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特開2023-125275ドライバ回路、光スイッチシステム、及び通信ネットワーク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125275
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ドライバ回路、光スイッチシステム、及び通信ネットワーク
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20230831BHJP
   H04B 10/275 20130101ALI20230831BHJP
【FI】
H03K19/0175 220
H04B10/275
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029275
(22)【出願日】2022-02-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「Beyond 5G 超大容量無線通信を支える次世代エッジクラウドコンピューティング基盤の研究開発」副題「Beyond 5Gに向けた革新的高速大容量データ転送ハードウェア開発と高機能エッジクラウド情報処理基盤の研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏之
(72)【発明者】
【氏名】土谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】岸根 桂路
【テーマコード(参考)】
5J056
5K102
【Fターム(参考)】
5J056AA05
5J056BB02
5K102AL02
5K102MA04
5K102MA05
5K102MB11
5K102NA02
5K102RD05
(57)【要約】
【課題】適切なバイアスを印加しながら、高速バイアス切替動作を行うことができるドライバ回路、光スイッチシステム、及び通信ネットワークを提供することである。
【解決手段】ドライバ回路100は、第1制御装置と、複数の第2制御装置20とを環状に接続する光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を、第2制御装置20において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置30と、第2制御装置20とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路100であって、ドライバ回路100は、ドライバ部101と、通常バイアスT回路部102と、バーストモードバイアスT回路部103を有し、ドライバ部101は、第2制御装置20が送信する電気信号を増幅し、バーストモードバイアスT回路部103は、通常バイアスT回路部102に比して、バイアス切替動作に係る時定数τが小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御装置を環状に接続する光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を、前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、
前記電気通信ネットワークの線路には、前記光スイッチ装置の第1端子と、前記制御装置の第1端子とを接続する第1線路と、前記光スイッチ装置の第2端子と、前記制御装置の第2端子とを接続する第2線路とが含まれ、
前記ドライバ回路は、ドライバ部と、通常バイアスT回路部と、バーストモードバイアスT回路部を有し、
前記ドライバ部は、前記制御装置が送信する電気信号を増幅し、
前記バーストモードバイアスT回路部は、前記通常バイアスT回路部に比して、バイアス切替動作に係る時定数が小さい、
ことを特徴とするドライバ回路。
【請求項2】
前記電気通信ネットワークの線路には、前記光スイッチ装置の第1端子と、前記制御装置の第1端子とを接続する第1線路と、前記光スイッチ装置の第2端子と、前記制御装置の第2端子とを接続する第2線路とが含まれ、
前記通常バイアスT回路部は、前記第1線路上に設けられた第1コンデンサと、一端が前記第1線路に接続され、他端には制御電圧信号が印加される第1抵抗と、前記第2線路上に設けられた第2コンデンサと、一端が前記第2線路に接続され、他端には前記制御電圧信号が印加される第2抵抗とを有し、
前記バーストモードバイアスT回路部は、第1電源と、第2電源との間に、直列に接続された第1トランジスタと、第2トランジスタとを有し、且つ前記第1電源と、前記第2電源との間に、直列に接続された第3トランジスタと、第4トランジスタとを有し、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタとの接続点は、前記第1線路に接続されており、
前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタとの接続点は、前記第2線路に接続されており、
第1状態において、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記第3トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオフ状態に制御され、
第2状態において、前記第1トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオン状態に制御され、且つ前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタがオフ状態に制御され、
第3状態において、前記第1トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオフ状態に制御され、且つ前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタがオン状態に制御される、
請求項1に記載のドライバ回路。
【請求項3】
複数の制御装置を環状に接続する光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、
前記光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、請求項1又は2に記載のドライバ回路と、を備える、
ことを特徴とする光スイッチシステム。
【請求項4】
複数の制御装置と、
複数の前記制御装置を環状に接続する光通信ネットワークと、
前記光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、
前記光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、請求項1又は2に記載のドライバ回路と、を備える、
