(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125055
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】上柱の建込み支援装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028965
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】林 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】尻無濱 昭三
(72)【発明者】
【氏名】坂井 誠
(72)【発明者】
【氏名】野畑 茂雄
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA08
2E174DA12
2E174DA31
(57)【要約】
【課題】下柱2の上方で上柱1を建て起こして、上柱1の建込みを支援できる上柱1の建込み支援装置5を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する上柱1の建込み支援装置5であって、下柱2の上端部に取付けられた下柱側基部12と、寝かせた状態における上柱1の下端部の下側に取付けられた上柱側基部11と、水平方向を回転軸として、下柱側基部12と上柱側基部11とを枢動可能に連結する枢動部とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置であって、
下柱の上端部に取付けられた下柱側基部と、
寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取付けられた上柱側基部と、
水平方向を回転軸として、前記下柱側基部と前記上柱側基部とを枢動可能に連結する枢動部とを備えた
上柱の建込み支援装置。
【請求項2】
前記枢動部は、
前記下柱のエレクションピースと前記上柱のエレクションピースとを枢動可能に連結する連結アームで構成された
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項3】
前記下柱に取り付けられるとともに、前記下柱の直上へ前記上柱を案内するガイド部材を備えた
請求項2に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、
前記上柱が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材を備えた
請求項3に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、
前記下柱の前記エレクションピースに取付けられた
請求項3または請求項4に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項6】
前記枢動部を第1枢動部とし、
上下方向を回転軸に前記下柱側基部と前記上柱側基部とを枢動可能に連結する第2枢動部を備えた
請求項1に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項7】
前記第2枢動部は、
上下方向に延びる軸体と、
上下方向に延びるとともに、前記軸体が挿通される筒体とで構成され、
該筒体は、
径方向中心をとおる縦断面で二分割されるとともに、上下方向を回転軸として開閉可能に構成された
請求項6に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項8】
前記下柱側基部及び前記上柱側基部は、それぞれ下柱及び上柱を挟持する構成である
請求項6また請求項7に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項9】
前記下柱側基部と床面とに亘って配設されるとともに、前記下柱側基部を下方から支持する支柱部材を備えた
請求項8に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項10】
前記下柱側基部及び前記上柱側基部が、それぞれ下柱のエレクションピース及び上柱のエレクションピースで構成された
請求項6または請求項7に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項11】
前記上柱側基部に対向して前記上柱に一端が取付けられたワイヤーと、
前記ワイヤーを巻き取る巻取り機と、
前記下柱側基部に対向する前記下柱の外側面に沿って配置されるとともに、前記ワイヤーの巻取りを案内するガイドローラーとを備えた
請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項12】
寝かせた状態の前記上柱の前記下端部を下方から支持するジャッキを備えた
請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項13】
前記上柱が転倒することを伸長によって抑止する転倒抑止機構部を備えた
請求項1から請求項12のいずれか1つに記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項14】
前記転倒抑止機構部は、
前記上柱側基部が設けられた前記上柱の面に一端が枢動自在に連結され、伸縮した状態を維持可能な伸縮部材と、
寝かせた状態の前記上柱の下方に位置する床面に載置され、前記伸縮部材の他端が枢動自在に係止される係止部材とで構成され、
該係止部材は、
前記上柱の上端部の吊り上げに伴って、前記伸縮部材の他端が前記下柱に向かう前記長手方向へ移動可能に構成された
