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特開2023-125144コンテナ型散水ろ床装置及びコンテナ型散水ろ床装置における処理水槽の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125144
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】コンテナ型散水ろ床装置及びコンテナ型散水ろ床装置における処理水槽の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/04 20230101AFI20230831BHJP
【FI】
C02F3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029104
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】松枝 孝
(72)【発明者】
【氏名】長野 晃弘
【テーマコード(参考)】
4D003
【Fターム(参考)】
4D003AA02
4D003AB01
4D003DA07
4D003DA09
4D003EA01
4D003EA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コンテナ型散水ろ床装置における処理水槽内に溜まった固形物を、機械等を使わずに自動的に排出することができ、かつ、寸法規制のある海上輸送用コンテナに組み込まれるコンテナ型散水ろ床装置を提供する。
【解決手段】反応槽20と処理水槽30とからなるコンテナ型散水ろ床装置1であって、反応槽20は、気密性を備えた直方体からなる筐体21と、筐体21の底部に設けられたメッシュ状の底板22と、筐体21内に充填された担体23とからなり、処理水槽30は、処理水の排出方向に傾斜した長方形の底板31と側壁32、33とからなる箱状体の本体30Aと、本体30Aの処理水排出方向に設けられた水槽部36と、水槽部36に設けられた堰37と、空気引き抜き管38と、処理水引き抜き管40、固形物引き抜き管41とからなる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽(20)と処理水槽(30)とからなる散水ろ床装置(1)であって、
前記反応槽(20)は、気密性を備えた直方体からなる筐体(21)と、該筐体(21)の底部設けられたメッシュ状の底板(22)と、前記該筐体(21)内に充填された担体(23)とからなり、
前記処理水槽(30)は、処理水の排出方向に傾斜した長方形の底板(31)と
側壁(32~35)とからなる箱状体の本体(30A)と、当該本体(30A)の処理水排出方向に設けられた水槽部(36)と、当該水槽部(36)に設けられた堰(37)と、空気引き抜き管(38)と、処理水引き抜き管(40)と、固形物引き抜き管(41)からなる、
ことを特徴とするコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項2】
前記水槽部(36)に循環用処理水引き抜き管(42)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項3】
前記処理水槽(30)内に越流トラフ(43)を設け、当該越流トラフ(43)につながっている処理水引き抜き管(40)と循環用処理水引き抜き管(42)の間に隔て板(44)を移動可能に設けたこと特徴とする請求項2に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項4】
前記空気引き抜き管(38)の途中に、該空気引き抜き管(38)内から水溜まりを排出するドレン管(45)を設けたことを特徴とする請求項1から3の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項5】
前記空気引き抜き管(38)を当該空気引き抜き管(38)の先端(38a)が下となるように傾斜をつけていることを特徴とする請求項1から4の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項6】
前記処理水槽(30)の底板(31)が処理水の排出部に向かって少なくとも1/100の勾配を設けていることを特徴とする請求項1から5の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項7】
