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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124752
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】微細気泡発生板
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/2375 20220101AFI20230830BHJP
   B01F 27/051 20220101ALI20230830BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20230830BHJP
   B01D 19/00 20060101ALN20230830BHJP
【FI】
B01F23/2375
B01F27/051
B01F25/10
B01D19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062182
(22)【出願日】2022-04-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2022027432
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519187104
【氏名又は名称】株式会社ナノバブル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 輝美
(72)【発明者】
【氏名】本田 正
(72)【発明者】
【氏名】小森 幹雄
【テーマコード(参考)】
4D011
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
4D011AA20
4D011AB10
4D011AC01
4G035AB04
4G035AC01
4G035AE13
4G078AA30
4G078AB20
4G078DA21
4G078DC10
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】 本発明はナノレベルの微細気泡を発生させる微細気泡発生板に関する。
【解決手段】 表面に複数凸部が形成された微細気泡発生面を備える微細気泡発生板であって、前記凸部の直径をdとすると、微細気泡発生面に形成された相隣り合う凸部の間隔Rdは、Rd≧dに設定されている微細気泡発生板を提供することによって達成できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数凸部が形成された微細気泡発生面を備える微細気泡発生板であって、
前記凸部の直径をdとすると、微細気泡発生面に形成された相隣り合う凸部の間隔Rdは、Rd≧dに設定されていることを特徴とする微細気泡発生板。
【請求項2】
前記微細気泡発生面における微細気泡の発生頻度Fは
F=Sp×V/dの計算式で得られる値であることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生板。
但し、前記Vは前記微細気泡発生面を流れる流体の流速であり、前記Spは一定の定数である。
【請求項3】
前記微細気泡発生面に形成される凸部の直径dは、1~100μmであることを特徴とする請求項1、又は2に記載の微細気泡発生板。
【請求項4】
前記微細気泡発生面によって発生する微細気泡の大きさは、10~200nmであることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の微細気泡発生板。
【請求項5】
前記微細気泡発生面は移動又は回転することを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の微細気泡発生板。
【請求項6】
前記微細気泡発生面には液体が流れることを特徴とする請求項5に記載の微細気泡発生板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノレベルの微細気泡を発生させる微細気泡発生板に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ナノレベルの微細気泡について、その物性や発生のメカニズム、具体的な用途及びその実用化に関して研究が急速に進んでいる。例えば、汚染水の浄化や殺菌等の研究や、ナノオーダの微細気泡を含有する微細バブル含有水を用いた水性生物の育成、水田に微細バブルの含有水を供給して水質の向上を図る等の研究が行われている。
【0003】
