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特開2023-124841検査装置、検査方法、及び検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124841
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及び検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20230830BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230830BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/88 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026728
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022028509
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 公紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晨悟
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA44
2G051AB07
2G051AB11
2G051CA04
2G051EA12
2G051EA14
2G051EB01
(57)【要約】
【課題】マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減した検査技術を実現する。
【解決手段】プロセッサ(12)は、画像集合(I)に属する各画像に対して、その画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行う個別判定処理(S12)と、画像集合(I)の部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する集合特定処理(S13)と、集合特定処理(S13)により特定された各部分集合に対して、その部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、その部分集合に属する各画像に対する個別判定処理(S12)の結果を参照して行う集合判定処理(S14)と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象領域を長手方向に移動しながら線状体を順次撮像することにより得られた複数の画像の集合である画像集合に基づいて、該線状体に形成されたマークの状態を検査する検査装置であって、
少なくとも一つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記画像集合に属する各画像に対して、該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行う個別判定処理と、
前記画像集合の部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する集合特定処理と、
前記集合特定処理により特定された各部分集合に対して、該部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、該部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果を参照して行う集合判定処理と、を実行する、
ことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記個別判定処理の結果は、良クラス又は不良クラスの何れかであり、
前記プロセッサは、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果において、良クラスの個数が不良クラスの個数よりも多い場合に、良クラスを前記集合判定処理の結果とし、そうでない場合に、不良クラスを前記集合判定処理の結果とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記個別判定処理の結果は、良クラス又は不良クラスの何れかであり、
前記プロセッサは、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果において、良クラスの割合が予め定められた閾値を超える場合に、良クラスを前記集合判定処理の結果とし、そうでな場合に、不良クラスを前記集合判定処理の結果とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、機械学習により生成されたモデルであって、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の最終結果であるクラスの列を入力とし、前記部分集合に対する前記集合判定処理の結果を出力するモデルを用いて、前記集合判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、機械学習により生成されたモデルであって、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の中間結果である特徴量の列を入力とし、前記部分集合に対する前記集合判定処理の結果を出力するモデルを用いて、前記集合判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記画像集合に属する各画像に付与されたメタデータを参照することによって、前記集合特定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記メタデータは、該メタデータが付与された画像が撮像された日時を示す情報、又は、同一の線状体を撮像することにより得られた複数の画像の中で、該メタデータが付与された画像が何番目に撮像された画像であるかを示す情報である、
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、機械学習によって生成されたモデルを用いて前記個別判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記線状体の種別を判定する種別判定処理を更に実行し、前記種別判定処理にて判定された種別に対応するモデルを用いて、前記個別判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記個別判定処理において、前記プロセッサは、前記画像集合に属する各画像に対して、(1)該画像において各マークを含む領域を特定する領域特定処理と、(2)前記領域特定処理にて特定された、各マークを含む領域を参照して該マークの良否を判定する良否判定処理と、(3)前記良否判定処理にて判定された、各マークの良否を参照して該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行うクラス判定処理と、を実行する、
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、機械学習によって生成された単一のモデルを用いて前記良否判定処理を実行する、