前記散水ろ床装置(1)の前記処理水槽(30)を土木躯体とし、海上輸送用コンテナの寸法規制内で、前記処理水槽(30)が占めていたスペースを、前記散水ろ床装置(1)の前記反応槽(20)の容量に置き換えて増やすことを特徴とする請求項1から6の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項8】
前記反応槽(20)を複数段の前記筐体(21)で構成し、当該筐体(21)の個数を変えることで前記散水ろ床装置(1)の高さや、容積を変更することを特徴とする請求項7に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
【請求項9】
固形物引き抜きを行う際には処理水槽(30)に溜まった処理水全量を固形物引き抜き管(41)の弁を開放して排出させたうえで、汚水を散水ろ床に散水させたまま、ろ床を通過して処理水槽(30)に滴下する処理水をシャワリングさせて底板(31)上にある溜った固形物を処理水とともに水平に近い緩い傾斜でも堰(37)方向に向かって送ることを特徴とする請求項1から8の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置の処理水槽(30)の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃水、上下水、河川水などの汚水を浄化する汚水浄化装置における散水ろ床装置に関し、より詳細には反応槽内にろ材塊(微生物保持担体)を積層状に堆積させた散水ろ床にて微生物を付着させ、該散水ろ床の上から汚水を散布し、浸透流下した処理水を処理水槽外へ取り出すコンテナ型散水ろ床装置及びコンテナ型散水ろ床装置における処理水槽の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水の浄化手法の一つとして、散水ろ床装置は古くから利用されている。
一般的な散水ろ床装置は、反応槽と該反応槽の上方部に設けられた散水装置と、反応槽を通った処理水を受けて溜める処理水槽とから構成され、前記反応槽内には汚水に含まれる微生物を付着させる微生物保持担体が充填され、この微生物保持担体の集合体で散水ろ床が形成されている。
汚水は上から散水され、反応槽内を重力で上から下に順番に流れて行き、その間に微生物保持担体により浄化されて処理された水は、下にある処理水槽に落ち溜まって行く。
このような散水ろ床装置は、電力消費が少なく、運転管理が容易で、汚泥発生量も少ないという長所がある。
【0003】
上記汚水浄化装置における微生物保持担体の一例として出願人は、反応槽の中にスポンジ担体を充填し処理水を降らせ(散水する)、前記スポンジ担体の周りに有る空気を取り込んで、担体の中にいる微生物が、その空気を利用して汚水中の有機物やアンモニアを酸化し、汚水を浄化する構成の水浄化装置を出願している(特開2019―171237号公報)。
【0004】
なお、散水ろ床装置が設置される場所によっては、チョウバエ等の虫が発生するので装置は囲われていて、装置の中を換気するような形でファンにより中に空気を供給している。一般的な構造では、反応槽(20)の下からファンで空気を吸い込んで換気している。これにより汚水の匂いが装置内に収容されている散水ろ床から直接漏れないように処理している。
前記処理水槽には、処理された水と同時に散水ろ床で捕捉しきれなかった固形物も落ちてくるが、処理水槽の中にこの固形物が落ちて水槽の中に長い間溜まってしまうと、それが腐敗して処理水を汚すので、その固形物を排出しなければいけない。
従来の散水ろ床装置においては、散水ろ床の下にある処理水槽の容積は大きく深さも十分あり、ある程度固形物を溜めて、処理水槽底部を固形物の排出を促すために20%程度の勾配をつけ、処理水槽底部付近に位置する固形物引き抜き管で溜った固形物を排出していた。また、スクレーパのある掻き寄せ機等で掻き集めて、ある程度固形物が溜まった時に排出することも行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019―171237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力消費が少なく、運転管理が容易で、汚泥発生量も少ないという長所がある散水ろ床装置は、後進国や開発途上国において環境汚染問題が深刻化するにあたって、その普及が期待されている。普及の手段として、散水ろ床装置を海上輸送用コンテナ内に組み込んで輸出することが考えられる。コンテナ型散水ろ床装置を国内工場で製作しておき、現地へ海上輸送し、据え付けて汚水や処理水等の配管の接続工事を行えば、迅速に使用が可能となる。
