(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125008
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】養殖籠洗浄装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/60 20170101AFI20230831BHJP
A01K 61/54 20170101ALI20230831BHJP
【FI】
A01K61/60 324
A01K61/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028911
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】300021002
【氏名又は名称】株式会社森機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】森 光典
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA25
2B104CG11
(57)【要約】
【課題】 ネットコンベアの摩耗を低減させることができる構造を有する養殖籠の洗浄装置を提供する。
【解決手段】 養殖籠洗浄装置は、養殖籠搬送部と、養殖籠搬送部によって搬送される養殖籠に対して洗浄水を噴射する洗浄水噴射部とを備える。養殖籠搬送部は、無端コンベアと、無端コンベアを支持するフレームとを有する。無端コンベアは、複数の養殖籠を載置することができるように略水平に走行する籠載置部分を持つ。フレームは、籠載置部分に対応する位置において、無端コンベアの走行方向の長さを持ち、無端コンベアの幅方向に並置された、複数のレールを有する。複数のレールは、籠載置部分の少なくとも中間部分に対応する範囲において、無端コンベアの幅方向に移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝類の養殖に用いられる養殖籠を洗浄水で洗浄するための養殖籠洗浄装置であって、
養殖籠搬送部と、
前記養殖籠搬送部によって搬送される養殖籠に対して洗浄水を噴射する洗浄水噴射部と
を備え、
前記養殖籠搬送部は、
複数の養殖籠を載置することができるように略水平に走行する籠載置部分を持つ無端コンベアと、
前記無端コンベアを支持するように構成されており、前記籠載置部分に対応する位置において、前記無端コンベアの走行方向の長さを持つ複数のレールが前記無端コンベアの幅方向に並置された、フレームと
を有し、
前記複数のレールは、前記籠載置部分の少なくとも中間部分に対応する範囲において前記幅方向に移動可能である
ことを特徴とする養殖籠洗浄装置。
【請求項2】
前記複数のレールは、
前記洗浄水噴射部に対向する範囲において、並置されたレールが一体的に前記幅方向に移動する可動レール部と、
前記可動レール部に対して前記無端コンベアの走行方向上流側に位置する第1の固定レール部と、
前記可動レール部に対して前記無端コンベアの走行方向下流側に位置する第2の固定レール部と、
からなる
請求項1に記載の養殖籠洗浄装置。
【請求項3】
前記第1の固定レール部は、前記第2の固定レール部より長い、請求項2に記載の養殖籠洗浄装置。
【請求項4】
前記可動レール部を移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、前記フレームに回転可能に支持されたボルトと、前記可動レール部に連結されるとともに、前記ボルトと螺着された連結部材とを有し、前記ボルトの回転により螺着された前記連結部材が前記ボルトの長さ方向に移動することによって、前記可動レール部を前記幅方向に移動させる、
請求項2又は請求項3に記載の養殖籠洗浄装置。
【請求項5】
前記可動レール部を移動させる駆動部をさらに備え、
前記駆動部は、モータと、前記モータの運動を直線運動に変換するクランク機構とを有し、
前記モータの作動により前記クランク機構が前記可動レール部を移動させる、
請求項2又は請求項3に記載の養殖籠洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貝類の養殖に用いられる養殖籠を洗浄する装置に関し、より具体的には、金属製の網からなるコンベアの摩耗を防止する機構を備える養殖籠洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝の養殖においては、ザブトン、籠丸籠、ポケット籠などといった種々の養殖籠が用いられる。養殖籠は、ホタテ貝の生育段階に応じて、大きさや形、網目のサイズが異なるものが用いられる。海洋で用いられる籠養殖には、海藻や、カキ、フジツボなどといった他の生物などの異物が付着する。養殖籠に異物が付着すると、通水性を阻害するため、ホタテ貝への酸素や餌の供給に悪影響を与えるおそれがある。したがって、養殖籠に付着した異物を定期的に除去することが必要であり、そのために、必要に応じて、陸上又は船上で養殖籠の洗浄が行われる。
