(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023124945
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】再生プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20230831BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08J11/06
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028824
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】真嶋 佑樹
【テーマコード(参考)】
4F206
4F401
【Fターム(参考)】
4F206AA24
4F206AA50
4F206AB12
4F206AC01
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF51
4F206JL02
4F401AA22
4F401AD01
4F401BA13
4F401BB09
4F401CA03
4F401CA14
4F401CA58
4F401CA79
4F401DC06
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA05Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、基材と印刷層の脱離工程を行わなくとも、ラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、ラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリエステル樹脂を、ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、前記押出装置中において前記ラミネート積層体(A)を、加熱溶融し、樹脂組成物(a)を得る工程、及び、前記樹脂組成物(a)を、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出す工程を含む、再生プラスチックの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、ラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリエステル樹脂を、ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記ラミネート積層体(A)を、加熱溶融し、樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
前記樹脂組成物(a)を、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出す工程を含む、再生プラスチックの製造方法。
【請求項2】
スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、ラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリエステル樹脂を、ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記ラミネート積層体(A)を、260~290℃で加熱溶融し、樹脂組成物(a)を得る工程、及び、前記樹脂組成物(a)を、押出装置の吐出部から押出す工程を含む、再生プラスチックの製造方法。
【請求項3】
更に、ラミネート積層体(A)を脱水及び乾燥することにより、ラミネート積層体(A)中の水分量が0.2質量%以下となるまで水分を除去する工程を含む、請求項1又は2に記載の再生プラスチック製造方法。
【請求項4】
更に、水冷工程を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の再生プラスチック製造方法。
【請求項5】
ラミネート積層体(A)の極限粘度が、0.58~0.75である、請求項1~4いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項6】
ラミネート積層体(A)の印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下である、請求項1~5いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項7】
前記バインダー樹脂が、ウレタン樹脂を含み、前記ウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール由来の構造単位を有する、請求項6に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項8】
前記顔料の含有率が、印刷層の全質量中の30質量%以下である、請求項6又は7に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項9】
前記押出装置が具備するスクリューの回転数が、50~1000RPMである、請求項1~8いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項10】
ラミネート積層体(A)が、接着剤層を含み、前記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールを含む反応性ウレタン接着剤の反応物である、請求項1~9いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法。
【請求項11】
請求項1~10いずれか1項に記載の再生プラスチックの製造方法によって製造される、再生プラスチックの成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂を含む積層体から、マテリアルリサイクルを行う、再生プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックフィルムからなるパッケージ、プラスチックボトル、及びその他のプラスチック製品は、海洋にゴミとして廃棄・投棄され環境汚染問題が生じている。プラスチック製品は海水中で粉砕されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり海水中に浮遊する。マイクロプラスチックは、魚類等の海洋生物に摂取され、その体内中で濃縮される。そのため、海洋生物を食料として摂取する海鳥及び人間等の健康への影響が懸念されている。
【0003】
多層構成の食品包装パッケージでは、フィルム基材として、ポリエステル基材(PET)、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(PP)、及びポリエチレン基材(PE)など、種々のプラスチック基材が使用されている。多層構成の食品包装パッケージは、例えば、第1のフィルム基材に対して印刷インキにより印刷を施し、印刷層上に、必要に応じて接着剤層を介して、第2のフィルム基材を貼り合わせた後に、カットし、熱融着して、当該パッケージとなる。しかしながら、相溶性その他の問題があるため、複数の異種材料を含む多層構成の食品包装パッケージは、マテリアルリサイクルが難しい。
【0004】
通常、食品包装パッケージはゴミとして廃棄されるが、リサイクルされる場合もある。パッケージをリサイクルする場合、まず、パッケージに含まれる、不純物を除去、粉砕、し、必要に応じてアルカリ処理などを行い(特許文献1)、洗浄したものを原料として溶融し、ペレットにする。そして、得られたペレットを加工して、新たな製品とする。しかしながら、上記リサイクル方法では、パッケージに含まれる印刷層の大半は除去されずに残存するため得られるペレット等は品質に劣る。
【0005】
最近では、特許文献2及び3のように、プラスチック基材上にプライマー層や、脱離可能な印刷層を設け、印刷柄やラミネートされた包装材を分離・脱離する技術が開示されているが、工程が増えることで、加工完了までの時間や、人が関わる段取作業が増える事に繋がり、生産量が下がる恐れがある。
