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特開2023-125197音波伝搬計算方法及び音波伝搬計算装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125197
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】音波伝搬計算方法及び音波伝搬計算装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/00 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029172
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 慎太郎
(57)【要約】
【課題】音波の音波伝搬計算における計算時間の短縮を目的とする。
【解決手段】音波伝搬計算方法は、PE(Parabolic Equation)法を用いて、計算開始距離から所望計算距離までの間、広い距離刻みで音圧を計算する第1音圧計算を行うステップと、所望計算距離から計算終了距離までの間、第1音圧計算で計算された音圧を用いて、第1音圧計算よりも詳細に音圧を計算する第2音圧計算を行うステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PE(Parabolic Equation)法を用いて、計算開始距離から所望計算距離までの間、広い距離刻みで音圧を計算する第1音圧計算を行うステップと、
前記所望計算距離から計算終了距離までの間、前記第1音圧計算で計算された音圧を用いて、前記第1音圧計算よりも詳細に音圧を計算する第2音圧計算を行うステップと、
を含む音波伝搬計算方法。
【請求項2】
前記第2音圧計算を行うステップは、
前記PE法を用いて前記第2音圧計算を行うものであり、
前記第1音圧計算と同じ角度範囲に相当し、前記第1音圧計算と異なる距離刻み及び近似次数を用いて、前記第2音圧計算を行う請求項1に記載の音波伝搬計算方法。
【請求項3】
前記第2音圧計算を行うステップは、
前記第1音圧計算で用いられる距離刻みよりも小さい距離刻みを用いて前記第2音圧計算を行う請求項2に記載の音波伝搬計算方法。
【請求項4】
前記第1音圧計算を行うステップは、
角度テーブルにおける最大の距離刻みと対応する次数とを用いて前記第1音圧計算を行うものであり、
前記第2音圧計算を行うステップは、
前記第1音圧計算の終了時における第1計算終了距離と、前記計算終了距離と、表示サンプル数とに基づき計算間隔を算出し、前記計算間隔に応じた前記距離刻みと対応する次数とを用いて前記第2音圧計算を行う請求項2又は3に記載の音波伝搬計算方法。
【請求項5】
前記第2音圧計算を行うステップは、
球面拡散と反射損失を用いて前記第2音圧計算を行うものであり、
前記第1音圧計算で求めた音圧を各深度での音源とし、複数の前記音源の音圧を距離方向に重ね合わせて前記音圧を計算する請求項1に記載の音波伝搬計算方法。
【請求項6】
PE(Parabolic Equation)法を用いて、計算開始距離から所望計算距離までの間、広い距離刻みで音圧を計算する第1音圧計算を行う第1音圧計算部と、
前記所望計算距離から計算終了距離までの間、前記第1音圧計算で計算された音圧を用いて、前記第1音圧計算よりも詳細に音圧を計算する第2音圧計算を行う第2音圧計算部と、
を備える音波伝搬計算装置。
【請求項7】
前記第2音圧計算部は、
前記PE法を用いて前記第2音圧計算を行うものであり、
前記第1音圧計算と同じ角度範囲に相当し、前記第1音圧計算と異なる距離刻み及び近似次数を用いて、前記第2音圧計算を行う請求項6に記載の音波伝搬計算装置。
【請求項8】
前記第2音圧計算部は、
球面拡散と反射損失を用いて前記第2音圧計算を行うものであり、
前記第1音圧計算で求めた音圧を各深度での音源とし、複数の前記音源の音圧を距離方向に重ね合わせて前記音圧を計算する請求項6に記載の音波伝搬計算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中音響における音波伝搬を計算する音波伝搬計算方法及び音波伝搬計算装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海中における音の利用を考える上で、海中の音の伝搬の様子を知ることは重要な要素となっている。海中の音の伝搬を模擬する技術に音波伝搬シミュレーションという技術がある。