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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012480
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】脳波測定用装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/374 20210101AFI20230118BHJP
【FI】
A61B5/374
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165730
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020541989の分割
【原出願日】2019-02-07
(31)【優先権主張番号】15/896,203
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518399841
【氏名又は名称】セレニオン・オサケユフティオ
【氏名又は名称原語表記】Cerenion Oy
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】エーロ・ヴァユリュネン
(72)【発明者】
【氏名】ユッカ・コルテライネン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脳波信号の測定された位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング情報により、正常な脳に対して、検査された脳機能がどれだけ秩序だっているか効果的に明らかにすることができる装置を提供する。
【解決手段】装置は、データ処理ユニットを備え、データ処理ユニットは、装置に、人間の脳の少なくとも二つの脳波信号を受けさせ、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングのうちの少なくとも一つについての、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連した第1情報を形成させ、第1情報を正規化させ、正規化された第1情報についての情報を出力させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、前記装置は、データ処理ユニット(100)を備え、前記データ処理ユニット(100)は、一つ以上の処理装置(200)、およびコンピュータプログラムコードを含む一つ以上の記憶装置(202)を備え、前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有する前記コンピュータプログラムコードは、前記装置に少なくとも
人間(108)の脳の少なくとも二つの脳波信号を受けさせ、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングのうちの少なくとも一つについての、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連した第1情報を形成させ、
前記第1情報を正規化させ、
正規化された第1情報についての情報を出力させる、ように構成されている、装置。
【請求項2】
装置であって、前記装置は、データ処理ユニットを備え、前記データ処理ユニットは、一つ以上の処理装置(200)、およびコンピュータプログラムコードを含む一つ以上の記憶装置(202)を備え、前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有する前記コンピュータプログラムコードは、前記装置に少なくとも
人間(100)の脳の少なくとも二つの脳波信号を受けさせ、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングのうちの少なくとも一つについての、1Hz以下の周波数を有する徐波の位相カップリングに関連した第1情報を形成させ、
前記第1情報と、基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間で第1比較を実行させ、
前記第1比較の結果についての情報を出力させる、ように構成されている、装置。
【請求項3】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、少なくとも一つの脳波信号の出力についての第2情報を形成させ、前記第2情報を正規化させ、正規化された第2情報の結果についての情報を出力させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第2情報を正規化するために、基準脳機能に基づく対応する出力テンプレート情報と、前記第2情報との間で第2比較を実行させるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記第2情報とを組み合わさせ、組み合わせ情報と、基準脳機能に基づく対応する組み合わせテンプレート情報との間で組み合わせ比較を実行させ、前記組み合わせ比較についての情報を出力させるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、以下のリスト:てんかん性活動、脳機能障害、神経損傷、睡眠、および一つ以上のゼロでない量の麻酔薬物質のうちの少なくとも一つの影響下にあることが予想されている前記人間(108)の前記脳の前記少なくとも二つの脳波信号を受けさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1比較に基づいて前記人間(108)が前記リスト内の少なくとも一つの前記影響下にあるかどうかを推定させ、推定の結果を表示させるように構成されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
dと前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1比較に基づいて前記人間(108)の神経機能レベルを予測させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記カップリングテンプレート情報との間の差が第1所定閾値より小さい場合、良好な転帰に向けての前記人間の前記神経機能レベルのさらなる進行を予測させるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記カップリングテンプレート情報との間の差が第2所定閾値より大きい場合、転帰不良に向けての前記人間(108)の前記神経機能レベルのさらなる進行を予測させるように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、位相分離畳み込み変換に基づいて少なくとも二つの脳波信号の位相と振幅を分けさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記一つ以上の記憶装置(202)、および前記一つ以上の処理装置(200)を有するコンピュータプログラムコードは、前記装置に、情報理論的尺度、位相同期乗算器、復調、確率密度推定、二変量尺度、相関関係、多変量因果尺度、およびカップリングフィンガープリントのうちの少なくとも一つに基づいて前記第1情報を形成させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、前記データ処理ユニット(100)に前記人間(108)の前記脳の前記少なくとも二つの脳波信号を提供するように構成された電極システム(102)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
方法であって、データ処理ユニット(100)で実行される前記方法は、
データ処理ユニット(100)によって、人間(108)の脳の複数の脳波信号を受けるステップと、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリングと、少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングのうちの少なくとも一つについての、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連した第1情報を形成するステップと、
前記第1情報を正規化するステップと、
正規化された第1情報についての情報を出力するステップと、含む、方法。
【請求項15】
前記方法は、前記第1情報と、基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間で第1比較を行うことで前記第1情報を正規化するステップと、前記第1比較の結果についての情報を出力するステップと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、前記少なくとも二つの脳波信号の出力についての第2情報を形成するステップと、前記第2情報を正規化するステップと、正規化された前記第2情報の結果についての情報を出力するステップと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記正規化された第2情報と、基準脳機能に基づく対応する出力テンプレート情報との間で第2比較を行うことで前記第2情報を正規化するステップと、前記第2比較についての情報を出力するステップと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波測定用の装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の脳波(EEG)信号収集装置は、脳機能に直接関係する脳電場電位の長期または連続的な監視(モニタリング)を生じさせることができる。関心の空間チャネルを選択すると、および/または生のEEG記録から所望の周波数範囲にフィルタをかけると、規定通りに達成可能である。集中治療室(ICU)では、患者のEEGの長期監視が可能であり、EEGは比較的リソースを必要としないため、多くの利点を有し、ICUのベッドサイドでの脳機能監視に好ましいモダリティとなる(例えば、比較的低コスト、無線、速い、および装置設置面積が小さい)。ICUの医者にとって、神経機能障害と損傷の両方が共通して発生することに起因して、患者の循環および呼吸機能とともに、脳の状況を同様に診断することは重要である。しかしながら、基本信号を調査することに基づく一連の従来のEEG診断は、ICUレベルでは実用的でなくまたは望ましくなく、一般的な指標および/または特定の症例の指標などの関連情報を提供するためにより高度な信号解析が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、測定においての改善を提供しようとするものである。発明は、独立請求項によって定められている。実施形態は、従属請求項で定められている。
【0004】
本発明による解決策は、複数の利点を提供する。EEG信号の測定された位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング情報は、正常な脳に対して、検査された脳機能がどれだけ秩序だっているか効果的に明らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明の例の実施形態が、単なる実施例の目的で、添付図面を参照して、以下に記載されている。
【0006】
図1図1は、脳機能測定用の装置の例を示す。
図2図2は、少なくとも一つの処理装置および少なくとも一つの記憶装置を備える処理ユニットの例を示す。
図3図3は、健康な脳での位相-位相カップリングに関連する基準脳機能の例を示す。
図4図4は、健康な脳の位相-位相カップリングと健康な脳の基準脳機能との間の差の例を示す。
図5図5は、転帰不良な異常機能を有する脳の位相カップリングと健康な脳の基準脳機能との間の差の例を示す。
図6図6は、てんかん発作の異常機能を有する脳の位相カップリングと健康な脳の基準脳機能との間の差の例を示す。
図7図7は、一つ以上の健康な脳の基準パワーレベル曲線、一つ以上の健康でない脳の基準パワーレベル曲線、健康な脳のパワーレベル曲線、および健康でない脳のパワーレベル曲線の例を示す。
図8図8は、異常機能を有する脳のバーストサプレッションパターンの位相-位相カップリングと、健康な脳の基準脳機能との間の地形的な比較の例を示す。
図9図9は、第1基準脳機能のパワーレベルの曲線および健康でない脳のパワー測定の曲線の例を示す。
図10図10は、第1基準脳機能の位相カップリングの曲線および健康でない脳の位相カップリングの曲線の例を示す。
