(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125375
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】CD39発現促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7032 20060101AFI20230831BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230831BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230831BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230831BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20230831BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20230831BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230831BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230831BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230831BHJP
C07H 15/18 20060101ALI20230831BHJP
A23L 33/125 20160101ALN20230831BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20230831BHJP
C12N 5/071 20100101ALN20230831BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230831BHJP
【FI】
A61K31/7032
A61K8/60
A61P29/00
A61P43/00 105
A61Q19/08
A61K31/047
A61K31/7028
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K8/34
A61Q19/00
C07H15/18
A23L33/125 ZNA
A23L33/105
C12N5/071
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029423
(22)【出願日】2022-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】511032637
【氏名又は名称】株式会社CPコスメティクス
(71)【出願人】
【識別番号】510200369
【氏名又は名称】株式会社スタイリングライフ・ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】粂田 麻由
(72)【発明者】
【氏名】原 卓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 仁志
(72)【発明者】
【氏名】谷 孝二
(72)【発明者】
【氏名】川野 仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光将
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 昂
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C057
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD08
4B018MD27
4B018MD48
4B018ME07
4B018MF01
4B018MF10
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BB06
4B065BB14
4B065BB26
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
4C057AA06
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ19
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD531
4C083AD532
4C083BB51
4C083CC02
4C083EE13
4C086AA01
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4C086GA17
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4C086MA04
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206CA14
4C206KA04
4C206KA17
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA89
4C206ZB11
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】ダルマギク中に含まれる、優れたCD39発現促進作用をもつ有効成分を明らかにし、その有効成分を含むCD39発現促進剤を提供すること。
【解決手段】本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、二環式ジテルペン骨格を有する化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有し、二環式ジテルペン骨格を有する化合物が、スクラレオール、スクラレオール配糖体及びイソマノオール配糖体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二環式ジテルペン骨格を有する化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有し、
前記二環式ジテルペン骨格を有する化合物が、スクラレオール、スクラレオール配糖体及びイソマノオール配糖体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤。
【請求項2】
前記スクラレオール配糖体を構成する糖が、6-デオキシイドース、フコース又はこれらの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤。
【請求項3】
前記スクラレオール配糖体が、下記式(I)又は式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はアセチル基を示す。)
【化2】
(式中、R
2は水素原子又はアセチル基を示す。)
【請求項4】
前記イソマノオール配糖体を構成する糖が、6-デオキシイドース、フコース又はこれらの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤。
【請求項5】
前記イソマノオール配糖体が、下記式(III)又は式(IV)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤。
【化3】
(式中、R
3は水素原子又はアセチル基を示す。)
【化4】
(式中、R
