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特開2023-124826二酸化炭素回収のための方法及び大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関
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  • 特開-二酸化炭素回収のための方法及び大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124826
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収のための方法及び大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/02 20060101AFI20230830BHJP
   F02B 75/00 20060101ALI20230830BHJP
   F02M 26/20 20160101ALI20230830BHJP
   F02M 26/34 20160101ALI20230830BHJP
   F02B 33/44 20060101ALI20230830BHJP
   F02D 21/08 20060101ALI20230830BHJP
   F02B 37/04 20060101ALI20230830BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
F01N3/02 101G
F02B75/00 B
F01N3/02 101J
F02M26/20
F02M26/34
F02B33/44 A
F02D21/08 311B
F02B37/04 C
F02B37/04 B
F02D19/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023021285
(22)【出願日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】PA202270068
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】キエントルプ ニールス
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
3G091
3G092
【Fターム(参考)】
3G005DA02
3G005DA04
3G005EA04
3G005EA16
3G005EA19
3G005EA20
3G005EA23
3G005FA35
3G062AA01
3G062AA02
3G062AA05
3G062GA09
3G091AA10
3G091AA11
3G091AA15
3G091AA18
3G091AA21
3G091BA13
3G091BA36
3G091FB02
3G091HB05
3G091HB06
3G092AA01
3G092AA02
3G092AA03
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB04
3G092AB05
3G092AB07
3G092AB08
3G092AC10
3G092DB03
3G092DB04
3G092DB05
3G092DC09
3G092FA15
3G092HA15Z
3G092HD01X
3G092HD07Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関で排ガスから二酸化炭素を分離、回収すること。
【解決手段】燃焼室に炭素系燃料を供給することと、燃焼室内で炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させることと、燃焼ガスの一部を再循環させ他の一部を排ガスとして排出することと、少なくとも40質量%、好ましくは40から55質量%の再循環燃焼ガスを含む、加圧掃気ガスを燃焼室に供給することと、二酸化炭素分離プロセスで排ガスから二酸化炭素を分離することと、分離した二酸化炭素を貯蔵ユニット(80)に貯蔵することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関であって、
シリンダライナと、シリンダライナ内で往復するように構成されるピストンと、シリンダカバーとによってそれぞれ画定される複数の燃焼室と;
前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気排出口と;
前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料系と;
を備え、
前記燃焼室は、前記炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させるように構成され、
前記燃焼室は、前記掃気ポートを介して掃気受けに接続されると共に、前記排ガス出口を介して燃焼ガス受けに接続され、
前記機関は更に、前記燃焼室から排出される燃焼ガスの一部を前記掃気受けに再循環させるように構成される排気再循環系を備え、
前記排気再循環系は、前記掃気受けへの燃焼ガスの流れを補助するためのブロワを有し、
前記機関は更に、前記燃焼室から発生した燃焼ガスの他の部分を排ガスとして排出するように構成される排気系を備え、
前記排気系は、ターボ過給システムのタービンであって排ガスによって駆動されるタービンを有し、
前記機関は更に、前記ターボ過給システムのコンプレッサを有する空気取り入れシステムを備え、前記コンプレッサは加圧された掃気空気を前記掃気受けに供給するように構成され、
前記排気系は、二酸化炭素分離装置と、該二酸化炭素分離装置の出口に接続された二酸化炭素貯蔵システムとを有し、