図11図11は、第1基準脳機能のパワーレベルおよび位相カップリングの組み合わせの曲線、並びに健康でない脳のパワーおよび位相カップリング測定の曲線の例を示す。
図12図12は、位相カップリングおよびパワー測定のフローチャートの例を示す。
図13図13は、カップリング特性指標、視覚化および学習の計算のフローチャートの例を示す。
図14図14は、指標計算のフローチャートの例を示す。
図15図15は、磁気刺激装置の例を示す。
図16図16は、電気刺激装置の例を示す。
図17図17は、超音波刺激装置の例を示す。
図18図18は、化学的刺激用の投与装置の例を示す。
図19図19は、位相-振幅カップリングの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の実施形態は、単なる実施例である。明細書では、複数の箇所で「ある」実施形態と言及するかもしれないが、これは、各参照が同じ実施形態でることを必ずしも意味するわけではなく、または、特徴が単一の実施形態のみに適用されることを必ずしも意味するわけではない。また、他の実施形態を提供するために異なる実施形態の単一の特徴を組み合わせてもよい。さらに、用語「備える、有する」、「含む」は、言及してきたそれらの特徴のみから成るように記載された実施形態を制限しないものとして理解されるべきである。そのような実施形態は、また、具体的に記載されていない特徴/構造を包含してもよい。
【0008】
図面は、様々な実施形態を示す一方、それらはいくつかの構造および/または機能エンティティのみを示す、単純化された図面である。記載された装置がまた、図面および文章で記載されたもの以外の他の機能および構造を備えることができることは、当業者には明らかである。いくつかの機能、構造、および測定および/または制御用に使用される信号伝達の詳細は、実際の発明とは無関係であるとは無関係であることを理解すべきである。したがって、本明細書においてより詳細には記載する必要はない。
【0009】
徐波は、その周波数が1Hz以下であり(f≦1Hz)、重要なEEG特徴であると考えることができる。徐波の生理学的重要性と、麻酔の有無にかかわらず制御して徐波の発生を検査する可能性とに基づいて、この電気生理学的現象が損傷した脳内では乱れるという仮説を立てることができる。波の形成に必要な皮質領域と皮質下領域の間の繊細な相互作用と同様、大規模な神経集団の同期活動は、脳機能に敏感であることが期待される。また、脳が正常に機能しているか異常に機能しているかが分かるかもしれない。
【0010】
より詳細には、(1Hz以下である)徐波は、非急速眼球運動(ノンレム)(NREM)睡眠の最も重要な脳波特徴である。この神経生理学的現象は、新皮質および視床内のニューロンから生じ、脳波の徐波活動と相関関係を有するゆっくりとした振動を示すことが示されている。ゆっくりとした振動は他の脳領域に広がる前に新皮質内のみで生成されると一般に考えられているが、有力な証拠により、完全な脳波の表出に対する視床の貢献が強調されている。高次の認知機能における徐波の生理学的な重要性が、説得力を持って示されており、電気生理学的現象の欠如は意識の障害に関連している。自然睡眠に加えて、徐波は、健常人においては全身麻酔の間に見られる。NREM睡眠中に発見されたものと同一の細胞およびネットワークレベルの機構に由来して、麻酔誘発性の徐波は、深い鎮静/麻酔状態でのみ生じる無意識の脳の産物であると考えられている。近年、同時に記録された脳波と機能的磁気共鳴画像とを使用することで、麻酔中の徐波活動は、感覚刺激からの視床皮質系の隔離および内部視床皮質交換の保持に関連すると示されている。
【0011】
このために、本出願は、院外心停止からの蘇生後、集中治療室(ICU)の複数の昏睡状態の患者で行われた実験に言及している。
【0012】
実験手順は、ヘルシンキ宣言のガイドラインに従うオウル大学病院の倫理委員会によって承認されている。患者に最も親しい親戚は、参加するために書面によるインフォームド・コンセント(同意書)を求められる。心肺停止中の酸素供給の減少により、実験前に神経保護作用の手段として治療的低体温処置を受けていたことに起因して、患者は低酸素虚血性脳損傷を患っていた可能性がある。これらの患者は概して、回復の初期段階で潜在的なびまん性脳損傷を検出するのは非常に厳しいため、診断上の大きな課題となる。
【0013】
図1を用いて脳機能測定用の装置の実施例を説明する。装置は、データ処理ユニット100を備える。図2は、データ処理ユニット100のブロック図の実施例を示す。実施形態において、データ処理ユニット100は、少なくとも一つの処理装置200および少なくとも一つの記憶装置202を備えてもよい。これらの動作は、装置の動作を制御するコンピュータプログラムのプログラムコマンドのシークエンスに基づいている。コンピュータプログラムは、少なくとも一つの記憶装置202に格納されてもよい。
【0014】
図1はまた、データ処理ユニット100に人間110の脳の少なくとも二つのEEG信号を提供する電極システム102を示す。実施形態において、電極システム102は、装置の一部であってもよい。
【0015】
電極システム102は、人間108の頭皮または脳に電気的に結合、または電気的に接触している。電極システム102は、EEG信号をデータ処理ユニット100に提供する。EEG信号は、電極システム102からデータ処理ユニット100に直接送られてもよい。または、EEG信号は、記憶装置にまず格納され、後ほどEEGデータがデータ処理ユニット100に送られてもよい。また、EEG信号は、データ処理ユニット100に入力される前に、フィルタにかけられてもよい。
【0016】
脳波記録法は、本質的には、脳の電気的活動の記録である。電気的活動は、脳組織のニューロンによって引き起こされる電圧変動として測定される。
【0017】
EEG信号は、EEG情報をアナログまたはデジタル形式で伝える。情報は、脳の状態および/またはその機能を特定するためにデータ処理ユニット100で処理および解析され得る。制御動作、決定、示されたデータまたは診断は、EEGデータまたは特定された状態/機能に基づいてもよい。
【0018】
人間108のEEG信号を記録するために、装置は、複数のチャネルを有してもよい。チャネルのそれぞれは、電極システム102の一つの電極からEEG信号を伝える。チャネルの数は、19であってもよく、これに限定されるものではない。EEGは、電極システム102としてAg/AgCl電極を備える電極キャップを用いる国際10-20法によって記録されてもよい。記録には、例えば、Nicolet nEEG Modular Neurodiagnostic System with a v32 Amplifierが使用されてもよい。増幅器は、例えば、500Hzのサンプリング周波数および0.053-500Hzのバンド幅を有してもよい。EEG記録のため、ICUの一般的なやり方にしたがって患者を麻酔薬物質で鎮静させてもよいし、患者を刺激装置112で刺激してもよいし、または鎮静と刺激の両方が行われてもよい。代替的に、人間108は、鎮静も刺激も行われなくてもよい。
【0019】
概して、EEG信号は、それらの間にカップリングを有してもよい。カップリングは、異なる周波数間のカップリングおよび空間信号カップリングで現れる。カップリング関数は、振幅若しくは位相変調、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。関数は、雑音のあるチャネル(例えば、加法性ノイズ(AWGN)、または乗法性ノイズ(位相ノイズ))で測定された(例えば、AM、PMまたはそれらの任意の組み合わせで)変調された通信信号のグループとして作成されてもよい。カップリング関数は、一つ以上の振幅、位相、若しくは周波数変調指数、または位相/周波数乗数若しくは除数を含んでもよい。関数は、一つ以上のゲイン(例えば、強度)、時間(例えば、遅延)、位相(例えば、シフト角)、およびカップリング方向(例えば、因果関係または相関関係)パラメータを含んでもよい。関数は、強度または位相関数を備える複素位相ベクトルとして表現されてもよい。関数の復調は、コヒーレントまたは非コヒーレントの復調器を含んでもよい。
【0020】
位相-位相カップリングは、信号の振幅に基づかない。その代わり、位相-位相カップリングを有する二つの信号の位相は、互いに同期された位相で検討することができる。周波数が異なるとき、同期は、第1周波数のnサイクルと第2周波数のmサイクルに基づいてもよい。そのようなカップリング特性は、任意の数の周波数に対して実行され得る。同期は、n:m位相同期性を考慮されてもよい。
【0021】
振幅-位相カップリングは、第1信号の包絡線と第2信号の位相との間の相互依存関係を示す。第2周波数の位相は、第1周波数の振幅を制御または影響を及ぼす。これは、逆もまた同様に機能し、位相-振幅カップリングをもたらす。
【0022】
データ処理ユニット100は、EEG信号を検出し、第1情報を形成する。検出は、信号フィルタリングを含んでもよい。第1情報は、少なくとも二つの脳波信号間の位相-位相カップリングに基づいてもよい。第1情報は、少なくとも二つの脳波信号間の位相-振幅カップリングに基づいてもよい。第1情報は、少なくとも二つの脳波信号間の振幅-位相カップリングに基づいてもよい。第1情報は、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連していてもよい。カップリングは、1Hz以下の周波数をそれぞれが有するEEG信号間で行ってもよい。しかしながら、徐波に関連付けられたカップリングは、少なくとも一方が1Hzより高い周波数を有するEEG信号間で行ってもよい。位相カップリング自体は、徐波に関連している。
【0023】
データ処理ユニット100は、第1情報を正規化する。正規化は、全EEG信号および/または徐波を同等にし、それらを共通基準に設定することができる。正規化は、EEG信号の特性を共通値に設定することを意味してもよい。その値は、例えば、1に等しくてもよい。共通化は、例えば、ゼロなどの最小所望値と、1などの最大所望値との間になるように縮小されたデータ値を意味してもよい。初期化は、また、距離正規化(例えば、所定の範囲内に限定されたLノルム)を言及してもよい。
【0024】
データ処理ユニット100は最終的に、正規化された第1比較について情報を出力する。出力情報は、例えば、スクリーンなどのユーザインタフェースを使用して示されてもよい。出力結果は、装置の一部のまたは装置に結合されたユーザインタフェース100Bで視覚的にまたは聴覚的に示されてもよい。可視表示は、英数字シンボルおよび/または図的表現を含んでもよい。ユーザインタフェース100Bは、情報を示すためのスクリーン、拡声器および/または印刷機であってもよい。ユーザインタフェース100Bはまた、入力装置として使用されてもよく、そのユーザインタフェースは、例えばタッチスクリーン、キーボード、マウスまたはマイクなどである。カップリングは、複数のグラフの木または素性行列として示されてもよい。
【0025】
実施形態において、データ処理ユニット100は、少なくとも二つのEEG信号間の少なくとも一つの位相-位相カップリングについて第1情報を形成する。第1情報は、1Hz以下の周波数に関連するEEG信号間の徐波の位相-位相カップリングに関連してもよい。位相-位相カップリングは、1Hz以下の周波数をともに有する信号間で行ってもよい。しかしながら、位相カップリングはまた、一方のみが1Hz以下である周波数の間で存在してもよい。
【0026】
実施形態において、検出は、一つ以上のアーティファクト検出および除去(例えば、フィルタ、適応フィルタ、ブラインド信号源分離(BSS)アルゴリズム)方法を含んでもよい。正規化は、検出の一部であってもよく、または分離操作の一部であってもよい。このようにして、ノイズを、例えば、圧縮することができる。検出は、復号器(例えば、ビタビ、フォワードバックワード検索、期待値最大化(EM)アルゴリズム)を含んでもよい。検出は、変換(例えば、正規化、主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット変換、経験的モード分解(EMD)、ヒルベルト・ファン変換(HHT)、局所線形埋め込み(LLE)、または等長特徴写像(Isomap))を含んでもよい。検出は、分類器(例えば、k近傍法(kNN)、線形判別分析(LDA)、サポートベクタマシン(SVM)、ニューラルネットワーク(NN)、分類-回帰木(CART))を含んでもよい。検出は、一つ以上の距離または類似性測定の分類(例えば、グラフの木または素性行列のカップリング)を含んでもよい。変換は、典型的には、関心のある情報を処理しやすい形式に分離するために形成される。処理は、例えば、ノイズのフィルタリング、特徴の分類、学習を含んでもよい。処理は、さらに処理または監視するために選択される、アーティファクトなどの独立成分、眼球運動(これらは省略/削除され得る)、または特定の関心信号(徐波)を識別および/またはソートするために統計学的手法または他の手法を含んでもよい。カテゴライザは、カップリングを認識するために使用されてもよい。復号器は、特定の結合信号を算出し、把握してもよい。