ことを特徴とする通信ネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ回路、光スイッチシステム、及び通信ネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワークの大容量・低遅延化が求められている。そこで、シリコンフォトニクス技術を活用した小型、軽量、且つ大容量の情報通信量を扱える光通信ネットワークを用いる構成が検討されている。この場合、光通信ネットワークと、電気通信ネットワークとを中継するゲートウェイ装置が用いられる場合がある。
【0003】
ゲートウェイ装置は、一般に、光スイッチ装置と、ドライバ回路とを有する。ゲートウェイ装置は、電気信号を光信号に変換する電気光学効果を有する材料や、半導体の電界吸収効果を用いた光スイッチ装置を、ドライバ回路で駆動することにより、高速かつ広帯域な光信号を出力する装置である。ここで、ゲートウェイ装置が送受信する光信号は、データフレームと、データフレームの間に設けられたガードタイムとを含むバースト信号により実現される。データフレームには、プリアンブル区間と、情報が格納されたペイロード区間とが含まれる。プリアンブル区間には、光スイッチ装置の送受信動作の準備に用いられる任意のビットパターンが含まれる。光スイッチ装置は、プリアンブル区間の次に設けられたペイロード区間に格納される情報を、1ビット目から確実に受信するため、プリアンブル区間において、送受信動作の準備が完了していることが求められる。ゲートウェイ装置は、ペイロード区間に格納される情報の信号を損失無く送受信できるように、ペイロード区間にかかる前のプリアンブル区間で動作準備が完了していなければならない。動作準備とは、例えば、電気通信ネットワークのバイアス切替動作である。したがって、ゲートウェイ装置は、動作準備において高速なバイアス切替動作が求められる。
【0004】
ここで、バイアス切替動作を実現する一実施形態として、ドライバ回路にバイアスT回路を用いる技術が知られている。従来のドライバ回路に用いられるバイアスT回路としては、一般に、ドライバ回路の直流成分を遮断する直列コンデンサと、出力バイアスを印加する素子とで構成されるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1のバイアスT回路のように、出力バイアスを印加する素子には、一般にインダクタが利用される。一方で、バイアスT回路にインダクタを利用すると、低周波数帯での損失をさけるために大きなインダクタンス値が必要となる。このため、インダクタのサイズが大きくなり、基板面積におけるバイアスT回路の占有面積が広くなる。従来のバイアスT回路として、バイアスT回路の占有面積が広くなることを避けるため、インダクタに代えて、抵抗を用いた構成が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-191222号公報
【特許文献2】特開2007-241142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、バイアス電圧切替時の応答時間は、バイアスT回路の時定数に依存する。したがって、高速バイアス切替動作を行うためには、バイアスT回路に用いる抵抗の抵抗値、及びコンデンサの静電容量を小さくすることが求められる。一方で、適切なバイアスを印加するためには、バイアスT回路に、ある程度の抵抗値を有した抵抗を用いることが求められる。また、前段回路の直流成分を遮断するためには、バイアスT回路に、ある程度の静電容量を有したコンデンサを用いることが求められる。したがって、従来のドライバ回路に用いられるバイアスT回路では、低周波数帯での損失を防ぎ、前段回路の直流成分を遮断しつつ、且つ高速バイアス切替動作を行うことは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するドライバ回路は、複数の制御装置を環状に接続する光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を、前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、前記電気通信ネットワークの線路には、前記光スイッチ装置の第1端子と、前記制御装置の第1端子とを接続する第1線路と、前記光スイッチ装置の第2端子と、前記制御装置の第2端子とを接続する第2線路とが含まれ、前記ドライバ回路は、ドライバ部と、通常バイアスT回路部と、バーストモードバイアスT回路部を有し、前記ドライバ部は、前記制御装置が送信する電気信号を増幅し、前記バーストモードバイアスT回路部は、前記通常バイアスT回路部に比して、バイアス切替動作に係る時定数が小さい。
【0009】
かかる構成によれば、ドライバ回路は、適切なバイアスを印加しながら、高速バイアス切替動作を行うことができる。
上記ドライバ回路において、前記電気通信ネットワークの線路には、前記光スイッチ装置の第1端子と、前記制御装置の第1端子とを接続する第1線路と、前記光スイッチ装置の第2端子と、前記制御装置の第2端子とを接続する第2線路とが含まれ、前記通常バイアスT回路部は、前記第1線路上に設けられた第1コンデンサと、一端が前記第1線路に接続され、他端には制御電圧信号が印加される第1抵抗と、前記第2線路上に設けられた第2コンデンサと、一端が前記第2線路に接続され、他端には前記制御電圧信号が印加される第2抵抗とを有し、前記バーストモードバイアスT回路部は、第1電源と、第2電源との間に、直列に接続された第1トランジスタと、第2トランジスタとを有し、且つ前記第1電源と、前記第2電源との間に、直列に接続された第3トランジスタと、第4トランジスタとを有し、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタとの接続点は、前記第1線路に接続されており、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタとの接続点は、前記第2線路に接続されており、第1状態において、前記第1トランジスタ、前記第2トランジスタ、前記第3トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオフ状態に制御され、第2状態において、前記第1トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオン状態に制御され、且つ前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタがオフ状態に制御され、第3状態において、前記第1トランジスタ、及び前記第4トランジスタがオフ状態に制御され、且つ前記第2トランジスタ、及び前記第3トランジスタがオン状態に制御されてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、ドライバ回路は、適切なバイアスを印加しながら、低周波数帯での損失を防ぎ、光スイッチ装置への直流成分を遮断しつつ、且つ高速バイアス切替動作を行うことができる。
