(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125102
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】小割用工具および小割方法
(51)【国際特許分類】
B25D 17/02 20060101AFI20230831BHJP
B28D 1/28 20060101ALI20230831BHJP
E02F 3/40 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B25D17/02
B28D1/28
E02F3/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029050
(22)【出願日】2022-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
【テーマコード(参考)】
2D012
2D058
3C069
【Fターム(参考)】
2D012DA01
2D012DB01
2D058AA12
2D058BA13
3C069AA05
3C069BA10
3C069BB01
3C069CA01
3C069CA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】大割破砕物を効率的に小割することができる小割用工具および当該工具を用いた小割方法を提供する。
【解決手段】この発明では、大割破砕物を小割するための小割用工具は、大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、台座の下面から突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備えている。3つ以上の破砕部は、それぞれ下方に向かって先細りした先端部を有するとともに、台座の下面内で二次元的に分散配置されている。そして、大割破砕物の上方から台座が大割破砕物に近接することで、台座の近接方向と直交する仮想面内において、複数の破砕部の先端部が互いに異なる位置で大割破砕物を打撃する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大割破砕物を小割する小割用工具であって、
前記大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、
前記台座の下面から突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備え、
前記3つ以上の破砕部は、それぞれ下方に向かって先細りした先端部を有するとともに、前記台座の下面内で二次元的に分散配置され、
前記大割破砕物の上方から前記台座が前記大割破砕物に近接することで、前記台座の近接方向と直交する仮想面内において、複数の前記破砕部の先端部が互いに異なる位置で前記大割破砕物を打撃する
ことを特徴とする小割用工具。
【請求項2】
請求項1に記載の小割用工具であって、
前記台座の中央部から上方に延設され、下方に向けて付与される外力を前記台座に伝えることで複数の前記破砕部の先端部で前記大割破砕物を打撃する外力伝達部をさらに備え、
前記3つ以上の破砕部のうちの1つは、前記台座の下面中央部から突設される中央破砕部であり、残りの前記破砕部は、前記台座を下方から見た平面視で、前記中央破砕部を中心として対称配置されている小割用工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の小割用工具であって、
前記破砕部は、前記台座に固定された破砕ベース部位と、前記破砕ベース部位に対して下方側より着脱自在なツース部位とを有する小割用工具。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、
前記大割破砕物の上方に前記小割用工具を配置する工程と、
前記台座に対して下方に向けた外力を付与することで、前記仮想面内において互いに異なる位置で複数の前記破砕部の先端部により前記大割破砕物を打撃して破砕する工程と、を備えることを特徴とする小割方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる比較的大きな破片(以下「大割破砕物」という)を小割するための小割用工具および当該工具を用いた小割方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば岩盤破砕を伴う現場では、発破や本願発明者が開発した楔式岩盤破砕機(特許文献1)によって岩盤を破砕するが、破砕粒度はある程度の分布を持ち、大割破砕物はそのままでは大き過ぎ、搬出作業に支障を来す。このため、岩盤破砕後に、大割破砕物を更に小さく破砕する、いわゆる小割作業が行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記現場では、油圧ブレーカーのチゼルにより小割作業を行っているが、必ずしも効率的であるとはいえない。というのも、大割破砕物の大きさ、形状や表面状態などは多様であり、しかもチゼルは大割破砕物に対してスポット状または線状に打撃するからである。より詳しくは、チゼルの打撃力が大割破砕物の重心に向かうようにチゼルの先端が大割破砕物に当接する場合、比較的安定して大割破砕物を小割することができる。しかしながら、上記打撃力の方向が重心から外れると、チゼル先端が大割破砕物の表面を滑ったり、大割破砕物が傾いたりして打撃力が大割破砕物に十分に伝わらないことがある。