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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125079
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
   A47B 67/02 20060101AFI20230831BHJP
   A47K 1/02 20060101ALI20230831BHJP
   E05D 3/06 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A47B67/02 502E
A47K1/02 E
A47K1/02 B
E05D3/06
A47B67/02 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029009
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 夏子
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB00
2E030BB03
(57)【要約】
【課題】収納空間の間口が小さいキャビネットであっても、容易にスライド丁番を取り付け可能なキャビネットを提供する。
【解決手段】本発明は、前面を覆う扉を備えたキャビネット(8)であって、収納空間(S)を形成する複数の壁部(16,18,19)を備えたキャビネット本体(10)と、このキャビネット本体の収納空間の前面を覆う扉(12)と、この扉とキャビネット本体の壁部とを連結するスライド丁番(14)と、を有し、スライド丁番は、扉に固定されるスライド丁番本体(20)と、このスライド丁番本体に連結され、キャビネット本体に固定される固定用部材(22)と、を備え、固定用部材は、キャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジ(28)により、キャビネット本体の壁部に固定されていることを特徴としている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面を覆う扉を備えたキャビネットであって、
収納空間を形成する複数の壁部を備えたキャビネット本体と、
このキャビネット本体の収納空間の前面を覆う扉と、
この扉と前記キャビネット本体の前記壁部とを連結するスライド丁番と、を有し、
前記スライド丁番は、前記扉に固定されるスライド丁番本体と、このスライド丁番本体に連結され、前記キャビネット本体に固定される固定用部材と、を備え、
前記固定用部材は、前記キャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジにより、前記キャビネット本体の前記壁部に固定されていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記キャビネット本体の前記壁部には、前記スライド丁番の前記固定用部材を固定すべき凹部が形成され、前記固定用部材が前記壁部にネジで固定されていない状態において、前記固定用部材を前記凹部に仮止め可能な保持部が形成されている請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記スライド丁番の前記固定用部材は、取付部材と、この取付部材の取付面に取り付け可能なスライド丁番台座から構成され、前記取付部材は前記キャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジにより、前記キャビネット本体の前記壁部に固定される請求項1または2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記複数の壁部のうちの1つの壁部は前記収納空間を仕切る仕切壁部として設けられ、この仕切壁部には、前記仕切壁部の両側の収納空間を夫々覆うための扉が設けられ、これらの扉を前記仕切壁部に連結する第1のスライド丁番及び第2のスライド丁番は、前記仕切壁部に固定される単一の取付部材と、この単一の取付部材に取り付けられる2つのスライド丁番台座及び2つのスライド丁番本体から構成されている請求項3に記載のキャビネット。
【請求項5】
前記取付部材は前記壁部の前端面の一部を覆うように構成され、前記取付部材の前記壁部を覆う面は、前記壁部の前端面と、面一になるように構成されている請求項3または4に記載のキャビネット。
【請求項6】
