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特開2023-125036種卵の非破壊検査装置及びそれに用いる種卵検査プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125036
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】種卵の非破壊検査装置及びそれに用いる種卵検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230831BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20230831BHJP
   G01N 33/08 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N21/59 Z
G01N33/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028941
(22)【出願日】2022-02-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム産学共同(育成型)「高効率・高品質な雛生産のための孵卵中鶏卵の非破壊計測技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲仁
(72)【発明者】
【氏名】知原 麻歩
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田原 孝嗣
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB12
2G059BB14
2G059EE01
2G059EE11
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH02
2G059JJ01
2G059KK01
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM10
(57)【要約】
【課題】種卵から孵化する雛の性別の判別精度を向上する。
【解決手段】光を種卵に照射する光照射部2と、種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部3と、種卵を透過した光を撮像して透過画像を生成する撮像部4と、スペクトル取得部3が取得した透過スペクトル及び撮像部4が生成した透過画像に基づいて、種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部6とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を種卵に照射する光照射部と、
前記種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部と、
前記種卵を透過した光を撮像して透過画像を生成する撮像部と、
前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部とを備える、種卵の非破壊検査装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記種卵内の血管を含む透過画像を生成するものであり、
前記性別判別部は、前記透過画像における前記血管の特徴量に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する、請求項1に記載の種卵の非破壊検査装置。
【請求項3】
前記性別判別部は、前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像と前記種卵から孵化する雛の性別とを対応付けた学習データを機械学習して生成された学習モデルを用いて、前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像から、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する、請求項1又は2に記載の種卵の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記学習モデルは、孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目の前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像を含む学習データを機械学習して生成されたものであり、
前記性別判別部は、前記学習モデルを用いて、孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目において前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像から、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する、請求項3に記載の種卵の非破壊検査装置。
【請求項5】
前記学習モデルは、前記種卵の透過画像における血管の特徴量を含む学習データを機械学習して生成されたものであり、
前記性別判別部は、前記学習モデルを用いて、前記撮像部が生成した透過画像における血管の特徴量を用いて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する、請求項3又は4に記載の種卵の非破壊検査装置。
