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特開2023-124751バイオマーカー識別用蛍光顕微鏡及びそれを用いたバイオマーカー識別方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124751
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】バイオマーカー識別用蛍光顕微鏡及びそれを用いたバイオマーカー識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20230830BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G02B21/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022049159
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0025049
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520447617
【氏名又は名称】ジェイエル メディラブズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョン チン
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA04
2G043BA16
2G043CA04
2G043DA02
2G043DA06
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA09
2G043JA02
2G043JA03
2G043KA02
2G043KA05
2G043KA09
2G043LA03
2G043MA01
2H052AA09
2H052AC04
2H052AC31
2H052AC33
2H052AC34
2H052AD34
2H052AF02
(57)【要約】
【課題】蛍光分析を通じてバイオマーカーの種類を容易に識別することができるバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡及びこれを用いたバイオマーカーの識別方法に関する。
【解決手段】本開示は試料から放出される蛍光を分析するための蛍光顕微鏡における、バイオマーカー識別可能な蛍光顕微鏡であって、前記蛍光顕微鏡の検出ユニットには、前記検出ユニットに入射する蛍光スペクトルの一部を遮断する識別フィルタが設けられている。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から放出される蛍光を分析するための蛍光顕微鏡である、バイオマーカー識別用蛍光顕微鏡、ここで前記蛍光顕微鏡の検出ユニットには、前記検出ユニットに入射する蛍光スペクトルの一部を遮断する識別フィルタが設けられている。
【請求項2】
前記識別フィルタが、前記試料から放出される蛍光の、発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルの一部、及び前記試料から放出される蛍光の、発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルの一部のうち、少なくとも1つを遮断する、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項3】
前記識別フィルタが、前記試料から放出される蛍光のうち発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルのピーク波長以下の波長、及び前記試料から放出される蛍光のうち発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルのピーク波長以上の波長のうち、少なくとも1つを遮断する、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項4】
前記試料から放出される蛍光が2個~100個の発光ピークを有し、各々がスペクトルを有する発光スペクトルの一部又は全部が互いに重なり合っている、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項5】
前記試料中に含まれるフルオロフォアが、1種類以上の励起光で同時に励起される、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項6】
前記試料が2種類~100種類のフルオロフォアを含む、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項7】
前記試料が、
基材に取り付けられた捕捉プローブ;
前記捕捉プローブに結合したバイオマーカー;及び
前記バイオマーカーに結合し、フルオロフォアで標識された検出プローブ
を含み、
前記基材の表面上に2種類~100種類の検出プローブが存在する、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項8】
前記検出プローブが少なくとも1種類のフルオロフォアで標識され、前記検出プローブに結合した前記バイオマーカーが1個又は複数個の発光ピークを有する、請求項7に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項9】
前記検出ユニットが、前記試料から放出される前記蛍光を分散させるための分光手段を含む、請求項1に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項10】
前記分光手段によって分散された前記蛍光が、片側又は両側がカットされた楕円形で観察される、請求項9に記載のバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡。
