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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124856
(43)【公開日】2023-09-06
(54)【発明の名称】体位固定具及び体位固定方法
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/12 20060101AFI20230830BHJP
【FI】
A61G13/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027296
(22)【出願日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2022028222
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303038560
【氏名又は名称】株式会社豊栄
(71)【出願人】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀一
(72)【発明者】
【氏名】横須 幸太
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341MM06
4C341MP05
(57)【要約】
【課題】本発明は、より安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供する。
【解決手段】本発明の一観点に係る体位固定具1は、肩掛部2と、肩掛部の前側21と接続される一対の前側帯状部材3と、肩掛部の後側22に接続される一対の後側帯状部材4と、接続具5と、を備え、本発明の他の一観点に係る体位固定方法は、肩掛部と、肩掛部の前側21と接続される一対の前側帯状部材と、肩掛部の後側に接続される一対の後側帯状部材と、接続具と、を備える体位固定具を用いて手術対象者の体位を固定する体位固定方法であって、引掛部材を備えた寝台に、前側帯状部材及び後側帯状部材の一方を引掛部材内にくぐらせて前側帯状部材及び後側帯状部材を接続具により固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩掛部と、
前記肩掛部の前側において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材と、
前記肩掛部の後側において接続されて延伸する一対の後側帯状部材と、
前記前側帯状部材と前記後側帯状部材を接続するための接続具と、を備える体位固定具。
【請求項2】
前記肩掛部は、肩パットを有する請求項1記載の体位固定具。
【請求項3】
前記肩掛部は不織布を有して構成されている請求項1記載の体位固定具。
【請求項4】
前記一対の前側帯状部材の交差状態を維持する交差板を有する請求項1記載の体位固定具。
【請求項5】
前記一対の前側帯状部材の前記肩掛部における接続位置は、いずれも、前記一対の後側帯状部材の前記肩掛部における接続位置の間にある請求項1記載の体位固定具。
【請求項6】
前記後側帯状部材に接続される肘保護部材を有する請求項1記載の体位固定具。
【請求項7】
前記一対の後側帯状部材間の間隙を広げる引張部材を備える請求項1記載の体位固定具。
【請求項8】
肩掛部と、
前記肩掛部の前側において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材と、
前記肩掛部の後側において接続されて延伸する一対の後側帯状部材と、
前記前側帯状部材と前記後側帯状部材を接続するための接続具と、を備える体位固定具を用いて手術対象者の体位を固定する体位固定方法であって、
引掛部材を備えた寝台に、前記前側帯状部材及び前記後側帯状部材の一方を前記引掛部材内にくぐらせて前記前側帯状部材及び前記後側帯状部材を前記接続具により固定する体位固定方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体位固定具及び体位固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術とは、外科的器具を用いて人体の患部に対して治療的処置を行うことをいい、手術対象者に麻酔を施し手術台に寝かせた状態で行うのが一般的である。
【0003】
ところで手術は、患部の位置によって手術対象者の体位を適切な状態に固定することが必要であり、例えば子宮頸部等下半身を手術する場合においては、手術対象者の頭を低くして脚部を高くするいわゆるトレンデンブルグ体位が好ましく選択される。
【0004】
しかしながら、トレンデンブルグ体位は上記の通り、手術対象者の頭を低くする体位であり、単に手術台を傾けただけでは手術対象者の体位が非常に不安定となってしまうといった課題がある。そのため、手術対象者の体を安定的に固定するための体位固定具が検討されている。
【0005】
例えば、下記非特許文献1には、トレンデンブルグ体位を実現するための手術用体位固定マットが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://adachi-inc.co.jp/adhp/product/ピンクパッド-手術用体位固定マット/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記技術は、確かにトレンデンブルグ体位を実現することができる点において有用である。
