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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124891
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】多段ノズルエジェクタ
(51)【国際特許分類】
   F04F 5/22 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
F04F5/22
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028744
(22)【出願日】2022-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】598040639
【氏名又は名称】株式会社 ワイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】荒井 竹志
【テーマコード(参考)】
3H079
【Fターム(参考)】
3H079AA18
3H079AA24
3H079BB01
3H079CC23
3H079DD04
3H079DD08
3H079DD23
3H079DD24
(57)【要約】
【課題】 分解洗浄性を大幅に向上するとともに、メンテナンス性、メンテナンスコストの低減を図り、多様なニーズに容易に対応できる多段ノズルエジェクタを提供する。
【解決手段】 本発明の多段ノズルエジェクタ1は、複数のノズル11等を直列に連結して構成されるノズルユニット10と、ボディ本体20と、中間プレートパッキン30を介在させて配設される中間プレート40と、接続プレートパッキン50を介在させて配設され、内部に吸込室61が形成される接続ボディ60とを含んで構成される。ボディ本体20内には供給室25と、減圧室26等が形成され、中間プレート40は、減圧室26等と吸込室61とを連通する減圧室連通孔41等を備え、ノズルユニット10は、拡散室15a等と減圧室26等とを連通する拡散室連通孔12a等を備え、減圧室連通孔41等が位置する中間プレートパッキン30に、開口部31及びフラップ弁32,33が形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを直列に連結して構成されるノズルユニットと、
前記ノズルユニットを、その長手方向に挿入可能なボディ本体と、
前記ボディ本体に、中間プレートパッキンを介在させて配設される中間プレートと、
前記中間プレートに、接続プレートパッキンを介在させて配設され、内部に吸込室が形成される接続ボディと、
を含んで構成され、
前記ボディ本体内には、前記ボディ本体内を仕切る隔壁が配設されるとともに、該隔壁には、前記ノズルユニットを挿通可能な挿通孔が形成され、前記ノズルユニットを前記ボディ本体内に挿入固定することによって、前記ボディ本体内に供給室と、少なくとも一の減圧室が形成され、
前記中間プレートが、前記減圧室と、前記吸込室とを連通する減圧室連通孔を備え、
前記ノズルユニットが、前記ノズルユニットにおけるノズル連結部に形成される拡散室と、前記減圧室とを連通する拡散室連通孔を備え、
前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに、開口部が形成されていることを特徴とする多段ノズルエジェクタ。
【請求項2】
前記ノズルユニットが三以上の前記ノズルを直列に連結して構成され、
前記ボディ本体内に前記ノズルユニットを挿入固定することによって、前記ボディ本体内に前記供給室と、二以上の前記減圧室が形成され、
前記中間プレートが、各前記減圧室と、前記吸込室とをそれぞれ連通する前記減圧室連通孔を備え、
前記ノズルユニットが、各前記ノズル連結部に形成される各前記拡散室と、各前記減圧室とをそれぞれ連通する前記拡散室連通孔を備え、
一の前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに前記開口部が形成され、他の前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに、切れ目を入れてフラップ弁を形成したことを特徴とする請求項1に記載の多段ノズルエジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズルを直列に配設して成る多段ノズルエジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空圧発生装置としてエジェクタが知られており、複数のノズルを直列に配設した多段ノズル式のエジェクタに関する技術が多数開示されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照。)。