請求項13に記載の上柱の建込み支援装置。
【請求項15】
前記転倒抑止機構部は、
前記上柱側基部に対向して前記上柱にピストンロッドが枢動自在に連結された第1オイルダンパーと、
床面にピストンロッドが枢動自在に連結された第2オイルダンパーと、
前記第1オイルダンパーのシリンダと前記第2オイルダンパーのシリンダとを枢動不可の状態で連結する連結部で構成され、
前記第1オイルダンパー及び前記第2オイルダンパーは、
それぞれピストンロッドに引張荷重が作用した際、シリンダの内部を流動する作動油の流量を制限する構成である
請求項13に記載の上柱の建込み支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援するような上柱の建込み支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば線路の上空に駅舎などの建築物を建設する場合、線路の上空に設けた床版を貫通する下柱に上柱を連結して、建築物の柱を組み立てることがある。
この際、建設現場では、長尺形状の上柱を長手方向が略水平となるように寝かせた状態で予め床版上に搬入し、電車の運行が行われていない夜間などに上柱を下柱に組付けている。このため、建設現場では、寝かせた状態の上柱を床版上で建て起こす必要があった。
【0003】
このような上柱の建て起こしを支援する技術として、例えば特許文献1には、車輪を設けた柱受台を上柱の下端側に連結し、上柱の上端側の吊り上げに伴って、柱受台が床版上を走行することで、寝かせた状態の上柱の建て起こしを支援することが開示されている。
【0004】
ところで、特許文献1は、上柱の上端側の吊り上げに伴って柱受台が走行するため、下柱の上方で上柱の建て起こしを行うことができない。このため、特許文献1では、上柱を吊り上げて起立させたのち、重機を旋回して上柱を下柱の上方へ移動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、起立させた上柱を下柱の上方へ移動させる際、重機の旋回に伴って上柱が大きく揺れ動くおそれがあり、安全性の観点から好ましくないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、下柱の上方で上柱を建て起こして、上柱の建込みを支援できる上柱の建込み支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱の建込みを支援する上柱の建込み支援装置であって、下柱の上端部に取付けられた下柱側基部と、寝かせた状態における前記上柱の下端部の下側に取付けられた上柱側基部と、水平方向を回転軸として、前記下柱側基部と前記上柱側基部とを枢動可能に連結する枢動部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記上柱の下端部とは、寝かせた状態における上柱の長手方向の一端部であって、上柱を建て起こした状態における下端側となる部位のことをいう。
この発明によれば、上柱の建込み支援装置は、下柱の上方で上柱を建て起こして、上柱の建込みを支援することができる。
【0010】
具体的には、上柱が枢動部を介して下柱に連結されるため、上柱の建込み支援装置は、寝かせた状態における上柱の上端部が吊り上げられた際、水平方向を中心に上柱を回動させることができる。このため、上柱の建込み支援装置は、寝かせた状態の上柱を、下柱の直上で起立させることができる。
【0011】
この際、上柱が下柱に常に連結されているため、上柱の建込み支援装置は、上端部の吊り上げに伴う上柱の揺れ動きを抑えることができる。
さらに、上柱が下柱に連結されているため、上柱の建込み支援装置は、上端部の吊り上げ過程において、例えば上柱の下端部が落下して下柱や床面に衝突することを防止できる。
【0012】
これにより、上柱の建込み支援装置は、下柱の上方で上柱を安全に建て起こして、上柱の建込みを支援することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、寝かせた状態で搬入された上柱を、例えば夜間に限らず建て起こすことができる。
【0013】
この発明の態様として、前記枢動部は、前記下柱のエレクションピースと前記上柱のエレクションピースとを枢動可能に連結する連結アームで構成されてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、下柱側基部及び上柱側基部を別途設けることなく、下柱と上柱とを連結アームで連結することができる。
【0014】
さらに、上柱の建込み支援装置は、連結アームを着脱するだけで、下柱と上柱との連結、及び連結の解除が行えるため、作業性の向上を図ることができる。
【0015】
これにより、上柱の建込み支援装置は、作業性を損なうことなく、下柱と上柱とを簡素な構成で枢動可能に連結することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記下柱に取り付けられるとともに、前記下柱の直上へ前記上柱を案内するガイド部材を備えてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、水平方向を中心に回動する上柱を、下柱の直上へ向けて確実に案内することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱を確実、かつ効率よく建て起こすことができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記ガイド部材は、前記上柱が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材を備えてもよい。
