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  • 特開-乗り物の非空気圧式支持システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124827
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】乗り物の非空気圧式支持システム
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20230830BHJP
   B60C 7/06 20060101ALI20230830BHJP
   B60B 3/04 20060101ALI20230830BHJP
   B60B 25/02 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60C7/06
B60B3/04 D
B60B25/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023022339
(22)【出願日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】17/680941
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ババツンデ オモグボラハン アグボーラ
(72)【発明者】
【氏名】チェン-シュン リン
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB19
3D131CC04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極低温業務用の非空気入りタイヤを含む組立体を提供する。
【解決手段】組立体100は、ホイール200と非空気入りタイヤ300とを有する。非空気入りタイヤ300は、複数の螺旋ばね310を含んでいる。各螺旋ばね310は、第1の端部、第2の端部、及びアーチ状の中間部分を含む。各螺旋ばね310は、少なくとも1つの他の螺旋ばね310と織り交ぜるように組み合わされており、それによって、非空気入りタイヤ300の全周に沿って延びる編物のトロイダル構造を形成する。トロイダル構造は、非空気入りタイヤ300にかかる荷重全体を支持する。複数の螺旋ばね310は、17Kまで低下する温度で強度と延性とを維持する所定の材料で構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールと非空気入りタイヤを有する組立体であって、前記非空気入りタイヤは複数の螺旋ばねを有することを特徴とし、
各螺旋ばねは、第1の端部、第2の端部及びアーチ状の中央部分とを有し、
各螺旋ばねは、少なくとも1つの他の螺旋ばねと織り交ぜるように組み合わされて、それによって、前記非空気入りタイヤの全周にわたって延在する編物のトロイダル構造を形成し、前記トロイダル構造は前記非空気入りタイヤの上に置かれた全荷重を支持し、
前記複数の螺旋ばねの前記第1の端部は、前記ホイールの第1の環状構造に直接固定され、前記複数の螺旋ばねの前記第2の端部は、前記ホイールの第2の環状構造に直接固定され、前記複数の螺旋ばねの各々の前記第1の端部は、前記複数の螺旋ばねの各々の前記第2の端部と同軸に配向され、
前記複数の螺旋ばねは、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持する所定の材料で構成されていることを特徴とする、組立体。
【請求項2】
前記所定の材料が、304ELCステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記所定の材料が、310低炭素ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記所定の材料が2024-T4アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項5】
前記所定の材料が6061-T6アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項6】
前記所定の材料が2219-T87アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項7】
所定の材料が5052-H38アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項8】
所定の材料が5083-H38アルミニウムであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項9】
前記所定の材料がニッケルベースのモネルであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記所定の材料がTDニッケルであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項11】
前記所定の材料がニッケルベースのハステロイBであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項12】
前記所定の材料がニッケルベースのインコネルXであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項13】
