その免疫原性を保持しながらそのようなウイルスまたは細菌を不活性化または死滅させた、以前は毒性だったまたは非毒性ウイルスまたは細菌を指す。好適な不活性化剤としては、ベータ-プロピオラクトン、バイナリーまたはベータまたはアセチルエチレンイミン、グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)、オゾン、およびホルマリン(ホルムアルデヒド)が挙げられる。
ホルマリンまたはホルムアルデヒドによる不活性化のため、ホルムアルデヒドを、典型的には水およびメチルアルコールと混合して、ホルマリンを作製する。メチルアルコールの添加により、活性化プロセス中の分解または交差反応を防ぐ。一実施形態では、37%ホルムアルデヒド溶液の約0.1~1%を使用して、ウイルスまたは細菌を不活性化する。材料は不活性化されるが、高用量による副作用が起こるほど多くないことを確実にするように、ホルマリンの量を調節することが重要である。
【0116】
より詳細には、ウイルスの文脈における用語「不活性化」は、ウイルスがin vivoまたはin vitroでそれぞれ複製することができないことを意味し、細菌の文脈における用語「不活性化」は、細菌がin vivoまたはin vitroで増殖できないことを意味する。例えば、用語「不活性化」は、in vitroで繁殖し、次いでもはや複製できないように化学的または物理的な手段を使用して不活性化されたウイルスを指し得る。別の例では、用語「不活性化」は、繁殖し、次いでワクチンの成分として使用され得るバクテリンを生じるなど、細菌、細菌の断片または成分の懸濁液を生じる、化学的または物理的な手段を使用して不活性化された細菌を指し得る。
本明細書で使用される場合、用語「不活性化」、「死菌」または「KV」は交換可能に使用される。
用語「生ワクチン」は、生きた生物または複製可能なウイルスもしくはウイルスベクターのいずれかを含むワクチンを指す。
【0117】
「医薬組成物」は、それが投与される生物の、または住み着いている生物の、または生物上の生理学、例えば免疫学的機能を改変することができる1つまたは複数の成分から基本的になる。用語は、限定はされないが、抗生物質または駆虫薬、ならびに、例えば、限定はされないが、プロセシング特性、無菌性、安定性、経腸または非経口経路、例えば、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、または他の好適な経路を介して組成物を投与する可能性、投与後の耐性、または調節性放出特性などの特定の他の目的を達成するために一般に使用される他の構成成分を含む。そのような医薬組成物の1つの非限定的な例は、単に、実証目的のために挙げられ、以下のように調製され得る:感染細胞培養の細胞培養上澄み液は安定剤(例えば、スペルミジンおよび/またはウシ血清アルブミン(BSA)と混合され、混合物は続いて他の方法により凍結乾燥または脱水される。ワクチン接種の前に、混合物は次いで、水溶液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または非水性溶液(例えば、油エマルジョン、アルミニウムベースのアジュバント)中で再水和される。
【0118】
本明細書で使用される場合、「薬学的にまたは獣医学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散培地、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などを含む。いくつかの好ましい実施形態、特に本発明での使用のための凍結乾燥免疫原性組成物、安定化剤を含むものは、凍結乾燥またはフリーズドライのための安定剤を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物はアジュバントを含有する。本明細書で使用する場合、「アジュバント」は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンを含み得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィンオイル(ヨーロッパ薬局方型);スクアランまたはスクアレンなどのイソプレノイドオイル;アルケンのオリゴマー化から生じるオイル、特にイソブテンまたはデセン;線状アルキル基を含有する酸のまたはアルコールのエステル、より具体的には、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリル酸/カプリン酸)、グリセリルトリ-(カプリル酸/カプリン酸)またはプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸のエステルに基づき得る。オイルは乳化剤と組合せて使用され、エマルジョンを形成する。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニド(例えば、無水マンニトールオレエート)のエステル、グリコールのエステル、ポリグリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル、およびオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸の、エトキシル化されていてもよいエステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995) and Todd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)参照。例示的なアジュバントは、"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されているSPTエマルジョン、およびこの同じ書籍の183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0120】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよび無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルと架橋されたアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は用語カルボマーで公知である(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者は、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルで置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋したそのようなアクリルポリマーについて記載している米国特許第2,909,462号を参照することもできる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子を含有するもの、例えば、ビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。不飽和ラジカルは、それ自体がメチルなどの他の置換基を含有し得る。CARBOPOL(登録商標)の名称で販売されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が特に適している。これらは、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋されている。それらとしては、Carbopol 974P、934Pおよび971Pを挙げることができる。CARBOPOL(登録商標)971Pの使用が最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーは、コポリマーEMA(Monsanto)であり、これらは無水マレイン酸とエチレンのコポリマーである。これらのポリマーを水に溶解させることにより酸性溶液が生じ、これを、免疫原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物自体が組み込まれるアジュバント溶液をもたらすために、好ましくは生理的なpHまで中和する。
【0121】
さらに好適なアジュバントとしては、多くの他のものもあり、限定はされないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta GA)、SAF-M(Chiron、Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換えまたは他の方法)、コレラ毒素、IMS1314またはムラミルジペプチド、または天然に存在するもしくは組換えサイトカインもしくはその類似体または内在性サイトカイン放出の刺激薬が挙げられる。