この構成によれば、ガイド部材は、上柱を下柱の直上へよりスムーズに案内することができる。
【0018】
これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱の回動が阻害されることによる意図しない不具合、あるいはガイド部材との摺動による上柱の傷付きを防止することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱の安全な建て起こしをより確実に支援することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記ガイド部材は、前記下柱の前記エレクションピースに取付けられてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、ガイド部材を取付けるための部位を、下柱に別途設けることを不要にできる。
【0020】
さらに、上柱の建込み支援装置は、下柱のエレクションピースと連結アームとの連結箇所に対するガイド部材の位置ズレを抑えることができる。
これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱の回動軌跡をより安定させることができるため、上柱を下柱の直上へさらに確実に案内することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記枢動部を第1枢動部とし、上下方向を回転軸に前記下柱側基部と前記上柱側基部とを枢動可能に連結する第2枢動部を備えてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、第2枢動部を中心に上柱を水平方向へ回動させながら、上柱を建て起こすことができる。
【0022】
あるいは、上柱の建込み支援装置は、起立した上柱を、第2枢動部を中心に水平方向へ回転させて、下柱の直上に位置させることができる。
このため、上柱の建込み支援装置は、上下方向を回転中心とした回転方向における上柱の向きを容易に下柱に一致させることができる。
【0023】
これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱が起立した際、上柱の向きが下柱の向きに一致するように、寝かせた状態の上柱を下柱の向きに応じて予め回転させておくことを不要にできる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記第2枢動部は、上下方向に延びる軸体と、上下方向に延びるとともに、前記軸体が挿通される筒体とで構成され、該筒体は、径方向中心をとおる縦断面で二分割されるとともに、上下方向を回転軸として開閉可能に構成されてもよい。
【0025】
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、軸体を水平方向から筒体に挿通することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、予め下柱側基部を取付けた下柱に、上柱側基部及び第1枢動部を取付けた上柱を容易に連結することができる。
【0026】
この際、上柱の建込み支援装置は、軸体を上下方向から筒体に挿通する場合に比べて、寝かせた状態の上柱を吊り上げる高さを抑えることができる。このため、上柱の建込み支援装置は、下柱と上柱とを安全に連結することができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記下柱側基部及び前記上柱側基部は、それぞれ下柱及び上柱を挟持する構成であってもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、例えばエレクションピースが設けられていない下柱の外側面及び上柱の外側面に、下柱側基部及び上柱側基部を取付けることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記下柱側基部と床面とに亘って配設されるとともに、前記下柱側基部を下方から支持する支柱部材を備えてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、下柱を挟持する下柱側基部が、上柱の重量によって下方へ位置ズレすることを支柱部材によって阻止することができる。
【0029】
これにより、上柱の建込み支援装置は、上下方向における第1枢動部の位置が安定するため、第1枢動部を中心に回動する上柱の回動軌跡をさらに安定させることができる。このため、上柱の建込み支援装置は、より確実に下柱の直上へ上柱を建て起こすことができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記下柱側基部及び前記上柱側基部が、それぞれ下柱のエレクションピース及び上柱のエレクションピースで構成されてもよい。
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、例えば下柱側基部及び上柱側基部をそれぞれ下柱及び上柱に締結して装着することを不要にできる。あるいは、上柱の建込み支援装置は、エレクションピースとは別体の下柱側基部及び上柱側基部を、下柱及び上柱に一体的に設けることを不要にできる。
【0031】
さらに、上柱の建込み支援装置は、下柱側基部及び上柱側基部の取外しと、エレクションピースの取外しとを同時に行うことができる。
