IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特開2023-12489接着剤組成物および官能化ポリプロピレンを含む多層構造物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012489
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】接着剤組成物および官能化ポリプロピレンを含む多層構造物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20230118BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20230118BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C08L23/26
C08L23/10
B32B27/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169147
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2018510402の分割
【原出願日】2016-08-16
(31)【優先権主張番号】62/212,414
(32)【優先日】2015-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】イ-ファ イ
(72)【発明者】
【氏名】チエン ドン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多層共押出構造物において、高い接着性、良好な構造強度および他の所望の機械的特性を低コストで提供する、接着剤組成物を提供する。
【解決手段】望ましい範囲のメルトフローレートを有する官能化ポリプロピレン接着剤組成物が提供される。これらの組成物は、少なくとも1種の耐衝撃性ポリプロピレンコポリマーをグラフトすることによって、または少なくとも1種の耐衝撃性ポリプロピレンコポリマーと、少なくとも1種のランダムポリプロピレンコポリマーとを含有するブレンドを共グラフトすることによって得られる。ポリプロピレンコポリマーは、1種もしくは複数種のエチレン性不飽和カルボン酸または酸無水物など、これらの酸の誘導体でグラフトされる。無水マレイン酸が好ましいグラフト化モノマーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水物グラフト化インパクトco-PPを含むポリプロピレン組成物であって、前記無
水物グラフト化インパクトco-PP中のグラフト化無水物モノマーの重量百分率(G)
と、前記無水物グラフト化インパクトco-PPのメルトフローレート(M)とが、式(
G/M)*100≦0.5で、好ましくは式0.2≦(G/M)*100≦0.5で関連付
けられ;2.16kg荷重下、230℃での前記メルトフローレートが測定されるかまた
は計算され;前記重量百分率は、前記無水物グラフト化インパクトco-PPの総重量を
基準とし;好ましくは前記少なくとも1種のインパクトco-PPが、グラフト化前の前
記インパクトco-PPの総重量を基準として、約10重量%以上のエチレンの共重合単
位を含む組成物。
【請求項2】
325g荷重下、190℃でASTM D-1238に従って測定される、4.0~3
2g/10分のメルトフローレートを有するか、または140~900g/10分、好ま
しくは200~600g/10分であると測定される2.16kg荷重下、230℃での
メルトフローレートを有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項3】
前記グラフト化組成物が、無水物グラフト化インパクトco-PPの総重量を基準とし
て、0.5重量%~4重量%のグラフト化無水物単位;好ましくは0.5重量%~2.5
重量%のグラフト化無水物単位または1.2重量%~1.65重量%のグラフト化無水物
単位を含む、請求項1または請求項2に記載のポリプロピレン組成物。
【請求項4】
前記無水物が無水マレイン酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピ
レン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物であって、ランダムco-
PP、インパクトco-PP、およびホモポリプロピレンからなる群から選択される少な
くとも1種の非グラフト化ポリプロピレンとブレンドされ;任意選択的に、炭化水素エラ
ストマー、スチレンコポリマー、エチレンアルファ-オレフィンコポリマー、およびプロ
ピレンアルファ-オレフィンコポリマーからなる群から選択される1種もしくは複数種の
弾性ポリマーとさらにブレンドされ;好ましくは前記炭化水素エラストマーが、エチレン
プロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン-ブタジエン熱可塑性ゴム、
スチレン-イソプレン熱可塑性ゴム、ブチルゴム、およびポリイソブチレンからなる群か
ら選択され;好ましくは前記ポリプロピレン組成物が、前記ポリプロピレン組成物の総重
量を基準として、約65重量%~約95重量%の少なくとも1種の非グラフト化ポリマー
、または2種以上の非グラフト化コポリマーの組み合わせを含み、任意選択的に30重量
%以下の前記1種もしくは複数種の弾性ポリマーを含む組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物であって、少なくとも1種
のグラフト化ランダムco-PP、少なくとも1種のさらなるグラフト化インパクトco
-PP、少なくとも1種のグラフト化ホモポリプロピレン、またはそれらの2種以上の組
み合わせとブレンドされ;好ましくは前記ポリプロピレン組成物が、前記ポリプロピレン
組成物の総重量を基準として、約5重量%~約35重量%の少なくとも1種のグラフト化
ポリプロピレン、または2種以上のグラフト化ポリプロピレンの組み合わせを含む組成物
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む乾燥ブレンドまたは
溶融ブレンド。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層
を含む多層構造物であって;好ましくは前記多層構造物が3層構造物である多層構造物。
【請求項9】
請求項8に記載の多層構造物であって、サブストラクチャー「PP*/B」または「P
Pタイ/B」を含み、ここで、前記記号「/」は隣接層を意味し、前記記号「B」は、バ
リア樹脂を含む少なくとも1つの層を含むバリア構造物を意味し、前記記号「PP*」は
、前記ポリプロピレン組成物を含むバルク層を意味し、前記記号「PPタイ」は、前記ポ
リプロピレン組成物を含む接着剤層を意味し;好ましくは「PPタイ/B/PPタイ」、
「PPタイ/B/タイ」、「PP*/B/PP*」、「PP*/B/PE*」、および「
PPタイ/B/PEタイ」からなる群から選択されるサブストラクチャーを含み、ここで
、前記記号「タイ」は、グラフト化インパクトco-PPまたは共グラフト化インパクト
co-PPを含まない接着剤層を意味し;前記記号「PE*」は、ポリエチレンおよびエ
チレンコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーと、無水物グラフト化ポリ
エチレンおよび無水物グラフト化ポリエチレンコポリマーからなる群から選択される無水
物グラフト化ポリマーとを含むバルク層を意味し;前記記号「PEタイ」は、ポリエチレ
ンと、無水物グラフト化ポリエチレンおよび無水物グラフト化ポリエチレンコポリマーか
らなる群から選択される無水物グラフト化ポリマーとを含む接着剤層を意味し;前記サブ
ストラクチャー「PP*/B/PP*」中の前記2つのPP*層が、同じもしくは異なる
ものであり;前記サブストラクチャー「PPタイ/B/PPタイ」中の前記2つのPPタ
イ層が、同じもしくは異なるものである、多層構造物。
【請求項10】
前記バリア樹脂が、EVOH、ポリアミド、またはEVOHとポリアミドとの組み合わ
せを含み;好ましくは前記バリア構造物が、サブストラクチャー「PA/EVOH/PA
」を含み、ここで、前記記号「EVOH」はエチレンとビニルアルコールとのコポリマー
を含む層を意味し;前記記号「PA」はポリアミドを含む層を意味する、請求項9に記載
の多層構造物。
【請求項11】
前記少なくとも1つの層が、配向フィルム;金属箔;ならびに織布もしくは不織布、網
およびスクリムからなる群から選択される第2層に接着しており;任意選択的に前記第2
層がケミカルプライマーでコートされている、請求項8、9または10に記載の多層構造
物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む物品であって、前記
物品が、インフレーションフィルム成形法、キャストフィルム法、キャストシート法、共
押出コーティング法、共押出積層法、および共射出成形法からなる群から選択される方法
によって製造され;前記共射出成形法は好ましくは共射出延伸ブロー成形法である物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年8月31日出願の、米国仮特許出願第62/212,414号に
対する米国特許法第119条の下での優先権を主張するものであり、この出願は、その全
内容を参照により本明細書に援用される。
【0002】
化学的に官能化されたポリプロピレンコポリマー組成物が本明細書に記載される。特に
、本組成物は接着剤である。さらに、これらの接着剤を含有する多層フィルム構造物、多
層シート構造物、および硬質包装容器が提供される。
【背景技術】
【0003】
いくつかの特許および刊行物が、本発明が関連する最新技術をより十分に説明するため
にこの説明に引用される。これらの特許および刊行物のそれぞれの全体開示は、本明細書
に参照により援用される。
【0004】
包装フィルムおよびシートはますます、共押出システムによって製造されている。これ
らのシステムは、次々に、絶えずさらに洗練されつつある。それ故、インフレーションフ
ィルム、キャストフィルム、射出成形、シート/ボトルなどの、様々な共押出システムに
よって製造することができるポリマーを開発することが有利である。数年前は、3~5層
構造物を共押出することができる機械を有することが一般的であったが、今日では、機械
が9つ以上の層を、例えばこれらの層を供給するために等しい数の押出機を用いることに
よって、共押出することが日常的である。
【0005】
これらの複雑な多層構造物を製造するための2つの共通方法は、共射出成形および射出
延伸分離ブロー成形である。これらの方法の例は、それぞれ、米国特許第6,974,5
56号明細書に、および欧州特許出願公開第2305751A1号明細書に詳細に記載さ
れている。これらのおよび他の新規共押出システムは、多くのタイプのポリマーが一緒に
使用されることを可能にする。有利には、これらの多層構造物は、低い水、ガスまたは香
味料透過性;靱性;密封性;光沢;透明性;または耐衝撃性などの、包装構造物に必要と
される可能性がある多くの特性のより良好な調整を可能にする。これらの調整構造物はま
た、例えばそれらがより少量のより高価な構成要素を組み入れている場合には、より低い
全体原材料費を有し得る。
【0006】
多くの包装フィルムおよびラミネートは、ガスおよび香味料の輸送に対するバリアを提
供するためにポリアミドまたはエチレンとビニルアルコールとのコポリマー(EVOH)
などの極性ポリマーの層を含有する。共押出ブローンおよびキャストシステムにおける押
出機の数を増加させることで、包装フィルムもしくはシートが1つもしくは複数のポリア
ミド層と1つもしくは複数のEVOH層とのいくつかの組み合わせを含むこともまた一般
的である。バリアコアまたは「バリアサンドイッチ」として使用される3層組み合わせは
、ポリアミド/EVOH/ポリアミド層の共押出を含み、バリア特性および成形性を向上
させるために包装フィルムおよびシートに広く用いられている。
【0007】
多くのケースで、共押出構造の外側は、プロピレンポリマーからなる。「外側」は、外
層、より具体的には、「内側」からバリアフィルムの反対側にある層を含む。内側は1つ
もしくは複数の内層を含み、包装材料のケースでは最内層が包装内容物と接触する。軟質
フィルムについては、プロピレンポリマーは、剛性および防湿特性を提供する。それらは
また、フィルムラミネートが、そのようなラミネートのヒートシール中にシーリングバー
と接触するときに変形するのを防ぐより高い耐温度性を提供する。シールバーの温度は、
有利な商業生産にとって必要な短い接触時間内に熱がシールバーから内部シーラント層ま
で移動しなければならないので、特により厚いラミネートについては、非常に高いことが
できる。共押出された熱成形シート、ボトルおよび共射出成形部品などの、硬質構造物は
、剛性、物理的強度、防湿特性、ならびにパッケージの内容物が調理されるおよび滅菌さ
れることを可能にする高い耐温度性のためのバルキング層としてプロピレンホモポリマー
およびコポリマーを頻繁に用いる。
【0008】
EVOHを含むものなどの極性バリア層が多くの場合、結果として生じたパッケージが
冷凍の必要性なしに常温保存可能な製品として商業的に実現可能であるように、ポリプロ
ピレン層と併せて用いられる。ポリプロピレン層およびバリア層を持ったこれらの様々な
包装構造物は、非極性ポリプロピレン層を極性バリア層に接合するために接着剤層を必要