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1による技術でもまだ手術中に体全体が少なからずずれてしまうといった課題が残る。体がずれるとその部分に皮膚の皺が発生し、皺の発生が褥瘡の原因になってしまうことがあることから、可能な限り体のずれを抑えることが重要である。
【0009】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、より安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る体位固定具は、肩掛部と、肩掛部の前側において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材と、肩掛部の後側において接続されて延伸する一対の後側帯状部材と、前側帯状部材と後側帯状部材を接続するための接続具と、を備えるものである。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、肩掛部は、肩パットを有することが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、肩掛部は不織布を有して構成されていることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、一対の前側帯状部材の交差状態を維持する交差板を有することが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、一対の前側帯状部材の肩掛部における接続位置は、いずれも、一対の後側帯状部材の肩掛部における接続位置の間にあることが好ましい。
【0015】
また、本観点において、限定されるわけではないが、後側帯状部材に接続される肘保護部材を有することが好ましい。
【0016】
また、本観点において、限定されるわけではないが、一対の後側帯状部材間の間隙を広げる引張部材を備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一観点に係る体位固定方法は、肩掛部と、肩掛部の前側において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材と、肩掛部の後側において接続されて延伸する一対の後側帯状部材と、前側帯状部材と後側帯状部材を接続するための接続具と、を備える体位固定具を用いて手術対象者の体位を固定する体位固定方法であって、引掛部材を備えた寝台に、前側帯状部材及び後側帯状部材の一方を引掛部材内にくぐらせて前側帯状部材及び後側帯状部材を接続具により固定するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上、本発明によって、より安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係る体位固定具の概略(前面)を示す図である。
図2】実施形態1に係る体位固定具の概略(後面)を示す図である。
図3】実施形態1に係る体位固定具を用いて手術対象者を固定する場合のイメージを示す図である。
図4】実施形態1に係る体位固定具における肩パットの例を示す図である。
図5】実施形態2に係る体位固定具の概略(前面)を示す図である。
図6】実施形態2に係る体位固定具の概略(後面)を示す図である。
図7】実施形態2に係る体位固定具を用いて手術対象者を固定する場合のイメージを示す図である。
図8】実施形態3に係る体位固定具の概略(前面)を示す図である。
図9】実施形態3に係る体位固定具を用いて手術対象者を固定する場合のイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載の例にのみ限定されるわけではない。
【0021】
(実施形態1)
(体位固定具)
図1は、本実施形態に係る体位固定具(以下「本固定具」という。)1の正面から見た場合の概略図であり、図2は本固定具1を背面から見た場合の概略図であり、図3は本固定具1を使用している場合のイメージ図である。
【0022】
これらの図で示す通り、本固定具1は、肩掛部2と、肩掛部2の前側21において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材3と、肩掛部2の後側22において接続されて延伸する一対の後側帯状部材4と、前側帯状部材3と後側帯状部材4を接続するための接続具5と、を備えるものである。
【0023】
本固定具1の肩掛部2は、文字通り手術の対象となる者(以下「手術対象者」という。)の肩にかけるためのものである。より具体的に肩掛部2は、手術対象者の両肩それぞれに充てる前側21と、手術対象者の背中に当てる後側22を備える。
【0024】
本固定具1の肩掛部2において前側21と後側22は一体で構成されており、後側22は手術対象者の背中(より具体的には肩に近い背中部分)に当てられる部分であって好ましくは手術対象者の背中全体に当てられる部分である。一方、前側21は、この後側22に接続され、手術対象者の首を挟んで両肩前側までそれぞれ延びている部分である。これによって手術対象者の背中から肩を覆い手術対象者を安定的に固定するための接触部分を確保することが可能となる。
【0025】
