(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124829
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物および包装体並びに包装体の成形方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20230830BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20230830BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20230830BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230830BHJP
B29C 45/46 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
C08L53/00
B65D1/26 110
B65D77/20 E
B29C44/00 D
B29C45/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023133
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2022028590
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽太
【テーマコード(参考)】
3E033
3E067
4F206
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA16
3E033BB01
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3E067BC07A
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3E067FA01
3E067FC01
4F206AA11
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4F206AR20
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4F206JP13
4F214AA11
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4F214UF04
4J002BP021
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4J002EQ016
4J002EU186
4J002EV266
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD326
4J002GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カップ状の包装体を射出成型するにあたり、当該包装体の製造に必要な樹脂の削減および金型のメンテナンスの頻度の削減を両立する。
【解決手段】(i)メルトフローレート(MFR)が、30~200g/10分であり、(ii)曲げ弾性率が1,000~3,000MPaであり、(iii)シャルピー衝撃強度が2.0~50kJ/m
2であるプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、当該プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部の発泡剤(B)を含むことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) メルトフローレート(MFR)が、30~200g/10分であり、
(ii)曲げ弾性率が1,000~3,000MPaであり、
(iii)シャルピー衝撃強度が2.0~50kJ/m2である
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、
当該プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部の発泡剤(B)を含むことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる包装体。
【請求項3】
請求項2に記載の包装体であって、胴部とフランジを有するカップ状の包装体。
【請求項4】
胴部の肉厚が0.3~0.7mmであり、フランジの肉厚が胴部の肉厚の1.5~5倍である、請求項3に記載のカップ状の包装体。
【請求項5】
フランジの肉厚が0.5~3.5mmである請求項3又は4に記載のカップ状の包装体。
【請求項6】
包装体を得るに際し、保圧を行わずに射出成型を行う、請求項2に記載の包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン-エチレンブロック共重合体と発泡剤とを含むポリプロピレン樹脂組成物及びそれからなる包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体に関し、詳しくは、プロピレン-エチレンブロック共重合体と発泡剤とを用いた射出成形による胴部とフランジを有するカップ状の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形による包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の作製において、胴部の肉厚を薄肉にすることにより、当該包装体の作製に必要な樹脂の量を削減できる。薄肉の胴部とフランジを有するカップ状の包装体を射出成形するにあたり、フランジにはヒケが発生しやすいことが知られている。このヒケを解消するためには、高い射出圧力が必要となる。その結果、当該胴部とフランジを有するカップ状の包装体の胴部の部分の金型に不安定な圧力がかかるため、当該金型が変形しやすい。よって、当該胴部の肉厚が不均一となる。よって、頻繁に金型のメンテナンスを行う必要があるという問題が有った。特許文献1は、胴部の肉厚が0.2~0.35mmであり、かつ、フランジの肉厚が0.4~0.7mmである包装体を、開示するが、この問題は何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の課題は、包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体を射出成形するにあたり、当該胴部とフランジを有するカップ状の包装体の製造に必要な樹脂の削減および金型のメンテナンスの頻度の削減を両立すると共に、胴部とフランジを有するカップ状包装体の特にフランジ部分のヒケの発生を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様は、以下のとおりである。
態様1は、(i) メルトフローレート(MFR)が、30~200g/10分であり、