【0011】
上記目的を達成する光スイッチシステムは、複数の制御装置を環状に接続する光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、前記光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、上記ドライバ回路と、を備える。
【0012】
かかる構成によれば、光スイッチシステムは、上記ドライバ回路と同様の効果を得ることができる。
上記目的を達成する通信ネットワークは、複数の制御装置と、複数の前記制御装置を環状に接続する光通信ネットワークと、前記光通信ネットワークにおいて送受信される光信号を前記制御装置において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置と、前記光スイッチ装置と、前記制御装置とを接続する電気通信ネットワークに設けられたドライバ回路であって、上記ドライバ回路と、を備える。
【0013】
かかる構成によれば、通信ネットワークは、上記ドライバ回路と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適切なバイアスを印加しながら、高速バイアス切替動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ネットワークの構成の一例を示す図である。
図2】各状態における動作の一例を示すタイミングチャートである。
図3】ドライバ回路の構成の一例を示す図である。
図4】第1状態におけるドライバ回路の動作の説明に用いられる図である。
図5】第2状態におけるドライバ回路の動作の説明に用いられる図である。
図6】第3状態におけるドライバ回路の動作の説明に用いられる図である。
図7】各状態のドライバ回路の動作の一例を示す図である。
図8】本実施形態のドライバ回路と、従来のドライバ回路との比較結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
[全体構成]
以下、図面を参照し、バイアスT回路を具体化した実施形態について説明する。図1に示すように、ネットワーク1は、第1制御装置10と、複数の第2制御装置20と、第2制御装置20に対応する数の複数の光スイッチ装置30とを備える。第1制御装置10は、例えば、各第2制御装置20に対して各種動作を指示するメイン制御装置であって、第2制御装置20は、例えば、第1制御装置10の指示に基づいて、各種動作を実行するサブ制御装置である。光通信ネットワークL1は、第1制御装置10と、第2制御装置20とを環状に接続する。詳しくは、光通信ネットワークL1は、第1制御装置10と、光スイッチ装置30とを接続する。第2制御装置20と、光スイッチ装置30とは、対応する電気通信ネットワークL2によってそれぞれ接続される。光通信ネットワークL1と、電気通信ネットワークL2とでは、例えば、CAN(Controller Area Network)通信等の通信プロトコルを用いて情報の送受信が実現される。
【0017】
以降の説明において、ネットワーク1が、第2制御装置20-1,20-2,20-3の三つの第2制御装置20を備え、光スイッチ装置30-1,30-2,30-3の三つの光スイッチ装置30を備える場合について説明する。第2制御装置20-1と、光スイッチ装置30-1とは、電気通信ネットワークL2-1によって通信可能に接続される。第2制御装置20-2と、光スイッチ装置30-2とは、電気通信ネットワークL2-2によって通信可能に接続される。第2制御装置20-3と、光スイッチ装置30-3とは、電気通信ネットワークL2-3によって通信可能に接続される。電気通信ネットワークL2-1,L2-2,L2-3は、例えば、第1線路LN1と、第2線路LN2との二本の通信線に発生する電圧差の有無によってデータを送信する2線式差動電圧方式により、情報を送受信する。
【0018】
また、電気通信ネットワークL2-1には、ドライバ回路100-1が設けられ、電気通信ネットワークL2-2には、ドライバ回路100-2が設けられ、電気通信ネットワークL2-3には、ドライバ回路100-3が設けられる。ドライバ回路100-1,100-2,100-3の構成の詳細については、後述する。
【0019】
以降の説明において、第2制御装置20-1,20-2,20-3を互いに区別しない場合には、単に第2制御装置20と記載する。光スイッチ装置30-1,30-2,30-3を互いに区別しない場合には、単に光スイッチ装置30と記載する。電気通信ネットワークL2-1,L2-2,L2-3を互いに区別しない場合には、単に電気通信ネットワークL2と記載する。ドライバ回路100-1,100-2,100-3を互いに区別しない場合には、単にドライバ回路100と記載する。また、光スイッチ装置30と、電気通信ネットワークL2を介して直接接続される第2制御装置20について、「光スイッチ装置30に対応する第2制御装置20」とも記載する。詳しくは、光スイッチ装置30-1に対応する第2制御装置20は、第2制御装置20-1である。光スイッチ装置30-2に対応する第2制御装置20は、第2制御装置20-2である。光スイッチ装置30-3に対応する第2制御装置20は、第2制御装置20-3である。
【0020】
[光通信ネットワークL1、及び電気通信ネットワークL2について]
第1制御装置10は、光通信ネットワークL1、及び電気通信ネットワークL2に係る通信の同期制御信号によって、光通信ネットワークL1における通信、及び電気通信ネットワークL2における通信のタイミング制御を行う。第1制御装置10は、光通信ネットワークL1を介して各種情報を送信端子Txから送信する。また、第1制御装置10は、光通信ネットワークL1を介して各種情報を受信端子Rxから受信する。
【0021】
[光スイッチ装置30の動作について]
光スイッチ装置30は、第1制御装置10のタイミング制御に基づいて、光通信ネットワークL1において送受信される光信号を、第2制御装置20において送受信される電気信号に応じて変換する装置である。光スイッチ装置30の動作は、第1制御装置10と、第2制御装置20との間の通信に応じて、第1状態、第2状態、及び第3状態の三つの状態に遷移する。光スイッチ装置30の動作が、いずれの場合に、第1状態、第2状態、及び第3状態に遷移するかの詳細については後述し、まずは、第1状態、第2状態、及び第3状態における光スイッチ装置30の動作の詳細について説明する。
【0022】