ところで、海上輸送用コンテナには寸法の規制があり、装置を寸法の規制内にする必要がある。一方で、汚水の浄化に寄与する散水ろ床の微生物量を十分に確保するために、散水ろ床の容量を十分に確保することが重要である。また、前述のとおり、従来の散水ろ床装置においては、散水ろ床下部の処理槽の容積は大きく深さも十分あるが、寸法規制のある海上輸送用コンテナに散水ろ床装置を組み込むには、処理水槽底部の勾配を固形物の排出を促すために十分確保できない。排出が促されなければ固形物の腐敗による悪臭の発生対策が必要となる。さらに、従来の掻き寄せ機を設ける場合には駆動装置等の補機スペースを確保しなければならならない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、散水ろ床装置において、散水ろ床下部の処理槽内に溜まった固形物を掻き寄せ機械等の械を使わずに自動的に排出することができ、かつ、寸法規制のある海上輸送用コンテナに組み込まれた散水ろ床装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を下記の手段より解決した。
〔1〕反応槽(20)と処理水槽(30)とからなる散水ろ床装置(1)であって、
前記反応槽(20)は、気密性を備えた直方体からなる筐体(21)と、該筐体(21)の底部設けられたメッシュ状の底板(22)と、前記該筐体(21)内に充填された担体(23)とからなり、
前記処理水槽(30)は、処理水の排出方向に傾斜した長方形の底板(31)と
側壁(32~35)とからなる箱状体の本体(30A)と、当該本体(30A)の処理水排出方向に設けられた水槽部(36)と、当該水槽部(36)に設けられた堰(37)と、空気引き抜き管(38)と、処理水引き抜き管(40)と、固形物引き抜き管(41)からなる、
ことを特徴とするコンテナ型散水ろ床装置。
〔2〕前記水槽部(36)に循環用処理水引き抜き管(42)を設けたことを特徴とする〔1〕記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔3〕前記処理水槽(30)内に越流トラフ(43)を設け、当該越流トラフ(43)につながっている処理水引き抜き管(40)と循環用処理水引き抜き管(42)の間に隔て板(44)を移動可能に設けたこと特徴とする〔2〕に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔4〕前記空気引き抜き管(38)の途中に、該空気引き抜き管(38)内から水溜まりを排出するドレン管(45)を設けたことを特徴とする〔1〕から〔3〕の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔5〕前記空気引き抜き管(38)を当該空気引き抜き管(38)の先端38aが下となるように傾斜をつけていることを特徴とする〔1〕から〔4〕の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔6〕前記処理水槽(30)の底板(31)が処理水の排出部に向かって少なくとも1/100の勾配を設けていることを特徴とする〔1〕から〔5〕の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔7〕前記散水ろ床装置(1)の前記処理水槽(30)を土木躯体とし、海上輸送用コンテナの寸法規制内で、前記処理水槽(30)が占めていたスペースを、前記散水ろ床装置(1)の前記反応槽(20)の容量に置き換えて増やすことを特徴とする〔1〕から〔6〕の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔8〕前記反応槽(20)を複数段の前記筐体(21)で構成し、当該筐体(21)の個数を変えることで前記散水ろ床装置(1)の高さや、容積を変更することを特徴とする〔7〕に記載のコンテナ型散水ろ床装置。
〔9〕固形物引き抜きを行う際には処理水槽(30)に溜まった処理水全量を固形物引き抜き管(41)の弁を開放して排出させたうえで、汚水を散水ろ床に散水させたまま、ろ床を通過して処理水槽(30)に滴下する処理水をシャワリングさせて底板(31)上にある溜った固形物を処理水とともに水平に近い緩い傾斜でも堰(37)方向に向かって送ることを特徴とする〔1〕から〔8〕の何れか1に記載のコンテナ型散水ろ床装置の処理水槽(30)の洗浄方法。
【0009】
上記構成の本発明によれば、コンテナ型散水ろ床装置において、処理槽内に溜まった固形物を機械等を使わずに自動的に排出することができ、かつ、寸法規制のある海上輸送用コンテナに組み込まれた散水ろ床装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例を側面から見た斜視図である。