とする。接着剤層は、様々な包装材料における異なる接合要件に機能的性能を提供するた
めに処方の複雑さの点で変わり得る。例えば、包装材料は、3層、5層、7層、13以下
の層、または13超の層を含有する構造を有する可能性がある。共押出プロセス中にポリ
オレフィンで希釈することができる、接着剤コンセントレートは、異なる要件に適応する
点で柔軟性をコンバーターに提供し、コンバーターが必要な場合に構造層を接着剤層とし
て同様にうまく使用することを可能にし、ポリオレフィン希釈剤とあらかじめ調合されて
いる接着剤組成物よりも経済的であることができる。
【0009】
ポリプロピレンが高レベルのグラフト化無水マレイン酸で官能化されているポリプロピ
レンベースの接着剤コンセントレートは典型的には、過酸化物の存在下での、「ベータ切
断」または「ビスビレーキング」とも一般に言われる、鎖切断へのプロピレンポリマーの
傾向のために、同等マレイン化のポリエチレンベースの接着剤コンセントレートよりも低
い分子量を有する。理論に制約されることなく、十分に低い分子量を有する官能化ポリプ
ロピレン分子は、接着剤または「タイ」層の大半から極性ポリマーとの接合部分へ移行す
るに違いないと考えられる。そこで、官能化低分子量ポリプロピレン分子は、極性ポリマ
ーと化学反応するために、または極性ポリマーと他の接着相互作用を形成するために利用
可能である。しかし、不都合にも、低分子量グラフト化ポリプロピレン接着剤は、処理す
るのが困難であり、ペレット化するのが困難であり、そしてより低い接着強度を有すると
記載されてきた。
【0010】
共押出プロセスにおいて、接合される必要がある異種層は、いくつかのプロセスについ
てのライン速度が非常に高い商業生産において特に、非常に短い時間融解接着剤と接触す
る。それ故、有用なポリプロピレン接着剤は、高速共押出プロセスにおいて良好な接着強
度を提供し、そしてより低い分子量に関連した1つもしくは複数の不利点、例えば、剛性
および湿分移動速度などの、物理的特性の不足、ならびにペレット化の困難さを回避しな
がら、短い接触時間の間に極性ポリマーとの接合部分に移行するのに十分に分子量が低い
、好適な量の官能化ポリプロピレン分子を有する。
【0011】
マレエートグラフト化ポリプロピレンの有効分子量を増加させるためのいくつかのアプ
ローチが記載されてきた。例えば、好ましくは比較的低いMFRを維持しながら、より多
い量のグラフト化酸または酸誘導体を有する官能化プロピレンポリマー生成物を記載して
いる、米国特許第6,716,928号明細書を参照されたい。これらのグラフト化ポリ
マーはまた、ブレンドへと調合され得る。カップリング剤/相溶化剤としての2つの異な
る官能化プロピレンポリマーの混合物を含む組成物の使用を記載している、米国特許第7
,071,259号明細書もまた参照されたい。最後に、米国特許第5,451,639
号明細書は、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸またはカルボン酸誘導体でグラフトさ
れたプロピレンコポリマー、グラフト化プロピレンコポリマーの合成方法、および接着促
進剤としてのグラフト化プロピレンコポリマーの使用を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それにもかかわらず、2もしくは3層から13超の層までを有する多層共押出構造物に
おいて、高い接着性、良好な構造強度および他の所望の機械的特性を低コストで提供する
、接着剤組成物が、特に接着剤コンセントレートが依然として必要とされていることは前
述から明らかである。多層共押出構造物は、特に包装用途に有用であり、おまけに他の有
用なおよび有益な用途を有する。多層共押出構造物は、食品包装材料にとりわけ有用であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
酸無水物グラフト化耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー(「耐衝撃性co-PP」)を
含むポリプロピレン組成物であって、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PP中のグラフ
ト化酸無水物モノマーの重量百分率(G)と、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PPの
メルトフローレート(M)とが、式(G/M)*100≦0.5で関連付けられ;2.1
6kg荷重下に230℃でのメルトフローレート(M)が測定されるかまたは計算され;
重量百分率が、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PPの総重量を基準とする組成物が本
明細書で提供される。
【0014】
さらに、少なくとも1種の耐衝撃性co-PPと少なくとも1種のランダムポリプロピ
レンコポリマー(「ランダムco-PP」)との共グラフト化ブレンドを含むポリプロピ
レン組成物であって、耐衝撃性co-PPおよびランダムco-PPが、エチレン性不飽
和カルボン酸およびエチレン性不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択されるグラ
フト化モノマーで共グラフトされている組成物が本明細書で提供される。
【0015】
さらに、共グラフト化ブレンドの製造方法が本明細書で提供される。この方法において
、ポリプロピレンコポリマーのブレンドが、二軸スクリュー押出機内で溶融混合され、有
機過酸化物の存在下に無水マレイン酸で同時にランダムにグラフトされる。未反応無水マ
レイン酸モノマーは、例えば、真空抽出によって除去することができる。
【0016】
さらに、ポリプロピレン組成物を含む多層構造物が本明細書で提供される。多層構造物
は、サブストラクチャー「PP*/B」または「PPタイ/B」(ここで、記号「/」は
隣接層を意味し、記号「B」は、バリア樹脂を含む少なくとも1つの層を含むバリア構造
物を意味し、記号「PP*」および「PPタイ」は、ポリプロピレン組成物を含む層を意
味する)を含む。加えて、多層構造物の総容積を基準として、そして層厚さが一定である
と仮定して、「PP*」と称される層は20容積%超の容積を有し、「PPタイ」と称さ
れる層は5~8容積%の容積を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特に定義しない限り、本明細書に用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発
明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細
書に記載されるものと同様のまたは同等の方法および材料を本実施形態の実施または試験
において使用することができるが、好適な方法および材料は、以下に記載される。本明細
書に記載される材料、方法、および実施例は、例示的であるにすぎず、限定的であること
を意図されない。特に定義しない限り、数範囲は、両終点および終点間のすべての値を含
む。
【0018】
本明細書で用いるところでは、用語「含む(comprises)」、「含む(com
prising)」、「含む(includes)」、「など(including)」
、「有する(has)」、「有する(having)」、「含有する(contains
)」、「含有する(containing)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他
的包含を意味する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、もしくは装置は
、それらの要素に必ずしも限定されず、明らかにリストアップされない、またはそのよう
なプロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含んでもよい。
【0019】
移行句「から本質的になる」は、クレームの範囲を、明記される材料もしくは工程なら
びに特許請求される本発明の基本的および新規特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限
定する。「‘から本質的になる’クレームは、‘からなる’フォーマットで書かれる閉鎖
クレームと、‘含む’フォーマットで起草される完全開放クレームとの妥協点を占める」
。発明またはその一部が、「含む(comprising)」などの開放端用語で記載さ
れる場合、具体的な状況で特に明記しない限り、この記載はまた、用語「からなる」およ
び「から本質的になる」を用いる本発明の記載を含むと理解されるべきである。
【0020】
さらに、それとは反対を特に明記しない限り、「または」は、包括的な「または」を意
味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、下記のいずれか1
つによって満たされる:Aが真であり(または存在し)かつBが偽である(または存在し
ない)、Aが偽であり(または存在せず)かつBが真である(または存在する)、ならび
にAおよびBが両方とも真である(または存在する)。
【0021】
また、「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、本発明の要素および成分
を記載するために用いられる。これは、便宜上、および本発明の一般的な意味を与えるた
めに行われるにすぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれる
べきであり、そして単数形はまた、それが別の意味を有することが明らかでない限り複数
形を含む。
【0022】
本明細書で用いるところでは、用語「約」は、量、サイズ、処方、パラメータ、ならび
に他の量および特性が正確ではない、そして正確である必要がないが、許容値、換算係数
、四捨五入、測定誤差など、ならびに当業者に公知の他の因子を反映して、要望に応じて
、近似していてもおよび/またはより大きくてももしくはより小さくてもよいことを意味
する。一般に、量、サイズ、処方、パラメータまたは他の量もしくは特性は、そうである
と明記されるかどうかに関わりなく「約」または「おおよそ」である。
【0023】
加えて、本明細書に示される範囲は、限定状況で特に明記しない限りそれらの終点を含
む。さらに、量、濃度、または他の値もしくはパラメータが、範囲、1つもしくは複数の
好ましい範囲、または上方の好ましい値および下方の好ましい値のリストとして与えられ
る場合、これは、任意の範囲上限または好ましい値と、任意の範囲下限または好ましい値
との任意の対から、そのような対が別個に開示されるかどうかにかかわらず、形成された
すべての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。
【0024】
さらに、数値の範囲が本明細書で列挙される場合、具体的な状況で特に明記しない限り
、この範囲は、それらの終点、ならびに範囲内のすべての整数および分数を含むことを意
図する。本発明の範囲が範囲を規定するときに列挙された特定の値に限定されることは意
図されない。最後に、用語「約」が値または範囲の終点を表すのに用いられる場合、この
開示は、言及される特定の値または終点を含むと理解されるべきである。
【0025】
本明細書で用いるところでは、用語「コポリマー」は、2種以上のコモノマーの共重合
から生じる共重合単位を含むポリマーを意味する。これに関連して、コポリマーは、その
構成成分コモノマーに、またはその構成成分コモノマーの量に関して、例えば「エチレン
および15重量%のアクリル酸を含むコポリマー」、または類似の記載で本明細書に記載
されてもよい。そのような記載は、それが共重合単位としてのコモノマーに言及していな
いという点において;それがコポリマーについての従来の命名法、例えば、国際純正応用
化学連合(IUPAC)命名法を含んでいないという点において;それが生成物-バイ-
プロセス専門用語を用いていないという点において;または別の理由で非公式と考えられ
てもよい。しかし、本明細書で用いるところでは、その構成成分コモノマーにまたはその
構成成分コモノマーの量に関してのコポリマーの記載は、コポリマーが特定されたコモノ
マーの共重合単位を(特定される場合に特定された量で)含有することを意味する。当然
の結果として、コポリマーは、そのようなものであると限定状況で明記しない限り、所与
のコモノマーを所与の量で含有する反応混合物の生成物ではないことになる。
【0026】
本明細書で用いるところでは、用語「有限量」は、ゼロよりも大きい量を意味する。
【0027】
用語「官能化する」は、本明細書で用いるところでは、それにより反応性モノマーが、
共有結合によって、ポリマー骨格に、例えばポリプロピレンホモポリマーまたはコポリマ
ー骨格に結合するフリーラジカルグラフト反応に関する。
【0028】
用語「グラフト化剤」および「グラフト化モノマー」は同じ意味であり、エチレン性不
飽和カルボン酸、エチレン性不飽和カルボン酸の無水物、およびエチレン性不飽和カルボ
ン酸の他の誘導体を意味するために本明細書では同じ意味で用いられる。
【0029】
限定状況下で特に明記しない限り、すべての測定される融点、融解エンタルピーおよび
融解熱は、ASTM D3418の仕様に従って、第2加熱スキャンにおいて10℃/分
のスキャン速度で示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。
【0030】
最後に、限定状況下で特に明記しない限り、すべての測定メルトフローレートは、AS