前記二酸化炭素分離装置は、排ガスを受け取ると共に、該排ガス中の二酸化炭素の少なくとも一部を、好ましくは該二酸化炭素を液化及び/又は固化することにより、前記排ガスから分離し、分離した二酸化炭素を前記二酸化炭素貯蔵ユニットに搬送するように構成される、
機関。
【請求項2】
掃気ガス中の再循環燃焼ガスの質量比率を少なくとも40%、好ましくは40%から55%に調整するように構成された制御部を備える、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
前記制御部は、前記掃気ガス中の再循環燃焼ガスの割合を調整するために前記ブロワの回転数を制御するように構成される、請求項2に記載の機関。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の機関であって、燃焼ガス-水冷器、好ましくは燃焼ガス-海水冷却器を備え、前記燃焼ガス-水冷器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の上流に配置される、機関。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の機関であって、燃焼ガス-冷却媒体熱交換器と、冷却設備とを備え、前記冷却設備は、前記燃焼ガス-冷却媒体熱交換器を通して冷却媒体を循環させるように構成され、前記燃焼ガス-媒体熱交換器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の下流に配置される、機関。
【請求項6】
前記タービンの下流に、排ガス中の二酸化炭素を液化及び/又は固化するために排ガスを冷却する冷却器を備える、請求項1から5のいずれかに記載の機関。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の機関であって、前記制御部は、排ガスが前記タービンの下流で大気圧に達したときの前記排ガスの温度が-82℃以下となるように前記機関の運転を制御するように構成される、機関。
【請求項8】
前記タービンは、前記コンプレッサを駆動するために機械的に結合されており、好ましくは電気駆動モータによって補助される、請求項1から7のいずれかに記載の機関。
【請求項9】
前記コンプレッサは電気駆動モータによって駆動され、前記タービンは電気発電機又はオルタネータを駆動する、請求項1から7のいずれかに記載の機関。
【請求項10】
複数の燃焼室を有する大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関を運転する方法であって、
前記燃焼室に炭素系燃料を供給することと;
前記燃焼室内で前記炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させることと;
前記燃焼ガスの一部を再循環させ、前記燃焼ガスの他の一部を排ガスとして排出することと;
少なくとも40質量%、好ましくは40から55質量%の再循環燃焼ガスを含む、加圧された掃気ガスを前記燃焼室に供給することと;
二酸化炭素分離プロセスで排ガスから二酸化炭素を分離することと;
分離した二酸化炭素を貯蔵ユニットに貯蔵することと;
を含む、方法。
【請求項11】
排ガスを1つ以上の冷却及び膨張プロセスにかけ、それによって、タービンの下流で二酸化炭素を液化及び/又は固化させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体又は固体の形態の二酸化炭素を前記貯蔵ユニットに貯蔵することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
排気再循環系のブロワの速度を制御し、加圧された掃気ガス中の再循環燃焼ガスの割合を調整することを含む、請求項10から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記膨張プロセスの少なくとも一部はタービンにおいて行われる、
【請求項15】
請求項10から14のいずれかに記載の方法であって、前記機関は、燃焼ガス-水冷器、好ましくは排ガス-海水冷却器を有し、前記燃焼ガス-水冷器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の上流に配置され、前記方法は、前記燃焼ガス-水冷器で燃焼ガスを、好ましくは40℃以下、より好ましくは31℃以下の温度に冷却することを含む、方法。
【請求項16】
請求項10から15のいずれかに記載の方法であって、前記機関は、燃焼ガス-冷却媒体熱交換器を、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の下流に備えると共に、冷却設備を備え、前記冷却設備は、前記燃焼ガス-冷却媒体熱交換器を通して冷却媒体を循環させ、排ガスを、好ましくは-10℃以下に、より好ましくは-15℃以下に冷却するように構成される、方法。
【請求項17】
前記機関は、前記タービンの下流に、排ガス中の二酸化炭素を液化及び/又は固化するために排ガスを更に冷却する冷却器であって、好ましくは大気圧で-80℃以下の温度まで冷却する冷却器を備える、請求項10から16のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示事項は、大型2ストローク内燃機関、特に、炭素系燃料(気体又は液体燃料)で動作するクロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関に関し、また、二酸化炭素排出量を削減するためにこのタイプの機関を運転する方法に関する。
【背景】
【0002】
クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、例えば大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。この大型2ストロークディーゼル機関のサイズは巨大である。サイズが巨大であることだけが理由ではないが、この大型2ストロークディーゼル機関は、他の内燃機関とは異なる構造を有する。例えば、排気弁の重量は400kgに達することもあり、ピストンの直径も100cmに達することがある。運転中における燃焼室の最大圧力は、典型的には数百barにもなる。このような高い圧力レベルとピストンサイズから生まれる力は莫大なものである。
