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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124878
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】正浸透膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/10 20060101AFI20230831BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D61/00 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028722
(22)【出願日】2022-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】593145663
【氏名又は名称】協和機電工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 秀之
(72)【発明者】
【氏名】入江 守裕
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 良
(72)【発明者】
【氏名】上山 哲郎
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006HA62
4D006JA05A
4D006JA06A
4D006JA14A
4D006JA15A
4D006JA18A
4D006JA25A
4D006JA29A
4D006KA14
4D006KB30
4D006KE09Q
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB08
4D006PB20
(57)【要約】
【課題】スパイラル型正浸透膜の構成を基準として、浸透能力を発揮できる正浸透膜モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の正浸透膜モジュールは、ケースと、
前記ケースに収容されて、正浸透現象を生じさせる複数の膜リーフと、
前記複数の膜リーフのそれぞれに連通する主管路と、
前記複数の膜リーフのそれぞれに個別に接続し、前記膜リーフのそれぞれと連通する複数の副管路と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに収容されて、正浸透現象を生じさせる複数の膜リーフと、
前記複数の膜リーフのそれぞれに連通する主管路と、
前記複数の膜リーフのそれぞれに個別に接続し、前記膜リーフのそれぞれと連通する複数の副管路と、を備え、
前記主管路の一方の端部に備わる主管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記副管路の一方の端部であって主管路入口と同じ側に備わる副管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記主管路において前記主管路入口と逆側に備わる主管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記副管路において前記副管路入口と逆側に備わる副管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記ケースの入り口であるケース入口から、前記複数の膜リーフ同士の隙間に形成される塩水流路に塩水が供給され、
前記ケースの出口であるケース出口から、前記塩水流路から出る混合水が排出され、
前記膜リーフ内部では、前記淡水が第1方向に移動し、
前記塩水流路では、前記塩水が第2方向に移動し、
前記第1方向と前記第2方向は略平行であり、
前記膜リーフ内部を移動する淡水と前記塩水流路を移動する塩水との間で正浸透現象が生じて、前記混合水と前記未浸透水が生じる、正浸透膜モジュール。
【請求項2】
前記膜リーフは正浸透現象を生じさせ、
前記膜リーフ内部の淡水は、前記膜リーフの正浸透現象によって前記塩水流路の塩水に浸透し、
前記塩水の水量が増加して前記混合水が生じる、請求項1記載の正浸透膜モジュール。
【請求項3】
前記膜リーフでの正浸透現象において浸透せずに残った淡水が前記未浸透水として排出される、請求項1または2記載の正浸透膜モジュール。
【請求項4】
前記主管路入口および前記副管路入口は、前記膜リーフの入力側端部に連通し、
前記主管路出口および前記副管路出口は、前記膜リーフの出力側端部に連通し、
前記主管路入口および前記副管路入口から供給された淡水は、
前記入力側端部から前記膜リーフ内部に入り、
前記第1方向に沿って前記膜リーフ内部を移動し、
前記出力側端部から、前記未浸透水となって、前記主管路出口および前記副管路出口に移動する、請求項1から3のいずれか記載の正浸透膜モジュール。
【請求項5】
前記膜リーフは、
前記入力側端部において、供給される淡水を前記膜リーフ全体に分水する分水ジャケットと、
前記出力側端部において、排出される未浸透水を、前記主管路出口および前記副管路出口に集水させる集水ジャケットと、
を、備える、請求項4記載の正浸透膜モジュール。
【請求項6】
前記主管路は、前記入力側端部に連通する主管路入口孔と前記出力側端部に連通する主管路出口孔を、備え、
前記副管路は、前記入力側端部に連通する副管路入口孔と前記出力側端部に連通する副管路出口孔を、備える、請求項4または5記載の正浸透膜モジュール。
【請求項7】
前記第1方向と前記第2方向は逆向きである、請求項1から6のいずれか記載の正浸透膜モジュール。
【請求項8】
前記主管路および前記副管路のそれぞれは、前記淡水と前記未浸透水との混合を防止する、内部仕切りを備える、請求項1から7のいずれか記載の正浸透膜モジュール。
【請求項9】
前記ケースは、前記主管路、前記複数の膜リーフおよび前記複数の副管路を収容し、
前記複数の膜リーフは、前記主管路を中央付近として、スパイラル状に収容される、請求項1から8のいずれか記載の正浸透膜モジュール。
【請求項10】
前記主管路は、前記ケース内部の中央付近に位置して収容され、
前記複数の副管路のそれぞれは、前記ケース内部の外縁部に位置して収容される、請求項9記載の正浸透膜モジュール。
【請求項11】
前記混合水は、、発電タービンを回転させるのに用いられる、請求項1から10のいずれか記載の正浸透膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率で混合水を得ることのできる正浸透膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国はもちろんのこと、世界各国で生活用水(特に飲用や食用に用いる水)の不足が問題となっている。理由の一つとしては、世界的な人口増加(発展途上国を中心に)によって生活用水の供給が追いついていないことがある。更に、各国において地方から都市部に人口の流入が増加しており、河川や湖などの淡水供給源が元々少ない都市部での、人口に対する生活用水の供給量のバランスが崩れてきていることがある。また、温暖化による砂漠化や豪雨の特定地域への集中などによって、生活用水に可能な淡水の貯留が困難であることもある。更には、環境問題への意識の高まりにより、河川へのダム建設が困難になっていることもある。
