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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125068
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028990
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】川田 昌平
【テーマコード(参考)】
2B064
【Fターム(参考)】
2B064AA05
2B064CA04
2B064CA11
2B064CA15
2B064CA26
2B064CA31
2B064CA35
2B064CB06
(57)【要約】
【課題】施肥タンクの上方を開放移動した移動棚苗台に載置する補給容器から、肥料こぼれのない補給作業をスムーズにできる移植機を提供する。
【解決手段】予備苗台装置10の下方に物載せ移動装置11の設置スペースを有して施肥タンク12を設けると共に、物載せ移動装置11の移動物載せ台14を回動部19又はスライド移動機構22を介し、施肥タンク12とラップする格納姿勢から側方又は前方に向けて移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成した。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)の後部に苗を植え付ける植付作業機(8)を連結し、操縦部(6)の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置(10)を設け、該予備苗台装置(10)の下方に畦側から移動物載せ台(14)に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置(11)を設けると共に、該物載せ移動装置(11)の下方に肥料を収容する施肥タンク(12)を設置する移植機において、
前記予備苗台装置(10)と施肥タンク(12)の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置(11)の回動部(19)に移動物載せ台(14)を水平回動可能に取付支持し、該移動物載せ台(14)を、前記回動部(19)を支点に施肥タンク(12)と上下方向にラップする格納姿勢から側方及び前方に向けて回動移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することを特徴とする移植機。
【請求項2】
走行機体(2)の後部に苗を植え付ける植付作業機(8)を連結し、操縦部(6)の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置(10)を設け、該予備苗台装置(10)の下方に畦側から移動物載せ台(14)に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置(11)を設けると共に、該物載せ移動装置(11)の下方に肥料を収容する施肥タンク(12)を設置する移植機において、
前記予備苗台装置(10)と施肥タンク(12)の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置(11)のスライド移動機構(22)に移動物載せ台(14)を水平移動可能に取付け支持し、該移動物載せ台(14)を、スライド移動機構(22)を介し施肥タンク(12)と上下方向にラップする格納姿勢から前方に向けて可逆的にスライド移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することを特徴とする移植機。
【請求項3】
前記移動物載せ台(14)に載置する補給容器(17)の補給口(17a)と、施肥タンク(12)の供給口(12d)とを連結ホース(30)によって連通する請求項1又は2に記載の移植機。
【請求項4】
前記連結ホース(30)の中途部に肥料の補給及び停止を操作可能にするバルブ(31)を設ける請求項1~3の何れか1項に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移植機の物載せ移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の後部に苗を植え付ける植付作業機を連結し、操縦部の前部側方に畦側から複数の予備苗を多段に載せて一時的にストックする予備苗台装置(予備苗枠)を設け、該予備苗台装置の下方に畦側から移動物載せ台(積載部材)に載せられる積載物を走行機体側の所望位置に移動可能にする物載せ移動装置(積込装置)を備える移植機は既に公知である。
