(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124757
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】負熱膨張材及び複合材料
(51)【国際特許分類】
C01G 31/00 20060101AFI20230830BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C01G31/00
C01B25/45 M
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022080386
(22)【出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2022027910
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】深沢 純也
(72)【発明者】
【氏名】畠 透
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA05
4G048AB01
4G048AB03
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
【解決課題】優れた負熱膨張特性を有する負熱膨張材を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
Cu
xCa
yV
zO
t (1)
(式中、xは0<x<2.50、yは0<y<2.00、zは1.70≦z≦2.30、tは6.00≦t≦9.00を示す。但し、1.00≦x+y≦3.00である。)
で表される銅バナジウム複合酸化物からなることを特徴とする負熱膨張材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
CuxCayVzOt (1)
(式中、xは0<x<2.50、yは0<y<2.00、zは1.70≦z≦2.30、tは6.00≦t≦9.00を示す。但し、1.00≦x+y≦3.00である。)
で表される銅バナジウム複合酸化物からなることを特徴とする負熱膨張材。
【請求項2】
熱膨張係数が、-10.0×10-6/K以下であることを特徴とする請求項1に記載の負熱膨張材。
【請求項3】
平均粒子径が、0.1~100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負熱膨張材。
【請求項4】
BET比表面積が、0.05~50m2/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の負熱膨張材。
【請求項5】
球形度が0.7以上1.0以下の球状粒子の含有率が、個数基準で75%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の負熱膨張材。
【請求項6】
更に、リンを固溶させて含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の負熱膨張材。
【請求項7】
請求項1~2いずれか1項記載の負熱膨張材と正熱膨張材とを含むことを特徴とする複合材料。
【請求項8】
前記正熱膨張材が、金属、合金、ガラス、セラミックス、ゴム及び樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇に対して収縮する負熱膨張材及び該負熱膨張材を含む複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの物質は温度が上昇すると、熱膨張によって長さや体積が増大する。これに対して 、温めると逆に体積が小さくなる負の熱膨張を示す材料(以下「負熱膨張材」ということがある)も知られている。
【0003】
負の熱膨張を示す材料は、他の材料とともに用いて、温度変化による材料の熱膨張の変化を抑制することができることが知られている。
【0004】
負の熱膨張を示す材料としては、例えば、β-ユークリプタイト、タングステン酸ジルコニウム(ZrW2O8)、リン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr2WO4(PO4)2)、ZnxCd1-x(CN)2、マンガン窒化物、ビスマス・ニッケル・鉄酸化物等が知られている。
【0005】
リン酸タングステン酸ジルコニウムの線膨張係数は、0~400℃の温度範囲で-3.4~-3.0ppm/℃であり、負熱膨張性が大きいことが知られている。このリン酸タングステン酸ジルコニウムと、正の熱膨張を示す材料(以下「正熱膨張材」ということがある。)とを併用することで、低熱膨張の材料を製造することができる(特許文献1~2等参照)。また、正熱膨張材である樹脂等の高分子化合物と負熱膨張材とを併用することも提案されている(特許文献3等参照)。
【0006】
また、下記非特許文献1には、α-Cu2V2O7の銅バナジウム複合酸化物は、室温から200℃の温度域で-5~-6ppm/℃の線膨張係数を有することが開示されている。また、該銅バナジウム複合酸化物のCuの一部をZn、Ga、Feから選ばれる少なくとも1種の元素で置換したり、或いはVの一部をPで置換することにより、更に負熱膨張特性を向上させる方法も提案されている(特許文献4~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-35840号公報