【0003】
養殖籠の洗浄装置として、例えば特許文献1に開示される技術を用いることができる。なお、特許文献1の図面では被洗浄物として貝が描かれているが、この装置においてコンベア上に養殖籠を載置することによって、養殖籠を洗浄することができる。特許文献1の洗浄装置は、2つのローラ間に渡され、異物が付着した養殖籠が載置された状態で走行する無端ネットコンベアと、無端ネットコンベア上の養殖籠に高圧水を噴射する回転ノズルとを備える。特許文献1には記載されていないが、この洗浄装置の無端ネットコンベアとして、ステンレス線を螺旋状に曲げて作製される複数のスパイラル線と、隣接するスパイラル線を連結する波線状又は直線状の複数の力骨線とによって構成されるネットコンベアが用いられることが好ましい。この装置では、回転するノズルからの高圧水が養殖籠に至近距離で噴射され、この高圧水が養殖籠を下向きに押さえつけ、さらに養殖籠の下に位置するネットコンベアに大きな圧力が与えられる。
【0004】
特にホタテ養殖において、近年、養殖規模が拡大していることから、使用される養殖籠の数が増え、それに伴って洗浄される籠の量も増加している。増加する養殖籠の洗浄効率を上げるために、洗浄装置の高圧水の圧力や水量を増大させたり、ネットコンベアの走行速度を早めたりすることが行われている。高圧水の圧力や洗浄水の量の増大、ネットコンベアの走行速度増加により、ネットコンベアの摩耗が問題となっている。
【0005】
最近の洗浄装置では、剛性の低いネットコンベアを支持する目的で、ネットコンベアにおける養殖籠の載置面とは反対の面側に、ネットコンベアの走行方向に沿った長さを有する複数の樹脂レールが固定されるが、圧力、洗浄水量、及びコンベア速度の増大の結果として、樹脂レールと接触する部分(この部分は常に同じ位置となる)において集中的にネットコンベアが摩耗し、切断される現象が生じている。スパイラル線を有するネットコンベアは、螺旋状の曲がりに伴うスパイラル線の捻じれのために、樹脂レールと面ではなく点で接触するため、そうした接触点における摩耗が他の部分と比べて早く進行して薄くなり、振動によって切断される現象が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-115332号公報
【特許文献2】特許第6901763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題を解決するため、従来技術においては、摩擦力を分散させるために樹脂レールの本数を増やしたり樹脂レールの幅を広げたりすることが行われている。しかし、本数を増やしたりレール幅を広くすると、樹脂レールの上面での反射水が多くなるため、養殖籠に向かう高圧水が反射水によって邪魔されて洗浄効果が低下したり、洗浄装置の出入口方向への洗浄汚水の噴き出しが増大し、作業者に降りかかるなどの問題がある。
【0008】
また、ネットコンベアのスパイラル線の線径を太くすることによって摩耗による寿命を長くすることも行われているが、摩耗を防止する効果は限定的であり、太いステンレス線の採用による重量の増加及びコストの上昇が問題となる。
【0009】
本発明は、上記の課題に対処するものであり、ネットコンベアの摩耗を低減させることができる構造を有する養殖籠の洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、貝類の養殖に用いられる養殖籠を洗浄水で洗浄するための養殖籠洗浄装置を提供する。養殖籠洗浄装置は、養殖籠搬送部と、養殖籠搬送部によって搬送される養殖籠に対して洗浄水を噴射する洗浄水噴射部とを備える。養殖籠搬送部は、無端コンベアと、無端コンベアを支持するフレームとを有する。無端コンベアは、平行に配置された2本の回転ローラに渡し掛けられており、2本の回転ローラの間に、複数の養殖籠を載置することができるように略水平に走行する籠載置部分を持つ。フレームは、籠載置部分に対応する位置において、無端コンベアの走行方向の長さを持ち、無端コンベアの幅方向に並置された、複数のレールを有する。複数のレールは、籠載置部分の少なくとも中間部分に対応する範囲において、無端コンベアの幅方向に移動可能である。
【0011】
好ましくは、複数のレールは、無端コンベアの籠載置部分の走行方向に3分割されることが好ましい。具体的には、複数のレールは、洗浄水噴射部に対向する範囲において、並置されたレールが一体的に無端コンベアの幅方向に移動する可動レール部を有することが好ましい。可動レール部に対して無端コンベアの走行方向上流側には、第1の固定レール部が配置されることが好ましい。また、可動レール部に対して無端コンベアの走行方向下流側には、第2の固定レール部が配置されることが好ましい。第1の固定レール部は、第2の固定レール部より長くすることができる。