TM方法D1238に従って測定される。さらに、メルトフローレートとの関連で本明細
書で用いるところでは、用語「測定すること」は、規定の条件下で行われた測定値に、お
よびまた、他の条件下で行われ、そして例えば、相関によってかまたは外挿によって、規
定の条件下での測定に相当する値に換算される測定値に関する。
【0031】
接着剤組成物が本明細書で提供される。接着剤組成物は、エチレン性不飽和カルボン酸
またはエチレン性不飽和カルボン酸の誘導体で官能化されている1種もしくは複数種のポ
リプロピレンコポリマーを含むポリプロピレン組成物である。
【0032】
好適なポリプロピレンコポリマーには、耐衝撃性ポリプロピレンコポリマー(耐衝撃性
co-PP)およびランダムホモ相ポリプロピレンコポリマー(ランダムco-PP)が
含まれる。耐衝撃性co-PPは、「ブロックco-PP」または、より正式には、「均
質混合ヘテロ相co-PP」と言われることがある。意外にも、少なくとも1種のグラフ
ト化耐衝撃性co-PPまたは少なくとも1種の耐衝撃性co-PPと少なくとも1種の
ランダムco-PPとを含有する共グラフト化ブレンドを含有する官能化ポリプロピレン
組成物が優れた接合特性を有し、そしてさもなければ層間剥離または分離のリスクなしに
接合することが困難である材料に接着することができることが今や示されている。加えて
、意外にも、230℃および2.16kgで測定されるように、200g/10分以上の
メルトフローレートを有する接着剤組成物にとって有用性があることが示された。さらに
、これらの組成物またはブレンドは、他のポリプロピレンベースの接着剤と比べて、容易
におよび経済的に製造することができる。
【0033】
耐衝撃性co-PPおよびランダムco-PPは、例えば、2014年8月13日出願
の、Lee,I-H.らによる米国仮特許出願第62/036,817号明細書に詳細に
記載されており、それに対してPCT出願国国際公開第2016/025663号パンフ
レットは、優先権を主張している。重要なことに、グラフト化ベース樹脂または「骨格」
としての本明細書での使用に好適な耐衝撃性co-PPおよびランダムco-PPは、炭
化水素エラストマーではない。
【0034】
グラフト化用の好適な耐衝撃性co-PPは、プロピレンおよび1種もしくは複数種の
他のコモノマーの共重合繰り返し単位を含む。好適なコモノマーには、限定なしに、アル
ファ-オレフィンが含まれる。好ましくは、アルファ-オレフィンは、2または4~10
個の炭素原子を有し、具体的にはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、
1-オクテン、1-ノネン、および1-デセンである。エチレンがより好ましいコモノマ
ーである。
【0035】
加えて、グラフト化用の好適な耐衝撃性co-PPは、有限量約90重量%以下のプロ
ピレンの共重合繰り返し単位を有する。補完的に、好適な耐衝撃性co-PPは、少なく
とも約10重量%の1種もしくは複数種の他のコモノマーの共重合繰り返し単位を有する
。百分率は、グラフト化もしくは共グラフト化前の、耐衝撃性co-PPの総重量を基準
とする。用語「補完的に」は、コポリマー組成物との関連で本明細書で用いるところでは
、100重量%が、コポリマー中の様々な共重合繰り返し単位の重量百分率の合計である
ことを意味する。好ましい耐衝撃性co-PPは、約10重量%以上、または約10~約
25重量%、または約10~約20重量%、または約10~15重量%の他のコモノマー
の共重合単位を含む。より好ましくは、他のコモノマーはエチレンである。これに関連し
て、ポリプロピレンコポリマーのコモノマー含有量は典型的には、核磁気共鳴分光法(13
C-NMR)によって測定される。
【0036】
グラフト化用の好適な耐衝撃性co-PPの物理的特性には、0.1~30g/10分
の範囲であるメルトフローレート(230℃/2.16kgでのMFR)、およびAST
M方法No.D-3418に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって第2加熱にお
いて測定されるような、30~80ジュール/グラムの融解熱が含まれる。
【0037】
さらに、上に記載されたように、耐衝撃性co-PPは、均質混合ヘテロ相コポリマー
である。好適な耐衝撃性co-PPは、任意の公知の方法によって製造され得る。例えば
、耐衝撃性co-PPは、プロピレンが一般に先ず、半結晶性マトリックスを形成するた
めに第1反応器段階において単独でまたはエチレン(もしくは他のアルファ-オレフィン
)とともに重合させられる状態で、多段階反応器において製造され得る。プロピレンおよ
びエチレン(もしくは他のアルファ-オレフィン)の低結晶性または非晶質セグメントが
次に、第1反応器において製造されたポリマーの存在下で、第2段階においてまたはその
後の段階において共重合させられる。この方法は、プロピレンモノマーのみが第1反応器
段階において使用される場合に、アイソタクチックプロピレンホモポリマーのより結晶性
の相、または他のC2もしくはC4~C10アルファ-オレフィンもまた使用される場合に、
プロピレンに富むコポリマーのより結晶性の相と;重合の第2またはその後の段階におい
て生成するプロピレンと他のC2もしくはC4~C10アルファ-オレフィンとのゴム状相と
の均質な混合物で特徴付けられるヘテロ相プロピレンコポリマーを生成する。
【0038】
均質混合ヘテロ相コポリマーは、例えばDSCによって測定されるような、それらの熱
的特性で特定されまたは特徴付けられ得る。特に、耐衝撃性コポリマーの融点は、コポリ
マーのより結晶性のマトリックスセグメントによって支配されるであろう。より具体的に
は、均質混合ヘテロ相ポリプロピレンコポリマーの溶融温度は、結晶性相がプロピレンホ
モポリマーであるか、プロピレンコポリマーであるかどうかに依存して、変わる。特に、
プロピレンホモポリマーをより結晶性の相として有する耐衝撃性co-PPの融点は約1
65℃であり、プロピレンコポリマーをより結晶性の相として有する耐衝撃性co-PP
の融点はより低い。好適な耐衝撃性co-PPでは、DSC溶融ピークは、プロピレンモ
ノマーのみが合成反応の第1段階において使用される場合、160~170℃の領域に存
在するであろう。プロピレンと、例えば、エチレンまたはブテンなどの1種もしくは複数
種のコモノマーとが反応の第1段階において使用される場合、結果として生じるプロピレ
ンに富む耐衝撃性co-PPは、150℃よりも下の領域でのDSC溶融ピークで特徴付
けられるであろう。第2またはその後の段階の反応は、それが形成されるときにエチレン
またはC4~C10アルファ-オレフィンコモノマーが比較的高い程度のランダム性でポリ
マー骨格中へ挿入される場合に非晶質相を生成し得る。しかし、第2またはその後の段階
の反応は通常また、いくらかのエチレンに富むセグメントをゴム状相中に生成する。ポリ
マー骨格に沿ったコモノマー分布における比較的低い程度のランダム性から生じる、これ
らのエチレンに富むセグメントは、結晶化することができ、DSC溶融曲線において11
0~125℃の領域でのピークで特徴付けられる。この第2ピークは、耐衝撃性co-P
Pのプロピレンに富む結晶性相によって生成するピークと比べて、小さいであろう可能性
が高い。当業者は、第2DSCピークの積分が、ポリマー試料中の結晶化したエチレンに
富むセグメントの量に比例することを知っている。
【0039】
好適な耐衝撃性co-PPは、例えば、Houston,TXのLyondellBa
sell、およびSpring,TXのExxonMobil Chemical Co
mpanyなどの、いくつかの製造業者から商業的に入手可能である。
【0040】
グラフト化用の好適なランダムco-PPは、プロピレンおよび1種もしくは複数種の
他のコモノマーの共重合繰り返し単位を含む。好適なコモノマーには、限定なしに、アル
ファ-オレフィンが含まれる。好ましくは、アルファ-オレフィンは、2または4~10
個の炭素原子を有し、具体的にはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、
1-オクテン、1-ノネン、および1-デセンである。エチレンがより好ましいコモノマ
ーである。
【0041】
加えて、グラフト化用の好適なランダムco-PPは、90重量%超のプロピレンの共
重合繰り返し単位を有する。補完的に、好適なランダムco-PPは、有限量約10重量
%以下の1種もしくは複数種の他のコモノマーの共重合繰り返し単位を有する。百分率は
、グラフト化もしくは共グラフト化前の、ランダムco-PPの総重量を基準とする。好
ましいランダムco-PPは、10重量%以下の他のコモノマーの共重合単位を含む。よ
り好ましくは、他のコモノマーはエチレンである。
【0042】
最後に、グラフト化用の好適なランダムco-PPは、30g未満/10分、より好ま
しくは10g未満/10分であるメルトフローレート(2.16kgの重量下に230℃
で測定される)を有する。
【0043】
ランダムco-PPは、任意の好適な方法によって合成され得る。例えば、プロピレン
コポリマーは、チーグラー-ナッタ(Ziegler-Natta)触媒系またはメタロ
セン触媒系などの、シングルサイト触媒系の存在下に製造することができる。コモノマー
がランダムにポリマー主鎖へ挿入され、その結果、その結晶性が混乱させられ、コポリマ
ーの融点の低下をもたらす。例えば、ホモポリプロピレンの融点は約160℃~約170
℃であり;対照的に、ランダムco-PPの融点は、DSCによって測定されるように、
α-オレフィンコモノマーの量およびタイプに依存して、約130℃~約158℃である
【0044】
あるいはまた、好適なランダムco-PPは、例えば、LyondellBasell
およびLeague City,TXのINEOS Olefins and Poly
mers USAなどの、いくつかの製造業者から商業的に入手可能である。
【0045】
接着剤組成物において、ポリプロピレンコポリマーは、少なくとも1種のグラフト化剤
でグラフトするまたは共グラフトすることによって変性または官能化される。好適なグラ
フト化剤には、限定なしに、エチレン性不飽和カルボン酸が含まれる。好ましいグラフト
化剤には、限定なしに、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、ナジック酸
(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸または、より厳密には、ビシクロ[2.2.
1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、シトラコン酸、およびイタコン酸が含
まれる。例えば酸無水物;金属塩;モノエステルおよびジエステルを含む、エステル;ア
ミド;イミドなどの、エチレン性不飽和カルボン酸の誘導体もまた好適である。酸無水物
が好ましいグラフト化剤である。より好ましいグラフト化剤は、マレイン酸および無水マ
レイン酸である。無水マレイン酸がさらにより好ましいグラフト化剤である。
【0046】
好ましくは、グラフト化もしくは共グラフト化ポリプロピレンコポリマーは、グラフト
化もしくは共グラフト化ポリプロピレンコポリマーの総重量を基準として、0.5~4重
量%のグラフト化モノマーのグラフト化残基を含有する。より好ましくは、グラフト化も
しくは共グラフト化ポリプロピレンコポリマーは、0.5重量%~2.5重量%のグラフ
ト化モノマーのグラフト化残基を含有する。さらにより好ましくは、グラフト化もしくは
共グラフト化ポリプロピレンコポリマーは、1.2重量%~1.8重量%、1.2重量%
~1.6もしくは1.65重量%、または1.2重量%~1.5重量%のグラフト化モノ
マーのグラフト化残基を含有する。
【0047】
グラフト化のレベルは、接着剤組成物における所望の特性を達成するために調整され得
る。例えば、他の因子は一定に保持されて、より高いレベルの酸無水物官能化は、共有結
合による、極性相互作用による、または他のメカニズムによる極性層へのタイ層の接着性
を向上させ得る。一般に、グラフト化のレベルは、反応器中のグラフト化モノマーの量を
調整することによって、反応器温度もしくは滞留時間を調整することによって、例えばそ
の「半減期分解温度」、すなわち、その半減期とその分解温度との間の関係を用いて、好
適なラジカル開始剤を選択することによって、または、もしあれば、ラジカル開始剤の量
を調整することによって制御される。これらのパラメータは、グラフト効率の最大化に関
して、下でより詳細に考察される。
【0048】
プロピレンコポリマーは、当技術分野において公知の任意の好適な方法によって官能化
され得る。例えば、官能化は、Kiangらに供与された、米国特許第5,367,02
2号明細書;Botrosに供与された、同第6,716,928号明細書;およびBo
trosらに供与された、同第7,030,188号明細書に記載されているように、溶
媒なしの溶融体で実施することができる。溶融グラフト化用の好適な容器の例としては、
限定なしに、加熱押出機、BrabenderTMミキサー、BanburyTMミキサー、
別の内部ミキサーまたは混練機、ロールミルなどが挙げられる。あるいはまた、Hiro
seら供与された、米国特許第5,523,358号明細書は、溶液で、分散系で、およ
び流動床で行われるグラフト反応を記載している。
【0049】
官能化が溶融法で実施される場合、グラフト化モノマーは典型的には、ポリプロピレン
の総重量を基準として、約1~約5重量%の量で添加される。
【0050】