特許文献4には、印刷層を除去する工程がなく、2軸延伸ポリエステルフィルムの廃材を再利用するための、再生加工方法が開示されているが、包材適性を有するポリエステルを主原料としたラミネート積層体の再生加工方法に関する技術は開示されていない。
【0006】
すなわち、ラミネート積層体から、印刷層を除去する工程がなく、簡易的な分離、洗浄、脱水のみで、良質な再生プラスチックを製造する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-19003号公報
【特許文献2】特開2001-031899号公報
【特許文献3】特開2020-196855号公報
【特許文献4】特開2006-116857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材と印刷層の脱離工程を行わなくとも、ラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の再生プラスチックの製造方法を用いることで上記課題が解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0010】
すなわち本発明は、スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、ラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリエステル樹脂を、ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記ラミネート積層体(A)を、加熱溶融し、樹脂組成物(a)を得る工程、及び、
前記樹脂組成物(a)を、押出装置の吐出部から圧力18MPa以下で押出す工程を含む、再生プラスチックの製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、スクリュー及び吐出部を具備した押出装置を用いて、ラミネート積層体(A)から再生プラスチック(B)を得る、再生プラスチックの製造方法であって、
ラミネート積層体(A)が、基材層及び印刷層を含み、塩素含有率が、ラミネート積層体(A)の全質量中0.4質量%以下であり、かつ、ポリエステル樹脂を、ラミネート積層体(A)の全質量中80質量%以上含有し、
前記押出装置中において前記ラミネート積層体(A)を、260~290℃で加熱溶融し、樹脂組成物(a)を得る工程、及び、前記樹脂組成物(a)を、押出装置の吐出部から押出す工程を含む、再生プラスチックの製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、更に、ラミネート積層体(A)を脱水及び乾燥することにより、ラミネート積層体(A)中の水分量が0.2質量%以下となるまで水分を除去する工程を含む、上記の再生プラスチック製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、更に、水冷工程を含む、上記の再生プラスチック製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、ラミネート積層体(A)の極限粘度が、0.58~0.75である、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0015】
また、本発明は、ラミネート積層体(A)の印刷層が、顔料及びバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂の塩素含有率が、5質量%以下である、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、前記バインダー樹脂が、ウレタン樹脂を含み、前記ウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール由来の構造単位を有する、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0017】
また、本発明は、前記顔料の含有率が、印刷層の全質量中の30質量%以下である、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0018】
また、本発明は、前記押出装置が具備するスクリューの回転数が、50~1000RPMである、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、ラミネート積層体(A)が、接着剤層を含み、前記接着剤層が、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールを含む反応性ウレタン接着剤の反応物である、上記の再生プラスチックの製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、上記の再生プラスチックの製造方法によって製造される、再生プラスチックの成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、基材と印刷層の脱離工程を行わなくとも、ラミネート積層体から、効率的かつ簡便に、マテリアルリサイクルが可能である、成形性に優れた再生プラスチック製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、記載する実施形態又は要件の説明は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0023】
本発明においてラミネート積層体(A)は、単に「積層体(A)」と略記する場合があるが同義である。
【0024】
(スクリュー及び吐出部を具備した押出装置)
本発明に用いる押出装置は、スクリュー及び吐出部を具備している。押出装置は一般的に用いられる熱可塑性樹脂等を溶融して成形可能な装置であって、例えば、特開2017-148997号公報に記載された公知の押出装置などを使用することができる。
具体的には、材料を供給する供給口と、前記供給口から供給された熱可塑性樹脂等の材料を溶融、混練する溶融混練部と、前記溶融混練部で溶融、混練された熱可塑性樹脂を吐出する吐出部を有している。
前記溶融混練部はスクリューを具備しており、スクリューの回転、電熱ヒーターなどの加熱源及び上記材料自身から発生する、せん断熱により溶融・混錬される。溶融した材料は前記吐出部のメッシュを通り、吐出される。前記押出装置は、例えば二軸押出機、単軸押出機、及びローター型二軸混練機が挙げられる。
【0025】
(再生プラスチック(B)の製造方法)
本発明の再生プラスチック(B)の製造方法は、例えば以下の実施形態が好ましい。
一実施形態において、積層体(A)は、裁断又は破砕して断片化された形状であることが好ましい。断片化するためには破砕などの方法が用いられる。
また、積層体(A)は洗浄されていることが好ましく、本発明においては洗浄工程を有することが好ましい。その後、積層体(A)を加工して、再生プラスチック(B)を得る。加工は加熱溶融工程や押出工程を含むものであり、以下詳細に記載する。
【0026】
(破砕)
積層体(A)の形状を断片化するためには、破砕が有効である。破砕方法は特に制限されず、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、カッターミル、スタンプミル、リングミル、ローラーミル、ジェットミル、又はハンマーミルを用いる方法が挙げられる。積層体(A)の断片のサイズは辺の長さが1mm~40mmであることが好ましく、より好ましくは5mm~20mmである。また、ポリエステルの分子量の低下を防止するため、220℃以下の温度で破砕するのが好ましく、200℃以下の温度で破砕するのがより好ましく、180℃以下で破砕するのが更に好ましい。
【0027】
(洗浄)
積層体(A)、又は、断片化された印刷物若しくは積層体(A)は、洗浄されていることが好ましい。洗浄方法はバッチ式あるいは連続式等が挙げられ、水、洗剤、中和剤を用いてもよい。また、洗浄された積層体(A)は十分に脱水、乾燥することが好ましい。水分の影響により、ポリエステルが加水分解を起こすと、分子量が低くなり、射出成形時に粘性が低下して、成形品が製造し難くなるためである。積層体(A)、又は、断片化された積層体(A)中の水分量は、0.2質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましい。
【0028】
(加工)
断片化あるいは洗浄された積層体(A)は、スクリューを具備した押出装置中で加熱溶融、及び混錬されて樹脂組成物(a)となる。当該樹脂組成物(a)は冷却されて、40℃以下になることで再生プラスチック(B)となる。
