IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西光エンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図1
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図2
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図3
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図4
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図5
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図6
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図7
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図8
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図9
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図10
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図11
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図12
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図13
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図14
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図15
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図16
  • 特開-マイクロ波乾燥機 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124749
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】マイクロ波乾燥機
(51)【国際特許分類】
   F26B 3/347 20060101AFI20230830BHJP
   H05B 6/70 20060101ALI20230830BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20230830BHJP
   H05B 6/78 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F26B3/347
H05B6/70 E
H05B6/80 Z
H05B6/78 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022044784
(22)【出願日】2022-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2022027956
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500360116
【氏名又は名称】西光エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092923
【弁理士】
【氏名又は名称】石垣 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187757
【弁理士】
【氏名又は名称】石垣 春樹
(72)【発明者】
【氏名】岡村 邦康
(72)【発明者】
【氏名】辻 浩志
【テーマコード(参考)】
3K090
3L113
【Fターム(参考)】
3K090AA20
3K090AB04
3K090CA01
3K090DA01
3K090EA01
3L113AA01
3L113AB06
3L113AC13
3L113AC24
3L113AC67
3L113AC75
3L113BA39
3L113CB16
3L113DA11
(57)【要約】
【課題】載置トレー上に置く被乾燥物の位置に関係なく、載置トレー上のすべての被乾燥物を温度ムラなく良好に乾燥することができる大量生産に対応し得るマイクロ波乾燥機を提供する。
【解決手段】本発明のマイクロ波乾燥機1は、マイクロ波Mを発振させるマイクロ波発振装置3と、発振されたマイクロ波Mを乾燥室本体5内に導く導波管7と、被乾燥物Aを載置した載置トレー9をセットし、搬入・搬出するための開口6を少なくとも一つ備えた乾燥室本体5と、を具備しており、上記導波管7は、開口部8を乾燥室本体5の側壁面13より内方に突出させた状態で設けると共に、開口部8が乾燥室本体5の天井面15を向くように上記側壁面13に対する導波管7の垂直取付け角度θを上向きに設定している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発振させるマイクロ波発振装置と、発振されたマイクロ波を乾燥室本体内に導く導波管と、被乾燥物を載置した載置トレーをセットし、搬入・搬出するための開口を少なくとも1つ備えた乾燥室本体と、を具備したマイクロ波乾燥機であって、
上記導波管は、開口部を乾燥室本体の側壁面より内方に突出させた状態で設けると共に、開口部が乾燥室本体の天井面を向くように上記側壁面に対する導波管の垂直取付け角度を上向きに設定したことを特徴とするマイクロ波乾燥機。
【請求項2】
上記載置トレーは、乾燥室本体内に設けられるターンテーブル上にセットされて、回転しながら被乾燥物を乾燥できるように構成されており、