前記取付部材を固定する前記壁部の固定面は、閉状態の前記扉に垂直な平面に対して傾斜しており、前記スライド丁番台座を取り付けるべき前記取付部材の取付面は、閉状態の前記扉に対して垂直に向けられている請求項3から5のいずれか1項に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに関し、特に、前面を覆う扉を備えたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に樹脂製のキャビネットは、一般に、軸吊り丁番により扉がキャビネットの本体に連結されていた。しかしながら、近年デザイン性が高く高級感ある洗面化粧台が求められており、キャビネットのデザイン自由度を高めるためには、扉をスライド丁番で取り付けることが好ましい。
【0003】
扉をスライド丁番でキャビネットの本体に取り付けることにより、高級感のある重い扉を安定して支えることができると共に、丁番を取り付ける高さ方向の位置の自由度が高くなる。これにより、扉の高さをキャビネットの本体の高さに合わせる必要がなくなり、扉に鏡を取り付ける鏡止め具の構造にも制約が少なくなり、キャビネットのデザインの自由度が上がる。
【0004】
一方で、近年様々な間口に対応したキャビネットが求められており、特開2013-192814号公報(特許文献1)記載の洗面化粧台に備えられているキャビネットのように、収納が分割され、扉が三面鏡として活用できるキャビネットなど、収納間口が小さいキャビネットが普及している。この特許文献1に記載されているキャビネットでは、鏡扉が軸吊り丁番で固定されているため、キャビネットのデザインに制約が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-192814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の洗面化粧台に備えられているキャビネットのように収納間口が小さいキャビネットにスライド丁番を採用することは困難である。
【0007】
スライド丁番をキャビネットの本体に取付ける際には一般的に収納空間を形成している部材に対して横方向からネジ止めする必要がある。しかしながら、収納間口が小さいキャビネットでは、ネジ止めするための電動ドライバーを収納空間に横向きに入れることが難しく、スライド丁番の取り付けが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の目的は収納空間の間口が小さいキャビネットであっても、容易にスライド丁番を取り付け可能なキャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、前面を覆う扉を備えたキャビネットであって、収納空間を形成する複数の壁部を備えたキャビネット本体と、このキャビネット本体の収納空間の前面を覆う扉と、この扉とキャビネット本体の壁部とを連結するスライド丁番と、を有し、スライド丁番は、扉に固定されるスライド丁番本体と、このスライド丁番本体に連結され、キャビネット本体に固定される固定用部材と、を備え、固定用部材は、キャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジにより、キャビネット本体の壁部に固定されていることを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、スライド丁番の固定用部材が、キャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジにより、キャビネット本体の壁部に固定されるので、収納空間の間口が小さい場合でもネジ止めするための電動ドライバーを収納空間に横向きに挿入する必要がなく、前方からネジ止めすることができる。このため、収納空間の間口が小さい場合でもスライド丁番を容易に取り付けることができる。
【0011】
本発明において好ましくは、キャビネット本体の壁部には、スライド丁番の固定用部材を固定すべき凹部が形成され、固定用部材が壁部にネジで固定されていない状態において、固定用部材を凹部に仮止め可能な保持部が形成されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、固定用部材を凹部に仮止め可能な保持部が、壁部に形成されているので、ネジ固定される前に、固定用部材を凹部に仮止めすることができ、ネジ固定前に固定用部材から手を放しても位置がずれることがなく、施工効率を向上させることができる。
【0013】
本発明において好ましくは、スライド丁番の固定用部材は、取付部材と、この取付部材の取付面に取り付け可能なスライド丁番台座から構成され、取付部材はキャビネット本体の前面から後方に向けて延びるネジにより、キャビネット本体の壁部に固定される。