【0003】
大型2ストロークターボ内燃機関は、液体燃料(例:燃料油、船舶用ディーゼル、重油、エタノール、ジメチルエーテル(DME))又はガス燃料(例:天然ガス(LNG)、石油ガス(LPG)、メタノール又はエタン)で運転される。
【0004】
ガス燃料で動作するエンジンは、オットーサイクルに従って動作してもよい。オットーサイクルでは、ガス燃料は、シリンダライナの長手方向中央付近又はシリンダカバーに配される燃料弁から導入される。このタイプのエンジンにおいて、ガス燃料は、ピストンの(下死点から上死点への)上昇ストロークの途中であって、排気弁が閉じるかなり前に、シリンダ内に導入される。エンジンは、燃焼室内においてガス燃料と掃気空気との混合物を圧縮し、圧縮された混合気を上死点(TDC)又はその付近で、(例えば液体燃料噴射のような)点火手段によってタイミングを計って点火する。
【0005】
液体燃料で運転されるエンジンや、高圧噴射のガス燃料で運転されるエンジンは、ピストンがTDCに近い位置、つまり燃焼室内の圧縮圧力が最大又はそれに近いときに、気体又は液体の燃料を噴射する。つまりこれらのエンジンは、ディーゼルサイクル、すなわち圧縮着火で運転される。
【0006】
既知の大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関で使用される液体燃料及びガス燃料は、一般に炭素を含んでいる。すなわちこれらは炭素系燃料であり、その燃焼により二酸化炭素が発生する。発生した二酸化炭素は大気中に排出される。二酸化炭素の排出は、一般に、環境に弊害をもたらすと考えられており、最小化又は回避されるべきであると考えられている。
【0007】
KR20180072552は、複数のシリンダを備える大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関を開示している。この機関において、前記シリンダは各々掃気ポートと、掃気弁と、個別排気弁を介してシリンダに接続された排ガス収容部と、ターボ過給機と、前記排ガス収容部の出口と前記ターボ過給機のタービンとを接続する排ガス導管と、前記タービンによって駆動される、前記ターボ過給機のコンプレッサと、前記コンプレッサの出口と前記掃気収容部の入口とを接続する掃気導管とを備える。掃気導管11は掃気クーラを有し、個別掃気ポートを介して掃気収容部がシリンダに接続される。機関は更に、排ガスの一部をシリンダに再循環させるための排ガス再循環導管を備え、この再循環導管は、再循環された排ガスを強制的にシリンダに戻すためのブロワ又はコンプレッサと、掃気冷却器の上流の掃気導管からターボ過給機のタービンに高温掃気の一部を輸送してシリンダをバイパスさせるためのシリンダバイパス管と、ボイラとを有する。この機関は、ボイラを介してシリンダからの排ガスの少なくとも第1部分を輸送するように構成され
【摘要】
【0008】
上述の課題を解決するか又は少なくとも緩和する、エンジン及び方法を提供することが目的の一つである。
【0009】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0010】
第1の捉え方によれば、次のような、クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
シリンダライナと、シリンダライナ内で往復するように構成されるピストンと、シリンダカバーとによってそれぞれ画定される複数の燃焼室と;
前記燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配される掃気ポートと;
前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排ガス出口と;
前記燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料系と;
を備え、
前記燃焼室は、前記炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させるように構成され、
前記燃焼室は、前記掃気ポートを介して掃気受けに接続されると共に、前記排ガス出口を介して燃焼ガス受けに接続され、
前記機関は更に、前記燃焼室から排出される燃焼ガスの一部を前記掃気受けに再循環させるように構成される排気再循環系を備え、
前記排気再循環系は、前記掃気受けへの燃焼ガスの流れを補助するためのブロワを有し、
前記機関は更に、前記燃焼室から発生した燃焼ガスの他の部分を排ガスとして排出するように構成される排気系を備え、
前記排気系は、ターボ過給システムのタービンであって排ガスによって駆動されるタービンを有し、
前記機関は更に、前記ターボ過給システムのコンプレッサを有する空気取り入れシステムを備え、前記コンプレッサは加圧された掃気空気を前記掃気受けに供給するように構成され、
前記排気系は、二酸化炭素分離装置と、該二酸化炭素分離装置の出口に接続された二酸化炭素貯蔵システムとを有し、
前記二酸化炭素分離装置は、排ガスを受け取ると共に、該排ガス中の二酸化炭素の少なくとも一部を、好ましくは該二酸化炭素を固化及び/又は液化することにより、前記排ガスから分離し、分離した二酸化炭素を前記二酸化炭素貯蔵ユニットに搬送するように構成される。
【0011】
燃焼ガス再循環で機関を運転することにより、排ガス中の二酸化炭素濃度が高まり、排ガスからの二酸化炭素の分離をより効果的に行うことができる。また、排ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素を貯蔵することにより、機関による二酸化炭素の排出量を削減することができる。
