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特開2023-125027ダイカスト用装置およびダイカスト法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125027
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ダイカスト用装置およびダイカスト法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20230831BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20230831BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20230831BHJP
   B22C 9/08 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B22D17/22 E
B22D17/22 D
B22D17/22 T
B22D18/02 B
B22D18/02 P
B22C9/06 T
B22C9/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028932
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】水草 康行
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093NA01
4E093NB05
4E093PA01
(57)【要約】
【課題】ダイカスト金型の湯押え部に不具合を発生させない。
【解決手段】第2加圧手段40,41,42,43が備える加圧ロッド43によってダイカスト品60に中空部64が形成されるダイカスト用装置1であって、ダイカスト金型10が備える湯押え部(分流子)33の内部には、第2加圧手段が備える加圧ロッド43の進退動作を可能とする加圧ロッド進退穴34と、冷却水を循環させることで湯押え部33の冷却を行うための冷却穴35と、が形成されており、湯押え部33におけるビスケット部61が形成される側の外表面33Aから加圧ロッド進退穴34までの距離寸法Lが、冷却穴35の最大径寸法φに対して2.5~6倍の長さを有するように形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、
前記キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、
前記ランナー内の溶湯を加圧する第2加圧手段と、
を備え、
前記第2加圧手段が前記ダイカスト金型の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する加圧ロッドを備え、前記第1加圧手段による前記キャビティ内への溶湯の射出が行われた後に、前記第2加圧手段が備える前記加圧ロッドによる前記ランナー内の溶湯の加圧が行われることで、前記ランナー内で凝固したダイカスト品のランナー部には、前記加圧ロッドの進出によって中空部が形成されるダイカスト用装置であって、
前記ダイカスト金型は、前記第1加圧手段による前記キャビティ内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段が溶湯を加圧する方向の正面であってダイカスト品の一部であるビスケット部が形成される箇所である湯押え部を含み、
前記湯押え部の内部には、
前記第2加圧手段が備える前記加圧ロッドの進退動作を可能とする加圧ロッド進退穴と、
冷却水を循環させることで前記湯押え部の冷却を行うための冷却穴と、
が形成されており、
前記湯押え部における前記ビスケット部が形成される側の外表面から前記加圧ロッド進退穴までの距離寸法が、前記冷却穴の最大径寸法に対して2.5~6倍の長さを有するように形成されることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイカスト用装置において、
前記冷却穴は、前記加圧ロッド進退穴の周囲の少なくとも一部を廻るように略U字形又は略コの字形をした冷却水経路として形成されることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイカスト用装置において、
前記ダイカスト金型が有する前記湯押え部の形成箇所は、前記第1加圧手段による前記キャビティ内への溶湯の射出が行われたときに、ダイカスト品の一部である前記ビスケット部と前記ランナー部の一部が成形される箇所であり、
前記ランナー部は、
前記第1加圧手段による前記キャビティ内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段が溶湯を加圧する方向に対して傾斜角を有して形成される第1ランナー部と、
前記第2加圧手段が備える前記加圧ロッドの進出によって中空部が形成される第2ランナー部と、
を備え、
前記冷却穴の一部は、前記第1ランナー部の傾斜角に沿った角度を有して形成されることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のダイカスト用装置において、
前記第1加圧手段が溶湯を加圧する方向での仮想の射出中心線を仮定したとき、