音波伝搬シミュレーションは音波伝搬理論を基に構成されたプログラム(伝搬モデル)を使って計算されており、現在、頻繁に用いられている伝搬モデルの一つに波動理論を使ったPE(Parabolic Equation)モデルがある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】F. B. Jensen 他,“6 Parabolic Equations”, Computational Ocean Acoustics (Second Edition),2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音波伝搬シミュレーションを活用するにあたって、特定の距離以降の詳細なシミュレーション結果が重要になる場合がある。しかし、PE法は距離方向に逐次的に音圧を計算していく方式であるために、特定の距離以降だけをピンポイントで詳細に計算することができない。特定の距離以降を細かい距離刻みで計算する場合、すべての距離範囲を細かい距離刻みで計算する必要があり、計算時間が長くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を背景としたものであり、音波の音波伝搬計算における計算時間の短縮を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音波伝搬計算方法は、PE(Parabolic Equation)法を用いて、計算開始距離から所望計算距離までの間、広い距離刻みで音圧を計算する第1音圧計算を行うステップと、所望計算距離から計算終了距離までの間、第1音圧計算で計算された音圧を用いて、第1音圧計算よりも詳細に音圧を計算する第2音圧計算を行うステップと、を含む。
また、本発明に係る音波伝搬計算装置は、PE法を用いて、計算開始距離から所望計算距離までの間、広い距離刻みで音圧を計算する第1音圧計算を行う第1音圧計算部と、所望計算距離から計算終了距離までの間、第1音圧計算で計算された音圧を用いて、第1音圧計算よりも詳細に音圧を計算する第2音圧計算を行う第2音圧計算部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の音波伝搬計算方法及び音波伝搬計算装置によると、精度の異なる二段階の計算を行って音圧を計算することで、所望計算距離以降の詳細なシミュレーションを行いつつ、結果計算時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る音波伝搬計算装置における計算概念図である。
図2】実施の形態1に係る音波伝搬計算装置の概略構成図である。
図3】実施の形態1に係る近似次数・距離刻み算出部の処理フローである。
図4】実施の形態1に係る音波伝搬計算装置における音波伝搬計算方法のフローである。
図5】実施の形態1に係る音波伝搬計算装置における第1音圧計算及び第2音圧計算を説明する図である。
図6】実施の形態2に係る音波伝搬計算装置の概略構成図である。
図7】実施の形態2に係る音波伝搬計算装置の計算概念図である。
図8】実施の形態2に係る音波伝搬計算装置における第1音圧計算及び第2音圧計算を説明する図である。
図9】実施の形態2に係る簡易音圧算出部の処理フローである。
図10】経路長の算出に用いられる各パラメータのイメージ図である。
図11】(a)は、近似次数m及び距離刻みΔrの組み合わせを示すグラフであり、(b)は、近似次数m及び距離刻みΔrの各組み合わせに対応する計算時間を示すグラフである。
図12】従来技術に係る音波伝搬計算装置の概略構成図である。
図13】近似次数mと距離刻みΔrと角度範囲θの関係を示すパラメータテーブルである。
図14】従来技術に係る近似次数・距離刻み算出部の処理フローである。
図15】従来技術に係る音波伝搬計算装置における計算概念図である。
図16】従来技術に係る音波伝搬計算装置における音圧計算を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、従来のPE(Parabolic Equation)法の高速化理論について説明する。PE法は、式(1)に示すヘルムホルツ方程式を解くことで音波伝搬を計算している。
【数1】
ここで、pは音圧、kは波数を表している。
【0010】
円筒拡散と中心波数による位相回転成分を、ハンケル関数を用いてH (1)(kr)と表し、それ以外の成分をψ(r,z)とすることで、式(2)のようにヘルムホルツ方程式の解を仮定する。H (1)(kr)は距離が分かれば簡単に求まるので、ψ(r,z)が計算できれば任意の距離と深度の音圧が計算できることになる。
【数2】
ここで、rは距離、zは深度、kは中心波数を表している。
【0011】
式(1)に式(2)を代入し、式(3)で定義される微分作用素qを導入すると式(4)が得られる。
【数3】
【数4】
ここで、Δrは距離刻み、nは屈折指標である。
【0012】
式(4)を解くにあたって、このままの形ではψ(r+Δr,z)を求めるのは困難である。そこで、式(5)のようにPade近似で指数関数の項を近似することを考える。
【数5】
ここで、a、bは、近似係数を表しており、jは近似係数のインデックスを表している。
【0013】