図2】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の正面図である。
図3】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の平面図である。
図4】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の側面図である。
図5図3のA-A断面図
図6図4のB-B断面図
図7図4のC-C断面図
図8】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
図9】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
図10】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
図11】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
図12】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
図13】本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例を側面から見た斜視図であり、外枠として海上輸送用コンテナを利用した例、図2は本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の正面図、図3は本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の平面図、図4は本発明のコンテナ型散水ろ床装置の実施例の側面図、図5図3のA-A断面図、図6は、図4のB-B断面図、図7図4のC-C断面図、図8図9は本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図である。
図1図11において、1は散水ろ床装置であり、20は反応槽、30は処理水槽である。
本発明の実施例においては、コンテナ型散水ろ床装置の海上輸送を考慮し、海上輸送用コンテナの枠(51~54)を利用しているが、これに限定されるものではなく、本発明の特徴は、処理水槽30を小型化するとともに、掻き寄せ機等の機械を用いることなく処理水及び固形物を排出することができるコンテナ型散水ろ床装置にある。
反応槽20は、気密性を備えた直方体からなる筐体21からなり、該筐体21の底部には水平方向に沿ってメッシュ状の底板22が設けられている。
そして、該底板22の上には、連続気泡構造の多孔質体であり、保水性と柔軟性を備えた素材により形成されたスポンジ担体23(本発明において、担体23と称する場合もある。)が充填されている。
図11に示すように、本実施例の場合、前記スポンジ担体23は、微生物の付着する間隙を有する多孔体24と、該多孔体24を収容する枠体25により構成されている。
前記多孔体24の素材としては、具体的には、例えばウレタン樹脂、エステル重合体、エーテル重合体といった樹脂を発泡させた多孔質体が用いられる。
筐体21内のスポンジ担体23に対し、散水ろ床装置の上部に設けられた散水ノズル(図示せず)から汚水が散水される。当該散水された汚水は、スポンジ担体23の多孔体24に浸透したり、多孔体24の表面を通ったりして下方へ移動し、その間に汚水は多孔体24に付着した微生物によって浄化され処理水として散水ろ床の下方から滴下する。
このとき、枠体25に設けられた開口部25aから多孔体24の内部に浸透することになり、多孔体24の内部に存在する微生物に対し、液中の汚濁物質や担体間の間隙に供給される空気から液に溶存していく酸素等が効率良く供給され、汚水が浄化される。
26は、配管を接続するスペースと装置上部のほうへ移動して点検作業に使用する梯子であり、27は反応槽内部を点検するための点検口である。
なお、後述するように処理水槽30に設けられた空気引き抜き管38から、処理水槽30内の空気をファン等(図示せず)で引き込むと、前記反応槽20の筐体21内のスポンジ担体23の表面から酸素が溶け込んだ液が浸透して、前記反応槽20の筐体21内のスポンジ担体23に対して酸素等を供給するように運転されている。なお、ここでは担体の好適な例としてスポンジを取り上げたが、必ずしも多孔体24の素材としてスポンジを用いた担体23を用いる必要はない。例えば、担体23に代わりうるものとして、一般に水処理用ろ材として利用される石材や硬質樹脂等を用いることでもよい。