上記物載せ移動装置は、移動物載せ台を予備苗台装置の前部で走行機体の前端部に設けられる回動部(回転軸)に、側方及び前方に回動可能に支持される移動物載せ台に対し、肥料や燃料などの作業資材を積載物として畦側から載せ走行機体側に回動移動して積込作業を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6024853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される移植機は、走行機体の進行に伴い肥料や燃料などが少なくなったとき、圃場端に移動停車した状態で作業者が重たい肥料や燃料などを持ってぬかるんだ田面を徒に歩くことなく、物載せ移動装置の移動物載せ台に載せて走行機体側に運ぶだけの省力的な動作によって積み込める利点がある。
然しながら、この物載せ移動装置は、操縦席の後方で高い位置にある肥料タンク(肥料ホッパ)に肥料を供給することから、移動物載せ台が前後に長く大型化する構造であるため、水田作業機としては不利な重量構造になる欠点があると共に、移動物載せ台を格納姿勢に切換えたとき、その前後部が上方に配置されている予備苗枠の棚板になる苗載せ台から前後方向に大きく突出するので、操縦席側にいる作業者の視界を妨げるなどの問題がある。
一方、機体前方に回動移動された移動物載せ台に燃料の携行缶を載せた状態で、下方に大きく離れた位置にある燃料タンクに給油をする際には長い供給ホースを必要とするため、供給ホースの取り扱いが煩雑になり液こぼれを生じやすい問題もある。
さらに、上記携行缶が例えば、粘度が高いペースト肥料を収容する合成樹脂製袋などの補給容器である場合に、移動物載せ台から離れた位置にある施肥タンクに対する補給作業は、長い供給ホースを使用すると時間を要すると共に、補給始めや終了時に液こぼれを生じやすいこと、及びこぼれた肥料が周囲を汚し錆を発生する等のトラブルを伴うなどの課題がある。
従って、これらの問題を解消するための補給作業は、補給容器を液こぼれなく楽で能率よく機体側タンクに供給できる構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、第1に、走行機体2の後部に苗を植え付ける植付作業機8を連結し、操縦部6の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置10を設け、該予備苗台装置10の下方に畦側から移動物載せ台14に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置11を設けると共に、該物載せ移動装置11の下方に肥料を収容する施肥タンク12を設置する移植機において、
前記予備苗台装置10と施肥タンク12の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置11の回動部19に移動物載せ台14を水平回動可能に取付支持し、該移動物載せ台14を、前記回動部19を支点に施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から側方及び前方に向けて回動移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することを特徴としている。
第2に、走行機体2の後部に苗を植え付ける植付作業機8を連結し、操縦部6の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置10を設け、該予備苗台装置10の下方に畦側から移動物載せ台14に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置11を設けると共に、該物載せ移動装置11の下方に肥料を収容する施肥タンク12を設置する移植機において、
前記予備苗台装置10と施肥タンク12の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置11のスライド移動機構22に移動物載せ台14を水平移動可能に取付け支持し、該移動物載せ台14を、スライド移動機構22を介し施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から前方に向けて可逆的にスライド移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することを特徴としている。
