(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125115
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】通知装置、通知方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029068
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 和善
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 順子
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】ドライバの運転状態を通知する通知装置を提供する。
【解決手段】車両に搭載される通知装置であって、画像を表示する表示装置と、前記車両を運転するドライバの運転スキル及び身体的負荷に基づく負荷許容量と、前記ドライバが運転する環境に基づく危険度と、前記負荷許容量及び前記危険度に基づく余裕度とを算出し、前記負荷許容量、前記危険度及び前記余裕度の大きさに基づく図形を生成し、前記図形を含む画像を前記表示装置に表示させる制御部と、を備える通知装置とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される通知装置であって、
画像を表示する表示装置と、
前記車両を運転するドライバの運転スキル及び身体的負荷に基づく負荷許容量と、前記ドライバが運転する環境に基づく危険度と、前記負荷許容量及び前記危険度に基づく余裕度とを算出し、前記負荷許容量、前記危険度及び前記余裕度の大きさに基づく図形を生成し、前記図形を含む画像を前記表示装置に表示させる制御部と、
を備える通知装置。
【請求項2】
音声を出力するスピーカを備え、
前記制御部は、前記余裕度が所定値以下である場合、所定の警告音を前記スピーカに出力させる、
請求項1に記載の通知装置。
【請求項3】
音声を出力するスピーカを備え、
前記制御部は、前記余裕度が所定値以下である場合、前記余裕度が低いことを通知する音声を前記スピーカに出力させる、
請求項1に記載の通知装置。
【請求項4】
車両に搭載される通知装置による通知方法であって、
通知装置が、
前記車両を運転するドライバの運転スキル及び身体的負荷に基づく負荷許容量と、前記ドライバが運転する環境に基づく危険度と、前記負荷許容量及び前記危険度に基づく余裕度とを算出し、前記負荷許容量、前記危険度及び前記余裕度の大きさに基づく図形を生成し、前記図形を含む画像を表示装置に表示させる、
通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通知装置、通知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、カーナビゲーションシステム、カーオーディオシステムなどとして動作する車載装置が搭載されている。車両に搭載される車載装置は、例えば、ディスプレイやスピーカなどにより、車両のドライバや同乗者に各種情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-189181号公報
【特許文献2】特開昭63-57035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ドライバが運転する自動車などの車両の同乗者は、ドライバが運転中、どの程度ドライバに運転負荷がかかっているかを知ることが難しかった。そのため、ドライバが運転に集中すべきタイミングに同乗者がドライバに話しかける、また、ドライバが同乗者に気を使って会話を続けるなど、ドライバが運転に集中するのを阻害する状況が発生することがある。
【0005】
開示の実施形態は、ドライバの運転状態を通知する通知装置、通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
即ち、第1の態様は、
車両に搭載される通知装置であって、
画像を表示する表示装置と、
前記車両を運転するドライバの運転スキル及び身体的負荷に基づく負荷許容量と、前記ドライバが運転する環境に基づく危険度と、前記負荷許容量及び前記危険度に基づく余裕度とを算出し、前記負荷許容量、前記危険度及び前記余裕度の大きさに基づく図形を生成し、前記図形を含む画像を前記表示装置に表示させる制御部と、
を備える通知装置である。
【0007】
