(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125128
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】体温調節服及び体温調節システム
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20230831BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20230831BHJP
A41D 1/04 20060101ALI20230831BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20230831BHJP
【FI】
A41D13/005
A41D13/00 112
A41D1/04 D
A41D1/00 E
A41D1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029084
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】591240984
【氏名又は名称】株式会社鎌倉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 威史
(72)【発明者】
【氏名】大内 敬裕
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
3B031
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
3B011AC21
3B030AA01
3B030AB05
3B030AB06
3B030AB08
3B031AA01
3B031AB14
3B031AC16
(57)【要約】
【課題】着用者の身体にフィットするようにサイズ調整可能として、より安定した体温調節機能を確保することができる体温調節服を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る体温調節服は、衣服本体と、上記衣服本体の着脱用の第1の締結機構と、第2の締結機構とを具備する。上記体温調節服は、所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する。上記衣服本体は、上記液体が流れる第1の通路をそれぞれ内部に含む左前身頃部および右前身頃部を有し上記着用者の胴体を覆う。上記第1の締結機構は、上記左前身頃部と上記右前身頃部との間を分離可能に締結する。上記第2の締結機構は、上記衣服本体に一体的に又は分離可能に取り付けられ上記衣服本体を第1の身幅から第2の身幅へ拡張させることが可能な拡幅部材を有し、上記拡幅部材と上記第1の締結機構の少なくとも一部との間を分離可能に締結する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する体温調節服であって、
前記液体が流れる第1の通路をそれぞれ内部に含む左前身頃部および右前身頃部を有し前記着用者の胴体を覆う衣服本体と、
前記左前身頃部と前記右前身頃部との間を分離可能に締結する、前記衣服本体の着脱用の第1の締結機構と、
前記衣服本体に一体的に又は分離可能に取り付けられ前記衣服本体を第1の身幅から第2の身幅へ拡張させることが可能な拡幅部材を有し、前記拡幅部材と前記第1の締結機構の少なくとも一部との間を分離可能に締結する第2の締結機構と
を具備する体温調節服。
【請求項2】
請求項1に記載の体温調節服であって、
前記衣服本体は、前記液体が流れる第2の通路をそれぞれ内部に含むと共に前記着用者の首を覆う左襟部および右襟部をさらに有し、前記第1の締結機構は、前記左襟部および前記右襟部を分離可能に締結する
体温調節服。
【請求項3】
請求項2に記載の体温調節服であって、
前記拡幅部材は、第1の幅を有し前記左前身頃部と前記右前身頃部との間を接続可能な第1の領域と、前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し前記左襟部と前記右襟部との間を接続可能な第2の領域とを有する
体温調節服。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の体温調節服であって、
前記第1の締結機構は、前記左前身頃部に配置された第1の務歯列と、前記右前身頃部に配置され前記第1の務歯列と締結されることが可能な第2の務歯列とを有し、
前記第2の締結機構は、前記拡幅部材の幅方向の少なくとも一方の端部に配置され前記第1の務歯列および/または前記第2の務歯列と締結されることが可能な第3の務歯列を有する
体温調節服。
【請求項5】
請求項4に記載の体温調節服であって、
前記第3の務歯列は、前記拡幅部材の幅方向の両端部にそれぞれ配置され、一方の前記第3の務歯列は前記第1の務歯列に、他方の前記第3の務歯列は前記第2の務歯列にそれぞれ締結されることが可能に構成される
体温調節服。
【請求項6】
請求項4に記載の体温調節服であって、
前記拡幅部材は、その幅方向の一端部が前記右前身頃部に固定され、前記第3の務歯列は前記第1の務歯列に締結されることが可能に構成される
体温調節服。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の体温調節服であって、
前記拡幅部材は、蓄冷剤又は蓄熱剤を収容可能な単数または複数の収容部を有する
体温調節服。
【請求項8】
着用者の体温を調節することが
可能な体温調節服と、
