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特開2023-125140ソイルセメント地中連続壁用掘削機及びこれを用いた施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125140
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ソイルセメント地中連続壁用掘削機及びこれを用いた施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
E02D5/20 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029099
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】597057254
【氏名又は名称】有限会社マグマ
(71)【出願人】
【識別番号】503099293
【氏名又は名称】株式会社丸山工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義正
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝敏
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049GA15
2D049GB01
2D049GC11
(57)【要約】
【課題】 水平多軸掘削機を用いたソイルセメント地中連続壁の施工性を向上させて施工コストを低く抑えるとともに、ソイルセメント地中連続壁の品質を向上させることが可能なソイルセメント地中連続壁用掘削機及びこれを用いた施工方法を提供すること。
【解決手段】 水平に回転軸を有するロータリーカッターを掘削機の最下部に複数備え、ロータリーカッターを地盤に接触させた状態で回転させることにより、地盤を下方に掘削する掘削機であって、複数のロータリーカッターの中間部外周近傍に掘削注入材及び/又は固化材を吐出させる注入管と、ロータリーカッターにより掘削した掘削土と掘削注入材及び/又は固化材を混合した混合土を移送可能な、上部口及び下部口を有する送泥ポンプと、該送泥ポンプの下部口に接続され、ロータリーカッターの上部近傍に下端部を有する送泥パイプを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に回転軸を有するロータリーカッターを掘削機の最下部に複数備え、前記ロータリーカッターを地盤に接触させた状態で回転させることにより、前記地盤を下方に掘削するソイルセメント地中連続壁用掘削機であって、
前記複数のロータリーカッターの中間部外周近傍に掘削注入材及び/又は固化材を吐出させる注入管と、
前記ロータリーカッターにより掘削した掘削土と前記掘削注入材及び/又は固化材を混合した混合土を移送可能な、上部口及び下部口を有する送泥ポンプと、
該送泥ポンプの前記下部口に接続され、前記ロータリーカッターの上部近傍に下端部を有する送泥パイプを備えることを特徴とするソイルセメント地中連続壁用掘削機。
【請求項2】
前記送泥ポンプの前記上部口に接続され、前記掘削機の上部に上端部を有する上部送泥パイプを備えることを特徴とする請求項1に記載のソイルセメント地中連続壁用掘削機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のソイルセメント地中連続壁用掘削機を用いた施工方法であって、
前記注入管の吐出口から前記複数のロータリーカッターの中間部外周近傍に前記掘削注入材を吐出させながら掘削し、掘削土と前記掘削注入材を混合して混合土にするとともに、該混合土を前記送泥ポンプの前記下部口に接続した前記送泥パイプから吸入し、前記掘削機よりも上方の地中に移送する掘削混合工程と、
前記掘削機を引き上げながら、前記掘削機よりも上方にある前記混合土を、前記送泥ポンプを通して吸入し、該送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部から吐出して、前記掘削機のロータリーカッター上部近傍に移送するとともに、前記注入管の吐出口から前記固化材を吐出し、前記ロータリーカッターの回転により、前記固化材と前記混合土を混合撹拌して、ソイルセメント壁を造成する固化工程とを有することを特徴とするソイルセメント地中連続壁施工方法。
【請求項4】
前記掘削注入材が、膨潤ポリマー粒子と水、又は気泡と水を含むことを特徴とする請求項3に記載のソイルセメント地中連続壁施工方法。
【請求項5】
前記固化材が、セメントスラリー又はセメントを含むことを特徴とする請求項3又は4に記載のソイルセメント地中連続壁施工方法。
【請求項6】
前記掘削混合工程において、前記ロータリーカッターの回転方向が、前記混合土を送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部に誘導する回転方向であることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工方法。
【請求項7】