ことを特徴とする請求項9に記載の検査装置。
【請求項12】
撮像対象領域を長手方向に移動しながら線状体を順次撮像することにより得られた複数の画像の集合である画像集合に基づいて、該線状体に形成されたマークの状態を検査する検査方法であって、
少なくとも一つのプロセッサが、前記画像集合に属する各画像に対して、該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行う個別判定処理と、
前記プロセッサが、前記画像集合の部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する集合特定処理と、
前記プロセッサが、前記集合特定処理により特定された各部分集合に対して、該部分集合の属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、該部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果を参照して行う集合判定処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする検査方法。
【請求項13】
前記プロセッサを備えたコンピュータを請求項1~7の何れか一項に記載の検査装置として動作させるための検査プログラムであって、前記プロセッサに前記各処理を実行させ検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状体に形成されたマークの状態を検査する検査装置、検査方法、及び検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルなどの線状体では、その使い勝手を良くするために、その表面に各種マークを印刷することがある。このようなマークは、インクの欠乏などによって、かすれたり、印刷できなかったりすることがある。このため、線状体の製造メーカでは、線状体に印刷されたマークの状態を、出荷前に検査する必要がある。このような検査方法を開示した文献としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04-312181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多様なマークの状態を精度良く判定するには、機械学習により生成されたモデルを用いた画像検査を行うことが好ましい。しかしながら、機械学習により生成されたモデルを用いても、以下のような問題が生じ得る。すなわち、製造ラインを流れている線状体を順次撮像すると、線状体の振動や捻転などによって、一時的にマークがカメラと正対しなくなることがある。この場合、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定されることになる。このような誤判定は、例えば、歩留まりを悪化させる要因になる。マークの状態をルールベースのアルゴリズムによって判定するとしても、このような問題は生じ得る。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減した検査技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様1に係る検査装置は、撮像対象領域を長手方向に移動しながら線状体を順次撮像することにより得られた複数の画像の集合である画像集合に基づいて、該線状体に形成されたマークの状態を検査する検査装置であって、少なくとも一つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、前記画像集合に属する各画像に対して、該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行う個別判定処理と、前記画像集合の部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する集合特定処理と、前記集合特定処理により特定された各部分集合に対して、該部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、該部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果を参照して行う集合判定処理と、を実行する。
【0007】
上記の構成によれば、線状体の捻転や振動などにより個別判定処理の結果に不良クラス(マークの状態が異常であることを示す)が含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理の結果を良クラス(マークが正常であることを示す)とすることができる。これにより、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減することができる。
【0008】
本発明の態様2に係る検査装置においては、態様1の構成に加えて、前記個別判定処理の結果は、良クラス又は不良クラスの何れかであり、前記プロセッサは、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果において、良クラスの個数が不良クラスの個数よりも多い場合に、良クラスを前記集合判定処理の結果とし、そうでない場合に、不良クラスを前記集合判定処理の結果とする、という構成が採用されている。
【0009】
上記の構成によれば、個別判定処理の結果に不良クラス(マークの状態が異常であることを示す)が含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理の結果を良クラスとすることができる。しかも、上記の構成によれば、高速に動作する簡単なプログラム(プログラミングにより生成されたアルゴリズム)によって、集合判定処理を実現することができる。
【0010】
本発明の態様3に係る検査装置においては、態様1の構成に加えて、前記個別判定処理の結果は、良クラス又は不良クラスの何れかであり、前記プロセッサは、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果において、良クラスの割合が予め定められた閾値を超える場合に、良クラスを前記集合判定処理の結果とし、そうでな場合に、不良クラスを前記集合判定処理の結果とする、という構成が採用されている。
【0011】
上記の構成によれば、個別判定処理の結果に不良クラス(マークの状態が異常であることを示す)が含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理の結果を良クラスとすることができる。しかも、上記の構成によれば、高速に動作する簡単なプログラム(プログラミングにより生成されたアルゴリズム)によって、集合判定処理を実現することができる。
【0012】
本発明の態様4に係る検査装置においては、態様1の構成に加えて、前記プロセッサは、機械学習により生成されたモデルであって、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の最終結果であるクラスの列を入力とし、前記部分集合に対する前記集合判定処理の結果を出力するモデルを用いて、前記集合判定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0013】