【0014】
このように構成された本発明によれば、スライド丁番の固定用部材が、取付部材と、この取付部材の取付面に取り付け可能なスライド丁番台座から構成されているので、汎用的なスライド丁番のスライド丁番台座に適合するように取付部材を構成することにより、様々な形状の市販のスライド丁番を採用することができ、コストを削減することができる。
【0015】
本発明において好ましくは、前記複数の壁部のうちの1つの壁部は収納空間を仕切る仕切壁部として設けられ、この仕切壁部には、仕切壁部の両側の収納空間を夫々覆うための扉が設けられ、これらの扉を仕切壁部に連結する第1のスライド丁番及び第2のスライド丁番は、仕切壁部に固定される単一の取付部材と、この単一の取付部材に取り付けられる2つのスライド丁番台座及び2つのスライド丁番本体から構成されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、第1、第2のスライド丁番が仕切壁部に固定される単一の取付部材と、これに取り付けられる2つのスライド丁番台座、スライド丁番本体から構成されるので、複数のスライド丁番を壁に固定するための取付部材を1つでまかなうことができ、コストを削減できると共に、施工効率を向上させることができる。
【0017】
本発明において好ましくは、取付部材は壁部の前端面の一部を覆うように構成され、取付部材の壁部を覆う面は、壁部の前端面と、面一になるように構成されている。
【0018】
このように構成された本発明によれば、取付部材の壁部を覆う面が壁部の前端面と面一になるため、取付部材が目立つことがなく、デザイン性を向上させることができる。
【0019】
本発明において好ましくは、取付部材を固定する壁部の固定面は、閉状態の扉に垂直な平面に対して傾斜しており、スライド丁番台座を取り付けるべき取付部材の取付面は、閉状態の扉に対して垂直に向けられている。
【0020】
このように構成された本発明によれば、キャビネット本体が型成形され、型の抜き勾配により壁部の固定面が傾斜している場合でも、取付部材の取付面が閉状態の扉に対して垂直に向けられる。この結果、壁部の固定面が傾斜しているキャビネット本体に対して、汎用的なスライド丁番を採用することができ、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキャビネットによれば、収納空間の間口が小さいキャビネットであっても、容易にスライド丁番を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態によるキャビネットを備えた洗面化粧台を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態によるキャビネットの扉を開いた状態を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態によるキャビネットの、扉を取り付けているスライド丁番を拡大して示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態によるキャビネットにおいて、キャビネット本体の、スライド丁番が取り付けられる部分を拡大して示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態によるキャビネットにおいて、各スライド丁番の固定用部材をキャビネット本体に取り付けた状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態によるキャビネットにおいて、仕切壁部に取り付けられた固定用部材の断面図である。
図7】本発明の実施形態によるキャビネットにおいて、キャビネット本体への扉の取り付けを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図1乃至図7を参照して、本発明の実施形態によるキャビネットを備えた洗面化粧台を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるキャビネットを備えた洗面化粧台の正面図である。
【0024】
図1に示すように、洗面化粧台1は、下収納2と、ボウル4と、水栓ユニット6と、キャビネットであるミラーキャビネット8と、を備えている。洗面化粧台1は、例えば脱衣所や洗面所などの洗面空間に設置される。
【0025】
下収納2は、例えば床面上に設置され、ボウル4の下方に配置されて、ボウル4を支持している。
【0026】