【0003】
このような理由により、我が国を始め世界各国において、生活用水の不足が深刻化している。生活用水の不足は、時として内紛や隣国との争いを生じさせかねない問題である。
【0004】
以上のような環境下において、塩水を淡水化する塩水淡水装置が、沿岸部などに設置されて、塩水より淡水を得ることが行われるようになってきている。我が国においても、水不足の生じやすい都市部の沿岸や湾内などの比較的静かな内海に、塩水淡水装置が設置される例が多くなっている。塩水淡水装置は、内海において塩水を取りこんで、逆浸透膜や正浸透膜などの部材を用いて、淡水を生成する。この生成された淡水が、生活用水として利用される。
【0005】
一方で、塩水を淡水にする塩水淡水化装置が利用される中で、得られる濃縮塩水の廃棄の問題が生じている。濃縮塩水を地上や海中に廃棄すれば、環境破壊につながるからである。
【0006】
また、濃縮塩水だけでなく、海水を始めとした塩水が地球上の様々な場所にあり、これらの利用が求められている。特に、塩水淡水化装置で生じる濃縮塩水や海水などは、自然の淡水が得られにくい場所に多く存在する。例えば、砂漠化が進む地域などである。
【0007】
このような濃縮塩水や海水などを利用することの一つとして、正浸透膜を利用した発電システムが検討されている。正浸透膜に濃縮塩水や海水などと淡水とが供給される。淡水は、下水処理システムなどで処理された処理水が用いられれば、環境負荷も低減できる。
【0008】
正浸透膜において、淡水流路から塩水流路に水分が浸透する。これにより、塩水流路における水量が増加して、水量増加した混合水が得られる。この水量増加した混合水でタービンを回転させて発電させることができる。
【0009】
このとき、タービンでの回転力が発電能力に繋がる。回転力を生じさせるのは、混合水の圧力と水分増量との積分であり、正浸透膜での水分増量を効率的に生じさせることが必要である。
【0010】
なお、タービンの回転で使用された混合水は、正浸透膜において淡水流路からの水分を受けているので、塩分濃度が低下している。このため、タービン回転後の混合水は、海中投棄されても環境負荷に繋がることはない。
【0011】
ここで、正浸透膜として中空糸を用いた技術が既存に存在する。中空糸は以前より利用されている技術であり、製造容易性などの実績がある。直径の小さな細管である中空糸が、管路の中に高密度に収容されて正浸透膜が構成される。中空糸の中に淡水が供給され、中空糸の間に塩水が供給されて正浸透現象によって、淡水が中空糸外側へ浸透することで、塩水が増量する。
【0012】
しかしながら、中空糸の技術はかなりのレベルに達しており、これ以上の改善は見込みにくいと考えられている。中空糸の単位面積当たりの浸透能力には限界があり、中空糸の収容数や収容密度の改良も限界に近付いている部分があるからである。
【0013】
上述した通り、正浸透膜を発電に利用するには、効率的に正浸透現象を生じさせて水量増加を生じさせる必要がある。増加水量と圧力との積分が、タービンを回転させるエネルギーになるからである。
【0014】
このような状況で、中空糸ではなくスパイラル型を利用した正浸透膜の提案がなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2014-023986号公報
【特許文献2】特開2014-023985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1は、第1開口26Aから第2開口26Bへ延びる内部流路が形成された膜リーフ23と、膜リーフ23が巻き回され、第1開口26Aと連通する供給孔31Aおよび第2開口26Bと連通する回収孔31Bを有する中心管31と、を備え、中心管31の内部は、供給孔31Aと連通する流入領域3Aおよび回収孔31Bと連通する流出領域3Bのそれぞれが中心管3の一端から他端にかけて中心管31の軸方向に連続的に延びる流路を形成するように区画されている。流入領域3Aに供給された液体が、内部流路26を複数回流れずに外部に排出されるのでスパイラル型正浸透膜エレメントを開示する。
【0017】
特許文献2は、膜リーフ23と、膜リーフ23が巻きつけられた中心管3と、中心管3の内部に設けられた複数の隔壁(31、32)とを備えている。膜リーフ23は、第1開口26Aから第2開口26Bに向かって屈曲した複数の内部流路26が並列に設けられている。中心管3は、一端に流入口33、他端に流出口34を有し、第1開口26Aに連通する供給孔35及び第2開口26Bに連通する回収孔36が形成されている。流出口34に最も近い位置ある末端隔壁32は中心管3の内部を遮断しており、末端隔壁以外の隔壁32には貫通穴38が形成されているスパイラル型正浸透膜エレメントを開示する。
【0018】
スパイラル型正浸透膜は、広範囲の面積を有する袋状の正浸透膜が、モジュール本体の中に周回するように畳み込まれて収容される。一つの正浸透膜は広い面積を有し、袋状正浸透膜内部に淡水が供給され、複数の袋状正浸透膜同士の隙間(外部)に塩水が供給される。中空糸よりも単位面積当たりの浸透能力は高く、淡水から塩水への浸透能力が大きくなる。結果として、増加水量が大きくなる。
【0019】
一方で、正浸透膜を上述した発電システムに利用する場合には、塩水と淡水を連続的に供給し、増加水量を含む混合水と未浸透水(塩水側に浸透しきれずに残った淡水)のそれぞれを排出する必要がある。このため、2つの入口と2つの出口とが必要である。
【0020】
両端部を持った細管である中空糸の場合には、中空糸の両端部と、中空糸同士の隙間の両端部とにより、2つの入口と2つの出口を設けることが容易である。
【0021】
一方で、スパイラル型正浸透膜は、袋状の正浸透膜であるので、入口が一つだけとなってしまい、入口が一つと出口が2つの構成となって、発電システムへの利用が困難である。
【0022】
特許文献1,2は、2つの入口と2つの出口を実現する技術である。特許文献1,2のいずれも、袋状の正浸透膜内部に仕切り板を設けて、袋状の正浸透膜内部に水分を供給する主管路の一方を入口とし、他方を出口とする。復路内部を仕切り板により周回して水分が移動して、同じ主管路の入口から出口に水分が戻ってくる水流を作る。この水流により、同じ主管路を入口と出口として、2つの入口と出口を実現する(袋状の正浸透膜同士の隙間が、もう一組の入口と出口となる)。
【0023】
しかしなら、特許文献1,2のいずれも仕切り板によって主管路への水流を作っている。このため、製造が困難となる、強度や使用性に不具合が生じるなどの問題を有する。
【0024】
また、仕切り板による水流を流れる必要があるので、水流のスムーズさがなくなり、袋内部でのよどみが生じてしまう。このよどみやスムーズさの低さは、浸透能力を阻害してしまう結果を生じさせる。仕切り板により生じるよどみやスムーズさの無い領域での膜リーフによる浸透能力が下がってしまうからである。全体としての、浸透能力の発揮ができなくなってしまう問題である。