【特許文献2】特開2015-10006号公報
【特許文献3】特開2018-2577号公報
【特許文献4】特開2019-210198号公報
【特許文献5】中国特許CN112390642号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ceramics International, Vol.42、p17004―17008(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献1や、特許文献4及び5の銅バナジウム複合酸化物は、リン酸タングステン酸ジルコニウムに比べ、線膨張係数が小さくなるが、より安価な原料系で製造でき、工業的に有利に製造することができること及び耐水性に優れる観点から、非特許文献1の銅バナジウム複合酸化物に比べて更に、負熱膨張特性を向上させることが要求されている。
【0010】
従って、本発明は、優れた負熱膨張特性を有する負熱膨張材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、Cu2V2O7の銅バナジウム複合酸化物の負熱膨張特性を更に向上させる方法を検討する中で、該銅バナジウム複合酸化物にCaを固溶させて含有させることにより、負熱膨張特性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明(1)は、下記一般式(1):
CuxCayVzOt (1)
(式中、xは0<x<2.50、yは0<y<2.00、zは1.70≦z≦2.30、tは6.00≦t≦9.00を示す。但し、1.00≦x+y≦3.00である。)
で表される銅バナジウム複合酸化物からなることを特徴とする負熱膨張材を提供するものである。
【0013】
また、本発明(2)は、熱膨張係数が、-10.0×10-6/K以下であることを特徴とする(1)の負熱膨張材を提供するものである。
【0014】
また、本発明(3)は、平均粒子径が、0.1~100μmであることを特徴とする(1)又は(2)の負熱膨張材を提供するものである。
【0015】
また、本発明(4)は、BET比表面積が、0.05~50m2/gであることを特徴とする(1)~(3)いずれかの負熱膨張材を提供するものである。
【0016】
また、本発明(5)は、球形度が0.7以上1.0以下の球状粒子の含有率が、個数基準で75%以上であることを特徴とする(1)~(4)いずれかの負熱膨張材を提供するものである。
【0017】
また、本発明(6)は、更に、リンを固溶させて含有することを特徴とする(1)~(5)いずれかの負熱膨張材を提供するものである。
【0018】
また、本発明(7)は、本発明(1)~(6)いずれかの負熱膨張材と正熱膨張材とを含むことを特徴とする複合材料を提供するものである。
【0019】
また、本発明(8)は、前記正熱膨張材が、金属、合金、ガラス、セラミックス、ゴム及び樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(7)の複合材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた負熱膨張特性を有する負熱膨張材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で得られた負熱膨張材試料のX線回折図。
【
図2】実施例2で得られた負熱膨張材試料のX線回折図。
【
図3】実施例3で得られた負熱膨張材試料のX線回折図。
【
図4】実施例4で得られた負熱膨張材試料のX線回折図。
【
図5】比較例1で得られた負熱膨張材試料のX線回折図。
【
図6】実施例6で得られた負熱膨張材のSEM写真(倍率400)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明の負熱膨張材は、下記一般式(1):
CuxCayVzOt (1)
(式中、xは0<x<2.50、yは0<y<2.00、zは1.70≦z≦2.30、tは6.00≦t≦9.00を示す。但し、1.00≦x+y≦3.00である。)
で表される銅バナジウム複合酸化物からなることを特徴とする。
【0023】
一般式(1)中、xは、0<x<2.50である。xは、負熱膨張特性がより高くなる点で、好ましくは1.00≦x≦2.30、特に好ましくは1.50≦x≦2.20である。
一般式(1)中、yは、0<y<2.00である。yは、負熱膨張特性がより高くなる点で、好ましくは0.005≦y≦1.00、特に好ましくは0.01≦y≦0.50、一層好ましくは0.02≦y≦0.40である。
一般式(1)中、zは、1.70≦z≦2.30である。zは、負熱膨張特性がより高くなる点で、好ましくは1.80≦z≦2.20である。
一般式(1)中、tは、6.00≦t≦9.00である。tは、負熱膨張特性がより高くなる点で、好ましくは6.00≦t≦8.00である。