前記固化工程において、前記ロータリーカッターの回転方向が、送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部から吐出する前記混合土を下方に誘導する回転方向であることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工方法。
【請求項8】
前記固化工程の後に、造成したソイルセメント壁に芯材を挿入する芯材挿入工程を有することを特徴とする請求項3から7のいずれか一項に記載のソイルセメント地中連続壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント地中連続壁用掘削機及びこれを用いた施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、土留壁や汚染物質拡散防止用止水壁の施工法として、ソイルセメント地中連続壁施工法が知られている。
【0003】
このソイルセメント地中連続壁施工法は、ソイルセメント施工機を用いて施工する工法であり、その施工方法では、まず、掘削混合工程としてソイルセメント施工機の移動、設置決めを行い、掘削機の先端部より掘削注入材としてのセメントスラリーを添加しながら掘削土とセメントスラリーの混合土を造成し、この混合土により溝壁の安定性を保持させるとともに、適切な流動性を持たせつつ掘削底まで掘削を行う。
【0004】
次に、固化工程として、掘削底まで掘削を行ったソイルセメント施工機により、掘削混合工程で造成した混合土に対して、固化材としてのセメントスラリー等を適量添加しつつ混合・撹拌しながら引き上げて、次工程の芯材の挿入に適した軟らかさのソイルセメントを造成する。そして、次に芯材挿入工程として、クローラークレーン等を用いて造成したソイルセメント中にH鋼等の芯材を挿入する。この順序で各工程の間隔を置かずに繰り返し施工することにより連続したソイルセメント固化壁体を構築する。
【0005】
上記ソイルセメント地中連続壁の構築を行うために用いる施工機械としては、例えば、オーガー撹拌式掘削機、カッターチェイン式掘削機、水平多軸式掘削機等が挙げられるが、掘削混合工程においてオーガー撹拌式掘削機やカッターチェイン式掘削機を用いる場合には、それらの掘削機の機構上、掘削土と掘削注入材の混合土は掘削機の外部で造成されるため、混合土を掘削位置に残置しながら掘削を行うこととなる。
【0006】
一方、例えば、特許文献1のソイルセメント壁構築工法で用いられているような水平多軸式掘削機は、混合土が掘削機の内部で造成される。そのため、混合土が軟泥化されていても、水平多軸式掘削機の内部にはロータリーカッターや姿勢制御機の油圧装置、制御盤、配管等が設置されており、混合土の通過する面積は掘削面積に比較し狭隘であるため、連続して掘削を行う場合には、造成した混合土が掘削機の下部に滞留して掘削速度が著しく低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-221764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、水平多軸式掘削機を引き上げながらロータリーカッターで混合土とセメントスラリーを混合し、ソイルセメントを造成する固化工程では、掘削機上部の混合土がロータリーカッター部分に落ち込みにくく、早く引き上げると混合土とセメントスラリーの混合比率が安定せず、品質不良の原因となる。そのため、引き上げは低速で行う必要があり、これにより施工時間が長くなり、施工費用が高くなる要因となっていた。
【0009】
さらに、掘削注入材として従前から使用されているセメントスラリーを用いて、例えば砂礫土を掘削する場合には、砂礫土とセメントスラリーの混合土が分離しやすく、分離した砂礫土がロータリーカッターと掘削面の間に残りやすく掘進速度が極度に遅くなる等の問題点があった。
【0010】
また、透水性の高い砂礫土層に対してセメントスラリーを使用した場合、溝壁からの逸泥のために溝壁の崩壊が生じやすいという問題点もあった。
【0011】
なお、逸泥量を減少させるために、セメントスラリーにベントナイトスラリーを添加すると、セメントとベントナイトの混合物が掘削溝の内壁に層が形成されて掘削溝を狭くし、水平多軸掘削機を引き上げるときに、狭隘部に掘削機が引っ掛かり引き上げられなくなるという問題も確認されている。
【0012】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、水平多軸掘削機を用いたソイルセメント地中連続壁の施工性を向上させて施工コストを低く抑えるとともに、ソイルセメント地中連続壁の品質を向上させることが可能なソイルセメント地中連続壁用掘削機及びこれを用いた施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
第1に、本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機は、水平に回転軸を有するロータリーカッターを掘削機の最下部に複数備え、前記ロータリーカッターを地盤に接触させた状態で回転させることにより、前記地盤を下方に掘削するソイルセメント地中連続壁用掘削機であって、
