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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125374
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】草刈作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/81 20060101AFI20230831BHJP
   A01D 34/62 20060101ALI20230831BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A01D34/81
A01D34/62
A01D34/68 K
A01D34/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029422
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂
(72)【発明者】
【氏名】石島 悠希
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA01
2B083AA02
2B083BA15
2B083BA16
2B083BA18
2B083DA02
2B083GA01
2B083HA52
2B083HA53
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】地面や走行状態がいかなる状態であったとしても、刈取装置外方に飛散する飛散物が車体外方へ飛散することを確実に防止することのできる草刈作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】刈取装置6の前側、及び後側の、刈取装置6から離間した位置に、車体1側から吊下する第2飛散防止装置12f,12rを設け、該第2飛散防止装置12f,12rを、左右のクローラ走行装置5L,5Rの間隔部Aの幅Hと略同幅に亘って地面Jに接近、乃至接触する長さに吊下げ列設する金属製の鎖13と、鎖13の刈取装置6側に、鎖13に沿って当接垂下する、前記間隔部Aの幅Hと略同幅に亘る1枚板状の弾性材14により構成した草刈作業機とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(1)左右のトラックフレーム(T)に軸支する接地転輪(2)と、テンション転輪(3)、及び駆動スプロケット(4)にクローラ(C)を巻き掛けたクローラ走行装置(5L),(5R)の内側間隔部(A)に昇降自在の刈取装置(6)を設け、該刈取装置(6)には、略垂直方向の刈取軸(7)回りに回転する刈刃(8)と、この刈刃(8)を覆う刈刃カバー(9)と、刈刃カバー(9)の前端部及び後端部には、刈刃(8)回転により飛散物が刈刃カバー(9)外方へ飛散することを抑制する第1飛散防止装置(11f),(11r)を備えた草刈作業機において、刈取装置(6)の前側、及び後側の、刈取装置(6)から離間した位置に、車体(1)側から吊着する第2飛散防止装置(12f),(12r)を設け、該第2飛散防止装置(12f),(12r)を、左右のクローラ走行装置(5L),(5R)の間隔部(A)の幅(H)と略同幅に亘って地面(J)に接近、乃至接触する長さに吊下げ列設する金属製の鎖(13)と、鎖(13)の刈取装置(6)側に、鎖(13)に沿って当接垂下し、前記間隔部(A)の幅(H)と略同幅に亘る1枚板状の弾性材(14)により構成したことを特徴とする草刈作業機。
【請求項2】
第2飛散防止装置(12f),(12r)の左右両端部の鎖(13)下部と弾性材(14)とを連結したことを特徴とする請求項1記載の草刈作業機。
【請求項3】
側面視において、クローラ(C)内周部領域(D)、且つ、刈取装置(6)を上限高さへ上昇させた際の刈刃カバー(9)側板(9a)下端前後延長線(L)より下方の重合域(V)に、少なくとも該重合域(V)を覆いトラックフレーム(T)外側面に沿う側部飛散防止板(15)を設けた請求項1又は2に記載の草刈作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草等を刈る草刈作業機に関し、刈取装置内の刈刃の回転によって、刈取装置内方から石礫や木片等の飛散物が車体外方へ飛散しないようにするものである。