前記体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置と
を具備し、
前記体温調節服は、
前記液体が流れる第1の通路をそれぞれ内部に含む左前身頃部および右前身頃部を有し前記着用者の胴体を覆う衣服本体と、
前記左前身頃部と前記右前身頃部との間を分離可能に締結する、前記衣服本体の着脱用の第1の締結機構と、
前記衣服本体に一体的に又は分離可能に取り付けられ前記衣服本体を第1の身幅から第2の身幅へ拡張させることが可能な拡幅部材を有し、前記拡幅部材と前記第1の締結機構の少なくとも一部との間を分離可能に締結する第2の締結機構と
を有する体温調節システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に着用者の体温を調節する液体が流通可能な体温調節服及び体温調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温あるいは低温の作業環境にある屋内や、夏季あるいは冬季における屋外での作業での快適性を高めるため、冷却または加熱された流体を着用者の身体近傍に流通させることによって着用者の体温調節を行う体温調節服の開発が進められている。
【0003】
サイズ調整可能な服として、特許文献1には、両脇部分にサイズ調整するためのファスナが設けられた衣服が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記流体から体温調節服の着用者への熱交換は、主に熱伝導によるものである。従って、体温調節服が着用者に如何にフィットして密着できているかが重要となる。このように、より安定した体温調節機能を確保するために着用者の身体に無理なくフィットするようにサイズ調整可能な体温調節服が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、着用者の身体にフィットするようにサイズ調整可能として、より安定した体温調節機能を確保することができる体温調節服及び体温調節システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る体温調節服は、衣服本体と、上記衣服本体の着脱用の第1の締結機構と、第2の締結機構とを具備する。
上記体温調節服は、所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する。
上記衣服本体は、上記液体が流れる第1の通路をそれぞれ内部に含む左前身頃部および右前身頃部を有し上記着用者の胴体を覆う。
上記第1の締結機構は、上記左前身頃部と上記右前身頃部との間を分離可能に締結する。
上記第2の締結機構は、上記衣服本体に一体的に又は分離可能に取り付けられ上記衣服本体を第1の身幅から第2の身幅へ拡張させることが可能な拡幅部材を有し、上記拡幅部材と上記第1の締結機構の少なくとも一部との間を分離可能に締結する。
【0008】
このように、拡幅部材が設けられ、左前身頃部と右前身頃部との間が分離可能に構成されることで、着脱及びサイズ調整が容易な利便性の高い体温調節服とすることができる。
加えて、体温調節服において、上体正面(前側)に拡幅部材及び締結機構が位置することで、脇の下を含む身体の両脇に対応して第1の通路を配策することが可能となる。脇の下には腋窩動脈が通っており、脇の下を冷却することで熱中症予防に効果的であり、また、脇の下を温めることで全身が温まりやすくなり、脇の下は、効果的な体温調節機能の実現に重要な身体部位である。このような身体部位に対応して第1の通路を配策することで、安定した体温調節機能を確保しつつ、サイズ調整及び着脱が容易な利便性の高い体温調節服とすることができる。
【0009】
上記衣服本体は、上記液体が流れる第2の通路をそれぞれ内部に含むと共に上記着用者の首を覆う左襟部および右襟部をさらに有し、上記第1の締結機構は、上記左襟部および上記右襟部を分離可能に締結してもよい。
【0010】
このように、首を覆う左襟部及び右襟部を設け、これらの襟部に第2の通路を設けることで、冷却によって熱中症を効果的に防止する、加温によって身体全体を温めるといった効果を与えることが可能な身体部位である首の横を、第2の通路により確実に冷却又は加温することができ、体温調節機能がより向上した体温調節服とすることができる。
【0011】
上記拡幅部材は、第1の幅を有し上記左前身頃部と上記右前身頃部との間を接続可能な第1の領域と、上記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し上記左襟部と上記右襟部との間を接続可能な第2の領域とを有してもよい。
【0012】
このような構成によれば、首の正面に拡幅部材及び締結機構が位置するように構成される。このため、身幅拡張前及び拡幅部材を用いた身幅拡張後のいずれの体温調節服の着用パターンにおいても、冷却によって熱中症を効果的に防止する、また、加温によって身体全体を温めるといった効果を効果的に与えることが可能な身体部位である首の横は、第2の通路により確実に冷却又は加温される。従って、拡幅部材の襟部に第2の通路を配策することなく、安定した体温調節機能を確保しつつ、サイズ調整が容易な利便性の高い体温調節服とすることができる。
更に、襟部として機能する拡幅部材の第2の領域の第2の幅が、身頃部(胴部)として機能する第1の領域の第1の幅よりも小さいことで、襟部の上部と着用の首との隙間がより生じにくくなり、隙間が生じることによる首回りでの冷却機能や加温機能の低下を効果的に抑制することができる。
【0013】
上記第1の締結機構は、上記左前身頃部に配置された第1の務歯列と、上記右前身頃部に配置され上記第1の務歯列と締結されることが可能な第2の務歯列とを有し、
