(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125283
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】海苔エキス含有化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9717 20170101AFI20230831BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61K8/9717
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029285
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】鶴島 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB372
4C083AB382
4C083AC532
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD412
4C083CC07
4C083DD12
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、海苔エキスを含有する粘着剤層を含むシートマスクを提供することにある。
【解決手段】
本発明は、支持体と支持体上に積層された粘着剤層とを備えたシートマスクであって、粘着剤層が、美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まない、前記シートマスクに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と支持体上に積層された粘着剤層とを備えたシートマスクであって、粘着剤層が、美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まない、前記シートマスク。
【請求項2】
海苔エキスを0.005質量%~0.1質量%含む、請求項1に記載のシートマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美肌成分として海苔エキスを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
海苔エキスは、日焼け防止や美白効果、保湿効果や肌荒れ改善、髪質の改善、免疫賦活作用など、種々の効果を期待して、皮膚外用剤や化粧料として用いられている(特許文献1~5)。また海苔エキスを含むパック用化粧品組成物についても検討されてきた(特許文献6)。
しかしながら、これまで海苔エキスを粘着剤層に含むシートマスクについては具体的に検討されてこなかった。
粘着剤層を含むジェルシートマスクについては、例えば、特許文献7において、各種のエキスを含有する化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-242523号公報
【特許文献2】特開2000-212056号公報
【特許文献3】特開2013-133324号公報
【特許文献4】特開2005-336148号公報
【特許文献5】特開2017-19781号公報
【特許文献6】特開2008-255066号公報
【特許文献7】特開2019-89730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、海苔エキスを含有する粘着剤層を含むシートマスクを製品化する際に、海苔エキスと粘着剤層との関係について、これまで具体的に検討されてこなかったことを認識するに至った。したがって、本発明の課題は、海苔エキスを含有する粘着剤層を含むシートマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を重ねる中で、粘着剤層を含むシートマスクにおいて、粘着剤層に美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まないと、長期保存可能な保存安定性を有するシートマスクとすることができることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、以下に関する。
【0006】
[1]支持体と支持体上に積層された粘着剤層とを備えたシートマスクであって、粘着剤層が、美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まない、前記シートマスク。
[2]海苔エキスを0.005質量%~0.1質量%含む、前記[1]に記載のシートマスク。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着剤層に美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まないと、長期保存しても品質が劣化しにくく粘着剤層の粘着力が低下しない海苔エキス含有シートマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明のシートマスクの60℃保存時の粘着剤層の色の変化の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシートマスクは、支持体と支持体上に積層された粘着剤層とを備えたシートマスクであって、粘着剤層が、美肌成分としての海苔エキスを含み、香料を含まない。