これにより、上柱の建込み支援装置は、作業効率の向上を図るとともに、上柱の建て起こしを簡素な構成で支援することができる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記上柱側基部に対向して前記上柱に一端が取付けられたワイヤーと、前記ワイヤーを巻き取る巻取り機と、前記下柱側基部に対向する前記下柱の外側面に沿って配置されるとともに、前記ワイヤーの巻取りを案内するガイドローラーとを備えてもよい。
【0033】
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、上柱が寝かせた状態に戻ることをワイヤーの巻取りによって阻止しながら、上柱の建て起こしをワイヤーの巻取りによって支援することができる。
【0034】
つまり、上柱の建込み支援装置は、上端部が吊り上げられた上柱をワイヤーの張力によって支持することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、上柱の建込みにおける安全性を向上することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、寝かせた状態の前記上柱の前記下端部を下方から支持するジャッキを備えてもよい。
この構成によれば、枢動部に加わる荷重をジャッキによって軽減できるため、上柱の建込み支援装置は、枢動部の摺動抵抗を小さくすることができる。これにより、上柱の建込み支援装置は、上柱の上端部が吊り上げられた際、枢動部を中心に上柱をスムーズに回動開始させることができる。
【0036】
またこの発明の態様として、前記上柱が転倒することを伸長によって抑止する転倒抑止機構部を備えてもよい。
上記上柱が転倒するとは、上端部が吊り上げられた上柱が寝かせた状態に戻るように、上柱が枢動部を中心に回動することをいう。
上記転倒抑止機構部とは、例えば少なくとも1つ以上のダンパーで構成された転倒抑止機構部、あるいは断面形状の大きさが異なる内部中空の柱状部材を伸縮可能に連結した転倒抑止機構部などのことをいう。
【0037】
この構成によれば、上柱の建込み支援装置は、建て起こし過程の上柱が寝かせた状態へ戻るように転倒することを、転倒抑止機構部によって抑止することができる。
さらに、例えば上柱に付勢力を付与しながら、上柱の建て起こしに伴って縮む転倒抑止機構部とすることで、上柱の建込み支援装置は、回動する上柱が下柱に接触する際、上柱が下柱に勢いよく接触することを防止できる。
このため、上柱の建込み支援装置は、上柱の安全な建て起こしをさらに確実に支援することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記転倒抑止機構部は、前記上柱側基部が設けられた前記上柱の面に一端が枢動自在に連結され、伸縮した状態を維持可能な伸縮部材と、寝かせた状態の前記上柱の下方に位置する床面に載置され、前記伸縮部材の他端が枢動自在に係止される係止部材とで構成され、該係止部材は、前記上柱の上端部の吊り上げに伴って、前記伸縮部材の他端が前記下柱に向かう前記長手方向へ移動可能に構成されてもよい。
【0039】
この構成によれば、一端が上柱に連結され、他端が係止部材に係止されているため、伸縮部材は、床面と上柱との間で突っ張るように上柱を支持することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、枢動部を中心に上柱が転倒することを確実に抑止することができる。
【0040】
さらに、上柱の上端部の吊り上げに伴って、伸縮部材の他端が下柱に向かう長手方向へ移動できるため、上柱の建込み支援装置は、移動不可の状態で係止される伸縮部材に比べて、全長の短い伸縮部材で上柱を支持することができる。
これにより、上柱の建込み支援装置は、伸縮部材の大型化を抑えて、上柱の安全な建て起こしを支援することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記転倒抑止機構部は、前記上柱側基部に対向して前記上柱にピストンロッドが枢動自在に連結された第1オイルダンパーと、床面にピストンロッドが枢動自在に連結された第2オイルダンパーと、前記第1オイルダンパーのシリンダと前記第2オイルダンパーのシリンダとを枢動不可の状態で連結する連結部とで構成され、前記第1オイルダンパー及び前記第2オイルダンパーは、それぞれピストンロッドに引張荷重が作用した際、シリンダの内部を流動する作動油の流量を制限する構成であってもよい。
【0042】
この構成によれば、第1オイルダンパー及び第2オイルダンパーが伸長する際、シリンダの内部を流動する作動油の流量が制限されるため、転倒抑止機構部は、作動油の流量が制限されていない場合に比べて、伸長速度が緩やかになる。
【0043】
換言すると、第1オイルダンパーのピストンロッド及び第2オイルダンパーのピストンロッドにそれぞれ引張荷重が加わった際、転倒抑止機構部は、引張荷重に抗して伸長することになる。
【0044】
このため、建て起こし過程の上柱が寝かせた状態へ戻るように転倒開始した際、上柱の建込み支援装置は、転倒抑止機構部によって上柱の転倒速度を緩やかにして、上柱の転倒を抑止することができる。
【0045】
さらに、上柱の建込み支援装置は、床面と上柱とを転倒抑止機構部で連結できるため、上端部の吊り上げに伴う上柱の揺れ動きを転倒抑止機構部によって抑制することができる。このため、上柱の建込み支援装置は、例えば上柱の吊り上げる重機に、バランスを崩すような荷重が作用することを抑えることができる。
したがって、上柱の建込み支援装置は、上柱の安全な建て起こしをさらに確実に支援することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明により、下柱の上方で上柱を建て起こして、上柱の建込みを支援できる上柱の建込み支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】起立状態における上柱の概略を説明する説明図。
