(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012509
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】肝疾患の処置または予防のためのRNA
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230118BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173345
(22)【出願日】2022-10-28
(62)【分割の表示】P 2019531059の分割
【原出願日】2017-12-08
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/080315
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VISUAL BASIC
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509014386
【氏名又は名称】キュアバック エスイー
【氏名又は名称原語表記】CureVac SE
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Miescher-Strasse 15,72076 Tuebingen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ホースクロフト,ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】ペーニシュ,マリオン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイネル-テンブルック,クリスティーネ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック シェヴェッシエ-テュネセン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】肝疾患の処置または予防に適したRNAを提供する。
【解決手段】少なくとも1つのコード配列を含んでおり、上記コード配列は、ヒトコラゲナーゼMMP1、肝細胞増殖因子(HGF)、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、細胞外マトリクスプロテアーゼ、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)、またはこれらのペプチドもしくはタンパク質のうちいずれかの断片もしくはバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする、肝疾患の処置または予防における使用のための、RNAを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコード配列を含んでおり、
上記コード配列は、ヒトコラゲナーゼMMP1、肝細胞増殖因子(HGF)、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、細胞外マトリクスプロテアーゼ、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)、またはこれらのペプチドもしくはタンパク質のうちいずれかの断片もしくはバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする、肝疾患の処置または予防における使用のための、RNA。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔序論〕
本発明は、肝疾患の処置または予防に適したRNAに関する。特に、本発明は、細胞外マトリクスプロテアーゼ、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド成長因子受容体様1(OGFRL1)、肝細胞成長因子(HGF)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)、またはこれらのペプチドもしくはタンパク質のうちいずれかの断片もしくはバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードするRNAを提供する。本発明は、上記RNAならびに当該RNAを含んでいる、組成物およびキットに関する。さらに、本発明は、医薬としての使用のため、特に肝疾患の処置または予防のための、本明細書に開示されている通りのRNA、組成物またはキットに関する。本発明はまた、特に遺伝子治療において、コードされる上記タンパク質の発現を向上させるための、本明細書に開示されている通りのRNA、組成物またはキットの使用を提供する。
【0002】
肝疾患は、世界的に、主要な健康上の懸念を代表している。肝臓の損傷の主な原因は、ウイルス性疾患、および代謝異常に関わる自己免疫疾患から、栄養不良およびアルコール薬物乱用まで多岐に及び、種々の集団において大きく異なる。しかし、その原因にかかわらず、持続する肝臓の損傷は、肝臓内にある間葉細胞集団の活性化および増殖によって細胞外マトリクス(ECM)が再構築される特徴的な傷治癒応答を導く。長期にわたる肝組織の損傷は、傷害組織を取り囲む堆積した細胞外マトリクスタンパク質の進行性の蓄積を引き起こし、深刻な構造的かつ機能的な変性を生じる。線維症とも呼ばれるこの過程は、肝硬変、肝不全および肝がんを、最終的にもたらし得るか、または助長し得る。
【0003】
いくつかの治療アプローチが、線維性応答を停止または低減させるために計画された(概要について、Wallace K. et al: Liver fibrosis. Biochem. J. (2008), 411:1-18を参照)。しかし、現在、肝線維症の第一処置に指定され、認可されている治療薬はなく、標的化されている抗線維症療法は依然として存在しない。他の肝疾患(例えば肝硬変)にも、有効な治療法が早急に求められている。
【0004】
従来技術に基づいて、例えばTRAILまたはコラゲナーゼの、全身投与は、副作用(例えば全身毒性)をもたらし得ることが知られている。組換えTRAILには、短い半減期および低い有効性という難があり、TRAILの非常に短い半減期は、頻繁な大量の投与を必要とする(Forero-Torres et al.: Phase I Trial of Weekly Tigatuzumab, an Agonistic Humanized Monoclonal Antibody Targeting Death Receptor 5 (DR5). Cancer Biotherapy & Radiopharmaceuticals 25.1 (2010): 13-19. PMCを参照)。したがって、TRAILは、がんの臨床試験において有効性を示せなかった。
【0005】
同様に、WO2014158795A1は、化学修飾された血管内皮成長因子(VEGF)のmRNAを用いた線維症の診断および処置を扱っている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、肝線維症、肝硬変または肝がんなどの肝疾患の処置または予防に使用するのに適した系を提供することである。特に、本明細書に記載の肝疾患を軽減、寛解または治癒できるペプチドまたはタンパク質を発現させるための系を提供することが目的である。本発明のさらなる目的は、肝臓疾患、特に本明細書で定義される肝臓疾患の処置および/または予防を、安全かつ有効な方式において可能にする、そのような系を提供することである。
【0007】
本発明の根底にある課題は、特許請求される主題によって解決される。
【0008】
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に提出される。本出願と共に提出された配列表の電子フォーマットに含まれる情報は本出願の説明の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で「配列番号」を参照する場合、別段の指定がない限り、それぞれの識別子を有する配列表中の対応する核酸配列またはアミノ酸配列を参照する。
【0009】
〔定義〕
明確にし、読みやすくするために、以下の定義を提供する。これらの定義のために言及された任意の技術的特徴は、本発明の各実施形態およびすべての実施形態で読むことができる。これらの実施形態の文脈において、追加の定義および説明を具体的に提供することができる。
【0010】
人工核酸分子:人工核酸分子は典型的には核酸分子、例えば、天然に存在しないDNAまたはRNAであると理解され得る。換言すれば、人工核酸分子は、非天然核酸分子として理解され得る。このような核酸分子は、その個々の配列(天然に存在しない)および/または天然に存在しない他の修飾(例えばヌクレオチドの構造修飾)のために、非天然であってもよい。人工核酸分子は、DNA分子、RNA分子、またはDNAおよびRNA部分を含んでいるハイブリッド分子であり得る。典型的には、人工核酸分子がヌクレオチドの所望の人工配列(異種配列)に対応するように、遺伝子工学的方法によって設計および/または生成され得る。この文脈において、人工配列は、通常、天然に存在し得ない配列であり、すなわちそれは、少なくとも1つのヌクレオチドだけ野生型配列と異なる。用語「野生型」は、天然に存在する配列として理解され得る。さらに、用語「人工核酸分子」は「1つの単一分子」を意味することに限定されず、典型的には同一分子の集合を包含していると理解される。したがって、本発明は、分取物に含まれる複数の同一分子に関するものであってもよい。
【0011】
ビシストロン性RNA、マルチシストロン性RNA:ビシストロン性またはマルチシストロン性RNAは、典型的にはRNA、好ましくはmRNAであり、典型的には2つ(ビシストロン性)以上(マルチシストロン性)オープンリーディングフレーム(ORF)を有し得る。この文脈におけるオープンリーディングフレームは、ペプチドまたはタンパク質に翻訳可能なコドンの配列である。
【0012】
担体/ポリマー担体:本発明の文脈における担体は、典型的には別の化合物(貨物)の輸送および/または複合物形成を容易にする化合物であり得る。ポリマー担体は、典型的にはポリマーから形成される担体である。担体は、共有結合または非共有結合相互作用によって、そのカーゴと会合され得る。担体は核酸(例えば、RNAまたはDNA)を標的細胞に輸送し得る。担体は、いくつかの実施形態ではカチオン性成分であってもよい。
【0013】
カチオン性成分:「カチオン性成分」という用語は、典型的にはpH値、典型的には1~9、好ましくは9以下(例えば5~9)、8以下(例えば5~8)、7以下(例えば5~7)、最も好ましくは生理学的pH、例えば7.3~7.4で正に荷電した(カチオン)荷電分子を指す。従って、カチオン性成分は任意の正に荷電した化合物またはポリマー、好ましくはカチオン性ペプチドまたはタンパク質であり得、これは生理学的状態、特にインビボの生理学的状態で正に荷電している。「カチオン性ペプチドまたはタンパク質」は少なくとも1つの正に荷電したアミノ酸、または1つより多い正に荷電したアミノ酸(例えば、Arg、His、LysまたはOrnから選択される)を含み得る。従って、「ポリカチオン性」成分もまた、所定の条件下で複数の正電荷を示す範囲内にある。
【0014】
5’-キャップ:5’-キャップは、一般に成熟mRNAの5’-末端を「キャップ」する構成要素、典型的には修飾ヌクレオチド構成要素である。5’-キャップは、典型的には修飾ヌクレオチド、特にグアニンヌクレオチドの誘導体によって形成され得る。好ましくは、5’-キャップが5’-5’-三リン酸結合を介して5’-末端に連結される。5’-キャップはメチル化されていてもよく、例えばm7GppNであり、ここでNは5’-キャップを担持する核酸の端末5’ヌクレオチドであり、典型的にはRNAの5’端末である。5’-キャップ構造のさらなる例には、グリセリル、逆方向デオキシ脱塩基残基(部分)、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、スレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3,4’-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆方向ヌクレオチド部分、3’-2’-逆方向脱塩基部分、1,4-ブタンジオールホスフェート、ヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、3’-ホスホロジチオエート または架橋または非架橋メチルホスホネート部分。
【0015】
DNA: DNAは、デオキシリボ核酸の通常の略語である。それは核酸分子、すなわちヌクレオチドからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは通常、デオキシ-アデノシン-モノホスフェート、デオキシ-チミジン-モノホスフェート、デオキシ-グアノシン-モノホスフェート、およびデオキシ-シチジン-モノホスフェートモノマーであり、これらは、それら自体、糖部分(デオキシリボース)、塩基部分およびリン酸部分から構成され、そして特徴的な骨格構造によって単量体である。骨格構造は、典型的にはヌクレオチドの糖部分、すなわちデオキシリボースと、第1の隣接単量体のリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の並び、すなわち、糖/リン酸骨格に連結された塩基の並びは、DNA配列と呼ばれる。DNAは一本鎖であっても二本鎖であってもよい。二本鎖形態では、第1鎖のヌクレオチドが典型的には例えば、A/T塩基対形成およびg/C塩基対形成によって、第2鎖のヌクレオチドとハイブリダイズする。
【0016】
配列の断片:配列の断片は、典型的には例えば核酸分子またはアミノ酸配列の全長配列のより短い部分であり得る。従って、断片は、代表的には全長配列内の対応するストレッチと同一である配列からなる。本発明の文脈における配列の好ましい断片は断片が由来する完全(つまり全長)分子の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも60%、より一層好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%に相当する、断片が由来する分子中のエンティティの連続ストレッチに対応するヌクレオチドまたはアミノ酸などの構成要素の連続するストレッチからなる。
【0017】
G/C修飾核酸:G/C修飾核酸は、典型的には野生型配列と比べて、好ましくは増加した数のグアノシンおよび/またはシトシンヌクレオチドを含んでいる修飾野生型配列に基づく、核酸、好ましくは本明細書で定義される人工核酸分子であり得る。このような増加した数は、グアノシンまたはシトシンヌクレオチドを含んでいるコドンによるアデノシンまたはチミジンヌクレオチドを含んでいるコドンの置換によって生成され得る。濃縮されたG/C含有量がDNAまたはRNAのコード領域に存在する場合、それは遺伝暗号の縮重を利用する。従って、コドン置換は、好ましくはコードされるアミノ酸残基を変化させないが、核酸分子のG/C含有量を全体的に増加させる。本明細書中で使用される場合、ターム「G/C修飾」は特に、本発明によるRNA中のグアノシンおよび/またはシトシンヌクレオチドの数の修飾(例えば、配列のGC最適化、ヒトコドン使用頻度への配列の適合、コドン最適化、または配列のC最適化)を含んでいる。
【0018】
遺伝子治療:遺伝子治療は典型的にはペプチドまたはタンパク質をコードする核酸による、患者の身体または患者の身体の単離された要素(例えば、単離された組織/細胞)の処置を意味すると理解され得る。それは典型的にはa)患者への核酸、好ましくは本明細書で定義されるRNAの、いずれかの投与経路による直接的な投与、または患者の単離された細胞/組織へのインビボ/エクスビボまたはインビトロのいずれかでの患者の細胞のトランスフェクションをもたらすインビトロでの患者への投与; b)導入された核酸分子の転写および/または翻訳;および任意にc)核酸が患者に直接投与されていない場合には単離されトランスフェクトされた細胞の患者への再投与の工程の少なくとも1つである。本明細書で使用される用語「遺伝子治療」は、典型的には疾患の処置ならびに阻止または予防を含んでいる。
【0019】
異種配列:2つの配列は、それらが同じ遺伝子から由来しないとき、典型的には「異種」であると理解される。すなわち、異種配列は同じ生物から由良し得るが、それらは天然に(自然界に)、同じ核酸分子(例えば、同じmRNA中)には存在しない。
【0020】
クローニングサイト:クローニングサイトは典型的には核酸配列、例えば、オープンリーディングフレームを含んでいる核酸配列の挿入に適した核酸分子のセグメントであると理解される。挿入は当業者に公知の任意の分子生物学的方法(例えば、制限および連結)によって行われ得る。クローニングサイトは、典型的には1つ以上の制限酵素認識部位(制限部位)を含んでいる。これらの1つ以上の制限部位は、これらの部位でDNAを切断する制限酵素によって認識され得る。複数の制限部位を含んでいるクローニングサイトは、マルチクローニングサイト(MCS)またはポリリンカーとも称され得る。
【0021】
核酸分子:核酸分子は、好ましくは核酸成分を含んでいる分子である。用語「核酸分子」は、好ましくはDNAまたはRNA分子を指す。それは、好ましくは用語「ポリヌクレオチド」と同義に使用される。好ましくは、核酸分子が糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合したヌクレオチドモノマーを含んでいるか、またはヌクレオチドモノマーからなるポリマーである。用語「核酸分子」はまた、塩基修飾、糖修飾または骨格修飾などの修飾核酸分子を包含する。DNAまたはRNA分子。
【0022】
オープンリーディングフレーム:本発明の文脈におけるオープンリーディングフレーム(ORF)は代表的にはいくつかのヌクレオチドトリプレットの配列であり得、これはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。オープンリーディングフレームは、好ましくは開始コドン(通常はアミノ酸のメチオニン)(ATG)をコードする3つの後続のヌクレオチドの組合せを、その5’末端および後続の領域に含み、これは通常、3ヌクレオチドの倍数である長さを示す。ORFは好ましくは終止コドン(例えば、TAA、TAG、TGA)によって終止される。典型的には、これはオープンリーディングフレームの唯一の終止コドンである。従って、本発明の文脈におけるオープンリーディングフレームは好ましくは開始コドン(例えばATG)に始じまり、好ましくは停止コドン(例えば、TAA、TGA、またはTAG)に終わる、3で割れる数のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列である。オープンリーディングフレームは単離され得るか、またはより長い核酸配列(例えば、ベクターまたはmRNA)に組み込まれ得る。オープンリーディングフレームはまた、「(タンパク質)コード領域」または好ましくは「コード配列」と呼ばれ得る。
【0023】
ペプチド:ペプチドまたはポリペプチドは、典型的にはペプチド結合によって連結されたアミノ酸モノマーのポリマーである。それは、典型的には50未満のモノマー単位を含有する。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は、50を超えるモノマー単位を有する分子を排除しない。長いペプチドはまた、典型的には50~600モノマー単位を有するポリペプチドとも呼ばれる。
【0024】
薬学的有効量:本発明の文脈における薬学的有効量は、典型的には免疫応答、発現されたペプチドまたはタンパク質の病理学的レベルの変化、または例えば病理学的状況の場合の欠損遺伝子産物の置換などの薬理作用を誘導するのに十分な量であると理解される。
【0025】
タンパク質:タンパク質は、典型的には1つ以上のペプチドまたはポリペプチドを含んでいる。タンパク質は、典型的にはタンパク質がその生物学的機能を発揮するために必要とされ得る3次元形態に折り畳まれる。
【0026】
ポリ(A)配列:ポリ(A)テイルまたは3’-ポリ(A)テイルとも呼ばれるポリ(A)配列は、典型的にはアデノシンヌクレオチドの配列、例えば約400個までのアデノシンヌクレオチド、例えば約20個から約400個、好ましくは約50個から約400個、より好ましくは約50個から約300個、さらに好ましくは約50個から約250個、最も好ましくは約60個から約250個のアデノシンヌクレオチドの配列であると理解される。本明細書中で使用される場合、ポリ(A)配列はまた、約10~200のアデノシンヌクレオチド、好ましくは約10~100のアデノシンヌクレオチド、より好ましくは約40~80のアデノシンヌクレオチド、またはより一層好ましくは約50~70のアデノシンヌクレオチドを含み得る。ポリ(A)配列は、典型的にはmRNAの3’末端に位置する。本発明の文脈において、ポリ(A)配列はmRNAまたは任意の他の核酸分子(例えば、ベクター中、例えば、ベクターの転写によるRNA、好ましくはmRNAの生成のための鋳型として働くベクター中)に位置し得る。
【0027】
ポリアデニル化:ポリアデニル化は典型的にはRNA分子のような核酸分子、例えば、未成熟mRNAへのポリ(A)配列の付加であると理解される。ポリアデニル化は、いわゆるポリアデニル化シグナルによって誘導され得る。このシグナルは好ましくはポリアデニル化されるべき核酸分子(例えば、RNA分子)の3’末端のヌクレオチドのストレッチ内に位置する。ポリアデニル化シグナルは、典型的にはアデニンおよびウラシル/チミンヌクレオチドからなるヘキサマー、好ましくはヘキサマー配列AAUAAを含んでいる。他の配列、好ましくはヘキサマー配列も考えられる。ポリアデニル化は、典型的にはmRNA前駆体(premature-mRNAとも呼ばれる)の処理の間に起こる。典型的には、RNA成熟(mRNA前駆体からmRNA成熟体まで)がポリアデニル化の工程を含んでいる。
【0028】
制限部位:制限酵素認識部位とも呼ばれる制限部位は、制限酵素によって認識されるヌクレオチド配列である。制限部位は典型的には短い、好ましくはパリンドロームヌクレオチド配列、例えば4~8ヌクレオチドを含んでいる配列である。制限部位は、好ましくは制限酵素によって特異的に認識される。制限酵素は、典型的にはこの部位に制限部位を含んでいるヌクレオチド配列を切断する。二本鎖DNA配列のような二本鎖ヌクレオチド配列において、制限酵素は、典型的にはヌクレオチド配列の両方の鎖を切断する。
【0029】
RNA、mRNA: RNAは、リボ核酸の通常の略語である。それは核酸分子、すなわちヌクレオチドからなるポリマーである。これらのヌクレオチドは、通常、いわゆる骨格に沿って互いに連結されたアデノシン-一リン酸、ウリジン-一リン酸、グアノシン-一リン酸およびシチジン-一リン酸モノマーである。骨格は、第1のモノマーの糖、すなわちリボースと、第2の隣接モノマーのリン酸部分との間のホスホジエステル結合によって形成される。モノマーの特定の連続はRNA配列と呼ばれる。通常、RNAは、例えば細胞内でのDNA配列の転写によって得ることができる。真核細胞において、転写は、典型的には核またはミトコンドリアの内部で行われる。インビボでは、DNAの転写が通常、いわゆるメッセンジャーRNA(通常、mRNAと略される)にプロセシングされなければならない、いわゆる未成熟RNAを生じる。例えば真核生物における早期RNAのプロセシングは、スプライシング、5’-キャッピング、ポリアデニル化、核またはミトコンドリアからの輸出などの様々な異なる転写後修飾を含んでいる。これらの過程をまとめて、RNAの成熟とも呼ばれる。成熟メッセンジャーRNAは、通常、特定のペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列に翻訳され得るヌクレオチド配列を提供する。典型的には、成熟mRNAが5’-キャップ、5’-UTR、オープンリーディングフレーム、3’-UTRおよびポリ(A)配列を含んでいる。メッセンジャーRNAとは別に、転写および/または翻訳の調節に関与し得るいくつかの非コード種類のRNAが存在する。
【0030】
核酸分子の配列:核酸分子の配列は典型的には特定の個々の順序、すなわち、そのヌクレオチドの連続であると理解される。タンパク質またはペプチドの配列は、典型的にはそのアミノ酸の順序、すなわち連続であると理解される。
【0031】
配列同一性:ヌクレオチドまたはアミノ酸の同じ長さおよび順序を示す場合、2つ以上の配列が同一である。同一性のパーセンテージは典型的には2つの配列が同一である程度を記述し、すなわち、典型的には、基準配列の同一ヌクレオチドと配列位置において対応するヌクレオチドのパーセンテージを記述する。同一性の程度の決定のために、比較されるべき配列は同じ長さ、すなわち、比較されるべき配列の最も長い配列の長さを示すと考えられる。これは、8ヌクレオチドからなる第1の配列が第1の配列を含んでいる10ヌクレオチドからなる第2の配列と80%同一であることを意味する。換言すれば、本発明の文脈において、配列の同一性は、好ましくは同じ長さを有する2つ以上の配列において同じ位置を有する配列のヌクレオチドの割合に関する。ギャップは、通常、アラインメントにおけるそれらの実際の位置にかかわらず、同一でない位置とみなされる。
【0032】
安定化された核酸分子:安定化された核酸分子は修飾されていない核酸分子よりも、例えば、環境要因または酵素消化(例えば、エキソヌクレアーゼ分解またはエンドヌクレアーゼ分解による)による崩壊または分解に対して、より安定であるように修飾された核酸分子、好ましくはDNAまたはRNA分子である。好ましくは、本発明の文脈における安定化された核酸分子が細胞(例えば、原核細胞または真核細胞)において、好ましくは哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞)において安定化される。安定化効果はまた、細胞の外部、例えば緩衝溶液などにおいて、例えば安定化核酸分子を含んでいる医薬組成物の製造プロセスにおいて発揮され得る。
【0033】
トランスフェクション:「トランスフェクション」という用語はDNAまたはRNA(例えば、mRNA)分子などの核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞に導入することを指す。本発明の文脈において、用語「トランスフェクション」は核酸分子を細胞、好ましくは真核細胞(例えば、哺乳類細胞)に導入するための、当業者に公知の任意の方法を包含する。このような方法は例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション(例えば、カチオン性脂質および/またはリポソームに基づく)、リン酸カルシウム沈殿、ナノ粒子に基づくトランスフェクション、ウイルスに基づくトランスフェクション、またはカチオン性ポリマー(例えば、DEAE-デキストランまたはポリエチレンイミンなど)に基づくトランスフェクションを包含する。好ましくは、導入は非ウイルス性である。
【0034】
ベクター:「ベクター」という用語は、核酸分子、好ましくは人工核酸分子を指す。本発明の文脈におけるベクターは所望の核酸配列(例えば、オープンリーディングフレームを含んでいる核酸配列)を組み込むか、または保有するために適切である。このようなベクターは、保存ベクター(storage vector)、発現ベクター、クローニングベクター、転写ベクターなどであり得る。保存ベクターは、核酸分子、例えばmRNA分子の簡便な保存を可能にするベクターである。従って、ベクターは例えば、所望のmRNA配列またはその一部に対応する配列(例えば、mRNAのコード配列および3’-UTRに対応する配列)を含み得る。発現ベクターはRNA(例えば、mRNA)、またはペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質などの発現産物の産生のために使用され得る。例えば、発現ベクターはベクターの配列ストレッチの転写に必要な配列、例えば、プロモーター配列、例えば、RNAポリメラーゼプロモーター配列を含み得る。クローニングベクターは代表的にはクローニングサイトを含んでいるベクターであり、これは、ベクターに核酸配列を組み込むために使用され得る。クローニングベクターは例えば、プラスミドベクターまたはバクテリオファージベクターであり得る。移行ベクターは核酸分子を細胞または生物に移すために適したベクター、例えば、ウイルスベクターであってもよい。本発明の文脈におけるベクターは例えば、RNAベクターまたはDNAベクターであり得る。好ましくは、ベクターはDNA分子である。好ましくは、本出願の意味におけるベクターがクローニングサイト、選択マーカ(例えば、抗生物質耐性因子)、およびベクターの増殖に適切な配列(例えば、複製開始点)を含んでいる。好ましくは、本出願の文脈におけるベクターがプラスミドベクターである。
【0035】
ビヒクル:ビヒクルは、典型的には薬学的に活性な化合物などの化合物を貯蔵、輸送、および/または投与するのに適した材料であると理解される。例えば、それは、薬学的に活性な化合物を貯蔵、輸送、および/または投与するのに適した、生理学的に許容される液体であってもよい。
【0036】
3’-非翻訳領域(3’-UTR):一般に、用語「3’-UTR」はオープンリーディングフレームの3’(すなわち、「下流」)に位置し、タンパク質に翻訳されない人工核酸分子の一部を指す。典型的には、3’-UTRがタンパク質コード領域(オープンリーディングフレーム(ORF)またはコード配列(CDS))とmRNAのポリ(A)配列との間に位置するmRNAの部分である。本発明の文脈において、用語「3’-UTR」はまた、鋳型にコードされず、そこからRNAが転写されるが、成熟の間に転写後に付加されるエレメント(例えば、ポリ(A)配列)を含み得る。mRNAの3’-UTRはアミノ酸配列に翻訳されない。3’-UTR配列は一般に、遺伝子発現プロセスの間に各mRNA転写される遺伝子によってコードされる。ゲノム配列は最初に、任意のイントロンを含んでいる成熟前mRNAに転写される。次いで、成熟前mRNAは、成熟過程において、成熟mRNAにさらにプロセシングされる。この成熟過程は5’-キャッピング、成熟前mRNAのスプライシング、任意のイントロンの切り出し、および成熟前mRNAの3’-末端のポリアデニル化、ならびに任意のエンド/またはエキソヌクレアーゼ切断などの3’-末端の修飾の工程を含んでいる。本発明の文脈において、3’-UTRは、タンパク質コード領域の終止コドン、好ましくはタンパク質コード領域の終止コドンのすぐ3’とmRNAのポリ(A)配列との間に位置する成熟mRNAの配列に対応する。用語「に対応する」は、3’-UTR配列が3’-UTR配列を規定するために使用されるmRNA配列におけるようなRNA配列、またはそのようなRNA配列に対応するDNA配列であり得ることを意味する。本発明の文脈において、用語「遺伝子の3’-UTR」、例えば「リボソームタンパク質遺伝子の3’-UTR」はこの遺伝子に由来する成熟mRNAの3’-UTR、すなわち、遺伝子の転写および成熟前mRNAの成熟によって得られるmRNAに対応する配列である。用語「遺伝子の3’-UTR」は、3’-UTRのDNA配列およびRNA配列(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方、ならびに成熟および未成熟の両方)を包含する。
【0037】
5’-非翻訳領域(5’-UTR):5’-UTRは、典型的にはメッセンジャーRNA(mRNA)の特定の部分と理解される。それは、mRNAのオープンリーディングフレームの5’に位置する。典型的には、5’-UTRは転写開始部位から始まり、オープンリーディングフレームの開始コドンの1ヌクレオチド前で終わる。5’-UTRは、遺伝子発現を制御するためのエレメント(制御エレメントとも呼ばれる)を含み得る。このような制御エレメントは例えば、リボソーム結合部位であり得る。5’-UTRは例えば、5’-キャップの付加によって、転写後修飾されてもよい。本発明の文脈において、5’-UTRは、5’-キャップと開始コドンとの間に位置する成熟mRNAの配列に対応する。好ましくは、5’-UTRが3’から5’-キャップに位置するヌクレオチド、好ましくは3’から5’-キャップに位置するヌクレオチドから、タンパク質コード領域の開始コドンの5’から5’に位置するヌクレオチド、好ましくはタンパク質コード領域の開始コドンの5’から5’に位置するヌクレオチドまで延びる配列に対応する。成熟mRNAの5’-キャップのすぐ3’に位置するヌクレオチドは、典型的には転写開始部位に対応する。用語「に対応する」は、5’-UTR配列が5’-UTR配列を規定するために使用されるmRNA配列におけるようなRNA配列、またはそのようなRNA配列に対応するDNA配列であり得ることを意味する。本発明の文脈において、用語「遺伝子の5’-UTR」はこの遺伝子に由来する成熟mRNAの5’-UTR、すなわち、遺伝子の転写および成熟前mRNAの成熟によって得られるmRNAに対応する配列である。用語「遺伝子の5’-UTR」は、5’-UTRのDNA配列およびRNA配列を包含する。本発明の実施形態により、このような5’-UTRは、コード配列の5’-末端に提供され得る。その長さは、典型的には500、400、300、250または200ヌクレオチド未満である。他の実施形態において、その長さは、少なくとも10、20、30または40、好ましくは100または150ヌクレオチドまでの範囲であり得る。
【0038】
5’-末端オリゴピリミジントラクト(TOP):5’-末端オリゴピリミジントラクト(TOP)は典型的には核酸分子の5’-末端領域、例えば、あるmRNA分子の5’-末端領域、またはある遺伝子の機能的実体、例えば、転写領域の5’-末端領域に位置するピリミジンヌクレオチドのストレッチである。この配列は通常、転写開始部位に対応するシチジンから始まり、通常約3~30個のピリミジンヌクレオチドのストレッチが続く。例えば、TOPは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29である。ピリミジンは伸長し、したがって、5’TOPは、TOPの下流に位置する第1のプリンヌクレオチドの5’側のヌクレオチドで終わる。5’端末オリゴピリミジン消化を含んでいるメッセンジャーRNAは、しばしばTOP mRNAと呼ばれる。従って、このようなメッセンジャーRNAを提供する遺伝子はTOP遺伝子である。TOP配列は例えば、ペプチド伸長因子およびリボソームタンパク質をコードする遺伝子およびmRNAにおいて見出されている。
【0039】
TOPモチーフ:本発明の文脈において、TOPモチーフ定義した5’TOPに対応する核酸配列である。従って、本発明の文脈におけるTOPモチーフ、好ましくは、3~30ヌクレオチドの長さを有するピリミジンヌクレオチドのストレッチである。好ましくはTOPモチーフが少なくとも3個のピリミジンヌクレオチド、好ましくは少なくとも4個のピリミジンヌクレオチド、好ましくは少なくとも5個のピリミジンヌクレオチド、より好ましくは少なくとも6個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも7個のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも8個のピリミジンヌクレオチドからなり、ピリミジンヌクレオチドのストレッチは好ましくはシトシンヌクレオチドでその5’末端で開始する。TOP遺伝子およびTOP mRNAにおいて、TOPモチーフは好ましくは転写開始部位でその5’末端で開始し、該遺伝子またはmRNA中の最初のプリン残基に対して1ヌクレオチド5’で終わる。本発明の意味におけるTOPモチーフは、好ましくは、5’-UTRを表す配列の5’-末端、または5’-UTRをコードする配列の5’-末端に位置する。従って、好ましくは、3以上のピリミジンヌクレオチドのストレッチは、このストレッチがそれぞれの配列(例えば、人工核酸分子、人工核酸分子の5’-UTRエレメント、または本明細書に記載されるようなTOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列)の5’-末端に位置する場合、本発明の意味においてTOPモチーフである。換言すれば、5’-UTRまたは5’-UTRエレメントの5’-末端ではなく、5’-UTRまたは5’-UTRエレメント内のどこかに位置する、3個以上のピリミジンヌクレオチドのストレッチは、好ましくはTOPモチーフである。
【0040】
TOP遺伝子: TOP遺伝子は、典型的には5’端末オリゴピリミジン消化の存在によって特徴付けられる。さらに、ほとんどのTOP遺伝子は、増殖関連の翻訳調節によって特徴付けられる。しかし、組織特異的な翻訳制御を有しているTOP遺伝子が知られている。上記で定義したように、TOP遺伝子の5’-UTRは、由来する成熟mRNAの5’-UTRの配列に対応し、好ましくは、3’から5’-キャップに位置するヌクレオチドから5’から開始コドンに位置するヌクレオチドまで伸びている。TOP遺伝子の5’-UTRは典型的にはいかなる開始コドンも含まず、好ましくは上流AUG(uAUG)または上流オープンリーディングフレーム(uORF)も含んでいない。その中で、上流のAUGおよび上流のオープンリーディングフレームは、典型的には翻訳されるべきオープンリーディングフレームの開始コドン(AUG)の5’に存在するAUGおよびオープンリーディングフレームであると理解される。TOP遺伝子は、一般にかなり短い。TOP遺伝子のUTRの長さは20ヌクレオチドから500ヌクレオチドまでの間で変化し得、代表的には約200ヌクレオチド未満、好ましくは約150ヌクレオチド未満、より好ましくは約100ヌクレオチド未満である。本発明の意味におけるTOP遺伝子の例示的な5’-UTRは、特許出願WO2013/143700の配列番号1~1363にしたがう配列中の5位のヌクレオチドから開始コドン(例えば、ATG)のすぐ5’側に位置するヌクレオチドに伸びる核酸配列である。この文脈において、TOP遺伝子UTRの特に好ましい断片は、5’TOPモチーフを欠くTOP遺伝子UTRである。用語「TOP遺伝子の5’-UTR」または「5’TOP-UTR」は、好ましくは天然に存在するTOP遺伝子の5’-UTRをいう。
【0041】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、新規のRNA、RNAを含んでいる組成物およびキットに関する。さらに、本発明に係るRNA、組成物およびキットの様々な使用、特に医療用途が提供される。
【0042】
第1の態様において、本発明は、細胞外マトリクスプロテアーゼまたはヒトコラゲナーゼMMP1、肝細胞増殖因子(HGF)、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、クロストリジウムII型コラゲナーゼ、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)、またはこれらのペプチドもしくはタンパク質のいずれかの断片もしくはバリアントからなる群から選択されるペプチドもしくはタンパク質を含んでいるかまたは当該ペプチドもしくはタンパク質からなる少なくとも1つのペプチドもしくはタンパク質をコードしている少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAに関する。
【0043】
本発明に記載のRNAは、本明細書に記載されているような肝疾患または肝障害(好ましくは肝線維症および肝硬変から選択される)の処置または予防における使用に、好ましく適している。より好ましくは、本発明に記載のRNAは、本明細書に記載されているような哺乳類(好ましくはヒト)における肝疾患の安全かつ有効な処置または予防における使用に、好ましく適している。
【0044】
従って、第2の態様において、本発明は、肝疾患の処置または予防における使用のための、本明細書に記載されているようなRNAを提供する。その上、本明細書に記載されているようなRNAは、好ましくは遺伝子療法のために提供される。
【0045】
以下、本発明に記載のRNAを説明する。また、本発明のRNAに関する開示は、そのままで、本明細書に記載されているような(医療)用途のためのRNA、ならびに(薬学的)組成物と関連するRNA、または本発明に係るRNAを含んでいるキット(の一部)と関連するRNAに当てはまる。特に、「本発明に係るRNA」に言及する時、本開示はまた、「本発明に係る使用のためのRNA」にも関し、その逆も同様である。
【0046】
本発明者らは驚くべきことに、本発明に係るRNAは、少なくとも1つのコード領域にコードされているペプチドまたはタンパク質の十分な発現を、例えば哺乳類対象への(特に肝臓における)当該RNAの投与によって、提供する能力があることを見出した。それぞれの上記ペプチドまたはタンパク質をコードしている、この技術において公知基準コンストラクトを用いて達成される発現レベルと比べて向上した、ペプチドまたはタンパク質の発現レベルが、意外にも、本発明のRNAを用いることによって達成され得る。有利に、RNAによってコードされているペプチドまたはタンパク質がこのようにしてその効果を発揮することができ、当該効果は、好ましくは許容可能な副作用を伴わずに、または伴って、特に哺乳類対象の肝臓における、肝疾患の処置または予防に利用されることが好ましい。好ましい実施形態において、コードされているペプチドまたはタンパク質の発現レベルは、肝臓においてその効果を発揮するためには肝臓において十分に高く、副作用を減らすために他の臓器において下がる。
【0047】
本発明と関連して、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、本明細書で開示されるペプチドもしくはタンパク質を含んでいるかまたは当該ペプチドもしくはタンパク質をコードする核酸配列を含んでいることが好ましい。いくつかの実施形態では、ペプチドまたはタンパク質が、天然に存在するペプチドまたはタンパク質(例えば、基質メタロプロテイナーゼ-1またはTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL))などの基準ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列全体を実質的に含む。本明細書に用いられている「全長ペプチドまたは全長タンパク質」という用語は、例えばデータベース受託番号NP_003801.1、P50591、NP_036656.1、P05554、NP_031704.2、P53566、NP_004355.2、P49715、NP_000448.3、P41235、NP_061986.1、Q9NSA1、NP_078852.3、Q5TC84、NP_008842.1、P04808、NP_604390.1、P04090、NP_543140.1、Q8WXF3、NP_002412.1、P03956、BAA77453.1、BAA34542.1およびBAA34542.1によって定義されているアミノ酸配列、または配列番号4、8、10、12、14~19、20、22、25および26によって定義されているアミノ酸配列のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含んでいるかまたは当該アミノ酸配列からなるペプチドまたはタンパク質といった天然に存在するペプチドまたはタンパク質に言及する。さらに、上記用語はまた、配列番号5~7、9、11、13、21、23、24、27および28からなる群より選択されるアミノ酸配列を含んでいるかまたはそれからなるペプチドまたはタンパク質を指す。その上、上記用語はまた、データベース受託番号NM_003810.3、CCDS3219.1、ENSG00000121858、NM_012524.3、NM_007678.3、CCDS21145.1、NM_004364.4、CCDS54243、M37197、ENSG00000245848、NM_000457.4、CCDS13330.1、X76930、ENSG00000101076、NM_019113.3、CCDS12734.1、AB021975、ENSG00000105550、NM_024576.4、CCDS34482.1、ENSG00000119900、NM_006911.3、CCDS6462.、ENSG00000107018、NM_134441.2、CCDS6460.1、ENSG00000107014、NM_080864.3、NM_001311197、CCDS12302.1、AF447451、ENSG00000171136、NM_002421.3、CCDS8322.1、X54925、ENSG00000196611、D87215.1、AB014075.1、およびAB014075によって定義されている核酸配列のいずれか1つによってコードされているアミノ酸配列に言及する。
