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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124832
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】パンテノール類含有ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/164 20060101AFI20230830BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230830BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20230830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230830BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230830BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
A61K31/164
A61P17/00
A61K9/06
A61K47/34
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/38
A61K47/32
A61K31/727
A61K31/138
A61K31/167
A61K31/355
A61P43/00 121
A61K8/42
A61K8/02
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023023299
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2022028530
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 太志
(72)【発明者】
【氏名】中西 利博
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 靖久
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD43Q
4C076DD51Q
4C076DD70F
4C076EE09G
4C076EE23F
4C076EE32G
4C076FF36
4C076FF70
4C083AA082
4C083AC122
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC401
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC442
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD281
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD511
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC03
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086EA27
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA89
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA05
4C206GA01
4C206GA05
4C206GA25
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA14
4C206ZA89
(57)【要約】
【課題】 パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物において、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に高くするとともに、相分離の発生を十分に抑制すること。
【解決手段】 パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するゲル組成物であって、
前記安定化剤として、エデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、かつ、
前記界面活性剤として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種を含有している、
ことを特徴とするパンテノール類含有ゲル組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するゲル組成物であって、
前記安定化剤として、エデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、かつ、
前記界面活性剤として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種を含有している、
ことを特徴とするパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項2】
前記パンテノール類の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.01~5質量%であり、前記増粘剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~5質量%であり、前記安定化剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%であり、前記界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~10質量%であることを特徴とする、請求項1に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項3】
前記安定化剤として、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%のエデト酸ナトリウム、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%のクエン酸を含有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項4】
前記増粘剤として、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシビニルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、
前記疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がゲル組成物の全量を基準として0.5~1質量%であり、
前記カルボキシビニルポリマーの含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~0.5質量%である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを第二の界面活性剤として更に含有しており、
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種である第一の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%であり、
第二の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項6】