【0027】
実施形態において、検出は、一つ以上の閾値を有してもよい。閾値は、例えば、確率分布から選択されてもよい。閾値は、適応的であっても、または学習を含んでもよく、例えば、信号サロゲートジェネレータ(例えば、(振幅および/または位相)エポックのランダム置換)、ラージラグシフティング、振幅および/または位相のランダム分割再配置、フーリエ変換(FT)、アンプリチュードアジャステッドフーリエ変換(AAFT)、反復AAFT、ウェーブレットに基づくサロゲートアルゴリズム(サロゲート信号は、信号の混合に基づく代替信号であり、サロゲート信号は、他の特性がオリジナルのものに限りなく近い一方で、位相カップリングなどの特定の特性を有さない))、分類器若しくはクラスタリングアルゴリズム(例えば、kNN、NN、SVM、LDA、CART、隠れマルコフモデル(HMM)、混合ガウスモデル(GMM)、k平均法、学習ベクトル量子化(LVQ))、または回帰若しくは推定量(最小二乗推定量(LSE)、最尤推定量(MLE)、カルマン推定器)を含むことができる。一つ以上の閾値は、信号対雑音比を改善するおよび/またはランダムスパイクを制限若しくは除去するために使用され得る。
【0028】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間の正規化の一部として第1比較を実行してもよい。そして、第1比較の結果は、装置によって出力される。
【0029】
実施形態において、データ処理ユニット100は、位相-位相カップリングの第1情報と、基準脳機能に基づく対応する位相カップリングテンプレート情報との間で第1比較を実行してもよい。そして、位相間(位相-位相)比較の第1比較の結果は、装置によって出力される。
【0030】
テンプレートは、少なくとも一つの健康な、すなわち、「正常な」脳を測定することで形成されてもよい。典型的には、複数の健康な脳の測定がテンプレートのために実行される。テンプレートは、正常な脳の表示であり、正常な変形を含んでもよい。また、テンプレートは、基準脳機能と称されてもよい。
【0031】
より一般的には、基準脳機能は、健常人、またはてんかん性活動/発作若しくは特定の脳機能障害を有する人を示してもよい。さらに、基準脳は、検査対象者と同一またはそれ以外の人を示してもよい。さらに、基準脳機能は、自然睡眠中、麻酔中、または起きている間の測定を示してもよい。
【0032】
基準脳機能は、代替的に、少なくとも一部を正常な脳機能の人工的に形成された表示であってもよい。基準脳機能は、データ処理ユニット100の少なくとも一つの記憶装置202に、および/または通信ネットワーク122に接続されたサーバ124に格納されてもよい。データ処理ユニット100は、基準脳機能を記憶装置202および/またはサーバ124から読み出す。サーバ124およびデータ処理ユニット100を備える装置は、通信ネットワーク122を利用でき、また、それを通じてサーバ124にアクセスできる。通信ネットワーク122は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはインターネットであってもよい。基準脳機能のデータは、装置によって収集されてもよく、基準脳機能は、データ処理ユニット100によって記憶装置202内および/またはサーバ124内に形成され、格納されてもよい。
【0033】
実施形態において、一つ以上のカップリング特性は、カップリング強度、カップリングのタイムラグ、カップリングの位相、および各空間的位置または周波数選択関数間の方向の測定であってもよい。カップリング強度は、一方の信号が他方の信号をどれだけ効果的に制御しているかを示す。タイムラグは、一方の信号が他方の信号に影響を及ぼすのにかかる遅延を示す。一方の信号による他方の信号への影響は、位相を有してもよい(影響は、完全に反転していてもよく、例えば、それらの間の位相シフトは180°である。)。カップリングは、一方の信号が別の信号をいずれかの方向で制御するような単一指向性であってもよい。加えてまたは代替的にカップリングは、双方向性であってもよい。
【0034】
カップリング特性の測定は、限定するものではないが、例えば、変調指数、相関関係、共分散、コヒーレンス、エントロピ測度、位相同期度(PLV)、位相ラグ指標(PLI)、高さ比(HR)、平均ベクトル長さ(MVL)、一般線形モデル(GLM)、相互情報量、有向情報量(DI)、信号対雑音比(SNR)を含んでもよい。特性は、(例えば、PCA、ICA、ウェーブレット変換、EMD、HTT、Isomap、LLEで、またはニューラルネットワーク内で)変換されてもよい。カップリング測定は、スペクトル特性であってもよい。特性は、一つ以上のグラフ木、ベクトルまたは行列へと収集されてもよい。
【0035】
図3は、基準脳機能(テンプレート)の例を示し、この例において、測定で使用される全電極Fp1、Fp2、F3、F4、C3、C4、P3、P4、O1、O2、F7、F8、T7、T8、P7、P8、Fz、CzおよびPz間の位相-位相カップリングマップである(電極は、表示されている全ての図で、この順序になっている)。基準脳機能は、正常なおよび/または健康な人の一測定結果、正常なおよび/または健康な人の複数の測定の平均、または正常なおよび/または健康な人達の複数の測定の平均などであってもよい。測定は、繰り返し行われてもよい。
【0036】
図4は、対応する基準脳機能(健康な脳機能)と人間の健常な脳の測定された位相-位相カップリングとの間の位相-位相カップリングの絶対差を地形的な形態で表す。明らかなように基準脳と健常な脳との差は大きくない。絶対差は、図4において距離として測定されてもよい(距離は、Lノルム、ユークリッド距離の二乗、またはいくつかの行列ノルムなどに基づいてもよい)が、健常な脳と基準脳機能との間の小さな差のみを示す類似の結果が、別の比較方法を用いて得られるだろう。
【0037】
図5は、対応する基準脳機能と人間の異常機能を備える脳の測定された位相-位相カップリングとの間の位相-位相カップリングの差を地形的な形態で表す。明らかに、基準と、異常機能を備える脳との差は大きい。
【0038】
図6は、てんかん性発作を有する脳のEEG信号の位相-位相カップリングと基準脳機能(健常な脳)との間の地形的な比較の例を表す。脳の異なる領域間の徐波の位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングにより、パワー測定とは別の視点が脳に与えられる。
【0039】
図7は、健常な脳の異なる電極/領域のEEG信号の徐波のパワーレベルの第1テンプレート700、健常でない脳の異なる電極/領域のEEG信号のパワーレベルの第2テンプレート702、良好な転帰の脳の測定信号パワーレベル704、転帰不良の脳の測定信号パワーレベル706、および転帰不良のてんかん性発作下の脳の測定信号パワーレベル708の例を線図として表す。信号は、互いに比較することができるように同じ尺度に正規化されている。てんかん性発作下の脳の測定信号パワーレベル708は、高いが、対応する位相-位相カップリング706は、その脳が正常な脳から逸脱しているということを明らかに示す。類似の結果が、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングで得られる。
【0040】
図8は、脳機能のバーストサプレッションパターンの位相-位相カップリングと健常な脳の基準脳機能との間の地形的な比較の例を表す。健常な脳機能のバーストサプレッションの位相-位相カップリングと基準脳機能(健常な脳)との比較は、当該方法で見られるいくつかの変形例がある。
【0041】
図3から図6および図8は、代替的にまたは付加的に、ヒートマップ(色分け図)として表されてもよい。ヒートマップは、データ行列の値を色としてグラフ形状で表す。
【0042】
てんかん性活動若しくはてんかん性発作、バーストサプレッションパターン、またはいくつかの他の異常状態の間、脳内の障害は、パワーレベルを変更しない場合があり、または脳の異なる領域のEEG信号のパワーレベルの増加を生じさせる場合もある。このように、てんかん性/異常な脳の測定領域と、正常な、健常な脳の対応する領域とのパワー分布を比較すると、類似性(値)がかなり高くてもよい、すなわち、例えば、距離が小さくてもよい。したがって、異なる領域間のカップリングは、測定された脳の正常状態とさえ考えられ得る少なくともかなり正常だと誤解される場合がある。しかしながら、脳の異なる領域間の位相-位相、位相-振幅、および/または振幅-位相カップリングは、典型的には、機能障害の間、正常から逸脱し、正常な脳に対する障害を容易に明らかにする。機能障害は、例えば、てんかん性活動または発作であってもよい。位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング測定ほど効果的ではなく、または同様の方法ではないが、パワー測定により、障害を明らかにしてもよい。
【0043】
実施形態において、データ処理ユニット100は、少なくとも一つのEEG信号のパワーについて第2情報を形成してもよい。第2情報は、測定されたチャネルのパワーを含んでもよい(図7参照)。第2情報は、脳の領域/電極に関するパワーを含んでもよい。脳の領域のパワーは、複数の測定チャネルのパワーを含んでもよい。領域のパワーは、例えば、平均パワー、または加重平均パワーであってもよい。そしてデータ処理ユニット100は、第2情報と、基準脳機能(健常な脳または健常でない脳)に基づく対応するパワーテンプレート情報との間の第2比較を実行してもよい。最終的に、データ処理ユニット100は、第2比較についての情報を出力してもよい。出力は、ユーザインタフェース100Bで視覚的にまたは聴覚的に表されてもよい。ユーザインタフェース108Bは、位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング測定に関連した類似の方法で出力を表してもよい。
【0044】
図9図10および図11に示されている実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と第2情報とを組み合わせてもよい。パワーの測定の数と、位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングの測定の数は、同じであってもよいし異なっていてもよい。それらの数に関わりなく、測定は、決定性のやり方で組み合わされてもよい。パワー、および位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングの値は、例えば、互いに重みを付けて、または重み付けをせずに、合計され、または平均されてもよい。
【0045】
図9において、健常な脳の脳機能のパワーレベル900の測定、および異常な機能の脳のパワーレベル902の測定の例が、時間の関数として表されている。健常な脳のパワーレベル902は、相対的レベルが100に迫る。図10において、健常な脳の脳機能の位相-位相カップリング1000、および異常な機能の脳の位相-位相カップリングの測定1002の例が、時間の関数として表されている。この例において、健常でない脳のレベル1002は、シグモイド関数を用いたスケーリングと乗算のため、0に接近する。健常な脳の位相-位相カップリング1002は、EEG信号が類似のやり方で処理される場合、相対的カップリング100に接近する。図9および図10の例において、パワーレベルは、パワー曲線が互いに近いため、良好な転帰と言及してもよいが、位相-位相カップリング(または位相-振幅または振幅-位相カップリングのいずれか)は、測定された脳の転帰がよくないことを示すことが分かる。図11において、図9図10の基準脳機能900と基準脳機能1000は、組み合わせ基準指標の曲線1100を形成するために組み合わされている。同様のやり方で、測定902と1002は、組み合わせ測定指標の曲線1102を形成するために組み合わされている。図11において、徐波における位相カップリングに関するカップリング指標が非常に低いため、転帰不良は、明らかである。徐波における位相カップリングに関するカップリング指標曲線1102は、低くても、すなわち、連続的に閾値以下であってもよい。指標は、特性または距離計算に基づいて形成されてもよい。例えば、テンプレートからの最大若しくは加重距離、距離の平均または擬距離(例えば、カルバック・ライブラ(KL)情報量)を使用する。結果は、ソフトマックスまたはシグモイドなどのメンバシップ/活性化関数、およびスカラーでの乗算を用いて、上限と下限(例えば、0から10、または0から100)の間で所望の範囲を有するような大きさにされてもよい。
【0046】