【
図2】吊り上げ直前の上柱の概略を説明する説明図。
【
図4】斜め下方視における枢動機構部の外観を示す外観斜視図。
【
図5】斜め上方視における枢動機構部の外観を示す外観斜視図。
【
図7】下柱側基部と連結アームの連結箇所を中心に回動する上柱の状態を説明する説明図。
【
図8】建て起こし過程における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図9】上柱が起立した状態における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図10】実施例2における建込み支援装置の外観を示す正面図。
【
図11】実施例3における建込み支援装置の外観を示す正面図。
【
図12】斜め下方視における建込み支援装置の外観を示す外観斜視図。
【
図13】斜め上方視における建込み支援装置の外観を示す外観斜視図。
【
図14】第1枢動部及び第2枢動部の分解状態を示す分解斜視図。
【
図17】第1枢動部を中心に回動する上柱の状態を説明する説明図。
【
図18】第2枢動部を中心に回動する上柱の状態を説明する説明図。
【
図19】実施例4における建込み支援装置の外観を示す正面図。
【
図20】第1枢動部及び第2枢動部の概略を説明する説明図。
【
図22】建て起こし過程における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図23】上柱が起立した状態における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図24】実施例5における建込み支援装置の外観を示す正面図。
【
図26】建て起こし過程における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図27】上柱が起立した状態における建込み支援装置の状態を説明する説明図。
【
図28】実施例6における建込み支援装置の分解状態を示す分解斜視図。
【
図30】第1枢動部を中心に回動する上柱の状態を説明する説明図。
【
図31】別の実施形態における建込み支援装置の外観を示す正面図。
【
図32】別の実施形態における転倒抑止機構部の動作を説明する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0049】
実施例1では、寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する建込み支援装置5について、
図1から
図6を用いて説明する。
なお、
図1は起立状態における上柱1の概略を説明する説明図を示し、
図2は吊り上げ直前の上柱1の概略を説明する説明図を示し、
図3は建込み支援装置5の正面図を示している。
【0050】
さらに、
図4は斜め下方視における枢動機構部10の外観斜視図を示し、
図5は斜め上方視における枢動機構部10の外観斜視図を示し、
図6はガイド部材14の要部の正面図を示している。
加えて、
図6中において、寝かせた状態の上柱1を実線で図示するとともに、建て起こし過程の上柱1を二点鎖線で図示している。
【0051】
また、
図1中の上側を本実施形態における上方とし、
図1中の下側を本実施形態における下方として、図中の矢印Xは前後方向(以下、前後方向Xとする)を示し、図中の矢印Yは幅方向(以下、幅方向Yとする)を示している。
【0052】
まず、上柱1は、
図1に示すように、下端が基礎などに固定された下柱2の上端に連結され、例えば線路の上空に建設される駅舎などの建築物の鉄骨柱3を構成している。
この上柱1は、
図1に示すように、下柱2に連結された状態において、上下方向を長手方向とする筒状の鉄骨であって、水平方向(短手方向)に沿った断面形状が断面略矩形に形成されている(
図4参照)。
なお、上柱1は、長手方向が上下方向となるように起立した状態において、外側面と下端面との隅部1aが面取りされた形状に形成されている。
【0053】
さらに、上柱1には、
図1に示すように、下方の端部である下端部に配置された下側エレクションピース1bが、各外側面に2つずつ接合されている。
加えて、上柱1には、
図1に示すように、上方の端部である上端部に配置された上側エレクションピース1cと、上側エレクションピース1cよりも下方に配置された梁ブラケット1dが、各外側面に1つずつ接合されている。
【0054】
このような上柱1は、
図2に示すように、長手方向が略水平となるように寝かせた状態(横倒し状態)で後述する床版4上に搬入され、下柱2の上方において、後述する建込み支援装置5によって建て起こしが支援される。
【0055】
また、下柱2は、
図1に示すように、上下方向に延びる筒状の鉄骨であって、水平方向(短手方向)に沿った断面形状が、上柱1に略同じ大きさの断面略矩形に形成されている(
図4参照)。
この下柱2には、
図1に示すように、上方の端部である上端部に配置された上側エレクションピース2aが、各外側面に2つずつ接合されるとともに、上側エレクションピース2aよりも下方に配置された梁ブラケット2bが、各外側面に1つずつ接合されている。
【0056】
さらに、下柱2には、
図1に示すように、上側エレクションピース2aと梁ブラケット2bとの間に、建築物の床部分となる床版4が接合されている。このため、下柱2は、上端部が床版4よりも上方に突出するように配置されている。
【0057】
次に、寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する建込み支援装置5について詳述する。
