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特開2023-124835勤務表作成装置、勤務表作成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124835
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】勤務表作成装置、勤務表作成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20230830BHJP
   G06Q 10/109 20230101ALI20230830BHJP
【FI】
G16H40/20
G06Q10/109
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025644
(22)【出願日】2023-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2022028716
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390019057
【氏名又は名称】株式会社麻生
(71)【出願人】
【識別番号】522311886
【氏名又は名称】株式会社FiveVai
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】森山 由香
(72)【発明者】
【氏名】野見山 由美子
(72)【発明者】
【氏名】城野 政博
(72)【発明者】
【氏名】山田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 智之
(72)【発明者】
【氏名】清田 陽司
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋靖
(72)【発明者】
【氏名】菅本 信哉
【テーマコード(参考)】
5L049
5L099
【Fターム(参考)】
5L049AA13
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、勤務表を作成する師長等の負担を軽減することを可能とする勤務表作成装置等を提供することを目的とする。
【解決手段】 複数のスタッフの勤務表を作成する勤務表作成装置であって、複数の前記スタッフからなる勤務チーム案と、当該勤務チーム案の評価であるチーム案評価値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記勤務チーム案と前記チーム案評価値とを教師データとして用いるものであり、入力を複数の前記スタッフからなる入力勤務チーム案とし、出力を前記入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、前記モデル生成部が生成した前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成部とを備える、勤務表作成装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスタッフを有する第1部署の勤務表を作成する勤務表作成装置であって、
複数の前記スタッフからなる勤務チーム案と、当該勤務チーム案の評価であるチーム案評価値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記勤務チーム案と前記チーム案評価値とを教師データとして用いるものであり、入力を複数の前記スタッフからなる入力勤務チーム案とし、出力を前記入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部が生成した前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成部とを備える、勤務表作成装置。
【請求項2】
前記勤務チーム案の前記チーム案評価値を算出する評価値算出部をさらに備え、
前記評価値算出部は、前記チーム案評価値を、特定の勤務時間帯における前記スタッフの必要人数、前記スタッフの熟練度、及び/又は、特定の前記スタッフの組み合わせの可否に基づいて算出する、請求項1記載の勤務表作成装置。
【請求項3】
前記スタッフのそれぞれの前記熟練度を記憶する熟練度記憶部と、
所定の期間における前記勤務表の各シフト区分における前記チーム案評価値のばらつきを算出する評価値ばらつき算出部とをさらに備え、
前記評価値算出部は、前記勤務チーム案に属するスタッフの前記熟練度の平均値及び/又は合計値に基づいて前記チーム案評価値を算出し、
前記モデル生成部は、前記ばらつきも前記教師データとして用いる、請求項2記載の勤務表作成装置。
【請求項4】
前記勤務表作成部が出力した前記勤務表に関して改善を提案する改善提案部をさらに備える、請求項1記載の勤務表作成装置。
【請求項5】
夜勤や休日出勤のように通常勤務とは異なる特別勤務の回数に関する指標である特別勤務指標を算出する特別勤務指標算出部をさらに備え、
前記記憶部は、前記特別勤務指標の基準値である特別勤務指標基準値を記憶し、