【0029】
具体的に再生プラスチック(B)を得る工程としては、積層体(A)を供給口から供給する工程と、前記供給口から供給された積層体(A)を溶融、及び混練して樹脂組成物(a)とする工程と、溶融混練部で溶融混練された樹脂組成物(a)を吐出する工程と、吐出部より吐出された樹脂組成物(a)を冷却して、再生プラスチック(B)とする工程とを含むことが好ましい。再生プラスチック(B)の形状は特に限定されず、棒状、粒子状、立方体、直方体、不定形、等が挙げられる。
【0030】
積層体(A)は260~290℃で加熱溶融、及び混錬され樹脂組成物(a)となる。この工程における、温度域は、積層体(A)のガラス転移温度や、溶融温度、再生プラスチックの形状、成形工程でかかる圧力を考慮する必要がある。上記溶融温度は、好ましくは270℃~290℃でる。当該温度域により加熱溶融され、混錬されて均一な再生プラスチック(B)となるのである。
また、混錬時の上記スクリューの回転数は、50~1000RPMであることが好ましい。上記範囲内では、樹脂組成物(a)ひいては再生プラスチック(B)の不溶物、焼け及び炭化物などの異物の発生や、加水分解、熱分解を抑制でき、射出成形時の流動性を均一にする。その結果、良好な成形性を維持することができ、好ましい。
【0031】
樹脂組成物(a)の吐出により再生プラスチック(B)を得る工程における、押出装置の先端排出部の樹脂圧力は、18MPa以下が好ましく、より好ましくは15MPaであり、さらに好ましくは10MPaである。当該圧力により不純物を含みにくくなり、純度の安定した再生プラスチック(B)を連続して得ることができる。
押出装置の吐出部において、成形されるペレットへの異物を取り除くため、スクリーンメッシュ(金属の網)を使用することが好ましい。スクリーンメッシュ(金属の網)の種類は特に制限されず、例えば、平織、綾織、平畳織及び綾畳などの織製織と、パンチングメタルのタイプが挙げられるが、平織が好ましい。
スクリーンメッシュのサイズは吐出部の圧力や、目詰まりを考慮し、好ましくは40メッシュ以上であり、より好ましくは80メッシュ以上、さらに好ましくは120メッシュ以上である。
【0032】
吐出された樹脂組成物(a)を冷却、細断して再生プラスチック(B)とするにはホットカット方式、ストランドカット方式が挙げられるが特に制限されない。
【0033】
冷却方法としては、例えば空冷、風冷、水冷が挙げられる。本発明においては、水冷工程
を含むことが好ましい。樹脂組成物(a)は、20℃~80℃に冷却することが好ましく、30℃~60℃に冷却することがより好ましい。
【0034】
また、上記断片化された積層体(A)に対して、必要に応じて、各種添加剤等を加えてから、押出装置で加工してもよい。上記裁断物又は破砕物と任意成分との混合は、ヘンシェルミキサー、タンブラー、及びディスパー等を用いて行うことができる。
【0035】
(再生プラスチック(B)の添加剤等)
本発明の再生プラスチック(B)は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤等を含有することができる。ポリエステルは加水分解により、粘度が低下しやすいため、改質剤を添加するのが好ましい。改質剤としては、例えばカルボジイミド化合物やアクリル系化合物が挙げられる。
【0036】
他の添加剤としては、例えば、フェノール系及びリン系からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化防止剤;脂肪酸アミド系、アルキレン脂肪酸アミド系、金属石鹸系、及びエステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種の滑剤;ヒンダードアミン系の耐候安定剤;酸価が5mgKOH/g以下のワックス;脂肪酸スルホン酸塩及び脂肪酸エステル系からなる群より選ばれる少なくとも1種の帯電防止剤;が挙げられる。
【0037】
(ラミネート積層体(A))
本発明にはラミネート積層体(A)を用いる。ラミネート積層体(A)は、基材層及び印刷層を含む。
その構成は、具体的には、以下の構成を例示することができるが、これらに限定されない。なお以下(1)から(5)の構成表示においては、「/」は各層の境界を意味する。接着剤層は従来公知の方法であるドライラミネート及びノンソルラミネートで使用される接着剤で構成されるものに限らず、押し出しラミネートにおける、溶融性ポリエステルその他の押出樹脂である場合も含まれる。
(1)基材/印刷層/接着層/シーラント
(2)基材/印刷層/接着剤層/中間基材層/接着剤層/シーラント
(3)基材/印刷層/接着剤層/中間基材層/接着剤層/中間基材層/接着剤層/シーラント
(4)印刷層/基材/接着層/シーラント
(5)印刷層/基材/接着剤層/中間基材層/接着剤層/シーラント
【0038】
上記構成はそれぞれ、さらにバリア層を含んでいてもよく、バリア層は基材、シーラント、及び/又は印刷層に隣接していることが好ましい。
【0039】
積層体(A)は、ポリエステル樹脂を、積層体(A)の全質量中80質量%以上含有する。前記含有量は85%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。積層体(A)が、ポリエステル樹脂を上記の範囲で含むことにより、リサイクル適性が高く、良好な成形性を有した成形用材料を得ることができる。
【0040】
(塩素含有率)
また、積層体中に含有されることのあるハロゲン元素によって、ペレット製造時にハロゲンガスや酸性ガスである塩化水素が発生し、設備が損傷する、又は人体の健康が脅かされる可能性が考えられる。他にも、塩化水素及び水分が混在する場合は、ポリエステルの加水分解が促進し、分子量が低下することで、成形性が劣化する恐れがある。また、ペレット製造時に気泡が発生した場合は、製造されたペレットを用いて、成形品を製造する際に、表面に凹凸が発生しやすく、成形品の表面状態が悪化する恐れがある。
そのため、印刷物又は積層体(A)において、塩素含有率が、積層体(A)の全質量中、0.4質量%以下であることが必要であり、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがなお好ましい。
【0041】
(積層体(A)における塩素含有率測定方法)
積層体(A)における塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。具体的には、後述の塩素含有量の分析手法等と同様の方法により特定可能である。
【0042】
本発明における積層体(A)の極限粘度は、JIS K 7367-5に準拠して測定される値である。積層体(A)の極限粘度は、好ましくは0.58~0.75であり、より好ましくは0.60~0.70であり、更に好ましくは0.62~0.68である。積層体(A)の極限粘度が前記範囲の場合、リサイクルの際に、再生プラスチック(B)の成形性がより優れるため、好ましい。
【0043】
(基材)
積層体(A)における基材は、原料としてポリエステル樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。包装材に用いるために、フィルム又はシート状の形態が好ましい。
当該ポリエステル基材として例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムが挙げられる。基材の厚さは、5~30μmが好ましく、10~30μmが更に好ましい。基材の厚さが5μm以上であれば、より優れた寸法安定性,耐熱性等が得られ、30μm以下であれば、より優れた耐屈曲性が得られる。
【0044】
基材は、ガスバリア基材、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機蒸着層を有するプラスチック基材や、有機、無機成分を混合した層を有するプラスチック基材等である形態も好ましい。片面にヒートシール性を付与したヒートシール基材も含まれる。
【0045】
ポリエステル樹脂を主として含む基材としては、単純にエステル基材同士が積層されていてもよいし、接着等を介してエステル基材とは異なる基材が積層されていてもよい。「エステル基材とは異なる基材」は、異なる性質を有するフィルムが挙げられ、種類を問わない。また、積層された基材である場合は接着層を含む形態であってもよい。プラスチックを積層させる方法は特に限定されず、共押出製法、熱融着、接着層を介した圧着など、従来公知の方法が挙げられる。