ゲル組成物の全量を基準として0.05~3質量%のヘパリン類似物質、ゲル組成物の全量を基準として0.2~0.9質量%のジフェンヒドラミン、ゲル組成物の全量を基準として2~10質量%のクロタミトン、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.3~7質量%の酢酸トコフェロールからなる群から選択される少なくとも一種を更に含有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【請求項7】
ゲル組成物の全量を基準として1~30質量%のエステル油、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.5~20質量%の溶解補助剤を更に含有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パンテノール類は、水溶性のビタミンでビタミンB群の一種であり、皮膚を活性化し組織保護作用及び創傷治癒作用を有する有効成分であり、痒みを抑制する働きもあり、乾燥肌等の改善効果があることが知られており、このような効能のあるパンテノール類を皮膚に投与するための外用製剤については数多く検討されている。
【0003】
例えば、特開2010-184903号公報(特許文献1)には、パンテノール類及びγ-オリザノールを含有する外用医薬組成物が開示されており、パントテニルエチルエーテル、γ-オリザノール、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クエン酸等を含有するゲル製剤や、パンテノール、γ-オリザノール、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミン等を含有するゲル製剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-184903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、パンテノール類を皮膚に投与するための外用製剤の形態としてゲル製剤、すなわちパンテノール類含有ゲル組成物とする場合、以下に説明するように、保管時においてパンテノール類の含量安定性が低下するという課題があることを本発明者らは見出した。そしてさらに、本発明者らがこのようなパンテノール類の含量安定性を改善する方法を検討したところ、安定化剤としてエデト酸ナトリウムやクエン酸を含有させると含量安定性が改善することを見出したものの、得られるゲル組成物の相分離が生じ易くなってしまうという課題があることを本発明者らは見出した。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物において、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に高くするとともに、相分離の発生を十分に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、パンテノール類含有ゲル組成物において、安定化剤としてエデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有させ、かつ、特定の界面活性剤を含有させることにより、相分離の発生を十分に抑制しつつ、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0009】
[1]パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するゲル組成物であって、
前記安定化剤として、エデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、かつ、
前記界面活性剤として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種を含有している、
パンテノール類含有ゲル組成物。
【0010】
[2]前記パンテノール類の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.01~5質量%であり、前記増粘剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~5質量%であり、前記安定化剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%であり、前記界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~10質量%である、[1]に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【0011】
[3]前記安定化剤として、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%のエデト酸ナトリウム、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%のクエン酸を含有している、[1]又は[2]に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【0012】
[4]前記増粘剤として、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシビニルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、
前記疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量がゲル組成物の全量を基準として0.5~1質量%であり、
前記カルボキシビニルポリマーの含有量がゲル組成物の全量を基準として0.1~0.5質量%である、
[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【0013】
[5]前記界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを第二の界面活性剤として更に含有しており、
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種である第一の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%であり、
第二の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%である、
[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【0014】
[6]ゲル組成物の全量を基準として0.05~3質量%のヘパリン類似物質、ゲル組成物の全量を基準として0.2~0.9質量%のジフェンヒドラミン、ゲル組成物の全量を基準として2~10質量%のクロタミトン、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.3~7質量%の酢酸トコフェロールからなる群から選択される少なくとも一種を更に含有している、[1]~[5]のうちのいずれか1項に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【0015】