【0012】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、掃気ガス中の再循環燃焼ガスの質量比率を少なくとも40%、好ましくは40%から55%に調整するように構成された制御部を備える。
【0013】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記制御部は、前記掃気ガス中の再循環燃焼ガスの割合を調整するために前記ブロワの回転数を制御するように構成される。
【0014】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、燃焼ガス-水冷器、好ましくは燃焼ガス-海水冷却器を有し、前記燃焼ガス-水冷器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の上流に配置される。
【0015】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、燃焼ガス-冷却媒体熱交換器と、冷却設備とを備え、前記冷却設備は、前記燃焼ガス-冷却媒体熱交換器を通して冷却媒体を循環させるように構成される。前記燃焼ガス-媒体熱交換器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の下流に配置される。
【0016】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃焼ガス-冷却媒体熱交換器は前記冷却設備に接続されている。
【0017】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、前記タービンの下流に、排ガス中の二酸化炭素を固化するために排ガスを冷却する冷却器を備える。
【0018】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記冷却器は前記冷却設備に接続されている。
【0019】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記制御部は、前記タービンの下流で大気圧に達したときの前記排ガスの温度が-82℃以下となるように前記機関の動作を制御して、前記排ガス中の二酸化炭素を固化するように構成される。
【0020】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記タービンは、前記コンプレッサを駆動するために機械的に結合されている。前記コンプレッサは好ましくは電気駆動モータによって補助される。前記タービンが排ガスに十分な膨張を与え、それによって十分な冷却を行うために、前記タービンがコンプレッサの動作に十分なエネルギーを供給しない動作条件が存在する。これらの動作条件では、電気駆動モータによってターボ過給システムに追加のエネルギーが加えられる必要がある。
【0021】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記コンプレッサは電気駆動モータによって駆動され、前記タービンは電気発電機又はオルタネータを駆動する。ターボ過給システムのこのセットアップでは、ターボ過給システムによって必要とされ得る追加のエネルギーは、コンプレッサを駆動する電気駆動モータによっても、前記機関によって駆動される電気発電機又はオルタネータの形態でありうる外部の電力源からも、前記機関に関連する発電機セットによっても、供給されることができる。
【0022】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関はオットーサイクルによって運転され、ガス燃料は、ピストンが下死点(BDC)から上死点(TDC)までストロークする間に、燃料弁から前記燃焼室に導入される。
【0023】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関はディーゼルサイクルで運転され、ピストンが上死点(TDC)に近づいたときに、気体又は液体の燃料が燃料弁から前記燃焼室に噴射される。
【0024】
第2の捉え方によれば、次のような、複数の燃焼室を有する大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関を運転する方法が提供される。この方法は、
前記燃焼室に炭素系燃料を供給することと;
前記燃焼室内で前記炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させることと;
前記燃焼ガスの一部を再循環させ、前記燃焼ガスの他の一部を排ガスとして排出することと;
少なくとも40質量%、好ましくは40から55質量%の再循環燃焼ガスを含む、加圧された掃気ガスを前記燃焼室に供給することと;
二酸化炭素分離プロセスで排ガスから二酸化炭素を分離することと;
分離した二酸化炭素を貯蔵ユニットに貯蔵することと;
を含む。
【0025】
高い燃焼ガス再循環比で機関を運転することにより、排ガス中の二酸化炭素濃度が高まり、排ガスからの二酸化炭素の分離を容易にすることができる。また、排ガスから二酸化炭素を分離し、二酸化炭素を貯蔵することにより、機関による二酸化炭素の排出量を回避するか、少なくとも削減することができる。
【0026】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排ガス中の二酸化炭素の少なくとも一部を固化(凍結)させることを含む。二酸化炭素を凍結させることにより、排ガス中の他の成分から二酸化炭素を比較的簡単に分離することができるようになる。固化した形で二酸化炭素を貯蔵することは、場所をとらず、加圧する必要のない容器で行うことができる。
【0027】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排ガスを1つ以上の冷却及び膨張プロセスにかけ、それによって、タービンの下流で二酸化炭素を固化及び/又は液化させることを含む。