【0003】
特許文献1に開示された真空圧発生装置は、第1吐出口を有する第1管体と、第1吐出口の吐出気流を受けて第1減圧室内の気体を吸込む第1受気口と第2吐出口とを前後に有する第2管体と、第2吐出口の吐出気流を受けて第2減圧室内の気体を吸込む第2受気口と第3吐出口とを前後に有する第3管体と、第3吐出口の吐出気流を受けて第3減圧室内の気体を吸込む第3受気口と排気口とを前後に有する第4管体とを備え、第1管体内径が1.3±0.05mm、第2管体内径が3.5±0.05mm、第3管体内径が5.5±0.05mm、第4管体内径が9.5±0.05mmであることを特徴とする。
【0004】
特許文献1に開示された真空圧発生装置によると、特定の形状を有する吐出口と受気口を備えたそれぞれ第1~第4管体を、特定の間隔を保って順次に配置することによって、小型であっても高い真空度が得られ、多量の空気の吸引ができ、使用する加圧空気のエネルギー効率が高く、経済的であるという効果がある、と記載されている。
【0005】
特許文献2には、複数のノズルを間隔を設けて直列に組み込んだボディと、このボディを塞ぐためのカバーとによって本体を構成し、この本体には、圧縮空気を供給する供給通路と、供給された空気を排気する排気通路と、真空にすべき室あるいはワークを吸着する吸着手段を接続する吸引通路とを開口してなるエジェクタにおいて、上記ボディは樹脂製からなるとともに、このボディの膨張及び収縮を抑える膨張抑止部材を、上記ノズルの長手方向に沿って設けたことを特徴とするエジェクタが開示されている。
【0006】
特許文献2に開示されたエジェクタによると、樹脂でボディを形成しているので、化学物質や水分の影響を受ける環境で使用しても、ボディが化学反応を起こす恐れが極めて低く、また、ボディは樹脂製であるため、安価に製造することができ、しかも、本体には膨張抑止部材を設けたので、温度変化の激しい環境下でも、ボディが膨張したり収縮したりするのを防止することができ、温度変化の激しい環境下で使用しても、ノズルの対向間隔に狂いが生じず、所定の吸引流量あるいは到達真空度を確保するとともに、高精度なエジェクタ機能を維持することができる、と記載されている。
【0007】
特許文献3には、供給ポートから排気ポートまでの流体の流れ方向に沿って複数の減圧室および同軸上に配置した複数の直管状のノズルと、上記ノズルの軸線から外れた位置に設けた吸引ポートとを備えた多段エジェクタにおける減圧室から吸引ポートへの流体の流れを規制するチェックバルブであって、上記吸引ポートと減圧室との間の隔壁を構成するとともに吸引ポートと減圧室とを連通させる複数の連通孔を設けた金属製の基板と、ゴム製の弁部材と、この弁部材と基板とを重ねて貫通し、一方の端部に抜け止め用の大径部を備えたピン部材と、ピン部材の他方の端部に取り付けるリング部材とからなり、上記弁部材は、平面形状を略四辺形にするとともに、この弁部材の中央に一つの辺の方向に伸びる帯状の厚肉部を当該弁部材の一方の面に凸出させ、この弁部材に上記一つの辺と平行にした厚みを保持してなる先端部を上記弁部材の上記一方の面に凸出させ、これら厚肉部と先端部との間に上記厚肉部と先端部よりも薄い薄肉部を設け、これら厚肉部、先端部及び薄肉部を形成した一方の面とは反対側の面を平坦面にしてなり、この平坦面で上記基板の複数の連通孔を覆う構成にする一方、上記ピン部材の大径部と上記リング部材とによって上記基板および弁部材の厚肉部を挟んで構成した多段エジェクタ用のチェックバルブが開示されている。
【0008】
特許文献3に開示された多段エジェクタ用のチェックバルブによると、繰り返しの開閉に対しても、弁部材の耐久性が高く、チェックバルブの耐久性が向上し、特に、弁部材の先端を厚くしたので、チェックバルブが開いたときに、減圧室内のノズルに弁部材の先端が衝突しても、破損し難くなり、その結果、チェックバルブの耐久性がより向上する、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3022143号公報
【特許文献2】特開2007-211700号公報
【特許文献3】特許第4873887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