第3に、前記移動物載せ台14に載置する補給容器17の補給口17aと、施肥タンク12の供給口12dとを連結ホース30によって連通することを特徴としている。
第4に、前記連結ホース30の中途部に肥料の補給及び停止を操作可能にするバルブ31を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、走行機体2の後部に苗を植え付ける植付作業機8を連結し、操縦部6の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置10を設け、該予備苗台装置10の下方に畦側から移動物載せ台14に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置11を設けると共に、該物載せ移動装置11の下方に肥料を収容する施肥タンク12を設置する移植機において、前記予備苗台装置10と施肥タンク12の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置11の回動部19に移動物載せ台14を水平回動可能に取付支持し、該移動物載せ台14を、前記回動部19を支点に施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から側方及び前方に向けて回動移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することにより、
肥料補給をするとき移動物載せ台14を、回動部19を支点に回動移動して物載せ姿勢に切換えるだけで、施肥タンク12の上方を大きく開放しながら移動棚苗台14に補給容器17を安定よく載置した状態で、施肥タンク12に対し作業者が無理な姿勢をとることなく軽労化につながり補給作業を行ないやすくすることができる。
また作業者は移動物載せ台14に載置された補給容器17の供給口と施肥タンク12の供給口12aとの位置関係を、開放されたスペースを介して確認しやすくなるため、移動物載せ台14を適正な補給位置に位置決め移動できるため肥料こぼれのない補給作業をスムーズに行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、走行機体2の後部に苗を植え付ける植付作業機8を連結し、操縦部6の前部側方に予備苗を載せてストックする予備苗台装置10を設け、該予備苗台装置10の下方に畦側から移動物載せ台14に載せられる積載物を走行機体2側に移動可能にする物載せ移動装置11を設けると共に、該物載せ移動装置11の下方に肥料を収容する施肥タンク12を設置する移植機において、前記予備苗台装置10と施肥タンク12の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置11のスライド移動機構22に移動物載せ台14を水平移動可能に取付け支持し、該移動物載せ台14を、スライド移動機構22を介し施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から前方に向けて可逆的にスライド移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成することにより、
スライド移動機構22を介し移動物載せ台14を施肥タンク12に近接させて上方スペースに設置しやすくすると共に、作業者は前方で補給容器17を載せた移動物載せ台14をスライド移動機構22によって前後の適正補給位置に前後調節移動をして速やかに適正な位置決めをし、施肥タンク12に対し作業者が無理な姿勢をとることなく液こぼれのない補給作業を能率よく楽に行うことができる。
請求項3に係る発明によれば、前記移動物載せ台14に載置する補給容器17の補給口17aと、施肥タンク12の供給口12dとを連結ホース30によって連通することにより、
肥料の収容増大化を図り長時間の施肥作業を可能にすると共に、植付作業中途での肥料補給作業の手間を低減することができる。
請求項4に係る発明によれば、前記連結ホース30の中途部に肥料の補給及び停止を操作可能にするバルブ31を設けることにより、
補給容器17から施肥タンク12に肥料を補給する補給作業を、肥料の供給状態を把握しながらバルブ31を開閉操作できるので補給量の調節を液こぼれなく適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用した移植機の全体斜視図である。
図2】移植機の右側面図である。
図3】移植機の要部の構成を示す左側面図である。
図4図1の要部の構成を示す平面図である。
図5】右側の多段予備苗台と物載せ移動装置の構造を示す正面図である。