ボウル4は、下方に向かって凹んだ凹状に形成され、下収納2によって下方から支持されている。ボウル4には、底部に図示しない排水口が設けられ、この排水口は、図示しない排水管に接続されている。ボウル4に吐水された湯水は、排水口を介して排水管に流れる。
【0027】
水栓ユニット6は、ボウル4の上方に配設されている。水栓ユニット6は、ボウル4に向けて湯水を吐出するスパウト6aと、スパウト6aから湯水を吐出させるためのハンドル6bと、を備えている。
【0028】
次に、本発明の実施形態によるミラーキャビネット8の構成を説明する。図2は、扉を開いた状態のミラーキャビネットを示す斜視図である。図3は、ミラーキャビネットの鏡扉を取り付けているスライド丁番を拡大して示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、ミラーキャビネット8は、ボウル4の上方に設置されている。
また、図2に示すように、ミラーキャビネット8は、キャビネット本体10と、キャビネット本体10の前方を覆う扉である鏡扉12と、キャビネット本体10と鏡扉12を連結するスライド丁番14と、を備えている。
【0030】
キャビネット本体10は、複数の壁部により前方が開口した箱型状に形成され、洗面用具やドライヤなどの物品を収納可能な収納空間Sが内部に形成されている。具体的には、キャビネット本体10は、上下に設けられた上壁部16a、下壁部16b、及び両側に設けられた2つの側壁部16c、16dにより収納空間Sを形成し、この収納空間Sは、上下方向に延びる2つの仕切壁部18、19により3つの空間に区切られている。なお、本実施形態において、キャビネット本体10の各壁部は樹脂により構成されているが、木製であっても良い。
【0031】
鏡扉12は、キャビネット本体10の収納空間Sの前面を覆うように設けられている。ミラーキャビネット8は、3枚の鏡扉12を有し、これらの各鏡扉12は、夫々2つのスライド丁番14により、キャビネット本体10に対して開閉可能に取り付けられている。鏡扉12は、閉状態でキャビネット本体10の収納空間Sの前方を覆い、開状態で収納空間Sが開放される。また、3枚の鏡扉12のうちの中央を閉状態とし、両側の鏡扉12を適当な角度で開くことにより、3枚の鏡扉12を三面鏡のように使用することができる。なお、本実施形態において、鏡扉12の鏡以外の部分は樹脂により構成されているが、木製であっても良い。
【0032】
スライド丁番14は、鏡扉12と、キャビネット本体10の壁部を連結して、鏡扉12を開閉可能にしている。図3は、壁部のうちの仕切壁部18と、鏡扉12と、を連結するスライド丁番14を拡大して示している。
【0033】
図3に示すように、スライド丁番14は、スライド丁番本体20と、このスライド丁番本体20に連結される固定用部材22から構成されている。さらに、固定用部材22は、キャビネット本体10の壁部に固定される取付部材24と、この取付部材24の取付面24aに取り付け可能なスライド丁番台座26から構成されている。即ち、スライド丁番本体20は、スライド丁番台座26を介して取付部材24に取り付けられる。なお、本明細書において、キャビネット本体の前面とは、キャビネット本体の、鏡扉12で覆われる面を意味し、後方とは、キャビネット本体の前面から奥へ向かう方向を意味する。また、本実施形態において、スライド丁番本体20、及びスライド丁番台座26は金属製であり、取付部材24は樹脂製である。
【0034】
このように、スライド丁番14によって鏡扉12が壁部に固定されることにより、収納空間Sが形成され、キャビネット本体10に対して鏡扉12を開閉させることができる。なお、本明細書において、「スライド丁番」とは、壁部に対して、複数のヒンジ部を介して扉を回動可能に連結する丁番を意味し、複数のヒンジ部を介することにより、単一のヒンジ部を介して扉を連結する「軸吊り丁番」よりも複雑な動きが可能になる。
【0035】
次に、図4乃至図7を参照して、本発明の実施形態によるミラーキャビネット8の組み立て手順を説明する。
図4は、キャビネット本体10の、スライド丁番14が取り付けられる部分を拡大して示す斜視図である。図5は、各スライド丁番14の固定用部材22をキャビネット本体10に取り付けた状態を示す斜視図である。図6は、仕切壁部19に取り付けられた固定用部材の断面図である。図7は、キャビネット本体10への鏡扉12の取り付けを示す斜視図である。
【0036】