【請求項11】
フルオロフォアで標識された試料を調製するステップ;
前記試料を蛍光顕微鏡の対物ユニット上に配置するステップ;
光源を使用して前記試料を照らすステップ;
前記試料から放出される蛍光スペクトルの一部を、識別フィルタを使用して遮断するステップ;
蛍光を分光手段で分散させるステップ;及び
観察された前記スペクトルの形状を用いて試料の種類を識別するステップ
を含む、バイオマーカー識別方法。
【請求項12】
前記試料の種類を識別するステップが、
前記蛍光スペクトルの遮断点を認識すること;
前記蛍光スペクトルの、遮断点からの相対位置及び長さを分析すること;及び
前記蛍光スペクトルの前記相対位置及び長さを用いて試料の種類を識別すること
を含む、請求項11に記載のバイオマーカー識別方法。
【請求項13】
前記フルオロフォアで標識された前記試料が、相異なるフルオロフォアが取り付けられた2種類~100種類のバイオマーカーである、請求項11に記載のバイオマーカー識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はバイオマーカーを識別するための蛍光顕微鏡及びこれを用いたバイオマーカーの識別方法に関し、特に、蛍光分析によりバイオマーカーの種類を容易に識別することができるバイオマーカー識別用蛍光顕微鏡及びこれを用いたバイオマーカーの識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光顕微鏡は蛍光を用いて撮像するための光学顕微鏡であり、試料中に存在するフルオロフォアに吸収される特定の波長が照射された場合に、フルオロフォアに吸収された光が蛍光として放出される長波長光を検出して撮像することができる。
【0003】
蛍光顕微鏡は、波長特異的フィルタを用いて照射された光よりもはるかに微弱な放射光を検出する。蛍光顕微鏡は、キセノン、水銀、LED、レーザを用いた光源と、励起フィルタと、ダイクロイックミラーと、発光フィルタとから構成されている。光源から放出された光はフルオロフォアに吸収される波長のみが励起フィルタを通過し、ダイクロイックミラーを介して試料を照らす。試料中の蛍光物質は特定波長の光を吸収し、蛍光として長波長の光を発し、発された光はダイクロイックミラーには反射されず、検出器によって検出される。多色蛍光顕微鏡の場合、各色に対応する励起フィルタ及びダイクロイックミラーを用いることにより、試料中に存在する種々の色の蛍光物質を撮像することが可能である(図2参照)。
【0004】
このような蛍光顕微鏡は、細胞内オルガネラ、タンパク質等を撮像するために用いられ、共焦点顕微鏡、全反射蛍光顕微鏡等を含む。
【0005】
従来の蛍光顕微鏡では、基材上に配置された試料に取り付けられたフルオロフォアの吸収波長に一致する単色光を、第1の光学フィルタ12を通じて白色光から選択し、選択された吸収波長の単色光の経路をダイクロイックミラー23で調整し、対物レンズ22を通じて試料に照射し、対物レンズを通過した試料のフルオロフォアとダイクロイックミラーとが発生する光から、試料のフルオロフォアの発光波長に一致する光を、検出ユニットに設けられる第2の光学フィルタを通じて選択する。一方、検出ユニットはチューブレンズ、CCDやCMOSなどのカメラ31、32、33で構成され、試料の形状や試料が発する蛍光を観察するために、試料に取り付けられたフルオロフォアの発光波長を検出して表示する(図2参照)。
【0006】
しかしながら、従来の蛍光顕微鏡は試料に照射される光に応じて単一の蛍光像が得られる構成であるため、各種の蛍光色素を用いて各種の試料を識別する必要があり、各蛍光色素の励起検出に必要な光源の波長やカメラが多様であるという欠点があった(図3参照)。
【0007】
特に、これらの試料を明確に識別するためには、各フルオロフォアが発する蛍光スペクトルが重ならないことが好ましいため、識別する試料の種類が限定されるように、2~5種類のフルオロフォアしか同時に使用できず、フルオロフォアと同量の光源を必要とするため、装置の大型化、高価化、検出時間の増大という問題がある(図3参照)。
【0008】
この問題を解決するために、プリズムを用いて試料から放出される蛍光スペクトルを利用する技術が開発されている。それは、元の蛍光の位置を、プリズムによって分散された蛍光の相対位置と比較することによって、各フルオロフォアを識別する(図4参照)。この技術の場合、相対位置を解析することにより蛍光の種類を特定するので、吸収スペクトルと発光スペクトルとが重なった様々な種類のフルオロフォアを用いることができ、様々な種類の試料の解析が可能となり、光源ユニットの数を大幅に削減することができる。しかしながら、この技術では、位置を比較する必要があるため、原蛍光の検出ユニットとプリズムで分散させた蛍光の検出ユニットをそれぞれ追加する必要があり、また放出された蛍光を2つの経路に分ける必要があるため、検出面積が小さくなり、感度が低下するという欠点がある(図4参照)。
【0009】
そこで、蛍光を用いた試料分析において、検出面積や感度の変化を最小限に抑えつつ、様々な種類の試料を同時に分析することが可能な蛍光顕微鏡を製造することが求められている。
【0010】
この背景技術の項で開示された上記の情報は、本開示の背景技術の理解を強化するためのものに過ぎず、したがって、この国で当業者に既に知られている従来技術を形成しない情報を含みうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許第10-0942195号