また、本固定具1において、限定されるわけではないが、肩掛部2は不織布を有して構成されていることが好ましい。不織布を用いることで、軽量化が可能となるだけでなく、手術対象者を手術用ベッドに寝かせた場合であっても、厚さを抑えることが可能となり手術対象者と手術用ベッドの間に大きな段差を生じさせることがない。この結果、手術対象者に対する褥瘡発生の要因となりにくいといった利点がある。また不織布とすることで価格を抑え、ディスポーザブル(使い捨て)とすることが可能である。
【0026】
また、本固定具1において、限定されるわけではないが、肩掛部2は、肩パット23を有することが好ましい。手術対象者の頭部を鉛直方向下にするトレンデンブルグ体位で手術を行う場合、患者の肩に大きく負荷がかかるため、肩パット23を有することで、患者の肩にかかる負担を軽減させることができるようになる。
【0027】
この場合において、肩パット23の材質としては、限定されるわけでは無いが、例えばスポンジであることは好ましい一例である。スポンジとすることで不織布とした場合と同様、軽量化及び薄型を図ることができるとともに、ディスポーザブルとすることができる。また、肩パット23を設ける場合においては、例えば図4で示されるように、凹みを設けて構成されていることが好ましい。凹みを設けることで、この凹みに手術対象者の肩を当てることが容易になり、より体位固定が安定するといった効果がある。
【0028】
なお、本固定具1の肩掛部2においては、これに限定されるわけでは無いが、袖部分が設けられていないこと、削除されていることが好ましい。袖部分を削除しておくことにより、様々な体格の手術対象者に対して安定して適用することができる。袖部分を設けてしまうすなわち存在すると、手術対象者の体格に合わせて多くのサイズを準備しなければならないところ、袖部分を削除しておくことで、手術対象者を固定する部位を少なくし様々な体格の手術対象者に合わせることが容易となり、手術対象者のトレンデンブルグ体位がずれてしまうおそれを少なくなることが可能となる。
【0029】
また、本固定具1は、上記の通り、肩掛部2の前側21においてこの肩掛け部2に接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材3を備える。前側帯状部材3は、手術対象者の胸側に配置されるものであり、手術対象者を胸側から固定するための部材である。また、肩掛部2の前側21と前側帯状部材3は固定されているが、前側部21は、ギャザー(ひだ)を設けて集まり前側帯状部材3と接続されていることが好ましい。このようにすることで接続部分に力を集中させて手術対象者に本固定具1を用いて固定する場合において、手術中に手術対象者に対してずれてしまうことを効率的に防止することが可能となる。
【0030】
また上記の通り、一対の前側帯状部材3は、一対の前側帯状部材3の交差状態を維持している。交差状態を設けることで、手術対象者の頭部を鉛直方向下にするトレンデンブルグ体位とした場合に、この交差部分を支点として安定的に手術対象者を引っ張り固定することが可能となる。
【0031】
また、前側帯状部材3は薄い部材で構成されていることが好ましい。薄い部材で構成することで軽量化や取り扱いが容易になるといった利点がある。素材については、手術対象者の体重を十分に支えることができる程度の強度を有していれば特に限定されるわけでは無いが、植物繊維や動物繊維であってもよく、また化学繊維であってもよい。植物繊維の場合は麻、綿、を例示することができ、動物繊維の場合は絹、ウール等を例示することができる。また化学繊維の場合は、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等を例示することができる。
【0032】
交差状態を維持する方法としては様々であり、端的には縫い合わせることや、縫い合わせていなくとも手術時において交差させた後でこれらを固定するクリップ等の固定具を用いることとしてもよいが、予め固定させておく交差板6を有するいわゆるパッドであることは好ましい一例である。交差板6の構成についても限定されるわけでは無いが、例えば、交差させるために前側帯状部材3を挿入可能なスリットが少なくとも4つ形成されていることが好ましく、より具体的には、4つのスリットは、平行な状態で形成された2つのスリットが2セット交差するように配置されていることが好ましい。このようにすることで、前側帯状部材3をそれぞれスリットに挿入することで適度な抵抗をもって固定しながら交差することが可能であるとともに、前側帯状部材3の長さ方向に対し交差する位置を調整することが可能となり、手術対象者の体の大きさ等に合わせて調整することができるようになる。
【0033】
また、本固定具1では、肩掛部2の後側22において接続されて延伸する一対の後側帯状部材4を有する。一対の後側帯状部材4は、前側帯状部材3とは異なり交差されずに用いられることを想定するものではあるが、それ以外の材質などは上記前側帯状部材3と同様である。
【0034】
また本固定具1において、前側帯状部材3と、後側帯状部材4は使用時において固定される。具体的には、一対で存在する前側帯状部材3は前側において交差し、その先(肩掛部2から離れた位置)で交差しない後側帯状部材4のそれぞれと接続される。これにより前側帯状部材3と後側帯状部材4によってループが形成され、このループを手術台、より具体的には手術台の台部分の側部に設けられる手すりなどに引っかけることで、手術対象者の頭部を鉛直方向下にするトレンデンブルグ体位を安定的に維持することが可能となる。
【0035】
また、本固定具1において、上記の前側帯状部材3と、後側帯状部材4は、前側帯状部材3と後側帯状部材4のそれぞれにおいて設けられる接続具5によって着脱可能に接続されていることが好ましい。