グラフト反応は、好適な有機過酸化物、有機過酸エステル、または有機ヒドロペルオキ
シドなどのラジカル開始剤の存在下で実施され得る。有機過酸化物が好ましいラジカル開
始剤である。好適な過酸化物触媒の例としては、限定なしに、1,1-ビス(tert-
ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペル
オキシバレレート);1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリ
メチルシクロヘキサン;2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン;ジクミル
ペルオキシド;tert-ブチルクミルペルオキシド;α,α’-ビス(tert-ブチ
ルペルオキシプレオキシ-イソプロピル)ベンゼン;ジ-tert-ブチルペルオキシド
(DTBP);2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン
などが挙げられる。好ましい有機過酸化物には、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ter
t-ブチルペルオキシ)ヘキサンおよび2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチ
ルペルオキシ)ヘキシン-3が含まれる。ラジカル開始剤は、使用される場合、そのニー
ト形態でまたはマスターバッチとして添加することができる。グラフト反応混合物に添加
されるラジカル開始剤の量は好ましくは、グラフト化前のポリプロピレンの総重量を基準
として、100ppm~10,000ppm、または500rpm~8000ppmもし
くは1000ppm~7500ppm、または2000ppm~5000ppmである。
いくつかの注目に値する実施形態では、ラジカル開始剤は過酸化物開始剤であり、それは
、グラフト化前のポリプロピレンの総重量を基準として、2000ppm~5000pp
mの量で添加される。
【0051】
押出機におけるグラフト条件は、高いグラフト効率を達成するように調整される。より
具体的には、バレル温度、押出機速度、およびスクリュー速度の変数は、反応ゾーンの温
度がポリプロピレン溶融温度よりも高く、また、もしあれば、ラジカル開始剤の分解温度
よりも高いように調整される。しかし、バレル温度の上限は、低分子量試薬の速い蒸発ま
たは分解を防ぎながら、迅速な均質混合を可能にするように選択される。さらに、反応ゾ
ーンにおける反応混合物の滞留時間は、望ましくない劣化反応が発現するのに十分な時間
がないように管理される。最後に、反応温度は好ましくはまた、グラフト化ポリマー溶融
体がペレット化のために迅速におよび都合よく冷却され得るように管理される。
【0052】
揮発物質除去、例えばグラフト反応の終わりでの未反応モノマーの除去は、任意の従来
法によって実施されてもよい。これらの方法には、真空抽出またはグラフトプロセスの終
わりでのストリッピング剤の使用が含まれ得る。好適なストリッピング剤には、不活性ガ
ス;有機溶媒;塩溶液などの、好適な水溶液;および水が含まれることができる。
【0053】
いくつかの好ましい接着剤組成物では、1種もしくは複数種の耐衝撃性co-PPがグ
ラフト化剤でグラフトされる。他の好ましい接着剤組成物では、少なくとも1種の耐衝撃
性co-PPと少なくとも1種のランダムco-PPとが共グラフトされる。より具体的
には、少なくとも1種の耐衝撃性co-PPを含有するco-PPのブレンドが溶融混合
され、一様にブレンドされる。溶融ブレンドされたco-PPが同時におよびランダムに
、フリーラジカル反応によって1種もしくは複数種のグラフト化剤でグラフトされる。再
び、押出機条件は、反応混合物の迅速な均質混合を達成するために調整される。他の点で
は、官能化反応のための装置およびパラメータは、直上に記載されたように選択され、調
整される。
【0054】
好ましくは、共グラフト化用の溶融混合ブレンドは、約10重量%以上の共重合エチレ
ンコモノマーを含有する40重量%超の少なくとも1種の耐衝撃性co-PPと、補完的
に約10重量%以下の共重合エチレンコモノマーを含有する60重量%以下のランダムc
o-PPとを含む。より好ましくは、共グラフト化用の溶融混合ブレンドは、約20%~
約50重量%または約20%~約40重量%または約30%~約45重量%の少なくとも
1種のランダムco-PPと、補完的に約50重量%~約80重量%または約60重量%
~約80重量%または約55重量%~約70重量%の少なくとも1種の耐衝撃性co-P
Pとを含む。このブレンド中のco-PPの重量百分率は、共グラフト化前の、ブレンド
の総重量を基準とする。
【0055】
好適な接着剤組成物の非限定的な例としては、無水マレイン酸でグラフトまたは共グラ
フトされる、次のポリプロピレンが挙げられる:
10重量%以上の共重合エチレンを有する耐衝撃性co-PP;
10重量%以上の共重合エチレンを有する耐衝撃性co-PPおよび10重量%未満の共
重合エチレンを有するランダムco-PP;ならびに
10重量%以上の共重合エチレンを有する少なくとも1種の耐衝撃性co-PPおよび1
0重量%未満の共重合エチレンを有する少なくとも1種のランダムco-PP。
【0056】
意外にも、順に少なくとも1種の耐衝撃性co-PPと少なくとも1種のランダムco
-PPとを含有する、共グラフト化ポリプロピレンを含む接着剤は、EVOH、ポリアミ
ド、および他のバリア樹脂などの、類似の材料に接着している個別グラフト化ポリプロピ
レンco-PP組成物の接着強度と比べて、実質的に増加している接着強度を有する。
【0057】
グラフト化もしくは共グラフト化ポリプロピレンコポリマーのメルトフローレートはま
た、接着剤組成物における所望の特性を達成するために調整され得る。例えば、不適切に
も低いメルトフローレートを有する接着剤では、官能基は、接合部分に十分迅速に移行す
ることができない可能性がある。さらに、不適切にも低いメルトフローレートを持った接
着剤は、好都合な温度で、変換プロセスの好ましいライン速度で処理できない可能性があ
る。逆に、メルトフローレートが高すぎる場合、接着剤は、他のポリプロピレンベースの
層に十分固定される有効なタイ層を形成するための物理的完全性を持たない可能性がある
。あるいはまた、接着剤組成物が不適切にも高いメルトフローレートを有する場合、最終
用途製品の熱的特性はまた不十分である可能性がある。例えば、多層フィルムもしくはシ
ート構造物または硬質包装容器は、高温で十分な機械的特性を持たない可能性があり、そ
のため調理もしくはレトルト条件に耐えることができない可能性がある。
【0058】
一般に、グラフト化もしくは共グラフト化ポリプロピレンコポリマーのメルトフローレ
ートは、グラフト化用のベース樹脂のメルトフローレートを選択することによって、また
はグラフト反応中のベータ切断の程度をコントロールすることによって制御される。ベー
タ切断は、例えば、好適な量のラジカル開始剤をグラフト反応混合物に添加することによ
って、またはグラフト反応の温度を調整することによって制御され得る。これらのパラメ
ータのいくつかは、グラフトプロセスに関して、上でより詳細に考察されている。
【0059】
しかし、接着剤組成物のメルトフローレートは、分子移行および加工速度に関して上に
考察された理由で、好ましくは比較的高い。したがって、官能化ポリプロピレンは好まし
くは、約4~約32g/10分のメルトフローレート(190℃/325g)を有する。
いくつかの実施形態では、メルトフローレート(190℃/325g)は、4.5~28
g/10分、または5.25~26g/10分、または6.25~24g/10分、また
は6.25もしくは7~21g/10分の範囲にある。加えて、ポリプロピレン接着剤組
成物は、200~600g/10分のメルトフローレート(230℃/2.16kg)を
有する。いくつかの実施形態では、メルトフローレート(230℃/2.16kg)は、
140~900g/10分、または150~800g/10分、または175~750g
/10分、または200~700g/10分または200もしくは225~600g/1
0分の範囲にある。メルトフローレート(190℃/325g)は、標準ダイを使用して
ASTM D-1238に従って測定される。メルトフローレート(230℃/2.16
kg)は標準ダイを使用してASTM D-1238に従って測定されてもよい。あるい
はまた、それは、相関によって計算されても推定されてもよい。
【0060】
好適にも高いメルトフローレートを有するグラフト化耐衝撃性co-PPは、0.5以
下、好ましくは0.2~0.5または0.2~0.4のG/M比で特徴付けられる。より
具体的には、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PP中のグラフト化酸無水物モノマーの
重量百分率(G)と、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PPの2.16kg荷重下に2
30℃でのメルトフローレート(M)とは、式(G/M)*100≦0.5で関連付けら
れる。酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PPにおいて、GとMとは好ましくは、式0.
2≦(G/M)*100≦0.5または0.2≦(G/M)*100≦0.4で関連付けら
れる。同様に、共グラフト化ブレンド中のグラフト化酸無水物モノマーの重量百分率(G
)と、共グラフト化ブレンドの2.16kg荷重下に230℃でのメルトフローレート(
M)とは、式(G/M)*100≦20、より好ましくは(G/M)*100≦15、(G
/M)*100≦10、(G/M)*100≦7.5、(G/M)*100≦5、(G/M
*100≦2、(G/M)*100≦1、(G/M)*100≦0.5、または(G/M
*100≦0.2で関連付けられる。共グラフト化ブレンドのG/M比は少なくとも0
.01、0.1、または0.2であることがまた好ましい。例えば、共グラフト化ブレン
ドのGとMとは、式0.01≦(G/M)*100≦20で、または0.2≦(G/M)*
100≦0.5で、または別のそのような式で関連付けられる。この段落は、任意の範囲
上限または好ましい値と任意の範囲下限または好ましい値との任意のペアから形成される
G/Mのすべての範囲を、そのようなペアが別々に開示されるかどうかにかかわらず、具
体的に開示すると理解されるべきである。最後に、これらの式において、メルトフローレ
ートMは、測定され、外挿され、または計算され、重量百分率Gは、酸無水物グラフト化
耐衝撃性co-PPの総重量を基準とする。
【0061】
接着剤組成物は、酸化防止剤;ブロッキング防止剤;紫外線安定剤などの、安定剤;可
塑剤;加工助剤;流動性向上添加剤;流動性低下添加剤;滑剤;難燃剤;核形成剤および
充填材などの、当技術分野において一般的に使用され、公知である少量の1種もしくは複
数種の添加剤をさらに含有してもよい。1つの注目に値する群の添加物が、多層構造物中
の層の接合部分を相溶化させるために使用される。この群には、例えば、PE-b-PE
Oが含まれる。他の好適な添加剤、添加剤レベル、および接着剤組成物への添加剤の組み
入れ方法は、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemic
al Technology,第5版,John Wiley & Sons(New
Jersey,2004)に見いだされ得る。一般に、存在する場合、これらの他の添加
剤の総量は、接着剤組成物の総重量を基準として、5重量%未満、3重量%未満、2重量
%未満、または1重量%未満である。
【0062】
接着剤組成物は、少なくとも1種の非グラフト化ポリオレフィンをさらに含んでもよい
。好ましいポリオレフィンには、非グラフト化ランダムco-PP、非グラフト化ホモ-
PP、および非グラフト化耐衝撃性co-PPが含まれるが、それらに限定されない。非
グラフト化ランダムおよび耐衝撃性co-PPは、(共)グラフト化ポリプロピレンのベ
ース樹脂と同じものまたはそれらとは異なるものであることができる。非グラフト化ホモ
ポリプロピレンはまた、接着剤組成物とブレンドすることができる。ホモポリプロピレン
ポリマーは、チーグラー-ナッタ触媒系またはメタロセン触媒系の存在下で任意の公知の
方法によって製造することができる。
【0063】
接着剤組成物は、少なくとも1種の追加のグラフト化ポリオレフィンをさらに含んでも
よい。好ましい追加のグラフト化ポリオレフィンには、追加のグラフト化ランダムco-
PP、グラフト化ホモ-PP、および追加のグラフト化耐衝撃性co-PPが含まれるが
、それらに限定されない。追加のグラフト化ランダムco-PPおよび追加のグラフト化
耐衝撃性co-PPのベース樹脂は、接着剤組成物の必要とされる成分である(共)グラ
フト化ポリプロピレンのベース樹脂と同じものまたはそれらとは異なるものであることが
できる。追加のグラフト化ランダムco-PPおよび追加のグラフト化耐衝撃性co-P
Pの官能化のレベルおよび均質性は、接着剤組成物の必要とされる成分である(共)グラ
フト化ポリプロピレンのそれらと同じものまたはそれらとは異なるものであることができ
る。ホモポリプロピレンポリマー(ホモPP)は、プロピレンコポリマーに関して本明細
書で上に記載された手順に従って官能化することができる。追加のグラフト化ポリオレフ
ィンの好適なおよび好ましいグラフト化モノマーおよび官能化のレベルは、接着剤組成物
の必要とされる成分である(共)グラフト化ポリプロピレンに関して上に記載された通り