前記複数のロータリーカッターの中間部外周近傍に掘削注入材及び/又は固化材を吐出させる注入管と、
前記ロータリーカッターにより掘削した掘削土と前記掘削注入材及び/又は固化材を混合した混合土を移送可能な、上部口及び下部口を有する送泥ポンプと、
該送泥ポンプの前記下部口に接続され、前記ロータリーカッターの上部近傍に下端部を有する送泥パイプを備えることを特徴とする。
第2に、前記第1の発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機において、前記送泥ポンプの前記上部口に接続され、前記掘削機の上部に上端部を有する上部送泥パイプを備えることが好ましい。
第3に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、前記第1又は第2の発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機を用いた施工方法であって、
前記注入管の吐出口から前記複数のロータリーカッターの中間部外周近傍に前記掘削注入材を吐出させながら掘削し、掘削土と前記掘削注入材を混合して混合土にするとともに、該混合土を前記送泥ポンプの前記下部口に接続した前記送泥パイプから吸入し、前記掘削機よりも上方の地中に移送する掘削混合工程と、
前記掘削機を引き上げながら、前記掘削機よりも上方にある前記混合土を、前記送泥ポンプを通して吸入し、該送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部から吐出して、前記掘削機のロータリーカッター上部近傍に移送するとともに、前記注入管の吐出口から前記固化材を吐出し、前記ロータリーカッターの回転により、前記固化材と前記混合土を混合撹拌して、ソイルセメント壁を造成する固化工程とを有することを特徴とする。
第4に、前記第3の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記掘削注入材が、膨潤ポリマー粒子と水、又は気泡と水を含むことが好ましい。
第5に、前記第3又は第4の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記固化材が、セメントスラリー又はセメントを含むことが好ましい。
第6に、前記第3から第5の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記掘削混合工程において、前記ロータリーカッターの回転方向が、前記混合土を送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部に誘導する回転方向であることが好ましい。
第7に、前記第3から第6の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記固化工程において、前記ロータリーカッターの回転方向が、送泥ポンプの下部口に接続した送泥パイプの下端部から吐出する前記混合土を下方に誘導する回転方向であることが好ましい。
第8に、前記第3から第7の発明のソイルセメント地中連続壁施工法において、前記固化工程の後に、造成したソイルセメント壁に芯材を挿入する芯材挿入工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水平多軸掘削機を用いたソイルセメント地中連続壁の施工性を向上させて施工コストを低く抑えるとともに、ソイルセメント地中連続壁の品質を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機の実施形態を示す概略正面図である。
図2】本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機の実施形態を示す概略側面図である。
図3】本発明のソイルセメント地中連続壁施工法の工程概略図であり、(A)は掘削混合工程、(B)は固化工程、(C)は芯材挿入工程を示す工程概略図である。
図4】充填率とTF値の関係を示す関係図である。
図5】掘削注入材の種類と溝壁の透水係数の関係を示す関係図である。
図6】充填率とソイルセメントの一軸圧縮強度の関係図である。
図7】電解質濃度と高吸水性ポリマーの吸水量の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態について図を用いて説明する。図1は本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機の実施形態を示す概略正面図であり、図2は概略側面図である。
【0017】
本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機1(以下、単に掘削機ともいう)は、水平に回転軸を有するロータリーカッター2を掘削機1の最下部に複数備え、ロータリーカッター2を地盤に接触させた状態で回転させることにより、地盤を下方に掘削する掘削機1であり、ロータリーカッター2の外周近傍に掘削注入材及び固化材を吐出する注入管5と、ロータリーカッター2により掘削した掘削土と掘削注入材又は固化材を混合した混合土を移送可能な上部口31及び下部口32を有する送泥ポンプ3と、該送泥ポンプ3の下部口32に接続された送泥パイプ4を備えている。また、掘削機1は、ワイヤーケーブル13に接続されてベースマシン6に懸垂されており、ワイヤーケーブル13の巻上げ、巻下げにより、上方、下方に自在に移動可能に設けられている。