上記の構成によれば、個別判定処理の結果に不良クラス(マークの状態が異常であることを示す)が含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理の結果を良クラスとすることができる。しかも、上記の構成によれば、機械学習により生成された、柔軟で判定精度の高いモデルを用いて、集合判定処理を実現することができる。
【0014】
本発明の態様5に係る検査装置においては、態様1の構成に加えて、前記プロセッサは、機械学習により生成されたモデルであって、前記部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の中間結果である特徴量の列を入力とし、前記部分集合に対する前記集合判定処理の結果を出力するモデルを用いて、前記集合判定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0015】
上記の構成によれば、個別判定処理の結果に不良クラス(マークの状態が異常であることを示す)が含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理の結果を良クラスとすることができる。しかも、上記の構成によれば、機械学習により生成された、柔軟で判定精度の高いモデルを用いて、集合判定処理を実現することができる。
【0016】
本発明の態様6に係る検査装置においては、態様1~5の何れかの構成に加えて、前記プロセッサは、前記画像集合に属する各画像に付与されたメタデータを参照することによって、前記集合特定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0017】
上記の構成によれば、集合特定処理を容易に実現することができる。
【0018】
本発明の態様7に係る検査装置においては、態様6の構成に加えて、前記メタデータは、該メタデータが付与された画像が撮像された日時を示す情報、又は、同一の線状体を撮像することにより得られた複数の画像の中で、該メタデータが付与された画像が何番目に撮像された画像であるかを示す情報である、という構成が採用されている。
【0019】
上記の構成によれば、撮像領域が近接する画像を、撮像された日時が近い画像として、或いは、撮像された順番が近い画像として、容易に特定することができる。
【0020】
本発明の態様8に係る検査装置においては、態様1~7の何れかの構成に加えて、前記プロセッサは、機械学習によって生成されたモデルを用いて前記個別判定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0021】
上記の構成によれば、人が行う場合に匹敵する精度で個別判定処理を行うことができる。
【0022】
本発明の態様9に係る検査装置においては、態様8の構成に加えて、前記プロセッサは、前記線状体の種別を判定する種別判定処理を更に実行し、前記種別判定処理にて判定された種別に対応するモデルを用いて、前記個別判定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0023】
上記の構成によれば、個別判定処理を精度良く実行することができる。また、上記の構成によれば、新たな種別の線状体が検査対象に追加されたときに、システムの拡張が容易である。
【0024】
本発明の態様10に係る検査装置においては、態様1~7の何れかの構成に加えて、前記個別判定処理において、前記プロセッサは、前記画像集合に属する各画像に対して、(1)該画像において各マークを含む領域を特定する領域特定処理と、(2)前記領域特定処理にて特定された、各マークを含む領域の位置を参照して該マークの良否を判定する良否判定処理と、(3)前記良否判定処理にて判定された、各マークの良否を参照して該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行うクラス判定処理と、を実行する、という構成が採用されている。
【0025】
上記の構成によれば、個別判定処理を精度良く実行することができる。また、上記の構成によれば、検査対象物におけるマークの配置が検査対象物の種別によって大きく異なる場合であっても、異なる検査対象物に対する個別判定処理を共通のモデル又はアルゴリズムを用いて実施することができる。
【0026】
本発明の態様11に係る検査装置においては、態様9の構成に加えて、前記プロセッサは、機械学習によって生成された単一のモデルを用いて前記良否判定処理を実行する、という構成が採用されている。
【0027】
上記の構成によれば、人が行う場合に匹敵する精度で個別判定処理を行うことができる。
【0028】
本発明の態様12に係る検査方法は、撮像対象領域を長手方向に移動しながら線状体を順次撮像することにより得られた複数の画像の集合である画像集合に基づいて、該線状体に形成されたマークの状態を検査する検査方法であって、少なくとも一つのプロセッサが、前記画像集合に属する各画像に対して、該画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、機械学習によって生成されたモデルを用いて行う個別判定処理と、前記プロセッサが、前記画像集合の部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する集合特定処理と、前記プロセッサが、前記特定処理により特定された各部分集合に対して、該部分集合の属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を、該部分集合に属する各画像に対する前記個別判定処理の結果を参照して行う集合判定処理と、を含んでいる。
【0029】
上記の構成によれば、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減することができる。
【0030】
本発明の態様13に係る検査プログラムは、前記プロセッサを備えたコンピュータを態様1~11の何れかの検査装置として動作させるための検査プログラムであって、前記プロセッサに前記各処理を実行させ検査プログラムである。
【0031】
上記の構成によれば、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様によれば、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示す検査装置に参照される画像の具体例を示す図である。
図3図1に示す検査装置により実行される検査方法の流れを示すフロー図である。
図4図3に示す検査方法に含まれる集合特定処理の具体例を示すフロー図である。
図5図3に示す種別判定処理における前処理が実施される前後の画像の具体例を示す図である。
図6】(a)は、図3に示す種別判定処理の変形例を示すフロー図である。(b)は、(a)に示す領域特定処理の具体例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(検査装置の構成)
本発明の一実施形態に係る検査装置1の構成について、図1を参照して説明する。検査装置1は、線状体に形成されたマークの状態を検査するための装置である。
【0035】