前記冷却穴の一部は、前記仮想の射出中心線と重畳するように形成されることを特徴とするダイカスト用装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のダイカスト用装置によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト用装置およびダイカスト法に係り、特に、ダイカスト金型のランナーを加圧する為の加圧手段を備えたダイカスト用装置および当該ダイカスト用装置を用いて行うダイカスト法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャビティと該キャビティに連通するランナーを画成するダイカスト金型と、該キャビティ内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段と、該ランナーの溶湯を加圧する第2加圧手段とを備え、該第2加圧手段が該ダイカスト金型の型開き方向に略直交する方向に向けて進退する加圧ロッドを備えたダイカスト用装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。かかるダイカスト用装置によれば、ランナー内の溶湯を第2加圧手段によって加圧することで、キャビティ内で成形されるダイカスト品の品質を向上させることが可能となっている。
【0003】
そして、下記特許文献1に代表される加圧ロッドを備えたダイカスト用装置で用いられるダイカスト金型は、第1加圧手段によるキャビティ内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段が溶湯を加圧する方向の正面であってダイカスト品の一部であるビスケット部が形成される箇所である湯押え部を含むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-224650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のダイカスト用装置で用いられるダイカスト金型の湯押え部の内部には、第2加圧手段が備える加圧ロッドの進退動作を可能とする加圧ロッド進退穴が形成されている。この加圧ロッド進退穴が形成される箇所は、溶湯からの熱影響を大きく受ける箇所である。そのため、従来のダイカスト金型の湯押え部には、加圧ロッド進退穴の変形や、この変形に基づくダイカスト品のランナー部の変形や破損等の可能性が存在していた。つまり、従来のダイカスト用装置で用いられるダイカスト金型の湯押え部には、大きな熱影響による不具合の発生を防止することができる改善を施す余地が残されていた。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、たとえ溶湯から大きな熱影響を受けた場合であっても、ダイカスト金型の湯押え部に変形や破損等の不具合が発生しないダイカスト用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
本発明に係るダイカスト用装置(1)は、キャビティ(53)と該キャビティ(53)に連通するランナー(50)を画成するダイカスト金型(10)と、前記キャビティ(53)内に向けて溶湯を充填する第1加圧手段(24,25)と、前記ランナー(50)内の溶湯を加圧する第2加圧手段(40,41,42,43)と、を備え、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が前記ダイカスト金型(10)の型開き方向に対して略直交する方向に向けて進退する加圧ロッド(43)を備え、前記第1加圧手段(24,25)による前記キャビティ(53)内への溶湯の射出が行われた後に、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が備える前記加圧ロッド(43)による前記ランナー(50)内の溶湯の加圧が行われることで、前記ランナー(50)内で凝固したダイカスト品(60)のランナー部(62,63)には、前記加圧ロッド(43)の進出によって中空部(64)が形成されるダイカスト用装置(1)であって、前記ダイカスト金型(10)は、前記第1加圧手段(24,25)による前記キャビティ(53)内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段(24,25)が溶湯を加圧する方向の正面であってダイカスト品(60)の一部であるビスケット部(61)が形成される箇所である湯押え部(33)を含み、前記湯押え部(33)の内部には、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が備える前記加圧ロッド(43)の進退動作を可能とする加圧ロッド進退穴(34)と、冷却水を循環させることで前記湯押え部(33)の冷却を行うための冷却穴(35)と、が形成されており、前記湯押え部(33)における前記ビスケット部(61)が形成される側の外表面(33A)から前記加圧ロッド進退穴(34)までの距離寸法(L)が、前記冷却穴(35)の最大径寸法(φ)に対して2.5~6倍の長さを有するように形成されることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明に係るダイカスト用装置(1)において、前記冷却穴(35)は、前記加圧ロッド進退穴(34)の周囲の少なくとも一部を廻るように略U字形又は略コの字形をした冷却水経路として形成することができる。
【0010】