第1状態は、第2制御装置20から第1制御装置10、又は他の第2制御装置20に情報を送信する状態である。光スイッチ装置30は、第1状態において、電気通信ネットワークL2を介して対応する第2制御装置20から受信した電気信号を光信号に変換した後、変換した光信号を、光通信ネットワークL1を介して第1制御装置10、又は他の第2制御装置20に送信する。第2状態は、第2制御装置20が第1制御装置10、又は他の第2制御装置20によって送信された情報を受信する状態である。光スイッチ装置30は、第2状態において、光通信ネットワークL1を介して第1制御装置10、又は他の第2制御装置20から受信した光信号を受信する。第3状態は、光スイッチ装置30が光通信ネットワークL1を介して受信した光信号を、そのまま光通信ネットワークL1の下流の光スイッチ装置30、又は第1制御装置10に送信する状態である。以降の説明において、光スイッチ装置30が受信した情報を、そのまま下流の光スイッチ装置30、又は第1制御装置10に送信することを「光信号をスルーする」とも記載する。つまり、第3状態は、光スイッチ装置30が光信号をスルーする状態である。
【0023】
[各状態における光信号と電気信号について]
以下、第1制御装置10と、第2制御装置20-2との間の通信を一例に、光スイッチ装置30-2が送受信する光信号と、光スイッチ装置30-2が受信する電気信号との詳細について説明する。図2に示す波形W12は、光スイッチ装置30-2が光通信ネットワークL1を介して受信する光信号の一例を示す波形である。波形W13は、光スイッチ装置30-2が受信の光信号の一例を示す波形である。波形W14は、光スイッチ装置30が光通信ネットワークL1を介して送信する光信号の一例を示す波形である。波形W12~W14のグラフにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、光信号の有無を示す。波形W11は、三つの状態を実現する電気通信ネットワークL2-2の線路間に生じる電位差の一例を示す波形である。波形W11のグラフにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧の大きさを示す。
【0024】
図2において、光スイッチ装置30の動作は、時刻t11~t12までの間、第1状態に遷移し、時刻t13~t14までの間、第2状態に遷移し、時刻t15~t16までの間、第3状態に遷移する。波形W12が示すように、光スイッチ装置30-2は、第1状態の間、第1制御装置10から第2制御装置20-2の送信タイミングを指示する連続光の光信号を受信する。波形W11が示すように、光スイッチ装置30-2は、第1状態の間、第2制御装置20からデータフレームを示す電気信号を受信する。波形W14が示すように、光スイッチ装置30-2は、第1状態の間、受信した電気信号を光信号に変換しつつ、変換した光信号によって連続光の光信号を変調させて、光通信ネットワークL1に送信する。
【0025】
波形W12が示すように、光スイッチ装置30-2は、第2状態の間、第1制御装置10、又は第2制御装置20-2以外の第2制御装置20から送信された光信号を受信する。波形W11が示すように、第2状態の間、電気通信ネットワークL2は、バイアス切替動作によって順バイアス状態にされる。順バイアス状態とは、電気通信ネットワークL2を実現する第1線路LN1と、第2線路LN2とのうち、第2線路LN2には、0[V]電位が印加され、第1線路LN1には、0[V]より高い電位が印加される状態である。波形W13が示すように、光スイッチ装置30-2は、電気通信ネットワークL2が順バイアス状態にされると、光信号を受信する。
【0026】
波形W12が示すように、光スイッチ装置30-2は、第3状態の間、第2制御装置20-2以外の第2制御装置20に対して送信された光信号を受信する。波形W11が示すように、第3状態の間、電気通信ネットワークL2は、バイアス切替動作によって逆バイアス状態にされる。逆バイアス状態とは、電気通信ネットワークL2を実現する第1線路LN1と、第2線路LN2とのうち、第1線路LN1には、0[V]電位が印加され、第2線路LN2には、0[V]より高い電位が印加される状態である。波形W13が示すように、光スイッチ装置30-2は、第3状態の間、受信した光信号をスルーする。したがって、波形W14が示すように、光スイッチ装置30-2は、電気通信ネットワークL2が逆バイアス状態に制御されると、受信した光信号をスルーする。つまり、光スイッチ装置30-2は、受信した光信号を光通信ネットワークL1の下流に存在する他の第2制御装置20や第1制御装置10にそのまま送信する。
【0027】
[高速バイアス切替動作について]
ここで、光通信ネットワークL1において送受信される光信号は、各光スイッチ装置30宛のデータフレームと、データフレームの間に設けられたガードタイムとを含むバースト信号により実現される。データフレームには、プリアンブル区間と、情報が格納されたペイロード区間とが含まれる。プリアンブル区間には、光スイッチ装置30の送受信動作の準備に用いられる任意のビットパターンが含まれる。光スイッチ装置30は、プリアンブル区間の次に設けられたペイロード区間に格納される情報を、1ビット目から確実に受信するため、プリアンブル区間において、送受信動作の準備が完了していることが求められる。送受信動作の準備とは、例えば、電気通信ネットワークL2のバイアス切替動作である。
【0028】
ドライバ回路100が、電気通信ネットワークL2のバイアス切替動作を高速に行えず、送受信動作の準備がペイロード区間にかかってしまうと、ペイロード区間に格納される情報を受信、及びスルーすることができない。したがって、ドライバ回路100は、電気通信ネットワークL2において、送受信動作の準備が完了するように、高速なバイアス切替動作が求められる。以下、高速バイアス切替動作を実現するドライバ回路100の構成について説明する。
【0029】
[ドライバ回路100の構成について]
図3に示すように、ドライバ回路100は、電気通信ネットワークL2を実現する第1線路LN1と、第2線路LN2との間に設けられる。第1線路LN1は、第2制御装置20の第1端子P11と、光スイッチ装置30の第1端子P21とを接続し、第2線路LN2は、第2制御装置20の第2端子P12と、光スイッチ装置30の第2端子P22とを接続する。
【0030】
ドライバ回路100は、例えば、ドライバ部101と、通常バイアスT回路部102と、バーストモードバイアスT回路部103とを備える。ドライバ部101は、第2制御装置20から受信した電気信号を、光スイッチ装置30を駆動可能な振幅に増幅する。通常バイアスT回路部102は、例えば、第1コンデンサC1と、第2コンデンサC2と、第1抵抗R1と、第2抵抗R2とを備える。第1コンデンサC1は、第1線路LN1上に設けられる。第2コンデンサC2は、第2線路LN2上に設けられる。第1抵抗R1は、一端が第1線路LN1に接続され、他端には、第1制御装置10のタイミング制御に係る制御電圧信号S2が印加される。制御電圧信号S2は、第1制御装置10のタイミング制御に係る制御信号である。第2抵抗R2は、一端が第2線路LN2に接続され、他端には、制御電圧信号S2が印加される。以下、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2が同一の抵抗値であって、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2が同一の静電容量であるものとする。