但し、一般式(1)中のx+yは、1.00≦x+y≦3.00である。x+yは、負熱膨張特性がより高くなる点で、好ましくは1.50≦x+y≦2.50である。
【0024】
本発明の負熱膨張材のBET比表面積は、特に制限されないが、好ましくは0.05~50m2/g、特に好ましくは0.10~10m2/g、一層好ましくは0.20~8m2/gである。負熱膨張材のBET比表面積が、上記範囲にあることにより、負熱膨張材を樹脂やガラス等のフィラーとして用いる際に、取扱いが容易になる。なお、本発明において、負熱膨張材のBET比表面積は、全自動比表面積測定装置Macsorb(マウンテック社製)を用いてBET1点法により測定された値である。
【0025】
本発明の負熱膨張材の平均粒子径は、特に制限されないが、走査型電子顕微鏡観察法により求められる平均粒子径で、好ましくは0.1~100μm、特に好ましくは0.2~80μmである。負熱膨張材の平均粒子径が上記範囲にあることにより、負熱膨張材を樹脂やガラス等のフィラーとして用いる際に、取扱いが容易になる。なお、本発明において、負熱膨張材の平均粒子径については、走査型電子顕微鏡観察において、倍率1000倍で任意に抽出した粒子20個の粒子径の算術平均値を、平均粒子径として求めた。このとき、各粒子の粒子径とは、粒子の二次元投影像を横断する線分のうち最も大きい長さ(最大長)をいう。
【0026】
本発明の負熱膨張材の粒子形状は、特に制限されず、例えば、球状、粒状、板状、鱗片 状、ウィスカー状、棒状、フィラメント状、破砕状であってもよいが、正熱膨張材との混合時にチッピング等による微粒分等の発生を抑制し、より均一混合できる観点から粒子形状は球状のものを多く含むものが一層好ましい。
【0027】
なお、本発明において、粒子形状が球状とは、必ずしも真球状のものである必要はない。本発明において球状とは球形度が0.70以上1.00以下のものであることを示す。
本発明において、球形度とは、サンプルを倍率100~1000で電子顕微鏡観察し画像解析処理を行い、得られたパラメーターから下記計算式(1)で求められる。
球形度=等面積円相当径/外接円径 (1)
(式(1)中、等面積円相当径とは、粒子の周長に円周が相当する円の直径を指す。外接円径とは、粒子の最長径を指す。)
【0028】
本発明の負熱膨張材において、球形度が0.70以上1.00以下である球状粒子の含有率は、個数基準で、好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。負熱膨張材中の球形度が0.70以上1.00以下である球状粒子の含有率が上記範囲にあることにより、正熱膨張材との混合時にチッピング等による微粒分等の発生を抑制し、正熱膨張材にする分散性及び充填特性が優れる。
本発明において、球形度が0.70以上1.00以下である球状粒子の含有率は、サンプルを倍率100~1000で電子顕微鏡観察し、任意に抽出した粒子50個について画像解析処理を行い、抽出した粒子に占める、上記計算式(1)から求められる球形度が0.70以上1.00以下である粒子の個数基準の含有割合(百分率)を示す。
【0029】
前記画像解析処理に用いられる画像解析装置としては、例えば、ルーゼックス(ニレコ社製)、PITA-04(セイシン企業社製)等が挙げられる。球形度の値は1に近づくほど真球状に近くなる。
【0030】
本発明の負熱膨張材は、α-Cu2V2O7の銅バナジウム複合酸化物に比べて、負熱膨張特性が高くなる。すなわち、本発明の負熱膨張材の熱膨張係数は、α-Cu2V2O7の銅バナジウム複合酸化物に比べて、小さい。
【0031】
なお、本発明において、熱膨張係数は、以下の手順により求められる。先ず、試料1.00gにプロピレンカーボネート0.05gを加えて乳鉢で3分間粉砕混合した後、0.15gを計量し、φ6mmの金型に全量充填する。次いで、ハンドプレスを用いて、0.5tの圧力で成型して粉末成型体を作製する。得られた粉末成型体を電気炉にて700℃まで3時間で昇温し、4時間保持してセラミック成型体を作製する。次いで、作製したセラミック成形体について、熱機械測定装置(例えば、NETZSCH JAPAN製 TMA4000SE)を用いて熱膨張係数を測定する。測定条件を、窒素雰囲気、荷重10g、温度範囲50℃~425℃とし、温度範囲50℃~425℃にて繰り返し2回測定し、2回目の測定の50~400℃間の熱膨張係数を、負熱膨張材の熱膨張係数とする。
【0032】
本発明の負熱膨張材の熱膨張係数は、α-Cu2V2O7の銅バナジウム複合酸化物に比べて、熱膨張係数が小さくなる限りは、制限されるものではないが、本発明の負熱膨張材の熱膨張係数は、-10.0×10-6/K以下、好ましくは-12.0×10-6/K以下であり、下限値についても特に制限されるものではないが、概ね-50.0×10-6/K以上、好ましくは-40.0×10-6/K以上である。本発明の負熱膨張材において、正熱膨張材と複合させたときに熱膨張係数が正の膨張を相殺させ易くなる点で、特に好ましくは-50.0×10-6~-10.0×10-6/Kである。
【0033】