前記所定の材料がニッケルベースのインコネル718であることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項14】
前記所定の材料がニッケルベースのルネ41であることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項15】
前記所定の材料が5Al-2.5Sn-Ti ELIチタンであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【請求項16】
前記所定の材料がTi45A[AMS 4902]チタンであることを特徴とする、請求項1に記載の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物の非空気圧式支持システムに関し、特に、極低温業務用の非空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration(NASA))は、長距離月探査、月前哨基地の展開、及び他の惑星探査を支援するための地上乗り物を開発してきた。これらの乗り物は、1960年代後半にアポロ(Apollo)計画のために開発された月面移動車(Lunar Roving Vehicle(LRV))よりも重く、より長い距離を移動する。その結果、新しいタイヤは、アポロLRVで使用されていたものと比較して、最大で10倍の重量を支え、最大で100倍の走行距離に耐える必要があり、それにより、地上で使用される乗用車と同様の運転特性を必要とする。しかしながら、従来のゴム製空気入りタイヤは、宇宙では満足できるようには機能できない。
【0003】
例えば、ゴムの特性は、日陰で被る(40Kまで低下する)低温と日光中での(400Kまで上昇する)高温との間で著しく変化する。さらにゴムは、大気による保護なしで直射日光に曝されたときに劣化する。最後に、パンクの可能性があるため、有人月面乗り物には空気入りタイヤは許容されない。これらの制限を克服するために、アポロLRV用にタイヤ構造が開発され、アポロミッション15,16,17で成功裏に使用された。この非空気入りタイヤは、ピアノ線から織られており、月での温度変化や太陽放射に強く、真空中で動作し、荷重を支えるための空気が不必要であった。この構造は、さらに、月の地形に形状が適合するように機能し、それによって牽引を促進し、アポロLRVへの振動伝達を低減した。
【0004】
上述のように、月面乗り物に対する新しい重量及び距離の要件のために、より大きな強度及び耐久性を有するタイヤが必要とされた。さらに、月面での乗り物やタイヤは、25Kまで下がる温度に曝されることが分かっている。従来のホイールと非空気入りタイヤとの組立体の1つは、可変の直径を有し、直径の変化させることに加えてその幅も変化させることができ、それによって月面と係合するタイヤの面積を増加させることができる。したがってこの非空気入りタイヤは、走行中の地形に応じて乗り物の性能を向上させるように調整することができる。このタイヤ/ホイールは、ホイールハブを接続する第1及び第2の端部を備えたアーチ部材を有することができる。アーチ部材は、部分的に柔軟な籠状体を形成する織り交ぜるように組み合わされた複数の螺旋バネであってもよい。アーチ部材は、第1の端部と第2の端部との間で弧を描いて外向きに延びていてもよい。アーチ部材は、ハブの周りに円周方向に離間し、ハブから半径方向外向きに延びる複数の可撓性を有するフープ(輪)を形成する。例えば、従来の籠状体は、ハブの軸方向外側のリムの間でアーチを形成する、等間隔に配置されて半径方向に延びる38個のフープを含むことができる。フープは、所望の長さに切断され、隣接する各ばねにねじ込まれた螺旋状の鋼製ばねで作ることができる。従来のハブは、タイヤ/ホイールの直径を変えるために軸方向に拡張/収縮することができる。
【0005】
したがって、そのような従来の非空気入りタイヤ/ホイールは、複数の螺旋ばねを含む。各螺旋ばねは、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部及び第2の端部を相互接続するアーチ形状の中央部分とを含む。各螺旋ばねは、複数の螺旋ばねうちの少なくとも1つの他の螺旋ばねと織り合わされ(interwoven)、または織り交ぜるように組み合わされ(interlaced)、それによって、非空気入りタイヤ/ホイールの全周にわたって延在する織物トロイダル構造を形成する。螺旋ばねのサブセット(小集合)を、ホイールの第1の環状リム及び/またはホイールの第2の環状リムに固定することができる。タイヤの各軸方向側に環状リムを備えたホイールは、タイヤをそのホイールに固定することができる。したがって、従来の空気入りタイヤの構造と比較して、織り合わされた螺旋ばねよる織物/編物トロイダル構造は、非空気入りタイヤの第1のプライを定めることができる。第2のプライは、第1のプライに半径方向で重なり合っていてもよい。そのような第2のプライは、第1のプライと同じ織り合わせトロイダル構造を含んでもよい。現在、従来の鋼製タイヤ/ホイールが月面での25Kという低い温度に曝されることが分かっている。そのような条件下では、鋼は弱く脆くなる。その結果、月で使用するための改良された非空気入りタイヤが望まれている。
【0006】