前記特別勤務指標算出部は、所定期間内において前記特別勤務に割り当てる必要な延べ人数である必要特別勤務人数と、複数の前記スタッフが所定期間内において前記特別勤務に対応可能な延べ人数である特別勤務可能上限回数とに基づいて、前記特別勤務指標を算出し、
前記改善提案部は、前記特別勤務指標と前記特別勤務指標基準値とに基づいて前記勤務表に関して改善を提案する、請求項4記載の勤務表作成装置。
【請求項6】
前記改善提案部は、
少なくとも一部の前記スタッフの前記特別勤務の回数の上限を増やすこと、
少なくとも一部の前記スタッフが前記特別勤務に連続して割り当てられる回数である連続特別勤務回数の上限を増やすこと、
又は、
前記第1部署のスタッフとは異なる部署のスタッフの応援を要請すること、
のいずれかを提案する、請求項5記載の勤務表作成装置。
【請求項7】
前記記憶部は、
前記第1部署の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶し、
前記第1部署とは異なる部署であって複数のスタッフを有する第2部署の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶するものであり、
表示部に、前記第1部署及び前記第2部署の前記勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標を表示させる制御部をさらに備える、請求項5記載の勤務表作成装置。
【請求項8】
前記第1部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と、前記第2部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標とを比較する比較部をさらに備え、
前記改善提案部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記第1部署と前記第2部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標が平準化されるように前記勤務表の改善及び/又は異なる部署の間でのスタッフの異動を提案する、請求項7記載の勤務表作成装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記第1部署の過去の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶するものであり、
表示部に、過去の前記勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標を時系列に沿って表示させる制御部をさらに備える、請求項5記載の勤務表作成装置。
【請求項10】
前記勤務表作成部が出力した前記勤務表を修正する修正部をさらに備え、
前記修正部は、
特定のスタッフの特定の期間における、特別勤務の回数の増減、日勤回数の増減、若しくは、公休の増減を修正し、
特定のスタッフのリーダー回数の上限値若しくは下限値を修正し、
特定のスタッフの特別勤務の回数の上限値若しくは下限値を修正し、
又は、
特定の日若しくは期間における、日勤人数若しくは夜勤人数の上限若しくは下限を修正する、請求項1記載の勤務表作成装置。
【請求項11】
前記修正部は、前記勤務表作成部が出力した前記勤務表の変更箇所数をコストとして設定した最適化問題を解くことにより、変更が最小限となる修正後の勤務表を出力する、請求項10記載の勤務表作成装置。
【請求項12】
前記勤務表作成部が出力した前記勤務表に対するフィードバックを受け付けるフィードバック受付部をさらに備え、
前記記憶部は、前記勤務表と、当該勤務表に対する前記フィードバックとを関連付けて記憶し、
前記フィードバック受付部は、前記フィードバックとして、前記勤務表の修正に要した時間、前記勤務表の変更箇所数、及び/又は、前記スタッフの前記勤務表への満足度を受け付ける、請求項1記載の勤務表作成装置。
【請求項13】
複数のスタッフの勤務表を作成する勤務表作成装置を用いた勤務表作成方法であって、
前記勤務表作成装置は、
複数の前記スタッフからなる勤務チーム案と、当該勤務チーム案の評価であるチーム案評価値とを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記勤務チーム案と前記チーム案評価値とを教師データとして用いるものであり、入力を複数の前記スタッフからなる入力勤務チーム案とし、出力を前記入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、
前記モデル生成部が生成した前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成部とを備え、
前記モデル生成部が、前記判定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、
前記勤務表作成部が、前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成ステップとを含む、勤務表作成方法。
【請求項14】