検査対象となる線状体としては、例えば、光信号を伝送する光ファイバ、電気信号を伝送する銅線、又は、これらを束ねて被覆で覆ったケーブルなどが挙げられる。検査対象がケーブルである場合、マークは、心線の表面に形成されていてもよいし、被覆の表面に形成されていてもよい。本実施形態においては、検査対象として、心線の表面にマークが形成された、1心ケーブル、2心ケーブル、及び3心ケーブルを想定する。なお、マークの形成方法は、特に限定されず、印刷であってもよいし、刻印であってもよいし、シール貼付であってもよい。
【0036】
また、検査装置1による検査は、検査対象となる線状体を、撮像対象領域を長手方向に移動しながら順次撮像することにより得られた複数の画像からなる画像集合Iに基づいて行われる。本実施形態において、画像集合Iは、スクリーニング検査により不良が疑われたマークを被写体として含む複数の画像により構成されている。なお、撮像に用いるカメラは、特に限定されず、CCD(Charge Coupled Device)カメラであってもよいし、COMS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラであってもよいし、ラインカメラであってもよい。
【0037】
検査装置1は、図1に示すように、メモリ11と、プロセッサ12と、ストレージ13と、を備えている。メモリ11、プロセッサ12、及びストレージ13は、不図示のバスを介して互いに接続されている。このバスには、更に、不図示の入出力インタフェースが接続されていてもよい。この入出力インタフェースは、例えば、外部装置(例えば、カメラ)から検査装置1に画像を入力するため、或いは、検査装置1から外部装置(例えば、ディスプレイなど)に検査結果を出力するために利用される。
【0038】
メモリ11は、後述する検査方法S1を実施するための検査プログラムP1と、後述する検査方法S1で利用されるモデルM0~M3と、画像集合Iに属する画像とを、プロセッサ12が参照可能な状態に展開して記憶するための構成である。なお、本明細書において、「プログラム」とは、プログラミングにより生成されたアルゴリズムのことを指し、「モデル」とは、機械学習により生成されたアルゴリズムのことを指す。なお、メモリ11としては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)等を用いることができる。また、モデルM0~M3としては、例えば、CNN(Convolutional Neural Network)を用いることができる。
【0039】
プロセッサ12は、メモリ11に記憶された検査プログラムP1に従って、後述する検査方法S1を実行するための構成である。プロセッサ12としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、又はこれらの組み合わせ等を用いることができる。
【0040】
ストレージ13は、検査プログラムPと、モデルM0~M3と、画像集合Iとを格納(不揮発保存)するための構成である。また、ストレージ13には、画像集合Iに属する各画像のメタデータが、その画像と対応付けて格納されている。画像のメタデータとしては、例えば、撮像日時、画像番号、ライン番号などが挙げられる。ここで、撮像日時は、その画像が撮像された日時を示す。また、画像番号は、同一のケーブルを撮像することにより得られた複数の画像の中で、その画像が何番目に撮像された画像であるかを示す。また、ライン番号は、その画像に被写体として含まれるケーブルが製造された製造ラインを示す。また、ストレージ13には、プロセッサ12は、後述する検査方法S1を実行する際に、ストレージ13に格納された検査プログラムP1及びモデルM0~M3、並びに、ストレージ13に格納された画像集合Iに属する画像をメモリ11上に展開して参照する。なお、ストレージ13としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせ等を用いることができる。
【0041】
なお、ここでは、後述する検査方法S1を単一のコンピュータに設けられた単一のプロセッサ12が実行する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、後述する検査方法S1を単一のコンピュータに集中して設けられた、或いは、複数のコンピュータに分散して設けられた複数のプロセッサが共同して実行する構成を採用することも可能である。
【0042】
また、ここでは、モデルM0~M3を単一のコンピュータに設けられた単一のストレージ13に格納する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、モデルM0~M3を、単一のコンピュータに集中して設けられた、或いは、複数のコンピュータに分散して設けられた複数のストレージに分割して格納する構成を採用することも可能である。同様に、ここでは、画像集合Iを単一のコンピュータに設けられた単一のストレージ13に格納する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、画像集合Iを、単一のコンピュータに集中して設けられた、或いは、複数のコンピュータに分散して設けられた複数のストレージに分割して格納する構成を採用することも可能である。
【0043】
なお、プロセッサ12に後述する検査方法S1を実行させるための検査プログラムP1は、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録され得る。この記録媒体は、メモリ11であってもよいし、ストレージ13であってもよいし、その他の記録媒体であってもよい。例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路等が、その他の記録媒体として利用可能である。
【0044】
(画像の具体例)
画像集合Iに属する画像の具体例について、図2を参照して説明する。図2の(a)~(c)は、それぞれ、画像集合に属する画像の具体例を示す図である。
【0045】
図2の(a)は、検査対象である3心ケーブルCを被写体として含む画像の一例である。この3心ケーブルCを構成する3本の心線C1~C3の各々の表面には、その心線の長手方向に沿って引かれた線状マーク群Maが間欠的に形成されている。線状マーク群Maの代わりに、図2の(b)に示す円状マークMb、又は、図2の(c)に示す数字状マークMcが、3本の心線C1~C3の各々の表面に形成されていてもよい。
【0046】
図2の(b)は、検査対象である2心ケーブルCを被写体として含む画像の一例である。この2心ケーブルCを構成する2本の心線C1~C2の各々の表面には、円状マークMbが間欠的に形成されている。円状マークMbの代わりに、図2の(a)に示す線状マーク群Ma、又は、図2の(c)に示す数字状マークMcが、2本の心線C1~C2の各々の表面に形成されていてもよい。
【0047】
図2の(c)は、検査対象である1心ケーブルCを被写体として含む画像の一例である。この1心ケーブルを構成する1本の心線C1の表面には、数字状マークMcが間欠的に形成されている。数字状マークMcの代わりに、図2の(a)に示す線状マーク群Ma、又は、図2の(b)に示す円状マークMbが、1本の心線C1の表面に形成されていてもよい。
【0048】
(モデルの内容)
後述する検査方法S1を実施するために、プロセッサ12は、ストレージ13に格納されたモデルM0~M3を、メモリ11に展開して利用する。モデルM0~M3は、それぞれ、予め機械学習により生成されたモデルであり、その入出力は、以下の通りである。