この近似係数a、bは、距離刻みΔrと近似次数mに依存しており、距離刻みΔrと近似次数mが決まると、一意に求まることが分かっている。式(5)を式(4)に代入することで式(6)が得られる。
【数6】
【0014】
式(6)を解くことで、距離rからΔrだけ進んだ点のψ(r+Δr,z)を計算することができる。式(2)で説明しているように、ψ(r+Δr,z)に対してH (1)(kr+Δr)を乗算すれば音圧p(r+Δr,z)を求めることができる。このようにして、PE法では距離方向に逐次的に音圧を計算している。PE法による計算の初期値(初期音場)の決定と、式(6)の差分化に関しては「石渡 他、“浅海域音場解析のための放物型音波伝搬モデルの開発”、日本音響学会誌、57(12)、2001」に記載されている方法が考えられる。
【0015】
次に、近似による誤差について説明する。近似係数a、bが決定すると、式(5)の右辺の絶対値を式(7)のようなqの関数と考えることができる。
【数7】
【0016】
また、q=-sinθという関係が成り立っていることが分かっているので、式(7)は式(8)のように角度θの関数として書き換えることができる。ここで、θは水平方向を0°とした時の平面波の進行方位を表している。
【数8】
【0017】
式(5)の左辺の絶対値は1なので、式(8)は1から離れるほど誤差が大きくなると言える。さらに、この誤差はθ(-90°~90°)の絶対値が大きくなるほど増大することが分かっている。また、この誤差は式(4)からも分かるようにΔr(1ステップ)だけ計算が進むごとに累積されていく。つまり、ある距離rまでの累積誤差ε(r,θ)は式(9)のように表すことができる。
【数9】
【0018】
距離rまでの許容する誤差を設定することで、距離刻みΔr、近似次数m、角度θの組み合わせが決まる。このときのθを、PE法で計算する角度範囲と称する。
【0019】
最後に、角度範囲θを固定した時の距離刻みΔr、近似次数mの組み合わせについて説明する。近似誤差u(θ)は近似次数mが大きくなるほど、又は距離刻みΔrが小さくなるほど誤差が小さくなる。反対に近似次数mが小さくなるほど、又は距離刻みΔrが大きくなるほど誤差が大きくなることが分かっている。この関係を使うと距離刻みΔrと近似次数mは互いの誤差の増加を打ち消し合うことができる。
【0020】
そのため、同じ値の累積誤差ε(r,θ)でも複数の距離刻みΔr及び近似次数mの組み合わせが存在することになる。図11(a)は、近似次数m及び距離刻みΔrの組み合わせを示すグラフであり、図11(b)は、近似次数m及び距離刻みΔrの各組み合わせに対応する計算時間を示すグラフである。図11(a)及び(b)は、f=10kHz、r=10km、θ=30°において、ε(r,θ)=-4dBを誤差許容した場合の例である。ただし、距離刻みΔrは波長比である。図11から、近似次数mを下げて距離刻みΔrを細かくするよりも、近似次数mを上げて距離刻みΔrを粗くする方が同じ誤差の許容値で同じ角度範囲θを計算する場合でも、計算時間が短くなるということが分かる。
【0021】
次に、従来技術に係る音波伝搬計算装置200について説明する。図12は、従来技術に係る音波伝搬計算装置200の概略構成図である。図12に示すように、従来技術の音波伝搬計算装置200は、初期条件記憶部1と、計算間隔算出部2と、近似次数・距離刻み算出部3と、近似係数算出部4と、音波伝搬計算部5と、制御部7と、を有している。音波伝搬計算装置200の各部は、専用の機器又は専用の処理回路により実現される。もしくは、音波伝搬計算装置200はCPUなどのプロセッサとメモリとを備え、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより音波伝搬計算装置200の各部を実現してもよい。もしくは、音波伝搬計算装置200の各部を、専用の機器又は専用の回路と、ソフトウェアとの組み合わせにより実現してもよい。
【0022】
初期条件記憶部1は、RAM、ROM又はフラッシュメモリなどのメモリであり、ユーザーから入力された初期条件を記憶する。初期条件は、環境条件、角度範囲θ、計算開始距離R、計算終了距離R、及び表示サンプル数Nである。環境条件は、例えば、地形及び音速などである。
【0023】
計算間隔算出部2は、制御部7を介して入力される計算開始距離R、計算終了距離R、及び表示サンプル数Nから計算間隔Δrを算出して出力する。計算間隔Δrは式(10)のように計算できる。
【数10】
計算間隔算出部2から出力された計算間隔Δrは、制御部7を介して近似次数・距離刻み算出部3へ入力される。
【0024】
近似次数・距離刻み算出部3は、制御部7を介して入力される角度範囲θ及び計算間隔Δrから、音圧計算に使用する近似次数mと距離刻みΔrとを算出して出力する。図13は、近似次数mと距離刻みΔrと角度範囲θの関係を示すパラメータテーブルである。近似次数・距離刻み算出部3は、図13に示すパラメータテーブルを参照し、入力された角度範囲θ及び計算間隔Δrを用いて、近似次数mと距離刻みΔrとを算出する。