【0048】
係る好ましい実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、データベース受託番号NP_003801.1003801.1、P50591、NP_036656.1、P05554、NP_031704.2、P53566、NP_004355.2、P49715、NP_000448.3、P41235、NP_061986.1、Q9NSA1、NP_078852.3、Q5TC84、NP_008842.1、P04808、NP_604390.1、P04090、NP_543140.1、Q8WXF3、NP_002412.1、P03956、BAA77453.1、BAA34542.1およびBAA34542.1によって定義されているアミノ酸配列のいずれか1つ、またはこれらのアミノ酸配列の断片もしくはバリアントのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含んでいるかまたは当該アミノ酸配列またはアミノ酸配列の断片もしくはバリアントからなるペプチドまたはタンパク質でコードする。コードされているペプチドまたはタンパク質が、データベース受託番号NM_003810.3、CCDS3219.1、ENSG00000121858、NM_012524.3、NM_007678.3、CCDS21145.1、NM_004364.4、CCDS54243、M37197、ENSG00000245848、NM_000457.4、CCDS13330.1、X76930、ENSG00000101076、NM_019113.3、CCDS12734.1、AB021975、ENSG00000105550、NM_024576.4、CCDS34482.1、ENSG00000119900、NM_006911.3、CCDS6462.、ENSG00000107018、NM_134441.2、CCDS6460.1、ENSG00000107014、NM_080864.3、NM_001311197、CCDS12302.1、AF447451、ENSG00000171136、NM_002421.3、CCDS8322.1、X54925、ENSG00000196611、D87215.1、AB014075.1、およびAB014075によって定義されている核酸配列のいずれか1つ、またはこれらの核酸配列の断片もしくはバリアントのいずれか1つによってコードされているアミノ酸配列を含んでいるかまたは当該アミノ酸配列からなることがより好ましい。コードされているペプチドまたはタンパク質が、配列番号4~配列番号28からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこれらのアミノ酸配列のいずれか1つの断片またはバリアントを含んでいるかまたは当該アミノ酸配列からなることがさらにより好ましい。
【0049】
あるいは、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列はまた、本明細書に記載されているようなペプチドもしくはタンパク質の断片、または本明細書で記載されているようなペプチドまたはタンパク質のバリアントの断片を含んでいるかまたは当該ペプチドまたはタンパク質からなるペプチドまたはタンパク質をコードしている核酸配列を含んでいる。
【0050】
本発明と関連して、ペプチドもしくはタンパク質またはそのバリアントの「断片」は、上記に定義されているペプチドまたはタンパク質またはそのバリアントの配列を含み、そのアミノ酸配列(またはそのコードされた核酸配列)に関して、天然に存在するタンパク質またはそのバリアントのアミノ酸配列のような、基準アミノ酸配列と比べて、、N末端、C末端および/または配列内(intrasequentially)でトランケートされている。そのようなトランケーションは、それぞれアミノ酸レベルまたは核酸レベルのいずれかで起こり得る。本明細書で定義されているような当該断片に関係する同一性配列は、好ましくは本明細書で定義されているようなペプチド、タンパク質またはそのバリアント全体、または当該ペプチドまたはタンパク質またはそのバリアントの核酸配列全体(コードする)を指す。
【0051】
本発明に係る様々な実施形態によれば、RNAは、本明細書で定義されているようなペプチドまたはタンパク質のバリアントを含んでいるかまたは当該バリアントまたはバリアントからなるペプチドまたはタンパク質をコードする少なくとも1つのコード配列、またはペプチドまたはタンパク質のバリアントの断片を含んでいる。
【0052】
本発明の特定の実施形態では、本明細書で定義されているようなペプチドもしくはタンパク質またはその断片の「バリアント」が本明細書で定義されているような少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAによってコードされているものであって、アミノ酸配列は基準アミノ酸配列(天然に存在するアミノ酸配列など)から少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる、少なくとも1つのコード配列によってコードされているものである。これと関連して、少なくとも1つのアミノ酸残基における「変化」は、例えば、アミノ酸残基の別のアミノ酸への変異、欠失または挿入においてなり得る。より好ましくは、アミノ酸配列に関連して使用される用語「バリアント」は本明細書で定義されているような任意の相同体、アイソフォームもしくはペプチドもしくはタンパク質またはその断片の転写バリアントを含む本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされているものであって、相同体、アイソフォームまたは転写バリアントは好ましくは本明細書で定義されているような同一性または相同性の程度によってそれぞれ特徴付けられる。
【0053】
本発明と関連して、タンパク質またはペプチドの「フラグメント」または「バリアント」は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも75もしくは、少なくとも100の当該タンパク質もしくはペプチドのアミノ酸のストレッチの少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、80%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上のアミノ酸同一性を有し得る。本明細書で使用されるようなタンパク質またはペプチドの「断片」または「バリアント」は、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のタンパク質もしくはペプチド(当該バリアントに由来する)と同一であることがより好ましい。
【0054】
好ましくは、ペプチドもしくはタンパク質のバリアントまたはその断片が本明細書で定義されているような少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAによってコードされ得るものであって、アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基は、置換された少なくとも1つのコード配列よってコードされている。同じクラスに由来するアミノ酸が、互いに置換する置換は保存的置換と呼ばれる。特に、当該置換は、脂肪族側鎖、正または負に荷電した側鎖、側鎖中の芳香族基またはアミノ酸を有するアミノ酸であり、当該側鎖は水素結合を形成することができる(例えば、水酸基を有する側鎖)。保存的置換によって、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸は対応する極性側鎖を有する別のアミノ酸、または、例えば、対応する疎水性側鎖(例えば、トレオニン(セリン)によるセリン(トレオニン)、またはイソロイシン(ロイシン)によるロイシン(イソロイシン))を有する別のアミノ酸によって置換され得る疎水性側鎖によって特徴付けられるアミノ酸である。好ましい実施形態において、ペプチドもしくはタンパク質のバリアントまたはその断片は、本発明に係るRNAによってコードされ得るものであって、少なくとも1つの保存的置換を比較した基準配列(例えば、それぞれ天然に存在する配列)を含む少なくとも1つのコード配列によってコードされているアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基である。当該アミノ酸配列ならびに当該アミノ酸配列をコードする核酸配列は特に、本明細書中で定義されているような用語「バリアント」に含まれる。
【0055】
挿入、欠失および/または非保存的置換もまた、特に、好ましくは三次元構造の実質的な修飾を引き起こさない当該アミノ酸配列の配列位置において可能である。挿入または欠失による三次元構造への修飾は例えば、CDスペクトル(円偏光二色性スペクトル)を用いて容易に測定することができる(Urry、1985、Absorption、Circular Dichroism and ORD of Polypeptides、in: Modern Physical Methods in Biochemistry、Neuberger et al.(ed),Elsevier,Amsterdam)。
【0056】
当該アミノ酸の2つの配列(核酸配列、例えば、本明細書で定義されているようなRNAまたはmRNA配列、またはアミノ酸配列、好ましくは本発明に係るRNAによってコードされているアミノ酸配列)が同一であるかの割合を測定するために、配列は、後で互いに比較するために一列に並べられた。この目的のために、例えば、ギャップを第1の配列の配列に挿入することができ、第2の配列の対応する位置における構成要素を比較することができる。もし、第1の配列における位置が第2の配列における対応する位置における場合のように、同じ構成要素によって存在するならば、2つの配列は、上記位置において同一である。当該2つの配列が同一である割合は、同一位置の数の基を位置の総数によって割ったものである。2つの配列が同一である割合は、数学的アルゴリズムを用いて測定することができる。好ましくは、例に挙げた数学的アルゴリズムには、限定されず、Karlin et al. (1993), PNAS USA, 90:5873-5877 or Altschul et al. (1997), Nucleic Acids Res., 25:3389-3402のアルゴリズムを使用することができる。このようなアルゴリズムは例えば、BLASTプログラムに組み込まれる。本発明の配列で同一である配列における特定の範囲は、上記プログラムによって特定することができる。
【0057】
本発明と関連して、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされているペプチドまたはタンパク質の断片、またはそのバリアントは一般的には、基準アミノ酸配列であり、好ましくはそれぞれの天然に存在する全長のペプチドまたは全長タンパク質またはそのバリアントのアミノ酸配列と、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは95%または97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0058】
本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされているペプチドまたはタンパク質の断片またはそのバリアントが、一般的にはデータベース受託番号NP_003801.1、P50591、NP_036656.1、P05554、NP_031704.2、P53566、NP_004355.2、P49715、NP_000448.3、P41235、NP_061986.1、Q9NSA1、NP_078852.3、Q5TC84、NP_008842.1、P04808、NP_604390.1、P04090、NP_543140.1、Q8WXF3、NP_002412.1、P03956、BAA77453.1、BAA34542.1およびBAA34542.1によって定義されている基準アミノ酸配列のいずれか1つ、または上記ペプチドもしくはタンパク質のいずれか1つの断片もしくはバリアントが、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいるかまたは当該アミノ酸配列からなることがより好ましい。コードされているペプチドまたはタンパク質が、配列番号4~配列番号28からなる群から選択される基準アミノ酸配列のいずれか1つ、またはこれらの配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントが、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでいるかまたは当該アミノ酸配列からなることが最も好ましい。
【0059】
好ましくは、本明細書で定義される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードしているRNAの少なくとも1つのコード配列が配列番号32~71、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群または、これらの核酸配列のいずれか1つの断片またはバリアントから選択される核酸配列を含んでいるかまたは当該核酸配列からなる。本明細書に用いられている、配列番号32~71、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、365、366、367、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列を含んでいるかまたは当該核酸配列からなる核酸配列もまた、「全長核酸(配列)」に言及される。
【0060】
特定の実施形態において、本発明に係るRNA、好ましくは本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は本明細書で定義されるペプチドもしくはタンパク質、または断片またはそのバリアントをコードしている核酸配列の断片を含んでいるか、または当該ペプチドもしくはタンパク質、または断片またはそのバリアントをコードしている核酸配列からなり得る。本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、好ましくは、本明細書で定義されているような、配列番号32~71、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407に係る核酸配列のいずれか1つ、またはこれらの配列のいずれか1つのバリアント、断片を含んでいるまたは当該断片からなることが好ましい。
【0061】
これと関連して、「核酸(配列)の断片」は、好ましくは本明細書に記載されるようなペプチドまたはタンパク質の断片またはそのバリアントの断片をコードしている核酸配列である。より好ましくは、上記発現「核酸(配列)の断片」は、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する核酸配列、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、またはさらに97%の配列同一性を有する核酸配列、それぞれの全長核酸配列、好ましくは配列番号32~71、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列のいずれかのバリアントに言及する。
【0062】
別の好ましい実施形態では、本発明に係るRNA、好ましくは本発明によるRNAの少なくとも1つのコード配列が、本明細書で定義される核酸配列のバリアント、好ましくは本明細書で定義されるペプチドもしくはタンパク質またはその断片をコードする核酸配列のバリアントを含んでもよく、あるいは、その核酸配列のバリアントからなってもよい。
【0063】
本明細書に記載されるようなペプチドもしくはタンパク質またはその断片をコードする核酸配列に関連して、本明細書中にて使用される場合の「核酸配列のバリアント」という表現は、典型的には、それぞれの基準核酸配列、例えば、それぞれの天然に存在する核酸配列もしくは本明細書に定義されるような全長核酸配列またはその断片から、少なくとも1つの核酸残基が異なっている核酸配列を指す。より好ましくは、本発明に関連して使用される場合の「核酸配列の変形例」という表現は、由来元の核酸配列と、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、またはさらに97%の配列同一性を有する核酸配列を指す。
【0064】
好ましくは、本発明に係るRNA、より好ましくは本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、好ましくは本明細書で定義されるように、ペプチドもしくはタンパク質のバリアントまたはその断片をコードする。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明に係るRNA、より好ましくは本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、本明細書で定義されるペプチドもしくはタンパク質またはその断片をコードする核酸配列のバリアントを含んでいるか、またはその核酸配列のバリアントからなる。上記核酸配列のバリアントは、アミノ酸残基からなる少なくとも1つの保存的置換を含んでいるアミノ酸配列をコードする。
【0066】
別の実施形態では、本発明に係るRNA、より好ましくは本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、本明細書で定義されるような、ペプチドもしくはタンパク質またはその断片をコードする核酸配列のバリアントを含んでいるか、またはその核酸配列のバリアントからなる。上記バリアントにおける核酸配列は、基準核酸配列と、好ましくは少なくとも1つの核酸残基中において天然に存在する、それぞれの核酸配列と異なっており、より好ましくは、変性した遺伝コードによって、コードされたアミノ酸配列の改変を生じることがなく、すなわち、バリアントによってコードされるアミノ酸配列またはその少なくとも一部は、好ましくは、上記の目的内にて、1つまたは複数の変異体において天然に存在するアミノ酸配列と異なっていなくともよい。
【0067】
さらに、本明細書で定義される、ペプチドもしくはタンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする核酸配列の「バリアント」はまた、本明細書で定義されるRNA配列に対応するDNA配列を含んでもよく、本明細書で定義されるDNA配列に対応するさらなるRNA配列を含んでもよい。当業者はRNA配列のDNA配列への翻訳(またはその逆)、または相補鎖配列の作製(すなわち、U残基をT残基にて置換することによる、および/または所定の配列に関して相補鎖を構築することによる)に精通している。
【0068】
好ましい態様によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、基準核酸配列と、好ましくは、天然に存在する全長のペプチドもしくはタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列と、あるいは、本明細書に定義される全長のペプチドもしくはタンパク質またはそのバリアントと、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、またはさらに97%の配列同一性を有する核酸配列を含んでいるか、あるいは、その核酸配列からなる。
【0069】
さらに好ましい実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号32~71、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列と、同一配列であるか、あるいは、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%またはさらに97%の配列同一性を有する核酸配列、またはこれらの核酸配列のいずれかの断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる。
【0070】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号36、37、75、77、78、91~95および97~99からなる群から選択される核酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一の核酸配列、または、これらの核酸配列のいずれかの断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる。
【0071】
別の実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号75、77、78、91~95および97~99からなる群から選択される核酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一の核酸配列、または、これらの核酸配列のいずれかの断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる。
【0072】
好ましい実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAを提供し、上記RNAにおける上記少なくとも1つのコード配列は、細胞外マトリクス(ECM)プロテアーゼ、またはその断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。本発明はさらに、少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAを提供し、ここで、コード配列は、本明細書に記載されるような肝疾患の処置又は予防において使用するための、細胞外マトリクス(ECM)プロテアーゼ、またはそのフラグメントもしくは改変体を含んでいるかまたはそれらからなる少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。ここで、上記肝疾患は、好ましくは、肝線維症および肝硬変から選択される。
【0073】
本発明に関連して、「細胞外マトリクスプロテアーゼ」という用語は、好ましくは肝臓組織における、細胞外マトリクス蛋白質の分解を触媒することができる酵素を指す。本明細書中で使用される場合、「細胞外マトリクス蛋白質」は、好ましくは肝臓組織中の任意の型の細胞外マトリクス蛋白質、より好ましくはコラーゲンであり、さらにより好ましくは間質コラーゲンおよび基底膜コラーゲンから選択され、最も好ましくはI型、III型およびIV型コラーゲンから選択される。本明細書で使用される「細胞外マトリクスプロテアーゼ」という用語は、好ましくはコラゲナーゼを指し、より好ましくは本明細書に記載される細菌コラゲナーゼまたは哺乳類基質メタロプロテイナーゼ(本明細書では「哺乳動物コラゲナーゼ」とも呼ばれる)を指す。細菌コラゲナーゼの例としては、クロストリジウムコラゲナーゼ、より好ましくはクロストリジウムII型コラゲナーゼ、最も好ましくはクロストリジウムヒストリチカム由来のII型コラゲナーゼ(例えば、ColGまたはColHなど)が挙げられる。例示的な哺乳類基質メタロプロテイナーゼは、例えば、ヒト基質メタロプロテイナーゼ-1である。
【0074】
細菌コラゲナーゼまたは哺乳動物コラゲナーゼ等の細胞外マトリクスプロテアーゼは典型的には前駆体タンパク質として発現され、上記細胞外マトリクスプロテアーゼは通常、不活性である。上記前駆体タンパク質は調節ドメインを除去する細胞酵素により、例えば、決定された切断部位でのタンパク質分解切断によって活性化され得る。本発明の好ましい実施形態によれば、RNAの少なくとも1つのコード配列は、上記調節ドメインを欠くコラゲナーゼ、好ましくは、上記調節ドメインを欠く細菌コラゲナーゼもしくは上記調節ドメインを欠く哺乳類基質メタロプロテイナーゼ、またはその断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。上記調節ドメインを欠くコラゲナーゼは、好ましくは、事前に活性化しないものでさえ、発現時に活性である。
【0075】
一実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、配列番号20~28からなる群から選択されるアミノ酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、または、当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、哺乳類基質メタロプロテイナーゼ、好ましくは基質メタロプロテイナーゼ-1、より好ましくはヒト基質メタロプロテイナーゼ-1、またはその断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「ヒト基質メタロプロテイナーゼ-1」との用語は、例えば、「MMP1」と略され得、典型的には、データベース受託番号NP_002412.1もしくはP03956によって規定されるアミノ酸配列のいずれか1つと、同一もしくは少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、またはこれらの配列のいずれか1つのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、ペプチドまたはタンパク質を指し得る。好ましくは、上記用語はまた、データベースアクセッション番号NM_002421.3、CCDS8322.1、X54925もしくはENSG00000196611によって定義される通りの核酸配列のいずれか1つと、同一もしくは少なくとも80%が同一の核酸配列、またはこれらの配列のいずれか1つのホモログ、断片もしくはバリアントによってコードされるようなアミノ酸配列を指し得る。さらに、本明細書で使用される上記用語はまた、配列番号20または21から選択されるアミノ酸配列と、同一または少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、ペプチドまたはタンパク質を指し得る。
【0078】
特定の実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、哺乳類基質メタロプロテイナーゼを含んでいるか、あるいは、その哺乳類基質メタロプロテイナーゼからなる、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。ここで、上記ペプチドまたは上記タンパク質は、配列番号20または21と、同一もしくは少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、またはこれらのアミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる。好ましい実施形態によれば、上述のコードされるペプチドまたはタンパク質は、配列番号21と同一または少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸配列の断片またはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる。そこで、上記RNAの少なくとも1つのコード配列は、好ましくは配列番号55、56、57、91、92、119、120、147、148、175、176、203、204、231、232、259、260、260、260、315、315、343、344、371、372、399および400からなる群より選択される核酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一の核酸配列、または、これらの核酸配列のいずれかの断片もしくはバリアントを含んでいる、あるいは、それらからなる。
【0079】
別の実施形態では、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列が、細菌コラゲナーゼ、好ましくはクロストリジウムコラゲナーゼ、より好ましくはクロストリジウムII型コラゲナーゼ、最も好ましくはクロストリジウムヒストリチカム由来のII型コラゲナーゼ、またはその断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、その細菌コラゲナーゼからなる、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする。上述のコードされるペプチドまたはタンパク質は、クロストリジウムヒストリチカム由来のColGまたはColHを含んでいるか、あるいは、それらからなることが、特に好ましい。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「ColG」との用語は、典型的には、データベース受託番号BAA77453.1によって定義されるアミノ酸配列と同一もしくは少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸配列のホモログ、断片またはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなるペプチドまたはタンパク質を指す。好ましくは、上記用語はまた、データベース受託番号D87215.1によって定義される核酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一の核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントによってコードされる通りのアミノ酸配列を指し得る。さらに、本明細書で使用される上記用語はまた、配列番号22~24からなる群から選択されるアミノ酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一であるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、ペプチドまたはタンパク質を指し得る。
【0081】
本発明に関連して、「ColH」との用語は、典型的には、データベース受託番号BAA34542.1によって定義される通りのアミノ酸配列と、同一もしくは少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸配列のホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、ペプチドまたはタンパク質を指す。好ましくは、上記用語はまた、データベース受託番号AB014075.1によって定義される通りの核酸配列と、同一あるいは少なくとも80%が同一の核酸配列、またはその核酸配列のホモログ、断片もしくはバリアントによってコードされる通りのアミノ酸配列を指し得る。さらに、本明細書で使用される上記用語はまた、配列番号25~28からなる群から選択されるアミノ酸配列と、同一または少なくとも80%が同一のアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、あるいは、それらからなる、ペプチドまたはタンパク質を指し得る。
【0082】
〔修飾〕
[化学修飾]
本明細書で使用される用語「RNA修飾」は、骨格修飾ならびに糖修飾または塩基修飾を含む化学修飾を表し得る。
【0083】
本文脈において、本明細書中で定義される修飾RNAは、ヌクレオチド類似物/修飾(例えば、骨格修飾、糖修飾または塩基修飾)を含み得る。本発明に関連する骨格修飾は、本明細書で定義されるRNA中に含まれるヌクレオチドの骨格のリン酸が化学的に修飾される修飾である。本発明に関連する糖修飾は、本明細書で定義されるRNAのヌクレオチドの糖の化学修飾である。さらに、本発明に関連する塩基修飾は、RNAのヌクレオチドの塩基部分の化学修飾である。本文脈において、ヌクレオチド類似物またはヌクレオチド修飾は、好ましくは転写および/または翻訳に適用可能なヌクレオチド類似物から選択される。
【0084】
[糖修飾]
修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖部分において修飾されていてもよく、該修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、本明細書に記載されるように修飾RNAに組み込まれ得る。例えば、2’ヒドロキシル基(OH)は、多数の異なる「酸素を含む(oxy)」または「脱酸素(deoxy)」置換基で修飾または置換されていてもよい。「酸素を含む」-2’ヒドロキシル基修飾の例としては、アルコキシまたはアリールオキシ(-OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖);ポリエチレングリコール(PEG)、-O(CH2CH2O)nCH2CH2OR;2’ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋によって、同じリボース糖の4’炭素に連結される「固定された」核酸(LNA);およびアミノ基(-O-アミノ、ここで、アミノ基、例えばNRRは、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノであってもよい)またはアミノアルコキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
「脱酸素」修飾には水素、アミノ(例えば、NH2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸)が含まれ:また、上記アミノ基は、C原子、N原子およびO原子を1つ以上含むリンカーを介して、糖に結合されていてもよい。
【0086】
糖基はまた、リボース中の対応する炭素の立体化学的配置とは反対の立体化学的配置を有する1つ以上の炭素を含んでいてもよい。従って、修飾RNAは、例えばアラビノースを糖として含むヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0087】
[骨格修飾]
リン酸骨格は、修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドにおいて、さらに修飾され得、該修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、本明細書に記載されるように修飾RNAに組み込まれ得る。1つ以上の酸素原子が異なる置換基で置換されることによって、骨格のリン酸基が、修飾されていてもよい。さらに、修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドにおいて、修飾されていないリン酸部分が、本明細書に記載されるように修飾されたリン酸で完全に置換されていてもよい。修飾されたリン酸基の例としては、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノホスフェート、ボラノホスフェートエステル、ホスホネート水素、ホスホロアミデート、アルキルまたはアリールホスホネートおよびホスホトリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。ホスホロジチオエートにおいて、両方の非結合酸素が、硫黄で置き換えられている。リン酸リンカーもまた、結合酸素が、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)および炭素(架橋メチレンホスホネート)で置換されることによって、修飾されていてもよい。
【0088】
[塩基修飾]
修飾されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、本明細書に記載されるように修飾RNAに組み込まれ得、核酸塩基部分においてさらに修飾されてもいてもよい。RNA中に見出される核酸塩基の例としては、アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書に記載のヌクレオシドおよびヌクレオチドは、主溝面上で化学的に修飾されていてもよい。いくつかの実施形態において、主溝化学修飾は、アミノ基、チオール基、アルキル基、またはハロ基を含んでいてもよい。
【0089】
本発明の特に好ましい態様において、ヌクレオチド類似物/修飾は、塩基修飾から選択され、好ましくは2-アミノ-6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、2-アミノプリン-リボシド-5’-トリホスフェート;2’-アミノアデノシン-5’-トリホスフェート、2’-アミノ-2’-デオキシシチジン-トリホスフェート、2-チオシチジン-5’-トリホスフェート、2-チオウリジン-5’-トリホスフェート、2’-フルオロチミジン-5’-トリホスフェート、2’-O-メチル-イノシン-5’-トリホスフェート、4-チオウリジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルシチジン-5’-トリホスフェート、5-アミノアリルウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモウリジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ブロモ-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-ヨードウリジン-5’-トリホスフェート、5-ヨード-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、5-メチルウリジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシシチジン-5’-トリホスフェート、5-プロピニル-2’-デオキシウリジン-5’-トリホスフェート、6-アザシチジン-5’-トリホスフェート、6-アザウリジン-5’-トリホスフェート、6-クロロプリンリボシド-5’-トリホスフェート、7-デアザアデノシン-5’-トリホスフェート、7-デアザグアノシン-5’-トリホスフェート、8-アザアデノシン-5’-トリホスフェート、8-アジドアデノシン-5’-トリホスフェート、ベンズイミダゾール-リボシド-5’-トリホスフェート、N1-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、N1-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、N6-メチルアデノシン-5’-トリホスフェート、O6-メチルグアノシン-5’-トリホスフェート、プソイドウリジン-5’-トリホスフェート、またはプロマイシン-5’-トリホスフェート、キサントシン-5’-トリホスフェートから選択される。特に好ましくは、5-メチルシチジン-5’-トリホスフェート、7-デアザグアノシン-5’-トリホスフェート、5-ブロモシチジン-5’-トリホスフェート、およびプソイドウリジン-5’-トリホスフェートからなる塩基修飾されたヌクレオチドの群から選択される塩基修飾のためのヌクレオチドが挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオシドには、ピリジン-4-オンリボヌクレオシド、5-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオウリジン、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオプソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン、3-メチルウリジン、5-カルボキシメチルウリジン、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン、1-タウリノメチル-4-チオ-ウリジン、5-メチル-ウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシプソイドウリジン、および4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジンが含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態において、修飾されたヌクレオシドには、5-アザ-シチジン、プソイドイソシチジン、3-メチルシチジン、N4-アセチルシチジン、5-ホルミルシチジン、N4-メチルシチジン、5-ヒドロキシメチルシチジン、1-メチルプソイドイソシチジン、ピロロ-シチジン、ピロロ-プソイドイソシチジン、2-チオ-シチジン、2-チオ-5-メチル-シチジン、4-チオ-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-プソイドイソシチジン、4-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5-アザ-ゼブラリン、5-メチル-ゼブラリン、5-アザ-2-チオ-ゼブラリン、2-チオ-ゼブラリン、2-メトキシ-シチジン、2-メトキシ-5-メチル-シチジン、4-メトキシ-プソイドイソシチジン、および4-メトキシ-1-メチル-プソイドイソシチジンが含まれる。
【0092】
他の実施形態において、修飾されたヌクレオシドには、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-8-アザ-アデニン、7-デアザ-2-アミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2-アミノプリン7-デアザ-2,6-ジアミノプリン、7-デアザ-8-アザ-2,6-ジアミノプリン、1-メチルアデノシン、N6-メチルアデノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6-グリシニルカルバモイルアデノシン、N6-スレオニルカルバモイルアデノシン、2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルデノシン、N6-N6-ジメチルアデノシン、7-メチルアデニン、2-メチルチオ-アデニン、および2-メトキシ-アデニンが含まれる。