エジェクタが適用される分野は、医薬品や食品、半導体、二次電池等、多岐にわたるが、これら医薬品、食品、半導体、二次電池等の分野においてはクロス・コンタミネーションを避けるため、エジェクタに対する高度な分解洗浄性が求められる。
【0011】
また、エジェクタの適用分野によって要求される到達真空圧力や吸込流量は異なるため、多様なニーズに対応できるエジェクタが求められている。
【0012】
特許文献1に開示された真空圧発生装置は、特定の形状を有する吐出口と受気口を備えた第1~第4管体が、特定の間隔を保って順次に配置されている。より具体的には、「加圧気体室11と第1減圧室12の隔壁101には第1管体2が、第1減圧室12と第2減圧室13の隔壁102には第2管体3が、第2減圧室13と第3減圧室14の隔壁103には第3管体4が、更に第3減圧室14と排気室15の隔壁104には第4管体5が、同軸上に順次直列となって並ぶように設けられて」いる(特許文献1、段落[0008])。つまり、本体の隔壁に第1~第4管体がそれぞれ固定されているため、第1~第4管体を本体から取り外して洗浄することができないものと思料する。
【0013】
また、本体の隔壁に第1~第4管体がそれぞれ固定されていると、隔壁と第1~第4管体との取付部分における隙間や、第1~第4管体と本体の内壁面との隙間等の洗浄性は非常に悪く、洗浄不良を招くおそれがあるものと思料する。洗浄不良はクロス・コンタミネーションの要因ともなるため、エジェクタには高度な分解洗浄性が求められるのである。
【0014】
特許文献2に開示されたエジェクタにおいても、ボディの隔壁に各ノズルが固定されているため、特許文献1に開示された真空圧発生装置と同様、分解洗浄性が悪く、洗浄不良を招くおそれがある。
【0015】
また、特許文献2に開示されたエジェクタに係るカバーにはチェック弁が配設されているが、チェック弁の取付部分においても洗浄性が非常に悪いものと思料され、洗浄性が悪いと洗浄不良を招くおそれがある。
【0016】
特許文献3に開示されたチェックバルブを備えたエジェクタも、特許文献1に開示された真空圧発生装置と同様、隔壁にノズルがそれぞれ固定されているため、洗浄性が悪く、洗浄不良を招くおそれがあるものと思料する。
【0017】
また、特殊な形状のチェックバルブを適用することによってエジェクタ全体の高コスト化を招くとともに、チェックバルブの取付構造が複雑であるため、分解洗浄性が悪く、洗浄不良を招くおそれがあるものと思料する。
【0018】
更に、特許文献3には、チェックバルブに係る薄肉部の先端の厚みを厚くしているので、弁部材が大きく開いて、その先端が減圧室内のノズルの外壁に衝突しても破損することがない、と記載されている。しかし、ノズル近傍にチェックバルブを配設すると、圧縮空気と吸込エアとの間でチェックバルブに振動疲労が生じ易くなる。
【0019】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、構造をできる限り単純にすることによって分解洗浄性を大幅に向上するとともに、メンテナンス性、メンテナンスコストの低減を図り、多様なニーズに容易に対応できる多段ノズルエジェクタを提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
即ち、本発明の多段ノズルエジェクタは、複数のノズルを直列に連結して構成されるノズルユニットと、前記ノズルユニットを、その長手方向に挿入可能なボディ本体と、前記ボディ本体に、中間プレートパッキンを介在させて配設される中間プレートと、前記中間プレートに、接続プレートパッキンを介在させて配設され、内部に吸込室が形成される接続ボディと、を含んで構成され、前記ボディ本体内には、前記ボディ本体内を仕切る隔壁が配設されるとともに、該隔壁には、前記ノズルユニットを挿通可能な挿通孔が形成され、前記ノズルユニットを前記ボディ本体内に挿入固定することによって、前記ボディ本体内に供給室と、少なくとも一の減圧室が形成され、前記中間プレートが、前記減圧室と、前記吸込室とを連通する減圧室連通孔を備え、前記ノズルユニットが、前記ノズルユニットにおけるノズル連結部に形成される拡散室と、該拡散室と前記減圧室とを連通する拡散室連通孔を備え、前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに、開口部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の多段ノズルエジェクタにおいて、前記ノズルユニットが三以上の前記ノズルを直列に連結して構成され、前記ボディ本体内に前記ノズルユニットを挿入固定することによって、前記ボディ本体内に前記供給室と二以上の前記減圧室が形成