【特許文献2】韓国特許第10-2290325号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の課題を解決するため、本開示の目的は、蛍光分析を通じてバイオマーカーの種類を容易に識別することができるバイオマーカーを識別するための蛍光顕微鏡及びこれを用いたバイオマーカーの識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一態様は、試料から放出される蛍光を分析するための蛍光顕微鏡である、バイオマーカーを識別することができる蛍光顕微鏡であって、前記蛍光顕微鏡の検出ユニットには、前記検出ユニットに入射する蛍光スペクトルの一部を遮断する識別フィルタが設けられている、蛍光顕微鏡を提供する。
【0014】
一実施形態では、前記識別フィルタが、前記試料から放出される蛍光のうち発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルの一部、及び前記試料から放出される蛍光のうち発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルの一部のうち、少なくとも1つを遮断することができる。
【0015】
一実施形態では、前記識別フィルタが、前記試料から放出される蛍光の、発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルのピーク波長以下の波長、及び前記試料から放出される蛍光の、発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルのピーク波長以上の波長、を遮断しうる。
【0016】
一実施形態では、前記試料から放出される蛍光が2個~100個の発光ピークを有し、各々がピークを有する発光スペクトルの一部又は全部が互いに重なり合っている。
【0017】
一実施形態では、前記試料中に含まれるフルオロフォアが、1種類以上の励起光で同時に照らされうる。
【0018】
一実施形態では、前記試料が2種類~100種類のフルオロフォアを含みうる。
【0019】
一実施形態では、前記試料が、
基材に取り付けられた捕捉プローブ;
前記捕捉プローブに結合したバイオマーカー;及び
前記バイオマーカーに結合し、フルオロフォアで標識された検出プローブ
を含み得、
前記基材の表面上に2種類~100種類の検出プローブが存在しうる。
【0020】
一実施形態では、前記検出プローブに少なくとも1種類のフルオロフォアが取り付けられ得、前記検出プローブに結合した前記バイオマーカーが1個又は複数個の発光ピークを有しうる。
【0021】
一実施形態では、前記検出ユニットが、前記試料から放出される前記蛍光を分光させる(spectralizing)ための分光手段を含みうる。
【0022】
一実施形態では、分光手段の前に識別フィルタを設けうる。
【0023】
一実施形態では、前記分光手段によって分散された前記蛍光が、片側又は両側が切断された楕円形で観察されうる。
【0024】
本開示の別の態様は、フルオロフォアで標識された試料を調製するステップ;
前記試料を蛍光顕微鏡の対物ユニット上に配置するステップ;
光源を使用して前記試料を照らすステップ;
前記試料から放出される蛍光スペクトルの一部を、識別フィルタを使用して遮断するステップ;
蛍光を分光手段で分散させるステップ;及び
観察された前記スペクトルの形状を用いて試料の種類を識別するステップ
を含む、バイオマーカー識別方法を提供する。
【0025】
一実施形態では、前記試料の種類を識別するステップが、
前記蛍光スペクトルの遮断点を認識すること;
前記蛍光スペクトルの、遮断点からの相対位置及び長さを分析すること;及び
前記蛍光スペクトルの前記相対位置及び長さを用いて試料の種類を識別すること
を含みうる。
【0026】
一実施形態では、前記フルオロフォアで標識された前記試料が、相異なるフルオロフォア(different fluorophore)で標識された2種類~100種類のバイオマーカーでありうる。
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、バイオマーカーを識別するための蛍光顕微鏡は発光スペクトルの差異を用いてバイオマーカーの種類を識別することができるので、蛍光顕微鏡は複数のバイオマーカーを迅速かつ正確に識別するために広く使用することができる。
【0028】
また、本開示によれば、蛍光のスペクトルの一部を遮断することにより蛍光の種類を識別することができるため、発光波長の差を利用した既存の分析方法に比べて検出面積及び感度を向上させた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【0029】
また、本開示によれば、蛍光スペクトルの波長の一部を遮断した後、蛍光スペクトルを分散させることにより、その形状を識別するので、類似のピーク発光波長を有する蛍光を用いた場合であっても、その形状を識別することができる。したがって、励起光の数を減らすことができ、様々な種類のフルオロフォアを同時に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示の一実施形態による、バイオマーカーを識別することができる蛍光顕微鏡の構造を示す図である。
図2】従来の蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
図3】従来の蛍光顕微鏡に用いられるフルオロフォアの吸収スペクトル(破線)及び発光スペクトル(実線)をそれぞれ示す図である。
図4】従来の分光手段を用いた蛍光顕微鏡の構成を示す図である。
図5】従来の蛍光顕微鏡で分光手段を用いて観察した試料を示す写真である。
図6】本開示の一実施形態による、フルオロフォアの発光スペクトル及び識別フィルタを通過する発光スペクトルの変化を示す図である。
図7】本開示の一実施形態による、複数のフルオロフォアを用いた場合に、識別フィルタによる発光スペクトルの観測状態を示す図である。
図8】本開示の実施形態による、異なる種類の識別フィルタを用いた場合の発光スペクトルの観測状態を示す図である。
図9】本開示の一実施形態による、フルオロフォアの吸収スペクトル及び発光スペクトルを示す図である。