【0018】
図1図2に示す実施形態の掘削機1には、最下端部に、外周にビット21を有する2基のロータリーカッター2が設けられており、その上部にロータリーカッター2を保持するフレーム11と、該フレーム11内に機器収納ボックス12が設けられ、機器収納ボックス12には、ロータリーカッター2の動作や姿勢を制御するための油圧機器及び制御機器等が収納されている。
【0019】
また、外周にビット21を有する2基のロータリーカッター2の中間部外周近傍には、地上まで延設された注入管5の吐出口51が設けられており、地上から供給される掘削注入材や固化材、空気等を吐出可能としている。なお、固化材の供給は、地上部に設けられた固化材プラントから供給ポンプにより、また、空気の供給は、地上部に設けられたコンプレッサーからの圧縮空気として固化材の注入管吐出口51からロータリーカッター2の中間部外周近傍に供給することができる。なお、掘削注入材や固化材は、一本の供給パイプを兼用することができるが、各々の材料に対して対して一本ずつ設けることもできる。掘削注入材は、通常、掘削時に2基のロータリーカッター2の中間部外周近傍に吐出され、掘削土と混合されて混合土に造成される。
【0020】
さらに、ロータリーカッター2の上部には、ロータリーカッター2により掘削した掘削土と、掘削注入材又は固化材を混合した混合土を移送可能な送泥ポンプ3が設けられている。送泥ポンプ3は上部口31及び下部口32を有しており、下部口32には送泥パイプ4の上端部が接続されており、送泥パイプ4の下端部41がロータリーカッター2の上部近傍に位置するように配設されている。図1に示す実施形態では、送泥パイプ4の下端部41の開口が2基のロータリーカッター2の中間部外周近傍に位置するように配設されている。
【0021】
なお、図1図2に示すように、送泥ポンプ3を掘削機1の上部に設けた場合には、送泥ポンプ3の上部口31を直接混合土の吐出口とすることができるが、送泥ポンプ3の配設位置に応じて、送泥ポンプ3の上部口31に上部送泥パイプを接続することもできる。なお、上部送泥パイプを設ける場合、上部送泥パイプの上端部の位置は掘削中の地中範囲であればよく、地上まで延設する必要はない。
【0022】
送泥ポンプ3に接続される送泥パイプ4、上部送泥パイプの径や長さは、送泥ポンプ3の仕様や、送泥する混合土の種類等に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではないが、スムーズな送泥を考慮した場合、直径4インチ程度の送泥パイプ4を用いるのが好ましい。
【0023】
送泥ポンプ3の性能は、混合土を移送可能な性能を有していれば特に限定されるものではないが、通常、400L/min程度の送泥性能を有することことが好ましい。このような性能の送泥ポンプ3としては、例えば、スクイーズポンプ(岡三機工社製 OKP-65-ME-L)等を例示することができる。また、送泥する混合土の特性や、送泥ポンプ3の性能等に応じて、図1、2に示すように送泥ポンプ3を2基以上設けることもできる。送泥ポンプ3を複数基設けることにより、ロータリーカッター2の周囲の混合土を均一かつ効率的に移送することが可能となる。
【0024】
本実施形態の掘削機1のロータリーカッター2は、左右各々が正、逆の回転が可能であり、掘削混合工程時においては、左のロータリーカッター2は反時計回転、右のロータリーカッター2は時計回転させて、混合土を各々のロータリーカッター2の間を上方に誘導する。また、同時に、送泥ポンプ3の動作により、誘導された混合土を送泥パイプ4の下端部41の開口から吸入して、送泥ポンプ3の上部口31又は上部送泥パイプの上端部の開口から吐出させることにより、混合土を掘削機1の上部に容易に移送させることができる。
さらに固化工程時には、左のロータリーカッター2を時計回転、右のロータリーカッター2を反時計回転させることにより、掘削機1の上部の混合土を掘削機1の下部に容易に移送させることができる。
【0025】
以下に、上記実施形態の掘削機1を用いた本発明のソイルセメント地中連続壁施工方法について説明する。図3(A)~(C)に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法の工程概略図を示す。
【0026】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工方法は、上記本発明のソイルセメント地中連続壁用掘削機1を用いた施工方法であり、掘削土と掘削注入材を混合して混合土を造成する掘削混合工程と、掘削機1を引き上げながら、固化材と混合土を混合撹拌して、ソイルセメント壁を造成する固化工程とを有する。
【0027】
(掘削混合工程)