され、前記中間プレートが、各前記減圧室と、前記吸込室とをそれぞれ連通する前記減圧室連通孔を備え、前記ノズルユニットが、各前記ノズル連結部に形成される各前記拡散室と、各前記減圧室とをそれぞれ連通する前記拡散室連通孔を備え、一の前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに前記開口部が形成され、他の前記減圧室連通孔が位置する前記中間プレートパッキンに、切れ目を入れてフラップ弁を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の多段ノズルエジェクタによると、構造が非常に単純であるため、メンテナンス性が高く、分解洗浄性に優れた多段ノズルエジェクタを低コストで提供することができる。特に、複数のノズルを連結して構成されるノズルユニットのボディ本体への取付構造が挿入固定式になっているため、ボディ本体とノズルユニットとの着脱が非常に容易であり、ボディ本体及びノズルユニットの分解洗浄性、更にはノズルユニットを構成するノズルの分解洗浄性を大幅に向上することができ、洗浄不良を招くおそれがない。
【0023】
また、本発明の多段ノズルエジェクタでは、中間プレートを配設するとともに、この中間プレートに減圧室連通孔を形成することによって、ノズルユニットに形成される拡散室連通孔の開口面積に比べて減圧室連通孔の開口面積を大きくすることができる。従って、吸込流量は確保しつつ、減圧室連通孔を通過する流体の流速を低減することができ、ボディ本体やノズルユニット等の振動や変形を大幅に抑制することができる。
【0024】
更に、本発明の多段ノズルエジェクタに係る減圧室が二以上形成される態様においては、一の減圧室連通孔が位置する中間プレートパッキンには開口部が形成され、他の減圧室連通孔が位置する中間プレートパッキンには切れ目を入れるのみで簡単にフラップ弁を形成することができる。このフラップ弁は逆止弁として機能するため、従来の逆止弁に比較してメンテナンス性の大幅な向上、メンテナンスコストの低減、そして分解洗浄性の向上を図ることができる。
【0025】
また、拡散室連通孔に比べて減圧室連通孔の開口面積を大きく形成し、減圧室連通孔を通過する流体の流速を低減することができるため、中間プレートパッキンに形成されたフラップ弁の長寿命化を図ることができるとともに、フラップ弁が摩耗したり損傷したりした場合であっても、容易に交換することができ、構造も非常に単純であるため低コストで提供することができる。
【0026】
更にまた、本発明の多段ノズルエジェクタに係るノズルユニットを構成するノズル数やノズルの形状、組合せ態様は適宜、変更・選択することができるため、適用分野、要求される到達真空圧力や吸込流量等、多様なニーズに対応できる多段ノズルエジェクタを容易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る多段ノズルエジェクタの断面図である。
図2図1に示した多段ノズルエジェクタの分解断面図である。
図3図1に示した多段ノズルエジェクタに係るノズルユニットであって、(a)は断面図、(b)は分解断面図である。
図4図1に示した多段ノズルエジェクタに係るボディ本体であって、(a)は断面図、(b)は底面図である。
図5図1に示した多段ノズルエジェクタに係る中間プレートであって、(a)は平面図、(b)はA-A断面図である。
図6図1に示した多段ノズルエジェクタに係る中間プレートパッキンであって、(a)は平面図、(b)はB-B断面図、(c)はC-C断面図である。
図7図1に示した多段ノズルエジェクタに係る接続ボディパッキンであって、(a)は平面図、(b)はD-D断面図である。
図8図1に示した多段ノズルエジェクタに係る接続ボディであって、(a)は平面図、(b)はE-E断面図である。
図9図1に示した多段ノズルエジェクタに係るボディ本体に、ノズルユニットを挿入固定する態様を示す断面図である。
図10図1に示した多段ノズルエジェクタによる低真空段階の作動状態を示す断面説明図である。
図11図1に示した多段ノズルエジェクタによる中真空段階の作動状態を示す断面説明図である。