4は水素原子又はアセチル基を示す。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のCD39発現促進剤を有効成分として含有する皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用皮膚外用剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のCD39発現促進剤を有効成分として含有する皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用化粧料。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のCD39発現促進剤を含有する皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用飲食品。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載のCD39発現促進剤を含むことを特徴とする細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤。
【請求項10】
下記式(V)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCD39発現促進剤に関し、特に、皮膚のランゲルハンス細胞に発現しており、皮膚免疫応答に関与すると共に、細胞外ATPに由来する炎症抑制に関与するCD39の発現を促進することができるCD39発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
CD39は、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1、NTPDase1としても知られる膜タンパク質であり、細胞外表面に触媒作用部位を有し、ATPやADPをAMPに加水分解するエクトヌクレオチダーゼである。CD39はB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞及び血管内皮細胞等に発現しており、細胞外ATP・ADPを分解することによって、炎症反応の抑制や血小板機能の活性化等に関与している。
【0003】
細胞が物理的又は化学的な外部刺激を受けると、細胞外ATPが分泌され、アラームシグナル伝達物質となることが知られている。この細胞外ATPの放出量は加齢と共に増大する。そして、細胞外ATPが老化細胞を刺激すると、炎症性サイトカイン、ケモカイン及びプロテアーゼを主成分とする様々な分泌因子を高発現するSASPと呼ばれる現象(SASP:senescence-associated secretory phenotype)が生じ、周囲の組織に炎症を引き起こす。SASP因子の一部は、老化した細胞周期の停止を強化する等の生体にとって有益な作用を有するが、他のSASP因子は炎症及び腫瘍形成の促進に関連しており、慢性炎症やがん等の様々な疾患の発症に関与することが報告されている(非特許文献1)。それゆえ、細胞外ATPを分解することにより細胞外ATPの蓄積を防ぎ、SASPを抑制する、というCD39の機能が注目されている。
【0004】
他方、皮膚は表皮、真皮及び皮下組織から構成されている。このうち、皮膚バリア機能を担う皮膚の最外層である表皮は、主に角化細胞(ケラチノサイト)又はこの角化細胞が変化した細胞から構成され、外側から角質層、顆粒細胞層、有棘細胞層及び基底細胞層の順に構成されている。表皮は機械的、物理的又は化学的な外力や異物の侵入から体内を保護する機能を有するところ、角質化されて厚く積み重なった角質層のみがバリアとして機能するのではなく、表皮に特異的に存在する免疫細胞が外部から侵入する異物を排除することで、そのバリア機能を確実なものとしている。代表的な皮膚免疫細胞として、表皮の有棘細胞層に存在するランゲルハンス細胞が挙げられる。ランゲルハンス細胞は樹状細胞であり、角質層を通過した外来抗原を補足すると特定のリンパ節に移動してT細胞に抗原提示を行い、T細胞を活性化させる。活性化したT細胞は皮膚に移行し、抗原を認識するとサイトカインを産生して細菌等の異物を殺傷する。その一方で、外来抗原を感知しない定常状態では、ランゲルハンス細胞は免疫寛容の誘導にも関与している。
【0005】
この表皮ランゲルハンス細胞には、上述したCD39が発現しており、それゆえ、このCD39によるATPase活性はランゲルハンス細胞のマーカーとして用いられてきた。ケラチノサイトは、剪断力や伸縮等の物理的刺激及び化学的刺激によって細胞外ATPを放出するところ、放出された細胞外ATPはシグナル伝達物質となり、アポトーシスや皮膚の炎症を引き起こす。そこで、CD39を発現するランゲルハンス細胞は、細胞外ATPが蓄積しないように、CD39により細胞外ATPを分解することで、炎症反応の抑制及び免疫応答機能の調節を行っている(非特許文献2)。また、亜鉛摂取量が不足することによりランゲルハンス細胞の数が減少すると、CD39も減少して細胞外ATPの分解が十分になされなくなり、細胞外ATPが蓄積して皮膚の炎症が生じることが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
そこで、炎症の抑制及びSASP等による過剰免疫応答の抑制を図るために、CD39の発現量を増加させること、又はランゲルハンス細胞の減少抑制若しくは活性化についての研究が進められている。特許文献1では、CD39遺伝子発現促進剤として、カルボキシメチル・ベータグルカン・ナトリウム、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)ランダム共重合体ジメチルエーテル及びローズ水の3成分を含むCD39遺伝子発現促進剤が提案されている。また、特許文献2では、クジン、エンジュ、オウバク、カンゾウ、シコン、テンチャ又はトウキから選択される植物抽出物を有効成分とするランゲルハンス細胞減少抑制剤が提案され、特許文献3では、アミガサタケ由来のノイラミン酸誘導体がランゲルハンス細胞活性化作用を呈することが記載されている。
【0007】
さらに、本願の出願人らによる特許文献4では、ダルマギク(Aster spathulifolius)抽出物に皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進作用があることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2017-511790号公報
【特許文献2】特開2000-239144号公報
【特許文献3】特開2017-140000号公報
【特許文献4】特許第6887649号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Shin Yoshimoto et al., “Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer through senescence secretome”, Nature, Vol. 499, 2013年, p.97-101
【非特許文献2】Norikatsu Mizumoto et al., “CD39 is the dominant Langerhans cell-associated ecto-NTPDase: Modulatory roles in inflammation and immune responsiveness”, Nature Medicine, Vol. 8, No. 4, 2002年, p.358-365
【非特許文献3】Tatsuyoshi Kawamura et al., “Severe dermatitis with loss of epidermal Langerhans cells in human and mouse zinc deficiency”, The Journal of Clinical Investigation, Vol. 122, No. 2, 2012年, p.722-732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1で報告されたCD39遺伝子発現促進剤には、化学合成により製造された成分が含まれており、それゆえ、人体に対して高い安全性を有する天然由来成分からなるCD39遺伝子発現促進剤が依然として期待されている。また、特許文献2、3には、それぞれランゲルハンス細胞の減少抑制作用又は活性化作用を有する特定の植物抽出物が記載されているものの、CD39の発現促進に関する作用は検討されていない。