(ii)曲げ弾性率が1,000~3,000MPaであり、
(iii)シャルピー衝撃強度が2.0~50kJ/m2である
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と、
当該プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部の発泡剤(B)を含むことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物である。
【0006】
態様2は、態様1のポリプロピレン樹脂組成物からなる包装体である。
【0007】
態様3は、態様2の包装体であって、胴部とフランジを有するカップ状の包装体である。
【0008】
態様4は、胴部の肉厚が0.3~0.7mmであり、フランジの肉厚が胴部の肉厚の1.5~5倍である、態様3に記載のカップ状の包装体である。
【0009】
態様5は、フランジの肉厚が0.5~3.5mmである態様3又は4に記載のカップ状の包装体である。
【0010】
態様6は、包装体を得るに際し、保圧を行わずに射出成型を行う、態様2に記載の包装体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、発泡剤を用いることにより、ポリプロピレン樹脂組成物の賦形性を高めることで、包装体の製造に必要な樹脂を削減しつつ、保圧を不要にすると共に、特に胴部とフランジを有するカップ状包装体のフランジ部分のヒケの発生を抑えるという効果を奏する。
【0012】
本開示の態様1に記載のポリプロピレン樹脂組成物を使った射出成形は、一般的な包装体は勿論、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の肉厚の削減により当該包装体の製造に必要な樹脂を削減しつつ、当該射出成形用の金型のメンテナンスの頻度を削減できる。
【0013】
本開示の態様2~5に記載の包装体及び胴部とフランジを有するカップ状の包装体は、製造するに際し製造に必要な樹脂の削減および金型のメンテナンスの頻度の削減を両立することができる。
【0014】
本開示の態様6に記載の射出成形方法は、必要な樹脂の削減および金型のメンテナンスの頻度の削減を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】胴部とフランジを有するカップ状の包装体の例の側面からの図
【
図2】胴部とフランジを有するカップ状の包装体の例の断面図
【
図3】胴部とフランジを有するカップ状の包装体の例の上面からの図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示において、メルトフローレート(MFR)とは、JIS K7210/ISO1130に準拠して、2.16kg荷重、230℃で測定されたメルトフローレートをいう。
本開示において、「シャルピー衝撃強度」はJIS K7111/ISO179に準拠して-20℃で測定した値である。
【0017】
本開示において、「保圧」とは、金型のキャビティ内に溶融樹脂が充填された後に、樹脂が逆流しないようにキャビティ内に向けて、溶融樹脂に継続して圧力を加え続けることをいう。
【0018】
本開示において、「フランジ」とは、カップ状の包装体の縁の厚みのある部分で、
図1及び
図3において、1で示された部分である。
また、本開示の胴部とフランジを有するカップ状の包装体の内部に食品を入れ、フランジ部分とフィルムとを融着させることで、食品を胴部とフランジを有するカップ状の包装体内に密封することができ、食品を内部に密閉した食料品を作成することができる。
【0019】
(1)ポリプロピレン樹脂組成物の構成成分
(1-1)プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)
(i)メルトフローレート
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のメルトフローレート(以下MFRと略記することが有る)は30~200g/10分であり、好ましくは45~150g/10分であり、更に好ましくは60~120g/10分、特に好ましくは80~110g/10分である。メルトフレーレートをこのような範囲とすることにより、包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の成形において金型への負荷が少なく、薄肉でありながらフランジにヒケが発生したり変形したりしにくい胴部とフランジを有するカップ状の包装体を得ることが出来るという効果を発現することができる。
【0020】
(ii)曲げ弾性率
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の曲げ弾性率は1,000~3,000MPaであり、好ましくは1,200~2,000MPa、更に好ましくは1,250~1,700MPa、特に好ましくは1,300~1,500MPaである。曲げ弾性率をこのような範囲とすることにより、包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の成形において、薄肉でありながら変形しにくく、十分な強度を有する胴部とフランジを有するカップ状の包装体を得ることが出来るという効果を発現することができる。
【0021】
(iii)シャルピー衝撃強度
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のシャルピー衝撃強度は2.0~50kJ/m2であり、好ましくは2.5~30kJ/m2、更に好ましくは2.8~10kJ/m2、特に好ましくは3~8kJ/m2である。シャルピー衝撃強度をこのような範囲とすることにより、包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の成形において、容器の破損が起こりにくく十分な強度を有する胴部とフランジを有するカップ状の包装体を得ることが出来るという効果を発現することができる。
【0022】
(1-2)製造
本開示に用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の製造方法は、従来公知の製造方法であれば、特に限定されないが、本発明に使用されるプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のような特性を有する為には、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
(1-2―1)触媒
【0023】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、さらにそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0024】
メタロセン触媒としては、担持型のものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]及び必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