【請求項6】
前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像と前記種卵から孵化する雛の性別とを対応付けた学習データを機械学習して学習モデルを生成する機械学習部をさらに備える、請求項3乃至5の何れか一項に記載の種卵の非破壊検査装置。
【請求項7】
光を種卵に照射する光照射部と、前記種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部と、前記種卵を透過した光を撮像して透過画像を生成する撮像部とを備える種卵の非破壊検査装置に用いられる種卵検査プログラムであって、
前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする、種卵検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種卵の非破壊検査装置及びそれに用いる種卵検査プログラムに関し、特に種卵の孵卵段階において種卵から孵化する雛の性別を判別することができる種卵の非破壊検査装置及びそれに用いる種卵検査プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用卵の生産用に養鶏場で飼養される鶏の系統を採卵鶏(レイヤー)と呼ぶ。食用卵の生産者は、採卵用の実用鶏の親となる種鶏群を飼養する種鶏会社から実用鶏の雛を購入して、その雛を大雛まで育成して食用卵の生産に使用している。
【0003】
採卵鶏の場合は、オスの雛の経済的価値は乏しい。採卵鶏のオスの雛は、採卵の目的に使用できないのは勿論のこと、食肉用としても増体性が肉用鶏に比較して劣るからである。したがって、孵化したオスの雛は、雌雄鑑別の後に廃棄されている。日本国内で年間に廃棄される採卵鶏のオスの雛は、1億羽以上であり、約半数を占めるオスの孵卵コストなど経済的な損失のみならず、生命倫理上の観点からも問題視されている。
【0004】
上記の問題を解決するために、従来、特許文献1に示すように、種卵の孵卵初期段階において雌雄の判別を行うものがある。孵卵初期段階での雌雄判別を行うことにより、オスの雛の殺処分を防ぐだけでなく、孵卵に要するエネルギーや費用を減らすことができ、環境や経済面等でのメリットがある。
【0005】
具体的に上記の雌雄判別方法は、種卵に可視光を照射したときの波長575nmと598nmの透過率の比に着目して、孵卵初期にあたる3日目に雌が雄より有意に大きいことを利用するものである。波長575nmは、血液に含まれるヘモグロビン(Hb)が吸収を持つ波長であり、孵卵初期における成長速度の雌雄差が現れていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-227471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1では、孵卵初期における成長速度の雌雄差を透過率により捉えることによって判別するものである。
【0008】
一方で、本願発明者は、透過スペクトルを用いた雌雄判別の精度向上について種々検討を行っている。この検討の結果、孵卵初期に形成される胚及び血管は卵殻及び卵殻膜の内側に沿うように位置しており、種卵に光を照射してその透過光を撮像することにより、血管の影が確認できることに着目した。
【0009】
そこで本発明は、上記検討の結果なされたものであり、種卵から孵化する雛の性別の判別精度を向上することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明に係る種卵の非破壊検査装置は、光を種卵に照射する光照射部と、前記種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部と、前記種卵を透過した光を撮像して透過画像を生成する撮像部と、前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような種卵の非破壊検査装置であれば、種卵の透過スペクトル及び種卵の透過画像を用いて種卵から孵化する雛の性別を判別するので、種卵の透過スペクトルのみを用いた場合に比べて、種卵から孵化する雛の性別の判別精度を向上することができる。
【0012】
孵卵初期における成長速度の雌雄差を顕著に表すものとして、孵卵内に形成される血管を挙げることができる。
この血管の形成度合いの雌雄差を用いることで、雌雄判別の精度を向上するためには、前記撮像部は、前記種卵内の血管を含む透過画像を生成するものであり、前記性別判別部は、前記透過画像における前記血管の特徴量に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別することが望ましい。なお、透過画像における血管の特徴量としては、例えば、血管の面積、血管の形状、血管の輪郭、血管の複雑度などの血管の形成度合いにより変化する種々のパラメータを挙げることができる。
【0013】
性別判別部の具体的な実施の態様としては、前記性別判別部は、前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像と前記種卵から孵化する雛の性別とを対応付けた学習データを機械学習して生成された学習モデルを用いて、前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像から、前記種卵から孵化する雛の性別を判別することが望ましい。
【0014】