指標を形成する他のやり方は、所望の範囲内の大きさにされた変数に回帰を使用することである。回帰は、線形回帰(GLM=一般化線形モデル)、非線形回帰(例えば、SVR=サポートベクタ回帰)、またはSVM(サポートベクタマシン)、NN(ニューラルネットワーク)、kNN(k近傍法)などの他のカテゴライザであってもよく、これは特性を直接利用する。結果は、順序において連続または離散であってもよい。代替的に、結果は、例えば、無作為であり、重症度(分類:標準、わずかに逸脱、逸脱、大きく逸脱、および等電)を意味してもよい。
【0047】
一つより多くの異なる種類の指標は、例えば、ファジー理論を用いて組み合わされてもよい。別の可能性としては、分類機の統合を利用することがある。両方の場合において、スケーリングが実行されてもよい。
【0048】
本出願の実施例において、指標は、測定と適切なテンプレートとの間の平均距離を用いてカップリングとパワーに分けて形成される。指標は、0から1の範囲に、ユーザインタフェースでは0から100までの大きさにされている。そして、指標は、互いに乗算されている。
【0049】
データ処理ユニット100は、組み合わせ情報と、基準脳機能に基づく対応する結合テンプレート情報との間で組み合わせ比較を行ってもよい。そして、データ処理ユニット100は、組み合わせ比較についての情報を出力してもよい。出力は、ユーザインタフェース100Bにおいて視覚的または聴覚的に表されてもよい。ユーザインタフェース108Bは、位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング測定に関するものと同様のやり方で出力を表してもよい。
【0050】
実施形態において、脳の領域と関係している第1情報は、Fp1からPzなどの電極の位置に基づく頭のマップで即座にまたは時間の関数として表されてもよい。第1情報の値は、例えば、カラースケールを用いて表されてもよい。同様のやり方で、脳の領域と関係している第1情報および第2情報は、組み合わせてまたは分けて、脳のマップで表されてもよい。組み合わせたまたは分けた第1情報および第2情報は、例えば、カラースケールを用いて表されてもよい。
【0051】
実施形態において、データ処理ユニット100は、以下のリスト:てんかん性活動、脳機能障害、神経損傷、睡眠、および一つ以上のゼロでない量の麻酔薬物質のうちの少なくとも一つの影響下にある、またはあることが予想される人間110の脳の少なくとも二つのEEG信号を受信してもよい。てんかん性活動は、てんかん性発作を含んでもよい。睡眠は、自然睡眠または麻酔薬物質に補助された睡眠を指してもよい。
【0052】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1比較に基づいて人間110が上記リストの少なくとも一つの影響下にあるかどうか推定してもよく、推定結果を表してもよい。出力は、ユーザインタフェース100Bにおいて視覚的または聴覚的に表されてもよい。
【0053】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第2比較に基づいて人間110が上記リストの少なくとも一つの影響下にあるかどうか推定してもよく、推定結果を表してもよい。出力は、ユーザインタフェース100Bにおいて視覚的または聴覚的に表されてもよい。推定および出力は、確実であると考えられる一つ以上の所定の影響に言及してもよい。代替的に、一つ以上の影響の可能性が推定され、出力されてもよい。
【0054】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1比較に基づいて人間110の神経機能レベルを予測してもよい。実施形態において、データ処理ユニット100は、第1比較と第2比較の両方に基づいて人間110の神経機能レベルを予測してもよい。実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と第2情報の組み合わせに関連する比較に基づいて人間110の神経機能レベルを予測してもよい。
【0055】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が、第1所定閾値より小さい場合、良好な、またはより良い転帰に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が、第2所定閾値より大きい場合、転帰不良またはより悪い転帰に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。差は、絶対値であってもよく、すなわち、負の差が使用されない。第1閾値と第2閾値は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1閾値は、第2閾値以下であってもよい。閾値は、理論、シミュレーションまたは経験に基づいてもよい。
【0056】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が第1所定閾値より小さく、第2情報のパワーレベルが第3所定閾値より高い場合、良好な転帰に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が第2所定閾値より大きく、第2情報のパワーレベルが第4所定閾値より低い場合、転帰不良に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。
【0057】
実施形態において、データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が第1所定閾値より小さく、第2情報と対応するパワーテンプレート情報との間の差が第5所定閾値より小さい場合、良好な転帰に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。データ処理ユニット100は、第1情報と位相カップリングテンプレート情報との間の差が第2所定閾値より大きく、第2情報と対応するパワーテンプレート情報との間の差が第6所定閾値より大きい場合、転帰不良に向けての人間110の神経機能レベルのさらなる進行を予測してもよい。
【0058】
閾値は、測定装置、患者、測定の種類(頭皮/脳)、電極(電極の数、種類、皮膚/脳への接続)などによって決まってもよい。しかしながら、当業者は、一つの較正測定でもそれに基づいて動作する容易に第1から第6の閾値を決定することができる。少し(5から10)以上の較正測定だけで、閾値をより正確にすることができる。さらなる較正測定をすることで、閾値は、できる限り正確になる。
【0059】
実施形態において、データ処理ユニット100は、カップリングの特定のために少なくとも二つのEEG信号の位相および振幅情報を分けてもよい。分離は、例えば、位相分離畳み込み変換に基づいてもよい。位相分離畳み込み変換の例は、ヒルベルト変換である。しかしながら、信号の位相および包絡線/振幅の分離をもたらす他のあらゆる変換が使用されてもよい。離散エネルギ分離アルゴリズム(DESAs)を利用でき、ティーガ・カイザ・エネルギ演算子(TKEO)を利用できる、そのような変換は、様々な方法で生成され得る。変換は、例えば、ヘヴィサイドの階段関数および符号関数を用いるフーリエ変換、無限インパルスフィルタ(IIR)に基づいて生成されてもよいし、または畳み込みを有する定義によって明確に示されるように有限インパルス応答(FIR)フィルタで推定されてもよい。実施形態において、位相-振幅復調は、位相分離変換の選択に影響を与えてもよい。
【0060】
実施形態において、データ処理ユニット100は、情報理論的尺度、位相乗算器、復調、確率密度推定、二変量尺度、相関関係、多変量因果尺度、およびカップリングフィンガープリント(coupling fingerprint)のうちの少なくとも一つに基づいて第1情報を形成してもよい。位相同期乗算器などの位相乗算器は、カップリングが検出された係数であってもよい。
【0061】
情報理論は、統計的推測ツールを形成し、特に因果推論関係を評価し、最終的にグラフとして接続推定を構成するために、何を得ることができるか、どのように情報の流れをモデル化することができるかの境界を与える。ここでのEEG信号推論に関連する重要な概念は、エントロピ、KL情報量(情報利得)、相互情報量、有向情報量、相互関係および因果関係、トポロジー、および複雑性である。また、信号解析は、一般的に機械学習および人工知能の幅広い話題の下のツールおよび概念を利用する。
【0062】
情報理論において、ランダム過程として以下の二つの信号が定められている。
【0063】
【数1】
【0064】
【数2】
【0065】
無相関情報源のシャノンエントロピは、次のようになる。
【0066】
【数3】
【0067】
相関関係があると、相互情報量は、次のようになる。
【0068】
【数4】

ここで、
は、条件付きエントロピであり、因果的影響があると、DI(有向情報量)は次のようになる。
【0069】
【数5】

ここで、
は、因果エントロピである。
【0070】
信号位相カップリングは、源および変調された信号対、すなわち、位相-位相カップリング用に変調された単側波帯(SSB)または位相-振幅カップリング用の振幅変調(AM)、シークエンスとしてモデル化されてもよく、これらは選択されたベースバンド(例えば、[0 1]Hzで徐波カップリング)で復調して解析できるのが好ましいが、z=m/nの特有の乗算器でも解析できるのが好ましい。位相乗算器n、mでのカップリングは、様々な類いの変調信号(例えば、位相成分の定義に基づいて上側SSB、AM、CW)に対応してもよい。xとxとの間の位相カップリングは、一般的に次のように定められる。
【0071】
【数6】
ここで、Mは、位相カップリング差の質で定められる定数である。Δφ(t)=Mである場合、結合信号は、結合されると好ましい(M=0は、乗算後の信号が同じであることを意味する。)。|Δφ(t)|≦Mである場合、信号は、位相同調にあり、これは、ノイズの存在下および/またはカオス結合信号の場合であってもよい。
【0072】
しばしば、生体システムにおいて、関心の乗数は、n=1、m=1に制限されているが、より高い周波数の乗算接続に、特に、高周波数帯でソース信号の位相と変調ターゲット信号の振幅との間の位相カップリングを定めるとき、関心があってもよい。
【0073】
位相乗算器は、次のように表すことができる。
【0074】
【数7】
ここで、z=m/nは、乗数である。ソース信号バンド幅は[a b]=[f]=BWxiである。ターゲット信号バンド幅は、[c d]=[f]=BWxjである。1≧r≧0は、乗算器のバンド重なり率である。乗算での位相ノイズ増加は、選択された閾値レベル以下である。
【0075】
【数8】
【0076】
ここで、Pinband=r・P、Poutband=(1-r)・Pを選択することにより、信号が対応するバンド幅で一様に分布していると仮定し、無相関位相ノイズNφxiおよびNφxjを仮定すると、SNRでの変化を次のように推定することができる。
【0077】
【数9】

ここでΔSNRthresholdは、乗数の選択および/または制限バンド幅の重なりに起因する、位相ノイズ増加および/または信号損失によるSNRの選択された最大許容減少である。これは、例示的な閾値であり、値は、例えば、-30dBcまたは-40dBcなど異なっていてもよいことに留意されたい。ここで、z=n/mの候補の特有の範囲は、動作閾値内で形成され得る。例えば、
を選択すると、
および
を得ることができる。nおよびmの候補は、例えば、行zの候補行列Zを得るためにベクトル外積
によって生成され得る。候補行列Z=m/nは、例えば、ベクトル化された候補行列をソートし、その後の同一値(また、1未満の値は、目標バンド幅が高く、ソースバンド幅から離れている場合、直ちに破棄されてもよい)を除去し、元の行列に戻すことで、除去され得る、複数の表記(例えば、2=2/1=4/2)を含む。バンド幅BWxiおよびBWxjが候補zの乗数とマッピングされない場合、非常に小さいrを有する対応する分数は削除されてもよい。nとmの候補は、有効なz値を含む行列の行と列として、選択されてもよい。ほとんどの位相乗数の候補は、伝統的に定められたEEGバンド幅(すなわち、デルタ、アルファ、シータ、ガンマ)には自然には一致しないことに留意されたい。また、関心のある乗数のセットは、学習構造を含むアプリケーションのために、事前に計算し、オフラインで選択できる。
【0078】
確率変数の分布の推定を単純化するために、ヒストグラムベースの手法を利用してもよい。カウント関数mを用いて分布Pは、関数
で測定されるランダム過程XおよびYで定められる。
【0079】
【数10】

サンプルサイズNおよびビンサイズKは、それぞれ次のように選ばれてもよい。
および
【0080】