建込み支援装置5は、
図2及び
図3に示すように、起立状態において下端部となる上柱1の一端側(以下、下端部と呼ぶ)と下柱2の上端部とを枢動可能に連結する枢動機構部10と、建て起こし過程の上柱1をワイヤー22の張力によって支持する巻取り機構部20とで構成されている。
【0058】
枢動機構部10は、
図3から
図5に示すように、上柱1に配設された一対の上柱側基部11と、下柱2に配設された一対の下柱側基部12と、上柱側基部11を下柱側基部12に連結する一対の連結アーム13と、上柱1の建て起こしを案内するガイド部材14とで構成されている。
【0059】
詳述すると、一対の上柱側基部11は、
図3から
図5に示すように、寝かせた状態における上柱1の下面となる外側面に設けられた一対の下側エレクションピース1bで構成されている。なお、下側エレクションピース1bは、
図4及び
図5に示すように、前後方向Xに厚みを有するとともに、上柱1の長手方向に長い正面視略矩形の平板状に形成されている。
【0060】
また、一対の下柱側基部12は、
図3から
図5に示すように、幅方向Yで対向する下柱2の外側面のうち、一方の外側面に設けられた一対の上側エレクションピース2aで構成されている。なお、上側エレクションピース2aは、
図4及び
図5に示すように、前後方向Xに厚みを有するとともに、下柱2の長手方向に長い正面視略矩形の平板状に形成されている。
【0061】
また、一対の連結アーム13は、
図3から
図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する帯状の板材であって、上柱1が起立した状態において、上柱側基部11の下部と下柱側基部12の上部とを連結する長さに形成されている。
【0062】
この一対の連結アーム13は、上柱側基部11及び下柱側基部12に着脱自在に取付けられるとともに、上柱側基部11及び下柱側基部12に対して、それぞれ前後方向Xを回転軸として枢動可能に連結されている。
【0063】
具体的には、一対の連結アーム13は、
図5に示すように、長手方向の一端が、ボルト13a及びナット13bを介して、上柱1の上柱側基部11に取付けられている。
さらに、一対の連結アーム13は、
図5に示すように、長手方向の他端が、ボルト13c及びナット13dを介して、下柱2の下柱側基部12に取付けられている。この連結アーム13の他端は、
図5に示すように、後述するガイド部材14に対しても枢動可能に連結されている。
【0064】
また、ガイド部材14は、
図4及び
図5に示すように、下柱側基部12の間において、下柱2の外側面に当接するように配置されている。このガイド部材14は、
図5に示すように、下柱側基部12に装着されるガイド基部15と、ガイド基部15の上端面に貼付した低摩擦係数の滑り部材16とで構成されている。
【0065】
ガイド基部15は、
図5に示すように、前後方向Xに所定間隔を隔てて配置され、下柱側基部12に装着される一対の側壁部15aと、側壁部15aの上端を連結する天板部15bとで一体形成されている。
【0066】
具体的には、一対の側壁部15aは、
図5に示すように、前後方向Xに厚みを有する平板状であって、前後方向Xで対面する下柱側基部12の主面にボルト13c及びナット13dを用いて装着されている。
この側壁部15aの上端面は、
図6に示すように、下柱2の上端面よりも上方に位置するとともに、下柱2から幅方向Yへ向けて離間するほど上方に位置するように傾斜した傾斜面に形成されている。
【0067】
天板部15bは、
図5に示すように、上下方向に厚みを有する平板状であって、側壁部15aの上端面を前後方向Xに連結している。
この天板部15bの上面には、
図5に示すように、上柱1の隅部1a近傍が摺動する滑り部材16が貼付されている。
【0068】
滑り部材16は、自己潤滑性及び低摩擦係数のエンジニアリングプラスチック製であって、例えばモノマーキャストナイロンで構成されている。
この滑り部材16は、
図6に示すように、上下方向に厚みを有する板状であって、下柱2の直上へ向かう上柱1の隅部1a近傍の回動軌跡に沿うように、上面が上方へ僅かに膨出した正面視略蒲鉾状に形成されている。
【0069】
ここで、上柱1の隅部1a近傍の回動軌跡は、連結アーム13と下柱側基部12との連結箇所を中心に上柱1が回動した際、上柱1の隅部1a近傍が描く回動軌跡とする。
より詳しくは、滑り部材16の上面は、正面視において、傾きを異ならせた平面を組み合わせて、幅方向Yの略中央が最も上方へ膨出した形状になるように形成されている。
【0070】
また、巻取り機構部20は、
図3に示すように、枢動機構部10に対して幅方向Yに対向するように配置されている。この巻取り機構部20は、上柱1に着脱自在に取付けられたワイヤー連結部21と、ワイヤー連結部21に一端が連結された金属製のワイヤー22と、ワイヤー22を巻き取る巻取り機23と、下柱2に着脱自在に取付けられたローラー部24とで構成されている。
【0071】
具体的には、ワイヤー連結部21は、
図3に示すように、上柱1を寝かせた状態において、上柱1の上面に設けた下側エレクションピース1bに締結固定されている。つまり、ワイヤー連結部21は、上柱側基部11に対向する上柱1の下側エレクションピース1bに締結固定されている。
【0072】
また、巻取り機23は、例えば原動機または電力によって駆動して、ワイヤー22を送り出す機能と、ワイヤー22を巻き取る機能とを有している。この巻取り機23は、
図3に示すように、下柱2を挟んで連結アーム13から離間する幅方向Yへ所定間隔を隔てた位置に配置されている。
【0073】
ローラー部24は、