従来このような微細気泡を発生させる方法として多くの方式が提案されている。例えば、一例として、特許文献1は液体中で表面から微小気泡を発生させる気泡発生面を有する微小気泡発生板の発明である。この発明は、板の平面に窪みを設けることで形成された複数の谷部を有し、この谷部は、窪みの頂点を形成する底頂部と、窪みの起点を形成する基頂部と、この底頂部及び基頂部をつなぐ谷面とからなり、上記底頂部を挟んで対向する2つの基頂部間の間隔が0.1~1mmに設定され、対向する2つの谷面部間の角度が10~90°に設定されている微小気泡発生板の発明である。
【0004】
また、特許文献2は液体中で表面から微小気泡を発生させる気泡発生部を有する微小気泡発生板であり、表面上に1又は複数の凸部を列状に形成するように設けることで形成されており、この凸部は頂点を形成する頂部と、該凸部の起点を形成する基底部と、この頂部及び基底部を繋ぐ斜部とからなり、上記基底部における任意の1点と、該1点に対して上記頂部を挟んで対向する対向点との間隔が0.1~1mmであり、対向する2つの上記斜部間の角度が15~75°である微小気泡発生板の発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015―166055号公報
【特許文献2】特開2017―170285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された微小気泡発生板では、窪みを設けて谷部を形成するが、底頂部を挟んで対向する2つの基頂部間の間隔が0.1~1mmに設定されており、基頂部間の間隔が狭く、例えば微小気泡発生板に供給される水流によって作られる渦流を効率良く生成することができず、多くの微小気泡を発生することができない。また、発生させる微小気泡のサイズは大きく、マイクロレベルの微小気泡である。
【0007】
また、特許文献2に記載された微小気泡発生板では、基板に凸部を設ける発明であるが、凸部の頂部を挟んで対向する対向点との間隔が0.1~1mmであり、上記と同様、頂部間の間隔が狭く、微小気泡発生板に供給される水流が凸部に衝突して作られる渦流を効率良く生成することができず、多くの微小気泡を発生することができない。また、発生させる微小気泡のサイズを凸部のサイズによって調整することもできない。
【0008】
そこで、本発明は微細気泡発生板に供給される液流(例えば、水流)によって作られる渦を効率良く生成することができ、多量の微細気泡を効率良く発生させることができる。また、微細気泡の発生頻度も調整することもでき、更に微細気泡のサイズも微細気泡発生面に形成する凸部のサイズを調整することによってナノレベルの微細気泡を発生させることができる微細気泡発生板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は本発明によれば、表面に複数凸部が形成された微細気泡発生面を備える微細気泡発生板であって、前記凸部の直径をdとすると、上記微細気泡発生面に形成された相隣り合う凸部の間隔Rdは、Rd≧dに設定されている微細気泡発生板を提供することによって達成できる。
【0010】
また、上記微細気泡発生面における微細気泡の発生頻度Fは、F=Sp×V/dの計算式で得られる値であることを特徴とする微細気泡発生板であり、上記Vは前記微細気泡発生面を流れる流体の流速であり、上記Spは定数である。
したがって、微細気泡発生面に形成する凸部の直径dを変更することによって、微細気泡の発生頻度を調整することができ、更に微細気泡発生面を流れる流体の流速Vを変えることによって、微細気泡の発生頻度を調整することができる。
【0011】
上記微細気泡発生面に形成される凸部の直径dは、例えば1~100μmであり、微細気泡発生面によって発生する微細気泡の大きさは、例えば10~200nmである。
また、上記微細気泡発生面は移動又は回転し、微細気泡発生面には液体が流れることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の微細気泡発生板を説明する図である。
図2】微細気泡発生板の表面に形成された凸部の構成を詳しく示す図であり、微細気泡発生板の一部を拡大して示す図である。
図3】微細気泡発生板の表面にできる渦流の生成過程を説明する図である。
図4】本実施形態の微細気泡生成板を円筒部材の取り付けた微細気泡発生装置の例を示す図である。
図5】ポンプの羽根に本実施形態の微細気泡発生面を形成した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本実施形態の微細気泡発生板を説明する図である。本例の微細気泡発生板1は所定の厚さを有する、例えばステンレスや、鉄、銅等の金属や、板状の樹脂、シリコン等の材料で構成されている。この微細気泡生成板1の表面(微細気泡発生面)3には多数の凸部2が形成されている。この凸部2は、例えばブラスト加工によって最適なサイズの研磨剤を表面3に吹き付けて形成する方法や、ワイヤー放電加工、エッチィング等の加工方法によって形成されている。