【0093】
他の実施形態において、修飾されたヌクレオシドには、イノシン、1-メチル-イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7-デアザ-グアノシン、7-デアザ-8-アザ-グアノシン、6-チオ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-グアノシン、6-チオ-7-デアザ-8-アザ-グアノシン、7-メチル-グアノシン、6-チオ-7-メチル-グアノシン、7-メチルイノシン、6-メトキシ-グアノシン、1-メチルグアノシン、N2-メチルグアノシン、N2,N2-ジメチルグアノシン、8-オキソ-グアノシン、7-メチル-8-オキソ-グアノシン、1-メチル-6-チオ-グアノシン、N2-メチル-6-チオ-グアノシン、およびN2,N2-ジメチル-6-チオ-グアノシンが含まれる。
【0094】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチドは、主溝面上で修飾されていてもよく、ウラシルのC-5上の水素がメチル基またはハロ基で置換されていてもよい。特定の実施形態において、修飾されたヌクレオシドは、5’-O-(1-チオホスフェート)-アデノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-シチジン、5’-O-(1-チオホスフェート)-グアノシン、5’-O-(1-チオホスフェート)-ウリジンまたは5’-O-(1-チオホスフェート)-プソイドウリジンである。
【0095】
さらなる特定の実施形態において、修飾RNAは、6-アザ-シチジン、2-チオ-シチジン、α-チオ-シチジン、プソイド-イソ-シチジン、5-アミノアリル-ウリジン、5-ヨード-ウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、α-チオ-ウリジン、4-チオ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン、デオキシ-チミジン、5-メチル-ウリジン、ピロロ-シチジン、イノシン、α-チオ-グアノシン、6-メチル-グアノシン、5-メチル-シチジン、8-オキソ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、N1-メチル-アデノシン、2-アミノ-6-クロロ-プリン、N6-メチル-2-アミノプリン、プソイド-イソ-シチジン、6-クロロ-プリン、N6-メチル-アデノシン、α-チオ-アデノシン、8-アジド-アデノシン、7-デアザ-アデノシンから選択されるヌクレオシド修飾を含み得る。
【0096】
[脂質修飾]
さらなる実施形態によれば、本明細書で定義される修飾RNAは、脂質修飾を含んでいてもよい。このような脂質修飾RNAは、典型的には、本明細書で定義されるRNAを含む。本明細書で定義されるそのような脂質修飾RNAは、典型的には、そのRNAと共有結合した少なくとも1つのリンカー、およびそれぞれのリンカーと共有結合した少なくとも1つの脂質をさらに含む。あるいは、脂質修飾RNAは、本明細書で定義される少なくとも1つのRNA、およびそのRNAと(リンカーなしで)共有結合した少なくとも1つの(二官能性)脂質を含む。第3の異なる態様によれば、脂質修飾RNAは、本明細書で定義されるRNA分子、そのRNAと共有結合した少なくとも1つのリンカー、それぞれのリンカーと共有結合した少なくとも1つの脂質、およびそのRNAと(リンカーなしで)共有結合した少なくとも1つの(二官能性)脂質もまた含んでいる。本文脈において、脂質修飾は直線RNA配列の末端に存在することが特に好ましい。
【0097】
[G/C含有量の修飾]
別の実施形態によれば、本発明のRNA(好ましくはmRNA)は、本発明のRNA(好ましくはRNAの少なくとも1つのコード配列)のグアノシン/シトシン(G/C)含有量が修飾されることによって修飾され得、従って安定化され得る。
【0098】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明のRNAのコード配列(コード領域)のG/C含有量は、それぞれの野生型RNA、すなわち未修飾RNAのコード領域のG/C含有量と比べて、修飾され、特に増加する。RNAによってコードされるアミノ酸配列は、好ましくはそれぞれの野生型RNAによってコードされるアミノ酸配列と比べて修飾されない。本発明のRNAのG/C含有量の修飾は、翻訳されるべき任意のRNA領域の配列は、そのRNAの効率的な翻訳のために重要であるという事実に基づく。従って、RNAの組成物および種々のヌクレオチドの配列が重要である。特に、増加したG(グアノシン)/C(シトシン)含有量を有する配列は、増加したA(アデノシン)/U(ウラシル)含有量を有する配列よりも安定である。従って、本発明によれば、RNAのコドンは、翻訳されたアミノ酸配列を保持しながら、それぞれの野生型RNAと比べて変更され、その結果、RNAのコドンは、増加した量のG/Cヌクレオチドを含む。いくつかのコドンが同一のアミノ酸をコードするという事実(いわゆる遺伝子コードの変性)から、安定性のための最も好ましいコドンを決定することができる(いわゆる代替コドン使用)。RNAによってコードされるアミノ酸に応じて、RNA配列の修飾には、その野生型配列と比べて、様々な可能性がある。GまたはCヌクレオチドのみを含んでいるコドンによってコードされるアミノ酸の場合、コドンの修飾は必要ではない。従って、Pro(CCCまたはCCG)、Arg(CGCまたはCGG)、Ala(GCCまたはGCG)およびGly(GGCまたはGGG)のコドンは、AまたはUが存在しないので、修飾を必要としない。対照的に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、同じアミノ酸をコードするが、Aおよび/またはUを含んでいない他のコドンの置換によって修飾することができる。これらの例としては、ProのコドンをCCUまたはCCAからCCCまたはCCGに修飾してもよく;ArgのコドンをCGUまたはCGAまたはAGAまたはAGGからCGCまたはCGGに修飾してもよく;AlaのコドンをGCUまたはGCAからGCCまたはGCGに修飾してもよく;GlyのコドンをGGUまたはGGAからGGCまたはGGGに修飾してもよい。他の場合には、AまたはUヌクレオチドをコドンから排除することはできないが、Aおよび/またはUヌクレオチドの含有量がより少ないコドンを使用することによって、AおよびU含有量を低下させることが可能である。これらの例としては、PheのコドンをUUUからUUCに修飾してもよく;LeuのコドンをUUA、UUG、CUUまたはCUAからCUCまたはCUGに修飾してもよく;SerのコドンをUCUまたはUCAまたはAGUからUCC、UCGまたはAGCに修飾してもよく;TyrのコドンをUAUからUACに修飾してもよく;CysのコドンをUGUからUGCに修飾してもよく;HisのコドンをCAUからCACに修飾してもよく;GlnのコドンをCAAからCAGに修飾してもよく;IleのコドンをAUUまたはAUAからAUCに修飾してもよく;ThrのコドンをACUまたはACAからACCまたはACGに修飾してもよく;AsnのコドンをAAUからAACに修飾してもよく;LysのコドンをAAAからAAGに修飾してもよく;ValのコドンをGUUまたはGUAからGUCまたはGUGに修飾してもよく;AspのコドンをGAUからGAGに修飾してもよく;GluのコドンをGAAからGAGに修飾してもよく;終止コドンUAAをUAGまたはUGAに修飾してもよい。一方、Met(AUG)およびTrp(UGG)のコドンの場合、配列修飾の可能性はない。上記に列挙された置換は、本発明の組成物の少なくとも1つのmRNAのG/C含有量を、その特定の野生型mRNA(すなわち、元の配列)と比べて増加させるために、個々に使用されてもよく、またはすべての可能な組み合わせで使用されてもよい。従って、例えば、野生型配列に存在するThrのすべてのコドンは、ACC(またはACG)に修飾されてもよい。しかし、好ましくは、例えば、上記の可能性のある置換の組み合わせが使用される:
元の配列(野生型mRNA)中のThrをコードするすべてのコドンをACC(またはACG)に置換、および
元のSerをコードするすべてのコドンのUCC(またはUCGまたはAGC)への置換;元の配列中のIleをコードするすべてのコドンのAUCへの置換、および
元のLysをコードするすべてのコドンのAAGへの置換、および
元のTyrをコードするすべてのコドンのUACへの置換;元の配列中のValをコードするすべてのコドンのGUC(またはGUG)への置換、および
元のGluをコードするすべてのコドンのGAGへの置換、および
元のAlaをコードするすべてのコドンのGCC(またはGCG)への置換、および
元のArgをコードするすべてのコドンのCGC(またはCGG)への置換;元の配列中のValをコードするすべてのコドンのGUC(またはGUG)への置換、および
元のGluをコードするすべてのコドンのGAGへの置換、および
元のAlaをコードするすべてのコドンのGCC(またはGCG)への置換、および
元のGlyをコードするすべてのコドンのGGC(またはGGG)への置換、および
元のAsnをコードするすべてのコドンのAACへの置換;元の配列中のValをコードするするすべてのコドンのGUC(またはGUG)への置換、および
元のPheをコードするすべてのコドンのUUCへの置換、および
元のCysをコードするすべてのコドンのUGCへの置換、および
元のLeuをコードするすべてのコドンのCUG(またはCUC)をへの置換、および
元のGlnをコードするすべてのコドンのCAGへの置換、
元のProをコードするすべてのコドンのCCC(またはCCG)への置換;等。
【0099】
好ましくは、本発明のRNAのコード領域のG/C含有量は、本明細書に定義されるペプチドもしくはタンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比べて、少なくとも7%、より好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%増加する。特定の実施形態によれば、本明細書に定義されるようなペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントをコードする領域、または野生型RNA配列の全配列中の置換可能なコドンの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、95%、または100%が置換され、これにより上記配列中のG/C含有量が増加する。本文脈において、本発明のRNA、好ましくは本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード領域のG/C含有量を、野生型配列と比べて、最大(すなわち、置換可能なコドンの100%)まで増加させることが特に好ましい。本発明によれば、本発明のRNAのさらに好ましい修飾は、翻訳効率がまた、細胞中のtRNAが発生する頻度の違いによって決定されるという発見に基づく。従って、いわゆる「稀なコドン」が本発明のRNA中に増加した状態で存在する場合、比較的「頻繁な」tRNAをコードするコドンが存在する場合よりも、「稀なコドン」に対応する修飾RNA配列が翻訳される程度は、有意に低い。本発明によれば、本発明の修飾RNAにおいて、本明細書で定義されるペプチドもしくはタンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする領域は、野生型RNAの対応する領域と比べて修飾され、細胞において比較的稀なtRNAをコードする野生型配列の少なくとも1つのコドンが、細胞中で比較的頻繁に存在し、比較的稀なtRNAと同じアミノ酸を有するtRNAをコードするコドンと交換される。この修飾により、本発明のRNAの配列は、頻繁に発生するtRNAが利用可能なコドンが挿入されるように修飾される。換言すれば、本発明によれば、この修飾により、細胞中で比較的稀であるtRNAをコードする野生型配列のすべてのコドンは、それぞれの場合において、細胞中で比較的頻繁であり、それぞれの場合において、比較的稀なtRNAと同じアミノ酸を運搬するtRNAをコードするコドンと交換することができる。どのtRNAが細胞中に比較的頻繁に発生し、それとは対照的に、比較的稀に発生するかは、当業者に公知である。例えば、Akashi, Curr. Opin. Genet. Dev. 2001, 11(6): 660-666を参照のこと。最も頻繁に発生する特定のアミノ酸tRNAを使用するコドン、例えば(ヒト)細胞中で最も頻繁に発生するtRNAを使用するGlyコドンが、特に好ましい。本発明によれば、RNAのコード領域によってコードされるペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列を修飾することなく、本発明の修飾RNAにおいて増加されたる、特に最大化される配列中のG/C含有量を、「頻繁な」コドンと連結することが特に好ましい。この好ましい実施形態は、特に効率的に翻訳され、安定化された(修飾された)本発明のRNAの提供を可能にする。上記の本発明の修飾RNAの決定(G/C含有量の増加;tRNAの交換)は、WO02/098443(その開示内容は本発明の全範囲に含まれる)に説明されているコンピュータプログラムを用いて行うことができる。このコンピュータプログラムを使用して、最大G/C含有量において、改変されたRNAによってコードされるアミノ酸配列が、好ましくは修飾されていない配列と比べて修飾されないように、細胞中で可能な限り頻繁に発生するtRNAをコードするコドン使用と組み合わせて、任意の所望のRNAのヌクレオチド配列を、遺伝子コードまたはその変性の性質を用いて修飾することができる。あるいは、元の配列と比べて、G/C含有量のみ、またはコドン使用のみを修飾することも可能である。Visual Basic 6.0(使用される開発環境: Microsoft Visual Studio Enterprise 6.0 with Servicepack 3)のソースコードもまた、WO02/098443に記載されている。本発明のさらに好ましい実施形態において、本発明のRNAのリボソーム結合部位の環境におけるA/U含有量は、そのそれぞれの野生型mRNAのリボソーム結合部位の環境におけるA/U含有量と比べて増加する。この修飾(リボソーム結合部位の周りのA/U含有量の増加)は、リボソームがRNAに結合する効率を増加させる。リボソーム結合部位へのリボソームの効率的な結合(Kozak配列:配列番号1454;AUGは開始コドンを形成する)は次に、RNAの効率的な翻訳に影響する。本発明のさらなる実施形態によれば、本発明のRNAは、潜在的に不安定化する配列要素に関して修飾され得る。特に、このRNAのコード領域および/または5’および/または3’非翻訳領域は、不安定化配列エレメントを含んまないように、それぞれの野生型RNAと比べて修飾され得、修飾RNAのコードされるアミノ酸配列は、好ましくはそのそれぞれの野生型RNAと比べて改変されない。例えば、真核生物RNAの配列において、不安定化配列エレメント(DSE)が生じ、これにシグナルタンパク質が結合し、そしてインビボでRNAの酵素分解を調節することが知られている。修飾RNAのさらなる安定化のために、任意に、本明細書に定義されるペプチドもしくはタンパク質またはその断片もしくはバリアントをコードする領域において、不安定化配列エレメントは、修飾RNAに含まれないか、または実質的に含まれないように、野生型RNAの対応する領域と比べて1つ以上のこのような修飾を行ってもよい。本発明によれば、非翻訳領域(3’-および/または5’-UTR)に存在するDSEもまた、このような修飾によって本発明のRNAから排除されてもよい。このような不安定化配列は、例えば、多数の不安定RNAの3’-UTR部に存在するAUリッチ配列(AURES)である(Caput et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1986, 83: 1670 to 1674)。従って、本発明のRNAは、本発明のRNAがそのような不安定化配列を含んでいないように、好ましくはそれぞれの野生型RNAと比べて修飾される。これは、トランスフェリン受容体をコードする遺伝子の3’-UTRセグメントに含まれる可能性のあるエンドヌクレアーゼ、例えば配列GAACAAGによって認識される配列モチーフにも適用される(Binder et al., EMBO J. 1994, 13: 1969-1980)。これらの配列モチーフもまた、好ましくは、本発明のRNAにおいて除去される。
【0100】
好ましい実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのコード配列を含んでいる本明細書に定義されるRNAを提供し、ここで、少なくとも1つのコード配列は、好ましくは、配列番号75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと同一であるか、または少なくとも80%同一である核酸配列を含んでいるか、または該各酸配列からなる。
【0101】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと同一であるか、または少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、更により好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%またはさらには97%同一である核酸配列を含んでいるか、または該核酸配列からなる。
【0102】
ヒトコドン使用に適合した配列:
本発明によれば、本発明のRNAのさらなる好ましい修飾は、同じアミノ酸をコードするコドンが典型的には異なる頻度で生じるという発見に基づく。本発明によれば、本発明の修飾RNAにおいて、本明細書で定義されるコード配列(コード領域)は、好ましくは、同じアミノ酸をコードするコドンの発生頻度を、例えば表1に示されるようなヒトコドン使用に応じてそのコドンの自然発生頻度に対応するように、それぞれの野生型RNAの対応する領域と比べて修飾される。
【0103】
例えば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされるアミノ酸配列中に存在するアミノ酸アラニン(Ala)の場合、野生型コード配列は、好ましくは、コドン「GCC」が0.40の頻度で使用され、コドン「GCT」が0.28の頻度で使用され、コドン「GCA」が0.22の頻度で使用され、コドン「GCG」が0.10等の頻度で使用されるように適合される(表1を参照)。
【0104】
【0105】
好ましい実施形態において、本発明は少なくとも1つのコード配列を含むRNAを提供し、ここで、コード配列は、配列番号131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154および155からなる群から選択される核酸配列またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと同一であるか、または少なくとも80%同一である核酸配列、を含んでいる。
【0106】
さらなる実施形態によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154および155からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと、少なくとも5%、10%、20%、30%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、さらには97%同一の配列を有する核酸配列を含んでいるか、または該核酸配列からなる。
【0107】
コドン最適化配列:
上述のように、本発明によれば、細胞中で比較的稀であるtRNAをコードする野生型配列のすべてのコドンが、細胞中で比較的頻繁であり、いずれの場合にも、比較的稀なtRNAと同じアミノ酸を運搬するtRNAをコードするコドンと交換されることが好ましい。従って、コードされる各アミノ酸の最も頻繁なコドンが使用されることが特に好ましい(表1を参照のこと、最も頻繁なコドンは、アスタリスクでマークされる)。このような最適化処置は、コドン適応指数(codon adaptation index)(CAI)を増加させ、最終的にCAIを最大化する。本発明の文脈において、増加したまたは最大化されたCAIを有する配列は、典型的には、「コドン最適化」配列および/またはCAI増加配列および/またはCAI最大化配列と称される。好ましい実施形態によれば、本発明のRNAは、少なくとも1つのコード配列を含み、ここで、コード配列は、本明細書に記載されるようにコドン最適化される。より好ましくは、少なくとも1つのコード配列のコドン適応指数(CAI)が、少なくとも0.5、少なくとも0.8、少なくとも0.9または少なくとも0.95である。最も好ましくは、少なくとも1つのコード配列のコドン適応指数(CAI)は1である。
【0108】
例えば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされるアミノ酸配列に存在するアミノ酸アラニン(Ala)の場合、最も頻繁なヒトコドン「GCC」が常に上記アミノ酸に使用されるように、またはアミノ酸システイン(Cys)には、最も頻繁なヒトコドン「TGC」が常に上記アミノ酸に使用されるように、野生型配列が適応される。
【0109】
好ましい実施形態ににおいて、本発明は少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAを提供し、ここで、コード配列は、配列番号159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、および183からなる群から選択される核酸配列またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと同一または少なくとも80%同一の核酸配列である。
【0110】
さらなる実施形態によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182および183からなる群から選択される核酸配列またはこれらの核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントと、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%さらには97%同一の配列を有する核酸配列を含み、または該核酸配列からなる。
【0111】
[C最適化配列]
別の実施形態によれば、本発明のRNAは、RNA(好ましくはRNAのコード領域)のシトシン(C)含有量を修飾、好ましくは増加させることによって修飾され得る。
【0112】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明のRNAのコード領域のC含有量は、それぞれの野生型RNA、すなわち未修飾RNAのコード領域のC含有量と比べて、修飾され、好ましくは増加する。本発明のRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされるアミノ酸配列は、好ましくはそれぞれの野生型mRNAによってコードされるアミノ酸配列と比べて修飾されない。
【0113】
本発明の好ましい実施形態において、修飾RNAは、理論的に可能な最大シトシン含有量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%、または少なくとも90%、または最大シトシン含有量さえ達成されるように修飾される。
【0114】
さらに好ましい実施形態では、「シトシン含有量最適化可能」である標的RNA野生型配列のコドンの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またさらには100%が、野生型配列に存在するコドンよりも高いシトシン含有量を有するコドンによって置換される。
【0115】
さらに好ましい実施形態において、野生型コード配列のコドンのいくつかは、細胞中で比較的稀なtRNAのコドンが、細胞中で比較的頻繁なtRNAのコドンによって交換されるように、さらに改変され得る(ただし、比較的頻繁なtRNAの置換コドンが、元の野生型コドンの比較的稀なtRNAと同じアミノ酸を運搬することを条件とする)。好ましくは、比較的稀なtRNAのコドンが、シトシンを全く含んでいないコドンによってのみコードされるアミノ酸をコードするコドンを除いて、または各々が同数のシトシンを含んでいる2つのコドンによってコードされるグルタミン(Gln)を除く、細胞中で比較的頻繁なtRNAのコドンによって置換される。
【0116】
本発明のさらに好ましい実施形態において、修飾された標的RNAは、細胞中で比較的頻繁なtRNAをコードするコドンによって、理論的に可能な最大シトシン含有量の少なくとも80%、または少なくとも90%、さらには最大シトシン含有量が達成されるように、修飾される。ここで、アミノ酸配列は変化しないままである。
【0117】
遺伝子コードの自然発生的な縮重により、複数のコドンが特定のアミノ酸をコードし得る。従って、20個の自然発生するアミノ酸のうちの18個は、2個以上のコドン、例えば2個のコドン(例えばCys、Asp、Glu)、3個のコドン(例えばIle)、4個のコドン(例えばAl、Gly、Pro)、または6個のコドン(例えばLeu、Arg、Ser)によってコードされる(TrypおよびMetは例外である)。しかし、同じアミノ酸をコードするすべてのコドンが、インビボ条件下で同じ頻度で利用されるわけではない。各単一生物に依存して、典型的なコドン使用プロファイルが確立される。
【0118】
本発明の文脈において使用される用語「シトシン含有量最適化可能コドン」は、同じアミノ酸をコードする他のコドンよりも低いシトシン含有量を示すコドンを表す。従って、同じアミノ酸をコードし、そのコドン内でより多くのシトシン数を示す別のコドンによって置換され得る任意の野生型コドンは、シトシン最適化可能(C最適化可能)であると考えられる。野生型コード領域内の特定のC最適化コドンによる、C最適化可能な野生型コドンのこのような置換は、その全体的なC含有量を増加させ、修飾されたC富化mRNA配列を反映する。好ましい実施形態によれば、本発明のRNA(好ましくは本発明のRNAの少なくとも1つのコード配列)は、すべての潜在的にC最適化可能なコドンのC最適化コドンを含んでいるC最大化RNA配列を含んでいるか、または該C最大化RNA配列からなる。従って、好ましくは、理論的に置換可能なC最適化コドンの100%またはすべてが、コード領域の全長にわたって、C最適化コドンによって置換される。
【0119】
本文脈において、シトシン含有量最適化可能なコドンは、同じアミノ酸をコードする他のコドンよりも少ない数のシトシンを含むコドンである。
【0120】
GCG、GCA、GCUのいずれも、アミノ酸Alaをコードし、同じアミノ酸をコードするコドンGCCによって交換され得、および/または
CysをコードするコドンUGUは、同じアミノ酸をコードするコドンUGCによって交換され得、および/または
AspをコードするコドンGAUは、同じアミノ酸をコードするコドンGACによって交換され得、および/または
PheをコードするコドンUUUは、同じアミノ酸をコードするコドンUUCによって交換され得、および/または
GlyをコードするコドンGGG、GGA、GGUは、同じアミノ酸をコードするGGCによって交換され得、および/または
HisをコードするCAUは、同じアミノ酸をコードするCACによって交換され得、および/または
IleをコードするコドンAUA、AUUは、AUCによって交換され得、および/または
LeuをコードするコドンUUG、UUA、CUG、CUA、CUUは、同じアミノ酸をコードするコドンCUCによって交換され得、および/または
AsnをコードするコドンAAUは、同じアミノ酸をコードするコドンAACによって交換され得、および/または
ProをコードするコドンCCG、CCA、CCUは、同じアミノ酸をコードするコドンCCCによって交換され得、および/または
ArgをコードするコドンAGG、AGA、CGG、CGAは、同じアミノ酸をコードするコドンCGCによって交換され得、および/または
SerをコードするコドンAGU、AGC、UCG、UCA、UCUは、同じアミノ酸をコードするコドンUCCによって交換され得、および/または
ThrをコードするコドンACG、ACA、ACUは、同じアミノ酸をコードするコドンACCによって交換され得、および/または
ValをコードするコドンGUG、GUA、GUUは、同じアミノ酸をコードするコドンGUCによって交換され得、および/または
TyrをコードするコドンUAUは、同じアミノ酸をコードするコドンUACによって交換され得る。
【0121】
上記の場合のいずれにおいても、シトシンの数は、交換されるコドン当たり1ずつ増加する。コード領域のすべてのC最適化されていないコドン(C最適化可能なコドンに対応する)の交換は、C最大化コード配列を生じる。本発明の文脈において、本発明によるRNAの少なくとも1つのコード領域内のC最適化されていないコドンの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%は、C最適化コドンによって置換される。
【0122】
いくつかのアミノ酸について、C最適化コドンによって置換されたC最適化可能コドンの割合は70%未満であり、一方、他のアミノ酸については、コード領域のすべてのC最適化可能野生型コドンのC最適化の全体の割合が少なくとも70%を満たすために、置換されたコドンの割合が、70%より高いことが好ましい場合がある。
【0123】
好ましくは、本発明のC最適化RNAにおいて、任意のアミノ酸のC最適化可能野生型コドンの少なくとも50%が、C最適化コドンで置き換えられ、例えば、任意の修飾されたC富化RNAは、好ましくは上記のアミノ酸Ala、Cys、Asp、Phe、Gly、His、Ile、Leu、Asn、Pro、Arg、Ser、Thr、ValおよびTyrのいずれか1つをコードするC最適化可能野生型コドンにおけるC最適化コドンの50%、好ましくは少なくとも60%を含む。
【0124】
本文脈において、シトシン含有量最適化可能ではないが、少なくとも2つのコドンによってコードされるアミノ酸をコードするコドンは、さらなる選択プロセスなしに使用され得る。しかし、細胞(例えば、ヒト細胞)中で比較的稀なtRNAをコードする野生型配列のコドンは、細胞中で比較的頻繁なtRNAをコードするコドンと交換され得る。ここで、両方のコドンは、同じアミノ酸をコードする。
【0125】
従って、Gluをコードする比較的稀なコドンGAAは、同じアミノ酸をコードする比較的頻繁なコドンGAGによって交換され得、および/または
Lysをコードする比較的稀なコドンAAAは、同じアミノ酸をコードする比較的頻繁なコドンAAGによって交換され得、および/または
Glnをコードする比較的稀なコドンCAAは、同じアミノ酸をコードする比較的頻繁なコドンCAGと交換され得る。
【0126】
本文脈において、それぞれ1つのコドンのみによってコードされるアミノ酸Met(AUG)およびTrp(UGG)は、変化しないままである。停止コドンは、シトシン含有量が最適化されていないが、比較的稀な停止コドンであるアンバー、オクロール(UAA、UAG)は、比較的頻繁な停止コドンオパール(UGA)によって交換され得る。
【0127】
野生型mRNA配列と比べて、修飾RNAのシトシン含有量を最適化するために、上記に列挙した単一の置換を、個々に使用され得、ならびにすべての可能な組合せで使用され得る。
【0128】
従って、本明細書で定義される少なくとも1つのコード配列は、少なくとも2つ以上のコドン(そのうちの1つは1つの追加のシトシンを含んでいる)によってコードされるアミノ酸が、1つの追加のシトシンを含んでいるC最適化コドンによって交換され得るように、それぞれの野生型RNAのコード領域に対して変更され得、その場合、アミノ酸は、好ましくは、野生型配列と比べて変化しない。
【0129】
好ましい態様において、本発明は少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAを提供し、ここで、コード配列は、配列番号103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126および127からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントと同一、または少なくとも80%同一の核酸配列を含んでいる。
【0130】
さらなる実施形態によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126および127からなる群から選択される核酸配列またはこれらの核酸配列の断片もしくはバリアントと、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%、またさらには97%の配列同一性を有する核酸配列を含み、または該核酸配列からなる。
【0131】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、本明細書で定義される少なくとも1つのコード配列を含むRNA(好ましくはmRNA)を提供し、
ここで、RNAの少なくとも1つのコード配列のG/C含有量は、対応する野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比べて増加され、および/または
RNAの少なくとも1つのコード配列のC含有量が対応する野生型RNAの対応するコード配列のC含有量と比べて増加され、および/または
RNAの少なくとも1つのコード配列中のコドンが、ヒトコドン使用に適応され、
コドン適応指数(CAI)は、好ましくはRNAの少なくとも1つのコード配列において増加または最大化され、
RNAによってコードされるアミノ酸配列は、好ましくは対応する野生型RNAによってコードされるアミノ酸配列と比べて修飾されていない。
【0132】
好ましい実施形態において、本発明が配列番号75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406 および407からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列の断片もしくはバリアントと同一であるか、または少なくとも80%同一である核酸配列を含んでいる。
【0133】
さらなる実施形態によれば、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列は、配列番号75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列、またはこれらの核酸配列の断片もしくはバリアントと、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、またさらには97%の配列同一性を有する核酸配列を含んでいるか、または該核酸配列からなる。
【0134】
[5’-キャップ]
本発明の他の好適な実施形態によれば、本明細書に定義されている修飾RNAは、いわゆる「5’-キャップ」構造の付加によって修飾され得る。この構造は、好ましくは、本明細書に記載のRNAを安定化させる。5’-キャップは、エンティティ(通常は、修飾ヌクレオチドエンティティ)であり、一般的に、成熟mRNAの5’末端を「キャップ」する。5’-キャップは、通常、修飾ヌクレオチド(特に、グアニンヌクレオチドの誘導体)によって形成され得る。好ましくは、5’-キャップは、5’-5’三リン酸結合を介して5’末端に連結されている。5’-キャップはメチル化されていてもよい。このような例としては、m7GppNがある(ここで、Nは、5’-キャップを有している核酸の5’末端のヌクレオチドであり、通常はmRNAの5’末端である)。m7GpppNは、5’-キャップ構造であり、ポリメラーゼIIによって転写されたmRNA中に天然に存在する。したがって好ましくは、この文脈において、修飾mRNAに含まれている修飾とはみなされない。したがって、本発明の修飾RNAは、5’-キャップとしてm7GpppNを含み得るが、それに加えて当該修飾RNAは、通常は、本明細書に定義されている少なくとも1つのさらなる修飾を含んでいる。
【0135】
5’-キャップ構造のさらなる例としては、グリセリル、逆方向デオキシ脱塩基残基(部分)、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリトロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、threo-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-secoヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-逆方向ヌクレオチド部分、3’-3’-逆方向脱塩基部分、3’-2’-逆方向ヌクレオチド部分、3’-2’-逆方向脱塩基部分、1,4-ブタンジオールホスファート、3’-ホスホロアミダート、ヘキシルホスファート、アミノヘキシルホスファート、3’-ホスファート、3’ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、または、架橋性もしくは非架橋性メチルホスホナート部分が挙げられる。これらの修飾された5’-キャップ構造は、この文脈において、少なくとも1つの修飾とみなされる。
【0136】
特に好ましい修飾された5’-キャップ構造は、cap1(m7Gに隣接するヌクレオチドのリボースのメチル化)、cap2(m7Gの下流にある2番目のヌクレオチドのリボースをさらにメチル化)、cap3(m7Gの下流にある3番目のヌクレオチドのリボースをさらにメチル化)、cap4(m7Gの下流にある4番目のヌクレオチドのリボースをメチル化)、ARCA(anti-reverse cap analogue、修飾ARCA(例えば、ホスホチオアート修飾ARCA)、イノシン、N1-メチル-グアノシン、2’-フルオロ-グアノシン、7-デアザ-グアノシン、8-オキソ-グアノシン、2-アミノ-グアノシン、LNA-グアノシン、および2-アジド-グアノシンである。したがって、本発明に係るRNAは、好ましくは、5’-キャップ構造を含んでいる。
【0137】
好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントまたは3’-UTRエレメントを含んでいる。この文脈において、UTRエレメントは、(i)天然に存在する任意の遺伝子の5’-UTRまたは3’-UTRに由来する核酸配列、または、(ii)遺伝子の5’-UTRまたは3’-UTRの断片、ホモログまたはバリアントに由来する核酸配列、を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。好ましくは、本発明にしたがって使用される5’-UTRエレメントまたは3’-UTRエレメントは、本発明のRNAの少なくとも1つのコード配列に対して異種由来である。仮に、天然に存在する遺伝子に由来する5’-UTRエレメントまたは3’-UTRエレメントが好ましかったとしても、合成的に操作されたUTRエレメントもまた、本発明の文脈において使用され得る。
【0138】
用語「3’-UTRエレメント」は、通常、3’-UTRまたは3’-UTRのバリアントに由来する核酸配列を含んでいる核酸配列、または、3’-UTRまたは3’-UTRのバリアントに由来する核酸配列からなる核酸配列を表す。本発明の意味における3’-UTRエレメントは、RNAの3’-UTR(好ましくは、mRNAの3’-UTR)を表し得る。したがって、本発明の意味において、好ましくは、3’-UTRエレメントは、RNAの3’-UTR(好ましくは、mRNAの3’-UTR)であってもよいし、RNAの3’-UTRのための転写テンプレートであってもよい。したがって、3’-UTRエレメントは、好ましくはRNAの3’-UTRに対応する核酸配列であり、好ましくはmRNA(遺伝子操作されたベクターコンストラクトの転写によって得られるmRNAなど)の3’-UTRに対応する核酸配列である。好ましくは、3’-UTRエレメントは、3’-UTRの機能を果たしているか、または3’-UTRの機能を果たす配列をコードしている。
【0139】
好適な実施形態によれば、本発明に係るRNA(好ましくは、mRNA)は、5’-キャップ構造および/または少なくとも1つの3’非翻訳領域エレメント(3’-UTRエレメント)を含んでいる(好ましくは、本明細書に定義されているように含んでいる)。より好ましくは、RNAは、本明細書に定義されている5’-UTRエレメントをさらに含んでいる。
【0140】
[ポリ(A)テール]
さらに好適な実施形態によれば、本発明のRNAは、3’末端においてポリ(A)テールを含み得る。ポリ(A)テールは、通常は約10~200アデノシンヌクレオチドであり、好ましくは約10~100アデノシンヌクレオチドであり、より好ましくは約40~80アデノシンヌクレオチドであり、または、より一層好ましくは約50~70アデノシンヌクレオチドである。
【0141】
好ましくは、本発明のRNA中のポリ(A)配列は、DNAテンプレートに由来し、in
vitroにおけるRNAへの転写によって生じる。あるいは、一般的な化学合成の方法によって、in vitroにてポリ(A)配列を得てもよく、必ずしもDNA前駆体から転写される必要はない。さらに、ポリ(A)配列またはポリ(A)テールは、本発明に係るRNAの酵素的ポリアデニル化によって作製され得る。この際には、市販のポリアデニル化キットと、これに対応する当該分野で公知のプロトコルを使用する。
【0142】
あるいは、本明細書に記載のRNAは、任意で、ポリアデニル化シグナルを含んでいる。本明細書において、ポリアデニル化シグナルは、(転写された)RNAに特定のタンパク質因子によるポリアデニル化をもたらすシグナルとして定義される。このようなタンパク質因子の例としては、切断およびポリアデニル化特異因子(CPSF)、切断刺激因子(CstF)、切断因子Iおよび切断因子II(CF IおよびCF II)、ポリ(A)ポリメラーゼ(PAP)が挙げられる。この文脈において、コンセンサスポリアデニル化シグナルは、NN(U/T)ANAコンセンサス配列を含んでいることが好ましい。特に好ましい態様において、ポリアデニル化シグナルは、以下の配列の1つを含んでいる:AA(U/T)AAAまたはA(U/T)(U/T)AAA(ここで、ウリジンは通常RNA中に存在し、チミジンは通常DNA中に存在する)。
【0143】
[ポリ(C)テール]
さらに好適な実施形態によれば、本発明のRNAは、3’末端においてポリ(C)テールを含み得る。ポリ(C)テールは、通常は約10~200シチジンヌクレオチドであり、好ましくは約10~100シチジンヌクレオチドであり、より好ましくは約20~70シチジンヌクレオチドであり、または、より一層好ましくは約20~60シチジンヌクレオチド(もしくは10~40シチジンヌクレオチド)である。
【0144】
[3’-UTR]