図6】左側の搬送予備苗台と移動物載せ台の構造を示す正面図である。
図7】左側の移動棚苗台の構造と連結ホースによる補給作業を示す要部の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1図2に示す移植機1は乗用型の田植機であり、走行機体2に前輪3aと後輪3bを備え、該走行機体2は前部にエンジン(図示せず)を搭載するエンジン搭載部5を構成し、その後方に作業者が乗車する操縦部6が構成され、該操縦部6はステアリングハンドル6a、運転座席6bなどを備えて構成され、運転座席6bの前下方に操縦部床面を形成するフロアステップ7が敷設されている。
【0009】
上記フロアステップ7は、前部両側に畦側からの乗降と各種の作業を可能にするサイドステップ7aと、後部両側で植付作業機8に対する苗補給などのメンテナンス作業を行うリヤステップ7bに連接している。
そして、図1図2に示すように走行機体2は、その後部に設置される昇降リンク機構8aを介し植付作業機8を昇降自在に連結している。
この植付作業機8は、前高後低状に傾斜する植付苗載台8b、該苗載台8bから苗を掻取って圃場に植付ける植付機構8c、田面を滑走するフロート8dなどを備えて構成される。
【0010】
上記構成において移植機1は、基部が走行機体2に取付固定されて門型形状をなす機体側枠9を前部左右のサイドステップ7aの外方側に立設し、各機体側枠9の上部に予備苗台装置10である、多段予備苗台10Rと搬送予備苗台10Lとが後述する各構成によって設置される。
即ち、右側の機体側枠9には補給用の苗箱を多段に載せてストックする多段予備苗台10Rが設置され、右側の機体側枠9には補給用の苗箱を前後方向に並べ後方搬送可能にストックする搬送予備苗台10Lが設置される。
【0011】
上記多段予備苗台10Rと搬送予備苗台10Lとの下方には、物載せ台として利用可能な物載せ移動装置(移動予備苗台装置)11である、右移動予備苗台装置11Rと左側の左移動予備苗台装置11Lとが設置される。
そして、ペースト状の肥料などを収容する施肥タンク12は、右移動予備苗台装置11Rと左側の左移動予備苗台装置11Lの各下方に物載せ移動装置11の設置スペースを有し、サイドステップ7aの外方において走行機体2から延設されるタンク支持枠9aによって取付支持される。
【0012】
この移動予備苗台装置11Rと移動予備苗台装置11Lは、多段予備苗台10Rと搬送予備苗台10Lと左右の施肥タンク12との間に各形成されるスペースに後述する構造によって使いやすくまとめて設置されている。
尚、図示例の施肥タンク12は、タンク上壁の前部寄りに開口した供給口12aを後部支点に開閉自在に覆う蓋12bを有し、合成樹脂成形によって略左右同一形状として製作される。そして、タンク内の肥料は施肥機構(図示せず)を介しノズル部12c(図2)から地中に施肥される。
【0013】
右側の多段予備苗台10Rは、右側の機体側枠9の上部に取付フレーム9Rを介して複数段に取付けられる棚苗台13と、その最下段に配置される移動予備苗台装置11Rの移動物載せ台としての第1の発明に係る移動物載せ台14とからなる。
左側の搬送予備苗台10Lは、左側の機体側枠9の上部に取付フレーム9Lを介して取付けられる、前後方向に長い方形状の公知の構成からなるスライダー型の搬送予備苗台15と、その前側下方で施肥タンク12との間に形成されるスペース内に配置される移動物載せ台としての第2の発明に係る移動物載せ台14とからなる。
【0014】
上記予備苗台装置10を備える移植機1は、苗の植え付け作業にともない植付苗載台8bに載置した載置苗が少なくなるとき、各ステップを利用しながら多段予備苗台10Rや搬送予備苗台10Lに載置しているマット状苗の補充作業ができる。
即ち、作業者は左右の予備苗台装置10にある予備苗を後方の植付苗載台8bに苗補給をすることができ、且つ補給後に空になった空苗箱の回収作業を搬送予備苗台15及びフロアステップ7、サイドステップ7a、リヤステップ7b等を利用して行うことができる。
【0015】
一方、施肥作業にともない施肥タンク12内の肥料が少なくなるとき作業者が行う肥料の補給作業は、移植機1を畦側に停止し各施肥タンク12の上方にある移動予備苗台装置11を、後述する本発明に係る回動移動機構又はスライド移動機構からなる移動予備苗台装置11Rと移動予備苗台装置11L等の移動手段により、側方又は前方等の物載せ姿勢に所望に切替えることができ、施肥タンク12の上方に広い補給作業スペースを形成すると共に、肥料補給や苗補給並びに必要とする作業資材の物載せ移動を行うことができる。
【0016】