上記第2の締結機構は、上記拡幅部材の幅方向の少なくとも一方の端部に配置され上記第1の務歯列および/または上記第2の務歯列と締結されることが可能な第3の務歯列を有してもよい。
このように、締結機構が務歯列を用いて構成されてもよい。
【0014】
上記第3の務歯列は、上記拡幅部材の幅方向の両端部にそれぞれ配置され、一方の上記第3の務歯列は上記第1の務歯列に、他方の上記第3の務歯列は上記第2の務歯列にそれぞれ締結されることが可能に構成されてもよい。
このように、拡幅部材の幅方向の両端部に務歯列が配置され、衣服本体に拡幅部材が分離可能に構成されてもよい。
【0015】
上記拡幅部材は、その幅方向の一端部が上記右前身頃部に固定され、上記第3の務歯列は上記第1の務歯列に締結されることが可能に構成されてもよい。
このように、拡幅部材が衣服本体に一体的に取り付けられてもよい。
【0016】
上記拡幅部材は、蓄冷剤又は蓄熱剤を収容可能な単数または複数の収容部を有してもよい。
このような構成によれば、身幅拡張後の体温調節服においても、拡幅部材が位置する領域で蓄冷剤により着用者の身体の冷却が可能となる。
【0017】
本発明の一形態に係る体温調節システムは、着用者の体温を調節することが可能な体温調節服と、上記体温調節服の内部を循環する流体の温度を調節する流体温度調節装置とを具備する。
上記体温調節服は、衣服本体と、上記衣服本体の着脱用の第1の締結機構と、第2の締結機構とを有する。
上記衣服本体は、上記液体が流れる第1の通路をそれぞれ内部に含む左前身頃部および右前身頃部を有し上記着用者の胴体を覆う。
上記第1の締結機構は、上記左前身頃部と上記右前身頃部との間を分離可能に締結する。
上記第2の締結機構は、上記衣服本体に一体的に又は分離可能に取り付けられ上記衣服本体を第1の身幅から第2の身幅へ拡張させることが可能な拡幅部材を有し、上記拡幅部材と上記第1の締結機構の少なくとも一部との間を分離可能に締結する。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、着用者の身体に無理なくフィットするようにサイズ調整可能な体温調節服とすることができ、より安定した体温調節機能を有するものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1及び第2の実施形態に係る体温調節システムの使用例を示す着用者の側面図であり、チューブ経路(循環通路の経路)がわかりやすい様に内部の循環通路を可視化した図である。
【
図3】上記体温調節システムの一部を構成する第1実施形態の体温調節服の正面図である。
【
図4】(A)は身幅拡張前の体温調節服の着用パターンを示し、(B)は身幅拡張後の体温調節服の着用パターンを示す。
【
図5】第1実施形態の体温調節服の一部を構成する拡幅部材を裏面側から見た平面図である。
【
図6】上記体温調節システムの一部を構成する第2実施形態の体温調節服の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る体温調節システム1の使用例を示す着用者の側面図である。
図2は、体温調節システム1の概略構成図である。
図2において、体温調節システム1の一部を構成する体温調節服は、該体温調節服を正面からみた図であり、前身頃及び襟の前側(着用者における前側)の内部に設けられる循環通路を破線で示している。
図3は、体温調節システム1の一部を構成する体温調節服10の正面図である。体温調節服10は、後述する拡幅部材5を用いて身幅を拡張することができサイズ調整が可能なものとなっている。
図4(A)は身幅拡張前の体温調節服10の着用パターンを示し、
図4(B)は身幅拡張後の体温調節服10の着用パターンを示す。
図5は、体温調節服10の一部を構成する拡幅部材5を裏面側から見た平面図である。
体温調節服10は、該体温調節服10を着用したときの、着用者Uの上下方向、左右方向及び前後方向を有する。左右方向は、体温調節服10の幅方向に対応する。
本明細書において、体温調節服10を着用したときに、体温調節服10の着用者Uの肌に近い側の面を裏面といい、その反対の側の面を表面という。
本明細書において、左右方向(幅方向)における長さを「横幅」ということがある。
【0022】
[体温調節システム]
図1に示すように、本実施形態の体温調節システム1は、体温調節服10と、流体温度調節装置200とを備える。
体温調節服10は、着用者Uが着用可能な適宜の形態の衣服であって、着用者Uの体温を調節(冷却又は加温)することが可能な流体(本例では、水)の循環通路を有する。
流体温度調節装置200は、体温調節服10の内部を循環する流体の温度を調節する冷熱回路を内蔵する。着用者Uは特に限定されず、典型的には、溶接現場や土木現場等の作業従事者が該当する。
【0023】
本実施形態の体温調節システム1においては、流体温度調節装置200が着用者Uの背後に取り付けられることで、体温調節服10を着用する着用者Uと一体的に移動可能に構成される。
【0024】
図2及び3に示すように、体温調節服10は、衣服本体7と、衣服本体7の内部に形成された循環通路15と、拡幅部材5とを有する。
衣服本体7は、襟部3と胴部11から構成される。
体温調節服10において、拡幅部材5を用いることによって、衣服本体7の前身頃幅を拡張させることができ、着用者Uの体形にあわせてサイズ調整可能となっている。
体温調節服10の詳細については後述する。
【0025】
循環通路15は、胴部11の内部に含まれる第1の通路としての第1の循環通路15aと、襟部3の内部に含まれる第2の通路としての第2の循環通路15bとを含む。第1の循環通路15a、第2の循環通路15bというように特に区別する必要がない場合は、循環通路15という。