上記導波管の垂直取付け角度は、導波管の開口部の開口中心を通り、導波管の中心軸に沿って延びる伝播中心線と天井面とがなす入射角と、該伝播中心線が乾燥室本体の天井面と交わる交点から上記ターンテーブルの回転中心に向けて延びる反射中心線と天井面とがなす反射角と、が等しくなる角度に設定されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項3】
上記導波管の垂直取付け角度は、上記入射角が30°以上50°以下の範囲になる角度に設定されていることを特徴とする請求項2記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項4】
上記導波管の中心軸回りの垂直軸に対する捩り取付け角度は、導波管の電界作用面を乾燥室本体の対向する側壁面や開閉扉の内壁面に向けることができる範囲内の角度に設定されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項5】
上記導波管の捩り取付け角度は、伝播方向を見て右回りを「+」としたとき、垂直軸に対して-20°以上、+20°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とする請求項4記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項6】
上記導波管は、平面視において、該導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通る向きで上記側壁面に取り付けられており、上記側壁面に対する導波管の水平取付け角度は、上記側壁面に直交し、ターンテーブルの回転中心を通る水平中心線に対する左右の振れ角がそれぞれ5°以上25°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とする請求項2~5のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項7】
上記導波管は、単一の乾燥室本体に対して複数設けられており、近接する二つの導波管のそれぞれの中心軸がターンテーブルの回転中心で交わる導波管の間の水平取付け角度は、10°以上50°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とする請求項6記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項8】
上記導波管は、電界作用面が左右方向を向くように取り付けられた方形導波管であり、
上記側壁面から乾燥室本体内に突出する導波管の電界作用面の近傍には、被乾燥物及び他の側壁面や開閉扉の内壁面を含む構造物が存在しないように導波管が取り付けられていることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項9】
上記導波管は、乾燥機本体の取り付けられる側壁面の外側と内側とで分割することができる分割構造を有する導波管であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機。
【請求項10】
上記乾燥室本体は、上下方向に複数段積み上げることによって構成される段積み構造を有しており、
各段の乾燥室本体に対して、上記一組または複数組のマイクロ波発振装置及び導波管が取り付けられていることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体である被乾燥物にマイクロ波を照射して所定の乾燥状態に乾燥させるマイクロ波乾燥機に係り、特に、マイクロ波発振装置によって発振されたマイクロ波を、乾燥室本体内に導く導波管の取付け位置と取付け角度の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から誘電体である被乾燥物を所定の乾燥状態に乾燥させる装置として、被乾燥物の原料中に含まれる成分を損なうことなく高品質の乾燥状態を得ることができる乾燥装置としてマイクロ波を利用したマイクロ波乾燥機が使用されている。
また、このようなマイクロ波乾燥機による生産性を向上させる構造として、下記の特許文献1に示すようにマイクロ波発振装置と導波管によって構成されるマイクロ波照射装置を乾燥室本体の側壁の一面に設けたものを上下方向に複数段積み重ねた構造のマイクロ波乾燥機も開発されている。
【0003】
また、図16及び図17に示すように乾燥室本体105内に収容される載置トレー109上の被乾燥物Aの温度分布が一様になるように載置トレー109を回転させるターンテーブル111を備えたマイクロ波乾燥機101も開発されている。更に、マイクロ波の加熱ムラに伴う乾燥ムラを少なくするための構成として、複数の導波管107A、107Bの水平取り付け角度を異ならせて設置するようにした構成も試作されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-113448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記ターンテーブル111を採用し、水平取付け角度を異ならせて複数の導波管107A、107Bを設置しても、図16及び図17に示すように載置トレー109上に被乾燥物Aを複数並べて配置した場合の被乾燥物Aの温度分布を調べると、導波管107の開口部108に近い載置トレー109の外周部側で温度が高く、中心部側で温度が低くなるという結果が得られた。
これは、導波管107の開口部108から放射されたマイクロ波の電界が載置トレー109のどの位置に被乾燥物Aを置くかによって、被乾燥物Aに作用する電界強度が変わることが関係していると思われる。
【0006】
即ち、マイクロ波の電界が、水分を含む誘電体である被乾燥物Aに作用することにより、被乾燥物Aは加熱される。
そして、マイクロ波は導波管107の開口部108からの距離が離れるに従って減衰し、金属面である乾燥室本体105の側壁面113等に衝突することによって反射する。