【0012】
養殖籠洗浄装置は、可動レール部を移動させる駆動部をさらに備える。一実施形態においては、駆動部は、フレームに回転可能に支持されたボルトと、可動レール部に連結されるとともに、ボルトと螺着された連結部材とを有するものとすることができる。この実施形態においては、ボルトの回転により螺着された連結部材をボルトの長さ方向に移動させることによって、可動レール部が無端コンベアの幅方向に移動する。
【0013】
別の実施形態においては、駆動部は、モータと、モータの運動を直線運動に変換するクランク機構とを有するものとすることができる。この実施形態においては、モータの作動によりクランク機構が可動レール部を移動させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高圧水によるコンベアへの荷重が大きくなる洗浄水噴射部に対応する範囲において、コンベアを支持するレールをコンベアの幅方向に移動させることによって、レールがコンベアの常に同じ位置に接触することを防止できるため、コンベアの摩耗位置を分散させ、寿命を大幅に長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による、養殖籠搬送部を有する養殖籠洗浄装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、複数のレールを有する養殖籠搬送部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態による可動レール部、固定レール部、及び可動レール部の駆動部を示す分解斜視図である。
【
図4】可動レール部の駆動方法の例を示す模式図であり、(a)は手動で動作させる駆動部を有する形態であり、(b)は自動で動作する駆動部を有する形態である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
(養殖籠洗浄装置の概要)
図1は、本発明の一実施形態による養殖籠洗浄装置1を示す斜視図である。養殖籠洗浄装置1(以下、装置1という。)は、洗浄対象物である複数の養殖籠Kを搬送する養殖籠搬送部2と、養殖籠搬送部2によって搬送される養殖籠Kに対して、養殖籠Kを洗浄するための高圧洗浄水を噴射する洗浄水噴射部3とを備える。
【0018】
養殖籠搬送部2は、好ましくは4つの脚212を有するフレーム21を備える。フレーム21の長さ方向両端部には、それぞれ回転ローラ211a、211bが設けられている。2本の回転ローラ211a、211bの間には、無端のネットコンベア23が渡し掛けられている。ネットコンベア23は、2本の回転ローラ211a、211bの少なくとも一方を駆動ローラとすることによって走行させることができる。あるいは、ネットコンベア23は、ネットコンベア23の一方又両方の側端にチェン232を取り付け、チェン232を走行させる駆動機構(図示せず)によって、走行させることもできる。
【0019】
ネットコンベア23は、既存の金属製網状コンベアを用いることもできるが、出願人の出願にかかる特願2021-205810で提案されているバランスネットを用いることが好ましい。このバランスネットは、金属製(好ましくはステンレス製)の網を用いて構成され、金属線を螺旋状に曲げて作製される複数のスパイラル線と、隣接するスパイラル線を連結する波線状又は直線状の複数の力骨線とによって構成される。ネットコンベア23は、典型的には、幅が1m~1.2m、長さが6m程度である。
【0020】
ネットコンベア23の回転ローラ211a、211bの間(ネットコンベア23の洗浄面側)は、略水平に走行する籠載置部分231であり、洗浄対象である養殖籠Kは、籠載置部分231の上に載置されて搬送される。ネットコンベア23の籠載置部分231の長さは、典型的には3m程度であるが、これに限定されるものではない。ネットコンベア23の籠載置部分231の下には、籠載置部分231に概ね対応する位置に、レール24が配置される。
【0021】
洗浄水噴射部3は、ネットコンベア23の籠載置部分231の一部(籠洗浄部)の上方に位置するように設けられている。
図1においては、洗浄水噴射部3は、回転ノズルユニット31を有する。回転ノズルユニット31は、放射状に延びる複数のアームと、複数のアームのそれぞれに設けられたノズルとを各々が有する回転体を備えるものとすることができる。回転ノズルユニット31から噴射された洗浄水は、ネットコンベア23の上の養殖籠Kに当たり、養殖籠Kの異物を除去することができる。回転ノズルユニット31として、