【0025】
また、膜リーフの浸透能力が、場所によってばらつくことでの、膜リーフの劣化に繋がりえる問題もある。
【0026】
結果として、特許文献1,2のような従来技術では、スパイラル型正浸透膜としての、浸透能力を発揮できない問題があった。
【0027】
本発明は、このような問題を解決し、スパイラル型正浸透膜の構成を基準として、浸透能力を発揮できる正浸透膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題に鑑み、本発明の正浸透膜モジュールは、ケースと、
前記ケースに収容されて、正浸透現象を生じさせる複数の膜リーフと、
前記複数の膜リーフのそれぞれに連通する主管路と、
前記複数の膜リーフのそれぞれに個別に接続し、前記膜リーフのそれぞれと連通する複数の副管路と、を備え、
前記主管路の一方の端部に備わる主管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記副管路の一方の端部であって主管路入口と同じ側に備わる副管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記主管路において前記主管路入口と逆側に備わる主管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記副管路において前記副管路入口と逆側に備わる副管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記ケースの入り口であるケース入口から、前記複数の膜リーフ同士の隙間に形成される塩水流路に塩水が供給され、
前記ケースの出口であるケース出口から、前記塩水流路から出る混合水が排出され、
前記膜リーフ内部では、前記淡水が第1方向に移動し、
前記塩水流路では、前記塩水が第2方向に移動し、
前記第1方向と前記第2方向は略平行であり、
前記膜リーフ内部を移動する淡水と前記塩水流路を移動する塩水との間で正浸透現象が生じて、前記混合水と前記未浸透水が生じる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の正浸透膜モジュールは、膜リーフ内部に仕切りが設けられないので、膜リーフ内部の水流が阻害されることが防止される。これにより、水流の不均一やよどみなどが生じることが低減される。結果として、膜リーフによる浸透能力を十分に発揮することができる。
【0030】
また、主管路と副管路によって膜リーフを挟むことで、淡水に対応する入口と出口、塩水に対応する入口と出口のそれぞれを設けることができる。これにより、発電システムに利用が好適な正浸透膜モジュールを得ることができる。
【0031】
また、膜リーフを移動した淡水は、膜リーフのそれぞれから副管路を通じて排出される。これにより、未浸透水の放出も効率的に行われる。
【0032】
更に、膜リーフ内部を移動する淡水と、膜リーフ同士の隙間を移動する塩水とは、略平行方向の移動方向を持っているので、正浸透現象が効率的に生じる。これにより、正浸透膜モジュールにより得られる混合水のエネルギー増加を効率的に増やすことができる。
【0033】
これらが相まって、浸透能力が高い正浸透膜モジュールが実現でき、海水や濃縮海水などを有効活用した発電システムを実現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】正浸透膜モジュールを用いた発電システムのブロック図である。
図2】正浸透膜で水量増加を継続するためには、海水(濃縮海水)を供給し続けなければならないことを示す模式図である。
図3】正浸透膜を用いた発電での必要条件を示すために正浸透膜と発電能力との相関関係を示すグラフである。
図4】中空糸を用いた正浸透膜の模式図である。
図5】特許文献1、2などの仕切りを用いて淡水の入口と出口を構成する従来技術での問題点を説明する説明図である。
図6】本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの斜視図である。
図7】本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの展開図である。
図8】本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの断面展開図である。
図9】発電装置などに組み込まれることを想定した状態での正浸透膜モジュールの側面図である。
図10】本発明の実施の形態1における膜リーフの収容状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1の発明に係る正浸透膜モジュールは、ケースと、
前記ケースに収容されて、正浸透現象を生じさせる複数の膜リーフと、
前記複数の膜リーフのそれぞれに連通する主管路と、
前記複数の膜リーフのそれぞれに個別に接続し、前記膜リーフのそれぞれと連通する複数の副管路と、を備え、
前記主管路の一方の端部に備わる主管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記副管路の一方の端部であって主管路入口と同じ側に備わる副管路入口から、前記膜リーフ内部に淡水が供給され、
前記主管路において前記主管路入口と逆側に備わる主管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記副管路において前記副管路入口と逆側に備わる副管路出口から、前記膜リーフからの未浸透水が排出され、
前記ケースの入り口であるケース入口から、前記複数の膜リーフ同士の隙間に形成される塩水流路に塩水が供給され、
前記ケースの出口であるケース出口から、前記塩水流路から出る混合水が排出され、
前記膜リーフ内部では、前記淡水が第1方向に移動し、
前記塩水流路では、前記塩水が第2方向に移動し、
前記第1方向と前記第2方向は略平行であり、
前記膜リーフ内部を移動する淡水と前記塩水流路を移動する塩水との間で正浸透現象が生じて、前記混合水と前記未浸透水が生じる。
【0036】
この構成により、膜リーフ5での淡水の移動を効率化して、塩水と淡水との正浸透現象を効率的かつ高い能力で実現できる。
【0037】
本発明の第2の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1の発明に加えて、前記膜リーフは正浸透現象を生じさせ、
前記膜リーフ内部の淡水は、前記膜リーフの正浸透現象によって前記塩水流路の塩水に浸透し、
前記塩水の水量が増加して前記混合水が生じる。
【0038】
この構成により、エネルギー量と圧力を高めた混合水を効率的に得ることができる。
【0039】
本発明の第3の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1または第2の発明に加えて、前記膜リーフでの正浸透現象において浸透せずに残った淡水が前記未浸透水として排出される。
【0040】
この構成により、未浸透水の排出も効率的に行われる。これにより、膜リーフ5の能力維持も行える。
【0041】