【0011】
そして、特許文献4には、皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤としてダルマギク抽出物を用いることが記載されているが、CD39発現促進作用に関する効果確認は、一般的に生体内に比べて反応条件が整えられた条件にて行われているところ、ダルマギク抽出物を細胞培養液に0.1~0.2%(すなわち、1000~2000ppm)という添加割合で添加した場合にCD39発現促進作用がみられたことが報告されている。よって、このダルマギク抽出物をCD39発現促進剤として使用するにあたっては、パーセントオーダーで用いる必要があると推察される。
【0012】
また、特許文献4で開示されたダルマギク抽出物は、複数の成分が含まれる混合物であり、CD39発現促進剤としての有効成分が具体的に何であるのかは示されていない。
【0013】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、ダルマギク中に含まれる、優れたCD39発現促進作用をもつ有効成分を特定し、その有効成分を含むCD39発現促進剤を提供することにある。
【0014】
また、本発明の他の目的は、新規なCD39発現促進剤を有効成分として含む皮膚外用剤、化粧料及び飲食品を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、新規なCD39発現促進剤を含む細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明者らは、ダルマギク抽出物に種々の分画処理を施し、得られた分画物を検討した結果、優れたCD39発現促進作用を有する二環式ジテルペン化合物を特定した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、二環式ジテルペン骨格を有する化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物を有効成分として含有し、この二環式ジテルペン骨格を有する化合物が、スクラレオール、スクラレオール配糖体及びイソマノオール配糖体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。二環式ジテルペン骨格を有する化合物である、スクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を投与することにより、対象細胞でのCD39発現が促進され、CD39を増加させることができる。それゆえ、外部刺激や加齢などによって放出された細胞外ATPの分解が促進され、炎症及びSASP等による過剰免疫応答が抑制される。
【0018】
また、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、上述したスクラレオール配糖体を構成する糖が、6-デオキシイドース、フコース又はこれらの誘導体であることも好ましい。これにより、好適なスクラレオール配糖体を構成する糖が選択される。
【0019】
また、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、上述したスクラレオール配糖体が下記式(I)(式中、R1は水素原子又はアセチル基を示す。)又は式(II)(式中、R2は水素原子又はアセチル基を示す。)で表される化合物であることも好ましい。これにより、CD39発現促進剤として好適なスクラレオール配糖体が選択される。
【0020】
【0021】
【0022】
また、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、上述したイソマノオール配糖体を構成する糖が、6-デオキシイドース、フコース又はこれらの誘導体であることも好ましい。これにより、好適なイソマノオール配糖体を構成する糖が選択される。
【0023】
また、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進剤は、上述したイソマノオール配糖体が、下記式(III)(式中、R3は水素原子又はアセチル基を示す。)又は式(IV)(式中、R4は水素原子又はアセチル基を示す。)で表される化合物であることも好ましい。これにより、CD39発現促進剤として好適なイソマノオール配糖体が選択される。
【0024】
【0025】
【0026】
また、本発明の皮膚ランゲルハンス細胞におけるCD39発現促進用皮膚外用剤、CD39発現促進用化粧料及びCD39発現促進用飲食品は、上述した二環式ジテルペン骨格を有する化合物等からなるCD39発現促進剤を有効成分として含有する。これにより、皮膚等の炎症の抑制及び過剰免疫応答の抑制を図ることのできる皮膚外用剤、化粧料及び飲食品が得られる。
【0027】
また、本発明の細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤は、上述した二環式ジテルペン骨格を有する化合物等からなるCD39発現促進剤を含有する。上述した二環式ジテルペン骨格を有する化合物を投与することにより、対象細胞でのCD39発現が促進されてCD39が増加するため、細胞外ATPが十分に分解され、細胞外ATPに起因する炎症を抑制することができる。
【0028】
また、本発明は、下記式(V)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物である。式(V)で表される化合物は、ダルマギク抽出物から分離、精製された新規スクラレオール配糖体であり、優れたCD39発現促進作用を有する。
【0029】
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有するCD39発現促進剤、皮膚外用剤、化粧料、飲食品及び細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤を提供することができる。
(1)少ない投与量で対象細胞でのCD39発現を亢進させることができる。
(2)発現促進されたCD39によって細胞外ATPが十分に分解されるため、細胞外ATPに起因する炎症反応が抑制される。
(3)食用可能なダルマギクの抽出物から分離、精製された成分を有効成分とするものであるため、人体に対する安全性が高い。
(4)皮膚炎症の抑制作用及び過剰免疫応答の抑制作用を有する皮膚外用剤、化粧料及び飲食品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例1における、ダルマギク抽出物からシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分画物Fr.1~6を調製する方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図2】実施例2における、Fr.2から化合物c及びbを単離する方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】実施例2における、Fr.4から化合物e、a及びdを単離する方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】実施例2における、Fr.5から化合物f、i及びgを単離する方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】実施例2における、Fr.6から化合物hを単離する方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図6】化合物aの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図7】化合物bの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図8】化合物cの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図9】化合物dの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図10】化合物eの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図11】化合物fの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図12】化合物gの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図13】化合物hの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図14】化合物iの(a)