[7]ゲル組成物の全量を基準として1~30質量%のエステル油、及び、ゲル組成物の全量を基準として0.5~20質量%の溶解補助剤を更に含有している、[1]~[6]のうちのいずれか1項に記載のパンテノール類含有ゲル組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物において、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に高くするとともに、相分離の発生を十分に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物は、パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するゲル組成物であって、前記安定化剤として、エデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有しており、かつ、前記界面活性剤として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種を含有していることを特徴とする乳化ゲル組成物である。
【0019】
本発明に用いられるパンテノール類は、皮膚を活性化し組織保護作用及び創傷治癒作用を有する有効成分であり、パンテノール類には、パンテノール及びパンテノール類縁物質が包含される。具体的には、パンテノール、パントテン酸又はその塩(ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)、パントテニルアルキルエーテル(パントテニルエチルエーテル等)、アセチルパントテニルアルキルエーテル(アセチルパントテニルエチルエーテル等)が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、パンテノールが特に好ましい。
【0020】
本発明のゲル組成物におけるパンテノール類の含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~3質量%であることがより好ましい。前記パンテノール類の含有量が前記下限未満では前記効能が得られにくくなり、他方、前記上限を超えると塗布後のべたつきが多くなる傾向にある。
【0021】
本発明のゲル組成物においては、安定化剤として、エデト酸ナトリウム及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有させることが必要であり、エデト酸ナトリウムとクエン酸とを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0022】
エデト酸ナトリウムは、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、EDTAナトリウムとも称される化合物である。本発明のゲル組成物において、安定化剤としてエデト酸ナトリウムを含有させる場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.03~0.3質量%であることがより好ましい。前記エデト酸ナトリウムの含有量が前記下限未満ではパンテノール類の含量安定性の向上効果が十分に得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にあり、また、パンテノール類の含量安定性が却って低下する傾向にある。
【0023】
クエン酸としては、クエン酸無水物であっても、クエン酸水和物であってもよく、また、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カルシウム)の形態であってもよい。本発明のゲル組成物において、安定化剤としてクエン酸を含有させる場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.01~0.1質量%であることがより好ましい。前記クエン酸の含有量が前記下限未満ではパンテノール類の含量安定性の向上効果が十分に得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にあり、また、パンテノール類の含量安定性が却って低下する傾向にある。
【0024】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物においては、前記安定化剤に加えて、界面活性剤として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシアルキレンステロールからなる群から選択される少なくとも1種(第一の界面活性剤)を含有させることが必要であり、中でも、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシエチレンフィトステロールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体及びポリオキシエチレンフィトステロールからなる群から選択される少なくとも1種が特に好ましい。このような第一の界面活性剤としては、HLB値が16~20のものが好ましい。
【0025】
本発明者らは、前記安定化剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物に、前記の第一の界面活性剤を更に含有させることにより、相分離の発生を十分に抑制しつつ、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に高いパンテノール類含有ゲル組成物が得られることを見出した。
【0026】
本発明のゲル組成物における第一の界面活性剤の含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.1~10質量%であることが好ましく、0.2~5質量%であることがより好ましい。前記界面活性剤の含有量が前記下限未満では相分離の抑制効果が十分に得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にある。
【0027】
本発明のゲル組成物においては、前記安定化剤及び前記第一の界面活性剤に加えて、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを第二の界面活性剤として更に含有していることが好ましい。このような第二の界面活性剤としては、HLB値が14~16のものが好ましい。第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とを組み合わせて含有させることにより、相分離の発生がより確実に抑制される傾向にある。第一の界面活性剤と第二の界面活性剤とを組み合わせて用いる場合、第一の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%であり、第二の界面活性剤の含有量がゲル組成物の全量を基準として0.2~5質量%であることが好ましい。前記第一及び第二の界面活性剤の含有量が前記下限未満では相分離の抑制効果が十分に得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にある。
【0028】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物においては、前記安定化剤及び前記界面活性剤に加えて、前記増粘剤として、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシビニルポリマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有していることが好ましく、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースとカルボキシビニルポリマーとを組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0029】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(疎水化HPMC)は、セルロースエーテル誘導体であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に疎水性基である長鎖アルキル基を導入した化合物である。HPMCに導入される長鎖アルキル基としては、C~C24アルキル基が好ましく、C10~C20アルキル基がより好ましく、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基がさらに好ましく、ステアリル基が特に好ましい。疎水化HPMCとしては、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。