循環通路15に所定の温度の液体が導入され、該液体の流通により着用者Uの体温を調節することができる。
【0026】
衣服本体7は、循環通路15に接続される入水口161及び排水口162を有する。入水口161及び排水口162は、典型的には、胴部11の適宜の位置に設けられる。
【0027】
循環通路15は、胴部11及び襟部3の各部位に流体を循環させることが可能に構成される。循環通路15は、典型的には、衣服本体7を構成する2枚の樹脂シートの間の非溶着部で形成され、入水口161から入水した冷却水(又は加温水)を衣服本体7の各部位に巡回させてから排水口162へ導くことが可能な任意の流路パターンを有する。循環通路15は、入水口161と排水口162との間を結ぶ1本の流路で形成される場合に限られず、適宜の位置に形成された分流路や合流路等を含んでいてもよい。
【0028】
循環通路15は、入水口161及び排水口162にそれぞれ接続された接続配管16及びカップリング17(171,172)を介して流体温度調節装置200の流体回路22へ液的に接続される。
【0029】
[流体温度調節装置]
続いて、流体温度調節装置200の詳細について説明する。
【0030】
図1及び
図2に示すように、流体温度調節装置200は、回路ユニット20と、回路ユニット20を収容する筐体30と、筐体30を着用者Uの腰部に固定する固定ベルト40(固定具)とを有する。
【0031】
回路ユニット20は、冷熱回路21と、流体回路22と、回路ユニット20を制御する制御部23と、傾斜センサ24とを有する。
【0032】
冷熱回路21は、冷媒を作動流体として用いる冷凍サイクル回路で構成され、圧縮機211と、凝縮器212と、キャピラリーチューブ213と、蒸発器214とを有する。以下、蒸発器214を熱交換器として流体回路22内の流体(水)を所定温度に冷却する場合について説明する。
なお、蒸発器214を凝縮器として機能させるとともに、凝縮器212を蒸発器として機能させるようにすれば、流体回路22内の流体を所定温度に加熱することができる。
【0033】
圧縮機211は、冷媒系統内に潤滑油を保有する圧縮機で構成される。潤滑油は、圧縮機211の底部に貯留され、蒸発器214から供給される気体冷媒を圧縮させる動作と連動して、貯留場所から必要量が汲み上げられて圧縮機211内部の摺動部を潤滑する。
凝縮器212は、圧縮機211から吐出された高温高圧の冷媒ガスを凝縮して液化させる。凝縮器212には必要に応じて凝縮効率を促進させるファン215が付設される。凝縮器212で凝縮された冷媒は、キャピラリーチューブ213で断熱膨張し、蒸発器214で蒸発(気化)する。キャピラリーチューブ213に代えて、電子膨張弁等が採用されてもよい。
【0034】
流体回路22は、体温調節服10の排水口162にカプラ172を介して着脱可能に接続される吸水配管221と、体温調節服10の入水口161にカプラ171を介して着脱可能に接続される送水配管222とを有する。
【0035】
流体回路22はさらに、吸水配管221を介して導入された流体(以下、冷却水ともいう)を貯留するタンク223と、タンク223内の冷却水を蒸発器214へ向けて吐出するポンプ224とを有する。ポンプ224から吐出された冷却水は、蒸発器214において、冷媒の蒸発潜熱に相当する熱量を奪われることで冷却される。蒸発器214において所定温度に冷却された冷却水は、送水配管222を介して体温調節服10の入水口161へ送出される。
【0036】
制御部23は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有するコンピュータで構成される。制御部23は、圧縮機211、ファン215、ポンプ224等の駆動を制御する。
【0037】
筐体30は、前面部31、後面部32、底面部33、天面部34及び両側面部等を有する概略直方体形状に形成される。筐体30は、典型的には金属材料で構成されるが、合成樹脂材料、金属材料と合成樹脂材料との複合体等で構成されてもよい。
【0038】
前面部31には、固定ベルト40が取り付けられる。固定ベルト40は、筐体30を着用者Uの腰部背面に取り付けるためのもので、締付け力を調整可能なバックルを有する。前面部31に対する固定ベルト40の固定位置は特に限定されず、本実施形態では、底面部33よりの前面部31下方位置に固定ベルト40が固定される。これにより、着用者Uの姿勢変化に伴う筐体30及び圧縮機211の鉛直方向に対する傾斜角の変動を抑えることができる。
【0039】
前面部31には腰当て部材36(
図1参照)がさらに設置されてもよい。腰当て部材36は、例えばクッション性を有するのが好ましい。これにより、筐体30と着用者Uの背面との間の隙間をなくしてフィット性を高めることができる。
【0040】
筐体30は後面部32には、図示せずとも、入力操作部、表示部等が設けられる。入力操作部は、電源スイッチ、温度設定部等の操作キーを含む。表示部は、入力操作部の入力状態を表示する液晶ディスプレイ等の適宜の表示素子で構成される。表示部の表示制御は、例えば、制御部23において実行される。
なお、入力操作部及び表示部は、後面部32に設置される例に限られず、筐体30の天面部34や側面部に設置されてもよい。あるいは、図示しないリモートコントローラを介して入力操作を行うことが可能に構成されてもよい。
【0041】
流体温度調節装置200は、回路ユニット20へ電源を供給する電源ケーブル37をさらに備える。電源ケーブル37は、筐体30の例えば側面部から外部へ延出される。電源ケーブル37は交流を直流に変換するアダプタ38を有する。