その結果、乾燥室本体105内では伝播方向に向かうマイクロ波と反射方向に向かうマイクロ波とが干渉するため、被乾燥物Aが載置された載置トレー109上の位置によって電界強度に強弱が発生していた。
【0007】
この電界強度の強弱によって被乾燥物Aには加熱ムラが生じ、この加熱ムラが乾燥後の被乾燥物Aの温度ムラを招いて、被乾燥物Aの乾燥品質を低下させる要因になっていた。
具体的には、導波管107の開口部108付近と乾燥室本体105の側壁面113の近くで局所的に強い電界が発生するため、載置トレー109の外周側の被乾燥物Aに、その強い電界が作用して被乾燥物Aの温度が高くなるものと考えられる。一方、載置トレー109の中心部側では、外周側の被乾燥物Aに作用することによってマイクロ波のエネルギーが吸収されて弱くなった電界が作用するため被乾燥物Aの温度が低くなるものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような点に基づいてなされたものであってその目的とするところは、乾燥室本体内の載置トレー上に置く被乾燥物の位置に関係なく、載置トレー上のすべての被乾燥物を温度ムラなく良好に乾燥することができる、大量生産に対応し得るマイクロ波乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するべく本発明の請求項1によるマイクロ波乾燥機は、マイクロ波を発振させるマイクロ波発振装置と、発振されたマイクロ波を乾燥室本体内に導く導波管と、被乾燥物を載置した載置トレーをセットし、搬入・搬出するための開口を少なくとも一つ備えた乾燥室本体と、を具備したマイクロ波乾燥機であって、上記導波管は、開口部を乾燥室本体の側壁面より内方に突出させた状態で設けると共に、開口部が乾燥室本体の天井面を向くように上記側壁面に対する導波管の垂直取付け角度を上向きに設定したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2によるマイクロ波乾燥機は、請求項1記載のマイクロ波乾燥機において、上記載置トレーは、乾燥室本体内に設けられるターンテーブル上にセットされて、回転しながら被乾燥物を乾燥できるように構成されており、上記導波管の垂直取付け角度は、導波管の開口部の開口中心を通り、導波管の中心軸に沿って延びる伝播中心線と天井面とがなす入射角と、該伝播中心線が乾燥室本体の天井面と交わる交点から上記ターンテーブルの回転中心に向けて延びる反射中心線と天井面とがなす反射角とが等しくなる角度に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3によるマイクロ波乾燥機は、請求項2記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管の垂直取付け角度は、上記入射角が30°以上50°以下の範囲になる角度に設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4によるマイクロ波乾燥機は、請求項1~3のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管の中心軸回りの垂直軸に対する捩り取付け角度は、導波管の電界作用面を乾燥室本体の対向する側壁面や開閉扉の内壁面に向けることができる範囲内の角度に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項5によるマイクロ波乾燥機は、請求項4記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管の捩り取付け角度は、伝播方向を見て右回りを「+」としたとき、垂直軸に対して-20°以上、+20°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6によるマイクロ波乾燥機は、請求項2~5のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管は、平面視において、該導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通る向きで上記側壁面に取り付けられており、上記側壁面に対する導波管の水平取付け角度は、上記側壁面に直交し、ターンテーブルの回転中心を通る水平中心線に対する左右の振れ角がそれぞれ5°以上25°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項7によるマイクロ波乾燥機は、請求項6記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管は、単一の乾燥室本体に対して複数設けられており、近接する二つの導波管のそれぞれの中心軸がターンテーブルの回転中心で交わる導波管の間の水平取付け角度は、10°以上50°以下の範囲になるように設定されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項8によるマイクロ波乾燥機は、請求項1~7のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管は、電界作用面が左右方向を向くように取り付けられた方形導波管であり、上記側壁面から乾燥室本体内に突出する導波管の電界作用面の近傍には、被乾燥物及び他の側壁面や開閉扉の内壁面を含む構造物が存在しないように導波管が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項9によるマイクロ波乾燥機は、請求項1~8のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機において、上記導波管は、乾燥機本体の取り付けられる側壁面の外側と内側とで分割することができる分割構造を有する導波管であることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項10によるマイクロ波乾燥機は、請求項1~9のいずれかに記載のマイクロ波乾燥機において、上記乾燥室本体は、上下方向に複数段積み上げることによって構成される段積み構造を有しており、各段の乾燥室本体に対して、上記一組または、複数組のマイクロ波発振装置及び導波管が取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