【0030】
本発明のゲル組成物において、増粘剤として疎水化HPMCを含有させる場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~1質量%であることがより好ましい。疎水化HPMCの含有量が前記下限未満では得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると粘度が過剰に高くなり塗布時に塗り広げにくくなったり、塗布後に垢状の塊(ヨレ)が発生する等、使用感が悪化し易くなる。
【0031】
カルボキシビニルポリマーは、ポリアクリル酸を主鎖として部分的に架橋された架橋構造を有する高分子である。本発明に用いられるカルボキシビニルポリマーの重合度は特に制限されず、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上のものを組み合わせて使用してもよい。また、カルボキシビニルポリマーとしては、0.2質量%水溶液の25℃における粘度(B型粘度計で測定される粘度)が500~8000mPa・sであることが好ましく、1000~6000mPa・sであることがより好ましい。
【0032】
本発明のゲル組成物において、増粘剤としてカルボキシビニルポリマーを含有させる場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.1~5質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。カルボキシビニルポリマーの含有量が前記下限未満では得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が高くなる傾向にある。
【0033】
本発明のゲル組成物は、前述のパンテノール類、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤に加えて水を含有している。本発明のゲル組成物において、水の含有量は特に制限されず、他の成分の組成に応じて適宜設定すればよいが、ゲル組成物の全量を基準として50~90質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
【0034】
なお、本発明のゲル組成物においては、相分離の発生をより確実に防止するという観点からは低級アルコールは含有されないことが好ましく、特にエタノールは含有されないことが好ましい。
【0035】
本発明のゲル組成物においては、前述のパンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤に加えて、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で医薬品、医薬部外品及び化粧品等に使用される有効成分を配合してもよい。このような有効成分としては、例えば、保湿成分、抗ヒスタミン成分、鎮痒成分、血行促進成分、抗炎症成分、抗真菌薬成分、美白成分、生薬成分、局所麻酔成分等が挙げられる。
【0036】
保湿成分としては、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン等の高分子化合物、グリセリン等の多価アルコール、グリシン、アスパラギン酸等のアミノ酸、乳酸ナトリウム、尿素等の天然保湿因子、セラミド、コレステロール、リン脂質等の脂質等が挙げられ、中でもヘパリン類似物質が好ましい。本発明のゲル組成物に保湿成分(好ましくはヘパリン類似物質)が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.05~10質量%であることが好ましい。保湿成分(好ましくはヘパリン類似物質)の含有量が前記下限未満では保湿成分の効能が得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にあり、また、相分離が発生し易くなる。
【0037】
抗ヒスタミン成分としては、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、メキタジン、アゼラスチン、エメダスチン、ケトチフェン、又はそれらの誘導体等が挙げられ、中でもジフェンヒドラミンが好ましい。本発明のゲル組成物に抗ヒスタミン成分(好ましくはジフェンヒドラミン)が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.2~0.9質量%であることが好ましい。抗ヒスタミン成分(好ましくはジフェンヒドラミン)の含有量が前記下限未満では抗ヒスタミン成分の効能が得られにくくなり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物の粘度が低くなる傾向にある。
【0038】
鎮痒成分としては、クロタミトン、ステロイド等が挙げられ、中でもクロタミトンが好ましい。本発明のゲル組成物に鎮痒成分(好ましくはクロタミトン)が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として2~10質量%であることが好ましい。鎮痒成分(好ましくはクロタミトン)の含有量が前記下限未満では前記効能が得られにくくなり、他方、前記上限を超えると塗布後のべたつきが多くなる傾向にあり、また、相分離が発生し易くなる傾向にある。
【0039】
血行促進成分としては、酢酸トコフェロール、ノニル酸ワニリルアミド、dl-カンフル、カプサイシン、サリチル酸メチル等が挙げられ、中でも酢酸トコフェロールが好ましい。本発明のゲル組成物に血行促進成分(好ましくは酢酸トコフェロール)が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.3~7質量%であることが好ましい。血行促進成分(好ましくは酢酸トコフェロール)の含有量が前記下限未満では血行促進成分の効能が得られにくくなり、他方、前記上限を超えると塗布後のべたつきが多くなる傾向にある。
【0040】
抗炎症成分としては、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸又はその誘導体、カンゾウ抽出物、ステロイド化合物(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロベタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの誘導体)、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、ウフェナマート、ピロキシカム、ケトプロフェン、サリチル酸又はその誘導体、ジメチルイソプロピルアズレン、トウキエキス、シコンエキス等が挙げられる。本発明のゲル組成物に抗炎症成分が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~1質量%であることが好ましい。
【0041】
抗真菌薬成分としては、ブテナフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩、ネチコナゾール塩酸塩、ルリコナゾール、エフィナコナゾール、ビホナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール等が挙げられる。本発明のゲル組成物に抗真菌薬成分が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~1質量%であることが好ましい。