掘削混合工程では、図3(A)に示すように、まず、ベースマシン6に掘削機1を懸垂させて位置決めを行い、掘削機1のロータリーカッター2を回転させて所定の深さまで掘削を行う。この際、ロータリーカッター2の外周近傍に位置するように設けられた注入管5の吐出口51から掘削注入材を吐出しながらロータリーカッター2を回転させ、掘削して生じた掘削土と掘削注入材を混合して混合土を造成する。
【0028】
なお、本実施形態の掘削混合工程におけるロータリーカッター2の回転は、2つのロータリーカッター2の周囲の掘削土を互いのロータリーカッター2の間を上方に誘導させる方向、即ち、図1における左側のロータリーカッター2は反時計回り、右側のロータリーカッター2は時計回りで回転させる。そして、混合土の造成とともに、送泥ポンプ3を動作させて、混合土を送泥パイプ4の下端部41の開口から吸入して掘削機1の上方に移送させる。
【0029】
掘削に用いる掘削注入材としては、非硬化性の掘削注入材のものが好ましく、具体的には、膨潤ポリマー粒子、膨潤ポリマー粒子分散液、気泡又は気泡と水を用いるのが好ましい。膨潤ポリマー粒子、膨潤ポリマー粒子分散液の調整は、地上に設置した混合翼を備えた水槽に水道水を入れた後、粉体状の高吸水性ポリマーを投入して30分程度撹拌することにより調整することができる。
【0030】
例えば、吸水倍率400倍の高吸水性ポリマーを使用する場合には、水道水1mに対して2.0kgの高吸水性ポリマーを投入すると膨潤ポリマー粒子800kgと200kgの自由水からなる膨潤ポリマー粒子分散液を調製することができる。なお、この場合の吸水倍率とは、高吸水性ポリマーの質量に対する最大に吸水した水の質量の比である。
【0031】
上記膨潤ポリマー粒子分散液は、地上のスクイーズポンプに接続した注入管5を通してロータリーカッター2の中間部外周近傍に送液して吐出口51から吐出する。掘削土と、膨潤ポリマー粒子の混合比率は、掘削土の物性値と混合土の流動性を考慮して適宜設定する。混合土の流動性は、送泥ポンプ3による混合土の圧送、また、混合土の流動性と壁体の安定性を両立させること等を考慮した場合、テーブルフロー値(TF値)で150~220mmが好ましく、170~200mmがより好ましい。混合土のTF値を上記範囲とすることにより、混合土が掘削機1の内部の空間部を通過し、送泥ポンプ3により掘削機1の上部に効率よく混合土を圧送させることができ、溝壁の安定を保ちつつ所定掘削深度まで掘削を行うことができる。
【0032】
検証実験として、混合土700ccを1000ccのメスシリンダーに入れて、振とう後に4時間放置して状態を観察した。その結果、ブリージングや土砂と膨潤ポリマー粒子の分離は見られず、送泥ポンプ3による圧送に適したものであることが確認された。
【0033】
図4に、試料土として珪砂7号を使用した充填率とTF値の関係のグラフを示す。なお、充填率とは掘削土の空隙量に対する膨潤ポリマー粒子の体積の百分率を意味する。このグラフによれば、膨潤ポリマー粒子の充填率を増加させるとTF値は容易に増加することがわかる。この結果を指標として、膨潤ポリマー粒子の充填率によりTF値を150~220mmの範囲に容易に調整することができる。なお、TF値180mmを目標とすると充填率は80%程度となることが分かる。
【0034】
また、混合土のTF値を上記条件とする場合、施工性や経済性の観点から、掘削土が砂礫土の場合には間隙率40~45%、充填率80とすると、掘削土1m当たり膨潤ポリマー粒子は0.35m、粘性土の場合には膨潤ポリマー粒子0.35m、水0.1m程度の条件が好ましい。なお、間隙率は土全体積に対する土粒子以外の体積の割合を示す。
【0035】
図5に、掘削注入材と透水係数の関係のグラフを示す。図5のグラフによると、粒度の粗い珪砂1号であっても膨潤ポリマー粒子によって透水係数は1.2E-5cm/sとなり不透水層を形成するので、溝壁の安定が保たれることがわかる。なお、本発明で使用する非硬化性掘削注入材は、逸泥量の大きな砂礫層で使用しても溝壁に厚く層状に硬化しないので掘削溝を狭くすることがない。即ち、後述する固化工程において、掘削機1の引き上げを阻害するものが形成されないため、効率よく施工を行うことができる。
【0036】
本発明のソイルセメント地中連続壁の施工に用いる高吸水性ポリマーは、架橋構造をもつ親水性のポリマーであって、通常、自重の10倍~500倍程度の吸水性を有するものであり、圧力をかけても水分を放出しにくいという特徴を備える。また、本明細書中において、「膨潤ポリマー粒子」の用語は、吸水し、膨潤した後であっても、個々の粒子が粒状の形態を保っていることを意味する。そのため、膨潤ポリマー粒子の用語には、複数の吸水性ポリマー分子が独立した粒子形態を呈さず、糊状の高分子を形成するものは包含されず、除外される。高吸水性ポリマーの吸水量は、JIS K 7223(1996)で定義づけられており、吸水量の測定方法についてもJIS K 7223(1996)の記載に基づいて行われる。
【0037】
本発明のソイルセメント地中連続壁の施工に使用する高吸水性ポリマーの種類は、上記の条件を満足するものであれば特に制限されることなく用いることができ、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく考慮される。
【0038】
