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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124892
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】皮膚炎対処用具及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/36 20060101AFI20230831BHJP
   A45D 24/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A45D24/36 C
A45D24/00 R
A45D24/36 B
A45D24/36 Z
【審査請求】有
【請求項の数】36
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028745
(22)【出願日】2022-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】518408316
【氏名又は名称】株式会社シザーストリート
(71)【出願人】
【識別番号】512324971
【氏名又は名称】古川 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚炎の予防、皮膚炎を沈静、軽減する対処機能を有し、さらに、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にできると共に、毛髪や頭皮に付着する油性成分を除去できる櫛の機能を有する皮膚炎対処用具を提供する。
【解決手段】対処用具の材質が、C含有量が0.95~1.15%、Si含有量が≦0.50%、Mn含有量が≦0.50%、Cr含有量が14.50~17.50%、Mo含有量が≦2.00%、V含有量が0.05~0.35%、W含有量が≦0.30%、Co含有量が1.30~3.00%の化学成分である第一のステンレス鋼、及び/又は、C含有量が0.25~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.25%、P含有量が≦0.06%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~17.00%の化学成分である第二のステンレス鋼である。
【選択図】図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C含有量が0.95~1.15%、Si含有量が≦0.50%、Mn含有量が≦0.50%、Cr含有量が14.50~17.50%、Mo含有量が≦2.00%、V含有量が0.05~0.35%、W含有量が≦0.30%、Co含有量が1.30~3.00%の化学成分である第一のステンレス鋼、及び/又は、C含有量が0.25~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.25%、P含有量が≦0.06%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~17.00%の化学成分である第二のステンレス鋼であり、曲面を有することを特徴とする皮膚炎対処用具。
【請求項2】
前記ステンレス鋼のロックウェル硬度(HRC)が≧58であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項3】
前記曲面は球面を有しており、前記球面上の三点を結ぶ三角形の内角の和が>180°、前記球面の曲率が0.0001~1.0000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項4】
前記曲面を有する皮膚炎対処機能を有する皮膚接触部と前記皮膚接触部を操作する操作部とを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項5】
前記皮膚接触部が前記第一のステンレス鋼又は前記第二のステンレス鋼であることを特徴とする請求項4に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項6】
少なくとも前記皮膚接触部が中空体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項7】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖(しつせん)と、
前記胴及び前記複数の歯に延設される櫛体(しつたい)と、
前記肩と前記櫛体の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔と、
を一体に備え、
櫛の機能を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項8】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯に延設される櫛体と、
前記肩と前記櫛体の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔と、
を一体に備えている皮膚炎対処用具本体と、
動把手と前記動把手の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えている皮膚炎対処用具操作補助体の他端とが、
前記櫛体のほぼ中央において、軸を架け渡される要(かなめ)によって所定の回転角を回動可能に枢結されており、
櫛の機能を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項9】
前記複数の歯、及び、前記胴に含まれ前記複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって前記複数の歯が垂設されている連接部が、少なくとも前記第一のステンレス鋼であり、前記連接部以外の前記胴、前記肩、前記櫛尖、及び、前記背が、少なくとも前記第二のステンレス鋼であることを特徴とする請求項6又は7に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項10】
前記皮膚炎対処用具は表(おもて)面と裏(うら)面とを有し、前記複数の歯の前記裏面は略水平であって、前記複数の歯の前記表面は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であって、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が5°以上15°以下であることを特徴とする請求項7~9のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項11】
前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先が、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が6~26°で、前記歯先の前記裏面からの高さが0.7~1.1mmとなるように歯先収束面が形成されており、前記裏面との傾斜角が39~79°で切断される歯先先端面を有することを特徴とする請求項10に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項12】
前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先が、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が6~26°で、前記歯先の前記裏面からの高さが0.7~1.1mmとなるように形成される前記歯先収束面と、前記裏面との傾斜角が39~79°で切断される前記歯先先端面を有する前記歯先を、更に、前記歯先先端面の幅が0.15~0.45mm、前記歯先先端面の長さが0.15~0.45mmの突起体を形成するように、前記裏面との傾斜角が36~76°で前記歯先収束面を前記複数の歯元側から切断して形設される歯先傾斜面を有することを特徴とする請求項11に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項13】
前記歯先傾斜面に0.05~0.45mmの幅及び深さの溝が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項14】
前記肩、前記胴、及び、前記櫛体とで形成される背が、直線又は円弧状曲線であって、前記直線の背に対する前記把手の傾斜角、又は、前記円弧状曲線の背の接線に対する前記把手の傾斜角が26~46°、前記歯の長さが4~11mm、前記胴の幅が0.5~4.5mm、前記歯の幅が0.7~1.1mm、前記歯の間隔が0.8~1.4mmであることを特徴とする請求項7~13のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項15】
前記胴と前記胴に垂設される前記複数の歯とが形成する前記複数の歯元を連結した連結線が、直線又は円弧状曲線であって、前記直線と前記櫛体側に傾斜する前記複数の歯とが形成する傾斜角、又は、前記円弧状曲線の接線と前記櫛体側に傾斜する前記複数の歯とが形成する傾斜角が75~90°であることを特徴とする請求項7~14いずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項16】
前記円弧状曲線である背及び前記円弧状曲線である連結線の曲率が0.0001~0.0008以下であることを特徴とする請求項7~15のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項17】
前記櫛尖の厚さが1.5~3.0mm、前記櫛尖の幅が1.0~3.0mm、前記櫛尖の長さが5.0~7.0mm、前記櫛尖の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.2100~0.4000以下であって、前記肩の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.0800~0.2100以下であることを特徴とする請求項7~16のいずれか一項に記載のコーム。
【請求項18】
前記櫛体の厚さが2.5~3.5mm、前記櫛体の幅が7~17mm、櫛体の長さが23~33mm、前記把手の厚さが3.5~4.5mm、把手の長さが21~31mm、櫛尖の先端から櫛体までの胴に垂設される歯の全長が50~70mmであることを特徴とする請求項7~17のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項19】
全長が160~170mm、前記要から戦記櫛尖の先端までの長さが67~77mm、前記要から前記把手の後端までの長さが62~72mm、前記要から前記母指孔の中心までの長さが48~58mm、前記要から前記動把手の後端までの長さが90~100mm、前記要から前記薬指孔の中心までの長さが60~70mm、前記小指掛けの長さが10~20mm、前記直線の背に対する前記動把手の傾斜角、又は、前記円弧状曲線の背の接線に対する前記動把手の傾斜角が0~5°であることを特徴とする請求項8~18のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項20】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される前記複数の歯と、
前記胴の両端にあって、前記胴に延設される二つの肩と、
前記肩の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
を一体に備え、
櫛の機能を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項21】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される前記複数の歯と、
前記胴の一端が前記胴に延設される肩と、
前記胴の他端が前記胴に延設される柄と、
前記肩と前記柄の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
を一体に備え、
櫛の機能を有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項22】
前記複数の歯、及び、前記胴に含まれ前記複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって前記複数の歯が垂設されている連接部が、少なくとも前記第一のステンレス鋼であり、前記連接部以外の前記胴、前記肩、及び、前記背が、少なくとも前記第二のステンレス鋼であることを特徴とする請求項20又は21のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項23】
前記胴が中空であることを特徴とする請求項20~22のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項24】
前記皮膚炎対処用具は、表面と裏面とを有し、前記複数の歯の一部又は全体が、前記表面から前記裏面方向に円弧状を描くように湾曲していることを特徴とする請求項20~23のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項25】
前記表面から前記裏面方向に湾曲している前記円弧状の曲線の曲率が0.0268~0.0667であることを特徴とする請求項24に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項26】