【背景技術】
【0002】
刈取装置(草刈装置)の前端部、及び後端部に、刈取装置内で回転する刈刃によって跳ね飛ばされる石礫や木片等の飛散物の飛散を防止する板状の飛散防止手段を設けた草刈機が記載されている。又、従来より、ゴム板や鎖によって飛散防止装置を構成することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-99296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の刈取装置は、刈取装置を昇降させて草の刈高さを変更可能にしており、刈取装置の前端部、及び後端部に設けた飛散防止装置が刈取装置と一体的に昇降するので、刈取装置を上昇させると飛散防止装置と地面との間に隙間ができ、そこから石礫等の飛散物が刈取装置外方へ飛散するという問題があった。又、刈取装置の前端上部、又は後端上部を中心に前後揺動する複数枚に分割した板金製の飛散防止装置や、鎖を吊下げ列設した構成の飛散防止装置は、地面の傾斜、凹凸、走行状態等によって、隣接する飛散防止装置が相互に異なる揺動をした場合に、草刈装置内方から飛散する石礫等が通過可能な隙間ができるという問題もあった。更に、左右のクローラ走行装置の間隔部に刈取装置を備えた草刈作業機に、吊下げ列設した鎖で構成した飛散防止装置を設けた場合は、傾斜地を等高線方向に走行する際、地面と平行状態の刈取装置に対し、鎖が鉛直(重力)方向へ傾き、刈取装置の刈刃カバーの傾斜山側端部に三角形状の隙間が生じ、又、傾斜谷側端部の鎖がクローラ走行装置に巻き込まれるという問題もあった。本発明は、地面や走行状態がいかなる状態であったとしても、刈取装置外方に飛散する飛散物が車体外方へ飛散することを確実に防止することのできる草刈作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車体1左右のトラックフレームTに軸支する接地転輪2と、テンション転輪3、及び駆動スプロケット4にクローラCを巻き掛けたクローラ走行装置5L,5Rの内側間隔部Aに昇降自在の刈取装置6を設け、該刈取装置6には、略垂直方向の刈取軸7回りに回転する刈刃8と、この刈刃8を覆う刈刃カバー9と、刈刃カバー9の前端部及び後端部には、刈刃8回転により飛散物が刈刃カバー9外方へ飛散することを抑制する第1飛散防止装置11f,11rを備えた草刈作業機において、刈取装置6の前側、及び後側の、刈取装置6から離間した位置に、車体1側から吊着する第2飛散防止装置12f,12rを設け、該第2飛散防止装置12f,12rを、左右のクローラ走行装置5L,5Rの間隔部Aの幅Hと略同幅に亘って地面Jに接近、乃至接触する長さに吊下げ列設する金属製の鎖13と、鎖13の刈取装置6側に、鎖13に沿って当接垂下する、前記間隔部Aの幅Hと略同幅に亘る1枚板状の弾性材14により構成した草刈作業機とする。
【0006】
又、第2飛散防止装置12f,12rの左右両端部の鎖13下部と弾性材14とを連結した草刈作業機の構成とする。
【0007】
又、側面視において、クローラC内周部領域D、且つ、刈取装置6を上限高さへ上昇させた際の刈刃カバー9側板9a下端前後延長線Lより下方の重合域Vに、少なくとも該重合域Vを覆いトラックフレームT外側面に沿う側部飛散防止板15を設けた草刈作業機の構成とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車体1左右のトラックフレームTに軸支する接地転輪2と、テンション転輪3、及び駆動スプロケット4にクローラCを巻き掛けたクローラ走行装置5L,5Rの内側間隔部Aに昇降自在の刈取装置6を設け、該刈取装置6には、略垂直方向の刈取軸7回りに回転する刈刃8と、この刈刃8を覆う刈刃カバー9と、刈刃カバー9の前端部及び後端部には、刈刃8回転により飛散物が刈刃カバー9外方へ飛散することを抑制する第1飛散防止装置11f,11rを備えた草刈作業機は、元より刈取装置6外側方へ飛散物の一部が飛散した場合に、刈取装置6の左右外側方に配置したクローラ走行装置5L,5RのトラックフレームTや該トラックフレームTに軸支する接地転輪2と、テンション転輪3、クローラCが障壁