上記の高吸水性ポリマーの中でも、合成ポリマー系のポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー粒子は、性能とコストの両面に優れているため、特に好適に用いることができる。
【0039】
ポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーは、アクリル酸ナトリウム(CH=CH-COONa)に架橋剤を加えて、軽度に架橋させた3次元網目構造を持ったアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物のゲルである。架橋剤としては、従来公知のものを用いることができる。
【0040】
前記ポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーは、水を吸収するとカルボキシル基がゲル中にナトリウムイオンを解離し、純水ならば自重の100~1000倍にも達する膨潤度を生み出すことが知られている。このようなポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーとしては、例えば、Geosap(三洋化成工業社製)等が例示される。Geosapの場合、吸水倍率が自重の400倍程度であり、膨潤ポリマー粒子や膨潤ポリマー粒子分散液の流動性は良好で、しかも砂礫層の空隙を確実に目詰めすることできる。
【0041】
また、ポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー粒子は、アクリル酸ナトリウムに対して架橋剤を多く配合することで、得られるゲルは硬くなり、その吸水量は減少する。また、架橋剤の配合を少なくすると、得られるゲルは柔らかくなり、その吸水量は増大する
【0042】
さらに、特殊なポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーとして、架橋剤により重合させた高吸水性ポリマー粒子の表面をさらに架橋させた、シェルとコアの二重構造を有するポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーの利用が例示される。このシェルとコアの二重構造を有するポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー粒子においては、外殻であるシェルの厚みが厚いほど硬質なゲルとなり、その吸水量は減少する。一方、シェルの厚みを薄くすると柔らかいゲルとなり、その吸水量は増大する。
【0043】
また、上記のシェルとコアは、通常、エステル結合により架橋したものであるが、シェルとコアの架橋が耐アルカリ性、耐電解質性に優れたエーテル結合により架橋したものであるポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーも存在する。本発明においては、エーテル結合によりシェルとコアが架橋したポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーを用いることがより好ましい。
【0044】
上記の特性のほか、ポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーにおけるナトリウムイオンの解離は、ゲルがおかれるpHや電解質濃度等の条件にも依存するため、使用条件に応じてその他の高吸水性ポリマーを適宜選択して用いることができる。
【0045】
膨潤ポリマー粒子あるいは膨潤ポリマー粒子分散液は、大深度で使用することも想定されており、施工箇所まで加圧して送液される。この場合、膨潤ポリマー粒子は、高圧下にさらされるため、加圧による水の保持力の低下が少なく、しかも膨潤ポリマー粒子自体が変形しにくい架橋構造を持った高吸水性ポリマーの選定が必要である。また、透水性の高い粗い砂礫層の空隙を目詰めするために、膨潤後の粒径は3mm以下で、かつ粒度分布がより良好であることが望ましい。
【0046】
なお、掘削層が砂礫層である場合、地盤中の土粒子間の間隙量が40~45%であることが例示される。本発明において、高吸水性ポリマーとして、ポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーを用いる場合は、上記の条件を満足するものであれば、特に制限されることなく用いることができるが、特に、シェルとコアの二重構造を有するポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマーを上記の条件に調整したものを好適に用いることができる。
【0047】
また、本実施形態の非硬化性の掘削注入材として、気泡又は、気泡と水を使用する場合には、TF値を適性の範囲とするために、掘削土1m当たり砂質土では気泡を0.3mを用いるのが好ましい。
【0048】
また、混合土のTF値を上記条件とする場合、施工性や経済性の観点から、掘削土が粘性土の場合には、掘削土1m当たり気泡0.3m、水0.3m程度の条件が好ましい。
【0049】