図1に示されるものに限定されず、例えば特許文献1や特許文献2に記載のノズルを、必要に応じて適宜用いることができる。
【0022】
養殖籠Kの異物を確実かつ素早く除去できるように、近年は洗浄水の圧力及び流量が高くなっており、最新の回転ノズルユニット31は、例えば、毎分400Lの洗浄水を5MPaの圧力で噴射できるものが用いられるようになっている。このような高圧の洗浄水が養殖籠Kを下向きに押さえつけることや、処理量を増大させるためにネットコンベアの走行速度が高速になってきたことによって、ネットコンベアとその下のレールとの摩擦によるネットコンベアの摩耗が問題となっている。本発明は、こうしたレールとの摩擦によるネットコンベアの摩耗を低減させるものである。
【0023】
回転ノズルユニット31は、洗浄水の飛び散りを防ぐためにケース32に収容され、回転ノズルユニット31には、ケース32の天井から突出するように設けられた洗浄水供給管33から高圧洗浄水が供給される。ケース32は、概ねネットコンベア23の籠洗浄部に対応する位置に設けられる。ケース32は、養殖籠Kの入口部32a及び出口部32bを有する。入口部32a及び出口部32bは、洗浄水がケース32の外に吹き出さないように、ビニール板、ゴム板などで作製されたカーテン(図示せず)によって塞がれることが好ましい。ケース32のネットコンベア走行方向の長さは、典型的には1m~1.2mであり、幅はフレーム21の幅に対応することが好ましい。
【0024】
(養殖籠搬送部の詳細)
図2は、本発明の一実施形態による、複数のレール24を有する養殖籠搬送部2を示す斜視図である。また、
図3は、本発明の一実施形態による可動レール部241、第1及び第2の固定レール部242、243、及び、可動レール部241の駆動部25を示す分解斜視図である。
図2には示されていないが、フレーム21の両端部には、上述のとおり回転ローラ211a、211bが設けられ、それらの間には、無端のネットコンベア23が渡し掛けられる。洗浄対象である養殖籠Kは、回転ローラ211a、211bの間の籠載置部分231の上に載置されて搬送され、籠載置部分231の下には、レール24が配置される。
【0025】
フレーム21は、ネットコンベア23の幅方向の両端部に、平行に配置された2本のサイドフレーム213a、213bを有する。2本のサイドフレーム213a、213bの内側には、断面L字形状の押さえ金具215a、215bが、互いに対向する位置関係で設けられている。ネットコンベア23の籠載置部分231の幅方向両端は、押さえ金具215a、215bの下辺の下面と、サイドフレーム213a、213bの内側に対向する位置関係で設けられたサイドレール213ar、213brとの間を走行するようになっている。
【0026】
サイドフレーム213aと213bとの間には、これらと直交するように4本の中間フレーム214a~214dが渡されている。中間フレーム214aは、ネットコンベア23の走行方向の上流側においてサイドフレーム213a、213bの端部近くに配置され、中間フレーム214dは、ネットコンベア23の走行方向の下流側においてサイドフレーム213a、213bの端部近くに配置される。中間フレーム214bは、中間フレーム214aと214dとの中間より走行方向の上流側に配置され、中間フレーム214cは、中間フレーム214aと214dとの中間より走行方向の下流側に配置される。中間フレーム214aと214bとの間隔は、中間フレーム214cと214dとの間隔より広いことが好ましい。両者の間隔については、レールの詳細の記載において後述される。
【0027】
中間フレーム214aと214dとの間において、ネットコンベア23の籠載置部分231の下に、複数のレール24が配置される。複数のレール24は、ネットコンベア23の走行方向の長さを持ち、ネットコンベア23の幅方向に並置されている。ネットコンベア23の籠載置部分231の下に複数のレール24が配置されていることによって、複数のレール24が籠載置部分231を支持し、洗浄水噴射部3からの高圧洗浄水が養殖籠Kを下向きに押し付けていてもネットコンベア23を滑らかに走行させることができる。
【0028】
一実施形態において、複数のレール24は、ネットコンベア23の籠載置部分231の走行方向に3分割されることが好ましい。具体的には、中間フレーム214aと214bとの間に第1のレール部242を設け、中間フレーム214cと214dとの間に第2のレール部243を設け、第1のレール部242と第2のレール部243との間に第3のレール部241を設けることが好ましい。第3のレール部241は、籠載置部分231の中間部分に対応する範囲とすることができ、より好ましくは、回転ノズルユニット31に対向する範囲、すなわち、回転ノズルユニット31から噴射される高圧洗浄水の到達範囲に対応する部分(籠洗浄部)とすることができる。