さらに、本発明に係るダイカスト用装置(1)において、前記ダイカスト金型(10)が有する前記湯押え部(33)の形成箇所は、前記第1加圧手段(24,25)による前記キャビティ(53)内への溶湯の射出が行われたときに、ダイカスト品(60)の一部である前記ビスケット部(61)と前記ランナー部(62,63)の一部が成形される箇所であり、前記ランナー部(62,63)は、前記第1加圧手段(24,25)による前記キャビティ(53)内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段(24,25)が溶湯を加圧する方向に対して傾斜角(θ)を有して形成される第1ランナー部(62)と、前記第2加圧手段(40,41,42,43)が備える前記加圧ロッド(43)の進出によって中空部(64)が形成される第2ランナー部(63)と、を備え、前記冷却穴(35)の一部は、前記第1ランナー部(62)の傾斜角(θ)に沿った角度(θ’)を有して形成することができる。
【0011】
またさらに、本発明に係るダイカスト用装置(1)において、前記第1加圧手段(24,25)が溶湯を加圧する方向での仮想の射出中心線(α)を仮定したとき、前記冷却穴(35)の一部は、前記仮想の射出中心線(α)と重畳するように形成することができる。
【0012】
なお、本発明は、上記のダイカスト用装置(1)によりダイカストを行うことを特徴とするダイカスト法を含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、たとえ溶湯から大きな熱影響を受けた場合であっても、ダイカスト金型の湯押え部に変形や破損等の不具合が発生しないダイカスト用装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。
図2】本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
図3】本実施形態に係るダイカスト用装置によって製造されたダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部の形状を示す外観斜視図である。
図4】本実施形態に係るダイカスト用装置と、当該ダイカスト装置によって製造されるダイカスト品の要部構成を説明するための模式図であり、図中の分図(a)は、ダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部が成形される箇所である湯押え部の周辺のダイカスト金型の形状を模式的に示しており、分図(b)は、分図(a)で示されたダイカスト金型によって成形されたダイカスト品の一部を示している。
図5】本実施形態に係るダイカスト用装置で用いられるダイカスト金型が有する湯押え部の詳細形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本発明の一実施形態に係るダイカスト用装置1について、図1および図2を用いて説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが後退位置にある状態を示す断面図である。また、図2は、本実施形態に係るダイカスト用装置において、加圧ロッドが前進位置にある状態を示す断面図である。
【0017】
図1に示されるように、ダイカスト金型10は、固定型20と可動型30とを備えている。固定型20は固定ホルダー21および固定ダイス22からなり、固定ホルダー21には射出スリーブ23(スリーブ)が配設されている。射出スリーブ23内にはプランジャロッド24の先端に連結されたプランジャチップ25が配設されている。図示せぬ射出シリンダを作動させて該プランジャチップ25を射出スリーブ23内で摺動させることで射出スリーブ23の図示せぬ給湯孔から供給されたアルミニウム合金等の溶湯を、後述のキャビティ53内に充填可能である。プランジャチップ25、プランジャロッド24、および図示せぬ射出シリンダが、本発明に係る第1加圧手段を構成する。
【0018】
可動型30は、可動ホルダー31、可動ダイス32、および本発明の湯押え部としての分流子33からなり、矢印A←→A’で示される可動型30の移動方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に移動可能である。図1および図2に示す型締め状態においては、ダイカスト金型10の内部にはランナー50、ゲート52、およびキャビティ53が画成され、射出スリーブ23内の空間はランナー50およびゲート52を介してキャビティ53と連通する。ランナー50は、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に対して僅かな傾き角度を持った方向に延びる第1ランナー50Aと、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる第2ランナー50Bとを備えている。第1ランナー50Aは、固定型20に配設された射出スリーブ23と可動型30の分流子33とにより画成されている。第2ランナー50Bは、射出スリーブ23と分流子33とにより画成される部分と、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成される部分とを有している。ゲート52およびキャビティ53は、固定ダイス22と可動ダイス32とにより画成されている。
【0019】
本発明の湯押え部としての分流子33には、図示せぬブラケットを介して油圧シリンダ40が固定されている。油圧シリンダ40のピストンロッド41には、カップリング42を介して加圧ロッド43が連結されている。加圧ロッド43は、分流子33に形成された加圧ロッド進退穴34に挿入され、加圧ロッド43の先端部43Aが加圧ロッド進退穴34の上側開口34Aを塞いでいる。加圧ロッド43は、油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされ、油圧シリンダ40を作動させた場合には、図1に示す後退位置から第2ランナー50B内に進入し、図2に示す前進位置まで進出可能である。したがって、本実施形態に係るダイカスト用装置1では、加圧ロッド43を第2ランナー50B内に進出させることにより、第2ランナー50B内の溶湯を介してキャビティ53内の溶湯を加圧することが可能である。油圧シリンダ40、ピストンロッド41、カップリング42、および加圧ロッド43は、本発明に係る第2加圧手段を構成する。