さらに好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、少なくとも1つの3’-UTRエレメントをさらに含んでいる。好ましくは、少なくとも1つの3’-UTRエレメントは、脊索動物の遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。このとき、脊索動物の遺伝子は、好ましくは脊椎動物の遺伝子であり、より好ましくは哺乳類の遺伝子であり、最も好ましくはヒト遺伝子である。あるいは、少なくとも1つの3’-UTRエレメントは、脊索動物の遺伝子の3’-UTRのバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。このとき、脊索動物の遺伝子は、好ましくは脊椎動物の遺伝子であり、より好ましくは哺乳類の遺伝子であり、最も好ましくはヒト遺伝子である。
【0145】
好ましくは、本発明のRNAは、半減期が延長された(安定なmRNAを提供する)mRNAに関連する遺伝子から誘導され得る3’-UTRエレメントを含んでいる。このような遺伝子の例としては、以下に定義されており記載されているような3’-UTRエレメントが挙げられる。好ましくは、3’-UTRエレメントは、遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列である。この遺伝子は、好ましくは、安定なmRNAをコードしている。あるいは、3’-UTRエレメントは、上記遺伝子のホモログ、断片もしくはバリアントに由来する核酸配列である。
【0146】
特に好適な実施形態において、3’-UTRエレメントは、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子、およびコラーゲンα遺伝子(コラーゲンα1(I)遺伝子など)からなる群から選択される遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。あるいは、3’-UTRエレメントは、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子、およびコラーゲンα遺伝子(コラーゲンα1(I)遺伝子など。国際公開第2013/143700号の配列番号1369~1390に記載。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)からなる群から選択される遺伝子の3’-UTRのバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。あるいは、3’-UTRエレメントは、上記遺伝子のホモログ、断片またはバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。特に好適な実施形態において、3’-UTRエレメントは、アルブミン遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。このとき、アルブミン遺伝子は、好ましくは脊椎動物のアルブミン遺伝子であり、より好ましくは哺乳類のアルブミン遺伝子であり、最も好ましくはヒトアルブミン遺伝子である(配列番号1445、または対応するRNA配列である配列番号1446に記載)あるいは、3’-UTRエレメントは、上記アルブミン遺伝子の断片またはバリアントの3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。
【0147】
この文脈において、特に好ましくは、本発明に係るRNAは、国際公開第2013/143700号の配列番号1369~1390に記載の核酸に由来する、対応するRNA配列を含む3’-UTRエレメントを含んでいる。あるいは、本発明に係るRNAは、上記核酸の断片、ホモログまたはバリアントを含む3’-UTRエレメントを含んでいる。
【0148】
最も好ましくは、3’-UTRエレメントは、配列番号1447(国際公開第2013/143700号の配列番号1376に対応)または1449に記載の、ヒトアルブミン遺伝子断片に由来する核酸配列を含んでいる。
【0149】
この文脈において、特に好ましくは、本発明に係るRNAの3’-UTRエレメントは、配列番号1447または1449に記載の核酸配列の対応するRNA配列を含んでいるか、または当該RNA配列からなる(配列番号1448または1450を参照)。
【0150】
他の特に好適な実施形態において、3’-UTRエレメントは、α-グロビン遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる、3’-UTRエレメントを含んでいる。このα-グロビン遺伝子は、好ましくは脊椎動物のα-またはβ-グロビン遺伝子であり、より好ましくは哺乳類のα-またはβ-グロビン遺伝子であり、最も好ましくはヒトα-もしくはβ-グロビン遺伝子(配列番号1437、1439または1441に記載)または対応するRNA配列(配列番号1438、1440または1442)である。
【0151】
Homo sapiensヘモグロビンα1(HBA1)の3’-UTR:
GCTGGAGCCTCGGTGGCCATGCTTCTTGCCCCTTGGGCCTCCCCCCAGCCCCTCCTCCCCTTCCTGCACCCGTACCCCCGTGGTCTTTGAATAAAGTCTGAGTGGGCGGC(配列番号1437;国際公開第2013/143700号の配列番号1370に対応)。
【0152】
Homo sapiensヘモグロビンα2(HBA2)の3’-UTR:
GCTGGAGCCTCGGTAGCCGTTCCTCCTGCCCGCTGGGCCTCCCAACGGGCCCTCCTCCCCTCCTTGCACCGGCCCTTCCTGGTCTTTGAATAAAGTCTGAGTGGGCAG(配列番号1439;国際公開第2013/143700号の配列番号1371に対応)。
【0153】
Homo sapiensヘモグロビンβ(HBB)の3’-UTR:
GCTCGCTTTCTTGCTGTCCAATTTCTATTAAAGGTTCCTTTGTTCCCTAAGTCCAACTACTAAACTGGGGGATATTATGAAGGGCCTTGAGCATCTGGATTCTGCCTAATAAAAAACATTTATTTTCATTGC(配列番号1441;国際公開第2013/143700号の配列番号1372に対応)。
【0154】
例えば、3’-UTRエレメントは、中心(ヒトα-グロビン遺伝子などのα-グロビン遺伝子の3’-UTRのα-複合体結合部位)を含んでいるか、または当該中心からなり得る。あるいは、3’-UTRエレメントは、上記αグロビン遺伝子のホモログ、断片またはバリアントを含んでいるか、またはそれらからなり得る。好ましくは、配列番号1443に記載の配列を含んでいる。
【0155】
中心(α-グロビン遺伝子の3’-UTRのα-複合体結合部位。本明細書では"muag"とも呼ばれる):
GCCCGATGGGCCTCCCAACGGGCCCTCCTCCCCTCCTTGCACCG(配列番号1443;国際公開第2013/143700号の配列番号1393に対応)。
【0156】
この文脈において、特に好ましくは、本発明に係るRNAの3’-UTRエレメントは、配列番号1443に記載の核酸配列の対応するRNA配列(配列番号1444に示すような)、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれらからなること。
【0157】
用語「(…)遺伝子の3’-UTRに由来する核酸配列」は、好ましくは、(…)遺伝子の3’-UTR配列またはその一部に基づく核酸配列を表す。このような3’-UTR配列の例としては、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子、またはコラーゲンα遺伝子(コラーゲンα1(I)遺伝子など)の3’-UTRまたはその一部が挙げられ、好ましくはアルブミン遺伝子の3’-UTRまたはその一部が挙げられる。この用語には、3’-UTRの全配列(すなわち、遺伝子の3’-UTR配列の全長)に対応する配列が含まれている。また、この用語には、遺伝子の3’-UTR配列の断片に対応する配列も含まれている。このような遺伝子の例としては、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子、またはコラーゲンα遺伝子(コラーゲンα1(I)遺伝子など)が挙げられ、好ましくはアルブミン遺伝子が挙げられる。
【0158】
用語「(…)遺伝子の3’-UTRのバリアントに由来する核酸配列」は、好ましくは、遺伝子の3’-UTR配列のバリアントに基づく核酸配列またはその一部を表す(上述した通り)。このような3’-UTRのバリアントの例としては、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子、またはコラーゲンα遺伝子(コラーゲンα1(I)遺伝子など)の3’-UTRのバリアントが挙げられる。この用語には、遺伝子の3’-UTRのバリアントの全配列(すなわち、遺伝子の3’-UTR配列のバリアントの全長)に対応する配列が含まれている。また、この用語には、遺伝子の3’-UTR配列のバリアントの断片に対応する配列も含まれている。この文脈における断片は、好ましくは、連続するヌクレオチドの並びからなっており、この並びは、3’-UTRのバリアントの全長における連続したヌクレオチドの並びに対応している。上記の連続する並びは、3’-UTRのバリアントの全長のうち少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも60%、より一層好ましくは少なくとも70%、より一層好ましくは少なくとも80%、および、最も好ましくは少なくとも90%を表している。本発明の意味において、このようなバリアントの断片は、好ましくは、本明細書に記載のバリアントの機能性の断片である。
【0159】
[5’-UTR]
特に好適な実施形態において、本発明の組成物の少なくとも1つのmRNAは、少なくとも1つの5’-非翻訳領域エレメント(5’-UTRエレメント)を含んでいる。好ましくは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、TOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。あるいは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、TOP遺伝子の5’-UTRの断片、ホモログもしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。
【0160】
特に好ましくは、5’-UTRエレメントは、TOPモチーフまたは5’TOPを含んでいない(上記で定義したように)。
【0161】
いくつかの実施形態において、5’-UTRエレメントの核酸配列は、TOP遺伝子の5’-UTRに由来しており、当該遺伝子またはそれに由来するmRNAの開始コドン(例えば、A(U/T)G)よりも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個上流に位置しているヌクレオチドで3’末端が終了している。したがって、5’-UTRエレメントは、タンパク質コード領域のいかなる部分をも含んでいない。したがって、好ましくは、本発明の組成物の少なくとも1つのmRNAの唯一のタンパク質コード部分が、コード領域によって与えられている。
【0162】
TOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列は、好ましくは真核生物のTOP遺伝子に由来し、好ましくは植物または動物のTOP遺伝子に由来し、より好ましくは脊索動物のTOP遺伝子に由来し、より一層好ましくは脊椎動物のTOP遺伝子に由来し、最も好ましくは哺乳類のTOP遺伝子(ヒトTOP遺伝子など)に由来する。例えば、5’-UTRエレメントは、好ましくは、以下の核酸配列を含んでいる5’-UTRエレメント、または当該核酸配列からなる5’-UTRエレメントから選択される:(i)国際公開第2013/143700号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422からなる群から選択される核酸配列に由来する核酸配列;(ii)国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422からなる群から選択される核酸配列のホモログに由来する核酸配列;(iii)これらのバリアント;または、(iv)好ましくは、対応するRNA配列。用語「国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422のホモログ」は、Homo sapiens以外の種の配列であって、国際公開第2013/143700号の配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421および配列番号1422に記載の配列と相同である配列を表す。
【0163】
好適な実施形態において、本発明に係るRNAの5’-UTRエレメントは、以下に挙げる核酸配列の、位置5のヌクレオチド(すなわち、配列中の位置5に位置しているヌクレオチド)から、開始コドンのすぐ5’側に位置しているヌクレオチド(配列の3’末端に位置しているヌクレオチド。例えば、ATG配列のすぐ5’側に位置しているヌクレオチド)までの核酸配列に由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。上記核酸配列とは、(i)国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422;(ii)国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422のホモログ;(iii)それらのバリアント;(iv)対応するRNA配列;から選択される核酸配列である。特に好ましくは、5’-UTRエレメントは、以下の核酸配列の、5’TOPのすぐ3’側に位置しているヌクレオチドから、開始コドンのすぐ5’側に位置しているヌクレオチド(配列の3’末端に位置しているヌクレオチド。例えば、ATG配列のすぐ5’側に位置しているヌクレオチド)までの核酸配列に由来している。上記の核酸配列とは、(i)国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422;(ii)国際公開第2013/143700号の、配列番号1~1363、配列番号1395、配列番号1421、および配列番号1422のホモログ;(iii)それらのバリアント;(iv)対応するRNA配列;から選択される核酸配列である。
【0164】
特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしているTOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。あるいは、5’-UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードしているTOP遺伝子のバリアントの5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。例えば、5’-UTRエレメントは、国際公開第2013/143700号の、配列番号67、170、193、244、259、554、650、675、700、721、913、1016、1063、1120、1138、および1284~1360のいずれかに記載の核酸配列である5’-UTR、対応するRNA配列、そのホモログ、またはそのバリアントに由来する、核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる(本明細書に記載の通り)。好ましくは、5’-UTRエレメントは、5’TOPモチーフを欠いている。上述したように、位置5から、ATGのすぐ5’側のヌクレオチド(配列の3’末端に位置しているヌクレオチド)までの配列は、当該配列の5’-UTRに対応する。
【0165】
好ましくは、5’-UTRエレメントは、リボソームラージタンパク質(RPL)をコードしているTOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。あるいは、5’-UTRエレメントは、リボソームラージタンパク質(RPL)をコードしているTOP遺伝子のホモログまたはバリアントの5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。例えば、5’-UTRエレメントは、国際公開第2013/143700号の、配列番号67、259、1284-1318、1344、1346、1348-1354、1357、1358、1421および1422のいずれかに記載の核酸配列である5’-UTR、対応するRNA配列、そのホモログ、またはそのバリアントに由来する、核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる(本明細書に記載の通り)。好ましくは、5’-UTRエレメントは、5’TOPモチーフを欠いている。
【0166】
特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、リボソームタンパク質ラージ32遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。好ましくは、上記のリボソームタンパク質ラージ32遺伝子(L32遺伝子)は、脊椎動物のものであり、より好ましくは哺乳類のものであり、最も好ましくはヒトのものである。あるいは、5’-UTRエレメントは、リボソームタンパク質ラージ32遺伝子の5’-UTRのバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。好ましくは、上記のリボソームタンパク質ラージ32遺伝子(L32遺伝子)は、脊椎動物のものであり、より好ましくは哺乳類のものであり、最も好ましくはヒトのものである。好ましくは、5’-UTRエレメントは、上記遺伝子の5’TOPを含んでいない。
【0167】
したがって、特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、配列番号1431に記載の核酸配列(5’末端のオリゴピリミジン領域を欠失させたヒトリボソームタンパク質ラージ32の5’-UTR(GGCGCTGCCTACGGAGGTGGCAGCCATCTCCTTCTCGGCATC)。国際公開第2013/143700号の配列番号1368に対応)または好ましくは対応するRNA配列(配列番号1432)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。あるいは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、配列番号1431に記載の核酸配列または好ましくは対応するRNA配列(配列番号1432)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列の断片を含んでいるか、または当該断片からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。好ましくは、上記断片は、上述したものである。すなわち、5’-UTRの全長の、少なくとも20%(など)のヌクレオチドの連続する並びである。好ましくは、上記断片の長さは、少なくとも約20ヌクレオチド以上であり、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド以上であり、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド以上である。好ましくは、上記断片は、本明細書に記載されているような機能的の断片である。
【0168】
いくつかの実施形態において本発明に係るRNAは5’-UTRエレメントを含んでおり、当該5’-UTRエレメントは、脊椎動物(哺乳類など)のTOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。哺乳類のTOP遺伝子の例としては、RPSA、RPS2、RPS3、RPS3A、RPS4、RPS5、RPS6、RPS7、RPS8、RPS9、RPS10、RPS11、RPS12、RPS13、RPS14、RPS15、RPS15A、RPS16、RPS17、RPS18、RPS19、RPS20、RPS21、RPS23、RPS24、RPS25、RPS26、RPS27、RPS27A、RPS28、RPS29、RPS30、RPL3、RPL4、RPL5、RPL6、RPL7、RPL7A、RPL8、RPL9、RPL10、RPL10A、RPL11、RPL12、RPL13、RPL13A、RPL14、RPL15、RPL17、RPL18、RPL18A、RPL19、RPL21、RPL22、RPL23、RPL23A、RPL24、RPL26、RPL27、RPL27A、RPL28、RPL29、RPL30、RPL31、RPL32、RPL34、RPL35、RPL35A、RPL36、RPL36A、RPL37、RPL37A、RPL38、RPL39、RPL40、RPL41、RPLP0、RPLP1、RPLP2、RPLP3、RPLP0、RPLP1、RPLP2、EEF1A1、EEF1B2、EEF1D、EEF1G、EEF2、EIF3E、EIF3F、EIF3H、EIF2S3、EIF3C、EIF3K、EIF3EIP、EIF4A2、PABPC1、HNRNPA1、TPT1、TUBB1、UBA52、NPM1、ATP5G2、GNB2L1、NME2、UQCRB、から選択されるヒトTOP遺伝子、またはこれらのホモログもしくはバリアントが挙げられる。好ましくは、5’-UTRエレメントは、上記遺伝子のTOPモチーフまたは5’TOPを含んでいない。任意で、5’-UTRエレメントの5’末端は、5’末端オリゴピリミジン領域(TOP)の下流の位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9または位置10に位置しているヌクレオチドから始まっている。さらに任意で、TOP遺伝子の5’-UTRに由来する5’-UTRエレメントの3’末端は、当該エレメントが由来する遺伝子の開始コドン(A(U/T)G)の上流の位置1、位置2、位置3、位置4、位置5、位置6、位置7、位置8、位置9または位置10に位置しているヌクレオチドで終わっている。
【0169】
さらに特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、下記の遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる:リボソームタンパク質ラージ32遺伝子(RPL32)、リボソームタンパク質ラージ35遺伝子(RPL35)、リボソームタンパク質ラージ21遺伝子(RPL21)、ATPシンターゼ,H+輸送,ミトコンドリアF1複合体,αサブユニット1,心筋遺伝子(ATP5A1)、ヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)、アンドロゲン誘導1遺伝子(AIG1)、シトクロムcオキシダーゼサブユニットVIc遺伝子(COX6C)、もしくはN-アシルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ(酸性セラミダーゼ)1遺伝子(ASAH1)、それらのバリアント。好ましくは、5’-UTRエレメントは、下記の遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる:脊椎動物のリボソームタンパク質ラージ32遺伝子(RPL32)、脊椎動物のリボソームタンパク質ラージ35遺伝子(RPL35)、脊椎動物のリボソームタンパク質ラージ21遺伝子(RPL21)、脊椎動物のATPシンターゼ,H+輸送,ミトコンドリアF1複合体,αサブユニット1,心筋遺伝子(ATP5A1)、脊椎動物のヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)、脊椎動物のアンドロゲン誘導1遺伝子(AIG1)、脊椎動物のシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIc遺伝子(COX6C)、脊椎動物のもしくはN-アシルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ(酸性セラミダーゼ)1遺伝子(ASAH1)、それらのバリアント。より好ましくは、5’-UTRエレメントは、下記の遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる:哺乳類のリボソームタンパク質ラージ32遺伝子(RPL32)、哺乳類のリボソームタンパク質ラージ35遺伝子(RPL35)、哺乳類のリボソームタンパク質ラージ21遺伝子(RPL21)、哺乳類のATPシンターゼ,H+輸送,ミトコンドリアF1複合体,αサブユニット1,心筋遺伝子(ATP5A1)、哺乳類のヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)、哺乳類のアンドロゲン誘導1遺伝子(AIG1)、哺乳類のシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIc遺伝子(COX6C)、哺乳類のもしくはN-アシルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ(酸性セラミダーゼ)1遺伝子(ASAH1)、それらのバリアント。最も好ましくは、5’-UTRエレメントは、下記の遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる:ヒトのリボソームタンパク質ラージ32遺伝子(RPL32)、ヒトのリボソームタンパク質ラージ35遺伝子(RPL35)、ヒトのリボソームタンパク質ラージ21遺伝子(RPL21)、ヒトのATPシンターゼ,H+輸送,ミトコンドリアF1複合体,αサブユニット1,心筋遺伝子(ATP5A1)、ヒトのヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)、ヒトのアンドロゲン誘導1遺伝子(AIG1)、ヒトのシトクロムcオキシダーゼサブユニットVIc遺伝子(COX6C)、ヒトのもしくはN-アシルスフィンゴシンアミドヒドロラーゼ(酸性セラミダーゼ)1遺伝子(ASAH1)、それらのバリアント。好ましくは、5’-UTRエレメントは、上記遺伝子の5’TOPを含んでいない。
【0170】
さらに特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、脊椎動物のヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)(好ましくは、哺乳類のヒドロキシステロイド(17-β)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4))に由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。より好ましくは、5’-UTRエレメントは、配列番号1435に記載の核酸配列(または、好ましくは配列番号1436に記載の対応するRNA配列)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している。この同一性は、この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。あるいは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、配列番号1435に記載の核酸配列または好ましくは対応するRNA配列(配列番号1436)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列の断片を含んでいるか、または当該断片からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。好ましくは、上記断片は、上述したものである。すなわち、5’-UTRの全長の、少なくとも20%(など)のヌクレオチドの連続する並びである。好ましくは、上記断片の長さは、少なくとも約20ヌクレオチド以上であり、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド以上であり、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド以上である。好ましくは、上記断片は、本明細書に記載されているような機能的の断片である。
【0171】
したがって、特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、国際公開第2013/143700号の、配列番号1368もしくは配列番号1412~1420に記載の核酸配列または対応するRNA配列に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。あるいは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、国際公開第2013/143700号の、配列番号1368もしくは配列番号1412~1420に記載の核酸配列に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列の断片を含んでいるか、または当該断片からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。好ましくは、上記断片は、上述したものである。すなわち、5’-UTRの全長の、少なくとも20%(など)のヌクレオチドの連続する並びである。好ましくは、上記断片の長さは、少なくとも約20ヌクレオチド以上であり、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド以上であり、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド以上である。好ましくは、上記断片は、本明細書に記載されているような機能的の断片である。
【0172】
したがって、特に好適な実施形態において、5’-UTRエレメントは、配列番号1433(5’末端オリゴピリミジン領域を欠いているATP5A1の5’-UTR(GCGGCTCGGCCATTTTGTCCCAGTCAGTCCGGAGGCTGCGGCTGCAGAAGTACCGCCTGCG-GAGTAACTGCAAAG)国際公開第2013/143700号の配列番号1414に対応)に記載の核酸配列、または好ましくは対応するRNA配列(配列番号1434)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。あるいは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントは、配列番号1433に記載の核酸配列またはより好ましくは対応するRNA配列(配列番号1434)に対して、少なくとも約40%の同一性を有している核酸配列の断片を含んでいるか、または当該断片からなる。この同一性は、好ましくは少なくとも約50%であり、好ましくは少なくとも約60%であり、好ましくは少なくとも約70%であり、より好ましくは少なくとも約80%であり、より好ましくは少なくとも約90%であり、より一層好ましくは少なくとも約95%であり、より一層好ましくは少なくとも約99%である。好ましくは、上記断片は、上述したものである。すなわち、5’-UTRの全長の、少なくとも20%(など)のヌクレオチドの連続する並びである。好ましくは、上記断片の長さは、少なくとも約20ヌクレオチド以上であり、好ましくは少なくとも約30ヌクレオチド以上であり、より好ましくは少なくとも約40ヌクレオチド以上である。好ましくは、上記断片は、本明細書に記載されているような機能的の断片である。
【0173】
好ましくは、少なくとも1つの5’-UTRエレメントおよび少なくとも1つの3’-UTRエレメントが相乗的に作用して、上記のような本発明の組成物の少なくとも1つのmRNAに由来するタンパク質の産生を増加させる。
【0174】
[ヒストンステムループ]
特に好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、ヒストンステムループ配列/構造を含んでいる。このようなヒストンステムループ配列は、好ましくは、国際公開第第2012/019780号に開示されているヒストンステムループ配列から選択される(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0175】
本発明における使用に適したヒストンステムループ配列は、好ましくは以下の式(I)または(II)の少なくとも1つから選択される。
【0176】
【0177】
ステム1またはステム2の境界エレメントN1-6は、1~6、好ましくは2~6、より好ましくは2~5、より一層好ましくは3~5、最も好ましくは4~5または5のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
ステム1[N0-2GN3-5]は、ステム2のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、かつ5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され、
Gは、グアノシンまたはその類似物であり、ステム2におけるその相補的なシチジンヌクレオチドがグアノシンによって置き換えられている条件のもとに、シチジンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ループ配列[N0-4(U/T)N0-4)]は、ステム1およびステム2のエレメントの間に配置されており、3~5のヌクレオチド、より好ましくは4のヌクレオチドの連続する配列であり;
N0-4のそれぞれは、他のNから独立して、0~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
U/Tは、ウリジン、または任意にチミジンを表しており;
ステム2[N3-5CN0-2]は、ステム1のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GもしくはCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
Cは、シチジンまたはその類似物であり、ステム1におけるその相補的なグアノシンヌクレオシドがシチジンに置き換えられている条件のもとに、グアノシンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ステム1およびステム2は、互いに塩基対形成可能であり、塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る逆相補性配列を形成している。この塩基対形成は、例えば、ヌクレオチドAとU/Tとの、またはヌクレオチドGとCとのWatson-Crick塩基対形成による。あるいは、この塩基対形成は、非Watson-Crick塩基対形成による。非Watson-Crick塩基対形成の例としては、wobble塩基対形成、逆Watson-Crick塩基対形成、Hoogsteen塩基対形成、逆Hoogsteen塩基対形成が挙げられる。このとき、不完全な塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る部分的な逆相補性配列を形成している。
【0178】
さらに好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、以下の特定の式(Ia)または(IIa)の少なくとも1つにしたがう、少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含み得る。
【0179】
【0180】
N、C、G、TおよびUは、上記で定義したとおりである。
【0181】
より一層好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、以下の特定の式(Ib)または(IIb)の少なくとも1つにしたがう、少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含み得る。
【0182】
【0183】
N、C、G、TおよびUは、上記で定義したとおりである。
【0184】
特に好ましいヒストンステムループ配列は、配列CAAAGGCTCTTTTCAGAGCCACCA(配列番号1451に記載)、または、より好ましくは対応するRNA配列CAAAGGCUCUUUUCAGAGCCACCA(配列番号1452に記載)である。
【0185】
[シグナルペプチド]
他の特に好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、付加的または代替的に、分泌性のシグナルペプチドをコードし得る。このようなシグナルペプチドは、通常は長さが約15~30アミノ酸であり、好ましくはコードされているペプチドのN末端に位置する配列であるが、これに限定されるものではない。本明細書に定義されているシグナルペプチドは、好ましくは、組成物の少なくとも1つのmRNAによってコードされているペプチドまたはタンパク質を、規定の細胞区画へと輸送することを可能にするものである。この細胞区画は、好ましくは、細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソーム区画である。本明細書に定義されている分泌性シグナルペプチド配列の例としては、古典的MHC分子または非古典的MHC分子のシグナル配列(例えば、MHCクラスI分子HLA-A*0201などの、MHC I分子およびMHC II分子のシグナル配列)、本明細書に定義されているサイトカインまたは免疫グロブリンのシグナル配列、本明細書に定義されている免疫グロブリンまたは抗体のインバリアント鎖のシグナル配列、Lamp1、タパシン、Erp57、カルレチクリン、カルネキシン、およびさらなる膜関連タンパク質のシグナル配列、または、小胞体(ER)もしくはエンドソーム-リソソーム区画と関連するタンパク質のシグナル配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。最も好ましくは、MHCクラスI分子HLA-A*0201のシグナル配列が、本発明によって使用され得る。例えば、HLA-Aに由来するシグナルペプチドは、好ましくは、本明細書に定義されているように、コードされているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントの分泌を、促進するために使用される。より好ましくは、HLA-Aシグナルペプチドは、本明細書に定義されているように、コードされているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントに融合されている。
【0186】
上記の修飾はいずれも、本発明のRNAに適用され得る。さらに、上記の修飾はいずれも、本発明の文脈で使用される任意のRNAに適用され得る。また、適切または必要であれば、上記の修飾はいずれも、任意の組合せで互いに組合せることができる。ただし、これらの修飾の組合せは、少なくとも1つのmRNAにおいて、互いに干渉し合うことがない。当業者は、適宜、選択し得る。
【0187】
〔RNAコンストラクト〕
本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列を含んでいる、本発明に係るRNA(好ましくはmRNA)は、好ましくは、5’-UTRおよび/または3’-UTRを含み得る。この5’-UTRおよび/または3’-UTRは、好ましくは、少なくとも1つのヒストンステムループを含んでいる。本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントに加えて、さらなるペプチドまたはタンパク質が、本発明に係るRNAの少なくとも1つのコード配列によってコードされている場合に、当該コードされているペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、ヒストンタンパク質、レポータータンパク質、および/またはマーカーもしくは選択タンパク質を含んでいない(本明細書に定義されている通り)。本発明に係るRNAの3’-UTRは、好ましくは、本明細書に定義されているポリ(A)および/またはポリ(C)配列をさらに含んでいる。単一の3’-UTRエレメントは、本発明のRNAの配列中において、任意の順序で5’から3’の方向に存在し得る。さらに、本明細書に記載のさらなるエレメントもまた、含まれ得る。さらなるエレメントの例としては、本明細書に定義されている安定化配列(例えば、グロビン遺伝子のUTRに由来するもの)、IRES配列などが挙げられる。また、本発明に係るRNAにおいて、各エレメントは、少なくとも1回繰り返され得(特に、ジシストロン性コンストラクトまたはマルチシストロン性コンストラクトにおいて)、好ましくは2回以上繰り返され得る。例えば、本発明に係るRNAにおいて、単一のエレメントは、以下の順序にて存在し得る。このとき、RNAは、コード領域の5’において、本明細書に記載の5’-UTRエレメントを任意に含み得る。
5’-コード領域-ヒストンステムループ-ポリ(A)/(C)配列-3’;または、
5’-コード領域-ポリ(A)/(C)配列-ヒストンステムループ-3’;または、
5’-コード領域-ヒストンステムループ-ポリアデニル化シグナル-3’;または、
5’-コード領域-ポリアデニル化シグナル-ヒストンステムループ-3’;または、
5’-コード領域-ヒストンステムループ-ヒストンステムループ-ポリ(A)/(C)配列-3’;または、
5’-コード領域-ヒストンステムループ-ヒストンステムループ-ポリアデニル化シグナル-3’;または、
5’-コード領域-安定化配列-ポリ(A)/(C)配列-ヒストンステムループ-3’;または、
5’-コード領域-安定化配列-ポリ(A)/(C)配列-ポリ(A)/(C)配列-ヒストンステムループ-3’;または、
5’-コード領域-安定化配列-ポリ(A)/(C)配列-ヒストンステムループ-3’など。
【0188】
さらなる実施形態によれば、本発明のRNA(好ましくはmRNA)は、好ましくは、以下の構造エレメントの少なくとも1つを含んでいる。(i)5’-非翻訳領域および/または3’非翻訳領域エレメント(UTRエレメント)、特に、5’-UTRエレメント(好ましくは、TOP遺伝子の5’-UTRまたはその断片、ホモログもしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいるか、または当該核酸配列からなる)、あるいは、(ii)5’-UTRエレメントおよび/または3’-UTRエレメント(好ましくは、mRNAを安定化させる遺伝子、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントに由来し得る)、(iii)ヒストンステムループ構造(好ましくは、3’非翻訳領域中のヒストンステムループ)、(iv)5’-キャップ構造、(v)ポリAテール、あるいは、(vi)ポリ(C)配列。
【0189】