【0042】
美白成分としては、L-システイン、ハイドロキノン、グルコサミン、L-アスコルビン酸、グルタチオン、コウジ酸、エラグ酸、胎盤抽出物、ユビキノン類、又はそれらの誘導体等が挙げられる。本発明のゲル組成物に美白成分が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~1質量%であることが好ましい。
【0043】
生薬成分としては、サイコ、ブクリョウ、ケイヒ、カンゾウ、オウゴン、オウバク、オウレン、サンシシ、ジオウ、シャクヤク、センキュウ、トウキ、ハマボウフウ、ボウフウ、オウヒ、キキョウ、ショウキョウ、ドクカツ、ケイガイ、モクツウ、ゴボウシ、チモ、センタイ、クジン、ソウジュツ、インチンコウ等が挙げられる。本発明のゲル組成物に生薬成分が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~1質量%であることが好ましい。
【0044】
局所麻酔成分としては、リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、アミノ安息香酸又はそれらの誘導体等が挙げられる。本発明のゲル組成物に局所麻酔成分が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~2質量%であることが好ましい。
【0045】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物においては、前記有効成分の他に、ゲル組成物を構成するための成分として、油分、溶解補助剤、pH調整剤、高級脂肪酸、保存剤、清涼化剤等を配合してもよい。
【0046】
油分としては、天然動植物油脂類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等が挙げられるが、得られるゲル組成物の塗布時に塗り広げ易くなり、さらに塗布後のべたつきが少なくなる傾向にあるという観点から、エステル油が好ましい。エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット等が挙げられ、中でも、得られるゲル組成物の塗布時により塗り広げ易くなり、さらに塗布後のべたつきがより少なくなる傾向にあるという観点から、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピルが好ましく、2-エチルヘキサン酸セチルとミリスチン酸イソプロピルとの組み合わせが特に好ましい。本発明のゲル組成物に油分(好ましくはエステル油)が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましく、10~15質量%であることが特に好ましい。油分(好ましくはエステル油)の含有量が前記下限未満では得られるゲル組成物の保湿性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物を塗布する際の乾きが遅くなる傾向にある。
【0047】
溶解補助剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられ、中でも、皮膚刺激が少ないという観点から、プロピレングリコールが好ましい。本発明のゲル組成物に溶解補助剤が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.5~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、3~7質量%であることが特に好ましい。溶解補助剤の含有量が前記下限未満では十分な溶解補助効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると得られるゲル組成物を塗布した後のべたつきが多くなる傾向にある。
【0048】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、有機塩基(ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)等が挙げられ、中でも、常温で液体であり、潮解せず取扱いがし易いという観点から、ジエタノールアミンが好ましい。本発明のゲル組成物にpH調整剤が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~0.5質量%であることが好ましい。
【0049】
高級脂肪酸としては、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、中でもオレイン酸が好ましい。本発明のゲル組成物に高級脂肪酸が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.1~5質量%であることが好ましい。
【0050】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール等が挙げられ、中でも、水への溶解性に優れ、皮膚刺激が少ないという観点から、パラオキシ安息香酸メチルが好ましい。本発明のゲル組成物に保存剤が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~1質量%であることが好ましい。
【0051】
清涼化剤としては、メントール(l-メントール、dl-メントール等)、カンフル(d-カンフル、dl-カンフル等)、ボルネオール等のテルペノイド、テルペノイドを含有する精油(ハッカ油)、又はその薬理学的に許容される塩等が挙げられる。本発明のゲル組成物に清涼化剤が配合される場合、その含有量は、ゲル組成物の全量を基準として0.01~7質量%であることが好ましい。
【0052】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物のpHは、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であればよく、特に制限されないが、皮膚に対する刺激性の観点から、pHは2~11.5が好ましく、3~10がより好ましく、5~8が特に好ましい。
【0053】
本発明のパンテノール類含有ゲル組成物の剤型はゲル剤であり、その調製方法は特に制限されるものではなく、前述のパンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤と、必要に応じて前述の有効成分及びゲル組成物を構成するための成分を所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによって調製することができる。
【実施例0054】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
なお、以下の表中、各成分に関する組成の数値は、得られるゲル組成物の全量を基準とした各成分の含有量(質量%)である。
【0056】