また、一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物には、基本的にはZiesite相(β相)とBlossite相(α相)が存在し、また、これらの混相のものも存在する。本発明の負熱膨張材は、Ziesite相(β相)、Blossite相(α相)、あるいは、Ziesite相(β相)とBlossite相(α相)の混相のものであってもよいが、得られた銅バナジウム複合酸化物をX線回折分析したときに、Ziesite相(β相)の単相、或いはZiesite相(β相)に起因する2θ=25°付近のメインピークがBlossite相(α相)に起因する2θ=27°付近のメインピークに比べてピークの高さが高いZiesite相(β相)をより多く含む混相のものが、負熱膨張性に優れたものになる観点から好ましい。
【0034】
本発明において、2θ=25°付近とは、2θ=23.5~26.5°を示す。また、2θ=27°付近とは、2θ=26.8~27.8°を示す。
本発明の負熱膨張材では、線源としてCuKα線を用いて、負熱膨張材をX線回折分析したときに、2θ=25°付近の回折ピークは、Ziesite相(β相)に由来するものであり、2θ=27°付近の回折ピークは、Blossite相(α相)に由来するものである。
【0035】
また、本発明において、負熱膨張性を調整したり正熱膨張材への分散性を改良することを目的として、必要により、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物に、更にリンを固溶させて含有させることができる。つまり、本発明の負熱膨張材としては、リンが固溶している前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物からなるものが挙げられる。
固溶させて含有させるリンの量が多くなるに従って、熱膨張係数は大きくなるが、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物のV原子に対するP原子のモル比(P/V)で0.0より大きく0.3以下、好ましくは0.0より大きく0.2以下とすることにより、本発明の負熱膨張材の熱膨張係数が-10.0×10-6/K以下、好ましくは-12.0×10-6/K以下のものが得られる観点から好ましい。
【0036】
本発明の負熱膨張材の製造方法は、特に制限されないが、下記の第1工程及び第2工程を行うことにより工業的に有利に製造される。
【0037】
本発明の負熱膨張材の製造方法は、Cu源、Ca源、及びV源を混合し原料混合物を調製する第1工程と、
該原料混合物を焼成し、負熱膨張材を得る第2工程と、
を有することを特徴とする。
【0038】
第1工程は、Cu源、Ca源及びV源を混合し原料混合物を調製する工程である。
【0039】
第1工程に係るCu源としては、例えば、グルコン酸銅、クエン酸銅、酢酸銅、乳酸銅等の有機カルボン酸の銅塩、鉱酸の銅塩、銅の酸化物、銅の水酸化物等が挙げられる。
【0040】
第1工程に係るCa源としては、例えば、カルシウムの炭酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩等が挙げられる。カルシウムのカルボン酸塩としては、グルコン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、乳酸塩等が挙げられる。
【0041】
第1工程に係るV源としては、例えば、バナジウム酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルボン酸塩、五酸化バナジウム等のバナジウムの酸化物等が挙げられる。カルボン酸のバナジウム塩としては、ギ酸、酢酸、グリコール酸、乳酸、グルコン酸等のモノカルボン酸塩、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等のジカルボン酸、カルボキシル基の数が3であるクエン酸等のカルボン酸塩が挙がられる。
【0042】
第1工程では、原料混合物中のCu、Ca及びVの各原子モル比が、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物の組成となるように適宜、Cu源、Ca源及びV源の混合量を調製することが好ましい。
【0043】
第1工程では、Cu源、Ca源及びV源の混合処理を、湿式又は乾式で行うことができるが、均一な原料混合物を容易に得ることができるという点で、湿式で混合処理を行うことが好ましい。湿式混合処理を行う方法としては、Cu源、Ca源及びV源が不溶性又は難溶性の溶媒を用いて行うことが、原料混合物として均一に分散させたものが得られ易く、このためX線回折的に単相の一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物が得られ易い点で、好ましい。湿式混合処理に用いられる溶媒としては、Cu源、Ca源及びV源の種類によっても異なるが、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。また、Cu源
、Ca源、V源の平均粒子径は、反応性が高くなる点で、レーザー回折法により求められる平均粒子径(D50)で、50μm以下が好ましく、0.1~40μmが特に好ましい。
【0044】