【0028】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、液体又は固体の形態の二酸化炭素を貯蔵ユニットで貯蔵することを含む。
【0029】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排気再循環系のブロワの速度を制御し、加圧された掃気ガス中の再循環された燃焼ガスの割合を調整することを含む。
【0030】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、膨張プロセスの少なくとも一部はタービンで行われる。
【0031】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、燃焼ガス-水冷器、好ましくは排ガス-海水冷却器を有し、前記燃焼ガス-水冷器は、好ましくは、前記機関からの燃焼ガスの流れが再循環される部分と排気される他の部分とに分けられる位置の上流に配置される。そして前記方法は、前記燃焼ガス-水冷器で燃焼ガスを、好ましくは40℃以下、より好ましくは31℃以下の温度に冷却することを含む。
【0032】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、排ガス-冷却媒体熱交換器と、冷却設備とを備え、前記冷却設備は、前記排ガス-冷却媒体熱交換器を介して冷却媒体を好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下の温度に循環させるように構成される。
【0033】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、排ガス中の固まった水分(氷)は、重力分離や遠心分離などの方法で排ガスから分離され、貯蔵又は廃棄される。
【0034】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、前記タービンの下流に、排ガス中の二酸化炭素を固化するために排ガスを更に(好ましくは大気圧で-80℃以下の温度まで)冷却する冷却器を備える。
【0035】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、コンプレッサで空気を圧縮し、燃焼ガスと圧縮空気を混合して掃気ガスを得ることを含む。
【0036】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、燃焼ガスと圧縮空気を混合する前に、再循環された燃焼ガスをブロワーコンプレッサで加圧することを含む。
【0037】
これらの側面及び他の側面は、以下に説明される実施例により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な捉え方や実施形態、実装例を詳細に説明する。
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストロークディーゼル機関の正面図である。
図2図1の大型2ストローク機関の側面図である。
図3】ある実施形態に従う、図1の大型2ストローク機関の略図表現である。
図4】別の実施形態に従う、図1の大型2ストローク機関の略図表現である。
図5】更に別の実施形態に従う、図1の大型2ストローク機関の略図表現である。
【詳細説明】
【0039】
以下の詳細説明では、実施例のクロスヘッド式大型低速2ストロークターボ過給式内燃機関を参照して、内燃機関が説明される。図1図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関の実施例を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。図1は正面図、図2は側面図である。図3は、ある実施形態に従う図1,2のターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気系及び排気系と共に略図により表現したものである。この実施例において、機関は直列に4本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関は、直列に配された4本から14本のシリンダを有することがある。これらのシリンダはエンジンフレーム11に担持されるシリンダライナを有する。またこのような機関は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための据え付け型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば、1000kWから110000kWでありうる。
【0040】
この実施例における機関は、2ストロークユニフロー掃気機関であり、シリンダライナ1の下部領域に掃気ポート18が設けられる。シリンダライナ1の上部のシリンダカバー22には中央排気弁4が配される。掃気ガスは、ピストンが掃気ポート18より下にある時に、掃気受け2から各シリンダライナ1の掃気ポート18へと導かれる。ガス燃料(例えばメタノール、石油ガス又はLPG、天然ガスLNG、又はエタン)は、ピストンがその上昇運動中(BDCからTDCまで)、ピストンが燃料弁30(ガス導入弁)を通過する前に電子制御部60の制御下でガス燃料弁30から導入され、及び/又は液体燃料(例えば燃料油)はピストン10がTDC又はその近くにあるときに液体燃料弁50から高圧(好ましくは300bar以上)で噴射される。前者の場合、ガス燃料は比較的低い圧力で導入され、30bar未満、好ましくは25bar、より好ましくは20bar未満で導入される。燃料弁30は、好ましくはシリンダライナの円周上に等間隔に分布するように配される。また好ましくは、シリンダライナの長手方向の中央付近に配される。ガス燃料の導入は、圧縮圧力が比較的低い時に行われる。つまり、ピストンがTDCに達するときの圧縮圧力に比べればずっと低いときに行われるので、比較的低い圧力で導入することが可能となる。。