【0029】
第1のレール部242においては、一方の端部が中間フレーム214aに固定され、他方の端部が214bに固定された複数のレール242aが、互いに間隔をもってネットコンベア23の幅方向に並置されている。すなわち、第1のレール部242は、複数のレール242aの端部が中間フレーム214a、214bに固定された第1の固定レール部242である。第1の固定レール部242は、第3のレール部241に対してネットコンベア23の走行方向上流側に位置する入口側のレール部であり、異物が付着した養殖籠Kが洗浄水噴射部3に入る前に養殖籠Kを広げるスペースとして利用することができる。第1の固定レール部242の長さは、典型的には1m程度であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
第2のレール部243においては、一方の端部が中間フレーム214cに固定され、他方の端部が214dに固定された複数のレール243aが、互いに間隔をもってネットコンベア23の幅方向に並置されている。すなわち、第2のレール部243は、複数のレール243aの端部が中間フレーム214c、214dに固定された第2の固定レール部243である。第2の固定レール部243は、第3のレール部241に対してネットコンベア23の走行方向下流側に位置する出口側の固定レール部であり、洗浄水噴射部3において洗浄が終了した養殖籠Kをたたんだり、重ねたりするスペースとして利用することができる。第2の固定レール部243の長さは、限定されるものではなく、第1の固定レール部242より短くてよい。
【0031】
第1の固定レール部242と第2の固定レール部243との間に位置する第3のレール部241は、可動レール部241である。可動レール部241は、概ね回転ノズルユニット31に対向する範囲に配置される、養殖籠Kの洗浄スペース(籠洗浄部)に対応する部分(すなわち、回転ノズルユニット31から噴射される高圧洗浄水の到達範囲に対応する部分)である。可動レール部241は、複数のレール241aがネットコンベア23の幅方向に一体的に移動するように構成されている。
【0032】
可動レール部241は、ネットコンベア23の幅方向に間隔を持って並置された複数のレール241aと、複数のレール241aの両端部がそれぞれ固定され、幅方向の長さを有する一対のベース部材241b1、241b2とを有する。ベース部材241b1は、中間フレーム214bの長さより短く、中間フレーム214bに沿って摺動しながらその長さ方向に移動可能である。同様に、ベース部材241b2は、中間フレーム214cの長さより短く、中間フレーム214cに沿って摺動しながらその長さ方向に移動可能である。したがって、可動レール部241は、中間フレーム214b、214cの長さ方向に沿って、ネットコンベア23の幅方向に移動可能である。
【0033】
ベース部材241b1、241b2が上に載る中間フレーム214b、214cには、それらの長さ方向に沿って3ヶ所に長孔hが設けられている。一方、ベース部材241b1、241b2には、それらの下面から突出するように3つのピンpが設けられており、3つのピンpは、3つの長孔に差し込まれ、長孔の内部を移動するようになっている。したがって、長孔hの長さによって、可動レール部241の幅方向の移動距離を規定することができる。
【0034】
可動レール部241、第1の固定レール部242及び第2の固定レール部243のレール241a、242a、243aの本数は、
図2及び
図3ではいずれも6本であるが、これに限定されるものではなく、本発明の効果を奏するものである限り、ネットコンベア23の幅に応じて、5本以下であっても7本以上であってもよい。また、レール241a、242a、243aの本数は、可動レール部241、第1の固定レール部242及び第2の固定レール部243のいずれか1つにおいて本数が異なっていてもよく、3つすべての本数が異なっていてもよい。
【0035】
可動レール部241は、上述のように、回転ノズルユニット31に対向する範囲における複数のレール241aが、ネットコンベア23の幅方向に一体的に移動するように構成されている。別の実施形態においては、ネットコンベア23の走行方向に3分割されることなく、各々が籠載置部分231の全長にわたって連続する複数のレール24を用い、このように連続する複数のレール24の全体が一体的にネットコンベア23の幅方向に移動するように構成してもよい。
【0036】