本発明の第4の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記主管路入口および前記副管路入口は、前記膜リーフの入力側端部に連通し、
前記主管路出口および前記副管路出口は、前記膜リーフの出力側端部に連通し、
前記主管路入口および前記副管路入口から供給された淡水は、
前記入力側端部から前記膜リーフ内部に入り、
前記第1方向に沿って前記膜リーフ内部を移動し、
前記出力側端部から、前記未浸透水となって、前記主管路出口および前記副管路出口に移動する。
【0042】
この構成により、主管路および副管路から淡水が供給され、主管路および副管路から未浸透水が排出される。これにより、供給と排出との効率化が図られる。
【0043】
本発明の第5の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第4の発明に加えて、前記膜リーフは、
前記入力側端部において、供給される淡水を前記膜リーフ全体に分水する分水ジャケットと、
前記出力側端部において、排出される未浸透水を、前記主管路出口および前記副管路出口に集水させる集水ジャケットと、
を、備える。
【0044】
この構成により、膜リーフ全体の正浸透能力を活用できる。
【0045】
本発明の第6の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第4または第5の発明に加えて、前記主管路は、前記入力側端部に連通する主管路入口孔と前記出力側端部に連通する主管路出口孔を、備え、
前記副管路は、前記入力側端部に連通する副管路入口孔と前記出力側端部に連通する副管路出口孔を、備える。
【0046】
この構成により、淡水の供給が確実に行える。
【0047】
本発明の第7の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記第1方向と前記第2方向は逆向きである。
【0048】
この構成により、正浸透能力が高まる。
【0049】
本発明の第8の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記主管路および前記副管路のそれぞれは、前記淡水と前記未浸透水との混合を防止する、内部仕切りを備える。
【0050】
この構成により、主管路および副管路のそれぞれは、淡水の供給と未浸透水の排出の両方を行える。
【0051】
本発明の第9の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、前記ケースは、前記主管路、前記複数の膜リーフおよび前記複数の副管路を収容し、
前記複数の膜リーフは、前記主管路を中央付近として、スパイラル状に収容される。
【0052】
この構成により、収容効率を高めた状態で、正浸透能力を最大化した正浸透膜モジュールを構成できる。
【0053】
本発明の第10の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第9の発明に加えて、前記主管路は、前記ケース内部の中央付近に位置して収容され、
前記複数の副管路のそれぞれは、前記ケース内部の外縁部に位置して収容される。
【0054】
この構成により、収容効率を高めることができる。
【0055】
本発明の第11の発明に係る正浸透膜モジュールでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、前記混合水は、、発電タービンを回転させるのに用いられる。
【0056】
この構成により、発電装置に最適に使用できる。
【0057】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0058】
(実施の形態1)
【0059】
(発明者による解析)
【0060】
図1は、正浸透膜モジュールを用いた発電システムのブロック図である。従来技術で説明したように、河川、湖沼、地下水などによる天然の淡水を得にくい地域などにおいては、海水を淡水化する海水淡水化施設が用いられる。淡水を得るためである。
【0061】
図1にあるように、海水淡水化施設で淡水が得られる(この淡水は飲料水などの生活用水や公共用水に用いられる)が、同時に塩分濃度が上昇した濃縮海水が生じてしまう。この濃縮海水を土壌に廃棄するのは、土壌の塩化を進めてしまい環境破壊となりえる。あるいは、濃縮海水を海に廃棄することも環境負荷を生じさせてしまう。
【0062】
このような濃縮海水の有効活用のために、図1のような正浸透膜を用いて濃縮海水と淡水(生活用水や公共用水に使用された後で、下水処理施設で浄化された淡水)とを用いて、正浸透膜で淡水から濃縮海水に浸透させる。正浸透膜には濃縮塩水の入る入口と淡水の入る入口とがある。正浸透膜で淡水から濃縮海水に浸透することで、濃縮海水の水量が増加して混合水が得られる。
【0063】
正浸透膜は、混合水の出口と、浸透しきれずに残った淡水である未浸透水の出口とを備える。未浸透水は、淡水であるので、放流される。混合水は水量が増加しており、増加水量と圧力との積分であるエネルギーを持っている。このエネルギーを持った混合水が、発電タービン(水車)を回転させる。
【0064】
このタービン回転により発電される。混合水は、濃縮海水が淡水の浸透で塩分低下している。理論上、海水と同等レベルの塩分濃度となっている。これにより、発電に利用された後の混合水は、海に廃棄されても環境負荷とならない。
【0065】
このように、海水を基点とする、淡水の生成、下水処理、正浸透膜での発電との全体循環を実現できる。正浸透膜による発電に必要な混合水を生成できることが必要な技術である。
【0066】
図2は、正浸透膜で水量増加を継続するためには、海水(濃縮海水)を供給し続けなければならないことを示す模式図である。海水が供給され続けなければ正浸透現象が不十分となってしまい、水量の増加した混合水を得ることができなくなる。これでは、発電を維持できない。よって、海水の供給の継続が必要である。勿論、淡水の供給も継続必要である。結果として、発電に用いられる正浸透膜においては、2つの入口(塩水と淡水)、2つの出口(混合水と未浸透水)が、必要である。
【0067】
図3は、正浸透膜を用いた発電での必要条件を示すために正浸透膜と発電能力との相関関係を示すグラフである。図3のグラフに示されるように、発電での高い正味電力が得られるには、正浸透現象で増加した水量と圧力との積分から、システム全体の消費電力を引いた値が大きいことが必要である。
【0068】
消費電力の低減には限界があり、正浸透膜の性質から圧力の設定も一定に決まる。すなわち、正浸透現象で増加する水量を大きくすることが、正味の高い発電電力を得るために必要である。すなわち、正浸透膜の浸透能力が高いことが必要である。加えて、その前提として、2つの入口(塩水と淡水)、2つの出口(混合水と未浸透水)が、必要である。
【0069】
図4は中空糸を用いた正浸透膜の模式図である。細管である多数の中空糸が高い密度で収納されている。
【0070】
しかし、中空糸は単位領域当たりの浸透能力がスパイラル型に比較して低い。細管であることで、浸透能力に限界があるからである。これは、中空糸に供給される淡水とその外周に供給される塩水との接触面積が小さいことで、単位領域辺りの浸透能力に限界が生じるからである。