この実施形態に係る移植機1は図1図4に示すように、右側の多段予備苗台10R側に第1の発明に係る回動移動機構方式の移動物載せ台14を設置すると共に、左側の搬送予備苗台10L側にスライド移動機構方式の移動物載せ台14を配置する構成を示している。
尚、左右で異なる図示する方式の移動物載せ台を備える移植機1は、移動物載せ台14と移動物載せ台14との各特徴を選択して使用できる利点があるが、これに限ることなく左右の移動物載せ台を同じ方式にしてもよく、また予備苗台装置10も左右で同じ方式にしてもよいものである。
【0017】
次に、上記移植機1の予備苗台装置10と本発明に係る移動物載せ台の具体構造について、先ず、機体右側の多段予備苗台10Rと第1の発明に係る移動予備苗台装置11Rの移動物載せ台14の構造と作用を説明し、次に機体左側の搬送予備苗台10Lと第2の発明に係る移動予備苗台装置11Lの移動物載せ台14の構造と作用について説明する。
【0018】
先ず、第1の発明について図1図2図4図5を参照し説明する。
右側の多段予備苗台10Rは、前記機体側枠9の上部に側面視方形状の苗台フレーム9Rを立設し、その前後の支柱に対し棚苗台13を複数段に取付け、最下段の棚苗台13と施肥タンク12との間に移動物載せ台としての移動物載せ台14を物載せ間隔(苗載せ間隔)と移動間隔を有して片持ち状に支持して配置した多段苗載置部を構成している。
【0019】
そして、移動予備苗台装置11Rは図5に示すように、正面視で逆L字状に屈曲した移動台支持枠18の脚部を前記門型状の機体側枠9の前側支柱に固設すると共に、上部で外方に伸びるアーム部の先端側に、移動物載せ台14を縦向きの回動軸を支点に左右方向に回動可能に支持する回動部19を設けている。
これにより移動予備苗台装置11Rは植付作業を停止した状態で、移動物載せ台14を図4に実線で示す苗載せ姿勢から、回動部19を支点に2点鎖線で示すように側方と前方など任意な物載せ姿勢位置に回動移動可能にすることができる。
【0020】
上記回動部19は図2図5に示すように、回動軸に後方に延長される支持アーム19aを備え、該支持アーム19aに沿って複数本の取付棒19bを横向き固設した剛体構造の台取付枠を構成し、この台取付枠に対し移動物載せ台14を後述する取付け手段によって着脱可能に取付けるようにしている。
また回動部19には、移動物載せ台14が回動軸を支点に回動する位置を位置決め固定するノブボルト又はピン係合手段などの位置決め手段を備えている。
【0021】
そして、実施形態の移動予備苗台装置11Rは、移動物載せ台14の形状をマット苗が収容される苗箱を載置可能な前記多段予備苗台10Rの棚苗台13と同デザインのものを兼用利用できる構造にしている。
実施形態の移動棚苗台14は、多段予備苗台10Rの最下段において、上方の棚苗台13と同デザインの棚苗台を兼用利用を可能にすることにより、該移動棚苗台14から前後方向に大きく突出させることなく同列状になるように配置している。
さらに、この苗載置可能位置において移動物載せ台14は、回動部19を支点に側方回動するとき苗台コーナー部が、近隣の苗台フレーム9Rなどに接当しないでスムーズに回動するようにコンパクトにまとめた配置によって構成している。
【0022】
即ち、このための移動物載せ台14の設置構造は、合成樹脂成形によって量産されている棚苗台13を兼用部品として安価で且つ強度を有して製作できるように、前記回動部19の支持アーム19aに沿って複数の取付棒19bを横向きに固設した剛体構造の台取付枠とし、この棚苗台13台取付枠に対し大きな改造を行うことなく単に取付孔を設ける程度の改造により強度を有して取付けるようにしている。
そして、図2図4に示すように移動物載せ台14の回動部19は、苗台フレーム9Rの前方で施肥タンク12の外側寄りに偏らせた位置に設け、これにより移動物載せ台14を多段列の棚苗台13と同じ列になるようにスッキリと使いやすく配置しながら外方への回動移動を可能にしている。
【0023】
そして、棚苗台13を利用した移動物載せ台14は図4に示すように、回動部19を支点に側方回動するとき台板の前部内方コーナー部が苗台フレーム9Rと接当することなくスムーズに回動できる台取付け間隔Hを有して取付けている。
これにより走行作業時における移動物載せ台14の外方への突出量を抑制したコンパクトな設置を可能にし、また棚苗台13の兼用利用を図るように簡潔な構成にして低コストで製造すると共に、全体の軽量化と取り扱いやすい構造にしている。
【0024】