コンピュータに、請求項13記載の勤務表作成方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、勤務表作成装置、勤務表作成方法及びプログラムに関し、特に、複数のスタッフの勤務表を作成する勤務表作成装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院等では、スタッフの希望等を反映して反復的に適切な勤務表を作成する必要がある。以下、病院における従来の勤務表作成の一例について述べる。
【0003】
まず、月の初めに師長が各スタッフに対して、白紙状態である翌月の勤務表フォームを配布する。各スタッフは、翌月の勤務スケジュールについて、休みを希望する日、勤務を希望する日を入力する。ここで、希望できる日は、上限が決まっている。例えば、1人当たり3日までとされている。
【0004】
所定の日数の経過後、各スタッフの希望が入力された勤務表フォームを回収する。たいていの場合、どこかに勤務や休みが集中している。そのため、師長が各スタッフに対して、変更を相談する。無事に調整できれば、師長は所定の期日までに翌月の勤務表を各スタッフに提示する。
【0005】
ここで、師長は、例えば、以下の6つの観点に配慮して勤務表を作成する。
【0006】
第1に、ワーク・ライフ・バランスの観点から、スタッフの生活に配慮する。具体的には、夜勤回数をできるだけ少なくする。夜勤の連続を避ける。土日勤務の連続を避ける。夜勤平均時間を月に72時間以内とする。
【0007】
第2に、看護の質を担保する観点から、質の均一化に配慮する。具体的には、毎日の日勤及び夜勤の看護チームにそれぞれリーダーを配置する。夜勤人数を例えば3名等と定める。夜勤は年齢層が偏らないようにする。
【0008】
第3に、各スタッフの個別の事情に配慮する。具体的には、研修参加、会議、行事、休みの希望、出張等で勤務に入れないといった事情に配慮する。
【0009】
第4に、組織内異動に伴う人の動きに配慮する。具体的には、産休や育休、病欠、退職、別病棟の勤務、ローテーションといった動きに配慮する。
【0010】
第5に、病院経営や法規の観点に配慮する。具体的には、労働基準法、医療法といった法規が定めるスタッフの夜勤回数や夜勤時間、正看護師比率、看護補助者配置比率、週40時間超勤務者数、月平均夜勤時間、夜間看護補助者配置、診療報酬といった事項に配慮する。
【0011】
第6に、日本看護協会等のガイドラインに配慮する。ガイドラインには、看護職のスタッフの心身の健康の保持・増進のために、ワーク・ライフ・バランス推進の一環として基準が示されている。例えば、勤務間隔、勤務拘束時間、夜勤連続回数、連続勤務日数、休憩時間、仮眠時間、交代周期等について記載されている。
【0012】
このように多種多様な制約の中で勤務表を作成する師長には、多大な負担がかかっている。他方、スタッフからすると必ずしも勤務表の満足度が高くないことが知られている。
【0013】
本願発明者は、典型的なNP困難問題として厳密解を求めるのがきわめて難しいとされる看護師スケジューリング問題(Nurse Scheduling Problem, NSP)の解決に寄与する勤務表作成装置等を提案してきた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2019-207602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、勤務表を定期的にゼロから作成する際の負担軽減に向けて、改善の余地が残されている状況である。
【0016】
そこで、本発明は、勤務表を作成する師長等の負担を軽減することを可能とする勤務表作成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の観点は、複数のスタッフを有する第1部署の勤務表を作成する勤務表作成装置であって、複数の前記スタッフからなる勤務チーム案と、当該勤務チーム案の評価であるチーム案評価値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記勤務チーム案と前記チーム案評価値とを教師データとして用いるものであり、入力を複数の前記スタッフからなる入力勤務チーム案とし、出力を前記入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、前記モデル生成部が生成した前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成部とを備える、勤務表作成装置である。
【0018】
本発明の第2の観点は、第1の観点の勤務表作成装置であって、前記勤務チーム案の前記チーム案評価値を算出する評価値算出部をさらに備え、前記評価値算出部は、前記チーム案評価値を、特定の勤務時間帯における前記スタッフの必要人数、前記スタッフの熟練度、及び/又は、特定の前記スタッフの組み合わせの可否に基づいて算出する。
【0019】
本発明の第3の観点は、第2の観点の勤務表作成装置であって、前記スタッフのそれぞれの前記熟練度を記憶する熟練度記憶部と、所定の期間における前記勤務表の各シフト区分における前記チーム案評価値のばらつきを算出する評価値ばらつき算出部とをさらに備え、前記評価値算出部は、前記勤務チーム案に属するスタッフの前記熟練度の平均値及び/又は合計値に基づいて前記チーム案評価値を算出し、前記モデル生成部は、前記ばらつきも前記教師データとして用いる。