【0031】
第1抵抗R1、及び第2抵抗R2は、ハイレベルの制御電圧信号S2が印加されると、第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスを印加する。また、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2は、光スイッチ装置30に対して直流成分を遮断する。つまり、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2は、光スイッチ装置30の第1端子P21、及び第2端子P22に対して高電位の直流電圧が印加されることを抑制する。制御電圧信号S2は、例えば、ハイレベルの信号である。
【0032】
バーストモードバイアスT回路部103は、例えば、第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2と、第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4とを備える。第1トランジスタQ1、及び第3トランジスタQ3は、例えば、P型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)により実現され、第2トランジスタQ2、及び第4トランジスタQ4は、例えば、N型MOSFETにより実現される。以降の説明において、例えば、第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2と、第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4とを互いに区別しない場合には、単にトランジスタQと記載する。
【0033】
第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2とは、ドレイン電圧VDDを出力する第1電源と、ソース電圧VSSとを出力する第2電源との間に、直列に接続されている。また、第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4とは、ドレイン電圧VDDを出力する第1電源と、ソース電圧VSSとを出力する第2電源との間に、直列に接続されている。詳しくは、第1トランジスタQ1のドレイン端子と、第3トランジスタQ3のドレイン端子とには、ドレイン電圧VDDが印加される。第2トランジスタQ2のソース端子と、第4トランジスタQ4のソース端子とには、ソース電圧VSSが印加される。
【0034】
第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2との接続点は、第1線路LN1に接続されている。また、第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4との接続点は、第2線路LN2に接続されている。
【0035】
第1トランジスタQ1のゲート端子には、第1制御装置10のタイミング制御に係る制御電圧信号S3が反転回路N1を介して入力される。第4トランジスタQ4のゲート端子には、制御電圧信号S3が入力される。第2トランジスタQ2のゲート端子には、第1制御装置10のタイミング制御に係る制御電圧信号S4が入力される。第3トランジスタQ3のゲート端子には、制御電圧信号S4が反転回路N2を介して入力される。
【0036】
ここで、P型MOSFET(つまり、第1トランジスタQ1、及び第3トランジスタQ3)と、N型MOSFET(つまり、第2トランジスタQ2、及び第4トランジスタQ4)とでは、オン状態に制御される際にゲート端子に印加される電圧が異なる。詳しくは、P型MOSFETは、ゲート端子に所定の電圧が印加されている場合、オフ状態に制御され、ゲート端子に所定の電圧が印加されていない場合、オン状態に制御される。一方で、N型MOSFETは、ゲート端子に所定の電圧が印加されていない場合、オフ状態に制御され、ゲート端子に所定の電圧が印加されている場合、オン状態に制御される。所定の電圧とは、例えば、P型MOSFETをオフ状態にするために必要な電圧(つまり、オフ電圧)、及びN型MOSFETをオン状態にするために必要な電圧(つまり、オン電圧)である。
【0037】
したがって、制御電圧信号S3が所定の電圧未満の信号である場合、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオフ状態に制御される。以下、所定の電圧未満を、「ローレベル」とも記載する。制御電圧信号S3が所定の電圧以上のハイレベルの信号である場合、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオン状態に制御される。以下、所定の電圧以上を、「ハイレベル」とも記載する。制御電圧信号S4がローレベルの信号である場合、第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオフ状態に制御される。制御電圧信号S4がハイレベルの信号である場合、第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオン状態に制御される。
【0038】
[第1状態,第2状態,第3状態への遷移について]
以下、図4図6を参照し、第1状態、第2状態、及び第3状態への光スイッチ装置30、及びドライバ回路100の遷移と、各状態におけるドライバ回路100動作の詳細とについて説明する。
【0039】
図4に示すように、第1状態とは、ドライバ部101をオン状態に制御する制御信号S1が入力され、通常バイアスT回路部102にハイレベルの制御電圧信号S2が印加され、且つバーストモードバイアスT回路部103にローレベルの制御電圧信号S3、及びローレベルの制御電圧信号S4が入力される状態である。通常バイアスT回路部102は、第1状態において、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2は、ハイレベルの制御電圧信号S2が印加されることにより、第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスを印加する。また、バーストモードバイアスT回路部103には、第1状態において、ローレベルの制御電圧信号S3、及びローレベルの制御電圧信号S4が入力されることにより、トランジスタQは、いずれもオフ状態に制御される。したがって、第1状態において、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3、及び第4トランジスタQ4は、高抵抗素子として動作する。この場合、第2制御装置20が送信する電気信号が、ドライバ部101、及びドライバ回路100を通過し、光スイッチ装置30の第1端子P11と、第2端子P12とに印加される。光スイッチ装置30は、印加された電気信号に基づいて、第1制御装置10が送信した連続光の光信号を変調する。