【0122】
アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で、好ましくは用量当たり約100μg~約10mgの量で、より好ましくは用量当たり約500μg~約5mgの量で、さらにより好ましくは用量当たり約750μg~約2.5mgの量で、最も好ましくは用量当たり約1mgの量で添加することができると予測される。あるいは、アジュバントは、最終製品の容積で約0.01~50%の濃度、好ましくは約2%~30%の濃度、より好ましくは約5%~25%の濃度、なおさらに好ましくは約7%~22%の濃度、および最も好ましくは10%~20%の濃度であってよい。
「希釈剤」としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロール等を挙げることができる。等張剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを挙げることができる。安定剤としては、とりわけ、アルブミンおよびエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が挙げられる。
「単離された」は、その天然の状態から「人間の手によって」変更されたこと、すなわち、それが天然に存在する場合、その元々の環境から変更または取り出された、またはその両方であることを意味する。例えば、本明細書でその用語が用いられる場合、生きている生物内に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離され」ていないが、その天然の状態で共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離され」ている。
【0123】
「弱毒化」は、病原体の毒性を低下させることを意味する。本発明では、「弱毒化」は「非病原性」と同義である。本発明では、弱毒化ウイルスは、感染の臨床徴候を引き起こさないが標的動物における免疫応答を誘導することはできるように毒性を低下させたものであるが、弱毒化ウイルス、特に請求項のようにEHV-1 RacHウイルスベクターを感染させた動物における臨床徴候の発生率または重症度が、弱毒化していないウイルスまたは病原体を感染させ、弱毒化ウイルスを受けていない「対照群」の動物と比較して低下することも意味し得る。この場合、用語「低下する/低下した」は、上記で定義された対照群と比較して少なくとも10%、好ましくは25%、さらにより好ましくは50%、なおより好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、なおより好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、および最も好ましくは100%の低下を意味する。したがって、例えば請求項のように弱毒化ウイルスベクターなどの、弱毒化した非病原性病原体、特に請求項のようにEHV-1(好ましくはRacH)ウイルスベクターが、改変生ワクチン(MLV)または改変生免疫原性組成物の生成に好適である。
【0124】
用語「処置および/または予防」は、集団における感染の発生率の減少または特定の感染によって引き起こされるまたは特定の感染と関連する臨床徴候の重症度の減少を指す。したがって、用語「処置および/または予防」は、病原体によって感染される集団の動物の数の減少、または通常本明細書に提供する有効量の免疫原性組成物を受ける動物の群での感染と関連するまたは感染によって引き起こされる臨床徴候の重症度のそのような免疫原性組成物を受けない動物の群と比較した減少を指す。
【0125】
「処置および/または予防」は一般に、有効量の本発明の免疫原性組成物の、そのような処置/予防を必要とするまたはそのような処置/予防が有益であり得る動物または動物の集団への投与を含む。用語「処置」は、その動物またはその集団の少なくともいくらかの動物がそのような病原体によってすでに感染し、そのような動物はそのような病原体感染によって引き起こされるまたはそのような病原体感染と関連するいくつかの臨床徴候をすでに示す場合の、有効量の免疫原性組成物の1回の投与を指す。用語「予防」は、病原体によるそのような動物のいずれの感染よりも前の、または少なくともそのような動物または動物の群のどの動物もそのような病原体による感染によって引き起こされるまたはそのような病原体による感染と関連するいずれの臨床徴候も示さない場合の、動物への投与を指す。用語「予防」および「防止」は、本出願において交換可能に使用される。
【0126】
本明細書で使用する場合、用語「臨床徴候」は、病原体からの動物の感染の徴候を指す。感染の臨床徴候は、選択された病原体によって変わる。そのような臨床徴候の例としては、限定はされないが、呼吸困難、耳炎、ざらざらの被毛、微熱、うつ病、食欲低下が挙げられる。しかしながら、臨床徴候は、限定はされないが、生きた動物から直接観察可能な臨床徴候も挙げられる。生きた動物から直接観察可能な臨床徴候の例としては、鼻汁および眼漏、無気力、咳、喘鳴、動悸、体温上昇、体重減少、脱水症状、跛行、消耗、皮膚の蒼白、発育不全等が挙げられる。
本明細書では、「有効用量」は、限定はされないが、抗原が投与される動物における臨床症状の減少をもたらす免疫応答を引き出す、または引き出すことができる抗原の量を意味する。
【0127】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、組成物の文脈では、動物において感染または付随する疾患の発生率を低下させるまたはその重症度を軽減する免疫応答を誘導することができる免疫原性組成物の量を意味する。特に、有効量は、用量当たりのコロニー形成単位(CFU)を指す。あるいは、療法の文脈では、用語「有効量」は、疾患もしくは障害、または1つもしくは複数のその症状の重症度または持続時間を低下または好転させるため、疾患または障害の前進を予防するため、疾患または障害の後退を引き起こすため、疾患または障害に付随する1つまたは複数の症状の再発、発生、発症、または進行を予防するため、または、別の療法または治療剤による予防もしくは処置を増強もしくは改善するために十分である療法の量を指す。
【0128】
「免疫応答」または「免疫学的応答」は、限定はされないが、目的の(免疫原性)組成物またはワクチンに対する細胞および/または抗体により媒介される免疫応答の発生を意味する。通常、免疫応答または免疫学的応答は、限定はされないが、以下の作用の1つまたは複数を含む:目的の組成物またはワクチンに含まれる1つまたは複数の抗原を特異的に対象とする抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞の産生または活性化。好ましくは、宿主は治療的または防御的な免疫学的(記憶)応答のいずれかを示し、したがって、新しい感染に対する抵抗性が増強され、および/または疾患の臨床的な重症度が低下する。そのような防御は、症状の数、症状の重症度の低下、もしくは病原体の感染に伴う症状の1つまたは複数の欠如、ウイルス血症の発症の遅延、ウイルスの持続性の低下、全ウイルス負荷量の減少および/またはウイルス排泄の減少のいずれかによって実証される。
【0129】
「疾患に対する防御」、「防御免疫」、「機能免疫」、「臨床症状の減少」、「中和抗体および/または血清変換の誘導/産生」、および同様の句は、1つまたはそれ以上の本発明の治療用組成物、またはこれらの組合せの投与によって生じる、疾患または状態に対する部分的または完全な応答を意味し、その結果、疾患または感染に暴露された免疫されていない対象において予測されるものよりも生じる有害作用が少ないことを意味する。すなわち、ワクチン接種された対象では感染の有害作用の重症度が低下する。ワクチン接種された対象では、感染が減少し得る、遅くなり得る、または場合により完全に予防され得る。本明細書では、感染の完全な予防を意味する場合には、明確に記載される。完全な予防と記載されていない場合、この用語は、部分的な予防を含む。
【0130】
本明細書では、「臨床徴候の発生率および/または重症度の低下」または「臨床症状の減少」は、限定はされないが、野生型感染と比較した、群内の感染した対象の数の減少、感染の臨床徴候を示す対象の数の減少もしくは排除、または1または複数の対象に存在する任意の臨床徴候の重症度の低下を意味する。例えば、病原体負荷量の減少、病原体の排出、病原体の伝染の減少、またはマラリアの任意の症候性の臨床徴候の減少のいずれかを指すべきである。好ましくは、本発明の治療用組成物を受けた1またはそれ以上の対象において、組成物を受けておらず感染する対象と比較して、これらの臨床徴候が少なくとも10%減少する。より好ましくは、本発明の組成物を受けた対象において臨床徴候が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%減少する。