【0041】
シリンダライナ1内のピストン10は、ガス燃料と掃気ガスの混合気を圧縮し(TDCでの液体燃料噴射のみによる動作の場合は掃気ガスを圧縮し)する。そしてTDC又はその付近で、好ましくシリンダカバー22に配置される液体燃料弁50からの高圧の液体燃料の噴射により、着火が引き起こされる。TDC又はその付近で液体燃料噴射のみの場合は、圧縮により着火が引き起こされる。その後燃焼が起こり、二酸化炭素を含む燃焼ガスが発生する。
【0042】
排気弁4が開かれると、燃焼ガスは、シリンダ1に関連する燃焼ガスダクトを通って燃焼ガス受け3に流入し、燃焼ガス-水冷器65を含む燃焼ガス導管19を経由して先へ流れる。燃焼ガス-水冷器65は、機関が船舶に設置されている場合、海水で動作する。燃焼ガス-水冷器65の活動は制御部40によって制御され、燃焼ガスを、燃焼ガス-水冷器65の入口における425から475℃の温度から、燃焼ガス-水冷器65の出口において40℃未満、好ましくは35未満、最も好ましくは31℃未満の温度まで冷却するように制御される。好ましくは水冷器65への燃焼ガスの下流の位置で、燃焼ガスの流れは、燃焼ガス再循環系60に流れる部分と、排気系に流れる別の部分とに分割される。以下に更に説明するように、燃焼ガス再循環系60は掃気系に接続する。燃焼ガス再循環系60は、掃気系に接続する導管を有し、燃焼ガスを洗浄するための(好ましくは水作動の)スクラバー70を有してもよい。燃焼ガス再循環系60はまた、燃焼ガスを燃焼ガスシステム60を通して掃気系に強制的に送るためのブロワ75を有する。ブロワ75は、好ましくは電気駆動モータ76によって駆動される。ブロワ75の動作は制御部40によって制御される。実施形態によっては、制御部40は、ブロワ75の動作を調整することによって、掃気ガス中の燃焼ガス比(質量比)を調整する。実施形態によっては、制御部40は、掃気ガス中の燃焼ガス比(質量比)が40%以上になるように調整するように構成されており、好ましくは45%以上、最も好ましくは40から55%になるように調整するように構成されている。なお燃焼ガス比とは、機関に誘導される全ガス質量のうち、燃焼ガスの質量が占める割合のことである。
【0043】
排気系は排気導管63を有する。排気導管63は排ガス-冷却媒体熱交換器66を有し、ターボ過給機5のタービン6につながっている。排ガス-冷却媒体熱交換器66は冷却設備68に接続されている。冷却設備60は、冷却媒体を燃焼ガス-冷却媒体熱交換器68を通して循環させ、冷却媒体熱交換器66の出口で排ガスを-10℃以下、より好ましくは-15℃以下の温度に冷却するように構成されている。これにより、排ガス中の水分は固化され(氷又は雪となる)、重力式又は遠心式で分離され、ドレン64から除去される。冷却媒体(冷媒)は、冷却媒体熱交換器66の冷却媒体入口において、-20から-30℃の範囲の温度を有していてもよい。好適な冷却媒体(冷媒)は、例えば、アンモニア、プロパン、イソブタン、二酸化炭素、及び産業用冷却設備用の他の既知の冷却媒体である。冷却媒体熱交換器66の動作は、冷却媒体熱交換器66の出口における排ガスの温度が所望の温度となるように制御部40により制御される。
【0044】
冷却媒体熱交換器66の出口から、排ガスはタービン6の入口へと流れる。タービン6の出口では、排ガスは、タービン6での膨張により、その温度が周囲圧(大気圧)においてマイナス80℃以下(好ましくはマイナス82℃以下)に下げられている。このような条件下では、排ガス中の二酸化炭素は固化(凍結)する。固化した二酸化炭素は、例えば重力式又は遠心式の分離プロセスによって分離される。分離された固体の二酸化炭素は貯蔵ユニット80に貯蔵される。残りの排ガスは、二酸化炭素を含まないか、あるいは僅かな量の二酸化炭素しか含まず、排出口21から大気中に流出させられる。
【0045】
この実施形態では、機関は、排ガス中の二酸化炭素を固化するために排ガスを更に冷却するために、タービン6の下流に冷却器69を有する。冷却器69は排ガスを、大気圧において好ましくは-80℃以下の温度まで冷却する。本実施形態では、固体の二酸化炭素は、冷却器69内、冷却器69の出口、又は冷却器69のすぐ下流で、例えば重力式又は遠心式プロセスによって分離される。分離された固体の二酸化炭素は二酸化炭素ユニット80に貯蔵される。二酸化炭素貯蔵ユニット80に貯蔵された二酸化炭素は、その後、分離した二酸化炭素を貯蔵するためのより恒久的な手段に貯蔵されることができる。
【0046】
タービン6は、シャフトを介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。タービン6がコンプレッサ7を駆動するのに十分な力を提供しない場合、ターボ過給機5は電気駆動モータ77によって補助される。
【0047】
コンプレッサ7は、圧縮された掃気空気を、掃気受け2に繋がる掃気管13へと送り込む。掃気管13の掃気空気は、掃気空気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0048】
インタークーラー14の上流(図示されている)又は下流(図示せず)のいずれかで、燃焼ガス再循環系60は掃気導管13に接続される。再循環された燃焼ガスはこの位置で掃気空気と混合され、掃気ガスが形成される。制御部40は、掃気ガスが40~55質量%の燃焼ガスを含むように構成される。
【0049】
冷却された掃気空気又は掃気ガスは、電気モータ17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給器5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気空気を供給することができるので、補助ブロワ16は、逆止弁15によってバイパスされる。