である。
【0064】
本明細書に記載される接着剤組成物はまた、例えば、炭化水素エラストマー、エチレン
アルファオレフィンコポリマー、またはプロピレンアルファ-オレフィンコポリマーなど
の、1種もしくは複数種の弾性ポリマーを含んでもよい。
【0065】
本明細書で用いるところでは、用語「炭化水素エラストマー」は、炭素および水素のみ
を含むコモノマーの共重合単位を含むコポリマーを意味する。加えて、好適な炭化水素エ
ラストマーは、それらの融解熱が約30ジュール/グラムよりも下であるように十分に低
い程度の結晶性を有する。ほとんどの炭化水素エラストマーについて、融解熱は、10ジ
ュール/グラムよりも下であり、多くが、測定できる融解熱をまったく持たない。
【0066】
好ましくは、炭化水素エラストマーは、エチレンと、プロピレン;1-ブテン;1-ペ
ンテン;1-ヘキセン;1-オクテン;4-メチル-1-ペンテン;1,4-ブタジエン
;および1,4-ヘキサジエンからなる群から選択される1種もしくは複数種のアルファ
-オレフィンとのコポリマーである。好適な炭化水素エラストマーの例としては、限定な
しに、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレン
-ブタジエン熱可塑性ゴム、およびスチレン-イソプレン熱可塑性ゴムが挙げられる。
【0067】
好適なエチレンアルファ-オレフィンコポリマーは、アルファ-オレフィンコモノマー
の約5モル%超の共重合残基を含有し、0.900g/cc以下の密度を有する。好まし
いアルファ-オレフィンコモノマーには、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテン
が含まれる。
【0068】
好適なプロピレンアルファ-オレフィンコポリマーは、上に引用された、PCT出願国
際公開第2016/025663号パンフレットに詳細に記載されている。しかし、手短
には、好適なプロピレンアルファ-オレフィンコポリマーは、アルファ-オレフィンコモ
ノマーの約8もしくは約10モル%超の共重合残基を含有する。好適なアルファ-オレフ
ィンには、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンが含まれる。好まし
いアルファ-オレフィンには、エチレンおよび1-ブテンが含まれる。重要なことに、炭
化水素エラストマーとしての使用に好適であるプロピレンアルファ-オレフィンコポリマ
ーは、官能化のためのベース樹脂として上に記載された耐衝撃性co-PPおよびランダ
ムco-PPとしての使用に好適ではない。
【0069】
エチレンアルファ-オレフィンコポリマーおよびプロピレンアルファ-オレフィンコポ
リマー中の共重合アルファ-オレフィン残基のモル百分率は、それぞれ、エチレンアルフ
ァ-オレフィンコポリマーおよびプロピレンアルファ-オレフィンコポリマー中の共重合
残基の総モル数を基準とする。最後に、エチレンアルファ-オレフィンコポリマーおよび
プロピレンアルファ-オレフィンコポリマーは、チーグラー-ナッタ触媒系または、メタ
ロセン触媒系などの、シングルサイト触媒作用系を使用して合成することができる。
【0070】
接着剤組成物での使用に好適として上に記載された追加のグラフト化ポリオレフィンの
ベース樹脂、非グラフト化ポリオレフィンおよび弾性ポリマーは好ましくは、約0.5~
約150g/10分のメルトフローレート(230℃で2.16kgで測定される)を有
する。
【0071】
上に記載されたように、官能化ポリプロピレンおよびもしあれば、添加剤は、接着剤組
成物を製造するためにグラフト化ポリオレフィン、非グラフト化ポリオレフィンおよび弾
性ポリマー(まとめて、マトリックス材料)の1種もしくは複数種と組み合わせられても
よい。官能化ポリプロピレンおよびマトリックス材料の相対量は、成分の相溶性と、基材
への、好ましくはポリアミドまたはEVOHを含む基材への接合または接着のある閾値を
達成する調合組成物の能力とによって限定される。言い換えれば、マトリックス材料は任
意選択であり、したがって接着剤組成物中に0重量%のレベルで存在してもよい。補完的
に、接着剤組成物は、官能化ポリプロピレンと、もしあれば、添加剤とからなっても、本
質的になってもよい。
【0072】
接着剤組成物が追加の非グラフト化ポリオレフィンを含む場合、それらは、接着剤組成
物の総重量を基準として、有限量で、または約65重量%から約99.99重量%以下、
もしくは約99.90重量%、約99.5重量%、約99.0重量%、約98.0重量%
、約97.5重量%、約97.0重量%、約95重量%、約93.0重量%、約92.5
重量%、90重量%、約87.5重量%、約85重量%、約80重量%、約75重量%、
もしくは約65重量%以下の量で存在してもよい。いくつかの注目に値する実施形態では
、追加の非グラフト化ポリオレフィンの量は、接着剤組成物の総重量を基準として、約6
5重量%~約95重量%である。いくつかの注目に値する実施形態では、官能化ポリプロ
ピレンおよび追加の非グラフト化ポリオレフィンの総量は、再び接着剤組成物の総重量を
基準として、約5~約35重量%である。
【0073】
補完的に、官能化ポリプロピレン、もしあれば添加剤、およびもしあれば他のマトリッ
クス材料は、再び接着剤組成物の総重量を基準として、有限量でもしくは0.01重量%
~約35重量%の量で、または約0.10重量%、もしくは約1.0重量%、もしくは約
2.0重量%、もしくは約2.5重量%、もしくは約3重量%、もしくは約5重量%、も
しくは約7重量%、もしくは約7.5重量%から約10重量%、もしくは約12.5重量
%、もしくは約15重量%、もしくは約20重量%、もしくは約25重量%、もしくは約
35重量%までの量で存在する。再び、いくつかの注目に値する実施形態では、官能化ポ
リプロピレン、もしあれば添加剤、およびもしあれば他のマトリックス材料の量は、接着
剤組成物の総重量を基準として、約5重量%~約35重量%である。
【0074】
接着剤組成物が追加のグラフト化ポリオレフィンを含む場合、官能化ポリプロピレンお
よび追加のグラフト化ポリオレフィンの総量は好ましくは、接着剤組成物の総重量を基準
として、少なくとも有限量、または0.01重量%~約35重量%の量、または少なくと
も約0.10重量%、もしくは約1.0重量%、もしくは約2.0重量%、もしくは約2
.5重量%、もしくは約3重量%、もしくは約5重量%、もしくは約7重量%、もしくは
約7.5重量%の量である。さらに、官能化ポリプロピレンおよび追加のグラフト化ポリ
オレフィンの総量は好ましくは、再び接着剤組成物の総重量を基準として、約10重量%
、もしくは約12.5重量%、もしくは約15重量%、もしくは約20重量%、もしくは
約25重量%以下、または約35重量%以下である。いくつかの注目に値する実施形態で
は、官能化ポリプロピレンおよび追加のグラフト化ポリオレフィンの総量は、再び接着剤
組成物の総重量を基準として、約5~約35重量%である。
【0075】
加えて、追加のグラフト化ポリオレフィンの量対官能化コポリプロピレンの量の比は、
0<x<1のような任意の実数であってもよい。好ましくは、この比は、25:1~1:
25、1:10~10:1、または1:5~5:1、または1:4~4:1、または1:
3~3:1、または1:2~2:1の範囲であり、より好ましくはこの比は1:1に近い
【0076】
さらに、追加のグラフト化ポリオレフィンを含む接着剤組成物に関連して、もしあれば
添加剤およびもしあれば他のマトリックス材料は、接着剤組成物の総重量を基準として、
約99.99重量%、約99.90重量%、約99.5重量%、約99.0重量%、約9
8.0重量%、約97.5重量%、約97.0重量%、約95重量%重量%、約93.0
重量%、約92.5重量%、90重量%、約87.5重量%、約85重量%、約80重量
%、約75重量%、または約65重量%以下の補完量で存在する。いくつかの注目に値す
る実施形態では、もしあれば添加剤およびもしあれば他のマトリックス材料の量は、再び
接着剤組成物の総重量を基準として、約65~約95重量%である。
【0077】
最後に、接着剤組成物が弾性ポリマーを含む場合、それらは、接着剤組成物の総重量を
基準として、0重量%からの量で、または有限量で、または約0.01重量%、もしくは
約0.10重量%、もしくは約0.5重量%、もしくは約1.0重量%、もしくは約5重
量%の量で、または約5重量%から約30重量%までもしくは約40重量%までの量で存
在してもよい。いくつかの注目に値する実施形態では、接着剤組成物は、5~30重量%
の量で弾性ポリマーを含む。補完的に、官能化ポリプロピレン、もしあれば添加剤、およ
びもしあれば他のマトリックス材料は、再び接着剤組成物の総重量を基準として、約60
もしくは約70重量%から100重量%まで、もしくは100重量%未満有限量まで、も
しくは約99.99重量%、約99.90重量%、約99.5重量%、約99.0重量%
、もしくは約95重量%までの量で、または約5重量%~約30重量%もしくは約40重
量%の量で存在する。いくつかの注目に値する実施形態では、官能化ポリプロピレン、も
しあれば添加剤、およびもしあれば他のマトリックス材料は、70~95重量%の量で存
在する。
【0078】
官能化ポリプロピレンは、グラフト化ポリオレフィン、非グラフト化ポリオレフィン、
弾性ポリマー、および任意選択の上記添加剤の1つもしくは複数と当業者に公知の任意の
方法によって組み合わせることができる。好適な方法には、限定なしに、乾式ブレンディ
ング、または二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、Banburies、Bu
ss-Kneadersなどの、溶融混合装置を用いる溶融ブレンディングが含まれる。
例えば、成分のそれぞれのペレットが、乾燥ブレンドまたは「ペレットブレンド」を形成
するために混ぜ合わせられてもよく、ブレンドが、包装フィルム、多層フィルム、シート
もしくは多層シート、または成形部品の形成のためのプロセスに直接供給されてもよい。
あるいはまた、成分のそれぞれのペレットが、「溶融ブレンド」を形成するために押出機
に別々に供給され、一緒に溶融されてもよく、ブレンドが、包装フィルム、多層フィルム
、シートもしくは多層シート、または成形部品の形成のためのプロセスに供給されてもよ
い。別の代わりの方法では、溶融ブレンドが、混合成分を含有するペレットへ加工されて
もよく、ペレットがその後、包装フィルム、多層フィルム、シートもしくは多層シート、
または成形部品の形成のためのプロセスに供給されてもよい。ブレンド成分のいずれもが
、ブレンディングプロセス前に、中にまたは後に所望の程度まで乾燥させられてもよい。
当業者は、例えば、それらの溶融温度およびメルトフローレートなどの、個々の成分の物
理的特性に基づいて適切なブレンディング条件を選ぶことができる。
【0079】
接着剤組成物は好ましくは、少なくとも、官能化ポリプロピレンに関して上に示された
理由で、比較的高いメルトフローレートを有する。上で述べられているように、高いメル
トフローレートは、最終用途部品における所望の接着特性にとって有利であり、また、押
出コーティング、キャストフィルムおよび共射出成形などの様々な変換プロセスにおける
商業生産速度にとっても有利である。しかし、メルトフローレートの好適なおよび好まし
い値は、接着剤組成物の最終用途におよび最終物品がそれによって変換されるまたは製造
されるプロセスに依存して変わる。一般に、接着剤組成物が1種もしくは複数種のマトリ
ックス材料を含む場合、それは、0.5~150g/10分の範囲のメルトフローレート
(230℃および2.16kg)を有する。
【0080】
より具体的には、1種もしくは複数種のマトリックス材料を含み、共押出キャストシー
ト、共押出パイプおよび共押出ブロー成形法によって製造される物品での使用を意図され
る接着剤組成物は好ましくは、1~5g/10分の範囲のメルトフローレート(230℃
および2.16kg)を有する。1種もしくは複数種のマトリックス材料を含み、共押出
キャストフィルム、(共)押出コーティングおよび(共)押出積層法によって製造される
物品での使用を意図される接着剤組成物は好ましくは、5~25g/10分の範囲のメル
トフローレート(230℃および2.16kg)を有する。
【0081】
一般に、インフレーションフィルム成形法に使用される材料は、低いメルトフローレー
トがより高い分子量およびより高い溶融強度と相関関係があるので、比較的低いメルトフ
ローレートを有することを要求される。このため、1種もしくは複数種のマトリックス材
料を含み、共押出インフレーションフィルム成形法によって製造される物品での使用を意
図される先行技術の接着剤組成物は、1~10g/10分の範囲のメルトフローレート(
230℃および2.16kg)で最適性能を示すと予期される。例えば、Lyondel
l Basellは、ブローンおよびキャストフィルム押出用の1~10g/10分(2
30℃、2.16kg)の範囲のメルトフローレートを持ったポリプロピレン銘柄を提供
し、Vienna,AustriaのBorealis AGは、インフレーションフィ
ルム用途向けの0.9~3g/10分の範囲のメルトフローレート(230℃、2.16
kg)を持ったポリプロピレン銘柄を提供している。バルク構造層と同様に、接着剤用途
で使用するための当技術分野で公知のグラフト化ポリプロピレンは、より低いメルトフロ
ーレートまたはより高い分子量を有することが一般に好ましい。例えば、Botrosに
付与された、米国特許第6,716,928号明細書は、グラフト化ポリプロピレンが好