【0071】
また、中空糸の正浸透膜は、既に図4のように中空糸が密度一杯まで詰め込む技術開発が進んでおり、改良の余地が少ない問題がある。発明者が中空糸の正浸透膜を用いて実験したところ、図3で示す消費電力を超える十分な発電量を生成することができなかった。
【0072】
このように中空糸の正浸透膜を発電システムに用いることは不十分である。
【0073】
そこで、発明者は、平面空間を持つ膜リーフを基礎とするスパイラル型正浸透膜を活用することを考えた。しかしながら、従来技術で説明した通り、一般的なスパイラル型正浸透膜は、2つの入口と2つの出口を持つことができない。そこで、従来技術で挙げた特許文献1,2のように膜リーフの中に仕切りを設ける。センターパイプの一端を淡水の入口とし、もう一方の端部を膜リーフにおいて仕切りを介してセンターパイプに戻った未浸透水を出す出口とする技術が提案されている。
【0074】
図5は、特許文献1、2などの仕切りを用いて淡水の入口と出口を構成する従来技術での問題点を説明する説明図である。図5のように膜リーフに繋がるセンターパイプの一方の端部から淡水が供給される。淡水は、センターパイプから膜リーフに移動する。膜リーフ内部では、水圧に基づいて、淡水は仕切りを回避するように矢印に沿って移動する(図5の淡水移動経路)。
【0075】
センターパイプは真ん中で仕切られており、膜リーフを移動した淡水は、正浸透現象の後の未浸透水となって、センターパイプの逆端部から排出される。塩水は、膜リーフの外側(膜リーフ同士の隙間)に供給されて移動する。これにより、膜リーフの膜を介して、塩水と淡水とが接触して、正浸透現象が生じる。膜リーフから淡水が塩水側に浸透して、塩水側では水量が増加する。
【0076】
しかしながら、図5に示すように、仕切りを回避するようにして入口側にあるセンターパイプに淡水が戻る移動経路となるため、淡水の流れの悪い領域(図5の三角形部分など)が生じる。流れが悪いと淀みとなり、この領域での浸透能力が下がる。結果として、全体の浸透能力が下がる。
【0077】
よどみを減らすために淡水供給の水圧を上げると、淡水の移動速度が速くなりすぎて、膜リーフを介した塩水への浸透が弱まって、やはり浸透能力を下げてしまう。
【0078】
このように、2つの入口と2つの出口を構成した従来技術の正浸透膜では、浸透膜能力を高めることができない問題があった。
【0079】
発明者はこのような解析に基づいて本発明に至った。
【0080】
(全体概要)
図6は、本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの斜視図である。図6は、正浸透膜モジュール1が使用される状態としての外形を示している。図7は、本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの展開図である。図7は、正浸透膜モジュール1を構成する複数の膜リーフの一つを主管路に対応して展開した状態を示している。
【0081】
正浸透膜モジュール1は、ケース2、複数の膜リーフ5、主管路3,副管路4とを備える。ケース2は、ケース入口21とケース出口22とを備える。図6では、正浸透膜モジュール1の内部構成を分かりやすくするために、ケース2については概略で示している。ケース2は、正浸透膜モジュール1を使用したり組み込んだりするために、より機械的な構造を持っていてもよい。
【0082】
複数の膜リーフ5は、ケース2内部に収容される。膜リーフ5は、正浸透現象を生じさせる。すなわち、膜リーフ5内部に淡水が供給され、膜リーフ5の外部に塩水が供給されると、淡水から塩水に水分が浸透する正浸透現象が生じる。膜リーフ5は、このような正浸透現象を生じさせる。
【0083】
主管路3は、複数の膜リーフのそれぞれに連通している。すなわち、正浸透膜モジュール1に備わる主管路3に、複数の膜リーフ5のそれぞれが繋がっている。繋がっていることに加えて、主管路3に供給される淡水が膜リーフ5のそれぞれに移動できるように連通している。
【0084】
主管路3は、主管路入口31と主管路出口32とを有する。主管路3は、両端を有しており、一方の端部が主管路入口31であり、他方の端部が主管路出口32である。主管路入口31から淡水が供給される。主管路3は、複数の膜リーフ5のそれぞれに連通しているので、主管路入口31から供給された淡水は、複数の膜リーフ5のそれぞれに移動できる。すなわち、主管路入口31からの淡水が、膜リーフ5内部に供給される。
【0085】
また、主管路出口31は、膜リーフ5内部を移動して正浸透現象せずに残った未浸透水を排出する。
【0086】
すなわち、主管路3は、主管路入口31から淡水を供給し、主管路出口32から未浸透水を排出する。主管路3は、入り口と出口とで異なる役割を持つ。
【0087】
複数の副管路4のそれぞれは、複数の膜リーフ5のそれぞれに個別に接続する。すなわち、一つの膜リーフ5に一つの副管路4が接続する。膜リーフ5と副管路4とはセットである。副管路4のそれぞれとこれに接続する膜リーフ5のそれぞれとは連通している。連通によって、副管路4と膜リーフ5とは、水分のやり取りを可能とする。
【0088】
副管路4は、管路であるので両端部を有している。主管路と同様である。副管路4の一方の端部は、副管路入口41である。副管路入口41は、主管路入口31と同じ側に備わる。これは、図6図7に示される通りである。副管路4の他方の端部は、副管路出口42である。副管路出口42は、副管路出口32と同じ側にそなわる。
【0089】
副管路4と膜リーフ5とは連通している。この連通は、副管路入口41と膜リーフ5と連通している。副管路出口42と膜リーフ5とが連通している。副管路入口41からは、淡水が供給される。供給された淡水は、副管路4を通じて、膜リーフ5内部に移動する。すなわち、膜リーフ5内部には、主管路入口31と副管路入口41の両方から淡水が供給される。
【0090】
また、膜リーフ5内部を移動して正浸透現象せずに残った未浸透水は、副管路出口42から排出される。すなわち、副管路4は、入り口と出口とで異なる役割を持つ。副管路入口41から淡水を膜リーフ5に供給し、副管路出口42から膜リーフ5の未浸透水を排出する。
【0091】
図7に示されるように、膜リーフ5には、主管路入口31と副管路入口41とから淡水が供給される。すなわち、膜リーフ5には、異なる管路のそれぞれから淡水が供給される。
【0092】
主管路入口31と副管路入口41とは、膜リーフ5を基準とすると同じ側に備わる。膜リーフ5において、主管路3および副管路4のいずれとも接続されない端部の一方側から、淡水が供給される状態となる(図7では、膜リーフ5の上側から淡水が供給される)。この淡水供給により、膜リーフ5内部で淡水は第1方向に移動する。図7では、上から下に向けて移動する。淡水供給圧力があるので、供給された淡水は、膜リーフ5内部を移動する。
【0093】
膜リーフ5内部を移動する淡水は、膜リーフ5の正浸透現象を受けて、塩水側に淡水の水分が浸透する。この浸透によって膜リーフ5内部には未浸透水が残る。この未浸透水は、主管路出口32と副管路出口42から排出される。主管路出口32と副管路出口42とは、膜リーフ5の同じ側にある。図7であれば、下側である。このため、膜リーフ5内部を第1方向で淡水が移動した結果での未浸透水は、到達した側の主管路出口32と副管路出口42とから排出される。