【0046】
基材は、帯電防止剤、防曇剤、紫外線防止剤などの添加剤を含む(塗工あるいは混練)形態や、易接着性コート層(例えばポリビニルアルコール及びその誘導体を含む層)を有する形態、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理した形態などが好ましい。上記の添加や加工は、印刷インキや、その他コーティング剤の濡れ性を向上させる目的や、フィルムに特定の機能性を持たせる目的でも施され、例えば、湿気による包材の曇りを防止することで内容物の視認性に優れた包材を提供するのにも好適に用いられる。
【0047】
(印刷層)
積層体(A)における印刷層は、装飾又は美感の付与;内容物、賞味期限、及び、製造者又は販売者の表示等を目的とした、任意の絵柄、パターン、文字、及び記号等を表示する層であることができる。印刷層は、絵柄、パターン、文字、及び記号等を有さないベタ印刷層であってもよい。印刷層の形成方法は特に制限されず、公知の着色剤(顔料及び/又は染料)を用いて形成することができるが、顔料及びバインダー樹脂を含む印刷インキを用いて形成することが好ましい。また、印刷層は、単層構成でも複層構成でもよく、表層に印刷してもよい。印刷層の厚みは、好ましくは0.1~6μmであり、より好ましくは0.5~4μmであり、特に好ましくは1~2.5μmである。
【0048】
(顔料)
積層体(A)における印刷層は、顔料を含む印刷インキを用いて形成されることが好ましい。再生プラスチックの着色による品質劣化を考慮し、印刷層全質量中の着色剤の含有率が、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがなお好ましく、23質量%以下であることが更に好ましい。なお、着色剤は顔料であることが好ましく、当該顔料は、有機顔料、無機顔料、体質顔料のいずれでも使用は可能であるが、無機顔料では酸化チタンを含むもの、体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが好ましい。有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。顔料等の着色剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0049】
(有機顔料)
上記有機顔料としては、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0050】
有機顔料の色相としては黒色顔料、藍色顔料、緑色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、橙色顔料、及び茶色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。また更には、黒色顔料、藍色顔料、赤色顔料、及び黄色顔料からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。有機顔料として具体的な例をカラーインデックス(Colour Index International、略称C.I.)のC.I.ナンバーで示す。
好ましくはC.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントブラック7である。
【0051】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムはリーフィングタイプ又はノンリーフィングタイプがあるが、ノンリーフィングタイプが好ましい。
【0052】
(バインダー樹脂)
積層体(A)における印刷層は、バインダー樹脂を含む印刷インキを用いて形成されることが好ましい。バインダー樹脂とは、印刷インキにおける結着樹脂をいい、後述するように、塩素含有率が全バインダー樹脂中に5質量%以下であることが好ましい。
【0053】
また、上記バインダー樹脂は有機溶剤に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂はガラス転移温度が-60℃以上40℃未満である樹脂と、ガラス転移温度が40℃以上200℃以下である樹脂とを併用することが好ましい。更に好ましくは、ガラス転移温度が-50℃~0℃である樹脂と、ガラス転移温度が50℃~190℃である樹脂とを併用することである。なお、本明細書においてガラス転移温度とは、示差走査熱量計(DSC)における測定値である。
【0054】
バインダー樹脂の例としては、以下に限定されるものではないが、ウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができるが、上記の中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂を含有しないことが好ましく、ウレタン樹脂を含有することがより好ましい。
【0055】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は、特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。ウレタン樹脂としては例えば、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートからなるウレタン樹脂、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートからなる末端イソシアネートのウレタンプレポリマーと、ポリアミンとを反応させることにより得られるウレタン樹脂が好適に挙げられる。
【0056】
積層体(A)における印刷層が、バインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂がウレタン樹脂を含む場合、ウレタン樹脂はポリエステルポリオール由来の構造単位を有することが好ましい。
ウレタン樹脂が、ポリエステルポリオール由来の構造単位を有することにより、再生プラスチック(B)の極限粘度が好適範囲となりやすい。ウレタン樹脂中のポリエステルポリオール由来の構造単位の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60%質量以上であることがより好ましい。
製造方法としては例えば、特開2013-256551号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0057】
(バインダー樹脂の塩素含有率)
バインダー樹脂の塩素含有率は、バインダー樹脂の質量を基準とした場合の塩素原子の含有率(質量%)である。本発明におけるバインダー樹脂は、塩素含有率が5質量%以下であることが好ましく、0質量%である場合を含む。
塩素含有率が5質量%以下であると、環境安全性に優れ、且つ、遊離塩素が発生し難くなる。上記塩素含有率は、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
【0058】
塩素含有率は、イオンクロマトグラフィー(IC)や、ICP質量分析装置(ICP-MS)等公知の方法を用いて測定することができる。測定機器としては、例えば、ICでは島津製作所製LC-20ADsp、ICP-MSではAgilent Technologies製Agilent 7700xが挙げられる。また、印刷層の塩素含有率は、印刷層を構成する各原料の塩素含有率から、以下の式により簡易的に算出することができる。その他各層においても同様である。
式:バインダー樹脂固形分総質量中の塩素含有率(%)=バインダー樹脂固形分総質量中の塩素の質量/バインダー樹脂の固形分総質量(%)
式:印刷層固形分総質量中の塩素含有率(%)=印刷層固形分総質量中の塩素の質量/印刷層の固形分総質量(%)
【0059】
本発明において塩素含有率は、JISK0127(2013)に準拠して測定されることが好ましい。この測定方法では、燃焼法にて前処理を行ったサンプルをイオンクロマトグラフ法で定量する。
【0060】
(バインダー樹脂の硝化度)
硝化度とは、硝酸エステルのエステル化の度合いを窒素含有量(質量%)で表したものであり、例えば、市販のニトロセルロースは通常10~12質量%である。
積層体(A)の印刷層におけるバインダー樹脂は、硝化度が1質量%以下であることが好ましく、0である場合を含む。硝化度が1質量%以下であることで、NOXガス発生を抑制でき、より安全性の高い再生プラスチック(B)を提供することができる。