ましくは300g未満/10分、より好ましくは250g未満/10分であるメルトフロ
ーレートを有する接着剤塗布のための商業的処理操作を記載している。しかし、意外にも
、本明細書に記載されるグラフト化耐衝撃性co-PPおよび共グラフト化co-PPブ
レンドは、比較的高いメルトフローレートでインフレーションフィルム装置で加工可能で
あることが今や見い出された。したがって、1種もしくは複数種のマトリックス材料を含
み、共押出インフレーションフィルム成形法によって製造される物品での使用を意図され
る本明細書に記載される接着剤組成物は、好ましくは100~1000g/10分、より
好ましくは200~600g/10分、さらにより好ましくは350~450g/10分
の範囲のメルトフローレート(230℃および2.16kg)を有する。
【0082】
最後に、1種もしくは複数種のマトリックス材料を含み、共射出成形法によって製造さ
れる物品での使用を意図される接着剤組成物は、好ましくは10~150g/10分、ま
たはより好ましくは15~100g/10分の範囲のメルトフローレート(230℃およ
び2.16kg)を有する。
【0083】
重要なことに、これらのメルトフローレート範囲は、「ペレットブレンド」または「溶
融ブレンド」法によって製造される接着剤組成物に関連する。「ペレットブレンド」法に
よって製造される接着剤組成物のケースでは、メルトフローレートは、ペレットブレンド
成分の量の比とそれらのメルトフローレートとに基づく、推定値である。
【0084】
接着剤組成物は、多くの用途を有する。これらの中でも、用途は、多層包装用途での、
とりわけ、ラップ、バッグ、ポーチ、または飲料容器向けライナーなどの食品包装用途で
の接着剤としてである。多層構造物は、主としてポリプロピレンベースの構造層または「
バルク層」を含むことができる。構造層は、例えば、プロピレンホモポリマー;プロピレ
ンα-オレフィンコポリマー;ポリプロピレンエラストマー;エチレンプロピレンゴム(
EPR)またはエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのプロピレン繰
り返し単位を含有する多種多様なポリマーのいずれかを含んでもよい。構造層中のプロピ
レン(コ)ポリマーは、グラフト化用のベース樹脂に関してまたは接着剤組成物の追加の
成分として上に記載されたプロピレン(コ)ポリマーと同じものまたはそれらとは異なる
ものであってもよい。しかし、好ましくは、多層構造物は、ポリプロピレンホモポリマー
またはプロピレンとα-オレフィンとのコポリマーもしくはターポリマーを含む主として
ポリプロピレンベースの構造層を含む。好ましいポリプロピレンには、限定なしに、半結
晶性ホモポリマー、ランダムコポリマー、ヘテロ相もしくは「ブロック」耐衝撃性コポリ
マー、およびプロピレンのターポリマーが含まれる。重要なことに、構造層は、接着剤組
成物を含んでもよい。
【0085】
構造層中の材料の特性は、多層構造物が意図される用途に依存して、当技術分野で公知
の判定基準に従って選択される。包装用途での接着剤として使用される場合、本明細書に
記載される組成物は、優れた接着特性を有すると予期され、また、それがその構成要素で
ある構造物に耐衝撃性を付与し得る。また有利にも、本接着剤組成物は、商業規模でペレ
ット化することができる。
【0086】
本明細書に開示される多層構造物は、ポリアミド、エチレンビニルアルコールコポリマ
ー(EVOH)、またはそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい
、バリア樹脂層を含むことができる。いくつかの好ましい多層構造物は、例えば、2つの
構造層で取り囲まれたバリア層を含む、3層構造物である。
【0087】
好適なポリアミドには、例えば、ポリアミド6;ポリアミド9;ポリアミド10;ポリ
アミド11;ポリアミド12;ポリアミド6,6;ポリアミド6,6/6;ポリアミド6
,9;ポリアミド6,10;ポリアミド6,12;2,2-ビス-(p-アミノシクロヘ
キシル)プロパンからのポリアミド;ポリアミド6I;ポリアミド6T;ポリアミド6I
/6T;テレフタル酸および/またはイソフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミン
とから製造されるポリアミドならびにアジピン酸、アゼライン酸から製造されるもの;テ
レフタル酸と4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタンとから製造されるポリアミド;な
らびにm-キシリレンジアミンおよびアジピン酸部分を含む、ポリアミドMXD6;それ
らのコポリマー、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせなどの脂肪族ポリアミドおよび
脂肪族/芳香族ポリアミドのホモポリマーもしくはコポリマーが含まれる。
【0088】
これに関連して、ポリアミドは典型的には、それらの構成成分モノマー中の炭素原子の
数を示す付番方式によって記載される。アミノ酸ポリマーは、ポリカプロラクタムとして
も知られる、ポリ(ε-アミノカプロン酸)についての6-ナイロンまたはナイロン-6
のように、1つの数で示される。ジアミンと二酸との共重合から誘導されるポリアミドは
、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とのコポリマーについての66-ナイロン(また
はナイロン-66もしくはナイロン-6,6);およびヘキサメチレンジアミンとセバシ
ン酸とのコポリマーについてのナイロン-6,10におけるように、第1番目がジアミン
を表す、2つの数で示される。ポリアミドの記載との関連で、共重合繰り返し単位は、ス
ラッシュ(すなわち、「/」)によって分離される。例えばポリ(ヘキサメチレンアジパ
ミド-co-ε-カプロアミド)は、PA 66/6またはナイロン-66/6と略記さ
れる。コポリマー中の各繰り返し単位の量を示すことが望まれる場合、モル百分率が括弧
内で続く、例えば「PA 66/6(75/25)」。モル百分率は、コポリマー中の繰
り返し単位の総モル数を基準とする。
【0089】
1つの好適なポリアミドは、Wilmington,DEのE.I.du Pont
de Nemours & Company(本明細書では以下、「DuPont」)か
ら商標SELAR(登録商標)PAで商業的に入手可能である。
【0090】
EVOHコポリマー中の共重合繰り返し単位の総モル数を基準として、約24モル%~
約48モル%の範囲の共重合エチレン繰り返し単位の含有量を有するEVOHコポリマー
もまた、商業的に入手可能である。
【0091】
多層構造物に使用するためのバリア樹脂の選択は、用途のために要求されるガスバリア
のタイプ、パッケージ形態が製造される条件、包装内容物が充填されつつある、さらされ
つつある条件、ならびに包装製品がさらされる使用条件に依存し得る。1つのバリア層ま
たは2つ以上のバリア層を有することが可能である。2種以上のタイプのポリマーを異な
るバリア層中に有することが可能である。多層構造物中のバリア層の配置はまた、外側ス
キン層を含むことができ、そこでバリア層はバリア特性および靱性または高い耐温度性を
両方とも提供する。多層構造物中のバリア層の配置は、ポリアミドおよびエチレンビニル
アルコール層を両方とも含有するコアバリア層を含んでもよい。好適なバリア層組み合わ
せには、PA/EVOH/PA、PA/EVOH/PA/EVOH、EVOH/PA/E
VOH(ここで、PAはポリアミド層を意味し、EVOHはEVOH層を意味し、フォワ
ードスラッシュ「/」は多層構造物の記載との関連で「層間」を意味する)、またはより
多くの層を含む他の構造が含まれる。
【0092】
多層包装構造物はまた任意選択的に、ポリエチレンおよびポリエチレンコポリマー、ポ
リエステルホモポリマーおよびコポリマー、ならびにスチレンホモポリマーおよびコポリ
マーなどの他の構造層を含有してもよい。
【0093】
多層構造物はまた、接着剤組成物または接着剤組成物を含む構造層が、延伸フィルムお
よび金属箔などの1種もしくは複数種の固体基材に、ならびに織布および不織布、網もし
くはスクリム上へ接着している構造物を含んでもよい。任意選択的に、少なくとも1種の
固体基材は、ポリエチレンイミンなどのケミカルプライマーでコートされる。延伸フィル
ムの例は、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、二軸延伸ポリエステル(BOPET)
、および二軸延伸ナイロン(BONまたはBOPA)である。金属箔の例は、アルミ箔ま
たは金属化延伸フィルムである。布、網またはスクリムの例は、スパンボンドポリオレフ
ィン、織りポリプロピレンラフィア、およびポリエステル網である。これらの構造物は、
例えば、溶融押出コーティングまたは積層などの周知の方法によって製造され得る。
【0094】
多層構造物の例示的な例としては、下記のものが挙げられ、下記において、用語「ホモ
」はホモポリマーを意味し、「PP」はポリプロピレン層であり、「co-PP」は、プ
ロピレンとα-オレフィンとのコポリマーの層を意味し、「PA」はポリアミド層であり
、「EVOH」はエチレンビニルアルコール層であり、「LLDPE」は線状低密度ポリ
エチレン層であり、「VLDPE」は非常に低密度のポリエチレン層であり、「EVA」
はエチレン酢酸ビニルコポリマー層であり、「mPE」は、メタロセン触媒作用によって
、または別のシングルサイト触媒を用いる方法によって製造された、エチレンα-オレフ
ィンコポリマーなどの、ポリエチレンの層であり、「PET」はポリエチレンテレフタレ
ート層であり、「OPP」は延伸ポリプロピレンであり、「EMA」は、タイ層としても
役立つことができるエチレンメタクリレートコポリマー層である。省略形「タイ」は、本
明細書に記載される接着剤組成物から製造された層と同じもの、またはそれとは異なるも
のであることができる層を表す。例えば、記号「タイ」は、グラフト化耐衝撃性co-P
Pまたは共グラフト化耐衝撃性co-PPを含まない接着剤層を意味してもよい。しかし
、ポリオレフィン層、特にポリプロピレンまたはコポリプロピレン層と、ポリアミドまた
はEVOH層との間のタイ層は好ましくは、上に開示された組成物から製造された層であ
り、本明細書に記載される接着剤組成物、または本明細書に記載される接着剤組成物を含
むブレンド、例えばグラフト化耐衝撃性co-PPと、ポリプロピレンもしくはコポリプ
ロピレンとのブレンドを意味するために「PPタイ」とここでおよび他の場所で記載され
るであろう。いくつかの場合には、構造物のバルクPP層は、介在する薄いタイ層なしに
本発明で記載される接着剤組成物で変性される。そのようなケースでは、バルクPP層は
、アステリスク付き(PP*)で表されるであろう。より具体的には、層厚さが一定であ
る場合に多層構造物の総容積を基準として、「PP*」と称される層は20容積%超の容
積を有し、「PPタイ」と称される層は5~8容積%の容積を有する。
【0095】
加えて、用語「PEタイ」は、エチレンコポリマーおよび酸無水物グラフト化ポリエチ
レンまたは酸無水物グラフト化エチレンコポリマーなどのポリエチレンを含む接着剤層を
意味する。エチレンコポリマーは、限定なしに、1-プロペン、1-ブテン、および1-
オクテンなどのアルファ-オレフィンを含む、1種もしくは複数種のコモノマーの共重合
繰り返し単位を含んでもよい。いくつかの場合には、構造物のバルクPE層は、介在する
薄いタイ層なしで酸無水物グラフト化ポリエチレンまたは酸無水物グラフト化エチレンコ
ポリマーで変性される。そのようなケースでは、バルクPE層は、アステリスク付き(P
E*)で表されるであろう。「PE*」および「PEタイ」層に関して本明細書で用いる
ところでは、用語「エチレンコポリマー」は、エチレンコポリマーの総重量を基準として
、70重量%超のエチレンの共重合繰り返し単位を含むポリマーを意味する。「PP*」
および「PPタイ」層に類似して、層厚さが一定である場合に多層構造物の総容積を基準
として、「PE*」と称される層は20容積%超の容積を有し、「PEタイ」と称される
層は5~8容積%の容積を有する。可能な構造物の非限定的な例は次の通りである:
PP/PPタイ/バリア層/PPタイ/PP;
PP/PPタイ/バリア層/PEタイ/PE;
PP*/EVOH/PP*およびPP*/PA/PP*などの、PP*/バリア層/PP
*;
PP*/バリア層/PE*;
PE*/バリア層/PP*;
PE/PEタイ/バリア層/PPタイ/PP;
PA/PPタイ/PP/PPタイ/バリア層/PEタイ/PE/PE/(EVAまたはア
イオノマー);
ホモPP/co-PP/PPタイ/バリア/PPタイ/co-PP/ホモPP;
ホモPP/co-PP/PPタイ/PA/EVOH/PA/PEタイ/LLDPE/VL
DPE;
PA/PPタイ/co-PP/PPタイ/PA/タイ/EVA/EVA;
PA/PPタイ/co-PP/co-PP/PPタイ/PA/EVOH/PA/タイ/エ
チレン酸コポリマー/エチレンアイオノマー;
co-PP/PPタイ/EVOH/PEタイ/mPE;
ホモPP/co-PP/PPタイ/PA/EVOH/PA/タイ/エチレンアイオノマー
/エチレン酸コポリマー;および
PET/EMA/co-PP/PPタイ/PA/EVOH/PA/タイ/エチレンアイオ
ノマー/エチレンアイオノマー;
不織布//ホモPP/co-PP/PPタイ//プライマー/OPP;
co-PP*//プライマー/BON(ここで、co-PP*は、バルキング層co-P
P樹脂と接着剤組成物とのブレンドを含む);ならびに