いくつかの実施形態によれば、特に好ましくは、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質またはその断片もしくはバリアントに加えて、本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列によってさらなるペプチドまたはタンパク質がコードされているならば、当該コードされているペプチドまたはタンパク質は、好ましくは、ヒストンタンパク質を含んでおらず、レポータータンパク質を含んでおらず(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、EGFP、β-ガラクトシダーゼ、特にEGFP)、および/または、マーカーもしくは選択タンパク質を含んでいない(例えば、α-グロビン、ガラクトキナーゼ、およびキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT)。好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、レポーター遺伝子またはマーカー遺伝子を含んでいない。好ましくは、本発明に係るRNAは、例えば、以下のものをコードしていない:ルシフェラーゼ;緑色蛍光タンパク質(GFP)およびそのバリアント(例えば、eGFP、RFPまたはBFP);α-グロビン;ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT);β-ガラクトシダーゼ;ガラクトキナーゼ;アルカリ性ホスファターゼ;分泌型胎盤アルカリ性ホスファターゼ(SEAP);または、耐性遺伝子(ネオマイシン、プロマイシン、ハイグロマイシンおよびゼオシンなどに対する抵抗性遺伝子)。好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、ルシフェラーゼをコードしていない。他の実施形態において、本発明に係るRNAは、GFPまたはそのバリアントをコードしていない。
【0190】
好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、好ましくは、5’から3’方向に以下のエレメントを含んでいる:
a)5’-キャップ構造(好ましくは、m7GpppN)
b)本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列
c)α-グロビン遺伝子に由来する核酸配列(好ましくは、配列番号1444に記載の核酸配列)、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいる3’-UTRエレメント
d)ポリ(A)テール(好ましくは、10~200個、10~100個、40~80個または50~70個のアデノシンヌクレオチドからなる)
e)ポリ(C)テール(好ましくは、10~200個、10~100個、20~70個、20~60個または10~40個のシチジンヌクレオチドからなる)
f)ヒストンステムループ(好ましくは、配列番号1452に記載の核酸配列を含んでいる)。
【0191】
好適な実施形態において、本発明は、配列番号408~750からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0192】
さらなる態様によれば、本発明に係るRNAは、配列番号408~750からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0193】
他の実施形態において、本発明に係るRNAは、好ましくは、5’から3’方向に以下のエレメントを含んでいる:
a)5’-キャップ構造(好ましくは、m7GpppN)
b)TOP遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれらからなる5’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1432に記載の核酸配列を含んでいる)
c)本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列
d)α-グロビン遺伝子に由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいる3’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1444に記載の核酸配列を含んでいる);および/または、
アルブミン遺伝子に由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいる3’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1448または1450に記載の核酸配列を含んでいる)
e)ポリ(A)テール(好ましくは、10~200個、10~100個、40~80個または50~70個のアデノシンヌクレオチドからなる)
f)ポリ(C)テール(好ましくは、10~200個、10~100個、20~70個、20~60個または10~40個のシチジンヌクレオチドからなる)
g)ヒストンステムループ(好ましくは、配列番号1452に記載の核酸配列を含んでいる)。
【0194】
好ましくは、本発明は、配列番号751~1090からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0195】
さらなる実施形態において、本発明に係るRNAは、配列番号751~1090からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0196】
さらなる実施形態において、本発明に係るRNAは、好ましくは、5’から3’方向に以下のエレメントを含んでいる:
a)5’-キャップ構造(好ましくは、m7GpppN)
b)HSD17B4遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれらからなる5’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1436に記載の核酸配列を含んでいる)
c)本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列
d)α-グロビン遺伝子に由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいる3’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1444に記載の核酸配列を含んでいる);および/または、
アルブミン遺伝子に由来する核酸配列、またはそのホモログ、断片もしくはバリアントを含んでいる3’-UTRエレメント(好ましくは、配列番号1448または1450に記載の核酸配列を含んでいる)
e)ポリ(A)テール(好ましくは、10~200個、10~100個、40~80個または50~70個のアデノシンヌクレオチドからなる)。
【0197】
好ましくは、本発明は、配列番号1091~1430からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0198】
さらなる実施形態において、本発明に係るRNAは、配列番号1091~1430からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0199】
他の実施形態において、本発明は、配列番号408~1430からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0200】
好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、配列番号408~1430からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0201】
特に好適な実施形態によれば、本発明は、配列番号36、37、75、77、78、91、92、93、94、95、97、98、99、807、808、809、810、811、813、814、815、1095、1096、1131、1133、1134、1187および1188からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0202】
好ましくは、本発明に係るRNAは、配列番号36、37、75、77、78、91、92、93、94、95、97、98、99、807、808、809、810、811、813、814、815、1095、1096、1131、1133、1134、1187および1188からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0203】
他の実施形態において、本発明は、配列番号75、77、78、91、92、93、94、95、97、98、99、807、808、809、810、811、813、814、815、1131、1133および1134からなる群から選択される核酸配列に対して、同一または少なくとも80%同一である核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなるRNAを提供する。
【0204】
好ましくは、本発明に係るRNAは、配列番号75、77、78、91、92、93、94、95、97、98、99、807、808、809、810、811、813、814、815、1131、1133および1134からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも5%の配列同一性を有している核酸配列、または当該核酸配列のいずれかの1つの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれからなる。上記配列同一性は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%;好ましくは、少なくとも70%;より好ましくは、少なくとも80%;より一層好ましくは、少なくとも85%;より一層好ましくは、少なくとも90%;最も好ましくは、少なくとも95%;最も好ましくは、少なくとも97%であり得る。
【0205】
本発明に係るRNAは、例えば、当該分野で公知の任意の方法を用いて作製しうる。このような方法には、合成方法(固相合成などRNA)と、in vitroの方法(in vitroにおけるRNA転写反応など)とが含まれている。
【0206】
好ましいコンストラクトを、以下の表Aに示す。
【0207】
【0208】
【0209】
配列表の数字見出し<223>から明らかなように、種々のコンストラクト設計を適用した。本明細書および配列表に示されている本発明のコンストラクトの設計を、表Bに記載する。配列表に示すコンストラクトのそれぞれは、本発明の好ましいコンストラクトに類似している。
【0210】
【0211】
好適な実施形態において、HsFGF21(L126R,P199G,A208E)、HsHGF、MmHGF、HsGFER、HsTNFSF10、HsTNFSF10(95-281)、HsALB(1-18)_HsTNFSF10(95-281)、HsALB(1-18)_ILZ_HsTNFSF10(95-281)、RnCebpa、RnCebpa(15-344)、MmCebpa、MmCebpa(15-359)、HsCEBPA、HsCEBPA (15-358)、HsHNF4A、HsFGF21、HsOGFRL1、HsRLN1、HsRLN2、HsRLN3、HsMMP1、HsMMP1(1-1
9,100-469)、ColG、HsALB(1-18),_ColG(111-1118)、HsALB(1-18),_ColG(1-110),_CS-F,_ColG(111-1118)、ColH、ColH、HsALB(1-18),_ColH(41-1021)、HsALB(1-18),_ColH(1-40),_およびCS-F_ColH(41-1021)には、Design1、Design2、Design3、Design4、Design5、Design6、Design7、Design8、Design9およびDesign10からなる群から選択されるコンストラクト設計が含まれている(表Bにて言及されており、また 配列表の数字見出し<223>から明らかであるように)。
【0212】
他の実施形態において、HsMMP1のための好ましいコンストラクトは、配列番号2073、2100、2101、2133、2158、2183、2208、2233、2258、2283、2308、2333、2358、2383および2408に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0213】
他の実施形態において、HsMMP1(1-19,100-469)のための好ましいコンストラクトは、配列番号2102、2134、2159、2184、2209、2234、2259、2284、2309、2334、2359、2384および2409に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0214】
他の実施形態において、HsHGFのための好ましいコンストラクトは、配列番号1947、1948、1954、1958、1962、1966、1970、1974、1978、1982、1986、1990、1994、1998および2075に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0215】
他の実施形態において、HsCEBPA、HsCEBPA(15-358)、RnCebpa、RnCebpa(15-344)、MmCebpa、またはMmCebpa(15-359)のための好ましいコンストラクトは、配列番号2065、2066、2081、2082、2083、2084、2085、2086、2087、2088、2121、2122、2123、2124、2125、2126、2146、2147、2148、2149、2150、2151、2171、2172、2175、2176、2196、2197、2198、2199、2200、2201、2221、2222、2223、2224、2225、2226、2246、2247、2248、2249、2250、2251、2271、2272、2273、2274、2275、2276、2296、2297、2298、2299、2300、2301、2321、2322、2323、2324、2325、2326、2346、2347、2348、2349、2350、2351、2371、2372、2373、2374、2375、2376、2396、2397、2398、2399、2400および2401に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0216】
他の実施形態において、HsTNFSF10、HsTNFSF10(95-281)、HsALB(1-18)_HsTNFSF10(95-281)、またはHsALB(1-18)_ILZ_HsTNFSF10(95-281)のための好ましいコンストラクトは、配列番号2063、2064、2077、2078、2079、2080、2117、2118、2119、2120、2142、2143、2144、2145、2167、2168、2169、2170、2192、2193、2194、2195、2217、2218、2219、2220、2242、2243、2244、2245、2267、2268、2269、2270、2292、2293、2294、2295、2317、2318、2319、2320、2342、2343、2344、2345、2367、2368、2369、2370、2392、2393、2394および2395に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0217】
他の実施形態において、ColG、ColH、HsALB(1-18)_ColG(111-1118)、HsALB(1-18)_ColG (1-110)_CS-F_ColG(111-1118)、HsALB(1-18)_ColH(41-1021)、HsALB(1-18)_ColH(1-40)_C
S-F_ColH(41-1021)のための好ましいコンストラクトは、配列番号2074、2103、2104、2105、2106、2107、2108、2109、2110、2111、2112、2113、2114、2115、2116、2135、2136、2137、2138、2139、2140、2141、2160、2161、2162、2163、2164、2165、2166、2185、2186、2187、2188、2189、2190、2191、2210、2211、2212、2213、2214、2215、2216、2235、2236、2237、2238、2239、2240、2241、2260、2261、2262、2263、2264、2265、2266、2285、2286、2287、2288、2289、2290、2291、2310、2311、2312、2313、2314、2315、2316、2335、2336、2337、2338、2339、2340、2341、2360、2361、2362、2363、2364、2365、2366、2385、2386、2387、2388、2389、2390、2391、2410、2411、2412、2413、2414、2415および2416に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0218】
他の実施形態において、HsFGF21(L126R,P199G,A208E)のための好ましいコンストラクトは、配列番号1945、1946、1953、1957、1961、1965、1969、1973、1977、1981、1985、1989、1993および1997に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0219】
他の実施形態において、HsFGF21のための好ましいコンストラクトは、配列番号2068、2091、2092、2128、2153、2178、2203、2228、2253、2278、2303、2328、2353、2378および2403に示されている(数字見出し<223>から明らかなように)。
【0220】
〔医薬組成物〕
さらなる態様において、本発明は、本発明に係るRNAを含んでいる(医薬)組成物に関する(本明細書に記載のように)。したがって、本発明に係る(医薬)組成物は、少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAと、薬学的に許容可能な担体と、を含んでいる。ここで、上記コード配列は、本明細書に記載の少なくとも1つのペプチドもしくはタンパク質、または当該ペプチドもしくはタンパク質の断片もしくはバリアントをコードしている(本明細書に記載のように)。好ましくは、上記ペプチドもしくはタンパク質は、細胞外マトリクスプロテアーゼ、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、肝細胞増殖因子(HGF)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)からなる群から選択される。本発明に係る組成物は、好ましくは、医薬組成物として提供される。
【0221】
(医薬)組成物に含まれているRNAに関しては、本発明に係るRNAの説明を参照されたい。この説明が、(医薬)組成物にも適用される。
【0222】
本発明に係る(医薬)組成物は、好ましくは、本発明に係る少なくとも1つのRNAを含んでいる(本明細書に記載のように)。他の実施形態において、(医薬)組成物は、本発明に係るRNA種の少なくとも2つを含んでいる。
【0223】
本発明の文脈において、(医薬)組成物は、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質の1つ以上、またはその断片もしくはバリアントをコードし得る。好適な実施形態によれば、(医薬)組成物は、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントの組合せをコードしている。好ましくは、(医薬)組成物は、本明細書に記載のペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントの、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上をコードしている。このとき、コードされているものは、好ましくは、細胞外マトリクスプロテアーゼ(好ましくは、本明細書に記載のような)、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、肝細胞増殖因子(HGF)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)、およびリラキシン3(RLN3)からなる群、またはその断片もしくはバリアントから選択される。
【0224】
好適な実施形態において、本発明の(医薬)組成物は、本発明に係る少なくとも1つのRNAを含み得る。このとき、上記少なくとも1つのRNAは、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアントの、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上をコードしている。好ましくは、(医薬)組成物は、本発明に係るRNA種のいくつかを含んでいる(より好ましくは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上)。このとき、各RNA種は、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質の1種、またはその断片もしくはバリアントをコードしている。他の実施形態において、(医薬)組成物に含まれているRNAは、本明細書に定義されているビシストロン性RNAまたはマルチシストロン性RNAである。このとき、上記RNAは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の異なるペプチドまたはタンパク質をコードしている。これらの実施形態の間の混合物もまた、想定される。このような混合物の例としては、2つ以上のRNA種(少なくとも1つのRNA種がモノシストロン性であり得、一方、少なくとも1つの他のRNA種がビシストロン性またはマルチシストロン性であり得る)を含んでいる組成物が挙げられる。
【0225】
したがって、本発明に係る(医薬)組成物(好ましくは、当該(医薬)組成物に含まれているRNAの少なくとも1つのコード配列)は、本明細書に定義されている核酸配列の任意の組合せを含み得る。
【0226】
本発明に係る組成物の好適な実施形態において、本明細書に記載のRNAは、1つ以上のカチオン性またはポリカチオン性化合物と複合体化されている。カチオン性またはポリカチオン性化合物は、好ましくは、カチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー、カチオン性もしくはポリカチオン性ペプチドもしくはタンパク質(例えば、プロタミン)、カチオン性もしくはポリカチオン性多糖、および/または、カチオン性もしくはポリカチオン性脂質である。
【0227】
いくつかの実施形態において、RNAは、生理食塩水製剤または脂質製剤として製剤化され得る。好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、脂質と複合体化されて、リポソーム、リポプレックスまたは脂質ナノ粒子の、少なくとも1つを形成し得る。したがって、一実施形態において、本発明の組成物は、本発明に係るRNAを含んでいるリポソーム、リポプレックス、および/または脂質ナノ粒子を含んでいる。一実施形態において、本発明に係るRNAは、カチオン性脂質および/または中性脂質と複合体化されている。これによって、本発明に係るRNAは、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックスまたは中性脂質系ナノリポソームを形成している。
【0228】
したがって、好適な実施形態において、脂質製剤は、リポソーム、リポプレックス、コポリマー(PLGAなど)、および脂質ナノ粒子からなる群から選択される。
【0229】
好適な一実施形態において、脂質ナノ粒子(LNP)は以下を含んでいる:
a)本明細書に定義されている少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNA
b)カチオン性脂質
c)凝集低減剤(ポリエチレングリコール脂質(PEG脂質)またはPEG修飾脂質など)
d)任意で、非カチオン性脂質(中性脂質など)
e)任意で、ステロール。
【0230】
一実施形態において、脂質ナノ粒子製剤は、(i)少なくとも1つのカチオン性脂質;(ii)中性脂質;(iii)ステロール(例えば、コレステロール);および、(iv)PEG-脂質からなる。このとき、これらの成分のモル比は、およそ、カチオン性脂質(20~60%):中性脂質5~25%:ステロール(25~55%):PEG脂質(0.5~15%)である。
【0231】
一実施形態において、核酸は、アミノアルコールリピドイド中にて製剤化され得る。本発明において使用され得るアミノアルコールリピドイドは、米国特許第8,450,298号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の方法によって調製され得る。
【0232】
[カチオン性脂質]
脂質ナノ粒子は、脂質ナノ粒子の形成に適した、任意のカチオン性脂質を含み得る。好ましくは、カチオン性脂質は、およそ生理学的なpHにおいて、正味の正電荷を有している。
【0233】
カチオン性脂質は、好ましくはアミノ脂質である。本明細書において用いられるとき、用語「アミノ脂質」は、(i)1つまたは2つの脂肪酸または脂肪アルキル鎖と、(ii)先端のアミノ基(アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基を含む)と、を有している脂質を包含することを意味する。この先端のアミノ基は、生理学的pHにおいて、プロトン化されてカチオン性脂質を形成し得る。
【0234】
カチオン性脂質は例えば、以下の物質であり得る。N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)(N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、および、1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリドとしても知られる)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(γ-DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)またはその類似体、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)酪酸塩(MC3)、1,1’-(2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチルアザンジイル)-ジドデカン-2-オール(C12-200)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)酪酸塩(DLin-M-C3-DMA)、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(MC3エーテル)、4-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルブタン-1-アミン(MC4エーテル)、またはこれらの任意の組合せ。
【0235】
他のカチオン性脂質としては以下が挙げられるが、これらに限定されない。N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、3P-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Choi)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロップ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、および、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(XTC)。さらに、市販のカチオン性脂質の調製物を使用し得る。このような市販品の例としては、LIPOFECTIN(DOTMAおよびDOPEが含まれている。GIBCO/BRLより販売)、およびLIPOFECTAMINE(DOSPAおよびDOPEが含まれている。GIBCO/BRLより販売)が挙げられる。
【0236】
他の適切なカチオン性脂質は、以下の文献に開示されている:国際出願第09/086558号、第09/127060号、第10/048536号、第10/054406号、第10/088537号、第10/129709号および第2011/153493号;米国特許出願公開第2011/0256175号、第2012/0128760号および第2012/0027803;米国特許第8,158,601号;Love et al, PNAS, 107(5), 1864-69, 2010。[51]他の適切なアミノ脂質としては、含まれているアルキル置換基が異なっている(例えば、N-エチル-N-メチルアミノ-およびN-プロピル-N-エチルアミノ-)、他の脂肪酸基および他のジアルキルアミノ基を有しているアミノ脂質が挙げられる。一般的に、飽和度の低いアシル鎖を有しているアミノ脂質は、大きさを揃えやすい。とりわけ、濾過滅菌のために複合体を約0.3ミクロン未満の大きさとしなければならない場合には、特に大きさを揃えやすい。炭素鎖長がC14~C22である不飽和脂肪酸を含有しているアミノ脂質を使用し得る。他の足場を使用して、アミノ脂質のアミノ基と、脂肪酸または脂肪アルキルの部分とを分離し得る。
【0237】
特定の実施形態において、本発明のアミノ脂質またはカチオン性脂質は、プロトン化可能または脱プロトン化可能な基の少なくとも1つを有している。その結果、生理学的pH(例えば、pH7.4)以下のpHにおいて脂質は正の電荷を有しており、第2のpH(好ましくは、生理学的pH以上)において中性である。もちろん、(i)pHの機能としてのプロトンの添加または除去は、平衡プロセスであり、(ii)荷電脂質または中性脂質と言うときは、主要な種の性質を指しており、(iii)全ての脂質が、荷電形態または中性形態で存在することを必要としない、ことが理解される。プロトン化可能または脱プロトン化可能な基の2つ以上を有している脂質、または、両性イオンである脂質は、本発明における使用から除外されない。
【0238】
特定の実施形態において、プロトン化可能な脂質のプロトン化可能な基のpKaは、約4~約11である(例えば、約5~約7)。
【0239】
脂質粒子は、好ましくは、2つ以上のカチオン性脂質を含んでいる。カチオン性脂質は、好ましくは、異なる有利な特性に寄与するように選択される。例えば、特性(アミンのpKa、化学的安定性、循環系における半減期、組織における半減期、組織における正味の蓄積、または毒性など)が異なるカチオン性脂質を、脂質ナノ粒子に使用し得る。特に、カチオン性脂質を選択して、混合された脂質粒子の特性が、個々の脂質のみからなる脂質粒子の特性よりも望ましいようにすることができる。
【0240】
カチオン性脂質は、好ましくは、粒子中に存在する全脂質に対して、(i)約20モル%~約70モル%もしくは約20モル%~75モル%、または、(ii)約45モル%~約65モル%、または、(iii)約20モル%、約25モル%、約30モル%、約35モル%、約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%、約60モル%、約65モル%もしくは約70モル%含まれている。他の実施形態において、脂質ナノ粒子は、モル基準で約25%~約75%のカチオン性脂質を含んでいる(脂質ナノ粒子中の脂質の全モルを100%モルとする)。カチオン性脂質の含有量は、例えば、モル基準で約20%~約70%、約35%~約65%、約45%~約65%、約60%、約57.5%、約57.1%、約50%、または約40%である。一実施形態において、カチオン性脂質の核酸に対する比率は、約3~約15である(約5~約13または約7~約11など)。
【0241】
[非カチオン性脂質]
非カチオン性脂質は、好ましくは、中性脂質、アニオン性脂質、または両親媒性脂質である。中性脂質は(存在する場合)、生理学的pHにおいて、電荷を帯びていない形態または中性の両性イオン形態のいずれかで存在する多数の脂質種の、いずれかであり得る。このような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリンおよびセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載の粒子に使用するための中性脂質の選択は、一般的に、血流中の脂質粒子の大きさおよび安定性などを考慮して方針を決める。好ましくは、中性脂質は、2つのアシル基を有している脂質である(例えば、ジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミン)。一実施形態において、中性脂質は、炭素鎖長がC10~C20である飽和脂肪酸を含有している。他の実施形態においては、炭素鎖長がC10~C20であるモノ不飽和脂肪酸またはジ不飽和脂肪酸を有している中性脂質が使用される。さらに、飽和脂肪酸鎖および不飽和脂肪酸鎖の混合物を有している中性脂質を使用し得る。
【0242】
適切な中性脂質としては以下が挙げられるが、これらに限定されない。ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、SM、16-0-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-transPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、またはこれらの混合物本発明の脂質粒子における使用に適したアニオン性脂質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リソホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合している他のアニオン性修飾基。
【0243】
用語「両親媒性脂質」は、脂質物質の疎水性部分が疎水性相に配向しており、親水性部分が水性相に配向している、任意の適切な材料を表す。このような化合物としてはリン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なリン脂質の例としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられる。また、リンを含んでいない他の化合物も使用し得る(スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸など)。
【0244】
非カチオン性脂質は、好ましくは、粒子中に存在する全脂質の、約5モル%~約90モル%、約5モル%~約10モル%、約5モル%、約10モル%、約15モル%、約20モル%、約25モル%、約30モル%、約35モル%、約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%、約60モル%、約65モル%、約70モル%、約75モル%、約80モル%、約85モル%、または約90モル%である。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、モル基準で、約0%~約15%または約0%~45%の中性脂質を含んでいる(例えば、約3%~約12%または約5%~約10%)。例えば、脂質ナノ粒子は、モル基準で約15%、約10%、約7.5%または約7.1%の中性脂質を含み得る(脂質ナノ粒子中の全脂質の総モル数を100%とする)。
【0245】
[ステロール]
好ましいステロールは、コレステロールである。当該分野で公知のさらなるステロールは、本発明の文脈における使用のために、さらに想定される。
【0246】
ステロールは、好ましくは、脂質粒子の、約10モル%~約60モル%または約25モル%~約40モル%を構成している。一実施形態において、ステロールは、脂質粒子中に存在する全脂質の、約10モル%、約15モル%、約20モル%、約25モル%、約30モル%、約35モル%、約40モル%、約45モル%、約50モル%、約55モル%、または約60モル%を占めている。他の実施形態において、脂質ナノ粒子は、モル基準で、約5%~約50%(例えば、約15%~約45%、約20%~約40%、約48%、約40%、約38.5%、約35%、約34.4%、約31.5%、または約31%)のステロールを含んでいる(脂質ナノ粒子中の脂質の総モル数を100%とする)。
【0247】
[凝集低減剤]
凝集低減剤は、好ましくは、凝集を低減し得る脂質である。このような脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、モノシアロガングリオシド(Gml)、およびポリアミドオリゴマー(PAO;米国特許第6,320,017号に記載(参照によりその全体が組み込まれる))が挙げられるが、これらに限定されない。また、電荷を有さず親水性の立体障壁部分を有している他の化合物も、脂質とカップリングし得る(PEG、GmlまたはATTAなど)。これにより、製剤時の凝集が防止される。ATTA-脂質は、例えば、米国特許第6,320,017号に記載されている。PEG-脂質複合体は、例えば、米国特許第5,820,873号、第5,534,499号、および第5,885,613号に記載されている(各文献は、その全体が参照により組み込まれる)。
【0248】
凝集低減剤は、例えば、ポリエチレングリコール脂質(PEG脂質)であり得る。PEG脂質の例としては、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEG-ジアルキルグリセロール、PEG-ジアルキロキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、またはこれらの混合物(PEG-Cerl4またはPEG-Cer20など)が挙げられるが、これらに限定されない。PEG-DAA複合体は、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルキシプロピル(C16)、またはPEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)であり得る。他のPEG化脂質の例としては、ポリエチレングリコール-ジミリストイルグリセロール(C14-PEGまたはPEG-C14、PEGの平均分子量は2000Da)(PEG-DMG);(R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバマート)(PEG-DSG);PEG-カルバモイル-1,2-ジミリスチルオキシプロピルアミン(PEGの平均分子量は2000Da)(PEG-cDMA);N-アセチルガラクトサミン-((R)-2,3-ビス(オクタデシルオキシ)プロピル-1-(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)プロピルカルバマート))(GalNAc-PEG-DSG);mPEG(分子量:2000)-ジアステアロイルホスファチジル-エタノールアミン(PEG-DSPE);および、ポリエチレングリコール-ジパルミトイルグリセロール(PEG-DPG)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、凝集低減剤は、PEG-DMGである。他の実施形態において、凝集低減剤は、PEG-c-DMAである。
【0249】
リポソーム製剤は、カチオン性脂質成分の選択、カチオン性脂質の飽和度、PEG化の種類、全ての成分の比率、および生物物理学的パラメータ(大きさなど)によって影響され得る(ただし、これらに限定されない)。Semple et al.による一例において、リポソーム製剤は、57.1%のカチオン性脂質、7.1%のジパルミトイルホスファチジルコリン、34.3%のコレステロール、および1.4%のPEG-c-DMAから構成されていた。(Semple et al. Nature Biotech. 2010 28: 172- 176;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。他の例として、カチオン性脂質の組成を変化させることによって、siRNAを種々の抗原提示細胞へと効果的に送達し得る(Basha et al. Mol Ther. 2011 19:2186-2200;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、リポソーム製剤は、約35%~約45%のカチオン性脂質、約40%~約50%のカチオン性脂質、約50%~約60%のカチオン性脂質、および/または、約55%~約65%のカチオン性脂質を含み得る。いくつかの実施形態において、リポソーム中における脂質のmRNAに対する比率は、約5:1~約20:1、約10:1~約25:1、約15:1~約30:1、および/または、少なくとも30:1であり得る。
【0250】
PEG修飾脂質中のPEG部分の平均分子量は、好ましくは、約500~約8,000Daである(例えば、約1,000~約4,000Da)。好適な一実施形態において、PEG部分の平均分子量は、約2,000Daである。
【0251】
凝集低減剤の濃度は、好ましくは、脂質粒子中の脂質の総モル数を100%とすると、約0.1モル%~約15モル%である。一実施形態において、製剤は、脂質粒子中の脂質の総モル数を基準として、約3モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満のPEGまたはPEG修飾脂質を含んでいる。
【0252】
他の実施形態において、脂質ナノ粒子は、モル比で、約0.1%~約20%のPEG修飾脂質を含んでいる。例えば、脂質ナノ粒子は、モル比で、約0.5~約10%、約0.5~約5%、約10%、約5%、約3.5%、約1.5%、約0.5%、または約0.3%のPEG修飾脂質を含んでいる(脂質ナノ粒子中の脂質の総モル数を100%とする)。
【0253】
[脂質ナノ粒子(LNP)]
本明細書において用いられるとき、脂質ナノ粒子は、好ましくは、リポソームの構造を有している。リポソームの構造は、水性の内部を取り囲んでいる脂質含有膜を有している。リポソームは、好ましくは、1つ以上の脂質膜を有している。リポソームは、好ましくは、単一の層であるか(単層(unilamellar)と呼ばれる)、または、多数の層である(多層(multilamellar)と呼ばれる)。核酸と複合体を形成する際に、脂質粒子は、DNA層の間に挟まれているカチオン性脂質二重層から構成されるリポプレックスであってもよい。リポソームは、様々なサイズであり得る。例えば、(i)直径が数百nmであり得、狭い水性区画によって分離された一連の同心二重層を含み得る、多層ベシクル(MLV)、(ii)直径が50nm未満であり得る、小型のユニセルベシクル(SUV)、および、(iii)直径が50nm~500nmであり得る大型の単層ベシクル(LUV)であるが、これらに限定されない。リポソーム設計は、好ましくは、オプソニンまたはリガンドを含んでいる。これによって非健康な組織へのリポソームの付着を向上させたり、エンドサイトーシスなどのイベント(ただし、これに限定されない)を活性化させたりする。医薬製剤の送達を改善するために、リポソームは、低pHまたは高pHであり得る。