【0131】
本明細書では、用語「防御の増大」は、限定はされないが、ワクチン接種された対象の群における感染因子による感染に付随する1つまたは複数の臨床症状が、ワクチン接種されていない対象の対照群に対して統計的に優位に減少することを意味する。用語「統計的に有意な臨床症状の減少」は、限定はされないが、感染因子によるチャレンジ後に、ワクチン接種された対象の群における少なくとも1つの臨床症状の発生頻度が、ワクチン接種されていない対照群よりも少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、さらにより好ましくは50%、およびさらにより好ましくは70%低いことを意味する。
「長期にわたる防御」は、少なくとも3週間、より好ましくは少なくとも3ヵ月、なおより好ましくは少なくとも6ヵ月にわたって持続する「改善された有効性」を指す。家畜の場合、長期にわたる防御は、動物が食肉用に販売される平均年齢まで持続するものとされることが最も好ましい。
【0132】
ウイルスによって誘導される、用語「ウイルス血症の減少」は、限定はされないが、動物の血流に入るウイルスの減少を意味し、ウイルス血症のレベル、すなわち血清mL当たりのウイルスDNAまたはRNAのコピー数または血清デシリットル当たりのプラーク形成コロニーの数が、組成物を受けておらず、感染し得る動物と比較して少なくとも50%、本発明の組成物を受けた動物の血清中で減少する。より好ましくは、ウイルス血症レベルは、本発明の組成物を受けた動物で、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99.9%、より好ましくは少なくとも99.99%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.999%減少する。
【0133】
用語「病原体」は、当業者に周知である。しかしながら、用語「病原体」は、細菌またはウイルスを含む。用語「病原体」は、シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアのような病原体を含む。
用語「食物産生動物」は、ブタ、ウシ、家禽、魚等、好ましくはブタのようなヒトの消費のために使用される動物を意味する。
用語「伴侶動物」は、ネコ、ウマまたはイヌのような動物を含む。
本明細書で使用する場合、用語「ウイルス血症」は、動物、特に哺乳動物、トリ、または昆虫の血流中でウイルス粒子が複製および/または循環する状態として特に理解される。
「安全性」は、ワクチン接種された動物において、ワクチン接種後に、限定はされないが、ウイルスに基づくワクチンの毒性への潜在的な復帰、持続性の全身性疾病またはワクチン投与の部位における許容できない炎症などの臨床的に有意な副作用を含む、有害な結果が存在しないことを指す。
用語「ワクチン接種(vaccination)」または「ワクチン接種すること(vaccinating)」またはその変形は、本明細書で使用する場合、限定はされないが、動物に投与されると、動物における免疫応答を直接または間接的に引き出すまたは引き出すことができる本発明の免疫原性組成物の投与を含むプロセスを意味する。
「死亡率」とは、本発明の文脈では、感染によって引き起こされる死亡を指し、感染が、苦痛を予防し、その生涯に人道的な終わりをもたらすために動物を安楽死させるほど重症である状況を含む。
製剤
組成物を投与する対象は、限定はされないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムスター、マウスおよびラット、を含む動物であることが好ましく、最も好ましくは、哺乳動物はブタである。
【0134】
本発明の製剤は、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物および生理学的に許容されるビヒクルを含む。ワクチンは、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物および生理学的に許容されるビヒクルを含む。製剤は投与の形式に適したものであるべきである。
免疫原性組成物は、所望であれば、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤も含有してよい。免疫原性組成物は、液剤、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル剤、持続放出製剤、または散剤であってよい。経口製剤としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を挙げることができる。
【0135】
処置の方法
投与の好ましい経路としては、限定はされないが、鼻腔内、経口、皮内、および筋肉内が挙げられる。飲料水での投与、最も好ましくは単回用量が望ましい。当業者は、本発明の組成物が、1用量、2用量、またはそれ以上の用量で、ならびに他の投与経路によって投与することもできることを理解するであろう。例えば、そのような他の経路としては、皮下、皮内、腹腔内、皮内が挙げられ、所望の処置の持続時間および効果に応じて、本発明による組成物は、1回または数回、また断続的に、例えば、数日、数週間または数ヵ月にわたって毎日、異なる投与量、例えば、約103~108TCID50(上記のウイルス力価を参照)で投与することができる。本発明の特定の態様では、特に生ウイルス/生ワクチンに関して、投与量は約103~108TCID50である。
【0136】
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス中に存在してよい。このパックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックホイルを含んでよい。このパックまたはディスペンサーデバイスには、投与、好ましくは哺乳動物、特にブタに投与するための指示書が添付されていてよい。そのような容器に関しては、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態で通知され、その通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売機関による認可を反映している。
【0137】
抗原定義
用語「ブタインフルエンザウイルス」は、当業者に公知である。用語ブタインフルエンザウイルスは、ブタインフルエンザを引き起こすオルソミクソウイルス科のA型またはC型インフルエンザウイルスを指す。オルソミクソウイルスは3つの群:A型、B型およびC型を有するが、A型およびC型インフルエンザウイルスのみがブタに感染する。好ましくは、ブタインフルエンザウイルスは、A型ブタインフルエンザウイルスである。ブタインフルエンザウイルスの亜型は、H1N1、H1N2、H3N2、およびH3N1を含む。H9N2およびH5N1はブタにも見出され得る。好ましくは、ブタインフルエンザウイルスは、ブタから単離されたインフルエンザウイルスである。
【0138】
用語「HA」または「H」、「NA」または「N」および「NP」は当業者に公知である。しかしながら、一般に、A型インフルエンザウイルスは、多くの可能な組合せをもたらし得る(H1N1、H1N2~H2N1、H2N2~H5N1、H5N2などと名付けられる)、17H(ヘマグルチニン)および10N(ノイラミニダーゼ)亜型に分けられる。H(ヘマグルチニン)およびN(ノイラミニダーゼ)は、SIAVのようなA型インフルエンザウイルスの表面糖タンパク質である。さらに、Nは、中和抗体の主要な抗原性標的である。さらに、NP(ヌクレオタンパク質)はヌクレオカプシドを形成する。
【0139】
シーケンス概要:
以下の配列は、本発明において本明細書に詳細に記載され、開示される。
配列番号1 EHV-1 ORF43(UL18)遺伝子配列
配列番号2 EHV-1 ORF54(UL8)遺伝子配列
配列番号3 コドン最適化ORF43(UL18)遺伝子配列
配列番号4 コドン最適化ORF54(UL8)遺伝子配列
配列番号5 ORF43(UL18)遺伝子の171塩基上流
配列番号6 ORF43(UL18)遺伝子の265塩基下流
配列番号7 配列番号5および6に隣接するBGH ポリAを有するmCMVプロモーター駆動RFP遺伝子