【0040】
第1状態において、通常バイアスT回路部102により第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスが印加された際の、バイアス切替時の応答時間は、通常バイアスT回路部102の時定数τに依存する。詳しくは、時定数τは、次式(1)によって表される。
【0041】
τ=RC[sec]…(1)
τ:時定数
R:第1抵抗R1、又は第2抵抗R2の抵抗値
C:第1コンデンサC1、又は第2コンデンサC2の静電容量
図5に示すように、第2状態とは、ドライバ部101をオフ状態に制御する制御信号S1が入力され、通常バイアスT回路部102にローレベルの制御電圧信号S2が印加され、且つバーストモードバイアスT回路部103にハイレベルの制御電圧信号S3、及びローベルの制御電圧信号S4が入力される状態である。通常バイアスT回路部102は、第2状態において、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2は、ローレベルの制御電圧信号S2が印加されることにより、第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスを印加しない。また、バーストモードバイアスT回路部103には、第2状態において、ハイレベルの制御電圧信号S3、及びローベルの制御電圧信号S4が入力される。このため、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオン状態に制御され、第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオフ状態に制御される。これにより、光スイッチ装置30の第1端子P21には、ドレイン電圧VDDが印加され、第2端子P22には、ソース電圧VSSが印加される。したがって、光スイッチ装置30の第1端子P21と、第2端子P22との間には、順バイアスの電圧が印加され、光スイッチ装置30は、第2状態における動作を実行する。
【0042】
ここで、トランジスタQのソース-ドレイン間は、オン状態において十分に抵抗値が低くなる。以下、トランジスタQがオン状態に制御されている際の、ソース-ドレイン間の抵抗値を、オン抵抗Ronと記載する。また、以下、第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2と、第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4とのオン抵抗Ronが同一の抵抗値であるものとする。第2状態において、バーストモードバイアスT回路部103の合成抵抗Rgは、次式(2)によって表され、第2状態における時定数τは、次式(3)によって表される。
【0043】
Rg=Ron/(Ron+R)[Ω]…(2)
τ=CR(Ron/(Ron+R))[sec]…(3)
Rg:第2状態におけるバーストモードバイアスT回路部103の合成抵抗
Ron:第1トランジスタQ1、又は第4トランジスタQ4のオン抵抗
τ:時定数
R:第1抵抗R1、又は第2抵抗R2の抵抗値
C:第1コンデンサC1、又は第2コンデンサC2の静電容量
オン抵抗Ronは、第1抵抗R1、又は第2抵抗R2の抵抗値Rに比して十分に小さい抵抗値である。このため、第2状態では、ドライバ回路100が、ドライバ部101、及び通常バイアスT回路部102のみを備える場合に比して、Ron/(Ron+R)だけ、時定数τを小さくすることができる。したがって、第2状態では、ドライバ回路100は、高速なバイアス切替動作を実現することができる。また、ドライバ部101からみた通常バイアスT回路部102、及びバーストモードバイアスT回路部103の入力インピーダンスを低くすることができるため、ドライバ部101が出力する信号は、第1端子P21、及び第2端子P22において減衰する。これにより、光スイッチ装置30は、受信動作を実現する。
【0044】
図6に示すように、第3状態とは、ドライバ部101をオフ状態に制御する制御信号S1が入力され、通常バイアスT回路部102にローレベルの制御電圧信号S2が印加され、且つバーストモードバイアスT回路部103にローレベルの制御電圧信号S3、及びハイベルの制御電圧信号S4が入力される状態である。通常バイアスT回路部102は、第3状態において、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2は、ローレベルの制御電圧信号S2が印加されることにより、第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスを印加しない。また、バーストモードバイアスT回路部103には、第3状態において、ローレベルの制御電圧信号S3、及びハイベルの制御電圧信号S4が入力される。このため、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオフ状態に制御され、第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオン状態に制御される。これにより、光スイッチ装置30の第1端子P21には、ソース電圧VSSが印加され、第2端子P22には、ドレイン電圧VDDが印加される。したがって、光スイッチ装置30の第1端子P21と、第2端子P22との間には、逆バイアスの電圧が印加され、光スイッチ装置30は、第3状態における動作を実行する。第3状態において、バーストモードバイアスT回路部103の合成抵抗Rgは、第2状態における合成抵抗Rgと同様であり、第3状態における時定数τは、第2状態における時定数τと同様である。
【0045】
このため、第3状態では、ドライバ回路100が、ドライバ部101、及び通常バイアスT回路部102のみを備える場合に比して、Ron/(Ron+R)だけ、時定数τを小さくすることができる。したがって、第3状態では、第2状態と同様に、高速なバイアス切替動作を実現することができる。また、ドライバ部101からみた通常バイアスT回路部102、及びバーストモードバイアスT回路部103の入力インピーダンスを低くすることができるため、ドライバ部101が出力する信号は、第1端子P21、及び第2端子P22において減衰する。これにより、光スイッチ装置30は、光信号をスルーすることができる。
【0046】
[ドライバ回路100の動作について]
以下、図7を参照し、本実施形態のドライバ回路100の動作の詳細について説明する。図7に示す波形W21は、第2制御装置20の第1端子P11,第2端子P12に印加される電気信号の一例を示す波形である。波形W22は、制御信号S1の一例を示す波形である。波形W23は、制御電圧信号S3の一例を示す波形である。波形W24は、制御電圧信号S4の一例を示す波形である。波形W25は、電気通信ネットワークL2から光スイッチ装置30に入力される電気信号の一例を示す波形である。波形W21~W25のグラフにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧の大きさを示す。