前記複数の歯元の間隔及び前記複数の歯の前記間隔(前記複数の歯元の長さ)が、それぞれ、0.80~10.0mmであることを特徴とする請求項20~25のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項27】
前記複数の歯の歯先が、前記表面と前記歯先先端を水平面とが形成する角度及び前記裏面と前記歯先先端を水平面とが形成する角度が70~90°であることを特徴とする請求項20~26のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項28】
(前記複数の歯の最大長)/(前記胴の前記複数の歯の長さ方向の最大幅)が、0.20~5.00であることを特徴とする請求項20~27のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項29】
前記胴を前記複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面において、前記胴の表面形状は、前記複数の歯が配列する面に対して少なくとも一垂直方向に湾曲した円弧状の曲線であって、前記胴における表面の円弧状の曲線の曲率が0.0294~0.0590であることを特徴とする請求項20~28のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項30】
前記背の頂点を前記複数の歯が配列する面方向で切断した断面において、前記背の形状は、前記複数の歯と反対方向に湾曲した前記複数の配列面の円弧状曲線であって、前記背における前記複数の配列面の円弧状曲線の曲率が0.0063~0.0163であることを特徴とする請求項20~29のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項31】
前記背を前記複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面において、前記背の先端形状は、前記複数の歯と反対方向に湾曲した前記複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線であって、前記背の先端における前記複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線の曲率が0.0004~1.0000であることを特徴とする請求項20~30のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項32】
請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記曲面を、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。
【請求項33】
請求項7~31のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記胴、前記背、及び、前記肩のいずれかを、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。
【請求項34】
請求項7~31のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記表面を上方に向け、前記複数の歯の間隙を毛髪が通った状態で前記胴又は前記背を頭皮と接触させて又は接触させることなく、前記頭皮に沿った縦横無尽な平行往復移動と前記毛髪を流す方向への移動を適宜繰り返すことを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体、特に、頭皮及び顔に現れる湿疹(皮膚炎)の発症及び状態を抑制することができる特殊ステンレス鋼を用いた、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減するための皮膚炎対策用具、特に、皮膚炎対策櫛に関する。
【背景技術】
【0002】
かゆみ、紅斑、丘疹、小水疱等を伴う皮膚炎は、老若男女を問わず、誰もが経験する非常に身近な皮膚の疾患である(例えば、非特許文献1~3)。年代によって発症する皮膚炎の種類や原因は異なるが、代表的な皮膚炎として、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、乾燥性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎等を挙げることができる。
【0003】
特に、頭皮及び顔に現れる皮膚炎には、シャンプー、染毛剤、育毛剤、化粧品、医薬品、日焼け止め、香水、眼鏡、ヘアピン、植物等と接触することによって発症する接触皮膚炎、環境等による皮脂成分や分泌の変化、発汗、偏食等によるビタミンB群の欠乏等によって発症する脂漏性皮膚炎、及び、メカニズムが十分に解明されていないが、皮膚の非正常な機能、体質、精神的ストレス等の内的要因と、皮膚の常在菌、ダニやハウスダスト、湿度等の外的要因との関連性が指摘されているアトピー性皮膚炎が多いようである(例えば、非特許文献4)。しかし、皮膚を清潔に保つための洗顔、洗髪が、皮膚の乾燥を誘発し、乾燥性皮膚炎、皮脂欠乏性皮膚炎、及び、接触皮膚炎の誘因となる場合もある(例えば、非特許文献1~3)。
【0004】
まず、これらを予防するために、接触皮膚炎の場合、原因物質との接触を断つこと、脂漏性皮膚炎の場合、刺激の少ない石鹸やシャンプーを使った洗顔、洗髪を行って、頭皮と顔を清潔に保つことや規則正しい生活を送ること、アトピー性皮膚炎の場合、精神的ストレスが症状を悪化させることが多いので、精神的ストレスをためない生活を心がけることが一般的に行われている。また、皮膚の清潔さを保つための行為が、皮膚炎の原因となる皮膚の乾燥を誘発するため、それを防止する保湿が重要であり、洗顔、洗髪後の保湿剤の塗布が奨められている。
【0005】
そして、皮膚炎が発症した場合には、いずれの皮膚炎であっても、患部を掻くことなく冷却することが重要であるが、予防策を継続すると共に、皮膚炎に応じた軟膏基剤、クリーム基剤、ローション基剤等の外用剤を塗布することが好ましい。特に、接触皮膚炎の場合、抗アレルギー薬の塗布、脂漏性皮膚炎の場合、ステロイド系外用剤の塗布、頭皮の脂漏性皮膚炎でフケが発生する場合、抗真菌薬を含むシャンプーを用いた洗髪、アトピー性皮膚炎の乾燥肌の場合、ヘパリン類似物質クリームの塗布等が行われている。
【0006】
しかしながら、皮膚炎は、身体の維持が困難となるような疾患ではないが、皮膚炎の予防策である洗顔、洗髪が、乾燥肌を誘発し、皮膚炎を発症する誘因となる場合や、皮膚炎の予防策である外用剤の塗布が、皮膚炎を発症する誘因場合があること、また、皮膚炎の原因が、人によって個々異なり、定かではないため、確固たる治療方法が認められないこと等から、完治することがなかなか困難で性質の悪い疾患である。
【0007】
ところで、本発明者は、理美容室で使用される鋏やキューティクルニッパー等の理美容用具の研磨や修理等のメンテナンスを業務として行っている。そのため、理美容室に通う顧客のニーズを把握しており、最近では、くせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にしたいという要望に応えた櫛を開発し、提供している(特許文献1及び2)。この櫛によれば、水、シャンプー、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、くせ毛を矯正して、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にできると共に、毛髪に艶とコシを付与することができる。更に、この櫛は、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、頭垢(フケ)等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つという効果も奏する。すなわち、毛髪清浄機能及び毛髪調整機能を有する櫛である。
【0008】
上記開発した櫛が、多数の理美容室で使用されるようになり、更に、理美容室では頭皮及び顔の皮膚炎を解消したいというニーズがあることを本発明者は把握した。事実、頭皮の皮膚炎については、6人に1人が頭皮の皮膚炎を含めた頭皮のトラブルを経験しているというアンケート結果がある(非特許文献5)。それと共に、この開発した櫛には皮膚炎を軽減する機能を有している可能性があるのではないかということをある理美容室から示唆された。すなわち、ある理美容室に通う顧客の中に、開発した櫛を用いたコーミングにより頭皮の皮膚炎が軽減する場合もあったという情報を得た。
【0009】
そこで、本発明者は、開発した櫛の特性を見直し、シャンプーを用いた洗髪や外用剤の塗布に頼るのではなく、頭皮及び顔に現れる皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することが可能な、皮膚炎に対処できる皮膚炎対処機能を有する櫛の開発に着手した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6711970号公報
【特許文献2】特許第6606653号公報
【特許文献3】国際公開第2020/100973号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ロート製薬株式会社ホームページ,「皮膚炎(皮膚炎)の原因・仕組みを解説」,[on line],[2022年2月9日検索],インターネット<https://jp.rohto.com/learn-more/bodyguide/eczemaknowledge/factor/>
【非特許文献2】ロート製薬株式会社ホームページ,「皮膚炎(皮膚炎)の主な症状・種類」,[on line],[2022年2月9日検索],インターネット<https://jp.rohto.com/learn--more/bodyguide/eczemaknowledge/symptom/>
【非特許文献3】ロート製薬株式会社ホームページ,「皮膚炎(皮膚炎)を予防・軽減する対応方法」,[on line],[2022年2月9日検索],インターネット<https://jp.rohto.com/learn-more/bodyguide/eczemaknowledge/care/>
【非特許文献4】ロート製薬株式会社ホームページ,「頭皮・顔にみられる皮膚炎ついて解説」,[on line],[2022年2月9日検索],インターネット<https://jp.rohto.com/learn- more/bodyguide/eczemaknowledge/scalpdisease/>
【非特許文献5】ロート製薬株式会社ホームページ,「6人に1人が頭皮トラブル!?頭皮皮膚炎の4つの原因とは?」,[on line],[2022年2月9日検索],インターネット<https://jp.rohto.com/learn-more/bodyguide/eczemaknowledge/scalprashtrouble/>
【非特許文献6】日立金属株式会社ホームぺージ,「YSS高級刃物鋼」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.hitachi-metals.co.jp/pdf/cat/hy-b10-d.pdf>
【非特許文献7】日立金属工具鋼株式会社ホームページ,「YSS粉末高速度工具鋼~高性能粉末ハイスHPシリーズ~」,日立金属株式会社,[online],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.hitachi-metals-ts.co.jp/pdf/catalog/hap-series.Pdf>
【非特許文献8】愛知製鋼株式会社ホームページ,「ステンレス鋼」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.aichi-steel.co.jp/products/pdf/stainless_catalog.pdf>
【非特許文献9】大同特殊鋼株式会社ホームページ,「ステンレス鋼/大同鋼種」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/products/stainless/list/daido.pdf>
【非特許文献10】武生特殊鋼材株式会社ホームページ,「オリジナル刃物鋼」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<http://www.e-tokko.com/original.php>
【非特許文献11】B&Ouml;HLER Japanホームページ,「製品/ステンレスおよび非磁性鋼 - フェライト系,マルテンサイト系,析出硬化系ステンレス」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.bohler.jp/ja/products/n690/>
【非特許文献12】田島スチール株式会社ホームページ,「商品案内/快削鋼/マルテンサイト系ステンレス鋼/化学成分表」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.tajima-steel.co.jp/pdf/ja_pdf/kai_seibunhyo.pdf>
【非特許文献13】大同特殊鋼株式会社,「ステンレス鋼/JIS鋼種」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.daido.co.jp/products/stainless/pdf/jis.pdf>