配列番号8 配列番号5および6に隣接するカナマイシン遺伝子
配列番号9 ORF43(UL18)遺伝子の161塩基上流
配列番号10 ORF43(UL18)遺伝子の120塩基下流
配列番号11 ORF54(UL8)遺伝子の200ヌクレオチド上流
配列番号12 ORF54(UL8)遺伝子の200ヌクレオチド下流
配列番号13 配列番号5および6に隣接するBGH ポリAを有するmCMVプロモーター駆動RFP遺伝子
配列番号14 ORF1/3(UL56)部位にクローニングされたHA配列
配列番号15 トランスファーベクターpU70-p455-71K71のヌクレオチド配列
配列番号16 トランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71のヌクレオチド配列
配列番号17 左(Up70)隣接領域(417bp)
配列番号18 右(Up71)隣接領域(431bp)
配列番号19 ヌクレオチド127264~127680に位置する、野生型EHV-1株ab4(Genbank受入番号AY665713.1)の隣接領域左(orf70上流)
配列番号20 ヌクレオチド128484~128913に位置する、野生型EHV-1株ab4(Genbank受入番号AY665713.1)の隣接領域右(orf71上流)
配列番号21 REDシステムにおけるトランケートした隣接領域:左(Up70)隣接領域(283bp)=417bpの「クラシカルな」隣接領域の3’の283bpと同一
配列番号22 REDシステムにおけるトランケートした隣接領域:右(Up71)隣接領域(144bp)=431bpの「クラシカルな」隣接領域の5’の144bpと同一
配列番号23 野生型ab4(Genbank受入番号AY665713.1)ゲノム配列の欠損部分、ヌクレオチド127681~128482
配列番号24 RacHゲノム配列の欠損部分(完全なゲノム配列が公知ではないため、ヌクレオチド番号が入手できない)
配列番号25 ORF1/3(UL56)部位にクローニングされたHA配列
【0140】
節
以下の節は本明細書に記載される:
本発明は以下の節を提供する:
1.UL18および/またはUL8の不活性化を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
2.UL18が不活性化される、節1に記載の複製欠損EHVベクター。
【0141】
3.UL8が不活性化される、節1または2に記載の複製欠損EHVベクター。
4.UL18およびUL8が不活性化される、節1~3のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
5.UL18の不活性化が、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である、節1~4のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
6.UL8の不活性化が、完全または部分欠損、完全または部分トランケーション、完全または部分置換、完全または部分逆位、挿入である、節1~5のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
7.UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)が不活性化される、節1~6のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
8.UL18の開始コドン(ATG)の前記不活性化が欠損、置換、逆位または挿入である、節7に記載の複製欠損EHVベクター。
9.UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)が不活性化される、節1~8のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
10.UL8の開始コドン(ATG)の前記不活性化が欠損、置換、逆位または挿入である、節9に記載の複製欠損EHVベクター。
11.UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)の5’末端から少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている、節1~10のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0142】
12.UL18の開始コドン(ATG、配列番号1のヌクレオチド1~3)のA、T、またはGから少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている、節1~11のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
13.少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも925ヌクレオチド、少なくとも940ヌクレオチドがUL18内で欠損、置換または逆位を生じている、節1~12のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
14.配列番号1に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL18内で欠損、置換、または逆位を生じている、節1~13のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
15.少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチドがUL18内に挿入されている、節1~14のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
16.UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)の5’末端から少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている、節1~15のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0143】
17.UL8の開始コドン(ATG、配列番号2のヌクレオチド1~3)のA、T、またはGから少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドが欠損、置換または逆位を生じている、節1~16のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
18.少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも600ヌクレオチド、少なくとも700ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも900ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチド、少なくとも1250ヌクレオチド、少なくとも1500ヌクレオチド、少なくとも1750ヌクレオチド、少なくとも2000ヌクレオチド、少なくとも2225ヌクレオチドがUL8内で欠損、置換または逆位を生じている、節1~17のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
19.配列番号2に記載のDNA配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するDNA配列がUL8内で欠損、置換、または逆位を生じている、節1~18のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
20.少なくとも1ヌクレオチド、少なくとも2ヌクレオチド、少なくとも3ヌクレオチド、少なくとも4ヌクレオチド、少なくとも5ヌクレオチド、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも800ヌクレオチド、少なくとも1000ヌクレオチドがUL8内に挿入されている、節1~19のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0144】
21.EHVが:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもよい目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号5およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号9およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに
(iii)配列番号6およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号10およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域
を含む発現カセットを含む、節1~20のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
22.EHVが:
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されていてもよい目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、ならびに
(ii)配列番号11およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、ならびに
(iii)配列番号12およびその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域
を含む発現カセットを含む、節1~21のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
23.発現カセットの挿入がUL18および/またはUL8を不活性化する、節21または22に記載の複製欠損EHVベクター。
24.UL18への発現カセットの挿入が、RacH(配列番号1)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL18内のおよそ945bp部分の欠損によって特徴づけられる、節21~23のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
25.UL8への発現カセットの挿入が、RacH(配列番号2)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUL8内のおよそ2256bp部分の欠損によって特徴づけられる、節21~24のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
26.EHVベクターが、配列番号5、配列番号6、配列番号9、配列番号10、およびこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む、節1~25のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
27.EHVベクターが、(i)配列番号5および配列番号9からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL18隣接領域、ならびに(ii)配列番号6および配列番号10からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL18隣接領域を含む、節1~26のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
28.EHVベクターが、配列番号11および配列番号12、ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む、節1~27のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0145】
29.EHVベクターが、(i)配列番号11からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL8隣接領域、および(ii)配列番号12からなる群から選択される少なくとも1つの下流UL8隣接領域を含む、節1~28のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
30.前記EHVベクターが非天然型および/または組換えEHVである、節1~29のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
31.複製欠損が、複製率が少なくとも90%低減されていることを意味する、節1~30のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
32.複製欠損が、複製率が少なくとも95%低減されていることを意味する、節1~31のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
33.複製欠損が、複製率が少なくとも99%低減されていることを意味する、節1~32のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
34.複製欠損が、複製率が完全に消失していることを意味する、節1~33のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
35.複製率がTCID50アッセイによって測定される、節1~34のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
36.複製欠損EHVベクターが依然として感染性である、節1~35のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
37.EHVベクターが依然として感染性であり、感染した真核細胞株において複製できるが、補完細胞株においてのみ複製可能ウイルスとしてパッケージされ得る、節1~36のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0146】
38.EHVベクターが、挿入部位、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入された、少なくとも1つの目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む、節1~37のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
39.EHVベクターが、2つまたはそれ以上の挿入部位に挿入された、2つまたはそれ以上の目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含む、節1~38のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
40.US4への挿入が、US4における部分欠損、トランケーション、置換、改変等によって特徴づけられ、ここでUS5が機能性を維持する、節38または39に記載のEHVベクター。
41.US4への挿入が、RacH(配列番号24)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列のUS4内のおよそ801bp部分の欠損によって特徴づけられる、節38~40のいずれか1節に記載のEHVベクター。
42.EHVベクターが、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、および配列番号22ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される少なくとも1つの隣接領域を含む、節38~41のいずれか1節に記載のEHVベクター。
43.EHVベクターが、(i)配列番号17、配列番号19、および配列番号21からなる群から選択される少なくとも1つの左US4隣接領域、ならびに(ii)配列番号18、配列番号20、および配列番号22からなる群から選択される少なくとも1つの右US4隣接領域を含む、節38~42のいずれか1節に記載のEHVベクター。
44.前記目的のヌクレオチド配列が組換えおよび/または異種性および/または外来性である、節21~43のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0147】
45.前記抗原コード配列が、例えばブタ、ウシもしくは家禽などの食物生産動物またはネコ、ウマもしくはイヌなどの伴侶動物に感染する病原体に関する、節21~44のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
46.抗原コード配列が、限定はされないが、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である、節21~45のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