【0020】
本発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の勤務表作成装置であって、前記勤務表作成部が出力した前記勤務表に関して改善を提案する改善提案部をさらに備える。
【0021】
本発明の第5の観点は、第4の観点の勤務表作成装置であって、夜勤や休日出勤のように通常勤務とは異なる特別勤務の回数に関する指標である特別勤務指標を算出する特別勤務指標算出部をさらに備え、前記記憶部は、前記特別勤務指標の基準値である特別勤務指標基準値を記憶し、前記特別勤務指標算出部は、所定期間内において前記特別勤務に割り当てる必要な延べ人数である必要特別勤務人数と、複数の前記スタッフが所定期間内において前記特別勤務に対応可能な延べ人数である特別勤務可能上限回数とに基づいて、前記特別勤務指標を算出し、前記改善提案部は、前記特別勤務指標と前記特別勤務指標基準値とに基づいて前記勤務表に関して改善を提案する。
【0022】
本発明の第6の観点は、第5の観点の勤務表作成装置であって、前記改善提案部は、少なくとも一部の前記スタッフの前記特別勤務の回数の上限を増やすこと、少なくとも一部の前記スタッフが前記特別勤務に連続して割り当てられる回数である連続特別勤務回数の上限を増やすこと、又は、前記第1部署のスタッフとは異なる部署のスタッフの応援を要請すること、のいずれかを提案する。
【0023】
本発明の第7の観点は、第5又は第6の観点の勤務表作成装置であって、前記記憶部は、前記第1部署の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶し、前記第1部署とは異なる部署であって複数のスタッフを有する第2部署の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶するものであり、表示部に、前記第1部署及び前記第2部署の前記勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標を表示させる制御部をさらに備える。
【0024】
本発明の第8の観点は、第7の観点の勤務表作成装置であって、前記第1部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と、前記第2部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標とを比較する比較部をさらに備え、前記改善提案部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記第1部署と前記第2部署の前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標が平準化されるように前記勤務表の改善及び/又は異なる部署の間でのスタッフの異動を提案する。
【0025】
本発明の第9の観点は、第5から第8のいずれかの観点の勤務表作成装置であって、前記記憶部は、前記第1部署の過去の前記勤務表を、当該勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標と共に記憶するものであり、表示部に、過去の前記勤務表における前記チーム案評価値及び/又は前記特別勤務指標を時系列に沿って表示させる制御部をさらに備える。
【0026】
本発明の第10の観点は、第1から第9のいずれかの観点の勤務表作成装置であって、前記勤務表作成部が出力した前記勤務表を修正する修正部をさらに備え、前記修正部は、特定のスタッフの特定の期間における、特別勤務の回数の増減、日勤回数の増減、若しくは、公休の増減を修正し、特定のスタッフのリーダー回数の上限値若しくは下限値を修正し、特定のスタッフの特別勤務の回数の上限値若しくは下限値を修正し、又は、特定の日若しくは期間における、日勤人数若しくは夜勤人数の上限若しくは下限を修正する。
【0027】
本発明の第11の観点は、第10の観点の勤務表作成装置であって、前記修正部は、前記勤務表作成部が出力した前記勤務表の変更箇所数をコストとして設定した最適化問題を解くことにより、変更が最小限となる修正後の勤務表を出力する。
【0028】
本発明の第12の観点は、第1から第11のいずれかの観点の勤務表作成装置であって、前記勤務表作成部が出力した前記勤務表に対するフィードバックを受け付けるフィードバック受付部をさらに備え、前記記憶部は、前記勤務表と、当該勤務表に対する前記フィードバックとを関連付けて記憶し、前記フィードバック受付部は、前記フィードバックとして、前記勤務表の修正に要した時間、前記勤務表の変更箇所数、及び/又は、前記スタッフの前記勤務表への満足度を受け付ける。
【0029】