【0050】
制御部40(電子制御ユニット)は、制御部の機能を果たすためのプロセッサ及び他のハードウェアからなる複数の相互接続された電子ユニットで構成されてもよい。制御部40は、概して機関の動作を制御し、例えばガス燃料導入(量とタイミング)、液体燃料噴射(量とタイミング)、排気弁4の開閉(タイミングとリフト量)、再循環燃焼ガス比及び各種冷却器の動作に対する制御を統括する。ここで制御部40には、機関の運転状態を知らせるセンサからの各種信号が入力されるようになっている。これらの信号には、それぞれ機関負荷、機関回転数、ブロワ回転数、掃気温度、様々な場所の燃焼ガス温度、様々な場所の排ガス温度を表す信号が含まれてもよい。また、掃気系の圧力、燃焼室内の圧力、排ガス系の圧力、燃焼ガス再循環系における圧力を示す信号が含まれてもよい。機関は好ましくは、燃焼室毎に、排気弁タイミングの個別制御を可能とする可変タイミング排気弁作動システムを備える。制御部40は、燃料弁30、液体燃料弁50、排気弁アクチュエータ、角度位置センサ、圧力センサに、信号線又は無線接続を介して接続されている。角度位置センサは、クランクシャフトの角度を検出しクランクシャフトの位置を表す信号を生成する。圧力センサは、好ましくはシリンダカバー22内に、代替的にはシリンダライナ1内に配され、燃焼室内の圧力を表す信号を生成する。
【0051】
エンジンのサイズに応じて、シリンダライナ1は様々な大きさに作られる。典型的な大きさとしては、シリンダボアの直径が250mmから1000mmであり、それに対応する全長が1000mmから4500mmである。
【0052】
シリンダライナ1はシリンダフレーム23に載置され、シリンダライナ1の上にはシリンダカバー22が設置される。シリンダライナ1とシリンダカバー22とは、その間からガスの漏出が生じないようにされている。ピストン10は、下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復するように構成されている。これら2つの位置は、クランクシャフト8の回転角度で180度離れている。シリンダライナ1には、周方向に分散配置された複数のシリンダ潤滑孔が設けられる。これらのシリンダ潤滑孔はシリンダ潤滑ラインに接続されている。シリンダ潤滑ラインは、ピストン10がシリンダ潤滑孔25を通過するときにシリンダ潤滑油を供給する。続いてピストン10の(図示されていない)ピストンリングが、シリンダライナの走行面(内面)全体にシリンダ潤滑油を行き渡らせる。
【0053】
シリンダカバー22には、典型的には1気筒あたり複数の、好ましくは3つ又は4つの液体燃料弁50が取り付けられ、液体燃料の供給源(図示せず)に接続されている。液体燃料弁50は、好ましくは、排気弁4の周囲、特に、シリンダカバー22の(排気弁4によって制御される)中央出口(開口部)の周囲に配置される。液体燃料の噴射タイミング及び噴射量は、制御部40によって制御される。液体燃料弁50は、機関がガス燃料モードで運転されている場合、少量の点火液(パイロット)を噴射するためにのみ使用される。機関が液体燃料モードで運転されている場合には、実際に使用されている機関負荷で機関を運転するために必要な量の液体燃料が液体燃料弁50から噴射される。シリンダカバー22には、前室(プリチャンバ)が設けられていてもよい(図示されていない)。また、液体燃料弁50の先端部、典型的には1つ又は複数のノズル穴を有するノズルが設けられた先端部が、パイロットオイル(点火液)が前室に注入され霧化するように配置されている。前室は確実な点火を支援する。実施形態によっては、前室は二重前室、すなわち直列に繋がった2つの前室である。
【0054】
燃料弁30はシリンダライナ1(又はシリンダカバー22)に装備される。燃料弁30は、シリンダライナ1の内面と実質的に同じ面に位置するノズルを有する。また燃料弁30の後端はシリンダライナ1の外壁から飛び出ている。通常、各シリンダライナ1には、1つ又は2つ、場合によっては3つ又は4つもの燃料弁30が、シリンダライナ1の周方向に分散して(好ましくは周方向に等間隔に分散して)配されている。本実施例において、燃料弁30は、シリンダライナ1の長手方向のちょうど中央部に配されている。燃料弁30は、ガス燃料40(例えばメタノール、LPG、LNG、エタン又はアンモニア)の加圧源に接続されている。すなわち燃料弁30に供給されるときに、燃料は気体相である。ガス燃料は、ピストン10のBDCからTDCへのストロークの間に導入されるので、ガス燃料の供給源の圧力は、シリンダライナ1内に存在する圧力より高ければよい。典型的には、20bar未満の圧力が、燃料弁30に送られるガス燃料にとって十分である。燃料弁30は制御部40に接続される。制御部40は、燃料弁30の開閉タイミング及び開弁時間を決定する。
【0055】
実施形態によっては、点火用の液体燃料は、重油、船舶用ディーゼル油、重油、エタノール、又はジメチルエーテル(DME)である。
【0056】
ガス運転モードは、機関の幾つかの運転モードのうちの1つでありうる。他のモードには、機関の動作に必要な燃料のすべてが液体燃料弁50を通じて液体形態で供給される、液体燃料運転モードが含まれることができる。ガス燃料運転モードにおいて、機関は、BDCからTDCまでのピストンストローク中に比較的低い圧力で導入されるガス燃料を主燃料として運転される。すなわち、機関に供給されるエネルギーの主要部分はそのようなガス燃料により供給される。一方、ガス燃料に比較すると、液体燃料は少量しか用いられず、機関に供給されるエネルギー量に比較的小さな寄与しかしない。液体燃料の目的は所定のタイミングで点火することにある。すなわち液体燃料は点火液として機能する。
【0057】
このように、本実施形態の機関は、液体燃料のみで運転されるモードと、ほぼガス燃料のみで運転されるモードとを有する、二元燃料機関とすることができる。
【0058】