【0254】
非限定的な例として、リポソーム(合成膜ベシクルなど)は、下記に記載されている方法、装置、およびデバイスによって調製され得る:米国特許出願公開第20130177638号、第20130177637号、第20130177636号、第20130177635号、第20130177634号、第20130177633号、第20130183375号、第20130183373号、および第20130183372号(それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。核酸は、(i)リポソーム内に封入されてもよく、および/または、(ii)水性のコア中に含まれており、当該コアがリポソーム内に封入されてもよい(国際公開第2012/031046号、第2012/031043号、第2012/030901号および第2012/006378号、ならびに、米国特許出願公開第20130189351号、第20130195969号および第20130202684号を参照。それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0255】
他の実施形態において、RNAは、好ましくは、カチオン性の水中油型エマルジョン中に製剤化されている。ここで、エマルジョン粒子は、油のコアおよびカチオン性脂質を含んでおり、当該カチオン性脂質は、ポリヌクレオチドとの相互作用により、分子をエマルジョン粒子に固定し得る(国際公開第2012/006380を参照。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。一実施形態において、RNAは、油中水型エマルジョン中に製剤化され得る。このエマルジョンは、連続した疎水相を含んでおり、当該疎水相により親水相が分散されている。
【0256】
一実施形態において、RNA(医薬)組成物は、リポソーム中で製剤化されている。リポソームの例としては、DiLa2リポソーム(Marina Biotech, Bothell, WA)、SMARTICLES(登録商標)(Marina Biotech, Bothell, WA)、neutral DOPC(l,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)系リポソーム(例えば、卵巣がん用のsiRNA送達(Landen et al. Cancer Biology & Therapy 2006 5(12)1708-1713)。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびヒアルロナン-被覆リポソーム(Quiet Therapeutics, Israel)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0257】
他の実施形態において、脂質ナノ粒子の直径の中央値は、約50nm~約300nmであり、例えば約50nm~約250nmであり、例えば約50nm~約200nmである。
【0258】
いくつかの実施形態において、RNAは、小型のLNPを使用して送達される。そのような粒子の直径は、0.1μm未満~100nm未満であり得る。この直径は、例えば、0.1μm未満、1.0μm未満、5μm未満、10μm未満、15μm未満、20μm未満、25μm未満、30μm未満、35μm未満、40μm未満、50μm未満、55μm未満、60μm未満、65μm未満、70μm未満、75μm未満、80μm未満、85μm未満、90μm未満、95μm未満、100μm未満、125μm未満、150μm未満、175μm未満、200μm未満、225μm未満、250μm未満、275μm未満、300μm未満、325μm未満、350μm未満、375μm未満、400μm未満、425μm未満、450μm未満、475μm未満、500μm未満、525μm未満、550μm未満、575μm未満、600μm未満、625μm未満、650μm未満、675μm未満、700μm未満、725μm未満、750μm未満、775μm未満、800μm未満、825μm未満、850μm未満、875μm未満、900μm未満、925μm未満、950μm未満、975μm未満であるが、これらに限定されない。他の実施形態において、RNAは、小型のLNPを使用して送達され、このLNPの直径は、約1nm~約100nm、約1nm~約10nm、約1nm~約20nm、約1nm~約30nm、約1nm~約40nm、約1nm~約50nm、約1nm~約60nm、約1nm~約70nm、約1nm~約80nm、約1nm~約90nm、約5nm~約100nm、約5nm~約10nm、約5nm~約20nm、約5nm~約30nm、約5nm~約40nm、約5nm~約50nm、約5nm~約60nm、約5nm~約70nm、約5nm~約80nm、約5nm~約90nm、約10nm~約50nm、約20nm~約50nm、約30nm~約50nm、約40nm~約50nm、約20nm~約60nm、約30nm~約60nm、約40nm~約60nm、約20nm~約70nm、約30nm~約70nm、約40nm~約70nm、約50nm~約70nm、約60nm~約70nm、約20nm~約80nm、約30nm~約80nm、約40nm~約80nm、約50nm~約80nm、約60nm~約80nm、約20nm~約90nm、約30nm~約90nm、約40nm~約90nm、約50nm~約90nm、約60nm~約90nmおよび/または約70nm~約90nmであり得る。
【0259】
一実施形態において、脂質ナノ粒子の直径は、100nm超、150nm超、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、550nm超、600nm超、650nm超、700nm超、750nm超、800nm超、850nm超、900nm超、950nm超、または1000nm超である。
【0260】
さらに他の実施形態において、本発明の製剤中の脂質ナノ粒子の粒度分布は、単峰性である(すなわち、二峰性または多峰性ではない)。
【0261】
好ましくは、脂質ナノ粒子は、上述のものに加えて、1つ以上の脂質および/または他の成分をさらに含んでいる。他の脂質は、種々の目的のために、リポソーム組成物に含まれ得る(脂質酸化を防止するため、または、リガンドをリポソームの表面に付着させるためなど)。脂質粒子中には、多数ある脂質のうちのいずれがが存在していてもよい(当該脂質には、両親媒性脂質、中性脂質、カチオン性脂質およびアニオン性脂質が含まれている)。このような脂質は、単独で使用し得るし、組合せても使用し得る。
【0262】
脂質粒子中に存在し得るさらなる成分の例としては、二重層安定化成分が挙げられる。二重層安定化成分の例としては、ポリアミドオリゴマー(例えば、米国特許第6,320,017号を参照。参照によりその全体が組み込まれる)、ペプチド、タンパク質、および界面活性剤が挙げられる。
【0263】
カチオン性脂質、非カチオン性脂質(または中性脂質)、ステロール(例えば、コレステロール)、および凝集低減剤(例えば、PEG修飾脂質)を種々のモル比で含んでいる様々な脂質ナノ粒子を、下記表2に示す(脂質ナノ粒子中の脂質の総モル数を基準とする)。
【0264】
【0265】
一実施形態において、脂質のRNAに対する重量比は、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約11:1、少なくとも約20:1、少なくとも約25:1、少なくとも約27:1、少なくとも約30:1、または少なくとも約33:1である。一実施形態において、脂質のRNAに対する重量比は、 約1:1~約35:1、約3:1~約15:1、約4:1~約15:1、約5:1~約13:1、または約25:1~約33:1である。一実施形態において、脂質のRNAに対する重量比は、約0.5:1~約12:1である。
【0266】
一実施形態において、本発明のRNAは、処置用ナノ粒子内に封入されている(本明細書では、「処置用ナノ粒子核酸」と呼ぶ)。処置用ナノ粒子は、本明細書に記載の方法によって製剤化し得、当該分野で公知の方法によっても製剤化し得る。公知の方法の例としては、国際公開第2010/005740号、第2010/030763号、第2010/005721号、第2010/005723号、第2012/054923号;
米国特許出願公開第20110262491号、第20100104645号、第20100087337号、第20100068285号、第20110274759号、第20100068286号、第20120288541号、第20130123351号、第20130230567号;米国特許第8,206,747号、第8,293,276号、第8,318,208、第8,318,211号が挙げられるが、これらに限定されない(各文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。他の実施形態において、処置用ポリマーナノ粒子は、米国特許出願公開第20120140790号に記載の方法によって同定することができる(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0267】
一実施形態において、本発明に係るRNAは、(i)合成ナノ担体に封入され得、(ii)合成ナノ担体と結合され得、および/または、(iii)合成ナノ担体と関連付けられ得る。合成ナノ担体の例としては、以下に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。国際公開第2010/005740号、第2010/030763号、第2012/135010号、第2012/149252号、第2012/149255号、第2012/149259号、第2012/149265号、第2012/149268号、第2012/149282号、第2012/149301号、第2012/149393号、第2012/149405号、第2012/149411号、第2012/14945号、および第2013/019669号;米国出願公開第20110262491号、第20100104645号、第20100087337号、第2012244222号(各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。合成ナノ担体は、当該分野で公知の方法および/または本明細書に記載の方法を使用して、製剤化され得る。非限定的な例として、合成ナノ担体は、以下の文献に開示されている方法によって製剤され得る。国際公開第2010/005740号、第2010/030763号、第2012/135010号;米国特許出願公開第20110262491号、第20100104645号、第20100087337号、第2012244222号(各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。他の実施形態において、合成ナノ担体製剤は、以下の文献に開示されている方法によって、凍結乾燥され得る。国際公開第2011/072218号;米国特許第8,211,473号(各文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。さらに他の実施形態において、本発明の製剤は、合成ナノ担体を含んでおり(ただし、これには限定されない)、米国特許出願公開第20130230568号に開示されている方法によって凍結乾燥または再構成され得る(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0268】
一実施形態において、本発明のRNAは、マイクロスフィアを封入している薬物を使用して、送達のために製剤化される。この薬物は、国際公開第2013/063468号または米国特許8,440,614号に開示されている(各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0269】
好適な実施形態によれば、本発明に係るRNAは、特定の組織または臓器を標的化するために製剤化し得る。特に、本発明に係るRNA(または、当該RNAと共に製剤化されている薬学的担体は、好ましくは、標的基(targeting group)と複合体を形成する。上記標的基は、好ましくは、複合体(好ましくは、RNAを含んでいる複合体)を特定の組織または臓器に対して標的化する。言い換えれば、本発明に係るRNAを標的基と複合体化させることによって(RNA-標的基複合体を形成させることによって直接的に、または、標的基と薬学的担体(本発明に係るRNAとの複合体中に存在している)との複合体を形成させることによって間接的に)、特定の組織または臓器へと上記標的基標的化することにより、上記RNAを上記特定の組織または臓器に送達する。最も好ましくは、標的基は、肝臓組織への送達を提供する。肝臓組織は、好ましくは、肝臓マクロファージ、肝細胞および/または肝臓類洞内皮細胞(LSEC)である。この文脈において、標的基は、好ましくは、葉酸、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLリガンド、およびHDLリガンドからなる群から選択される。また、本発明のRNAに適用され得る肝臓への標的化送達のための適切なアプローチは、Bartneck et al.にも開示されている(Bartneck et al.: Therapeutic targeting of liver inflammation and fibrosis by nanomedicine. Hepatobiliary Surgery and Nutrition 2014;3(6):364-376;この開示は、参照によりその全体が組み込まれる)。
【0270】
他の実施形態において、リポソームまたはLNPは、標的化送達のために製剤化され得る。好ましくは、リポソームまたはLNPは、本発明に係るRNAを、肝臓(好ましくは、肝臓マクロファージ、肝細胞および/または肝臓類洞内皮細胞(LSEC))へと標的化して送達するために製剤化されている。標的化送達のために使用されるリポソームまたはLNPは、本明細書に記載のリポソームまたはLNPを含み得るが、これらに限定されない。
【0271】
標的化された送達を提供するために、本発明のRNAは、好ましくは、複合体を形成している。複合体の例としては、担体または標的基(好ましくは、本明細書に記載のもの)と共有結合しているRNAが挙げられる。あるいは、本発明に係るRNAは、融合タンパク質(例えば、本明細書に記載のペプチドまたはタンパク質に融合している標的基を有している)をコードしており、当該融合タンパク質が特定の組織または臓器(好ましくは肝臓)を標的化している。
【0272】
複合体は、好ましくは、標的基を有している。標的基の例としては、細胞または組織を標的化する薬剤が挙げられる。このような薬剤の例としては、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質(例えば、特定の細胞型(肝臓の細胞など)に対して結合する抗体)が挙げられる。標的基は、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン型糖鎖、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホナート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、RGDペプチド、RGDペプチド模倣体、またはアプタマーであり得る。
【0273】
標的基はさらに、タンパク質(例えば、糖タンパク質)、もしくはペプチド(例えば、例えば、コリガンドに対して特異的な親和性を有している分子)、または抗体(例えば、肝細胞などの特定の細胞型に結合する抗体)であり得る。標的基はまた、ホルモンおよびホルモン受容体を含み得る。標的基はまた、非ペプチド種を含み得る。非ペプチド種の例としては、脂質、レクチン、炭化水素、ビタミン、補助因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、またはアプタマーが挙げられる。リガンドは、例えば、リポ多糖、またはp38MAPキナーゼの活性化因子であり得る。
【0274】
標的基は、好ましくは、特定の受容体を標的化し得るリガンドである。その例としては、葉酸、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLおよびHDLリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、標的基はアプタマーである。好ましくは、アプタマーは修飾されていないか、または本明細書に記載の修飾の任意の組合せを有している。
【0275】
好適な実施形態において、本発明に係る組成物は、本発明に係るRNAを含んでいる。このRNAは、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物、および/または、重合性担体と共に製剤化されている。したがって、本発明のさらなる実施形態において、好ましくは、本明細書に定義されているRNAまたは本発明の(医薬)組成物に含まれている他の任意の核酸は、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物または重合性担体と関連付けられているか、または複合体化している。カチオン性もしくはポリカチオン性化合物または重合性担体の重量比は、任意で、以下から選択される(mRNAまたは核酸の、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体に対する比)。約6:1(w/w)~約0.25:1(w/w)、より好ましくは約5:1(w/w)~約0.5:1(w/w)、より一層好ましくは約4:1(w/w)~約1:1(w/w)または約3:1(w/w)~約1:1(w/w)、最も好ましくは約3:1(w/w)~約2:1(w/w)。あるいは、任意に、mRNAまたは核酸のカチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体に対する比率は、窒素/リン酸比(N/P比)で、約0.1~約10、好ましくは約0.3~約4または約0.3~約1、最も好ましくは約0.5~約1または約0.7~約1、さらに最も好ましくは約0.3~約0.9または約0.5~約0.9の範囲である。より好ましくは、RNAの少なくとも1つのポリカチオンに対するN/P比は、約0.1~約10の範囲である(約0.3~約4、約0.5~約2、約0.7~約2、約0.7~約1.5など)。
【0276】
その点において、本明細書に定義されているRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物に含まれている任意の他の核酸はまた、ビヒクル、形質転換剤または複合体化剤と関連付けられ得る。これによって、本発明に係るRNA(または、任意でさらに含まれている核酸)の形質転換効率および/または発現を増大させる。
【0277】
カチオン性またはポリカチオン性化合物は、特にこの文脈において好ましい物質としては、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミンもしくはスペルミジン、または他のカチオン性ペプチドもしくはタンパク質(ポリ-L-リシン(PLL)、ポリアルギニン、塩基性ポリペプチドなど)、細胞貫通性ペプチド(CPP;HIV結合ペプチドなど)、HIV-1
Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来もしくは類似体ペプチド、HSVVP22(Herpes simplex)、MAP、KALAもしくはタンパク質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリン高含有ペプチド、アルギニン高含有ペプチド、リシン高含有ペプチド、MPG-ペプチド、Pep-1、L-オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(特に、Drosophila antennapedia由来)、pAntp、pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブホリン-2、Bac715-24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、またはヒストンである。より好ましくは、本発明に係るRNAは、少なくとも1つのポリカチオンと複合体化しており、好ましくはプロタミンまたはオリゴフェクタミンと複合体化しており、最も好ましくはプロタミンと複合体化している。この文脈においては、プロタミンが特に好ましい。
【0278】
さらに、好ましいカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質またはペプチドは、以下の全体式(III)を有しているタンパク質またはペプチドから選択され得る:
(Arg)l;(Lys)m;(His)n;(Orn)o;(Xaa)x (式(III))。
【0279】
式中、l+m+n+o+x=8~15である。また、l、m、nまたはoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15から選択される任意の数であり得る。ただし、Arg、Lys、HisおよびOrnの全含有量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも50%を占めている。Xaaは、Arg、Lys、HisまたはOrnを除く天然アミノ酸(すなわち、天然に存在するアミノ酸)または非天然アミノ酸から選択される、任意のアミノ酸であり得る。xは、0、1、2、3または4から選択される任意の数であり得る。ただし、Xaaの全含有量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の50%超にはならない。この文脈において、特に好ましいカチオン性ペプチドは、例えば、Arg7、Arg8、Arg9、H3R9、R9H3、H3R9H3、YSSR9SSY、(RKH)4、Y(RKH)2Rなどである。この文脈において、WO2009/030481の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0280】
形質転換剤または複合体化剤として使用され得るさらに好ましいカチオン性またはポリカチオン性化合物の例としては、以下が挙げられる。カチオン性多糖類(例えば、キトサン、ポリバレン);カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI));カチオン性脂質(例えば、DOTMA:[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)]-N,N,N-トリメチル塩化アンモニウム、DMRIE、ジ-C14-アミジン、DOTIM、SAINT、DC-Chol、BGTC、CTAP、DOPC、DODAP、DOPE:ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、DIMRI:ジミリスト-オキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、DOTAP:ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC-6-14:O,O-ジテトラデカノイル-N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド、CLIP1:rac-[(2,3-ジオクタデシルオキシプロピル)(2-ヒドロキシエチル)]-ジメチルアンモニウムクロリド、CLIP6:rac-[2(2,3-ジヘキサデシルオキシプロピル-オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、CLIP9:rac-[2(2,3-ジヘキサデシルオキシプロピル-オキシスクシニルオキシ)エチル]-トリメチルアンモニウム、オリゴフェクタミン);あるいは、カチオン性もしくはポリカチオン性ポリマー(例えば、修飾ポリアミノ酸(β-アミノ酸ポリマーまたは逆方向ポリアミドなど)、修飾ポリエチレン(PVP(ポリ(N-エチル-4-ビニルピリジニウムブロミド))など)、修飾アクリレート(pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルアクリレート))など)、修飾アミドアミン(pAMAM(ポリ(アミドアミン))など、修飾ポリβアミノエステル(PBAE)(ジアミン末端修飾1,4ブタンジオールジアクリレート-co-5-アミノ-1-ペンタノールポリマーなど)、デンドリマー(ポリプロピルアミンデンドリマーまたはpAMAM系デンドリマーなど)、ポリイミン(PEI:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)など)、ポリアリルアミン、糖骨格系ポリマー(シクロデキストリン系ポリマー、デキストラン系ポリマー、キトサンなど)、シラン骨格系ポリマー(PMOXA-PDMSコポリマーなど)、少なくとも1つのカチオン性ブロックの組合せからなるブロックポリマー(例えば、上述のカチオン性ポリマーから選択される)と、少なくとも1つの親水性または疎水性ブロック(例えば、ポリエチレングリコール)との);など。
【0281】
好適な実施形態によれば、本発明の組成物は、本明細書に定義されているRNAと、重合性担体とを含んでいる。本発明に係り使用される重合性担体は、ジスルフィド架橋されたカチオン性成分によって形成される、重合性担体であり得る。ジスルフィド架橋されたカチオン性成分は、互いに同じであっても異なっていてもよい。重合性担体は、さらなる成分を含有し得る。また特に好ましくは、本発明に係り使用される重合性担体は、カチオン性ペプチド、タンパク質またはポリマーと、任意構成であるさらなる成分(本明細書に定義されている)との混合物を含んでいる。これらの成分は、本明細書に記載のように、ジスルフィド結合によって架橋されている。この文脈において、国際公開第2012/013326号開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0282】
この文脈において、ジスルフィド架橋によって重合性担体の主要成分を形成するカチオン性成分は、通常は、上記の目的に適している、任意のカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーから選択される。具体的には、本明細書に定義されているRNAまたは組成物に含まれているさらなる核酸と複合体化することができ、それによって、好ましくは、RNAまたは核酸を濃縮し得るカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーから選択される。カチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーは、好ましくは、直鎖状分子である。しかし、分岐状のカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーもまた、使用され得る。
【0283】
本発明に係るRNAまたは本発明の(医薬)組成物に含まれている任意のさらなる核酸と複合体化するために使用され得る重合性担体の、ジスルフィド架橋しているカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチドまたはポリマーは全て、少なくとも1つの-SH部分を有している。最も好ましくは、少なくとも1つの-SH部分は、少なくとも1つのシステイン残基、もまたは-SH部分を有している任意のさらなる化学基である。少なくとも1つの-SH部分は、縮合したときに、さらなるカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質、ペプチドまたはポリマーの少なくとも1つ(上述した重合性担体のカチオン性成分)と、ジスルフィド結合を形成することができる。
【0284】
上記で定義したように、本発明のRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物に含まれている任意のさらなる核酸を複合体化するために使用され得る重合性担体は、ジスルフィド架橋されたカチオン性(またはポリカチオン性)成分によって形成され得る。好ましくは、重合性担体のカチオン性またはポリカチオン性のペプチド、タンパク質またはポリマーは、少なくとも1つの-SH部分を含んでいるか、または少なくとも1つの-SH部分を含むように付加修飾されており、複合体化剤として本明細書に定義されているタンパク質、ペプチドおよびポリマーから選択される。
【0285】
さらなる特定の実施形態において、本明細書に定義されているRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物に含まれている任意のさらなる核酸を複合体化するために使用し得る重合性担体は、一般式式(IV)にしたがう重合性担体分子から選択され得る:
L-P1-S-[S-P2-S]n-S-P3-L 式(IV)。
【0286】
式中、P1およびP3は、互いに異なるまたは同一であり、直鎖状または分枝状の親水性ポリマー鎖を表している。P1およびP3はそれぞれ、少なくとも1つの-SH部分を有している。少なくとも1つの-SH部分は、縮合に際して、成分P2とジスルフィド結合を形成し得る。あるいは、少なくとも1つの-SH部分は、縮合に際して、(AA)、(AA)xまたは[(AA)x]zとジスルフィド結合を形成し得る(仮に、このような成分が、P1-P2間またはP2-P3間のリンカーとして用いられるならば)、および/または、さらなる成分(例えば、(AA)、(AA)x、[(AA)x]zまたはL)とジスルフィド結合を形成し得る。直鎖状または分枝状の親水性ポリマー鎖は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ-N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、ポリ(ヒドロキシアルキルL-アスパラギン)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン)、ヒドロキシエチルデンプン、またはポリ(ヒドロキシアルキルL-グルタミン)から互いに独立して選択される。親水性ポリマー鎖の分子量は、約1kDa~約100kDaであり、好ましくは約2kDa~約25kDaである。あるいは、より好ましくは、親水性ポリマー鎖の分子量は、約2kDa~約10kDaである(例えば、約5kDa~約25kDaまたは約5kDa~約10kDa)。
【0287】
P2は、カチオン性またはポリカチオン性のペプチドまたはタンパク質である(例えば、上述のジスルフィド架橋されたカチオン性成分によって形成さている重合性担体)。P2の長さは、好ましくは約3~約100アミノ酸であり、より好ましくは約3~約50アミノ酸であり、より一層好ましくは約3~約25アミノ酸である。このとき、P2の長さは、例えば、約3~約10アミノ酸、約5~約15アミノ酸、約10~約20アミノ酸、または約15~約25アミノ酸であり;より好ましくは約5~約20アミノ酸であり;より一層好ましくは約10~約20アミノ酸である。
【0288】
あるいは、P2は、カチオン性またはポリカチオン性のポリマーである(例えば、上述のジスルフィド架橋されたカチオン性成分によって形成される重合性担体)。P2の分子量は、通常は約0.5kDa~約30kDaであり(約1kDa~約20kDaなど)、より一層好ましくは約1.5kDa~約10kDaである。あるいは、P2の分子量は、約0.5kDa~約100kDaであり(約10kDa~約50kDaなど)、より一層好ましくは約10kDa~約30kDaである。
【0289】
それぞれのP2は、少なくとも2つの-SH部分を有している。少なくとも2つの-SH部分は、縮合に際して、(i)さらなる成分P2、(ii)成分P1および/またはP3、あるいは、(iii)さらなる成分(例えば、(AA)、(AA)x、または[(AA)x]z)と、ジスルフィド結合を形成し得る。
【0290】
-S-S-は、(可逆的な)ジスルフィド結合である(可読性を上げるために、括弧は省略している)。Sは、好ましくは、(可逆的な)ジスルフィド結合が形成されている、硫黄または-SHを有している部分を表す。(可逆的な)ジスルフィド結合は、好ましくは、成分P1および成分P2、成分P2および成分P2、または成分P2および成分P3のいずれかの-SH部分の縮合によって形成される。あるいは、ジスルフィド結合は、任意で、本明細書に定義されているさらなる成分(例えば、L、(AA)、(AA)x、[(AA)x]zなど)の縮合によって形成される。-SH部分は、上記の成分の構造の一部であり得るか、または以下に定義するように修飾を付加され得る。
【0291】
Lは、任意に含まれているリガンドであり、存在していても存在していなくてもよい。Lは、下記から互いに独立に選択され得る。RGD、トランスフェリン、葉酸、シグナルペプチドもしくはシグナル配列、局在化シグナルもしくは配列、核局在化シグナルもしくは配列(NLS)、抗体、細胞貫通性ペプチド(例えば、TATまたはKALA)、受容体のリガンド(例えば、サイトカイン、ホルモン、成長因子など)、小分子(例えば、マンノースもしくはガラクトースなどの炭化水素、または合成リガンド)、小分子アゴニスト、受容体の阻害剤もしくはアンタゴニスト(例えば、RGD擬似ペプチド類似物)、または、本明細書に定義されている他の任意のさらなるタンパク質、など。
【0292】
nは、整数である。nは、通常は、約1~50から選択される。好ましくは、約1、2または3~30から選択される。より好ましくは、約1、2、3、4もしくは5~25、または、約1、2、3、4もしくは5~20、または、約1、2、3、4もしくは5~15、または、約1、2、3、4もしくは5~10から選択される。これらの範囲は、例えば、約4~9、4~10、3~20、4~20、5~20、もしくは10~20であり、または、約3~15、4~15、5~15、もしくは10~15であり、または、約6~11もしくは7~10である。最も好ましくは、nは、約1、2、3、4もしくは5~10であり、より好ましくは約1、2、3もしくは4~9、約1、2、3もしくは4~8、または、約1、2もしくは3~7である。
【0293】
この文脈において、国際公開第2011/026641号の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。親水性ポリマーP1およびP3のそれぞれは、通常は、少なくとも1つの-SH部分を有している。少なくとも1つの-SH部分がP1-P2間またはP3-P2間のリンカーとして使用される場合は(以下に定義されている)、当該-SH部分は、成分P2または成分(AA)もしくは(AA)xとの反応に際して、ジスルフィド結合を形成し得る。また、例えば2つ以上のジスルフィド結合が含まれている場合には、-SH部分は、追加の成分(例えば、L、および/または、(AA)もしくは(AA)x)と反応して、ジスルフィド結合を形成し得る。上記の一般式(IV)に含まれる、下位式「P1-S-S-P2」および「P2-S-P3」は、通常、以下のような状態を表している(可読性を上げるために、括弧を省略している。また、S、P1およびP3は、本明細書に定義されているとおりである)。すなわち、水性ポリマーP1およびP3の-SH部分のうち1つが、一般式(IV)の成分P2の1つの-SH部分と縮合しており、これらの-SH部分の両方の硫黄が、式(IV)において本明細書に定義されているジスルフィド結合-S-S-を形成している状態である。これらの-SH部分は、通常は、親水性ポリマーP1およびP3のそれぞれによって提供される(例えば、内部に含まれている、システインまたは-SH部分を有している任意のさらなる(修飾)アミノ酸もしくは化合物を介して)。したがって、-SH部分がシステインによって提供される場合には、下位式「P1-S-S-P2」および「P2-S-S-P3」はまた、「P1-Cys-Cys-P2」および「P2-Cys-Cys-P3」とも書くことができる。ここで、用語「Cys-Cys」は、ペプチド結合を介してではなく、ジスルフィド結合を介して結合している2つのシステインを表す。この場合、上記式中の用語「-S-S-」は、「-S-Cys」「-Cys-S」または「-Cys-Cys-」と書くこともできる。この文脈において、用語「-Cys-Cys-」は、ペプチド結合を表していない。そうではなく、-SH部分を介してジスルフィド結合を形成している、2つのシステインの結合を表す。したがって、用語「-Cys-Cys-」はまた、一般的に、「-(Cys-S)-(S-Cys)-」として理解され得る。この特定の場合において、Sは、システインの-SH部分の硫黄を表す。同様に、用語「-S-Cys」および「-Cys-S」は、-SH含有部分とシステインとの間のジスルフィド結合を表し、「-S-(S-Cys)」および「-(Cys-S)-S」とも書くことができる。あるいは、親水性ポリマーP1およびP3は、好ましくは、-SH部分を有している化合物との化学反応を介して、-SH部分で修飾され得る。その結果、親水性ポリマーP1およびP3のそれぞれは、少なくとも1つの-SH部分を有している。-SH部分を有している化合物は、例えば、(さらなる)システインまたは-SH部分を有している任意のさらなる(修飾された)アミノ酸であり得る。このような化合物はまた、任意の非アミノ化合物または部分でもあり得る。この非アミノ化合物または部分は、-SH部分を含有しているか、または、本明細書に定義されている親水性ポリマーP1およびP3に-SH部分を導入し得る。このような非アミノ化合物は、本発明に係る重合性担体の式(4)における親水性ポリマーP1およびP3に、化学反応または化合物の結合を介して結合し得る。化学反応または化合物の結合の例としては、3-チオプロピオン酸もしくはチオイモランの結合によるもの;アミド形成によるもの(カルボン酸、スルホン酸、アミンなど);Michael付加によるもの(マレイミド部分、α,β-不飽和カルボニルなど);クリック・ケミストリーによるもの(アジドもしくはアルキンなど);アルケン/アルキンのメタセシスによるもの(アルケンもしくはアルキンなど);イミンもしくはヒドロゾン形成(アルデヒドもしくはケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アミン);複合体形成反応(アビジン、ビオチン、Gタンパク質);または、Sn型置換反応が可能である成分(ハロゲンアルカン、チオール、アルコール、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、スルホン酸エステル、オキシホスホニウム塩など);または、さらなる成分の結合に利用され得る他の化学部分、が挙げられる。この文脈において特に好ましいPEG誘導体は、α-メトキシ-ω-メルカプトポリ(エチレングリコール)である。それぞれの場合において、-SH部分(例えば、システインまたは任意のさらなる(修飾された)アミノ酸もしくは化合物の-SH部分)は、親水性ポリマーP1およびP3の末端、または内部にある任意の位置にに存在し得る。本明細書に定義されているように、親水性ポリマーP1およびP3のそれぞれは、通常は少なくとも1つの-SH部分を有しており、好ましくは1つの末端に少なくとも1つの-SH部分を有しているが、2つまたはそれ以上の-SH部分を含み得る。2つまたはそれ以上の-SH部分は、本明細書に定義されているさらなる成分との、さらなる結合に使用され得る。さらなる成分は、好ましくは、さらなる機能性ペプチドまたはタンパク質である(例えば、リガンド、アミノ酸成分AA)または(AA)x、抗体、細胞貫通性ペプチド、またはエンハンサーペプチド(例えば、TAT、KALA)など)。
【0294】
好ましくは、本発明の組成物は、1つ以上のポリカチオンと複合化している本明細書に定義されている少なくとも1つのRNAと、少なくとも1つの遊離RNAと、を含んでいる。このとき、少なくとも1つの複合体化しているRNAは、好ましくは、少なくとも1つの遊離RNAと同一である。この文脈において、特に好ましくは、本発明の組成物は、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体と、好ましくはカチオン性タンパク質またはペプチドと、少なくとも部分的に複合体化している本発明に係るRNAを含んでいる。この文脈において、国際公開第2010/037539号および国際公開第2012/113513号の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。「部分的に」とは、本発明に係る組成物中において、本明細書に定義されているRNAの一部のみが、カチオン性化合物と複合体化しており、本明細書に定義されているRNA(本発明の(医薬)組成物中に含まれている)の残りの部分は、非複合形態(遊離)であることを意味する。好ましくは、複合体化しているRNAの遊離RNAに対するモル比は、約0.001:1~約1:0.001から選択される(約1:1など)。より好ましくは、複合体化しているRNAの遊離RNAに対する比は、本発明の(医薬)組成物中において、約5:1(w/w)~約1:10(w/w)から選択され、より好ましくは約4:1(w/w)~約1:8(w/w)から選択され、より一層好ましくは約3:1(w/w)~約1:5(w/w)または約1:3(w/w)から選択される。最も好ましくは、本発明の医薬組成物中における、複合体化しているmRNAの遊離mRNAに対する比は、約1:1(w/w)から選択される。
【0295】
本発明に係る(医薬)組成物中における複合体化しているRNAは、好ましくは、1ステップにて調製される。このステップでは、本発明に係るRNAを、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体(好ましくは本明細書に定義されているもの)と、特定の比率で複合体化させて、安定な複合体を形成させる。この文脈において、非常に好ましくは、遊離状態にあるカチオン性もしくはポリカチオン性化合物または重合性担体は、RNAを複合体化させた後において、複合体化しているRNAの成分中に残存していないか、またはごく微量しか残存していない。したがって、複合体化しているRNAの成分中において、RNAとカチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体との比率は、通常は、RNAが完全に複合体化され、遊離状態のカチオン性もしくはポリカチオン性化合物または重合性担体が組成物中に残存していないか、またはごく微量しか残存していないような範囲で選択される。
【0296】
好ましくは、本明細書に定義されているRNAの、カチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体(好ましくは、本明細書に定義されているもの)に対する比率は、約6:1(w/w)~約0.25:1(w/w)から選択され、より好ましくは約5:1(w/w)~約0.5:1(w/w)から選択され、より一層好ましくは約4:1(w/w)~約1:1(w/w)または約3:1(w/w)~約1:1(w/w)から選択され、最も好ましくは約3:1(w/w)~約2:1(w/w)から選択される。あるいは、複合体化しているmRNAの成分中における、本明細書に定義されているRNAのカチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体(好ましくは、本明細書に定義されているもの)に対する比率は、複合体全体の窒素/リン酸比率(N/P比率)に基づいて計算することもできる。本発明の文脈において、複合体中にけるRNA:カチオン性もしくはポリカチオン性化合物および/または重合性担体(好ましくは、本明細書に定義されているもの)の比率に関して、N/P比率は、好ましくは約0.1~10であり、好ましくは約0.3~4であり、最も好ましくは約0.5~2または約0.7~2である。また、N/P比率は、最も好ましくは約0.7~1.5、約0.5~1または約0.7~1であり、さらに最も好ましくは約0.3~0.9または約0.5~0.9である。ただし、好ましくは、複合体中のカチオン性またはポリカチオン性化合物は、上述したカチオン性またはポリカチオン性のタンパク質もしくはペプチドおよび/または重合性担体である。