47.さらなる制御配列、例えば終結シグナルまたはポリアデニル化配列をさらに含む、節21~46のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
48.目的の遺伝子が、制御配列、好ましくはプロモーター配列に作動可能に連結される、節21~47のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
49.目的の配列または遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列が、限定はされないが、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーター、ポリメラーゼIIプロモーター、機能的断片からなる群から選択される、節21~48のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
50.少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列が、MCMVまたはその機能的断片またはそれらの相補性ヌクレオチド配列である、節21~49のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
51.少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されるプロモーター配列が、UL8またはUL18の内在性プロモーターである、節21~50のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
52.EHVベクターが、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9からなる群から選択される、節1~51のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
【0148】
53.EHVベクターが、EHV-1、好ましくはRacHである、節1~52のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクター。
54.節1~53のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクターを含むことを特徴とする哺乳動物宿主細胞。
55.節1~53のいずれか1節に記載の複製欠損EHVベクターを培養するためのEHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現する細胞株。
56.EHVのUL8および/またはUL18またはその機能性部分を含む発現カセットを含むプラスミドを含む細胞株であって、UL8および/またはUL18またはその機能性部分を発現している細胞株。
57.細胞が、限定はされないが、Vero細胞、RK-13(ウサギ腎臓)、ST(ブタ睾丸)、MDCK(メイディン・ダービー・イヌ腎臓細胞)、MDBK(メイディン・ダービー・ウシ腎臓細胞)およびウマ真皮細胞(NBL-6)の群から選択される、節55または56に記載の細胞株。
58.細胞株がST細胞株である、節55~57のいずれか1節に記載の細胞株。
59.節1~53のいずれか1節に記載の不活性化UL18および/またはUL8を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生する方法。
60.
a)野生型EHVまたは弱毒化EHVを提供するステップ;
b)ステップa)のEHVのUL18および/またはUL8を不活性化するステップならびにUL18および/またはUL8の完全または機能性部分を持たないEHVクローンを選択するステップ;
c)UL18および/またはUL8またはその機能性部分を発現する補完細胞株を提供するステップ;
d)ステップb)からのEHVをステップc)からの補完細胞株と培養することによって複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を得るステップ
を含む複製欠損ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)を産生する方法。
61.節1~53のいずれか1節に記載の1つまたは複数のEHVベクターを含む免疫原性組成物。
62.前記免疫原性組成物が、薬学的に許容される担体をさらに含む、節61に記載の免疫原性組成物。
63.前記免疫原性組成物がワクチンである。節61または62に記載の免疫原性組成物。
64.節61~63のいずれか1節に記載の免疫原性組成物をそのような対象に投与するステップを含む、対象を免疫する方法。
65.必要とする対象において病原体によって引き起こされる臨床徴候を処置または防止する方法であって、節61~63のいずれか1節に記載の治療有効量の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法。
66.前記免疫原性組成物をそのような対象に投与するステップを含む、対象を免疫する方法で使用するための節61~63のいずれか1節に記載の免疫原性組成物。
67.必要とする対象において病原体によって引き起こされる臨床徴候を処置または防止する方法であって、治療有効量の前記免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法で使用するための節61~63のいずれか1節に記載の免疫原性組成物。
68.前記対象が、ブタ、ウシ、家禽、ネコ、ウマおよびイヌからなるリストから選択される、節64~67のいずれか1節に記載の方法または使用。
69.免疫原性組成物が1回投与される、節64~68のいずれか1節に記載の方法または使用。
70.免疫原性組成物が2回またはそれ以上の投与で投与される、節64~69のいずれか1節に記載の方法。
【実施例0149】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示されている技法は本発明の実施において十分に機能することを本発明者らが発見した代表的な技法であり、したがって、それを実施するための好ましい方式を構成するとみなすことができることが当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。
【0150】
(実施例1)
EHV-1 ORF43(UL18)またはORF54(UL8)遺伝子を発現する安定細胞株の生成
合成、コドン最適化ORF43(ORF43(co))遺伝子、配列番号3(EHV-1 RacH株ORF43遺伝子のヌクレオチド配列に基づく、配列番号1)は、XhoI/BamHIによって消化され、同じ制限エンドヌクレアーゼによって消化されたpCEPベクター(Invitrogen、カタログ番号V044-50)にライゲートされた。生じるプラスミド、pCEP-ORF43(co)(
図1)は、線状化され、ブタ睾丸細胞(ST)にトランスフェクトされた。ハイグロマイシンによる2週間の選択後、ORF43(co)遺伝子を発現する安定細胞(ST-43-CO細胞)は、複製欠損EHV-1ウイルスをレスキューするために使用された。
【0151】
合成、コドン最適化ORF54(ORF54(co))遺伝子、配列番号4(EHV-1 RacH株ORF54遺伝子のヌクレオチド配列に基づく、配列番号2)は、XhoI/BamHIによって消化され、同じ制限エンドヌクレアーゼによって消化されたpCEPベクター(Invitrogen、カタログ番号V044-50)にライゲートされた。生じるプラスミド、pCEP-ORF54(co)(
図2)は、線状化され、ブタ睾丸細胞(ST)にトランスフェクトされた。ハイグロマイシンによる2週間の選択後、ORF54(co)遺伝子を発現する安定細胞(ST-54-CO細胞)は、複製欠損EHV-1ウイルスをレスキューするために使用された。
【0152】
(実施例2)
ベクター構築および複製欠損EHVウイルスレスキュー
ORF43を置き換えるmCMVプロモーター駆動RFPを有するEHV-1 ΔORF43ウイルス