また、湿式混合処理を行う装置としては、各原料が均一に分散したスラリーが得られれば、特に制限はない。また、スラリーの調製において、必要により、スラリーをメディアミルで湿式粉砕処理することができる。メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ、サンドミル等のメディアミルが挙げられる。また、実験室レベルの少量の場合は、乳鉢等を用いて湿式混合処理を行ってもよい。
また、湿式混合処理を一層効率的に行う観点から、スラリーに、分散剤を混合してもよい。スラリーに混合させる分散剤としては、各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等が挙げられる。スラリー中の分散剤の濃度は、分散効果が高くなる点で、好ましくは0.01~10質量%、特に好ましくは0.1~5質量%である。
【0045】
湿式混合処理後に全量乾燥して溶媒を除去することにより、原料混合物を得ることができる。
【0046】
また、第1工程では、Cu源、Ca源及びV源を水溶媒に溶解させた後に、水溶媒を除去することにより、原料混合物を得ることもできる。この場合、Cu源、Ca源及びV源として、水溶媒に溶解するものを用いればよい。水溶媒に溶解するCu源としては、例えば、有機カルボン酸の銅塩、鉱酸の銅塩等が挙げられる。また、水溶媒に溶解するCa源としては、例えば、有機カルボン酸のカルシウム塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられる。
水溶媒に溶解するV源としては、バナジウム酸及びそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0047】
第1工程において、V源としてカルボン酸のバナジウム塩を用いる場合、水溶媒に五酸化バナジウム、還元剤及びカルボン酸を添加し、60~100℃で加熱処理してカルボン酸のバナジウム塩を生成させ、この反応液をそのまま用いて、Cu源及びCa源を混合して、Cu源、Ca源及びV源を含有する原料混合液を得、次いで、該原料混合液から水溶媒を除去して、原料混合物を調製してもよい。
【0048】
還元剤としては、還元糖が好ましく、還元糖としては、例えば、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、スクロース等が挙げられ、このうち、ラクトース、スクロースが、優れた反応性を有するという観点から特に好ましい。還元糖の添加量は、五酸化バナジウム中のVに対する還元糖中のCのモル比(C/V)で、好ましくは0.7~3.0であり、効率的に還元反応を行うことができる点で、より好ましくは0.8~2.0である。カルボン酸の添加量は、五酸化バナジウムに対するモル比で、好ましくは0.1~4.0であり、効率的に透明なバナジウム溶解液を得ることができる点で、より好ましくは0.2~3.0である。
【0049】
なお、第1工程において、湿式混合処理後に全量乾燥して溶媒を除去して得られる前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物の組成は、各原料仕込み時のCu源、Ca源及びV源中のCu、Ca及びVの原子モル比とほぼ一致する。
【0050】
第2工程は、第1工程で調製した原料混合物を焼成して、本発明の負熱膨張材を得る工程である。
【0051】
第2工程における焼成温度は、好ましくは580~780℃、より好ましくは600~750℃である。一方、第2工程における焼成温度が、上記範囲未満だと、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物の生成が不十分となる傾向があり、また、上記範囲を超えると、坩堝等への融着により生成物の回収が困難になる傾向がある。第2工程における焼成時間は、特に制限されず、本発明の負熱膨張材が生成するまで十分な時間焼成を行う。
【0052】
本発明の負熱膨張材の生成については、例えば、X線回折分析で単相の一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物が得られているかどうかで、本発明の負熱膨張材の生成を確認することができる。なお、本発明において単相であるとは、一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物のZiesite相(β相)が単独で存在すること、Blossite相(α相)が単独で存在すること、あるいは、Ziesite相(β相)とBlossite相(α相)の混相で存在していることを指し、X線回析的に、一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物以外の回析ピークが検出されないことを意味する。
【0053】
第2工程では、多くの場合、焼成時間が1時間以上、好ましくは2~20時間で、原料混合物のほぼ全てが、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物からなる負熱膨張材となる。
【0054】
第2工程における焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0055】
第2工程では、焼成を1回行ってもよいし、所望により複数回行ってもよい。例えば、粉体特性を均一にする目的で、一度焼成したものを粉砕し、粉砕物について更に焼成を行ってもよい。