開示の態様は、プログラムが情報処理装置によって実行されることによって実現されてもよい。即ち、開示の構成は、上記した態様における各手段が実行する処理を、情報処理装置に対して実行させるためのプログラム、或いは当該プログラムを記録した情報処理装置が読み取り可能な記録媒体として特定することができる。また、開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を情報処理装置が実行する方法をもって特定されてもよい。開示の構成は、上記した各手段が実行する処理を行う情報処理装置を含むシステムとして特定されてもよい。なお、情報処理装置は、例えば、コンピュータである。コンピュータは、パソコンやサーバと呼ばれることもある。
【発明の効果】
【0008】
開示の実施形態は、ドライバの運転状態を通知する通知装置、通知方法を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の通知システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、通知装置100の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、算出部114が負荷許容量A1を算出する手法を示す図である。
【
図4】
図4は、算出部114が危険度A2を算出する手法を示す図である。
【
図5】
図5は、負荷許容量、危険度、余裕度を示す図形がディスプレイ160に表示されている例1を示す図である。
【
図6】
図6は、負荷許容量、危険度、余裕度を示す図形がディスプレイ160に表示されている例2を示す図である。
【
図7】
図7は、通知装置100の動作フローの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、発明の構成は、開示の実施形態の具体的構成に限定されない。発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0011】
〔実施形態〕
<構成例>
図1は、本実施形態の通知システムの構成例を示す図である。
図1の通知システム1は、車両10、サーバ装置20、ネットワーク30を含む。車両10は、通知装置100、電子装置200を搭載する。通知装置100は、車両10に搭載され、車両10を運転中のドライバや車両10の同乗者(ドライバ以外の搭乗者)に、ドライバの運転状態に関する情報を提供する。
【0012】
通知装置100は、インターネットなどの広域のネットワーク30を介して、サーバ装置10と信号の送受信が可能である。サーバ装置10は、例えば、情報を蓄積する機関であるデータセンタなどに設けられる。また、通知装置100は、車両の車載ネットワークを介して、車両10に設けられる他の電子装置200との信号の送受信が可能である。
【0013】
通知装置100は、サーバ装置20、車両10内の他の電子装置200等から各種の情報を取得する。通知装置100は、取得した各種の情報に基づいて、ドライバの運転状態に応じたパラメータを算出する。具体的には、通知装置100は、ドライバの運転スキルや身体的負荷に基づくパラメータである「負荷許容量」、ドライバが運転している環境などに基づくパラメータである「危険度」、負荷許容量及び危険度に基づくパラメータである「余裕度」を算出する。
【0014】
通知装置100は、ドライバや同乗者に向けて、算出した「負荷許容量」、「危険度」、「余裕度」に応じた表示を行う。これにより、ドライバや同乗者は、ドライバの運転状況を把握することができる。
【0015】
図2は、通知装置100の構成例を示す図である。通知装置100は、制御部110、外部通信部120、情報出力部130、車内通信部140、記憶部150、ディスプレイ160、スピーカ170を備える。制御部110は、情報取得部111、情報送信部112、算出部114、状態報知部116を備える。通知装置100は、ディスプレイ160及びスピーカ170の動作を制御し、ディスプレイ160に画像を表示させ、スピーカ170に音声を出力させる。また、通知装置100は、Controller Area Network(CAN
)などの車載ネットワークに接続され、他の電子装置200と通信を行う。車載ネットワークには、他の電子装置として、周辺監視装置201、ドライバ監視装置202、車両監
視装置203、車載情報装置204、操作補助装置205が接続される。
【0016】
制御部110は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、Random Access Memory(RAM)、及び、Read Only Memory(ROM)を備えるマイクロコンピュータ(コン
ピュータ)であり、通知装置100の全体を制御する。制御部110のCPUが記憶部150に記憶されたプログラムを実行する(当該プログラムに従った演算処理を行う)ことにより、制御部110として必要な各種の機能が実現される。
【0017】