また、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(疎水化HPMC)としては、大同化成工業株式会社製、商品名:サンジェロース90L、カルボキシビニルポリマーとしては、Lubrizol社製、商品名:Carbopol 981 NF POLYMER、エデト酸ナトリウムとしては、ナガセケムテックス株式会社製、商品名:クレワットN、無水クエン酸としては、純正化学株式会社製、商品名:無水クエン酸、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:TS-10MV、HLB=14.9、モノステアリン酸ポリエチレングリコールとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:MYS-55MV、HLB=18.0、ポリオキシエチレンセチルエーテルとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:BC-40、HLB=20.0、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:HCO-100、HLB=16.5、ポリオキシエチレンラノリンアルコールとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:BWA-40、HLB=17、ポリオキシエチレンフィトステロールとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:BPS-30、HLB=18、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムとしては、日本サーファクタント工業株式会社製、商品名:DLP-10、HLB=17をそれぞれ用いた。
【0057】
また、得られたゲル組成物の評価は、それぞれ以下の方法で実施した。
【0058】
<相分離(製造時)>
製造した直後におけるゲル組成物の相分離ついて、目視により下記基準で評価した。
A:乳化状態が維持され、相分離の発生が確認されなかった(合格)。
B:相分離の発生が確認された。
【0059】
<相分離(60℃保管、経時)>
得られたゲル組成物を60℃で保管した状態における経時の相分離発生リスクついて、以下の方法で評価した。すなわち、製造したゲル組成物を60℃の貯蔵庫に保管し、保管開始から36日が経過するまで所定の間隔で(相分離が確認された場合はその時点で終了)、ゲル組成物を貯蔵庫から取り出し、取り出したゲル組成物を常温で約8時間静置し、スパーテルでゲル組成物を20回かき混ぜた後、相分離について目視により下記の基準で評価した。
A:36日間乳化状態が維持され、相分離の発生が確認されなかった(合格)。
B:相分離の発生が確認された日数を表中に記載した(「-」は製造時に相分離が発生していたため評価せず)。
【0060】
<パンテノールの含量安定性>
得られたゲル組成物について、製造直後、及び、50℃で2週間(2W)又は1ヶ月(1M)貯蔵庫に保管した後のパンテノール含有量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィーにて測定し、以下の計算式に基づいて対初期含量を求め、含量安定性を評価した(「-」は評価せず)。
対初期含量=(50℃2W(又は50℃1M)保管後のパンテノール含有量)/(製造直後のパンテノール含有量)。
【0061】
(比較例1~6)
表1に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示した結果から、安定化剤がない場合(比較例1)は、経時での相分離の発生が確認され、さらに、パンテノールの含量が低下することが確認された。また、安定化剤としてエデト酸ナトリウムのみを含有するゲル組成物(比較例2~4)は、含量安定性は改善するものの、経時での相分離の発生が確認され、エデト酸ナトリウムの含有量が0.3質量%以上の場合は製造時から相分離が発生すること確認された。さらに、安定化剤としてクエン酸のみを含有するゲル組成物(比較例5、6)は、含量安定性は改善するものの、経時での相分離の発生が確認され、クエン酸の含有量が0.1質量%以上の場合は製造時から相分離が発生すること確認された。
【0064】
(実施例1~3、比較例7~11)
表2に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
表2に示した結果から、表1に示した比較例2~6のゲル組成物より安定化剤の含有量を減らしたゲル組成物(比較例7、8)においては、相分離の抑制効果が認められなかった。また、比較例9のゲル組成物よりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの含有量を増やしたゲル組成物(比較例10、11)においても、相分離の抑制効果の大きな改善は認められなかった。一方、本発明のゲル組成物(実施例1~3)においては、含量安定性が良好であるとともに、60℃で36日保管しても相分離が発生せず、顕著な相分離抑制効果が確認された。
【0067】
(実施例4~6、比較例12)
表3に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
表3に示した結果から、本発明のゲル組成物(実施例4~6)においては、含量安定性が良好であるとともに、60℃で36日保管しても相分離が発生せず、顕著な相分離抑制効果が確認された。一方、本発明の範囲外の界面活性剤を用いたゲル組成物(比較例12)においては、60℃で11日保管後に相分離の発生が確認された。
【0070】
(実施例7~9)
表4に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示した結果から、本発明のゲル組成物(実施例7~9)においては、第一の界面活性剤の含有量が0.3~5質量%の範囲内で変化しても、含量安定性が良好であるとともに、60℃で36日保管しても相分離が発生せず、顕著な相分離抑制効果が確認された。
【0073】
(実施例10~13)
表5に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0074】
【表5】
【0075】
表5に示した結果から、本発明のゲル組成物(実施例10~13)においては、含量安定性が良好であるとともに、60℃で36日保管しても相分離が発生せず、顕著な相分離抑制効果が確認されたが、エデト酸ナトリウム又はクエン酸の含有量が所定量以上に増加すると含量安定性が却って低下する傾向にあることが確認された。
【0076】
(実施例14~17)
表6に記載の諸成分をそれぞれ所望の配合比率になるように秤量し、常法によって混合し、乳化させることによってパンテノール類含有ゲル組成物を調製した。なお、得られるゲル組成物が表中のpHとなるようにジエタノールアミンの量を調整した。得られた評価結果を表中に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
表6に示した結果から、本発明のゲル組成物においては、パンテノールの含有量が5質量%の場合(実施例14)、増粘剤としての疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシビニルポリマーの含有量がそれぞれ1質量%及び0.5質量%の場合(実施例15)、第二の界面活性剤としてのモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及び第一の界面活性剤としてのモノステアリン酸ポリエチレングリコールの含有量がそれぞれ5質量%及び5質量%の場合(実施例16)、第二の界面活性剤としてのモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及び第一の界面活性剤としてのモノステアリン酸ポリエチレングリコールの含有量がそれぞれ5質量%及び0.5質量%の場合(実施例17)のいずれにおいても、含量安定性が良好であるとともに、60℃で36日保管しても相分離が発生せず、顕著な相分離抑制効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上説明したように、本発明によれば、パンテノール類、水、増粘剤、安定化剤及び界面活性剤を含有するパンテノール類含有ゲル組成物において、保管時におけるパンテノール類の含量安定性を所定の水準以上に高くするとともに、相分離の発生を十分に抑制することが可能となる。
【0080】
したがって、本発明のパンテノール類含有ゲル組成物によれば、多様な保存環境や使用環境の下であっても、塗布時及び塗布後の使用感が良好で、かつ、パンテノール類による所期の効能が安定して発揮されるようになる。