定義:
「エイペックス(apex)」は、ビードコアの半径方向上方であってプライと折り返しプライとの間に位置するエラストマーのフィラーを意味する。
【0007】
「環状(annular)」は、リング(輪)のように形成されていることを意味する。
【0008】
「アスペクト比(aspect ratio)」は、その断面幅に対するその断面高さの比を意味する。
【0009】
「軸方向の(axial)」及び「軸方向に(axially)」は、ここでは、タイヤの回転軸に平行な線または方向を指すために用いられる。
【0010】
「ビード(bead)」は、タイヤの部分であって、プライコードによって包まれ、フリッパー、チッパー、エイペックス、トウガード及びチェーファーのような他の補強部材を有していても有していなくてもよい、設計リムに適合するように成形された環状の伸張性を有する部材を含む部分を意味する。
【0011】
「ベルト構造(belt structure)」は、トレッドの下にあり、ビードに固定されておらず、タイヤの赤道面に対して傾斜したコードを有する、織られていても織られていなくてもよい平行なコードの少なくとも2つの環状の層またはプライを意味する。ベルト構造はまた、拘束層として機能する、比較的小さい角度で傾斜した平行なコードのプライを含んでいてもよい。
【0012】
「バイアスタイヤ(bias tire)」(クロスプライ)は、カーカスプライ内の補強コードがタイヤの赤道面に対して約25°から65°の角度でビードからビードまでタイヤを斜めに横切って延びているタイヤを意味する。複数のプライが存在する場合、プライコードは、交互の層において互いに反対の角度に延びる。
【0013】
「ブレーカ(breaker)」は、タイヤの赤道面に対してカーカスプライの平行な補強コードと同じ角度を有する平行な補強コードの少なくとも2つの環状の層またはプライを意味する。ブレーカは、通常、バイアスタイヤに関連している。
【0014】
「ケーブル(cable)」は、2本以上の合撚糸を一緒にねじることによって形成されたコードを意味する。
【0015】
「カーカス(carcass)」は、プライの上方の、ベルト構造、トレッド、アンダートレッド及びサイドウォールゴムとは別であるが、ビードを含むタイヤ構造を意味する。
【0016】
「ケーシング(casing)」は、トレッド及びアンダートレッドを除いた、カーカス、ベルト構造、ビード、サイドウォール、及びタイヤのその他のすべての構成要素を意味し、すなわちタイヤ全体を意味する。
【0017】
「チッパー(chipper)」は、ビード領域を補強し、サイドウォールの、半径方向において最も内側の部分を安定させる機能を有する、ビード領域内に位置する布製または鋼製のコードからなる幅狭のバンドを指す。
【0018】
「円周方向(circumferential)」は、赤道面(EP)に平行で軸方向に垂直な、環状タイヤの表面の周囲に沿って延びる線または方向を意味する。これは、断面を見たときに半径がトレッドの軸方向の曲率を規定する、一連の隣接する円曲線の組の方向を指すこともできる。
【0019】
「コード(cord)」は、タイヤの補強構造を構成する補強ストランドの1つを意味する。
【0020】
「コード角度(cord angle)」は、赤道面に対してコードによって形成される、タイヤの平面図における左または右の鋭角を意味する。「コード角度」は、硬化しているが膨張していないタイヤにおいて測定される。
【0021】
「デニール(denier)」は、9000mあたりのグラム単位での重量を意味する(線密度を表す単位)。Dtexは、10000mあたりのグラム単位での重量を意味する。
【0022】
「エラストマー(elastomer)」は、変形後に寸法及び形状を回復することができる弾性材料を意味する。
【0023】
「赤道面(equatorial plane)(EP)」は、タイヤの回転軸に垂直であってトレッドの中心を通る平面、またはトレッドの周方向中心線を含む平面を意味する。
【0024】
「布(fabric)」は、撚られていてもよい、基本的に一方向に延びるコードの網状体を意味し、コードは、高弾性材料の多数の(撚られていてもよい)フィラメントから構成されている。
【0025】
「繊維(fiber)」は、フィラメントの基本要素を形成する、天然または人工の物質の単位である。その直径または幅の少なくとも100倍の長さを有することを特徴とする。
【0026】
「フィラメントカウント(filament count)」は、糸を構成するフィラメントの数を意味する。例えば1000デニールのポリエステルは約190本のフィラメントを有する。
【0027】
「フリッパー(flipper)」は、強度のためにビードワイヤーの周りを補強し、ビードワイヤーをタイヤ本体に結び付けるための補強布を指す。
【0028】
「フットプリント(footprint)」は、ゼロ速度及び通常の荷重下でのタイヤトレッドの平らな表面との接触パッチまたは接触領域を意味する。
【0029】
「ゲージ(gauge)」は、一般に測定値を指し、具体的には厚さ測定値を指す。
【0030】
「ハーシュネス(harshness)」は、小さいが連続的な道路の凸凹をタイヤが通過するときに、タイヤによって伝達される外乱の量を意味する。
【0031】