孵卵初期において種卵内に形成される血管の形成度合いは、孵卵開始から3日目~5日目において雌雄差が大きくなる。この3日目~5日目における血管の形成度合いの雌雄差を用いることで、雌雄判別の精度を向上することができる。
このため、前記学習モデルは、孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目の前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像を含む学習データを機械学習して生成されたものであり、前記性別判別部は、前記学習モデルを用いて、孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目において前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像から、前記種卵から孵化する雛の性別を判別することが望ましい。
【0015】
学習モデルを用いて判別精度を向上させるためには、前記学習モデルは、前記種卵の透過画像における血管の特徴量を含む学習データを機械学習して生成されたものであり、前記性別判別部は、前記学習モデルを用いて、前記撮像部が生成した透過画像における血管の特徴量を用いて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別することが望ましい。
【0016】
本発明の種卵の非破壊検査装置により機械学習を可能にしてユーザの使い勝手を向上するためには、前記種卵の透過スペクトル及び前記種卵の透過画像と前記種卵から孵化する雛の性別とを対応付けた学習データを機械学習して学習モデルを生成する機械学習部をさらに備えることが望ましい。
【0017】
また、本発明に係る種卵検査プログラムは、光を種卵に照射する光照射部と、前記種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部と、前記種卵を透過した光を撮像して透過画像を生成する撮像部とを備える種卵の非破壊検査装置に用いられる種卵検査プログラムであって、前記スペクトル取得部が取得した透過スペクトル及び前記撮像部が生成した透過画像に基づいて、前記種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部としての機能をコンピュータに備えさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、種卵を透過した光の透過スペクトル及び種卵の透過画像を用いて種卵から孵化する雛の性別を判別するので、種卵から孵化する雛の性別の判別精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る種卵の非破壊検査装置の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態における情報処理装置の機能ブロック図である。
図3】同実施形態における孵卵開始からの8日目までの吸光スペクトルを示す図である。
図4】同実施形態における種卵の画像処理方法を示す図である。
図5】同実施形態における種卵の別の画像処理方法を示す図である。
図6】実証実験の方法を示す模式図である。
図7】透過スペクトルのみを用いた学習モデルを用いた判別精度の結果と、透過スペクトル及び透過画像を用いた学習モデルを用いた判別精度の結果を示すグラフである。
図8】変形実施形態の種卵の検査方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る種卵の非破壊検査装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
<装置構成>
本実施形態の種卵の非破壊検査装置100は、種卵の孵卵段階(孵卵途中)において、種卵内に形成される血管に着目して、種卵から孵化する雛の性別を非破壊で判別するものである。
【0022】
具体的に種卵の非破壊検査装置100は、図1に示すように、光を種卵に照射する光照射部2と、種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するスペクトル取得部3と、種卵を透過した光を撮像して種卵の透過画像を生成する撮像部4とを備えている。
【0023】
なお、図1では、1つの種卵を測定台に設置して検査する例を示しているが、複数の種卵を複数の卵座を有するセッタートレイ(不図示)に載置して一挙に検査可能に構成しても良いし、搬送途中の種卵に光を照射して次々と検査するようにしてもよいのはもちろんである。
【0024】
光照射部2は、血管又は血液に吸収される波長を有する光を照射するものである。血管又は血液に吸収される波長は、具体的にはヘモグロビンやミオグロビンに吸収される波長である。具体的に光照射部2は、スペクトルランプの一種であるキセノンランプ等の光源21と、当該光源21の光を導光して種卵の所望の位置に照射する照射用ファイバ22とを有している。本実施形態では、種卵に対して鉛直下方から光を照射するように構成されている。
【0025】
スペクトル取得部3は、種卵を透過した光を検出して透過スペクトルを取得するものである。具体的にスペクトル取得部3は、照射用ファイバ22の光射出面と正対するように光入射面が設けられた検出用ファイバ31と、当該検出用ファイバに導光された光を分光して透過スペクトル(分光スペクトル)を測定する分光器32とを有している。分光器32により測定された透過スペクトルは、後述する情報処理装置COMに送信される。なお、検出用ファイバ31の光入射面は、照射用ファイバ22の光出射面と正対する構成の他、照射用ファイバ22の光出射面とは正対しない位置に設けられる構成、例えば、種卵に対して横から光を検出する構成としても良い。