【非特許文献14】株式会社特殊金属エクセルホームページ,「製品一覧/ステンレス鋼/マルテンサイト系ステンレス鋼(SUS420J2,RB-S)」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.tokkin.co.jp/materials/stainless_steel/martensite>
【非特許文献15】ジャポニカ株式会社ホームページ,「刃物鋼材」,[on line],[2022年2月12日検索],インターネット<https://www.japonika.fr/index.php?main_page=page&id=3&chapter=0>
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、シャンプーを用いた洗髪や外用剤の塗布に頼るのではなく、頭皮及び顔に現れる皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することが可能な、皮膚に対処できる櫛の提供、また、この櫛の使用方法の提供を目的とするものである。更に、本発明は、この解決手段をより幅広く活用できる皮膚炎対策用具として提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記開発した櫛の組成を詳細に検討した結果、特別なステンレス鋼が、皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0014】
本発明者は、特許文献2及び3に示したように、特殊な構造と形状を備えた櫛を用い、その櫛の背を頭皮と接触又は接触することなく平行往復移動するコーミングによって、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる上、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する効果が発現することを既に見出している。
【0015】
特に、櫛の材質として、磁性と硬度を有し、耐食性に優れ、限定された化学組成の炭素鋼、特殊鋼(合金鋼)、及び、ステンレス鋼を使用することが好ましく、これらの効果を最大限に発揮できる。具体的には、表1及び2に示す炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼が好ましく、いずれも焼入れされたものである。これらは、通常、刃物に使用される金属材料で、成形加工性が悪く、複雑な構造及び形状の櫛に適用する理由もないため、櫛に利用するという発想はなかったものと考えられる(非特許文献6~15)。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
しかし、本発明者は、理美容室で使用される鋏やキューティクルニッパー等の理美容用具の研磨や修理等のメンテナンスを業務として行っていること、また、くせ毛の矯正及びボリューム感のあるサラサラとした毛髪に対する女性のニーズが強いことから、刃物に使用される金属材料の櫛への適用を発案し、成形加工上の問題を解決して刃物に使用される金属材料の櫛を試作した。そして、試作された櫛を用いたくせ毛のコーミングを行ったところ、くせ毛が矯正され、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪に仕上がる傾向にあることが認められた。その後、特許文献1~3に記載されているように、櫛の構造や形状、特に、歯の形状の改良、並びに、金属材料の選択を行うと共に、コーミング方法を検討した結果、金属材料が有効である科学的根拠は定かではないが、上記効果が得られる櫛及びその櫛を用いたコーミング方法の発明に至ったのである。
【0019】
その後、上記開発された櫛が、多数の理美容師の方々で使用されるように従い、更に、理美容室における頭皮及び顔の皮膚炎を解消したいというニーズにも対処できる可能性があることが示唆されたため、本発明者は、既に開発した櫛の特性を見直し、シャンプーを用いた洗髪や外用剤の塗布に頼るのではなく、頭皮及び顔に現れる皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することが可能な、皮膚炎に対処できる櫛の開発に着手した。
【0020】
ここで、着目したのは、開発した櫛には、次のような特徴を有していることである。第一に、開発した櫛は、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去する効果を奏する。第二に、開発した櫛は、表1及び2に示すように刃物に使用する金属材料は、高温で焼入れ、焼鈍し等の熱処理された炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼であり、炭素を多く含み、熱処理によって化学的変化及び組織的変化を伴うことが一般的に知られており、この熱処理による化学的変化及び組織的変化が機械工具や刃物等に適した耐熱性及び剛性を生み出している(非特許文献6~15)。第三に、特殊鋼やステンレス鋼は、錆びを防止する不働態膜の酸化クロムを金属材料の空気との接触表面に形成する。
【0021】
熱処理による化学的変化及び組織的変化については、次のようなことが知られている(非特許文献16~21)。750~1,100°程度の熱処理によって金属炭化物が生成されるという化学的変化と共に、その金属炭化物が球状島構造を形成するという組織的変化が生起する。化学的変化によって生成された金属炭化物の化学結合状態は、分析技術の限界があり、不明な点が多い(非特許文献17~19)。しかし、組織的変化は、Cr鋼を例に挙げるが、図1に示すように、金属材料の化学成分及び組成、熱処理条件によって異なるが、金属炭化物の微細な球状組織が形成され、その球状組織が金属材料の耐熱性・合成に大きな影響を及ぼす(非特許文献16及び20)。そして、櫛として使用した場合には、この球状組織が、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去する効果と関係しているものと推察した。
【0022】
特に、興味あることは、清浄な金属材料表面にも、1,000℃を超える熱処理によって金属炭化物が容易に形成され、金属炭化物への酸素原子の吸着、反応によるCO(炭素-酸素)結合の生成が観測されていることである(非特許文献21)。このことは、金属炭化物が、酸素原子を有する有機物質、すなわち、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を吸着、反応し得ること、更には、皮膚炎の原因となるウィルス、細菌、真菌等を吸着、反応し得ることを示唆している。
【0023】
更に、熱処理による化学変化及び組織変化として考えられるのが、極めて微量の有機物質の存在下における熱処理による、清浄な金属材料表面、特に、遷移金属材料表面及び遷移金属炭化物表面への単原子層グラファイトの生成がある(非特許文献22~24)。グラフェンが金属材料表面に付着しているものと考えられる。炭素材料は、活性炭、炭素繊維、人工ダイヤモンド等として、吸着材、構造材料、機械工具等として幅広く使用されているが、フラーレン、カーボンナノチューブ、及び、グラフェンという原子オーダーで規則正しく化学結合された炭素材料は、サイズ効果や電子効果等が期待されており、様々な用途での研究が進められている。しかし、湿疹との関連性に興味が持たれる。
【0024】
一方、不働態膜である酸化クロムは、図2に示すように、特殊鋼やステンレス鋼の表面に形成されており、自己再生能力を有し、錆の発生を防止すると共に、酸化クロムの酸素と水との水素結合により、水分を保持するという機能を発現する(非特許文献25)。これが、皮膚炎の原因となる皮膚の乾燥を防止する保湿と深い関連性を有しているものと考えられる。
【0025】
このような知見に基づいて、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去する効果と、開発した櫛の材料である炭素鋼、特殊鋼、及び、ステンレス鋼の化学的及び組織的構造、並びに、不働態被膜との関連性を追求した結果、熱処理によって生成される金属材料表面に形成される金属炭化物の生成、その均一な球状組織の生成、及び、不働態被膜である酸化クロムの生成が、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去する能力を高め、皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することが可能な、皮膚炎に対処できる金属材料であるという仮説を立てた。
【0026】
この仮説に基づいて、表1及び2に記載された金属材料を検討すると、まず、炭素が適量含まれる必要があるが、不働態被膜である二酸化クロムを形成しない炭素鋼には、保湿性に乏しく、皮膚炎に対処できる能力が乏しいものと断定した。また、錆の発生は、本質的問題ではないが、皮膚炎対処用具として扱い難いということもある。
【0027】
次いで、不働態被膜である二酸化クロムを形成する化学成分であるCr、金属炭化物を生成し易く、均一な金属炭化物の球状組織を形成する化学成分であるMo、V、W、及び、Coの存在に着目し、これらを適量含む必要があるという観点から検討を行った結果、Cr、Mo、V、W、及び、Coの含有量が少なく、金属炭化物の生成量及び不働態被膜の生成量が少なく、特殊鋼も皮膚炎に対処できる能力が乏しいものと判断した。また、Mo、V、W、及び、Coが存在する場合でも、適正な炭素量が存在し、V銀3Bでは過少であり、HAP40では過多であると断定した。これは、後述する炭素の含有量の実験結果に基づいている。
【0028】
そして、炭素の存在は必要であるが、その存在量は最適値が存在することが実験的に分かった。SUS420J1及びSUS440Aでは、皮脂等を除去する能力が乏しいのに対し、SUS420J2、SUS420F,SUS420F2、及び、SUS429J1では、皮脂等を除去する能力が高く、皮膚炎対処用具として好ましいものであることを見出した。このことは、Mo、V、W、及び、Coが存在しなくても、最適な炭素とCrの存在量が重要であることを意味しているものと考えられる。
【0029】
その結果として、表2に示す、V金10、コバルトスペシャル、N690、DSR1K3、SUS420J2、SUS420F,SUS420F2、及び、SUS429J1が、皮膚炎対処用具の金属材料として最適であると結論付け、表3に示す化学成分のステンレス系金属材料を用い、少なくとも頭皮と顔に接触して、これらに損傷を与えない曲面を有することを特徴とする皮膚炎対処用具を完成した。
【0030】
【表3】
【0031】
特に、Cr、Mo、及び、Vは、硬い金属炭化物を多量に生成し、Vは、その組織を微細化し、Coは、素地を強化して金属炭化物の脱落を防止する効果があることが知られている(非特許文献10)。また、SUS420J2は、完全な球状化金属炭化物を生成することが知られている(非特許文献14)。
【0032】
なお、V金10、コバルトスペシャル、及び、N690とDSR1K3、SUS420J2、SUS420F,SUS420F2、及び、SUS429J1とでは、炭素量に相違点があるが、金属炭化物を生成し易いMo、V、W、及び、Coの存在の影響を受けているものと推測される。この点については、HAP40及びV銀3Bの炭素量と、V10金、コバルトスペシャル、及び、N690の炭素量とを比較すると分かるように、Mo、V、W、及び、Coが存在する場合には、異なる適正な炭素量が存在することを示している。
【0033】
表3に示す本発明の皮膚炎対処用具に適した金属材料は、頭皮の皮脂等の有機化学物質を除去する能力が高いため、皮膚炎対処用具の一形態として櫛の機能を要する皮膚炎対処用具に適用することが好ましく、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去する能力が一層高く、皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することが可能である。
【0034】
表3に示す化学成分のステンレス鋼を皮膚炎対処用具に適用することが前提条件であるが、熱処理が行われて成形加工される必要がある(非特許文献26~28)。この熱処理条件は、少なくとも、刃物ステンレス鋼の化学的変化及び組織的変化に大きな影響を及ぼし、硬さを決定する焼入れ温度が1,000~1,100℃であることが好ましく、その結果として、ロックウェル硬度(HRC)が≧58であることが好ましく、≧60であることがより好ましい。焼戻し、焼鈍し等の熱処理条件もステンレス鋼の組織的変化に影響をおよぼすが、通常、刃物や機械工具等のために行われている熱処理条件を適用できる。特に、焼戻し温度を100~200℃、焼鈍し温度を700~900℃とすることが、金属炭化物の微細な球状組織の生成に好ましく、皮膚炎対処用具の成形加工条件に相応しい。
【0035】
すなわち、本発明は、C含有量が0.95~1.15%、Si含有量が≦0.50%、Mn含有量が≦0.50%、Cr含有量が14.50~17.50%、Mo含有量が≦2.00%、V含有量が0.05~0.35%、W含有量が≦0.30%、Co含有量が1.30~3.00%の化学成分である第一のステンレス鋼、及び/又は、C含有量が0.25~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.25%、P含有量が≦0.06%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~17.00%の化学成分である第二のステンレス鋼であり、曲面を有することを特徴とする皮膚炎対処用具である。