バインダー樹脂の硝化度は、より好ましくは0.6質量%以下であり、更に好ましくは0.4質量%以下であり、特に好ましくは0.2質量%以下である。
なお、上記ウレタン樹脂の硝化度としては、0.3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがなお好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。また、後述の樹脂(P)の硝化度としては、0.8質量%以下であることが好ましく、0.6質量%であることがなお好ましく、0.4質量%であることが更に好ましい。
【0061】
(樹脂(P))
積層体(A)の印刷層におけるバインダー樹脂はさらに、ウレタン樹脂以外の樹脂(P)を含むことが好ましい。
樹脂(P)として好ましくは、環構造を有する樹脂であり、より好ましくは、アセタール環構造、芳香族環構造、脂環族環構造及びピラノース環構造からなる群より選ばれる少なくとも一種の環構造を有する樹脂であり、さらに好ましくは、アセタール環構造を有する樹脂である。これらの環構造は二重結合を有していてもよいし、アルキル基又はその他の置換基を有していてもよい。再生プラスチック(B)との相溶性のためである。
【0062】
樹脂(P)は、環構造を有する構造単位を、樹脂(P)の質量を基準として好ましくは40~95質量%の範囲で含み、より好ましくは50~90質量%の範囲で含む。
樹脂(P)が、環構造を有する構造単位を上記範囲で含むと、印刷インキにおける顔料分散が促進される。また、積層体(A)のラミネート強度に優れ、経時劣化を抑制することができる。さらに、耐ブロッキング性に優れるものとなる。
本明細書において、環構造を有する単量体の質量には、メチル基やニトロ基のような環構造に置換もしくは隣接した基も含む。例えば、樹脂(P)がスチレン-アクリル樹脂であり、α-メチルスチレン由来の構造単位が50質量%、アクリルモノマーとしてブチルメタクリレート由来の構造単位が50質量%である場合、環構造の含有率は50質量%である。
【0063】
環構造を有する構造単位の含有率は、以下の式により算出してもよい。
式:環構造を有する構造単位の含有率(質量%)
=環構造を有する単量体の質量×100/樹脂(P)を構成する全単量体の合計質量
【0064】
環構造を有する樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン樹脂、環構造を有するポリエステル樹脂、環構造を有するアクリル樹脂、及びこれらの共重合樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、及びロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものである。更に好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂を含有するものである。
【0065】
(ポリビニルアセタール樹脂)
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド及び/又はホルムアルデヒド等のアルデヒドと反応させてアセタール環化したものであり、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びアセタール環基を含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂は、アセタール環を60~90質量%、ビニルアルコール単位を5~30質量%、酢酸ビニル単位を0.5~10質量%含むことが好ましく、より好ましくは、アセタール環としてブチラール環を有するポリビニルブチラール樹脂である。
ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000である。ポリビニルアセタール樹脂のガラス転移点は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは60~75℃である。
【0066】
(セルロースエステル樹脂)
セルロースエステル樹脂として好ましくは、セルロースアセテートアルキネート樹脂であり、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好適に用いられる。
セルロースエステル樹脂は、アルキル基を有するものが好ましい。上記アルキル基は、好ましくは炭素数10以下のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好適に用いられる。アルキル基は置換基を有していてもよい。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000~200,000であり、より好ましくは10,000~10,000であり、さらに好ましくは15,000~80,000である。セルロースエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは120℃~180℃であり、より好ましくは130~170℃である。
ウレタン樹脂とセルロースエステル樹脂とを併用することで、印刷適性、耐ブロッキング性等が向上する。
【0067】
(ロジン樹脂)
ロジン樹脂とは、ロジン酸(例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸)由来の構造単位を主成分として有するものをいう。ここで主成分とは50質量%以上であることを指す。ロジン酸又はロジン樹脂は水素化されていてもよい。
ロジン樹脂として好ましくは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、及び重合ロジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である。
ロジン樹脂の酸価は、好ましくは350mgKOH/g以下であり、より好ましくは250mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは150mgKOH/g以下である。
一実施形態として、酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ロジン樹脂の軟化点は、好ましくは60~180℃であり、より好ましくは70~150℃である。本明細書において、軟化点とは、環球法による測定値であり、JISK2207に準拠して測定することができる。
【0068】
(ロジンエステル)
ロジン樹脂は、分子量が1,000以下の低分子ポリオールとロジン酸とのエステル縮合樹脂であるロジンエステルが好ましい。低分子ポリオールは、好ましくは、1分子中の水酸基数が2~4(以下、2~4官能と略記する場合がある)であり、分子量が50~500である。このような低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオール等の2官能低分子ポリオール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能低分子ポリオール;エリスリトール、ペンタエリスリトール等の4官能低分子ポリオール;が好適に用いられる。中でも、3官能及び/又は4官能の低分子ポリオールが好ましい。
ロジンエステルの重量平均分子量は、好ましくは500~2,000であり、より好ましくは500~1,500である。
【0069】
(接着剤層)
積層体(A)中の接着剤層は、各層を接着することができれば特に限定されることはなく、ポリオレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、反応性ウレタン接着剤(ドライ接着剤及びノンソル型接着剤を含む)、などが好適に挙げられる。なお、接着層が、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとの反応物である反応性ウレタン接着剤であることが好ましい。印刷層と各層を接着(ラミネートともいう)させる方法は特に限定されず、押出ラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルラミネート法など、従来公知の方法が挙げられる。
【0070】