図10】本開示の一実施形態による、試料を調製するステップを示す図である。
図11】本開示の一実施形態による、試料の蛍光の観察を示す図である。Aは分光前を示し、Bは識別フィルタを通過して分光した後を示す、
図12】本開示の一実施形態による、フルオロフォアの発光スペクトルを示す図である。
図13】本開示の一実施形態による、フルオロフォアの吸収スペクトルを示す図である。
図14】本開示の一実施形態による、識別フィルタ及び分光器を使用しない蛍光を示す図である。
図15】本開示の一実施形態による、分光器のみを用いた蛍光の観察を示す図である。
図16】本開示の一実施形態による、識別フィルタ及び分光手段を用いた後の蛍光の観察を示す図である。
図17】本開示の一実施形態による、識別フィルタ及び分光手段を用いた後の各蛍光の分光分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本開示の好ましい実施形態を詳細に説明する。本開示の説明において、関連する公知技術の詳細な説明が本開示の要旨を不明確にするものと判断される場合には、当該詳細な説明を省略する。本明細書全体を通して、単数表現は文脈において特に明確に示されない限り、複数の表現を包含すると理解されるべきである。本明細書では「含む(including)」又は「有する(having)」という用語は、説明される特徴、数、ステップ、操作、構成要素、部分、又はそれらの組合せが存在することを示すが、1つ又は複数の他の特徴、数、ステップ、操作、構成要素、部分、又はそれらの組合せの存在又は追加の可能性を事前に排除するものでないことを理解されたい。さらに、方法又は製造方法を実行する際に、方法を構成するそれぞれのプロセスは、文脈において特定の順序を特に記載しない限り、特定の順序とは違えて実行されてもよい。すなわち、各処理は指定された順序と同様に行われてもよいし、略同時に行われてもよいし、逆の順序で行われてもよい。
【0032】
本開示は様々な修正を使用することができ、様々な実施形態を有することができるので、詳細な説明において説示し詳細に説明するのは、特定の実施形態である。しかし、これは本開示を特定の実施形態内に限定するものではなく、本開示は本開示の技術的思想及び技術的範囲内のすべての修正物、均等物、及び置換物を包含することを理解されたい。
【0033】
本明細書で開示される技術は、本明細書で説明される実施形態に限定されず、他の形態で実施されてもよい。本明細書で紹介される実施形態は、開示内容が徹底的かつ完全たらしめ、且つ技術の技術的思想を当業者に十分に伝達せしめるためのみに提供される。各装置の構成要素を図面で明確に表現するために、構成要素の幅や厚さなどの大きさを若干拡大している。図面全体の説明では観察者の観点から説明したが、他の要素上に要素が位置することが述べられている場合、当該要素は当該他の要素上に直接位置してもよいし、要素間に追加の要素が介在してもよい。さらに、当業者は、本開示の技術的精神から逸脱することなく、様々な他の形態で本開示の精神を実施することができるのであろう。また、複数の図面において、同一の参照符号は、実質的に同一の要素を示す。
【0034】
本明細書において、用語「及び/又は」は、複数の開示されたアイテムの組み合わせ又は複数の開示されたアイテムのいずれかのアイテムを含む。本明細書において、「A又はB」は、「A」、「B」、又は「A及びBの両方」を含みうる。
【0035】
本開示は試料から放出される蛍光を分析するための蛍光顕微鏡においてバイオマーカーを識別することができる蛍光顕微鏡に関し、蛍光顕微鏡の検出ユニットは、検出ユニットに入射する蛍光スペクトルの一部を遮断する識別フィルタを備える。
【0036】
本開示に用いられる蛍光顕微鏡は、試料から発生する蛍光を観察することができる顕微鏡であり、主に対物ユニット100と、光源ユニット200と、検出ユニット300とから構成することができる。
【0037】
対物ユニット100は観察を容易にするために試料110が配置されて固定される部分であり、試料110を固定する固定手段を含み、試料110を照らしながら試料110から放出される蛍光を集光/拡大するための対物レンズ120が設置されてもよい。また、光源部200から供給された励起光を反射して試料方向に供給し、試料110から発生した蛍光を検出ユニットに透過させるために、ダイクロイックミラー130が設けられている(図1参照)。
【0038】
ダイクロイックミラー130は、特定の波長範囲の光を反射し、他の波長範囲の光を透過する一種のミラーであり、本開示の場合、励起光の反射と蛍光の透過とを同時に行うことができる。
【0039】
光源ユニット200は試料のフルオロフォアを励起するための励起光を発生する部分であり、試料に必要な励起光のみを供給するための励起光フィルタ220を備えうる。励起フィルタ220は、光源ユニットの光源210から供給される光のうち、試料に標識されたフルオロフォアを励起可能な波長の光のみを透過するフィルタであってもよい。また、励起フィルタ220は、種々の波長の励起光を形成するために交換可能なように取り付けられることが好ましい。
【0040】
光源210は励起光の波長を含む光であればよく、これに限定されるものではないが、演色性の高い白色発光素子を用いることが好ましい。高演色性を有する白色発光素子は可視光領域全体に分布した滑らかな発光スペクトルを有し、このスペクトルが紫外領域に広がるように発光する。このスペクトルは、太陽光に類似した発光パターンを有し、励起光としてしばしば用いられる。高演色性発光素子の場合、様々な発光体とフルオロフォアとを混合して発光するため、励起フィルタ220を用いて所望のスペクトルの励起光を形成することができる。特に、従来技術で使用されている光源の場合、供給される光はスペクトルが狭いもののみであり、光源から供給されるスペクトル以外の励起光が必要な場合には光源自体を交換する必要がある。上述のように演色性の高い白色発光装置を用いる場合には、光源を交換することなく、励起フィルタ220を交換するだけで所望の励起光を形成することができる。