図2に示す、情報取得部111、情報送信部112、算出部114、状態報知部116は、記憶部150に格納されるプログラムの実行により実現される制御部110の機能のうちの一部である。
【0018】
情報取得部111は、車内通信部140を介して、車載ネットワークに接続された他の電子装置200から各種の情報を取得する。情報取得部111は、車両10の周辺の物体に関する情報を周辺監視装置201から取得し、ドライバの状態に関する情報をドライバ監視装置202から取得する。情報取得部111は、さらに、車両10自体に関する情報を車両監視装置203から取得し、ドライバに提供されるコンテンツに関する情報を車載情報装置204から取得する。
【0019】
情報取得部111は、さらに、外部通信部120を介して、サーバ装置20から各種の情報を取得する。情報取得部111は、サーバ装置20からドライバの特性に関する情報、車両10の位置周辺の気象に関する情報、車両10の位置周辺の道路に関する情報、及び、車両10の位置周辺の渋滞に関する情報などを取得する。なお、情報取得部111は、サーバ装置20以外のネットワーク30に接続された通信装置から、これらの情報の一部を取得してもよい。
【0020】
情報送信部112は、情報取得部111が取得した情報を、定期的(例えば、10分毎)に外部通信部120を介してサーバ装置20に送信する。情報送信部112は、車両10のドライバの識別情報と関連付けて情報を送信する。これにより過去の運転中におけるドライバに関する様々な情報が、サーバ装置20において蓄積される。例えば、運転中における平均的な車間距離、運転中の操作部材の操作内容、運転中の事象に対応したタイミング、及び、運転中に選択したコンテンツの種類などの情報がサーバ装置20において蓄積される。サーバ装置20は、このように蓄積した情報に基づいて、ドライバの安全運転度、反応時間、及び、嗜好(ドライバが好むコンテンツの種類)などを判断し、その判断結果をドライバの特性に関する情報としてドライバの識別情報と関連付けて記憶する。
【0021】
算出部114は、情報取得部111が取得した情報に基づいて、現時点における運転状態に応じたパラメータを導出する。算出部114は、ドライバの運転スキルや身体的負荷に基づくパラメータである「負荷許容量」、ドライバが運転している環境などに基づくパラメータである「危険度」、「負荷許容量」及び「危険度」に基づくパラメータである「余裕度」を算出する。「余裕度」は、現時点におけるドライバの状態に応じたパラメータである。
【0022】
また、状態報知部116は、導出された余裕度及び危険度に基づいて、現時点における運転状態をドライバに報知する。状態報知部116は、負荷許容量、余裕度、危険度等に応じた画像を生成し、当該画像をディスプレイ160に表示させる。
【0023】
外部通信部120は、LTE、WiMAX、無線LANなどの無線通信規格を利用した通信機能を備えており、ネットワーク30を介して通信を行う。通知装置100は、外部通信部120により、サーバ装置20との間で情報の送受信を行うことが可能となる。な
お、外部通信部120は、特定のサーバ装置10のみならず、ネットワーク30に接続された他の通信装置からも情報を取得できる。
【0024】
情報出力部130は、画像信号をディスプレイ160に送信し、ドライバや同乗者に報知する情報に係る画像をディスプレイ160に表示させる。また、情報出力部130は、音声信号をスピーカ170に送信し、ドライバや同乗者に報知する情報に係る音声をスピーカ170に出力させる。
【0025】
車内通信部140は、CANなどの車載ネットワークに接続され、車両10に設けられる他の電子装置200と通信を行う。車内通信部33は、車載ネットワークを介して、これらの電子装置200から情報を含む信号を受信するとともに、これらの電子装置200に信号を送信する。
【0026】
記憶部150は、通知装置100の動作に必要な各種の情報を記憶する。記憶部150は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置である。記憶部150は、制御用のプログラムを記憶している。当該プログラムは、メモリカードなどの記録媒体からの読み出しにより取得され、記憶部150に予め記憶される。なお、当該プログラムは、ネットワーク30に接続された通信装置からダウンロードするなど、他の手法で取得されてもよい。
【0027】
ディスプレイ160は、液晶ディスプレイパネル、有機Electro-Luminescence(EL)パネル等の表示装置である。図形、文字を含む各種の画像を表示可能である。ディスプレイ160は、例えば、Center Information Display(CID)やRear Seat Entertainment(RSE)等であり、ドライバまたは同乗者が車両10内で容易に視認できる位置に配