【0094】
このように、主管路入口31と副管路入口41とが淡水を供給することで、淡水供給の効率が高まる。また、主管路出口32と副管路出口42とが未浸透水を排出することで、未浸透水の排出効率が高まる。
【0095】
また、後述するように、膜リーフ5内部の淡水の移動方向を塩水の移動方向とベクトルを合わせることができるので、正浸透現象効率もあげることができる。
【0096】
複数の膜リーフ5同士の隙間は塩水流路25として形成される。後述するが、複数の膜リーフ5は、ケース2内部でスパイラル状に収容される。この収容状態で、膜リーフ5同士には隙間が生じる。この隙間が塩水流路25である。ケース2のケース入口21から塩水が供給される。この塩水は、ケース入口21と連通する塩水流路25に移動する。
【0097】
塩水流路25では、供給された塩水が移動する。この塩水の移動方向は、第2方向である。第1方向と第2方向とは略平行である。つまり移動方向のベクトルがそろっている状態である。この結果、正浸透現象の効率化が実現される。
【0098】
膜リーフ5は、正浸透現象を生じさせる。正浸透膜を部材としているからである。このため、膜リーフ5内部を移動する淡水と、塩水流路25を移動する塩水との間で正浸透現象が生じる。すなわち、淡水から水分が塩水側に移動する。塩水では、水分量であるエネルギー量が増加した状態となり、移動の過程で、混合水が生じる。一方、膜リーフ5内部では未浸透水が生じる。
【0099】
未浸透水は、上述の通り、主管路出口32と副管路出口42とから排出される。混合水は、塩水流路25を経由して、ケース出口22から排出される。淡水と塩水の移動方向が略平行であることで、正浸透現象の効率が高い。また、従来技術のように、膜リーフ5内部での淡水の移動経路に屈曲などが生じない。これにより、よどみなどが生じず、正浸透現象も効率化される。これらが相まって、膜リーフ5の能力を最大限活用した正浸透現象が生じる。
【0100】
この結果、発電装置などに好適に用いられる混合水を得ることができる。この混合水は塩水の水量が増加して生じており、エネルギー量が増加している。この増加を実現する正浸透現象の効率が、従来技術より高いことで、得られる混合水の使途のメリットが高い。。例えば、供給される塩水が濃縮海水であれば、混合水は30倍程度のエネルギーとなり、海水であれば、混合水は15倍程度のエネルギーとなる。
【0101】
図8は、本発明の実施の形態1における正浸透膜モジュールの断面展開図である。正浸透膜モジュール1を構成する膜リーフ5を広げて展開した状態での断面図を示している。このように、複数の膜リーフ5がケース2内部に収納される。
【0102】
ケース2は、ケース入口21とケース出口22を備える。図6では、使用状態となった正浸透膜モジュール1のケース入口21とケース出口22とが示されている。ケース入口21とケース出口22とは、塩水流路に繋がっており、塩水供給と混合水排出とに連通する。
【0103】
このようにして得られる高いエネルギーの混合水が発電に用いられることで、発電設備などに正浸透膜モジュールが使われる場合でも、非常に効率が高い。このように、本発明の正浸透膜モジュール1は、従来技術の課題を解決し、高効率での混合水を得ることができる。
【0104】
ここで、塩水とは海水など天然に存在する塩分を含んだ水でもよいし、人工的に作られた塩分を含んだ水でもよい。あるいは、淡水化装置により生じた濃縮海水でもよい。
【0105】
また、淡水と塩水とは、正浸透現象を生じさせるための浸透圧の差が生じるものであればよい。このため、淡水とは完全なる淡水だけでなく、塩水流路に供給される塩水よりも塩分濃度の低い水も含む。例えば、濃縮海水が塩水流路に供給され、膜リーフ5に普通の海水が供給されることでもよい。この場合には、塩分濃度が異なり浸透圧の差が生じる。これにより、正浸透現象が生じる。
【0106】
(動作説明)
図6の正浸透モジュール1が、発電装置などに組み込まれて使用される。このとき、正浸透モジュール1は、ケース2に加えて組み込むための外装機構を更に備えていることでもよい。図9は、発電装置などに組み込まれることを想定した状態での正浸透膜モジュールの側面図である。
【0107】
図9では、ケース2に加えて外装機構25が取り付けられている。あるいは、外装機構25は、ケース2に含まれる要素とみなしてもよい。このような外装機構25も含めた状態で使用されればよい。使用での都合に合わされればよい。また、ケース2には、主管路3、複数の副管路4および複数の膜リーフ5が収容される。また、複数の膜リーフ5は、スパイラル状に畳まれて収容される。
【0108】
図6図7に示すように、正浸透膜モジュール1に塩水などが供給され、正浸透現象による混合水が得られる。
【0109】
主管路入口31および副管路入口41から淡水が供給される。供給された淡水は、連通によって、複数の膜リーフ5のそれぞれに供給される。ここで、主管路3内部においては、止水栓36が備わり、副管路4内部においては、止水栓46が備わっている。
【0110】
主管路3と副管路4とは、一方の端部から淡水を供給し、他方の端部から未浸透水を排出する。このため、主管路3内部や副管路4内部で、淡水と未浸透水が混合することは好ましくない。また、供給された淡水を、膜リーフ5に一方向から供給し、生じた未浸透水を一方向から排出する必要がある。
【0111】
このようなことに対応するため、主管路3と副管路4の内部には止水栓36,46が備わっている。止水栓36は、主管路3内部を止めている。このとき、主管路入口31側と主管路出口32側のそれぞれに止水栓36が備わっている。勿論、一つの止水栓が全体に渡っていてもよい。
【0112】
同様に、副管路4内部で止水栓46は、副管路入口41側と副管路入口42側のそれぞれに備わる。これにより、止水栓46は、副管路4内部を止めている。勿論、副管路4内部で、淡水入力と未浸透水排出を混在させない止水栓であればよい。
【0113】
止水栓36があることで、主管路入口31から流入した淡水は、連通する膜リーフ5の一方の端部である入力側端部51から膜リーフ5内部に入っていく。同様に、止水栓46があることで、副管路入口41から流入した淡水は、連通する膜リーフ5の入力側端部から膜リーフ5内部に入っていく。
【0114】
止水栓36,46があることで、主管路3,副管路4内部で、淡水と未浸透水とが混在することもない。勿論、止水栓36,46の位置により、流入した淡水は、膜リーフ5内部に移動できる。
【0115】
膜リーフ5の入力側端部51から供給された淡水は、第1方向に沿って膜リーフ5内部を移動する。この移動の過程で、正浸透現象が生じて、混合水と未浸透水が生じる。混合水は、塩水流路で生じる。未浸透水は膜リーフ5内部で生じる。
【0116】
膜リーフ5内部で生じる未浸透水は、膜リーフ5の出力側端部52に到達する。出力側端部52は、主管路出口32および副管路出口42と連通している。この連通によって、未浸透水は、主管路出口32および副管路出口42から排出される。このときも、止水栓36と36により、主管路出口32と副管路出口42とから、適切に排出される。また、供給される淡水と管路の中で混合されることも防止される。