【0014】
同図に示すように、この微細気泡発生板1には、加圧された水流等の液体が供給され、微細気泡発生面3に形成された上記凸部2によって渦流が作られ、微細気泡が生成される。
【0015】
図2は上記微細気泡発生面3に形成された凸部2の構成を詳しく示す図であり、微細気泡発生板1の一部を拡大して示している。同図に示すように、微細気泡発生板1(微細気泡発生面3)には所定の高さを有する直径dの凸部2a、2b、2c、・・が形成されている。そして、例えば凸部2aに隣接する凸部2bとの間隔Rdは、Rd≧dに設定されている。
【0016】
このように設定することによって、微細気泡発生面3にできる渦流の生成を促進するものである。すなわち、微細気泡発生板1上を流れる水流が凸部2aに当たり、凸部2aの後方に生成される渦流が隣接する凸部2bによって影響されることなく生成できる距離に設定されている。
【0017】
このように、合い隣り合う凸部2(2aと2b、2bと2c、・・)間で一定の間隔を隔てることによって、多くの渦流を微細気泡発生面3に生成し、微細気泡の生成を促進する構成である。
【0018】
また、微細気泡発生板1に供給される水流の速度をVとすると、本例の微細気泡発生板1によって生成される微細気泡の出現頻度Fは、F=Sp×V/dの計算式で得られる値である。尚、上記Spは定数である。したがって、微細気泡発生面3に形成する凸部2a、2b、2c、・・の直径dを小さくすることによって、微細気泡の出現頻度Fを大きくすることができる。
【0019】
また、微細気泡発生装置1に供給する水流の速度Vを増すことによっても、微細気泡の出現頻度Fを大きくすることができる。尚、微細気泡発生面3に形成する凸部2a、2b、2c、・・の高さは、例えば夫々の凸部2a、2b、2c、・・の直径dとほぼ同じに設定されている。
【0020】
このように構成された本例の微細気泡発生板1に、図1に示す方向から加速された水流を供給することによって、微細気泡発生面3に形成された凸部2に水流が衝突し、凸部2の後方に渦流を作る。図3はこの状態を説明する図である。
【0021】
同図に示すように、例えば加速された水流が凸部2aに衝突すると、凸部2aの側面に沿って水が流れ、凸部2aの後方に渦流4aを生成する。この渦流4aの大きさは、凸部2aの直径に対応した大きさであり、例えば凸部2aの直径に対応する大きさの渦流4aが生成される。このことは、他の凸部2b、2c、・・においても同様であり、凸部2b、2c、・・の後方にも対応した大きさの渦流4b、4c、・・が生成される。
尚、図3に示す渦流4(4a、4b、4c、・・)の生成は、分かり易く説明するものであり、例えば各凸部2(2a、2b、2c、・・)の下側のみではなく、上側にも同様に液体の流れがあり、他の個所にも多くの渦流が形成される。
【0022】
また、前述のように生成される微細気泡の出現頻度は、F=Sp×V/dの計算式で得られ、凸部2a、2b、2c、・・の直径dを小さく形成すれば、微細気泡の発生頻度は増す。したがって、凸部2a、2b、2c、・・の直径dを調整することによって、大量の微細気泡を発生させることができる。さらに、生成する微細気泡のサイズは凸部2の直径dに対応するサイズであり、凸部2の直径dを最適に設定することによって、ナノレベルの微細気泡を生成することができる。
【0023】
当社の各種実験では、上記微細気泡発生板1に形成する凸部2の直径dを、例えば1~100μmに形成した場合、微細気泡発生面3によって発生される微細気泡の大きさが10~200nmであり、最適なナノレベルの微細気泡を発生させることが分かった。
【0024】
図4は上記構成の微細気泡発生板1を円筒部材5の取り付けた微細気泡発生装置の一例である。同図に示すように、円筒部材5の内部には、例えば断面放射状に3枚の微細気泡発生板1a~1cが配設されている。この3枚の微細気泡発生板1a~1cの夫々は、上記の図1において説明した多数の凸部2が表面に形成された微細気泡発生面3を備えた微細気泡発生板である。
【0025】
また、円筒部材5に取り付けた微細気泡発生板1a~1cについては、夫々の微細気泡発生板1a~1cの両面に多数の凸部2が形成されている。
【0026】
同図に示すように、この微細気泡発生装置の左側より加速された水流を供給し、内部に取り付けられた微細気泡発生板1a~1cに高速の水流を供給すると、上記のように、3枚の微細気泡発生板1a~1cの夫々の両面には多数の凸2が形成されているので、夫々の微細気泡発生面3から大量のナノレベルの微細気泡が生成される。この様にして生成された微細気泡は微細気泡発生装置から吐出され、所望の用途に使用される。