【0042】
流体温度調節装置200は、電源ケーブル37に代えて又はこれに加えて、充電可能なバッテリユニットを備えていてもよい。これにより、外部電源を必要とすることなく体温調節システム1を稼働させることができるとともに、着用者Uの行動範囲が広がり、移動の自由度が高められる。
【0043】
[体温調節服]
図2及び3に示すように、体温調節服10は、衣服本体7と、衣服本体7の内部に形成された循環通路15と、拡幅部材5とを有する。
衣服本体7は、着用者Uの胴体を覆う胴部11と、首を覆う襟部3とを備える。
衣服本体7の内部には、軟質なチューブが蛇行配置されている。該チューブは、この中を所定の温度に調節された流体が流れる流路(循環通路15)を構成する。該チューブは、衣服本体7の表面側と裏面側それぞれに位置する2枚の布地で挟み込まれて固定されている。尚、本構成に限られず、衣服本体7は、変形可能な複数の樹脂シートを適宜の位置で溶着した積層体、あるいは、これら樹脂シートと断熱シートとの積層体等で構成されていてもよい。
拡幅部材5は、基本的には、身幅拡張後の拡幅部材5を用いた体温調節服10において、全体的に一体化した違和感のない外観とする観点から、衣服本体7の表面と拡幅部材5の表面5aが同じ材質、色となるように構成されるが、特にこれらの特徴に限るものではない。
【0044】
胴部11は、右前身頃部4R、左前身頃部4L及び後身頃部8から構成される。胴部11の内部には、第1の循環通路15aが設けられる。
襟部3は、右襟部3Rと左襟部3Lとから構成される。襟部3は、着用者Uの首を覆う。襟部3の内部には、第2の循環通路15bが設けられる。
第1の循環通路15aと第2の循環通路15bとは連結している。
右襟部3Rは、右前身頃部4R及び後身頃部8の右半分に一体的に取り付けられる。
左襟部3Lは、左前身頃部4L及び後身頃部8の左半分に一体的に取り付けられる。
【0045】
図3及び5に示すように、拡幅部材5は、拡幅部材5を衣服本体7に取り付けた際に上下方向に延在する帯状を有する。
拡幅部材5は、第1の領域51と第2の領域52とを有する。
第1の領域51は、右前身頃部4Rと左前身頃部4Lとの間を接続可能な領域であり、胴用拡幅部材である。
第2の領域52は、右襟部3Rと左襟部3Lとの間を接続可能な領域であり、襟用拡幅部材である。
拡幅部材5は、例えば第1の領域51と第2の領域52とが切れ目なく連続した一枚の布状となっている。
【0046】
第1の領域51は、左右方向における横幅が、上下方向に沿って等幅となっている。一方、第2の領域52は、左右方向における横幅が下から上に向かって漸減する形状となっており、上に向かって先細るテーパ部57を有する。
【0047】
第1の領域51の横幅を第1の幅aといい、第2の領域52の横幅を第2の幅という。第2の領域52の第2の幅は、第2の領域52の上下方向全長にわたって、第1の領域51の第1の幅aよりも小さくなっている。
図5において、拡幅部材5における左右方向の幅が最も狭くなる最小幅部の第2の幅に符号bを付している。
【0048】
右前身頃部4R及び右襟部3Rと、左前身頃部4L及び左襟部3Lとの合わせ目において、右前身頃部4R及び右襟部3Rには第2の務歯列42が配置され、左前身頃部4L及び左襟部3Lには第1の務歯列41が配置される。
図4(A)に示すように、身幅拡張前の体温調節服10では、第1の務歯列41と第2の務歯列42とが締結される。第1の務歯列41、第2の務歯列42及び右前身頃部4Rに設けられるスライダー46は、右前身頃部4Rと左前身頃部4Lとの間、右襟部3Rと左襟部3Lとの間を、分離可能に締結する第1の締結機構としてのオープンファスナ47を構成する。右襟部3R及び左襟部3Lは、立ち襟を構成し、着用時、着用者Uの首を覆う。
オープンファスナ47は、体温調節服10の着脱用のファスナである。
【0049】
拡幅部材5において、その幅方向の一方の端部である右端部54Rには第3の務歯列としての第3の右務歯列53Rが配置され、もう一方の端部である左端部54Lには第3の務歯列として第3の左務歯列53Lが配置される。一方の第3の右務歯列53Rは第2の務歯列42と締結されることが可能に構成され、他方の第3の左務歯列53Lは第1の務歯列41と締結されることが可能に構成される。
図4(B)に示すように、身幅拡張後の体温調節服10では、第2の務歯列42と第3の右務歯列53Rとが締結され、第1の務歯列41と第3の左務歯列53Lとが締結される。右襟部3R、左襟部3L及び第2の領域52は、立ち襟を構成し、着用時、着用者Uの首を覆う。
第2の務歯列42、第3の右務歯列53R及び右前身頃部4Rに設けられるスライダー46は、右前身頃部4R及び右襟部3Rと、拡幅部材5との間を分離可能に締結するオープンファスナ48を構成する。該オープンファスナ48と拡幅部材5は、拡幅部材5と上記第1の締結機構の一部を構成する第2の務歯列42との間を分離可能に締結する第2の締結機構を構成するとともに、後述するオープンファスナ49が閉められて左前身頃部4Lに取り付けられた拡幅部材5と右前身頃部4Rとの間を分離可能に締結する、衣服本体7の着脱用の第1の締結機構を構成する。
第1の務歯列41、第3の左務歯列53L及び拡幅部材5の左端部54Lに設けられるスライダー56は、左前身頃部4L及び左襟部3Lと、拡幅部材5との間を分離可能に締結するオープンファスナ49を構成する。該オープンファスナ49と拡幅部材5は、拡幅部材5と上記第1の締結機構の一部を構成する第1の務歯列41との間を分離可能に締結する第2の締結機構を構成するとともに、オープンファスナ48が閉められて右前身頃部4Rに取り付けられた拡幅部材5と左前身頃部4Lとの間を分離可能に締結する、衣服本体7の着脱用の第1の締結機構を構成する。