【0025】
図14は、従来技術に係る近似次数・距離刻み算出部3の処理フローである。図14に示すように、近似次数・距離刻み算出部3は、まず、パラメータテーブルから角度範囲θに対応した行(角度テーブル)を抽出する(S101)。そして、近似次数・距離刻み算出部3は、抽出した角度テーブルから、計算間隔Δr未満の要素を抽出し、新たな角度テーブルを生成する(S102)。近似次数・距離刻み算出部3は、生成した新たな角度テーブルから最大の距離刻みΔrとそれに対応した近似次数mを取得する(S103)。そして、近似次数・距離刻み算出部3は、抽出した距離刻みΔrと近似次数mを出力する(S104)。近似次数・距離刻み算出部3から出力された近似次数mと距離刻みΔrは、制御部7を介して近似係数算出部4へ入力される。
【0026】
図12に戻って、近似係数算出部4は、制御部7を介して入力される近似次数mと距離刻みΔrから、近似係数a、bを算出して出力する。近似係数算出部4では、Pade近似の元々の考え方である、近似した有理関数(分母と分子がm次の多項式)が近似元の関数の2m次のテイラー展開に等しくなるという関係を用いて、距離刻みΔrと近似次数mから近似係数a、bを算出する。近似係数算出部4から出力された近似係数a、bは、制御部7を介して音波伝搬計算部5へ入力される。
【0027】
音波伝搬計算部5は、制御部7を介して入力される近似係数a、b、環境条件、計算開始距離R、計算終了距離Rから、計算距離系列Rng及び音圧p(r,z)を算出して出力する。音波伝搬計算部5は、式(6)で示した微分方程式に対して差分化を用いることで、音圧p(r,z)を距離方向に逐次的に計算する。計算距離系列Rngは、計算を実施した距離の系列を表しており、初項を計算開始距離R、末項を計算終了距離R、交差を距離刻みΔrとした時の等差数列で与えられる配列である。
【0028】
制御部7は、初期条件記憶部1、計算間隔算出部2、近似次数・距離刻み算出部3、近似係数算出部4、及び音波伝搬計算部5にそれぞれ接続されており、各部の入出力を制御する。
【0029】
図15は、従来技術に係る音波伝搬計算装置200における計算概念図である。図15に示すように、従来技術に係る音波伝搬計算装置200では、PE法を用いて、計算間隔Δrに応じた距離刻みΔrと近似次数mで、全距離範囲(計算開始距離Rから計算終了距離Rまで)の音圧を計算する。
【0030】
図16は、従来技術に係る音波伝搬計算装置200における音圧計算を説明する図である。図16においては、各部を仲介する制御部7は省略している。まず、ユーザーによって、初期条件が初期条件記憶部1に入力される。そして、初期条件記憶部1から計算開始距離R、計算終了距離R及び表示サンプル数Nが計算間隔算出部2に入力され、計算間隔算出部2から計算間隔Δrが出力される。そして、計算間隔算出部2で算出された計算間隔Δrと、初期条件記憶部1に記憶された角度範囲θとが近似次数・距離刻み算出部3に入力され、近似次数・距離刻み算出部3から距離刻みΔrと近似次数mとが出力される。
【0031】
次に、近似次数・距離刻み算出部3から出力された距離刻みΔrと近似次数mとが近似係数算出部4に入力され、近似係数算出部4から近似係数a、bが出力される。最後に、近似係数算出部4にて算出された近似係数a、bと、初期条件記憶部1に記憶された環境条件、計算開始距離R、及び計算終了距離Rとが音波伝搬計算部5に入力され、音波伝搬計算部5から計算距離系列Rngと音圧p(r,z)とが出力される。
【0032】
従来技術に係る音波伝搬計算装置200においては、距離方向に逐次的に音圧を計算していくため、特定の距離以降だけをピンポイントで詳細に計算することができない。従来技術に係る音波伝搬計算装置200において、特定の距離以降を細かい距離刻みで計算する場合、すべての距離範囲を細かい距離刻みで計算する必要があり、計算時間が長くなってしまう。このような問題を解決する本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0033】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る音波伝搬計算装置100における計算概念図である。上記のように、従来方式では全距離範囲の計算を一回の計算(1種類の距離刻みΔr、近似次数m)で実行していた。これに対し、本実施の形態の音波伝搬計算装置100は、特定の距離までの音圧計算を行う第1音圧計算と、特定の距離以降の音圧計算を行う第2音圧計算の二段階の音波伝搬計算を行う構成を有している。
【0034】
図1に示すように、一段階目の第1音圧計算では、角度範囲θに対応した最大の距離刻みΔr(1)、すなわち粗い距離刻みで、計算開始距離Rから所望計算距離Rの直前までが計算される。一方、二段階目の第2音圧計算では第1音圧計算の最後の距離である第1計算終了距離R (1)の音圧p(R (1),z)を初期音場として用いて、計算間隔Δrに応じた細かい距離刻みΔr(2)で所望計算距離Rから計算終了距離Rまでが計算される。