【0012】
処理水槽30は、矩形の底板31と側壁32~35とからなる箱状体の本体30Aとからなり、前記前記反応槽20から排出された処理水や汚泥等の固形物を分離する。
前記処理水槽30には前記反応槽20から排出された処理水や汚泥等の固形物を集めて排出する水槽部36が設けられている。
また、前記処理水槽30には、浄化された処理水の他に処理水に含まれている固形物が排出されてくるので、底板31の傾斜は、前記処理水槽30に排出された処理水や固形物が自重により、底板31の上を滑り、側壁33から水槽部36方向に向かって送られていく傾斜角であることが必要である。しかしながら、底板31の傾斜角が大きいと処理水槽30の高さを大きくする必要に迫られることとなり、海上輸送用コンテナでは寸法規制の制限を受ける恐れが生じる。処理水槽30の高さの抑制を考慮すると底板31は、傾斜のない水平とすることが好ましいが、固定物が自重により堰37方向に向かって送られなくなってしまうので、固形物引き抜きを行う際には処理水槽30に溜まった処理水全量を固形物引き抜き管41の弁(図示せず)を開放して排出させたうえで、汚水を散水ろ床に散水させたまま、ろ床を通過して処理水槽30に滴下する処理水をシャワリングさせて底板31上にある溜った固形物を処理水とともに水平に近い緩い傾斜でも堰37方向に向かって送ることができるようになる。底板31に固形物がなくなったら、固形物引き抜き管41の弁を閉じて処理水槽30に処理水を貯留する。
これらを考慮すると傾斜角は、1/100~15/100が好ましく、5/100~10/100がより好ましい。
傾斜角が1/100を下回ると、処理水槽30に滴下する処理水によるシャワリングでは固定物が堰37方向に送られずに底板31上に堆積してしまいやすい。
また、傾斜角が15/100を上回ると、処理水槽30の高さが大きくなってしまい、海上輸送用コンテナの規制内の寸法に散水ろ床装置1を組み込むためには、散水ろ床の反応槽(20)の高さを低くする必要に迫られ、反応槽容量が小さくなってしまい、浄化能力を低下させてしまうことになる。海上輸送用コンテナの外寸法は、例えば10フィートタイプで長さ2,991mm×幅2,438mm×高さ2,591mmとなっており、高さ2,591mm内に抑える必要がある。12、20、40フィートタイプにおいても高さ2,591mmで規制されている。
【0013】
前記水槽部36には、処理水槽30に溜まった処理水を堰き止める堰37が設けられていて、通常の運転においては当該堰37の下を掻い潜った処理水が水槽部36に流れ、処理水引き抜き管40から排出する。
また、水槽部36には、処理水槽30内の空気を引き抜く空気引き抜き管38が設けられている。
当該空気引き抜き管38の先端38aは、水槽部36に貯留されている処理水の水面39より上となるように設けられている。
このように先端部38aの下が処理水で水封されているので、ファン(図示せず)等で空気を引き込むと反応槽20の上部から反応槽20を通過して空気引き抜き管38の中に空気が入り、それと同時に処理水槽30内の腐敗臭が排出される。
前記したように、当該空気引き抜き管38から空気を引き込むと、反応槽20の上部から空気引き抜き管38の中に空気が入って、それと同時に前記反応槽20の筐体21内のスポンジ担体23に対して空気等が供給される。
【0014】
前記水槽部36には、当該水槽部36内に溜まった処理水や固形物を引く抜く固形物引き抜き管41が設けられている。
当該固形物引き抜き管41は、コンテナ型散水ろ床装置を稼働していくと底板31の傾斜部分に固形物が溜まるので、それを処理水と一緒に引き抜くためのものである。
このように構成された本件のコンテナ型散水ろ床装置1においては、散水ろ床装置の稼働において、底板31の傾斜部分に溜まった固形物を固形物引き抜き管41で処理水と一緒に引き抜き、前記処理水槽30内の処理水が空になった時に、反応槽20の上から処理水が滴下して散水され、雨のように降ってくるので、処理水を引き抜いた際に排出しきれなかった底板31上に堆積した固形物をきれいに洗浄できる。
このように本発明にかかるコンテナ型散水ろ床装置は、従来のように掻き寄せ機等の機械的な排出装置を設ける必要がないので、固形物を引き抜いたときに固形物の溜まりができず、処理水槽の中をきれいに掃除して中に溜まった固形物を排出できる。
【0015】