【0026】
撮像部4は、種卵内の血管を含む透過画像を撮像するものであり、ここでは、撮像カメラ41と、当該撮像カメラ41の前方に設けられたバンドパスフィルタ42とを有している。
【0027】
図1に示す撮像カメラ41は、種卵を斜め上方から撮像するように配置されており、種卵を透過した光はスペクトル取得部3で検出されるとともに、撮像カメラ41で撮像されるように構成されている。
【0028】
また、バンドパスフィルタ42は、ヘモグロビンの吸収波長に基づいて、血管形状を明瞭化するためのものである。具体的にバンドパスフィルタ42は、血管中の血液、及び胚に含まれるヘモグロビンの吸収を考慮して、550nmを中心波長とするものを選択している。可視域におけるヘモグロビンの最大の吸収ピークは400~500nmにあるが、卵殻は可視光のうち500nm以下の光はほとんど通さないため、550~600nmにある吸収に着目してバンドパスフィルタ42を選択している。
【0029】
ここで、孵卵の進行に伴って透過光強度が減少するため、撮像部4は、種卵日数に応じて撮像条件が調整されている。具体的に撮像部4の撮像カメラ41は、撮像される透過画像の輝度に基づいて、種卵日数に応じて露光時間が調整されており、孵卵日数が経過するに伴って露光時間が長い設定としている。例えば、3日目の撮像カメラ41の露光時間は70ms、4日目の撮像カメラ41の露光時間は150ms、5日目の撮像カメラ41の露光時間は500msである。
【0030】
<学習モデルを用いた性別判別>
そして、本実施形態の種卵の非破壊検査装置100は、図2に示すように、透過スペクトルを処理するスペクトル処理部5と、透過画像を処理する画像処理部6と、種卵から孵化する雛の性別と判別するための学習モデルを生成する機械学習部7と、学習モデルを用いて種卵から孵化する雛の性別を判別する性別判別部8とを備えている。
【0031】
なお、スペクトル処理部5、画像処理部6、機械学習部7及び性別判別部8は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等を有する専用又は汎用のコンピュータ(情報処理装置COM)により構成されている。そして、内部メモリに格納された種卵検査プログラムにしたがってCPUやその他の周辺機器が協働することによって、スペクトル処理部5、画像処理部6、機械学習部7及び性別判別部8としての機能が発揮される。また、スペクトル処理部5、画像処理部6、機械学習部7及び性別判別部8は、物理的に一体のコンピュータにより構成されたものであっても良いし、それぞれ物理的に別体をなすコンピュータにより構成されたものであっても良い。
【0032】
以下、各部について説明する。
スペクトル処理部5は、スペクトル取得部3により取得された透過スペクトルを、機械学習部7の機械学習のため、及び性別判別部8の性別判別のために処理するものである。
【0033】
具体的にスペクトル処理部5は、参照用スペクトルI(λ)(テフロンブロック等の参照用試料から得られた透過光スペクトル)と分光器32により得られた透過スペクトルI(λ)とから求まる相対透過率T(λ)(=I(λ)/I(λ))、又は、前記相対透過率Tから求まる吸光スペクトル(-log10T)を算出する。なお、図3には、スペクトル処理部5により得られた孵卵開始から8日目までの各日の吸光スペクトルを示している。
【0034】
また、スペクトル処理部5は、種卵の個体差を低減するために、透過スペクトルI(λ)、相対透過率T(λ)又は吸光スペクトル(-log10T)を規格化することができる。
【0035】
さらに、スペクトル処理部5は、例えばSG法(Savitzky-Golay法)といった最小二乗法等を用いた平滑化処理により、透過スペクトルI(λ)、相対透過率T(λ)又は吸光スペクトル(-log10T)を平滑化することができる。
【0036】
画像処理部6は、撮像部4により生成された透過画像を、機械学習部7の機械学習のため、及び性別判別部8の性別判別のために処理するものである。
【0037】
具体的に画像処理部6は、透過画像の特徴量を抽出するものであり、本実施形態では種卵内の血管が抽出された画像を生成し、血管の面積を特徴量として抽出するものである。
【0038】
以下に、画像処理部6による画像処理を説明する。
透過画像は、図4に示すように、処理対象領域が選択される(ここでは卵全体)とともに、緑成分が抽出される。そして、この緑成分画像が二値化される。そして、二値化された画像において最大面積部(最もピクセル数が多い部分)が消去され、血管(胚を含んでも良い。)が抽出される。この血管が抽出された画像、及び/又は血管の面積は学習データとして機械学習部7に出力され、又は、検査対象の種卵の性別判別のために性別判別部8に出力される。
【0039】
その他、透過画像は、図5に示すように、処理対象領域が選択される(ここでは卵全体)とともに、緑成分が抽出される。そして、この緑成分画像のコントラストが調整される((調整前)0.1~0.6→(調整後)0~1)。その後、LoGフィルタにより、血管(胚を含んでも良い。)が抽出される。ここで、LoGフィルタは、画像を平滑化してノイズを除去するガウシアンフィルタおよび血管のエッジ(輪郭)を取り出すラプラシアンフィルタを有するものである。LoGフィルタにより血管が抽出された画像をオブジェクト収縮し、そして、例えば大津の二値化により二値化処理する。この血管が抽出された画像、及び/又は血管の面積は学習データとして機械学習部7に出力され、又は、検査対象の種卵の性別判別のために性別判別部8に出力される。