上記手段によって以下のような効果が得られる。
先ず、本発明のマイクロ波乾燥機には、マイクロ波を発振させるマイクロ波発振装置と、発振されたマイクロ波を乾燥室本体内に導く導波管と、被乾燥物を載置した載置トレーをセットし、搬入・搬出するための開口を少なくとも1つ備えた乾燥室本体と、を具備している。
更に、上記導波管は、開口部が乾燥室本体の側壁面より内方に突出させた状態で設けられており、開口部が乾燥室本体の天井面を向くように上記側壁面に対する導波管の垂直取付け角度が上向きに設定されている。
【0020】
これにより、載置トレー上に載置された被乾燥物には、導波管の開口部から放射される電界強度が強く加熱され易いマイクロ波の直接波のみではなく、該直接波が天井面に当たって反射することで電界強度が弱まった反射波が多く作用するようになって加熱ムラが小さくなるから、乾燥後の被乾燥物の温度ムラによって生じる乾燥品質のばら付きが低く抑えられるようになる。
【0021】
また、上記載置トレーが、乾燥室本体内に設けられるターンテーブル上にセットされて、回転しながら被乾燥物が乾燥できるように構成されており、上記導波管の垂直取付け角度が、導波管の開口部の開口中心を通り、導波管の中心軸に沿って延びる伝播中心線と天井面とがなす入射角と、該伝播中心線が乾燥室本体の天井面と交わる交点から上記ターンテーブルの回転中心に向けて延びる反射中心線と天井面とがなす反射角と、が等しくなる角度に設定されている場合には、導波管の開口部から放射されたマイクロ波は、上記伝播中心線と反射中心線を通ってターンテーブルの回転中心に至る経路を中心にして、その周囲に拡散するように拡がって作用するから、ターンテーブル上にセットされた載置トレー上の被乾燥物は、ターンテーブルの外周部での過剰な加熱が抑えられ、ターンテーブルの中心部での加熱不足が改善されてターンテーブルの回転中心を基準とする半径方向の温度分布が均一になる。
【0022】
また、上記導波管の垂直取付け角度を、上記入射角が30°以上50°以下の範囲になる角度に設定した場合には、上記ターンテーブルの回転中心を基準として拡がるマイクロ波の伝播が最適な状態で実行されるようになる。
また、上記導波管の中心軸回りの垂直軸に対する捩り取付け角度を、導波管の電界作用面を乾燥室本体の対向する側壁面や開閉扉の内壁面に向けることができる範囲内の角度に設定した場合には、導波管の垂直方向あるいは水平方向の取付け位置や乾燥室本体の形状、大きさ等の構造的要因の違い等によって生ずる上記マイクロ波の載置トレー上での放射位置の位置ずれを、上記導波管の垂直方向あるいは水平方向の取付け位置等を変更することなく、導波管の中心軸回りの捩り取付け角度を調整することによって修正することが可能になる。
そして、調整する捩り取付け角度が導波管の電界作用面を乾燥室本体の対向する側壁面や開閉扉の内壁面に向けることができる範囲に設定することによって、導波管の過剰な捩りによって生ずる載置トレー外側での被乾燥物に対するマイクロ波の放射量の増大による温度上昇を抑制して載置トレー全面の温度分布を均一にすることが可能になる。
更に、上記導波管の捩り取付け角度を、伝播方向を見て右回りを「+」としたとき、垂直軸に対して-20°以上、+20°以下の範囲になるように設定した場合には、上記ターンテーブルの回転中心を基準として拡がるマイクロ波の伝播が偏りなく最適な範囲に保たれるようになる。
【0023】
また、上記導波管を、平面視において、該導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通る向きで、上記側壁面に取り付け、上記側壁面に対する導波管の水平取付け角度を、上記側壁面に直交しターンテーブルの回転中心を通る水平中心線に対する左右の振れ角がそれぞれ5°以上25°以下の範囲になるように設定した場合には、同一の側壁面に対して複数の導波管を取り付けることが可能になり、導波管の開口部から放射されるマイクロ波の伝播も、その水平取付け角度に影響を与えることなく円滑に実行されるようになる。
【0024】
また、導波管を、単一の乾燥室本体に対して複数設け、近接する二つの導波管のそれぞれの中心軸がターンテーブルの回転中心で交わる導波管の間の水平取付け角度を、10°~50°の範囲になるように設定した場合には、マイクロ波出力を大きくして被乾燥物の乾燥効率を向上させることができる。また、二つの導波管の開口部から放射されるマイクロ波には位相差に変化が生じ、これらが干渉することで定在波が固定されないため、載置トレー上の被乾燥物の温度分布にもばら付きが発生する。そこで、上記導波管の間の水平取付け角度を上記角度の範囲で微調整することで二つの導波管の開口部から放射されるマイクロ波の伝播に対する悪影響を最小限にして、円滑に乾燥が実行されるようになる。
【0025】
また、導波管を、電界作用面が左右方向を向くように取り付けられた方形導波管とし、上記側壁面から乾燥室本体内に突出する導波管の電解作用面の近傍に被乾燥物及び他の側壁面や開閉扉の内壁面を含む構造物が存在しないように導波管を取り付けた場合には、導波管の開口部付近と乾燥室本体の側壁面付近で局所的に発生する強い電界が被乾燥物自体の品温と乾燥室本体内の温度に与える悪影響を防止して、被乾燥物の均一でムラのない高品質の乾燥が実現される。
【0026】
また、乾燥室本体における導波管が取り付けられる側壁面の外側と内側とに分割することができる分割構造の導波管を採用した場合には、メンテナンスが容易になり、分割した一方のみに故障や不具合が生じた場合に、故障ないし不具合が生じているその一方のみを交換、修理、清掃等、メンテナンスすることで、当該故障や不具合を解消することが可能になる。
【0027】