【0049】
モデルM0は、ケーブルを被写体として含む画像を入力とし、そのケーブルの種類を示すクラスを出力するモデルである。本実施形態において、モデルM0から出力されるクラスは、(1)入力画像に被写体として含まれるケーブルが1心ケーブルであることを示す「1心」クラス、(2)入力画像に被写体として含まれるケーブルが2心ケーブルであることを示す「2心」クラス、又は、(3)入力画像に被写体として含まれるケーブルが3心ケーブルであることを示す「3心」クラスの何れかである。
【0050】
なお、4心ケーブルが検査対象に含まれる場合には、「4心」クラスをモデルM0の出力に加えればよいし、5心ケーブルが検査対象に含まれる場合には、「5心」クラスをモデルM0の出力に加えればよい。6心以上のケーブルが検査対象に含まれる場合ついても、同様のことが言える。
【0051】
モデルM1は、1心ケーブルを被写体として含む画像を入力とし、その1心ケーブルの表面に形成されたマークの状態を示すクラスを出力とするモデルであり、検査対象となるケーブルの種別が1心ケーブルである場合に利用される。本実施形態において、モデルM1から出力されるクラスは、(1)入力画像に被写体として含まれる1心ケーブルの表面に形成されたマークの状態が正常であることを示す「良」クラス、又は、(2)入力画像に被写体として含まれる1心ケーブルの表面に形成されたマークの状態が正常でないことを示す「不良」クラスの何れかである。
【0052】
なお、モデルM1は、3つ以上のクラスを出力可能に構成されていてもよい。例えば、「良」クラスを、マークの状態に応じて「良1」クラス、「良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM1を構成してもよい。或いは、「不良」クラスを、マークの状態に応じて「不良1」クラス、「不良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM1を構成してもよい。或いは、「不定」クラスのように、「良」クラスにも「不良」クラスにも属さないクラスを設け、そのようなクラスを出力するようにモデルM1を構成してもよい。
【0053】
モデルM2は、2心ケーブルを被写体として含む画像を入力とし、その2心ケーブルの表面に形成されたマークの状態を出力とするモデルであり、検査対象となるケーブルの種別が2心ケーブルである場合に利用される。本実施形態において、モデルM2から出力されるクラスは、(1)入力画像に被写体として含まれる2心ケーブルの表面に形成されたマークの状態が正常であることを示す「良」クラス、又は、(2)入力画像に被写体として含まれる2心ケーブルの表面に形成されたマークが正常でないことを示す「不良」クラスの何れかである。
【0054】
なお、モデルM2は、3つ以上のクラスを出力可能に構成されていてもよい。例えば、「良」クラスを、マークの状態に応じて「良1」クラス、「良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM2を構成してもよい。或いは、「不良」クラスを、マークの状態に応じて「不良1」クラス、「不良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM2を構成してもよい。或いは、「不定」クラスのように、「良」クラスにも「不良」クラスにも属さないクラスを設け、そのようなクラスを出力するようにモデルM2を構成してもよい。
【0055】
モデルM3は、3心ケーブルを被写体として含む画像を入力とし、その3心ケーブルの表面に形成されたマークの状態を出力とするモデルであり、検査対象となるケーブルの種別が3心ケーブルである場合に利用される。本実施形態において、モデルM3から出力されるクラスは、(1)入力画像に被写体として含まれる3心ケーブルの表面に形成されたマークの状態が正常であることを示す「良」クラス、又は、(2)入力画像に被写体として含まれる3心ケーブルの表面に形成されたマークが正常でないことを示す「不良」クラスの何れかである。
【0056】
なお、モデルM3は、3つ以上のクラスを出力可能に構成されていてもよい。例えば、「良」クラスを、マークの状態に応じて「良1」クラス、「良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM3を構成してもよい。或いは、「不良」クラスを、マークの状態に応じて「不良1」クラス、「不良2」クラス、・・・と更に分類し、これらのクラスを出力するようにモデルM3を構成してもよい。或いは、「不定」クラスのように、「良」クラスにも「不良」クラスにも属さないクラスを設け、そのようなクラスを出力するようにモデルM3を構成してもよい。
【0057】
なお、4心ケーブルが検査対象に含まれる場合には、4心ケーブルを被写体として含む画像を入力とするモデルを用意すればよいし、5心ケーブルが検査対象に含まれる場合には、5心ケーブルを被写体として含む画像を入力とするモデルを用意すればよい。6心以上のケーブルが検査対象に含まれる場合ついても、同様のことが言える。
【0058】
(検査方法の流れ)
検査装置1を用いた検査方法S1の流れについて、図3を参照して説明する。図3は、検査方法S1の流れを示すフロー図である。
【0059】
検査方法S1は、画像集合Iに基づいてケーブルに形成されたマークの状態を検査する方法である。検査方法S1は、図3に示すように、種別判定処理S11と、個別判定処理S12と、集合特定処理S13と、集合判定処理S14と、を含んでいる。なお、ここでは、個別判定処理S12を実行した後で集合判定処理S14を実行する構成について説明するが、集合判定処理S14を実行した後で個別判定処理S12を実行する構成を採用してもよいし、個別判定処理S12と集合判定処理S14とを同時並列的に実行する構成を採用してもよい。
【0060】
種別判定処理S11は、ケーブルの種別を判定する処理である。本実施形態において、プロセッサ12は、画像集合Iから選択された画像を上述したモデルM0に入力することによって、種別判定処理S11を実行する。なお、プロセッサ12は、モデルM0を用いてケーブルの種別を判定する代わりに、所定のプログラムに従ってケーブルの種別を判定してもよい。
【0061】
個別判定処理S12は、画像集合Iに属する各画像に対して、その画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行うための処理である。本実施形態において、プロセッサ12は、対象となる画像を種別判定処理S11の結果に応じたモデルに入力することによって、その画像に対する個別判定処理S12を実行する。ここで、種別判定処理S11の結果に応じたモデルとは、(1)種別判定処理S11の結果が「1心」クラスである場合には、モデルM1であり、(2)種別判定処理S11の結果が「2心」クラスである場合には、モデルM2であり、(3)種別判定処理S11の結果が「3心」クラスである場合には、モデルM3である。
【0062】
集合特定処理S13は、画像集合Iの部分集合のうち、撮像領域が近接する予め定められた枚数以上の画像からなる部分集合を特定する処理である。本実施形態において、プロセッサ12は、画像集合Iに属する各画像のメタデータを参照することによって、集合特定処理S13を実行する。集合特定処理S13の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0063】