「高張力鋼(high tensile steel)(HT)」は、フィラメント直径0.20mmにおいて少なくとも3400MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0032】
「ヒステリシス(hysteresis)」は、物体に作用する力が変化したときの効果の遅延を意味する。
【0033】
「内側(inner)」はタイヤの内側を意味し、「外側(outer)」はタイヤの外側を意味する。
【0034】
「インナーライナー(innerliner)」は、チューブレスタイヤの内側表面を形成し、タイヤ内に膨張流体を含有させるエラストマーまたは他の材料の1または複数の層を意味する。
【0035】
「LASE」は、特定の伸びで負荷を意味する。
【0036】
「横方向(lateral)」は、軸方向を意味する。
【0037】
「撚り長さ(lay length)」は、撚られたフィラメントまたはストランドに沿って動いたときに他のフィラメントまたはストランドの周りでの360°回転する距離を意味する。
【0038】
「メガ張力鋼(mega tensile steel)(MT)」は、フィラメント直径0.20mmにおいて少なくとも4500MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0039】
「通常荷重(normal load)」は、タイヤの使用条件に対して適切な標準化機構によって割り当てられた特定の設計膨張圧力及び荷重を意味する。
【0040】
「通常の張力鋼(normal tensile steel)(NT)」は、フィラメント直径0.20mmにおいて少なくとも2800MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0041】
「プライ(ply)」は、ゴム被覆された放射状に展開されたコードまたはそうでなければ平行なコードからなるコード強化層を意味する。
【0042】
「空気入りタイヤ(pneumatic tire)」は、ビードとトレッドを有し、ゴム、化学物質、織物、鋼、及び/または他の材料で作られた、一般にトロイダル形状(通常はオープントーラス)の積層構造の機械的な装置を意味する。空気入りタイヤは、乗り物のホイールに取り付けられると、そのトレッドを介して牽引力を発揮するとともに、乗り物の荷重を支える流体を含有している。
【0043】
「半径方向(radial)」及び「半径方向に(radially)」は、タイヤの回転軸に半径方向に向かうまたは離れる方向を意味するために使用される。
【0044】
「ラジアルプライ構造(radial ply structure)」は、1つ以上のカーカスプライ、または少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面に対して65°以上90°以下の角度で配向された補強コードを有することを意味する。
【0045】
「ラジアルプライタイヤ(radial ply tire)」は、ビードからビードまで延びるコードを有する少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面に対して65°以上90°以下のコード角度で配置されている、ベルト付きまたは円周方向に拘束された空気入りタイヤを意味する。
【0046】
「リム(rim)」は、タイヤのための支持体、または、タイヤとタイヤがその上に取り付けられるチューブとの組立体のための支持体を意味する。
【0047】
「断面高さ(section height)」は、公称リム直径からタイヤの赤道面におけるタイヤの外径までの半径方向距離を意味する。
【0048】
「断面幅(section width)」は、ラベル付け、装飾または保護バンドに起因するサイドウォールの盛り上がりを除外して、タイヤが通常の圧力で24時間膨張させられたときとそののちにおける、タイヤの軸に平行であって、無負荷状態でのサイドウォールの両方の外側間の最大直線距離を意味する。
【0049】
「サイドウォール(sidewall)」は、トレッドとビードとの間のタイヤの部分を意味する。
【0050】
「ばね定数(spring rate)」は、荷重たわみ曲線の勾配として表される、タイヤまたはばねの剛性を意味する。
【0051】
「超張力鋼(super tensile steel)(ST)」は、フィラメント直径0.20mmにおいて少なくとも3650MPaの引張強度を有する炭素鋼を意味する。
【0052】
「テナシティ(引っ張り強さ)(tenacity)」は、歪みのない試験片の単位線密度当たりの力として表される応力である(gm/texまたはgm/デニール)。繊維製品で使用される。
【0053】
「張力(tensile)」は、力/断面積で表される応力である。psiで表した強度=12,800×比重×テナシティ(グラム/デニール)。
【0054】
「トウガード(toe guard)」は、タイヤの、各ビードの軸方向内側の、周方向に展開されたエラストマーのリムに接触する部分を指す。
【0055】
「トレッド(tread)」は、タイヤのケーシングに接着された際に、タイヤの、標準的に膨張して標準荷重を受けているときに道路に接触する部分を含む、成形されたゴム部品を意味する。
【0056】
「トレッド幅(tread width)」は、タイヤの回転軸を含む平面におけるトレッド表面の弧長を意味する。
【0057】
「折り返し端部(turnup end)」は、カーカスプライの、プライが巻き付けられるビードから上方(すなわち半径方向外側)に折り返された部分を意味する。