置される。これにより、ディスプレイ160は、車両10のドライバや同乗者に情報を提供する。
【0028】
スピーカ170は、車両10の車室内の適位置に設けられ、各種の音声を車両10の車室内に出力する。これによりスピーカ170は、車両10のドライバや同乗者に情報を提供する。
【0029】
周辺監視装置201は、車両10の周辺を監視して、車両10の周辺の物体(他車両等)に関する情報を取得する装置である。周辺監視装置201は、車両10の前方及び後方の他車両の位置を検出するレーダ、車両10の周辺の画像を取得する車載カメラ、及び、車両10の近傍に存在する物体を検出するクリアランスソナーなどを含む。
【0030】
ドライバ監視装置202は、車両10のドライバを監視して、ドライバの状態に関する情報を取得する装置である。ドライバ監視装置202は、ドライバの画像を取得する車内カメラ、及び、ドライバの生体情報を検出する生体センサなどを含む。ドライバ監視装置202は、車内カメラが取得したドライバの画像などから、例えば、ドライバの身体の動き、表情、視線方向、瞳孔などの情報を取得する。生体センサは、例えば、ドライバと直接的に接触するステアリングホイールなどの部位に配置される。生体センサは、例えば、心拍数、発汗量、心電図、血圧、脳波、及び、体温などの各種の生体情報を取得できる。
【0031】
車両監視装置203は、車両10自体を監視して、車両10自体に関する情報を取得する装置である。車両監視装置203は、車両10の位置を取得する位置センサ、車両10の速度を取得する車速センサ、車両10にかかる加速度を検出する加速度センサを含む。車両監視装置203は、さらに、車両10の操作部材(アクセル、ブレーキ及びステアリングホイールなど)の操作内容及び操作量を検出する操作センサ、車両10の運転時間を計時する計時装置などを含む。
【0032】
車載情報装置204は、ドライバが各種の情報を受け取るHuman Machine Interface(
HMI)となる装置である。車載情報装置204は、TVやラジオの放送波を受信して映像や音声をドライバに提供する放送受信装置、記録媒体やデータに基づいて映像や音声をドライバに提供する再生装置、及び、目的地までのルートをドライバに案内するナビゲーション装置などを含む。放送受信装置及び再生装置は、ニュース、ドラマ及び音楽など、運転に直接的に関係のないエンターテイメント系のコンテンツをドライバに提供する。
【0033】
操作補助装置205は、ドライバの操作に介入してドライバの操作を補助する装置である。操作補助装置205は、周辺監視装置201が取得した情報に基づいて自動的にブレーキを作動する自動ブレーキ装置、及び、車両10の速度を自動的に維持するクルーズコントロール装置などを含む。
【0034】
<動作例>
(負荷許容量、危険度、余裕度の算出)
ここでは、算出部114が、負荷許容量、危険度、余裕度を算出する手法について説明する。負荷許容量は、ドライバの運転スキルや身体的負荷に基づくパラメータである負荷許容量である。危険度は、ドライバが運転している環境などに基づくパラメータである。危険度は、現時点において事故が発生する可能性の程度に応じたパラメータであるともいえる。余裕度は、現時点におけるドライバの状態に応じたパラメータである。余裕度は、ドライバが現時点において自分にかかる負荷の量に対してどれだけ余裕があるかの程度を示すパラメータである。負荷許容量、危険度、余裕度は、ここに記載した方法に限定されず、他の方法によって算出されてもよい。
【0035】
図3は、算出部114が負荷許容量A1を算出する手法を示す図である。負荷許容量A1は、現時点においてドライバが許容可能な負荷の量を示すパラメータである。負荷許容量A1は、0以上100以下の値をとるように正規化されている。
【0036】
負荷許容量A1は、運転スキル値B1、漫然度B2、眠気度B3、イライラ度B4及び疲労度B5に基づき、次の式(1)によって導出される。
【0037】
A1=B1-(B2+B3+B4+B5) … (1)
運転スキル値B1は、ドライバの運転能力を示す値である。一般に、ドライバの運転能力が高いほど、運転中においてドライバが許容可能な負荷の量は大きくなる。そして、この運転スキル値B1から、現時点における運転能力を阻害する要素の程度を示す値(漫然度B2、眠気度B3、イライラ度B4及び疲労度B5)を減算することによって、負荷許容量A1が導出される。したがって、ドライバの運転能力が高いほど負荷許容量A1は高くなる。また、運転能力を阻害する要素の程度が高いほど負荷許容量A1は低くなる。
【0038】