また、上下方向に複数段積み上げることによって構成される段積み構造の乾燥室本体を採用して、各段の乾燥室本体に対して、上記一組または複数組のマイクロ波発振装置及び導波管が取り付けられている場合には、大量の被乾燥物を一挙に乾燥できるようになって被乾燥物の乾燥生産性が向上する。
また、各段の乾燥室本体の側壁面に対して導波管が取り付けられているから、乾燥室本体を段積みする際に、マイクロ波発振装置と導波管が邪魔になることもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波乾燥機の全体構成の概略を示す概念図である。
図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施の形態を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す正面図である。
図4】本発明の第1実施の形態を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す左側面図である。
図5】本発明の第1の実施の形態を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す平面図である。
図6】本発明の第1の実施の形態を示す図で、導波管の垂直取付け角度と入射角及び反射角との関係を示す斜視図である。
図7】本発明の第1の実施の形態を示す図で、導波管の捩り取付け角度を示す斜視図である。
図8】本発明の第1の実施の形態を示す図で、導波管を二つ取り付けた場合の水平取付け角度と左右の振れ角との関係を示す平面図である。
図9】本発明の第1の実施の形態を示す図で、導波管内の電界分布と、導波管から放射されたマイクロ波の伝播方向と、マイクロ波の電界の減衰曲線と、を合わせて示す平面図である。
図10】本発明の第1の実施の形態を示す図で、同上、二つの導波管から放射されたマイクロ波の伝播方向を重ねて示す平面図である。
図11】本発明の第2の実施の形態を示す図で、乾燥室本体を上下方向に三段積み上げた構成のマイクロ波乾燥機を示す正面図である。
図12】本発明の第1の実施の形態の測定結果を示す図で、ターンテーブル上の被乾燥物の温度分布と該温度分布のばら付きを示す説明図である。
図13】1基目の導波管を本発明の態様で設置し、2基目の導波管を水平にし、導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通らない態様で設置した場合を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す正面図である。
図14】1基目の導波管を本発明の態様で設置し、2基目の導波管を水平にし、導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通らない態様で設置した場合を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す平面図である。
図15】1基目の導波管を本発明の態様で設置し、2基目の導波管を水平にし、導波管の中心軸がターンテーブルの回転中心を通らない態様で設置した場合を示す図で、ターンテーブル上の被乾燥物の温度分布と該温度分布のばら付きを示す説明図である。
図16】従来のマイクロ波乾燥機の構造を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す正面図である。
図17】従来のマイクロ波乾燥機の構造を示す図で、マイクロ波乾燥機の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図10に示す第1の実施の形態と、図11に示す第2の実施の形態と、の二つの実施の形態を例にとって、本発明のマイクロ波乾燥機について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1図10に示す第1の実施の形態を例にとって、図1に基づいて本発明のマイクロ波乾燥機の全体構成の概略について説明し、続いて図1図10に示す第1の実施の形態に基づいて本発明のマイクロ波乾燥機の要部の構成を具体的に説明する。
【0030】
次に、図11に示す第2の実施の形態に係るマイクロ波乾燥機について、上記第1の実施の形態との差異を中心に説明し、その後、本発明の態様で導波管を二基設けた場合と、図13及び図14に示す態様で導波管を二基設けた場合の測定結果について図12及び図15に基づいて説明する。
最後に、上記二つの実施の形態とは部分的構成を異にする本発明の他の実施の形態について言及する。
【0031】
(1)マイクロ波乾燥機の全体構成の概略(図1参照)
本発明のマイクロ波乾燥機1は、マイクロ波Mを発振させるマイクロ波発振装置3と、発振されたマイクロ波Mを乾燥室本体5内に導く導波管7と、被乾燥物Aを載置した載置トレー9をセットし、搬入・搬出するための開口6を少なくとも1つ備えた乾燥室本体5と、を具備することによって基本的に構成されている。
そして、本発明では上記導波管7が、開口部8を乾燥室本体5の側壁面13より内方に突出させた状態で設けると共に、開口部8が乾燥室本体5の天井面15を向くように上記側壁面13に対する導波管7の垂直取付け角度θを上向きに設定している。
【0032】
また、本実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Aには、セットされた載置トレー9を回転させながら支持するターンテーブル11と、乾燥室本体5の上記開口6に開閉可能な状態で取り付けられ、閉塞時に乾燥室本体5内に遮蔽空間を形成する開閉扉17と、乾燥室本体5に対して接続され、乾燥室本体5内の雰囲気を減圧雰囲気にする一例として真空ポンプ等によって構成される減圧装置19と、外部からエアQを導入するためのエア導入管路21と、エアQの導入と遮断の切替えと導入するエアQの流量を調整するためのエア調整導入弁23と、乾燥中の乾燥室本体5内の温度を計測する一例として放射温度計等によって構成される温度センサ25と、マイクロ波乾燥機1Aの各種の制御を司る制御装置29と、が更に備えられている。
【0033】