【0058】
「ウルトラ張力鋼(ultra tensile steel)(UT)」は、フィラメント直径0.20mmにおいて少なくとも4000MPaの引張強さを有する炭素鋼を意味する。
【0059】
「糸(ヤーン(yarn))」は、繊維製品の繊維またはフィラメントの連続するストランドの総称である。糸は、以下の形態で存在する:(1)一緒に撚られた多数の繊維、(2)撚られずに一緒に置かれた多数のフィラメント、(3)ある程度撚られて一緒に置かれた多数のフィラメント、(4)撚りの有無によらず単一のフィラメント(モノフィラメント)、(5)撚りの有無によらない、材料の幅狭のストリップ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】米国特許第8,141,606号明細書
【特許文献2】米国特許第8,662,122号明細書
【特許文献3】米国特許第9,016,336号明細書
【特許文献4】米国特許第9,616,713号明細書
【特許文献5】米国特許第10,427,461号明細書
【特許文献6】米国特許第10,449,804号明細書
【非特許文献】
【0061】
【非特許文献1】Entropic Alloys for Cryogenic Applications, "Stainless Steels and Alloys", Rui Xuan Li and Yong Zhang, Open Access, 2018年12月3日公開
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0062】
本発明の目的は、極低温業務用の非空気入りタイヤを含む組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0063】
本発明に基づく組立体は、ホイールと非空気入りタイヤを有する。非空気入りタイヤは複数の螺旋ばねを有する。各螺旋ばねは、第1の端部、第2の端部及びアーチ状の中央部分とを有する。各螺旋ばねは、少なくとも1つの他の螺旋ばねと織り交ぜるように組み合わされて、それによって、非空気入りタイヤの全周にわたって延在する編物トロイダル構造を形成する。トロイダル構造は、非空気入りタイヤの上に置かれた全荷重を支持する。螺旋ばねの第1の端部は、ホイールの第1の環状構造に直接固定され、螺旋ばねの第2の端部は、ホイールの第2の環状構造に直接固定されている。複数の螺旋ばねの各々の第1の端部は、複数の螺旋ばねの各々の第2の端部と同軸に配向されている。複数の螺旋ばねは、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持する所定の材料で構成されている。
【0064】
組立体の別の態様によれば、所定の材料は304ELCステンレス鋼である。
【0065】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は、310低炭素(Low-C)ステンレス鋼である。
【0066】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は2024-T4アルミニウムである。
【0067】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は6061-T6アルミニウムである。
【0068】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は2219-T87アルミニウムである。
【0069】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は5052-H38アルミニウムである。
【0070】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は5083-H38アルミニウムである。
【0071】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料はニッケルベースのモネル(monel)である。
【0072】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料はTDニッケルである。
【0073】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は、ニッケルベースのハステロイ(Hastelloy)Bである。
【0074】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は、ニッケルベースのインコネル(Inconel)Xである。
【0075】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は、ニッケルベースのインコネル(Inconel)718である。
【0076】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は、ニッケルベースのルネ(Rene)41である。
【0077】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料は5Al-2.5Sn-Ti ELIチタンである。
【0078】
組立体のさらに別の態様によれば、所定の材料はTi45A[AMS 4902]チタンである。