運転スキル値B1は、安全運転度、及び、反応時間などのドライバ情報D1に基づいて導出される。このドライバ情報D1は、サーバ装置20から得られる。安全運転度は、ドライバが運転する場合の安全性の程度を示す値であり、蓄積された過去のドライバに関する情報(車間距離等)に基づいてサーバ装置20に導出される。反応時間は、ドライバが事象に対して反応するまでの時間を示す値であり、蓄積された過去のドライバに関する情報に基づいてサーバ装置20に導出される。運転スキル値B1は、ドライバの運転スキルの例である。
【0039】
漫然度B2は、現時点におけるドライバの漫然としている程度を示す値である。また、眠気度B3は、現時点におけるドライバの眠気の程度を示す値である。漫然度B2及び眠気度B3は、心拍数、発汗量、心電図、血圧、脳波、及び、体温などの生体情報D2に基
づいて導出される。この生体情報D2は、ドライバ監視装置202の生体センサから得られる。
【0040】
イライラ度B4は、現時点におけるドライバのイライラしている程度を示す値である。イライラ度B4は、生体情報D2に加えて、他車情報D3を考慮して導出される。他車情報D3は、車両10の周辺の他車両に関する情報であり、後方車間距離、及び、渋滞レベルなどを含む。後方車間距離は、車両10の後方を走行する他車両の車間距離であり、周辺監視装置201のレーダから得られる。また、渋滞レベルは、車両10の位置周辺の渋滞の程度を示す値であり、サーバ装置20から得られる。
【0041】
疲労度B5は、現時点におけるドライバの疲労の程度を示す値である。疲労度B5は、運転時間、及び、累積操作量などの自車情報D4に基づいて導出される。運転時間は、例えば、イグニッションスイッチONからの経過時間であり、車両監視装置203の計時装置から得られる。また、累積操作量は、ドライバが運転開始してからの累積の操作部材の操作量であり、車両監視装置203の操作センサが検出した操作量を時間積分することで得られる。
【0042】
漠然度B2、眠気度B3、イライラ度B4、疲労度B5は、ドライバの身体的負荷の例である。
【0043】
図4は、算出部114が危険度A2を算出する手法を示す図である。
図4に示すように、危険度A2は、潜在的危険度E1と、顕在的危険度E2と、脇見危険度E3、操作負荷量E4、HMI負荷量E5、視程負荷量E6とに基づき、次の式(2)によって導出される。
【0044】
A2=E1+E2+E3+E4+E5+E6 … (2)
すなわち、危険度A2は、現時点における6種類の危険度合に応じたパラメータ(潜在的危険度E1、顕在的危険度E2、脇見危険度E3、操作負荷量E4、HMI負荷量E5、視程負荷量E6)を加算することで導出される。危険度A2も、0以上100以下の値をとるように正規化されている。
【0045】
潜在的危険度E1は、車両10の単体での走行に起因する危険度合に応じたパラメータであり、車両10の周囲の物体とは無関係なパラメータである。潜在的危険度E1は、地点事故率などの地点情報G1と、自車速度及び自車加速度などの自車情報G2とに基づいて導出される。地点事故率は、車両10の位置周辺の道路における事故率である。また、自車速度は現時点における車両10の速度であり、自車加速度は現時点における車両10の加速度である。地点情報G1はサーバ装置20から得られ、自車情報G2は車両監視装置203から得られる。
【0046】
顕在的危険度E2は、車両10と周囲の物体との関係に起因する危険度合に応じたパラメータである。顕在的危険度E2は、評価指標F1と路面摩擦係数F2とに基づいて導出される。
【0047】
評価指標F1は、Time To Collision(TTC)及びStopping Distance(SD)など、一般的に用いられる、前方障害物との衝突の危険度を評価するための指標である。評価指標F1は、自車情報G2と他車情報G3とに基づいて導出される。他車情報G3は、車両10の前方を走行する他車両に関する相対速度、車間距離、及び、横位置などを含む。他車情報G3は、周辺監視装置201のレーダから得られる。
【0048】
また、路面摩擦係数F2は、車両10が走行する道路の摩擦係数(μ)である。路面摩
擦係数F2は、天候、及び、外気温などの気象情報G4に基づいて導出される。天候は車両10の位置周辺の天気(晴、雨及び曇など)であり、外気温は車両10の位置周辺の気温である。気象情報G4は、サーバ装置20から得られる。
【0049】
脇見危険度E3は、ドライバの脇見に起因する危険度合に応じたパラメータである。脇見危険度E3は、ドライバの視線方向及び顔方向などの視線情報G5に基づいて導出される。視線情報G5は、ドライバ監視装置202の車内カメラで得られたドライバの画像に基づいて取得される。
【0050】
操作負荷量E4は、ドライバが車両10の操作部材(アクセル、ブレーキ及びステアリングホイールなど)を操作することによって生じる負荷の量である。操作負荷量E4は、操作部材の操作量などの操作情報G6に基づいて導出される。操作情報G6は、車両監視装置203の操作センサから得られる。