となり、クローラ走行装置5L,5Rの左右外側方にまで飛散することを防ぐことができ、又、刈刃カバー9前後方向へ飛散する飛散物のほとんどは、第1飛散防止装置11f,11rで遮断される構成であり、この構成の草刈作業機において、刈取装置6の前側、及び後側の、刈取装置6から離間した位置に、車体1側から吊着する第2飛散防止装置12f,12rを設け、該第2飛散防止装置12f,12rを、左右のクローラ走行装置5L,5Rの間隔部Aの幅Hと略同幅に亘って地面Jに接近、乃至接触する長さに吊下げ列設する金属製の鎖13と、鎖13の刈取装置6側に、鎖13に当接垂下し、前記間隔部Aの幅Hと略同幅に亘る1枚板状の弾性材14により構成しているので、昇降する第1飛散防止装置11f,11rで遮断できなかった前後方向への飛散物を、車体1側に設けた第2飛散防止装置12f,12rにより確実に遮断し、車体1外方への飛散物の飛散を大幅に削減することができる。又、地面Jの傾斜、凹凸状態や草刈作業機の走行状態等により、隣接する鎖13の相互間に石礫等が通過可能な隙間ができたとしても、その隙間は内側の1枚板状の弾性材14により塞がれていて、車体1外方にまで飛散物が飛散する確率を更に下げることができる。又、比較的大きな飛散物が、軽量の弾性材14に当たっても外側の金属製の鎖13が弾性材14を押さえ込み、飛散物が車体1外方へ容易に飛び出すことがない。
【0009】
請求項2に記載の発明は、第2飛散防止装置12f,12rの左右両端部の鎖13下部と弾性材14とを連結しているので、傾斜面を等高線方向に走行する際に、傾斜谷側の鎖13が接地転輪2又はテンション転輪3等のクローラ走行装置5L,5Rに巻き込まれることがない。又、傾斜面を等高線方向に走行する際、鎖13が鉛直(重力)方向に傾いた状態になり、第2飛散防止装置12f,12rの傾斜山側端部の三角領域が弾性材14のみになるが、第2飛散防止装置12f,12rの左右両端部の鎖13下部と弾性材14とを連結することにより、第2飛散防止装置12f,12rの傾斜山側端部の三角領域が弾性材10のみになることがなく、この部分から車体1外方へ飛散物が飛び出す可能性を更に抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、側面視において、クローラC内周部領域D、且つ、刈取装置6を上限高さへ上昇させた際の刈刃カバー9側板9a下端前後延長線Lより下方の重合域Vに、少なくとも該重合域Vを覆いトラックフレームT外側面に沿う側部飛散防止板15を設けているので、刈取装置6から側方へ飛散する飛散物を、トレックフレームTや接地転輪2、又はテンション転輪3で遮断し、それでもトラックフレームT外側方へ飛散する飛散物を、重合域VにおいてトラックフレームTに沿う飛散物防止板15が確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の飛散防止装置を示す全体側面図及び一部正面図。
図2】本発明の一部側面図及び一部背面図。
図3】本発明の刈取装置と飛散防止装置を示す平面図。
図4】本発明の鎖と弾性体を連結した状態を示す一部背面図及び側面図、一部正面図。
図5】本発明のクローラ走行装置の飛散防止構成を示す一部断側面図。
図6】本発明の全体側面図。
図7】本発明の傾斜状態を示す一部断背面図。
図8】クローラ走行装置前方の飛散防止装置を示す一部側面図及び一部正面図。
図9】クローラ走行装置前方の飛散防止装置を示す一部側面図及び一部正面図。
図10】刈取装置の飛散防止装置を示す斜視図。
図11】刈取装置への伝動状態を示す全体断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、無線遠隔操縦型の草刈作業機を実施例として説明する。この草刈作業機は、作業者が持つプロポ(図示せず)により、走行操作やエンジンEの始動、停止、草の刈高さ調整等を遠隔操作することが可能である。車体1を形成するフレーム20の左右にクローラ走行装置5L,5Rを設け、このクローラ走行装置5L,5R内側間隔部Aに左右一対のリンク機構21を前後に配設した平行リンクにより昇降可能な刈取装置6を設けている。刈取装置6は昇降用シリンダ22が伸縮することで、昇降リンク23を介して昇降させることができる。