1H-NMRスペクトル及び(b)
13C-NMRスペクトルを示す図である。
【
図15】実施例4における、化合物a~cをそれぞれ添加したTHP-1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。
【
図16】実施例4における、化合物d~fをそれぞれ添加したTHP-1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。
【
図17】実施例4における、化合物g~iをそれぞれ添加したTHP-1細胞のCD39発現レベルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の二環式ジテルペン骨格を有する化合物であるスクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を含有するCD39発現促進剤、これを含むCD39発現促進用の皮膚外用剤、化粧料及び飲食品、並びに細胞外ATPにより生じる炎症抑制剤について説明する。
【0033】
本発明におけるCD39とは、エクトヌクレオシド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ1(Ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase 1)、ENTPD1又はNTPDase1等と呼ばれ、基質として主にATP・ADPをAMPに分解するエクトヌクレオチダーゼである。CD39はそのN末端とC末端に膜貫通ドメインを有する膜タンパク質であり、細胞外表面に触媒作用部位を有している。CD39はB細胞、T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞及び血管内皮細胞等に発現しており、皮膚を構成する細胞では、ランゲルハンス細胞の他、メラノサイトにも発現する。
【0034】
本発明におけるCD39発現促進とは、CD39遺伝子の発現促進又はCD39(タンパク質)の発現促進のことをいい、本発明のCD39発現促進剤を添加又は投与されない状態のコントロールと比較して、CD39遺伝子又はCD39(タンパク質)の発現が亢進していることを意味する。より具体的には、CD39遺伝子の発現レベルがコントロールの1.2倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましく、さらには1.6倍以上であることが好ましく、1.8倍以上であることが特に好ましい。CD39遺伝子の発現レベルは、例えば、リアルタイムPCR(QPCR)やマイクロアレイ等の公知の方法で測定でき、CD39の発現レベルは、例えば、免疫染色、ウエスタンブロッティング等の公知の方法で測定され得る。
【0035】
本発明のCD39発現促進剤には有効成分として、二環式ジテルペン骨格を有する化合物若しくはその塩、又はそれらの溶媒和物が含まれる。この二環式ジテルペン骨格を有する化合物としては、下記化学式で示されるスクラレオールのほか、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体が挙げられる。本発明に係る二環式ジテルペン骨格を有する化合物は塩であってもよく、薬理学的に許容される塩であることが好ましい。この化合物の薬理学的に許容される塩としては、酸又は塩基と形成される塩であればよく、特に限定されない。また、この化合物又はその塩は、溶媒和物であってもよく、特に限定されないが、例えば、水和物、エタノール等の有機溶媒和物が挙げられる。
【0036】
以下の化学式で示されるスクラレオールは、二環式ジテルペンアルコールに分類される化合物であり、シソ科植物のクラリセージ(Salvia sclarea)に含まれていることが知られている。今回、本発明者らは、ダルマギク抽出物から分画された分画物からこのスクラレオールを単離すると共に、このスクラレオールがCD39発現促進作用を有することを見出した。
【0037】
【0038】
同様に、本発明者らは、ダルマギク抽出物から分画された分画物からスクラレオール配糖体を単離すると共に、スクラレオール配糖体がCD39発現促進作用を有することを見出した。スクラレオール配糖体を構成する糖成分としては、6-デオキシイドース、フコース(6-デオキシガラクトース)又はこれらの誘導体が挙げられる。このうち、以下式(I)で示されるL-6-デオキシイドース、式(II)で示されるD-フコースが好適に用いられる。また、下記式(I)のうち、R1で示される原子としては水素原子が好ましく、分子としては、アセチル基が好ましい。他方、下記式(II)のうち、R2で示される原子としては水素原子が好ましく、分子としては、アセチル基が好ましい。
【0039】
【0040】
【0041】
この式(I)で表される化合物のうち、下記式(V)に示すスクラレオール配糖体が今回、新規化合物として発見された。
【0042】
【0043】
さらに、本発明者らは、ダルマギク抽出物から分画された分画物からイソマノオール配糖体を単離すると共に、イソマノオール配糖体がCD39発現促進作用を有することを見出した。なお、後述する実施例4で示すように、イソマノオール配糖体のアグリコンであるイソマノオールそれ自体には、CD39発現促進作用は確認されなかった。イソマノオール配糖体を構成する糖成分としては、6-デオキシイドース、フコース(6-デオキシガラクトース)又はこれらの誘導体が挙げられる。このうち、以下式(III)で示されるL-6-デオキシイドース、式(IV)で示されるD-フコースが好適に用いられる。また、下記式(III)のうち、R3で示される原子としては水素原子が好ましく、分子としては、アセチル基が好ましい。他方、下記式(IV)のうち、R4で示される原子としては水素原子が好ましく、分子としては、アセチル基が好ましい。
【0044】
【0045】
【0046】
上述した化合物、すなわち、スクラレオール、スクラレオール配糖体及びイソマノオール配糖体は、いずれもダルマギクの植物体から単離・精製することにより得ることができる。本発明で用いられるダルマギクとは、学名をAster spathulifoliusといい、キク科シオン属の植物である。海岸の岩場等に見られ、日本の本州西部及び九州地方、朝鮮半島などに分布するほか、園芸的にも栽培されている。本発明においては、産地や栽培環境は特に限定されず、あらゆる産地及び栽培環境のダルマギクを用いることができる。
【0047】
上述した化合物のダルマギク植物体からの分離方法について説明する。まず、ダルマギクの植物体から抽出物を得る。ダルマギクの植物体としては、全草を用いるほか、ダルマギクの花部、葉部、茎部、根部、幼芽及び種子等のうちの1つ又は複数の部位を選択して用いることも可能であり、特に花部、葉部又は茎部を用いることが好ましい。抽出処理は、採取された生の状態のダルマギクの植物体、又は乾燥処理が施された乾燥状態の植物体に対して行われるが、抽出効率の向上を図るため、又は取り扱いを容易とするために種々の前処理が施された植物体に対して抽出処理を施すことも可能である。前処理としては、特に限定されないが、乾燥処理、破砕処理又は粉砕処理等が挙げられ、これら前処理が施されたダルマギクの植物体に抽出処理を施し、ダルマギク抽出物を得てもよい。