一方、気泡添加量を多くすると流動性は向上するが、混合土の比重は小さくなる。そのため、壁体の安定性を考慮した場合、比重を1.05以上にする必要があり、そのための気泡注入量は約0.8m/m以下に保つことが必要である。
【0050】
さらに、所望の気泡を発生させるために起泡剤を用いることができる。起泡剤としては、通常公知の界面活性剤を用いることができるが、なかでも気泡そのもの、さらに、掘削土と混合したときにも消泡し難く、酸やアルカリ等の化学的安定性に優れ、かつ起泡能力に優れる起泡剤が望まれ、例えば、アルキルサルフェート系界面活性剤を好適に用いることができ、具体的には、アルキルサルフェート系界面活性剤のWTM起泡剤(フローリック社のWTM起泡剤原液を清浄な水で20倍に希釈したもの)を25倍に起泡し、比重0.04、最頻値が100μm程度に起泡させたものを好適に使用できる。
【0051】
地上のプラントで造成された膨潤ポリマー粒子は懸垂ケーブル13に沿ってフレキシブルな注入管5で掘削機1まで送られ、さらに、掘削機1のフレーム11の内部を通し2基のロータリーカッター2の中間部外周近傍に設けられた吐出口51から吐出される。
【0052】
<固化工程>
上記掘削混合工程に続いて固化工程を行う。固化工程では、図3(B)に示すように掘削機1を引き上げつつ、掘削機1上部の混合土を送泥ポンプ3の上部口31又は上部送泥パイプの上端部開口から吸入し、送泥ポンプ3を通して送泥パイプ4の下端部41開口から吐出し、掘削機1の空隙の間を通過させて、注入管5の吐出口51から吐出させた固化材と混合土を混練してソイルセメント壁を造成する。
【0053】
なお、送泥ポンプ3による混合土の掘削機1の下方への移送において、ロータリーカッター2の回転方向は、上記掘削混合工程時のロータリーカッター2の回転方向とは逆の回転方向とする。即ち、図3(B)に示す図において、左のロータリーカッター2を時計回転、右のロータリーカッター2を反時計回転させる。これにより、混合土と固化材を混合させながら掘削機1の下方に移行させることができる。
【0054】
本発明で用いる固化材としては、セメントスラリーや粉体のセメントを好適に用いることができる。さらに、セメントスラリーに対して液体消泡剤を添加したり、セメントに対しては粉体消泡剤を添加することができる。固化工程において、消泡剤を添加し、掘削混合工程で造成した混合土中の気泡を消泡させることにより、固化領域の強度を増加させることができる。消泡剤は、用いる起泡剤等に応じて適宜選択することができる。また、固化工程において、掘削機1を引き上げた直後の掘削領域の流動性は、後述する芯材挿入行程を考慮した場合、TF値で170mm以上とすることが望ましい。
【0055】
また、掘削混合工程時の掘削注入材としての膨潤ポリマー粒子の充填率は、予め施工場所から掘削土を採取し、膨潤ポリマー粒子と混合した混合土のTF値より算定し、固化工程時に添加する固化材の量は、掘削混合工程における充填率の混合土に固化材のセメントスラリー又はセメントを添加・混合し、一軸圧縮強度の測定を行い、所要の強度を満たす固化材量、水セメント比(W/C)等を定めておくことが望ましい。
【0056】
また、固化材の供給においては、掘削注入材を移送する注入管5により供給することができるが、粉体の固化材であるセメントを用いる場合には別に固化材用の注入管5を設けるのが好ましい。
【0057】
<芯材挿入工程>
本実施形態のソイルセメント地中連続壁施工法においては、必要に応じて固化工程の後に芯材8を挿入する芯材挿入工程を行うことができる。図3(C)は、本実施形態の芯材挿入工程を示している。本実施形態の芯材挿入工程では、クローラークレーン等の芯材挿入用クレーン7を用いて芯材8の挿入を行っている。挿入する芯材8としては、一般に造成される固化領域の補強用の芯材8を用いることができ、具体的には、例えば、H形鋼等の鋼材、プレキャスト製のコンクリート壁体あるいは鋼製の壁体等を例示することができる。固化領域に芯材8を挿入することにより、曲げ強度特性に優れたソイルセメント連続壁を造成することができる。
【0058】
なお、芯材挿入工程を行う場合には、固化工程での混合土と固化材スラリーの混練により固化反応が開始するため、できる限り固化材スラリーの固化反応が進行していない段階、即ち、固化工程の直後に芯材8の挿入を行うことが好ましい。
【実施例0059】
以下、本発明掘削機に用いる掘削注入材の条件について、実施例とともに説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
本発明の掘削機に適用する掘削注入材、即ち、膨潤ポリマー粒子又は膨潤ポリマー粒子分散液、気泡又は気泡と水を好適な条件で使用するためには、それらの物性条件として、
1.掘削土が砂礫層であっても掘削土と掘削注入材の混合土の分離性が少なく流動性が得られやすいこと
2.掘削土と掘削注入材の混合土のポンプ圧送性が良いこと
3.透水係数の大きい砂礫層であっても溝壁を難透水化し溝壁の安定ができること
4.掘削土と掘削注入材の混合土に固化材を添加・混合することにより所定の強度を有するソイルセメントを造成できること
が挙げられる。
【0061】