【0117】
塩水は、塩水流路の入り口から供給され、塩水流路を移動する。塩水流路は、膜リーフ5同士の隙間である。この移動方向は、図7の第2方向である。第1方向と略平行である。この移動状態であるので、正浸透現象が効率よく行われる。淡水と塩水とが移動する過程で、正浸透現象が生じる。移動方向が略平行であるので、効率が高い。勿論、膜リーフ5の内部に従来技術のような仕切りなどが無いことでの効率も高い。
【0118】
正浸透現象では、淡水の水分が塩水流路に浸透して、塩水流路での水分量とエネルギー量が増加していく。混合水は、そのエネルギー量と圧力を増加させている。
【0119】
塩水はケース入口21から供給され、この供給により、塩水流路に塩水が供給される。混合水は、塩水流路の出口から排出される。この出口は、ケース出口22に繋がっており、ケース出口22から混合水が排出される。
【0120】
ケース出口22は、正浸透現象で浸透して生じる混合水を排出する。混合水はエネルギー量を増加させており、図1で説明したような発電装置に用いられる。このとき、膜リーフ5内部では仕切りなどがなく、淡水の水流は内部で満遍なく生じ、滞留部分などが生じない。また、塩水も膜リーフ5同士の隙間を満遍なく移動するので、膜リーフ5の大きさや形状に対しての正浸透現象の効率低下や能力低下が生じない。膜リーフ5全体を有効活用して正浸透現象が生じる。
【0121】
また、上述の通り、淡水と塩水の移動方向が略平行なので、この点でも、正浸透現象の効率性が高い。
【0122】
これにより、得られる混合水のエネルギー増加は、従来技術より高く、発電装置などで用いるのに好適である。
【0123】
またケース2の内部に複数の膜リーフ5が収容されている。このため、一つの正浸透膜モジュール1で、非常に多くの混合水を得ることができる。混合水がエネルギー増加していることと併せて、多くの量の混合水を得ることができることでも、発電装置などに用いるのに好適である。
【0124】
未浸透水は、主管路出口32と副管路出口42とから排出される。未浸透水は淡水であるので、そのまま排出されても環境問題とならない。
【0125】
混合水は、淡水からの正浸透現象を受けているので、供給された段階の塩水よりも塩分濃度を低下させている。このため、混合水は発電装置などに利用された後で、排出されても環境負荷は生じない。例えば、塩水として海水あるいは濃縮海水(濃縮塩水)が用いられたとしても、混合水は海水と同等あるいはそれ以下の塩分濃度となっている。このため、混合水が海中廃棄されても、海洋への負荷を生じさせない。
【0126】
このように、本発明の正浸透膜モジュール1は、膜リーフ5の能力を最大化して、発電装置などに最適に利用できる混合水を得ることができる。加えて、環境負荷も抑えることができる。
【0127】
次に、各部の詳細について説明する。
【0128】
(塩水供給)
ケース入口21から膜リーフ5同士の隙間に供給された塩水は、膜リーフ同士の隙間である塩水流路に入って移動する。このとき、塩水として海水、濃縮海水、人工的に作られた塩水などが用いられればよい。
【0129】
この塩水と膜リーフ5内部を移動する淡水との間で正浸透現象が生じる。膜リーフ5内部の淡水が、外部に浸透して、塩水の水量が増加して混合水が生じる。
【0130】
(膜リーフ)
複数の膜リーフ5は、ケース2内部においてスパイラル状に収容される。図10は、この状態を示している。図10は、本発明の実施の形態1における膜リーフの収容状態を示す断面図である。
【0131】
図10に示されるように、主管路3を中央として、これに接続する複数の膜リーフ5が、スパイラル状になっている。このスパイラル状で収容されることで、ケース2内部での膜リーフ5の収容密度を上げることができる。また、正浸透膜モジュール1の大きさを小型化しつつ使用容易性を上げることもできる。
【0132】
スパイラル状に収容されても、膜リーフ5同士には隙間が生じる。この隙間が塩水流路である。ケース入口21とケース出口22は、この塩水流路と連通する。この連通によって、ケース入口21から供給された塩水は、塩水流路に入る。また、塩水流路を移動して生じる混合水は、ケース出口22から排出される。
【0133】
膜リーフ5は、一方側の端部において複数の膜リーフ5全部が共通して主管路3と接続する。逆側の端部において、複数の膜リーフ5のそれぞれは、個別に副管路4と接続する。膜リーフ5は、入力側端部51で主管路入口31と副管路入口41と連通する。膜リーフ5は、出力側端部52で、主管路出口32と副管路でぐち42と連通する。これにより、供給された淡水の内部での移動と、生じる未浸透水の排出とを実現できる。
【0134】
このような構造により、主管路3に供給された淡水は、膜リーフ5内部に移動できる。また、淡水供給時の水圧により、膜リーフ5内部での淡水移動も生じる。
【0135】
既述したように、膜リーフ5内部を移動する淡水と、塩水流路である膜リーフ5同士の隙間を移動する塩水とが、膜リーフ5の膜を介して接触する。この接触により、正浸透現象が生じて、淡水から塩水に向けて水分が浸透し、塩水側の水分量が増加して混合水が生じる。この増加により、混合水はエネルギー量を増加させている。
【0136】
また、主管路3は、膜リーフ5の入力側端部51に連通する主管路入口孔を有する。加えて、主管路3は、膜リーフ5の出力側端部52に連通する主管路出口孔を有する。同様に、副管路4は、膜リーフ5の入力側端部51に連通する副管路入口孔を有する。加えて、副管路4は、膜リーフ5の出力側端部52に連通する副管路出口孔を有する。
【0137】
主管路入口孔および副管路入口孔から、淡水が膜リーフ5内部に供給される。また、主管路出口孔および副管路出口孔から、未浸透水が排出される。
【0138】
(移動と排出)
ケース入口21とケース出口22は、塩水流路と連通する。これにより、塩水供給と混合水排出とが実現される。塩水供給での水圧に基づいて、塩水は塩水流路を移動する。
【0139】
ここで、図10のように、複数の膜リーフ5は、スパイラル状に畳まれてケース2に収容される。このため、複数の膜リーフ5同士の隙間は多数存在し、供給される塩水は、これらの多数の隙間を移動する。すなわち、これら多数の隙間が塩水流路である。これら多数の隙間を塩水が移動することで、大きな表面積に基づく正浸透現象が実現できる。
【0140】
この結果、混合水がケース出口22から排出される。この混合水は、発電装置などに利用される。
【0141】
また、ケース入口21が、塩水と淡水の供給の両方に対応することもよい。例えば、ケース入口21は塩水用と淡水用との二つの入り口と通路を持っており、ケース入口21が、主管路入口31および副管路入口41と塩水流路との両方に連通している。これにより、ケース入口21から淡水と塩水の両方を供給できる。
【0142】
このようにケース2全体となったときに、入り口を集約させることで、正浸透膜モジュール1の使用を容易化できる。
【0143】
もちろん、淡水と塩水の供給入口と、混合水と未浸透水の排出出口とが、共通化されていなくてもよい。使い勝手の良い構造であればよい。