【0047】
光スイッチ装置30の動作、及びドライバ回路100の動作は、約0.1~約0.4[μsec]の間、第1状態に遷移される。これは、波形W22が示すように、約0.1~約0.4[μsec]の間、ドライバ部101には、ハイレベルの制御信号S1が入力されるためである。これにより、波形W25が示すように、約0.1~約0.4[μsec]の間、電気通信ネットワークL2には、第2制御装置20が送信する電気信号が現れる。また、波形W23、及び波形W24が示すように、第1状態の間、バーストモードバイアスT回路部103には、ローレベルの制御電圧信号S3、及びローレベルの制御電圧信号S4が入力される。このため、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3、及び第4トランジスタQ4は、いずれもオフ状態に制御される。
【0048】
光スイッチ装置30の動作、及びドライバ回路100の動作は、約0.6~約0.7[μsec]の間、第2状態に遷移される。詳しくは、波形W23~W24が示すように、ドライバ回路100には、ハイレベルの制御電圧信号S3と、ローレベルの制御電圧信号S4が入力される。これにより、光スイッチ装置30の第1端子P21には、ドレイン電圧VDDが印加され、第2端子P22には、ソース電圧VSSが印加される。このため、光スイッチ装置30の第1端子P21、及び第2端子P22には、順バイアスの電圧が印加され、光スイッチ装置30の動作は、第2状態に遷移される。上述したように、第2状態において、バーストモードバイアスT回路部103の合成抵抗Rgが小さくなることに伴い、時定数τが小さくなる。このため、第2状態では、ドライバ回路100は、高速なバイアス切替動作を実現することができる。詳しくは、ドライバ回路100は、波形W25が示すように、約0.6[μsec]におけるバイアス切替動作に伴う立ち上がりを急峻にすることができる。
【0049】
光スイッチ装置30の動作、及びドライバ回路100の動作は、約1.1~約1.4[μsec]の間、第3状態に遷移される。詳しくは、波形W23~W24が示すように、ドライバ回路100には、ローレベルの制御電圧信号S3と、ハイレベルの制御電圧信号S4が入力される。これにより、光スイッチ装置30の第1端子P21には、ソース電圧VSSが印加され、第2端子P22には、ドレイン電圧VDDが印加される。このため、光スイッチ装置30の第1端子P21、及び第2端子P22には、逆バイアスの電圧が印加され、光スイッチ装置30の動作は、第3状態に遷移される。上述したように、第3状態において、バーストモードバイアスT回路部103の合成抵抗Rgが小さくなることに伴い、時定数τが小さくなる。このため、第3状態では、ドライバ回路100は、高速なバイアス切替動作を実現することができる。詳しくは、ドライバ回路100は、波形W25が示すように、約1.1[μsec]におけるバイアス切替動作に伴う立ち下がりを急峻にすることができる。
【0050】
[ドライバ回路100と、従来のドライバ回路との比較結果について]
以下、図8を参照して、本実施形態のドライバ回路100と、従来のドライバ回路との比較結果について説明する。従来のドライバ回路とは、例えば、ドライバ回路100のうち、ドライバ部101、及び通常バイアスT回路部102のみを備え、バーストモードバイアスT回路部103を備えない回路である。図8の波形W31は、ドライバ回路100において、電気通信ネットワークL2から光スイッチ装置30に入力される電気信号の一例を示す波形である。波形W32は、従来のドライバ回路において、電気通信ネットワークL2から光スイッチ装置30に入力される電気信号の一例を示す波形である。
【0051】
波形W31が示すように、本実施形態のドライバ回路100では、バイアス切替動作に伴い、約0.6[μsec]において遅滞なく第1線路LN1、及び第2線路LN2にバイアスが印加され、急峻に波形が立ち上っている。一方で、波形W32が示すように、従来のドライバ回路では、バイアス切替動作に伴い、約0.6[μsec]においてバイアスが印加され、波形が立ち上り始めているものの、適切にバイアスが印加されたのが、約0.75[μsec]となっている。したがって、本実施形態のドライバ回路100では、従来のドライバ回路に比して、応答時間を90[%]程度削減し、高速バイアス切替動作を実現することができる。
【0052】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ドライバ回路100は、第1制御装置10と、複数の第2制御装置20とを環状に接続する光通信ネットワークL1において送受信される光信号を、第2制御装置20において送受信される電気信号に応じて変換する光スイッチ装置30と、第2制御装置20とを接続する電気通信ネットワークL2に設けられたドライバ回路100であって、電気通信ネットワークL2の線路には、光スイッチ装置30の第1端子P21と、第2制御装置20の第1端子P11とを接続する第1線路LN1と、光スイッチ装置30の第2端子P22と、第2制御装置20の第2端子P12とを接続する第2線路LN2とが含まれ、ドライバ回路100は、ドライバ部101と、通常バイアスT回路部102と、バーストモードバイアスT回路部103を有し、ドライバ部101は、第2制御装置20が送信する電気信号を増幅し、バーストモードバイアスT回路部103は、通常バイアスT回路部102に比して、バイアス切替動作に係る時定数τが小さい。
【0053】
かかる構成によれば、ドライバ回路100は、適切なバイアスを印加しながら、従来のドライバ回路に比して、時定数τを小さくすることができる。したがって、ドライバ回路100は、適切なバイアスを印加しながら、高速バイアス切替動作を行うことができる。
【0054】