また、上記開閉扉17の背面には、乾燥室本体5の開口6を取り囲むように図示しないマイクロ波漏洩防止機構が設けられており、乾燥室本体5内に放射されたマイクロ波Mの外部への漏洩が防止されている。また、該マイクロ波漏洩防止機構の一例として外方には、開閉扉17を閉塞したときのシール性を確保するためのゴムパッキン等によって構成される図示しないシール構造が設けられている。
【0034】
(2)マイクロ波乾燥機の要部の構成(図1図10参照)
本発明のマイクロ波乾燥機1を使用して乾燥を行うことのできる被乾燥物Aとしては、野菜、果物等の食品類の他、工業材料或いは食品や化粧品の添加物材料等、各種用途に使用されているセルロースナノファイバー(CNF)の分散液等、固体または液体の種々の物品が適用可能である。
ここで、セルロースナノファイバー(CNF)とは、木材などの植物繊維から得られるバイオマス素材であり、その繊維幅が数nm~数十nm程度の繊維物質である。CNFは、鉄の5倍以上の強度を有し、ガラスの50分の1程度の低膨張率を有する特性を持つことが知られており、様々な分野への応用が期待されている新素材である。
【0035】
本実施の形態では、被乾燥物Aとしてシャーレ状の容器に水を入れたものを多数用意し、これらを図2及び図5に示すように円板状のターンテーブル11上にセットした平面視円形状の載置トレー9に整列させて載置した。
尚、ターンテーブル11は、図示しない駆動装置から動力を受けてターンテーブル11の外周側の下面に一例として4個設けられるコロ31を介して動力が伝達されて、その回転中心Cの周りに所定の回転速度で所定の回転方向に回転する。
また、載置トレー9上に整列された被乾燥物Aの温度は、一例として各容器に設けられた図示しない品温センサ等によって計測できるように構成されている。
【0036】
また、本実施の形態では、乾燥室本体5として、幅Wが1128mm、奥行きDが1000mm、高さTが499mmの偏平な角箱状の部材を一例として採用しており、乾燥室本体5を構成する天井面15と底面16、そして3枚の側壁面13A、13B、13Cと開閉扉17の内壁面は、すべて金属板によって一例として形成されている。
【0037】
また、本実施の形態では、乾燥室本体5の一つの側壁面13Aに対して、一例として二つの導波管7A、7Bが設けられており、これらの導波管7A、7Bは、伝播方向Yに長い方形導波管であり、対向する電界作用面33L、33Rが左右方向Xを向くように、上記一つの側壁面13Aに対して取り付けられている。
また、これらの導波管7A、7Bは、上記一つの側壁面13Aの外側と内側とで分割することができる分割構造を有しており、乾燥室本体5の外部に位置している部分を本体部35、乾燥室本体5の内部に位置している部分を延長突出部37としている。
【0038】
導波管7の垂直取付け角度θは、図3及び図6に示すように導波管7の開口部8の開口中心Oを通り、導波管7の中心軸に沿って延びる伝播中心線Lと天井面15とがなす入射角θ1と、該伝播中心線Lと交わる交点Bから上記ターンテーブル11の回転中心Cに向けて延びる反射中心線Rと天井面15とがなす反射角θ2と、が等しくなる角度(θ1=θ2で、θ=90°-θ1)に設定されている。
そして、この導波管7の垂直取付け角度θは、上記入射角θ1が30°以上50°以下の範囲になる角度、好ましくは入射角θ1が40°程度になる角度に設定されている。
【0039】
また、導波管7の中心軸回りの垂直軸Vに対する捩り取付け角度αは、主に導波管7の開口部8から放射されるマイクロ波Mの載置トレー9上での放射位置に位置ずれが生じた場合に、その位置ずれを修正する目的で使用される調整用の角度である。
そして、上記捩り取付け角度αは、導波管7の電界作用面33を乾燥室本体5の対向する側壁面13Bや開閉扉17の内壁面(ターンテーブル11の駆動装置等乾燥室本体5内の構造物を含む)に向けることができる範囲内の角度に設定されている。
理論的には、捩り取付け角度αを小さくする(導波管7の電界作用面33を垂直方向に傾ける)ことによって、ターンテーブル11上にセットした載置トレー9上の外側エリアA2の被乾燥物Aに対するマイクロ波Mの放射量が減少して、該外側エリアA2の被乾燥物Aの温度は低くなる。これにより、マイクロ波Mのエネルギーが外側エリアA2の被乾燥物Aに吸収されにくくなるので、相対的にターンテーブル11の回転中心C付近の中心エリアA1の被乾燥物Aの温度が高くなる。
【0040】
しかし、実際には、導波管7A、7Bそれぞれの側壁面13Aに対する左右方向Xと上下方向Zにおける取付け位置や乾燥室本体5の形状や大きさ等の構造的要因等によって必ずしもターンテーブル11の回転中心Cが最も温度が高くなるとは限らない。
そして、このような場合に導波管7の捩り取付け角度αを調整することによって、マイクロ波Mの載置トレー9上での放射位置の位置ずれが修正できるのである。これにより、ターンテーブル11の外側エリアA2と中心エリアA1の被乾燥物Aの温度差を調整することができるので、上記ターンテーブル11の回転中心Cを基準とする半径方向rの温度分布が更に均一になって、乾燥後の被乾燥物Aの乾燥品質が一層向上するのである。
【0041】
具体的には、上記捩り取付け角度αは上記垂直軸Vを基準にして右回りを「+」、左回りを「-」にした場合に、-20°以上、+20°以下の範囲になるように設定されている。
従って、実際には被乾燥物Aの温度分布を見ながら被乾燥物Aの半径方向rの温度分布が最も均一になるように捩り取付け角度αを調整しながら決めることになる。因みに、本実施の形態では導波管7の捩り取付け角度αを右回りに10.5°に設定しており、二つの導波管7A、7Bの捩り取付け角度αは、図4に示すように同方向、且つ同じ角度になるように設定されている。
【0042】
また、導波管7は、平面視において該導波管7の中心軸がターンテーブル11の回転中心Cを通る向きで、乾燥室本体5の上記側壁面13Aに取り付けられている。