【0035】
図2は、実施の形態1に係る音波伝搬計算装置100の概略構成図である。図2に示すように、本実施の形態の音波伝搬計算装置100は、初期条件記憶部10と、計算間隔算出部20と、近似次数・距離刻み算出部30と、近似係数算出部40と、音波伝搬計算部50と、計算結果記憶部60と、制御部70と、を有している。音波伝搬計算装置100の各部は、専用の機器又は専用の処理回路により実現される。もしくは、音波伝搬計算装置100はCPUなどのプロセッサとメモリとを備え、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することにより音波伝搬計算装置100の各部を実現してもよい。もしくは、音波伝搬計算装置100の各部を、専用の機器又は専用の回路と、ソフトウェアとの組み合わせにより実現してもよい。
【0036】
初期条件記憶部10は、RAM、ROM又はフラッシュメモリなどのメモリであり、ユーザーから入力された初期条件を記憶する。初期条件は、環境条件、角度範囲θ、計算開始距離R、計算終了距離R、所望計算距離R、及び表示サンプル数Nである。所望計算距離Rは、第1音圧計算から第2音圧計算へと切替える距離である。また、初期条件記憶部10は、さらに後述するフラグ、音波伝搬計算装置100の処理に必要なプログラム、パラメータ及びデータなどを記憶している。
【0037】
計算間隔算出部20は、制御部70を介して入力される第1計算終了距離R (1)、計算終了距離R、及び表示サンプル数Nから計算間隔Δrを算出して出力する。第1計算終了距離R (1)は、第1音圧計算を行った距離であり、所望計算距離Rと略同じである。計算間隔算出部20は、上記の式(10)を用いて計算間隔Δrを算出する。ただし、式(10)における計算開始距離Rに替えて第1計算終了距離R (1)が用いられる。計算間隔算出部20から出力された計算間隔Δrは、制御部70を介して近似次数・距離刻み算出部30へ入力される。
【0038】
近似次数・距離刻み算出部30は、制御部70を介して入力される角度範囲θ、計算間隔Δr、及びフラグに基づき、音圧計算に使用する近似次数mと距離刻みΔrを算出して出力する。フラグは、第1音圧計算か第2音圧計算かを判断するフラグであり、フラグが「1」場合は第1音圧計算であり、「1」以外の場合は第2音圧計算であることを示す。
【0039】
図3は、実施の形態1に係る近似次数・距離刻み算出部30の処理フローである。図3に示すように、近似次数・距離刻み算出部30は、まずパラメータテーブルから角度範囲θに対応した行(角度テーブル)を抽出する(S11)。そして、近似次数・距離刻み算出部30は、フラグが1であるか否かを判断する(S12)。フラグが1である場合(S12:YES)、すなわち第1音圧計算の場合、近似次数・距離刻み算出部30は、抽出した角度テーブルから最大の距離刻みΔrとそれに対応した近似次数mを取得する(S13)。
【0040】
一方、フラグが1でない場合(S12:NO)、すなわち第2音圧計算の場合、近似次数・距離刻み算出部30は、抽出した角度テーブルから、計算間隔Δr未満の要素を抽出し、新たな角度テーブルを生成する(S14)。そして、近似次数・距離刻み算出部3は、算出した新たな角度テーブルから最大の距離刻みΔrとそれに対応した近似次数mを取得する(S13)。最終的に近似次数・距離刻み算出部3は、距離刻みΔrと近似次数mを出力する(S15)。これにより、第1音圧計算においては、できるだけ広い距離刻みで計算が行われるのに対して、第2音圧計算においては、ユーザーが所望する計算間隔Δrに応じた、第1音圧計算よりも小さい距離刻みで計算を行うことができる。近似次数・距離刻み算出部30から出力された近似次数mと距離刻みΔrは、制御部70を介して近似係数算出部4へ入力される。
【0041】
近似係数算出部40は、制御部70を介して入力される近似次数mと距離刻みΔrから、近似係数a、bを算出して出力する。近似係数算出部40では、Pade近似の元々の考え方である、近似した有理関数(分母と分子がm次の多項式)が近似元の関数の2m次のテイラー展開に等しくなるという関係を用いて、距離刻みΔrと近似次数mから近似係数a、bを算出する。近似係数算出部40から出力された近似係数a、bは、制御部70を介して音波伝搬計算部50へ入力される。
【0042】
音波伝搬計算部50は、第1音圧計算においては、制御部70を介して入力される近似係数a、b、環境条件、計算開始距離R、所望計算距離Rから、計算距離系列Rng及び音圧p(r,z)を算出して出力する。第1音圧計算において音波伝搬計算部50から出力された音圧p(r,z)及び計算距離系列Rngは、制御部70を介して計算結果記憶部60に記憶される。
【0043】