【0048】
抽出溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール又は2-ブタノール等の低級1価アルコール、及びグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール又は1,3-ブチレングリコール等の液状多価アルコール等を含む溶媒が挙げられ、これらの一種または二種以上を組合わせた混合溶媒を用いることも可能である。このうち、人体への安全性及び抽出効率等の観点から、抽出溶媒としては、含水アルコールが好適に用いられ、アルコールとしては、エチルアルコールが好適に選択される。抽出溶媒として含水アルコールを選択した際のアルコール濃度としては、1~95w/w%が好ましく、20~95w/w%がより好ましく、40~90w/w%が特に好ましい。また、抽出溶媒には、ダルマギクからの有用成分の抽出を妨げない範囲において、他の成分を含有させることも可能である。
【0049】
ダルマギクからの抽出方法としては、抽出溶媒にダルマギクの植物体を加えて浸漬させ、抽出を行う。例えば、ダルマギクの植物体を含水率10%未満の乾燥破砕物とした場合には、植物体1重量部に対し、抽出溶媒を2~100重量部用いることが好ましく、2~50重量部用いることがより好ましく、3~30重量部用いることが特に好ましい。また、抽出方法としては、室温(1~30℃)での抽出、加温抽出、熱水抽出、加圧熱水抽出又は亜臨界抽出等のいずれの方法でも行うことが可能である。一例として、含水アルコールを用いた場合には1~30℃の室温下、好ましくは10~30℃、より好ましくは20~30℃で抽出することができる。また、抽出時間は、抽出方法、植物体の状態、抽出溶媒の種類又は抽出温度等に応じて種々設定されるが、含水アルコールを用いて室温での抽出を行う場合には、1時間~2週間程度とすることが好ましく、1日~10日間程度とすることがより好ましく、2日~8日間程度とすることが特に好ましい。上述した抽出処理後、残渣をデカンテーション、遠心分離又はろ過等により取り除くことによりダルマギク抽出物が得られる。得られた抽出物には減圧蒸留等の処理を施すことにより、濃縮液や固形物としたものも含まれる。
【0050】
上述のようにして得られたダルマギク抽出物に対し、酢酸エチルと水とで二層分配を行う。二層分配は複数行うことが好ましい。二層分配の回数は2~10回程度が好ましく、4~5回程度が特に好ましい。この溶媒抽出操作により回収された酢酸エチル画分に本発明の化合物が含まれる。
【0051】
上述のようにして得られた酢酸エチル画分から常法に基づき精製することにより、本発明の化合物が単離され得る。精製方法としては、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィー等を挙げることができ、これらのうちの1種又は複数を組み合わせて精製することが可能である。各種クロマトグラフィーに用いられる担体や溶出溶媒等は、各種クロマトグラフィーに対応して適宣選択することができる。
【0052】
さらに、本発明のスクラレオール、スクラレオール配糖体及びイソマノオール配糖体に係る化合物は、公知の方法で合成して得られた合成品であってもよい。
【0053】
本発明のCD39発現促進剤は、上述したスクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を有効成分として含むものであって、CD39を発現する細胞において、CD39発現を促進し、CD39発現量を増加させる作用を有する。CD39の発現が促進されることにより、対象細胞でのCD39が増加するため、細胞外ATPの分解が促進され、細胞外ATPの蓄積も抑制される。その結果、細胞外ATPに起因する炎症を抑制でき、SASPの発生も防ぐことができるため、過剰免疫応答も抑制される。特に、CD39は皮膚免疫細胞であるランゲルハンス細胞に発現し、細胞外ATPを分解して炎症誘導シグナルの伝達を阻害する作用を有している。本発明のCD39発現促進剤をランゲルハンス細胞に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39の発現量が増加するため、皮膚の炎症が抑制又は鎮静され、皮膚における過剰免疫応答も抑制される。
【0054】
本発明のCD39発現促進剤は、皮膚の炎症を抑制し、過剰免疫応答を抑制すると共に、皮膚を安定した状態に保つための皮膚外用剤として用いることができる。皮膚に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39発現量が増加するため、外部刺激や老化等によって放出された細胞外ATPの分解が促進される。それゆえ、細胞外ATPによって生じる皮膚の炎症及びSASP等による過剰免疫応答が抑制され、皮膚を安定した状態に保つことができる。
【0055】
また、本発明のCD39発現促進剤は、皮膚炎症の抑制作用、過剰免疫応答の抑制作用及び皮膚を健やかに保つ作用を有する化粧料として用いることができる。皮膚に付与することにより、ランゲルハンス細胞におけるCD39発現量が増加するため、外部刺激や老化等によって放出された細胞外ATPの分解が促進される。それゆえ、皮膚の炎症や肌あれ、痒み、カブレ等が抑制され、皮膚を健やかな状態に保つことができる。なお、本発明の化粧料は、美容目的で皮膚の老化を予防又は改善するためにも好ましく適用され得る。
【0056】
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料の投与量又は添加量は、目標とする炎症抑制効果、投与方法、年齢などによって変化するので一概には規定できないが、本発明に係るスクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体として、表皮単位面積(1cm2)当たり、0.02ng/cm2・day~100μg/cm2・dayとすることが好ましく、0.02ng/cm2・day~10μg/cm2・dayとすることがより好ましい。
【0057】
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料の剤形は、特に限定されず、例えば、低粘度液体、ローション等の液剤、乳液、ゲル、ペースト、クリーム、フォーム、パック、軟膏、粉剤、エアゾール又は貼付剤等、並びに錠剤、顆粒剤、カプセル剤又は内服用液剤等が挙げられる。なお、本発明に係るCD39発現促進剤は、化粧品、医薬部外品又は医薬品のいずれにも適用することができる。具体的な製品としては、特に限定されないが、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、美容液、化粧パック、化粧洗浄料、石鹸、ヘアケア剤、浴用剤又はメーキャップ化粧料等が挙げられる。
【0058】
本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料中において、本発明に係るスクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を有効成分として配合させた際の配合量は、好ましくは0.001質量ppm~1質量%であり、より好ましくは0.01質量ppm~0.1質量%である。これら化合物の配合量をこの範囲内とすることにより、本化合物を安定に配合することができ、皮膚への安全性も高く、高いCD39発現促進効果、炎症抑制効果ないし美容効果を発揮することができる。
【0059】