【0036】
特にステンレス鋼としては、そのHRCが≧58であることが好ましく、≧60であることがより好ましい。このために、焼入れ温度が1,000~1,100℃の熱処理を行うことが好ましく、更に、焼戻し温度を100~200℃、焼鈍し温度が700~900℃の熱処理を行うことが好ましい。
【0037】
皮膚炎対処用具の曲面は、皮膚、特に、凹凸の激しい顔の皮膚との滑らかな接触を確保するための球面を有しており、その球面上の三点を結ぶ三角形の内角の和が>180°、球面の曲率が0.0001~1.0000である部位が少なくとも一ヶ所以上成形加工されていることが好ましい。
【0038】
更に、皮膚炎対処用具を操作するため、曲面を有する皮膚炎対処機能を有する皮膚接触部と皮膚接触部を操作する操作部とを備えることを特徴としている。
【0039】
また、皮膚炎に対処する上記特殊なステンレス鋼を皮膚炎対処用具全体に使用する必要がなく、皮膚接触部だけが上記第一のステンレス鋼又は上記第二のステンレス鋼であることが、コスト及び成形加工上好ましい。操作部の材質については、特に限定されるものではなく、一般的なステンレス鋼や樹脂等が幅広く適用することができる。
【0040】
更に、皮膚炎対処用具の操作性を高めるための軽量化及びコストダウンを図るためには、少なくとも皮膚炎対処用具の皮膚接触部を中空体とすることが好ましい。
【0041】
このような皮膚炎対処用具の形状及び形態は、上記条件以外に特に限定されるものではなく、その大きさについても、使用目的に応じて適宜設計されることが好ましい。
【0042】
しかし、本発明の皮膚炎対処用具の金属材料は、皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減する皮膚炎対処機能を発現することが可能であり、それが、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の有機物質を除去する高い毛髪清浄機能に起因しているため、皮膚炎対処用具の具体的形態としては、櫛の機能を兼ねていることが好ましい。櫛の機能を兼ね備えた皮膚炎対処用具とすることによって、特に、頭皮及び顔の皮膚炎の発症及び状態を抑制し、皮膚炎の発症を予防、沈静、軽減するための操作が容易に行える上、コーミングすることによって特許文献1~3に示した以上に、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の有機物質を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止することができる。また、特許文献1~3同様、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする毛髪調整機能を発現することもできるようになる。
【0043】
そのための櫛の機能を有する皮膚炎対処用具としては、次のような形状、形態、及び、大きさであることが好ましい。基本的には、本発明の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具は、複数の歯を支える胴と、この胴に所定の間隔を置いて一列に垂設される複数の歯と、胴の先端にあって、この胴に延設される肩を介して複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖(しつせん)と、胴及び歯に延設される櫛体(しつたい)と、この櫛体に歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、把手の後端に形設される母指孔とを一体に備える櫛の機能を備えていると共に、上記皮膚炎対処用具の形態である材質、曲面、及び、硬度を兼ね備えていることを特徴とするものである。
【0044】
更に、この櫛の機能を有する皮膚炎対処用具を本体として、この本体の櫛体のほぼ中央において、本体と、動把手とその動把手の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に有する皮膚炎対処用具操作補助体の薬指孔及び小指掛けの他端とが、軸を架け渡す要(かなめ)によって所定の回転角を回動可能に枢結されていることが好ましい。
【0045】
このような形状によって、上記曲面の形状である胴、胴から櫛体に至る背、及び、胴に延設される肩を、櫛の歯を毛髪に絡ませることなく頭皮及び顔の各部に軽く接触して移動させ、頭皮及び顔の皮膚炎に対処することができる。これと並行して、胴から櫛体に至る背を頭皮に接触することなく又は接触し、櫛の歯を毛髪に絡ませ、頭皮に沿った縦横無尽に平行往復移動させるコーミングを行え、その結果として、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる。
【0046】
ここで、皮膚炎対処用具操作補助体を備えた構造は、鋏に熟練している理美容師に対し、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つだけでなく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするためのコーミングを行うための操作性を顕著に高めた人間工学に基づいたものである。
【0047】
また、本発明の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具は、全体が第一のステンレス鋼又は第二のステンレス鋼であってもよいが、複数の歯、及び、胴に含まれ複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって複数の歯が垂設されている連接部が、少なくとも第一のステンレス鋼であり、この連接部以外の胴、肩、櫛尖、及び、背が、少なくとも第二のステンレス鋼であることが好ましい。これは、大差を有するものではないが、第一のステンレス鋼が毛髪の調整に適しており、第二のステンレス鋼が皮膚炎の対処に適しているためである。
【0048】
櫛として重要な機能は、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等の有機物質を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止し、皮膚炎を予防する毛髪を清浄にすることもあるが、艶とコシのある毛髪、くせ毛の矯正、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪に調整するニーズを満足することも重要であるため、次のような形状とすることが好ましい。
【0049】
皮膚炎対処用具は表(おもて)面と裏(うら)面とを有し、複数の歯の裏面は略水平であって、複数の歯の表面は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であって、直線状の傾斜面と裏面とが形成する傾斜角及び円弧状の傾斜面の接線と裏面とが形成する傾斜角が5°以上15°以下であることが好ましく、その傾斜角が3°以上12°以下であることがより好ましい。これが好ましい要因は定かではないが、歯と毛髪とが接触する角度に関連しているものと考えられ、適度な傾斜が必要であると推測される。
【0050】
また、胴に垂設される歯の先端部分の歯先は、更に傾斜している方が好ましく、直線状の傾斜面と裏面とが形成する傾斜角及び円弧状の傾斜面の接線と裏面とが形成する傾斜角が6~26°であって、歯先の裏面からの高さが0.7~1.1mmとなるように歯先収束面を形成し、裏面との傾斜角が39~79°で切断される歯先先端面が成形されていることが好ましい。このような歯先の形状が、毛髪に絡み、摩擦することによって、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にするためと考えられる。
【0051】
更に、歯先の形状は、上記歯先先端面に、歯先先端面の幅が0.15~0.45mm、歯先先端面の長さが0.15~0.45mmの突起体が形成されるように、歯の裏面との傾斜角が36~76°、より好ましくは、50~76°で歯先収束面の歯元側から切削されるような新たな歯先傾斜面を設けておき、その新たな歯先傾斜面、特に、収束面と交差するところに、0.05~0.45mm、より好ましくは、0.05~0.24mmの幅及び深さの溝が設けられていることがより更に好ましい。
【0052】
以上、歯先の形状を説明したが、歯、歯先収束面、歯先先端面、及び、歯先傾斜面と歯裏面との傾斜角は、歯の傾斜角、歯先収束面の傾斜角、歯先傾斜面の傾斜角、及び、歯先先端面の傾斜角の順に大きくなっていることが好ましい。
【0053】
このような歯先の形状は、毛髪1本の直径が、欧米人の場合、平均して0.05mmであり、日本人の場合、平均して0.08mmであることと密接に関係しており、歯先の先端の突起体及び溝が、絡んだ毛髪を解すと共に、毛髪1本毎にコーミング可能な形状となっている。この形状によって、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができると考えられる。しかも、このような歯先の形状は、毛髪の表皮に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去する上でも好ましい。
【0054】
更に、櫛も含めた皮膚炎対処用具の形状としては、櫛の機能を有する皮膚炎対処用具として、毛髪調整及び皮膚炎対処の操作を行う上で、次のような種々の形状及び大きさであることが重要である。
【0055】
第一に、肩、胴、及び、櫛体とで形成される直線の背に対する把手の傾斜角、又は、肩、胴、及び、櫛体とで形成される円弧状曲線の背の接線に対する把手の傾斜角が26°~46°、歯の長さが4.0~11mm、胴の幅が0.5~4.5mm、歯の幅が0.7~1.1mm、歯の間隔が0.8~1.4mmであることが好適である。特に、歯の幅は0.9~1.0mm、歯の間隔が1.0~1.2mmであることがより好ましい。
【0056】
第二に、胴と胴に垂設される複数の歯とが形成する歯元を連結した連結線が、直線又は円弧状曲線であって、この直線と櫛体側に傾斜する複数の歯とが形成する傾斜角、又は、この円弧状曲線の接線と櫛体側に傾斜する複数の歯とが形成する傾斜角が75~90°であることが好ましい。
【0057】
第三に、肩、胴、及び、櫛体とで形成される背及び胴と胴に垂設される複数の歯とが形成する歯元を連結した連結線は、円弧状曲線であることがより好ましく、これらの円弧状曲線の背及び連結線の曲率が0.0001~0.0008であることがより好ましい。
【0058】
第四に、櫛尖の厚さが1.5~3.0mm、櫛尖の幅が1.0~3.0mm、櫛尖の長さが5.0~7.0mm、櫛尖の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.21~0.40であって、肩の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.08~0.21であることが好適である。特に、櫛尖の厚さが2.3~2.4mm、櫛尖の幅が1.5~2.5mm、櫛尖の長さが5.5~6.5mmであることがより好ましい。
【0059】
第五に、櫛体の厚さが2.5~3.5mm、櫛体の幅が7.0~17mm、櫛体の長さが23~33mm、把手の厚さが3.5~4.5mm、把手の長さが21~31mm、及び、櫛尖の先端から櫛体までの胴に垂設される歯の全長が50~70mmであることが好ましい。
【0060】
第六に、コーム本体とコーム操作補助体とが枢結されたコームにおいては、全長が160~170mm、要から櫛尖の先端までの長さが67~77mm、要から把手の後端までの長さが62~72mm、要から母指孔の中心までの長さが48~58mm、要から動把手の後端までの長さが90~100mm、要から薬指孔の中心までの長さが60~70mm、小指掛けの長さが10~20mm、肩、胴、及び、櫛体とで形成される直線の背に対する動把手の傾斜角、又は、肩、胴、及び、櫛体とで形成される円弧状曲線の背の接線に対する動把手の傾斜角が0~5°であることが好ましい。
【0061】
このような六つの形状に関する特徴は、本発明の皮膚炎対処用具を櫛として使用する場合には、絡んだ毛髪を解すと共に、毛髪1本毎にコーミングすることが可能となり、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができるだけでなく、毛髪の表皮に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去することができ、頭皮の皮膚炎を予防することができることである。そして、本発明の皮膚炎対処用具を皮膚炎対処のために使用する場合には、皮膚炎対処可能な胴、背、及び、肩が、頭皮及び顔に損傷を与えることなく、マッサージするように皮膚上を滑らかに移動して皮膚炎に対処できることに特徴がある。
【0062】
更に、本発明の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具は、形状を簡素化し、複数の歯を支える胴と、この胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される複数の歯と、胴の両端にあって、胴に延設される二つの肩と、この肩の間に跨設されるように胴に連続的に形成される背とを一体に備えていることを特徴するタイプの皮膚炎対処用具としても提供できるものである。
【0063】