【0079】
本発明の構造、動作及び利点は、添付の図面と併せて以下の説明を熟考することにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1図1は、本発明のシステムによる例示的なタイヤとホイールの組立体の概略図を表す。
図2図2は、図1の2-2線に沿った断面を表す。
図3図3は、図2の3-3線に沿った断面を表す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本発明で使用するためのタイヤであって、ここにそれらの全体が引用により組み込まれる米国特許第8,141,606号明細書及び同第8,662,122号明細書(特許文献1,2)に記載されたタイヤは、織り交ぜるように組み合わされた複数の螺旋ばね(すなわち、エネルギー損失がほとんどなく荷重下で弾性的に変形するコイル状のワイヤ)を含むことができる。タイヤは、ホイールに取り付けるためのトロイダル形状構造を画定することができる。タイヤは、対応する乗り物への振動伝達を軽減しながら牽引を促進するために、タイヤが係合する表面に形状に適合することができる。螺旋ばねは、乗り物の荷重を支持及び/または分散する。
【0082】
乗り物の重量の下で、タイヤは駆動され、牽引され、または乗り物に舵取りを与えることができる。タイヤの螺旋ばねは、互いに対して屈曲及び移動することにより、あらゆる地形に対して輪郭を合わせるように変形することができる。螺旋ばねの織り交ぜられるように組み合わされた構造は、タイヤに安定性を与え、タイヤが回転してさまざまな地形にかみ合うときに構造が崩壊するのを防ぐ。
【0083】
タイヤの螺旋ばねは、変形の有限の範囲を通じて弾力的である場合があり、したがって、過度の変形を防止するために比較的剛性の高いフレームを使用する場合がある。タイヤをホイールに接続するために、放射状に配置されたばねを使用することができる。これらのばねは、織り交ぜるように組み合わされていてもよい。荷重を分散する目的で、半径方向から円周方向まで、任意のバイアス角度で他のばねをタイヤに組み込むこともできる。これらの他のばねは螺旋ばねであってもよい。さらに、一例として、これらの他のばねは、タイヤの半径方向外側部分でタイヤの周りに円周方向に延びてもよい。
【0084】
一例として、例示のタイヤを製造するために4つの基本工程を利用することができる:(i)複数の螺旋バネを一緒にねじって、所望のタイヤ外周に対応する長さを有する長方形シートを形成する;(ii)ばねの長方形シートの端部を織り交ぜるように組み合わせてメッシュシリンダー(円筒状のメッシュ)を形成する。(iii)メッシュシリンダーの一端をつぶしてホイールのリムに取り付ける;(iv)メッシュシリンダーのもう一方の端を裏返しにして、ホイールの軸方向に反対側の別のリムに取り付ける。
【0085】
本発明で使用するタイヤは、地球、月、火星、及び/または他の惑星体で使用することができる。なぜならタイヤの要素が、これらの惑星の大気及び地形条件で確実に動作するからである。タイヤは、単独で使用することも、部分的または補助的な荷重支持/分散システムとして、別の種類のタイヤ内に組み込むこともできる。しかしながら、このタイヤは空気を必要とせず、ゴムも必要とせず、困難な環境で動作し、あらゆる地形に順応して変形できる。
【0086】
このタイヤは、アポロLRVの従来のワイヤメッシュタイヤに対する改良を与える。螺旋ばねのワイヤのサイズは、比較的わずかな機能変更しか伴わずに大きくすることができるので、タイヤはより高い耐荷重を有する。螺旋ばねのワイヤの応力が構造全体により均一に分散されるため、タイヤのサイクル寿命が長くなる。さらにこのタイヤは、織り交ぜるように組み合わされた螺旋ばねのネットワークが圧着ワイヤメッシュよりも基本的に強いので、支持される単位乗り物重量当たりの重量が比較的小さい。加えて螺旋ばねを一緒に織るのではなく、互いにねじ込みまたは織り交ぜるように組み合わせることができるため、タイヤの製造性が向上する。さらにまた螺旋ばねは、製造上のばらつきに対応するために圧縮及び伸長することができる。最後に、異なるタイヤ位置やタイヤ方向によってタイヤの強度を変化させるために荷重分散ばねを追加できるため、タイヤの設計の多様性が向上する。
【0087】
したがって、本発明で使用するためのタイヤは、起伏の多い地形を走行する際に乗り物に低いエネルギー消費が要求される場合やタイヤの故障が重大な脅威となる場合、乗り物が極度の高温及び低温あるいは強いレベルの放射線に曝される場合に利用することができる。図1~3に示されるように、本発明による例示の組立体100は、ホイール200とタイヤ300とを含む。ホイール200は、タイヤ300をホイールに固定するために、各軸方向側に環状リム202を有する。各リム202は、他のリム202に対して固定される。各リム202は、タイヤ300をリムに位置合わせするための複数のソケット穴204を含むことができる。タイヤ300をリム200に固定するために、任意の他の適切な手段を使用することができる。
【0088】