【0041】
白色発光装置に加えて、単色光を発光するレーザを光源としてもよく、この場合、レーザが発光する単色光が同時にフルオロフォアを励起しうることが好ましい。前記レーザは前記発光素子を用いた光源よりも高い光度を有し得、狭いスペクトル帯域を有する単色光を発しうる。したがって、フルオロフォアをより明るく励起することができるので、同じ励起光をフルオロフォアが使用できる場合には、かかるレーザ光源を使用することができる。しかしながら、フルオロフォアを励起するために広いスペクトルが必要とされる場合、高い演色性を有する白色発光素子を使用することが好ましく、したがって、各実験の条件に応じて適切な光源を選択し、使用することが好ましい。
【0042】
検出ユニット300は試料から発生した蛍光を観察するために設置される部分であり、蛍光の観察を容易にするためのチューブレンズ330を含む。しかし、有限共役対物レンズを使用する場合には、チューブレンズを省略することができる。
【0043】
従来の蛍光顕微鏡(図2参照)では単に蛍光のピーク波長を測定するだけで蛍光の種類を決定するため、類似のピーク波長を有する蛍光を用いる場合には蛍光の種類やフルオロフォアが取り付けられた試料の種類を特定できないという欠点がある。また、フルオロフォアが発生する蛍光を検出するために、各色に応じた複数のカメラ31、32、33(図2)を使用する必要があるため、装置のサイズやコストが増大するという問題があった。また、上記のようにピーク波長の異なるフルオロフォアの場合、吸収スペクトルも異なるため(図3参照)、種々の励起光を用いる必要があるという問題がある。
【0044】
この問題を解決するために、試料から発生した蛍光を分散させ、元の位置と分散光の位置との差を用いて蛍光を識別する技術が用いられている(図4参照)。この技術では、蛍光の色ではなく位置差を用いて蛍光を検出するため、用いる検出器が1つでよく、蛍光スペクトルの重なりが激しい場合でも用いることができる。図5に示すように、この技術では、発光点(経路1)を確認してスペクトル(経路2)を識別するために2つの位相を組み合わせ、発光点とスペクトルの相対位置差を用いて試料の種類を識別する。しかしながら、蛍光の発光点を決定するための経路(経路1)と、スペクトルの経路(経路2)との2経路に蛍光シグナルを分ける必要があるため、検出面積が小さくなり、同時に感度が低下するという問題がある。
【0045】
そこで、本開示では、経路を分けることなく蛍光の種類を判定するために、蛍光スペクトルの一部を遮断する識別フィルタを検出ユニットに設置して、蛍光の種類を識別する。
【0046】
試料110を標識するフルオロフォアは光源ユニット200から供給された励起光により蛍光を発し、蛍光はダイクロイックミラー130を透過して検出ユニット300に供給される。また、検出ユニット300の内部には分光手段320が設置されており、分光手段320を通過した蛍光は、偏光して楕円形に観察されてもよい(図6の左図参照)。
【0047】
本開示では、蛍光のいくつかの波長が識別フィルタ310を使用して遮断されるので、楕円形の片側又は両側が切断された形態で観察される(図6の右図参照)。すなわち、フルオロフォアの種類は、遮断された点からの楕円状に分散された蛍光の相対的な位置及び長さを決定することによって識別されうる。
【0048】
試料110から放出される蛍光は、その種類によって異なるスペクトルを有しうる。従って、所定の波長を遮断する識別フィルタを通過する場合には、蛍光を分散させたときに、楕円形状の一部が切断された状態で蛍光が観察され(図6の右図参照)、蛍光のスペクトル分布と識別フィルタの遮断波長との相対的な組み合わせによって、切断位置が決定される(図7及び図8参照)。
【0049】
例えば、分光分布が470nm~670nm、発光ピークが530nmの赤色蛍光の場合、赤色蛍光が500nm以下の波長を遮る識別フィルタを通過すると、左側をカットした楕円形の蛍光が観測される(短波長の光が左側に分散する)。また、600nm以上の波長を遮断する識別フィルタを用いた場合には、赤色蛍光は楕円の右側を切り取った形状として観察することができる。すなわち、適切な識別フィルタを用いた場合、蛍光の種類によっては形や大きさの違う楕円が観察されることがあり、このことは識別フィルタを適切に選択して用いるだけで蛍光を識別できることを手段している。
【0050】
また、蛍光のスペクトルピークが近い場合には、切断部から残った楕円蛍光の相対的な形の違いによって2種類の蛍光を識別することができ、これは発光ピークが隣り合う複数のフルオロフォアを同時に用いた場合であっても、2種類の蛍光を識別しうることを意味する(図7参照)。
【0051】
また、上述の識別を容易にするために、識別フィルタ310は、試料から放出される蛍光のうち発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルの一部と、試料から放出される蛍光のうち発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルの一部と、の少なくとも1つを遮断しうる。
【0052】
一般に、発光スペクトルの場合、発光ピーク帯域で最も明るい蛍光が観測されるため、発光スペクトルのピーク帯域以外の部分を遮断することが好ましい。ただし、発光ピーク帯域を含む部分が遮断されていても、残りの部分により蛍光が観測されることがあるため、上述したように蛍光スペクトルの一部を遮断することができる識別フィルタを用いることが好ましい。
【0053】