オープンファスナ48及び49は、体温調節服10の着脱用のファスナであるとともに、拡幅部材5を取り付けて体温調節服10の身幅を拡張する拡張用のファスナでもある。
【0050】
図4(A)に示す身幅拡張前の衣服本体7の身幅を第1の身幅という。
図4(B)に示す身幅拡張後の衣服本体7の身幅を第2の身幅という。
図4(A)及び(B)に示すように、拡幅部材5を用いることで、衣服本体7の身幅は、第1の身幅から第2の身幅へ拡張される。より詳細には、胴部11では、着用者の胴回りに対応する領域が拡幅部材5の第1の幅a分拡張される。一方、襟部3は、着用者の首回りに対応する領域が第1の幅aより小さい第2の幅分拡張される。
このように、体温調節服10は、拡幅部材5が設けられ、左前身頃部4Lと右前身頃部4Rとの間が分離可能に構成されることで、着脱及びサイズ調整が容易な利便性の高いものとなっている。
第1の幅aは例えば7cm~11cm、最小幅部である第2の幅bは例えば3cm~5cmとすることができる。尚、これら数値に限定されない。
【0051】
本実施形態の体温調節服10の胴部11において、着用時、オープンファスナ47~49が着用者Uの前側に位置するように構成される。これにより、安定した体温調節機能を確保することができる。
ここで、脇の下には腋窩動脈が通っており、脇の下を冷却することが熱中症予防に効果的であり、また、脇の下を温めることで全身が温まりやすくなる。このように効果的な体温調節が可能な脇の下を含む身体の両脇に拡幅部材が位置するように体温調節服にサイズ調整用ファスナを配置する場合、効果的な体温調節機能の観点から、拡幅部材にも所定の温度の液体が導入される循環通路を配策することが望ましい。しかしながら、このような構成の体温調節服では、着用者は、衣服本体の着脱以外に循環通路の着脱も行なわなければならず、利便性が大きく損なわれる。
これに対し、本実施形態の体温調節服10では、拡幅部材5及びオープンファスナ47~49が、着用者Uの上体正面(前側)に位置するように構成される。このため、体温調節服において、脇の下を含む身体の両脇に対応して第1の通路の配策することが可能となる。腋窩動脈が通り、冷却することで熱中症予防に効果的であり、また、温めることで全身が温まりやすくなる身体部位である脇の下に第1の通路を配策することで、安定かつ効果的な体温調節機能を確保しつつ、サイズ調整及び着脱が容易な利便性の高い体温調節服とすることができる。
また、例えば、体温調節服を冷却用として用いる場合、体温調節服を可能な限り密着させることで、より効果的な体温調節機能が得られる。このため、拡幅部材5を用いて身幅が変更可能となる体温調節服10とすることで、着用者は自身の身体によりフィットするサイズを選択することが可能となり、より効果的な体温調節が可能となる。
【0052】
尚、本実施形態では、1つの体温調節服10に対し1つの拡幅部材5を設ける例をあげたが、横幅が互いに異なる複数の拡幅部材を設けてもよい。これにより、サイズ調整可能な範囲を広げることができる。特に、体温調節服10を冷却用として用いる場合、より効果的な体温調節機能を確保する観点から、着用者の身体に可能な限り密着させることが肝要である。このため、横幅が互いに異なる複数の拡幅部材を設けることで、着用者は、複数の拡幅部材から着用者Uの身体によりフィットする拡幅部材を選択することが可能となる。
【0053】
本実施形態の体温調節服10は襟部3を有するが、襟部3を有さない構成としてもよい。また、本実施形態の体温調節服10は袖部を有さないが、袖部を有する構成であってもよい。
より効果的な体温調節機能を確保する観点から、本実施形態のように、体温調節服10は、内部に第2の循環通路15bが設けられた左襟部3L及び右襟部3Rを有することが好ましい。
首の横には頸動脈が通っており、首を冷却することが熱中症予防に効果的であり、また、首を温めることで全身が温まりやすくなる。このため、襟部3に第2の循環通路15bを設けることで、冷却によって熱中症を効果的に防止する、加温によって身体全体を温めるといった効果を与えることが可能な身体部位である首の横が、第2の循環通路により確実に冷却又は加温されることになり、体温調節機能がより向上した体温調節服とすることができる。
【0054】
身幅拡張後の体温調節服10において、より効果的な体温調節機能を確保する観点から、拡幅部材5の襟部分を構成する第2の領域52の第2の幅は、胴部分を構成する第1の領域51の第1の幅aよりも小さく構成されることがより好ましい。
首は、身体の中で一番寒さを感じる部位であり、体温が逃げやすい部位である。例えば、拡幅部材の襟部を構成する第2の領域を、胴部を構成する第1の領域と同じ長さとした拡幅部材を用いて身幅を拡張した体温調節服とする場合、人体の体格バランスを考慮すると、首回りが大きくなりすぎ、着用者の首と襟との間に隙間が生じやすくなってしまう。隙間が生じることで、首回りの加温機能が低下してしまう。
また、体温調節服10を冷却用として用いる場合においても、着用者の首と襟との間に隙間が生じることで、首回りの冷却機能が低下してしまう。
これに対し、本実施形態の体温調節服10の拡幅部材5では、襟部分を構成する第2の領域52の第2の幅が、胴部分を構成する第1の領域51の第1の幅aよりも小さく構成されているので、首回りのサイズ感をほとんど変えることなしに、主に胴周りのみのサイズ調整を図ることが可能となる。これにより、着用者Uの首と襟部3との間の隙間が生じにくくなり、隙間が生じることによる首回りでの冷却機能や加温機能の低下を効果的に抑制することができる。