接着剤層を形成する反応性ウレタン接着剤としては、主剤であるポリオール及び硬化剤であるポリイソシアネートからなる2液型ウレタン接着剤が好まれる。この場合、接着剤層は、このウレタン接着剤の反応物である。ポリオールは、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリオールから選択することができる。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、及びフッ素系ポリオールが挙げられる。中でもポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含むことが好ましい。ポリオールは、ポリオール中の水酸基の一部が酸変性された酸変性物、又はポリオール中の水酸基の一部にジイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したものであってもよい。ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリイソシアネートから選択することができる。ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの変性体が挙げられる。ポリオールは、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。ポリイソシアネートについても、同様である。
【0071】
(中間基材層)
中間基材層の具体例としては、基材層同様、原料としてポリエステル樹脂を主として含むプラスチック基材であることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルムが挙げられ、ガスバリア基材、例えば、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の無機蒸着層を有するプラスチック基材や、有機、無機成分を混合した層を有するプラスチック基材である形態も好ましい。
【0072】
(シーラント)
積層体(A)は、さらにシーラントを有していてもよい。シーラントは、内層側の面が被包装物と直接接触し、被包装物を保護する役割を担う。積層体を袋状とするためにシーラントは最内層がヒートシール性を有していることが好ましい。また、ヒートシール剤を塗工し、ヒートシール性を付与した基材も、シーラントに含まれる。シーラントを構成する材料としては、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0073】
シーラントの厚みは、特に限定されるものではなく、積層体の用途及び被包装物の種類や性質等に応じて適宜設定されるが、通常、10~80μmであることが好ましい。また、パウチ(特にレトルトパウチ)の場合、シーラントの厚みは、20~60μmであることが好ましい。
【0074】
シーラントは、例えば、アルミニウム、シリカ、及びアルミナ等の無機蒸着層、若しくは、有機、無機成分を混合した層を有するシーラントであってもよい
【0075】
(再生プラスチック(B)の極限粘度)
再生プラスチック(B)中のポリエステル樹脂の極限粘度は、積層体(A)の水分量、成形時の温度、冷却スピードなどの、熱履歴に大きな影響を受ける。再生プラスチック(B)の極限粘度は、軟包装体の構成及びリサイクル方法等によるが、好ましくは0.50以上であり、より好ましくは0.56以上であり、更に好ましくは0.62以上である。再生プラスチック(B)の極限粘度が上記の範囲内にあることにより、様々な成形に適した材料を提供することができる。
【0076】
(成形品)
本発明により得られた再生プラスチック(B)を成形することで、成形品を得ることができる。成形方法は特に制限されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、及び圧縮成形が挙げられる。
【実施例0077】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部及び%は、特に注釈の無い場合、質量部及び質量%を表す。
【0078】
(水酸基価)
水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0079】
(酸価)
酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸等を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に記載された方法で測定した。
【0080】
(アミン価)
アミン価は、試料1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同
量の水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070に準拠して測定した。
即ち、試料を0.5~2g精秤した(試料固形分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
(式)アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S[mgKOH/g]
【0081】
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW2500
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW3000
東ソー株式会社製TSKgelSuperAW4000
東ソー株式会社製TSKgelguardcolumnSuperAWH
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0082】
(ガラス転移点(Tg))
ガラス転移点は、示差走査熱量測定測定(DSC)により求めた。測定は、株式会社リガク製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分の条件で行った。DSC曲線におけるガラス転移に基づくベースラインシフトの中点(変曲点)をガラス転移点とした。
【0083】
(塩素含有率)塩素含有率は、JIS K0127(2013)に準拠して測定した。即ち、透明基板上に、インキ又はバインダー樹脂をそれぞれ2.0μmになるように塗布し塗膜を形成した。80℃で乾燥させ、0.5g削り取った。削り取った塗膜を燃焼法にて前処理を行い、得られたサンプルの塩素含有量を、イオンクロマトグラフィーで定量し、塩素含有率を求めた。
【0084】
(極限粘度の測定)
極限粘度は、JIS K 7367-5に準拠して測定した。極限粘度は、積層体(A)0.1g、0.3g、及び0.5gを、それぞれ、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlによって溶解し、固形分を遠心分離によって除去した後、各溶液の30℃における粘度を測定し、定法に従い、求めた。上記積層体(A)の極限粘度の測定においては、積層体(A)の辺の長さが5mm~10mmになるよう破砕し、実施した。
【0085】
(積層体(A)の水分量測定方法)
乾燥させた積層体(A)の粉砕物の水分量測定方法は、JIS K 0068(2001) に準拠して測定した。下記に測定機器及び試薬を示す。
測定機器:カールフィッシャー水分測定計MKC-710D(京都電子工業社製)
:水分気化装置ADP-611(京都電子工業社製)
カールフィッシャー試薬:ケムアクア水標準 1(京都電子工業社製)
【0086】
<ウレタン樹脂の合成>
(合成例1)ウレタン樹脂PU1
3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール(以下「MPD/SA」)100部、1,4-ブタンジオール(以下「1,4-BD」)1部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)28.5部及び酢酸エチル32.1部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソホロンジアミン(以下「IPDA」)11.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(以下「AEA」)1.0部、ジブチルアミン(以下「DBA」)1.0部及び混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))300.0部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。