本発明の第13の観点は、複数のスタッフの勤務表を作成する勤務表作成装置を用いた勤務表作成方法であって、前記勤務表作成装置は、複数の前記スタッフからなる勤務チーム案と、当該勤務チーム案の評価であるチーム案評価値とを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記勤務チーム案と前記チーム案評価値とを教師データとして用いるものであり、入力を複数の前記スタッフからなる入力勤務チーム案とし、出力を前記入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、前記モデル生成部が生成した前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成部とを備え、前記モデル生成部が、前記判定モデルを機械学習により生成するモデル生成ステップと、前記勤務表作成部が、前記判定モデルが出力した前記評価出力値に基づいて前記勤務表を作成する勤務表作成ステップとを含む、勤務表作成方法である。
【0030】
本発明の第14の観点は、コンピュータに、第13の観点の勤務表作成方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の各観点によれば、師長が各スタッフの勤務希望をふまえてゼロから勤務表を作成する代わりに、勤務表作成装置等が、あらかじめ問題ないと判断された教師データに基づいて勤務表の原案を提案することが可能となる。勤務表を作成する師長等としては、ゼロから勤務表全体を作成する手間と比較すると、複数のスタッフからなる勤務チームの原案を修正する方がはるかに楽である。そのため、師長等の勤務表作成の負担を軽減することが可能となる。
【0032】
また、本発明の第2の観点によれば、機械学習させる教師データに、勤務チーム案として要求されるべき項目を適切に反映させることが可能となる。
【0033】
さらに、本発明の第3の観点によれば、各シフト区分における看護の質を上げることと、新人を育成することのバランスがとれた勤務表の作成が容易となる。
【0034】
また、本発明の第4の観点によれば、勤務表の改善点について見逃すことが減るため、満足度の高い勤務表を作成することがさらに容易となる。
【0035】
さらに、本発明の第5の観点によれば、特に不満につながりやすい夜勤や休日出勤のような特別勤務に関する指標を数値化し、スタッフに勤務表を共有する前に不満につながるおそれを従来以上に客観的に推測することが可能となる。
【0036】
さらに、本発明の第6の観点によれば、夜勤や休日出勤の観点から不満につながるおそれが高い場合に、勤務表を具体的にどのように改善するか判断することが容易となる。
【0037】
さらに、本発明の第7の観点によれば、複数の病棟のように複数の部署における勤務表の特性値を比較することが容易となる。
【0038】
さらに、本発明の第8の観点によれば、複数の部署における勤務表の特性値を平準化する方向で勤務表や部署の配置転換まで検討することが容易となる。このように、スタッフの部署間の異動まで検討することは通常は困難であるため、師長や現場スタッフの負担軽減が期待できる。
【0039】
さらに、本発明の第9の観点によれば、単一の部署の勤務表の特性を経時変化の観点から評価することが可能となる。このため、適切な勤務表の作成やスタッフの配置を検討することがさらに容易となる。
【0040】
また、本発明の第10の観点によれば、勤務表作成部が出力した勤務表を修正して満足度の高い勤務表を作成することが容易となる。
【0041】
さらに、本発明の第11の観点によれば、一旦作成した勤務表の修正に要する時間を削減し、師長等の負担を軽減することがさらに容易となる。
【0042】
また、本発明の第12の観点によれば、勤務表作成装置が作成した勤務表の修正に要した時間やスタッフの勤務表への満足度をフィードバックとして受け付けて改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本実施例の勤務表作成装置1の概要を示すブロック図である。
図2】本実施例の勤務表作成装置1が、勤務表を作成するフローの一例を示す図である。
図3】スキルレベルの異なる複数のスタッフからランダムに選出した勤務チーム案をスキルレベルの観点から評価した一例を示す図である。
図4】勤務表作成装置が作成した勤務表の一例を示す図である。
図5】勤務表を修正する際のインターフェイスの一例を示す図である。
図6】勤務表を修正する際のインターフェイスの別の例を示す図である。
図7】勤務表を修正する際のインターフェイスのさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。
【実施例0045】
図1は、本実施例にかかる勤務表作成装置1の概要を示すブロック図である。勤務表作成装置1は、記憶部3と、評価値算出部5と、モデル生成部7と、勤務表作成部9と、改善提案部11と、夜勤指標算出部13と、修正部15と、フィードバック部17と、表示部19と、制御部21と、比較部23とを備える。
【0046】
勤務表作成装置1は、複数のスタッフの勤務表を作成する。記憶部3は、複数のスタッフからなる勤務チーム案と、その評価であるチーム案評価値とを記憶する。また、後述する夜勤指標の基準値である夜勤指標基準値を記憶する。
【0047】
評価値算出部5は、特定の勤務チーム案のチーム案評価値を、特定の勤務時間帯におけるスタッフの必要人数、スタッフの熟練度、及び/又は、特定のスタッフの組み合わせの可否に基づいて算出する。
【0048】
ここで、チーム案評価値を決めるための評価値の一部又は全部は、師長等が、例えば、ワーク・ライフ・バランスの観点、看護の質を担保する観点、各スタッフの個別の事情、組織内異動に伴う人の動き、病院経営や法規の観点、及び/又は、日本看護協会等のガイドラインに基づいて評価して入力するものであってもよい。