【0036】
接続具5は、上記の通り、着脱可能となるよう接続することが好ましく、この限りにおいて限定されるわけでは無いが、例えば、前側帯状部材3と後側帯状部材4のいずれか一方に尾錠とピン棒を備えさせ、他方に複数のアジャスト孔を形成することで、アジャスト孔に挿入するピン棒の位置で長さを調整しつつ固定する固定具(いわゆるベルト)としてもよく、また、上記図で示すように、挿入側凸部51と、被挿入側凹部52を備え、挿入側凸部51を被挿入側凹部52に挿入することで固定するプラスチック製の固定具(いわゆるバックル)とすることとしてもよい。また、フック面とループ面をそれぞれ別々に設置しこれらを組み合わせて固定する固定具(いわゆる面ファスナー)としてもよい。なおこの場合において、いずれの場合であっても、その接続位置は可変であることが好ましい。これにより、手術対象者の体格や手術台の大きさ、引掛け位置等によって適宜調整が可能となる。
【0037】
また、本固定具1においては、限定されるわけではないが、前側帯状部材3において、手術対象者に直接接続具5が触れないように、接続具5に当てられるクッション材7を設けることが好ましい。クッション材7を設けることで、手術対象者の胸側において接続具5が直接押し当てられ褥瘡となってしまうおそれを少なくすることができる。またクッション材7は、この位置を確保するため、前側帯状部材3の、肩掛部2と接続具5の間の部分及び肩掛部2の接続具5より遠い部分の少なくともいずれか一方に固定されていることが好ましく、また、上記前側帯状部材3の交差状態を維持するために用いられるパッドのように、二つのスリットを備え、この二つのスリットに前側帯状部材3を挿入し、その間に接続具5が配置されるようにしてもよい。このようにすることで確実に手術対象者と接続具5の間にクッションを配置させることが可能となる。
【0038】
また、本固定具1において、限定されるわけではないが、一対の前側帯状部材3の肩掛部2における二つの接続位置は、いずれも、一対の後側帯状部材4の肩掛部2における接続位置の間にあることが好ましい。この位置関係にすることで、背後から前側にかけて外側から内側へのループを形成することが可能となり、手術台における手すりなどの引掛部分に前側帯状部材3又は後側帯状部材4を引掛け、手術対象者の位置を確実に固定することが可能となる。
【0039】
(体位固定方法)
上述した本固定具1の構成によって、その効果については明確になっているが、ここで、本固定具1を用いた体位固定方法(以下「本方法」という。)について説明する。
【0040】
本方法は、上記した本固定具1を用いて行う固定方法であるが、具体的には、肩掛部2と、肩掛部2の前側21において接続され、交差して延伸する一対の前側帯状部材3と、肩掛部2の後側22において接続されて延伸する一対の後側帯状部材4と、前側帯状部材3と後側帯状部材4を接続するための接続具5と、を備える本固定具1を用いて手術対象者の体位を固定する体位固定方法であって、引掛部材を備えた寝台に、前側帯状部材3及び後側帯状部材4の一方を引掛部材内にくぐらせて前側帯状部材3及び後側帯状部材4を接続具5により固定するものである。
【0041】
本方法では、上記のとおり、引掛部材を備えた寝台に、前側帯状部材3及び後側帯状部材4の一方を引掛部材内にくぐらせて前側帯状部材3及び後側帯状部材4を接続具5により固定する。この場合のイメージを図3に示す。
【0042】
これによると、前側帯状部材3と後側帯状部材4を接続してループを形成し、このループ内に引掛部材を引掛けることで、手術対象者の頭部を鉛直方向下に傾けた場合であって、ループにより手術対象者の体を引っ張ることが可能となる。また、肩には肩掛部2が形成されているため、この肩が支点となり安定的に手術対象者を支えることが可能となる。さらに、本固定具1を用いると、胸側において前側帯状部材3を交差させているため、ここも支点となりより安定的に手術対象者を固定することが可能となる。
【0043】
以上、本発明によって、より安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供することができる。
【0044】
(実施形態2)
本実施形態は、実施形態1とほぼ同様であるが、後側帯状部材4の各々に接続される肘保護部材8を有する点において実施形態1と異なる。以下具体的に説明するが、本実施形態については異なる構成部分について主として説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0045】
図5、6は、本固定具1の概略を示す図であり、図7は、本固定具1を用いて手術対象者を固定する場合のイメージを示す図である。上記の通り、後側帯状部材4に肘保護部材8が接続されたものとなっている。ここで「肘保護部材」とは、これらの図が示すように、手術対象者の肘がずれてしまうのを防止するために肘を保護するための部材である。上記実施形態1では、形成した帯状部材のループによって手術対象者の手を固定するが、肘の部分には比較的余裕がある。そのため、手術の際に手術対象者の肘がずれることで手が抜けてしまうおそれが完全に否定できない。そのため、肘保護部材8を設けることで肘がずれてしまうことを防止することが可能となる。
【0046】
本固定具1において、肘保護部材8は、これらの図が示すように、一対の後側帯状部材4それぞれに接続されている。肘保護部材8の形状は手術対象者の肘を保護してずれないようにすることができる限りにおいて限定されず、幅を持った帯状であることが好ましく、その幅としては後側帯状部材4よりも広く設けられていることが好ましい。幅を持った帯状とすることで肘を広く包み込むことが可能となる。