ORF43遺伝子の171ヌクレオチド上流(配列番号5)および265ヌクレオチド下流(配列番号6)に隣接する複数のクローニング部位(MCS)を有する合成DNAが設計された。mCMV(マウスCMVプロモーター)駆動Red蛍光タンパク質(RFP/mCherry)(Shaner et al., 2004)がレポーター遺伝子として使用された。転写終結シグナルおよびmRNA安定化機能として、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列(BGHpA、Goodwin & Rottman, 1992)が、レポーター(RFP)遺伝子の3’端の直接下流に使用された。MluI/SalI制限エンドヌクレアーゼによって消化されたRFP遺伝子がMCSにクローニングされ、プラスミドpUC43-mCMV-RFPが生成された。このプラスミドから、ORF43隣接部に隣接するmCMV-RFP-BGHポリAを有するDNA断片(配列番号7)が消化され、RED組換えシステムを使用してEHV-1 RacH BAC DNAにクローニングされ、EHV-1-43-mCMV RFPが生成された。Red組換えはORF43をノックアウトし、それをmCMV-RFP-BGHポリAと置き換える(
図3)。カナマイシン選択後、EHV-1-43-mCMV RFP BAC DNAは後にST-43-CO細胞にトランスフェクトされ、組換えウイルスrEHV-1-43-mCMV-RFPがレスキューされた。
【0153】
(実施例3)
ORF43を置き換える内在性EHV-1プロモーター駆動RFPを有するEHV-1ΔORF43ウイルス
置き換え複製欠損EHV-1ウイルスの別のバージョンにおいて、ORF43は、改変RED組換えプロトコールを使用してインフレームでRFP遺伝子によって置き換えられた(
図5)。まず、ORF43遺伝子の171ヌクレオチド上流(配列番号5)および265ヌクレオチド下流(配列番号6)に隣接する、合成DNA SceI/カナマイシンDNAが設計された。このDNA断片(配列番号8)は、EHV-1 BAC DNAを持つ大腸菌(E.coli)K12 GS1783へと形質転換された。カナマイシンによる選択は、ORF43がSceI/カナマイシン断片によって置き換えられた中間体EHV-1クローンを生じた。次に、ORF43遺伝子の161ヌクレオチド上流(配列番号9)および120ヌクレオチド下流(配列番号10)に隣接するRFP遺伝子が上記のクローンへと形質転換され、ORF43遺伝子がインフレームでRFPによって置き換えられたEHV-1 BAC DNAクローンが選択された(EHV-1-43-RFP)(
図4)。EHV-1-43 RFP BAC DNAはST-43-CO細胞へと形質転換され、組換えウイルスrEHV-1-43-RFPをレスキューした。本発明者らは、外部プロモーターを含まなかったため、本シナリオでのRFP発現は、内在性ORF43プロモーターによる生来のEHV-1遺伝子発現に依存する。
【0154】
(実施例4)
ORF54を置き換えるmCMVプロモーター駆動RFPを有するEHV-1ΔORF54ウイルス
ORF54遺伝子の200ヌクレオチド上流(配列番号11)および200ヌクレオチド下流(配列番号12)に隣接するMCSを有する合成DNAが設計された。MluI/SalI制限エンドヌクレアーゼによって消化されたmCMV駆動RFP遺伝子がMCSにクローニングされ、プラスミドpUC54-mCMV-RFPが生成された。このプラスミドから、ORF54隣接部に隣接するmCMV-RFP-BGHポリAを有するDNA断片(配列番号13)がI-CeuIによって消化され、RED組換えシステムを使用してEHV-1 RacH BAC DNAにクローニングされ、EHV-1-54-mCMV RFPが生成された。Red組換えはORF54をノックアウトし、同じ領域にmCMV-RFP-BGHポリAを挿入した(
図6)。カナマイシン選択後、EHV-1-54-mCMV RFP BAC DNAは後にST-54-CO細胞にトランスフェクトされ、組換えウイルスrEHV-1-54-mCMV-RFPがレスキューされた。
【0155】
(実施例5)
ORF43またはORF54に導入遺伝子を有する複製欠損EHV-1ウイルス
通常のST細胞、ST-43-CO細胞およびST-54-CO細胞は、異なる感染多重度(MOI)のEHV-1/RacH、rEHV-1-43-mCMV-RFP、rEHV-1-43-RFPおよびrEHV-1-54-mCMV-RFPウイルスを感染させた。感染細胞は、蛍光顕微鏡によって遺伝子発現およびプラーク形成を24時間ごとに観察された。細胞変性効果(CPE)は光学顕微鏡によってモニターされ;ウイルスは70%CPEで回収され、TCID50によって力価測定された。
図7に見られるように、EHV-1/RacHウイルスは、3つの細胞株全てにおいて顕著なCPEを引き起こす。EHV-1/RacHウイルスを感染させた全ての細胞で観察された特有のプラークは、実施例1および実施例2で生成された安定細胞ならびに通常のST細胞がEHV-1複製を支持することを確立した。
【0156】
通常のST細胞およびST-43-CO細胞は、rEHV-1-43-RFPウイルスを感染させた(
図8)。両細胞はrEHV-1-43-RFPウイルスを感染させたが(GFP発現から見られるように)、CPEおよびウイルス産生はST-43-CO細胞においてのみ観察された。導入遺伝子(RFP)発現は、全ての感染細胞で観察されたが、目に見えるCPEまたはプラークはST-43-CO細胞においてのみ観察された。
【0157】
次に、通常のST細胞およびST-43-CO細胞は、rEHV-1-43-mCMV-RFPウイルスを感染させた(
図9)。両細胞はrEHV-1-43-mCMV-RFPウイルスを感染させたが(GFP発現から見られるように)、CPEおよびウイルス産生はST-43-CO細胞においてのみ観察された。導入遺伝子(RFP)発現は、全ての感染細胞で観察されたが、目に見えるCPEまたはプラークはST-43-CO細胞においてのみ観察された。
【0158】
上記のデータは、ORF43遺伝子を欠如するEHV-1ウイルスは、ORF43タンパク質を発現する細胞において(ST-43-CO細胞において)のみ複製でき、通常の細胞では複製できないことを確認する。データは、ORF43が、外部プロモーター(mCMVなど)によって感染細胞において発現され得る、またはEHV-1遺伝子の一部として(外部プロモーターなしで内在性プロモーターによる)異なる導入遺伝子によって置き換えられ得ることも実証する。
【0159】
最後に、通常のST細胞およびST-54-CO細胞は、rEHV-1-54-mCMV-RFPウイルスを感染させた(
図10)。両細胞はrEHV-1-54-mCMV-RFPウイルスを感染させたが(GFP発現から見られるように)、CPEおよびウイルス産生はST-54-CO細胞においてのみ観察された。導入遺伝子(RFP)発現は、全ての感染細胞で観察されたが、目に見えるCPEまたはプラークはST-54-CO細胞においてのみ観察された。上記のこのデータは、ORF54遺伝子を欠如するEHV-1ウイルスは、ORF54タンパク質を発現する細胞において(ST-54-CO細胞において)のみ複製でき、通常の細胞では複製できないことを確認する。データは、ORF54が、外部プロモーター(mCMVなど)によって感染細胞において発現され得る異なる導入遺伝子によって置き換えられ得ることも実証する。
【0160】
本発明者らは、異なる細胞株で産生される様々な組換えウイルスの力価を比較した(3回反復)。データは、ORF43またはORF54を欠如するウイルスが通常の細胞で複製できないことをはっきりと実証する(表1)。
【表1】
【0161】
(実施例6)
他の挿入部位に導入遺伝子を有する複製欠損EHV-1ウイルス
2ステップred組換えによってORF43を完全にノックアウトする隣接部を有する合成DNAが設計され、EHV-1/HA BAC DNA(HA配列、配列番号14)を持つGS1783細胞へと形質転換される。2ステップred組換え後、ORF43はノックアウトされ(サンガーシーケンシングによって確かめられた、データは示さない)、EHV-1-ΔORF43-HAが生成される。EHV-1-ΔORF43-HA BAC DNA(ORF1/3部位にmCMV駆動HA遺伝子を有し、ORF43を欠如する)がST-43-CO細胞にトランスフェクトされ、組換えウイルス:rEHV-1-ΔORF43-HAがレスキューされる。
【0162】
2ステップred組換えによってORF54を完全にノックアウトする隣接部を有する合成DNAが設計され、EHV-1/HA BAC DNA(HA配列、配列番号14)を持つGS1783細胞へと形質転換される。2ステップred組換え後、ORF54はノックアウトされ(サンガーシーケンシングによって確かめられた、データは示さない)、EHV-1-ΔORF54-HAが生成される。EHV-1-ΔORF54-HA BAC DNA(ORF1/3部位にmCMV駆動HA遺伝子を有し、ORF54を欠如する)がST-43-CO細胞にトランスフェクトされ、組換えウイルス:rEHV-1-ΔORF54-HAがレスキューされる。