本実施例におけるコンテナ型散水ろ床装置1においては、下部の処理水槽30において処理水や汚泥等の固形物を集めて排出する水槽部36を、コンテナ型散水ろ床装置1より水平方向の外側になるように構成している。これは反応槽内部を点検するための点検口27のスペースと装置上部のほうへ移動して点検作業に使用する梯子26のスペースを確保して十分に余裕をとった構造としているためである。他の実施例として、図8に示すように反応槽容量を大きくして、反応槽内部を点検するための点検口27や点検作業用の梯子26を海上輸送用コンテナの寸法規制の範囲内に収めた構造としたうえで、コンテナ型散水ろ床の性能を最大限に高めるために前記水槽部36をコンテナ型散水ろ床装置1より水平方向の内側になるように構成しても良い。
【0016】
図6においては、汚水中の窒素除去のために処理水をコンテナ型散水ろ床装置1の汚水供給側の配管に図示しないポンプで循環させる循環用処理水引き抜き管42を設けた実施例を示す。汚水中のアンモニアを好気性の反応槽20で硝化反応させ、硝酸性窒素を含む処理水を反応槽20に循環させて、反応槽20に介在する通性嫌気性細菌である脱窒細菌の作用で脱窒反応させて窒素除去を行う。処理水引き抜き管40と循環用処理水引き抜き管42は越流トラフ43とつながっており、越流トラフ43の処理水引き抜き管40と循環用処理水引き抜き管42の間には隔て板44が移動可能に設けられる。隔て板44は循環用処理水の循環量を決定するために、設置位置を図中の矢印の方向に調整可能にしている。即ち、窒素除去率を高めるべきときには隔て板44を処理水引き抜き管40側に近づけて処理水の循環量を多くする。反対に窒素除去率を高める必要のないときには隔て板44を循環用処理水引き抜き管42側に近づけて処理水の循環量を少なくする。
【0017】
図9は、本発明のコンテナ型散水ろ床装置1の他の実施例を表す図で、空気引き抜き管38内が湿潤して結露すると水溜まりが生じるので、図示していないファン等の機器で吸引するとファンが水を吸込んで損傷してしまう恐れがある。そこで、当該空気引き抜き管38の途中にドレン管45を設け、空気引き抜き管38内の水溜まりを処理水引き抜き管40へ排出するようにしている。排出先は処理水引き抜き管40に限らず、固形物引き抜き管41でもよいし、ドレン管45を水槽部36の側壁32に穴あけ加工を施して接続してもよい。
【0018】
図10は、本発明のコンテナ型散水ろ床装置1の他の実施例を表す図で、空気引き抜き管38を、当該空気引き抜き管38の先端38aが下となるように傾斜をつけている例を示している。これにより空気引き抜き管38内に発生した露水は処理水槽30内に排出されて、空気引き抜き管38内の水溜まりを避けることができる。
【0019】
図11から図13は、本発明のコンテナ型散水ろ床装置の他の実施例を表す図である。
図11は、前記反応槽20の構成を表す図である。
図12においては、図1に示されたコンテナ型散水ろ床装置1の処理水槽30をコンクリート等の土木躯体とした実施例を示している。この例では、海上輸送用コンテナの寸法規制内で、図1で処理水槽30が占めていたスペースを、コンテナ型散水ろ床装置1の反応槽20の容量に置き換えて増やすことができる。また、シャワリングにより緩い傾斜の底板31上の堆積物を排出することが可能なので、コンテナ型散水ろ床装置1の高さを低くでき、コンパクト化のメリットがある。従って、コンテナ型散水ろ床装置1の容量増加によって浄化能力を向上させつつも、コンテナ型散水ろ床装置1の高さ方向のスペースを抑えることができる。
【0020】
図13においては、図12と同様に処理水槽30を土木躯体とした実施例であり反応槽20を2段積みとしている。
【0021】
図12及び13に示すように反応槽20を複数個の筐体21で構成し、横方向に増やしたり上下方向に筐体21の個数を変えたりすることでコンテナ型散水ろ床装置1の高さや、容積を変更することができる。
【0022】
本発明の実施例においては、コンテナ型散水ろ床装置の外枠(51~54)に海上輸送用コンテナを利用しているが、これに限定されるものではなく本発明の特徴はコンテナ型散水ろ床装置における下部の処理水槽の構造にある。
【符号の説明】
【0023】
1:コンテナ型散水ろ床装置
20:反応槽
21:筐体
22:底板
23:スポンジ担体
26:梯子
27:点検口
30:処理水槽
31A:本体
31:底板
32~35:側壁
36:水槽部
37:堰
38:空気引き抜き管
40:処理水引き抜き管
41:固形物引き抜き管
42:循環用処理水引き抜き管
43:越流トラフ
44:隔て板
45:ドレン管
50:土木躯体
図1
図2
図3
図4
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図11
図12
図13