そして、上記側壁面13Aに対する導波管7の水平取付け角度は、上記側壁面13Aに直交し、ターンテーブル11の回転中心Cを通る水平中心線Hに対する左右の振れ角β1、β2がそれぞれ5°以上で25°以下の範囲になるように設定されている。
【0043】
ここで、導波管7を2基設ける場合の導波管7の水平取付け角度の設定手順について図10に基づいて説明する。1基目の導波管7から放射されるマイクロ波Mは、乾燥室本体5及び開閉扉17の内壁面や乾燥室本体5内の構造物(ターンテーブル11の駆動系や2基目の導波管7を含む)に反射するだけなのでマイクロ波Mの定在波は固定される。
一方、2基目の導波管7から放射されるマイクロ波Mは、上記1基目の導波管7から放射されるマイクロ波Mとは非同期のため、これら2つのマイクロ波Mには位相差が生じて、これら2つのマイクロ波Mが干渉するためマイクロ波Mの定在波は固定されない。
【0044】
ここで、1基目の導波管7から放射されるマイクロ波Mの放射位置となる開口部8の開口中心Oと、該開口中心Oから延びる伝播中心線Lと天井面15との交点Bと、ターンテーブル11の回転中心Cと、の位置関係を決めると、上記交点Bからターンテーブル11の回転中心Cに向けて延びる反射中心線Rの方向とターンテーブル11上の被乾燥物Aとの位置関係が決まる。
そして、上記反射中心線Rと天井面15とがなす反射角θ2によって、理論上はターンテーブル11上の被乾燥物Aの半径方向rの温度分布が決まることになる。しかし、乾燥室本体5内でのマイクロ波Mの反射を考慮した電磁波と熱伝導の解析を実際に行うと、ターンテーブル11の回転中心Cに位置する被乾燥物Aの温度分布、特にターンテーブル11の回転中心Cが加熱できない場合が生ずる。そこで、上記回転中心Cの加熱が確認できないときに上記水平取付け角度の振れ角β1、β2を0°、±5°、±10°というように変えることでターンテーブル11の回転中心Cが良好に加熱できるように調整する。
【0045】
2基目の導波管7についても同様に、2基目の導波管7から放射されるマイクロ波Mの放射位置となる開口部8の開口中心Oと、該開口中心Oから延びる伝播中心線Lと天井面15との交点B、ターンテーブル11の回転中心Cとの位置関係を変えずに、上記回転中心Cを中心に回転させて2基目の導波管7の上記位置関係を決めて配置する。
しかし、2基目の導波管7は乾燥室本体5に対する位置関係が1基目の導波管7のときと変わっている。そこで、再度電磁波と熱伝導の解析を実際に行ってターンテーブル11の回転中心Cが加熱できるかどうかを確認し、上記回転中心Cの加熱が確認できないときに上記水平取付け角度の振れ角β1、β2を0°、±5°、±10°というように変えることでターンテーブル11の回転中心Cが良好に加熱できるように調整する。
【0046】
このような手順により設定した導波管7に水平取付け角度の振れ角β1、β2の値を踏まえて、本発明では近接する二つの導波管7A、7Bのそれぞれの中心軸がターンテーブル11の回転中心Cで交わる導波管7A、7Bの間の水平取付け角度βが、10°以上50°以下の範囲になるように設定されている。
因みに、本実施の形態では図5及び図8に示すように導波管7A、7Bの左側の振れ角β1を11.8°、右側の振れ角β2を16.8°、二つの導波管7A、7Bの間の水平取付け角度βをβ=β1+β2=28.6°に一例として設定している。
【0047】
また、図5図9及び図10に示すように導波管7が取り付けられている側壁面13Aから乾燥室本体5内に突出している導波管7の延長突出部37の電界作用面33の近傍には、被乾燥物A及び他の側壁面13B、13Cや開閉扉17の内壁面を含む構造物が存在しないように導波管7は取り付けられている。
これにより、上記延長突出部37に近いターンテーブル11の外周エリアA2に位置する被乾燥物Aや上記構造物に対して局所的に生ずる過剰な加熱が防止できる。
また、導波管7の開口部8から直接放射される伝播方向Yに向かうマイクロ波Mの直接波M1ではなく、天井面15に一度当てて電界強度が弱められたターンテーブル11の回転中心Cに向かうマイクロ波Mの反射波M2を使用することで、ターンテーブル11の半径方向rに並ぶ被乾燥物Aの温度分布が均一になり、温度ムラのない高品質の乾燥を実現することが可能になる。
【0048】
[第2の実施の形態](図11参照)
本発明の第2の実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Bは、上述した第1の実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Aを上下方向Zに複数段、積み上げた構成のマイクロ波乾燥機である。
従って、ここでは上記第1の実施の形態の説明で述べたマイクロ波乾燥機1A単体の構成については説明を省略し、マイクロ波乾燥機1Aを積み上げることによって生ずる構成の変更点を中心に説明する。
【0049】
即ち、本実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Bは、図11に示すように乾燥室本体5A、5B、5Cを上下方向Zに三段積み上げることによって構成されており、各段の乾燥室本体5A、5B、5Cには、上述した二組のマイクロ波発振装置3A、3Bと、二組の導波管7A、7Bと、一組のターンテーブル11と、温度センサ25と、が備えられている。
また、三つの乾燥室本体5A、5B、5Cは、縦長の大きなハウジング本体39の内部スペースを三部屋に仕切ることによって設けられており、ハウジング本体39の前面開口41を閉塞する大型のスライド開閉式の一枚の開閉扉43が設けられている。
【0050】
従って、本実施の形態では乾燥室本体5A、5B、5Cごとの開閉扉17やマイクロ波漏洩防止機構及びシール構造は設けられておらず、上記一つのハウジング本体39の前面開口41を取り囲む形で開閉扉43の背面との間に一組のマイクロ波漏洩防止機構とシール構造とが設けられている。
そして、このようにして構成される本実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Bによっても、上記第1の実施の形態に係るマイクロ波乾燥機1Aと同様、導波管7の開口部8周辺において局所的に生ずる過剰な加熱を防止でき、載置トレー9に置く被乾燥物Aの場所に影響を受けない加熱ムラのない均一な被乾燥物Aの乾燥が実現できるようになる。