刈取装置6の刈刃カバー9内側には、中央の縦方向の刈取軸7の下端部にナイフステー24を取着し、ナイフステー24の先端に上下二段のナイフ19を枢支している。クローラ走行装置5L,5Rは、フレーム20の左右に設けたトラックフレームTに複数の接地転輪2を軸支し、トラックフレームT前方のテンション転輪3と後方の大径接地転輪2d、及び大径接地転輪2d上方の駆動スプロケット4にクローラCを巻回し、前端部のテンション転輪3を前後調整することでクローラCの張り調整を行うことができる。刈取装置6の刈刃カバー9上面には、刈刃カバー9を挿通する刈取軸7上端部に取着する刈刃プーリ25と、その後方の上下2段のカウンタプーリ26を設け、刈刃プーリ25とカウンタプーリ26下段との間に刈刃Vベルト27を巻回しベルト伝動可能に構成している。又、刈取装置6上方のエンジンベース28の前部にエンジンEを搭載し、その後方に発電機29や燃料タンク30、走行用バッテリ等を配置し、エンジンEの下方に向けエンジンベース28から突出する出力軸31に上下2段のエンジンプーリ32を取着し、発電機29の下方に向けエンジンベース28から突設する軸には発電プーリ33を取着し、エンジンプーリ32の上段と発電プーリ33間をVベルト34でベルト伝動可能に構成している。エンジンプーリ32の下段とカウンタプーリ26の上段との間には、カウンタVベルト35を巻回しベルト伝動可能に構成してある。
【0013】
刈取装置6の前端、及び後端には、刈刃8の回転によって飛散する飛散物が刈刃カバー9外方へ飛散することを抑制する第1飛散防止装置11f,11rを設けている。この第1飛散防止装置11f,11rは、刈刃カバー9横幅全域に亘り垂下し、軸36で暖簾形態に枢支した複数枚の板金製カバー板37と、該カバー板37外側の1枚板状弾性材の外カバー38とから構成され、刈刃8から飛散する飛散物の衝撃力を板金製のカバー板37が受けても、外側の弾性材の外カバー38によって、包囲状態に保持されて、カバー板37の揺動や歪み衝撃力を緩和し、各カバー板37間の過度の開きや間隔開放を少なくして、第1飛散防止装置11f,11r外周への飛散物の飛散放出を防止することができる。又、石礫等の硬い飛散物のほとんどは、最初に板金製のカバー板37に当たるので、ゴム材等の柔らかい弾性材の外カバー38に直接硬い飛散物が当たることが少なくなり、外カバー38の耐久性を高くすることができる。
【0014】
エンジンベース28は、傾斜シリンダ39を伸縮させることにより揺動支点40を中心に左右方向へ揺動可能に構成し、車体1が左右方向に傾くと傾斜山側方向に向けエンジンベース28を揺動させて、例えば30度以上の急傾斜地での草刈作業時においてもエンジンEの傾斜使用限界角度(汎用エンジンでは一般的に25度)を超えないようエンジンEを傾斜山側へ傾け、オイルの循環不良によるエンジンE焼き付きを防止できる構成である。エンジンベース28後方には、左右のクローラ走行装置5L,5Rを駆動する走行モータMとギヤボックスG、及び前記走行モータMの他、充電やエンジンE傾斜等の制御を行うコントローラ41を設け、エンジンE部分を除くエンジンEの後方部分をカバー42で覆っている。走行モータM、及びギヤボックスGは左右各々のクローラ走行装置5L,5Rに設けてあり、左右のクローラC,Cを互いに前後逆回転させることにより、超信地旋回(その場旋回)、及び片側のクローラCを停止し、他方のクローラCを回転させることによる信地旋回を行うことも可能である。
【0015】
前記、前側の第2飛散防止装置12fは第1飛散防止装置11f前側の離間した位置に、第1飛散防止装置11fと平行に設け、又、後側の第2飛散防止装置12rは第1飛散防止装置11r後側の離間した位置に、第1飛散防止装置11rと平行に設けてある。前側の第2飛散防止装置12fは、左右クローラ走行装置5L,5Rの内側間隔部Aの幅Hよりも広幅H1に形成し、左右クローラCの前側に位置する鎖13aを鎖13よりも1リンク分R短くするとともに、鎖13aのクローラC側(後側)にはゴム材、又は樹脂材等からなる弾性材14を形成していない。これは図1に示す通り、隙間Fで鎖13aを含む第2飛散防止装置12fが前後揺動し、鎖13aの下端部がクローラCと地面Jとの間に入り込むことを防止する構成で、スムーズな走行と飛散物の飛散防止効果を維持することが可能であるが、側面視クローラC前端と第1飛散防止装置12fとの間隔が広く、鎖13aの下端部がクローラCと地面Jとの間に入り込むことがないのであれば、弾性材14を鎖13、及び鎖13aとの広幅H1に亘って形成しても良い。