【0297】
他の実施形態において、本明細書に定義されているRNAを含んでいる本発明に係る組成物は、さらなるビヒクル、形質転換剤または複合体化剤を伴わずに、それのみで投与し得る。
【0298】
理解し認識されるべきことには、本発明によれば、本発明の組成物は、本明細書に定義されている裸のRNAの少なくとも1つ(好ましくは、mRNA)、および/または、本明細書に定義されている製剤化/複合体化されているRNA(好ましくは、mRNA)の少なくとも1つ、を含み得る。このとき、上記に記載されている全ての製剤化および/または複合体化を使用し得る。
【0299】
(医薬)組成物が2つ以上のRNA種を含んでいる実施形態において、これらのRNA種は、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、またはそれ以上の別々の組成物として提供され得る。このとき、これらの組成物は、それぞれ、少なくとも1つのRNA種を含み得(例えば、3つの別個のmRNA種)、それぞれのRNA種は、本明細書に定義されている別個のペプチドもしくはタンパク質、またはその断片あるいはバリアントをコードしている。これらの組成物は、組合されていてもよいし、組合されていなくてもよい。また、(医薬)組成物は、少なくとも2つの異なる組成物の組合せであってもよい。このとき、各組成物は、本明細書に定義されているペプチドまたはタンパク質の少なくとも1つをコードしている、少なくとも1つのmRNAを含んでいる。あるいは、(医薬)組成物は、各々が本明細書に定義されているペプチドまたはタンパク質の1つをコードしている、少なくとも1つのmRNAの組合せとして提供され得る(好ましくは、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、またはそれ以上のmRNAの組合せ)。(医薬)組成物を、その使用に先立って組み合わせて、1つの単一の組成物を提供してもよい。あるいは、(医薬)組成物を、1回以上の投与が必要なるように使用して、本明細書に定義されているタンパク質の特定の組合せをコードしている異なるmRNA種を投与してもよい。(医薬)組成物が、本明細書に定義されているペプチドまたはタンパク質の組合せをコードしている少なくとも1つのmRNA分子(通常は、少なくとも2つのmRNA分子)を含有している場合には、当該(医薬)組成物を、例えば、1回の単回投与(全てのmRNA種が組合せられている)にて投与してもよいし、少なくとも2回の別々の投与によって投与してもよい。したがって、ペプチドまたはタンパク質(または、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質(および、任意で、さらなるタンパク質)の任意の組合せ)をコードしているモノシストロン性mRNA、ビシストロン性mRNA、またはマルチシストロン性mRNAの任意の組合せを、別々の実体(1つのmRNA種を含有している)として提供してもよいし、組合せた実体(2つ以上のmRNA種を含有している)として提供してもよいことが、本発明の(医薬)組成物として理解される。(医薬)組成物の特に好適な実施形態によれば、当該(医薬)組成物に全体としてコードされている、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質(好ましくは、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上のペプチドまたはタンパク質の組合せ)は、個別に投与される個々のmRNA(モノシストロン性mRNA)として提供される。
【0300】
本発明に係る(医薬)組成物は、液体形態および/または乾燥形態(例えば、凍結乾燥形態)で提供され得る。
【0301】
(医薬)組成物は、通常、本明細書に定義されている本発明に係るRNAの、安全かつ有効な量を含んでいる。このRNAは、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質、またはその断片もしくはバリアント、またはペプチドもしくはタンパク質の組合せをコードしている(好ましくは、本明細書に定義されているもの)。明細書において用いられるとき、「安全かつ有効な量」は、本明細書中で定義されているような疾病または障害の、良い方向への変更を著しく誘導するのに充分なRNAの量を意味する。しかし、同時に、「安全かつ有効な量」は、重大な副作用を回避するためには、充分に少ない。すなわち、利点とリスクとの間に、実際的な関係が成り立ち得る。これらの限界の決定は、通常は、常識的な医学的判断の範疇にある。本発明の(医薬)組成物に関して、「安全かつ有効な」との表現は、好ましくは、コードされているタンパク質の適切な発現レベルを得るのに適したRNAの量(すなわち、コードされているペプチドまたはタンパク質の量)を意味する。本明細書に定義されている(医薬)組成物のRNAの、上記のような「安全かつ有効な量」は、RNAの種類に応じてさらに選択され得る(例えば、モノシストロン性RNA、ビシストロン性RNA,マルチシストロン性RNA)。なぜならば、ビシストロン性RNAまたはマルチシストロン性RNAは、同量のモノシストロン性RNAの使用と比較して、コードされているタンパク質の顕著に高い発現をもたらし得るためである。さらに、上記で定義された(医薬)組成物のRNAの「安全かつ有効な量」は、(i)処置されるべき特定の状態、(ii)処置されるべき患者の年齢および身体状態、(iii)状態の重症度、(iv)処置の期間、(v)付随する処置の性質、(vi)使用される具体的な薬学的に許容可能な担体、ならびに、(vii)それらと類似の因子に関連して、医師の有している知識および経験の範囲内で変わり得る。本発明に係る(医薬)組成物は、ヒトおよび獣医学的目的のために、本発明にしたがって使用し得る。
【0302】
好適な実施形態において、本発明に係る(医薬)組成物またはパーツのキットのRNAは、凍結乾燥形態で提供される。好ましくは、凍結乾燥されたRNAは、投与前に、適切な緩衝液中にて(有利には、水性担体に基づいて)再構成される。適切な緩衝液の例としては乳酸リンゲル溶液が挙げられ、好ましくはリンゲル溶液、リン酸緩衝液である。好適な実施形態において、本発明に係る(医薬)組成物またはパーツのキットは、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上のRNA(好ましくは、mRNA)を含んでいる。これらのRNAは、凍結乾燥形態にて別々に提供され(任意で、少なくとも1つのさらなる添加剤と共に)、好ましくは、使用前に適切な緩衝液(乳酸リンゲル溶液など)中にて別々に再構成される。これによって、(モノシストロン性)RNAのそれぞれを、個別に投与することができる。
【0303】
本発明に係る(医薬)組成物は、通常は、薬学的に許容可能な担体を含み得る。本明細書において用いられるとき、「薬学的に許容可能な担体」という表現は、好ましくは、組成物の基剤(液体または非液体)を含んでいる。組成物が液体の状態で提供される場合、担体は、水(通常は、発熱物質を含んでいない水);等張な生理食塩水または(水性)緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩などの緩衝液)である。特に、(医薬)組成物の注射のためには、水、または好ましくは緩衝液、より好ましくは水性緩衝液を用い得る。これらの液体は、ナトリウム塩(好ましくは、少なくとも50mMのナトリウム塩)、カルシウム塩(好ましくは少なくとも0.01mMのカルシウム塩)、および、任意構成でカリウム塩(好ましくは、少なくとも3mMのカリウム塩)を含有している。好適な実施形態によれば、ナトリウム塩、カルシウム塩、および任意構成のカリウム塩は、ハロゲン化物の形態(例えば、塩化物、ヨウ化物または臭化物)、水酸化物の形態、炭酸塩の形態、炭酸水素塩の形態、または硫酸塩の形態などで存在し得る。これらに限定されるものではないが、ナトリウム塩の例としては、NaCl、NaI、NaBr、Na2CO3、NaHCO3、Na2SO4が挙げられる。任意構成であるカリウム塩の例としては、KCl、KI、KBr、K2CO3、KHCO3、K2SO4が挙げられる。カルシウムの例としては、CaCl2、CaI2、CaBr2、CaCO3、CaSO4、Ca(OH)2が挙げられる。また、上記カチオンの有機アニオンを、緩衝液に含有させてもよい。より好適な実施形態によれば、上記に定義されている注射目的に適した緩衝液は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、および任意構成の塩化カリウム(KCl)から選択される塩を含有してもよい。このとき、塩化物に加えて、さらなるアニオンが存在してもよい。CaCl2は、他の塩(KClなど)で置き換え得る。通常、注射用緩衝液中の塩の濃度は、塩化ナトリウム(NaCl)が少なくとも50mM、塩化カリウム(KCl)が少なくとも3mM、および、塩化カルシウム(CaCl2)が少なくとも0.01mMである。注射用緩衝液は、特定の参照媒体に対して、高張、等張または低張であり得る。すなわち、緩衝液は、特定の参照媒体に対して、塩の含有量がより高くてもよく、同一であってもよく、またはより低くてもよい。好ましくは、そのような濃度の前述の塩が使用されてもよく、この塩の濃度によって、浸透圧または他の濃度効果による細胞にダメージを及ぼさない。参照媒体は、例えば、in vivoの方法により生じる液体である(血液、リンパ液、細胞質基質液、または他の体液など)。あるいは、参照媒体は、例えば、in vitroの方法において参照媒体として使用され得る液体である(一般的な緩衝液または液体など)。このような一般的な緩衝液または液体は、当業者に公知である。乳酸リンゲル溶液は、液体基剤として特に好ましい。
【0304】
しかし、ヒトへの投与に適切な、少なくとも1つの適合性のある固体、液体充填材、稀釈剤あるいはカプセル化合物も、使用され得る。本明細書において用いられるとき、用語「適合性」が意味するのは、通常の使用条件において、本発明に係る(医薬)組成物の薬学的有効性を実質的に低下させる相互作用を起こさないように、本発明に係る組成物の成分と、本明細書に定義されている本発明に係るRNAとを混合し得ることである。薬学的に許容可能な担体、充填剤および稀釈剤は、もちろん、処置されるべきヒトへの投与に適したものとするために、純度が充分に高く、かつ毒性が充分に低くなければならない。薬学的に許容可能な担体、充填剤またはその構成成分として使用し得る化合物のいくつかの例としては、以下が挙げられる。糖(ラクトース、グルコース、トレハロースおよびスクロースなど);デンプン(コーンスターチまたはジャガイモデンプン);デキストロース;セルロースおよびその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロースなど);トラガカント粉末;麦芽;ゼラチン;獣脂;固体滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムなど);硫酸カルシウム;植物油(落花生油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびカカオ属由来の油など);ポリオール(ポリプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなど);アルギン酸。
【0305】
薬学的に許容可能な担体の選択は、原則として、本発明に係る医薬組成物が投与される方法によって決定される。(医薬)組成物は、例えば、全身的または局部的に投与され得る。全身的な投与のための経路の例としては、一般的に、経皮経路、経口経路、非経口経路が挙げられる。非経口経路の例としては、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、皮内注射および腹腔内注射および/または鼻腔内投与経路が挙げられる。局部的な投与のための経路の例としては、一般的に、局所投与経路に加えて、皮内注射、経皮注射、皮下注射もしくは筋肉内注射、または病巣内注射、頭蓋内注射、肺内注射、心内注射および舌下注射が挙げられる。より好ましくは、本発明に係る(医薬)組成物は、皮内経路、皮下経路または筋肉内経路によって投与され得る。好ましくは、この投与は注射による(無針および/または針注射であり得る)。したがって、(医薬)組成物は、好ましくは、液体または固体の形態で製剤化されている。本発明に係る(医薬)組成物の投与すべき適切な量は、通常の実験(例えば、動物モデルを用いること)によって決定し得る。このようなモデルとしては、ウサギモデル、ヒツジモデル、マウスモデル、ラットモデル、イヌモデルおよび非ヒト霊長類モデルが挙げられるが、これらに限定されない。注射のための好ましい単位用量形態の例としては、水、生理食塩水、またはそれらの混合物の滅菌溶液が挙げられる。このような水溶液のpHは、約7.4に調整されるべきである。注射に適した担体の例としては、ヒドロゲル、制御放出または遅延放出のためのデバイス、ポリ乳酸、およびコラーゲンマトリクスが挙げられる。局所適用用の適切な薬学的に許容可能な担体の例としては、ローション、クリーム、ゲルなどでの使用に適したものが挙げられる。(医薬)組成物を経口投与する場合には、錠剤、カプセルなどが好ましい単位用量形態である。経口投与用に使用され得る単位用量形態を調製するための薬学的に許容可能な担体は、先行技術において周知である。このような担体の選択は、二次的な事項によりけりである(味、コストおよび貯蔵性など)。これらの事項は、本発明の目的にとって重要ではなく、当業者によって困難なく調製され得る。
【0306】
(医薬)組成物に含まれ得るさらなる添加剤は、乳化剤(例えば、Tween);湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム;着色料;矯味剤、薬学的担体;錠剤形成剤;安定剤;抗酸化剤;防腐剤である。
【0307】
好適な実施形態において、本発明に係る(医薬)組成物は、本発明に係るRNAに加えて、さらなる薬学的有効成分を含んでいる。好ましくは、さらなる薬学的有効成分は、本明細書に定義されている肝疾患の処置または予防における使用のための適切な化合物から選択される。
【0308】
本明細書に定義されている(医薬)組成物はまた、任意の経口的に許容される剤型で経口投与され得る。このような剤型の例としては、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0309】
(医薬)組成物はまた、局所的に投与され得る。適切な局所製剤は、各領域または各臓器に対して容易に調製される。局所適用のために、(医薬)組成物は、適切な軟膏に製剤化され得る。この軟膏は、少なくとも1つの担体中に懸濁または溶解している、本発明に係るRNAを含んでいる。
【0310】
本発明の上記の態様の好適な実施形態によれば、本発明に係る(医薬)組成物は、非経口経路を介して(好ましくは、注射によって)投与される。好ましくは、本発明の組成物は、皮内注射、皮下注射または筋肉内注射によって投与される。当該分野で公知の任意の適切な注射技術が使用され得る(例えば、従来の針注射、またはジェット注射など無針注射技術)。
【0311】
一実施形態において、(医薬)組成物は、本明細書に定義されているRNAの、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上を含んでおり、各RNAは別々に注射される(好ましくは、無針注射によって)。あるいは、(医薬)組成物は、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上のRNAを含んでおり、その中の少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれ以上のRNAは、混合物として投与される(好ましくは、本明細書に定義されている注射によって)。
【0312】
本明細書に定義されているRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物の投与は、時間差を置いた処置として実施し得る。時間差を置いた処置は、例えば、疾患または障害(好ましくは、本明細書に記載のもの)に対する従来の処置の前、従来の処置と同時、および/または従来の処置の後における、RNAまたは組成物の投与であり得る。この投与は、例えば、本明細書に記載の疾患または障害の処置または予防に適した処置または処置剤の投与の前、同時および/または後における、RNAまたは組成物の投与によるものである。このような時間差を置いた処置は、例えば、キット(好ましくは、本明細書に定義されているパーツのキット)を用いて実施し得る。
【0313】
時間差を置いた処置は、付加的または代替的に、本明細書に定義されているRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物を、以下のような投与の形態を含む。すなわち、本明細書に定義されているペプチドもしくはタンパク質をコードしているRNAまたはその断片もしくはバリアント(好ましくは、組成物の一部を形成している)が、上記に定義されているペプチドまたはタンパク質をコードしている他のRNA(好ましくは、同じ本発明の組成物の一部を形成する)と、同時に、前にまたは後に投与されるような形態である。好ましくは、(全てのRNAの)投与は1時間以内に行われ、より好ましくは30分以内に行われ、より一層好ましくは15分以内、10分以内、5分以内、4分以内、3分以内または2分以内、さらには1分以内に行われる。このような時間差を置いた処置は、例えばキット(好ましくは、本明細書に定義されているパーツのキット)を用いて実施し得る。
【0314】
さらなる態様によれば、本発明はまた、キット(特に、パーツのキット)を提供する。このようなキット(特に、パーツのキット)は、通常は、1つの構成要素として(またはさらなる構成要素との組合せとして)、本明細書に定義されている少なくとも1つの本発明のRNA種、または本発明に係るRNAを含んでいる本発明の(医薬)組成物を含んでいる。本明細書に定義されている少なくとも1つのRNAは、本明細書に定義されているさらなる構成要素と任意的に組合せられる。それによって、少なくとも1つのRNA(キットの第1部分)は、当該キットの少なくとも1つの他の部分とは別々に提供される(他の部分は、少なくとも1つの他の構成要素を含んでいる)。(医薬)組成物は、キットの1つの部分または異なる部分に存在し得る。一例として、キットの少なくとも一部は、本明細書に定義されている少なくとも1つのRNAを含み得、当該キットの少なくとも1つのさらなる部分は、本明細書に定義されている他の構成要素を含み得る。例えば、キットの少なくとも1つの他の部分は、少なくとも1つの(医薬)組成物またはその一部を含み得る。例えば、キットの少なくとも1つの部分は、(i)本明細書に定義されているRNA、(ii)本明細書に定義されているキットの少なくとも1つのさらなる部分、(iii)(医薬)組成物の全体または部分を構成している、本明細書に定義されているキットの少なくとも1つのさらなる部分、および、(iv)キットの少なくとも1つのさらなる部分(例えば、少なくとも1つの薬学的担体またはビヒクルなど)、を含み得る。キットまたはパーツのキットが本明細書に記載の複数のRNAを含んでいるとき、キットの1つの構成要素は、キットに含まれているRNAを、1つだけ、複数、または全て含み得る
他の実施形態において、全ての/それぞれのRNA種は、キットの異なる/別々の構成要素に含まれ得る(このとき、各構成要素はキットの一部を形成している)。また、本明細書に定義されている2つ以上のRNAは、キットの一部として、第1構成要素に含まれ得る。一方、キットの他の部分の少なくとも1つを提供する、少なくとも1つの他の構成要素(第2構成要素、第3構成要素など)は、本明細書に定義されているRNAの1つ以上を含み得る。他の構成要素に含まれているRNAは、第1構成要素と同一であっても、部分的に同一であっても、異なっていてもよい。キットまたはパーツのキットは、技術説明書をさらに含み得る。この技術説明書には、本発明に係るRNA、本発明の(医薬)組成物、または上記キットの任意の構成要素もしくは部品の、投与および用量に関する情報が含まれている(例えば、当該キットがパーツのキットとして準備される場合には)。
【0315】
さらなる態様において、本発明はさらに、本発明に係るRNA、(医薬)組成物またはパーツのキットの、いくつかの適用および使用を提供する。特に、本発明は、本発明に係るRNAの医学的使用を提供する。さらに、本発明に係るRNA、(医薬)組成物、または本発明に係るパーツのキットの利用は、遺伝子療法において想定されている。
【0316】
特定の一態様によれば、本発明は、医薬として本明細書に定義されている、(i)本発明に係るRNA、(ii)本発明に係る(医薬)組成物、または、(iii)本発明に係るRNAもしくは複数の本発明のRNAを含んでいるキットもしくはパーツのキットの、第一医薬用途に関する。上記の第一医薬用途は、特に遺伝子療法における用途であり、好ましくは本明細書に定義されている肝疾患または障害の処置または予防のための用途である。
【0317】
他の態様によれば、本発明は、(i)本発明に係るRNA、(ii)(医薬)組成物、または、(iii)本明細書に定義されている本発明に係るRNAもしくは複数の本発明のRNAを含んでいるキットもしくはパーツのキットの、本明細書に定義されている肝疾患または障害の処置または予防のための、第二医薬用途に関する。好ましくは、本発明は、本明細書に定義されている肝疾患または障害を予防、処置および/または回復する医薬の調製のための、(i)本明細書に定義されているRNA、(ii)(医薬)組成物、または、(iii)本明細書に定義されている本発明に係るRNAを含んでいるキットもしくはパーツのキットの使用に関する。好ましくは、上記の目的のために、それを必要とする患者において医薬組成物を投与するか、または当該患者に対して医薬組成物を投与する。
【0318】
さらなる態様によれば、本発明に係るRNAまたは本発明に係るRNAを含んでいる(医薬)組成物は、医薬の製造に使用される。この医薬は、好ましくは、本明細書に定義されている肝疾患または障害の処置または予防のためのものである。
【0319】
本発明の好適な実施形態において、本明細書に記載のRNA、(医薬)組成物、またはキットもしくはパーツのキットは、肝疾患の処置または予防における使用のために提供される。したがって、本発明は、少なくとも1つのコード配列を含んでいるRNAであって、当該コード配列が本明細書に記載の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードしている、肝疾患の処置または予防における使用のためのRNAに関連する。好ましくは、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質は、細胞外マトリクスプロテアーゼ、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、肝細胞増殖因子(HGF)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)からなる群から選択されるペプチドもしくはタンパク質、または当該ペプチドもしくはタンパク質のいずれかの断片もしくはバリアントを含んでいるか、またはそれらからなる。あるいは、本発明は、本発明に係るRNAを含んでいる、肝疾患の処置または予防における使用のための(医薬)組成物またはキットもしくはパーツのキットに関連する。
【0320】
本明細書において用いられるとき、用語「肝疾患」または「肝障害」は、通常は、肝臓組織の構造的変化または損傷に関連する任意の状態か、またはそれを導く任意の状態(特に、肝臓の線維症を導く任意の状態)に関する。特に、本明細書において用いられるとき、「肝疾患(肝線維症または肝硬変など)」とは、肝結合組織の過剰産生を特徴とする(特に、細胞外マトリクス(ECM)タンパク質の蓄積による)、慢性疾患である。好ましくは、肝疾患は、活性化肝星細胞(HSC)によって引き起こされる。肝結合組織の過剰産生および/または細胞外マトリクス(ECM)タンパク質の蓄積のプロセスはまた、「線維症」とも呼ばれ得る。本明細書中で扱われている肝疾患はまた、「線維性肝疾患」とも呼ばれ得る。
【0321】
本発明の文脈において、用語「肝疾患」はまた、好ましくは、肝臓組織の線維症を引き起こし得る疾患または障害、および潜在的に肝線維症をもたらす疾患または障害を表す。このような疾患または障害の例としては、感染症(例えば、B型肝炎、C型肝炎またはD型肝炎)、自己免疫疾患(例えば、原発性胆汁性肝硬変または自己免疫性肝炎)、遺伝子性/遺伝性疾患(遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、嚢胞性線維症、糖尿病)、代謝性疾患および/または食事に関連する疾患(肥満、糖尿病、アルコール乱用、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)、もしくは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH))、癌性または腫瘍性疾患(例えば、肝細胞がん(HCC))、または他の疾患(胆石、バッド=キアリ症候群、または原発性硬化性胆管胆炎など)が挙げられる。
【0322】
好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、肝疾患の処置または予防における使用のために提供される。この肝疾患は、好ましくは、肝線維症、肝硬変および肝がんからなる群から選択される。好適な実施形態において、本発明に係るRNAは、肝細胞がん(HCC)の処置または予防における使用のために提供される。最も好ましくは、本発明に係るRNAは、肝線維症または肝硬変の処置または予防における使用のために提供される。
【0323】
好適な実施形態において、本明細書に記載のRNAまたは(薬学的)組成物は、肝疾患の処置または予防のために提供される。この提供は、RNAの標的化送達を含む。好ましくは、哺乳類の被験体に投与する際に、RNAは肝臓に標的化されている。本発明に係るRNAの標的化送達は、好ましくは、当該RNAを適切な方法で製剤化することによって達成される(例えば、本明細書に記載のリポソームまたは脂質ナノ粒子として)、および/または、本発明に係るRNAまたは(薬学的)組成物を適切な経路を介して投与することによって達成される。
【0324】
好ましくは、本明細書に記載の肝疾患の処置または予防は、任意の適切な方法における、本発明に係るRNAまたは(医薬)組成物の投与を含む。好ましくは、上記任意の適切な方法は、(医薬)組成物に関して本明細書に記載されている方法である。(医薬)組成物の説明は、それが適切である場合には、本発明に係るRNAの医学的使用にも適用される。
【0325】
好ましい態様において、処置または予防は、本発明に係るRNAまたは本発明に係る(医薬)組成物と組合された、さらなる薬学的有効成分の投与を含む。好ましくは、さらなる薬学的有効成分は、本明細書に定義されている肝疾患または障害の処置または予防における使用に適した化合物から選択される。
【0326】
本発明はまた、本発明に係るRNAまたは医薬組成物の薬学的に有効な量を、それを必要とする被験体に投与することによって、疾患または障害を処置または予防する方法を包含している。上記疾患または障害は、好ましくは、本明細書に定義されている肝疾患または障害である。このような方法は、通常、(i)本発明のRNAまたは組成物を調製する第1工程(任意構成)と、(ii)当該組成物(の薬学的に有効な量)を、それを必要とする患者/被験体に投与することを含む第2工程と、を含む。それを必要とする被験体は、通常、哺乳類である。本発明の文脈において、好ましくは、哺乳類は以下を含む群から選択されるが、これに限定されるものではない:例えば、ヤギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ロバ、サル、類人猿、齧歯類(マウス、ハムスター、ウサギなど)、および、特にヒト。これらの哺乳類は、通常、疾患または障害に苛まれている(好ましくは、本明細書に定義されている肝疾患または障害に苛まれている)。
【0327】
さらなる態様によれば、本発明はまた、本明細書に記載のペプチドまたはタンパク質の発現を増強させるための方法を提供する。この方法は、例えば、以下の工程を含む。a)本明細書に定義されているRNAまたは本明細書に定義されている(医薬)組成物を提供すること;b)RNAまたは組成物を、発現系(例えば、無細胞発現系)、細胞(例えば、発現宿主細胞もしくは体細胞)、組織または生物に適用または投与すること。この方法は、実験室用、研究用、診断用、ペプチドまたはタンパク質の商業生産用、および/または処置用に適用し得る。この文脈において、通常はRNAまたは組成物を調製した後に、当該RNAまたは組成物は、通常は、無細胞発現系、細胞(例えば、発現宿主細胞または体細胞)、組織または生物に対して、適用または投与される。この適用または投与は、例えば、裸の形態もしくは複合体化された形態、または本明細書に記載の(医薬)組成物として行われる。この適用または投与は、好ましくは、形質転換を介して行われるか、または本明細書に記載の投与方法のいずれかを使用することによって行われる。この方法は、in vitro、in vivoまたはex vivoで実施し得る。この方法はさらに、特定の疾患(好ましくは本明細書に定義されている疾患)の処置の文脈において実施され得る。
【0328】
この文脈において、in vitroは、本明細書において、生体外で培養されている細胞内への、本発明に係るRNAまたは組成物の形質転換または形質導入と定義される。in vivoは、本明細書において、生体または個体全体に対するRNAまたは組成物の適用による、細胞内への本発明に係るRNAまたは組成物の形質転換または形質導入と定義される。ex
vivoは、本明細書において、生体または個体の外部にある細胞内への本発明に係るRNAまたは組成物の形質転換または形質導入、および、それに引き続く形質転換された細胞の生体または個体への適用と定義される。
【0329】
同様に、他の態様によれば、本発明はまた、本明細書に記載のペプチドまたはタンパク質の発現を増強させるための、本発明に係るRNAまたは組成物の使用を提供する。この使用は、好ましくは、診断または処置を目的とする。この使用は、特に、遺伝子療法におけるものである。この使用は、例えば、RNAまたは組成物を、例えば、無細胞発現系、細胞(例えば、発現宿主細胞または体細胞)、組織または生物に対して、適用または投与することによるものである。この使用は、実験室用、研究用、診断用、ペプチドまたはタンパク質の商業生産用、および/または処置用(好ましくは、遺伝子療法用)に適用し得る。この文脈において、通常は本発明に係るRNAまたは組成物を調製した後に、当該RNAまたは組成物は、通常は、無細胞発現系、細胞(例えば、発現宿主細胞または体細胞)、組織または生物に対して、適用または投与される。この適用または投与は、好ましくは、裸の形態もしくは複合体化された形態、または本明細書に記載の(医薬)組成物として行われる。この適用または投与は、好ましくは、形質転換を介して行われるか、または本明細書に記載の投与方法のいずれかを使用することによって行われる。この使用は、in
vitro、in vivoまたはex vivoで実施し得る。この使用はさらに、特定の疾患(好ましくは本明細書に定義されている肝疾患または障害)の処置の文脈において実施され得る。
【0330】
さらに他の態様において、本発明はまた、本発明に係るRNAを含んでいる本発明の発現系に関する。あるいは、本発明は、本発明の第1の態様に係る対応する核酸配列を含んでいる発現ベクターもしくはプラスミドに関する。この文脈において、発現系は、無細胞発現系(例えば、in vitroの転写/翻訳系)、細胞発現系(例えば、哺乳類細胞(CHO細胞など)、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞(E. coliなど))、または、ペプチドもしくはタンパク質の発現のために使用される生物(例えば、植物または動物(ウシなど))であり得る。
【0331】
〔項目〕
1.少なくとも1つのコード配列を含んでおり、
上記コード配列は、細胞外マトリクスプロテアーゼ、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)、またはそれらのペプチドもしくはタンパク質のうちいずれかの断片もしくはバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードする、肝疾患の処置または予防における使用のための、RNA。
【0332】
2.上記RNAは、mRNA、ウイルスRNAまたはレプリコンRNAである、項目1に記載の使用のためのRNA。
【0333】
3.上記RNA、好ましくは上記コード配列は、化学修飾された糖、化学修飾された骨格または化学修飾された核酸塩基を含んでいない、項目1または2に記載の使用のためのRNA。
【0334】
4.上記RNAは、化学修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドを含んでいない、項目3に記載の使用のためのRNA。
【0335】
5.上記RNAは化学修飾されていない、項目3または4に記載の使用のためのRNA。
【0336】
6.上記肝疾患は、肝線維症、肝硬変および肝がんからなる群から選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0337】
7.上記ペプチドまたはタンパク質は、細胞外マトリクスプロテアーゼまたはその断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~6のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0338】
8.上記細胞外マトリクスプロテアーゼが、細菌コラゲナーゼおよび哺乳類基質メタロプロテイナーゼからなる群から選択される、項目7に記載の使用のためのRNA。
【0339】
9.上記細胞外マトリクスプロテアーゼは、基質メタロプロテイナーゼ-1、好ましくはヒト基質メタロプロテイナーゼ-1、クロストリジウムコラゲナーゼColGおよびクロストリジウムコラゲナーゼColHから選択される、項目7または8に記載の使用のためのRNA。
【0340】
10.上記ペプチドまたはタンパク質は、配列番号20~28からなる群から選択されるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目7~9のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0341】
11.上記ペプチドまたはタンパク質は、CCAAT/エンハンサ-結合タンパク質α(CEBPA)、好ましくはヒトCEBPA、またはその断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~6のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0342】
12.上記ペプチドまたはタンパク質は、配列番号8~13からなる群から選択されるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目11に記載の使用のためのRNA。
【0343】
13.上記ペプチドまたはタンパク質は、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、またはその断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~6のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0344】
14.上記ペプチドまたはタンパク質は、配列番号4~7からなる群から選択されるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目13に記載の使用のためのRNA。
【0345】
15.上記ペプチドまたはタンパク質は、肝細胞核因子4α(HNF4A)、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)、オピオイド増殖因子受容体様1(OGFRL1)、リラキシン1(RLN1)、リラキシン2(RLN2)およびリラキシン3(RLN3)からなる群から選択され、上記ペプチドまたはタンパク質は、好ましくは配列番号14~19からなる群から選択されるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片またはバリアントを含んでいる、項目1~6のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0346】
16.上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列は、配列番号32~71からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~15のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0347】
17.上記RNAは、モノシストロン性、ビシストロン性、またはマルチシストロン性である、項目1~16のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0348】
18.上記RNAはmRNAである、項目1~17のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0349】
19.RNAは、修飾RNA、好ましくは安定化RNAである、項目1~18のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0350】
20.上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列のC/G含量は、対応する野生型RNAの対応するコード配列のC/G含量と比べて多く、
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列のC含量は、対応する野生型RNAの対応するコード配列のC含量と比べて多く、および/または
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列の少なくとも1つのコドンは、ヒトのコドン使用頻度に適合されており、コドン適合指数(CAI)は、好ましくは上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列において増大されているか、または最大化されており、
上記RNAによってコードされる上記アミノ酸配列は、好ましくは対応する野生型RNAによってコードされているアミノ酸配列と比べて改変されていない、項目1~19のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0351】
21.上記少なくとも1つのコード配列は、配列番号75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406および407からなる群から選択される核酸配列を含んでいる、項目20に記載の使用のためのRNA。
【0352】
22.5’-キャップ構造を含んでいる、項目1~21のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0353】
23.10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドを好ましく含んでいるポリ(A)配列および/または10~200、10~100、20~70、20~60または10~40のシチジンヌクレオチドを好ましく含んでいるポリ(C)配列を、含んでいる、項目1~22のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0354】
24.少なくとも1つのヒストンステムループを含んでいる、項目1~23のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0355】
25.上記少なくとも1つのヒストンステムループが、以下の式(I)または(II):
【0356】
【0357】
にしたがう核酸配列を含んでおり、
ステム1またはステム2の境界エレメントN1-6は、1~6、好ましくは2~6、より好ましくは2~5、より一層好ましくは3~5、最も好ましくは4~5または5のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
ステム1[N0-2GN3-5]は、ステム2のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、かつ5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され、
Gは、グアノシンまたはその類似物であり、ステム2におけるその相補的なシチジンヌクレオチドがグアノシンによって置き換えられている条件のもとに、シチジンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ループ配列[N0-4(U/T)N0-4)]は、ステム1およびステム2のエレメントの間に配置されており、3~5のヌクレオチド、より好ましくは4のヌクレオチドの連続する配列であり;
N0-4のそれぞれは、他のNから独立して、0~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
U/Tは、ウリジン、または任意にチミジンを表しており;
ステム2[N3-5CN0-2]は、ステム1のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
Cは、シチジンまたはその類似物であり、ステム1におけるその相補的なグアノシンヌクレオチドがシチジンに置き換えられている条件のもとに、グアノシンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ステム1およびステム2は、互いに塩基対形成可能であり、塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る逆相補性配列を形成しているか、または不完全な塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る部分的な逆相補性配列を形成している、項目24に記載の使用のためのRNA。
【0358】
26.上記少なくとも1つのヒストンステムループは、以下の式(Ia)または(IIa):
【0359】
【0360】