均等に分布するビンを選択する目的でサンプリングレートをF=100Hz→250Hz、時間窓をt=30s→60sを選択した場合、位相ビニングのために、(すなわち、360=2*2*2*3*3*5)360°は、2、3、4、5、6、8、9、10、12、15、18、20、24、30、36、40、45、60、72、90、120または180によって割ることができる。または、ラジアン単位で2の累乗の割り算(すなわち、2π/2|n∈{1、2、3、...、8})を用いて、合理的な2の累乗の除算器出力を2、4、8、16、32、64、128、256として得ることができる。また、高速フーリエ変換(FFT)計算の効率性を支持するために、2の累乗のサンプルレートは、好ましい(例えば、N=2|n∈{12、13})。ここで、FSおよびtの組み合わせによって生成されたNサンプルの以下の選択肢を得る(桁の大きさで示されている)。
【0081】
【数11】

また、K個のビンの対応する候補を次数の形式で得る(ラジアン形式および/またはNが2の累乗である)。
【0082】
【数12】
【0083】
同様に、合理的な値の範囲および分解能、適切なKの候補を用いて、振幅のビンを導いてもよい。
【0084】
また、確率分布は、カーネル密度推定、パラメトリック密度モデル(例えば、GMM)、およびモンテカルロ法(例えば、サンプリングまたはブーストストラップ)などの一つ以上の他の方法も用いて確率密度推定を形成するために、(例えば、連続関数として、またはK個のビンなどの離散量子化レベルを用いて)推定されてもよい。密度は、また、変換された特徴(例えば、元の特徴空間の監督された選択または変換)の低次元のセットに対応する関心のある分布のセットを提供するために、カーネル埋め込みまたは次元削減手法などのツールを用いて、複数特徴(すなわち、多次元)設定でモデル化されてもよい。
【0085】
カップリングの2変数尺度、および因果関係は、以下のような特徴として導くことができる。
【0086】
分布の不均一性(例えば、ヒストグラム推定のビン)を測定するHR(高さ比)は、以下である。
【0087】
【数13】
【0088】
エントロピは、以下である。
【0089】
【数14】
分布Q(k)を有するKL(カルバック・ライブラ)分散は、以下である。
【0090】
【数15】
均一な分布(すなわち、カップリング無し)Uを仮定すると、同様に以下を得る。
【0091】
【数16】
【0092】
KL(P,U)を用いると、変調指数(MI)尺度を得る。
【0093】
【数17】
【0094】
また、位相差から直接的に、PLV(位相同期度)は以下である。
【0095】
【数18】
ここで、Δφ(n)は、任意の乗算器を適用した後の信号の位相差である。
【0096】
GLM(一般線形モデル)、MVL(平均ベクトル長さ)、バイコヒーレンス、DIなどの情報理論的尺度など多くの他の特徴が、位相カップリングを推定するために使用されてもよい。
【0097】
信号xおよびyについて、畳み込み(*)を用いた相互相関(★)は、以下である。
【0098】
【数19】
ここで、x(-t)は、共役および時間反転信号を示し、自己相関は、単純に以下であり、ここでは信号xについてのみである。
【0099】
【数20】
【0100】
フーリエ変換を用いた周波数領域において、
および
が得られる。周波数領域において、相互相関Sxy(f)と自己相関Sxx(f)用のための対応する質、すなわち、それぞれ、相互スペクトル密度とパワースペクトル、は、ここでは変換関数と複素共益変換関数の乗算であり、周波数領域における信号がエルミート関数(すなわち、実数値信号のフーリエ変換が保証されている)であると仮定すると、それぞれ、Sxy(f)=X(f)・Y(f)とSxx(f)=X(f)・X(f)が得られる。
【0101】
時間領域バージョンは、逆フーリエ変換を使用することで、簡単なやり方でそれぞれ以下の、

のようになる。離散時間信号には、離散フーリエ変換(DFT)および逆離散フーリエ変換(IDFT)、すなわち、実際には相当するものとして高速フーリエ変換(FFT)および逆高速フーリエ変換(IFFT)、が使用される。
【0102】
「解析的な」相関関係は、ここでは相互相関のみで、次のように構成され得る。
【0103】
【数21】
【0104】
ここで、
は、90°(すなわち、π/2)シフト相互相関である。実際には、信号対のための解析的な相関関係は、時間領域に戻す前に周波数領域において直接的に構成されてもよい。すなわち、例えば、周波数領域においてヒルベルト変換の近似を用いることで、相互相関の解析信号を定めてもよい。代替的に、x(t)とy(t)の対応する解析信号から(または、関心があるカップリングタイプの、位相関数、解析的に正規化された包絡関数、またはそれらの任意の位相シフトまたは変調バージョンの導関数に基づいて)、解析信号関数(または導関数)の対応する実数部分と虚数部分を取得することにより、全ての必要な相関関係を構成することができ、関心のある、相関と位相シフトされた相関とを分けて生成する(例えば、単純な畳み込み)。または、それどころか、相互相関では、以下であるため、周波数領域において常に動作する。
【0105】
【数22】
【0106】
ここで、h(t)は、カーネルである。周波数領域において、カーネル畳み込み相互相関
は、次のようになる。
【0107】
【数23】
【0108】
ここで、H(f)は、カーネルh(t)のフーリエ変換である。例えば、相互相関にヒルベルト変換を行うために、H(f)を、ヘヴィサイドの階段関数および符号関数(すなわち、有限長推定フィルタ)として選択することができ、他の任意のFIRフィルタ(例えば、周波数選択、埋め込み推定、または位相推定)が、フィルタ係数(すなわち、フィルタインパルス応答)のフーリエ変換として、またはそれらの任意のカスケードの組み合わせとして、H(f)を選択することで実行されてもよい。計算およびメモリ効率のよい連続的な動作のためのフィルタリングの実際の実装は、選択された解析窓、FFTおよびフィルタ長によって決定される効率の良さに基づいて、出力バッファの構成のために、重畳保存(オーバラップ保存)または重畳加算(オーバラップ加算)アルゴリズムのいずれかを用いる循環バッファで実現できる。ヒルベルト変換を用いて、複素「解析」相互相関
を得ることができる。
【0109】
【数24】
ここで、上記式は、解析相互スペクトルである。有限N長離散時間信号では、関連するゼロパッド(ゼロを詰め込み)された2N長(すなわち、2N-1の値の相互相関シークエンス(数列)を生成する)DFT方程式は、以下である。
【0110】
【数25】
【0111】
【数26】
【0112】
【数27】
【0113】
【数28】
【0114】
選択された信号成分間の関心のある相関関係が計算されたとき、複素「解析」相関関係を用いて、ピーク相関関係cmax、群時間遅延τおよび瞬時位相差φτdを方程式によって以下のように定めることができる。
【0115】
【数29】
【0116】
【数30】
【0117】
【数31】
ここで、τ(すなわち、ラグ(遅延))は、因果関係の時間基準を満たすためにτ≧0となるように選択され得る(すなわち、過去のみが未来に影響を与えることができる)。しかしながら、負の遅延(τ<0)での相関関係は、また、因果関係が逆方向に存在することができると解釈され得る。想定されるフィードバックネットワークの存在と、どちらの信号も元の情報ソースではないかもしれないが、検出された相互相関はその代わりにカスケードおよび/またはプロキシのみによるものであるという事実の存在に起因する多感覚信号データでの両方向への相関最大値を見つけることが重要である。このような場合、相関関係は、両方の方向で見られるが、これは、因果関係が両方の方向に存在できることを意味しない(しかし、循環的な因果関係が存在することを示唆する場合がある)。したがって、相関解析が関心のある全ての信号および成分の間で行われる場合、各相関関係は、二つの方向を含むことが分かり、正と負の遅延は、相関関係、群遅延、および位相差値を計算するために使用され得る。信号選択に基づいて、信号成分選択(すなわち、変調)および周波数選択関数(すなわち、フィルタ)に起因して、いくつかの方向には、実際の相関関係が含まれていない可能性がある。また、自己相関関数の同様の解析は、想定される周期性に起因して(例えば、信号の本質的な品質またはネットワークカスケード/プロキシ接続に起因して)、関心がある。
【0118】
きれいな信号(基準信号)とノイズの多い破損した信号の信号雑音比(SNR)への相関関係の接続は、
である。ここで、Pは、信号パワーである。Nは、ノイズパワーである。Rは、相互相関である。同様に、同等量の相関関係のないノイズを加えられた二つの信号(測定された信号)でのSNRは、
である。相互相関の計算は、任意の位相差および遅延差による影響を大きく受けるため、カップリングSNRの推定を、最大相互相関ピークで行うことが必要である。そして、対応するSNR推定を、最大相関関係で、dBで得ることができる。
【0119】
【数32】
【0120】
多変量因果尺度は、導かれ得、チャネルi、j因果関係テストが全てのチャネル情報を用いて行われ、チャネルiをともに予測する(すなわち、全ての利用可能な過去情報に条件付けされている)という、基本原理に基づいている。そして、チャネルjが削除された(すなわち、チャネルjの過去情報に条件付けされていない)セットとの比較が行われる。使用された因果尺度において顕著な降下が観察された場合、チャネルi、jの間で因果関係のつながりが確立され得る。そのようなつながりは、行列またはグラフ木構造で収集され、特徴として、または他の特徴に加えるように、使用されてもよい。
【0121】
因果尺度、およびカップリングは、例えば、グレンジャー因果、並びに有向伝達関数(DTF)、部分有向コヒーレンス(PDC)およびそれらから派生した方法などの関連方法など、線形多変量自己回帰(AR)モデルベースの推定量として計算されてもよい。また、有向情報、移動エントロピまたは条件付き移動エントロピなどの、非線形情報理論モデルベースの尺度が使用されてもよい。
【0122】
多変量因果グラフ構築は、二変量バージョンなどの同様の方向、遅延、位相差および測定カップリング強度構成を含んでもよい。また、重要な因果関係およびカップリング構造は、類似の方法で、例えば、ブーストストラップおよびサロゲートなどのモンテカルロ法を用いる仮説検証で、識別されてもよい。
【0123】
複数の測定信号間のカップリング構造、すなわち、カップリングフィンガープリント、は、行列として表されてもよい。例えば、尺度として時間領域の相互相関、変調指標、高さ比を用いる二変量線形の場合、以下の手順を実行する。実伝達関数f、g、チャネルi、jおよびサンプル指標m、nを次のように仮定する。
【0124】
【数33】
そうすると、測定信号x(n)およびx(n)から関心のある信号成分uf,xi(n)およびug,xj(n)を次のように得る。
【0125】
【数34】
【0126】
【数35】
【0127】
成分から、相互相関は以下のように定められる。
【0128】
【数36】
そして、「解析」相互相関は以下のようになる。
【0129】
【数37】
【0130】
最大相互相関ピーク強度は、以下である。
【0131】
【数38】
最大相関ピークでの時間遅延は、以下である。
【0132】
【数39】
位相差は、以下である。
【0133】
【数40】
【0134】
測定信号x(n)およびx(n)が所定の測定間隔でのランダム処理
に対応すると仮定してベクトルおよび行列表記を使用すると、最大相互相関ピーク強度行列を次のように得る。
【0135】
【数41】
測定遅延行列を次のように得る。
【0136】
【数42】
そして、測定位相行列を次のように得る。
【0137】
【数43】
【0138】
ここで、遅延および位相情報、並びに信号成分(
および
)の解析表現を用いると、位相および遅延整合信号を次のように得る。
【0139】
【数44】
【0140】
関数を
および
として選択すると、振幅-振幅カップリング(AAC)は、相互相関行列を次のように特徴付ける。
【0141】
【数45】
【0142】
また、整合信号は、例えば、変調指標(MI)を用いて、他の特徴行列を生成するために容易に使用され得、次の式を作成する。
【0143】
【数46】
行列にて高さ比(HR)を用いて次の式を生成する。
【0144】
【数47】

ここで、
であり、
である。
【0145】
同様に、
を仮定すると、位相-振幅カップリング(PAC)は、CPAC、MIPAC、HRPACを特徴付ける。そして、
のとき、位相-位相カップリング(PPC)は、CPPC、MIPPC、HRPPCを特徴付ける。任意の他の特徴尺度は、PPC設定を用いるPLVなどの特徴行列形式で同様に収集され得る。例えば、以下である。
【0146】
【数48】
【0147】