【0049】
勤務チーム案とそのチーム案評価値は、記憶部3が関連付けて記憶する。
【0050】
モデル生成部7は、記憶部に記憶された勤務チーム案とそのチーム案評価値とを教師データとして用いる。また、モデル生成部7は、入力を入力勤務チーム案とし、出力をその入力勤務チーム案の評価値である評価出力値とするチーム判定モデルを機械学習により生成する。
【0051】
例えば、30人の勤務スタッフがいる病棟の場合、5人の勤務チームを選ぶ組み合わせは、14万通り以上にも上る。この全てを師長等が比較検討することは現実的ではない。しかし、例えば数十~数百通り程度の教師データを与えて学習済みの判定モデルを用いることにより、勤務表に組み込む勤務チームを現実的に出力することが可能となる。
【0052】
勤務表作成部9は、モデル生成部が生成したチーム判定モデルが出力した評価出力値に基づいて、評価の高い勤務チームを用いた勤務表を作成する。改善提案部11は、勤務表作成部が出力した勤務表に関して改善を提案する。
【0053】
夜勤指標算出部13は、夜勤回数に関する指標である夜勤指標を算出する。具体的には、所定期間内において夜勤が必要な延べ人数である必要夜勤人数と、複数のスタッフが所定期間内において夜勤に対応可能な延べ人数である夜勤可能上限回数とに基づいて、夜勤指標を算出する。
【0054】
修正部15は、勤務表作成部9が出力した勤務表を修正する。フィードバック部17は、勤務表作成部9が出力した勤務表に対するフィードバックを受け付ける。具体的には、フィードバックとして、勤務表の修正に要した時間、及び/又は、スタッフの勤務表への満足度を入力として受け付ける。修正部15は、フィードバック部17が取得したフィードバックを勤務表の修正に反映する。例えば、修正に要した時間が所定の時間以上だった場合、当該勤務表に使用された勤務チームの評価値を下げる。また、スタッフの勤務表への満足度が高かった場合、当該勤務表に使用された勤務チームの評価値を上げる。
【0055】
以下、図2及び図3を参照して、判定モデルによる勤務チームに関する機械学習と、勤務表の作成フローについて述べる。図2は、本実施例の勤務表作成装置1が、勤務表を作成するフローの一例を示す図である。図3は、スキルレベルの異なる複数のスタッフからランダムに選出した勤務チーム案をスキルレベルの観点から評価した一例を示す図である。
【0056】
まず、ある部署に所属するスキルレベルの異なる複数のスタッフがレベルごとにグループ化される(ステップS01)。図3では、12名の看護師が4つのスキルレベルL1~L4にグループ化されてスキルレベルが高いL1からスキルレベルが低いL4まで順に配列されている。
【0057】
続いて、勤務に必要な人数のスタッフがランダムに組み合わされて勤務チーム案として抽出される(ステップS02)。図3では、5名の勤務が必要であることを前提とし、5名の勤務チーム案がランダムに13通りだけ抽出されている。
【0058】
続いて、抽出された勤務チーム案のそれぞれに対して、師長が評価値を入力する(ステップS03)。図3では、スキルレベルが過剰な勤務チーム案に★(3点)、適切な勤務チーム案に○(2点)、やや不足する勤務チーム案に△(1点)、不足するチーム案に×(0点)を入力する。ここで、かっこ書きしたのは、勤務チーム案それぞれの評価値e(m)である。
【0059】
さらに、適当なモデル関数f(m)を、損失関数を最小化するように学習する(ステップS04)。例えば、モデル関数として、f(m)= a0 + n1a1L1 + n2a2L2 + n3a3L3 + n4a4L4を用いるとする。ここで、n1~n4は、それぞれ、スキルレベルがL1~L4の人が勤務チーム案に何人いるかを表す。a0~a4は、決定係数である。L1~L4は、説明変数であり、例えば、L1=4, L2=3, L3=2, L4=1とする。損失関数として、例えば、平均二乗誤差(MSE)を用いる場合、(1)式を最小化するようにf(m)を学習する。
【0060】
【数1】
【0061】
与えられた13通りの勤務チーム案と各勤務チーム案に対応する評価値を教師データとして学習して最適化された決定係数a0~a4を有するモデル関数f(m)は、新たな勤務チーム案としてn1~n4の入力に対して、当該勤務チーム案の評価値を出力する。
【0062】
教師データとして与えられる入力が増えるほど、師長等の感覚に近い勤務チーム案の評価値を出力するモデル関数f(m)が生成されることとなる。
【0063】
続いて、勤務表生成部9は、機械学習によって得られたモデル関数f(m)に対して、ランダムに生成された勤務チーム案を多数入力し、それぞれの勤務チーム案の評価値を出力させる(ステップS05)。勤務表生成部9は、モデル関数が出力した評価値が高い勤務チーム案を優先的に用いて、勤務表を生成する(ステップS06)。
【0064】
以下、図4を参照して、改善提案部11による改善提案についてさらに述べる。図4は、勤務表の一例を示す図である。勤務表には、スタッフごとに、名前、スキル、所属チーム、師長・リーダー・一般の区別、来月の何日にどのような勤務形態で勤務できるか、夜勤の下限及び上限が示されている。勤務表の変更できないマスは、濃い網掛けで表示されている。