また、本発明の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具は、複数の歯を支える胴と、この胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される複数の歯と、胴の一端が胴に延設される肩と、胴の他端が前記胴に延設される柄と、この肩と柄の間に跨設されるように胴に連続的に形成される背とを一体に備えているものであってもよい。
【0064】
これらの形状の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具の場合も、ステンレス鋼の性質に基づいて、複数の歯、及び、胴に含まれ複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって複数の歯が垂設されている連接部が、少なくとも第一のステンレス鋼であり、連接部以外の胴、肩、及び、背が、少なくとも第二のステンレス鋼であることが好ましい。
【0065】
また、櫛の機能を有する皮膚炎対処用具の操作性を高めるため、胴を中空として軽量化することが好ましい。
【0066】
そして、このようなタイプの櫛の機能を有する皮膚炎対処用具も、櫛としての機能、及び、皮膚炎対処機能を最大限に発揮するため、次に示すような形状とすることが好ましい。
【0067】
歯の部位については、第一に、複数の歯の一部又は全体が、皮膚炎対処用具の表面から裏面方向に円弧状を描くように湾曲していることが好ましく、この湾曲している円弧状の曲線の曲率が0.0268~0.0667であることがより好ましい。第二に、複数の歯元の間隔及び複数の歯の間隔(複数の歯元の長さ)を、それぞれ、0.80~10.0mmとすることが好ましい。第三に、複数の歯の歯先が、表面と歯先先端を水平面とが形成する角度及び前記裏面と前記歯先先端を水平面とが形成する角度が70~90°とすることが好ましい。これらの歯の形状の特徴は、このような形態の皮膚炎対処用具を櫛として使用する場合において、最も簡単な構造で、毛髪の調整を行うために考案されたものである。
【0068】
次いで、全体としては、(複数の歯の最大長)/(胴の複数の歯の長さ方向の最大幅)の比が、0.20~5.00であることが好ましい。これは、主として櫛として機能し、コーミングによる効果的な毛髪の調整及び清浄を行うことが可能な歯の長さと、この歯でコーミングを行うための操作部と皮膚炎対処機能を働かせるための頭皮及び顔の皮膚との接触部を兼ねる胴の長さとのバランスを図るために設計された結果であって、この範囲外では、コーミング又は皮膚炎対処操作に弊害が出る。
【0069】
そして、コーミングを行うための操作部と皮膚炎対処機能を働かせるための頭皮及び顔の皮膚との接触部を兼ねる胴は、複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面における胴の表面形状が、複数の歯が配列する面に対して少なくとも一垂直方向に湾曲した円弧状の曲線であって、胴における表面の円弧状の曲線の曲率が0.0294~0.0590であることが、櫛としての操作をしやすく、皮膚との接触が滑らかであり、胴の役割を果たらせる上で好ましい。
【0070】
特に、皮膚炎対処機能として働く背は、背の頂点を複数の歯が配列する面方向で切断した断面における背の形状が、複数の歯と反対方向に湾曲した複数の配列面の円弧状曲線であって、背における複数の配列面の円弧状曲線の曲率が0.0063~0.0163であることが、毛髪のある頭皮に効果的に接触できると共に、複雑な形状の顔の皮膚との効果的な接触が可能であり、皮膚炎対処操作を行う上で好ましい。
【0071】
更に、このような背の先端については、背を複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面において、複数の歯と反対方向に湾曲した前記複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線であって、背の先端における複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線の曲率が0.0004~1.0000であることが皮膚炎対処操作を行う上でより好ましい。これは、背の先端に幅広い形状が形成されることによって、毛髪のある頭皮により効果的に接触できると共に、複雑な形状の顔の皮膚とのより効果的な接触を可能とすることができると共に、用途に応じた背の先端形状を選択することができるからである。
【0072】
以上、本発明の皮膚炎対処用具について、材質、形状、形態、及び、大きさ等を説明してきたが、皮膚炎対処用具の使用方法によっても、皮膚炎対処機能、並びに、毛髪の調整機能及び清浄機能の効果が異なる。
【0073】
まず、本発明の櫛の機能を有していない皮膚炎対処用具の使用方法は、特定の曲率で膨らんだ皮膚炎対処用具の曲面を、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴とするものである。特に、移動方向は、一方向に繰り返すことが好ましい。この方法で本発明の皮膚炎対処用具を使用することによって、効果的に皮膚炎の予防、軽減を図ることができる。
【0074】
一方、本発明の櫛の機能を有する皮膚炎対処用具の使用方法は、皮膚炎対処を目的とした操作としては、胴、背、及び記肩のいずれかを、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴としている。同じく、この使用方法により、効果的に皮膚炎の予防、軽減を図ることができる。
【0075】
同じく櫛の機能を有する皮膚炎対処用具の毛髪の清浄及び調整を目的とした操作としては、皮膚炎対処用具の表面を上方に向け、胴又は背を頭皮と接触させて又は接触させることなく、頭皮に沿った縦横無尽な平行往復移動と毛髪を流す方向への移動を適宜繰り返すことを特徴とするものである。櫛の目を毛髪が通ることによって、絡んだ毛髪を解すと共に、毛髪1本毎にコーミングすることが可能となり、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができるだけでなく、毛髪の表皮に付着した様々な老廃物や油性の整髪料等を除去することができ、頭皮の皮膚炎を予防することができることである。しかも、胴又は背が頭皮と接触して、マッサージをするように皮膚上を滑らかに移動するため、頭皮に損傷を与えることなく皮膚炎に対処することもできる。
【発明の効果】
【0076】
本発明の皮膚炎対処用具及びその使用方法によれば、シャンプーを用いた洗髪や外用剤の塗布に頼るのではなく、頭皮及び顔に現れる皮膚炎の発症及び状態を抑制することができ、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減する皮膚炎対処機能が効果的に発現する。
【0077】
また、特に、本発明の櫛の機能を付与した皮膚炎対処用具及びその使用方法によれば、櫛の部位を用いたコーミングによって、水、洗髪剤、パーマネント薬剤、熱等を用いず、毛髪及び頭皮を損傷することなく、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる毛髪調整機能が効果的に発現する上、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保ち、脱毛を防止する毛髪清浄機能が発現する効果も奏する。それと共に、毛髪が櫛の目を通りコーミングされる際に、櫛の胴及び背に相当する部位が、頭皮と接触するので、コーミングによる毛髪調整機能と毛髪清浄機能と同時に、頭皮の皮膚炎の発症を防止し、皮膚炎を沈静、軽減する皮膚炎対処機能の効果も奏する。
【0078】
しかも、本発明の皮膚炎対処用具及びその使用方法によれば、みずみずしく弾力のある皮膚を維持するために必要である酸素と皮膚との接触を妨げる、頭皮に付着した皮脂及びフケ等の老廃物や油性の整髪料、並びに、顔の皮膚に付着した老廃物、洗顔料、及び、クリームを除去することができるため、潤いのある頭皮及び顔の肌を維持し生み出す効果も奏する。
【0079】
このような効果は、本発明の皮膚炎対処用具の特殊なステンレス鋼によるところが大きいが、その構造及び形状、特に、櫛の機能を有する皮膚炎対処用具の場合の櫛の形状によっても増幅される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】Cr鋼における金属材料の熱処理によって生成する金属炭化物の微細な球状組織の例を示す図である。
図2】ステンレス鋼等の表面に形成される酸化クロムの不働態膜の化学構造を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る、第一の皮膚炎対処用具の表面から視た平面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る、図3に示した第一の皮膚炎対処用具の歯側から視た側面模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る、図3に示した第一の皮膚炎対処用具の皮膚炎対処機能を有する背側から視た側面模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る、第二の皮膚炎対処用具の表面から視た平面模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る、第二の皮膚炎対処用具の裏面から視た平面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る、図6に示した第二の皮膚炎対処用具の歯側から視た側面模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る、図6に示した第二の皮膚炎対処用具の皮膚炎対処機能を有する背側から視た側面模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係る、図6に示した第二の皮膚炎対処用具の各部位に適した寸法を示した表面から視た平面模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係る、第一及び第二の皮膚炎対処用具の皮膚炎対処機能を有する胴及び背、並びに、歯及び歯元に関する好ましい寸法を示した裏面から視た部分平面模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係る、第一及び第二の皮膚炎対処用具の歯及び目、皮膚炎対処機能を有する肩、並びに、櫛尖に関する好ましい寸法を示した裏面から視た部分平面模式図である。
図13】本発明の一実施形態に係る、第一及び第二の皮膚炎対処用具の歯及び第一の歯先に関する好ましい寸法を示した表面から視た部分斜視模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係る、第一及び第二の皮膚炎対処用具の歯先を変形した第三の皮膚炎対処用具の表面から視た平面模式図である。
図15図14に示した第三の皮膚炎対処用具に備えられている歯先に関する好ましい寸法を示した表面から視た部分斜視模式図である。
図16図14に示した第三の皮膚炎対処用具に備えられている歯先の裏面から視た部分平面模式図である。
図17】本発明の一実施形態に係る、第四の皮膚炎対処用具の正投影模式図で、(ア)は正面模式図、(イ)は平面模式図、及び、(ウ)は左側面模式図である。
図18】本発明の一実施形態に係る、第五の皮膚炎対処用具の正投影模式図で、(ア)は正面模式図、(イ)は平面模式図、(ウ)は左側面模式図、及び、(エ)下面模式図である。皮膚炎対処機能を有する胴及び歯の好ましい寸法が示されている。
図19図18を拡大した、左側面拡大模式図(ア)及び部分平面拡大模式図(イ)である。皮膚炎対処機能を有する胴、背、及び、背の先端、並びに、歯に好ましい形状を示す曲線の曲率及び傾斜角が示されている。
図20】本発明の一実施形態に係る第五の皮膚炎対処用具を用い、その皮膚炎対処機能を有する胴、背、及び、背の先端を額及び下瞼に軽く接触して移動させる操作を、毎日5分、一か月行った湿疹低減効果を示している。
図21】本発明の一実施形態に係る第五の皮膚炎対処用具を用い、表面を上方に向け、胴又は背を頭皮と接触させて又は接触させることなく、目に毛髪が通っている状態で頭皮に沿った縦横無尽な平行往復移動と毛髪を流す方向への移動を適宜繰り返す皮膚炎対処用具のコーミングが、毛穴付近の皮脂を除去する効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、図面に示した一実施形態を用い、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0082】
図3には、本発明の一実施形態に係る第一の皮膚炎対処用具Iの表面からの平面模式図を示した。胴1が複数の歯4を支えており、胴1に所定の間隔を有する目5を設け、複数の歯4が一列に垂設されている。胴1の先端には、胴1に延設された肩3を介し、複数の歯4の先端の歯に所定の間隔を置いて櫛尖6が形設され、その反対側に、最後端の歯元4-1-1から胴1が延びて拡がるように櫛体7が延設されている。そして、櫛体7に歯4の歯先4-2-1と同じ方向に傾斜して把手8が延設され、把手8の後端に母指孔9が形設されている。
【0083】