集合判定処理S14は、集合特定処理S13により特定された各部分集合に対して、その部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークのクラス判定を行うための処理である。本実施形態において、プロセッサ12は、対象となる部分集合に属する各画像に対する個別判定処理S12の結果を参照することによって、集合判定処理S14を実行する。集合判定処理S14において参照する個別判定処理S12の結果は、個別判定処理S12の最終結果であるクラスであってもよいし、個別判定処理S12の中間結果である特徴量であってもよい。
【0064】
集合判定処理S14は、プログラム(プログラミングにより生成されたアルゴリズム)に従って実行してもよいし、モデル(機械学習により生成されたアルゴリズム)を用いて実行してもよい。集合判定処理S14の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0065】
具体例1:対象となる部分集合に属する各画像に対する個別判定処理S12の最終結果(クラス)において、「不良」クラスの個数が「良」クラスの個数を超えれば、集合判定処理S14の結果を「良」とし、そうでなければ、集合判定処理S14の結果を「不良」とするプログラムに従う。本具体例によれば、個別判定処理S12の結果に不良クラスが含まれても、その含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理S14の結果を良クラスとすることができる。また、集合判定処理S14を、高速に動作する簡単なプログラムにより実現することができる。
【0066】
具体例2:対象となる部分集合に属する各画像に対する個別判定処理S12の最終結果(クラス)において、「不良」クラスの割合が予め定められた閾値(例えば30%)を超えれば集合判定処理S14の結果を「不良」とし、そうでなければ集合判定処理S14の結果を「良」とするプログラムに従う。本具体例によれば、個別判定処理S12の結果に不良クラスが含まれても、その含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理S14の結果を良クラスとすることができる。また、集合判定処理S14を、高速に動作する簡単なプログラムにより実現することができる。
【0067】
具体例3:対象となる部分集合に属する各画像に対する個別判定処理S12の最終結果(クラス)の列を入力とし、その部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークの状態を示すクラスを出力とするモデルを用いる。この集合判定処理S14に用いるモデルとしては、MLP(Multilayer Perceptron)、CNN(Convolutional Neural Network)、又はLSTM(Long Short Term Memory)等が挙げられる。CNN又はLSTMを用いた場合、モデルに入力される列を構成する個別判定処理S12の最終結果(クラス)の順序も考慮した判定を行うことができる。本具体例によれば、個別判定処理S12の結果に不良クラスが含まれても、その含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理S14の結果を良クラスとすることができる。また、集合判定処理S14を、柔軟で判定精度の高いモデルを用いて実現することができる。
【0068】
具体例4:対象となる部分集合に属する各画像に対する個別判定処理S12の中間結果(特徴量)の列を入力とし、その部分集合に属する各画像に被写体として含まれるマークの状態を示すクラスを出力とするモデルを用いる。この集合判定処理S14に用いるモデルとしては、MLP、CNN、又はLSTM等が挙げられる。CNN又はLSTMを用いた場合、モデルに入力される列を構成する個別判定処理S12の中間結果(特徴量)の順序も考慮した判定を行うことができる。本具体例によれば、個別判定処理S12の結果に不良クラスが含まれても、その含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理S14の結果を良クラスとすることができる。また、集合判定処理S14を、柔軟で判定精度の高いモデルを用いて実現することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、ケーブル種別の各々に対応した個別的なモデルを用いて個別判定処理S12を実行しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、全てのケーブル種別に対応した一般的なモデルを用いて個別判定処理S12を実行してもよい。この場合、種別判定処理S11は、省略することができる。なお、ケーブル種別の各々に対応した個別的なモデルを用いることには、精度の高い個別判定処理S12が可能になるというメリットに加えて、対象とするケーブル種別が増えたときに、システムの改修が容易であるというメリットがある。何故なら、一般的なモデルを用いる場合、全てのケーブル種別に対して精度良く個別判定処理S12を実行する一般的なモデルを機械学習により再構築する必要があるのに対して、個別的なモデルを用いる場合、追加されたケーブル種別に対してのみ精度良く個別判定処理S12を実行する個別的なモデルを機械学習により構築すれば十分であるからである。
【0070】
以上のように、検査方法S1によれば、線状体の捻転や振動などにより個別判定処理S12の結果に不良クラスが含まれても、不良クラスの含まれ方が偶発的なものであれば、集合判定処理S14の結果を良クラスとすることができる。したがって、検査方法S1によれば、マークが正常であるにも関わらず、マークに異常があると誤判定される可能性を低減することができる。
【0071】
(集合特定処理の具体例)
図3に示す集合特定処理S13の具体例について、図4を参照して説明する。図4は、本具体例に係る集合特定処理S13の流れを示すフロー図である。なお、本実施形態において、画像集合Iは、スクリーニング検査により不良が疑われたマークを被写体として含む複数の画像により構成されているため、画像集合Iに属する各画像の画像番号は、連番でない可能性がある点に留意されたい。
【0072】
本具体例に係る集合特定処理S13は、変数初期化処理S131、残画像確認処理S132、画像取得処理S133、画像番号判定処理S134、画像追加処理S135、変数更新処理S136、画像枚数判定処理S137、部分集合特定処理S138、及びリスト初期化処理S139を含んでいる。また、本具体例に係る集合特定処理S13においては、(1)部分集合の候補となる画像リスト、(2)画像取得処理S133にて取得した画像の画像番号を示す変数n、(3)画像リストに最後に追加した画像の画像番号を示す変数n0、(4)画像リストに含まれる画像の枚数を表す変数m、(5)画像番号判定処理S134における閾値を表す定数N、(6)画像枚数判定処理S137における閾値を表す定数Mを用いる。なお、定数M,Nは、ユーザが自由に設定することが可能である。
【0073】
変数初期化処理S131は、変数mを0に初期化する処理である。変数初期化処理S131を完了すると、後述する残画像確認処理S132が実行される。