【0051】
HMI負荷量E5は、ドライバがHMI(車載情報装置204など)から情報を受け取ることによって生じる負荷の量である。HMI負荷量E5は、コンテンツ種別、及び、情報提供量などのHMI情報G7に基づいて導出される。コンテンツ種別は、ドライバに提供されるコンテンツ(ニュース、ドラマ及び音楽など)の種類である。情報提供量は、ドライバに提供されるコンテンツなどの情報の量である。HMI情報G7は、車載情報装置204から得られる。なお、HMI負荷量E5を導出する際に、ドライバと同乗者との会話、あるいは、ドライバの電話での会話などにおける会話量や会話内容をさらに考慮してもよい。
【0052】
HMI負荷量E5の算出の際、算出部114は、HMI情報G7に含まれるコンテンツ種別(現時点においてドライバに提供されるコンテンツの種類)が、ドライバの嗜好に合致するか否かを判定する。ドライバの嗜好を示す情報は、情報取得部111が、他の情報とともにサーバ装置20から取得され得る。コンテンツ種別がドライバの嗜好に合致する場合は、通常の状態と比較して、ドライバの意識がコンテンツに向けられることになる。このため、ドライバがHMIから情報を受け取ることによって生じる負荷の量であるHMI負荷量C2は、通常の状態と比較して大きくなる。よって、コンテンツ種別がドライバの嗜好に合致する場合は、算出部114は、HMI負荷量E2を増加させる。算出部114は、HMI負荷量E5に1以上の係数を乗算した結果を新たなHMI負荷量E5とする。乗算する係数は、コンテンツ種別とドライバの嗜好との合致度、あるいは、当該コンテンツ種別におけるドライバの嗜好の強さなどに応じた値にすることが望ましい。算出部114は、ドライバに提供されるコンテンツが該ドライバの嗜好に合うか否かを判定することで、危険度A2をより正確に算出できる。
【0053】
視程負荷量E6は、ドライバの視程(肉眼で物体が確認できる距離)によって生じる負荷の量である。視程負荷量E6は、車両10の外部での視程が短い(ドライバの視界が悪い)ほど高くなる。視程負荷量E6は、天候、及び、照度などの気象情報G4に基づいて導出される。天候は車両10の位置周辺の天気(晴、雨及び曇など)であり、照度は車両10の位置周辺の明るさである。気象情報G4は、サーバ装置20から得られる。
【0054】
潜在的危険度E1、顕在的危険度E2、脇見危険度E3、操作負荷量E4、HMI負荷量E5、視程負荷量E6は、ドライバが運転する環境の例である。
【0055】
算出部114は、余裕度V1を、負荷許容量A1と、危険度A2とに基づき、次の式(3)によって算出する。
【0056】
V1=A1-A2 … (3)
すなわち、余裕度V1は、負荷許容量A1から危険度A2を減算した値となる。危険度A2が負荷許容量A1を上回る場合は、余裕度V1がマイナスの値とならずに「0」とされる。よって、余裕度V1は、0以上100以下の値をとる。
【0057】
(負荷許容量、危険度、余裕度の表示)
状態報知部116は、算出された負荷許容度、危険度、余裕度に応じた図形を生成し、当該図形を、情報出力部130を介して、ディスプレイ160に表示させる。以下、状態報知部116の処理について説明する。
【0058】
図5は、負荷許容量、危険度、余裕度を示す図形がディスプレイ160に表示されている例1を示す図である。
図5の例では、左右に2つの図形の例が示されている。ディスプレイ160には、いずれか1つの図形が表示される。
図5の左側の図形、右側の図形ともに、外枠の長方形が負荷許容量、下の長方形が危険度、上の長方形が余裕度を示す。また、各長方形の面積が各パラメータ(負荷許容量、危険度、余裕度)の大きさを示す。
図5の左側の図形では、負荷許容量A1が100、危険度A2が70、余裕度V1が30である。
図5の右側の図形では、負荷許容量A1が80、危険度A2が70、余裕度V1が10である。ドライバや同乗者は、外枠の図形の大きさ(面積)で負荷許容量を、下の図形の大きさで危険度を、上の図形の大きさで余裕度を容易に認識することができる。これにより、ドライバや同乗者は、ドライバの運転状態を認識できる。
図5において、左側の図形と右側の図形とで、危険度は同じであるが、負荷許容量が右側の方が小さいことで、余裕度も右側の方が小さくなっている。ドライバや同乗者は、ドライバの余裕度が小さくなっていることを認識できる。また、余裕度V1の値が所定値以下(例えば、10以下、負荷許容量A1の10%以下)である場合に、危険度や余裕度の図形の模様、色彩などを変化させてもよい。ドライバや同乗者は、図形の模様や色彩の変化により、より容易に、ドライバの余裕度が小さくなっていることを認識できる。
【0059】
図6は、負荷許容量、危険度、余裕度を示す図形がディスプレイ160に表示されている例2を示す図である。