図12図1に示した多段ノズルエジェクタによる高真空段階の作動状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の多段ノズルエジェクタの一実施形態について、図面に基づいて詳述する。図1は、本発明の一実施形態に係る多段ノズルエジェクタ1の断面図、図2は多段ノズルエジェクタ1の分解断面図である。これら図1及び図2に示すように、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1は、複数のノズル11,12,13,14を直列に連結して構成されるノズルユニット10と、ノズルユニット10を、その長手方向に挿入可能なボディ本体20と、ボディ本体20に、中間プレートパッキン30を介在させて配設される中間プレート40と、中間プレート40に、接続ボディパッキン50を介在させて配設される接続ボディ60とを含んで構成されている。
【0029】
本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係るノズルユニット10は、図3に示すように、複数のノズル11,12,13,14を直列に連結するとともに、各ノズル11,12,13,14のノズル径が徐々に増大するように構成されている。
【0030】
また、当該ノズルユニット10において、ノズル11とノズル12とのノズル連結部15には拡散室15aが形成され、同様に、ノズル12とノズル13とのノズル連結部16には拡散室16a、ノズル13とノズル14とのノズル連結部17には拡散室17aが形成される。
【0031】
更に、当該ノズルユニット10において、ノズル12の後方には、ノズル連結部15に形成された拡散室15aと外部、具体的には後述する減圧室26とを連通する拡散室連通孔12aを備え、同様に、ノズル13の後方には、ノズル連結部16に形成された拡散室16aと外部(減圧室27)とを連通する拡散室連通孔13a、ノズル14の後方には、ノズル連結部17に形成された拡散室17aと外部(減圧室28)とを連通する拡散室連通孔14aを備える。
【0032】
なお、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係るノズルユニット10は、ノズル11,12,13,14の計4つのノズルを直列に連結して構成しているが、本発明に係るノズルユニットは、少なくとも2つ以上のノズルを直列に連結して構成することができ、適用分野、要求される到達真空圧力や吸込流量等に応じて適宜、ノズル数を変更することができる。
【0033】
そして、本実施形態に係るノズルユニット10は、4つのノズル11,12,13,14を連結することによって、ノズル連結部は3カ所(ノズル連結部15,16,17)となり、ノズル連結部に形成される拡散室も3室(拡散室15a,16a,17a)となる。つまり、本発明に係るノズルユニットのノズル連結部数及び拡散室数は、ノズルユニットを構成するノズル数より1つ少なくなる。
【0034】
本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係るボディ本体20内には、図4に示すように、ボディ本体20内を仕切るための隔壁21,22,23が配設されている。また、この隔壁21,22,23には、ノズルユニット10を挿通可能な挿通孔21a,22a,23aがそれぞれ形成されている。そして、ボディ本体20の長手方向の一端側の側壁24に形成されたノズル挿入孔24aからノズルユニット10を挿入し、各挿通孔21a,22a,23aに挿通して固定するとともに、後述する中間プレートパッキン30を配設することによって、ボディ本体20内には、加圧流体(加圧気体、加圧液体等)の供給室25と、減圧室26,27,28が形成されることとなる(図9参照)。
【0035】
なお、本実施形態に係るノズルユニット10は、4つのノズル11,12,13,14を連結することによってノズル連結部が3カ所(ノズル連結部15,16,17)となるため、ボディ本体20内に配設される隔壁数も、ノズル連結部数に応じて3つ(隔壁21,22,23)となり、減圧室数も同様に3室(減圧室26,27,28)となる。つまり、本発明に係る隔壁数及び減圧室数は、ノズルユニットを構成するノズル数より1つ少なくなる。
【0036】
また、本実施形態に係るボディ本体20において、供給室25が位置するボディ本体20には加圧流体の供給口25aが配設されている。また、供給室25及び減圧室26が位置するボディ本体20には、圧力計接続部25b及び真空計接続部26aが配設されており、不図示の圧力計や真空計が配設されることとなる。
【0037】