カップリング、因果関係などの特徴の結果は、現在および/または将来の神経機能の推定、尤度および/または予測を生成するために使用される学習構造を生成するために、統計的推測および人工知能手法に使用されてもよい。そのような構造は、特徴数列(ベクトルまたは行列)の確率分布、例えばブーストストラップおよび有意性推定またはカーネル密度推定、に基づいてもよい。次元削減および/または特徴変換は、PCA、多様体学習(例えば、Isomapなどの測地線距離法)、またはICAなどのBSS(ブラインド音源分離)法などの特徴に利用されてもよい。特徴探索および/または選択法は、線形探索または遺伝的アルゴリズムなどを、学習構造の性能を最適化および向上させるために使用されてもよい。例えばGLMなどの回帰法が特徴数列に適用されてもよい。数列のセグメンテーションおよび/または復調が、例えば距離行列および閾値に、特徴数列を処理するために、または、例えばベイズ情報量規準(BIC)に基づいて、モデル変更検知法を利用して、学習を関連信号領域に誘導しおよび/または学習用のデータを処理するために、使用されてもよい。分類器ベースの学習構造が使用されてもよい。分類器構造は、距離尺度および閾値、または例えばベイジアン分類器若しくはGMMなどの確率分布差に基づいてもよい。HMMなどの、動的構造が使用されてもよい。SVMなどのカーネルベースの分類器、またはkNNなどの非パラメトリック分類器が使用されてもよい。例えば誤差逆伝播法を用いた最適化を伴う学習構造としてニューラルネットワークが適用されてもよい。ニューラルネットワークは、黙示的にまたは明示的に、任意の特徴選択、変換、セグメンテーション、および/または分類機能も含む深層学習アーキテクチャ、深層信念ネットワーク(DBN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、または再帰型ニューラルネットワーク(RNN)であってもよい。深層学習アーキテクチャは、長・短期記憶(SLTM)ブロックを含んで構成されてもよい。深層アーキテクチャニューラルネットワークは、残差ニューラルネットワークとして構成されてもよい。
【0148】
学習構造が、新しい自動化された人工知能(AI)EEG監視解決策を提供し、EEG信号モデル識別(例えば、バーストサプレッションパターン検出および監視)、アーティファクト検出およびフィルタリング(例えば、眼球運動、筋肉のアーティファクト、またはセンサ故障/分離)、正/不正動作モード検出(例えば、発作検出、睡眠相推定)、神経機能分類(例えば、正規性推定、機能障害の種類(せん妄、発作など)、神経損傷の種類(びまん性損傷/神経外傷))などの、高度なAI患者状態推定および診断機能を可能にするために適用されてもよい。また、薬理的化合物作用のモデル化/追跡が、実現されてもよい(例えば、麻酔の深度、長期薬物療法介入監視/制御(治療薬注入監視/制御))。
【0149】
学習構造およびその結果として得られるAI解決策は、損傷/機能障害の回復推定および制御(例えば、薬物、経頭蓋電気刺激(tES)または経頭蓋磁気刺激(TMS)治療制御での治療介入効果の推定、)または将来の状態変化および/またはさらなる損傷/機能障害(例えば、発作、せん妄または死亡)の可能性などのタスクの予測および監視に使用されてもよい。
【0150】
学種構造に基づく自動化されたAI EEG解決策は、ICUに長期連続的な神経学的状態監視を提供し、複雑なEEG信号情報を、特定の指標、状態表示および通知のより使用者が使いやすい形式に変換することを提供するように使用されてもよい。AIに基づくEEG解析は、例えば手術計画のために、画像モダリティ融合マッピングを提供するために、脳磁図(MEG)、(機能的)磁気共鳴画像((f)MRI)、または陽電子放出断層撮影(PET)画像などの、機能的および/または地形的な)他の脳画像に適用されてもよい。AI EEGは、睡眠監視(例えば、睡眠の質および量の推定)に、またはブレインインタフェース(例えば、ユーザインタフェース、感情/認識/文脈状態評価)などの様々な他の非医学的な目的に使用されてもよい。
【0151】
さらに、AI EEGは、新しいtESおよびTMS刺激装置(例えば、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)、交流電流刺激(tACS)、パルス電気刺激(tPCS)、ランダムノイズ刺激(tRNS)、リップル電気刺激(tRCS))などの新しい治療の研究開発、新しい薬剤開発、または薬剤の神経的作用評価に適用されてもよい。基礎的化学研究において、AI EEG神経機能評価は、例えば、認識研究設定において認識神経画像法として、使用されてもよい。
【0152】
すでに説明しているように、データ処理ユニット100は、少なくとも一つの処理装置200および少なくとも一つの記憶装置202を備える。実施形態において、一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、装置に少なくとも二つのEEG信号の間でカップリング情報を形成させてもよい。一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、また、装置に第1情報を正規化させ、位相カップリング情報と、基準脳機能に基づく対応する第1テンプレート情報との間の第1比較を形成させてもよい。
【0153】
実施形態において、一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、装置に二つのEEG信号のパワーについての第2情報を形成させてもよい。一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、また、装置に第2情報と、基準脳機能に基づく対応するパワーテンプレート情報との間の第2比較を形成させてもよい。最終的に、一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、装置に第2比較についての情報を出力させてもよい。
【0154】
実施形態において、一つ以上の記憶装置202、および一つ以上の処理装置200を有するコンピュータプログラムコードは、装置に第1情報と第2情報を組み合わさせ、組み合わせ比較についての情報を出力させてもよい。
【0155】
また、高度脳機能尺度が、睡眠監視または神経治療効果の測定などの同様の適応例で有用であることを示してもよい。機械学習およびAI(人工知能)が、一般に、医学、ブレインユーザインタフェース、認知科学、および感情コンピューティングにおいて、複数の将来の応用のため、脳信号解析の基礎になることは明らかである。
【0156】
EEGデータと基準脳機能の対応するデータとの間の比較によって測定された正常な脳機能からの逸脱は、脳機能障害に起因する可能性がある。脳機能障害は、低酸素性虚血性脳症/脳損傷、外傷性脳損傷、脳卒中、脳内若しくはくも膜下出血若しくは他の脳出血、敗血症性脳症、髄膜炎、脳炎、血管炎、肝性脳症、中毒性若しくは代謝異常、または薬剤の副作用により、生じる可能性がある。脳機能障害は、例えば、昏睡またはせん妄の形で現れる可能性がある。さらに、脳機能障害は、例えば、アルツハイマー病若しくはパーキンソン病などの神経変性疾患、血管疾患、前頭側頭型若しくはレビー小体型認知症、多発性硬化症、うつ病、双極性障害および統合失調症を含む精神状態、てんかん、片頭痛、注意力欠如障害、または注意欠陥多動性障害により、生じる可能性がある。
【0157】
徐波は、全身麻酔中に見られるが、自然睡眠中にも見られる。単一の徐波、すなわち、K複合、は、ノンレム(NREM)睡眠ステージ2および、深いNREM睡眠(ステージ3)中の連続的な徐波活動で見られる。少なくとも二つの脳波信号の間の徐波の位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングは、自然睡眠中に測定され得、基準脳機能に基づく対応する位相カップリングテンプレート情報との比較がされ得る。基準脳機能は、健康な人を表してもよいし、特定の脳機能障害を有する人を表してもよい。さらに、基準脳機能は、睡眠中または覚醒している間の測定を表してもよい。比較は、例えば、徐波活動、異なる睡眠ステージ、てんかん性活動、または脳機能障害/損傷の量を検出および/または測定するために使用され得る。
【0158】
また、徐波は、てんかん性活動/発作または脳機能障害/損傷中にもときどき見られる。一方、自然睡眠または麻酔中に見られる正常な徐波活動は、てんかん性活動/発作または脳機能障害/損傷中にはない、または乱れている可能性がある。少なくとも二つの脳波信号の間の徐波の位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングは、てんかん性活動/発作または脳機能障害/損傷中に測定され得、基準脳機能に基づく対応する位相カップリングテンプレート情報との比較がされ得る。基準脳機能は、健康な人を表してもよいし、てんかん性活動/発作または特定の脳機能障害を有する人を表してもよい。さらに、基準脳機能は、同じ人または他の人を表してもよい。さらに、基準脳機能は、自然睡眠中、麻酔中または覚醒している間の測定を表してもよい。比較は、例えば、てんかん性活動/発作、または脳機能障害/損傷の量を検出および/または測定するために使用され得る。
【0159】
徐波は、全身麻酔の様々なレベルで見られる。連続的な徐波活動は、意識喪失後の深い鎮静状態時に見られ得るが、活動は、非常に深い麻酔時にも見られ、バーストサプレッションパターンがEEG内に見られる。この状態は、ときには医療的昏睡とも呼ばれる。徐波の位相カップリングパターンは、連続的な徐波活動が見られる状態と、バーストサプレッションパターンが見られる状態とで実質的に異なってもよい。少なくとも二つの脳波信号の間の徐波の位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングは、麻酔の様々なレベルで測定され得、基準脳機能に基づく対応する位相カップリングテンプレート情報との比較がされ得る。基準脳機能は、健常な人または特定の脳機能障害/損傷を有する人を表してもよい。さらに、基準脳機能は、連続的な徐波活動が見られる、またはバーストサプレッションパターンが見られる間の覚醒状態、軽い鎮静状態、深い鎮静状態など、麻酔の様々なレベルを表してもよい。比較は、例えば、麻酔、バーストサプレッションパターン、または脳機能障害/損傷のレベルまたは深さを検出および/または測定するために使用され得る。
【0160】
図12は、徐波に関する信号カップリング決定に関する方法のフローチャートの例を表す。ステップ1200において、EEG信号は、フィルタバンクでフィルタにかけられ得る。当該ステップは、検出に含まれてもよい。ステップ1202において、所望のEEG信号が前処理され得、これは、例えば、ノイズおよびアーティファクトをフィルタリングし、接触不良になっている電極を検出し、さらなる処理からそれらの信号を潜在的に除去することを指してもよい。
【0161】
ステップ1204において、所望のEEG信号が、選択され、測定するために潜在的に変換され得る。当該ステップは、また、検出に含まれてもよい。ステップ1202において、一つ以上のEEG信号が、同様に、変換されてもよい。ステップ1206において、一つ以上のEEG信号の位相および振幅情報が互いに分けられる。ステップ1208において、位相間(位相-位相)、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングが求められ、および/または解析される。実施形態において、EEG信号の振幅は、ステップ1206とステップ1208の間にあるステップ1207Aにおいて、信号成分へと変換される。そして、当該実施形態において、振幅(包絡線)の位相情報がステップ1207Bで検出される。振幅(包絡線)の検出位相情報は、ステップ1208において位相-振幅および/または振幅-位相カップリング特定で使用され得る。ステップ1210において、カップリング特徴(カップリングの強度、時間遅延、位相、または方向など)の計算が実行されてもよく、これにより、一つ以上のカップリング特徴行列を提供できる。カップリング特徴行列は、また、EEG信号パワーについての情報を含んでもよい(図4から図6図8から図11参照)。ステップ1212において、パワー特徴計算(少なくとも一つの脳波信号のパワーについての第2情報)が実行され得、これにより、パワー特徴行列を提供できる(図7および図9参照)。
【0162】