図4に示すように、キャビネット本体10の、スライド丁番14を取り付ける仕切壁部18には凹部18aが設けられている。凹部18aは、略長方形の底面18bを備え、仕切壁部18の前端面18dから後方に向けて延びている。この凹部18aにスライド丁番14の固定用部材22が配置され、ネジで固定される。上記のように、固定用部材22は、取付部材24と、これに取り付けられたスライド丁番台座26から構成されており、固定用部材22の取付部材24が仕切壁部18の凹部18aの中に取り付けられる。従って、底面18bは、取付部材24を取り付ける、仕切壁部18の固定面として機能する。
【0037】
取付部材24は、略クランク状に折り曲げられたプレート状の部材であり、前面部24bと、中間部24cと、後面部24dから構成されている。取付部材24は、その中間部24cが凹部18aの底面に沿うように配置され、その前面部24bが仕切壁部18の前端面18dの一部を覆うように配置される。また、図4に示すように、仕切壁部18の前端面18dの、前面部24bによって覆われる部分は、前面部24bの板厚分低く形成されている。このため、取付部材24が仕切壁部18に取り付けられた状態では、前面部24bの表面と、仕切壁部18の前端面18dの、前面部24bによって覆われていない部分の高さが等しくなり、前面部24bの表面と、仕切壁部18の前端面18dは面一になる。
【0038】
さらに、中間部24cの表面側の取付面24aには、スライド丁番台座26が2本のネジで固定される。スライド丁番台座26は、スライド丁番本体20が連結される連結部と、その両側に延びるフランジ部を備え、これらのフランジ部で、スライド丁番台座26が取付部材24の取付面24aにネジ固定される。また、後面部24dの背面側には、2本の円柱形の突起24eが、キャビネット本体10の後方に向けて突出するように設けられている。さらに、前面部24bには、固定用部材22をキャビネット本体10に固定するためのネジを通す2つの孔24fが設けられている。
【0039】
一方、仕切壁部18の凹部18aの奥面には、取付部材24の突起24eを受け入れるための2つの保持部18cが設けられている。これらの保持部18cに各突起24eが夫々挿入されることにより、固定用部材22が仕切壁部18にネジで固定されていない状態において、固定用部材22を凹部18aに仮止めすることができる。
【0040】
次に、仕切壁部18の凹部18aに固定用部材22(取付部材24及びスライド丁番台座26)が仮止めされた状態で、取付部材24の孔24fを通して、2本のネジ28で取付部材24を仕切壁部18に固定する。これらのネジ28は、キャビネット本体10の前面から後方に向けて延びるようにねじ込まれ、固定用部材22がキャビネット本体10の仕切壁部18に固定される。ここで、各ネジ28は、キャビネット本体10の前面から後方に向けて延びているため、電動ドライバ(図示せず)等の工具を、ミラーキャビネット8の前面側から背面側に向けて当てることにより、ねじ込むことができる。このため、ミラーキャビネット8の収納空間Sの大きさに関わらず、容易にドライバの先端をネジ28の頭に当てることができ、スライド丁番14(の固定用部材22)をキャビネット本体10に取り付けることができる。なお、本実施形態においては、ネジ28としてタッピングビスが使用されているが、仕切壁部18に予め設けられた雌ネジ(図示せず)に、雄ネジをねじ込んでスライド丁番14を固定するように本発明を構成することもできる。
【0041】
次に、図5は、キャビネット本体10の仕切壁部に、6つの固定用部材22が夫々取り付けられた状態を示している。ここで、一枚の鏡扉12が取り付けられる仕切壁部18には2つの固定用部材22が取り付けられ、二枚の鏡扉12が取り付けられる仕切壁部19には4つの固定用部材22が取り付けられている。即ち、仕切壁部19には、その両側の収納空間を夫々覆うための鏡扉12が設けられるので、二枚の鏡扉12を取り付けるために、4つの固定用部材22が取り付けられる。キャビネット本体10に取り付けられる6つの固定用部材22は、基本的に、図4を参照して説明した固定用部材22と同様の構成であるが、仕切壁部19に取り付けられる固定用部材22は、取付部材の構成が異なっている。
【0042】
図6は、仕切壁部19に取り付けられている固定用部材22の断面図である。
図4により説明した、仕切壁部18に取り付ける固定用部材22においては、その取付部材24は、クランク状に折り曲げられたプレート状の部材であった。これに対し、仕切壁部19には、その両面に固定用部材22が2つずつ向かい合わせて取り付けられている。このため、向かい合わせて取り付けられる2つの固定用部材22の取付部材が一体化され、単一の共用取付部材30として構成されている。即ち、仕切壁部19に向かい合わせて取り付けられる第1、第2のスライド丁番14は、仕切壁部19に固定される単一の共用取付部材30と、これに取り付けられる2つのスライド丁番台座26及びスライド丁番本体20から構成されている。