【0056】
焼成後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕、解砕、分級等を行い、目的とする負熱膨張材を得る。
【0057】
また、前記一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物に、更にリンを固溶させて含有させた負熱膨張材を製造するには、前記第1工程において、Cu源、Ca源及びV源に加えてP源を添加して混合し原料混合物を調製し、次いで前記第2工程を行うことにより製造することができる。
P源としては、リン酸が好ましい。
第1工程におけるP源の添加量は、V源中のV原子に対するP源中のP原子のモル比(P/V)で0.0より大きく0.3以下、好ましくは0.0より大きく0.2以下である。
【0058】
粒子形状が球状である負熱膨張材を製造する方法としては、前記第1工程において湿式混合処理後の全量乾燥を、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法を用いて行うことにより、湿式混合処理後のスラリーを乾燥処理し、次いで前記第2工程を行うことにより、球形度が0.70以上1.00以下の球状粒子の含有率が、個数基準で75%以上、好ましくは80%以上である負熱膨張材を製造する方法が挙げられる。
噴霧乾燥法において、霧化された液滴の大きさは特に限定されないが、1~40μmが好ましく、5~30μmが特に好ましい。スプレードライヤーへのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが好ましい。
なお、スプレードライヤーにおいて乾燥のために用いる熱風の温度は、100~270℃、好ましくは150~230℃であることが、粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0059】
本発明の負熱膨張材の製造方法により得られる一般式(1)で表される銅バナジウム複合酸化物からなる負熱膨張材の平均粒子径は、好ましくは0.1~100μm、特に好ましくは0.2~80μmであり、また、BET比表面積は、0.05~50m2/g、特に好ましくは0.10~10m2/gである。負熱膨張材の平均粒子径及び/又はBET比表面積が、上記範囲にあることが、負熱膨張材を樹脂やガラス等へのフィラー用として用いる際に、取扱いが容易になる点で好ましい。
【0060】
また、本発明に係る負熱膨張材は、樹脂分散性や負熱膨張材の耐湿性を向上させることを目的として、必要により粒子表面が、表面処理が施されていてもよい。また、本発明に係る負熱膨張材の製造方法は、樹脂分散性や負熱膨張材の耐湿性を向上させることを目的として、必要により、第2工程を行い得られる負熱膨張材に対し、表面処理を施してもよい。
【0061】
表面処理としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、脂肪酸又はその誘導体、Zn、Si、Al、Ba、Ca、Mg、Ti、V、Sn、Co、Fe及びZrから選ばれる元素を1種又は2種以上含有する無機化合物等で粒子表面を被覆処理する方法等が挙げられる(例えば、WO2020/095837号パンフレット。WO2020/261976号パンフレット、WO2019/087722号パンフレット、特開2020―147486号公報参照)。また、これらを適宜組み合わせて表面処理を行ってもよい。
【0062】
本発明の負熱膨張材の製造方法を行い得られる負熱膨張材の熱膨張係数は、-10.0×10-6/K以下、好ましくは-12.0×10-6/K以下であり、下限値については概ね-50.0×10-6/K以上、好ましくは-40.0×10-6/K以上である。本発明の負熱膨張材の製造方法を行い得られる負熱膨張材の熱膨張係数、正熱膨張材と複合させたときに熱膨張係数が正の膨張を相殺させ易くなる点で、特に好ましくは-50.0×10-6~-10.0×10-6/Kである。
【0063】
本発明の負熱膨張材は、粉体又はペーストとして用いられる。本発明の負熱膨張材をペーストとして用いる場合には、本発明の負熱膨張材を、溶媒及び/又は粘性の低い液状樹脂に混合及び分散させ、ペーストの状態で用いる。また、本発明の負熱膨張材を、溶媒及び/又は粘性の低い液状樹脂に分散させ、更に必要により、バインダー、フラックス材及び分散剤等を含有させて、ペーストの状態で用いてもよい。
【0064】
本発明の負熱膨張材は、正熱膨張材として、各種有機化合物又は無機化合物と併用され、複合材料として用いられる。本発明の複合材料は、本発明の負熱膨張材と、正熱膨張材と、を含む。
【0065】
正熱膨張材として用いられる有機化合物としては、特に限定されないが、ゴム、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ABS、ポリアクリレート、ポリフェニレンスルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET樹脂)及びポリ塩化ビニル樹脂などを挙げられる。また、正熱膨張材として用いられる無機化合物としては、二酸化ケイ素、珪酸塩、グラファイト、サファイア、各種のガラス材料、コンクリート材料、各種のセラミック材料などが挙げられる。