以上のように第1の発明に係る移動予備苗台装置11Rは、前記予備苗台装置10の下方に物載せ移動装置11の設置スペースを有して施肥タンク12を設けると共に、該施肥タンク12の前部上方に設置される物載せ移動装置11の回動部19に移動物載せ台14を水平回動可能に構成し、該移動物載せ台14を回動部19を支点に施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から側方及び前方に向けて回動移動させる物載せ姿勢に切替え自在に構成している。
【0025】
これにより移植機1は肥料補給をするとき、側方又は前方に回動移動して施肥タンク12の上方を大きく開放した移動物載せ台14に対し、補給容器17を安定よく載置した状態で施肥タンク12に対し作業者が無理な姿勢をとることなく軽労化を図りながら補給作業を楽に能率よく行うことができる。
即ち、作業者は移動物載せ台14に載置された補給容器17の供給口と施肥タンク12の供給口12aとの位置を移動物載せ台14の水平回動により上下方向の部分ラップ代を調整し、開放状態にあるタンク上方スペースを介し確認しやすくなるため、移動物載せ台14を施肥タンク12と適正な補給位置に位置決め移動でき肥料こぼれのない補給作業を楽でスムーズに行うことができる。
【0026】
また移動物載せ台14は、上方に設置される予備苗台装置10と施肥タンク12とで形成されるスペースに、格納姿勢の移動物載せ台14と回動部19などを機外に大きく突出させることなくコンパクトに纏めて設置するので、走行作業を行うとき視界を大きく妨げることなく、また他物との接触を回避するなどの利点がある。
【0027】
次に、移植機1の左側に設置される搬送予備苗台10Lと移動予備苗台装置11Lについて図1図3図4図6を参照し説明する。
先ず、前後方向に長いスライダー型の搬送予備苗台10Lは、左側の機体側枠9の上部に設置される取付フレーム9Lに対し、在来構造によって搬送予備苗台15の方形状をなす枠体を在来構造による姿勢変更機構20を介し、上下方向の傾斜角度と左右方向の旋回角度を調節自在に操作できるように取付けられる。
【0028】
これによる搬送予備苗台15は姿勢変更機構20の操作により、苗箱類を安定姿勢で載置する水平状の通常作業姿勢(走行作業姿勢)、又は前高後低の傾斜姿勢にして植付作業を行ないやすくすると共に、サイドステップ7aからリヤステップ7bへの必要による歩行移動を可能にしている。
そして、図1図3に示すように上記作業姿勢にした搬送予備苗台15と施肥タンク12との間隔は、施肥タンク12の蓋12bが後部を支点に上方及び後方側に向けてスムーズに開閉動作するように形成している。
【0029】
一方、図1図3図6に示すように第2の発明に係る移動物載せ台14は、前記門型状をなす機体側枠9の前側支柱に対し、正面視で逆L字状に屈曲した移動台支持枠21の脚部を固設すると共に、該移動台支持枠21の上部で外方に伸びるアーム部に設置されるスライド移動機構22により前後方向に移動自在に取付支持している。
スライド移動機構22は、移動台支持枠21のアーム部に直交して取付けられる支持フレーム23に対し、移動物載せ台14を前記支持アーム19aなどの補強部材を介し強固に取付固定されるスライドフレーム25をスライド自在に係合支持するスライド手段によってコンパクトに纏めた構成している。
【0030】
即ち、図示例のスライド手段は、支持フレーム23の左右を張り出して屈曲形成したガイド片(レール部)を、スライドフレーム25の左右に内向きコ字状に屈曲形成したガイド溝片に嵌合させる軽量で高さが低い簡潔なスライド係合構造となし、且つ十分な前後長さを有して構成している。
これによる移動物載せ台14は、支持フレーム23の上方でスライドフレーム25を介し上下方向の離脱を防止し、各種の作業資材を安定的に載置して前後方向にスムーズにスライド移動すると共に、所望の停止位置においてノブボルト利用などワンタッチ位置決め手段によって速やかに固定をすることができる。
【0031】
そして、畦側から苗を収容した苗箱を載せた移動物載せ台14は、蓋12bが閉鎖された施肥タンク12の上方スペース内に位置決めされた苗載せ姿勢にできる。
また空になった移動棚苗台14は、苗載せ姿勢から前方に向けて直線的且つ可逆的にスライド移動して、タンク上方開放し蓋12bの開閉操作を可能にすると共に、畦側に近接移動させることができる。
【0032】
一方、上記構成されるスライド移動機構22は、施肥タンク12の上部に直接的に設けるか、又は施肥タンク12の前部で走行機体2側から延設する図示しない移動台支持枠によって、施肥タンク12の前側から上方に近接させて取付支持することもでき、この場合には、移動物載せ台14を可及的に低い高さでスライド移動可能に設置でき、またスライド移動機構22は、施肥タンク12に近接して沿わせながら前方に向けできるだけ長く形成できる等の利点がある。