従来の胴、背、歯、歯元、目、及び、肩を一体に備えた櫛と呼ばれる構造は、図3に示す本発明の皮膚炎対処用具においても、胴1、背2、歯4、歯元4-1、目5、及び、肩3に備えられているが、本発明の皮膚炎対処用具は、胴1が延びて拡がって成形されている櫛体7、その櫛体7から、歯4の歯先4-2-1の方向に傾斜して延設される把手8、及び、把手8に形設される母指孔9を備えていることを特徴としている。これは、本発明皮膚炎対処用具は、胴1、背2、及び、肩3を頭皮及び顔の皮膚と接触させて、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することに加え、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることができる毛髪調整機能と、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去して毛髪を清潔に保つ毛髪清浄機能及び皮膚炎予防機能を発現させるためのコーミングの操作性を高めるために適した設計となっている。
【0084】
図3に示した第一皮膚炎対処用具の構造をより分かりやすくするため、図4及び図5には、それぞれ、歯4側から視た側面模式図及び背2側から視た側面模式図を示した。
【0085】
図6には、本発明の一実施形態に係る第二の皮膚炎対処用具IIの表面から視た平面模式図を示した。皮膚炎対処用具本体12は、要17を除いて、図3で説明した第一の皮膚炎対処用具Iと同様の構造をしているので、説明を省略する。第二の皮膚炎対処用具IIの特徴は、動把手13と動把手13の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えた皮膚炎対処用具操作補助体16が、皮膚炎対処用具本体12の櫛体7のほぼ中央において、軸を架け渡される要17によって所定の回転角を回動可能に皮膚炎対処用具本体12と枢結されていることを特徴としている。皮膚炎対処用具本体12と皮膚炎対処用具操作補助体16との枢結により、動把手13が回動して用いられるため、皮膚炎対処用具本体12には、薬指孔14が形設された外縁が、母指孔9が形設された外縁と接触する部分に緩衝点10を設けると共に、動把手13が回動しやすくするための、鋏と同じ構造である触点11を設けている。
【0086】
第二の皮膚炎対処用具IIについても、その構造をより分かりやすくするため、図7図8、及び、図9には、それぞれ、裏面から視た平面模式図、歯4側から視た側面模式図、及び、背2側から視た側面模式図を示した。
【0087】
第二の皮膚炎対処用具IIの特徴である皮膚炎対処用具操作補助体16は、この第二の皮膚炎対処用具IIを用いてコーミングする際、皮膚炎対処用具本体12を把手8及び動把手13の二本で安定して支えることができ、皮膚炎対処用具本体12の操作性を格段に向上させると共に、鋏の操作に慣れた理美容師が、鋏を使用する感覚で操作することができることが考慮されている。
【0088】
特に、第二の皮膚炎対処用具IIを用いて、本発明で成形した皮膚炎対処用具の厚さの一例を図9に示した。櫛尖6の厚さaは1.5~3.0mmであることが好ましいが、2.3~2.4mmであることがより好ましい。櫛体7の厚さbは2.5~3.5mm、把手8及び動把手13は3.5~4.5mm、小指掛け15は4.5~5.5mmであることが好ましい。これらの寸法は、第一の皮膚炎対処用具Iにも適用される。しかし、これらの寸法に限定されるものではない。
【0089】
同様に、第二の皮膚炎対処用具IIを用いて、本発明で成形した皮膚炎対処用具全体の長さや傾斜角の一例を図10に示した。図から明らかなように、第二の皮膚炎対処用具IIの全長eは160~170mm、要17から櫛尖6先端までの長さfは67~77mm、要17から把手8後端までの長さgは62~72mm、要17から母指孔9の中心までの長さhは48~58mm、
歯4の全長iは50~70mm、櫛体7の長さjは23~33mm、把手8の長さkは21~31mm、櫛体7の幅lは7~17mm、要17から動把手13後端までの長さmは90~100mm、要17から薬指孔14の中心までの長さnは60~70mm、小指掛けの長さоは10~20mmであることが好ましい。また、把手8及び動把手13は、背2に対して、歯4の歯先4-2-1の方向に傾斜していることが好ましい。把手8は、背2が直線の場合には、その直線と把手8との傾斜角αが、背2が円弧状曲線の場合には、その円弧状曲線の接線と把手8との傾斜角αが、26~46°であることが好ましい。動把手13は、背2が直線の場合には、その直線と動把手13との傾斜角βが、背2が円弧状曲線の場合には、その円弧状曲線の接線と動把手13との傾斜角βが、0~5°であることが好ましい。この場合も、これらの寸法は、第一の皮膚炎対処用具Iにも適用される。しかし、これらの寸法に限定されるものではない。
【0090】
このようなコーム全体の長さや傾斜角は、皮膚炎対処用具を操作する上で好ましい一例を示したが、操作する人の個人差もあり、必ずしもこれに限定されるものではないが、把手8及び動把手13が、歯4の歯先4-2-1の方向に傾きを持っていることは、コーミングの操作上特に重要な特徴である。
【0091】
図11には、本発明の一実施形態に係る第一の皮膚炎対処用具I及び第二の皮膚炎対処用具IIの胴1、背2、歯4、及び、歯元4-1に関する好ましい寸法の一例を示した裏面からの部分平面模式図である。胴1の幅qは0.5~4.5mm、歯4の長さpは4~11mmであることが好ましい。歯4は、櫛体7の方向に傾斜していることが好ましく、歯元4-1を結ぶ歯元連結線18が直線の場合は、歯4と直線との傾斜角γが、歯元4-1を結ぶ歯元連結線18が円弧状曲線の場合は、歯4と円弧状曲線の接線との傾斜角γが、75~90°であることが最適である。図11に示すように、胴1の幅q及び歯4の長さpは、櫛尖6から櫛体7にかけて、連続的に大きくなるように成形されていることが好ましく、歯4の傾斜角γは、櫛尖6から櫛体7にかけて、連続的に小さくなるように成形されていることが好ましい。このような形状によって効果的に毛髪を梳かすことが可能になるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、上述した寸法及び傾斜角の範囲において、一定の長さ及び傾斜角であっても構わない。
【0092】
また、背2及び歯元連結線18は、直線状であっても問題ないが、円弧状曲線である方が、コーミングが滑らかで、毛髪を解す効果が高く、毛髪及び頭皮に損傷を与えることがない。特に、背2の曲率κ及び歯元連結線18の曲率κ18が0.0001~0.0008の円弧状曲線であることが好ましい。
【0093】
更に、図12は、本発明の一実施形態に係る第一の皮膚炎対処用具I及び第二の皮膚炎対処用具IIの歯、目、肩、及び、櫛尖に関する好ましい寸法の一例を示した裏面からの部分平面模式図である。本発明の皮膚炎対処用具は、図に示すように、歯4の幅rが0.7~1.1mm、歯4の間隔、すなわち、目5の幅sが0.8~1.4mmで成形されることが好ましいが、歯4の幅rが0.9~1.0mm、目5の幅sが1.0~1.2mmで成形されることが、毛髪を解して、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にする上でより好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
【0094】
歯4の幅r及び目の幅sと同様の意味で、胴1から肩3を介してコームの最先端に成形される櫛尖6の形状もコーミングにおいて重要な要素である。図に示すように、櫛尖の幅tが1.0~3.0mm、櫛尖の長さtが5.0~7.0mmであることが好ましいが、櫛尖の幅tが1.5~2.5mm、櫛尖の長さtは5.5~6.5mmであることがより好ましい。更に、櫛尖7先端の側面6-1及び肩3の側面3-1は、円弧状曲面となっていることが好ましく、櫛尖側面6-1の曲率κは0.21~0.40、肩側面3-1の曲率κは0.08~0.21であることが最適である。
【0095】
特に先端の形状は、毛髪を解して、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正すると共に、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にすることや、毛髪及び頭皮に付着した皮脂、フケ等の老廃物や油性の整髪料等を除去することよりも、コーミングにおける毛髪及び頭皮に与える損傷を防止する上で重要な要素である。
【0096】
以上のように、コームの各部位の形状の詳細な寸法を説明してきたが、歯4の表面4-3、側面4-4、及び、裏面4-5、並びに、歯先4-2の形状も本発明の皮膚炎対処用具の櫛としての機能に大きな影響を及ぼす。
【0097】
図13は、本発明の一実施形態に係る第一の皮膚炎対処用具I及び第二の皮膚炎対処用具IIの歯及び第一の歯先に関する好ましい寸法を示した表面からの部分斜視模式図である。歯側面4-4及び歯裏面4-5は、略平面であることが好ましく、歯裏面4-5は略水平で、歯側面4-4は、歯裏面4-5に略垂直に成形される。歯表面4-3は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であることが好ましい。直線状の傾斜面の場合、歯表面4-3と歯裏面4-5との傾斜角δが、円弧状の傾斜面の場合、円弧状の傾斜面の接線と歯裏面4-5との傾斜角δが、5°~15°であることが好ましい。
【0098】
歯先4-2は、歯表面4-5が一定の傾斜角を持った第一の歯先収束面4-2-11が成形され、第一の歯先先端面4-2-12で切断されたような形状であることが好ましい。第一の歯先収束面4-2-11と裏面4-5との傾斜角ζは、6~26°であることが好ましい。また、第一の歯先先端面4-2-12も傾斜していることが好ましく、第一の歯先先端面4-2-12と裏面4-5との傾斜角εは39~79°であることが好ましい。更に、第一の歯先先端面4-2-12は、略正方形であることが好ましく、第一の歯先先端面4-2-12の高さuは0.7~1.1mmで成形される。ただし、本発明の皮膚炎対処用具の歯先4-2の形状も、これらの数値に限定されるものではない。
【0099】
図14は、本発明の一実施形態に係る第二の皮膚炎対処用具IIの歯先を変形した第二の歯先4-2-2を備えた第三の皮膚炎対処用具IIIの表面からの平面模式図である。図6図9に示した第二の皮膚炎対処用具IIの歯先だけを変形したもので、歯先以外の形状の全ての寸法は図9図12に準じる。
【0100】
図15は、図14に示した第三の皮膚炎対処用具IIIに備えた第二の歯先4-2-2に関する好ましい寸法を示した表面からの概略模式図である。第二の歯先4-2-2の形状は、図13に示した第一の歯先収束面4-2-11を、この収束面の始まるところから、傾斜角ηで一部を切削したように、第二の歯先収束面4-2-21、第二の歯先先端面4-2-22、及び、第二歯先傾斜面4-2-23を、それぞれ略長方形となるように成形し、第一の歯先先端面の一部を歯先突起体のように残した形状となっている。その結果、第二の歯先収束面4-2-21の傾斜角ζ及び第二の歯先先端面4-2-22の傾斜角εに変化はなく、歯先突起体の幅y及び歯先突起体の長さyが0.15~0.45mmで、略正方形の歯裏面4-5から楔形のような側面をした歯先突起体になっており、その側面に沿って、略長方形の第二の歯先傾斜面4-2-23が、傾斜角ηで第二の歯先収束面4-2-21の始まり(第一の歯先収束面4-2-11の始まりと同じ位置)から歯裏面4-5に向かって成形されている。この傾斜角ηは36~76°であることが好ましく、歯裏面に対する歯表面の傾斜角δ、歯裏面に対する第一及び第二の歯先先端面の傾斜角ε、歯裏面に対する第一及び第二の歯先収束線面の傾斜角ζ、及び、歯裏面に対する第2の歯先傾斜面の傾斜角ηの大小関係は、δ<ζ<η<εとなっていることが好ましい。ただし、これらの数値についても限定されるものではない。
【0101】
更に、第二の歯先傾斜面4-2-23と第二の歯先収束面4-2-21が交差するところに、溝19を成形しておくことがより好ましく、溝の幅及び深さxは0.05~0.45mmであることが好ましく、0.05~0.24mmであることがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0102】
最後に、図16には、図15で示した第二の歯先の形状を理解するために、図14に示した第三の皮膚炎対処用具IIIに備えた第二の歯先の裏面からの部分平面模式図を示した。第二の歯先には、歯先突起体が出ていることが分かる。
【0103】
以上、本発明の第一~第三の皮膚炎対処用具の構造及び形状について詳説してきた中で、形状の寸法を限定した場合の方が、コーミングの結果として好ましい効果を発現する。しかしながら、皮膚炎対処用具の形状、形態、及び、大きさ等よりも皮膚炎対処用具の材質の方が、本発明の皮膚炎対処用具の皮膚炎対処機能、毛髪調整機能、及び、毛髪清浄機能に及ぼす影響が著しいため、必ずしもこれらの数値に限定されるものではない。
【0104】
また、第一~第三の皮膚炎対処用具の材質は、C含有量が0.25~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.25%、P含有量が≦0.06%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~17.00%の化学成分である第二のステンレス鋼で、1,050℃の焼入れが行われ、HRCが61であるものを用いて製造されているが、C含有量が0.95~1.15%、Si含有量が≦0.50%、Mn含有量が≦0.50%、Cr含有量が14.50~17.50%、Mo含有量が≦2.00%、V含有量が0.05~0.35%、W含有量が≦0.30%、Co含有量が1.30~3.00%の化学成分である第一のステンレス鋼を使用することもできる。
【0105】
このような第一~第三の皮膚炎対象用具は、櫛の機能を有するものであるが、櫛の機能を備えず、皮膚炎対処機能だけを備えた皮膚炎対処用具とすることもできる。図17は、本発明の一実施形態に係る第四の皮膚炎対処用具IVを示す正投影模式図で、(ア)は正面模式図、(イ)は平面模式図、及び、(ウ)は左側面模式図である。