【0025】
・成分[A]メタロセン錯体
共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期表第4~6族の遷移金属化合物
・成分[B]助触媒
イオン交換性層状ケイ酸塩
・成分[C]有機アルミニウム化合物
【0026】
・成分[A]メタロセン錯体
上記の成分[A]としては、具体的には、次の式[I]で表される化合物を使用することができる。
Q(C5H4-aR1a)(C5H4-bR2b)MXY ・・・[I]
式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、周期表第4~6族遷移金属を表し、中でもチタン、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
X及びYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20の酸素含有炭化水素基、炭素数1~20の窒素含有炭化水素基、炭素数1~20のリン含有炭化水素基又は炭素数1~20の珪素含有炭化水素基を示す。
【0027】
R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン、炭素数1~20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR1又は2個のR2がそれぞれ結合してC4~C10環を形成していてもよい。特には、6員環、7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環、アズレン環を形成することが好ましい。
a及びbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
【0028】
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5-ジメチルペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(7)エチレン1,2-ビス(4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
【0029】
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ジルコニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾ(インデニル)]ジルコニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
【0030】
(20)ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(フェニルインデニル))]ジルコニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド
また、チタニウム化合物、ハフニウム化合物などの他の第4、5、6族遷移金属化合物についても上記と同様の化合物が好ましく挙げられる。本開示の触媒成分及び触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
【0031】
・成分[B]助触媒(イオン交換性層状ケイ酸塩)
イオン交換性層状ケイ酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。イオン交換性層状ケイ酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状ケイ酸塩が挙げられる。
(ア)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(イ)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
【0032】
本開示で使用するケイ酸塩は、上記(ア)、(イ)の混合層を形成した層状ケイ酸塩であってもよい。
本開示においては、主成分のケイ酸塩が2:1型構造を有するケイ酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることがさらに好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
【0033】
これらケイ酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤などで化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状ケイ酸塩粒子の表面の不純物を除く、又は層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、好ましくは無機酸、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5~50重量%の酸の水溶液を60~100℃の温度で1~24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状ケイ酸塩から分離除去する操作である。
【0034】
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn、Hfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、Li2SO4、Li3(PO4)、Li(ClO4)、Li2(C2O4)、LiNO3、Li(OOCCH3)、Li2(C4H4O4)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO3、Ni(NO3)2、NiC2O4、Ni(ClO4)2、NiSO4、NiCl2、NiBr2等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH3)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、ZnCO3、Zn(NO3)2、Zn(ClO4)2、Zn3(PO4)2、ZnSO4、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH3)4、Hf(CO3)2、Hf(NO3)4、Hf(SO4)2、HfOCl2、HfF4、HfCl4、HfBr4、HfI4等を挙げることができる。
【0035】
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100~800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分~24時間、好ましくは5分~4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0036】