【0043】
図6に示すように、共用取付部材30は略U字形断面に曲げられたプレート状の部材であり、仕切壁部19の前端面19dの一部を覆う前面部30bと、その両側に接続された2つの中間部30cと、各中間部30cの先端に夫々接続された2つの後面部30dと、を有する。また、各中間部30cの外側の面は、夫々スライド丁番台座26を取り付けるための取付面30aを構成している。さらに、各後面部30dの背面側には、円柱形の突起30eが2つずつ設けられている。これらの突起30eは、仕切壁部19の凹部19aに設けられた保持部19cに挿入され、一体化された2つの固定用部材22を仮止めすることができる。
【0044】
また、前面部30bには、一体化された2つの固定用部材22をキャビネット本体10に固定するためのネジを通す4つの孔30fが設けられている(図6には2つのみ図示)。これら4つの孔30fに挿入される各ネジ28もキャビネット本体10の前面から後方に向けて延びているため、電動ドライバ(図示せず)等の工具により、容易に固定用部材22をキャビネット本体10に取り付けることができる。
【0045】
上記のように、共用取付部材30の前面部30bは仕切壁部19の前端面19dの一部を覆うように構成されている。また、前端面19dの、前面部30bによって覆われる部分は前面部30bの板厚分低く形成されており、この部分に前面部30bが落とし込まれている。従って、取付部材24と同様に、共用取付部材30も、キャビネット本体10に取り付けた状態において、前面部30bが仕切壁部19の前端面19dと面一になるように構成されている。即ち、共用取付部材30を仕切壁部19に取り付けた状態において、共用取付部材30の前面部30bの表面と、仕切壁部19の前端面19dの、前面部30bによって覆われていない部分とは、同じ高さになる。
【0046】
さらに、仕切壁部19の収納空間Sに面した両側の側面19eには抜き勾配があり、仕切壁部19の厚さは、前端面19dに向けて薄くなるように構成されている。また、仕切壁部19にも、仕切壁部18と同様に凹部19aが設けられており、この凹部19aの底面19bも、抜き勾配により側面19eと同様に傾斜している。即ち、仕切壁部19の凹部19aの底面19bは、閉状態にある鏡扉12に垂直な平面Pに対して傾斜している。この凹部19aの底面19bには共用取付部材30の中間部30cの裏側が当接し、共用取付部材30が仕切壁部19に固定される。従って、凹部19aの底面19bは、共用取付部材30を固定する、仕切壁部19の固定面として機能する。
【0047】
ここで、共用取付部材30の中間部30cは、抜き勾配による凹部19aの底面19bの傾斜を補正する形状に構成されている。即ち、共用取付部材30の中間部30cは、抜き勾配を補正するように、後方に向けて先細りになるテーパ形状を有する。抜き勾配が補正されることにより、中間部30cの外側の取付面30aは、閉状態にある鏡扉12に対して垂直に向けられる。従って、固定用部材22のスライド丁番台座26は、閉状態にある鏡扉12に対して垂直に向けられた平面Pと平行な共用取付部材30の取付面30aに取り付けられる。即ち、閉状態の鏡扉12に対して垂直に向けられた共用取付部材30の取付面30aに、スライド丁番台座26が取り付けられることにより、スムーズに鏡扉12を開閉することができる。
【0048】
なお、共用取付部材30と同様に、前述した仕切壁部18に取り付ける取付部材24も、抜き勾配を補正するように構成されている。即ち、仕切壁部18に設けられた凹部18aの、固定面である底面18bも、閉状態にある鏡扉12に垂直な平面Pに対して傾斜している。この底面18bに、取付部材24を取り付けることにより勾配が補正され、スライド丁番台座26を取り付ける取付面24aは、閉状態にある鏡扉12に対して垂直に向けられる。さらに、市販されている一般的なスライド丁番は、スライド丁番本体に取り付けられた扉に対して、スライド丁番台座が垂直に向けられるように構成されている。このため、スライド丁番台座を取り付ける取付面が扉に対して垂直に向くように固定面の傾斜を補正することにより、汎用的なスライド丁番を利用することが可能になる。
【0049】
図5に示すように、キャビネット本体10に、スライド丁番14の固定用部材22を取り付けた後、3枚の鏡扉12が夫々取り付けられる。即ち、図7に示すように、鏡扉12の所定の位置に、各スライド丁番14のスライド丁番本体20を取り付けておく。次いで、鏡扉12に取り付けられたスライド丁番本体20を、予めキャビネット本体10に取り付けられた固定用部材22のスライド丁番台座26に連結する。これにより、各鏡扉12が、キャビネット本体10に対して開閉可能に取り付けられ、ミラーキャビネット8が完成する。