にしたがう核酸配列を含んでいる、項目24または25に記載の使用のためのRNA。
【0361】
27.上記少なくとも1つのヒストンステムループは、配列番号1451にしたがう核酸配列、最も好ましくは配列番号1452にしたがうRNA配列を含んでいる、項目24~26のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0362】
28.上記RNAは、少なくとも1つの3’-非翻訳領域エレメント(3’-UTRエレメント)を含んでいる、項目1~27のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0363】
29.3’-UTRエレメントは、好ましくは安定なmRNAをコードする、遺伝子の3’-UTR、または当該遺伝子の相同物、断片もしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目28に記載の使用のためのRNA。
【0364】
30.上記3’-UTRエレメントは、アルブミン遺伝子、α-グロビン遺伝子、β-グロビン遺伝子、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子、リポキシゲナーゼ遺伝子およびコラーゲンアルファ遺伝子からなる群から選択される遺伝子の3’-UTR、またはその相同物、断片もしくはバリアントから選択される核酸配列を含んでいる、項目29に記載の使用のためのRNA。
【0365】
31.上記3’-UTRエレメントは、好ましくは配列番号1444したがう核酸配列を含んでいる、α-グロビン遺伝子、その相同物、断片またはバリアントの3’-UTRに由来する核酸配列を含んでいる、項目29または30に記載の使用のためのRNA。
【0366】
32.上記RNAは、以下の要素:
a)5’-キャップ構造、好ましくはm7GpppN、
b)項目21に規定されている通りの、少なくとも1つのコード配列、
c)好ましくは配列番号1444にしたがう核酸配列を含んでいる、α-グロビン遺伝子、その相同物、断片もしくはバリアントを含んでいる、3’-UTRエレメント、
d)好ましくは10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドからなる、ポリ(A)テイル、
e)好ましくは10~200、10~100、20~70、20~60または10~40のシチジンヌクレオチドからなる、ポリ(C)テイル、ならびに
f)好ましくは配列番号1452にしたがう核酸配列を含んでいる、ヒストンステムループ
を、好ましくは5’から3’方向に、含んでいる、項目1~31のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0367】
33.上記RNAは、配列番号408~750からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~32のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0368】
34.上記少なくとも1つの3’-UTRエレメントは、脊椎動物アルブミン遺伝子の3’-UTRまたはそのバリアント、好ましくは哺乳動物アルブミン遺伝子の3’-UTRまたはそのバリアント、より好ましくはヒトアルブミン遺伝子の3’-UTRまたはそのバリアント、より一層好ましくはGenBank Acceession番号NM_000477.5にしたがうヒトアルブミン遺伝子の3’-UTRまたはその断片もしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目29または30に記載の使用のためのRNA。
【0369】
35.上記3’-UTRエレメントは、配列番号1448または1450にしたがう核酸配列、またはその相同物、断片またはバリアントを含んでいる、項目34に記載の使用のためのRNA。
【0370】
36.上記RNAは、5’-UTRエレメントを含んでいる、項目1~35のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0371】
37.上記5’-UTRエレメントは、TOP遺伝子の5’-UTR、好ましくは対応するRNA配列、または好ましくは5’-TOPモチーフを欠いている、その相同物、断片もしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目36に記載の使用のためのRNA。
【0372】
38.上記5’-UTRエレメントは、リボソームタンパク質をコードするTOP遺伝子の5’-UTR、好ましくは対応するRNA配列、または好ましくは5’-TOPモチーフを欠いている、その相同物、断片またはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目37に記載の使用のためのRNA。
【0373】
39.上記5’-UTRエレメントは、リボソーム巨大タンパク質(RPL)をコードするTOP遺伝子の5’-UTR、または好ましくは5’-TOPモチーフを欠いている、その相同物、断片またはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目37または38に記載の使用のためのRNA。
【0374】
40.上記5’-UTRエレメントは、配列番号1432にしたがう核酸配列、またはその相同物、断片またはバリアントを含んでいる、項目37~39のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0375】
41.上記RNAは、以下の要素:
a)5’-キャップ構造、好ましくはm7GpppN、
b)好ましくは配列番号1432に記載の核酸配列を含んでいる、TOP遺伝子の5’-UTR、またはその相同体、断片もしくはバリアントを含んでいる核酸配列を含んでいる、または当該核酸配列からなる5’-UTRエレメント、
c)項目21に規定されている通りの少なくとも1つのコード配列、
d)α-グロビン遺伝子、またはその相同物、断片もしくはバリアントに由来する核酸配列、好ましくは配列番号1444にしたがう核酸配列を含んでいる3’-UTRエレメント;および/または
アルブミン遺伝子、またはその相同物、断片またはバリアントに由来する核酸配列、好ましくは配列番号1448または1450にしたがう核酸配列を含んでいる3’-UTRエレメント、
e)好ましくは10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドからなる、ポリ(A)テイル、
f)好ましくは10~200、10~100、20~70、20~60または10~40のシトシンヌクレオチドからなる、ポリ(C)テイル、ならびに
g)好ましくは配列番号1452にしたがう核酸配列を含んでいる、ヒストンステムループ
を、好ましくは5’から3’の方向に、含んでいる、項目1~40のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0376】
42.上記RNAは、配列番号751~1090からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~40のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0377】
43.5’-UTRエレメントは、HSD17B4遺伝子、好ましくは対応するRNA配列、またはその相同物、断片もしくはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、項目36に記載の使用のためのRNA。
【0378】
44.5’-UTRエレメントは、配列番号1436に記載の核酸配列、またはその相同物、断片もしくはバリアントを含んでいる、項目43に記載の使用のためのRNA。
【0379】
45.以下の要素:
a)5’-キャップ構造、好ましくはm7GpppN、
b)好ましくは配列番号1436にしたがう核酸配列を含んでいる、HSD17B4遺伝子の5’-UTRに由来する核酸配列またはその相同物、断片もしくはバリアントを含んでいる、または当該核酸配列またはその相同物、断片もしくはバリアントからなる、5’-UTRエレメント、
c)項目21に規定されている通りの少なくとも1つのコード配列、
d)好ましくは配列番号1444にしたがう核酸配列を含んでいる、α-グロビン遺伝子またはその相同物、断片もしくはバリアントに由来する、3’-UTRエレメント
好ましくは配列番号1448または1450にしたがう核酸配列を含んでいる、アルブミン遺伝子またはその相同物、断片またはバリアントに由来する核酸配列を含んでいる、3’-UTRエレメント
e) 好ましくは10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドからなる、ポリ(A)テイル
を、好ましくは5’~3’方向に、含んでいる、項目1~44のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0380】
46.上記RNAは、配列番号1091~1430からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~45のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0381】
47.上記RNAは、配列番号408~1430からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでいる、項目1~46のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0382】
48.上記RNAは、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体と一緒に製剤化されている、項目1~47のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0383】
49.上記RNAは、1つ以上の、カチオン性化合物またはポリカチオン性化合物、好ましくはカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ポリマー、カチオン性ペプチドもしくはポリカチオン性タンパク質またはポリカチオン性ペプチドもしくはポリカチオン性タンパク質(例えばプロタミン)、カチオン性多糖またはポリカチオン性多糖、および/またはカチオン性脂質またはポリカチオン性脂質と複合化されている、項目48に記載の使用のためのRNA。
【0384】
50.上記1つ以上のカチオン性ペプチドもしくはポリカチオン性タンパク質またはポリカチオン性ペプチドもしくはポリカチオン性タンパク質に対する、上記RNAのN/P比率は、約0.3~4、約0.5~2、約0.7~2、および約0.7~1.5の範囲を包含している約0.1~10の範囲である、項目49に記載の使用のためのRNA。
【0385】
51.少なくとも1つのRNAは、1つ以上のカチオン性化合物またはポリカチオン性化合物と複合化されており、少なくとも1つのRNAが遊離状態にある、項目49または50のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0386】
52.上記少なくとも1つの複合化されているRNAは、上記少なくとも1つの遊離RNAと同一である、項目51に記載の使用のためのRNA。
【0387】
53.上記遊離RNAに対する、上記複合化されているRNAのモル比は、約1:1の比を含んでいる約0.001:1~約1:0.001のモル比から選択される、項目51または52に記載の使用のためのRNA。
【0388】
54.上記RNAは、1つ以上の脂質と複合化されており、それによってリポソーム、脂質ナノ粒子および/またはリポプレックスを形成している、項目48~53のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0389】
55.上記RNA、または当該RNAと一緒に製剤化されている薬学的担体は、標的化基によってコンジュゲートを形成している、項目1~54のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0390】
56.上記標的化基は、肝臓、好ましくは肝臓マクロファージ、肝星状細胞、肝細胞および/または肝臓類洞内皮細胞(LSEC)への複合体の送達をもたらす、項目55に記載の使用のためのRNA。
【0391】
57.上記標的化基は、葉酸、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLリガンドおよびHDLリガンドからなる群から選択される、項目55または56に記載の使用のためのRNA。
【0392】
58.上記RNAは、非経口投与、好ましくは注入によって、それを必要とする対象に投与される、項目1~57のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0393】
59.上記処置または予防は、薬剤的に活性な、さらなる成分の投与を含んでいる、項目1~58のいずれか1項に記載の使用のためのRNA。
【0394】
60.項目1~59のいずれか1項にしたがって規定されている通りの少なくとも1つのRNA、および任意に追加の薬学的に許容可能な担体を含んでいる、組成物。
【0395】
61.項目1~59のいずれか1項にしたがって規定されている通りの少なくとも1つのRNAまたは項目60に記載の組成物、任意に可溶化するための液体ビヒクルならびに任意に上記RNAまたは組成物の投与および用量に関する情報を有している技術的説明書を含んでいる、キット、好ましくはキットの一部。
【0396】
62.上記キットは、リンゲル-乳酸塩溶液を、一部として含んでいる、項目61に記載のキット。
【0397】
63.遺伝子治療における使用のための、項目1~59のいずれか1項にしたがって規定されている通りのRNA、項目60に記載の組成物、または項目61もしくは62に記載のキット。
【0398】
64.肝疾患の遺伝子治療における使用のための、項目1~59のいずれか1項にしたがって規定されている通りのRNA、項目60に記載の組成物、または項目61もしくは62に記載のキット。
【0399】
65.項目1~59のいずれか1項にしたがって規定されている通りのRNA、項目60に記載の組成物、または項目61もしくは62に記載のキットの有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでいる、障害を処置または予防する方法。
【0400】
66.上記障害は、好ましくは肝線維症、肝硬変および肝がんからなる群から選択される、肝疾患である、項目65に記載の方法。
【0401】
〔図面〕
図1:CCl
4マウスモデルにおける肝線維症の肉眼分類:制御およびCCl
4 処理マウス由来の肝臓の代表的な肉眼的画像。肝臓の線維症のグレードをグレード0(線維症なし)からグレード3(進行性線維症)に分類した。グレード0:肝臓の外表面は滑らかで光沢があった。グレード1:肝臓の外表面の一部(<50%)は細胞形成異常および肝臓のコラーゲド(collaged)堆積(瘢痕化)の増加などの構造変化を示し、グレード2:肝臓の外表面の大部分(>50%)は、細胞形成異常および肝臓のコラーゲド堆積(瘢痕化)の増加などの構造変化を示した。グレード3:異形成結節および肝臓の強い細胞外マトリクス(ECM)およびコラーゲン堆積(瘢痕化)によって示される、外部肝臓表面の強い肉眼的変化。
【0402】
図2:線維症段階の評価:全ての動物の肝臓を、肝臓状態の肉眼的評価により、
図1の肉眼的分類基準に従って異なるグレードの線維症に分類した。線維症の分類:線維症なし(グレード0);進行した線維症に始まる(グレード1からグレード3)。mRNA投与群(群3~6)は、mRNA未処置対照群2と比べて、グレード3線維症の減少した外観およびグレード2および1線維症の増加した外観を示した。点線は、対照群1~2を処理動物群3~6から分離する。
【0403】
図3(A)および3(B):mRNA処理動物における肝臓重量および肝臓体重比の減少:
図3(A) CCl
4投与開始29日後(mRNA処理開始14日後)に肝臓の体重を測定した。mRNA投与群(群3~6)は、mRNA未処置対照群2と比べて、より低い肝臓重量を示した。データ(平均± SEM)。
図3(B) CCl
4投与開始29日後(mRNA処置開始14日後)の肝重量/体重比を測定した。肝臓重量を体重で割り、100を掛けて、示された比率を決定した。mRNA投与群(群3~6)は、mRNA未処置対照群2と比べて、より低い肝臓重量を示した。データ(平均± SEM)。
【0404】
図4:mRNA処理動物における慢性肝臓損傷マーカであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少:血清ALTを、CCl
4投与開始後29日(mRNA処置開始後14日)の血清中で評価した。ALTレベルは、酵素分析によって自動的に決定した。mRNA処理群(群3~6)は、mRNA未処理対照群2と比べて下部ALTレベルを示した。データ(平均値±SEM)。
【0405】
〔実施例〕
以下に示す実施例は単に例示であり、本発明をさらに説明している。実施例は、本発明をそれに限定すると解釈されるべきではない。
【0406】
実施例1:オスのBALB/cマウスにおける四塩化炭素誘導性の肝線維症モデルに対するmRNA処置の処置効果の評価
BALB/cマウスを、表3に示す研究計画から明らかなように、6群に分けた。肝不全の誘導はCCl4投与によって達成され、試験化合物を用いた続く処理は治療有効性を示している。CCl4:鉱油の投与は、1ヶ月間、週2回、腹腔内(i.p.)経路を介してであった。対照として、5匹の動物に、生理食塩水:鉱油を投与した(腹腔内)。
【0407】
顎下経路または尾部の傷を介した採血は、-1、15日、22日に、および回収日29に最終の採血を予定した。約100μlの全血を血清分離管に回収し、血清を調製し、-20℃で保存した。
【0408】
肝機能の評価のために、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を測定した。
【0409】
【0410】
mRNA処理の有効性を、疾患または肝不全の進行を制限する能力によって評価した。処理の有効性評価のために、100μl(40μg)のLNP製剤化RNA(RNA-LNP)を、CCl4投与開始後14、17、19、21、24および26日目に、静脈内経路(i.v.)を介して動物(n=12)に注射した:
群1(n=5)の動物は、shamコントロール(すなわち、(a)生理食塩水(i.p.)および(b)生理食塩水:鉱油(i.p.)の1:1比率の1ml/kgの投与)の役割を果たした;
群2(n=12)の動物:(a)生理食塩水(i.p.)(b)1ml/kg 1:1の比率のCCl4:鉱油(i.p.)の投与;
群3~6の動物(各回: n=12):(a)それぞれのmRNAおよび調合物(IV)の投与(b)1ml/kg 1:1の比率のCCl4:鉱油(i.p.)。
【0411】
最終的な回収を29日目、すなわち最後のCCl4投与の96時間後に実施し、すなわち、全ての生存動物の体重を測定し、活性値を観察し、血清調製のために心臓出血によって血液を抽出し、動物を安楽死させた後、肉眼的剖検を行った。続いて、各動物の肝臓を採取し、秤量した。肝臓の中葉を、組織学のために中性に緩衝化されている10%ホルマリン中で固定し、残りの葉を2つのチューブに分け、速やかに凍結した。
【0412】
対照マウスおよびCCl
4 処理マウスからの肝臓の代表的な肉眼写真を撮影し、
図1の肉眼的分類基準(肝臓状態の肉眼的評価)に従って種々のグレードの線維症に分類した。肝臓の線維症のグレードをグレード0(線維症なし)からグレード3(進行性線維症)に分類した。グレード0:肝臓の外表面は滑らかで光沢があった。グレード1:肝臓の外表面の一部(<50%)は細胞形成異常および肝臓のコラーゲド堆積(瘢痕化)の増加などの構造変化を示し、グレード2:肝臓の外表面の大部分(>50%)は、細胞形成異常および肝臓のコラーゲド堆積(瘢痕化)の増加などの構造変化を示した。グレード3:異形成結節および肝臓の強い細胞外マトリクス(ECM)およびコラーゲン堆積(瘢痕化)によって示される、外部肝臓表面の強い肉眼的変化。
【0413】
また、CCl
4投与開始29日後(mRNA処置開始14日後;
図3(A))に肝線維症進行の指標となる肝重量を測定し、肝重量対体重比を求めた(
図3(B))。さらに、
図4に従い、血清ALTを評価した。
【0414】
結果:
全てのmRNA処理動物(Gr3~Gr6)は対照群(Gr2)、
図3Aおよび3Bと比べて、より低い肝臓重量およびより低い肝臓/体重比を示した(すなわち、線維症の改善または進行の減少を示した)。また、
図1及び
図2から明らかなように、mRNA投与群(Gr3~Gr6)では、線維化度の高い肝臓量が低く、また、
図4から明らかなように、線維症マーカであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は対照群と比べて、全てのmRNA投与群で低下しており、肝線維化の改善又は進行の減少を示していた。
【0415】
肝機能のさらなる評価のために、さらなる酵素パネル、すなわちアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)および総ビリルビン(TBIL)が測定される。総ビリルビンの測定は非抱合および抱合ビリルビンの両方を含み、非抱合ビリルビンはヘムの分解産物であり、肝臓に関する問題はビリルビン代謝の欠損(例えば、肝細胞取り込みの低下、ビリルビンの抱合の障害、およびビリルビンの肝細胞分泌の低下;例は、肝硬変およびウイルス性肝炎である)として反映される。
【0416】
実施例2:組織病理学分析[予言的]
実施例1の動物の組織病理学分析を行う。切片化およびピクロシリウス(PSR)染色(すなわち、コラーゲンIおよびIII線維の組織学的可視化)。さらに、各動物の肝臓のデジタル画像を撮影し、さらに、標準的なヘマトキシリン-エオシン(H & E)およびPSR染色スライドからのスコアリングを行う。組織病理学分析は、肝線維症の進行の減少を示す。
【0417】
実施例3:オスのBALB/cマウス[予防的]BALB/cマウスにおける四塩化炭素誘導性の肝線維症モデルに対するmRNAを用いた処理の治療有効性の評価を、表4に示される試験計画から明らかなように、17群に分ける。肝不全の誘導はCCl4投与によって達成され、その後の試験化合物による処理は治療有効性を示す。CCl4:鉱油の投与は、腹腔内(i.p.)経路を介して、週2回、1ヶ月間である。対照として、生理食塩水:鉱油を5匹の動物に投与する(i.p.)。
【0418】
顎下経路または尾部の傷を介した採血は、1日目、14日目、25日目、および採取32日目の最終採血を差し引いた日に予定した。約100μlの全血を血清分離管に回収し、血清を調製し、-20℃で保存する。
【0419】
肝機能の評価のために、酵素パネル、すなわちアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)および総ビリルビン(TBIL)を測定する。さらに、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン(TBIL)、アンモニア、グロブリンおよびアルブミン/グロブリン比を測定する。総ビリルビンの測定は非抱合および抱合ビリルビンの両方を含み、非抱合ビリルビンはヘムの分解産物であり、肝臓に関する問題はビリルビン代謝の欠損(例えば、肝細胞取り込みの低下、ビリルビンの抱合の障害、およびビリルビンの肝細胞分泌の低下;例は、肝硬変およびウイルス性肝炎である)として反映される。また、アルブミンレベルは、肝硬変のような慢性肝疾患において減少するので、アルブミンレベルが測定される。さらに、総タンパク質(グロブリンからの残り)を測定する。
【0420】
【0421】
【0422】
mRNA処理の有効性は、疾患または肝不全の進行を制限するその能力によって評価される。処理の有効性を評価するために、100μlのLNP製剤化RNA(RNA-LNP)を、CCl4投与開始後17、20、24、27および30日目に、静脈内経路(i.v.)を介して動物(n=12)に注射する:
群1(n=5)の動物はsham対照(すなわち、(a)生理食塩水(i.p.)および(b)生理食塩水:鉱油(i.p.)の1:1比率の1ml/kgの投与)として役割を果たした;
群2(n=12)の動物:(a)生理食塩水(i.p.)(b)1ml/kg 1:1の比率のCCl4:鉱油(i.p.)の投与;
群3~31の動物(各回: n=12):(a)それぞれのmRNAおよび調合物(IV)の投与(b)1ml/kg 1:1の比率のCCl4:鉱油(i.p.);
群32(n=12)の動物:(a)制御LNP(IV)(b)1ml/kg 1:1の比率のCCl4:鉱油(i.p.)の投与。
【0423】
別の実験において、表4の試験計画を、LNP製剤化mRNAの代わりにCVCM製剤化mRNAを用いて評価する。
【0424】
最終的な回収は32日目、すなわち最後のCCl4投与の96時間後であり、すなわち、全ての生存動物の体重を測定し、活動レベルを観察し、血清調製のために心臓出血によって血液を抽出し、動物を安楽死させ、続いて肉眼的剖検を行う。続いて、肝臓を採取し、秤量する。肝臓の中葉を、組織学のために中性に緩衝化された10%ホルマリン中で固定し、残りの葉を2つのチューブに分配し、そして急速凍結する。
【0425】
コラーゲン堆積をヒドロキシプロリン測定によって評価する。また、組織病理学分析が行われる。αSMA染色(活性化肝星状細胞のマーカ)を含んでいる切片化およびピクロシリウス(PSR)染色(すなわち、コラーゲンIおよびIII線維の組織学的可視化)。さらに、各動物の肝臓のデジタル画像を撮影し、さらに、標準的なヘマトキシリン-エオシン(H
& E)およびPSR染色スライドからのスコアリングを行う。
【0426】
結果:
肝臓におけるコラーゲンの減少は、いくつかの群において観察される。また、ヒドロキシプロリンの低下がいくつかの基で観察される。さらに、コラーゲンおよびヒドロキシプロリン含量を含んでいる、減少した細胞外マトリクス沈着が、いくつかの基について観察される。いくつかのグループは、肝細胞に影響を及ぼすことなく、HSCにおいてアポトーシスの特定増加を示す。いくつかの群は、動物モデルが肝硬変の状態に達した場合、生存率の増加を示す。
【0427】
実施例4:四塩化炭素誘導性の肝線維症ラットモデルにおけるmRNA処理の効果の評価[予言的]
CCl4:オリーブ油(1:1の比率)をオスのラット(ラットノルベジカス種、株: Sprague Dawley)に2ml/kgの投与量で2週間(5回の注射)3日に1回、続いて1ml/kg(i.p.)1回、3日に1回、6週間投与する。ラットを、表5に示す研究計画から明らかなように、17群に分ける。研究は10週目(すなわち、8週間のCCL4処理+2週間のmRNA処理)に終了する。
【0428】
処理後(8週間後)d2、d7、d10、d14に血液を収集する。試験終了時に、血液サンプルを回収し、血漿サンプルを肝機能試験およびプロトロンビン時間の測定に供する。
【0429】
mRNA処理の有効性は、疾患または肝不全の進行を制限するその能力によって評価される。
【0430】
【0431】
【0432】
【0433】
【0434】
別の実験において、表5の研究計画を、LNP製剤化mRNAの代わりにCVCM製剤化mRNAを用いて評価する。
【0435】
すなわち、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン(TBIL)、総タンパク質(TP)、アンモニア、アルブミン、グロブリンおよびアルブミン/グロブリン比を測定する。
【0436】
約100mgの生組織の一部を液体窒素中で瞬間凍結し、コラーゲン堆積の評価のためにヒドロキシプロリン推定のために-80℃で保存する。肝組織におけるヒドロキシプロリンアッセイについては、標準的な市販のキットが適用され、結果は肝臓全体当たりまたは肝臓1g当たりのμgとして表される。
【0437】
残りの肝臓組織を、中性に緩衝化された10%ホルマリン中で固定し、そして切片を、日常的な組織病理学処理の後に調製する。パラフィン切片を、Masson's Trichrome染色で染色し、そして肝線維症の重症度について病理学者によって評価する。また、実施例1に記載した肝機能試験を行う。
【0438】
結果:
実施例1と同様に、肝臓におけるコラーゲン減少がいくつかの群で観察される。また、ヒドロキシプロリンの還元がいくつかの基で観察される。さらに、コラーゲンおよびヒドロキシプロリン含量を含んでいる、減少した細胞外マトリクス堆積が、いくつかの群に観察される。
【0439】
いくつかの群は、肝細胞に影響を及ぼすことなく、aHSCにおいてアポトーシスの特定増加を示す。いくつかの群は、動物モデルが肝硬変の状態に達した場合、生存率の増加を示す。
【図面の簡単な説明】
【0440】
【
図1】CCl
4マウスモデルにおける肝線維症の肉眼分類の結果を示す図である。
【
図3】mRNA処理動物における肝臓重量および肝臓体重比の減少を示す図である。
【
図4】mRNA処理動物における慢性肝臓損傷マーカであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の減少を示す図である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝疾患の処置または予防における使用のための、医薬組成物であって、
上記医薬組成物は、RNAを含んでおり、
上記RNAは、少なくとも1つのコード配列を含んでおり、
上記コード配列は、肝細胞核因子4α(HNF4A)、またはこれらのペプチドもしくはタンパク質のうちいずれかの断片もしくはバリアントから選択される少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質をコードし、
上記断片またはバリアントは、上記HNF4Aの野生型のアミノ酸配列の全長に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列のG/C含量は、対応する野生型RNAの対応するコード配列のG/C含量と比べて多く、
上記RNAによってコードされる上記アミノ酸配列は、対応する野生型RNAによってコードされているアミノ酸配列と比べて改変されていなく、
上記RNAは、5’-UTRエレメントを含んでおり、
上記5’-UTRエレメントは、HSD17B4遺伝子の5’-UTRに対応するRNA配列、またはその断片もしくはバリアントの核酸配列を含んでおり、
上記断片またはバリアントは、HSD17B4遺伝子に由来する核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有しており、
上記RNAは、3’-UTRエレメントを含んでおり、
上記3’-UTRエレメントは、プロテアソームサブユニットβ3(PSMB3)遺伝子の3’-UTRに対応するRNA配列である核酸配列、またはその断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片またはバリアントは、上記PSMB3遺伝子に由来する核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有している、医薬組成物。
【請求項2】
上記RNAは、mRNA、ウイルスRNAまたはレプリコンRNAである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
上記RNA、好ましくは上記コード配列は、化学修飾された糖、化学修飾された骨格または化学修飾された核酸塩基を含んでおらず、
上記RNAは、化学修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドを、好ましくは含んでおらず、かつ/または、
上記RNAは、好ましくは化学修飾されていない、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
上記肝疾患は、肝線維症、肝硬変および肝がんからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
上記ペプチドまたはタンパク質は、配列番号14から選択されるアミノ酸配列、または当該アミノ酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片またはバリアントは、配列番号14に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列は、配列番号44および45からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片またはバリアントは、配列番号44または45に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
上記RNAは、モノシストロン性、ビシストロン性、またはマルチシストロン性である、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
上記RNAは、修飾RNA、好ましくは安定化RNAであり、
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列のC含量は、対応する野生型RNAの対応するコード配列のC含量と比べて好ましくは多く、かつ/または、
上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列の少なくとも1つのコドンは、ヒトのコドン使用頻度に好ましくは適合されており、コドン適合指数(CAI)は、好ましくは上記RNAの上記少なくとも1つのコード配列において増大されているか、または最大化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
上記少なくとも1つのコード配列は、配列番号85、113、141、169、197、225、253、281、309、337、365、393、および2011からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片もしくはバリアントは、配列番号85、113、141、169、197、225、253、281、309、337、365、393、および2011からなる群から選択されるいずれか1つの核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
上記RNAは、5’-キャップ構造を含んでおり、かつ/または、
10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドを好ましく含んでいるポリ(A)配列および/または10~200、10~100、20~70、20~60または10~40のシチジンヌクレオチドを好ましく含んでいるポリ(C)配列を、含んでおり、かつ/もしくは、
少なくとも1つのヒストンステムループを含んでおり、
上記少なくとも1つのヒストンステムループが、以下の式(I)または(II):
【化1】
にしたがう核酸配列を、好ましくは含んでおり、
ステム1またはステム2の境界エレメントN1-6は、1~6、好ましくは2~6、より好ましくは2~5、より一層好ましくは3~5、最も好ましくは4~5または5のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
ステム1[N0-2GN3-5]は、ステム2のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、かつ5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され、
Gは、グアノシンまたはその類似物であり、ステム2におけるその相補的なシチジンヌクレオチドがグアノシンによって置き換えられている条件のもとに、シチジンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ループ配列[N0-4(U/T)N0-4)]は、ステム1およびステム2のエレメントの間に配置されており、3~5のヌクレオチド、より好ましくは4のヌクレオチドの連続する配列であり;
N0-4のそれぞれは、他のNから独立して、0~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
U/Tは、ウリジン、または任意にチミジンを表しており;
ステム2[N3-5CN0-2]は、ステム1のエレメントと逆相補的または部分的に逆相補的であり、5~7のヌクレオチドの間の連続する配列であり;
N3-5は、3~5、好ましくは4~5、より好ましくは4のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
N0-2は、0~2、好ましくは0~1、より好ましくは1のNの連続する配列であり、Nのそれぞれは、他のNから独立して、A、U、T、GおよびCから選択されるヌクレオチド、またはそのヌクレオチド類似物から選択され;
Cは、シチジンまたはその類似物であり、ステム1におけるその相補的なグアノシンヌクレオチドがシチジンに置き換えられている条件のもとに、グアノシンまたはその類似物に任意に置き換えられ得;
ステム1およびステム2は、互いに塩基対形成可能であり、塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る逆相補性配列を形成しているか、または不完全な塩基対形成がステム1およびステム2の間に生じ得る部分的な逆相補性配列を形成しているか、
または、
上記少なくとも1つのヒストンステムループは、以下の式(Ia)または(IIa):
【化2】
にしたがう核酸配列を好ましくは含んでおり、
上記少なくとも1つのヒストンステムループは、配列番号1451にしたがう核酸配列、最も好ましくは配列番号1452にしたがうRNA配列をより好ましくは含んでいる、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
上記RNAは、以下の要素:
a)5’-キャップ構造、好ましくはm7GpppN、
b)請求項9に規定されている通りの、少なくとも1つのコード配列、
c)好ましくは10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドからなる、ポリ(A)テイル、
d)好ましくは10~200、10~100、20~70、20~60または10~40のシチジンヌクレオチドからなる、ポリ(C)テイル、ならびに
e)好ましくは配列番号1452にしたがう核酸配列を含んでいる、ヒストンステムループ
を、好ましくは5’から3’方向に、含んでいる、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
上記RNAは、配列番号2025および2039からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片またはバリアントは、配列番号2025および2039からなる群から選択される核酸配列のいずれかに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
5’-UTRエレメントは、配列番号1436に記載の核酸配列、またはその断片もしくはバリアントを好ましくは含んでおり、
上記断片またはバリアントは、配列番号1436に記載の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
上記RNAは、以下の要素:
a)5’-キャップ構造、好ましくはm7GpppN、
b)好ましくは配列番号1436にしたがう核酸配列を含んでいる、HSD17B4遺伝子の5’-UTRの核酸配列またはその断片もしくはバリアントを含んでいる、または当該核酸配列またはその断片もしくはバリアントからなる、5’-UTRエレメント、
ここで、上記断片またはバリアントは、配列番号1436にしたがう核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、
c)請求項9に規定されている通りの少なくとも1つのコード配列、
d)好ましくは10~200、10~100、40~80または50~70のアデノシンヌクレオチドからなる、ポリ(A)テイル
を、好ましくは5’から3’方向に、含んでいる、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
上記RNAは、配列番号2067、2089、2090、2127、2152、2177、2202、2227、2252、2277、2302、2327、2352、2377、および2402からなる群から選択される核酸配列、または当該核酸配列のいずれか1つの断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記配列番号2067、2089、2090、2127、2152、2177、2202、2227、2252、2277、2302、2327、2352、2377、および2402からなる群から選択される核酸配列のいずれかに対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
上記RNA、または当該RNAと一緒に製剤化されている薬学的担体は、標的化基によってコンジュゲートを形成しており、
上記標的化基は、肝臓、好ましくは肝臓マクロファージ、肝星状細胞、肝細胞および/または肝臓類洞内皮細胞(LSEC)への複合体の送達を好ましくはもたらし、かつ/または、
上記標的化基は、葉酸、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース-6P、アプタマー、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLリガンドおよびHDLリガンドからなる群から好ましくは選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
上記RNAは、非経口投与、好ましくは注入によって、それを必要とする対象に投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
上記処置または予防は、薬剤的に活性な、さらなる成分の投与を含んでいる、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
任意に追加の薬学的に許容可能な担体を含んでいる、請求項1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記3’-UTRエレメントは、配列番号1713または1714にしたがう核酸配列、またはその断片もしくはバリアントを含んでおり、
上記断片またはバリアントは、配列番号1713または1714にしたがう核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項にしたがって規定されている通りの少なくとも1つの医薬組成物、任意に可溶化するための液体ビヒクルならびに任意に上記医薬組成物の投与および用量に関する情報を有している技術的説明書を含んでいる、キット、好ましくはキットの一部であって、
上記キットは、リンゲル-乳酸塩溶液を、一部として好ましくは含んでいる、キット、好ましくはキットの一部。
【請求項22】
遺伝子治療における使用のための、請求項1~19および請求項20のいずれか1項に記載の医薬組成物、または請求項21に記載のキットであって、
好ましくは、肝疾患の遺伝子治療における使用のための、キット。