・成分[C]有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記式[II]で示される化合物が最適である。
(AlR4pX3-p)q・・・[II]
式[II]中、R4は、炭素数1~20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1~3の、qは1~2の整数である。
R4としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1~8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1~8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウム及びp=2、q=1のジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R4が炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0037】
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して、又は併用して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合又は本重合時にも添加して使用することができる。
(1-2-2)重合
【0038】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の製造方法に関して、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン単独重合体の存在下、プロピレンとエチレンとをランダム共重合したプロピレン-エチレンブロック共重合体である。即ち、プロピレン-エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン-エチレンランダム共重合体部分との反応混合物であり、プロピレン単独重合体部分の重合(前段重合)後、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の重合(後段重合)を行うことにより製造できる。
【0039】
上記重合に用いられる触媒や助触媒は、上述の通りである。
【0040】
また、上述の触媒には、立体規則性改良や粒子性状制御、可溶性成分の制御、分子量分布の制御等を目的とする各種重合添加剤を使用することができる。例えば、ジフェニルジメトキシシラン、tert-ブチルメチルジメトキシシランなどの有機ケイ素化合物、酢酸エチル、安息香酸ブチル、p-トルイル酸メチル、ジブチルフタレートなどのエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテルなどのエーテル類、安息香酸、プロピオン酸などの有機酸類、エタノール、ブタノールなどのアルコール類等の電子供与性化合物を挙げることができる。
【0041】
重合形式としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン若しくはトルエン等の不活性炭化水素を重合溶媒として用いるスラリー重合、プロピレン自体を重合溶媒とするバルク重合、また、原料のプロピレンを気相状態下で重合する気相重合が可能である。また、いずれの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。例えば、プロピレン単独重合体部分をバルク重合で行い、プロピレン-エチレン共重合体部分を気相重合で行う方法や、プロピレン単独重合体部をバルク重合、続いて気相重合で行い、プロピレン-エチレン共重合体部分は、気相重合で行う方法などが挙げられる。
また、重合形式として、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよい。
【0042】
さらに、重合用の反応器としては、特に形状、構造を問わないが、スラリー重合、バルク重合で一般に用いられる攪拌機付き槽や、チューブ型反応器、気相重合に一般に用いられる流動床反応器、攪拌羽根を有する横型反応器などが挙げられる。
例えば、気相重合におけるプロピレン単独重合体部の重合工程(前段重合)の場合は、プロピレン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に、例えば、温度0~100℃、好ましくは30~90℃、特に好ましくは40~80℃、プロピレンの分圧0.6~4.2MPa、好ましくは1.0~3.5MPa、特に好ましくは1.5~3.0MPa、滞留時間は0.5~10時間で行う。プロピレン単独重合体部には、本開示の効果を損なわない範囲で、プロピレン以外のα-オレフィンが極微量共重合されていても構わない。
【0043】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)を製造する際は、引き続いて、即ち前段重合工程で製造されたプロピレン単独重合体の存在下、後段重合工程で、プロピレン、エチレンの重合を行う。例えば、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒(前記プロピレン単独重合体部の製造に使用した当該触媒)の存在下に、例えば0~100℃、好ましくは30~90℃、特に好ましくは40~80℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.1~2.0MPa、好ましくは0.5~2.0MPa、滞留時間は0.5~10時間の条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、プロピレン-エチレンランダム共重合体部分を製造し、最終的な生成物として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)を得る。プロピレン-エチレンランダム共重合体部分には、本開示の効果を損なわない範囲でプロピレン、エチレン以外のα-オレフィンが極微量共重合されていても構わない。
また、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)のプロピレン-エチレンランダム共重合体部分の重量平均分子量を調整するには、重量平均分子量を比較的小さくするには、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的高い濃度に調整し、重量平均分子量を比較的大きくするには、プロセス、触媒の種類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的低い濃度に調整し、重量平均分子量をコントロールすることができる。
さらに、ゲル発生やベタツキを抑えるために、プロピレン-エチレンランダム共重合体部分の反応中あるいは反応前に、エタノールなどのアルコール類を添加することが望ましい。