更に、本実施の形態では、一度に乾燥できる被乾燥物Aの量を多くすることができるから、被乾燥物Aの乾燥生産性が大幅に向上する。
【0051】
[測定結果]
次に、本発明の態様で導波管7を2基設けた図9及び図10に示すマイクロ波乾燥機1Aと、1基目の導波管7を本発明の態様で設置し、2基目の導波管7を水平にし、導波管7の中心軸がターンテーブル11の回転中心Cを通らない態様で、設置した図13及び図14に示すマイクロ波乾燥機10Aと、を使用して行った二つの測定結果について説明する。
この測定では載置トレー9上に並べた69個の容器に水を入れてマイクロ波出力1000Wで、10分、乾燥した場合の被乾燥物Aである水の温度を計測した。
測定結果は図12及び図15に示す通りであり、図12図9及び図10に示す本発明の第1の実施の形態によるマイクロ波乾燥機1Aを使用した場合の被乾燥物Aの温度分布と温度分布のばら付きを示している。一方、図15が上記図13及び図14に示すマイクロ波乾燥機10Aを使用した場合の被乾燥物Aの温度分布と温度分布のばら付きを示している。
【0052】
先ず、図15を見ると載置トレー9の外周エリアA2で最も温度が高くなり、中間部で低くなり、中心エリアA1で再び上昇して幾分温度が高くなるといった温度分布が得られた。
この場合の初期温度は23.0℃、平均温度が39.4℃、平均上昇温度が16.4℃、標準偏差が3.7℃、相対標準偏差が0.228であった。
【0053】
次に、図12を見ると、載置トレー9の中心で最も温度が高くなり、外周エリアA2に向かって中間部では一旦減少後、外周エリアA2で再び上昇して幾分温度が高くなるといった温度分布が得られた。
この場合の初期温度は、図15の場合と同じ23.0℃であり、平均温度が44.9℃、平均上昇温度が21.9℃、標準偏差が1.8℃、相対標準偏差が0.080であった。
これにより、2基の導波管7A、7Bを本発明の態様で設置した図9及び図10に示す第1の実施の形態によるマイクロ波乾燥機1Aを使用した場合の方が、被乾燥物Aの半径方向rの温度分布のばら付きが小さくなり、載置トレー9のどの位置に被乾燥物Aを置いても必要な乾燥品質が得られることが分かった。
【0054】
一方、図13及び図14に示す態様で2基の導波管7A、7Bを設置したマイクロ波乾燥機10Aを使用した場合の方が、被乾燥物Aの半径方向rの温度分布のばら付きが大きくなり、特に、導波管7A、7Bの開口部8に近い載置トレー9の外周エリアA2で被乾燥物Aの乾燥品質に影響を及ぼす局所的で過剰な加熱が生じていることが分かった。
従って、2基の導波管7を同じ乾燥室本体5に設置する場合には、2基の導波管7の両方を本発明の態様で設置した場合の方が、被乾燥物Aの温度分布のばら付きが小さくなり、局所的で過剰な加熱が生じない良好な乾燥が実行できることが明らかになった。
【0055】
[他の実施の形態]
本発明のマイクロ波乾燥機1は、上述した二つの実施の形態のものに限定されず、その発明の要旨内での変更が可能である。
例えば、導波管7の数は、二つに限らず、一つでもよいし、三つ以上設けることも可能である。また、導波管7を載置トレー9の中心を基準にして等間隔に複数配置すること等によって載置トレー9の円周方向の温度分布が均一になる場合には、ターンテーブル11を省略することも可能である。
また、上記実施の形態において設けた減圧装置19を省略することも可能である。
【0056】
また、上記第2の実施の形態のように複数の乾燥室本体5を上下方向Zに積み上げる場合、上記第2の実施の形態で述べた三段積みの構成に限らず、乾燥室本体5を二段積みにした構成や四段以上に積み上げた構成であってもよい。
また、導波管7は、側壁面13の外側と内側とで分割する分割構造に限らず、一体構造の導波管7とすることも可能である。
この他、載置トレー9にセットする容器に対して被乾燥物Aの温度を計測する温度センサを設ける他、載置トレー9の載置面に対して温度センサを設けることも可能である。また、載置トレー9上の温度分布を知るために実験機のみに上記複数の温度センサを設け、実験機で得られた情報を基に設計した実機については、例えば、最も温度が高くなる位置の温度のみを計測する目的で温度センサを一つ設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のマイクロ波乾燥機は、固定または液体の種々の被乾燥物の乾燥分野で利用でき、特に載置トレーに置く位置に関係なく、常に安定した被乾燥物の乾燥状態が得られる、段積み構造にも対応し得るマイクロ波乾燥機を提供したい場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0058】
1 マイクロ波乾燥機
3 マイクロ波発振装置
5 乾燥室本体
6 開口
7 導波管
8 開口部
9 載置トレー
11 ターンテーブル
13 側壁面
15 天井面
16 底面
17 開閉扉
19 減圧装置
21 エア導入管路
23 エア調整導入弁
25 温度センサ
29 制御装置
31 コロ
33 電解作用面
35 本体部
37 延長突出部
39 ハウジング本体
41 前面開口
43 開閉扉
101 マイクロ波乾燥機
105 乾燥室本体
107 導波管
109 載置トレー
111 ターンテーブル
113 側壁面
A 被乾燥物
A1 外周エリア
A2 中心エリア
M マイクロ波
M1 直接波
M2 反射波
θ 垂直取付け角度
θ1 入射角
θ2 反射角
B 交点
Q エア
C 回転中心
X 左右方向
Y 伝播方向
Z 上下方向
O 開口中心
L 伝播中心線
R 反射中心線
V 垂直軸
α 捩り取付け角度
r 半径方向
β 水平取付け角度
β1 (左側の)振れ角
β2 (右側の)振れ角
H 水平中心線
W 幅
D 奥行き
T 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17