本発明において、海苔エキスは美肌成分として用いられ、ウシケノリ目ウシケノリ科アマノリ属スサビノリ(Pyropia yezoensis)からの抽出物であり、ポルフィラン、亜鉛および鉄などを含む画分を水、アルコール等で抽出して得られる抽出物を意味する。
【0010】
本発明の化粧料を用いるシートマスクとしては、支持体と支持体上に積層された粘着剤層とを備えたシートマスクが適している。
支持体の材質はシートマスクに一般的に使用されているものであれば限定されず、
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタン等の合成樹脂や、アルミニウム等の金属が挙げられる。前記支持体の形態としては、例えば、フィルム;シート、シート状多孔質体、シート状発泡体等のシート類;織布、編布、不織布等の布帛;箔;及びこれらの積層体が挙げられる。また、前記支持体の厚みとしては、特に制限されるものではないが、シートマスクを貼付する際の作業容易性及び製造容易性の観点からは、5~2000μm程度が好ましい。
【0011】
粘着剤層は、ポリアクリル酸部分中和物、ゼラチン、ポリエチレングリコール、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、エデト酸ナトリウム、および水を含有し得る。本発明の化粧料をシートマスクに用いる場合、美肌成分としての海苔エキスは、粘着剤層に含まれる。
【0012】
粘着剤層の海苔エキスの含有量は、粘着剤層全量を基準として、好ましくは0.005~0.1質量%であり、より好ましくは0.007~0.1質量%、さらに好ましくは、0.01質量%~0.1質量%である。0.005質量%以上とすることで、シートマスクに十分に海苔エキス由来の効果を持たせながら、粘着剤層の粘着力が低下せずに保存安定性に優れたシートマスクを提供することができる。
【0013】
また、粘着剤層は、粘着剤層全量を基準として、5質量%~7質量%のポリアクリル酸部分中和物、1質量%~2質量%のゼラチン、9質量%~11質量%のポリエチレングリコール、3質量%~5質量%の合成ケイ酸アルミニウム、0.3質量%~0.5質量%のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、0.3質量%~0.4質量%のエデト酸ナトリウム、および50質量%~80質量%の水を含有する。
ポリエチレングリコールは、マクロゴール400(第17改正日本薬局方)等の、平均分子量が350~450であるポリエチレングリコールが好ましい。
【0014】
粘着剤層は、上記成分に加えて、pH調整剤、防腐剤等をさらに含有していることが好ましい。
【0015】
pH調整剤としては、乳酸、酢酸、蟻酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、アミン類等が挙げられるが、本発明においては、粘着剤層との相溶性という観点から、乳酸を用いることが特に好ましい。本発明に係る前記粘着剤層にpH調整剤を配合する場合、その含有量は特に制限されるものではないが、乳酸の含有量は、前記粘着剤層の全質量基準で0.01~0.2質量%であることが好ましく、0.05~0.15質量%であることがより好ましい。
【0016】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、1,2-ペンタンジオール、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、塩化ベンザルコニウム等が挙げられるが、本発明においては、抗菌スペクトルの広さと安全性とのバランスがよいという観点から、パラオキシ安息香酸エステルを用いることがより好ましく、パラオキシ安息香酸メチルを用いることが特に好ましい。本発明に係る前記粘着剤層に防腐剤を配合する場合、その含有量は特に制限されるものではないが、パラオキシ安息香酸メチルの含有量は、前記粘着剤層の全質量基準で0.2~0.3質量%であることが好ましい。
【0017】
粘着剤層は、上記成分に加えて、安定化剤、充填剤、色素、紫外線吸収剤、冷感付与剤、温感付与剤等を含んでいてもよい。
安定化剤としては、トコフェロールおよびそのエステル誘導体、アスコルビン酸およびそのエステル誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
充填剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、含水ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、無水ケイ酸、ベントナイト等が挙げられる。
【0018】
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メンチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイ皮酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ジオキシベンゾン、オクタベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリソベンゾン、ベンゾレソルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート等が挙げられる。
【0019】
色素としては、赤色2号(アマランス)、赤色3号(エリスロシン)、赤色102号(ニューコクシン)、赤色104号の(1)(フロキシンB)、赤色105号の(1)(ローズベンガル)、赤色106号(アシッドレッド)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)等の法定色素が挙げられる。