図3に示すように、下柱側基部12に対向する下柱2の上側エレクションピース2aに締結固定されている。このローラー部24は、ワイヤー22の送り出し、またはワイヤー22の巻取りを案内する機能を有している。
【0074】
具体的には、ローラー部24は、
図3に示すように、下柱2の外側面に沿って上下方向に並置されるとともに、前後方向Xを回転軸として回転可能に支持された2つのガイドローラー24aを備えている。この2つのガイドローラー24aは、幅方向Yにおいて、上側のガイドローラー24aが、下側のガイドローラー24aよりも下柱2に近い位置に配設されている。
【0075】
なお、巻取り機23から引き出されたワイヤー22は、
図3に示すように、下側のガイドローラー24aにおける下方側を通って上側のガイドローラー24aへ向けて配索されたのち、上側のガイドローラー24aの上方側を通ってワイヤー連結部21に連結されている。
【0076】
引き続き、上述した構成の建込み支援装置5を用いて、寝かせた状態の上柱1を建て起こして下柱2に連結する工程について、
図7から
図9を用いて説明する。
なお、
図7は下柱側基部12と連結アーム13の連結箇所を中心に回動する上柱1の状態を説明する説明図を示し、
図8は建て起こし過程における建込み支援装置5の状態を説明する説明図を示し、
図9は上柱1が起立した状態における建込み支援装置5の状態を説明する説明図を示している。
【0077】
まず、作業者は、
図3に示すように、下柱2に対して連結アーム13、ガイド部材14、及びローラー部24を取付ける。
その後、作業者は、
図2に示すように、上柱1をクレーンなどの重機を用いて、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で床版4上に搬入する。
この際、作業者は、寝かせた状態の上柱1の前面及び後面が、下柱2の前面及び後面に略平行で、かつ略同じ前後方向Xの位置となるように、上柱1の向きを調整して搬入する。
【0078】
床版4上に上柱1が搬入されると、作業者は、
図3に示すように、連結アーム13を上柱1に連結して、上柱1の隅部1a近傍とガイド部材14の滑り部材16とを当接させる。
さらに、作業者は、
図3に示すように、上柱1にワイヤー連結部21を取付けるとともに、巻取り機23から引き出したワイヤー22をワイヤー連結部21に連結する。
【0079】
その後、作業者は、
図2に示すように、起立状態において上端部となる上柱1の他端側(以下、上端部と呼ぶ)に、クレーンなどの重機のワイヤーを連結して、上柱1の吊り上げ準備を完了する。
【0080】
上柱1の吊り上げ準備が完了すると、作業者は、
図7に示すように、重機を用いて、上柱1の上端部の吊り上げを開始するとともに、巻取り機23を稼働してワイヤー22の巻取りを開始する。
【0081】
この際、作業者は、巻取り機23がワイヤー22を巻き取る速度を、上柱1の吊り上げ速度に略同じ、または僅かに速い速度になるように調整して、ワイヤー22に張力を発生させる。
【0082】
上端部の吊り上げが開始されると、上柱1は、
図8に示すように、ワイヤー22の張力によって支持されながら、下柱側基部12と連結アーム13との連結箇所を中心に、上端部が上方へ向かうように正面視反時計周りに回動開始する。この際、上柱1は、
図6に示すように、隅部1a近傍がガイド部材14の滑り部材16上を摺動しながら回動する。
【0083】
その後、作業者は、
図9に示すように、下柱側基部12と連結アーム13との連結箇所を中心に回動する上柱1が起立するまで上端部を吊り上げたのち、上柱1の吊り上げ、及びワイヤー22の巻取りを停止する。
【0084】
この際、上柱1は、
図9に示すように、下柱2の直上で起立するとともに、各外側面の向きが下柱2の各外側面の向きに一致した状態となる。
その後、作業者は、上柱1を吊り上げた状態において、連結アーム13、ワイヤー連結部21、及びローラー部24を取り外す。
【0085】
さらに、作業者は、上柱1の下側エレクションピース1bと下柱2の上側エレクションピース2aとを適宜の部材を用いて連結したのち、下柱2と上柱1とを溶接によって接合して鉄骨柱3を構成する。
このように、実施例1の建込み支援装置5は、下柱2の上空において、寝かせた状態の上柱1の建て起こしを可能にして、上柱1の建込みを支援している。
【0086】
以上のように、実施例1における上柱1の建込み支援装置5は、長手方向が略水平となるように寝かせた状態で搬入された上柱1の建込みを支援する装置である。
この建込み支援装置5は、下柱2の上端部に取付けられた下柱側基部12と、寝かせた状態における上柱1の下端部の下側に取付けられた上柱側基部11と、水平方向を回転軸として、下柱側基部12と上柱側基部11とを枢動可能に連結する枢動部(連結アーム13)とを備えたものである。
【0087】
この構成によれば、上柱1の建込み支援装置5は、下柱2の上方で上柱1を建て起こして、上柱1の建込みを支援することができる。
具体的には、上柱1が枢動部(連結アーム13)を介して下柱2に連結されるため、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の上端部が吊り上げられた際、水平方向を中心に上柱1を回動させることができる。このため、上柱1の建込み支援装置5は、寝かせた状態の上柱1を、下柱2の直上で起立させることができる。
【0088】
この際、上柱1が下柱2に常に連結されているため、上柱1の建込み支援装置5は、上端部の吊り上げに伴う上柱1の揺れ動きを抑えることができる。
さらに、上柱1が下柱2に連結されているため、上柱1の建込み支援装置5は、上端部の吊り上げ過程において、例えば上柱1の下端部が落下して下柱2や床面に衝突することを防止できる。