【0066】
本発明の複合材料は、負熱膨張特性に優れる本発明の負熱膨張材を含んでいるため、他の化合物との配合比率によって、負熱膨張率、零熱膨張率又は低熱膨張率を実現することが可能である。
【実施例0067】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
【0068】
(実施例1)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)1.73g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.51g、炭酸カルシウム(CaCO
3:平均粒子径2.4μm)0.03gを計量し、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、全量乾燥して原料混合物を得た。この原料混合物を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=25°付近にメインの回折ピークを持つZiesite相の単相の銅バナジウム複合酸化物(Cu
2.00Ca
0.03)V
2.00O
7.00を得た。焼成品のX線回折図を
図1に示す。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0069】
(実施例2)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)1.73g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.51g、炭酸カルシウム(CaCO
3:平均粒子径2.4μm)0.190gを計量し、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、全量乾燥して原料混合物を得た。この原料混合物を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=25°付近にメインの回折ピークを持つCu
2V
2O
7のZiesite相及び2θ=27°付近にメインの回析ピークを持つBlossite相が検出される銅バナジウム複合酸化物(Cu
2.00Ca
0.20)V
2.00O
7.00を得た。焼成品のX線回折図を
図2に示す。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0070】
(実施例3)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)1.76g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.51g、炭酸カルシウム(CaCO
3:平均粒子径2.4μm)0.03gを計量し、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、全量乾燥して原料混合物を得た。この原料混合物を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=25°付近にメインの回折ピークを持つCu
2V
2O
7のZiesite相及び2θ=27°付近にメインの回析ピークを持つBlossite相が検出される銅バナジウム複合酸化物(Cu
1.97Ca
0.03)V
2.00O
7.00を得た。焼成品のX線回折図を
図3に示す。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0071】
(実施例4)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)2.04g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.51g、炭酸カルシウム(CaCO
3:平均粒子径2.4μm)0.34gを計量し、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、全量乾燥して原料混合物を得た。この原料混合物を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=25°付近にメインの回折ピークを持つCu
2V
2O
7のZiesite相及び2θ=27°付近にメインの回析ピークを持つBlossite相が検出される銅バナジウム複合酸化物(Cu
1.70Ca
0.30)V
2.00O
7.00を得た。焼成品のX線回折図を
図4に示す。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0072】
(比較例1)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)1.71g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.50g、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、乾燥して原料混合物を得た。この粉末を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=27°付近にメインの回析ピークを持つCu