co-PP/PPタイ/PA/PPタイ//プライマー/裏刷「OPET」(延伸ポリエ
チレンテレフタレート)。
【0096】
「PPタイ/B/PPタイ」、「PPタイ/B/タイ」、「PPタイ/B/PE*」、
「PP*/B/PP*」、「PP*/B/PE*」、および「PPタイ/B/PEタイ」
(ここで、記号「B」は、バリア樹脂を含む少なくとも1つの層を含むバリア構造物を意
味する)からなる群から選択されるサブストラクチャーを含む多層構造物が好ましい。
【0097】
上の実施形態のそれぞれにおいて、記号「/」は、隣接層を示す。加えて、記号「//
」は、固体基材の層上へ溶融押出された層間の接合部分を意味する。さらに、任意のフィ
ルムもしくはシートの第2層は、当該フィルムもしくはシートの第1層と同じものまたは
それとは異なるものであってもよい。同様に、第3層は、当該フィルムもしくはシートの
第1層および第2層と同じものまたはそれらとは異なるものであってもよい、などである
。さらに、本発明のいくつかの好ましい実施形態では、隣接層は、それらが接している(
adjoining)または、より好ましくは、接触している(contiguous)
ように互いに直接積層される。
【0098】
多層構造物は、フィルム、シートまたはラミネートであってもよく、約15ミル~約5
0ミル以下、または約0.3~約15ミル、約1~約10ミル、または1.5~8ミルの
全厚さ(すべての層の総厚さ)などの特定の包装操作にとって望まれる特性を提供するた
めに望まれる任意の全厚さを有してもよい。ラミネートは、フィルム、シート、またはボ
トルもしくは熱成形カップもしくはパイプなどの硬質部品の形態にあることができる。
【0099】
多層構造物は、インフレーションフィルム、キャストフィルム、キャストシート、押出
コーティング、共押出コーティング、押出積層、共押出積層、押出インフレーションフィ
ルム、共押出インフレーションフィルム、押出キャストシートもしくはフィルム、共押出
キャストシートもしくはフィルム、押出パイプもしくはシート法、共押出パイプもしくは
シート法、押出ブロー成形、共押出ブロー成形、射出成形、および共射出成形などの、当
技術分野において公知の任意の方法によって製造され得る。共射出製造方法は、包装構造
物およびラミネートならびにそれらの構成要素を製造する点でますます興味のあるもので
ある。好ましい方法は、共射出延伸ブロー成形(ISBM)であり、それは、欧州特許出
願公開第2305751A1号明細書に記載されている。
【0100】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供される。具体的な実施形態
および本発明を実施するために現在熟考される好ましい様式を示す、これらの実施例は、
本発明を例示することを意図され、それを制限することを意図されない。
【実施例0101】
材料および方法
融点および融解熱は、New Castle,DEのTA Instrumentsか
ら入手可能な、Model Q2000示差走査熱量計を用いて、第2加熱走査において
10℃/分の走査速度で、示差走査熱量測定法(DSC)によってASTM D3418
に従って測定した。
【0102】
10分当たりのグラム単位でのマレエート化ポリプロピレンの測定メルトフローレート
(MFRM)は、Horsham,PA)のTinius Olsen Testing
Machine Companyから入手可能な、Model M 987メルトイン
デクサーを用いて、190℃でおよび325グラムの荷重下に標準ダイ(オリフィス径2
.095mm(0.0825インチ))を使用してASTM D1238に従って測定し
た。重要なことに、MFRMは、マレエート化ポリプロピレンが製造された後タイムリー
に得た。高湿度条件へのマレエート化ポリプロピレンの長期にわたる暴露は、酸形成のた
めに、低いMFRMの不正確な測定結果をもたらす。
【0103】
230℃および2.16kg荷重でのマレエート化ポリプロピレンのメルトフローレー
ト(MFR)(標準ダイを使用する、ASTM D1238)は、次の経験的相関を用い
てMFRMから推定した:
MFR=27.788*MFRM+28.009
この相関は、以下のステップで開発した:(1)選択された組成物のMFRMを、190
℃でおよび325gの荷重下に標準ダイを使用してASTM D1238の通り得た;(
2)同じ選択された組成物のレオロジーを、キャピラリーレオメーター(Model L
CR 7001、Akron,OHのAlpha Technologiesによって製
造された)を用いて230℃で測定し、溶融粘度対剪断速度の関係をこの温度で求めた;
(3)この関係を用いてASTM D1238標準ダイを使った230℃および2.16
kg荷重でのMFRを推定した;(4)MFRMと推定MFRとの間の上記線形相関を、
2つの異なる形態の測定を用いて同じ組成物について得られたデータの回帰分析に基づい
て求めた。
【0104】
G/M比は、上記の詳細な説明において定義された通りである。より具体的には、酸無
水物グラフト化耐衝撃性co-PP中のグラフト化酸無水物モノマーの重量百分率(G)
と、酸無水物グラフト化耐衝撃性co-PPの2.16kg荷重下に230℃でのメルト
フローレート(M)とは、式(G/M)*100≦0.5で関連付けられる。
【0105】
グラフト化無水マレイン酸の公称レベル(「g-レベル」、(共)グラフト化ポリプロ
ピレンの総重量を基準とする重量百分率として報告される)は、Madison,WIの
Thermo Electron Corp.から入手可能な、Nicolet Ava
tar 330 FTIR分光計を用いてフーリエ(Fourier)変換赤外(FTI
R)分光法によって測定した。スペクトルを、マレエート化ポリプロピレンから調製され
た試料フィルムから得た。吸収ピークの積分を、内部調製標準を用いて較正した。
【0106】
実施例PP-1~PP-15
グラフト反応は、プロピレン耐衝撃性コポリマー(耐衝撃性co-PP)を使って押出
機で実施し、それは、有機過酸化物と溶融混合され、フリーラジカル反応によって1種も
しくは複数種の反応性モノマーでグラフトされた。
【0107】
同様に、共グラフト反応を押出機で実施した。少なくとも1種の耐衝撃性co-PPを
含む、個々のポリプロピレンコポリマーを、別個の供給機によって押出機のスロートへ供
給した。あるいはまた、少なくとも1種の耐衝撃性co-PPを含有するポリプロピレン
コポリマーのプレブレンドを、押出機のスロートへ供給した。ポリプロピレンコポリマー
は、有機過酸化物と溶融混合され、フリーラジカル反応によって1種もしくは複数種の反
応性モノマーで、同時におよびランダムに、共グラフトされた。
【0108】
実施例PP-2、PP-3、PP-4、PP-5、PP-6、PP-7、PP-8、P
P-9、PP-10およびPP-11は、Hanover,GermanyのKraus
sMaffei Berstorff GmbHから入手可能な、43mmの直径および
48:1の全バレル長さ対直径の比の咬合共回転二軸スクリュー押出機で製造した。
【0109】
実施例PP-1、PP-13、PP-14およびPP-15は、KraussMaff
ei Berstorff GmbHから同様に入手可能な、96mmの直径および48
:1の全バレル長さ対直径の比の咬合共回転二軸スクリュー押出機で製造した。
【0110】
有機過酸化物DHBP(2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ
)-ヘキサン)を、耐衝撃性co-PPまたは共グラフトされるポリマーの、グラフト化
前の、総重量を基準として2000~5000ppmのローディングで、マスターバッチ
の形態で押出機に添加した。グラフト化モノマーは無水マレイン酸であり、それは、溶融
され、注入ポートを通って液体として押出機に注入され;押出機へ注入される無水マレイ
ン酸の量は、再び耐衝撃性co-PPまたは共グラフトされるポリマーの、グラフト化前
の、総重量を基準として、約1.2重量%~2重量%の範囲であった。
【0111】
バレル温度プロフィールは、反応ゾーンについて190℃~220℃に設定した。グラ
フト反応後に、未反応の反応性モノマーをベントポートで真空抽出によって除去した。生
成物を190℃~170℃に冷却し、その後Korntal-Muenchingen,
GermanyのReduction Engineering GmbHから入手可能
なScheerストランドペレタイザーを用いてペレット化した。
【0112】
実施例PP-13、PP-14およびPP-15は、揮発性物質除去効率を向上させる
ために真空抽出の上流で溶剤を注入して製造した。加えて、実施例PP-11は、同じ耐
衝撃性co-PPの異なるロットを使用する、実施例PP-10の繰り返しである。
【0113】
グラフト化および共グラフト化PP組成物の成分、それらのメルトフローレート、それ
らの重量による無水マレイン酸グラフトレベルおよびそれらのG/M比を表1に示し、表
中「Comp」は「比較例」を意味する。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
実施例16~31:
共射出成形によって得られるPP*/EVOH/PP*構造物
構造PP*/EVOH/PP*(「PP*」表記法は、上に定義された通りである)を
有する3層容器は、428 Newburyport Turnpike,Rowley
,MA 01969,USAにある、Kortec,Inc.で共射出成形によって製造
された。
【0117】
非グラフト化PP樹脂は、230℃および2.16kgでASTM D1238によっ
て測定されるように、120g/10分のメルトフローレート、およびASTM D79
0Aによって測定されるように、1450メガパスカルの曲げ弾性率を持った耐衝撃性c
o-PPであった。官能化ポリプロピレンは、表1に記載される通りであった。各PP*
ブレンド中の官能化ポリプロピレンおよび非グラフト化耐衝撃性co-PPの総量が、P
P*ブレンドの総重量を基準として、100重量%であるように、2.5~10重量%の
官能化ポリプロピレンおよび補完量の非グラフト化耐衝撃性co-PPを含む、幾つかの
PP*ブレンドを製造した。エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)バリア樹
脂は、32モル%の共重合エチレンを含み、ASTM D1238に従って210℃およ
び2.16kgで測定される、12g/10分のメルトフローレートを有した。
【0118】
3層容器を、Mokena,IL.のHusky Injection Moldin
g Systems,Inc.から入手可能な、HuskyTM成形機で製造した。非グ
ラフト化PP樹脂を、官能化ポリプロピレンと乾式ブレンドし、約245℃で主スクリュ
ー(40mm、L/D比25:1)を通して処理して溶融ブレンドを形成した。第2スク
リュー(18mm、L/D比21:1)が約235℃でEVOHを処理した。ホットラン
ナーは共射出システムであり、そのシステムにおいてPP*ブレンドおよびEVOHは、
空洞中へ射出されるちょっと前にノズルに入るまで別個の多岐管中に保たれた。PP*ブ
レンド用の多岐管は245℃に加熱し、EVOH用の多岐管は235℃に加熱した。容器
は、230mlの容積および10gの重量を有した。容器の側壁の呼び厚さは0.6mm
であり、容器の中間EVOH層の呼び厚さは50ミクロンであった。
【0119】
容器を、70°Fおよび50%相対湿度で少なくとも24時間順化させ;次に、層の接
着力を、フープ方向に容器の側壁から採取した1インチストリップに関して測定した。各
ストリップを、外側PP*/EVOH接合部分で部分的に分離した。ストリップの分離タ
ブを引張試験装置(Model No.SN4465、Norwood,MAのInst
ronから入手可能な)のクランプに入れ、30.48cm/分の速度でのT剥離試験で
引き離して剥離力を測定した。表2~5は、g/25分の単位で報告される、5つの別個
の容器から採取された5つのストリップの平均剥離力を示す。エラーバーは標準偏差であ
る。
【0120】
【表3】
【0121】
表2は、比較例PP-2、PP-3およびPP-4を含むブレンドの接着強度が、比較
例PP-1を含むブレンドのそれよりも著しく優れていることを実証する。比較例PP-
1およびPP-2を含むブレンド間の剥離力の差は、これらの組成物の接着性を向上させ
る点でのグラフト化耐衝撃性co-PPの重要性を例示する。さらに、共グラフト化co
-PPを含む、実施例PP-3およびPP-4は、共グラフト化co-PPを含まない、
比較例PP-1または比較例PP-2を含むブレンドのそれよりも優れていない場合でも
少なくとも似ている接着性能を示す。最後に、これらの結果はまた、0.5未満のG/M
比を有する共グラフト化co-PPを含むブレンドが、比較例PP-2を含むブレンドと
比べて、より低いレベルのグラフト化co-PPで優れた接着性を発現させることを示す
【0122】
【表4】
【0123】
表3のデータはまた、これらの組成物の接着性を向上させるための0.5未満のG/M
を有する耐衝撃性co-PPおよび共グラフト化co-PPの重要性を実証する。加えて
、共グラフト化co-PPを含む、実施例PP-8は、共グラフト化co-PPを含まな
い、比較例PP-7を含むブレンドのそれよりも優れていない場合でも少なくとも似てい
る接着性能を示す。さらに、実施例PP-8の性能は、共グラフト化co-PPを含まな
い、比較例PP-1のそれよりも著しく優れている。
【0124】
【表5】
【0125】