また、プロピレン-エチレンブロック共重合体は、各社から種々の市販品が上市されているので、これら市販品の物性を測定して、所望のものをプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)として用いることもできる。
【0044】
(2)発泡剤(B)
本開示に用いられる発泡剤(B)は、化学発泡剤、物理発泡剤及びマイクロカプセルなどであり、ポリプロピレン樹脂組成物及びその包装体や胴部とフランジを有するカップ状の包装体(以下、まとめて「発泡成形体」と略記することがある)において、発泡倍率を高め良好な表面外観を発現させる機能を有する。
【0045】
(2-1)種類、機能など
発泡剤(B)の種類としては、例えば、化学発泡剤、物理発泡剤及びマイクロカプセルなどが挙げられ、発泡成形に通常使用できるものであれば、特に制限なく、用いることができる。
化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムなどの無機系化学発泡剤や、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’-ジフェニルジスルホニルアジドなどの有機系化学発泡剤が挙げられる。
【0046】
これらの化学発泡剤には、発泡成形体の気泡を安定的に均一微細にするなどのために、必要に応じて、気体の発生を促すクエン酸の様な有機酸や、クエン酸ナトリウムの様な有機酸金属塩などを使用、併用添加することもでき、また、タルク、炭酸リチウムの様な無機微粒子などを造核剤として添加することもできる。
【0047】
化学発泡剤としては、通常の射出成形機などの各種成形機が安全に使用でき、成形体において均一微細な気泡が得られ易いなどの点から、無機系が好ましい。
前記の様に、化学発泡剤は、無機系、有機系など種々挙げられるが、好ましいものとしては、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム及びこれら二種以上の混合体が挙げられ、さらに好ましいものとして、重炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムとクエン酸ナトリウムの組み合わせ、重炭酸ナトリウムとクエン酸の組み合わせが挙げられる。
【0048】
これら化学発泡剤は、例えば、平均粒径1~100μmの粒子に加工し、発泡成形時に、前記成分Aに混練、又は成分Aの造粒物などに、まぶして混合するなどしてから、各種成形機例えば射出成形機に供給したり、射出成形する際に、射出成形機のシリンダーの途中から注入したりして、シリンダー内などで分解して二酸化炭素などの気体を発生するものである。
また、化学発泡剤は、取り扱い性、貯蔵安定性、前記成分Aなどへの分散性などの点から、ポリオレフィン系樹脂を基材としたマスターバッチとして造粒加工した後に、使用することもできる。これにより成形機のホッパーの汚染、成形体表面への粉の付着を抑制することができる。この場合、通常10~50重量%濃度のポリオレフィン系樹脂のマスターバッチとして使用されるのが好ましい。
また、一度化学発泡剤を添加し、ペレット化により化学発泡剤を分解させたものであってもよく、さらに、予め高濃度の化学発泡剤を分解させ、その残渣を添加してもよい。化学発泡剤は、成形機のシリンダー中で分解し、その発泡残渣が発泡核剤となり得る。
【0049】
また、物理発泡剤としては、例えば、不活性ガス、低沸点有機溶剤の蒸気、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気、空気などが挙げられる。
不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アスタチンなどが挙げられ、低沸点有機溶剤の蒸気としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられ、ハロゲン系不活性溶剤の蒸気としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、フロン、三フッ化窒素などが挙げられる。これらの中で、蒸気にする必要が無く、安価で、環境汚染、火災の危険性が極めて少ないことから、不活性ガスを使用することが好ましく、中でも二酸化炭素、窒素
アルゴン、ヘリウムが好ましく、二酸化炭素、窒素がより好ましい。
さらに、物理発泡剤は、超臨界状態であることが好ましく、これにより樹脂中へのガス溶融が容易になる利点がある。
物理発泡剤は、各種成形機例えば射出成形機のシリンダー内などの前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)に混練、またはプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の造粒物などに、ガス状または超臨界流体として注入され、分散または溶解されるもので、金型内に射出後、圧力開放されることによって、発泡剤として機能するものである。
【0050】
また、マイクロカプセルは、種々の熱可塑性樹脂からなるシェル内に、発泡剤(膨張剤)を内包したものである。発泡剤(膨張剤)としては、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロエタンの様な特定フレオン類や代替フレオン類、n-ペンタン、イソペンタン、イソブタン、石油エーテルの様な炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレンの様な塩素化炭化水素などが挙げられる。マイクロカプセル状発泡剤の平均粒径は、通常は2~50μmである。
これらマイクロカプセルは、通常、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と混練、またはプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)との造粒物などと予め混合するなどしてから射出成形機などの各種成形機に供給され、使用される。
【0051】
これら発泡剤(B)は、ポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体において、発泡によって成形体の表面外観をより良好にするため、さらにより発泡倍率を高めるためなどの点から、化学発泡剤と物理発泡剤を併用することが好ましく、無機系化学発泡剤と、物理発泡剤としての炭酸ガスや窒素とを併用するのがより好ましい。
【0052】
(2―2)配合量比
本開示のポリプロピレン樹脂組成物中の発泡剤(B)の割合は、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.1~5重量部であり、好ましくは0.3~4.5重量部、より好ましくは0.5~4.0重量部である。