【0040】
機械学習部7は、種卵の透過スペクトル(具体的には吸光スペクトル(-log10T))及び種卵の透過画像(具体的には血管の面積)と種卵から孵化した雛の性別とを対応付けた学習データを機械学習して学習モデルを生成するものである。
【0041】
なお、学習データは、スペクトル処理部5により算出された吸光スペクトル(-log10T)と、画像処理部6により抽出された血管の面積と、種卵から孵化した雛の性別とを対応付けて作成されるものであり、例えばユーザが種卵から孵化した雛の性別を入力することによって、当該種卵の吸光スペクトル(-log10T)及び血管の面積と対応付けてデータ格納部に記録される。その他、外部の検査装置により種卵の吸光スペクトル(-log10T)及び血管の面積を求めて、これらに種卵から孵化した雛の性別を対応付けた学習データを予め作成しておき、この学習データを情報処理装置COMに入力してデータ格納部9に記録しても良い。
【0042】
本実施形態の機械学習部7は、機械学習アルゴリズムとしてサポートベクターマシン(SVM)を用いたものである。このSVMは、データを線形識別する関数を構築する機械学習モデルで、教師あり学習の2クラス分類手法の1つである。本実施形態では、カーネル法を取り入れることで、線形識別が難しい学習データ(データセット)を曲線で分類することができる線形カーネルSVMを用いている。
【0043】
なお、機械学習部7の機械学習アルゴリズムは、自己組織化マップ、人工ニューラルネットワーク、決定木、ランダムフォレスト、k平均法、k近傍法、遺伝的アルゴリズム、ベイジアンネットワーク、又はディープラーニング手法等であっても良い。
【0044】
具体的に機械学習部7は、「孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目の種卵の吸光スペクトル(-log10T)」及び「孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目の種卵の透過画像(血管の面積)」と、「種卵から孵化する雛の性別」とを対応付けた学習データ(データセット)を線形カーネルSVMにより機械学習して学習モデルを生成する。本実施形態では、「孵卵開始から3日目、4日目及び5日目の種卵の吸光スペクトル(-log10T)」及び「孵卵開始から3日目、4日目及び5日目の種卵の透過画像(血管の面積)」と、「種卵から孵化する雛の性別」とを対応付けた学習データ(データセット)を線形カーネルSVMにより機械学習して学習モデルを生成している。
【0045】
性別判別部8は、スペクトル取得部3が取得した透過スペクトル(具体的には吸光スペクトル(-log10T))及び撮像部4が生成した透過画像(具体的には血管の面積)に基づいて、種卵から孵化する雛の性別を判別するものである。
【0046】
本実施形態の性別判別部8は、機械学習部7により生成された学習モデルを用いて、スペクトル処理部5により算出された吸光スペクトル(-log10T)と、画像処理部6により抽出された血管の面積から、種卵から孵化する雛の性別を自動的に判別する。
【0047】
具体的に性別判別部8は、学習モデルを用いて、孵卵開始から少なくとも3日目、4日目又は5日目の種卵の吸光スペクトル(-log10T)及び血管の面積から、種卵から孵化する雛の性別を判別する。ここでは、学習モデルを用いて、「孵卵開始から3日目、4日目及び5日目の種卵の吸光スペクトル(-log10T)」及び「孵卵開始から3日目、4日目及び5日目の種卵の透過画像(血管の面積)」から種卵から孵化する雛の性別を判別している。
【0048】
<種卵の非破壊検査方法>
本実施形態の非破壊検査装置100を用いた非破壊検査方法について説明する。なお、本実施形態の非破壊検査装置100は、機械学習部7を有しており、以下では、機械学習ステップ及び性別判別ステップを行う例について説明する。
【0049】
<機械学習ステップ>
まずは、孵卵開始から3日目、4日目及び5日目における複数の種卵を用いて、スペクトル取得部3及び撮像部4により、各種卵の透過スペクトル及び透過画像を取得する。また、それらの種卵はそのまま孵卵を続けて孵化した雛の性別を記録する。ここで、取得された透過スペクトルはスペクトル処理部5により吸光スペクトル(-log10T)が算出されるとともに規格化及び平滑化される。また、透過画像は、画像処理部6により画像処理されて、種卵内に形成された血管の面積が算出される。
【0050】
そして、機械学習部7は、種卵から孵化した雛(雄・雌)に対して、3日目、4日目及び5日目の種卵の吸光スペクトル(-log10T)及び血管の面積が対応付けられた学習データを用いて、線形カーネルSVMにより学習モデルを生成する。この生成された学習モデルは、情報処理装置COMのデータ格納部9に格納される。
【0051】
<性別判別ステップ>
上記の機械学習ステップの後に、非破壊検査装置100は、孵卵開始から3日目、4日目及び5日目における複数の種卵を検査する。具体的に非破壊検査装置100は、スペクトル取得部3及び撮像部4により、各種卵の透過スペクトル及び透過画像を取得する。
【0052】
取得された透過スペクトルはスペクトル処理部5により吸光スペクトル(-log10T)が算出されるとともに規格化及び平滑化される。また、透過画像は、画像処理部6により画像処理されて、種卵内に形成された血管の面積が算出される。
【0053】