表4のデータは、優れた接着性が、共グラフト化ブレンドのG/M比がほぼ一定に保持
されるという条件で、より低いレベルの官能化にもかかわらず、実施例PP-5およびP
P-6などの、共グラフト化ブレンドで得ることができることを実証する。
【0126】
【表6】
【0127】
表2の結果と同様に、表5のデータは、グラフト化耐衝撃性co-PPが、グラフト化
ランダムco-PPと比べて、優れた接着性を提供することを実証する。特に、実施例P
P-14と比較例PP-2との並置は、0.5未満のG/M比を有するグラフト化耐衝撃
性co-PPがまた向上した結合強度を与えることを明らかにする。加えて、データは、
共グラフト化co-PPを含むブレンドが、単一グラフト化耐衝撃性co-PPの接着性
と比べてより低いレベルのグラフト化co-PPで優れた接着性を発現させることを示す
【0128】
実施例32~35:
インフレーションフィルム押出によって得られるPP/タイ/EVOH構造物
ポリプロピレン接着剤を、ホモ-PP(メルトフローレート3.5g/10分(230
℃、2.16kg);密度0.9g/cm3)の層と、エチレンビニルアルコールコポリ
マー(Eval(登録商標)F171A、Houston,TXのKuraray Am
erica,Inc.から入手可能な)の層との間にタイ層として共押出した。接着剤は
、約27rpmで運転される1.25インチ押出機で約225℃で溶融させた。ホモ-P
Pは、約45rpmで運転される1.25インチ押出機で約227℃で溶融させ、EVO
Hは、約34rpmで運転される1.25インチ押出機で約227℃で溶融させた。溶融
体流れを、共押出ダイ(Brampton,OntarioのBrampton Eng
ineering,Inc.から入手可能な)を通して供給して3層フィルムを形成した
。フィルム形成の速度は約9m/分であり、各層の呼び厚さは、PP(50ミクロン)/
タイ(13ミクロン)/EVOH(23ミクロン)であった。
【0129】
多層フィルムの接着強度は、縦方向に切り取られた1インチストリップに関して測定し
た。各ストリップを、タイ接合部分で部分的に分離した。ストリップの分離タブを引張試
験装置(Instron Model No.SN4465)のクランプに入れ、12イ
ンチ/分の速度でのT剥離試験で引き離して剥離力を測定した。表6は、g/25分の単
位で報告される、5つのストリップの平均剥離力を示す。エラーバーは標準偏差である。
【0130】
【表7】
【0131】
表6のデータは、グラフト化耐衝撃性co-PPおよび共グラフト化co-PPブレン
ドを含む接着剤組成物がまた、インフレーションフィルムにおけるタイ層として使用され
る場合に向上した性能を示すことを実証する。特に、PP-3、PP10およびPP-1
1のブレンドを含むフィルムは、比較例PP-1およびPP-12などの、グラフト化ラ
ンダムco-PPのブレンドを含むフィルムの剥離力よりも優れている剥離力を有する。
かなりの量の共グラフト化ランダムco-PPを含む、実施例PP-3は、比較例PP-
2のものに類似の接着性を有する。
【0132】
とりわけ、表6の結果は、比較的高いメルトフローレートを有するグラフト化耐衝撃性
co-PPおよび共グラフト化co-PPブレンドがインフレーションフィルム装置で加
工可能であることを示す。さらに、実施例PP-3、PP-10およびPP-11は、比
較例PP-2のより高い分子量材料に有利にも匹敵する優れた接着強度を有するタイ層を
提供する。対照的に、比較例PP-1およびPP-12などの、グラフト化ランダムco
-PPの層を含むフィルムから得られた結果は、それを越えるとメルトフローレートのさ
らなる増加が接着強度を損なう上限があることを示す。
【0133】
実施例36:押出積層法
二軸延伸ポリエステル基材(BOPET、23ミクロン厚さ、550mm幅)を先ず、
約103W/(m2-分)のワット密度でその全幅にわたって4.5kWでのコロナ処理
にかける。ポリエチレンイミンプライマー、Shelton,CTのMica Corp
orationから入手可能なMica A-131-Xを次に、300QCHクロムグ
ラビアシリンダーと60ショア(Shore)-Aゴム補助ロールとを約80m/分のラ
イン速度で用いる、グラビア印刷によってBOPETフィルムのコロナ処理側に塗布する
。コートされたプライマー液を、110℃に設定されたゾーンを持った4メートル空気浮
遊ドライヤーを用いてオンラインで乾燥させて1平方メートル当たり0.35乾燥グラム
のプライマーコーティングを生成する。
【0134】
下塗りし、乾燥させたBOPETフィルムを、約80m/分のライン速度で押出コーテ
ィングラインでの押出によって3つの共押出層(ホモPP*/ナイロン6/ランダムco
-PP*)でコートし、そのうちランダムco-PP層は、下塗り表面上へ直接押し出す
。ホモPP(MFR 22g/10分(230℃、2.16kg)、密度0.90g/c
c)を、20重量%の接着剤PP-6(上を参照されたい)と乾式ブレンドし、200/
230/260/290/315℃でのバレル設定値の90mm押出機で押し出す。ナイ
ロン6(Aegis H85NP、Morristown,NJのHoneywell
Resins and Chemicalsから入手可能な)を、180/210/24
0/270/300℃でのバレル設定値の63.5mm押出機で押し出す。co-PPは
、20重量%の接着剤PP-6と乾式ブレンドされるランダムco-PP(MFR 7g
/10分(230℃、2.16kg)、密度0.90g/cc、融点134℃)である。
供給ブロック温度は300℃に設定し、共押出ダイ温度は315℃である。ダイと冷却ロ
ールとの間の空隙は約10mmである。共押出層の厚さは、ホモPP*ブレンド層につい
ては25ミクロン、ナイロン6層については10ミクロン、ランダムco-PP*ブレン
ド層については5ミクロンである。ラミネートの1インチのストリップを、co-PPブ
レンドと下塗り表面との間の接着性を室温で、またはそれを室温で1週間水に浸漬した後
に試験するために切り取る。これらの2セットの条件下で分離を開始させることの困難さ
は優れた接着性を示すであろうと予期される。
【0135】
本発明の好ましい実施形態のいくつかを上で説明し、具体的に例示してきたが、本発明
がそのような実施形態に限定されることは意図されない。様々な変更が、以下の特許請求
の範囲に示されるような、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく行われ得る。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
本発明の好ましい実施形態のいくつかを上で説明し、具体的に例示してきたが、本発明がそのような実施形態に限定されることは意図されない。様々な変更が、以下の特許請求の範囲に示されるような、本発明の範囲および主旨から逸脱することなく行われ得る。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 無水物グラフト化インパクトco-PPを含むポリプロピレン組成物であって、前記無水物グラフト化インパクトco-PP中のグラフト化無水物モノマーの重量百分率(G)と、前記無水物グラフト化インパクトco-PPのメルトフローレート(M)とが、式(G/M)*100≦0.5で、好ましくは式0.2≦(G/M)*100≦0.5で関連付けられ;2.16kg荷重下、230℃での前記メルトフローレートが測定されるかまたは計算され;前記重量百分率は、前記無水物グラフト化インパクトco-PPの総重量を基準とし;好ましくは前記少なくとも1種のインパクトco-PPが、グラフト化前の前記インパクトco-PPの総重量を基準として、約10重量%以上のエチレンの共重合単位を含む組成物。
(2) 325g荷重下、190℃でASTM D-1238に従って測定される、4.0~32g/10分のメルトフローレートを有するか、または140~900g/10分、好ましくは200~600g/10分であると測定される2.16kg荷重下、230℃でのメルトフローレートを有する、前記(1)に記載のポリプロピレン組成物。
(3) 前記グラフト化組成物が、無水物グラフト化インパクトco-PPの総重量を基準として、0.5重量%~4重量%のグラフト化無水物単位;好ましくは0.5重量%~2.5重量%のグラフト化無水物単位または1.2重量%~1.65重量%のグラフト化無水物単位を含む、前記(1)または前記(2)に記載のポリプロピレン組成物。
(4) 前記無水物が無水マレイン酸である、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物。
(5) 前記(1)~(4)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物であって、ランダムco-PP、インパクトco-PP、およびホモポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種の非グラフト化ポリプロピレンとブレンドされ;任意選択的に、炭化水素エラストマー、スチレンコポリマー、エチレンアルファ-オレフィンコポリマー、およびプロピレンアルファ-オレフィンコポリマーからなる群から選択される1種もしくは複数種の弾性ポリマーとさらにブレンドされ;好ましくは前記炭化水素エラストマーが、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレン-ブタジエン熱可塑性ゴム、スチレン-イソプレン熱可塑性ゴム、ブチルゴム、およびポリイソブチレンからなる群から選択され;好ましくは前記ポリプロピレン組成物が、前記ポリプロピレン組成物の総重量を基準として、約65重量%~約95重量%の少なくとも1種の非グラフト化ポリマー、または2種以上の非グラフト化コポリマーの組み合わせを含み、任意選択的に30重量%以下の前記1種もしくは複数種の弾性ポリマーを含む組成物。
(6) 前記(1)~(5)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物であって、少なくとも1種のグラフト化ランダムco-PP、少なくとも1種のさらなるグラフト化インパクトco-PP、少なくとも1種のグラフト化ホモポリプロピレン、またはそれらの2種以上の組み合わせとブレンドされ;好ましくは前記ポリプロピレン組成物が、前記ポリプロピレン組成物の総重量を基準として、約5重量%~約35重量%の少なくとも1種のグラフト化ポリプロピレン、または2種以上のグラフト化ポリプロピレンの組み合わせを含む組成物。
(7) 前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む乾燥ブレンドまたは溶融ブレンド。
(8) 前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む少なくとも1つの層を含む多層構造物であって;好ましくは前記多層構造物が3層構造物である多層構造物。
(9) 前記(8)に記載の多層構造物であって、サブストラクチャー「PP*/B」または「PPタイ/B」を含み、ここで、前記記号「/」は隣接層を意味し、前記記号「B」は、バリア樹脂を含む少なくとも1つの層を含むバリア構造物を意味し、前記記号「PP*」は、前記ポリプロピレン組成物を含むバルク層を意味し、前記記号「PPタイ」は、前記ポリプロピレン組成物を含む接着剤層を意味し;好ましくは「PPタイ/B/PPタイ」、「PPタイ/B/タイ」、「PP*/B/PP*」、「PP*/B/PE*」、および「PPタイ/B/PEタイ」からなる群から選択されるサブストラクチャーを含み、ここで、前記記号「タイ」は、グラフト化インパクトco-PPまたは共グラフト化インパクトco-PPを含まない接着剤層を意味し;前記記号「PE*」は、ポリエチレンおよびエチレンコポリマーからなる群から選択されるエチレンポリマーと、無水物グラフト化ポリエチレンおよび無水物グラフト化ポリエチレンコポリマーからなる群から選択される無水物グラフト化ポリマーとを含むバルク層を意味し;前記記号「PEタイ」は、ポリエチレンと、無水物グラフト化ポリエチレンおよび無水物グラフト化ポリエチレンコポリマーからなる群から選択される無水物グラフト化ポリマーとを含む接着剤層を意味し;前記サブストラクチャー「PP*/B/PP*」中の前記2つのPP*層が、同じもしくは異なるものであり;前記サブストラクチャー「PPタイ/B/PPタイ」中の前記2つのPPタイ層が、同じもしくは異なるものである、多層構造物。
(10) 前記バリア樹脂が、EVOH、ポリアミド、またはEVOHとポリアミドとの組み合わせを含み;好ましくは前記バリア構造物が、サブストラクチャー「PA/EVOH/PA」を含み、ここで、前記記号「EVOH」はエチレンとビニルアルコールとのコポリマーを含む層を意味し;前記記号「PA」はポリアミドを含む層を意味する、前記(9)に記載の多層構造物。
(11) 前記少なくとも1つの層が、配向フィルム;金属箔;ならびに織布もしくは不織布、網およびスクリムからなる群から選択される第2層に接着しており;任意選択的に前記第2層がケミカルプライマーでコートされている、前記(8)、(9)または(10)に記載の多層構造物。
(12) 前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のポリプロピレン組成物を含む物品であって、前記物品が、インフレーションフィルム成形法、キャストフィルム法、キャストシート法、共押出コーティング法、共押出積層法、および共射出成形法からなる群から選択される方法によって製造され;前記共射出成形法は好ましくは共射出延伸ブロー成形法である物品。