この場合の配合割合は、発泡剤の実質濃度であり、例えば、発泡剤(B)とポリオレフィン樹脂とのマスターバッチを用いる場合は、マスターバッチ中に含有する発泡剤濃度に基づき算出される。発泡剤(B)を本願規定の範囲とすることにより、ポリプロピレン樹脂組成物が成型時に十分に発泡し、その発泡後の成形体の衝撃強度などの機械強度が十分得られると共に、二次発泡現象を抑制できるという効果を奏する。即ち、発泡剤(B)の配合割合が0.1重量部未満であると、ポリプロピレン樹脂組成物が十分に発泡せず、一方、配合割合が5重量部を超えると、ポリプロピレン樹脂組成物の発泡後の成形体の衝撃強度などの機械強度が低下したり、二次発泡現象(過剰に残存した発泡ガスによって発泡成形体の表面が火膨れ状に膨れる現象)を生じたり、さらに経済的にも不利となる。
【0053】
また、物理発泡剤を用いる場合は、例えば用いるガスの注入圧力を調整することで、ガスの注入量を適宜設定することができる。ガスの注入圧力が不足したり、過剰であったりすると、前記の化学発泡剤の場合と同様に、ポリプロピレン樹脂組成物が十分に発泡しなかったり、発泡成形体の機械強度などが低下する。なお、発泡剤(B)は2種類以上を併用することもできる。
【0054】
(3)その他の添加成分
本開示に係るポリプロピレン樹脂組成物においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)、発泡剤(B)以外に、さらに必要に応じ、本開示の効果を損なわない範囲で、例えば発明効果を一層向上させたり、他の効果を付与するなどのため、その他の添加成分をプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.01~5重量部程度配合することができる。この配合量は、配合物質各々の特性によって、最適な配合量を選択すればよい。
【0055】
具体的には、ヒンダードアミン系などの光安定剤、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、ソルビトール系などの造核剤、顔料などの着色剤、フェノール系、リン系などの酸化防止剤、非イオン系などの帯電防止剤、無機化合物などの中和剤、チアゾール系などの抗菌・防黴剤、ハロゲン化合物などの難燃剤、プロセスオイル(配合油)、可塑剤、有機金属塩系などの分散剤、脂肪酸アミド系などの滑剤、窒素化合物などの金属不活性剤、非イオン系などの界面活性剤や、前記成分A以外のポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フィラーなどを挙げることができる。
これらは、2種以上を併用してもよく、組成物に添加してもよいし、成分A~成分Bの各成分に添加されていてもよく、夫々の成分においても2種以上併用することもできる。
【0056】
光安定剤や紫外線吸収剤として、例えばヒンダードアミン化合物、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やサリシレート系などは、ポリプロピレン樹脂組成物及びその発泡成形体の耐候性や耐久性などの付与、向上に有効である。 具体例としては、ヒンダードアミン化合物として、コハク酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの縮合物;ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕;テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート;ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート;ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバケートなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられ、ベンゾフェノン系としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン;2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられ、サリシレート系としては、4-t-ブチルフェニルサリシレート;2,4-ジ-t-ブチルフェニル3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0057】
また、造核剤として、例えば、無機系、ソルビトール系、カルボン酸金属塩系や有機リン酸塩系などは、ポリプロピレン樹脂組成物及びその発泡成形体の剛性、耐熱性や硬度、発泡成形性などの付与、向上などに有効である。
具体例としては、無機系として、タルク;シリカなどが挙げられ、ソルビトール系として、1,3,2,4-ジベンジリデン-ソルビトール;1,3,2,4-ジ-(p-メチル-ベンジリデン)ソルビトール;1,3,2,4-ジ-(p-エチル-ベンジリデン)ソルビトール;1,3,2,4-ジ-(2’,4’-ジ-メチル-ベンジリデン)ソルビトール;1,3-p-クロロベンジリデン-2,4-p-メチル-ベンジリデン-ソルビトール;1,3,2,4-ジ-(p-プロピルベンジリデン)ソルビトールなどが挙げられ、カルボン酸金属塩系として、アルミニウム-モノ-ヒドロキシ-ジ-p-t-ブチルベンゾエート;安息香酸ナトリウム;モンタン酸カルシウムなどが挙げられ、さらに、有機リン酸塩系として、ソジウムビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート;ソジウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート;リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0058】
また、着色剤として、例えば無機系や有機系の顔料などは、ポリプロピレン樹脂組成物及びその発泡成形体の着色外観、見映え、風合い、商品価値、耐候性や耐久性などの付与、向上などに有効である。
具体例として、無機系顔料としては、酸化チタン;酸化鉄(ベンガラなど);クロム酸(黄鉛など);モリブデン酸;硫化セレン化物;フェロシアン化物及びカーボンブラックなどが挙げられ、有機系顔料としては、難溶性アゾレーキ;可溶性アゾレーキ;不溶性アゾキレート;縮合性アゾキレート;その他のアゾキレートなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー;フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料;アントラキノン;ペリノン;ペリレン;チオインジゴなどのスレン系顔料;染料レーキ;キナクリドン系;ジオキサジン系;イソインドリノン系などが挙げられる。また、メタリック調やパール調にするには、アルミフレーク;パール顔料を含有させることができる。また、染料を含有させることもできる。
【0059】
また、酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系などの酸化防止剤は、ポリプロピレン樹脂組成物及びその発泡成形体の、耐熱安定性、加工安定性、耐熱老化性などの付与、向上などに有効である。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール;テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン;トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