また、音波伝搬計算部50は、第2音圧計算においては、制御部70を介して入力される近似係数a、b、初期音場(第1音圧計算で最後に計算した音圧p(R (1),z))、環境条件、計算終了距離Rから、音圧p(r,z)及び計算距離系列Rngを算出して出力する。音波伝搬計算部50は、式(6)で示した微分方程式に対して差分化を用いることで、音圧p(r,z)を距離方向に逐次的に計算する。
【0044】
計算結果記憶部60は、RAM、ROM又はフラッシュメモリなどのメモリであり、制御部70を介して入力された第1計算終了距離R (1)、音圧p(r,z)及び計算距離系列Rngを保存する。第2音圧計算時には、制御部70によって、初期音場(第1音圧計算で最後に計算した音圧p(R (1),z))と第1計算終了距離R (1)とが抽出される。なお、計算結果記憶部60は、初期条件記憶部10と別々のメモリにもうけられてもよいし、同じメモリであってもよい。
【0045】
制御部70は、初期条件記憶部10、計算間隔算出部20、近似次数・距離刻み算出部30、近似係数算出部40、音波伝搬計算部50と、及び計算結果記憶部60にそれぞれ接続されており、各部の入出力を制御する。
【0046】
図4は、実施の形態1に係る音波伝搬計算装置100における音波伝搬計算方法のフローである。図4に示すように、まず、角度テーブルの最大の距離刻みΔrとそれに対応した近似次数mを用いた第1音圧計算が行われる(S1)。第1音圧計算では、音波伝搬計算部50によって、0<R-N(1)Δr(1)≦Δr(1)を満たすようなN(1)が算出される(S101)。N(1)Δr(1)は、第1計算終了距離R (1)である。そして、音波伝搬計算部50は、距離ステップを更新しながらN(1)回、音圧p(r,z)を計算する(S102)。これにより、所望計算距離Rまで第1音圧計算が行われる。
【0047】
続いて、ユーザーが所望する計算間隔Δrに応じた距離刻みΔrとそれに対応した近似次数mを用いた第2音圧計算が行われる(S2)。そして、第2音圧計算が終了すると、音圧p(r,z)と計算距離系列Rngが出力される(S3)。
【0048】
図5は、実施の形態1に係る音波伝搬計算装置100における第1音圧計算及び第2音圧計算を説明する図である。図5において、破線で囲まれた各部が第1音圧計算を行う第1音圧計算部であり、一点鎖線で囲まれた各部が第2音圧計算を行う第2音圧計算部である。図5に示すように、まず、ユーザーによって初期条件が入力され、初期条件記憶部10に記憶される。初期条件は、環境条件、角度範囲θ、計算開始距離R、計算終了距離R、所望計算距離R、及び表示サンプル数Nである。初期条件は、ユーザーが音波伝搬計算装置100の操作部を操作することで入力されてもよいしユーザーから送信された初期条件を音波伝搬計算装置100の通信部で受信することで入力されてもよい。
【0049】
そして、第1音圧計算において、初期条件記憶部10から角度範囲θとフラグとが近似次数・距離刻み算出部30に入力される。そして、近似次数・距離刻み算出部30から角度範囲θに応じた最大の距離刻みΔr(1)と、それに対応する近似次数m(1)とが出力される。
【0050】
続いて、近似次数・距離刻み算出部30から出力された距離刻みΔr(1)と近似次数m(1)が近似係数算出部40に入力され、近似係数算出部40から第1音圧計算で用いるための近似係数a (1)、b (1)が出力される。
【0051】
続いて、近似係数算出部40から出力された近似係数a (1)、b (1)と、初期条件記憶部10に記憶された環境条件、計算開始距離R、及び所望計算距離Rとが、音波伝搬計算部50に入力される。そして、音波伝搬計算部50においてN(1)ステップまでの計算距離系列Rng(1)と音圧p(r,z)が計算される。
【0052】
音波伝搬計算部50において計算された計算距離系列Rng(1)及び音圧p(r,z)と、第1計算終了距離R (1)とは、計算結果記憶部60に記憶される。この音圧(r,z)は、第2音圧計算で用いられる初期音圧p(R (1),z)である。その後、制御部70によって、初期条件記憶部10に記憶されるフラグが「1」以外(例えば「0」)に変更され、第1音圧計算が終了する。
【0053】
第2音圧計算においては、計算結果記憶部60に記憶された第1計算終了距離R (1)と、初期条件記憶部10に記憶された計算終了距離R及び表示サンプル数Nとが計算間隔算出部20へ入力され、計算間隔算出部20から計算間隔Δrcが出力される。
【0054】
続いて、計算間隔算出部20から出力された計算間隔Δrcと、初期条件記憶部10に記憶された角度範囲θ及びフラグとが、近似次数・距離刻み算出部30へ入力される。そして、近似次数・距離刻み算出部30から計算間隔Δrcに応じた距離刻みΔr(2)と近似次数m(2)とが出力される。
【0055】
続いて、近似次数・距離刻み算出部30から出力された距離刻みΔr(2)と近似次数m(2)が近似係数算出部40へ入力され、近似係数算出部40から第2音圧計算で用いるための近似係数a (2)、b (2)が出力される。
【0056】