【0074】
残画像確認処理S132は、画像集合Iに未処理の画像が残っているか否かを確認する処理である。未処理画像が残っている場合、後述する画像取得処理Sが実行される。未処理画像が残っていない場合、集合特定処理S13が終了する。
【0075】
画像取得処理S133は、画像集合Iに残っている未処理の画像のうち、画像番号が最も小さい画像を取得する処理である。画像取得処理S133が完了すると、後述する画像番号判定処理S134が実行される。
【0076】
画像番号判定処理S134は、画像取得処理S133にて取得した画像の画像番号nと、変数n0と定数Nとの和n0+Nとを比較する処理である。n≦n0+Nである場合、すなわち、画像取得処理S133にて取得した画像番号nと最後に画像リストに追加した画像の画像番号との差n-n0がN以下である場合、後述する画像追加処理S135が実行される。一方、n>n0+Nである場合、すなわち、画像取得処理S133にて取得した画像番号nと最後に画像リストに追加した画像の画像番号との差n-n0がNよりも大きい場合、後述する画像枚数判定処理S137が実行される。なお、m=0の場合には、上述した比較の結果に依らず、後述する画像追加処理S135が実行される。
【0077】
画像追加処理S135は、画像取得処理S133にて取得した画像を画像リストに追加する処理である。画像追加処理S135が完了すると、後述する変数更新処理S136が実行される。
【0078】
変数更新処理S136は、変数n0をnに更新すると共に、変数mをm+1に更新する処理である。変数更新処理S136が完了すると、前述した残画像確認処理S132が再び実行される。画像取得処理S133、画像追加処理S135、及び変数更新処理S136は、残画像確認処理S132において、画像集合Iに未処理の画像が残っていないと判定されるか、又は、画像番号判定処理S134において、n>n0+Nと判定されるまで繰り返される。
【0079】
画像枚数判定処理S137は、変数mと定数Mとを比較する処理である。m≧Mである場合、すなわち、画像リストに含まれる画像の枚数mがM以上である場合、後述する部分集合特定処理S138が実行される。一方、m<Mである場合、すなわち、画像リストに含まれる画像の枚数mがM未満である場合、リスト初期化処理S139が実行される。
【0080】
部分集合特定処理S138は、画像リストに含まれる画像を、集合判定処理S14の対象とする部分集合の要素として特定する処理である。部分集合特定処理S138が完了すると、前述した変数初期化処理S131が再び実行される。
【0081】
リスト初期化処理S139は、画像リストを空集合に初期化する処理である。リスト初期化処理S139が完了すると、前述した変数初期化処理S131が再び実行される。
【0082】
本具体例に係る集合特定処理S13によれば、画像集合Iの部分集合のうち、撮像対象領域が近接する(画像番号の差がN以下である)M枚以上の画像からなる画像集合Iの部分集合を特定することができる。定数Mを適宜設定することによって、例えば、ケーブルのうち、インクの欠乏などによって、マークが正常に印刷できていない可能性の高い領域を撮像した画像からなる部分集合を特定することが可能である。
【0083】
なお、画像取得処理S133は、画像集合Iに残っている未処理の画像のうち、画像番号nがn≦n0+Nを満たす画像を一括して取得する処理であってもよい。この場合、画像取得処理S133にて取得した画像の枚数kが1以上であれば、画像追加処理S135及び変数更新処理S136を実行する。この場合、画像追加処理S135においては、画像取得処理S133にて取得したk枚の画像を画像リストに追加する。また、変数更新処理S136においては、変数n0を、画像取得処理S133にて取得したk枚の画像の画像番号の最大値に更新し、変数mをm+kに更新する。一方、画像取得処理S133にて取得した画像の枚数kが0であれば、画像枚数判定処理S137を実行する。これにより、更に高速に部分集合の特定が可能になる。
【0084】
なお、画像番号判定処理S134において、新たに取得した画像の画像番号nと最後に画像リストに追加した画像の画像番号n0との差n―n0を定数Nと比較する代わりに、新たに取得した画像の撮像日時tと最後に画像リストに追加した画像の撮像日時t0との差t―t0を定数Tと比較する構成を採用してもよい。この場合、変数更新処理S136においては、変数n0を新たに取得した画像の画像番号nに更新する代わりに、変数t0を新たに取得した画像の撮像日時tに更新する。また、画像番号に基づく判定と撮像日時に基づく判定とを組み合わせてもよい。画像番号に基づく集合特定処理S13を実行してから撮像日時に基づく集合特定処理S13を実行してもよいし、逆に、撮像日時に基づく集合特定処理S13を実行してから画像番号に基づく集合特定処理S13を実行してもよい。
【0085】
(種別判定処理の変形例)
種別判定処理S11は、画像集合Iから選択された画像をモデルM0に入力することによって実行されてもよいし、画像集合Iから選択された画像に前処理を施すことにより得られた画像をモデルM0’に入力することによって実行されてもよい。後者の場合の前処理の具体例について、図5を参照して説明する。図5の(a)は、この前処理が施される前の画像Iaの一例を示す図であり、図5の(b)は、この前処理が施された後の画像Ibの一例を示す図である。
【0086】
この前処理において、プロセッサ12は、まず、画像Iaを構成する各画素の画素値p(x,y)をx軸方向に積分することによって、P(y)=∫p(x,y)dxを算出する。次に、プロセッサ12は、X=P(Y)のグラフとY軸とに囲まれた領域の画素値が1(図4の(b)において黒)であり、それ以外の領域の画素値が0(図4の(b)において白)である画像Ibを生成する。このような前処理を施すことによって、種別判定処理S11の判定精度を向上させることができる。
【0087】
(個別判定処理の変形例)
本実施形態においては、機械学習により生成されたモデルM1~M3を用いて個別判定処理S12を実施する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ルールベースのアルゴリズムを用いて個別判定処理S12を実施する構成を採用してもよいし、ルールベースのアルゴリズムと機械学習により生成されたモデルとを併用して個別判定処理S12を実施する構成を採用してもよい。
【0088】
以下、ルールベースのアルゴリズムと機械学習により生成されたモデルとを併用する個別判定処理S12の具体例(以下、個別判定処理S12’とも記載する)について、図6を参照して説明する。図6の(a)は、個別判定処理S12’の流れを示すフロー図であり、図6の(b)は、図6の(a)に示す領域特定処理S121の具体例を示す模式図である。
【0089】
個別判定処理S12’は、領域特定処理S121、良否判定処理S122、及びクラス判定処理S123を含んでいる。これらの処理は、画像集合Iに属する各画像に対する処理である。以下、これらの処理の対象となる画像を、対象画像と記載する。
【0090】
領域特定処理S121は、対象画像において各マークを含む領域を特定するための処理である。対象画像に複数のマークμ1,μ2,…,μnが被写体として含まれている場合、これらのマークμ1,μ2,…,μnの各々を含む領域α1,α2,…,αnが特定される。ここで、nは、対象画像に含まれるマークの個数を表す自然数である。