また、識別フィルタ310は上述したような識別を容易にするために、試料から放出される蛍光のうち発光ピークが短波長にある蛍光スペクトルの、ピーク波長以下の波長(wavelengths of a peak wavelength or shorter of a fluorescence spectrum having an emission peak of a short wavelength in the fluorescence emitted from the sample)と、試料から放出される蛍光のうち発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルの、ピーク波長以上の波長(wavelengths of a peak wavelength or longer of a fluorescence spectrum having an emission peak of a long wavelength in the fluorescence emitted from the sample)とを遮断してもよい。このとき、発光ピークが短波長にある蛍光スペクトル及び発光ピークが長波長にある蛍光スペクトルは、ピーク波長より短い又は長い波長が除かれて観察され、残りの蛍光については、ピーク波長が前記2種類の蛍光の間に位置する(図7参照)。したがって、短波長の発光ピークを有する蛍光スペクトルと、長波長の発光ピークを有する蛍光スペクトルとが一種の基準点として作用し、これに基づいて、楕円の形状の差異及び基準点に対する相対位置を測定することにより、蛍光を識別することができる。
【0054】
また、この場合、発光ピークが短波長にある蛍光は発光ピークが最も短波長にある蛍光であることが好ましく、発光ピークが長波長にある蛍光は発光ピークが最も長波長にある蛍光であることが好ましい。最短波長発光ピーク又は最長波長発光ピークを有する蛍光のピーク波長よりも短い又は長い波長を遮断することにより、上述したように識別フィルタの効果を最大化することができる。
【0055】
試料から放出される蛍光は、2~100個の発光ピークを有していてもよく、各ピークを有する発光スペクトルの一部又は全部が重なって発光してもよい。上述のように、本開示の場合、複数の蛍光を識別することができ、識別フィルタにより、片側又は両側をカットした楕円形状で蛍光を観察することが好ましい。したがって、蛍光の発光スペクトルの一部又は全部が重なり合っていることが好ましく(図7参照)、この場合、蛍光の一部が識別フィルタによって遮断されて識別される。また、上記のように発光スペクトルが重なっている場合には、一般的に吸収スペクトルも重なっているため(図9参照)、光源ユニットに用いる励起光が1つでも全てのフルオロフォアが励起されうる。これにより、本開示の場合、光源が単一であるのみならず、有する波長が1つである励起光を用いて、試料全体のフルオロフォアを励起し、識別フィルタを用いて識別することができ、既存の蛍光分析法に比べて利便性が大幅に向上する。
【0056】
また、より多くの蛍光を同時に識別する場合には、全てのフルオロフォアを1つの励起光で励起することができないため、複数の励起光を用いてもよい。上述したように、全てのフルオロフォアを1つの励起光で励起することが最も好ましいが、複数の検出が必要な場合には必然的にフルオロフォアの数が増加し、この場合、全てのフルオロフォアが1つの励起光で励起されないことがある。したがって、この場合、複数の励起光を用いることが好ましい。また、蛍光によって吸収波長のピークが異なるため、1つの励起光を用いて全ての蛍光が励起されうる場合でも、最適な画像を得るために、同時に、又は順次、複数の励起光を供給することができる。この場合、検出ユニットへの励起光の透過を阻止するために、1つ又は複数の追加のダイクロイックフィルタが必要である。これらのフィルタは蛍光スペクトルのいくつかを遮断し得、得られた遮断点はフルオロフォアを識別するためのさらなる参照点として使用されうる。
【0057】
また、上述したように、本開示によれば、類似した発光ピークを有するフルオロフォアを用いた場合であっても、フルオロフォアを識別しうるので、2~100個の発光ピークを有するフルオロフォアを同時に識別することができる。したがって、本開示の場合、様々な種類の試料を同時に識別することができる。
【0058】
試料は、基材に取り付けられた捕捉プローブ;捕捉プローブに結合したバイオマーカー;及びバイオマーカーが結合し、フルオロフォアで標識された検出プローブを含み得、ここで2種類~100種類の検出プローブが基材の表面上に存在しうる。
【0059】
試料については、一般的な蛍光分析に使用される試料を使用し得、特に、関連技術で使用されるバイオマーカーの免疫学的分析方法に使用しうる(図10参照)。
【0060】
詳細には、相異なる捕捉プローブ(different capture probes)が基材に取り付けられ、捕捉プローブは特定のバイオマーカーを捕捉することができる。この場合、バイオマーカーを含有する体液が基材上に供給されると、バイオマーカーは、基材の表面に取り付けられた捕捉プローブに結合しうる。
【0061】
さらに、検出プローブは1つ以上のフルオロフォアで標識され得、したがって、検出プローブに結合したバイオマーカーは1つ以上の発光ピークを有しうる。
【0062】
上記のようにしてバイオマーカーの取り付けが完了した後、各バイオマーカーに特異的に結合することができる検出プローブを供給して、バイオマーカーに取り付けてもよい。この場合、検出プローブは、1つの発光ピークを有する蛍光を発するために1種のフルオロフォアで標識されてもよく、又は2つ以上の発光ピークを有する蛍光を発するように2種以上のフルオロフォアで標識されてもよい。さらに、異なる種類の検出プローブは、他の検出プローブと同じ又は相異なるフルオロフォアを含むので、複数の検出プローブが同時に識別され得、又は各検出プローブが独立して識別されうる。
【0063】
すなわち、各検出プローブが相異なるフルオロフォア又は2種以上のフルオロフォアの組み合わせで標識されうるので、検出プローブが取り付けられたバイオマーカーは、特定の発光ピーク又は2つ以上の発光ピークを有する蛍光を発しうる。
【0064】