【0027】
尚、上記説明では本例の微細気泡発生板1を円筒部材5に取り付ける構成としたが、円筒部材5に限らず、例えば四角、六角、八角等の角状部材に複数の微細気泡発生板1を取り付ける構成としてもよい。
また、上記説明では円筒部材5に微細気泡発生板1を取り付ける構成としたが、円筒部材5の内周面に上記微細気泡発生板1と同様な構成の凸部2を設けるようにしてもよい。
【0028】
また、角状部材やパイプに限らず、凹状、又は積層状、更にはハニカム形状等の部材に上記微細気泡発生面3を施した微細気泡発生装置としてもよい。
【0029】
また、ホース、網状、柵状、棒状、ベルトコンベアのベルト等にも 本例の微細気泡発生面3を形成する構成としてもよい。
【0030】
さらに、例えばビールを注ぐコップやジョッキ、化粧品の容器の内周面や底面を上記微細気泡発生面3として形成してもよく、洗濯機の水槽や、水筒、ボトル等の内周面や底面を上記微細気泡発生面3として形成してもよく、更にポンプの羽根やミキサーの羽根を上記凸部2を備えた微細気泡発生面3として形成してもよい。
【0031】
また、ポンプの羽根と共に、羽根のケーシング、コンクリートミキサー車等のミキサー部、水車、スクリューパルセーター等の可動部に、多数の凸部が形成された本例の微細気泡発生面3を設ける構成してもよい。
【0032】
図5はポンプの羽根に本例の微細気泡発生面を形成した図である。
同図において、4枚のポンプの羽根7a~7dの両面には多数の凸部が形成され、本例の微細気泡発生面を形成している。
【0033】
例えば、同図のAはポンプの羽根7aの表面の微細気泡発生面の状態を示す拡大図であり、同図のBはポンプの羽根7dの表面の微細気泡発生面の状態を示す拡大図である。勿論、ポンプの羽根7b及び7cの両面にも同様な微細気泡発生面が形成されている。
【0034】
尚、上記説明ではポンプの羽根に微細気泡発生面3を形成した場合について説明したが、ポンプの羽根に限らす、液体が流れるポンプ内の通路等の液体が接触する部分に本例の微細気泡発生面3を形成してもよい。
また、本例の微細気泡発生面3が形成されたポンプは、渦流ポンプ、タービンポンプ等の各種ポンプに適用できることは勿論である。
【0035】
また、酒などを混ぜるマドラーの表面に本例の微細気泡発生面3を形成する構成してもよい。
【0036】
また、多数の凸部が形成された微細気泡発生面3に沿って効率良く水が流れるように、本例の微細気泡発生板3をフレキシブルに変形させてもよい。
【0037】
尚、上記説明では微細気泡発生板1に加速された水流を供給したが、供給される水流は旋回流であってもよい。また、水流に限らず、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒や石油等の鉱油の旋回流であってもよい。
【0038】
また、上記図1の説明において微細気泡発生板1に加圧された水流等の液体を供給したが、微細気泡発生板1に供給する液体に空気、水素、重水素、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、塩素、二酸化窒素、硫化水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン等の気体を含有する気液を供給する構成としてもよい。
【0039】
1、1a~1c・・微細気泡生成板
2、2a、2b、2c・・凸部
3・・・表面(微細気泡発生面)
4、4a、4b、4c・・渦流
5・・・円筒部材
7a~7d・・ポンプの羽根
A、B・・図5の一部の拡大図
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-09-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に円錐台形状の複数凸部が形成された微細気泡発生面を備える微細気泡発生板であって、
前記凸部の底面の直径をdとすると、微細気泡発生面に形成された相隣り合う凸部の間隔Rdは、Rd≧dに設定され、
前記微細気泡発生面に形成される凸部の底面の直径dは、1~100μmである
ことを特徴とする微細気泡発生板。
【請求項2】
前記微細気泡発生面によって発生する微細気泡の大きさは、10~200nmであることを特徴とする請求項1に記載の微細気泡発生板。
【請求項3】
前記微細気泡発生面は移動又は回転することを特徴とする請求項1、又は2に記載の微細気泡発生板。
【請求項4】
前記微細気泡発生面には液体が流れることを特徴とする請求項3に記載の微細気泡発生板。