続いて、近似係数算出部40から出力された近似係数a (2)、b (2)と、初期条件記憶部10に記憶された環境条件及び計算終了距離Rと、計算結果記憶部60に記憶された初期音圧p(R (1),z)及び第1計算終了距離R (1)とが音波伝搬計算部50に入力される。そして、音波伝搬計算部50によって所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの音圧が詳細に計算され、音圧p(r,z)と計算距離系列Rng(2)とがユーザーに出力される。
【0057】
以上のように、本実施の形態の音波伝搬計算装置100によれば、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでを細かい距離刻みで計算し、それ以前の距離を粗い距離刻みで計算することになるので、従来方式のように全距離範囲を細かく計算する必要がなくなる。同じ角度範囲θの計算をする場合でも、距離刻みが粗いほど、計算時間が短くなるため、細かい距離刻みで計算する距離範囲が少ない本実施の形態の構成は、特定の距離以降の詳細なシミュレーションを行いつつ、計算時間を短縮することができる。
【0058】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2に係る音波伝搬計算装置100Aの概略構成図である。実施の形態2では、実施の形態1の計算間隔算出部20に替えて簡易音圧算出部80を備える点において実施の形態1と相違する。音波伝搬計算装置100Aにおけるその他の構成は、実施の形態1と同じである。
【0059】
簡易音圧算出部80は、初期音源、環境条件、計算終了距離R、表示サンプル数N、第1計算終了距離R (1)を用いて、任意の距離の音圧p(r,z)と計算距離系列Rng(2)を算出する。初期音源は、第1音圧計算で最後に計算した距離の計算深度毎の音圧p(R (1),z)を、それぞれ各深度に対応した個々の音源と考えた場合の音源である。
【0060】
本実施の形態の音波伝搬計算装置100Aにおける全体の処理の流れについて説明する。本実施の形態の音波伝搬計算装置100Aにおいても、実施の形態1と同様に二段階の音波伝搬計算を実施するものであり、音波伝搬計算装置100Aにおける音波伝搬計算フローは、図4と同じである。
【0061】
図7は、実施の形態2に係る音波伝搬計算装置100Aの計算概念図である。本実施の形態では、第2音圧計算の計算方法が実施の形態1と相違する。本実施の形態の第2音圧計算では、簡易音圧算出部80によって、等音速且つ、距離非依存環境を仮定し、球面拡散と反射損失のみで音圧p(r,z)を計算する。
【0062】
図8は、実施の形態2に係る音波伝搬計算装置100Aにおける第1音圧計算及び第2音圧計算を説明する図である。図8において、破線で囲まれた各部が第1音圧計算を行う第1音圧計算部であり、一点鎖線で囲まれた簡易音圧算出部80が第2音圧計算を行う第2音圧計算部である。実施の形態2における第1音圧計算は、実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0063】
本実施の形態の第2音圧計算では、初期条件記憶部10に記憶された計算終了距離R、表示サンプル数N、及び環境条件と、計算結果記憶部60に記憶された第1計算終了距離R (1)及び初期音圧p(R (1),z)とが、簡易音圧算出部80へ入力される。そして、簡易音圧算出部80は、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの音圧を計算し、音圧p(r,z)と計算距離系列Rng(2)を出力する。
【0064】
簡易音圧算出部80は、球面拡散と反射損失を使って音圧を算出する。放射角θに対する音圧pθを算出するための式(11)は下記のとおりである。
【数11】
ここで、θは放射角、pは音源の音圧、lは経路長、cは音速、bottom_lossθは放射角θに対応した反射損失であり、海底反射していない場合はbottom_loss=1となる。
【0065】
次に簡易音圧算出部80の動作について説明する。簡易音圧算出部80は、第1音圧計算で求めた鉛直音場を各深度での音源とし、複数の音源からの重ね合わせによって音圧を計算する。より詳しくは、簡易音圧算出部80は、音源から受波点までの音圧を経路毎(直接経路、海面反射経路、海底反射経路)に計算する。そして、簡易音圧算出部80は、経路毎の音圧を初期音源の数だけ計算し、最後に重ね合わせることで、受波点での音圧を求める。簡易音圧算出部80は、深度方向に対して受波点での音圧の計算を行うことで、ある距離における音圧を計算する。そして、簡易音圧算出部80は、ある距離での音圧を距離方向に計算していくことで、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの音圧を求めることができる。
【0066】