【0016】
前側の第2飛散防止装置12fは、幅Hよりも広幅H1に亘って設け、後側の第2飛散防止装置12rは、左右クローラ走行装置5L,5Rの後端位置に、幅Hと略同幅に亘って設けてある。第2飛散防止装置12f,12rは、吊下げ板44に鎖13の上端部を吊着し、該鎖13の内側(刈取装置6側)に垂下する弾性材14の上端部を取着してある。前記、吊下げ板44はフレーム20に固着したフック45にU金具46を介して吊着し、第2飛散防止装置12f,12rが一体的に前後揺動可能に支持してある。
【0017】
クローラ走行装置5L,5Rの内側間隔部Aに昇降自在の刈取装置6を設け、該刈取装置6には、略垂直方向の刈取軸7回りに回転する刈刃8と、この刈刃8を覆う刈刃カバー9を設けた草刈作業機は、刈取装置6外側方へ飛散物の一部が飛散した場合に、刈取装置6の左右外側方に配置したクローラ走行装置5L,5RのトラックフレームTや該トラックフレームTに軸支する接地転輪2と、テンション転輪3、クローラCが障壁となり、クローラ走行装置5L,5Rの左右外側方にまで飛散することを防ぐことができるが、更に、刈刃カバー9の前端部及び後端部には、刈刃8回転により飛散物が刈刃カバー9の前後方向へ飛散することを防止する第1飛散防止装置11f,11rを備えていることにより、刈刃カバー9外方への飛散物の飛散は元より少ない構成である。
【0018】
ここにおいて、刈取装置6の前側、及び後側の、刈取装置6から離間した位置に、車体1側から吊着する第2飛散防止装置12f,12rを設け、該第2飛散防止装置12f,12rを、左右のクローラ走行装置5L,5Rの間隔部Aの幅Hと略同幅に亘って地面Jに接近、乃至接触する長さに吊下げ列設する金属製の鎖13と、鎖13の刈取装置6側に、鎖13に当接垂下し、前記間隔部Aの幅Hと略同幅に亘る1枚板状の弾性材14により構成しているので、昇降する第1飛散防止装置11f,11rで遮断できなかった前後方向への飛散物を、車体1側に設けた第2飛散防止装置12f,12rにより確実に遮断し、車体1外方への飛散物の飛散を大幅に削減することができる。又、地面Jの傾斜、凹凸状態や草刈作業機の走行状態等により、隣接する鎖13の相互間に石礫等が通過可能な隙間ができたとしても、その隙間は内側の1枚板状の弾性材14により塞がれていて、車体1外方にまで飛散物が飛散する確率を更に下げることができる。又、比較的大きな飛散物が、軽量の弾性材14に当たっても外側の金属製の鎖13が弾性材14を押さえ込み、飛散物が車体1外方へ容易に飛び出すことがない。
【0019】
後側の第2飛散防止装置12rの鎖13は、クローラC後端部に接近する位置に設けていて、地面Jに接近、乃至接触する長さの鎖13が、傾斜面を等高線方向に走行する場合に鉛直(重力)方向に傾いた状態となり、傾斜谷側の鎖13が接地転輪2に巻き込まれたり、クローラCと地面Jとの間に挟み込まれたりする可能性がある。又、図7に示すように、傾斜面を等高線方向に走行する場合は、第2飛散防止装置12f,12rの鎖13が鉛直(重力)方向に傾いた状態となり、傾斜山側端部の三角領域Sが弾性材14のみの状態になり、この三角領域Sから飛散物が飛び出し易くなるという問題がある。
【0020】
ここにおいて、第2飛散防止装置12rの左右両端部の2本の鎖13下部と弾性材14とを連結金具47で連結しているので、傾斜面を等高線方向に走行する際に、傾斜谷側の鎖13が接地転輪2又はテンション転輪3等のクローラ走行装置5L,5Rに巻き込まれることがない。又、傾斜面を等高線方向に走行する際、鎖13が鉛直(重力)方向に傾いた状態になり、第2飛散防止装置12rの傾斜山側端部の三角領域Sが弾性材14のみになるが、第2飛散防止装置12rの左右両端部の鎖13下部と弾性材14とを連結することにより、第2飛散防止装置12rの傾斜山側端部の三角領域Sが弾性材10のみになることがなく、この部分から車体1外方へ飛散物が飛び出す可能性を更に抑制できる。尚、鎖13下部と弾性材14との連結部と未連結部との三角領域S1は、傾斜山側端部の鎖13下部と弾性材14とを連結しているので、弾性材14が飛散物の飛散衝撃を受けた場合にも三角領域S1の左右を鎖13で押さえ込む状態となり、飛散物が容易に外方へ飛び出すことがない。第2飛散防止装置12rの左右両端部において、弾性材14に連結する鎖13の本数は、鎖13の長さや草刈作業時の地面の傾斜角度の条件により適宜増減させれば良く、本実施例のように2本の鎖13を弾性材14に連結することに限定するものではない。又、第2飛散防止装置12fを、側面視クローラC前端部に配置する場合には、第2飛散防止装置12rと同様に、間隔部Aの幅Hと略同幅に亘って形成すれば良い。