以下に、本発明の掘削機に適用する掘削注入材の適合性を実験により確認した。本実験では、高吸水性ポリマーとして、表1に示す物性のポリアクリル酸ナトリウム高吸水性ポリマー(三洋化成工業社製、商品名:Geosap)を用いた。
【0062】
【表1】
【0063】
<1.混合土の流動性、分離、送泥ポンプ圧送性>
掘削土と掘削注入材の混合土の流動性、分離性及び送泥ポンプの圧送性を調べた。なお、流動性をテーブルフロー値(以下、TF値と略称する)(JIS R 5201:2015)で表示する。試料土として、水道水を吸水し膨張した膨潤ポリマー粒子を珪砂5号と混合した混合体を調製した。
【0064】
試験1として、含水比15%の珪砂5号に膨潤ポリマー粒子を充填率25~150%の範囲で10種に変化させ、これらを混合した混合土の充填率とTF値の関係を調べた。また、試験2として、含水費20%の珪砂5号に膨潤ポリマー粒子を充填率35~150%の範囲で8種に変化させ、これらを混合した混合土の充填率とTF値の関係を調べた。ここで、充填率とは土の空隙体積に対する膨潤ポリマー粒子体積の比率を意味する。
【0065】
これらの結果を図4に示す。図4によると、試験1、試験2ともに、充填率とTF値は比例関係にあり工事を好適に行うためのTF値150~220mmは、充填率50~150%の範囲で得られることが確認された。
【0066】
次に、実際の施工で使用する範囲の混合土として、前記混合土のうちTF値が183mmである混合土(含水比20%の珪砂5号に膨潤ポリマー粒子を充填率70.2%で調整した混合土)を1000mlのメスシリンダーに700mlを入れて振とうし、4時間後に混合土の状態を観察した。その結果、分離やブリージングは見られなかった。
【0067】
次に、送泥ポンプでの圧送性を調べるために、当該混合土(TF値183mm)を使用し、送泥ポンプで管径4インチ、水平配管長30mを圧送したところ、全く問題なく圧送でき、かつ、圧送後の混合土の分離は見られなかった。
【0068】
<2.溝壁の安定>
定水位試験(水頭:300kN/m)により、試料土として珪砂1、3、5、7号を使用し、掘削注入材とし自由水が30%の膨潤ポリマー粒子分散液による透水係数を求めた。また、比較のために水を使用した透水試験を行った。具体的には、時間と通水量の関係を計測し、透水係数を求めた。
【0069】
図5は珪砂の種別と透水係数を表す関係図である。これによると珪砂の種別に関わらず水による透水係数は10-3cm/s程度であり膨潤ポリマー粒子により透水係数は10-5cm/s程度であり、膨潤ポリマー粒子により透水量は概略1/100となり、膨潤ポリマー粒子により溝壁からの逸水を防止でき、溝壁を安定させられることが確認された。
【0070】
なお、掘削注入材として気泡を使用した時の透水係数を図5に表すと、透水係数は珪砂の種類にかかわらず10-5cm/s程度となり、気泡を掘削注入材として使用した場合にも溝壁の安定は保てることが分かった。
【0071】
<3.充填率と一軸圧縮強度>
掘削土と掘削注入材を含む混合土に固化材を添加・混合したソイルセメントの圧縮強度の発現性を調べた。試料土として東北珪砂7号(含水比15、20%の2種類)と膨潤ポリマー粒子の充填率を40~80%の範囲で変化させた混合土に固化材としセメントスラリー及びセメントの2種類を添加・混練し、一軸圧縮強度(4週強度)を測定し、充填率と一軸圧縮強度の関係を調べた。この関係図を図6に示す。図6によると固化材がセメントスラリー、セメントに関わらず、充填率が大きくなると一軸圧縮強度は低下する傾向がみられる。
【0072】
試験1は珪砂7号と膨潤ポリマー粒子の混合土に一般的な配合であるセメント200kg/m3、水セメント比(W/C)80%の場合の関係図であるが、充填率70%において一軸圧縮強度は1000kN/mであり、掘削注入材としてセメントスラリーを使用する従来法に比較して強度の発現性に遜色がないことが確認された。
【0073】
試験2は珪砂7号と膨潤ポリマー粒子の混合土に粉体状態のセメント(W/C=0%)を混合し、一軸圧縮強度を計測した。セメント添加量を200kg/m3とした粉体のセメントとセメントスラリー(W/C=80%)の一軸圧縮強度を比較すると、粉体の場合の方が強度発現の程度は高くなり、水量の少ない方が一軸圧縮強度は高くなるという一般的な認識と一致した強度発現となり、粉体セメントの使用も問題ないことが確認された。
【0074】
なお、膨潤ポリマー粒子はセメントに含まれる鉱物が水と反応して生成した水酸化カルシウムにより吸収した水の大部分を離水し収縮する。電解質濃度と高吸水性ポリマーの吸水量の関係図を図7に示す。離水した水はセメントとの水和反応にも費やされる。充填率が多くなると一軸圧縮強度が低下するのは、水/セメント比が大きいセメントスラリーを使用したことによるものと考えられる。
【符号の説明】
【0075】
1 ソイルセメント地中連続壁用掘削機
11 フレーム
12 機器収納ボックス
13 ケーブル
2 ロータリーカッター
21 ビット
3 送泥ポンプ
31 上部口
32 下部口
4 送泥パイプ
41 下端部
5 注入管
51 吐出口
6 ベースマシン
7 芯材挿入用クレーン
8 芯材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7