80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価6.5mgKOH/g、水酸基価3.8mgKOH/g、重量平均分子量50,000のウレタン樹脂PU1の溶液を得た。ウレタン樹脂PU1の塩素含有率は0質量%である。また、ウレタン樹脂PU1において、ポリエステルポリオール由来の構造単位は70質量%である。
【0087】
(合成例2)ウレタン樹脂PU2
3-メチル1,5ペンタンジオール(MPD)とセバシン酸(SA)の縮合物である、数平均分子量2,000のポリエステルポリオール30部、数平均分子量1,000のポリプロピレングリコール(PPG1000)70部、1,4-ブタンジオール3部、イソホロンジイソシアネート42.0部、及び、酢酸エチル35.5部を混合して、窒素雰囲気下で90℃、5時間反応させて、末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。
次いで、イソホロンジアミン16.0部、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン1.0部、ジブチルアミン1.0部、及び、混合溶剤1(酢酸エチル/イソプロパノール=70/30(質量比))338.0部を攪拌混合し、得られた末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを40℃で徐々に添加した。
80℃で1時間反応させ、固形分30質量%、アミン価5.2mgKOH/g、水酸基価3.3mgKOH/g、重量平均分子量40,000のウレタン樹脂PU2の溶液を得た。ウレタン樹脂PU2の塩素含有率は0質量%である。また、ウレタン樹脂PU2において、ポリエステルポリオール由来の構造単位は18質量%である。
【0088】
下記インキ調整例において、以下のものを用いた。
・PVB溶液:ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%含むポリビニルブチラール樹脂(ガラス転移点70℃、重量平均分子量50,000、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)の酢酸エチル/イソプロパノール=1/1混合溶剤による固形分30%溶液
・塩化ビニル-酢酸ビニル溶液:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製 ソルバインTA3、塩素含有率47.1質量%、硝化度0質量%)の固形分30%酢酸エチル溶液
【0089】
<インキの調製>
[グラビアインキ調製例1]グラビアインキX1
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液15部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX1を得た。
【0090】
[グラビアインキ調製例2]グラビアインキX2
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液10部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX2を得た。
【0091】
[グラビアインキ調製例3]グラビアインキX3
ウレタン樹脂PU1溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液8部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液2部、C.I.ピグメントイエロー14(塩素含有率10.8質量%、硝化度0質量%)10部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX3を得た。
【0092】
[グラビアインキ調製例4]グラビアインキX4
ウレタン樹脂PU2溶液40部、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)溶液15部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキX4を得た。
【0093】
[グラビアインキ調整例5]グラビアインキY1
ウレタン樹脂PU1溶液35部、塩化ビニル-酢酸ビニル溶液(PVC)溶液20部、C.I.ピグメントブルー15:3(トーヨーカラー社製、製品名:LIONOL BLUE FG-7330、塩素含有率0質量%、硝化度0質量%)5部、シリカ粒子(親水性シリカ、平均粒子径3.0μm、比表面積300m2/g)0.8部、混合溶剤2(n-プロピルアセテート/イソプロパノール=70/30(質量比))36部を混合し、ビーズミルで20分間分散して顔料分散体を得た。得られた顔料分散体に、塩素化ポリプロピレン溶液0.8部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121.0℃)3.5部、及び水1.5部を攪拌混合し、有機溶剤系グラビアインキY1を得た。
【0094】
<積層体(A)の製造>
(積層体(A)の製造1)積層体A1
グラビアインキX1を、酢酸エチル/イソプロピルアルコール混合溶剤(質量比70/30)で、ザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)に対し、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にてこの順で印刷し、50℃にて乾燥し、PET基材/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「TM-570V/CAT-RT37」)を塗工、80℃にて乾燥し、この上に、ライン速度40m/分にて、ヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で3日間保温し、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成である積層体A1を得た。印刷層、接着剤層の乾燥後塗布量は2.5g/m2とした。
【0095】
(積層体(A)の製造2)積層体A2
グラビアインキX1をグラビアインキX2に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A2を得た。
【0096】
(積層体(A)の製造3)積層体A3
グラビアインキX1をグラビアインキX3に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A3を得た。
【0097】
(積層体(A)の製造4)積層体A4
グラビアインキX1をグラビアインキX4に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A4を得た。
【0098】
(積層体(A)の製造5)積層体A5
接着剤を、東洋モートン社製「TM-340V/CAT-29B」に変更し、保温条件を40℃で1日間に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A5を得た。
【0099】
(積層体(A)の製造6)積層体A6
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、PET基材/印刷層を得た。次いで、ノンソルラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「EA-N373 A/B」)を塗工し、この上に、ライン速度40m/分にて、ヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で1日間保温し、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成である積層体A6を得た。接着剤層の乾燥後塗布量は2.0g/m2とした。
【0100】
(積層体(A)の製造7)積層体A7
基材を片面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚み25μ)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A7を得た。
【0101】
(積層体(A)の製造8)積層体A8