図6の例では、
図5と同様に、左右に2つの図形の例が示されている。ディスプレイ160には、いずれか1つの図形が表示される。
図6の左側の図形、右側の図形ともに、外枠の台形が負荷許容量、下の台形が危険度、上の台形が余裕度を示す。ここでは、外枠の台形は、液体を入れられるコップを示す形状である。また、下の台形は、当該コップに入れられた液体を示す形状である。また、上の台形は、当該コップにおいて液体を入れられてない部分を示す形状である。また、台形の大きさが各パラメータ(負荷許容量、危険度、余裕度)の大きさを示す。
図6の左側の図形では、負荷許容量A1が100、危険度A2が70、余裕度V1が30である。
図6の右側の図形では、負荷許容量A1が80、危険度A2が70、余裕度V1が10である。ドライバや同乗者は、外枠の図形の大きさで負荷許容量を、下の図形の大きさで危険度を、上の図形の大きさで余裕度を容易に認識することができる。これにより、ドライバや同乗者は、ドライバの運転状態を認識できる。
図6において、左側の図形と右側の図形とで、危険度は同じであるが、負荷許容量が右側の方が小さいことで、余裕度も右側の方が小さくなっている。ドライバや同乗者は、ドライバの余裕度が小さくなっていることを認識できる。また、ドライバや同乗者は、
図6の図形のコップの中の液体がコップの上端まで達していないことを確認することで、ドライバの余裕度が0でないことを容易に認識できる。また、余裕度が0の場合には、余裕度の図形がなくなる。このとき、ドライバや同乗者は、余裕度に対応する図形が表示されないことで、ドライバの余裕度が0であることを容易に認識できる。また、余裕度が0の場合に、コップの図形の近傍に、コップから液体があふれることを示す図形(水滴など)が表示されてもよい。また、余裕度V1の値が所定値以下である場合に、危険度や余裕度の図形の模様、色彩などを変化させてもよい。ドライバや同乗者は、図形の模様や色彩の変化により、より容易に、ドライバの余裕度が小さくなっていることを認識できる。
【0060】
状態報知部116が生成する負荷許容度、危険度、余裕度に応じた図形は、ここに記載したものに限定されず、他の形状、模様、色彩等が採用されてもよい。
【0061】
通知装置100の動作中においては、状態報知部116は、現時点における余裕度V1、危険度A2及び負荷許容量A1をリアルタイムに反映した図形を生成し、当該図形を含む画像をディスプレイ160に表示させる処理を繰り返す。ドライバの運転中においては、このような図形がディスプレイ160に常時に表示されるようにしてもよい。ドライバや同乗者は、現時点における余裕度V1、危険度A2及び負荷許容量A1を直感的に把握できる。ドライバや同乗者は、表示された当該図形を意識しながら緊張感を持って運転することができ、車両10を安全に運転することができる。また、状態報知部116は、余裕度V1の値が所定値以下である場合に、所定の警告音を、情報出力部130を介してスピーカ170から出力させてもよい。余裕度V1の値が所定値以下である場合、ドライバの余裕が少なく、かつ、事故が発生する可能性が高い運転状態である。このため、通知装置100は、警告音をスピーカ170から出力させることで、ドライバや同乗者に、現時点における運転状態が比較的危険な状態であることを、認識させることができる。また、通知装置100は、警告音を出力する代わりに、車両10の室内灯を点灯または点滅させる、室内灯の点灯の色を変えることにより、通知してもよい。また、通知装置100は、警告音を出力する代わりに、「今は運転に集中してください」などのドライバに運転への集中を促す音声を出力してもよい。当該音声は、「ドライバに話しかけないでください」等の同乗者がドライバに話しかけるべきでないタイミングを通知する音声、「同乗者に話さないでください」等のドライバが同乗者に話しかけるべきでないタイミングを通知する音声等であってもよい。これらの音声は、余裕度が低いことを通知する音声の例である。また、通知装置100は、「ドライバに話しかけないでください」等のドライバに話しかけるべきでないタイミングを通知する文字情報を、ディスプレイ160に表示してもよい。また、通知装置100は、ドライバの余裕度が低く会話する余裕がないことを同乗者に知らせる通知をディスプレイ160に表示してもよい。また、通知装置100は、警告音を出力するとともにこれらのいずれかを行ってもよい。これにより、ドライバや同乗者は、ドライバの余裕度が低いことを容易に認識することができる。
【0062】
(通知装置の動作)
図7は、通知装置100の動作フローの例を示す図である。通知装置100が起動すると、まず、情報取得部111が車両10のドライバを特定して、ドライバの識別情報を得る。情報取得部111は、例えば、ドライバ監視装置202の車内カメラが取得したドライバの画像に基づいて、ドライバを特定することができる。なお、車両10がICカード等を用いた個人認証や生体認証などを行う認証装置を備えている場合は、その認証装置の結果を用いてドライバを特定してもよい。通知装置100は、このようにドライバを特定した後、