【0033】
そして、低い高さでスライド移動可能な移動物載せ台14は、補給容器17を畦側から楽に安定的に載置することができ、そのまま後方に向けて移動物載せ台14を直線的に移動させて施肥タンク12の供給口12aに接近させることができる。
従って、補給容器17の供給口を施肥タンク12の供給口12aに最接近させた状態で、最適な補給姿勢を確認調整しながら肥料こぼれのない補給作業を能率よく正確に行うことができる等の利点がある。
【0034】
さらに、図示例のスライド機構22は、移動台支持枠21に対し前記右移動予備苗台装置11R側の移動物載せ台14と同様な構成からなる回動部19を介して前記支持フレーム23を左右回動自在に取付支持する実施形態を示している。
この場合のスライド機構22のスライドフレーム25に取付固定される移動物載せ台14は、該移動物載せ台14を施肥タンク12の上方に位置決めし苗を積載した状態で、第1発明の移動物載せ台14と同様に植付作業を支障なく行うことができる。
そして、作業者は移動物載せ台14に載置されているマット苗を必要により植付苗載台8bに補給し、次いで空になった苗箱は搬送予備苗台15又はリヤステップ7b及び移動物載せ台14等に仮置きして植付作業を行うことができる。
【0035】
次いで、移植機1を畦側に移動させて空苗箱を載せた移動物載せ台14から該空苗箱を降ろす場合は、回動部19とスライド移動機構22を介し、上記移動物載せ台14を左右方向に回動した所望位置で前方にスライド移動することで適正な降ろし位置を自由に選択できるので、空苗箱を圃場内での歩行移動を少なくしながら箱降ろし作業を楽で能率よく行うことができる。
また上記適正降ろし位置は同時に、畦側から作業資材等を載せる適正な積み込み位置になるため、作業者は必要により畦側に近接している移動物載せ台14に物を載せ、後方に向けて移動し物を走行機体2に積み換えたのち格納姿勢にできる。
【0036】
以上のように一連の植付作業を行う移植機1は第2の発明によれば、前記予備苗台装置10と施肥タンク12の間に形成される設置スペースに設けられる物載せ移動装置11としてのスライド移動機構22に移動物載せ台14を水平移動可能に取付け支持するため、該移動物載せ台14を、スライド移動機構22を介し施肥タンク12と上下方向にラップする格納姿勢から前方に向けて可逆的にスライド移動させる物載せ姿勢に切替え自在にすることができる。
【0037】
従って、肥料補給をするとき前方側にスライド又は側方に回動移動させた移動物載せ台14は、施肥タンク12の上方を開放し蓋12bを開けることができると共に、畦側から補給容器17を移動物載せ台14に安定よく載置することができる。
次いで、補給容器17を載置した移動物載せ台14を後方側の適正な補給作業位置に、スライド移動機構22を介し前後調節移動を簡単且つ速やかに行うことができるので、作業者は施肥タンク12に対し無理な姿勢をとることなく軽労化につながり補給作業を能率よく行うことができる。
【0038】
このように使用可能なスライド移動機構22は、施肥タンク12の上面に近接状態で沿わせ前方に向けて長く形成して設けているので、低い高さの移動物載せ台14に対し畦側から補給容器17を楽に安定的に載置でき、次いで後方に向けそのまま移動物載せ台14を直線的に移動させて施肥タンク12の供給口12aに接近させることができる。尚、図示例のスライド移動機構22は、移動物載せ台14を供給口12aの上方に部分ラップさせることができ、必要により補給容器17の供給口を供給口12aに直接的に臨ませた状態で補給作業を能率よく行うことができる。
【0039】
従って、補給容器17の供給口を施肥タンク12の供給口12aに最接近させた状態で肥料こぼれのない補給作業を能率よく適正に行うことができる。
また作業者は移動物載せ台14に載置された補給容器17の供給口と施肥タンク12の供給口12aとの位置関係を、開放されたスペースを介して確認しやすくなるため、移動物載せ台14を適正な補給位置に位置決め移動できるため液(肥料)こぼれのない補給作業を楽にスムーズに行うことができる等の特徴がある。
【0040】
尚、スライド移動機構22は例えば図7に示すように、スライドフレーム25を支持フレーム23に沿って電気的に前後移動させる進退作動手段27を設けることができると共に、回動部19には支持フレーム23又は前記支持アーム19aを電気的に回動移動させる回動作動手段28を設けることができる。
また各作動手段27、28のモータをコントロールする操作スイッチ等の操作部29は、施肥タンク12の近傍又は操縦部6側に設けることができ、この場合には移動物載せ台14を人力で作動することなく外方から省力的に操作をすることができる。