基材をマット調タイプのポリエチレンテレフタレート(マットPET)(厚み12μ)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、マットPET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A8を得た。
【0102】
(積層体(A)の製造9)積層体A9
基材を透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(凸版印刷社製「GLPET」)フィルム(厚み12μ)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、GLPET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体A9を得た。尚、印刷は透明蒸着面に行った。
【0103】
(積層体(A)の製造10)積層体A10
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、PET基材/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「TM-570V/CAT-RT37」)を塗工、80℃にて乾燥し、この上に、ライン速度40m/分にて、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VMPET)フィルム(厚み12μm)のアルミ蒸着面を貼り合わせ、PET基材/印刷層/接着剤層/VMPET基材構成を得た。次に、当該VMPET基材のPET面に、同様に上記接着剤を塗工、乾燥し、ヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、PET基材/印刷層/接着剤層/VMPET基材/接着剤層/PET基材である積層体A10を得た。各接着剤層の乾燥後塗布量は2.5g/m2とした。
【0104】
(積層体(A)の製造11)積層体A11
中間基材を透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(凸版印刷社製「GLPET」)フィルム(厚み12μ)に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/GLPET基材/接着剤層/PET基材構成の積層体A11を得た。
【0105】
(積層体(A)の製造12)積層体A12
積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、PET基材/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体の印刷層上に、接着剤(東洋モートン社製「TM-570V/CAT-RT37」)を塗工、80℃にて乾燥し、この上に、ライン速度40m/分にて、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(VMPET)フィルム(厚み12μm)のVM面を貼り合わせ、PET基材/印刷層/接着剤層/VMPET基材構成を得た。次に、当該VMPET基材のPET面に、同様にヒートシール剤(東洋モートン社製「TM-4813」)を塗工、80℃にて乾燥し、PET基材/印刷層/接着剤層/VMPET基材/ヒートシール剤である積層体A12を得た。接着剤層、ヒートシール剤層の乾燥後塗布量は2.5g/m2とした。
【0106】
(積層体(A)の製造13)積層体A13
基材を両面コロナ処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み12μm)に変更し、積層体A1の製造工程中の印刷工程と同様の手順にて、PET基材/印刷層を得た。次いで、ドライラミネート機を用いて、この積層体のPET基材面に、接着剤(東洋モートン社製「TM-570V/CAT-RT37」)を塗工、80℃にて乾燥し、この上に、ライン速度40m/分にて、ヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み30μm)を貼り合わせ、40℃で3日間保温し、印刷層/PET基材/接着剤層/PET基材構成である積層体A13を得た。接着剤層の乾燥後塗布量は2.5g/m2とした。
【0107】
(積層体(A)の製造14)積層体S1
グラビアインキX1をグラビアインキY1に変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/PET基材構成の積層体S1を得た。
【0108】
(積層体(A)の製造15)積層体S2
基材をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み25μm)、シーラント基材を無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムに変更した以外は、積層体A1の製造工程と同様にして、PET基材/印刷層/接着剤層/CPP基材構成の積層体S2を得た。
【0109】
<再生プラスチック(B)の製造>
(実施例1)再生プラスチックB1
積層体A1を2cm×2cmのサイズに裁断し、水洗した。粉砕物を120℃で、4時間乾燥して、水分量が0.05質量%となるまで、水分除去を行い、乾燥物を得た。粉砕物を単軸押出機に投入し、スクリュー回転数250rpm、280℃で溶融、混錬し、樹脂組成物を得た。次に、150メッシュのフィルターを使用し、押出装置の吐出部から、圧力4MPaで押し出した。その後、直ぐにペレタイザーでカットし、冷水に浸水させて冷却した。このようにして、積層体A1からリサイクルされた再生プラスチック(B)であるペレットB1を得た。
【0110】
(実施例2~17)再生プラスチックB2~B17
表1の条件に従い、再生プラスチックB1の製造工程にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックであるペレットB2~B17をそれぞれ得た。尚、再生プラスチックB17については、粉砕物の単軸押出機の投入時に、改質剤であるポリカルボジイミド(日清紡ケミカル社製「カルボジライトLA1」)を添加した。
【0111】
(比較例1~3)再生プラスチックB18~B20
表1の条件に従い、再生プラスチックB1の製造工程にて、積層体からリサイクルされた再生プラスチックであるペレットB18~B20をそれぞれ得た。
【0112】
<再生プラスチックBの極限粘度測定>
再生プラスチックB1~B20のペレットそれぞれについて、JIS K 7367-5に準拠して、極限粘度を測定した。極限粘度は、再生プラスチックBのペレット0.1g、0.3g、及び0.5gを、それぞれ、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlによって溶解し、固形分を遠心分離によって除去した後、各溶液の30℃における粘度を測定し、定法に従い、求めた。評価結果を表1に示す。
A(良):0.62以上
B(可):0.56以上~0.62未満、
C(可):0.50以上~0.56未満
D(不良):0.50未満
【0113】
<フィルム成形体の外観>
再生プラスチックB1~B20のペレットを、それぞれTダイ押出機を用いて、280℃で押出成形し、厚み50μmのフィルム状の成形体を作製した。得られたフィルムについて、0.5m2あたりの目視で判別可能な異物、発砲の個数をカウントし、以下の基準で評価した。尚、再生プラスチックB20は、成形に必要な溶融粘度を得ることができず、成形不能であった。評価結果を表1に示す。
A(良):異物、発砲の数が50個未満、
B(可):異物、発砲の数が50個以上100個未満、
C(可):異物、発砲の数が100個以上200個未満、
D(不良):異物、発砲の数が200個以上。
【0114】
【0115】
上記結果から、本発明の製造方法により得られた、再生プラスチックを用いた成形体は、異物及び発泡のない又は少ない高品質なリサイクル品を提供できることが分かった。積層体中の塩素含有率が、0.4質量%以下であることで、再生プラスチックのペレット内の気泡量が抑制され、ペレット冷却後の水分含有量を低下させたと推察される。それに加え、水分及び塩化水素に起因した、ポリエステルの加水分解が抑制できたため、成形体が高い分子量を維持できたと推察される。
また、積層体(A)の基材の種類の選定や、加熱溶融温度、押出装置の先端排出部の樹脂圧力を制御することで、不溶物、焼け及び炭化物などの異物の発生が抑制され、加水分解、熱分解による分子量の低下を抑制し、射出成形時の流動性を均一にしたと推察される。