このような場合、大割破砕物に対するチゼルの位置や姿勢などを再設定する必要があり、これが作業効率を低下させる主要因のひとつになっている。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、大割破砕物を効率的に小割することができる小割用工具および当該工具を用いた小割方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、大割破砕物を小割する小割用工具であって、大割破砕物を上方から覆いながら近接可能に設けられる台座と、台座の下面から突設される、少なくとも3つ以上の破砕部と、を備え、3つ以上の破砕部は、それぞれ下方に向かって先細りした先端部を有するとともに、台座の下面内で二次元的に分散配置され、大割破砕物の上方から台座が大割破砕物に近接することで、台座の近接方向と直交する仮想面内において、複数の破砕部の先端部が互いに異なる位置で大割破砕物を打撃することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の第2態様は、小割用工具を用いて大割破砕物を小割する小割方法であって、大割破砕物の上方に小割用工具を配置する工程と、台座に対して下方に向けた外力を付与することで、仮想面内において互いに異なる位置で複数の破砕部の先端部により大割破砕物を打撃して破砕する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、大割破砕物を効率的に小割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る小割用工具および当該工具を用いた小割方法の第1実施形態を示す図である。
【
図2】小割用工具の縦断面、横断面および下方から見た平面を示す図である。
【
図3】
図1および
図2に示す小割用工具を用いた小割方法を模式的に示す図である。
【
図4】本発明に係る小割用工具の第2実施形態を示す図である。
【
図5】本発明に係る小割用工具の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る小割用工具および当該工具を用いた小割方法の第1実施形態を示す図である。また、
図2は小割用工具を示す図であり、同図(a)が小割用工具の縦断面を示し、同図(b)が同図(a)のB-B線矢視断面図であり、同図(c)が小割用工具をC-C線から見た平面を示す図である。なお、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0011】
この小割用工具1は、
図1に示すように、岩盤破砕を伴う現場において使用されるバックホウ等の建設車両100に取り付けられ、岩盤を破砕した際に発生する大割破砕物200を更に小さく破砕するための工具である。より詳しくは、建設車両100のアーム101にブラケット102を介して油圧ブレーカー103が取り付けられている。この油圧ブレーカー103はブレーカー本体(図示省略)を備えている。また、このブレーカー本体は、中央部にシリンダーを有している。そして、不図示の油圧供給源から切換弁を介してシリンダーへ圧油を供給することにより、シリンダー内に摺嵌されるピストンが軸方向に前後進可能になっている。
【0012】
ブレーカー本体の先端部(
図1の下方側端部)に、小割用工具1が装着される。この小割用工具1は、
図1および
図2に示すように、略平板状の台座2を有している。この台座2の上面21の中央部に対し、シャフト部材3が固着されている。シャフト部材3は上下方向に延設された円柱形状を有している。シャフト部材3の上端部は、ブレーカー本体に対して着脱自在な形状に仕上げられている。また、シャフト部材3の下端面が台座2の上面21に密着した状態でシャフト部材3が固定されている。本実施形態では、シャフト部材3の台座2への固定を強固なものとするために、芯材4および補強リブ部材5が用いられている。
【0013】
台座2の中央部には貫通孔22(
図1)が設けられている。この貫通孔22の下方開口は上方開口よりも広く設けられている。そして、貫通孔22の内周面のうち下方領域では、上方に進むにしたがって開口径が徐々に狭くなる、いわゆる逆すり鉢形状を有するとともに中央領域で上方開口と同一内径を有するように貫通孔22は仕上げられている。一方、芯材4は皿ネジに類似した形状を有しており、その上端部が上方開口と同一径に仕上げられた円柱部位であるのに対し、下端部が貫通孔22の下方領域(逆すり鉢形状を有する部位)に嵌合可能な形状に仕上げられている。この芯材4が貫通孔22を介して台座2の下方から挿入され、その上端部がシャフト部材3の下端中央部に設けられた嵌合孔に挿入されるとともに下端部が台座2に係止される。これにより、台座2とシャフト部材3とが上下方向において強固に連結される。しかも、
図2(b)に示すように、台座2とシャフト部材3の連結部位に沿って溶接6が施されている。また、同溶接6によって、シャフト部材3の下端側面の周囲に配置された4枚の補強リブ部材5が台座2とシャフト部材3と連結され、水平方向からシャフト部材3を補強している。
【0014】
台座2の下面23は、地面に置かれた大割破砕物200や積み上げられた大割破砕物200の全体あるいは一部を上方から覆うことが可能な平面サイズを有している。この下面23から下方に複数(本実施形態では5本)の破砕部7が突設されている。これらの破砕部7は四角錐形状で、しかも同一寸法を有している。そして、
図2に示すように、先細りした先端部を下方に向けた状態で、破砕部7の後端部(上端部)が下面23に形成された凹部231に嵌入された状態で溶接8により固着されている。また、