【0106】
図から明らかなように、第四の皮膚炎対処用具は、頭皮及び顔の皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減するための、皮膚が窪まない程度に皮膚に接触させ、皮膚を撫でるように移動させる第一の皮膚炎対処機能面20と、第一の皮膚炎対処機能面20の先端に延設され、第一の皮膚炎対処機能面と同様に皮膚を移動させる第二の皮膚炎対処機能面21と、第一の皮膚炎対処機能面20の反対側に、第一の皮膚炎対処機能面20に直結して第一の皮膚炎対処機能面20及び第二の皮膚炎対処機能面21を操作する握り22とを備えている。第一の皮膚炎対処機能面20及び第二の皮膚炎対処機能面21は、皮膚と接触して、皮膚炎の発症の予防、皮膚炎の沈静化及び軽減化に好ましい曲面となるように成形加工されており、その曲面は球面を有しており、球面上の三点を結ぶ三角形の内角の和が>180°で、その球面の曲率が0.0001~1.0000の範囲内にある曲面である。特に、毛髪に覆われている頭皮及び複雑な形状をしている顔と良好な接触状態を保持するため、第一の皮膚炎対処機能面20よりも第二の皮膚炎対処機能面21の方が先鋭に成形されることが好ましい。
【0107】
また、第一の皮膚炎対処機能面20及び第二の皮膚炎対処機能面21を操作する握り22は、球状の例を示しているが、手で握りやすい形状であれば限定されるものではなく、棒状の柄のような形状、握りに手の指が嵌合する窪みを成形したもの等であってもよい。
【0108】
図には示していないが、第四の皮膚炎対処用具IVの操作性を高めるための軽量化を図るため、第四の皮膚炎対処用具IV全体が中空となっている。高価なステンレス鋼のコスト削減という観点からも好ましい。
【0109】
一方、第一の皮膚炎対処機能面20及び第二の皮膚炎対処機能面21の材質は、C含有量が0.25~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.25%、P含有量が≦0.06%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~17.00%の化学成分である第二のステンレス鋼で、1,050℃の焼入れが行われ、HRCが61であるが、第一のステンレス鋼であってもよい。また、握り22の材質は、特に限定されず、一般的なステンレス鋼や樹脂を用いることができる。ここでは、本発明が皮膚炎対処用具であり、皮膚に対する刺激に敏感な顧客が多いため、金属アレルギーフリーのサージカルステンレスであるステンレス鋼SUS316Lを使用している(非特許文献29)。
【0110】
更に、本発明の皮膚炎対処用具の好ましい一実施形態として、図17に示した皮膚炎対処機能に特化した第四の皮膚炎対処用具に櫛の機能を付与した第五の皮膚炎対処用具Vを図18及び19に示す。
【0111】
図18は、第五の皮膚炎対処用具Vの正投影模式図で、(ア)は正面模式図、(イ)は平面模式図、(ウ)は左側面模式図、及び、(エ)下面模式図であり、皮膚炎対処機能を有する胴及び歯の好ましい寸法が示されている。図19は、図18の第五の皮膚炎対処用具Vを拡大した、左側面拡大模式図(ア)及び部分平面拡大模式図(イ)である。皮膚炎対処機能を有する胴、背、及び、背の先端、並びに、歯に好ましい形状を示す曲線の曲率及び傾斜角が示されている。
【0112】
図18から明らかなように、第四の皮膚炎対処用具IVの握り22の部位を、櫛として機能するように歯26及び目27を形成したしたものである。これに伴い、第五の皮膚炎対処用具Vは、全体として、櫛の範疇に分類することもできるため、第四の皮膚炎対処用具IVにおける第一の皮膚対処機能面20及び第二の皮膚対処機能面21は、皮膚炎対処機能を有する胴23、皮膚炎対処機能を有する背24、皮膚炎対処機能を有する肩25という名称に変更した。名称の変更だけでなく、第五の皮膚炎対処用具とすることによって、操作性を考慮した、形状の変更をする必要がある。特に、少なくとも一方の肩25は、胴23から延設される柄であってもよい。
【0113】
ただし、この場合、胴23、背24、肩25、並びに、歯26及び歯26と胴23との連接部28を含む櫛に相当する部位は、第一のステンレス鋼又は第二のステンレス鋼である必要がある。ここでは、全て、1,050℃で焼入れし、HRCが61の第二のステンレス鋼を使用している。
【0114】
第五の皮膚炎対処用具Vは、成形加工性を含む生産性を考慮して、第一~第三の皮膚炎対処用具の形状及び形態を極めた簡略化したものであり、図18及び図19に示された長さ、角度、及び、曲率の範囲にあることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0115】
そして、この第五の皮膚炎対処用具を使用して実験を行った結果を図20及び図21にしめす。
【0116】
図20は、第五の皮膚炎対処用具Vの皮膚炎対処機能を有する胴23、背24、及び、背の先端24-1を額29及び下瞼30に、皮膚が窪まない程度に軽く接触して移動させる操作を、毎日5分、一か月行った湿疹低減効果を示している。額の場合には、眉間から毛の生え際の方向に移動させ、下瞼の場合は、目頭から目尻の方向にさせる。ただし、逆方向の第五の皮膚対処用具の接触移動は行わない。これは、逆方向の移動は、皮膚炎の要因となる物質を取り除いたものを、皮膚に再付着させることになるからであり、移動操作ごとの皮膚接触部の清掃を繰り返すことが好ましい。
【0117】
図から明らかなように、額29及び下瞼30の皮膚炎、この場合は、顔面播種状粟粒性狼瘡、が沈静化している。
【0118】
図21は、表面を上方に向け、胴23又は背24を頭皮と接触させて又は接触させることなく、目27に毛髪33が通っている状態で頭皮34に沿った縦横無尽な平行往復移動と目27に毛髪33を通して毛髪33を流す方向への移動を適宜繰り返すコーミングが、毛穴付近の皮脂35を除去する効果を示している。
【0119】
図から明らかなように、コーミングにより、毛穴付近の皮脂35が完全に除去されている。
【0120】
このような皮膚炎対処機能及び毛髪清浄機能について、材質の影響を比較するため、表4に示すように、第五の皮膚炎対処用具の材質だけを、V金10、N690、SUS420J1、及び、SUS440Aに置換え、図20及び図21と全く同様の実験を行った。
【0121】
表4から明らかなように、SUS420J2、V金10、及び、N690において、効果的な皮膚炎対処機能及び毛髪清浄機能が認められた。
【0122】
【表4】
【0123】
なお、表1~3、少なくとも表4に示すその他の金属材料についても同様の検討を行う予定であるが、時間及び費用、並びに、特許制度に係わる諸事情により、現時点では評価されていない。特に、特許制度における先願主義があるため、SUS420J1、SUS420J2、及び、SUS440Aの結果より仮説が正しいものと断定して本発明の出願に至った。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の皮膚炎対処用具は、特別な化学成分を有するステンレス鋼を用いることによって、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することができることに加え、毛髪に艶とコシを付与し、くせ毛を矯正し、ボリューム感のあるサラサラとした毛髪にできると共に、毛髪や頭皮に付着する油性成分を除去できる。従って、ペットの皮膚炎対処用具としてそのまま利用できるだけでなく、ブラシの植毛部や把持部としても利用することができる。また、頭皮及び顔の皮膚の皮膚炎のみならず、身体の各所の皮膚炎対処用具としても利用することができる。
【0125】
また、本発明の皮膚炎対処用具は、各種有機化学物質を除去する機能に基づき、肌へのみずみずしく弾力のある肌に必要な酸素の供給量を高め、潤いのある肌を維持し、生み出すことができるという効果もあるので、肌の老化の原因であると考えられている肌への酸素供給量不足を改善する肌の老化防止用具としても利用できる。
【0126】
更に、皮膚炎の発症を予防し、皮膚炎を沈静、軽減することができる材質であるため、サージカルステンレスであるSUS316L以上に皮膚に対する刺激が少ないと考えられ、ネックレス、ブレスレット、リング等の装飾品、マッサージ用具等にも利用でき、産業上の利用可能性が、多岐に亘って高いものと考えられる。
【符号の説明】
【0127】
I:第一の皮膚炎対処用具
II:第二の皮膚炎対処用具
III:第三の皮膚炎対処用具
IV:第四の皮膚炎対処用具
V:第五の皮膚炎対処用具
1:皮膚炎対処機能を有する胴
2:皮膚炎対処機能を有する背
3:皮膚炎対処機能を有する肩
3-1 皮膚炎対処機能を有する肩側面
4:歯
4-1:歯元
4-1-1:最後端の歯元
4-2:歯先
4-2-1:第一の歯先
4-2-11:第一の歯先収束面
4-2-12:第一の歯先先端面
4-2-2:第二の歯先
4-2-21:第二の歯先収束面
4-2-22:第二の歯先先端面
4-2-23:第二の歯先傾斜面
4-3:歯表(おもて)面
4-4:歯側面
4-5:歯裏(うら)面
5:目
6:櫛尖(しつせん)
6-1:櫛尖側面
7:櫛体(しつたい)
8:把手
9:母指孔
10:緩衝点
11:触点
12:皮膚炎対処用具本体
13:動把手
14:薬指孔
15:小指掛け
16:皮膚炎対処用具操作補助体
17:要(かなめ)
18:歯元連結線
19:溝
a:櫛尖の厚さ
b:櫛体の厚さ
c:播種の厚さ
d:小指掛けの厚さ
e:全長
f:要から櫛尖先端までの長さ
g:要から把手後端までの長さ
h:要から母指孔の中心までの長さ
i:歯の全長
j:櫛体の長さ
k:把手の長さ
l:櫛体の幅
m:要から動把手後端までの長さ
n:要から薬指孔の中心までの長さ
о:小指掛けの長さ
p:歯の長さ
q:胴の幅
r:歯の幅
s:目の幅
:櫛尖の幅
:櫛尖の長さ
u:歯先の高さ
x:第二の歯先傾斜面の溝の幅及び深さ
:歯先突起体の幅
:歯先突起体の長さ
α:背接線に対する把手の傾斜角
β:背接線に対する動把手閉止時の傾斜角
γ:歯元連結線の接線に対する歯の傾斜角
δ:歯裏面に対する歯表面の傾斜角
ε:歯裏面に対する第一及び第二の歯先先端面の傾斜角
ζ:歯裏面に対する第一及び第二の歯先収束面の傾斜角
η:歯裏面に対する第二の歯先傾斜面の傾斜角
κ:背側面の曲率
κ18:歯元連結線の曲率
κ:肩側面の曲率
κ:櫛尖側面の曲率
20:第一の皮膚炎対処機能面
21:第二の皮膚炎対処機能面
22:握り
23:皮膚炎対処機能を有する胴
24:皮膚炎対処機能を有する背
24-1:皮膚炎対処機能を有する背の先端
25:皮膚炎対処機能を有する肩
26:歯
26-1:歯元
26-2:歯先
26-2-1:歯先の先端面
26-3:歯の表面
26-4:歯の裏面
26-5:歯の湾曲面
26-6:両端の歯
27:目
28:連接部
29:額
30:下瞼
31:湿疹(顔面播種状粟粒性狼瘡)
32:沈静化した湿疹
33:毛髪
34:頭皮
35:皮脂
A:歯元の間隔
B:歯元の長さ
C:歯の最大長
D:胴の歯の長さ方向の最大幅
θ:歯先の表面と歯先先端を水平面とが形成する角度
λ:歯先の裏面と歯先先端を水平面とが形成する角度
κ23:皮膚炎対処機能を有する胴表面の円弧状曲線の曲率
κ24:皮膚炎対処機能を有する背の円弧状曲線の曲率
κ24-1:皮膚炎対処機能を有する背の先端の円弧状曲線の曲率
κ26:歯の湾曲している円弧状の曲線の曲率

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C含有量が0.95~1.05%、Cr含有量が14.50~15.50%、Mo含有量が0.80~1.20%、V含有量が0.250.35%、Co含有量が1.30~1.80%の化学成分である第一のステンレス鋼(武生特殊鋼材(株)製V金10)で形成される皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする皮膚炎対処用具。
【請求項2】
C含有量が1.08%、Si含有量が0.40%、Mn含有量が0.40%、Cr含有量が17.30%、Mo含有量が1.10%、V含有量が0.10%、Co含有量が1.50%の化学成分である第二のステンレス鋼(Bohler-Uddeholm AG製N690)で形成される皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする皮膚炎対処用具。
【請求項3】
C含有量が0.26~0.40%、Si含有量が≦1.00%、Mn含有量が≦1.00%、P含有量が≦0.04%、S含有量が≦0.03%、Ni含有量が≦0.60%、Cr含有量が12.00~14.00%の化学成分である第三のステンレス鋼(JIS鋼種SUS420J2)で形成される皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする皮膚炎対処用具。
【請求項4】
前記ステンレス鋼のロックウェル硬度(HRC)が≧58であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項5】
前記曲面は球面を有しており、前記球面上の三点を結ぶ三角形の内角の和が>180°、前記球面の曲率が0.0001~1.0000であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項6】
前記皮膚炎対処機能を有する曲面を備えている皮膚接触部と前記皮膚接触部を操作する操作部とを備えることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項7】