【0065】
改善提案部11は、夜勤指標算出部13が算出した夜勤指標と夜勤指標基準値とに基づいて勤務表に関して改善を提案する(ステップS07)。
【0066】
例えば、上記の夜勤指標を夜勤可能上限回数/必要夜勤人数で定義する。この場合、毎日の夜勤に必要な夜勤人数が6名であれば、必要夜勤人数は、6名/日×31日/月=186名/月となる。これに対して、夜勤可能上限回数が、例えば図4に示されるように、191名/月であるとすると、夜勤指標算出部は、191/186=1.02と夜勤指標を算出する。
【0067】
ここで、経験上、夜勤指標の値が1.05を下回る場合は、マージンがかなり逼迫しており、夜勤が全て組めないおそれが大である。また、夜勤指標の値が1.05以上1.08未満である場合は、マージンがやや逼迫しており、一部に連続夜勤が発生することが予測される。また、夜勤指標が1.08以上である場合は、無理なく勤務表を組むことが可能である。さらに、夜勤指標が1.1以上であれば、スケジューリングに余裕があるといえる。ここでいう1.05、1.08、1.1といった値が、夜勤指標基準値と称する夜勤指標の基準値である。
【0068】
改善提案部11は、例えば、夜勤指標算出部13が算出した夜勤指標が1.05を下回っている場合に、その勤務表について改善を提案する。具体的には、少なくとも一部のスタッフの夜勤回数の上限を増やすこと、少なくとも一部の前記スタッフの連続夜勤回数の上限を増やすこと、又は、今回の勤務表の対象であるスタッフとは異なるスタッフとして、例えば他病棟からの応援を要請することのいずれかやそれらの組み合わせを提案する。
【0069】
ここで、他病棟からの応援要請について詳しく述べる。記憶部は、第1病棟の勤務表を、当該勤務表におけるチーム案評価値及び/又は夜勤指標と共に記憶する。また、記憶部は、第1病棟とは異なる病棟であって複数のスタッフを有する第2病棟の勤務表を、当該勤務表におけるチーム案評価値及び/又は夜勤指標と共に記憶する。さらに、制御部は、表示部に、第1病棟及び第2病棟の勤務表におけるチーム案評価値及び/又は夜勤指標を表示させる。
【0070】
これにより、複数の病棟の勤務表の負担を把握することが容易となる。そのため、第1病棟と第2病棟を比較して、病棟の負担が平準化するように病棟間の応援を要請することが容易となる。
【0071】
さらに、比較部が、第1病棟のチーム案評価値及び/又は夜勤指標と、第2病棟のチーム案評価値及び/又は夜勤指標とを比較する。さらに、改善提案部が、比較部の比較結果に基づいて、第1部署と第2部署のチーム案評価値及び/又は特別勤務指標が平準化されるように勤務表の改善及び/又は異なる部署の間でのスタッフの異動を提案する。
【0072】
このため、複数の病棟の勤務表の負担をさらに客観的に把握することが容易となる。したがって、第1病棟と第2病棟を比較して、病棟の負担が平準化するように病棟間の応援を要請することがさらに容易となる。
【0073】
上記では、夜勤について特に記載したが、他にも休日勤務のように通常勤務とは異なり、スタッフの負担が増大する特別勤務について、同様の運用を行うことが可能である。
【0074】
続いて、図5を参照して、修正部15による勤務表の修正について述べる。図5は、勤務表を修正する際のインターフェイスの一例を示す図である。図5に示されている勤務表のうち、特定のスタッフ(例えば上から5番目のスタッフ)の特定の期間(例えば第7日目~第19日目)の勤務形態を修正したいとする。
【0075】
このとき、勤務表作成装置1の使用者は、勤務表の修正したい期間として、上から5番目のスタッフの第7日目~第19日目をマウスを用いて指定する。すると、修正部15は、ウィンドウ画面を表示させる。ウィンドウ画面には、例えば、「夜勤の集中を減らす」「夜勤を増やす」「日勤を減らす」「日勤を増やす」「公休を増やす」等の選択肢が表示される。
【0076】
使用者は、表示された選択肢のうち1つを選択する。例えば、「夜勤の集中を減らす」を選択した場合、修正部15は、勤務表の他の箇所の変更が最小限となるように修正を実行して、修正後の勤務表を画面に表示させる。
【0077】
具体的には、修正部15は、作成された勤務表を初期値として与え、勤務表の変更箇所数をコストとして設定した最適化問題を解くことにより、変更が最小限となる修正後の勤務表を出力する(ステップS08)。
【0078】
また、図6を参照して、修正部15による勤務表の修正の別の例について説明する。図6は、勤務表を修正する際のインターフェイスの別の例を示す図である。図6に示されている勤務表のうち、特定のスタッフ(例えば上から4番目のスタッフ)の夜勤回数の上限値を7回から6回に減らしたいとする。
【0079】
このとき、勤務表作成装置1の使用者は、勤務表の上から4番目のスタッフの横の欄をマウスで指定する。すると、修正部15は、ウィンドウ画面を表示させる。ウィンドウ画面には、例えば、「夜勤制限の変更」「リーダー回数制限の変更」等の選択肢が表示される。
【0080】