また、本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料には、本発明の作用効果を損なわない範囲において、通常用いられる各種の薬効成分、例えば、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、細胞賦活剤、紫外線防御剤、血行促進剤及び抗酸化剤等から選ばれる薬効剤の一種または二種以上と併用することができる。それにより、本発明の効果をより高めることが可能である。
【0060】
保湿剤としては、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アラニン、アルギニン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、キシリトール、グリシン、グルコース、シスチン、システイン、セリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、POEメチルグルコシド、マルチトール、マルトース、マンニトール、リシン、ハチミツ、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ムコイチン硫酸、カロニン酸、トラネキサム酸、ベタイン、トレハロース、キトサン、尿素、セラミド、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、アシタバ抽出物、アスパラガス抽出物、イザヨイバラ抽出物、クインスシード抽出物、グアバ葉抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物及びメリロート抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0061】
また、美白剤としては、例えば、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸塩、L-アスコルビン酸エチル、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、L-アスコルビン酸-2-硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩、L-アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム塩、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-グルコシド、DL-α-トコフェロール-L-アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム等のビタミンC類、胎盤抽出物、コウジ酸、エラグ酸、カミツレ抽出物、火棘エキス、レンシュエキス、トコトリエノール、グルタチオン、アルブチン、トラネキサム酸、ウワウルシ抽出物、ユキノシタ抽出物、アセロラ抽出物、エイジツ抽出物、フェルラ酸、アデノシンリン酸二ナトリウム、リノール酸、4-n-ブチルレゾルシン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール、5,5’-ジプロピル-ビフェニル-2,2’-ジオール、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノベンジルエーテル、パンテテイン-s-スルホン酸カルシウム及び油溶性カンゾウ抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0062】
抗炎症剤としては、例えば、アミノカプロン酸、アラントイン、インドメタシン、ビサボロール、サポニン、塩化リゾチウム、アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸又はその誘導体、グリチルレチン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体、ヒノキチオール、感光素、トラネキサム酸又はその誘導体、酸化亜鉛、ウコン抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタン抽出物、レイシ抽出物及びワレモコウ抽出物等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0063】
細胞賦活剤としては、例えば、アミノ酪酸、イチョウ抽出物、ウイキョウ抽出物、オランダカラシ抽出物、ニンジン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、サフラン抽出物、ダイズ抽出物、タイソウ抽出物、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸又はその誘導体、ビオチン、レチノール、ロイシン、感光素、リボフラビン又はその誘導体、ピリドキシン又はその誘導体等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0064】
紫外線防御剤としては、例えば、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、メトキシケイ皮酸メチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸(PABA)、パラアミノ安息香酸エチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、エチルヘキシルトリアゾン、ドロメトリゾール、ドロメトリゾールトリシロキサン、4-メトキシ-4’-tert-ブチルジベンゾイルメタン、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン及び酸化亜鉛等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0065】
血行促進剤としては、例えば、サンショウ抽出物、ショウキョウ抽出物、センキュウ抽出物、チンピ抽出物、トウガラシ抽出物、トウキ抽出物、ボタン抽出物、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、アセチルコリン、セファランチン、γ-オリザノール等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0066】
抗酸化剤としては、例えば、アスタキサンチン、β-カロテン、γ-オリザノール、カイネチン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、フラボノイド、SOD、カタラーゼ、フラーレン、フィチン酸、フェルラ酸、クロロゲン酸、没食子酸プロピル、緑茶抽出物、ローズマリー抽出物、ローズヒップ抽出物、ショウブ抽出物、スギナ抽出物、ハマメリス抽出物、パセリ抽出物、ビワ葉抽出物、グレープフルーツ抽出物、シモツケソウ抽出物、ライチ抽出物、ヨモギ抽出物、モモ葉抽出物、マンゴウ抽出物、ボタンピ抽出物、マツ樹皮抽出物、白金、ユビキノン及びα-リポ酸等から選択される1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0067】
また、本発明のCD39発現促進剤、皮膚外用剤及び化粧料には、上述した成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で、皮膚外用剤及び化粧料に通常用いられる成分である水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、ビタミン類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素又はキレート剤等の成分を適宜配合することができる。
【0068】