通常のST細胞とST-43-CO細胞を、異なるMOIのrEHV-1-ΔORF43-HAで感染させる場合、CPE/ウイルス産生は、感染ST-43-CO細胞においてのみ観察される。感染細胞でのHA発現は、抗HA抗体を使用するIFA(免疫蛍光アッセイ)によって確かめられ得る。
通常のST細胞とST-54-CO細胞を、異なるMOIのrEHV-1-ΔORF54-HAで感染させる場合、CPE/ウイルス産生は、感染ST-54-CO細胞においてのみ観察される。感染細胞でのHA発現は、抗HA抗体を使用するIFA(免疫蛍光アッセイ)によって確かめられ得る。
【0163】
(実施例7)
ブタにおいてin vivoで別の挿入部位でのHAを発現する複製欠損EHV-1ベクターワクチンの試験
2ステップred組換えによってORF43を完全にノックアウトする隣接部を有する合成DNAが設計され、EHV-1/HA BAC DNA(HA配列、配列番号25)を持つGS1783細胞へと形質転換される。2ステップred組換え後、ORF43はノックアウトされ(サンガーシーケンシングによって確かめられた、データは示さない)、EHV-1-ΔORF43-HAが生成される。EHV-1-ΔORF43-HA BAC DNA(ORF1/3部位にmCMV駆動HA遺伝子を有し、ORF43を欠如する)がST-43-CO細胞にトランスフェクトされ、組換えウイルス:rEHV-1-ΔORF43-HAがレスキューされる。
非補完ST細胞およびST-43-CO細胞をrEHV-1-ΔORF43-HAで感染させる場合、CPE/ウイルス産生は感染ST-43-CO細胞においてのみ観察される。感染細胞におけるHA(配列番号25)発現は、抗HA抗体を使用するIFA(免疫蛍光アッセイ)によって確かめられ得る(
図19)。
【0164】
複製欠損EHV-1ウイルスのワクチンとしての能力を試験するため、5匹の11週齢のブタはrEHV-1-ΔORF43-HAウイルスを2回(0日目および14日目)ワクチン接種された。動物の対照群はプラセボをワクチン接種された。ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイは、全ての血清試料から実施され、ワクチン接種したブタが複製欠損EHV-1ウイルスに存在する抗原に対する抗体を持つかどうか試験された。
5匹のワクチン接種した動物全てが、1回目のワクチン接種後に顕著なHI力価を示した。HI力価は、2回目のワクチン接種後に全てのワクチン接種したブタでさらに増加した。対照動物群は、類似の試験日に顕著なHI力価を示さなかった(
図20)。
【0165】
(実施例8)
組換えEHV-1ベクターワクチンにおけるp455プロモーターを有するORF70(US4)挿入部位の使用および組換えウイルスの構築
インフルエンザヘマグルチニンH3亜型(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、GenBank受入番号:ABS50302.2)は、pU70-p455-71K71にクローニングされ(
図11、配列番号15)、トランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71を生成し、H3をp455プロモーターおよび新しい71pA ポリアデニル化シグナルの調節下に置き、ORF70への挿入のための組換え領域を有するカセットを隣接させた(
図12、配列番号16)。RED組換えシステム(Tischer et al. 2006 Biotechnol. Tech. 40, 191-197)が使用され、pRacH-SEのORF70に発現カセットp455-H3-71がクローニングされ、pRacH-SE70-p455-H3が生成された(
図13)。
PK/WRL細胞はpRacH-SE70-p455-H3をトランスフェクトされ、組換えrEHV-1 RacH-SE70-p455-H3ウイルスがレスキューされた。発現カセットの挿入は、挿入領域の高忠実度PCR産物のシーケンシングによって確かめられた。感染細胞での導入遺伝子の発現は、間接免疫蛍光アッセイによって分析された(IFA、
図14)。
【0166】
(実施例9)
ブタの一価のEHV-1ベクターA型インフルエンザウイルスワクチン(H3ワクチン)のin vivo試験
潜在的ワクチンとしてのrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3の有効性を試験するため、ブタIAVに対する母系由来免疫がない(移行抗体がない)子ブタは、それぞれ2および5週齢で、筋肉内に、1×10
7TCID50/mlの用量でrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3によって2回ワクチン接種され、または5週齢のみで接種された(1回ワクチン接種)。子ブタの非ワクチン接種群は陰性対照となり、製造業者の指示(ワクチン接種の時点以外)に従って市販の不活性化ブタIAVワクチンによって2および5週齢でワクチン接種された動物の群は陽性対照となる(安楽死させた)。8週齢では、陰性対照群以外の全ての動物が、H3N2ブタIAVチャレンジ株(H3がRacH-SE-70-p455-H3で使用されるH3ワクチン抗原とは異種性である、ヨーロッパ野外ウイルス単離株R452-14)の1×10
7 TCID50/mlの投与量の気管内適用によってチャレンジされた。非ワクチン接種および非チャレンジ動物は陰性対照となったが、非ワクチン接種だがチャレンジされた動物はチャレンジ対照となった。選択された時点で、体温が測定され血液試料が採取された。チャレンジ1日後、各群の半分の動物を安楽死させ、肺のブタIAV感染に典型的な病変がスコア化され、それぞれ動物当たり左および右肺につき3つの肺試料が採取され、肺ホモジネートの感染性ブタIAV力価が決定され、気管支肺胞上皮の洗浄液(BALF)が採取された。チャレンジ3日後の群当たり、動物の残り半分で同じ手順が実施された。
ブタIAVチャレンジウイルス適用後の体温上昇を調べる場合、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3を2回ワクチン接種した子ブタとは異なり、非ワクチン接種動物はチャレンジ1日後に約1℃の体温上昇を示した(
図15)。
【0167】
チャレンジ後1日または3日で安楽死させた動物において肺スコアが評価された。ブタIAV感染と関連する典型的な肺の病変は陰性対照群の子ブタでは見られなかった。しかし、チャレンジ対照群では、肺の病変(平均範囲6~7%)が観察された。最終的に、rEHV1-RacH-SE-70-p455-H3ワクチンによって2回ワクチン接種された子ブタでは、平均肺病変スコアが実質的に小さかった(4%より小さい)(
図16)。
【0168】
チャレンジ後1または3日で安楽死させた動物において平均ブタIAV肺力価が評価された。陰性対照群の子ブタの肺試料においてブタIAVを示さないが、チャレンジ対照群は5より多い(3日目)から7logより多い(1日目)範囲の肺組織1g当たりのウイルス力価を示した。全く対照的に、群平均値は、rEHV1 RacH-SE-70-p455-H3ワクチンで1回ワクチン接種した群では、約2logまたはそれより少なくなるまで強く減少し、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3ワクチンで2回ワクチン接種した群では、検出できないレベルまで減少した(
図17)。
【0169】
ワクチン接種後、ブタIAV中和抗体の誘導を試験する場合、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3ワクチンで1回ワクチン接種した動物からの血清は、最初のワクチン接種後3週間で約160の範囲の中和価の逆数を示し、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3ワクチンで2回ワクチン接種した動物からの血清は、2回目のワクチン接種後3週間で約2560の範囲の中和価を示したが、非ワクチン接種群からの血清は検出可能なブタIAV中和抗体レベルを有さなかった(
図18)。
【0170】
まとめると、この実施例からのデータは、EHV-1ベクターバックグラウンドのORF70に挿入された導入遺伝子が外部プロモーターを使用して発現され、生じる組換えEHV-1ベクターが潜在的ワクチン候補としてin vivoで使用され得ることを実証する。
【0171】
(参考文献)
以下の参考文献は、それにより本明細書に記載のものを補足する例示的な処置上のまたは他の詳細が提供される限りでは、明確に参照により本明細書に組み込まれる。