【0041】
次に、図7を参照し前記第1の発明及び第2の発明に係る移動物載せ台14を利用し、所望の物載せ姿勢にした移動物載せ台14に載置した補給容器17を、施肥タンク12のサブタンクとして使用可能にする発明の実施形態について説明する。尚、前記各実施形態と同様な構成及び作用については説明を省略する。
先ず、図示例の補給容器17は、箱状の合成樹脂製肥料袋(肥料重量は20kg程度)であり、凹入形成したコーナー部に蓋付きの供給口17aが設けられている。
この補給容器17は、物載せ姿勢に切換えられた移動物載せ台14に対し、供給口17を下向きにした横倒し姿勢で積載される。
【0042】
一方、施肥タンク12は、施肥タンク12の前部上側に設けられる蓋付きの供給口12dとは別に、タンク前壁の上側に蓋付きの供給口12dを形成している。
この供給口12dには、後述する連結ホース30によって補給容器17内の肥料を供給可能にすることができるため、前記供給口12dを開けることなく肥料補給の作業を簡単に行うことができる。
【0043】
連結ホース30は、補給容器17の供給口17aに連通する入口側ホース30aと施肥タンク12の供給口12dに連通する出口側ホース30bとからなり、両者の間に通路(ホース路)を開閉するバルブ31を設けている。
この連結ホース30は、先ずバルブ31を閉じて液の漏出を防止した状態で入口側ホース30aを、縦向き姿勢にある補給容器17の供給口17aに取付けられる。
【0044】
こののち連結ホース30を装着した補給容器17は、横倒し姿勢で移動物載せ台14に載置された状態で、出口側ホース30bを施肥タンク12の供給口12dに挿入連通又は液漏れ不能に密封連結する配管作業をしたのち、前記バルブ31を開くことで補給容器17の肥料を施肥タンク12内に供給することができる。
上記構成される連結ホース30を利用し補給容器17から施肥タンク12に肥料を供給する補給作業は、肥料の供給状態を人為的に監視しながらバルブ31を開閉操作することで液こぼれを防止した補給量の調節を適正に行うことができる。
【0045】
一方、長い連結ホース30を備える補給容器17を肥料補給用のサブタンクとして載置可能な移動物載せ台14は、前記供給口17aに対面する位置に連結ホース30を通すことが可能な開口部14aを開設することが望ましく、この場合には補給容器17を移動物載せ台14の適正位置に安定よく載せることができる。
また開口部14aは、連結ホース30の出口側ホース30bを施肥タンク12の供給口12dに迂回させることなく直接的な連通を可能にするため、入口側ホース30aを無理に曲げることなく耐久性及び管路の詰まりなどのトラブルを回避した補給作業を能率よく行うことができる利点がある。
【0046】
これによる補給容器設置構造は、連結ホース30を側方に迂回させて配管する迂回配管に伴いやすい液こぼれをなくし可及的に短い配管を可能にするため、管路抵抗も小さくすることができて配管作業も簡単で速やかにすることができる。
従って、合成樹脂製袋型の補給容器17でもサブタンク化を容易に可能にすると共に、補給容器17や補給ホースを手に持って操作して行う人為的な補給作業回数を減らせるので、補給容器17を使用する際のコストや手間を低減することができる。
【0047】
また上記構成において図示するバルブ31は、施肥タンク12側の液量を検知する液量センサ32による検知信号により電気的にホース路を開閉する自動開閉型バルブにすると、補給容器17を施肥タンク12の増量用のサブタンクとして交換容易にできると共に、簡潔で安価なサブタンク設置構造を構成して使用することができる。
この場合に、自動開閉型バルブ31の使用を切換える切替えスイッチ33は、施肥タンク12の近傍又は操縦部6側に利便性よく設置することができる。
尚、各実施形態は、主としてペースト肥料を作業資材として収容する施肥タンク12と補給容器17とを利用した実施形態について説明したが、これに限ることなく作業資材は、薬液や燃料又は粉体状の肥料や薬剤にすることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 移植機(乗用田植機)
2 走行機体
6 操縦部
8 植付作業機
10 予備苗台装置
11 物載せ移動装置
12 施肥タンク
12a 補給口
14 移動物載せ台
17 補給容器
17a 補給口
19 回動部
22 スライド移動機構
30 連結ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7