さらに、本発明のCD39発現促進用飲食品は、上述したスクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を活性成分として含有している。本発明に係る飲食品組成物は、錠剤やカプセル剤、顆粒剤、シロップ剤などのサプリメント形態、清涼飲料、果汁飲料、アルコール飲料などの飲料、アメやガム、クッキー、ビスケット、チョコレート等の菓子、パン、粥、シリアル、麺類、ゼリー、スープ、乳製品、調味料等のあらゆる形態とすることができる。このように飲食品として用いる際には、本発明の有効成分の効能に影響を与えない範囲において、他の有効成分や、ビタミン、ミネラル若しくはアミノ酸等の栄養素等を種々組み合わせることも可能である。本発明の飲食品には、サプリメント、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等が含まれる。また、本発明の飲食品の1日あたりの摂取量は、スクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体として、通常一日5mg~5000mg(60kg体重)とすることが好ましく、10mg~2000mg(60kg体重)とすることがより好ましい。
【0069】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例0070】
[実施例1]
1.ダルマギク抽出物の調製
採取後、乾燥処理されたダルマギク植物体から花部を回収し、粉砕機で粉砕した。この粉砕物300gを2Lの90w/w%エタノール水溶液に浸漬して3日間抽出した後、得られた抽出液を綿栓ろ過し、エバポレーターで減圧濃縮したものをエタノール抽出物とした(
図1)。このエタノール抽出物を、200mLの酢酸エチルと200mLの水で二層分配した。分液漏斗にて激しく混合した後、静置し、酢酸エチル層のみを回収した(
図1)。二層分配は合計4回繰り返し行った。酢酸エチル層をエバポレーターで乾固し、酢酸エチル画分(16.3g)を得た。
【0071】
[実施例2]
2.ダルマギク抽出物の単離と精製
図1に示すように、実施例1で得られた酢酸エチル画分1.0gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(オープンカラムクロマト管:φ2.5cm×高さ33cm、シリカゲル60(63-200μm)、メルク社製品)に供し、200mLのヘキサン:酢酸エチル=9:1、200mLのヘキサン:酢酸エチル=8:2、200mLのヘキサン:酢酸エチル=7:3、200mLのヘキサン:酢酸エチル=5:5、300mLの酢酸エチル、300mLのメタノールの順で溶出を行い、6つの溶出画分Fr.1~6を得た。それぞれ、Fr.1:71mg、Fr.2:177.3mg、Fr.3:36.7mg、Fr.4:299.5mg、Fr.5:384.7mg、Fr.6:248mgと分画された。これら6つの溶出画分について、後述する実施例4と同様の材料及び方法により、CD39発現促進効果を確認したところ、Fr.4、Fr.5及びFr.6にCD39発現促進効果が確認された。また、これら6つの画分を
1H-NMRプロファイリングに供したところ、Fr.2、Fr.4、Fr.5及びFr.6に特徴的なピークが検出された。そこで、Fr.2、Fr.4、Fr.5及びFr.6の4つの画分に含まれる化合物の単離を試みた。
【0072】
図2に示すように、Fr.2から90mgを取り分け、分取薄層クロマトグラフィー(PTLC:PLC シリカゲル60 F
254、メルク社製品)に供した。展開溶媒にはトルエン(100%)を用い、5つの画分Fr.2-1~2-5を得た。Fr.2-3について、ヘキサン:酢酸エチル=9:1を展開溶媒とし、PTLCに供した。得られた画分のうちのFr.2-3-2をベンゼン100%でPTLCに供し、Fr.2-3-2-3から化合物c(21.4mg)を単離した。他方、Fr.2-4についても、ヘキサン:酢酸エチル=9:1を展開溶媒とし、PTLCに供した。その結果、得られた画分Fr.2-4-2から化合物b(12.3mg)を得た。
【0073】
図3に示すように、Fr.4から225mgを取り分け、PTLCに供した。展開溶媒にはヘキサン:酢酸エチル=3:1を用い、4つの画分Fr.4-1~4-4を得た。Fr.4-4について、クロロホルム:メタノール=98:2を展開溶媒とし、再びPTLCに供し、5つの画分Fr.4-4-1~4-4-5を得た。得られたFr.4-4-3をヘキサン:酢酸エチル=2:1の展開溶媒でPTLCに供し、Fr.4-4-3-3から化合物e(17.9mg)を単離した。他方、Fr.4-4-5もヘキサン:酢酸エチル=2:1の展開溶媒でPTLCに供した。その結果、Fr.4-4-5-3及びFr.4-4-5-4からはそれぞれ化合物a(94.3mg)と化合物d(23.3mg)を得た。
【0074】
図4に示すように、Fr.5から220mgを取り分け、PTLCに供した。展開溶媒にはヘキサン:酢酸エチル=3:2を用い、4つの画分Fr.5-1~5-4を得た。このうちFr.5-3について、クロロホルム:メタノール=98:2を展開溶媒とし、さらなるPTLCを行い、Fr.5-3-2から化合物f(6.1mg)を得た。Fr.5-4については、ヘキサン:酢酸エチル=1:1を展開溶媒とし、PTLCに供した。得られたFr.5-4-5をクロロホルム:メタノール=99:1を展開溶媒として、PTLCに供し、Fr.5-4-5-3から化合物g(30.3mg)を得た。他方、Fr.5-4-4をクロロホルム:メタノール=98:2を展開溶媒として、PTLCに供し、Fr.5-4-4-4を得た。Fr.5-4-4-4にアセトニトリル:水=6:4を展開溶媒とした逆相PTLC(PLC シリカゲル60 RP-18 F
254S、メルク社製品)を行い、得られたFr.5-4-4-4-5をメタノール:水=6:4で逆相PTLCに供した。その結果、Fr.5-4-4-4-5-2から新規化合物i(4.4mg)を単離した。
【0075】
図5に示すように、Fr.6から230mgを取り分け、PTLCに供した。展開溶媒にクロロホルム:メタノール=9:1を用い、Fr.6-3を得た。Fr.6-3に対して、展開溶媒に酢酸エチル(100%)、酢酸エチル:メタノール=97:3を用いてPTLCを繰り返した。得られたFr.6-3-3-2にアセトニトリル:水=6:4を展開溶媒とした逆相PTLCを行い、得られたFr.6-3-3-2-4をメタノール:水=6:4で逆相PTLCに供した。その結果、Fr.6-3-3-2-4-2から化合物h(23.9 mg)を得た。
【0076】
[実施例3]
3.化合物a~iの構造決定
実施例2において単離した9つの化合物の構造解析を行った。構造解析にあたり、NMR装置(JNM-EX400、日本電子株式会社製品)を用い、各化合物の
1H-NMR、
13C-NMR分析を行った。測定時の重水素溶媒としては、CDCl
3(クロロホルム-D1、99.8 atom% D、メルク社製品)、重水(99.9 atom% D、メルク社製品)を用いた。
1H-NMRと
13C-NMRから得られた化学シフトを化合物データベース(SciFinder、一般社団法人化学情報協会)と比較し、構造解析を行った。データベースに該当する化合物がない場合には、2D NMR(HSQC、HMBC、COSY)を測定し、HR-ESI-MSなどのスペクトルデータと併せることで、化合物の平面構造を決定した。さらに、NOESYを測定し、相対立体配置の検討を行った。また、構造解析の際、HGSの分子模型(丸善出版株式会社製品)と分子構造式エディタソフトのChemDraw(株式会社ヒューリンクス製品)を使用し検討を行った。各化合物の
1H-NMR分析(観測周波数:400MHz)及び
13C-NMR分析(観測周波数:100MHz)により得られた各スペクトルを
図6~14に示す。
【0077】
解析の結果、Fr.2から単離した化合物c(Fr.2-3-2-3)はゲルマクロンであり、化合物b(Fr.2-4-2)はイソマノオールであった。
【0078】