【0020】
なお、加圧ロッド43の先端部43Aは、円柱形状とされている。そして、第2ランナー50Bは加圧ロッド43の先端部43Aの横断面形状と対応するように円形状に形成された対応形状部51を備え、この対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの周方向の隙間が、例えば、0.5~3.0mmの範囲に設定されている。隙間が0.5mm未満の場合には、隙間で凝固した薄肉部分がダイカスト品の取り出し時に切断されてしまう。また、隙間が3.0mmを超える場合には、加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧した際に溶湯が隙間から逆流することを充分に防ぐことができず、キャビティ53内の溶湯に充分な押湯効果を与えることができない。第2ランナー50B内の溶湯の流動性が良い場合には、隙間から逆流が生じやすいので、キャビティ53内への溶湯の充填完了前に加圧ロッド43で第2ランナー50B内の溶湯を加圧する場合には、第2ランナー50Bの対応形状部51を画成する面51Aと加圧ロッド43の先端部43Aとの隙間を3.0mm以下とすることが好適である。
【0021】
以上、本実施形態に係るダイカスト用装置1の基本構成を説明した。次に、図3図5を用いて、本実施形態に係るダイカスト用装置1が有する特徴的な構成を説明する。ここで、図3は、本実施形態に係るダイカスト用装置によって製造されたダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部の形状を示す外観斜視図である。また、図4は、本実施形態に係るダイカスト用装置と、当該ダイカスト装置によって製造されるダイカスト品の要部構成を説明するための模式図である。なお、図4中の分図(a)は、ダイカスト品の一部であるビスケット部、第1ランナー部、および第2ランナー部が成形される箇所である湯押え部としての分流子の周辺のダイカスト金型の形状を模式的に示しており、図4中の分図(b)は、図4中の分図(a)で示されたダイカスト金型によって成形されたダイカスト品の一部を示している。さらに、図5は、本実施形態に係るダイカスト用装置で用いられるダイカスト金型が有する湯押え部としての分流子の詳細形状を示す図である。
【0022】
まず、図3を参照して、本実施形態に係るダイカスト用装置1によって製造されたダイカスト品60の一部であるビスケット部61、第1ランナー部62、および第2ランナー部63の形状を説明する。
【0023】
図2図3を対比参照すれば明らかなように、ビスケット部61は、射出スリーブ23とプランジャチップ25と分流子33とで囲まれた領域に形成される部位である。また、第1ランナー部62は、第1ランナー50A内で形成される部位である。さらに、第2ランナー部63は、第2ランナー50B内で形成される部位である。
【0024】
第2ランナー50Bは、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びる領域であり、第1ランナー50Aは、射出スリーブ23の軸線方向(ダイカスト金型10の型開き方向)に対して僅かな傾き角度(例えば、水平面に対して5°~15°程度の角度)を持った方向に延びる領域であるため、射出スリーブ23の軸線方向に略直交する方向に延びて形成される第2ランナー部63に対して、第1ランナー部62は、僅かな傾き角度を持った状態で接続している。
【0025】
また、上述したように、本実施形態の加圧ロッド43は、油圧シリンダ40の作動によりダイカスト金型10の型開き方向に略直交する方向に向けて進退可能とされている。したがって、油圧シリンダ40を作動させた場合には、加圧ロッド43が第2ランナー50B内に進入することで、第2ランナー部63には、中空部64が形成されることとなる。
【0026】
なお、ビスケット部61が形成される射出スリーブ23とプランジャチップ25と分流子33とで囲まれた領域は、本実施形態の第1加圧手段によるキャビティ53内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段が溶湯を加圧する方向の正面となるので、本発明の湯押え部である分流子33は、ダイカスト金型10の構成部位の中でも、特に大きな熱影響が及ぼされる箇所となる。そのため、本実施形態の分流子33は、図4および図5に示すような多様な特徴を備えている。
【0027】
すなわち、本実施形態の分流子33では、図4および図5に示すように、分流子33の内部に対して、第2加圧手段が備える加圧ロッド43の進退動作を可能とする加圧ロッド進退穴34と、冷却水を循環させることで分流子33の冷却を行うための冷却穴35と、が形成されている。そして、特に図5にて示されるように、分流子33におけるビスケット部61が形成される側の外表面33Aから、加圧ロッド進退穴34におけるビスケット部61が形成される側の内壁面までの距離寸法Lが、冷却穴の最大径寸法φに対して2.5~6.0倍の長さを有するように形成されることが好ましい。なお、図5で示す本実施形態の例では、分流子33におけるビスケット部61が形成される側の外表面33Aから、加圧ロッド進退穴34におけるビスケット部61が形成される側の内壁面までの距離寸法Lが70mm、冷却穴の最大径寸法φが13mmとなっており、距離寸法Lが最大径寸法φに対して5.4倍の長さを有するように形成されている。本実施形態の分流子33が、前述のような構成上の特徴を備えることにより、熱影響等による加圧ロッド進退穴34の変形等を防ぐことができ、ダイカスト品60におけるランナー部(第1ランナー部62および第2ランナー部63)等の強度を確保することができる。また、かかる構成を備えることで、本実施形態の分流子33に対する冷却効果を十分に確保することができるので、耐久性を備えたダイカスト用装置1を実現することができる。