したがって、バイオマーカーが存在する場合には、バイオマーカーに結合した検出プローブによって、基材上の特定の点が蛍光を発生し得、本開示における蛍光を形態的に解析することで蛍光の種類を特定することは困難である。
【0065】
検出ユニット300は、試料から放出された蛍光を分散させるための分光手段320を含みうる。検出ユニット300に送られる蛍光は、試料110を標識するフルオロフォアから放出されるため、単純な円形スポットのように観察されうる。本開示では、蛍光を分析するために、分光波長に応じて蛍光を分散させることが好ましいので、検出ユニットは蛍光を分散させることができる分光手段320を備えうる。
【0066】
ここで、分光手段320は、当該分光手段が蛍光を分散させるものであればよく、特に限定されるものではないが、プリズムや回析格子を含む分光計を用いることが好ましい。
【0067】
識別フィルタ310が、分光手段320の前に設置されうる。蛍光が分光手段320を通過する際には、上述したように、蛍光を楕円形に分散させてもよく、本開示では識別フィルタ310を用いて蛍光の一部の波長を遮断する。識別フィルタ310は、1つ以上のロングパスフィルタ、ショートパスフィルタ、バンドパスフィルタ、又はそれらの組み合わせによって構成されうる。ロングパスフィルタは比較的長波長の部分を通過させるフィルタであり、当該フィルタを用いると短波長の部分が遮断されうる。また、逆にショートパスフィルタは、比較的短波長の部分を通過させるフィルタであり、当該フィルタを用いると長波長の部分が遮断されうる。そこで、本開示では、所定の帯域のみを通過させる識別フィルタとして、ロングパスフィルタとショートパスフィルタとの組み合わせを用いうる。別途、所定の帯域の波長のみを通過させるバンドパスフィルタを用いることもできる。
【0068】
本開示は、フルオロフォアで標識された試料を調製するステップと、試料を蛍光顕微鏡の対物ユニット上に配置するステップと、光源を使用して試料を照らすステップと、試料から放出される蛍光スペクトルの一部を、識別フィルタを使用して遮断するステップと、蛍光を分光手段で分散させるステップと、観察されたスペクトルの形状を用いて試料の種類を識別するステップとを含む、バイオマーカー識別方法に関する。
【0069】
フルオロフォアで標識された試料の調製は、バイオマーカー及びフルオロフォアを基材に取り付けることによって試料を調製するステップであり、試料は、一般的な蛍光分析方法と同様の様式で調製されうる。すなわち、基材に捕捉プローブを取り付けた後、バイオマーカーを捕捉プローブに結合させ、バイオマーカーに検出プローブを特異的に結合させる。また、上述のように、検出プローブはフルオロフォアで標識されているため、後述する励起光を供給することにより、一定のスペクトルを有する蛍光を発しうる(図10参照)。
【0070】
プローブは、当該プローブが上記のようにバイオマーカーに結合されうる限り、限定されることなく使用され得るが、抗体、ナノボディ、抗体のバリアント(例えば、一本鎖フラグメント可変体(scFv)、アプタマーなど)を含む。
【0071】
上記のように調製された試料を蛍光顕微鏡の対物ユニットに配置した後、光源を用いて励起光を試料に供給しうる。励起光とは、試料に含まれるフルオロフォアを発光可能とするエネルギーを供給する光をいう。フルオロフォアの一部の電子が励起光を用いて励起状態となり、かかる励起状態の電子が正常状態に戻るまでの間に、所定の波長の蛍光が放出される。したがって、その種類に応じて適切な励起光を用いてフルオロフォアを励起することが好ましい。また、本開示の場合、上述したように、2~100種類のフルオロフォアを含む試料の場合であっても、類似した励起光を用いることができる。
【0072】
上述のように、励起光によって蛍光が放出されると、蛍光が検出ユニットに入射しうる。この場合、蛍光スペクトルの一部は、検出ユニットに設置された識別フィルタによって遮断されうる(図6図8参照)。上記のように一部の波長が遮断された蛍光は分光手段によって分散され得、上記のように、蛍光は片側又は両側が切断された楕円として観察されるため、各蛍光の種類、さらにはフルオロフォアが結合した試料の種類を識別することができる。
【0073】
このとき、試料の種類を特定するステップは、具体的には蛍光スペクトルの遮断点を認識するステップと、遮断点からの蛍光スペクトルの相対位置及び長さを分析するステップと、蛍光スペクトルの相対位置及び長さを用いて試料の種類を特定するステップと、を含むことができる。
【0074】
分散された蛍光は、蛍光の波長及び強度に依存して楕円形状で観察されうる(図6の左図参照)。詳細には、分光手段を通過する蛍光は、短波長は屈折率(=屈折角)が大きく、長波長は屈折率(=屈折角)が小さいため、波長の長さに応じた長さで配列されうる(may be arranged with a long length according to a wavelength)。また、上記のように配置された中間部は、より明るく観察される発光ピークを有しているため、両端よりも比較的厚い形(relatively thicker)で観察されうる。具体的には、分光手段を通過する蛍光は楕円形として観察されうる。
【0075】
また、本開示によれば、識別フィルタを用いて蛍光スペクトルの一部を遮断するので、蛍光を楕円形状をカットした形状(図6の右図参照)で観察され得、カットされた部分、すなわち遮断点を、基準点として認識することができる。このとき、遮断点の認識はユーザが視認して手動で指定するようにしてもよいが、他の部分とは異なり、遮断点は直線状に遮断されているので、直線状に形成された光を自動的に認識するように制御される認識装置で自動的に指定するようにしてもよい。
【0076】
上記のような遮断点の認識が完了した後、遮断点と分散蛍光との相対位置及び長さを特定することができる。識別フィルタがスペクトルの短波長部分を遮断すると、蛍光は左側がカットされた楕円形状(左側が短波長となるようなスペクトル)で観察され、識別フィルタがスペクトルの長波長部分を遮断すると、蛍光は右側がカットされた楕円形状で観察されうる。