次に、性別判別部8は、スペクトル処理部5から吸光スペクトル(-log10T)を受け取り、また、画像処理部6から血管の面積を受け取る。そして、性別判別部8は、データ格納部9に格納された学習モデルを用いて、吸光スペクトル(-log10T)及び血管の面積から、種卵から孵化する雛の性別を判別する。
【0054】
<検証実験>
次に、本実施形態の種卵の非破壊検査装置100を用いて、透過スペクトルのみを用いた雌雄の判別精度と、透過スペクトル及び透過画像を用いた雌雄の判別精度とを算出した。
【0055】
ここで、検証の手順は、図6に示すように、データセットの75%(n=77)を学習データとして用いて、線形カーネルSVMにより学習モデルを生成した。また、評価は、データセットの残りである25%(n=25)から学習モデルを用いて雌雄を予測して分類し、正解率を算出した。
【0056】
図7に検証実験の結果を示している。なお、図7におけるA、B、Cは、データセットのうち学習データに用いたデータの割り当てをそれぞれ変更したものである。この図7から分かるように、透過スペクトルのみを用いて雌雄を判別した場合に比べて、透過スペクトル及び透過画像を用いて雌雄を判別した場合には、何れも正答率(判別精度)が向上している。
【0057】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の種卵の非破壊検査装置100によれば、種卵の透過スペクトル及び種卵の透過画像を用いて種卵から孵化する雛の性別を判別するので、種卵の透過スペクトルのみを用いた場合に比べて、種卵から孵化する雛の性別の判別精度を向上することができる。
【0058】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0059】
例えば、光照射部2は、578nm付近に発光中心波長を有するLED、又は、578nm付近に発光中心波長を有するレーザを用いたものであっても良い。この場合、光照射部2は、照射用ファイバを用いることなく、LED又はレーザからの光を種卵に直接照射する構成としても良い。
【0060】
また、前記実施形態では、機械学習部7を有する構成であったが、機械学習部7を有さない構成としても良い。この場合、種卵の非破壊検査装置100は、外部装置で生成された学習モデルをインターネット等の通信回線を通じて外部装置又はサーバから取得して使用する構成とすることが考えられる。
【0061】
さらに、種卵の画像を取得する構成としては、図8(a)、(b)に示すように、種卵を横向きにした状態又は種卵を傾けた状態で透過画像を取得するようにしても良い。種卵は内部に気室があり、鈍端を下にして光を照射した場合しつつ種卵を上方から撮像した場合には、胚及び血管が気室の影に隠れてしまい、胚及び血管の画像がぼやけてしまう恐れがある。このため、種卵を横向き又は傾斜させることで、気室と胚及び血管とが重ならない状態にでき、胚及び血管の画像を精度良く撮像することができる。この場合には、透過スペクトルを取得する場合には種卵を縦向きにし(図8(c)参照)、透過画像を撮像する場合には種卵を横向き又は傾斜させる姿勢変更機構(不図示)を備えることが望ましい。
【0062】
前記実施形態の機械学習及び性別判別では、透過画像における血管の特徴量として血管の面積(ピクセル数)を用いていたが、血管の特徴量として、血管の形状、血管の輪郭、血管の複雑度などの血管の形成度合いにより変化する種々のパラメータを用いても良い。また、血管の特徴量として、血管の面積、血管の輪郭、血管の複雑度などの2つ以上のパラメータを用いても良い。さらに、前記実施形態では、透過画像における血管の特徴量を用いているが、血管の特徴量に代えて、又は、血管の特徴量に加えて、血管が抽出された抽出画像を用いても良いし、透過画像そのものを用いても良いし、透過画像から得られる種々の特徴量を用いても良い。
【0063】
さらに、前記実施形態の機械学習及び性別判別では、孵卵開始から3日目、4日目及び5日目の透過スペクトル及び透過画像を用いているが、3日目、4日目又は5日目の少なくとも1日の透過スペクトル及び透過画像を用いても良いし、3日目~5日目以外の孵卵日数の透過スペクトル及び透過画像をさらに用いても良い。
【0064】
加えて、前記実施形態では、スペクトル取得部3により得られる全波長の透過スペクトルを用いているが、スペクトル取得部3により得られる透過スペクトルのうち一部の波長域の透過スペクトルを用いても良い。この場合、血管の形成度合いの雌雄差が表れる波長域(例えば550nm~600nm)における透過スペクトルを用いることが望ましい。
【0065】
前記実施形態のスペクトル処理部5の規格化処理及び/又は平滑化処理は、ユーザが情報処理装置を用いて行っても良いし、これらの処理を行わなくても良い。また、画像処理部6の画像処理は、ユーザが情報処理装置を用いて行っても良いし、これらの処理を行わなくても良い。
【0066】
その上、前記実施形態では、光照射部2の光源21は、透過スペクトル取得及び透過画像取得の両方に共通して用いていたが、透過スペクトル取得用の光源と、透過画像取得用の光源とを別々に設けても良い。
【0067】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
100・・・種卵の非破壊検査装置
2 ・・・光照射部
3 ・・・スペクトル取得部
4 ・・・撮像部
5 ・・・スペクトル処理部
6 ・・・画像処理部
7 ・・・機械学習部
8 ・・・性別判別部
9 ・・・データ格納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8