このように、身幅拡張後の体温調節服10においても、胴部及び襟部の双方を着用者Uの身体に密着させやすくしフィット性を向上させて、より効果的な体温調節機能を確保するために、拡幅部材5において、第2の領域52の第2の幅を第1の領域51の第1の幅aよりも小さくすることが好ましい。
この構成に加えて、本実施形態の体温調節服10の拡幅部材5は、下から上に向かって横幅が先細りする形状となっている。このため、身幅拡張後の体温調節服10のファスナを一番上まで上げた際、襟部において、その上部が最も襟回りの寸法が小さくなる。これにより、襟部の上部と着用者の首との隙間がより生じにくくなり、隙間が生じることによる首回りでの冷却機能の低減や加温機能の低下をより一層効果的に抑制することができる。
【0055】
尚、拡幅部材5において、第2の領域52がテーパ部57を有する単一の台形状あるいは三角形状に形成されたが、これに限られない。例えば、第2の領域52は、第1の領域51の第1の幅aよりも小さく、上下方向に沿って幅が同一である矩形状の領域と、この矩形状の領域から第2の領域52に向けて幅が徐々に増大する台形状の領域との複合形状であってもよい。
【0056】
また、本実施形態の体温調節服10のように、拡幅部材5は、その裏面5bに、蓄冷剤、カイロや湯たんぽといった蓄熱剤を収容可能な単数または複数の収容部を有していてもよい。
図5に示す例では、拡幅部材5は、その裏面5bに3つの収容部としてのポケット55を有する。ポケット55は、裏面5bに小さな布を縫い付けて袋状にした部分であり、上方や側方が蓄冷剤や蓄熱剤の出入をする開口部となっている。尚、開口部を閉じるためのファスナ、面ファスナ、ボタンといった締結機構があってもよい。
【0057】
<第2の実施形態>
図1は、本発明の第2の実施形態に係る体温調節システム2の使用例を示す着用者の側面図である。
図2は、体温調節システム2の概略構成図である。
図6は、体温調節システム2の一部を構成する体温調節服110の正面図である。
以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0058】
本実施形態の体温調節システム2は、体温調節服の形状が異なる点でのみ、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態の体温調節服10では、衣服本体7の身幅を拡張させる拡幅部材5が衣服本体7に分離可能に構成されていたが、本実施形態の体温調節服110では、衣服本体107の身幅を拡張させる拡幅部材105が衣服本体107に一体的に取り付けられている。
【0059】
[体温調節システム]
図1に示すように、本実施形態の体温調節システム2は、体温調節服110と、流体温度調節装置200とを備える。
体温調節服110は、着用者Uが着用可能な適宜の形態の衣服であって、着用者Uの体温を調節(冷却又は加温)することが可能な流体(本例では、水)の循環通路15を有する。
流体温度調節装置200は、体温調節服110の内部を循環する流体の温度を調節する冷熱回路を内蔵する。
【0060】
[体温調節服]
図2及び6に示すように、体温調節服110は、衣服本体107と、衣服本体107の内部に形成された循環通路15と、衣服本体107に一体的に取り付けられた拡幅部材105とを有する。
【0061】
衣服本体107は、着用者Uの胴体を覆う胴部111と、首を覆う襟部103とを備える。
衣服本体107は、第1実施形態と同様に、2枚の布地で構成される。衣服本体107は、その内部に、所定の温度に調節された流体が流れる循環通路15を構成する軟質なチューブが蛇行配置されて構成される。該チューブは、衣服本体7の表面側と裏面側それぞれに位置する2枚の布地で挟み込まれて固定されている。尚、衣服本体107は、変形可能な複数の樹脂シートを適宜の位置で溶着した積層体、あるいは、これら樹脂シートと断熱シートとの積層体等で構成されていてもよい。
拡幅部材105は、基本的には、全体的に一体化した違和感のない外観とする観点から、衣服本体107の表面と拡幅部材105の表面5aが同じ材質、色となるように構成されるが、特にこれらの特徴に限るものではない。
【0062】
胴部111は、右前身頃部104R、左前身頃部104L及び後身頃部108から構成される。胴部111の内部には、第1の循環通路15aが設けられる。
襟部103は、右襟部103Rと左襟部103Lとから構成される。襟部103は、着用者Uの首を覆う。襟部103の内部には、第2の循環通路15bが設けられる。
第1の循環通路15aと第2の循環通路15bとは液的に連結している。
右襟部103Rは、右前身頃部104R及び後身頃部108の右半分に一体的に取り付けられる。
左襟部103Lは、左前身頃部104L及び後身頃部108の左半分に一体的に取り付けられる。
【0063】
拡幅部材105は、上下方向に延在する帯状を有する。
拡幅部材105は、第1の領域151と第2の領域152とを有する。
拡幅部材105は、その幅方向の一端部としての右端部154Rが右前身頃部104R及び右襟部103Rに固定される。
第1の領域151は、右前身頃部104Rと左前身頃部104Lとの間を接続可能な領域であり、胴用拡幅部材である。
第2の領域152は、右襟部103Rと左襟部103Lとの間を接続可能な領域であり、襟用拡幅部材である。
拡幅部材105の第1の領域151は、その右端部154Rが右前身頃部104Rに固定される。拡幅部材105の第1の領域151と右前身頃部104Rとにより、拡幅部材付き右前身頃部62Rが構成される。