【0077】
したがって、蛍光が遮断点の右側に存在する場合、蛍光の発光ピークは比較的短い波長を有するフルオロフォアを使用し、蛍光が遮断点の左側に存在する場合、蛍光の発光ピークは、比較的長い波長を有するフルオロフォアを使用することによって識別されうる。また、両側がカットされた楕円形状として観察される場合には、中間波長帯に発光ピークを有するフルオロフォアを用いて蛍光が識別されうる(図7参照)。
【0078】
また、遮断点において同一方向に蛍光を形成するフルオロフォアが複数存在する場合には、遮断点からの蛍光の全長と楕円形状の最も厚い部分までの長さとを測定することにより、各フルオロフォアが標識された試料の種類を識別しうる(図8参照)。このとき、蛍光の全長は識別フィルタで遮られていない蛍光スペクトルの全波長帯域を表しており、楕円形の最も厚い部分がフルオロフォアが発生する発光ピーク点を意味するため、これら2つの側面(aspects)を総合的に観察することで、遮断点が同一方向に形成された場合であっても、それぞれの試料を識別することができる。これは、図11に示すような類似の波長の蛍光を用いた場合でも、蛍光の種類を容易に識別することができることを意味する。図11(a)に示されるように、類似の発光色を有するフルオロフォアが使用される場合、種類を識別することは容易ではないかもしれない。しかし、本開示の場合には、図11(b)に示すように、識別フィルタと分光手段を用いて蛍光を分散させた後、その一部を遮断してその種類を識別する。
【実施例0079】
以下、当業者が本開示の好ましい実施形態を容易に実施することができるように、本開示の好ましい実施形態を、添付図面を参照しながら以下に説明する。また、本開示の説明において、本開示の要旨を不必要に不明確にすると判断される場合には、関連する公知の機能又は構成の詳細な説明を省略する。また、図面は説明を容易にするために、その特徴の一部を拡大、縮小、又は簡略化したものであり、必ずしも適切な比率で図示していない。しかしながら、当業者は、これらの詳細を容易に理解するであろう。
【0080】
3種類のバイオマーカーCA19-9、CRP、TTRを識別できるかを検証するために、フルオロフォアであるCF647でCA19-9の検出抗体を標識し、フルオロフォアであるCF660RでCRPの検出抗体を標識し、フルオロフォアであるCF680RでTTRの検出抗体を標識した。図12に示すように、フルオロフォアの各々は、実線(CF647)、破線(CF660R)、及び点線(CF680R)の発光スペクトルを表した。
【0081】
SemrockのFF01-680/42-25フィルタを、各フルオロフォアのスペクトルのいくつかを遮断するための識別フィルタとして使用した。この識別フィルタは、657nm ~704nmの間の波長のみを通過させた。
【0082】
また、3種類のフルオロフォアは、図13に示す吸収スペクトルを有していた。そこで、3種類のフルオロフォアCF647、CF660R、CF680Rを同時に励起するために、励起光源として波長633nmのレーザを用いた。
【0083】
実験例
実施例の3種類のバイオマーカー捕捉抗体を基材の表面に取り付け、3種類のバイオマーカーCA19-9、CRP、及びTTRを導入し捕捉抗体に結合させ、次いで、フルオロフォアで標識された3種類のバイオマーカーの検出抗体を導入して、3種類のバイオマーカーに結合させた。
【0084】
試料を蛍光顕微鏡の対物ユニット上に配置し、光源を用いて励起光(波長633nmのレーザ)を供給した。試料から放出された蛍光を観察した。
【0085】
図14は、識別フィルタ及び分光手段を使用しない顕微鏡画像である。各フルオロフォアで標識された3種類のバイオマーカーは蛍光を発することが確認されたが、3種類のバイオマーカーは識別できなかった。
【0086】
図15は、識別フィルタを用いずに分光手段(クォーツウェッジプリズム、角度7度、41分)のみを用いた蛍光観察を示す。各蛍光の強度にはわずかな差があるが、このようなわずかな差のみで蛍光を識別することは困難である。
【0087】
図16は、分光手段(クォーツウェッジプリズム、角度7度、41分)及び識別フィルタ(SemrockのFF01-680/42-25フィルタ)を用いた蛍光観察を示す。図16(a)で示されるCF647は短波長部分が除去され、左側がカットされた形状で観察された。図16(b)で示されるCF660Rは両側の波長が除去され、両側がカットされた形状で観察された。また、図16(c)で示されるCF680Rは長波長部分が除去され、右側がカットされた形状で観察された。
【0088】
図16に示されるように、本開示では蛍光の遮断された部分と、遮断された部分の相対的な位置及び長さとが、識別フィルタを使用して決定されて、蛍光の種類が直ちに認識され、蛍光は1種類のスクリーンで識別されて、改善された検出面積及び感度と共に観察結果を識別することができる。
【0089】
識別フィルタの遮断効果を確認するために、各フルオロフォアについて識別フィルタ及び分光手段を通過させ、次いでスペクトルを測定した。図17に示すように、(a)CF647の場合、左側がカットされた分布が確認され、(b)CF660Rの場合、両側がカットされた分布が示された。また、(c)CF670Rの場合、右側がカットされた分布が示された。したがって、本開示の識別フィルタ及び分光手段を用いることにより、複数のフルオロフォアを容易に識別できることが確認された。
【0090】
以上、本開示の特定の部分について詳細に説明したが、これらの特定の技術は単に好ましい実施形態であり、本開示の範囲はこれに限定されないことは当業者には明らかであろう。したがって、本開示の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【外国語明細書】