【0028】
また、本実施形態の分流子33では、図4および図5に示すように、分流子33の内部に形成された冷却穴35が、加圧ロッド進退穴34の周囲の少なくとも一部を廻るように、分流子33をダイカスト金型10の型開き方向に対して略直交する方向で見たときに、略コの字形をした冷却水経路として形成されている。このような冷却穴35の形状によれば、分流子33の強度を維持しながらも適切な冷却効果を得ることができるので、かかる冷却穴35の構成についても、耐久性を備えたダイカスト用装置1の実現に寄与することができる。
【0029】
なお、本発明の冷却穴の形状については、図4および図5で示した本実施形態の形態例に限定されるものではなく、あらゆる形状を採用することができる。例えば、分流子33の内部に形成された本発明の冷却穴については、例えば、分流子33をダイカスト金型10の型開き方向に対して略直交する方向で見たときに、略U字形をした冷却水経路として形成してもよい。また、本実施形態の冷却穴35の形状は、3本の直線的な冷却水経路を略コの字形に組み合わせることで形成されているが、本発明の冷却穴の形状は加圧ロッド進退穴34の周囲の少なくとも一部を廻るように形成されていればよく、例えば、螺旋状の冷却水経路を含むように形成されていてもよい。その様な冷却穴の形状は、例えば、3Dプリンタなどの製造技術を用いることで実現可能である。
【0030】
また、本実施形態の分流子33について、ダイカスト金型10が有する分流子33の形成箇所は、図4および図5に示すように、第1加圧手段によるキャビティ53内への溶湯の射出が行われたときに、ダイカスト品60の一部であるビスケット部61とランナー部の一部である第1ランナー部62と第2ランナー部63の一部が成形される箇所となっている。そして、本実施形態のランナー部のうち、第1ランナー部62は、第1加圧手段によるキャビティ53内への溶湯の射出が行われたときに、当該第1加圧手段が溶湯を加圧する方向に対して僅かな傾斜角θを有して形成されるものであるが、分流子33の内部に形成される冷却穴35の一部については、第1ランナー部62の傾斜角θに沿った角度θ’を有して形成されるものとなっている。なお、図5で示す本実施形態の例では、第1ランナー部62の傾斜角θと分流子33の内部に形成される冷却穴35の一部の角度θ’は同一の角度で形成されており、具体的には、θ=θ’=15°となっている。つまり、本実施形態では、第1ランナー部62と、この第1ランナー部62が形成される箇所に形成された冷却穴35とが、略平行に配置されるように構成されている。このように、分流子33が熱影響を受ける第1ランナー部62の形成箇所の形状に沿った角度で本実施形態の冷却穴35が形成されることで、分流子33に対する好適な冷却効果が得られることになるので、かかる冷却穴35の構成についても、耐久性を備えたダイカスト用装置1の実現に寄与するものとなる。
【0031】
また、本実施形態の分流子33については、図5に示すように、第1加圧手段が溶湯を加圧する方向での仮想の射出中心線αを仮定したとき、本実施形態の冷却穴35の一部が、この仮想の射出中心線αと重畳する位置に形成されている。つまり、図5で示す本実施形態によれば、分流子33におけるビスケット部61が形成される側の外表面33Aにおいて溶湯から最も熱影響を受けやすい位置に対して、冷却穴35が形成されることになるので、分流子33に対する好適な冷却効果が得られることになる。かかる冷却穴35の構成についても、耐久性を備えたダイカスト用装置1の実現に寄与することとなる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0033】
例えば、上述した実施形態では、本発明の湯押え部が、可動型30が有する分流子33として形成された場合の構成例を示した。しかしながら、本発明の湯押え部は、分流子33という部材によって形成される場合に限定されるものではなく、例えば、可動ダイス32と一体的に形成したり、他の部品にて形成したりといったように、あらゆる形態を採用することができる。
【0034】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 ダイカスト用装置、10 ダイカスト金型、20 固定型、21 固定ホルダー、22 固定ダイス、23 射出スリーブ、24 プランジャロッド(第1加圧手段)、25 プランジャチップ(第1加圧手段)、30 可動型、31 可動ホルダー、32 可動ダイス、33 分流子(湯押え部)、33A 外表面、34 加圧ロッド進退穴、34A 上側開口、35 冷却穴、40 油圧シリンダ(第2加圧手段)、41 ピストンロッド(第2加圧手段)、42 カップリング(第2加圧手段)、43 加圧ロッド(第2加圧手段)、43A 先端部、50 ランナー、50A 第1ランナー、50B 第2ランナー、51 対応形状部、51A 面、52 ゲート、53 キャビティ、60 ダイカスト品、61 ビスケット部、62 第1ランナー部(ランナー部)、63 第2ランナー部(ランナー部)、64 中空部、L 距離寸法、φ 最大径寸法、θ (第1ランナー部62の)傾斜角、θ’ (冷却穴35の一部の)角度、α 仮想の射出中心線。
図1
図2
図3
図4
図5