また、リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト;トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト;トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)フォスファイトなどが挙げられる。
また、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
【0060】
また、帯電防止剤として、例えば、非イオン系やカチオン系などの帯電防止剤は、ポリプロピレン樹脂組成物及びその発泡成形体の帯電防止性の付与、向上に有効である。
具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレンアルキルアミド;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ステアリン酸モノグリセリド;アルキルジエタノールアミン;アルキルジエタノールアミド;アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル;テトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0061】
(4)ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
本開示に係るポリプロピレン樹脂組成物の製造方法としては、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)とを混合し、さらに場合により、上記任意のその他の添加成分を配合して、まぶしたり、ハンドブレンドするなどドライブレンドする方法、Vブレンダー、タンブラーミキサーなど各種のブレンダー、ミキサーなどを用いて混合する方法、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなど通常の混練機を用いて溶融・混練・造粒する方法、及び前記各成分を各々別個に(または一部をブレンドして)そのまま射出成形機などの各種成形機に直接供給する方法などを挙げることができる。
【0062】
溶融・混練・造粒方法を選択する場合は、通常は二軸押出機を用いて溶融・混練・造粒するのが好ましい。この溶融・混練・造粒の際には、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)(場合により上記任意のその他の添加成分など)の配合物を同時に溶融・混練・造粒してもよく、また、性能向上を図るべく各成分を分割、例えば、先ずプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)の一部を溶融・混練・造粒し、その後に残りの成分を溶融・混練・造粒することもできる。また、発泡剤(B)の全部または一部を、発泡成形段階で溶融・混練・造粒する場合には、発泡剤(B)の全部または一部を除いた成分のみにて、溶融・混練・造粒する。
【0063】
ここで、本開示に係るポリプロピレン樹脂組成物の製造において、該樹脂組成物の流動性、発泡成形性、発泡成形体の表面外観及び発泡倍率の向上などを図るなどのため、分子量降下剤を配合して混合・溶融・混練・造粒することができる。すなわち、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)の配合物を混合・溶融・混練・造粒する際、同時に分子量降下剤を適量配合して混合・溶融・混練・造粒する。この場合、混合のみで前記ポリプロピレン樹脂組成物を製造することもできる。ここで、予めプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)にのみ分子量降下剤を配合して混合・溶融・混練・造粒することにより、事前にプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)の分子量を降下しておき、この分子量を降下したプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)を、他の発泡剤(B)などの配合成分と同時に混合・溶融・混練・造粒することができる。
また、適量の分子量降下剤を、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)の配合物とともに、射出成形機などの各種成形機などに同時にまたは個別に直接添加して成形することもできる。
【0064】
分子量降下剤としては、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、有機過酸化物が好適である。
分子量降下剤の有機過酸化物としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、t-ブチルパーアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチル-ジ-パーアジペート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、メチル-エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルキュミルパーオキサイド、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス-(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス-t-ブチルパーオキシブタン、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジ-イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、p-サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラ-メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。なお、これらに限定されるものではない。
【0065】
本開示において、分子量降下剤の配合量は、特に限定されないが、通常、前記プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.005~0.5重量部程度である。分子量降下剤が0.005重量部未満の場合には、分子量低下効果に乏しく、0.5重量部を超える場合には、発泡成形体の表面外観が悪化することがある。
【0066】
(5)包装体及び胴部とフランジを有するカップ状の包装体(発泡成形体)とその製造方法及び用途