使用者は、表示された選択肢のうち1つを選択する。例えば、「夜勤制限の変更」を選択した場合、次に修正ウィンドウが表示される。修正ウィンドウには、現在の夜勤回数の下限値及び上限値が入力欄に表示されている。使用者は、修正を希望する夜勤回数の上限値について、修正後の数字を入力する。すると、修正部15は、上記と同様に、勤務表の他の箇所の変更が最小限となるように修正を実行して、修正後の勤務表を画面に表示させる(ステップS08の別の例)。
【0081】
続いて、図7を参照して、正部15による勤務表の修正のさらに別の例について説明する。図7は、勤務表を修正する際のインターフェイスのさらに別の例を示す図である。図7に示されている勤務表のうち、特定の日付(例えば第14日目)の日勤人数を修正したいとする。
【0082】
このとき、勤務表作成装置1の使用者は、第14日目の縦の欄をマウスで指定する。すると、修正部15は、ウィンドウ画面を表示させる。ウィンドウ画面には、例えば、「夜勤人数の変更」「日勤人数の変更」等の選択肢が表示される。
【0083】
使用者は、表示された選択肢のうち1つを選択する。例えば、「日勤人数の変更」を選択した場合、次に修正ウィンドウが表示される。修正ウィンドウには、現在の夜勤回数の下限値及び上限値が入力欄に表示されている。使用者は、修正を希望する夜勤回数の上限値について、修正後の数字を入力する。すると、修正部15は、上記と同様に、勤務表の他の箇所の変更が最小限となるように修正を実行して、修正後の勤務表を画面に表示させる(ステップS08のさらに別の例)。
【0084】
以上のように、修正部15は、作成された勤務表の一部について、特定の期間の勤務形態、特定のスタッフの夜勤回数、特定の日の勤務スタッフの人数、その他の観点から修正する。勤務表作成部9は、できるだけその他の箇所の変更が最小限となるように反映した勤務表を作成する。
【実施例0085】
続いて、本実施例では、看護の質と育成の適切なバランスに資するアルゴリズムについて述べる。
【0086】
本実施例に係る勤務表作成装置は、実施例1の勤務表作成装置の構成に加えて、スタッフのそれぞれの熟練度(スキルスコア)を記憶する熟練度記憶部と、所定の期間における勤務表の各シフト区分におけるチーム案評価値のばらつきを算出する評価値ばらつき算出部とをさらに備える。ここで、シフト区分とは、夜勤、日勤、ロング等の勤務時間帯や勤務形態を意味する。
【0087】
また、本実施例における評価値算出部は、勤務チーム案に属するスタッフの熟練度の平均値及び/又は合計値に基づいてチーム案評価値を算出する。さらに、本実施例におけるモデル生成部は、チーム案評価値のばらつきも教師データとして用いる。
【0088】
そもそも看護の質を上げるためには、よりスキルレベルの高い看護師を多くアサインすることが望ましい。特に、夜勤時間帯にはスキルレベルの高い看護師のアサインが必要とされる。
【0089】
一方で、スキルレベルの低い看護師の育成を図るためには、夜勤などの難度の高いシフトに一定回数アサインし、経験を着実に積ませることが必要とされる。
【0090】
両者のバランスを考慮するために、毎日のシフトにおいて、スキルレベルの高い看護師と、スキルレベルの低い看護師を、できる限り同じ数だけアサインすることが望ましい。この目的を達成するため、勤務表全体のバランスを評価する指標を以下の通り定義する。
【0091】
まず、各々のスキルレベルを例えば表1に示すようにスキルスコアとして定量化する。スキルスコアは、よりスキルレベルの高い看護師に大きなスコアを与えるように定義した。
【0092】
【表1】
【0093】
次に、特定のシフト(例: 2月1日の夜勤)の評価値SSd,rを、アサインされたメンバーのスキルスコアの相加平均によって求める。
【0094】
【数2】
【0095】
なお、上記では評価値をメンバーのスキルスコアの相加平均を算出することで求めているが、この評価値として相乗平均などの任意の統計値を用いてもよい。また、評価値をアサインされたメンバーのスキルスコアの合計値等としてもよい。さらに、評価値を上記の平均値及び/又は合計値に基づいて算出する別の値としてもよい。
【0096】
最後に、勤務表作成期間(典型的には月初から月末までの1ヶ月)における特定シフトcの質を示す評価値Ecを、各日付の評価値の標準偏差によって求める。
【0097】
【数3】
【0098】
なお、上記では標準偏差により求めているが、不偏標本分散などのばらつきを示す任意の統計値を用いてもよい。
【0099】
こうして求められた評価値Ecが小さいほどバランスに関する質が良い勤務表といえる。この評価値を、組み合わせ最適化問題における目標関数に組み込むことで、勤務表の質を向上させることができる。そのため、看護の質と育成のバランスがよい勤務表を実現する可能性が高いと期待できる。
【0100】
また、こうして求められた評価値を指標としてユーザーインタフェース上に表示させることにより、看護病棟の師長や管理師長などは、看護の質の向上にこれらの指標を活用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1;勤務表作成装置、3;記憶部、5;評価値算出部、7;モデル生成部、9;勤務表作成部、11;改善提案部、13;夜勤指標算出部、15;修正部、17;フィードバック受付部、19;表示部、21;制御部、23;比較部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7