本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係る中間プレート40は、ボディ本体20の底面側に、中間プレートパッキン30(図6参照)を介在させて配設される。この中間プレート40は、図5に示すように、ボディ本体20の底面視外形状と同一外形状をなす薄板状部材であって、ボディ本体20内に形成される減圧室26,27,28と、後述する接続ボディ60内に形成される吸込室61とを連通する減圧室連通孔41,42,43を備える。より具体的には、本実施形態に係る中間プレート40では、減圧室26と吸込室61とを連通する3つの減圧室連通孔41、減圧室27と吸込室61とを連通する3つの減圧室連通孔42a及び3つの減圧室連通孔42bで構成される減圧室連通孔42、減圧室28と吸込室61とを連通する3つの減圧室連通孔43a及び3つの減圧室連通孔43bで構成される減圧室連通孔43を備える。
【0038】
そして、この中間プレート40は、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係る中間プレートパッキン30を介在させてボディ本体20に取り付けられる。本実施形態に係る中間プレートパッキン30は、図6に示すように、ボディ本体20の底面視外形状及び中間プレート40の平面視外形状と同一外形状をなす薄板状部材であって、中間プレート40が備える減圧室連通孔41と相対する位置に開口部31が形成されている。
【0039】
また、中間プレート40が備える減圧室連通孔42,43の位置には、H字形状の切れ目34,35を入れることによってフラップ弁32,33が形成されている。より具体的には、中間プレート40が備える減圧室連通孔42を塞ぐように、減圧室連通孔42と相対する位置にH字形状の切れ目34を入れることによってフラップ弁32a,32bで構成されるフラップ弁32が形成され、減圧室連通孔42aがフラップ弁32aで塞がれ、減圧室連通孔42bがフラップ弁32bで塞がれることとなる。同様に、中間プレート40が備える減圧室連通孔43を塞ぐように、減圧室連通孔43と相対する位置にH字形状の切れ目35を入れることによってフラップ弁33a,33bで構成されるフラップ弁33が形成され、減圧室連通孔43aがフラップ弁33aで塞がれ、減圧室連通孔43bがフラップ弁33bで塞がれることとなる。
【0040】
本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係る接続ボディ60は、平面視外形状がボディ本体20の底面視外形状等と同一外形状をなし、中間プレート40に、図7に示した接続ボディパッキン50を介在させて配設されている。本実施形態に係る接続ボディ60は、接続ボディパッキン50を介在させて中間プレート40に取り付けられることによって、図8に示すように、接続ボディ60の内部に吸込室61が形成されることとなる。なお、本実施形態に係る接続ボディパッキン50も、図7に示すように、平面視外形状がボディ本体20の底面視外形状等と同一外形状をなす薄板状部材であって、接続ボディ60が備える吸込室61と、中間プレート40が備える減圧室連通孔41,42,43とを連通するための開口51が形成されている。
【0041】
また、本実施形態に係る接続ボディ60の底面部には、図8に示すように吸込口62を備え、吸込口62の配設位置に、接続フランジパッキン70を介在させて接続フランジ80が配設されている(図1及び図2参照)。なお、接続フランジ80には真空を要する装置、搬送回路等が接続されるが、接続ボディ60への接続態様によっては、必ずしも接続フランジ80を介在させなくてもよい。
【0042】
以上の構成を備える本実施形態の多段ノズルエジェクタ1は、図9に示すように、ボディ本体20、中間プレートパッキン30、中間プレート40、接続ボディパッキン50、接続ボディ60が、各構成部材に形成された螺子孔29に長螺子(不図示)を螺入することによって一体固定される。また、ノズルユニット10は、ボディ本体20の長手方向の一端側の側壁24に形成されたノズル挿入孔24aから挿入し、押さえプレートパッキン91を介在させて押さえプレート92を螺子93で螺着することによって、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1が構成される。なお、図1,2,10~12では、押さえプレートパッキン91、押さえプレート92及び螺子93の図示を省略しているが、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1の使用時には、これらの部材によってノズルユニット10がボディ本体20に固定されることとなる。
【0043】