【0144】
上述した通り、淡水は第1方向に移動し、塩水は第2方向に移動する。第1方向と第2方向とは略平行である。このとき、図7のように、第1方向と第2方向が逆向きでもよい。勿論、ケース入口21とケース出口22と逆向きにすることで、第1方向と第2方向を同じ向きにすることもよい。
【0145】
(主管路と副管路)
主管路3は、ケース2内部の中央付近に位置して収容される。図6図10にはこの態様が示されている。また、複数の副管路4のそれぞれは、ケース2内部の外縁部に位置して収容される。
【0146】
このような収容位置により、ケース2内部での収容効率が高まる。また、淡水と塩水の供給、正浸透現象、混合水と未浸透水の排出とのそれぞれを、効率よく配置できる。
【0147】
また、中央付近の主管路3と周縁部にある副管路4とから供給された淡水は、中央と周縁部から、膜リーフ5に入ってくる。このため、非常に強い圧力と勢いをもって流入する。また、膜リーフ5を経過した未浸透水は、中央と周縁部から排出される。
【0148】
既述したように、従来技術のような膜リーフ5内部の仕切りや移動方向の変化がないことで、滞留部分が生じず膜リーフ全体を活用した効率的な正浸透現象を生じさせる。この結果、エネルギー量の増加した混合水を得ることができる。
【0149】
実施の形態1における正浸透膜モジュール1は、高いエネルギー増量の混合水を得ることができ、混合水を用いた発電装置などに好適に利用できる。混合水が発電タービンを回転させるのに用いられるからである。
【0150】
本発明の正浸透膜モジュール1が発電装置に利用されることで、塩水が入手できる様々な場所での発電が実現される。これは、火力、風力、水力発電などが設置できない場所にもできることになり、電力供給の難しい地域でも、電力供給ができることに繋がる。海の近く、塩湖の近くなどでの発電が可能となる。このため、火力や水力などの設置が難しかった途上国や内陸地域でも電力供給を行える。結果として、世界や地域の発展にもつながる。
【0151】
(実施の形態2)
【0152】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、各種のバリエーションについて説明する。
【0153】
(分水ジャケットと集水ジャケット)
【0154】
膜リーフ5は、入力側端部51において、供給される淡水を膜リーフ5全体に分水する分水ジャケット55を備えることも好適である。入力側端部51において、その一方から主管路入口31からの淡水が、逆から副管路入口41からの淡水が入る。
【0155】
ここで、入力側端部51には、分水ジャケット55が備わる。例えば、入ってきた淡水を、分割して移動させる部材が並んでいる。図7は、これを示している。このような部材が並んでいることで、入っていた淡水は分割されて膜リーフ5内部を移動するようになる。すなわち、分水される。
【0156】
分水ジャケット55で分水されると、淡水は、膜リーフ5全体を使って満遍なく移動するようになる。当然に、膜リーフ5の全体能力を活用した正浸透現象を生じさせることができる。
【0157】
ここで、分水ジャケット55は、図7に示されるように、膜リーフ5の淡水が入る側に、複数の部材551が間隔をもって並んで取り付けられることで構成される。図7では、複数の部材551が間隔をもって配置されている。また、複数の部材551は、膜リーフ5の端面とも間隔を有しており、この間隔は、膜リーフ5の横方向に沿った通路552を形成する。
【0158】
図7に示されるように、膜リーフ5の淡水が入ってくる端部側において、横方向に沿った通路552と、通路552を形成する複数の部材551が並ぶように配置されている。主管路3から入った淡水は、この通路552を横方向に移動しながら、複数の部材551同士の間隔隙間から膜リーフ5を第1方向に向けて移動する。
【0159】
このような移動により、主管路3から入った淡水は、膜リーフ5の幅方向(横方向)全体を使いながら、膜リーフ5内部を第1方向に移動する。これにより、膜リーフ5の正浸透現象の能力を最大限に活用できる。
【0160】
同様に、膜リーフ5は、出力側端部52において、排出される未浸透水を、主管路出口32と副管路出口42とに集水させる集水ジャケット56を備えることも好適である。集水ジャケット56も、出力側端部52に備わる部材であり、図7のようなものであればよい。膜リーフ5全体を移動してきた未浸透水をいったん集めて、それを排出方向に収束させる。このように集水された未浸透水は、そのまま主管路出口32と副管路出口42とから排出される。集水された上で排出されるので、排出効率が良い。集水ジャケット56が備わっていることによる。
【0161】
集水ジャケット56も、図7に示されるように、複数の部材561が間隔をもって並んでいることで構成される。これにより、膜リーフ5の未浸透水の出口側の端面と隙間を作る。この隙間が、通路562となる。
【0162】
膜リーフ5を移動する過程で生じる未浸透水は、膜リーフ5の集水ジャケット56側の端部に移動する。膜リーフ5の幅方向(横方向)全体を通じて移動してくる未浸透水であるので、この未浸透水は、複数の部材562の隙間のそれぞれに入っていく(隙間は、部材562同士の間隔で生じる)。
【0163】
この隙間から入った未浸透水は、通路562に移動する。通路562は、膜リーフ5の端面で閉じられているので、通路562に到達した未浸透水は、左右に分かれる。この左右に分かれることで、未浸透水は通路562を通じて、主管路3と副管路4とから排出されるようになる。
【0164】
集水ジャケット56によって幅方向に移動してきた未浸透水も、主管路3と副管路4とから確実にかつ効率よく排出されるようになる。
【0165】
このように、分水ジャケット55と集水ジャケット56により、膜リーフ5全体の正浸透現象の能力を活用できると共に、効率的に未浸透水を排出することができる。
【0166】
なお、部材551、561のそれぞれは、膜リーフ5を構成する部材と一体で形成されてもよいし、別体で形成されて装着されることでもよい。
【0167】
(混合水の利用)
混合水は、発電装置などに用いられればよい。例えば、発電装置の発電タービンを回転させるのに用いられる。混合水は、エネルギー量を増加させているので、発電タービンの回転に好適に使用できる。
【0168】
また、混合水は正浸透現象で塩分濃度が薄められているので、未浸透水と共に外界放出されても、環境負荷を生じさせない。
【0169】
以上のように、実施の形態2の正浸透膜モジュール1は、より効率を高めることができる。
【0170】
なお、実施の形態1~2で説明された正浸透膜モジュールは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0171】
1 正浸透膜モジュール
2 ケース
21 ケース入口
22 ケース出口
3 主管路
31 主管路入口
32 主管路出口
36 止水栓
4 副管路
41 主管路入口
42 副管路出口
46 止水栓
5 膜リーフ
51 入力側端部
52 出力側端部
55 分水ジャケット
56 集水ジャケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10