(2)ドライバ回路100において、電気通信ネットワークL2の線路には、光スイッチ装置30の第1端子P21と、第2制御装置20の第1端子P11とを接続する第1線路LN1と、光スイッチ装置30の第2端子P22と、第2制御装置20の第2端子P12とを接続する第2線路LN2とが含まれる。通常バイアスT回路部102は、第1線路LN1上に設けられた第1コンデンサC1と、一端が第1線路LN1に接続され、他端には制御電圧信号S2が印加される第1抵抗R1と、第2線路LN2上に設けられた第2コンデンサC2と、一端が第2線路LN2に接続され、他端には制御電圧信号S2が印加される第2抵抗R2とを有する。バーストモードバイアスT回路部103は、ドレイン電圧VDDを出力する第1電源と、ソース電圧VSSを出力する第2電源との間に、直列に接続された第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2とを有し、且つドレイン電圧VDDを出力する第1電源と、ソース電圧VSSを出力する第2電源との間に、直列に接続された第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4とを有する。第1トランジスタQ1と、第2トランジスタQ2との接続点は、第1線路LN1に接続されている。第3トランジスタQ3と、第4トランジスタQ4との接続点は、第2線路LN2に接続されている。第1状態において、第1トランジスタQ1、第2トランジスタQ2、第3トランジスタQ3、及び第4トランジスタQ4がオフ状態に制御される。第2状態において、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオン状態に制御され、且つ第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオフ状態に制御される。第3状態において、第1トランジスタQ1、及び第4トランジスタQ4がオフ状態に制御され、且つ第2トランジスタQ2、及び第3トランジスタQ3がオン状態に制御される。
【0055】
かかる構成によれば、ドライバ回路100は、通常バイアスT回路部102が備える第1抵抗R1、第2抵抗R2、第1コンデンサC1、及び第2コンデンサC2によって、低周波数帯での損失を防ぎながら、光スイッチ装置30に対して直流成分を遮断することができる。また、ドライバ回路100は、通常バイアスT回路部102が備える第1抵抗R1、及び第2抵抗R2と、バーストモードバイアスT回路部103とによって、適切なバイアスを印加しながら、従来のドライバ回路に比して、時定数τを小さくすることができる。したがって、ドライバ回路100は、適切なバイアスを印加しながら、低周波数帯での損失を防ぎ、光スイッチ装置30への直流成分を遮断しつつ、且つ高速バイアス切替動作を行うことができる。
【0056】
また、ドライバ回路100は、適切なバイアスを印加する素子として、インダクタに代えて、第1抵抗R1、及び第2抵抗R2を用いている。このため、ドライバ回路100は、インダクタを用いる場合に比して、基板面積におけるドライバ回路100の占有面積を小さくし、ドライバ回路100を小型化することができる。
【0057】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態、及び以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
〇上述では、第1トランジスタQ1、及び第3トランジスタQ3が、P型MOSFETにより実現され、第2トランジスタQ2、及び第4トランジスタQ4が、N型MOSFETにより実現される場合について説明したが、これに限られない。第1トランジスタQ1、及び第3トランジスタQ3は、PNP型バイポーラトランジスタにより実現されてもよく、第2トランジスタQ2、及び第4トランジスタQ4は、NPN型バイポーラトランジスタにより実現されてもよい。この場合、上述の説明のうち、ドレイン端子は、コレクタ端子に読み替えればよく、ゲート端子は、ベース端子に読み替えればよく、ソース端子は、エミッタ端子に読み替えればよい。また、第1電源は、ドレイン電圧VDDに代えて、コレクタ電圧を出力し、第2電源は、ソース電圧VSSに代えて、エミッタ電圧を出力する。また、所定の電圧とは、例えば、PNP型バイポーラトランジスタをオフ状態にするためにベース端子に印加する電圧、及びNPN型バイポーラトランジスタをオン状態にするためにベース端子に印加する電圧である。
【0058】
〇ネットワーク1が備える第2制御装置20は、三つに限られず、一つ、又は二つであってもよく、三つよりも多い数であってもよい。
〇上述では、第1制御装置10が、光通信ネットワークL1における通信、及び電気通信ネットワークL2における通信のタイミング制御を行う場合について説明したが、これに限られない。ネットワーク1は、第1制御装置10に代えて(或いは、加えて)光通信ネットワークL1における通信、及び電気通信ネットワークL2における通信のタイミング制御を行う他の装置を備えていてもよい。この場合、当該他の装置は、同期制御信号、制御信号S1、制御電圧信号S2、制御電圧信号S3、及び制御電圧信号S4をネットワーク1の各部に出力する。
【0059】
〇上述では、ドライバ回路100が、光通信ネットワークL1と、電気通信ネットワークL2とを備えるネットワーク1において適応される場合について説明したが、これに限られない。ドライバ回路100は、光通信ネットワークL1と、電気通信ネットワークL2とを備えるネットワークであれば、いずれのネットワークにおいても適応可能である。例えば、ネットワーク1は、車載機器を接続する車載ネットワークにおいて用いられてもよい。この場合、第1制御装置10や、第2制御装置20は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等により実現される。詳しくは、第1制御装置10は、例えば、メインECUであって、第2制御装置20は、例えば、車両の各部を制御するサブECUである。
【0060】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)上記ドライバ回路において、前記第1トランジスタ、及び前記第3トランジスタは、P型MOSFETにより実現され、前記第2トランジスタ、及び前記第4トランジスタは、N型MOSFETにより実現され、前記第1電源の電圧は、ドレイン電圧であり、前記第2電源の電圧は、ソース電圧である。
【0061】
(ロ)上記ドライバ回路において、前記第1トランジスタ、及び前記第3トランジスタは、PNP型バイポーラトランジスタにより実現され、前記第2トランジスタ、及び前記第4トランジスタは、NPN型バイポーラトランジスタにより実現され、前記第1電源の電圧は、コレクタ電圧であり、前記第2電源の電圧は、エミッタ電圧である。
【符号の説明】
【0062】
1…ネットワーク、10…第1制御装置、20,20-1,20-2,20-3…第2制御装置、30,30-1,30-2,30-3…光スイッチ装置、100,100-1,100-2,100-3…ドライバ回路、101…ドライバ部、102…通常バイアスT回路部、103…バーストモードバイアスT回路部、C1…第1コンデンサ、C2…第2コンデンサ、L1…光通信ネットワーク、L2,L2-1,L2-2,L2-3…電気通信ネットワーク、LN1…第1線路、LN2…第2線路、N1,N2…反転回路、P11,P21…第1端子、P12,P22…第2端子、Q…トランジスタ、Q1…第1トランジスタ、Q2…第2トランジスタ、Q3…第3トランジスタ、Q4…第4トランジスタ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、S1…制御信号、S2,S3,S4…制御電圧信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8