拡幅部材105の第2の領域152は、その右端部154Rが右襟部103Rに固定される。拡幅部材105の第2の領域152と襟部103(右襟部103R及び左襟部103Lから構成される)により、拡幅部材付き襟部63が構成される。
【0064】
図6に示す例では、拡幅部材105は、第1の領域151及び第2の領域152のいずれの領域においても、幅方向における横幅が、上下方向に沿って等幅となっているが、第1の実施形態の拡幅部材5と同様に、拡幅部材105は、第2の領域152での横幅が第1の領域151での横幅よりも小さく構成されてもよい。
【0065】
右前身頃部104R及び右襟部103Rと、左前身頃部104L及び左襟部103Lとの合わせ目において、右前身頃部104R及び右襟部103Rには第2の務歯列142が配置され、左前身頃部104L及び左襟部103Lには第1の務歯列141が配置される。
第2の務歯列142は、右前身頃部104R及び右襟部103Rと拡幅部材105との境界に対応する拡幅部材105の右端部154Rに配置される。
身幅拡張前の体温調節服110では、第1の務歯列141と第2の務歯列142とが締結される。第1の務歯列141、第2の務歯列142及び右前身頃部104Rに設けられるスライダー146は、右前身頃部104R及び右襟部103Rと、左前身頃部104L及び左襟部103Lとの間を分離可能に締結する第1の締結機構としてのオープンファスナを構成する。右襟部103R及び左襟部103Lは、立ち襟を構成し、着用時、着用者Uの首を覆う。上記オープンファスナは、体温調節服110の着脱用のファスナである。
第1の務歯列141と第2の務歯列142とを締結することで、第1の身幅を有する身幅拡張前の体温調節服110とすることができる。
【0066】
拡幅部材105の左端部154Lには第3の務歯列143が配置される。第3の務歯列143は第1の務歯列141と締結されることが可能に構成される。
身幅拡張後の体温調節服110では、第1の務歯列141と第3の務歯列143とが締結される。
第1の務歯列141、第3の務歯列143及び拡幅部材105に設けられるスライダー147は、左前身頃部104L及び左襟部103Lと、拡幅部材105との間を分離可能に締結するオープンファスナを構成する。該オープンファスナと拡幅部材105は、拡幅部材105と上記第1の締結機構の一部を構成する第1の務歯列141との間を分離可能に締結する第2の締結機構を構成するとともに、右前身頃部104Rに一体化して取り付けられた拡幅部材105と左前身頃部104Lとの間を分離可能に締結する、衣服本体107の着脱用の第1の締結機構を構成する。
上記オープンファスナは、体温調節服110の着脱用のファスナであるとともに、体温調節服110の身幅を拡張するための拡張用のファスナである。
第1の務歯列141と第3の務歯列143とを締結することで、第2の身幅を有する身幅拡張前の体温調節服110とすることができる。
【0067】
拡幅部材105を用いることで、衣服本体107の身幅は、第1の身幅から第2の身幅へ拡張される。より詳細には、胴部111では、着用者の胴回りに対応する領域が拡幅部材105の第1の領域151の横幅分拡張される。襟部103は、着用者の首回りに対応する領域が拡幅部材105の第2の領域152の横幅分拡張される。
このように、拡幅部材105を用いることで、体温調節服110のサイズ調整を容易に行うことができる。
【0068】
本実施形態の体温調節服110においても、第1の実施形態と同様に、拡幅部材105及びオープンファスナが、着用者Uの比較的冷感や温感が得られにくい上体正面(前側)に位置するように構成されるため、拡幅部材105に循環通路を配策することなく、安定した体温調節機能を確保しつつ利便性の高いものとすることができる。
【0069】
本実施形態の体温調節服110は襟部103を有するが、襟部103を有さない構成としてもよい。また、本実施形態の体温調節服110は袖部を有さないが、袖部を有する構成であってもよい。
より効果的な体温調節機能を確保する観点から、本実施形態のように、体温調節服110は襟部103を有することが好ましい。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0071】
例えば以上の第1及び第2の実施形態では、締結機構としてオープンファスナを用いる例をあげたが、スライダーが上下2つに設けられる逆開ファスナを用いてもよい。逆開ファスナを用いることで、例えばファスナの下の部分を開けることで着用者は足さばきを良くすることができ、着用者は作業状況等によって着用形態を細かく調整することができ、着用感をより快適なものとすることができる。
また、締結機構としてファスナの他、ボタン、フック、面ファスナ、スナップボタンを用いてもよく、これらを併用する構成としてもよい。
【0072】
また、第2の実施形態では2つのスライダーが設けられる例をあげたが、スライダーが1つであってもよい。この場合、第1の務歯列141のみにスライダーが設けられる。
【符号の説明】
【0073】
1、2…体温調節システム
3、103…襟部
3R、103R…右襟部
3L、103L…左襟部
4R、104R…右前身頃部
4L、104L…左前身頃部
5、105…拡幅部材
51、151…第1の領域
52、152…第2の領域
10、110…体温調整服
15…循環通路
15a…第1の循環通路(第1の通路)
15b…第2の循環通路(第2の通路)
7、107…衣服本体
41、141…第1の務歯列
42、142…第2の務歯列
53R…第3の右務歯列(第3の務歯列)
53L…第3の左務歯列(第3の務歯列)
54R、154R…右端部
54L、154L…左端部
55…ポケット(収容部)
143…第3の務歯列
200…流体温度調節装置
U…着用者