タイヤ300は、アーチ形状構成でホイール200から半径方向に離れて延び、ホイールに向かって半径方向に戻る複数の螺旋ばね310を含むことができる。各ばね310の各端部315は、ホイールの対応するリム202でホイールに固定することができる。各ばね310は、端部315を相互接続する中間部分を有する。ばね310が一方のリム202から外側に延び、次いでホイール300から離れ、次にそれ自体の上に戻り、次に内側に最後に他方のリム202に向かって延びる状態で、各端部315は軸方向または角度を付けた方向で固定することができる。これにより、各ばねの各端部315は、同じばねの他方の端部315と同軸に(またはある角度で)配向されることができる。
【0089】
さらに、各ばね310は、隣接するばね310と織り交ざるように組み合わされることによって、ばね間での負荷分散を可能にすることができる。各ばね310は、ばねの第1の側で隣接するばね310と織り交ざるように組み合わされ、または織り合わされ、ばねの反対側の第2の側で隣接するばね310とさらに織り交ざるように組み合わされる。したがって、ばね310は、半径方向及び軸方向に延在し、タイヤ300の全周の周りに延在する編物トロイダル構造を形成する(図1~3)。
【0090】
螺旋ばね310は、任意の適切な長さ、ゲージ及びピッチであってもよい。螺旋ばね310は、タイヤ内の半径方向位置の範囲にわたってメッシュに連続性を作り出すために、コイル直径が変化していてもよい(すなわち、バレルばねを使用してもよい)。螺旋ばね310は、2つ以上のプライとしてさらに構造化されてもよく、1つ以上の半径方向内側のプライは、1つ以上の半径方向外側のプライによって半径方向に重ねられる。
【0091】
上記の純金属製の従来の非空気入りのばねタイヤ300は、宇宙用途向けに開発されてきた。この構造は、図3に見られるように、一連の織り込まれたばねである。この構造は、温度変化(40K~400K)のためにゴムが許容されない宇宙用途に適していた。さらにばねタイヤ300は、土壌組成が月のような軟らかい砂である場合に優れた牽引力を達成することができる。
【0092】
月面の恒久的に日陰になっているクレーターは、太陽系で最も低い温度(20Kまで低下する)を特徴としている可能性があることが分かっている。水の氷はこれらの温度で安定している可能性があり、これらのクレーターの一部にはかなりの氷の堆積物があると考えられている。その結果として本発明によれば、ばねタイヤ300は、17Kという低い温度でその強度及び延性を保持する材料で構成することができる。
【0093】
月用の従来のばねタイヤは、月の温度についての当時の知識に基づいて、40Kから400Kの間の温度を耐えて安定した状態を維持できる材料で構成されている。前述のように、月の温度は20Kほどまで低下することがある。したがって、月面の恒久的な影に覆われた領域への月探査には、新しいばねタイヤを検討する必要がある。したがって、17Kから400Kの範囲の温度に耐えるであろう合金を有するばねタイヤ300が望ましい。理想的には、このような合金は、17Kという極低温、さらには0Kまでの極低温で機能する。
【0094】
1つの適切な材料は、304ELCステンレス鋼及び/または310低炭素(Low-C)ステンレス鋼であってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0095】
別の適切な材料は、2024-T4アルミニウム、6061-T6アルミニウム、2219-T87アルミニウム、5052-H38アルミニウム、及び/または5083-H38アルミニウムであってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0096】
さらに別の適切な材料は、ニッケルベースのモネル(monel)、TDニッケル、ニッケルベースのハステロイ(Hastelloy)B、ニッケルベースのインコネル(Inconel)X、ニッケルベースのインコネル(Inconel)718、及び/またはニッケルベースのルネ(Rene)41であってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0097】
さらに別の適切な材料は、5Al-2.5Sn-Ti ELIチタン及び/またはTi45A[AMS 4902]チタンであってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0098】
さらに別の適切な材料は、ニッケルベースのインコネル(Inconel)600であってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0099】
さらに別の適切な材料は、多相Co-35Ni-20Mo-10Cr合金MP35Nであってもよい。このような材料は、17Kまで低下する温度で強度と延性を維持することができる。
【0100】
前述の説明では、簡潔さ、明確さ及び理解のために、特定の用語が使用されている。しかし、そのような用語は説明目的で使用されて広く解釈されることを意図しているため、先行技術の要件を超えて不必要な制限を暗示するものではない。さらに、本発明の説明及び例示は一例であり、本発明の範囲は、図示または説明された正確な詳細に限定されるものではない。
【0101】
ここで、本発明の特徴、発見及び原理と、本発明が構築され、使用される態様と、構築の特徴と、得られる有利な新規であって有用な結果とを説明した。新規で有用な構造、装置、要素、配置、部品及び組み合わせは、添付の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3
【外国語明細書】