【0050】
本発明の実施形態のミラーキャビネット8によれば、スライド丁番14の固定用部材22がキャビネット本体10の前面から後方に向けて延びるネジ28により、キャビネット本体10の仕切壁部18、19に対して固定されるので、収納空間Sの間口が小さい場合でもネジ止めするための電動ドライバーを収納空間Sに横向きに挿入する必要がなく、前方からネジ止めすることができる。このため、収納空間Sの間口が小さい場合でもスライド丁番14を容易に取り付けることができる。
【0051】
また、本実施形態のミラーキャビネット8によれば、固定用部材22を凹部18a、19aに仮止め可能な保持部18c、19cが、仕切壁部18、19に夫々形成されているので、ネジ固定される前に、固定用部材22を凹部18a、19aに仮止めすることができ、ネジ固定前に固定用部材22から手を放しても位置がずれることがなく、施工効率を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態のミラーキャビネット8によれば、スライド丁番14の固定用部材22が、取付部材24、30と、この取付部材の取付面24a、30aに取り付け可能なスライド丁番台座26から構成されている。このため、汎用的なスライド丁番14のスライド丁番台座26に適合するように取付部材24、30を構成することにより、様々な形状の市販のスライド丁番を採用することができ、コストを削減することができる。
【0053】
また、本実施形態のミラーキャビネット8によれば、仕切壁部19を挟んで隣り合って固定される第1、第2のスライド丁番14を、1つの共用取付部材30を介して仕切壁部19に固定することができるので、コストを削減できると共に、施工効率を向上させることができる。
【0054】
さらに、本実施形態のミラーキャビネット8によれば、共用取付部材30は仕切壁部19の前端面19dの一部を覆うように構成され、共用取付部材30の仕切壁部19を覆う面は、前端面19dと面一になるので、取付部材が目立つことがなく、デザイン性を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態のミラーキャビネット8によれば、キャビネット本体が型成形され、型の抜き勾配により仕切壁部19の固定面(底面19b)が傾斜している場合でも、共用取付部材30の取付面30aが閉状態の鏡扉12に対して垂直に向けられる。この結果、仕切壁部19の固定面が傾斜しているキャビネット本体10に対して、汎用的なスライド丁番14を採用することができ、コストを低減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態のキャビネットは、洗面化粧台に備えられたキャビネットであるが、単独で使用されるキャビネットや、建物の壁面に埋め込まれたキャビネット等、前面を覆う扉を備えた任意のキャビネットに本発明を適用することができる。また、上述した実施形態において、扉は、鏡を備えた鏡扉であったが、鏡を備えない通常の扉を備えた任意のキャビネットに本発明を適用することができる。さらに、上述した実施形態のキャビネットにおいては、収納空間を形成する仕切壁部に扉が取り付けられていたが、仕切壁部の他、側壁部、上壁部、又は下壁部に扉が取り付けられたキャビネットに本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 洗面化粧台
2 下収納
4 ボウル
6 水栓ユニット
6a スパウト
6b ハンドル
8 ミラーキャビネット(キャビネット)
10 キャビネット本体
12 鏡扉(扉)
14 スライド丁番
16a 上壁部
16b 下壁部
16c 側壁部
16d 側壁部
18 仕切壁部
18a 凹部
18b 底面(固定面)
18c 保持部18d 前端面
19 仕切壁部
19a 凹部
19b 底面(固定面)
19c 保持部
19d 前端面
19e 側面
20 スライド丁番本体
22 固定用部材
24 取付部材
24a 取付面
24b 前面部
24c 中間部
24d 後面部
24e 突起
24f 孔
26 スライド丁番台座
28 ネジ
30 共用取付部材
30a 取付面
30b 前面部
30c 中間部
30d 後面部
30e 突起
30f 孔
P 平面
S 収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7