次に、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1の作動状態を、図10図12に基づいて説明する。図10に示すように、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係るボディ本体20が備える加圧流体の供給口25aから供給室25に加圧流体(圧縮空気等)を供給すると、この加圧流体は供給室25からノズル11を通過し、ノズル12に向かって噴出する。ノズル11から噴出した加圧流体は、ノズル12へ流入する際に拡散室15a内の流体及びノズル12が備える拡散室連通孔12aを介して減圧室26内の流体を引き込み、これらの混合流体がノズル12を通過して、ノズル13に向かって噴出する。ノズル12から噴出した混合流体は、ノズル13へ流入する際に拡散室16a内の流体及びノズル13が備える拡散室連通孔13aを介して減圧室27内の流体を引き込み、これらの混合流体がノズル13を通過して、ノズル14に向かって噴出する。そして、ノズル13から噴出した混合流体は、ノズル14へ流入する際に拡散室17a内の流体及びノズル14が備える拡散室連通孔14aを介して減圧室28内の流体を引き込み、これらの混合流体がノズル14を通過して、外部へ排出される。
【0044】
このように、供給口25aから加圧流体を供給することによって拡散室15a,16a,17a(以下、「拡散室15a等」という。)内及び減圧室26,27,28(以下、「減圧室26等」という。)内が減圧され、拡散室15a等内及び減圧室26等内の流体を引き込むことで真空を作り出すことができる。
【0045】
[低真空段階]まず、加圧流体の供給を開始して拡散室15a等内及び減圧室26等内が減圧されると、拡散室15a等内及び減圧室26等内の流体が引き込まれるのに伴って、接続ボディ60に係る吸込口62から吸込室61内に外部流体が吸い込まれる。そして、拡散室15a等内及び減圧室26等内が低真空の段階では、図10に示すように、吸込室61内の流体が減圧室26等内にそれぞれ引き込まれる。具体的には、減圧室26内には、中間プレート40に係る減圧室連通孔41及び中間プレートパッキン30に係る開口部31を介して、吸込室61内の流体が引き込まれる。減圧室27内には、中間プレートパッキン30に係るフラップ弁32(フラップ弁32a,32b)が切れ目34によって減圧室27側へわん曲することで、減圧室連通孔42(減圧室連通孔42a,42b)を介して吸込室61内の流体が引き込まれる。同様に、減圧室28内には、フラップ弁33(フラップ弁33a,33b)が切れ目35によって減圧室28側へわん曲することで、減圧室連通孔43(減圧室連通孔43a,43b)を介して吸込室61内の流体が引き込まれる。
【0046】
[中真空段階]吸込室61側の真空度が高まり、減圧室28内の真空度より高くなると、図11に示すように、フラップ弁33(フラップ弁33a,33b)が閉じて減圧室連通孔43(減圧室連通孔43a,43b)を塞ぐことによって、吸込室61内の流体は減圧室26,27へ引き込まれることとなる。
【0047】
[高真空段階]吸込室61側の真空度が更に高まり、減圧室27内の真空度より高くなると、図12に示すように、フラップ弁32(フラップ弁32a,32b)が閉じて減圧室連通孔42(減圧室連通孔42a,42b)を塞ぐことによって、吸込室61内の流体は減圧室26へのみ引き込まれることとなる。
【0048】
以上の構成を備える本実施形態の多段ノズルエジェクタ1によると、構造が非常に単純であるため、メンテナンス性が高く、分解洗浄性に優れた多段ノズルエジェクタ1を低コストで提供することができる。特に、複数のノズル11,12,13,14を連結して構成されるノズルユニット10のボディ本体20への取付構造が挿入固定式になっているため、ボディ本体20とノズルユニット10との着脱が非常に容易であり、ボディ本体20とノズルユニット10との分解洗浄性、ノズルユニット10を構成するノズル11等の分解洗浄性、そして多段ノズルエジェクタ1の構成部材の分解洗浄性を大幅に向上することができ、洗浄不良を招くおそれがない。
【0049】
また、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1では、中間プレート40を配設するとともに、この中間プレート40に減圧室連通孔41,42,43を形成することによって、ノズルユニット10に形成される拡散室連通孔12a,13a,14aの開口面積に比べて減圧室連通孔41,42,43の開口面積を大きくすることができる。従って、吸込流量は確保しつつ、減圧室連通孔41,42,43を通過する吸込流体の流速を低減することができ、ボディ本体20やノズルユニット10等の振動や変形を大幅に抑制することができる。
【0050】