【0091】
例えば、領域特定処理S121において、まず、プロセッサ12は、対象画像を構成する各画素の画素値p(x,y)をx軸方向に積分することによって、P1(y)=∫p(x,y)dxを算出する。次に、プロセッサ12は、対象画像を構成する各画素の画素値p(x,y)をy軸方向に積分することによって、P2(x)=∫p(x,y)dyを算出する。そして、プロセッサ12は、P1(y)が閾値Th1を超え、且つ、P2(x)が閾値Th2を超える画素(x,y)の集合を連結成分に分け、各連結成分にマージンΔx,Δyを付した領域を領域α1,α2,…,αnとして特定する。
【0092】
良否判定処理S122は、領域特定処理S121にて特定された、各マークμi(iは1以上n以下の各自然数)を含む領域αiを参照して、そのマークμiの良否を判定するための処理である。
【0093】
例えば、良否判定処理S122において、プロセッサ12は、単一のマークを含む画像を入力とし、そのマークの良否を示すクラスを出力とする、機械学習によって生成されたモデルN1を用いる。この場合、プロセッサ12は、対象画像から領域αiをクロップすることにより得られた部分画像をモデルN1に入力することによって、マークμiの良否を判定する。
【0094】
クラス判定処理S123は、良否判定処理S122にて判定された、各マークμiの良否を参照して、対象画像に被写体として含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する処理である。
【0095】
例えば、クラス判定処理S123において、プロセッサ12は、各マークμiの良否の多数決によって、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する。より具体的に言うと、マークμ1,μ2,…,μnのうち、良クラスに属すると判定されたマークの個数と、マークμ1,μ2,…,μnのうち、不良クラスに属すると判定されたマークの個数とを比較する。そして、前者の個数が後者の個数を上回る場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として良クラスに属すると判定する。一方、後者の個数が前者の個数を上回る場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として不良クラスに属すると判定する。
【0096】
なお、プロセッサ12は、画像に含まれる複数のマークの各々の良否を示す情報を入力とし、その画像に含まれる複数のマークが全体として属するクラスを出力とする、機械学習によって生成されたモデルN2を用いて、クラス判定処理S123を実施してもよい。この場合、プロセッサ12は、良否判定処理S122にて判定された、各マークμiのクラスをモデルN2に入力することによって、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する。
【0097】
また、クラス判定処理S123においては、良否判定処理S122にて判定された、各マークμiの良否に加えて、領域特定処理S121にて特定された、各マークμiを含む領域αiの位置を参照してもよい。この場合、プロセッサ12は、例えば、領域α1,α2,…,αnの配置の周期性によって、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する。より具体的に言うと、領域α1,α2,…,αnが周期的に配置されている場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として良クラスに属すると判定する。一方、領域α1,α2,…,αnが周期的に配置されていない場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として不良クラスに属すると判定する。そして、プロセッサ12は、各マークμiの良否の多数決による判定結果と、領域α1,α2,…,αnの配置の周期性による判定結果とに基づいて、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する。一例として、各マークμiの良否の多数決による判定結果、及び、領域α1,α2,…,αnの配置の周期性による判定結果の両方が良クラスである場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として良クラスに属すると判定する。一方、各マークμiの良否の多数決による判定結果、及び、領域α1,α2,…,αnの配置の周期性による判定結果の一方又は両方が不良クラスである場合、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnは全体として不良クラスに属すると判定する。
【0098】
なお、プロセッサ12は、画像に含まれる複数のマークの各々の良否を示す情報と、それら複数のマークの各々を含む領域の配置を示す情報とを入力とし、その画像に含まれる複数のマークが全体として属するクラスを出力とする、機械学習によって生成されたモデルN3を用いて、クラス判定処理S123を実施してもよい。この場合、プロセッサ12は、良否判定処理S122にて判定された、各マークμiのクラスと、領域特定処理S121にて特定された、各マークμiを含む領域αiの位置と、をモデルN3に入力することによって、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの全体としての良否を判定する。
【0099】
先述した個別判定処理S12においては、対象画像に含まれるマークμ1,μ2,…,μnの良否を、包括的に、複数のモデルM1~M3の何れかを用いて判定する。ここで、単一のモデルを使うのではなく、複数のモデルM1~M3を使い分ける理由は、検査対象とするケーブルCの種類が異なると、マークμ1,μ2,…,μnの配置も大きく異なるため、単一のモデルを使って個別判定処理S12を行う構成では、機械学習により精度の高いモデルを生成することが困難になる可能性が高いからである。これに対して、本変形例に係る個別判定処理S12’においては、対象画像に含まれる各マークμiの良否を、個別的に、単一のモデルN1を用いて判定する。ここで、複数のモデルを使い分けるのではなく、単一のモデルN1を使う理由は、検査対象とするケーブルCの種類が異なっても、各マークμiの形状は大きく異ならないので、単一のモデルN1を使って個別判定処理S12’を行う構成でも、機械学習により精度の高いモデルを生成することが困難になる可能性が低いからである。なお、先述した個別判定処理S12の代わりに、本変形例に係る個別判定処理S12’を実施する場合、先述した種別判定処理S11は省略することができる。
【0100】
(付記事項)
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態に含まれる各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 検査装置
11 メモリ
12 プロセッサ
13 ストレージ
S1 検査方法
S11 種別判定処理
S12 個別判定処理
S13 集合特定処理
S14 集合判定処理
図1
図2
図3
図4
図5
図6