また、解析の結果、Fr.4から単離した化合物e(Fr.4-4-3-3)はイソマノオール配糖体の(13R)-Labda-7,14-diene 13-O-a-L-(4’-O-acetyl)-6’-deoxyidopyranosideであり、化合物a(Fr.4-4-5-3)はスクラレオールであり、化合物d(Fr.4-4-5-4)はイソマノオール配糖体の(13R)-Labda-7,14-diene 13-O-a-L-6’-deoxyidopyranosideであった。
【0079】
また、解析の結果、Fr.5から単離した化合物f(Fr.5-3-2)はフラボノイド系化合物のネバデンシンであった。化合物i(Fr.5-4-4-5-2)は今回新たに発見されたスクラレオール配糖体であって、下記式(V)に示す新規化合物であり、化合物g(Fr.5-4-5-3)はイソマノオール配糖体の(13R)-Labda-7,14-diene 13- O-β-D-fucopyranosideであった。
【0080】
【0081】
また、解析の結果、Fr.6から単離した化合物h(Fr.6-3-3-2-4-2)はスクラレオール配糖体の(13R)-Labda-14(15)-ene-8,13-diol 13-O-α-L-6′-deoxyidopyranosideであった。
【0082】
[実施例4]
4.ランゲルハンス細胞様細胞におけるCD39発現促進作用の検討
ランゲルハンス細胞は、試験利用できる状態で、ヒト皮膚組織から分離すること及び長時間培養することが困難な細胞である。そのため、ランゲルハンス細胞の代替として、ランゲルハンス様細胞であるTHP-1細胞が、皮膚感作アッセイ等のランゲルハンス細胞に関する試験において多く用いられている。そして、上述した特許文献1及び特許文献4においても、ランゲルハンス細胞の代替としてTHP-1細胞が用いられている。そこで、本発明においても、ランゲルハンス細胞様細胞であり、CD39を発現するTHP-1細胞を用いてCD39発現促進効果を調べた。
【0083】
まず、実施例2で単離した化合物a~iをそれぞれ無水エタノールに溶解させ、10mg/mLの試料溶解液を作成した。また、市販のスクラレオール(化合物a)試薬(製品コード:S0916、東京化成工業株式会社製品)とネバデンシン(化合物f)試薬(製品コード:HY-N1377、MedChemexpress社製品)を入手し、これらについてもそれぞれ無水エタノールに溶解させ、10mg/mLの試料溶解液を作成した。
【0084】
市販の24ウェル細胞培養プレートの各ウェル(3.34mL容量/ウェル)に約10万個のTHP-1細胞(ATCC(登録商標)番号:TIB-202)をそれぞれ播種し、10%FBS含有RPMI-1640培地を998μL添加して、24時間培養した。その後、以下表1に示す配合量にて化合物a~i又は市販試薬の試料溶解液(いずれも10mg/mL濃度)と無水エタノールとを混合して2μLずつウェルに添加し、培地における各化合物の添加濃度を0μg/mL(対照)~20μg/mLとした。添加後、24時間培養を行った。試験は各濃度についてN=2で行った。
【0085】
【0086】
培養終了後、各ウェルからTHP-1細胞を回収し、トータルRNA精製キット(FastGene RNA精製キット、日本ジェネティクス株式会社製品)を用いてトータルRNAを得た。次に、cDNA合成キット(ReverTra Ace、東洋紡株式会社製品)を用いて、各トータルRNAからcDNAを合成した。このcDNAを用い、リアルタイムPCR(QPCR)によりCD39の発現量を測定した。
【0087】
QPCRは、市販のQPCR試薬キット(PrimeTime(登録商標)Gene Expression Master Mix、Integrated DNA Technologies株式会社製品)とQPCR測定装置(LightCycler(登録商標)96、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社製品)を用いて行った。QPCR用CD39プライマー及びプローブは下記表2に示す配列番号1~3のプライマー及びプローブを用いた。他方、ハウスキーピング遺伝子であるヒト グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)を内部標準として選択し、上述したCD39プライマー及びプローブに替えて下記表2に示す配列番号4~6のプライマー及びプローブを用いてQPCRを行った。いずれのプローブも3´末端に末端クエンチャーとしてIBFQが付加され、5´末端から9塩基-10塩基の間に中間クエンチャーとしてZENが付加されたダブルクエンチャーシステムによるプローブを使用した(Integrated DNA Technologies株式会社製品)。なお、CD39用プローブ(配列番号3)の5´末端に付加された蛍光色素はFAMであり、GAPDH用プローブ(配列番号6)の5´末端に付加された蛍光色素はHEXであった。内部標準であるGAPDHの発現量から相対発現量を算出し、CD39の発現量とした。結果を
図15~
図17に示す。なお、これら
図15~
図17のグラフでは、化合物を添加していない対照(濃度0μg/mL)のTHP-1細胞におけるCD39発現量を1.00としたときの値を示している。
【0088】
【0089】
図15に示すように、化合物a(スクラレオール)をランゲルハンス様細胞であるTHP-1細胞に添加したところ、わずか2μg/mL(2ppmに相当)の添加濃度でCD39の発現量が1.2倍以上に増加することが明らかとなった。実施例2で単離された試料を用いた試験では、16μg/mLの添加濃度でCD39の発現量が1.9倍に達した(
図15(a))。また、市販のスクラレオール試薬を用いた場合には、12μg/mLの添加濃度で2.55倍ものCD39発現量の増加が見られた(
図15(b))。
【0090】
他方、スクラレオールとよく似た二環式ジテルペン骨格を有する化合物b(イソマノオール)には、興味深いことにCD39発現量の増加はみられなかった(
図15(c))。また、セスキテルペン骨格を有する化合物c(ゲルマクロン)もイソマノオール同様にCD39発現促進効果は確認されなかった(
図15(d))。さらに、フラボノイド系化合物の化合物f(ネバデンシン)にもCD39発現促進効果は確認されなかった(
図16(c)及び(d))。
【0091】
上述したようにイソマノオール単体にはCD39発現促進効果は確認されなかったが、イソマノオール配糖体である化合物d、化合物e及び化合物gには、CD39発現促進効果が確認された(
図16(a)及び(b)、
図17(a))。このうち、フコピラノシドである化合物gのCD39発現促進効果が最も高く、10μg/mLの添加濃度でCD39の発現量が1.95倍に達した(
図17(a))。なお、いずれのイソマノオール配糖体についても、スクラレオール及びスクラレオール配糖体と比べると、低用量(8~12μg/mL程度)で効果のピークが得られることが明らかとなった。
【0092】
また、スクラレオール配糖体として単離された化合物h及び化合物iにも、優れたCD39発現促進効果が確認された(
図17(b)及び(c))。このうち、6-デオキシイドピラノシドである化合物hは、20μg/mLの添加濃度でCD39の発現量が2.11倍に達した(
図17(b))。また、新規化合物として発見された化合物i(4-O-アセチル-6-デオキシイドピラノシド)は、12μg/mLの添加濃度で1.61倍のCD39の発現量の増加が観察された(
図17(c))。
【0093】
このように、本発明によれば、スクラレオール、スクラレオール配糖体又はイソマノオール配糖体を用いることによって、ppmオーダーでの非常に少ない添加濃度で高いCD39発現促進効果が得られることが明らかとなった。
【0094】
本発明は、上記の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。
本発明のCD39発現促進剤は、外部刺激や加齢などによって生じる炎症を抑制し、過剰免疫応答を抑制する作用を有するため、医療や美容の分野において幅広く利用されるものである。