可動レール部の例として、例えば幅が1mのネットコンベアを用いた場合には、レール間隔を110m、レール本数を6本とすることがより好ましく、幅が1.2mのネットコンベアを用いた場合には、レール間隔を140m、レール本数を6本とすることがより好ましい。レール間隔をこれらより狭くしてレールの本数を多くすると、洗浄水がレールの上面で飛び散ってケースの入口部又は出口部から洗浄汚水が噴き出すことがある。逆に、レール間隔をより広くして本数を減らすと、洗浄水の圧力によってネットコンベアがレール間で下向きに変形し、ネットコンベアの摩耗が増大するおそれがある。可動レール部の長さ(ネットコンベアの走行方向の長さ)は、籠載置部分の長さが3mの場合には、1.2m~1.3mであることが好ましい。また、レールとして幅25mmの樹脂レールを用い、可動レール部の移動距離を60mmとした場合には、ネットコンベアの幅85mmの広い範囲がレールとの接触面となり、レールが移動せず常にネットコンベアの同じ位置に接触する従来の装置と比較して、ネットコンベアの交換時間が約3倍になることが、出願人の実験により確認されている。
【0037】
(可動レール部の駆動方法)
図4は、可動レール部の駆動方法の例を示す模式図である。可動レール部241の移動は、手動で行われるようにしてもよく、自動で行われるようにしてもよい。可動レール部241の手動による移動機構として、
図2~
図4(a)に示される駆動部25を用いることができる。駆動部25は、作業者が手で回転させることができるようにノブが一方の端部に設けられたノブ付きボルト25aを有する。ノブ付きボルト25aは、サイドフレーム231aの外方に突出するとともに、他方の端部がサイドフレーム213aに回転可能に支持される。
【0038】
駆動部25は、さらに、可動レール部241に固定される連結部材25bを有する。連結部材25bは、サイドフレーム213aと平行な方向の長さを有する基部25b1と、基部25b1の長さ方向両端部と可動レール部241とを連結する連結部25b2とを有する。基部25b1の長さ方向の概ね中間部には、ノブ付きボルト25aが挿通され、そのネジと螺着されるネジが形成されたネジ孔25b3が設けられている。したがって、ノブ付きボルト25aを回転させることによって、その回転方向に応じて基部25b1がノブ付きボルト25aの長さ方向に移動し、連結部25b2を介して基部25b1と連結された可動レール部241が、ノブ付きボルト25aの長さ方向、すなわちネットコンベア23の幅方向に移動する。
【0039】
可動レール部241は、例えば、洗浄装置を使用するごとにノブ付きボルト25aを適宜回転させることを繰り返し、一方向に長孔hの長さによって規定された距離だけ可動レール部241が移動したら、同様に洗浄装置を使用するごとにノブ付きボルト25aを逆回転させて反対方向に移動させることを繰り返すことによって、ネットコンベア23の幅方向に移動させることができる。これにより、ネットコンベア23の同じ位置が接触し続けないようにレール24を移動させることができるため、ネットコンベア23の集中的な摩耗を防止することができる。
【0040】
可動レール部241の自動移動機構として、
図4(b)に示される駆動部26を用いることもできる。駆動部26は、モータ26aと、モータ26aの回転運動を直線運動に変換するクランク機構とを有する。クランク機構は、モータ26aの回転軸に取り付けられた円盤26bと、円盤26bの外周近くに一方の端部が回転可能に取り付けられたロッド26cとを有する。ロッド26cの他方の端部は、可動レール部241と連結される連結部材26dに回転可能に取り付けられる。したがって、モータ26aの回転運動が直線運動に変換され、その直線運動によって可動レール部241がネットコンベア23の幅方向に移動する。
【0041】
好ましくは、モータ26aとして高減速比のモータを使用するとともに、タイマーによってモータ26aが駆動するように構成することによって、洗浄装置の使用中に一定の時間間隔でクランク機構の円盤26bが所定角度だけ回転し、可動レール部241がネットコンベア23の幅方向に少しずつ移動するように設定することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 養殖籠洗浄装置
2 養殖籠搬送部
21 フレーム
211a、211b 回転ローラ
212 脚
213a、213b サイドフレーム
213ar、 213br サイドレール
214a、214b、214c、214d 中間フレーム
215a、215b 押さえ金具
h 長孔
23 ネットコンベア
231 籠載置部分
232 チェン
24 レール
241 可動レール部
241a レール
241b1、241b2 ベース部材
p ピン
242 第1のレール部
242a レール
243 第2のレール部
243a レール
25 駆動部
25a ノブ付きボルト
25b 連結部材
25b1 基部
25b2 連結部
25b3 ネジ孔
26 駆動部
26a モータ
26b 円盤
26c ロッド
26d 連結部材
3 洗浄水噴射部
31 回転ノズルユニット
32 ケース
32a 入口部
32b 出口部
33 洗浄水供給管