【0089】
これにより、上柱1の建込み支援装置5は、下柱2の上方で上柱1を安全に建て起こして、上柱1の建込みを支援することができる。このため、上柱1の建込み支援装置5は、寝かせた状態で搬入された上柱1を、例えば夜間に限らず建て起こすことができる。
【0090】
また、枢動部は、下柱2の上側エレクションピース2aと上柱1の下側エレクションピース1bとを枢動可能に連結する連結アーム13で構成されたものである。
この構成によれば、上柱1の建込み支援装置5は、下柱側基部及び上柱側基部を別途設けることなく、下柱2と上柱1とを連結アーム13で連結することができる。
【0091】
さらに、上柱1の建込み支援装置5は、連結アーム13を着脱するだけで、下柱2と上柱1との連結、及び連結の解除が行えるため、作業性の向上を図ることができる。
これにより、上柱1の建込み支援装置5は、作業性を損なうことなく、下柱2と上柱1とを簡素な構成で枢動可能に連結することができる。
【0092】
また、上柱1の建込み支援装置5は、下柱2に取り付けられるとともに、下柱2の直上へ上柱1を案内するガイド部材14を備えたものである。
この構成によれば、上柱1の建込み支援装置5は、水平方向を中心に回動する上柱1を、下柱2の直上へ向けて確実に案内することができる。このため、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1を確実、かつ効率よく建て起こすことができる。
【0093】
また、ガイド部材14は、上柱1が摺動する摺動面に低摩擦係数の滑り部材16を備えたものである。
この構成によれば、ガイド部材14は、上柱1を下柱2の直上へよりスムーズに案内することができる。
【0094】
これにより、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の回動が阻害されることによる意図しない不具合、あるいはガイド部材14との摺動による上柱1の傷付きを防止することができる。このため、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の安全な建て起こしをより確実に支援することができる。
【0095】
また、ガイド部材14は、下柱2の上側エレクションピース2aに取付けられたものである。
この構成によれば、上柱1の建込み支援装置5は、ガイド部材14を取付けるための部位を、下柱2に別途設けることを不要にできる。
【0096】
さらに、上柱1の建込み支援装置5は、下柱2の上側エレクションピース2aと連結アーム13との連結箇所に対するガイド部材14の位置ズレを抑えることができる。
これにより、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の回動軌跡をより安定させることができるため、上柱1を下柱2の直上へさらに確実に案内することができる。
【0097】
また、上柱1の建込み支援装置5は、上柱側基部11に対向して上柱1に一端が取付けられたワイヤー22と、ワイヤー22を巻き取る巻取り機23と、下柱側基部12に対向する下柱2の外側面に沿って配置されるとともに、ワイヤー22の巻取りを案内するローラー部24とを備えたものである。
【0098】
この構成によれば、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1が寝かせた状態に戻ることをワイヤー22の巻取りによって阻止しながら、上柱1の建て起こしをワイヤー22の巻取りによって支援することができる。
【0099】
つまり、上柱1の建込み支援装置5は、上端部が吊り上げられた上柱1をワイヤー22の張力によって支持することができる。このため、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の建込みにおける安全性を向上することができる。
一対のダンパー30は、下柱2を挟んで前後方向Xに対向配置され、一方のダンパー30が上柱1の前面と下柱2の前面とを連結し、他方のダンパー30が上柱1の背面と下柱2の背面とを連結している。
このような建込み支援装置5を用いて上柱1を建て起こした場合、ダンパー30は、下柱取付部材32との連結箇所を中心に正面視反時計周りに回動しながらピストンロッド30bがシリンダ30aに収容されることで、上柱1への付勢力が緩やかに増加する。
このため、上柱1は、ダンパー30の付勢力に抗しながら、下柱側基部12と連結アーム13との連結箇所を中心に正面視反時計周りに回動することになる。これにより、実施例2の建込み支援装置5は、建て起こしに伴って増大する上柱1の下方成分の荷重を、ダンパー30によって吸収しながら上柱1の建て起こしを支援している。
なお、上柱1が寝かせた状態に戻るように転倒開始した場合、ダンパー30に引張荷重が作用するため、ダンパー30は、引張荷重に抗しながら伸長する。これにより、ダンパー30は、上柱1を吊り上げる重機との協働によって、上柱1の転倒速度を緩やかにして、上柱1の転倒を抑止する。
以上のように、実施例2における上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の上柱側基部11と下柱2の下柱側基部12とが連結アーム13で連結されているため、上述した実施例1と同様の効果を奏することができる。
さらに、上柱1に付勢力を付与しながら、上柱1の建て起こしに伴って縮むダンパー30により、上柱1の建込み支援装置5は、回動する上柱1が下柱2に接触する際、上柱1が下柱2に勢いよく接触することを防止できる。
このため、上柱1の建込み支援装置5は、上柱1の安全な建て起こしをさらに確実に支援することができる。