図13は、徐波に関するカップリング特徴指標計算、視覚化、学習(図11参照)のフローチャートの例を示す。ステップ1300において、パワー特徴行列およびカップリング特徴行列が、特徴選択ステップ1300によって受信される。特徴選択ステップ1300は、次のステップのために、パワー特徴行列またはカップリング特徴行列のいずれかまたは両方を選択できる。特徴選択ステップ1300は、また、サロゲートおよび有意性解析ステップ1300Aについての情報を受けることができる。付加的にまたは代替的に、特徴選択ステップ1300は、特徴選択についての情報をサロゲートおよび有意性解析ステップ1300Aに提供してもよい。ステップ1302において、選択された一つ以上の特徴行列は、特徴の距離尺度を形成するために、正規化され、および/または基準脳機能(基準脳機能(健常な脳)および第2基準脳機能(健常でない脳))の対応する行列と比較され得る。ステップ1302は、少なくとも一つの処理装置および適切なコンピュータプログラムを含む少なくとも一つの記憶装置を用いて実行され得る学習処理1302Aへと情報を入力し、またはそこから情報を受けてもよい。学習処理1302Aは、データベース1302Bと通信してもよい。データベース1302Bは、クラウドサーバ1302Cとの、有線または無線の、使用可能な接続を有してもよい。データベース1302Bおよび/またはクラウドサーバ1302Cは、生EEG信号および処理EEG信号のデータ記憶装置として使用されてもよい。付加的にまたは代替的に、データベース1302Bおよび/またはクラウドサーバ1302Cは、従来技術による、および/または本明細書に記載されているものによる一つ以上のやり方で、EEG信号を処理してもよい。ステップ1304において、一つ以上の行列は、ステップ1302によって提供された、正規化された尺度および/または距離尺度で形成され得る。一つ以上の行列は、データベース1302Bおよび/またはクラウドサーバ1302Cで、格納され、または処理に使用され得る。ステップ1306において、表面計算が実行されてもよく、図3から図6および図8に示されているような結果が提供されてもよい。
【0163】
図14は、どのようにカップリング行列が計算され得るかの例を示す(図13および図11参照)。ステップ1400は、図13のステップ1302において形成された距離および/またはパワー特徴を受けることができる。パワー特徴および/または距離は、ステップ1302、データバンク1302Bまたはクラウドサーバ1302Cから来てもよい。ステップ1400は、そして、パワーパターン計算を実行することができる。ステップ1404は、図9のものに類似する、パワーパターン計算からパワーパターン適合数列を形成できる。ステップ1402は、図12のステップ1206からカップリング特徴および/または距離を受けることができ、カップリングパターンを形成できる。ステップ1406は、ステップ1402によって提供されたカップリングパターン計算からカップリングパターン適合数列を形成できる。
【0164】
ステップ1408は、パワーパターン適合数列および図10に示すものに類似し、図12のステップ1208で形成されたカップリングパターン適合数列を受けることができる。パワーパターン適合数列およびカップリングパターン適合数列は、図11で示すものに類似する指標を形成するためにステップ1408で組み合わされ得る。指標は、図13に示されているステップ1304によって形成されてもよい。さらに、組み合わせパターンは、正規化され、大きさを合わせられ、ステップ1410の少なくとも一つの活性化関数で処理される。活性化関数は、組み合わせパターンの値を所望の範囲の大きさにする非線形関数であってもよい。関数は、伝達関数またはメンバシップ関数などであってもよく、人工ニューラルネットワークおよびファジー理論の分野で既知である。学習処理1302Aは、双方向に情報を交換できるように、数列組み合わせステップ1408と通信してもよい。図13と同様に、データバンク1302Bおよびクラウドサーバ1302Cは、受けたまたは備えているEEG信号の情報を格納または処理してもよい。サロゲート有意性は、データベース1302Bから読み出され、数列組み合わせ1408に供給されてもよい。代替的にまたは付加的に、地形的マッピングが、ステップ1410で形成されてもよい。地形的マッピングは、例えば、3次元頭蓋モデル上に配置され得る。
【0165】
実施形態において、脳機能測定用の装置は、投与装置104を備えても、または投与装置104と接続されてもよい(図1参照)。投与装置104は、例えば、薬物注入ポンプを含んでも、または薬物注入ポンプであってもよい。実施形態において、脳機能測定用の装置は、血液測定装置106を備えても、または血液測定装置106と接続されてもよい。血液測定装置106は、血液サンプルを、すなわち、人間108から特定量の血液を、取得するように構成されたサンプリング装置を備えてもよい。サンプリング装置は、バキュテイナおよび/または皮下注射針を備えてもよい。加えて、血液測定装置106は、例えば、血液の化学的または光学的解析を実行できる血液解析装置を備えてもよい。
【0166】
また、図1は、任意的であり、実施形態において使用され得る刺激装置112を示す。
【0167】
あらゆる従来のEEG解析または神経学的評価では妨げとなっていると通常はみられている、麻酔化合物の存在により、脳機能関連尺度および推定を生成する脳機能の自動的信号解析手法で使用される、脳機能の基本的態様を明らかにすることができる。高度信号解析方法および脳機能モデリングは、そのような洗練された尺度を生成するために再度要求とされる。高度脳機能尺度は、また、脳の機能障害を緩和または治療する神経治療効果の測定などの、類似の適用事例に有用であると示してもよい。また、機械学習およびAIは、概して、麻酔化合物が存在している間の、脳信号解析に使用され得る。
【0168】
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリング、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリング、および少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングは、麻酔中および様々な麻酔レベルの間で評価されてもよい。麻酔のレベルは、薬物注入ポンプが流体形態である麻酔薬物質を人間110の体へと注入できるなど、投与装置104で制御されてもよい。このようにして、人間110は、様々な量の麻酔薬物質に制御してさらされている。麻酔薬物質は、一つ以上の麻酔薬または麻酔薬の組み合わせを含む。麻酔薬物質は、例えばプロポフォールであってもよい。麻酔薬物質は、人間の循環系の少なくとも一つの静脈へと注入されてもよい。麻酔薬物質は、連続的に注入されてもよく、または一回以上のボーラスとして導入されてもよい。麻酔薬物質は、静注薬物と呼ばれてもよい。付加的にまたは代替的に動脈、硬膜外および/または皮下、くも膜下および筋注入が使用されてもよい。本文脈での注入とは、注射も含む。薬物注入ポンプは、麻酔薬物質を非常に正確に投与できる。麻酔薬物質の手動での注射は、より不正確かつ費用がかかる。薬物注入ポンプは、投入量が、例えば、時間、EEG測定および麻酔薬の測定された濃度などの所望のパラメータに対して変化するように、麻酔薬物質を投与するために使用できる。
【0169】
付加的にまたは代替的に、マウスピースを通じて麻酔薬物質を吸入するために、投与装置104として吸入装置が使用されてもよい。吸入は、連続的であってもよく、または麻酔薬物質が段階的に(それぞれの段階で投与量を増減させて)導入されてもよい。
【0170】
データ処理ユニット100は、人間110が一つ以上の推定または測定されたゼロでない量の麻酔薬物質にさらされている間、人間110の脳のEEG測定に基づくEEGデータを受信してもよい。
【0171】
少なくとも一つの麻酔薬物質は、時間に応じて人間110の体108で一つ以上の推定または測定されたゼロでないレベルの濃度を有してもよい。推定または測定できるゼロでない濃度においてのみEEGを測定することが可能である。濃度のレベルの一つの代わりに、麻酔薬物質は、時間に応じて複数の濃度レベルを有してもよい。少なくとも一つの濃度レベルが推定または測定されてもよい。麻酔薬物質のEEG効果は、典型的には、体108内での麻酔薬物質の濃度レベルに基づく。バーストサプレッションパターンなどのEEG特性は、麻酔薬物の効果またはレベルを特定するために使用されてもよい。バーストサプレッションパターンなどのEEG効果は、麻酔薬物質の投与の量を決定するために使用されてもよい。代替的にまたは加えて、使用されたEEG特性は、薬物の投与に起因する徐波活動などの特徴を含んでもよく、例えば、当該特徴に対する薬物の最大効果が利用される。さらに代替的にまたは加えて、使用されたEEG特性は、薬物の投与によって生じる、徐波活動の範囲内の所定の閾値を超える特徴での変化の決定を含んでもよい。所定の閾値は、当業者の経験に基づいてもよい。所定の閾値は、シミュレーションに基づいてもよい。所定の閾値は、薬物の期待効果に基づいてもよく、効果および効用は、文献で公開されている。薬物の効果は時間に応じて変化するため、当業者は、自身の知識に基づいて所定の閾値がいつ超えられるか、分かる。徐波活動は、本明細書で説明されている位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリングに基づいて測定されてもよい。さらに、徐波活動は、同じく本明細書で説明されているEEGのパワー測定に基づいて測定されてもよい。
【0172】
少なくとも一つの麻酔薬物質の投与により、位相カップリング(位相-位相、位相-振幅および/または振幅-位相カップリング)の測定が改善してもよい。少なくとも一つの麻酔薬物質の投与により、例えば、他の脳活動を低くすることで信号雑音比が向上してもよく、徐波活動が増加してもよい。
【0173】
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリング、少なくとも二つの脳波信号の間の位相-振幅カップリング、および少なくとも二つの脳波信号の間の振幅-位相カップリングは、刺激中に評価されてもよく、刺激が与えられている状態と与えられていない状態との間で比較されてもよい。刺激により、例えば、徐波活動を増加させ、他の脳活動を減少させることで、カップリングの存在または不存在の検出が向上してもよい。
【0174】
図15に示されている実施例の実施形態において、刺激装置112は、脳に磁気刺激を与える少なくとも一つのコイル200を備えてもよい。刺激は、コイルが、刺激される領域の近くで頭の外側に配置されるように、経頭蓋で行われてもよい。交流電流がコイル200に与えられると、交流磁場が生成される。刺激は、磁気刺激パルスが特定の周波数で繰り返し与えられるように、繰り返し行われてもよい。周波数は、例えば約0.8Hzまたは5Hzであってもよく、刺激は、例えば約30分続けられてもよい。刺激は、皮質の特定領域を刺激するために、感覚運動皮質上の領域など頭皮の特定位置に与えられてもよい。刺激強度は、例えば、150~180V/mの最大電場に対応する最大刺激出力の65~85%であってもよい。
【0175】
図16に示されている実施例の実施形態において、刺激装置112は、脳に電気刺激を与える少なくとも一つの刺激電極300を備えてもよい。少なくとも一つの電極300は、電極システム102に含まれてもよいし、電極システム102とは分かれていてもよい。電極300は、電磁放射を無線で送信してもよく、または脳とのガルバニック接続を通じて交流若しくは直流電流を脳に与えてもよい。刺激は、電極が、刺激される領域の近くで頭皮に配置されるように、経頭蓋で行われてもよい。刺激は、交流電流の方向の直流電流の振幅が特定周波数で変化するように、振動して与えられてもよい。周波数は、例えば約0.8Hzまたは5Hzであってもよく、刺激は、例えば約30分続けられてもよい。刺激は、皮質の特定領域を刺激するために、前頭葉上の領域など頭皮の特定位置に与えられてもよい。直流電流刺激で、陽極電極(正極の電極)は、前頭葉上に配置されてもよいし、陰極電極(負極の電極)は、基準電極として機能してもよいし、三角筋に配置されてもよい。刺激電流は、例えば0から0.6mAの間で変化してもよく、最大電流密度は、約0.5mAcm-2であり得る。
【0176】
頭皮での刺激に加えてまたは代替的に、電気刺激は、電極を皮質の表面にまたは脳組織内(この場合の手法は脳深部刺激と呼ばれる)に配置することで、脳組織に直接加えられてもよい。
【0177】
図17に示されている実施例の実施形態において、刺激装置112は、脳に音刺激を与える少なくとも一つの超音波振動子400を備えてもよい。超音波振動子400は、超音波を脳全体または脳の一部へと向けてもよい。
【0178】
図15から図17に示されているものに類似する実施例の実施形態において、刺激装置112は、脳に光刺激を与える少なくとも一つの光ファイバまたは少なくとも一つの光学的放射源を備えてもよい。光学的放射源は、例えば、少なくとも一つのLED(発光ダイオード)または少なくとも一つのレーザを含んでもよい。少なくとも一つの光ファイバまたは少なくとも一つの光学的放射源は、光刺激を脳全体、脳の一部または脳の複数の部分に向けてもよい。光刺激において、光遺伝学的手法が組み合わされてもよい。当該手法において、ニューロンは、遺伝子組み換えによって光刺激に反応するようにされている。
【0179】