図7に示す動作を所定の周期(例えば、1秒周期)で繰り返す。
【0063】
S101では、情報取得部111は、負荷許容量A1、危険度A2、余裕度V1の導出に使用する各種の情報を取得する。情報取得部111は、車載ネットワークに接続された他の電子装置50、及び、ネットワーク30に接続されたサーバ装置20などから、情報を取得する。情報取得部111は、サーバ装置20から情報を取得する際に、サーバ装置20に要求信号を送信する。この要求信号には、車両10のドライバの識別情報、及び、現時点における車両10の位置などが含まれる。これにより、情報取得部111は、ドライバ情報D1、生体情報D2、他車情報D3、自社情報D4、地点情報G1、自社情報G2、他車情報G3、気象情報G4、視線情報G5、操作情報G6、HMI情報G7を取得する。
【0064】
S102では、算出部114は、ドライバ情報D1、生体情報D2、他車情報D3及び
自車情報D4に基づいて、負荷許容量A1を算出する。
【0065】
S103では、、地点情報G1、自車情報G2、他車情報G3、気象情報G4、視線情報G5、操作情報G6、HMI情報G7に基づいて、危険度A2を導出する。
【0066】
S104では、算出部114は、負荷許容量A1から危険度A2を減算した値を余裕度V1として算出する。ここで、算出部114は、負荷許容量A1から危険度A2を減算した値が負である場合、余裕度V1を0とする。
【0067】
S105では、状態報知部116が、算出された負荷許容量A1、危険度A2、余裕度V1に基づいて、これらのパラメータを反映した図形を生成する。状態報知部116は、図形を含む画像を情報出力部130を介してディスプレイ160に表示させる。状態報知部116は、余裕度V1の値が所定値以下(例えば、10以下)である場合に、所定の警告音を、情報出力部130を介してスピーカ170から出力させてもよい。
【0068】
図7に示す動作は、通知装置100の動作中(例えば、イグニッションスイッチのONからOFFまで)において所定の周期で繰り返される。これにより、現時点における余裕度V1、危険度A2及び負荷許容量A1をリアルタイムに反映した図形がディスプレイ160に表示されることになる。通知装置100は、当該図形を、常時表示されるようにしてもよい。
【0069】
(実施形態の作用、効果)
通知装置100は、ドライバの運転スキルや身体的負荷に基づく負荷許容量、ドライバが運転している環境に基づく危険度、ドライバが現時点において自分にかかる負荷の量に対してどれだけ余裕があるかの程度を示す余裕度を算出する。通知装置100は、算出した負荷許容量、危険度、余裕度の大きさに基づく図形を生成し、車両10内のCIDやRSEなどのディスプレイ160に表示する。ドライバや同乗者は、負荷許容量、危険度、余裕度を可視化したディスプレイ160の表示、音声などにより、現時点におけるドライバの負荷許容量、危険度、余裕度を把握できる。同乗者は、余裕度が低いときに、ドライバに話しかけるのを避けることで、ドライバが運転に集中でき、交通事故を誘発する状況を減少させることができる。また、ドライバは、表示された図形を意識しながら運転することで、車両10を安全に運転することができる。
【0070】
開示の構成は、上記の実施形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。上記の実施形態は、適宜、可能な限り組み合わせて実施することができる。
【0071】
<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0072】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスク、ROM(リードオンリーメモリ)等がある。さらに、SSD(Solid State Drive)は、コンピュータ等から取り外し可能な記録媒体としても、コンピュータ
等に固定された記録媒体としても利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 車両
20 サーバ装置
30 ネットワーク
100 通知装置
110 制御部
111 情報取得部
112 情報送信部
114 算出部
116 状態報知部
120 外部通信部
130 情報出力部
140 車内通信部
150 記憶部
160 ディスプレイ
170 スピーカ
200 電子装置
201 周辺監視装置
202 ドライバ監視装置
203 車両監視装置
204 車載情報装置
205 操作補助装置