更に、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1では、3つの減圧室26,27,28が形成される態様であるが、一の減圧室連通孔41が位置する中間プレートパッキン30には開口部31が形成され、他の減圧室連通孔42,43が位置する中間プレートパッキン30には切れ目34,35を入れるのみで簡単にフラップ弁32,33を形成することができる。このフラップ弁32,33は逆止弁として機能するため、従来の逆止弁に比較してメンテナンス性の大幅な向上、メンテナンスコストの低減、そして分解洗浄性の向上を図ることができる。
【0051】
また、拡散室連通孔12a,13a,14aに比べて減圧室連通孔41,42,43の開口面積を大きく形成し、減圧室連通孔41,42,43を通過する流体の流速を低減することができるため、中間プレートパッキン30に形成されたフラップ弁32,33の長寿命化を図ることができるとともに、フラップ弁32,33が摩耗したり損傷したりした場合であっても、中間プレートパッキン30を交換するのみで対応でき、中間プレートパッキン30の構造も非常に単純であるため低コストで提供することができる。
【0052】
更にまた、本実施形態の多段ノズルエジェクタ1に係るノズル11,12,13,14の形状や組合せ態様は適宜、変更・選択することができるため、適用分野、要求される到達真空圧力や吸込流量等、多様なニーズに対応できる多段ノズルエジェクタを容易に提供することができる。
【0053】
以上、本発明の多段ノズルエジェクタの実施形態について詳述したが、本発明の多段ノズルエジェクタの技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。上述した実施形態に係る多段ノズルエジェクタ1に係るノズルユニット10は、ノズル11,12,13,14を直列に連結して構成されているが、本発明の多段ノズルエジェクタに係るノズルユニットは、少なくとも2つのノズルを直列に連結して構成することができる。
【0054】
本発明の多段ノズルエジェクタに係るノズルユニットを2つのノズルで構成する場合は、ノズル連結部及びノズル連結部に形成される拡散室が1つとなるため、ボディ本体内に配設される隔壁は1つとなり、一方が加圧流体の供給室、他方が減圧室となる。
【0055】
また、ノズルユニットを2つのノズルで構成する場合は、上述のとおり減圧室が1つとなるため、中間プレートが備える減圧室連通孔が位置する中間プレートパッキンには開口部のみが形成され、フラップ弁は不要となる。
【0056】
このように、本発明の多段ノズルエジェクタは、ノズルユニットを構成するノズル数に応じて、適宜、設計変更が可能であり、適用分野、要求される到達真空圧力や吸込流量等、多様なニーズに対応できる多段ノズルエジェクタを容易に提供することができる。
【0057】
また、本発明の多段ノズルエジェクタに係る構成部材の材質も特に限定されず、例えば、ボディ本体やノズルユニットを構成する各ノズル、中間プレート、接続ボディは金属製や樹脂製等、特に限定されず、使用環境や要求される耐久性、耐薬品性、耐摩耗性等に応じて最適な材質を選択して採用することができる。
【0058】
更に、本発明の多段ノズルエジェクタに係る中間プレートパッキンにフラップ弁を形成するにあたって、切れ目の態様はH字形状に限定されず、減圧室連通孔の形状や配設態様等に応じてコの字形状や半円形状等、適宜選択される。
【0059】
また更に、本発明の多段ノズルエジェクタに供給される加圧流体としては、空気、各種ガス、蒸気等が挙げられ、多段ノズルエジェクタによって吸い込まれる外部流体としても、各種気体や液体等が挙げられ、何れも特に限定されるものではない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0060】
1:多段ノズルエジェクタ
10:ノズルユニット
11,12,13,14:ノズル
12a,13a,14a:拡散室連通孔
15,16,17:ノズル連結部
15a,16a,17a:拡散室
20:ボディ本体
21,22,23:隔壁
21a,22a,23a:挿通孔
24:側壁
24a:ノズル挿入孔
25:供給室
25a:供給口
26,27,28:減圧室
30:中間プレートパッキン
31:開口部
32,33:フラップ弁
34,35:切れ目
40:中間プレート
41,42,43:減圧室連通孔
50:接続ボディパッキン
51:開口
60:接続ボディ
61:吸込室
62:吸込口
70:接続フランジパッキン
80:接続フランジ
91:押さえプレートパッキン
92:押さえプレート
93:螺子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12