図18に示されている実施例の実施形態において、刺激装置112は、脳に化学的刺激を与える少なくとも一つの刺激投与装置500を備えてもよい。刺激投与装置500は、投与装置104に類似する薬物注入ポンプおよび/または吸入装置を備えてもよい。刺激投与装置500は、人間110に少なくとも一つの刺激薬物を与えてもよい。刺激薬物は、ここでは、欠落した活動を誘発したり、異常な活動を減少させたりすることができる薬物を意味する。例えば、徐波活動用の刺激薬物は、静脈GABA性麻酔薬、吸入GABA性麻酔薬、オピオイドおよび/またはアルファ2アドレナリン麻酔薬である場合がある。他の静脈GABA性麻酔薬の一群は、例えば、エトミデート、チオペンタール、および/またはメトヘキシタールを含んでもよい。吸入GABA性麻酔薬の一群は、例えば、イソフルラン、デスフルラン、および/またはセボフルランを含んでもよい。オピオイドの一群は、例えば、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、レミフェンタニル、および/またはスフェンタニルを含んでもよい。アルファ2アドレナリン麻酔薬の一群は、例えば、デクスメデトミジンなどを含んでもよい。
【0180】
実施形態において、刺激は、第1情報に基づいて使用されてもよい。実施形態において、刺激は、所定の異常な脳活動を有する人の脳機能を改善するために使用されてもよい。実施形態において、刺激は、脳内の異常活動が第1情報に基づいて特定されたとき、正常な脳活動へ向けた改善を早めるために使用されてもよい。実施形態において、刺激は、脳内の異常活動が第1情報に基づいて特定されたとき、刺激がない場合より正常な脳活動に近い脳活動に脳活動に至るように使用されてもよい。実施形態において、刺激が治療過程において役に立ち得るため、刺激は、第1情報に基づいて良好な転帰を有すると推定された人間に加えられてもよい。実施形態において、刺激が治療に役立ち得るため、刺激は、第1情報に基づいて転帰不良を有すると推定された人間に加えられてもよい。また、第1情報に加えて、第2情報がこれらの場合に使用されてもよい。
【0181】
図19は、位相-振幅カップリングの実施例を示す。測定のために受けたまたは選択されたEEG信号の数は、Nであってもよく、Nは少なくとも二つであり、それらは最初にフィルタされてもよい。測定のために受けたまたは選択されたMのEEG信号があってもよく、MはNより小さい。そして、一つ以上の徐波信号(SW1とSW2)と最大K個の信号(S3、S4包絡線1とS4包絡線2)が比較されてもよい。ここで、Kは、ゼロより大きな整数である。すなわち、K個の信号の、振幅などの信号成分が徐波信号の位相と比較されてもよい。K個の信号の振幅は、K個の信号の包絡線を指す。振幅/包絡線の変動は、徐波の周波数帯域内にある。本実施例では、振幅S4包絡線1は、徐波であり、カップリングを考慮され得る。振幅S4包絡線2は、徐波帯域内にはなく、(それ自体が徐波帯域内にはない、信号S3とS4の間のカップリングをできるかもしれないが)徐波カップリングには寄与しない。
【0182】
技術が進歩するにつれて、様々な方法で発明概念が実行され得ることは、当業者には明らかであろう。発明およびその実施形態は、上記されている実施形態の例に限定されず、特許発明の範囲内で変化されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の処理装置、およびコンピュータプログラムコードを含む一つ以上の記憶装置を備える装置であって、前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行される前記コンピュータプログラムコードは、前記装置に少なくとも
人間の脳の少なくとも二つの脳波信号を受けさせ、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングを測定することで第1情報を形成させ、
少なくとも一つの脳波信号のパワーを測定することで第2情報を形成させる、ように構成され、前記第1情報および前記第2情報は、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連し、
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行される前記コンピュータプログラムコードはさらに、前記装置に少なくとも
前記第1情報と前記第2情報を組み合わせ、
特徴または距離計算に基づいて、組み合わされた前記第1情報および前記第2情報に基づいて指標を形成させ、
前記第1情報とカップリングテンプレート情報との比較、および前記第2情報のパワーレベルと第2所定閾値との比較と、前記第2情報と対応するパワーテンプレート情報との比較との少なくとも一方に基づいて、前記人間の前記脳の神経機能レベルを予測させる、ように構成されている、装置。
【請求項2】
良好な転帰の予測の場合、前記第1情報とカップリングテンプレート情報との間の差は、第1所定閾値より小さく、前記第2情報のパワーレベルは、前記第2所定閾値より大きく、前記第2情報と対応するパワーテンプレート情報との間の差は、第3所定閾値より小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
一つ以上の処理装置、およびコンピュータプログラムコードを含む一つ以上の記憶装置を備える装置であって、前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行される前記コンピュータプログラムコードは、前記装置に少なくとも
人間の脳の少なくとも二つの脳波信号を受けさせ、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングを測定することで第1情報を形成させ、
少なくとも一つの脳波信号のパワーを測定することで第2情報を形成させる、ように構成され、前記第1情報および前記第2情報は、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連し、前記第1情報は、位相カップリングに関連し、
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行される前記コンピュータプログラムコードはさらに、前記装置に少なくとも
前記第1情報と、基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間で第1比較を実行させ、
前記第2情報と、基準脳機能に基づく対応するパワーテンプレート情報との間で第2比較を実行させ、
前記第1比較と前記第2比較を組み合わせ、
特徴または距離計算に基づいて、組み合わされた前記第1比較および第2比較に基づいて指標を形成させ、
前記第1比較、および前記第2情報のパワーレベルと第2所定閾値との比較と、前記第2比較との少なくとも一方に基づいて、前記人間の前記脳の神経機能レベルを予測させる、ように構成されている、装置。
【請求項4】
良好な転帰の予測の場合、前記第1情報とカップリングテンプレート情報との間の差は、第1所定閾値より小さく、前記第2情報のパワーレベルは、前記第2所定閾値より大きく、前記第2情報と対応するパワーテンプレート情報との間の差は、第3所定閾値より小さい、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第2情報を正規化するために、基準脳機能に基づく対応するパワーテンプレート情報と、前記第2情報との間で第2比較を実行させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記第2情報とを組み合わせ、組み合わせ情報と、基準脳機能に基づく対応する組み合わせテンプレート情報との間で組み合わせ比較を実行させ、前記組み合わせ比較についての情報を出力させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、以下のリスト:てんかん性活動、脳機能障害、神経損傷、睡眠、および一つ以上のゼロでない量の麻酔薬物質のうちの少なくとも一つの影響下にあることが予想されている前記人間の前記脳の前記少なくとも二つの脳波信号を受けさせるように構成されている、請求項1または請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、以下のリスト:てんかん性活動、脳機能障害、神経損傷、睡眠、および一つ以上のゼロでない量の麻酔薬物質のうちの少なくとも一つの影響下にあることが予想されている前記人間の前記脳の前記少なくとも二つの脳波信号を受けさせるように構成され、前記装置に、前記第1比較に基づいて前記人間が前記リスト内の少なくとも一つの前記影響下にあるかどうかを推定させ、推定の結果を表示させるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1比較に基づいて前記人間の神経機能レベルを予測させるように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記カップリングテンプレート情報との間の差が第1所定閾値より小さい場合、良好な転帰に向けての前記人間の前記神経機能レベルのさらなる進行を予測させるように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、前記第1情報と前記カップリングテンプレート情報との間の差が第2所定閾値より大きい場合、転帰不良に向けての前記人間の前記神経機能レベルのさらなる進行を予測させるように構成されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、位相分離畳み込み変換に基づいて少なくとも二つの脳波信号の位相と振幅を分けさせるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記一つ以上の記憶装置、および前記一つ以上の処理装置で実行されるコンピュータプログラムコードは、前記装置に、情報理論的尺度、位相同期乗算器、復調、確率密度推定、二変量尺度、相関関係、多変量因果尺度、およびカップリングフィンガープリントのうちの少なくとも一つに基づいて前記第1情報を形成させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、前記データ処理ユニットに前記人間の前記脳の前記少なくとも二つの脳波信号を提供するように構成された電極システムを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
少なくとも一つのハードウェアプロセッサおよび電極センサシステムに関連して実行される方法であって、前記方法は、
人間の脳の複数の脳波信号を受けるステップと、
少なくとも二つの脳波信号の間の位相-位相カップリングを測定することで第1情報を形成するステップと、
少なくとも一つの脳波信号のパワーを測定することで第2情報を形成するステップと、を含み、前記第1情報および前記第2情報は、1Hz以下の周波数を有する徐波に関連し、前記第1情報は、位相カップリングに関連し、
前記方法はさらに、
前記第1情報と、基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間で第1比較を実行するステップと、
前記第2情報と、基準脳機能に基づく対応するパワーテンプレート情報との間で第2比較を実行するステップと、
前記第1情報と前記第2情報を組み合わすステップと、
特徴または距離計算に基づいて、組み合わされた前記第1情報および前記第2情報に基づいて指標を形成するステップと、
前記第1比較、および前記第2情報のパワーレベルと第2所定閾値との比較と、前記第2比較との少なくとも一方に基づいて、前記人間の前記脳の神経機能レベルを予測するステップと、含む、方法。
【請求項16】
良好な転帰の予測の場合、前記第1情報とカップリングテンプレート情報との間の差は、第1所定閾値より小さく、前記第2情報のパワーレベルは、前記第2所定閾値より大きく、前記第2情報と対応するパワーテンプレート情報との間の差は、第3所定閾値より小さい、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、前記第1情報と、基準脳機能に基づく対応するカップリングテンプレート情報との間で第1比較を行うことで前記第1情報を正規化するステップと、前記第1比較の結果についての情報を出力するステップと、をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記正規化された第2情報と、基準脳機能に基づく対応するパワーテンプレート情報との間で第2比較を行うことで前記第2情報を正規化するステップと、前記第2比較についての情報を出力するステップと、をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【外国語明細書】