本発明の包装体、特に胴部とフランジを有するカップ状の包装体は胴部やフランジの変形やフランジのヒケが防止されているので、本開示の胴部とフランジを有するカップ状の包装体の内部に食品を入れ、フランジ部分とフィルムとを融着させることで、食品を胴部とフランジを有するカップ状の包装体内に密封し、食品を内部に密閉した食料品を作成することができる。
【0067】
胴部とフランジを有するカップ状の包装体の胴部の肉厚は、0.3~0.7mmが好ましく、0.35~0.6mmがより好ましく、0.4~0.5mmがさらに好ましい。胴部とフランジを有するカップ状の包装体の胴部の肉厚をこのような範囲とすることにより、胴部とフランジを有するカップ状の包装体の製造に必要な樹脂を削減し、胴部とフランジを有するカップ状の包装体が薄肉で軽量であるにもかかわらず、その胴部の変形を防止することが出来る。
胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジの肉厚は、胴部の肉厚の1.5~5倍が好ましく1.6~4.5倍が更に好ましく、1.7~4倍が特に好ましい。胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジの肉厚をこのような範囲とすることにより、薄肉で軽量の胴部とフランジを有するカップ状の成形体であるにもかかわらず、胴部とフランジを有するカップ状の包装体の変形の防止および易開封性を両立させることが出来る。
また、フランジの肉厚は0.5~3.5mmであることが好ましく、0.6~2.5mmであることが更に好ましく、0.7~1.5mmであることが特に好ましい。フランジの肉厚をこのような範囲とすることにより、薄肉で軽量の胴部とフランジを有するカップ状の成形体であるにもかかわらず、胴部とフランジを有するカップ状の包装体の変形の防止および易開封性を両立させることが出来る。
【実施例0068】
以下に本開示を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例で限定されるものではない。
【0069】
(1)評価方法
(1-1)メルトフローレート(MFR)
メルトフローレートは JIS K7210/ISO1130に準拠して測定した。その際の荷重は、2.16kg荷重であり、その際の、樹脂の温度は、230℃である。
【0070】
(1-2)曲げ弾性率
曲げ弾性率は、JIS K7171/ISO178に準拠して測定した。
【0071】
(1-3)シャルピー衝撃強度
シャルピー衝撃強度は、JIS K7111/ISO179に準拠して-20℃でのシャルピー衝撃強度を測定した。
【0072】
(1-4)フランジの外観
胴部とフランジを有するカップ状の包装体の外観を目視した際に、胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジにヒケが発生せず、かつ、胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジ全体が平坦であった場合は、「外観」を「○」とし、それ以外は、「×」と評価した。
【0073】
(1-5)重量
胴部とフランジを有するカップ状の包装体を8個重ね、精密天秤で重量を測定した。その後、得られた重量を8で除して胴部とフランジを有するカップ状の包装体1個当たりの重量を求めた。「重量」の単位は、gである。
(1-6)フランジ及び胴部の厚み
射出成形して得られた胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジ及び胴部の厚みは、マイクロメーターまたはノギスを用いて測定した。「厚み」の単位はmmである。
【0074】
(2)樹脂の調整
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)
日本ポリプロ(株)製の商品名「ノバテックPP BC10HRF」を、「PP-1」と名付ける。
日本ポリプロ(株)製の商品名「ノバテックPP BC08F」を、「PP-2」と名付ける。
日本ポリプロ(株)製の商品名「ノバテックPP BX05FS」を、「PP-3」と名付ける。
PP-1~3は、プロピレン-エチレンブロック共重合体である。
PP-1~3のメルトフローレート、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強度を計測し、表1に記載した。
【0075】
【0076】
発泡剤(B)
永和化成社製の化学発泡剤マスターバッチである「ポリスレンEE25C」を、「B-1」と名付け、使用した。B-1の発泡剤濃度は、20重量%である。220℃の恒温下で20分発泡させたところ、B-1の発生ガス量は、75~90ml/2.5gであった。B-1は、低密度ポリエチレンベースであり、炭酸水素ナトリウムおよびクエン酸を含む。
【0077】
(3)樹脂組成物の作成と評価
(実施例1~5および比較例1~6)
表2に記載の重量部のプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)とをドライブレンドし、樹脂組成物を製造した。
【0078】
表2に記載した条件で、金型温度40℃、ショートショットしないように、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)又はプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)と発泡剤(B)との混合物を射出成形し、胴部とフランジを有するカップ状の包装体を作製した。胴部とフランジを有するカップ状の包装体の評価を、表2に記載した。
ここで、当該胴部とフランジを有するカップ状の包装体は、開口部の内径(フランジの内径)は80mm、底部の内径は58mm、足部の内径は56mm、包装体の高さは50mm、足部の高さは5mm、底部の肉厚は0.7mmであった。
【0079】
表2において、PP-1から3及びB-1の数字は、それぞれの重量部を示す。ここで、「0」は、その対象物が入っていないことを示す。
表2に記載した成形温度の単位は、℃である。
表2に記載した保圧の項目において、「無」は保圧せずに成形したことを示し、「有」は、保圧して成形したことを示す。
表2に記載した「胴部」は、胴部とフランジを有するカップ状の包装体の胴部の肉厚を意味し、単位はmmである。
表2に記載した「フランジ」は、胴部とフランジを有するカップ状の包装体のフランジの肉厚を意味し、単位はmmである。
表2に、胴部とフランジを有するカップ状の包装体の「外観」を記載した。
表2に胴部とフランジを有するカップ状の包装体の「重量」を記載した。「重量」の単位はgである。
【0080】
【0081】
表2から、本開示の態様により、比較例2~4では保圧を行わかったため、フランジにヒケが発生するのを防止することができなかった。比較例1および5では、保圧を行った為フランジにヒケが発生するのを防止することができたが、保圧を行った為に金型に対するメンテナンス頻度を増やす必要があった。
一方で、実施例1~5では、保圧を行わなかったにもかかわらず、フランジにヒケが発生するのを防止することができた。