【0047】
また、本固定具1における肘保護部材8は、その先端側(後側帯状部材4と接続された位置とは反対側)において、前側帯状部材3側に着脱可能に固定するための接続部材81を備えていることが好ましい。接続部材81を設けることで肘保護部材8を両端で固定し、手術対象者の肘を安定的に固定することが可能となる。接続部材81の構造としては、特に限定されるわけではないが、例えば実施形態1で示した面ファスナー、ベルト、バックル等の固定具を用いることが好ましい。なお、接続部材81が面ファスナー、ベルト、バックル等の固定具の場合、肘保護部材8側に固定具の一方を設け、これを固定する側の他の部材側に固定具の他方を設けることが好ましい。なおこの他の部材としては、肘保護部材8を固定することができる限りにおいて限定されるわけではないが、前側帯状部材3やクッション材7等であることが好ましい。特にクッション材7に設けることで、新たに固定するための部材を設ける必要がなく一つの部材で複数の機能を持たせることができるようになるといった利点がある。
【0048】
また、本固定具1における肘保護部材8の素材としては特に限定されるわけではないが、不織布を有して構成されていることが好ましい。不織布を用いることで、軽量化が可能となるだけでなく、手術対象者を手術用ベッドに寝かせた場合であっても、厚さを抑えることが可能となり、段差等を発生させにくくし、手術対象者に対する褥瘡発生の要因となりにくいといった効果がある。また不織布とすることで価格を抑え、ディスポーザブル(使い捨て)とすることが可能になるといった利点もある。
【0049】
以上、本固定具1によると、上記実施形態1に記載の効果に加え、肘をより安定的に固定することで、さらに、安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供することができる。
【0050】
(実施形態3)
本実施形態は、実施形態1とほぼ同様であるが、前側帯状部材3及び後側帯状部材4が形成するループを引っ張る引張部材9を設けている点において実施形態1と異なる。以下具体的に説明するが、本実施形態については異なる構成部分について主として説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0051】
図8は本固定具1の概略を示す図であり、図9は、本固定具1を用いて手術対象者を固定した場合の正面からのイメージを示す図である。上記の通り、本固定具1では、一対の後側帯状部材4間の間隙を広げる引張部材9を備えている。本固定具1は、上記の実施形態1、2において説明しているように、前側帯状部材3と後側帯状部材4を結合してループを形成し、このループを手術台、より具体的には手術台の台部分の側部に設けられる手すりなどに引っかけることで、手術対象者の頭部を鉛直方向下にするトレンデンブルグ体位を安定的に維持することが可能となる。しかし一方で、この一対のループの角度が手術の内容によっては十分でない場合がある。このような場合、より広い角度でループを交差させることが好ましいため、本実施形態の特徴である引張部材9を設けることで、より広く手術対象部位を確保することが可能となる。
【0052】
本固定具1における引張部材9は、上記の通り、前側帯状部材3と後側帯状部材4が形成されるループ、具体的には前側帯状部材3又は後側帯状部材4を引っ張るための部材であり、ひも状又は帯状の部材であることが構成上簡便である。そして引張部材9の一方の端部は前側帯状部材3又は後側帯状部材4に固定され、他方の端部は例えば手術台の手すり等に位置を固定して引っ掛けることで上記の通り、ループが交差する角度を広げて手術部位を広く確保することができるようになる。なおこの場合において他方の端部は、そのまま手術台の手すり等に結びつけるのであればそのまま何も設けない構成としてもよいが、例えば、上記図で示すように、引張部材9の他端を通して固定するための固定具91を設けることが重要である。固定具91としては、上記した接続具等において例示する固定具であってもよいが、例えば表裏にそれぞれフック面とループ面を設けた面ファスナーや、ベルト、バックル等としてもよいがこれに限定されない。
【0053】
また本固定具1における引張部材9としては、前側帯状部材3又は後側帯状部材4とは分離され独立したものであってもよいが、一方の端部が前側帯状部材3又は後側帯状部材4に固定されたものであることが好ましい。固定しておくことで一体としより取り扱いやすくなるといった効果がある。
【0054】
以上、本固定具1によると、上記実施形態1に記載の効果に加え、手術部位を十分に広く確保して安定的にトレンデンブルグ体位を実現することができる体位固定具及びこれを用いた体位固定方法を提供することができる。なお、本実施形態にかかる構成は、互いに阻害するものではないため、上記実施形態2の特徴と組み合わせることが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、体位固定具及びこれを用いた体位固定方法として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0056】
1…体位固定具
2…肩掛部
3…前側帯状部材
4…後側帯状部材
5…接続具
6…交差板
7…クッション材
8…肘保護部材
9…引張部材


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9