図2の右下図面に示すように、5本の破砕部7のうち台座2の下面中央部から突設される破砕部7aが本発明の「中央破砕部」の一例に相当している。また、残りの破砕部7b~7eが、台座2を下方から見た平面視で、中央破砕部7aを中心として対称配置されている。このように5本の破砕部7は台座2を下方から見た平面視で、マトリックス状に配置されており、つまり台座2の下面23内で二次元的に分散配置されている。したがって、次に説明するように、上記のように構成された小割用工具1を大割破砕物200の上方から下降させると、5本の破砕部7のうち複数の破砕部7が大割破砕物200に当接し、大割破砕物200の破砕に寄与する。
【0015】
図3は、
図1および
図2に示す小割用工具を用いた小割方法を模式的に示す図である。なお、
図3中の符号「X」は大割破砕物200の重心を示している。小割用工具1のシャフト部材3の上端部がブレーカー本体に装着される、小割用工具1が建設車両100に着された状態で、作業員が建設車両100を操作して大割破砕物200の上方に小割用工具1を位置させる。そして、作業員の建設車両100の操作により、小割用工具1が上方から大割破砕物200に近接すると、小割用工具1の破砕部7が大割破砕物200に当接する。例えば
図3(a)に示すように、大割破砕物200の頂部が凸部形状を有する場合、破砕部7の一つ(ここでは、中央破砕部7aと仮定する)のみが大割破砕物200に当接する。この当接初期状態は、チゼルを用いた場合に類似している。したがって、作業員の建設車両100の操作により小割用工具1が下降したときに、チゼルの場合と同様に、同図(b)、(c)中の破線矢印で示すように、大割破砕物200が回転して傾いたり、中央破砕部7aの先端部が大割破砕物200の表面を滑ったりする。また、両者が同時に発生することもある。
【0016】
しかしながら、このように小割用工具1と大割破砕物200との相対位置関係が変化したとしても、中央破砕部7a以外の破砕部7(同図(b)、(c)では、破砕部7b)が追加的に当接する。つまり、台座2の近接方向Yと直交する仮想面内(
図3紙面と直交する面内)において、複数の破砕部7が大割破砕物200と当接しながらブレーカー本体からシャフト部材3を介して当該破砕部7に与えられる外力が大割破砕物200に与えられる。つまり、シャフト部材3が本発明の「外力伝達部」として機能し、上記外力を用いて複数の破砕部7の先端部が互いに異なる位置で大割破砕物200を打撃する。その結果、大割破砕物200を安定して打撃して
図1に示すように大割破砕物200を細かく破砕することができる。
【0017】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、5個の破砕部7を、台座2を下方から見た平面視で、マトリックス状および中央破砕部7aを中心として対称に二次元的に分散配置しているが、破砕部7の配置態様はこれに限定されるものではなく、ランダムに二次元的に分散配置してもよい。
【0018】
また、破砕部7の個数は「5」に限定されるものではなく、少なくとも3個以上の破砕部7を台座2の下面23内で二次元的に分散配置することで、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0019】
また、上記実施形態では、各破砕部7を台座2の下面23に溶接8により固定しているが、固定方式は溶接に限定されるものではなく、任意である。また、破砕部7を全体的に台座2の下面23に固定しているが、破砕部7による大割破砕物200の打撃により破砕部7の先端部が摩耗することを考慮して破砕部7を分割構造で構成してもよい。例えば
図4に示す台座2に固定された破砕ベース部位71と、破砕ベース部位71に対して下方側より着脱自在なツース部位72と、破砕ベース部位71およびツース部位72に挿通されて両者を連結する連結ピン73とを有するように、破砕部7を構成してもよい(第2実施形態)。
【0020】
また、上記実施形態では、四角錐形状の破砕部7を用いているが、破砕部7の形状はこれに限定されるものでなく、下方に向かって先細りした先端部を有する形状であればよく、例えば
図5に示すように円錐形状の破砕部7を用いてもよい(第3実施形態)。また、小割用工具1に装備される破砕部7の全部を同一寸法とすることは必須ではなく、形状や寸法を相違させてもよい。例えば台座2の下面23からの中央破砕部7aの突出量が周辺の破砕部7b~7よりも短くように破砕部7を構成してもよい。
【0021】
また、上記実施形態では、台座2の下面を略水平面に仕上げているが、下面形状はこれに限定されるものではなく、例えば湾曲面であってもよい。
【0022】
さらに、上記実施形態では、岩盤掘削現場で発生した大割破砕物200を破砕対象としているが、その他の現場、例えば道路解体現場や建造物解体現場などで発生する大割破砕物を破砕する際にも、本発明に係る小割用工具を使用することで小割作業を効率的に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、岩盤、岩石、コンクリート構造物などの被破砕物を破砕した際に生じる大割破砕物を小割するための小割技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…小割用工具
2…台座
3…シャフト部材(外力伝達部)
7…破砕部
7a…中央破砕部
23…(台座の)下面
71…破砕ベース部位(破砕部)
72…ツース部位(破砕部)
200…大割破砕物
Y…近接方向