この機関の動作は、燃焼室に炭素系燃料(液体燃料及び/又はガス燃料)を供給することと;前記燃焼室内で前記炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスを発生させることと;前記燃焼ガスの一部を再循環させ、前記燃焼ガスの他の一部を排ガスとして排出することと;少なくとも40質量%、好ましくは40から55質量%の再循環燃焼ガスを含む、加圧された掃気ガスを前記燃焼室に供給することと;二酸化炭素分離プロセスで排ガスから二酸化炭素を分離することと;分離した二酸化炭素を貯蔵ユニット80に貯蔵することと;
を含む。
【0059】
この過程において、排ガスは冷却及び膨張プロセスを受け、タービン6の出口又はタービン6の下流の冷却器69において、排ガス中の二酸化炭素が固化(凍結)される。凍結した二酸化炭素は、例えば重力分離プロセス又は遠心分離プロセスで分離され、その後、貯蔵ユニット80に固体の状態で貯蔵される。実施形態によっては、貯蔵ユニット80は、熱的に絶縁された、非加圧の容器又はタンクである。
【0060】
制御部40は、加圧された掃気ガス中の再循環燃焼ガスの割合を調節するために、排気再循環系60のブロワ75の速度を制御する。好ましくは40質量%の割合に調節する。これは、燃焼ガス中の二酸化炭素の濃度を増加させるためである。実施形態によっては、制御部40は、燃焼ガス再循環なしで運転する場合と比較して、燃焼ガス中の二酸化炭素濃度が少なくとも2倍になるように再循環燃焼ガス比を調整するように構成される。
【0061】
排ガスの膨張過程の少なくとも一部はタービン6で行われる。この膨張過程によって、排ガスの温度と圧力が大きく低下し、好ましくは大気圧で-82度以下の温度まで低下する。それによって排ガス中の二酸化炭素が固化される。
【0062】
図4は、機関の別の実施形態を示している。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。この実施形態の機関及びその動作は先の実施形態とほぼ同じであり、従って、先の実施形態との相違点のみを詳細に説明する。
【0063】
この実施形態において、コンプレッサ7は電気駆動モータ78によって駆動される。タービン6は電気発電機又はオルタネータ79を駆動する。ターボ過給システムのこのセットアップでは、ターボ過給システムによって必要とされ得る追加のエネルギーは、コンプレッサ7を駆動する電気駆動モータ78によって供給される。ここで電気駆動モータ78は電力源によって給電されるが、この電力源は、機関によって駆動される電気発電機又はオルタネータの形態であってもよい。また電気駆動モータ78は、機関に搭載される発電システムによって給電されてもよい。
【0064】
この実施形態では、機関は(ディーゼル原理に従って動作する)圧縮着火機関として示されており、(気体又は液体の)炭素系燃料は、ピストン10がTDC又はその付近にあるときに高圧で噴射される。図示の機関は、シリンダライナ10に前室(プレチャンバ)も燃料導入弁30も必要としない。しかし本実施形態による機関は、ピストン10のBDCからTDCへのストローク中にガス燃料を導入するオットー原理に従って動作させることも可能である。
【0065】
本実施形態では、制御部40は、タービン6の出口の条件(すなわち圧力及び温度)が、排ガス中の二酸化炭素を固化させ、固化した二酸化炭素をタービン6の出口で重力分離又は遠心分離処理により分離して二酸化炭素貯蔵ユニット80に貯蔵するように、機関を運転するよう構成されている。
【0066】
図5は、機関の別の実施形態を示している。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。この実施形態の機関及びその動作は先の実施形態とほぼ同じであり、従って、先の実施形態との相違点のみを詳細に説明する。
【0067】
本実施形態において、機関は、オットー原理に従って動作するガス導入機関として示されているが、本実施形態は、ディーゼル原理に従って動作する高圧燃料噴射機関でも同様に機能しうることは理解されたい。
【0068】
本実施形態では、タービン6の出口における排ガスの温度を通常よりも低くするための対策は、施されていない。従って、燃焼ガス-水冷器は不要であり、冷却設備に接続された排ガス-冷却媒体冷却器も不要である。従って、排ガスの温度は従来通りであり、180℃から250℃の温度範囲となる。
【0069】
タービン6の下流側では、二酸化炭素分離ユニット88が排ガスから二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素を二酸化炭素容器80に貯蔵する。
【0070】
この実施形態では、二酸化炭素分離ユニット88は、排ガスを乾燥させ、排ガスを圧縮し、その後、排ガスを1つ以上の冷却ループに供して排ガス中の二酸化炭素を液化又は固化する膨張プロセスを行い、その後、液体又は固体の排気二酸化炭素を分離して、液体又は固体の二酸化炭素貯蔵ユニット80に貯蔵する。
【0071】
別の実施形態(図面に示されていない)では、二酸化炭素分離ユニット88は、二酸化炭素吸収器(例えば吸収溶媒を使用)を使用して、排ガスから二酸化炭素を分離する。この二酸化炭素分離ユニット88は、再生器、例えばアミン再生器に動作可能に接続される。再生器は、吸収溶媒から二酸化炭素を取り出すために、蒸気を使用してもよい。
【0072】
発明の様々な捉え方や実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。上記の実施形態は、様々な方法で組み合わせることができる。また、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの要素の機能は、単一のプロセッサやコントローラー、その他のユニットによって遂行されてもよい。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】