2V
2O
7のBlossite相の単相が検出された。焼成品のX線回折図を
図5に示す。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0073】
(物性評価)
実施例及び比較例で得られた負熱膨張材試料について、平均粒子径、BET比表面積及び熱膨張係数を測定した。なお、平均粒子径及び熱膨張係数は下記のようにして測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
(平均粒子径)
負熱膨張材試料を、走査型電子顕微鏡で倍率1000倍で観察し、観察視野から、任意に抽出した粒子20個の最長径を測定し、それらの算術平均値を、負熱膨張材試料の平均粒子径として求めた。
【0075】
(熱膨張係数の測定)
<成型体の作製>
試料1.00gにプロピレンカーボネート0.05gを加えて乳鉢で3分間粉砕混合した後、0.15gを計量し、φ6mmの金型に全量充填した。次いで、ハンドプレスを用いて、0.5tの圧力で成型して粉末成型体を作製した。得られた粉末成型体を電気炉にて700℃まで3時間で昇温し4時間保持してセラミック成型体を作製した。
<熱膨張係数の測定>
作製したセラミック成形体について、熱機械測定装置(NETZSCH JAPAN製 TMA4000SE)を用いて熱膨張係数を測定した。測定条件を、窒素雰囲気、荷重10g、温度範囲50℃~425℃と、繰り返し2回測定した。繰り返し2回目の測定の50~400℃間での熱膨張係数を、負熱膨張材試料の熱膨張係数とした。
【0076】
【0077】
なお、比較例1の負熱膨張材試料の50~300℃間での線膨張係数は-4.4×10―6/Kであった。
【0078】
(実施例5)
五酸化バナジウム(V2O5:平均粒子径1.0μm)1.73g、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)1.51g、炭酸カルシウム(CaCO3:平均粒子径2.4μm)0.029g、85質量%リン酸(H3PO4)0.033gを計量し、エタノール30mlを分散媒として乳鉢で20分間粉砕混合した後、全量乾燥して原料混合物を得た。この原料混合物を大気下で、700℃で4時間焼成して焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、2θ=27°付近にメインの回析ピークを持つCu2V2O7のBlossite相の単相が検出される銅バナジウム複合酸化物(Cu2.00Ca0.06)(V2.00P0.06)O7.00を得た。
次いで、焼成品を乳鉢で粉砕処理し、これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は破砕状であった。
【0079】
(実施例6)
五酸化バナジウム(V
2O
5:平均粒子径1.0μm)16.6質量部、酸化銅(CuO:平均粒子径1.5μm)14.1質量部、炭酸カルシウム(CaCO
3:平均粒子径2.4μm)0.5質量部を計量し、純水68.5質量部を分散媒として30分間攪拌して31.3質量%スラリーを調製した。
次いで、前記スラリーに分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を0.1質量部仕込み、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだ。次いで、前記スラリーをメディア攪拌型ビーズミルへ供給し、湿式粉砕を行った。湿式粉砕後の固形分の平均粒子径をレーザー回折・散乱法により求めたところ、0.59μmであった。
次いで、湿式粉砕処理後のスラリーを220℃に設定したスプレードライヤーに、3.3L/hの供給速度で供給して、噴霧乾燥を行い、原料混合物を得た。
次いで、原料混合物を700℃で4時間大気中で焼成して焼成品を得た。焼成品を乳鉢で粉砕処理し、次いでジェットミルで粉砕を行い、粉砕物を得た。得られた粉砕物をX線回折分析したところ、粉砕物は2θ=25°付近にメインの回折ピークを持つZiesite相の銅バナジウム複合酸化物(Cu
1.94Ca
0.06)V
2.00O
7.00が確認された。これを負熱膨張材試料とした。
なお、この負熱膨張材試料を電子顕微鏡観察(倍率400)で任意に抽出した粒子50個について観察した結果、粒子形状は球状であった。
(物性評価)
実施例5~6で得られた負熱膨張材試料について、平均粒子径、BET比表面積及び熱膨張係数を測定した。なお、平均粒子径及び熱膨張係数を実施例1~4と同様に測定した。また、実施例6の負熱膨張材試料の負熱膨張材試料については、下記の方法で球形度を求めた。また、実施例6で得られた負熱膨張材試料のSEM写真を
図6に示す。
(球形粒子の含有率の測定)
画像解析装置ルーゼックス(ニレコ社製)を用いて、倍率400倍で任意に抽出した50個の粒子について、以下の計算式により球形度を求め、個数基準で球形度が0.70以上1.00以下である球形粒子の含有率を評価した。
球形度=等面積円相当径/外接円径
等面積円相当径:粒子の周長に円周が相当する円の直径
外接円径:粒子の最長径
【0080】