【0020】
冷感付与剤としては、テルペン系炭化水素化合物、メントール類縁化合物等を挙げることができ、具体的にはリモネン、テルピノレン、メンタン、テルピネン等のp-メンタンおよびこれらから誘導される単環式モノテルペン系炭化水素化合物;l-メントール、d-メントール、dl-メントール、イソプレゴール、3,l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、1-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(3-ニトロフェニル)-1,2,3,6-テトラヒドロキシピリミジン-2-オン、エチルメンタンカルボキサミド、p-メンタン-3,8-ジオール、トリアルキル置換シクロヘキサンカルボキシアマイド等が挙げられる。
【0021】
温感付与剤としてはカプサイシン、カプサイシノイド、ジヒドロキシカプサイシン、カプサンチン等のカプサイシン類似体;カプシコシド、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等のトウガラシ由来成分;ニコチン酸ベンジル;ニコチン酸β-ブトキシエチル;N-アシルワニルアミド;ノニル酸ワニリルアミド等が挙げられる。
粘着剤層の表面は、剥離性のフィルムで被覆されていてもよい。被覆されることにより、シートマスクの安定性を高めることができる。
【0022】
本発明のシートマスクは、さらに、前記粘着剤層を保護するための剥離ライナーを備えていてもよい。
【0023】
ライナーとしては、前記粘着剤層を保護し得るものであればよく、特に制限されるものではないが、シートマスクのライナー(剥離ライナー)として公知のものを適宜採用することができる。本発明に係るライナーの材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル等;ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;セルロース誘導体;ポリウレタン等の合成樹脂や、アルミ、紙等の材質からなるフィルムやシート及びこれらの積層体が挙げられる。このようなライナーとしては、前記粘着剤層から容易に剥離できるように前記粘着剤層と接触する側の面に含シリコーン化合物コートや含フッ素化合物コート等の離型処理が施されたものであることが好ましい。
【0024】
本発明の化粧料を用いるシートマスクの製造方法は、通常のシートマスクの製造方法を採用することができ、例えば、上記粘着剤層の各成分を攪拌機中で均一に混合および/または溶解し、これを支持体上に展延し、所望の形状に切断することで得られる。
本発明のシートマスクは、顔、顎、首、肘および踵等の部位に貼付することができる。
【0025】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例0026】
1.シートマスクの製造
表1に示す組成のシートマスクを常法により製造し、海苔エキス含有シートマスクを得た。
【表1】
【0027】
2.保存安定性試験
(1)粘着剤層の色
(a)エキスの種類
実施例1と参考例2のシートマスクをアルミニウム包装袋に密封し、60℃で3週間保存した後、包装袋を開封し、粘着剤層の色の変化について目視により観察した。
実施例1では、僅かに緑褐色の着色が見られた。一方、参考例2では、保存前の粘着剤層の色と同じで、褪色や変色は見られなかった。
【0028】
(b)エキスの濃度
次に、実施例1、実施例2および実施例3のシートマスクをアルミニウム包装袋に密封し、60℃で2~4週間保存し、1週間毎に包装袋を開封し、粘着剤層の色の変化について、以下の手順で色差ΔEを測定した。
【0029】
[測定手順]
(I)分光側色計(測定機器:CM-700d、コニカミノルタオプティクス株式会社製)にて、各シートマスクの製造直後のL*値、a*値、及びb*値を求め、それぞれ、L0*、a0*およびb0*とした。
(II)前記分光側色計にて、1週間毎に開封した各シートマスクのL*値、a*値およびb*値を求めた。
(III)次式:
ΔE*ab={(L*-L0*)2+(a*-a0*)2+(b*-b0*)2}1/2
により、製造直後との色差(ΔE)を算出した。
【0030】
結果を
図1に示す。
実施例1および実施例2は、僅かに緑褐色であった。実施例3は、色の変化がほぼ視認できなかった。実施例1~3のいずれも色差ΔEは5以下であり、製品として着色の問題は生じないと評価することでき、保存安定性に優れていることが示された。
【0031】
(2)粘着力
実施例2、参考例1および参考例2のシートマスクをアルミニウム包装袋に密封し、60℃で保存した場合の粘着力について、以下の手順で評価した。
(ローリングボールタック試験)
Nichiban Rolling Ball法(「接着便覧」第14版、高分子刊行会発行、1985年)により測定した。すなわち、サインカーブからなる傾斜台下の水平な底部に剥離ライナー層を除去したシートマスクの粘着剤層が上面となるように配置し、傾斜台の傾斜面に20号鋼球(直径20/32インチ)を転がして粘着剤層上でボールが停止した距離を測定し、これをボール停止距離とした。なお、ボール停止距離(mm)が短いシートマスクは、付着性に優れたものと認められる。
結果を表2に示す。
【0032】
【0033】
(3)まとめ
実施例2のシートマスクは、60℃4週間の試験を経ても粘着力も比較的低下することがないので、高い保存安定性を有することが示された。