前記皮膚接触部が前記第一~前記第三のステンレス鋼のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項8】
少なくとも前記皮膚接触部が中空体であることを特徴とする請求項又はに記載の皮膚炎対処用具。
【請求項9】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖(しつせん)と、
前記胴及び前記複数の歯に延設される櫛体(しつたい)と、前記肩と前記櫛体の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔と、
を一体に備える櫛の機能を有し、
前記胴、前記肩、前記櫛尖、及び、前記背のいずれか一つ以上に前記皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項10】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて一列に垂設される前記複数の歯と、
前記胴の先端にあって、前記胴に延設される肩を介し、前記複数の歯の先端の歯に所定の間隔を置いて形設される櫛尖と、
前記胴及び前記複数の歯に延設される櫛体と、
前記肩と前記櫛体の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
前記櫛体に前記複数の歯の歯先と同じ方向に傾斜して延設される把手と、
前記把手の後端に形設される母指孔とを一体に備えている皮膚炎対処用具本体と、
動把手と前記動把手の一端に形設される薬指孔及び小指掛けとを一体に備えている皮膚炎対処用具操作補助体の他端とが、
前記櫛体のほぼ中央において、軸を架け渡される要(かなめ)によって所定の回転角を回動可能に枢結される櫛の機能を有し、
前記胴、前記肩、前記櫛尖、及び、前記背のいずれか一つ以上に前記皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項11】
前記複数の歯、及び、前記胴に含まれ前記複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって前記複数の歯が垂設されている連接部が、前記第一又は前記第二のステンレス鋼であり、前記連接部以外の前記胴、前記肩、前記櫛尖、及び、前記背が、前記第三のステンレス鋼であることを特徴とする請求項又は10に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項12】
前記皮膚炎対処用具は表(おもて)面と裏(うら)面とを有し、前記複数の歯の前記裏面は略水平であって、前記複数の歯の前記表面は、直線状の傾斜面又は円弧状の傾斜面であって、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が5°以上15°以下であることを特徴とする請求項11のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項13】
前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先が、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が6~26°で、前記歯先の前記裏面からの高さが0.7~1.1mmとなるように歯先収束面が形成されており、前記裏面との傾斜角が39~79°で切断される歯先先端面を有することを特徴とする請求項12に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項14】
前記胴に垂設される歯の先端部分の歯先が、前記直線状の傾斜面と前記裏面とが形成する傾斜角及び前記円弧状の傾斜面の接線と前記裏面とが形成する傾斜角が6~26°で、前記歯先の前記裏面からの高さが0.7~1.1mmとなるように形成される前記歯先収束面と、前記裏面との傾斜角が39~79°で切断される前記歯先先端面を有する前記歯先を、更に、前記歯先先端面の幅が0.15~0.45mm、前記歯先先端面の長さが0.15~0.45mmの突起体を形成するように、前記裏面との傾斜角が36~76°で前記歯先収束面を前記複数の歯元側から切断して形設される歯先傾斜面を有することを特徴とする請求項13に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項15】
前記歯先傾斜面に0.05~0.45mmの幅及び深さの溝が形成されていることを特徴とする請求項14に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項16】
前記肩、前記胴、及び、前記櫛体とで形成される背が、直線又は円弧状曲線であって、前記直線の背に対する前記把手の傾斜角、又は、前記円弧状曲線の背の接線に対する前記把手の傾斜角が26~46°、前記歯の長さが4~11mm、前記胴の幅が0.5~4.5mm、前記歯の幅が0.7~1.1mm、前記歯の間隔が0.8~1.4mmであることを特徴とする請求項15のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項17】
前記胴と前記胴に垂設される前記複数の歯とが形成する前記複数の歯元を連結した連結線が、直線又は円弧状曲線であって、前記直線と前記櫛体側に傾斜する前記複数の歯とが形成する傾斜角、又は、前記円弧状曲線の接線と前記櫛体側に傾斜する前記複数の歯とが形成する傾斜角が75~90°であることを特徴とする請求項16いずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項18】
前記円弧状曲線である背及び前記円弧状曲線である連結線の曲率が0.0001~0.0008以下であることを特徴とする請求項17のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項19】
前記櫛尖の厚さが1.5~3.0mm、前記櫛尖の幅が1.0~3.0mm、前記櫛尖の長さが5.0~7.0mm、前記櫛尖の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.2100~0.4000以下であって、前記肩の側面が作る円弧状曲線の曲率が0.0800~0.2100以下であることを特徴とする請求項18のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具
【請求項20】
前記櫛体の厚さが2.5~3.5mm、前記櫛体の幅が7~17mm、櫛体の長さが23~33mm、前記把手の厚さが3.5~4.5mm、把手の長さが21~31mm、櫛尖の先端から櫛体までの胴に垂設される歯の全長が50~70mmであることを特徴とする請求項19のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項21】
全長が160~170mm、前記要から戦記櫛尖の先端までの長さが67~77mm、前記要から前記把手の後端までの長さが62~72mm、前記要から前記母指孔の中心までの長さが48~58mm、前記要から前記動把手の後端までの長さが90~100mm、前記要から前記薬指孔の中心までの長さが60~70mm、前記小指掛けの長さが10~20mm、前記直線の背に対する前記動把手の傾斜角、又は、前記円弧状曲線の背の接線に対する前記動把手の傾斜角が0~5°であることを特徴とする請求項10~20のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項22】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される前記複数の歯と、
前記胴の両端にあって、前記胴に延設される二つの肩と、
前記肩の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
を一体に備える櫛の機能を有し、
前記胴、前記肩、及び、前記背のいずれか一つ以上に前記皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項23】
複数の歯を支える胴と、
前記胴に所定の間隔の複数の歯元を置いて垂設される前記複数の歯と、
前記胴の一端が前記胴に延設される肩と、
前記胴の他端が前記胴に延設される柄と、
前記肩と前記柄の間に跨設されるように前記胴に連続的に形成される背と、
を一体に備える櫛の機能を有し、
前記胴、前記肩、及び、前記背のいずれか一つ以上に前記皮膚炎対処機能を有する曲面を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項24】
前記複数の歯、及び、前記胴に含まれ前記複数の歯元を結ぶ数学的曲線に沿った所定の幅であって前記複数の歯が垂設されている連接部が、前記第一又は前記第二のステンレス鋼であり、前記連接部以外の前記胴、前記肩、及び、前記背が、前記第三のステンレス鋼であることを特徴とする請求項22又は23のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項25】
前記胴が中空であることを特徴とする請求項2224のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項26】
前記皮膚炎対処用具は、表面と裏面とを有し、前記複数の歯の一部又は全体が、前記表面から前記裏面方向に円弧状を描くように湾曲していることを特徴とする請求項2225のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項27】
前記表面から前記裏面方向に湾曲している前記円弧状の曲線の曲率が0.0268~0.0667であることを特徴とする請求項26に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項28】
前記複数の歯元の間隔及び前記複数の歯の前記間隔(前記複数の歯元の長さ)が、それぞれ、0.80~10.0mmであることを特徴とする請求項2227のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項29】
前記複数の歯の歯先が、前記表面と前記歯先先端を水平面とが形成する角度及び前記裏面と前記歯先先端を水平面とが形成する角度が70~90°であることを特徴とする請求項2228のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項30】
(前記複数の歯の最大長)/(前記胴の前記複数の歯の長さ方向の最大幅)が、0.20~5.00であることを特徴とする請求項2229のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項31】
前記胴を前記複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面において、前記胴の表面形状は、前記複数の歯が配列する面に対して一垂直方向に湾曲した円弧状の曲線であって、前記胴における表面の円弧状の曲線の曲率が0.0294~0.0590であることを特徴とする請求項2230のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項32】
前記背の頂点を前記複数の歯が配列する面方向で切断した断面において、前記背の形状は、前記複数の歯と反対方向に湾曲した前記複数の配列面の円弧状曲線であって、前記背における前記複数の配列面の円弧状曲線の曲率が0.0063~0.0163であることを特徴とする請求項2231のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項33】
前記背を前記複数の歯が配列する面に対して垂直方向に切断した断面において、前記背の先端形状は、前記複数の歯と反対方向に湾曲した前記複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線であって、前記背の先端における前記複数の配列面に対する垂直面の円弧状曲線の曲率が0.0004~1.0000であることを特徴とする請求項2232のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具。
【請求項34】
請求項1~のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記曲面を、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。
【請求項35】
請求項33のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記胴、前記背、及び、前記肩のいずれかを、毛髪の生え際と眉との間、上瞼及び下瞼の目頭と目尻との間、下顎先端と下顎上方との間、口角と小鼻との間、小鼻と耳との間、及び、前頚部と肩峰との間(外側頚三角)で、皮膚が窪まない程度に軽く接触させて移動させることを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。
【請求項36】
請求項33のいずれか一項に記載の皮膚炎対処用具の前記表面を上方に向け、前記複数の歯の間隙を毛髪が通った状態で前記胴又は前記背を頭皮と接触させて又は接触させることなく、前記頭皮に沿った縦横無尽な平行往復移動と前記毛髪を流す方向への移動を適宜繰り返すことを特徴とする皮膚炎対処用具の使用方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
【表2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
【表4】