【0021】
クローラ走行装置5L,5RのクローラC内周部領域Dにおいて、飛散物が刈取装置6側方へ飛散した場合には、トラックフレームT、接地転輪2や大径接地転輪2d、テンション転輪3等の構造物が障壁となり、飛散物が外方に飛散することは少ない。又、飛散物が前記各構造物内で反射してトラックフレームT上面から側方へ転がり落ちる場合がある。これらの飛散や転がり落ちも防止するために、クローラC内周部領域Dの略全域を覆う側面飛散防止手段48を設けてある。このクローラC内周部領域Dの略全域を覆う構成は、草刈作業機の使用者に対して車体1側方へ飛散物が飛散することはないという絶対的な安心感を与えるものであり、飛散物がトラックフレームTの上面から側方へ転がり落ちる程度の飛散が許容される場合には、クローラC内周部領域Dの略全域を覆う側面飛散防止手段48は不要であり、適宜、条件に応じて飛散防止範囲を選択すれば良い。図5は刈取装置6を最上限位置まで上昇させた状態を示しており、側面視において、クローラC内周部領域D、且つ、刈取装置6を上限高さへ上昇させた際の刈刃カバー9側板9a下端前後延長線Lより下方の重合域Vに、少なくとも該重合域Vを覆いトラックフレームT外側面に沿う側部飛散防止板15を設けている(図6参照)ので、トラックフレームT、接地転輪2や大径接地転輪2d、テンション転輪3等の構造物をすり抜けた飛散物を飛散防止板15で確実に遮断し、側方への飛散物の飛散を防止することができる。尚、飛散物防止板15は、クローラCの変形や傾きにより、該クローラC内周部に接触する場合があるので、ゴム材等の弾性体で構成することが好適である。
【0022】
前側の第2飛散防止装置12fは、側面視、左右クローラ走行装置5L,5Rの前端位置よりも更に前方位置に設けてあり、図1図6に示す通り、クローラ走行装置5L,5R前端から第2飛散防止装置12fとの間に飛散物が飛び出す可能性のある隙間Fが形成されるが、この隙間Fからも飛散物が外方へ飛散しないよう、別途、前側面飛散防止装置43を設けている。図8は、刈取装置6を最下限位置に下降させた状態を示し、図9は刈取装置6を最下限位置から最上限位置へ上昇させた状態を示している。前側面飛散防止装置43は、側面視、クローラ走行装置5L,5Rの前端から第2飛散防止装置12fまでの間の隙間Fから飛散物が外方へ飛散するのを防止するためのもので、外側の弾性板50と内側の鎖51からなり、フレーム1に取付具52を取着し、該取付具52の上方に弾性板50の上端部を取着するとともに、弾性板50の下部は連結板53を介して刈刃カバー9の側板9aに取着してある。前後方向に列設した3本の鎖51は、前記取付具52から下方に延設の吊下げプレート54下端部に吊着してある。又、鎖51の外側(クローラC側)に設けた弾性板50が、刈取装置6の昇降に伴い昇降Yする。従って、傾斜面走行時に鎖51と弾性板50がテンション転輪3やクローラCに当接、又は巻き込まれて走行の抵抗になったり、破損したりすることがない。尚、前側面飛散防止装置43は、平地状態での隙間Fを塞ぐ程度の幅で形成してあるが、クローラ走行装置5L,5Rの隙間Fが形成されない場合には不要である。
【符号の説明】
【0023】
1 車体
2 接地転輪
3 テンション転輪
4 駆動スプロケット
5L クローラ走行装置
5R クローラ走行装置
6 刈取装置
7 刈取軸
8 刈刃
9 刈刃カバー
9a 側板
11f 第1飛散防止装置
11r 第1飛散防止装置
12f 第2飛散防止装置
12r 第2飛散防止装置
13 鎖
14 弾性材
15 飛散防止板
A 間隔部
C クローラ
D 内周部領域
H 幅
L 下端前後延長線
T トラックフレーム
V 重合域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11