図9は、実施の形態2に係る簡易音圧算出部80の処理フローである。簡易音圧算出部80は、まず、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの計算に用いる計算距離系列Rng(2)を算出する(S21)。第1計算終了距離R (1)、所望計算距離R、計算終了距離R、表示サンプル数N、計算サンプル番号nとすると、計算距離系列Rng(2)のn番目の要素rは下記の式(12)のように算出することができる。
【数12】
【0067】
式(12)におけるrは、下記の式(13)で求められる。
【数13】
【0068】
続いて、簡易音圧算出部80は、音源から受波点までの直接経路、海面反射経路及び海底反射経路の各経路長を算出する(S22)。音源深度をz(iは音源深度のインデックス)、受波深度をz、水深をz、計算距離系列Rng(2)のn番目の要素をr、直接経路の放射角をθDP、海面反射経路の放射角をθSR、海底反射経路の放射角をθBRとする。図10は、経路長の算出に用いられる各パラメータのイメージ図である。経路長lは音源から受波点に到達する固有音線の放射角θを用いることで、式(14)のように求めることができる。
【数14】
【0069】
以下に経路毎の放射角と経路長の算出方法を示す。
直接経路(Direct Pass)の経路長lDPiは、下記の式(15)で算出される。
【数15】
【0070】
ここで、θDPiは直接経路の放射角であり、下記の式(16)で求められる。
【数16】
【0071】
海面反射経路(Surface Reflection)の経路長lSRiは、下記の式(17)で算出される。
【数17】
【0072】
ここで、θSRiは海面反射経路の放射角であり、下記の式(18)で求められる。
【数18】
【0073】
海底反射経路(Bottom Reflection)の経路長lBRiは、下記の式(19)で算出される。
【数19】
【0074】
ここで、θBRiは海底反射経路の放射角であり、下記の式(20)で求められる。
【数20】
【0075】
続いて、簡易音圧算出部80は、求めた受波点までの経路毎の経路長を使って、球面拡散と反射損失から、経路毎の音圧pを算出する(S23)。音源の音圧は第1音圧計算の最後に計算した距離の計算深度毎の音圧で与えられるので、p(R (1),z)と表せる。受波点での音圧をp(iは音源深度のインデックス)とすると、下記の式(21)のように計算することができる。
【数21】
ここで、cは音速、bottom_lossはθBRiに対応した海底での反射損失である。簡易音圧算出部80は、ステップS22及びS23の処理を初期音源の数だけループさせる。
【0076】
続いて、簡易音圧算出部80は、経路毎の音圧pを音源深度毎に加算することで、初期音源によって作られる受波点(r,z)での音圧p(r,z)を算出する(S24)。音圧p(r,z)は、下記の式(22)のように計算できる。
【数22】
ここで、nsは音源の総数である。
【0077】
そして、簡易音圧算出部80は、ステップS24の処理を受波深度がmとなるまでループさせる。そして、これを距離方向に計算していくことで、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの音圧p(r,z)が求められる。
【0078】
以上のように、実施の形態2に係る音波伝搬計算装置100Aによれば、第2音圧計算を簡易的な音圧計算に置き換えることで、所望計算距離Rから計算終了距離Rまでの音圧を解析的に計算することができる。音圧を解析的に計算することが可能となることで、ピンポイントの座標の音圧計算が可能になる。また、実施の形態1の音波伝搬計算装置100においてピンポイントの座標の音圧を計算する場合、計算サンプル間の補間が必要になるが、実施の形態2の音波伝搬計算装置100Aによれば、補間なしでピンポイントの座標の音圧を求めることができる。
【0079】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で様々な変形又は組み合わせが可能である。例えば、実施の形態2では、第2音圧計算を行う際に、第1音圧計算で計算した鉛直音場(一段階目の最後に計算した距離の計算深度毎の音圧p(R (1),z))を深度方向に並んだ音源と捉えることで、球面拡散と反射損失を計算し音圧を求めた。この「鉛直音場を深度方向に並んだ複数の音源と捉える」という考え方を用いれば、簡易音圧算出部80に替えて、音線モデル又はノーマルモードモデルなど別の伝搬モデルを使って、第2音圧計算を行うこともできる。
【符号の説明】
【0080】
1 初期条件記憶部、2 計算間隔算出部、3 近似次数・距離刻み算出部、4 近似係数算出部、5 音波伝搬計算部、7 制御部、10 初期条件記憶部、20 計算間隔算出部、30 近似次数・距離刻み算出部、40 近似係数算出部、50 音波伝搬計算部、60 計算結果記憶部、70 制御部、80 簡易音圧算出部、100、100A、200 音波伝搬計算装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16